(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20230522BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20230522BHJP
B29C 45/06 20060101ALI20230522BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20230522BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/76
B29C45/06
B22D17/22 A
B22D17/32 Z
(21)【出願番号】P 2019197812
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樽家 宏治
(72)【発明者】
【氏名】中田 匡英
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-138683(JP,A)
【文献】特開平2-165922(JP,A)
【文献】特開2013-082138(JP,A)
【文献】特開昭61-206554(JP,A)
【文献】特開2013-056530(JP,A)
【文献】特開2008-284778(JP,A)
【文献】特開2008-229903(JP,A)
【文献】特開2016-043655(JP,A)
【文献】特開2002-172646(JP,A)
【文献】国際公開第2008/104878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B22D 15/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の開閉及び型締を行う型締装置と、型締された前記金型のキャビティ内に成形材料を射出する射出装置と、前記型締装置に対して前記金型を搬出入する金型搬出入装置と、前記型締装置、前記射出装置、及び前記金型搬出入装置を制御する制御装置とを備えた成形機において、
前記型締装置は、
現上側金型を支持する可動ダイプレートと、
複数の現下側金型を支持して回転する第1ロータリーテーブルと、
前記現上側金型及び前記複数の現下側金型の1つを開閉する開閉機構とを備え、
前記金型搬出入装置は、
型閉された新上側金型及び新下側金型である新金型、及び前記新上側金型と型閉されていない単独の新下側金型を支持する第2ロータリーテーブルと、
前記第1ロータリーテーブル及び前記第2ロータリーテーブルの間で金型を移動させるコンベアとを備え、
前記制御装置は、
前記開閉機構に型閉させた前記現上側金型及び前記現下側金型である現金型を、前記コンベアに前記第1ロータリーテーブルから搬出させ、且つ前記第2ロータリーテーブルに支持された前記単独の新下側金型を、前記コンベアに前記第1ロータリーテーブルへ搬入させる第1交換処理と、
前記現上側金型と型閉されていない単独の前記現下側金型を、前記コンベアに前記第1ロータリーテーブルから搬出させ、且つ前記第2ロータリーテーブルに支持された前記新金型を、前記コンベアに前記第1ロータリーテーブルへ搬入させる第2交換処理とを実行することを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第2交換処理を実行した後に、前記新金型を構成する前記新上側金型を前記可動ダイプレートの所定位置に位置決めし、前記新金型を構成する前記新下側金型を前記第1ロータリーテーブルの所定位置に位置決めする第1位置決め処理を実行し、
前記第1交換処理及び前記第1位置決め処理を実行した後に、前記第1ロータリーテーブルを回転させて前記単独の新下側金型を前記新上側金型に対面させ、対面する前記新上側金型及び前記新下側金型を前記開閉機構に型閉させて、前記単独の新下側金型を前記第1ロータリーテーブルの所定位置に位置決めする第2位置決め処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1交換処理を実行した後に、前記第2交換処理を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の成形機。
【請求項4】
前記第2ロータリーテーブルは、前記新金型を支持する第1位置と、前記単独の新下側金型を支持する第2位置と、前記第1ロータリーテーブルから搬出される前記現金型を受け入れる第3位置とを含み、
前記金型搬出入装置は、前記第1位置の上側金型及び下側金型、前記第2位置の下側金型、及び前記第3位置の上側金型及び下側金型それぞれに着脱可能で、金型と成形機とを接続する複数のオートカプラ装置を備え、
前記制御装置は、
前記第1交換処理において、前記第1ロータリーテーブルから前記第3位置へ前記現金型を搬出し、且つ前記第2位置の前記単独の新下側金型を前記第1ロータリーテーブルに搬入し、
