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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20230522BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 300C
B60C11/12 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019145301
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021024472
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 哲二
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-354011(JP,A)
【文献】特開2006-151173(JP,A)
【文献】特開2018-134914(JP,A)
【文献】特開2014-218159(JP,A)
【文献】特開2018-149978(JP,A)
【文献】特開2008-120351(JP,A)
【文献】特開2010-083303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0225030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝によって区画され、複数の角部を有するブロックを備え、
前記ブロックは、所定の角部のタイヤ径方向の外側部を前記溝の基準面から凹ませる角凹部と、前記角凹部のタイヤ径方向の内側に配置され、ブロックの外方へ突出する角凸部と、を備え、
前記角凸部は、前記溝の基準面から突出し、
前記ブロックは、前記所定の角部に隣接されるブロック端面に連接されるブロック凹部を備え、
前記溝は、タイヤ周方向に延びる主溝を備え、
前記所定の角部は、前記主溝に面しており、
前記ブロック凹部は、前記主溝に面するブロック端面に連接される、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記角凹部の端面は、前記ブロックの表面から、前記ブロックのタイヤ径方向の中心よりもタイヤ径方向の内側の位置まで延びる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
タイヤ径方向視において、前記角凸部の端縁長さは、前記角凹部の端縁長さよりも、長い、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記角凸部のタイヤ径方向の寸法は、全域に亘って、一定である、請求項1~の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ブロック凹部は、前記角凸部と離れている、請求項1~4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ブロック凹部は、ブロック溝又はサイプである、請求項1~5の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、空気入りタイヤは、溝によって区画されるブロックを複数備えている(例えば、特許文献1及び2)。そして、ブロックは、複数の角部を備えている。ところで、ブロックが、例えば、悪路面(例えば、泥濘地、岩場)から衝撃を受けた際に、ブロックの角部を損傷する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-134914号公報
【文献】特開2018-149978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、課題は、ブロックの角部が損傷することを抑制することができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
空気入りタイヤは、溝によって区画され、複数の角部を有するブロックを備え、前記ブロックは、所定の角部をタイヤ径方向に亘って前記溝の基準面から凹ませる角凹部と、前記角凹部のタイヤ径方向の内側からブロックの外方へ突出する角凸部と、を備え、前記角凸部は、前記溝の基準面から突出する。
【0006】
また、空気入りタイヤにおいては、前記ブロックは、前記所定の角部に隣接されるブロック端面に連接されるブロック凹部を備える、という構成でもよい。
【0007】
また、空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる主溝を備え、前記所定の角部は、前記主溝に面しており、前記ブロック凹部は、前記主溝に面するブロック端面に連接される、という構成でもよい。
【0008】
また、空気入りタイヤにおいては、前記角凹部の端面は、前記ブロックの表面から、前記ブロックのタイヤ径方向の中心よりもタイヤ径方向の内側の位置まで延びる、という構成でもよい。
【0009】
また、空気入りタイヤにおいては、タイヤ径方向視において、前記角凸部の端縁長さは、前記角凹部の端縁長さよりも、長い、という構成でもよい。
【0010】
