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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】表面実装機、表面実装機の点検方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
H05K13/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019108620
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020202306
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恒太
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-036670(JP,A)
【文献】特開2010-118561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装機であって、
ヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットに昇降可能に支持された複数本の実装ヘッドと、
コントローラと、を備え、
前記実装ヘッドは、
内部にエアを供給する供給経路を有するノズルシャフトと、
前記供給経路に取り付けられたフィルタと、
前記ノズルシャフトの先端に取り付けられた吸着ノズルと、を含み、
前記コントローラは、前記実装ヘッドに負圧の異常がある場合、前記吸着ノズルと前記ノズルシャフトの組み合わせを変更して、前記供給経路の圧力又はエア流量を再計測することにより得られた計測結果に基づいて、負圧の異常原因が、前記吸着ノズルの詰まりか前記フィルタの詰まりであるかを判定する、表面実装機。
【請求項2】
請求項1に記載の表面実装機であって、
前記コントローラは、前記実装ヘッドに負圧の異常がある場合、前記吸着ノズルと前記ノズルシャフトの組み合わせを、正常品との間で変更して、前記供給経路の圧力又はエア流量を再計測する、表面実装機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表面実装機であって、
前記コントローラは、負圧の異常原因に応じたメンテナンス処理を行う、表面実装機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の表面実装機であって、
前記コントローラは、
前記吸着ノズルを先端に装着した前記ノズルシャフトについて、前記供給経路の圧力またはエア流量を計測して、計測値のレベルを判定する1次判定処理と、
前記1次判定処理の結果、計測値のレベルが異常な場合、前記1次判定処理のときの前記ノズルシャフトと前記吸着ノズルの組み合わせから、前記吸着ノズルを、正常な他の前記吸着ノズルに変更し、変更後の前記供給経路の圧力またはエア流量を計測して、計測値のレベルを判定する2次判定処理と、
前記2次判定処理の結果、計測値のレベルが異常な場合、前記1次判定処理のときの前記ノズルシャフトと前記吸着ノズルの組み合わせから、前記ノズルシャフトを、正常な他の前記ノズルシャフトに変更し、変更後の前記供給経路の圧力またはエア流量を計測して、計測値のレベルを判定する3次判定処理と、を実行し、
前記1次判定処理~前記3次判定処理の判定結果に基づき、前記実装ヘッドの負圧の異常原因を判定する、表面実装機。
【請求項5】
請求項4に記載の表面実装機であって、
前記コントローラは、
前記1次判定処理において計測値のレベルが正常であった場合、前記フィルタと前記吸着ノズルの双方とも正常であると判定し、
前記2次判定処理において計測値のレベルが正常であった場合、前記吸着ノズルが詰まっていると判定し、
前記3次判定処理において計測値のレベルが正常であった場合、前記フィルタが詰まっていると判定し、
前記3次判定処理において計測値のレベルが異常であった場合、前記フィルタと前記吸着ノズルの双方が詰まっていると判定する、表面実装機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の表面実装機であって、
前記コントローラは、複数の前記実装ヘッドに負圧の異常がある場合、負圧の異常があった複数の前記実装ヘッド間で前記吸着ノズルまたは前記ノズルシャフトを交換することにより、前記吸着ノズルと前記ノズルシャフトの組み合わせを変更して、前記供給経路の圧力又はエア流量を再計測することにより得られた計測結果に基づいて、負圧の異常原因が、前記吸着ノズルの詰まりか前記フィルタの詰まりであるかを判定する、表面実装機。