前記第2交換処理において、前記第1ロータリーテーブルから前記第2位置へ前記単独の現下側金型を搬出し、且つ前記第1位置の前記新金型を前記第1ロータリーテーブルに搬入することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料を金型内に射出して成形品を成形する成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の下側金型を搭載したロータリーテーブルを間欠回転させることで、複数の下側金型を交番的に上側金型と対向する位置に停止させるようにした成形機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような成形機に異なる下側金型を装着すれば、異なる成形品を並行して成形することができる。また、同一の下側金型を装着すれば、一方の下側金型から成形品を取り出している間に、他方の下側金型で成形品を成形することができるので、成形サイクルを短縮することができる。
【0004】
また、成形品の種類を切り替えるタイミング、或いはメンテナンスのタイミングで金型を交換するために、金型搬出入装置を備える成形機が知られている。金型搬出入装置は、古い金型の搬出と、新しい金型の搬入とを交互に行うことによって、成形機のロータリーテーブルに搭載された複数の金型を総入れ替えすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金型を総入れ替えする処理の効率は、成形機のスループットに大きく影響する。しかしながら、ロータリーテーブルの回転方向の制約、或いは金型搬出入装置に搭載されたオートカプラ装置の数の制約などに起因して、従来の成形機では、金型を総入れ替えする処理の効率が高いとは言い難い。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の下側金型を搭載した成形機において、金型を総入れ替えする処理の効率を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、金型の開閉及び型締を行う型締装置と、型締された前記金型のキャビティ内に成形材料を射出する射出装置と、前記型締装置に対して前記金型を搬出入する金型搬出入装置と、前記型締装置、前記射出装置、及び前記金型搬出入装置を制御する制御装置とを備えた成形機において、前記型締装置は、現上側金型を支持する可動ダイプレートと、複数の現下側金型を支持して回転する第1ロータリーテーブルと、前記現上側金型及び前記複数の現下側金型の1つを開閉する開閉機構とを備え、前記金型搬出入装置は、型閉された新上側金型及び新下側金型である新金型、及び前記新上側金型と型閉されていない単独の新下側金型を支持する第2ロータリーテーブルと、前記第1ロータリーテーブル及び前記第2ロータリーテーブルの間で金型を移動させるコンベアとを備え、前記制御装置は、前記開閉機構に型閉させた前記現上側金型及び前記現下側金型である現金型を、前記コンベアに前記第1ロータリーテーブルから搬出させ、且つ前記第2ロータリーテーブルに支持された前記単独の新下側金型を、前記コンベアに前記第1ロータリーテーブルへ搬入させる第1交換処理と、前記現上側金型と型閉されていない単独の前記現下側金型を、前記コンベアに前記第1ロータリーテーブルから搬出させ、且つ前記第2ロータリーテーブルに支持された前記新金型を、前記コンベアに前記第1ロータリーテーブルへ搬入させる第2交換処理とを実行する。
【0009】
上記構成によれば、上側金型に着脱されるオートカプラ装置の数が少ないという制約、或いは第1ロータリーテーブルの回転方向の制約がある成形機において、金型を総入れ替えする処理の効率が向上する。
【0010】
また、前記制御装置は、前記第2交換処理を実行した後に、前記新金型を構成する前記新上側金型を前記可動ダイプレートの所定位置に位置決めし、前記新金型を構成する前記新下側金型を前記第1ロータリーテーブルの所定位置に位置決めする第1位置決め処理を実行し、前記第1交換処理及び前記第1位置決め処理を実行した後に、前記第1ロータリーテーブルを回転させて前記単独の新下側金型を前記新上側金型に対面させ、対面する前記新上側金型及び前記新下側金型を前記開閉機構に型閉させて、前記単独の新下側金型を前記第1ロータリーテーブルの所定位置に位置決めする第2位置決め処理を実行することを特徴としてもよい。
【0011】
上記構成によれば、総入れ替え後の金型を適切に位置決めできるので、スムーズに射出成形処理を開始することができる。また、新上側金型及び新下側金型を第1ロータリーテーブルに搬入した後に、金型と成形機とを接続するオートカプラ装置が装着できなくなることを防止できる。
【0012】
例えば、前記制御装置は、前記第1交換処理を実行した後に、前記第2交換処理を実行することを特徴としてもよい。
【0013】