また、空気入りタイヤにおいては、前記角凸部のタイヤ径方向の寸法は、全域に亘って、一定である、という構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
図2図2は、同実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部展開図である。
図3図3は、図2のIII領域拡大図である。
図4図4は、図3のIV領域拡大図である。
図5図5は、図3のV領域拡大図である。
図6図6は、図4のVI-VI線拡大断面図である。
図7図7は、図5のVII-VII線拡大断面図である。
図8図8は、他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部拡大展開図である。
図9図9は、さらに他の実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ径方向に沿って切断した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1図7を参照しながら説明する。なお、各図(図8及び図9も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0013】
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向D3である。
【0014】
タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面であって、タイヤ赤道面S1と直交する面のことである。また、タイヤ赤道線とは、タイヤ1のタイヤ径方向D2の外表面(後述する、トレッド面2a)とタイヤ赤道面S1とが交差する線のことである。
【0015】
タイヤ幅方向D1において、内側は、タイヤ赤道面S1に近い側となり、外側は、タイヤ赤道面S1から遠い側となる。また、タイヤ径方向D2において、内側は、タイヤ回転軸に近い側となり、外側は、タイヤ回転軸から遠い側となる。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、ビードを有する一対のビード部1aと、各ビード部1aからタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部1bと、一対のサイドウォール部1bのタイヤ径方向D2の外端部に連接され、タイヤ径方向D2の外表面が路面に接地するトレッド部1cとを備えている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤ1であって、リム(図示していない)に装着される。
【0017】
また、タイヤ1は、一対のビードの間に架け渡されるカーカス層1dと、カーカス層1dの内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナー層1eとを備えている。カーカス層1d及びインナーライナー層1eは、ビード部1a、サイドウォール部1b及びトレッド部1cに亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0018】
トレッド部1cは、路面に接地するトレッド面2aを有するトレッドゴム2と、トレッドゴム2とカーカス層1dとの間に配置されるベルト層1fとを備えている。トレッド面2aは、実際に路面に接地する接地面を有しており、当該接地面のうち、タイヤ幅方向D1の外側端は、接地端2b,2bという。
【0019】
図1及び図2に示すように、トレッドゴム2は、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝2c,2cを備えている。主溝2cは、タイヤ周方向D3の全長に亘って連続して延びている。そして、主溝2cは、タイヤ周方向D3に沿ってジグザグ状に延びている、という構成である。なお、主溝2cは、タイヤ周方向D3に対して平行に延びている、という構成でもよい。
【0020】
主溝2cは、特に限定されないが、例えば、摩耗するにしたがって露出することで摩耗度合が分かるように、溝を浅くしてある部分、所謂、トレッドウエアインジケータ(図示していない)を備えている、という構成でもよい。また、主溝2cの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、主溝2cの数は、二つである。
【0021】
また、主溝2cは、特に限定されないが、例えば、接地端2b,2b間の距離(タイヤ幅方向D1の寸法)の3%以上の溝幅を有している、という構成でもよい。また、主溝2cは、特に限定されないが、例えば、5mm以上の溝幅を有している、という構成でもよい。
【0022】
トレッドゴム2は、主溝2c,2c及び接地端2b,2bによって区画される複数の陸部2d,2eを備えている。複数の陸部2d,2eにおいては、主溝2cと接地端2bとによって区画されて且つタイヤ幅方向D1の最も外側に配置される陸部2dは、ショルダー陸部2dといい、隣接される主溝2c,2c同士によって区画されて且つ一対のショルダー陸部2d,2d間に配置される陸部2eは、ミドル陸部2eという。
【0023】
