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特許7282642封止部材、電極、鉛蓄電池及び電極製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】封止部材、電極、鉛蓄電池及び電極製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20230522BHJP
   H01M 4/76 20060101ALI20230522BHJP
   H01M 4/75 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/76 A
H01M4/75 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019169767
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021048047
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】竹内 久喜
【審査官】式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103348(JP,A)
【文献】特開昭59-029362(JP,A)
【文献】実公昭36-023425(JP,Y1)
【文献】実公昭34-018337(JP,Y1)
【文献】特開昭63-232267(JP,A)
【文献】特開平03-149749(JP,A)
【文献】特開2002-334694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/76
H01M 4/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体と、前記筒状体に挿入された棒状の集電体と、前記筒状体の内部に充填され活物質を含む電極材と、を備えた電極において、前記筒状体の端部を封止する封止部材であって、
少なくとも一部が前記筒状体の端部に挿入され、前記集電体を保持する本体部と、
前記筒状体の軸方向に沿って突出するように前記本体部に少なくとも3つ設けられ、前記筒状体の内部に配置される突出片と、を備え、
前記突出片は、前記軸方向における前記本体部の端から前記軸方向に突き出ており、
前記本体部の端から前記突出片が突き出た長さは、4mmよりも長い、封止部材。
【請求項2】
前記集電体の外周面には、凸部が設けられており、
前記突出片の先端は、前記軸方向において前記凸部よりも前記本体部側に位置する、請求項1に記載の封止部材。
【請求項3】
前記凸部は、押出しピン痕である、請求項2に記載の封止部材。
【請求項4】
前記突出片は、前記筒状体の軸中心側における側面である内側傾斜面と、前記筒状体の軸中心側と反対側の側面である外側傾斜面と、を有し、
前記軸方向に対する前記内側傾斜面の傾斜角度は、前記軸方向に対する前記外側傾斜面の傾斜角度よりも大きい、請求項1~3の何れか一項に記載の封止部材。
【請求項5】
前記本体部は、有底筒状を呈し、
前記本体部の開口側は、前記筒状体に嵌め込まれ、
前記本体部の筒孔には、前記集電体が挿入されて保持され、
前記本体部の開口側の外側面は、当該開口側に進むに連れて狭径するように傾斜する傾斜面である本体傾斜面を有し、
前記突出片は、前記本体傾斜面に設けられている、請求項1~4の何れか一項に記載の封止部材。
【請求項6】
前記突出片は、前記軸方向から見て、前記本体部における前記軸方向回りで等間隔の複数位置に設けられている、請求項1~5の何れか一項に記載の封止部材。
【請求項7】
所定方向に沿って並ぶ複数の前記筒状体の端部を封止する部材であって、
前記本体部は、複数の前記筒状体に対応して複数設けられ、
複数の前記本体部を前記所定方向に沿って並列させた状態で連結する連結部を更に備える、請求項1~6の何れか一項に記載の封止部材。
【請求項8】
筒状体と、前記筒状体に挿入された棒状の集電体と、前記筒状体の内部に充填され活物質を含む電極材と、請求項1~7の何れか一項に記載の封止部材と、を備える、電極。
【請求項9】
請求項8に記載の電極を備える、鉛蓄電池。
【請求項10】
請求項8に記載の電極を製造する方法であって、
前記筒状体の端部に対して前記突出片の先端側から当該突出片の一部を挿入し、前記筒状体と前記封止部材との間に前記筒状体の内部へ通じる隙間が形成された状態とする一時挿入工程と、
前記一時挿入工程の後、前記筒状体の内部に前記隙間を介して前記電極材を充填する充填工程と、
前記充填工程の後、前記筒状体の端部に対して前記本体部の少なくとも一部を挿入し、前記筒状体の端部を閉塞する閉塞工程と、を備える、電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止部材、電極、鉛蓄電池及び電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、産業用又は民生用の二次電池として広く用いられており、特に、電気車用鉛蓄電池(いわゆるバッテリー)、又は、UPS(Uninterruptible Power Supply)、防災(非常)無線、電話等のバックアップ用鉛蓄電池の需要が多い。