一例として、前記第2ロータリーテーブルは、前記新金型を支持する第1位置と、前記単独の新下側金型を支持する第2位置と、前記第1ロータリーテーブルから搬出される前記現金型を受け入れる第3位置とを含み、前記金型搬出入装置は、前記第1位置の上側金型及び下側金型、前記第2位置の下側金型、及び前記第3位置の上側金型及び下側金型それぞれに着脱可能で、金型と成形機とを接続する複数のオートカプラ装置を備え、前記制御装置は、前記第1交換処理において、前記第1ロータリーテーブルから前記第3位置へ前記現金型を搬出し、且つ前記第2位置の前記単独の新下側金型を前記第1ロータリーテーブルに搬入し、前記第2交換処理において、前記第1ロータリーテーブルから前記第2位置へ前記単独の現下側金型を搬出し、且つ前記第1位置の前記新金型を前記第1ロータリーテーブルに搬入することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、例えば、上側金型に着脱されるオートカプラ装置の数が少ないという制約、或いは第1ロータリーテーブルの回転方向の制約がある成形機において、金型を総入れ替えする処理の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る射出成形機の側面図である。
【
図3】ロータリーテーブル及び金型搬出入装置の概略平面図である。
【
図6】第1交換処理におけるロータリーテーブルの状態遷移図である。
【
図7】第2交換処理におけるロータリーテーブルの状態遷移図である。
【
図8】第1及び第2位置決め処理におけるロータリーテーブルの状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る射出成形機10を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【0017】
図1は、本実施形態に係る射出成形機10の側面図である。
図2は、金型11周辺の拡大図である。
図3は、ロータリーテーブル(第1ロータリーテーブル)22及び金型搬出入装置40の概略平面図である。
図4は、射出成形機10のハードウェア構成図である。
【0018】
射出成形機10は、金型11内に可塑化樹脂(成形材料)を射出して、射出成形品(成形品)を成形する成形機である。
図1~
図4に示すように、射出成形機10は、型締装置20と、射出装置30と、金型搬出入装置40と、制御装置50とを主に備える。
【0019】
図1及び
図2に示すように、射出成形機10に搭載される金型11は、上側金型12と、複数の下側金型13a、13b(以下、これらを総称して、「下側金型13」と表記する。)とで構成される。
図2(B)に示すように、上側金型12と、複数の下側金型13a、13bのうちの1つとが組み合わされることによって、金型11の内部にキャビティ14が形成される。そして、キャビティ14内に可塑化樹脂が射出されることによって、射出成形品が成形される。
【0020】
型締装置20は、金型11の開閉及び型締を行う。
図1、
図2、及び
図4に示すように、型締装置20は、上側金型12を支持する可動ダイプレート21と、複数の下側金型13a、13bを支持するロータリーテーブル22と、テーブル回転モータ23と、開閉モータ(開閉機構)24と、複数のオートカプラ装置26、27と、温調装置28とを主に備える。
【0021】
可動ダイプレート21は、下面で上側金型12を支持する。
図2(C)に示すように、可動ダイプレート21の下面には、複数の位置決め突起21aが形成されている。一方、上側金型12の上面には、位置決め突起21aを受け入れる複数の位置決め凹部12aが形成されている。そして、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、位置決め突起21aが位置決め凹部12aに挿入されると、上側金型12が可動ダイプレート21の所定位置に位置決めされる。
【0022】
なお、位置決め突起21aは、先細り形状であるのが望ましい。これにより、位置決め前の上側金型12が所定位置からずれていたとしても、位置決め突起21aが位置決め凹部12aに進入する過程で、上側金型12を所定位置に移動させることができる。
【0023】
また、可動ダイプレート21は、上側金型12を固定するマグクランプ(電磁石)を備える。すなわち、後述する制御装置50がマグクランプに電圧を印加すると、上側金型12が可動ダイプレート21の下面に固定される。一方、制御装置50がマグクランプに対する電圧の印加を停止すると、可動ダイプレート21に対する上側金型12の固定が解除される。
【0024】
ロータリーテーブル22は、可動ダイプレート21(換言すれば、上側金型12)の下方に配置されている。ロータリーテーブル22は、周方向に離間した所定位置において、複数の下側金型13a、13bを支持する。より詳細には、複数の下側金型13a、13bは、ロータリーテーブル22の上面に等間隔(すなわち、180°間隔)に配置される。
【0025】
また、ロータリーテーブル22は、下側金型13を固定するマグクランプ(電磁石)を備える。すなわち、後述する制御装置50がマグクランプに電圧を印加すると、下側金型13がロータリーテーブル22上の所定位置に固定される。一方、制御装置50がマグクランプに対する電圧の印加を停止すると、ロータリーテーブル22に対する下側金型13の固定が解除される。