【請求項7】
表面実装機の点検方法であって、
前記表面実装機は、複数本の実装ヘッドを有するヘッドユニットを含み、
前記実装ヘッドに負圧の異常がある場合、前記実装ヘッドの吸着ノズルとノズルシャフトの組み合わせを変更して、供給経路の圧力又はエア流量を再計測することにより得られた計測結果に基づいて、負圧の異常原因が、吸着ノズルの詰まりかフィルタの詰まりであるかを判定する、表面実装機の点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面実装機を点検する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装機は、プリント基板に電子部品を実装する装置である。表面実装機は、実装ヘッドを有している。実装ヘッドは、ノズルシャフトと吸着ノズルを有している。吸着ノズルはノズルシャフトの先端に取り付けられている。ノズルシャフトにはエアの供給経路が形成されており、エアの供給経路を通じて吸着ノズルに負圧を供給することで、吸着ノズルにより、電子部品を吸着保持する。
【0003】
エアの供給経路に、フィルタを配置することで、ごみなどの異物を拿捕することが出来る。フィルタの詰まりを検出する方法を開示した文献として、下記の特許文献1がある。特許文献1では、実装動作直後に測定したエア流量が、2つの閾値の間にある場合、フィルタが詰まっていると判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4262966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実装ヘッドの負圧の異常は、供給経路のエア供給量や圧力を計測することで、判断できる。しかし、単に供給経路のエア供給量や圧力を計測するだけでは、負圧の異常原因を特定することが困難な場合があった。つまり、フィルタが詰まっている場合だけでなく、吸着ノズルが詰まっている場合も、負圧の異常が起きるため、供給経路の圧力やエア供給量の計測値からだけでは、負圧の異常原因が、フィルタの詰まりなのか、吸着ノズルの詰まりなのか、判定することが出来ない。
本発明は、実装ヘッドの負圧に異常があった場合、その原因が吸着ノズルの詰まりなのか、フィルタの詰まりなのか、判定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
表面実装機は、ヘッドユニットと、前記ヘッドユニットに昇降可能に支持された複数本の実装ヘッドと、コントローラと、を備え、前記実装ヘッドは、内部にエアを供給する供給経路を有するノズルシャフトと、前記供給経路に取り付けられたフィルタと、前記ノズルシャフトの先端に取り付けられた吸着ノズルと、を含み、前記コントローラは、前記実装ヘッドに負圧の異常がある場合、前記吸着ノズルと前記ノズルシャフトの組み合わせを変更して、前記供給経路の圧力又はエア流量を再計測することにより得られた計測結果に基づいて、負圧の異常原因が、前記吸着ノズルの詰まりか前記フィルタの詰まりであるかを判定する。
【0007】
この構成では、実装ヘッドに負圧の異常がある場合、その原因が、吸着ノズルの詰まりなのか、フィルタの詰まりなのか、判定することができる。
【0008】
前記表面実装機の一実施態様として、前記コントローラは、前記実装ヘッドに負圧の異常がある場合、前記吸着ノズルと前記ノズルシャフトの組み合わせを、正常品との間で変更して、前記供給経路の圧力又はエア流量を再計測してもよい。正常品と組み合わせることで、異常の原因が特定し易くなる。正常品とは、正常にエアが流れる吸着ノズルやノズルシャフトの事である。つまり、詰まりのない吸着ノズルやフィルタに詰まりがないノズルシャフトである。
【0009】
前記表面実装機の一実施態様として、前記コントローラは、負圧の異常原因に応じたメンテナンス処理してもよい。原因に応じた適切なメンテナンスが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実装ヘッドの負圧に異常があった場合、その原因が吸着ノズルの詰まりなのか、フィルタの詰まりなのか、判定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】表面実装機の平面図