【0003】
鉛蓄電池の電極は、例えば、筒状体、筒状体に挿入された棒状の芯金(集電体)、及び、筒状体の内部に充填された鉛粉(電極材)を備えている。下記特許文献1には、ガラス繊維又は合成繊維を主成分とする織布チューブを筒状体として備えた電極が記載されている。下記特許文献1に記載された電極では、織布チューブの開口部が樹脂で密閉されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-203506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した電極では、集電体が挿入された筒状体の内部に電極材が充填され、筒状体の端部に封止部材が挿入され、封止部材によって筒状体の端部が封止される場合がある。この場合、筒状体の端部に封止部材を挿入する際、例えば集電体の位置がずれないように集電体をガイドすることが望まれる。またこの場合、充填された電極材が飛び散る又は意図しない箇所に付着し、筒状体と封止部材とを位置合わせし難くなり、当該位置合わせの精度が低下してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、筒状体に封止部材を挿入する際に集電体をガイドすることができ、且つ、筒状体と封止部材との精度よい位置合わせを実現することが可能な封止部材、電極、鉛蓄電池及び電極製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る封止部材の一側面は、筒状体と、筒状体に挿入された棒状の集電体と、筒状体の内部に充填され活物質を含む電極材と、を備えた電極において、筒状体の端部を封止する封止部材であって、少なくとも一部が筒状体の端部に挿入され、集電体を保持する本体部と、筒状体の軸方向に沿って突出するように本体部に少なくとも3つ設けられ、筒状体の内部に配置される突出片と、を備え、突出片は、軸方向における本体部の端から軸方向に突き出ており、本体部の端から突出片が突き出た長さは、4mmよりも長い。
【0008】
この封止部材では、筒状体に封止部材を挿入する際、少なくとも3つの突出片の間でもって集電体を位置決めしてガイドすることができる。また、突出片は、軸方向における本体部の端から軸方向に突き出ており、本体部の端から突出片が突き出た長さ(以下、「突出長」ともいう)は、4mmよりも長い。よって、例えば次のように、筒状体と封止部材とを位置合わせした状態で筒状体の内部に電極材を充填することを実現できる。すなわち、筒状体の端部に対して突出片の先端側から当該突出片の一部を挿入して、筒状体と封止部材との位置合わせをし、この位置合わせした状態において、筒状体と封止部材との間に筒状体の内部へ通じる隙間を形成することができる。当該隙間を介して、電極材を充填することができる。これにより、筒状体に電極材を充填した後に封止部材を挿入する場合に比べて、充填した電極材が飛び散ったり意図しない箇所に付着したとしても、それが筒状体と封止部材との位置合わせの精度へ及ぶ悪影響を低減することができる。したがって、筒状体と封止部材との精度よい位置合わせを実現することが可能となる。
【0009】
本発明に係る封止部材の一側面では、集電体の外周面には、凸部が設けられており、突出片の先端は、軸方向において凸部よりも本体部側に位置していてもよい。本発明に係る封止部材の一側面では、凸部は、押出しピン痕であってもよい。これにより、突出片の突出長が長すぎることを防止することができる。
【0010】
本発明に係る封止部材の一側面では、突出片は、筒状体の軸中心側における側面である内側傾斜面と、筒状体の軸中心側と反対側の側面である外側傾斜面と、を有し、軸方向に対する内側傾斜面の傾斜角度は、軸方向に対する外側傾斜面の傾斜角度よりも大きくてもよい。これにより、筒状体に封止部材を挿入する際、突出片の内側傾斜面を利用して、集電体を効果的にガイドすることができる。また、突出片の外側傾斜面を利用して、筒状体への封止部材の当該挿入を効果的にガイドすることができる。
【0011】
本発明に係る封止部材の一側面では、本体部は、有底筒状を呈し、本体部の開口側は、筒状体に嵌め込まれ、本体部の筒孔には、集電体が挿入されて保持され、本体部の開口側の外側面は、当該開口側に進むに連れて狭径するように傾斜する傾斜面である本体傾斜面を有し、突出片は、本体傾斜面に設けられていてもよい。このような構成により、封止部材を具体的に実現できる。
【0012】
本発明に係る封止部材の一側面では、突出片は、軸方向から見て、本体部における軸方向回りで等間隔の複数位置に設けられていてもよい。この場合、少なくとも3つの突出片の間でもって集電体を位置決めしてガイドする上記作用を効果的に発揮することが可能となる。
【0013】