【0026】
さらに、
図3に示すように、ロータリーテーブル22は、テーブル回転モータ23の駆動力が伝達されて水平面上で回転することによって、上側金型12に対面する成形位置、射出成形品を取り出す成形品取出位置、及び金型搬出入装置40との間で金型を搬出入する金型交換位置の間で、下側金型13を移動させる。
【0027】
成形位置と成形品取出位置とは、180°の間隔を隔てた位置である。すなわち、下側金型13a、13bの一方が成形位置に配置されているとき、他方が成形品取出位置に配置される。一方、金型交換位置は、成形位置から反時計回りに270°(成形品取出位置から反時計回りに90°)の間隔を隔てた位置である。但し、成形位置、成形品取出位置、及び金型交換位置の具体的な位置関係は、前述の例に限定されない。
【0028】
また、可動ダイプレート21は、トグルリンク機構(図示省略)を介して開閉モータ24の駆動力が伝達されることによって、上下方向に移動する。
図2(B)に示すように、可動ダイプレート21が下降すると、上側金型12と成形位置の下側金型13とが型閉される。そして、可動ダイプレート21がさらに下降すると、上側金型12と下側金型13とが型締される。これにより、上側金型12と成形位置の下側金型13との間に、キャビティ14が形成される。
【0029】
一方、
図2(A)に示すように、可動ダイプレート21が上昇すると、上側金型12と成形位置の下側金型13とが型開される。さらに、
図2(B)に示す状態で可動ダイプレート21のマグクランプに対する電圧の印加を停止すると、
図2(C)に示すように、上側金型12及び成形位置の下側金型13を型閉した状態で、可動ダイプレート21を上側金型12から離間させることができる。
【0030】
オートカプラ装置26は、可動ダイプレート21に支持された上側金型12に着脱可能な状態で、可動ダイプレート21に固定されている。オートカプラ装置27は、ロータリーテーブル22に支持された複数の下側金型13a、13bそれぞれに着脱可能な状態で、ロータリーテーブル22に固定されている。すなわち、本実施形態のオートカプラ装置27は、180°の間隔を隔てて2か所に設けられている。
【0031】
オートカプラ装置26、27は、アダプタ15、16を介して上側金型12及び下側金型13と射出成形機10の各部(例えば、温調装置28、制御装置50)とを接続する。すなわち、オートカプラ装置26、27は、上側金型12及び下側金型13に接続すべき信号線や配管を束ねてアダプタ15、16に着脱する。
【0032】
一例として、オートカプラ装置26、27を介して上側金型12及び下側金型13と温調装置28とが配管で接続されることで、上側金型12及び下側金型13の温度が調整される。他の例として、オートカプラ装置26、27を介して上側金型12及び下側金型13に内蔵されたセンサ(図示省略)と制御装置50とが信号線で接続されることで、当該センサの検出信号を制御装置50に出力することができる。一方、オートカプラ装置26、27がアダプタ15、16から抜去されることによって、信号線や配管と上側金型12及び下側金型13との接続が解除され、上側金型12及び下側金型13が型締装置20から搬出可能になる。
【0033】
オートカプラ装置26、27は、モータ(図示省略)によって、アダプタ15、16に着脱可能に構成されている。より詳細には、オートカプラ装置26、27は、
図2(A)及び
図2(B)に示すようにアダプタ15、16に装着された位置と、
図2(C)に示すようにアダプタ15、16から抜去された位置との間を、可動ダイプレート21及びロータリーテーブル22に沿って移動可能に構成されている。
【0034】
射出装置30は、ホッパ(図示省略)から供給された樹脂を、可塑化し、計量し、キャビティ14内に射出する。本実施形態に係る射出装置30は、型締装置20の上方に配置されている。より詳細には、射出装置30は、先端にノズル32が形成された加熱シリンダ31と、射出装置30を上下方向に移動させるノズルタッチモータ33とを主に備える。
【0035】
射出装置30が下降すると、型締された金型11に加熱シリンダ31の先端のノズル32が接続される。この状態で加熱シリンダ31から射出された可塑化樹脂は、金型11のキャビティ14に充填される。一方、射出装置30が上昇すると、ノズル32が金型11から離間する。すなわち、本実施形態に係る射出成形機10は、射出装置30が上下方向に移動する、所謂「竪型」である。但し、本発明は、射出装置30が水平方向に移動する、所謂「横型」にも適用可能である。
【0036】
金型搬出入装置40は、型締装置20から上側金型12及び下側金型13a、13bを搬出し、型締装置20に上側金型17及び下側金型18a、18bを搬入する装置である。