なお、ミドル陸部2eのうち、タイヤ赤道面S1と交差する陸部2eは、センター陸部2eという。即ち、センター陸部2eを区画する一対の主溝2c,2cは、それぞれタイヤ赤道面S1からタイヤ幅方向D1に離れて配置されている。また、陸部2d,2eの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、主溝2cの数が二つであるため、陸部2d,2eの数は、三つであり、ミドル陸部2eの数は、一つである。
【0024】
図2に示すように、陸部2d,2eは、タイヤ幅方向D1及びタイヤ周方向D3の少なくとも一方に延びる陸溝2fを複数備えている。これにより、陸部2d,2eは、溝2c,2fによって区画されるブロック3,4を複数備えている。そして、複数のブロック3,4は、タイヤ周方向D3に並列されている。なお、陸溝2fは、特に限定されないが、例えば、2mm以上の溝幅を有している、という構成でもよい。
【0025】
ミドル陸部2eは、複数の陸溝2fによって区画されるブロック4と、主溝2cと複数の陸溝2fとによって区画されるブロック4とを備えている。ショルダー陸部2dは、主溝2cと複数の陸溝2fとによって区画されるブロック3を備えている。
【0026】
なお、陸部2d,2eは、タイヤ周方向D3に連続するリブ形状であって、ブロック3,4を備えていない、という構成でもよい。即ち、少なくとも一つの陸部2d,2eは、陸溝2fがタイヤ周方向D3で分断することによって、タイヤ周方向D3に並列されるブロック3,4を有するブロック形状であればよい。
【0027】
ここで、ショルダー陸部2dのブロック3の構成について、図3図7を参照しながら説明する。なお、ショルダー陸部2dの複数のブロック3は、異なる形状である複数の種類のブロック3を備えており、以下、ショルダー陸部2dの複数のブロック3のうち、特定のブロック3の構成について説明する。
【0028】
図3に示すように、ブロック3は、主溝2cと複数の陸溝2f,2fとによって区画されている。また、ブロック3は、複数の角部3a~3dを備えている。そして、複数の角部3a~3dのうち、第1及び第2角部3a,3bは、主溝2cに面している。なお、角部3a~3dの個数は、特に、限定されないが、例えば、本実施形態においては、角部3a~3dは、四つ備えられている。
【0029】
ところで、例えば、悪路面(例えば、泥濘地、岩場)を走行する際に、ブロック3が、石、岩等から衝撃を受けた場合には、ブロック3の角部3a~3dが損傷し易い。そこで、ブロック3は、第1及び第2角部3a,3bをタイヤ径方向D2に亘って溝2c,2fの基準面(以下、「溝基準面」ともいう)2g,2hから凹ませる角凹部5を備えている。
【0030】
しかも、複数の溝2c,2fのうち、幅広な主溝2cの周りが強い衝撃を受け易いこと対して、角凹部5は、主溝2cに面する第1及び第2角部3a,3bに配置されている。これにより、ブロック3の角部3a~3d、特に、第1及び第2角部3a,3bが損傷することを抑制することができる。
【0031】
一方、第1及び第2角部3a,3bの剛性が角凹部5によって低下することに対して、ブロック3は、角凹部5のタイヤ径方向D2の内側からブロック3の外方へ突出する角凸部6を備えている。これにより、角凸部6が、角凹部5を有する第1及び第2角部3a,3bを補強するため、第1及び第2角部3a,3bの剛性が低下することを抑制することができる。
【0032】
しかも、角凸部6は、角部3a,3bの溝基準面2gから突出している。具体的には、角凸部6は、主溝2cの溝基準面2gから突出している。これにより、強い衝撃を受け易い主溝2cに対して、溝底の剛性を高めることができる。したがって、例えば、主溝2cに石が噛み込んだ際に、主溝2cの溝底が損傷することを抑制することができる。
【0033】
なお、図3図4図5及び図8も同様)において、溝基準面2g,2hは、破線で示されている。そして、ブロック3は、ブロック端面3e~3hを備えており、溝基準面2g,2hは、ブロック端面3e~3gの延長仮想面(タイヤ径方向D2視においては、ブロック端縁の延長仮想線)で定義される。
【0034】
また、ブロック3は、角部3a~3d間に、ブロック端面3e~3gを含むブロック外周部3i~3kを備えている。そして、角凹部5が第1及び第2角部3a,3bに設けられることによって、第1及び第2角部3a,3bに隣接されるブロック外周部3i,3jは、溝2c,2fに向けて、凸状になる。したがって、当該ブロック外周部3i,3jが衝撃を受け易くなる。
【0035】
そこで、ブロック3は、当該ブロック外周部3iのブロック端面3eに連接されるブロック凹部7を備えている。具体的には、ブロック3は、主溝2cに面するブロック端面3eに連接されるブロック凹部7を備えている。これにより、主溝2cに面する凸状のブロック外周部3iの剛性を低くすることができるため、当該ブロック外周部3iが損傷することを抑制することができる。
【0036】
なお、例えば、ブロック凹部7,8のうち、幅が1.6mm以上であるブロック凹部7,8は、ブロック溝といい、幅が1.6mm未満であるブロック凹部7、8は、サイプという。本実施形態においては、ブロック凹部7,8は、サイプとしているが、ブロック溝としてもよい。また、ブロック3に備えられるブロック凹部7,8の個数は、特に限定されないが、本実施形態においては、三つとしている。
