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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/537 20060101AFI20230522BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20230522BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20230522BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
A61F13/537 220
A61F13/534 100
A61F13/535 200
A61F13/537 310
A61F13/53 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019119909
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021003486
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075141(JP,A)
【文献】特開2019-042005(JP,A)
【文献】特開2013-027686(JP,A)
【文献】特開2019-051104(JP,A)
【文献】特開2019-092651(JP,A)
【文献】特開2020-081224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、フラッフパルプと高吸収性ポリマーを含有し、腹側部、背中側部及び腹側部と背中側部の間のクロッチ部を有し、肌当接面側に位置する上層吸収体と、非肌当接面側に位置する下層吸収体の二層からなり、
前記二層の吸収体の少なくとも前記クロッチ部には、前記吸収体の長手方向に伸びる左右一対の線状の厚さ方向に貫通したスリット部を前記吸収体の幅方向略中央部に二本設け、
前記スリット部の長手方向長さは、前記吸収体の全長に対し18%以上47%以下であり、
前記スリットの幅の合計が前記吸収体の股部幅の7%以上25%以下であり、前記吸収体幅方向中央から前記吸収体の股幅の65%の範囲内に、前記対のスリットが収まっており、前記対のスリットは、前記吸収体の股幅の15%以上の間隔で設けられており、
前記トップシートと前記吸収体との間に、液拡散層シートを設け、前記液拡散層シートは、前記吸収体側表面が起毛した第一の基体不織布と、前記第一の基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された第一の高吸収性ポリマーと、を有した上層液拡散層シートと、
前記トップシート側表面が起毛した第二の基体不織布と、前記第二の基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された第二の高吸収性ポリマーと、を有した下層液拡散層シートとを積層した構成となっており、
前記液拡散層シートは、少なくとも前記スリット部を覆う、ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記液拡散層シートにおける前記基体不織布は、40g/cm 以上150g/cm以下であり、前記第一及び第二の高吸収性ポリマーの坪量が90g/m以上450g/m以下であり、前記第一及び第二の高吸収性ポリマーの150Gでの保水量が30g/g以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体の全長が400mm以上、幅160mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体におけるフラッフパルプの坪量が180g/m以上~360g/ 以下、高吸収ポリマーの坪量が80g/m以上135g/mであることを特徴とする請求項1から3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記スリット部の幅が5mm以上15mm以下であり、長さ100mm以上であることを特徴とする請求項1から4に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。このような吸収性物品には、体液の吸収性の向上、着用者の装着感の向上、漏れ防止等を図るために、様々な工夫がなされている。
【0003】
一方、介護の現場において人手不足が常態化している昨今、十分な交換頻度が確保しにくく、製品長60cm以上の大型パッドの割合が増加している。長時間の装着により複数回の排尿後にもある程度さらさら感が維持されることが望ましい。生活における姿勢の中では座位や横向き寝等紙おむつに高い体圧がかかるシーンがあり、吸収した排尿の水分の戻りが着用者の肌状態悪化の原因となっている。あわせて様々な体勢となる際に、吸収後の膨潤した大型パッドは高い体圧がかかった時に剛性が感じられ、着用者の負担となっている。着用感を保ちながら水分の逆戻りを抑えた尿とりパッドが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-47432号公報
【文献】特開2016-140559号公報
【0005】
特許文献1には、吸液時や外力を受けたときにも凹溝の効果を維持し、吸収スピードを低下させないとともに、装着感の悪化を防止するために、圧搾によることなく凹溝状又はスリット状に形成した吸収体凹部を備え、透液性表面シートの表面側からのエンボスにより、吸収体凹部の内部に吸収体凹部に沿って、吸収体凹部の溝幅より小さなエンボス幅で付与されたエンボス部を設けた吸収性物品が開示されている。