図3に示すように、金型搬出入装置40は、上側金型17と、複数の下側金型18a、18bとを支持して回転するロータリーテーブル(第2ロータリーテーブル)41と、テーブル回転モータ42と、ロータリーテーブル22、41の間で各金型12、13a、13b、17、18a、18bを搬送するコンベア43とを主に備える。
【0037】
上側金型17は、上側金型12の代わりとなる金型である。下側金型18a、18bは、下側金型13a、13bの代わりとなる金型である。すなわち、上側金型17と、複数の下側金型18a、18bのうちの1つとが型締されると、内部にキャビティが形成される。上側金型17及び下側金型18a、18bは、上側金型12及び下側金型13a、13bと同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0038】
ロータリーテーブル41は、型閉された上側金型17及び下側金型18a(以下、「金型17、18a」と表記することがある。)を支持する第1位置P1と、上側金型17と型閉されていない単独の下側金型18bを支持する第2位置P2と、型締装置20から搬出された金型を受け入れ可能な受入領域44(第3位置P3)とを有する。第1位置P1、第2位置P2、及び第3位置P3は、ロータリーテーブル41上で周方向に離間している。
【0039】
図示は省略するが、第1位置P1及び第3位置P3には、上側金型に着脱可能なオートカプラ装置と、下側金型に着脱可能なオートカプラ装置とが設置されている。一方、第2位置P2には、下側金型に着脱可能なオートカプラ装置のみが設置されており、上側金型に着脱可能なオートカプラ装置は設置されていない。これにより、ロータリーテーブル41に支持された金型の温度を、ロータリーテーブル22に受け渡す前に調整しておくことができる。
【0040】
ロータリーテーブル41は、テーブル回転モータ42の駆動力が伝達されて回転する。受入領域44をコンベア43に対面させて、ロータリーテーブル22から金型を搬出する向きにコンベア43を回転させると、ロータリーテーブル22からロータリーテーブル41に金型が受け渡される。一方、ロータリーテーブル41上の金型をコンベア43に対面させて、ロータリーテーブル41から金型を搬出する向きにコンベア43を回転させると、ロータリーテーブル41からロータリーテーブル22に金型が受け渡される。
【0041】
制御装置50は、射出成形機10全体の動作を制御する。制御装置50は、表示入力装置54から出力される操作信号を取得する。制御装置50は、取得した操作信号に基づいて、各アクチュエータ(テーブル回転モータ23、42、開閉モータ24、オートカプラ装置26、27、温調装置28、ノズルタッチモータ33、コンベア43)を駆動させる。
【0042】
制御装置50は、例えば、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)51、各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)52、及び演算手段の作業領域となるRAM(Random Access Memory)53を備える。そして、ROM52に記憶されたプログラムをCPU51が読み出して実行することによって、後述する各処理を実現してもよい。
【0043】
但し、制御装置50の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0044】
表示入力装置54は、オペレータに報知すべき各種情報を表示するディスプレイ、及びオペレータによる操作を受け付けるボタン、スイッチ、ダイヤルなどを備えるユーザインタフェースである。また、表示入力装置54は、ディスプレイに重畳されたタッチパネルを備えてもよい。オペレータの操作を受け付けて、受け付けた操作に対応する操作信号を制御装置50に出力する。
【0045】
制御装置50は、射出成形機10に射出成形処理を実行する。まず、制御装置50は、上側金型12及び成形位置の下側金型13aを型閉及び型締する。次に、制御装置50は、型締された金型11に対して、射出装置30に可塑化樹脂を射出させることによって、射出成形品を成形させる。そして、制御装置50は、開閉モータ24を駆動することによって、上側金型12と下側金型13aとを型開する。この時点で、射出成形品は下側金型13aによって保持されている。
【0046】
次に、制御装置50は、テーブル回転モータ23を駆動することによって、下側金型13aを成形品取出位置に移動させる。次に、制御装置50は、下側金型13aから射出成形品を取り出す。制御装置50は、例えば、ロボットアーム(図示省略)に下側金型13aから射出成形品を取り出させればよい。
【0047】
下側金型13aが成形品取出位置に移動すると、下側金型13bが成形位置に到達する。そこで、制御装置50は、下側金型13aから射出成形品を取り出すのと並行して、下側金型13bを用いて射出成形品を成形する。そして、予め定められた数の射出成形品が形成されるまで、下側金型13a、13bを交番的に使用して、射出成形品を成形する。
【0048】