図2】ヘッドユニットの側面図
図3】実装ヘッドの断面図
図4】吸着ノズルをノズルシャフトから脱着された時の断面図
図5】詰まり原因の特定方法の概念図
図6】表面実装機のブロック図
図7】メンテナンス処理のフローチャート
図8】1次判定処理のフローチャート
図9】2次判定処理のフローチャート
図10】3次判定処理のフローチャート
図11】詰まり原因の判定処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて、説明する。図1は、表面実装機11の平面図である。表面実装機11は、基台31と、搬送コンベア32と、ヘッドユニット33と、駆動部34と、フィーダ35を備える。搬送コンベア32は、作業対象のプリント基板Pを、基台31上においてX方向に搬送する。
【0013】
駆動部34は、ヘッドユニット33を、基台31上において、平面方向(XY方向)に移動させる装置である。
【0014】
駆動部34としては、モータを駆動源とする2軸や3軸のボール螺子機構などを例示することが出来る。フィーダ35は、プリント基板Pに実装する電子部品Bを供給する装置である。
【0015】
図2に示すように、ヘッドユニット33は、支持部材38に対してスライド可能に支持されており、複数本の実装ヘッド40を備えている。実装ヘッド40は、ヘッドユニット33に対して、昇降操作可能に支持されている。
【0016】
図3に示すように、実装ヘッド40は、ノズルシャフト41と、吸着ノズル45とを備える。ノズルシャフト41は、軸中心部にエアの供給経路42を有している。ノズルシャフト41は外周にシャフトホルダ43を有している。吸着ノズル45は、ノズルシャフト41の先端に取り付けられている。
【0017】
負圧発生器51から供給経路42に負圧を供給することで、吸着ノズル45の先端に吸引力が生じ、電子部品Bを吸着保持することが出来る。また負圧の供給を停止することで、電子部品Bの保持を解くことが出来る。負圧は、大気圧よりも低い圧力のことを意味する。
【0018】
負圧発生器51は、エア源53から供給されるエアにより、負圧を発生させるエジェクタでもよい。負圧発生器51とエア源53との間に、エアの切り換え弁52を設けてもよい。負圧発生器51と切り換え弁52は、実装ヘッド40ごとに設けてもよい。
【0019】
また、各実装ヘッド40のノズルシャフト41には、圧力センサ55がそれぞれ取り付けられている。圧力センサ55は、供給経路42の圧力を検出する。圧力はゲージ圧でもいいし、絶対圧でもよい。
【0020】
ヘッドユニット33及び実装ヘッド40は、フィーダ35から供給される電子部品Bを、基台中央の作業位置にて、プリント基板Pに実装する機能を果たす。
【0021】
表面実装機11は、図1に示すように、カメラ37を有している。カメラ37は、基台31上において撮影面を上方に向けて配置されている。カメラ37は、吸着ノズル45に保持された電子部品Bを下方から撮影する。
【0022】
カメラ37の画像から、吸着ノズル45に対する電子部品Bの吸着状態を検出することが出来る。つまり、カメラ37の画像から吸着ノズル45に対する電子部品Bの吸着位置のずれ量を検出することが出来る。また、吸着ノズル45に対する電子部品Bの吸着角度のずれ量を検出することが出来る。
【0023】
カメラ37により撮影した画像の認識結果(吸着位置のずれや吸着角度のずれ)に基づいて、プリント基板Pに対する電子部品Bの位置や角度を補正することで、電子部品Bの搭載精度を高めることが出来る。
【0024】
図4に示すように、吸着ノズル45は、ノズルシャフト41の先端から着脱することが出来る。ノズルシャフト41の先端部41Aの供給経路42内には、フィルタ44が取り付けられている。フィルタ44は、吸引されるゴミや異物を拿捕する。吸着ノズル45を取り外すことで、フィルタ44を交換することが出来る。
【0025】
吸着ノズル45は、いわゆるバフィングノズルであり、ノズルホルダ46と、ノズル本体47と、ばね48と、を備える。ノズルホルダ46がシャフトホルダ43に突き当たることで、ノズルシャフト41に対して、吸着ノズル45が上下方向で位置決めされるようになっている。ノズル本体47は、ノズルホルダ46に対して出没可能に取り付けられている。ばね48は、ノズル本体47の外周に取り付けられており、ノズル本体47を突出方向に付勢する。
【0026】
バフィングノズルは、部品搭載時などノズル先端に荷重が加わった時に、ばね48が縮みつつ、ノズル本体47がノズルホルダ46からの突出量を小さくするように変位することで、衝撃を吸収することが出来る。