【0006】
特許文献2には、液体の拡散性が高くSAPによって効果的に尿を吸収することを目的に、上層吸収体に上側開口部を設け、下層吸収体に長手方向に延び上側開口部と少なくとも部分的に重なる下側開口部を設け、上層吸収体と下層吸収体の間に、複数の高吸水性ポリマー(SAP)を、少なくとも上側開口部と下側開口部とが重なる開口貫通部分の幅方向の左右両側に形成したSAP層を設けた吸収性物品が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1及び特許文献2では、吸収体にスリットを設けることで、吸収体内での体液の拡散経路を向上させているが、吸収体が二層からなる場合、及び各吸収体にスリットを複数設ける場合、各吸収体における厚さ方向のスリットの配置や、各スリットの幅方向の間隔等を調整しないと、吸収速度等の吸収性能に問題が生じてしまう場合がある。一方で、吸収体にスリットを設けない場合にも、吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤すると、吸収体内で体液が拡散する経路が遮断されてしまうため、吸収速度が遅くなる場合があり、さらに拡散性にも問題が生じてしまう場合がある。
【0008】
そこで、比較的薄型で吸収速度と逆戻りのバランスに優れ、長時間装着用に適した高吸収の大型パッドを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは鋭意検討を行い、液拡散層シートと吸収体2層の構成、位置を高吸収大型パッド向けに適正化し、スリットの位置、長さを付与し以下の要件を満たすパッドにすることで、長時間装着して吸収させた後の剛性を軽減でき、紙おむつへ高い体圧がかかる姿勢をとる際にも、逆戻りせず、ドライ感の高い製品を発明するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、フラッフパルプと高吸収性ポリマーを含有し、腹側部、背中側部及び腹側部と背中側部の間のクロッチ部を有し、肌当接面側に位置する上層吸収体と、非肌当接面側に位置する下層吸収体の二層からなり、
前記2層の吸収体の少なくとも前記クロッチ部には、前記吸収体の長手方向に伸びる左右一対の線状の厚さ方向に貫通したスリット部を前記吸収体の幅方向略中央部に二本設け、
前記スリット部の長手方向長さは、前記吸収体の全長に対し18%以上47%以下であり、
前記スリットの幅の合計が前記吸収体の股部幅の7%以上25%以下であり、前記吸収体幅方向中央から前記吸収体の股幅の65%の範囲内に、前記対のスリットが収まっており、前記対のスリットは、前記吸収体の股幅の15%以上の間隔で設けられており、
前記トップシートと前記吸収体との間に、液拡散層シートを設け、前記液拡散層シートは、前記吸収体側表面が起毛した第一の基体不織布と、前記第一の基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された第一の高吸収性ポリマーと、を有した上層液拡散層シートと、
前記トップシート側表面が起毛した第二の基体不織布と、前記第二の基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された第二の高吸収性ポリマーと、を有した下層液拡散層シートとを積層した構成となっており、
前記液拡散層シートは、少なくとも前記スリット部を覆う、ことを特徴とする吸収性物品。
【0011】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載された吸収性物品であって、
前記液拡散層シートにおける前記基体不織布は、40g/cm以上150g/cm以下であり、前記第1及び第2高吸収性ポリマーの坪量が90g/m以上450g/m以下であり、前記第1及び第2高吸収性ポリマーの150Gでの保水量が30g/g以上であることを特徴とするものである。
【0012】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載された吸収性物品であって、前記吸収体の全長が400mm以上、幅160mm以上であることを特徴とするものである。
【0013】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)に記載された吸収性物品であって、前記吸収体におけるフラッフパルプの坪量が180g/m以上~360g/m以下、高吸収ポリマーの坪量が80g/m以上135g/mであることを特徴とするものである。
【0014】
(5)本発明の第5の態様
前記スリット部の幅が5mm以上15mm以下であり、長さ100mm以上であることを特徴とする請求項1から4に記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0015】
比較的薄型で吸収速度と逆戻りのバランスに優れ、長時間装着用に適した高吸収の大型パッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の吸収性物品の断面図である。
図2】液拡散層シートの断面図である。
図3】本発明の吸収性物品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(トップシート)