【0037】
また、図4及び図5に示すように、角凹部5は、複数の端面5a,5bを備えており、角凸部6は、複数の端面6a~6cを備えている。そして、角凸部6が、溝基準面2gから突出しているため、角凸部6の端面6a~6cによるエッジ成分を十分に確保することができている。しかも、タイヤ径方向D2視において、角凸部6の端面6a~6cの端縁長さW2は、角凹部5の端面5a,5bの端縁長さW1よりも、長くなっている。
【0038】
これにより、角凸部6によるエッジ成分の長さを長くすることができるため、角凸部6によるエッジ成分の機能を十分に発揮させることができる。なお、タイヤ径方向D2視において、角凹部5の端縁長さW1は、角凹部5の端面5a,5bの端縁長さW1a,W1bの総和であり、角凸部6の端縁長さW2は、角凸部6の端面6a~6cの端縁長さW2a~W2cの総和である。
【0039】
また、タイヤ径方向D2視において、角凸部6の角部6d,6eは、鈍角となっている。これにより、角凸部6の角部6d,6eの剛性が低下することを抑制することができる。しかも、図6及び図7に示すように、角凸部6のタイヤ径方向D2の寸法(高さ)は、全域に亘って、一定(同じだけでなく、略同じも含む)である。これにより、角凸部6における剛性のバラツキが発生すること抑制することができるため、角凸部6のそれぞれのエッジ成分の機能を十分に発揮させることができる。
【0040】
また、角凹部5も、端面5a,5bによって、エッジ成分を形成している。そして、角凹部5の端面5a,5bは、ブロック3のタイヤ径方向D2の外表面3mから、ブロック3のタイヤ径方向D2の中心よりもタイヤ径方向D2の内側の位置まで延びている。具体的には、角凹部5の端面5a,5bのタイヤ径方向D2の寸法W3は、角凸部6の端面6a~6cのタイヤ径方向D2の寸法W4よりも、大きくなっている。
【0041】
これにより、角凹部5の端面5a,5bの深さ(タイヤ径方向D2の寸法)W3を確保することができるため、角凹部5によるエッジ成分の機能を発揮させることができる。なお、図6及び図7においては、破線は、ブロック3のタイヤ径方向D2の内側端の位置、即ち、溝2c,2fの溝底の位置を示しており、二点鎖線は、ブロック3のタイヤ径方向D2の中心を示している。
【0042】
このように、本実施形態に係るタイヤ1においては、角凸部6のエッジ成分の機能を十分に発揮させることができると共に、角凹部5によるエッジ成分の機能を十分に発揮させることができる。したがって、角凹部5及び角凸部6のエッジ成分によって、悪路面及び雪上路面に対するタイヤ性能を向上させることができる。
【0043】
なお、ショルダー陸部2dのうち、特定のブロック3の構成について、図3図7を参照しながら説明したが、図2に戻り、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ショルダー陸部2dのうち、異なる形状であるブロック3も、角部に角凹部5及び角凸部6を備えている、という構成である。即ち、本実施形態においては、ショルダー陸部2dのブロック3の全ては、角部に角凹部5及び角凸部6を備えている、という構成である。
【0044】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、溝2c,2fによって区画され、複数の角部3a~3dを有するブロック3を備え、前記ブロック3は、所定の角部3a,3bをタイヤ径方向D2に亘って前記溝2c,2fの基準面2g,2hから凹ませる角凹部5と、前記角凹部5のタイヤ径方向D2の内側からブロック3の外方へ突出する角凸部6と、を備え、前記角凸部6は、前記溝2cの基準面2gから突出する。
【0045】
斯かる構成によれば、角凹部5は、所定の角部3a,3bをタイヤ径方向D2に亘って溝2c,2fの基準面2g,2hから凹ませている。これにより、ブロック3の角部3a,3bが損傷することを抑制することができる。しかも、角凹部5によって、エッジ成分が形成される。
【0046】
また、角凸部6は、角凹部5のタイヤ径方向D2の内側から、ブロック3の外方へ、突出している。これにより、所定の角部3a,3bの剛性が低下することを抑制することができる。しかも、角凸部6が、溝2cの基準面2gから突出しているため、溝2cの底部の剛性を高めることができる。さらに、角凸部6のエッジ成分を十分に確保することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記ブロック3は、前記所定の角部3a,3bに隣接されるブロック端面3eに連接されるブロック凹部7を備える、という構成である。
【0048】
斯かる構成によれば、所定の角部3a,3bに隣接されるブロック端面3e~3gを含む、ブロック外周部3i,3jが、角凹部5によって、溝2c,2fに向けて凸状になることに対して、ブロック凹部7は、所定の角部3a,3bに隣接されるブロック端面3eに連接されている。これにより、当該ブロック端面3eを含むブロック外周部3iの剛性を低くすることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向D3に延びる主溝2cを備え、前記所定の角部3a,3bは、前記主溝2cに面しており、前記ブロック凹部7は、前記主溝2cに面するブロック端面3eに連接される、という構成である。