【0027】
また、ノズルホルダ46は、鍔部46Aを有している。鍔部46Aは、ノズルシャフト41から吸着ノズル45を着脱する時に、吸着ノズル45を、所定の固定部49に引っ掛けてロックしておくために設けられている(図4参照)。
【0028】
ノズルシャフト41に対する吸着ノズル45の着脱は、人手又は表面実装機11により行うことが出来る。つまり、ノズルシャフト41を吸着ノズル45に対して上下方向に相対移動させることで実行出来る。
【0029】
2.負圧の異常原因の特定
負圧発生器51を動作させても、実装ヘッド40の負圧に異常がある場合、つまり、供給経路42の圧力が所定レベルまで下がらない場合、電子部品Bの吸着不良が発生する。そのため、実装ヘッド40の負圧に異常がないか、点検を行うことが望ましい。異常の有無は、圧力センサ50を用いて、実装ヘッド40の供給経路42の圧力を計測し、それを閾値と比較することで、検査できる。
【0030】
しかし、圧力センサ50の計測値から負圧の異常を判断することは出来るものの、異常の発生原因が、吸着ノズル45の詰まりによるものか、吸着ノズル45の奥にあるフィルタ44が詰まっているものなのか、判断することが出来ない。
【0031】
本発明では、実装ヘッド40の負圧に異常があった場合、ノズルシャフト41と吸着ノズル45の組み合わせを変えて、供給経路42の圧力を再計測することで、詰まりの発生箇所を特定する。
【0032】
つまり、図5に示すように、まず、負圧発生器51を動作させた後、検査対象の実装ヘッド40について、供給経路42の圧力を圧力センサ50で計測して、閾値と比較することで、圧力のレベルを判定する(1次判定)。
【0033】
そして圧力が閾値まで下がっていない場合(負圧の異常)、その吸着ノズル45を、正常な吸着ノズルA0と交換する。「正常」とは、詰まりのないと言う意味である。そして、供給経路42の圧力を再計測して、圧力のレベルを判定する(2次判定)。2次判定で、圧力が閾値まで下がっている場合(OK)、吸着ノズル45が詰まっていると判断する。
【0034】
2次判定で圧力が、閾値まで下がっていない場合、吸着ノズル45を、正常なフィルタC0を装着した正常なノズルシャフトB0に組み付けて、供給経路42の圧力を再計測し、圧力のレベルを判定する(3次判定)。
【0035】
3次判定の結果、圧力が閾値まで下がっている場合(OK)、フィルタ44が詰まっていると、判断できる。また、圧力が閾値まで下がっていない場合(NG)、フィルタ44と吸着ノズル45の双方が詰まっていると判断する。
【0036】
図6は、表面実装機11の電気的構成を示すブロック図である。コントローラ100は、表面実装機11の制御装置である。コントローラ100は、CPU101とメモリ103とを有している。コントローラ100には、搬送コンベア32、駆動部34、カメラ37などの各装置が接続されている。
【0037】
また、コントローラ100には、各実装ヘッド40に対応して設けられた切り換え弁52と圧力センサ55がそれぞれ接続されている。コントローラ100は、各圧力センサ55から各実装ヘッド40について供給経路42の圧力を取得することが出来る。
【0038】
図7は、ヘッドユニット33の点検処理のフローチャートである。点検処理は、実装作業の待機時間に行ってもよい。また、前回実行時から所定時間が経過したタイミングで行ってもよい。
【0039】
点検処理は、コントローラ100により実行され、図7に示すように1次判定処理(S10)、正常な実装ヘッド40の有無を判定する処理(S20)、2次判定処理(S30)、3次判定処理(S40)、異常原因の判定処理(S50)、異常原因に応じたメンテナンス処理(S60)の6つのステップから構成されている。
【0040】
1次判定処理(S10)は、ヘッドユニット33に搭載された各実装ヘッド40について、供給経路42の圧力を計測して、負圧の異常を判定する処理である。1次判定処理は、コントローラ100により、実行される。
【0041】
1次判定処理は、図8に示すように、S11~S16の6つのステップから構成してもよい。S11は、計測対象の実装ヘッド40を、1番目の実装ヘッド40に指定する処理である。「N」は、実装ヘッド40の番号である。
【0042】
S12は、計測対象のN番目の実装ヘッド40について、供給経路42の圧力を計測する処理である。圧力の計測は、負圧発生器51を動作させた状態で、供給経路42の圧力を圧力センサ55で計測することにより行う。