本発明に係る封止部材の一側面は、所定方向に沿って並ぶ複数の筒状体の端部を封止する部材であって、本体部は、複数の筒状体に対応して複数設けられ、複数の本体部を所定方向に沿って並列させた状態で連結する連結部を更に備えていてもよい。この場合、複数の筒状体の端部を封止部材により一挙に封止することが可能となる。
【0014】
本発明に係る電極の一側面は、筒状体と、筒状体に挿入された棒状の集電体と、筒状体の内部に充填され活物質を含む電極材と、上記封止部材と、を備える。この電極においても、上記封止部材を備えることから、筒状体に封止部材を挿入する際に集電体をガイドすることができ、且つ、筒状体と封止部材との精度よい位置合わせを実現することが可能となる。
【0015】
本発明に係る鉛蓄電池の一側面は、上記電極を備える。この鉛蓄電池においても、上記封止部材を備えることから、筒状体に封止部材を挿入する際に集電体をガイドすることができ、且つ、筒状体と封止部材との精度よい位置合わせを実現することが可能となる。
【0016】
本発明に係る電極製造方法の一側面は、上記電極を製造する方法であって、筒状体の端部に対して突出片の先端側から当該突出片の一部を挿入し、筒状体と封止部材との間に筒状体の内部へ通じる隙間が形成された状態とする一時挿入工程と、一時挿入工程の後、筒状体の内部に隙間を介して電極材を充填する充填工程と、充填工程の後、筒状体の端部に対して本体部の少なくとも一部を挿入し、筒状体の端部を閉塞する閉塞工程と、を備える。
【0017】
この電極製造方法では、筒状体に封止部材を挿入する際、少なくとも3つの突出片の間でもって集電体を位置決めしてガイドすることができる。また、一時挿入工程により、筒状体の端部に対して突出片の先端側から当該突出片の一部を挿入して、筒状体と封止部材との位置合わせができる。この状態において、充填工程により、筒状体と封止部材との間の筒状体の内部へ通じる隙間を介して、電極材を充填することができる。これにより、筒状体に電極材を充填した後に封止部材を挿入する場合に比べて、充填した電極材が飛び散ったり意図しない箇所に付着したとしても、それが筒状体と封止部材との位置合わせの精度へ及ぶ悪影響を低減することができる。したがって、筒状体と封止部材との精度よい位置合わせを実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、筒状体に封止部材を挿入する際に集電体をガイドすることができ、且つ、筒状体と封止部材との精度よい位置合わせを実現することが可能な封止部材、電極、鉛蓄電池及び電極製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係る鉛蓄電池を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う一部断面図である。
図3図3は、図1の正極を示す斜視図である。
図4図4は、図1の下部連座を示す正面図である。
図5図5は、図1の下部連座の一部を示す斜視図である。
図6図6は、図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図7図7は、図1の正極における下部連座側の端部を示す断面図である。
図8図8(a)は、実施形態に係る電極製造方法を説明する図である。図8(b)は、図8(a)の続きを示す図である。図8(c)は、図8(b)の続きを示す図である。
図9図9(a)は、図8(c)の続きを示す図である。図9(b)は、図9(a)の続きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図面において、同一又は相当の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0021】
図1は、鉛蓄電池を模式的に示す断面図である。図2は、図1のII-II線に沿う一部断面図である。図3は、正極を示す斜視図である。図1では、図面の手前側から奥側にかけて、セパレータを介して正極及び負極が交互に配置されている。図1では、正極の一部を断面化して示している。図2は、鉛蓄電池を上方から見た際の正極、負極及びセパレータの積層構造を示している。なお、「上」及び「下」の語は、電槽の高さ方向の上方及び下方に対応する(以下、同じ)。
【0022】
図1及び図2に示されるように、実施形態に係る鉛蓄電池100は、電極群110と、電極群110を収容する電槽120と、電極群110に接続された連結部材130a,130bと、連結部材130a,130bに接続された極柱140a,140bと、電槽120の注液口を閉塞する液口栓150と、電槽120に接続された支持部材160と、を備える。
【0023】
電極群110は、複数の正極10と、複数の負極20と、複数のセパレータ30とを備える。正極10及び負極20は、セパレータ30を介して交互に配置されている。セパレータ30間における正極10の周囲の空間には、電解液40が充填されている。セパレータ30の材料としては、正極10と負極20との電気的な接続を阻止し、電解液40を透過させる材料であれば特に限定されない。セパレータ30の材料としては、微多孔性ポリエチレン、ガラス繊維及び合成樹脂の混合物等が挙げられる。
【0024】