【0050】
斯かる構成によれば、複数の溝2c,2fのうち、主溝2cの周りが強い衝撃を受け易いことに対して、角凹部5は、主溝2cに面する所定の角部3a,3bに配置されている。これにより、ブロック3の角部3a,3bが損傷することを効果的に抑制することができる。
【0051】
しかも、ブロック凹部7が、主溝2cに面するブロック端面3eに連接されているため、所定の角部3a,3bに隣接され且つ主溝2cに面するブロック外周部3iの剛性を低くすることができる。これにより、当該ブロック外周部3iが損傷することを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記角凹部5の端面5a,5bは、前記ブロック3の表面3mから、前記ブロック3のタイヤ径方向D2の中心よりもタイヤ径方向D2の内側の位置まで延びる、という構成である。
【0053】
斯かる構成によれば、角凹部5の端面5a,5bが、ブロック3の表面3mから、ブロック3のタイヤ径方向D2の中心よりもタイヤ径方向D2の内側の位置まで延びているため、角凹部5の端面5a,5bの深さ(タイヤ径方向D2の寸法)を確保することができる。これにより、角凹部5によるエッジ成分の機能を発揮させることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、タイヤ径方向D2視において、前記角凸部6の端縁長さW2は、前記角凹部5の端縁長さW1よりも、長い、という構成である。
【0055】
斯かる構成によれば、タイヤ径方向D2視において、角凸部6の端縁長さW2が、角凹部5の端縁長さW1よりも、長いため、角凸部6によるエッジ成分の長さを長くすることができる。これにより、角凸部6によるエッジ成分の機能を十分に発揮させることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記角凸部6のタイヤ径方向D2の寸法は、全域に亘って、一定である、という構成である。
【0057】
斯かる構成によれば、角凸部6のタイヤ径方向D2の寸法が、全域に亘って、一定であるため、角凸部6における剛性のバラツキが発生すること抑制することができる。これにより、例えば、角凸部6のそれぞれのエッジ成分の機能を十分に発揮させることができる。
【0058】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0059】
(1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、角凸部6は、一方の溝2cの基準面2gから突出する、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、図8に示すように、角凸部6は、両方の溝2c,2fの基準面2g,2hから突出する、という構成でもよい。
【0060】
(2)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、角凸部6は、主溝2cの基準面2gから突出する、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、角凸部6は、陸溝2fの基準面2hから突出する、という構成でもよい。
【0061】
(3)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、角凸部6のタイヤ径方向D2の寸法は、全域に亘って、一定である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、角凸部6のタイヤ径方向D2の寸法は、溝2c,2fへ向けて、小さくなる、という構成でもよい。
【0062】
また、例えば、図9に示すように、角凸部6のタイヤ径方向D2の寸法は、領域ごとに、異なっている、という構成でもよい。図9に係る角凸部6は、凹凸状(例えば、段差状)に形成されている。斯かる構成によれば、角凸部6のエッジ成分を多くすることができる。
【0063】
(4)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ブロック3は、二つの角部3a,3bに、角凹部5及び角凸部6を備えている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、ブロック3は、一つ又は三つ以上の角部3a,3bに、角凹部5及び角凸部6を備えている、という構成でもよい。
【0064】
(5)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ブロック3は、所定の角部3a,3bに隣接される所定のブロック端面3eに連接される一つのブロック凹部7を備えている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。
【0065】
例えば、ブロック3は、所定の角部3a,3bに隣接される全てのブロック端面3e~3gにそれぞれ連接される複数のブロック凹部7を備えている、という構成でもよい。また、例えば、ブロック3は、所定の角部3a,3bに隣接される所定のブロック端面3eに連接される複数のブロック凹部7を備えている、という構成でもよい。また、例えば、ブロック3は、ブロック凹部7,8を備えていない、という構成でもよい。