トップシート10は、体液が吸収体へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。
【0018】
また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。
【0019】
また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0020】
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート10の坪量は、13g/m以上40g/m以下であることが好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体へと誘導するために必要とされる、吸収体を覆う形状であればよい。
【0021】
(バックシート)
バックシートは、吸収体が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0022】
強度及び加工性の点から、バックシートの坪量は、15g/m以上60g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート21には、通気性を持たせることが好ましい。バックシートに通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシートにエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0023】
なお、図示しないが、バックシートの衣類側表面には、着用時に下着等に吸収性物品を固着するための粘着剤層が設けられていてもよい。また、吸収性物品が粘着剤層を有する場合、粘着剤層を保護するための剥離シートを有していてもよく、この剥離シートは、吸収性物品の包装シートと部分的に接合されていてもよい。
【0024】
(吸収体)
本発明の吸収性物品において、吸収体は、腹側部と、クロッチ部(股部)と、背側部とを有する。また、積層方向では、本発明の吸収体は、肌当接面側に位置する上層吸収体30と、非肌当接面側に位置する下層吸収体40とからなる。
【0025】
吸収体の長手方向の寸法は、400mm以上780mm以下であることが好ましく、420mm以上650mm以下であることがより好ましい。短手方向(幅)は、160mm以上である。
【0026】
吸収体の腹側部の長手方向の寸法は、100mm以上260mm以下であることが好ましく、110mm以上220mm以下であることがより好ましい。また、腹側部における吸収体の幅方向の最長幅の寸法は、160mm以上300mm以下であることが好ましく、160mm以上260mm以下であることがより好ましい。
【0027】
吸収体のクロッチ部の長手方向の寸法は、80mm以上200mm以下であることが好ましく、100mm以上170mm以下であることがより好ましい。また、クロッチ部における吸収体の幅方向の最長幅の寸法は、140mm以上160mm以下であることが好ましい。
【0028】
吸収体の背側部の長手方向の寸法は、200mm以上320mm以下であることが好ましく、210mm以上300mm以下であることがより好ましい。また、背側部における吸収体の幅方向の最長幅の寸法は、200mm以上330mm以下であることが好ましく、220mm以上320mm以下であることがより好ましい。
【0029】
(上層吸収体と下層吸収体)
なお、上記の吸収体の長手方向の各種寸法は、上層吸収体30及び下層吸収体40のそれぞれに対して当てはまる。すなわち、上層吸収体30及び下層吸収体40は、Y方向の長さは同じであってよい。他方、上記の吸収体の幅方向の各種寸法は、上層吸収体30及び下層吸収体40のうちの、上層吸収体30、又は下層吸収体40の一方に対してのみ当てはまる場合がある。この場合、下層吸収体40は、例えば幅方向の寸法が一定であり(Y方向の各位置で同じであり)、例えば上層吸収体30の寸法と同じであってよい。
【0030】
(フラッフパルプ)
フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。前記吸収体におけるフラッフパルプの坪量が180g/m以上~360g/m以下である。
【0031】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。高吸収ポリマーの坪量が80g/m以上135g/mである。
【0032】
(スリット部)
上層吸収体30、及び下層吸収体40のクロッチ部には、図1に示すように、吸収体の長手方向に伸びる左右一対の線状の厚さ方向に貫通した上層スリット35、及び下層スリット45を吸収体の幅方向略中央部に二本設ける。
図3に示すように、前記スリット部の長手方向長さは、前記吸収体の全長に対し18%以上47%以下であり、前記スリットの幅の合計が前記吸収体の股部幅の7%以上25%以下であり、前記吸収体幅方向中央から前記吸収体の股幅の65%の範囲内に、前記対のスリットが収まっており、前記対のスリットは、前記吸収体の股幅の15%以上の間隔で設けられている。前記スリット部の幅は、5mm以上15mm以下であり、長さ100mm以上である。
【0033】
(液拡散層シート)
前記トップシート10と前記吸収体との間に、図1に示すように、液拡散層シート20を設け、前記液拡散層シート20は、図2に示すように、前記吸収体側表面が起毛した第一の基体不織布と、前記第一の基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された第一の高吸収性ポリマーと、を有した上層液拡散層シートと、