正極10は、例えば、板状の電極である(図3参照)。正極10は、複数の筒状体12aと、複数の芯金(集電体)14と、正極材(電極材)16と、下部連座(封止部材)1と、上部連座12cと、耳部12dと、を有する。
【0025】
複数の筒状体12aは、筒状体12aの軸方向(以下、単に「軸方向」ともいう)に直交する所定方向に沿って、隣接して一列に並設されている。複数の筒状体12aは、活物質保持用チューブ(クラッドチューブ)群を構成する。活物質保持用チューブ群は、いわゆる「ガントレット」とも称される。筒状体12aは、電槽120の高さ方向に延びている。複数の筒状体12aが並設した構造は、互いに別体である筒状体12aにより得てもよいし、互いに対向する基材間に複数の貫通孔を形成することにより得てもよい。隣接する筒状体12a間には、縫目(縫合部)等の接続部が配置されていてもよい。
【0026】
筒状体12aにおける軸方向に垂直な断面の形状は、円形、楕円形、角丸四角形等であってよい。筒状体12aの長さは、例えば160~400mmである。筒状体12aの直径は、例えば5mm以上であってもよい。筒状体12aの直径は、例えば12mm以下であってもよい。筒状体12aの厚さは、例えば100μm以上であってもよい。筒状体12aの厚さは、例えば2000μm以下であってもよい。筒状体12aの断面が非円形の場合には、筒状体12aの直径は、例えば当該断面の外縁に内接する内接円の直径であってもよい。
【0027】
筒状体12aは、多孔質体で形成されている。筒状体12aは、例えば、織布、不織布等の基材で形成されていてもよい。基材の材料としては、耐酸性を有する材料を用いることができる。基材の材料としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂、ガラス繊維、炭化ケイ素、アルミナ等の無機材料が挙げられる。筒状体12aは、サイクル特性を向上させやすい観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィンを含むことがより好ましい。
【0028】
筒状体12aでは、基材上に樹脂が保持されていてもよい。樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。樹脂は、基材の内表面上若しくは外表面上、又は、基材における細孔内の表面上に保持されていてもよく、基材上に付着していてもよい。樹脂は、基材上の一部に保持されていてもよく、基材上の全部に保持されていてもよい。
【0029】
芯金14は、各筒状体12aに挿入されている。芯金14は、棒状を呈する。芯金14は、筒状体12aの内部において筒状体12aの軸方向に沿って延びている。芯金14は、例えば、鋳造(加圧鋳造法)により得ることができる。芯金14の構成材料としては、導電性材料であればよく、例えば、鉛-カルシウム-錫系合金、鉛-アンチモン-ヒ素系合金等の鉛合金が挙げられる。鉛合金は、セレン、銀、ビスマス等を含んでいてもよい。芯金14における軸方向(長手方向)に垂直な断面の形状は、円形、楕円形等であってよい。芯金14の長さは、例えば170~400mmである。芯金14の直径は、例えば2.0~4.0mmである。
【0030】
正極材16は、筒状体12aの内部に充填されている。正極材16は、活物質を含む。活物質には、化成後の活物質及び化成前の活物質の原料の双方が包含される。ここでの正極材16は、化成後の活物質を含有している。化成後の正極材16は、例えば、正極活物質の原料を含む未化成の正極材16を化成することで得ることができる。化成後の正極材16は、例えば、正極活物質の原料を含む正極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成の正極材16を得た後に未化成の正極材16を化成することで得ることができる。正極活物質の原料としては、鉛粉、鉛丹等が挙げられる。化成後の正極材16における正極活物質としては、二酸化鉛等が挙げられる。正極材16は、必要に応じて添加剤を更に含有していてもよい。正極材16の添加剤としては、補強用短繊維等が挙げられる。補強用短繊維としては、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)等が挙げられる。
【0031】
筒状体12a、芯金14及び正極材16は、筒状電極(棒状電極)を構成する。正極10の筒状電極は、上部連座12c、耳部12d及び連結部材130aを介して極柱140aに電気的に接続されている。
【0032】
下部連座1は、筒状体12aにおける電槽120の底部側の端部(筒状体12aの一端側の末端部分)である下端部に取り付けられている。下部連座1は、筒状体12aの下端部を封止する。下部連座1の材料としては、耐酸性を有する材料を用いることができる。下部連座1の材料としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が挙げられる。下部連座1は、サイクル特性を向上させやすい観点から、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィンを含むことがより好ましく、ポリプロピレンを含むことが更に好ましい。サイクル特性を向上させやすい観点から、筒状体12aがポリオレフィンを含む場合において下部連座1がこれらの材料を含むことが好ましい。下部連座1は、筒状体12aと同一の材料で形成されていてもよく、筒状体12aと異なる材料で形成されていてもよい。