【0043】
S13は、S12の計測値を閾値と比較して、N番目の実装ヘッド40の圧力が正常か判定する処理である。計測値が閾値よりも下がっている場合、「負圧は正常」と判断し、高い場合、「負圧の異常」と判断する。
【0044】
S13で正常と判断された場合、S15に移行し、異常と判断された場合、S14に移行する。S14は、負圧の異常と判断された実装ヘッド40の番号Nを、メモリ103に記憶する処理である。
【0045】
S15は、番号Nを更新(+1)して、次に圧力計測を行う実装ヘッド40を指定する処理である。S16は、未計測の実装ヘッド40の有無を判断する処理である。
【0046】
S1~S16の処理を繰り返し行うことで、1番目の実装ヘッド40から圧力計測を順番に行うことが出来る。図2の例では、ヘッドユニット33に8本の実装ヘッド40が搭載されているため、8本の実装ヘッド40について、圧力計測が順番に行われる。
【0047】
そして、負圧の異常と判断された実装ヘッド40がある場合、その番号Nがメモリ103に記憶される。全実装ヘッド40について、負圧の異常の有無が判定されると、1次判定処理S10は、終了する。
【0048】
図7に示すように、S10の1次判定処理が終了すると、S20に移行して、正常な実装ヘッド40の有無を判定する処理が実行される。1次判定処理で、1本でも正常と判断された実装ヘッド40が存在した場合、S20では、YES判定される。
【0049】
S20でYES判定がされた場合、コントローラ100により、2次判定処理(S30)が実行される。2次判定処理は、1次判定処理で、負圧の異常と判定された実装ヘッド40について、組付けられている吸着ノズル45を正常な吸着ノズル45に付け替えた後、供給経路42の圧力を再計測して、圧力のレベルを判定する処理である。
【0050】
正常な吸着ノズル45は、ヘッドユニット33に搭載された8本の実装ヘッド40のうち、1次判定処理で、「負圧は正常」と判定された他の実装ヘッド40に取り付けられている吸着ノズル45でもよい。吸着ノズル45の付け替えは、作業者が行ってもいいし、コントローラ100がヘッドユニット33を用いて行ってもよい。
【0051】
2次判定処理は、図9に示すように、S31~S39の9つのステップから構成してもよい。S31は、計測対象の実装ヘッド40を、1番目の実装ヘッド40に指定する処理である。「N」は、実装ヘッド40の番号である。
【0052】
S32は、N番目の実装ヘッド40が、1次判定処理で、負圧の異常と判定されたエラーヘッドか、否かを判定する処理である。エラーヘッドである場合、S33に移行し、正常ヘッドである場合、S38に移行する。
【0053】
S33では、N番目の実装ヘッド(エラーヘッド)について、ノズルシャフト41の先端に取り付けられている吸着ノズル45を、正常な吸着ノズル45に付け替える処理が行われる。
【0054】
S34は、ノズルを交換したN番目の実装ヘッド40について、供給経路42の圧力を再計測する処理である。圧力の計測は、負圧発生器51を動作させた状態で、供給経路42の圧力を圧力センサ55で計測することにより行う。
【0055】
S35は、S34の計測値を閾値と比較して、吸着ノズル45を付け替えたN番目の実装ヘッド40の圧力が正常か判定する処理である。計測値が閾値よりも下がっている場合、「負圧は正常」と判断し、高い場合、「負圧の異常」と判断する。
【0056】
S35で正常と判断された場合、S36に移行して、正常と判断されたN番目の実装ヘッド40を、エラーヘッドから除外する処理が実行される。
【0057】
S35で異常と判断された場合、S37に移行して、異常と判断されたN番目の実装ヘッドについて、ノズルシャフト41と吸着ノズル45の組み合わせを、1次判定時の組み合わせに戻す処理が実行される。つまり、S33で付け替えた吸着ノズル(正常な吸着ノズル)45を取り外して、元の吸着ノズル(1次判定時点の吸着ノズル)45に付け替える処理が行われる。
【0058】
S38は、番号Nを更新(+1)して、再計測を次に行う実装ヘッド40を指定する処理である。S39は、次の実装ヘッド40が有るか、否かを判断する処理である。
【0059】
S31~S39の処理を繰り返し行うことで、全てのエラーヘッド、つまり、1次判定処理で、負圧の異常と判断された実装ヘッド40について、吸着ノズル45を正常品と付け替えて、圧力の再計測が順番に行われ、負圧は正常か異常かの判定が行われる。
【0060】