前記トップシート10側表面が起毛した第二の基体不織布と、前記第二の基体不織布の起毛した部分の繊維間に固着担持された第二の高吸収性ポリマーと、を有した下層液拡散層シートとを積層した構成となっている。
液拡散層シート20はスリット部35、45を覆うことが好ましい。
【0034】
前記液拡散層シート20における前記基体不織布は、40g/cm以上150g/cm以下である。
【0035】
(第一の高吸収性ポリマー及び第二の高吸収性ポリマー)
第一の高吸収性ポリマー及び第二の高吸収性ポリマーとしては、尿を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。また、第一の高吸収性ポリマー及び第二の高吸収性ポリマーの坪量は、各種の吸収性物品に要求される吸収性能を確保するために、90g/m以上450g/m以下とすることが好ましい。
【0036】
また、前記第1及び第2高吸収性ポリマーの150Gでの保水量が30g/g以上である。
【0037】
(高吸収性ポリマー150g保水量測定法)
60μmメッシュのナイロン製袋にポリマー1gを封入し、0.9%食塩水25℃に1時間浸せきする。浸せき1時間後に水切り15分間を行い、その後遠心脱水機で150Gにて90秒間脱水後の重量を測定する。
【0038】
保水量(g/g)=((ポリマー脱水後のナイロン袋重量)-(ポリマーなしの同操作後のナイロン袋重量))/(ポリマー採取量1g)
【0039】
<逆戻り量の試験>
(a)1000mL注入の逆戻り量(150gf/cmの圧力)
吸収性物品を水平な平滑面に広げた状態で固定し、吸収性物品の中央部に1000mLの0.9%生理食塩水を注入し、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製、No.2 ろ紙、直径55mm)を注入部の中心に置き、ろ紙の上に2944gの錘を乗せて150gf/cmの圧力で、ろ紙を密着させる。この150g/cmの圧力は、座位臀部高圧箇所に相当する。注入完了から10分経過後に錘を載せ、1分経過後に、ろ紙の重量を測定し、試験前後のろ紙の重量差(g)を液戻り量とする。液戻り量の測定は、n=10で測定し、その平均値とする。
【0040】
(b)1000mL注入の逆戻り量(35gf/cmの圧力)
上記の逆戻り量の試験において、150gf/cmの圧力(2944gの錘)の代わりに、35gf/cmの圧力(687gの錘)をかけて、逆戻り量を試験する。この35gf/cmの圧力は、仰臥位臀部平均体圧に相当する。
【0041】
(c)150mL×6回注入の逆戻り量(150gf/cmの圧力)
上記の逆戻り量の試験において、吸収性物品の中央部に150mLの0.9%生理食塩水を10分ごとに6回注入して、6回目の注入から10分経過後、1分間150gf/cmの圧力で、ろ紙を密着させて、そのろ紙の重量変化を測定することで、逆戻り量を試験する。この150gf/cmの圧力は、座位臀部高圧箇所に相当する。
【0042】
逆戻りを抑制するためにSAPを表層側に高密度に配置するのが有効であるが、SAPが膨潤することで吸収性物品の剛性が高まり自由な体勢変換が妨げられ、うっ血や褥瘡などの肌状態の悪化に繋がる恐れがあった。やわらかさのある本願の構成の液拡散層シート20と適正な位置のスリット採用することで膨潤後の屈曲性低下を抑えた吸収性物品が得られる。また高体圧下では吸収性物品からの逆戻りが増加し、特にスリットからの液戻りが顕著になる傾向があるが、液拡散層シート20でスリットを覆うことで高体圧下での逆戻りを有効に低減でき、総合的に装着感とドライ性の良好な吸収性物品を得ることができる。
【実施例
【0043】
下表に示したスリット形状、液拡散層シート20構成の実施例、比較例を作成しモニター評価を行った。
【0044】
【表1】

【0045】
本願の吸収性物品であるパッドをテープ止めのインナーとして、日常的に紙おむつを着用するパネラー10名に一晩(10時間)着用してもらい、排尿吸収後の体勢変換時の剛性(体勢変換のしやすさ)とドライ性の良否について回答を得た。
○:「吸収後の体勢変換に紙おむつが妨げにならなかった」「体勢を変えた際も濡れ感を感じなかった」が8人以上10人以下のとき
△:「吸収後の体勢変換に紙おむつが妨げにならなかった」「体勢を変えた際も濡れ感を感じなかった」が5人以上7人以下のとき
×:「吸収後の体勢変換に紙おむつが妨げにならなかった」「体勢を変えた際も濡れ感を感じなかった」がいないか4人以下のとき
【0046】
(実施例の効果)
・モニター評価結果:10時間経過後の濡れ感、体勢変換のしやすさ(剛性の抑制)のいずれも良好であった。
・前記吸収性物品の中央部に1000mLの0.9%生理食塩水を注入して10分経過後、1分間150gf/cmの圧力で密着させて測定したろ紙への逆戻り量が3g以下であった。
・前記吸収性物品の中央部に1000mLの0.9%生理食塩水を注入して20分経過後、1分間35gf/cmの圧力でろ紙を密着させて測定したろ紙への逆戻り量が略0gであった。
・前記吸収性物品の中央部に150mLの0.9%生理食塩水を10分ごとに6回注入して、6回目の注入から10分経過後、1分間150gf/cmの圧力でろ紙を密着させて測定したろ紙への逆戻り量が12g以下であった。
【符号の説明】
【0047】
10 トップシート
20 液拡散層シート
30 上層吸収体
35 上層スリット
40 下層吸収体
45 下層スリット
AL 吸収体長
L1 液拡散シート幅
L2 液拡散シート長
SD スリット間隔
SL スリット長
SW スリット幅
図1
図2
図3