【0033】
上部連座12cは、筒状体12aにおける電槽120の頂部側の端部(筒状体12aの他端側の末端部分)である上端部に取り付けられている。上部連座12cは、筒状体12aの上端部を封止する。下部連座1及び上部連座12cは、筒状体12aと、筒状体12a内に配置された芯金14及び正極材16と、に接する。下部連座1及び上部連座12cは、筒状体12aと芯金14と正極材16とを保持する。耳部12dの一端は、上部連座12cに接続されている。耳部12dの他端は、連結部材130aに接続されている。
【0034】
負極20は、例えば板状の電極である。負極20は、例えばペースト式負極板である。負極20は、連結部材130bを介して極柱140bに電気的に接続されている。負極20は、負極集電体と、当該負極集電体に保持された電極材である負極材と、を有する。負極集電体としては、板状の集電体を用いることができる。負極集電体と正極10の芯金14との組成は、互いに同一であってよく、互いに異なっていてもよい。負極材は、活物質を含む。ここでの負極材は、化成後の活物質を含有している。
【0035】
化成後の負極材は、例えば、負極活物質の原料を含む未化成の負極材を化成することで得ることができる。化成後の負極材は、例えば、負極活物質の原料を含む負極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成の負極材を得た後に未化成の負極材を化成することで得ることができる。負極活物質の原料としては、鉛粉等が挙げられる。化成後の負極材における負極活物質としては、多孔質の海綿状鉛(Spongy Lead)等が挙げられる。負極材は、必要に応じて添加剤を更に含有することができる。負極材の添加剤としては、硫酸バリウム、補強用短繊維、炭素材料(炭素質導電材)、スルホン基及びスルホン酸塩基からなる群より選択される少なくとも一種を有する樹脂(スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂)等が挙げられる。補強用短繊維としては、正極材と同様の補強用短繊維を用いることができる。
【0036】
炭素材料としては、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック(ケッチェンブラック(登録商標)等)、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂としては、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、フェノール類とアミノアリールスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物等が挙げられる。リグニンスルホン酸塩としては、リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。フェノール類としては、ビスフェノール等のビスフェノール系化合物などが挙げられる。アミノアリールスルホン酸としては、アミノベンゼンスルホン酸、アミノナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0037】
支持部材160は、電槽120に接続されていると共に下部連座1を支持する。支持部材160は、筒状体12aの軸方向(長手方向。例えば電槽の高さ方向)に延びる複数の突起部160aを有する。突起部160aは、下部連座1に当接して固定されている(図1参照)。すなわち、支持部材160は、下部連座1における電槽120の底面側の部分を各突起部160aによって支持している。支持部材160は、正極10に接していればよく、負極20に接していなくてよい。
【0038】
次に、下部連座1について具体的に説明する。
【0039】
図4は、下部連座1を示す正面図である。図5は、下部連座1の一部を示す斜視図である。図6は、図4のVI-VI線に沿う断面図である。図7は、正極10における下部連座1側の端部を示す断面図である。図4図7の何れかに示されるように、下部連座1は、所定方向に沿って並ぶ複数の筒状体12aの端部を封止する部材である。下部連座1は、複数の筒状体12aの端部に嵌合する。下部連座1は、複数の本体部2と、複数の本体部2のそれぞれに設けられた突出片3と、複数の本体部2を連結する連結部4と、を備える。
【0040】