そして、全エラーヘッドについて、圧力の再計測と負圧の異常判定が終了すると、2次判定処理(S30)は終了する。
【0061】
2次判定処理が終了すると、コントローラ100により3次判定処理(S40)が実行される。3次判定処理は、エラーヘッド、つまり2次判定処理のS35でNO判定された実装ヘッド40について、吸着ノズル45をノズルシャフト41が正常な他の実装ヘッド40に付け替えた後、供給経路42の圧力を再計測して、圧力のレベルを判定する処理である。
【0062】
ノズルシャフト41が正常な他の実装ヘッド40は、ヘッドユニット33に搭載された8本の実装ヘッド40のうち、1次判定処理で、「負圧は正常」と判断された他の実装ヘッド40のノズルシャフトでもよい。吸着ノズル45の付け替えは、作業者が行ってもいいし、コントローラ100がヘッドユニット33を用いて行ってもよい。
【0063】
3次判定処理は、図10に示すように、S41~S49の9つのステップから構成してもよい。S41は、計測対象の実装ヘッド40を、1番目の実装ヘッド40に指定する処理である。「N」は、実装ヘッドの番号である。
【0064】
S42は、N番目の実装ヘッド40が、2次判定処理のS35で、負圧の異常と判定されたエラーヘッドか、否かを判定する処理である。エラーヘッドである場合、S43に移行し、正常ヘッドである場合、S48に移行する。
【0065】
S43では、N番目の実装ヘッド(エラーヘッド)の吸着ノズル45を、ノズルシャフト41が正常な他の実装ヘッド40に付け替える処理が行われる。
【0066】
S44は、N番目の吸着ノズル45を装着した他の実装ヘッド40について、供給経路42の圧力を再計測する処理である。圧力の計測は、負圧発生器51を作動させた状態で、供給経路42の圧力を圧力センサ55で計測することにより行う。
【0067】
S45は、S44の計測値を閾値と比較して、N番目の吸着ノズル45を取り付けた他の実装ヘッド40の負圧が正常か、判定する処理である。計測値が閾値よりも下がっている場合、「負圧は正常」と判断し、高い場合、「負圧は異常」と判断する。
【0068】
S45で正常と判断された場合、S46に移行して、N番目の実装ヘッド40をエラーヘッドから除外する処理が実行される。
【0069】
S45で異常と判断された場合、S47に移行して、N番目の吸着ノズル45を元のノズルヘッド、つまり、N番目の実装ヘッド40のノズルシャフト41に戻す処理が実行される。
【0070】
S48は、番号Nを更新(+1)して、再計測を次に行う実装ヘッド40を指定する処理である。S49は、次の実装ヘッド40があるか、否かを判断する処理である。
【0071】
S41~S49の処理を繰り返し行うことで、全てのエラーヘッド、つまり、2次判定処理のS35で、「負圧の異常」と判断された実装ヘッド40について、吸着ノズル45を他の実装ヘッドに付け替えて、圧力の再計測が順番に行われ、負圧は正常か異常かの判定が行われる。
【0072】
全エラーヘッドについて、圧力の再計測と負圧の異常判定が終了すると、3次判定処理(S40)は終了する。
【0073】
3次判定処理(S40)が終了すると、異常原因を判定する判定処理(S50)が実行される。異常の原因の判定処理は、コントローラ100により実行される。異常原因を判定する判定処理は、S51~S59の9つのステップから構成することが出来る。
【0074】
S51では、1次判定は正常であったか、判定を行う。つまり、S13の判定結果が正常であったか判定を行う。
【0075】
S52は、S51でNO判定された場合に実行される。S52では、1次判定処理で、負圧は異常と判定された実装ヘッド40について、吸着ノズル45の付け替えが出来たか、否かを判定する。つまり、S33の処理が出来たか判定を行う。
【0076】
S53は、S52でNO判定された場合、つまり、吸着ノズル45の付け替えが出来た場合に実行される。S53では、1次判定処理で、負圧の異常と判定された実装ヘッド40について、2次判定処理で、負圧は正常であったか、判定を行う。つまり、S35の判定結果が、正常であったか判定を行う。
【0077】
S54は、S53でNO判定された場合、つまり、2次判定処理で、負圧の異常と判定された場合に実行される。S54では、2次判定処理で、負圧の異常と判定された実装ヘッド40について、3次判定処理で、負圧は正常であったか、判定を行う。つまり、S45の判定結果が、正常であったか判定を行う。
【0078】