【0066】
(6)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ブロック凹部7は、主溝2cに面するブロック端面3eに連接されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。
【0067】
例えば、ブロック凹部7は、陸溝2fに面するブロック端面3f,3gに連接されている、という構成でもよい。また、例えば、少なくとも一つのブロック凹部7は、主溝2cに面するブロック端面3eに連接されていると共に、少なくとも一つのブロック凹部7は、陸溝2fに面するブロック端面3f,3gに連接されている、という構成でもよい。
【0068】
(7)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、角凹部5の端面5a,5bは、ブロック3の表面3mから、ブロック3のタイヤ径方向D2の中心よりもタイヤ径方向D2の内側の位置まで延びている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。
【0069】
例えば、角凹部5の端面5a,5bは、ブロック3の表面3mから、ブロック3のタイヤ径方向D2の中心よりもタイヤ径方向D2の外側の位置まで延びている、という構成でもよい。また、例えば、角凹部5の端面5a,5bのタイヤ径方向D2の寸法W3は、角凸部6の端面6a~6cのタイヤ径方向D2の寸法W4よりも、小さい、という構成でもよい。
【0070】
また、例えば、角凹部5の端面5a,5bは、ブロック3の表面3mから、ブロック3のタイヤ径方向D2の中心の位置まで延びている、という構成でもよい。そして、例えば、角凹部5の端面5a,5bのタイヤ径方向D2の寸法W3は、角凸部6の端面6a~6cのタイヤ径方向D2の寸法W4と、同じ、という構成でもよい。
【0071】
(8)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、タイヤ径方向D2視において、角凸部6の端縁長さW2は、角凹部5の端縁長さW1よりも、長い、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、タイヤ径方向D2視において、角凸部6の端縁長さW2は、角凹部5の端縁長さW1よりも、短い、という構成でもよい。また、例えば、タイヤ径方向D2視において、角凸部6の端縁長さW2は、角凹部5の端縁長さW1と、同じ、という構成でもよい。
【0072】
(9)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、タイヤ径方向D2視において、角凸部6の全ての角部6d,6eは、鈍角となっている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、タイヤ径方向D2視において、角凸部6の少なくとも一つの角部6d,6eは、鋭角となっている、という構成でもよい。
【0073】
(10)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、角部3a,3bに角凹部5及び角凸部6を有するブロック3は、ショルダー陸部2dの全てのブロック3である、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。
【0074】
例えば、角部3a,3bに角凹部5及び角凸部6を有するブロック3は、ショルダー陸部2dの一部のブロック3である、という構成でもよい。また、例えば、角部3a,3bに角凹部5及び角凸部6を有するブロック3は、ミドル陸部2eのブロックである、という構成でもよい。
【0075】
(11)また、空気入りタイヤ1が使用される路面は、特に限定されない。空気入りタイヤ1は、例えば、雪上路面を走行する際に使用されてもよく、また、例えば、悪路面(例えば、泥濘地、岩場)を走行する際に使用されてもよく、例えば、ドライ路面を走行する際に使用されてもよく、また、例えば、ウエット路面を走行する際に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…空気入りタイヤ、1a…ビード部、1b…サイドウォール部、1c…トレッド部、1d…カーカス層、1e…インナーライナー層、1f…ベルト層、2…トレッドゴム、2a…トレッド面、2b…接地端、2c…主溝、2d…ショルダー陸部、2e…ミドル陸部(センター陸部)、2f…陸溝、2g…溝基準面、2h…溝基準面、3…ブロック、3a…第1角部、3b…第2角部、3c…第3角部、3d…第4角部、3e~3h…ブロック端面、3i~3k…ブロック外周部、3m…表面、4…ブロック、5…角凹部、5a,5b…端面、6…角凸部、6a~6c…端面、6d,6e…角部、7,8…ブロック凹部、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、S1…タイヤ赤道面
図1
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図9