本体部2は、その一部が筒状体12aの下端部に挿入されると共に、芯金14を保持する部位である。本体部2は、上方に開口する有底円筒状を呈する。本体部2は、上側に位置する小径部2xと、小径部2xよりも大径で且つ下側に位置する大径部2yと、を含む。小径部2xは、本体部2の開口側の部分であって、筒状体12aの下端部に嵌め込まれる第1部分である。小径部2xの開口側の外側面は、当該開口側(上側)に進むに連れて縮径するように傾斜する本体傾斜面TPを有する。大径部2yは、筒状体12aの下端面が当接する部分であって、筒状体12aの下端部よりも下側に位置する第2部分である。本体部2の筒孔2hには、芯金14の端部が挿入されて嵌合されている。これにより、芯金14が筒孔2hに保持される。本体部2は、複数の筒状体12aに対応して複数設けられている。複数の本体部2は、所定方向に沿って並列されている。
【0041】
突出片3は、各本体部2の本体傾斜面TPに、軸方向に沿って突出するように少なくとも3つずつ設けられている。ここでの突出片3は、上方から見て、各本体部2の本体傾斜面TPにおける軸方向回りで四等配の位置(等間隔の複数位置)に設けられている。突出片3は、本体部2の径方向に沿って延び且つ軸方向に沿って延びる板状を呈する。突出片3は、筒状体12aの内部に配置されている(図7参照)。
【0042】
突出片3の上端部は、上方に尖る尖部を構成する。突出片3の尖部は、筒状体12aの軸中心側(つまり、径方向内側)における側面である内側傾斜面3aと、筒状体12aの軸中心側と反対側(つまり、径方向外側)における側面である外側傾斜面3bと、を有する。軸方向に対する内側傾斜面3aの傾斜角度αは、軸方向に対する外側傾斜面3bの傾斜角度βよりも大きい。突出片3は、軸方向における本体部2の端から軸方向に突き出ている。図示する例では、軸方向における本体部2の端は、本体部2の小径部2xの上縁Uである。軸方向における本体部2の端は、本体部2の形状によって特に限定されず、本体部2の最も上側の位置であればよい。
【0043】
突出片3が本体部2の端から突き出た長さである突出長Lは、4mmよりも長い。突出長Lは、軸方向における本体部2の長さよりも長い。突出長Lは、小径部2xの長さよりも長い。突出長Lは、上縁Uから突出片3の先端までの軸方向の長さである。突出長Lは、複数の突出片3の長さが異なる場合には、それらのうちの最も上方へ突き出た何れかについての、軸方向における本体部2の端から突き出た長さである。突出長Lは、6mm以上であってもよい。突出長Lは、8mm以上であってもよい。突出長Lは、5mm以上であってもよい。
【0044】
図7に示されるように、芯金14の外周面には、凸部14aが設けられている。凸部14aは、押出しピン痕である。押出しピン痕は、芯金14の製造時に押出しピンが当たる部位である。凸部14aは、軸方向における芯金14の中心と下端との間に位置し、具体的には、軸方向における芯金14の中心と下端との中間よりも下端側に位置する。突出片3の先端は、このような凸部14aよりも軸方向において本体部2側に位置している。図4及び図5に戻り、連結部4は、複数の本体部2を所定方向に沿って並列させた状態で連結する。連結部4は、隣接する本体部2の大径部2yを連結する。連結部4は、所定方向に沿って延在する。
【0045】
次に、鉛蓄電池100の製造方法について説明する。
【0046】
鉛蓄電池100の製造方法は、例えば、正極10を製造する電極製造方法(電極製造工程)と、正極10等を含む各構成部材を組み立てて鉛蓄電池100を得る組立て方法(組立て工程)と、を少なくとも備える。
【0047】
電極製造方法は、筒状体12aを形成する筒状体形成工程と、筒状体12aの下端部を下部連座1により封止する封止工程と、を含む。筒状体形成工程では、例えば、まず、シート状の2枚の基材を用意する。これらの基材を互いに対向配置させた後、略等間隔をおいて配置された互いに略平行な複数の直線状の接続部(例えば縫合部)によって一の基材と他の基材とを接続する。隣接する接続部間において、基材間を筒状に形成して複数の貫通孔を得る。これにより、互いに並設された複数の筒状体12aを有する活物質保持用チューブ群が得られる。
【0048】
隣接する接続部間において、基材間に貫通孔を形成して筒状体12aを得る方法としては、基材間に棒状体を挿入して成形する方法、樹脂を含有する液を基材に含浸させた後の乾燥時に基材間を膨張させる方法等が挙げられる。筒状体12aの基材上に樹脂を保持させる場合、例えば、樹脂を含有する液(例えば、樹脂を水に分散させたエマルジョン)を筒状体12aに含浸させた後、例えば60~130℃で1~3時間乾燥させることができる。
【0049】
封止工程では、例えば自動充填装置により自動で、筒状体12aの内部に鉛粉等の正極材16を充填すると共に、筒状体12aの下端部を下部連座1により封止する。具体的には、まず、図8(a)に示されるように、内部に芯金14を挿入した筒状体12aを、その下端部が鉛直方向の上側に位置した状態で保持する。当該芯金14の端部は、筒状体12aの下端部から規定長だけ突出させた状態とする。
【0050】
図8(b)に示されるように、筒状体12aの下端部に対して突出片3の先端側から当該突出片3の一部を挿入する。このとき、4つの突出片3の外側傾斜面3bによって本体部2が筒状体12aへ挿入可能にガイドされる。また、4つの突出片3の内側傾斜面3a及びこれらで囲まれた空間によって、芯金14がセンター位置(本体部2の軸位置)に位置するようにガイドされる。その結果、図8(c)に示されるように、筒状体12aと下部連座1とが位置合わせされ且つ外れ難くされると共に、これらの両者の間に筒状体12aの内部へ通じる隙間GPが形成された状態となる(一時挿入工程)。隙間GPは、筒状体12aの内部に正極材16を注入するための空間である。