S51でYES判定の場合、吸着ノズル45とフィルタ44の双方とも、正常と判断することが出来る(S55)。
【0079】
S52でNO判定の場合、吸着ノズル45とフィルタ44のいずれかが、詰まっていると判断することが出来る(S56)。
【0080】
S53でYES判定の場合、吸着ノズル45が詰まっている、と判断することが出来る(S57)。
【0081】
S54でYES判定の場合、フィルタ44が詰まっている、と判断することが出来る(S58)。
【0082】
S54でNO判定の場合、吸着ノズル45とフィルタ44の双方とも詰まっている、と判断することが出来る(S59)。
【0083】
異常原因を判定する判定処理(S50)を、各実装ヘッド40についてそれぞれ行うことで、各実装ヘッド40について負圧の異常の有無と、その原因を特定することが出来る。
【0084】
異常原因の判定処理(S50)が終了すると、次にメンテンナンス処理(S60)がコントローラ100により、実行される。メンテナンス処理(S60)は、1次判定処理の結果、いずれかの実装ヘッド40で、負圧の異常があった場合に実行され、その内容は、異常の原因により異なる。
【0085】
例えば、吸着ノズル45の詰まりが原因である場合、コントローラ100は、メンテナンス処理として、吸着ノズル45の清掃や交換を実施する。フィルタ44の詰まりが原因である場合、コントローラ100は、メンテナンス処理として、フィルタ44の清掃や交換を実施する。
【0086】
3.効果説明
この発明では、各実装ヘッド40について、負圧の異常の有無と、その原因を特定することが出来る。つまり、負圧の異常が発生した場合、その原因が、吸着ノズル45の詰まりなのか、フィルタ44の詰まりなのかを切り分けることが出来る。異常の原因に応じた処置を行うことが出来るため、メンテナンス性が向上する。
【0087】
また、負圧の異常が発生した場合、その原因を切り分ける方法として、実装ヘッド40から吸着ノズル45を取り外して、ノズルシャフト単体の状態で、供給経路42の圧力を再計測する方法が考えられる。ノズルシャフト単体の状態は、吸着ノズル付きの状態に比べて、エアの吸引量が多くなるため、正常時と異常時で計測値に差が生じ難く、詰まりの有無を正確に判断できない場合がある。本発明の方法は、こうした方法と比較して、詰まりの有無を正確に判断できる点でも効果的である。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0088】
(1)実施形態1では、供給経路42の圧力の計測値から負圧の異常を検出した。これに限らず、供給経路42のエア流量の計測値から負圧の異常を検出してもよい。つまり、エア流量の計測値が閾値より低い場合、負圧の異常と判断してもよい。この場合、圧力センサ55に代えて、流量センサを用いて、供給経路42のエア流量を計測るとよい。
【0089】
(2)実施形態1では、吸着ノズル45とノズルシャフト41の組み合わせを、ヘッドユニット33に搭載された8本の実装ヘッド40内で行った。これに限らず、検査用に用意された吸着ノズル45やノズルシャフト41との間で、組み合わせを変更するものであったもよい。
【0090】
(3)実施形態1では、吸着ノズル45とノズルシャフト41の組み合わせを、ヘッドユニット33に搭載された8本の実装ヘッド40のうち、正常品との間で変更した。これに限らず、NG品との間で組み合わせを変更するようにしてもよい。NG品同士で組み合わせを変更した場合でも、再計測により、負圧の異常が無かった場合、組み合わせ変更後の吸着ノズル45とノズルシャフト41は正常であることが分かり、詰まり原因は、それ以外の吸着ノズル45とノズルシャフト41であることを特定できる。また、1回の組み合わせ変更では、原因の特定が困難な場合でも、組み合わせを変えて複数回行うことで、詰まり原因の特定できる確率は高くなる。
【0091】
(4)実施形態1では、S60でメンテナンス処理を実行したが、メンテナンスの指示を促す表示や警告を行うようにしてもよい。メンテナンスを促す表示は、異常の原因と共に、メンテナンスの内容を指示するものであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
11 表面実装機
33 ヘッドユニット
40 実装ヘッド
41 ノズルシャフト
42 供給経路
44 フィルタ
45 吸着ノズル
55 圧力センサ
100 コントローラ
図1
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