【0051】
図9(a)に示されるように、筒状体12aの鉛直方向の上方から正極材16を落としながら(供給しながら)、筒状体12aを含む全体を振動させ、筒状体12aの内部に隙間GPを介して正極材16を充填する(充填工程)。最後に、図9(b)に示されるように、本体部2を打ち込み、本体部2を筒状体12aに挿入して嵌め込み、筒状体12aの下端部を閉塞する(閉塞工程)。以上により、封止工程が完了する。
【0052】
組立て方法では、例えば、セパレータ30を介して未化成の正極10及び未化成の負極20を積層すると共に、同極性の電極の集電部をストラップで溶接させて電極群110を得る。電極群110を電槽120内に配置して未化成の電池を作製する。未化成の電池に希硫酸を入れて直流電流を通電して電槽化成する。化成後の硫酸の比重を適切な比重に調整することにより鉛蓄電池100を得る。硫酸の比重(化成前)は、例えば1.100~1.260である。化成条件及び硫酸の比重は、電極のサイズに応じて調整することができる。また、化成処理は、組立て方法の後に実施されることに限られず、電極製造方法にて実施されてもよい(タンク化成)。
【0053】
以上、本実施形態に係る下部連座1では、筒状体12aに下部連座1を挿入する際、少なくとも3つ(本実施形態では4つ)の突出片3の間でもって、芯金14を位置決めしてガイドすることができる。芯金14をセンター位置に位置させることができ、電池性能を向上することが可能となる。また、突出片3は、本体部2の上縁Uから軸方向に突き出ており、その突出長Lは、4mmよりも長い。よって、筒状体12aと下部連座1とを位置合わせし且つ外れ難くした状態で、筒状体12aの内部に正極材16を充填することができる。すなわち、上述したように、筒状体12aの端部に対して突出片3の先端側から当該突出片3の一部を挿入することで、筒状体12aと下部連座1とを位置合わせし且つ外れ難くした状態にして隙間GPを形成し、当該隙間GPを介して正極材16を充填することができる。
【0054】
その結果、筒状体12aに正極材16を充填した後に下部連座1を挿入する場合に比べて、充填した正極材16が飛び散ったり意図しない箇所に付着したとしても、それが筒状体12aと下部連座1との位置合わせの精度へ及ぶ悪影響を低減することができる。筒状体12aと下部連座1との精度よい位置合わせを実現することが可能となる。自動充填装置等による正極材16の自動充填を容易に行うことが可能となる。
【0055】
下部連座1では、芯金14の外周面には、押出しピン痕としての凸部14aが設けられており、突出片3の先端は、軸方向において凸部14aよりも本体部2側に位置している。
これにより、突出片3が凸部14aを越えてまで突出することがなく、突出片3の突出長Lが長すぎることを防止することができる。突出片3の突出長Lの上限を凸部14aで規制することができる。突出片3が長すぎて筒状体12aの内部における正極材16の充填量が少なくなってしまうこと、及び、突出片3が長すぎて筒状体12aに下部連座1を挿入し難くなること、を回避することが可能となる。また、芯金14における凸部14aよりも端側、つまり、芯金14の凸部14aが設けられていない端部を少なくとも3つの突出片3の間でガイドすることができるため、芯金14を位置決めしてガイドする上記作用を効果的に発揮することが可能となる。
【0056】
下部連座1では、突出片3は、内側傾斜面3a及び外側傾斜面3bを有し、内側傾斜面3aの傾斜角度αは、外側傾斜面3bの傾斜角度βよりも大きい。これにより、筒状体12aに下部連座1を挿入する際、突出片3の内側傾斜面3aを利用して、芯金14を効果的にガイドすることができる。また、突出片3の外側傾斜面3bを利用して、筒状体12aへの下部連座1の当該挿入を効果的にガイドすることができる。
【0057】
下部連座1では、本体部2は、有底筒状を呈する。本体部2の開口側は、筒状体12aに嵌め込まれる。本体部2の筒孔には、芯金14が挿入されて保持される。本体部2の開口側の外側面は、当該開口側に進むに連れて狭径するように傾斜する傾斜面である本体傾斜面TPを有する。突出片3は、本体傾斜面TPに設けられている。このような構成により、筒状体12aに挿入するに際して芯金14をガイドしながら筒状体12aとの精度よい位置合わせを実現する下部連座1を、具体的に実現できる。
【0058】
下部連座1では、突出片3は、軸方向から見て、本体部2における軸方向回りで等間隔の複数位置に設けられている。これにより、少なくとも3つの突出片3の間でもって芯金14を位置決めしてガイドする上記作用を効果的に発揮することが可能となる。
【0059】
下部連座1では、本体部2は、複数の筒状体12aに対応して複数設けられている。下部連座1は、複数の本体部2を所定方向に沿って並列させた状態で連結する連結部4を更に備える。これにより、複数の筒状体12aの端部を一挙に封止することが可能となる。
【0060】
本実施形態に係る正極10は、筒状体12aと、筒状体12aに挿入された棒状の芯金14と、筒状体12aの内部に充填され活物質を含む正極材16と、下部連座1と、を備える。正極10においても、下部連座1を備えることから、筒状体12aに下部連座1を挿入する際に芯金14をガイドすることができ、且つ、筒状体12aと下部連座1との精度よい位置合わせを実現することが可能となる。
【0061】
本実施形態に係る鉛蓄電池100は、正極10を備える。鉛蓄電池100においても、下部連座1を備えることから、筒状体12aに下部連座1を挿入する際に芯金14をガイドすることができ、且つ、筒状体12aと下部連座1との精度よい位置合わせを実現することが可能となる。
【0062】
本実施形態に係る電極製造方法では、筒状体12aに下部連座1を挿入する際、少なくとも3つの突出片3の間でもって芯金14を位置決めしてガイドすることができる。また、一時挿入工程により、筒状体12aの端部に対して突出片3の先端側から当該突出片3の一部を挿入して、筒状体12aと下部連座1とを位置合わせして外れ難くすることができる。この状態において、充填工程により隙間GPを介して正極材16を充填することができる。これにより、筒状体12aに正極材16を充填した後に下部連座1を挿入する場合に比べて、充填した正極材16が飛び散ったり意図しない箇所に付着したとしても、それが筒状体12aと下部連座1との位置合わせの精度へ及ぶ悪影響を低減することができる。筒状体12aと下部連座1との精度よい位置合わせを実現することが可能となる。自動充填装置等による正極材16の自動充填を容易に行うことが可能となる。
【0063】
ここで、上述した電極製造方法で製造した正極10についての、突出長Lの長さと正極材16の充填性との関係に関する評価試験を行った。評価試験では、突出長Lの長さが3mmの下部連座に係る比較例1、突出長Lの長さが4mmの下部連座に係る比較例2、突出長Lの長さが6mmの下部連座に係る実施例1、及び、突出長Lの長さが8mmの下部連座に係る実施例2を用いた。
【0064】
突出長Lの長さが3mmの比較例1では、筒状体12aの内部に十分に正極材16を注入することが困難であり、正極材16の充填が不十分(充填性が不可)となった。突出長Lの長さが4mmの比較例2では、筒状体12aの内部に十分に正極材16を注入することが困難であり、正極材16の充填が不十分となった。一方、突出長Lの長さが6mmの実施例1では、筒状体12aの内部に十分に正極材16を注入することができ、正極材16の充填が十分(充填性が可)となった。突出長Lの長さが8mmの実施例2では、筒状体12aの内部に十分に正極材16を注入することができ、正極材16の充填が十分となった。
【0065】
以上の結果より、突出長Lの長さが4mmよりも長い場合には、筒状体12aの内部に十分に正極材16を注入することができ、正極材16の充填が十分となることがわかる。突出長Lの長さが4mm以下の場合には、正極材16の充填が不十分となることがわかる。その理由の一つとしては、一時挿入工程における隙間GPが不十分であることが考えられる。なお、突出長Lの長さが4mm以下の場合、一時挿入工程において、筒状体12aと下部連座1との位置合わせが困難になる可能性も生じ得る。突出長Lの長さが4mm以下の場合、一時挿入工程において、筒状体12aと下部連座1との外れ難さが不十分となる可能性も生じ得る。突出長Lの長さが4mm以下の場合、突出片3による芯金14のガイド性及び本体部2を筒状体12aに挿入する挿入性も不十分となる可能性も生じ得る。
【0066】
以上、実施形態について説明したが、本発明の一態様は上記実施形態に限定されない。
【0067】
上記実施形態において、封止部材としての下部連座1は、複数の本体部2を備えているが、この構成に限定されない。封止部材は、本体部2を一つのみ備えていてもよい。本体部2を一つのみ備えた封止部材を用いて複数の筒状体12aの端部を封止する場合、当該封止部材を筒状体12aの数だけ用意し、複数の当該封止部材のそれぞれによって複数の筒状体12aの端部のそれぞれを封止してもよい。
【0068】
上記実施形態では、突出片3の上端部の形状を尖形としたが、突出片3の上端部は先が丸い曲面形状であってもよい。この場合、成形性を高めることができる。上記における各数値は、例えば製造上等の一般的な誤差の分、変動してもよい。
【0069】
本発明の一態様に係る封止部材、電極及び鉛蓄電池は、電気車に用いることができる。本発明の一態様に係る電気車は、鉛蓄電池100を備える。電気車としては、フォークリフト、ゴルフカート等が挙げられる。
【符号の説明】
【0070】
1…下部連座(封止部材)、2…本体部、2h…筒孔、3…突出片、3a…内側傾斜面、3b…外側傾斜面、4…連結部、10…正極(電極)、12a…筒状体、14…芯金(集電体)、14a…凸部、16…正極材(電極材)、100…鉛蓄電池、GP…隙間、TP…本体傾斜面、α,β…傾斜角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9