また、制御装置50は、型締装置20に搭載された金型を総入れ替えする金型交換処理を実行する。
図5は、金型交換処理のフローチャートである。
図6は、第1交換処理におけるロータリーテーブル22、41の状態遷移図である。
図7は、第2交換処理におけるロータリーテーブル22、41の状態遷移図である。
図8は、第1及び第2位置決め処理におけるロータリーテーブル22の状態遷移図である。
【0049】
制御装置50は、例えば、型締装置20に搭載された金型の総入れ替えが指示されたタイミングで、金型交換処理を実行する。一例として、金型を総入れ替えする指示は、例えば、表示入力装置54を通じてオペレータから入力されてもよい。他の例として、上側金型12及び下側金型13a、13bで予め定められた数の射出成形品を成形したことを、金型を総入れ替えする指示としてもよい。なお、金型交換処理の開始時点において、
図6(A)に示すように、下側金型13aが成形位置に配置されているものとする。
【0050】
以下に説明する金型交換処理において、上側金型12は現上側金型の一例であり、下側金型13a、13bは現下側金型の一例であり、型閉された上側金型12及び下側金型13aは現金型の一例であり、上側金型12と型閉されていない下側金型13bは単独の現下側金型の一例である。一方、上側金型17は新上側金型の一例であり、下側金型18a、18bは新下側金型の一例であり、型閉された上側金型17及び下側金型18aは新金型の一例であり、上側金型17と型閉されていない下側金型18bは単独の新下側金型の一例である。
【0051】
ここで、「現」が付加された金型12、13a、13bは、金型交換処理の開始時点で型締装置20に搭載されている金型を指す。一方、「新」が付加された金型17、18a、18bは、金型交換処理の開始時点で金型搬出入装置40に搭載されている金型を指す。すなわち、金型交換処理で金型の総入れ替えが行われた後、再び金型交換処理が実行される場合、「現」及び「新」は入れ替わることになる。
【0052】
まず、制御装置50は、開閉モータ24を駆動することによって、上側金型12と成形位置の下側金型13aとを型閉する(S11)。以下、型閉された上側金型12及び下側金型13aを「金型12、13a」と表記する。また、制御装置50は、可動ダイプレート21のマグクランプに対する電圧の印加を停止すると共に、開閉モータ24を駆動して可動ダイプレート21を上側金型12から離間させる。さらに、制御装置50は、オートカプラ装置26をアダプタ15から抜去する。
【0053】
次に、制御装置50は、
図6(B)に示すように、テーブル回転モータ23を駆動することによって、金型12、13aを金型交換位置に移動させる。また、制御装置50は、下側金型13aに対して、ロータリーテーブル22のマグクランプに対する電圧の印加を停止すると共に、オートカプラ装置27をアダプタ16から抜去する。さらに、この時点までに、ロータリーテーブル41の受入領域44は、コンベア43に対面しているものとする。
【0054】
次に、制御装置50は、コンベア43を駆動することによって、金型12、13aをロータリーテーブル22から搬出する(S12)。すなわち、制御装置50は、ロータリーテーブル22の金型交換位置の金型12、13aを、ロータリーテーブル41の受入領域44(=第3位置P3)に移動させる。また、制御装置50は、ロータリーテーブル41上の上側金型12及び下側金型13aにオートカプラ装置を装着する。
【0055】
次に、制御装置50は、テーブル回転モータ42を駆動することによって、下側金型18bをコンベア43に対面させる。また、制御装置50は、下側金型18bからオートカプラ装置を抜去する。そして、制御装置50は、
図6(C)に示すように、コンベア43を駆動することによって、単独の下側金型18bをロータリーテーブル22へ搬入する(S13)。
【0056】
すなわち、制御装置50は、ロータリーテーブル41の第2位置P2に支持された下側金型18bを、ロータリーテーブル22の金型交換位置に移動させる。これにより、下側金型18bが存在した第2位置P2は、新たな受入領域45となる。ステップS12~S13の処理は、第1交換処理の一例である。
【0057】
次に、制御装置50は、
図7(A)に示すように、テーブル回転モータ23を駆動することによって、単独の下側金型13bを金型交換位置に移動させる。また、制御装置50は、下側金型13bに対して、ロータリーテーブル22のマグクランプに対する電圧の印加を停止すると共に、オートカプラ装置27をアダプタ16から抜去する。
【0058】
次に、制御装置50は、コンベア43を駆動することによって、単独の下側金型13bをロータリーテーブル22から搬出する(S14)。すなわち、制御装置50は、ロータリーテーブル22の金型交換位置の下側金型13bを、ロータリーテーブル41の受入領域45(=第2位置P2)に移動させる。また、制御装置50は、ロータリーテーブル41上の下側金型13bにオートカプラ装置を装着する。
【0059】
次に、制御装置50は、テーブル回転モータ42を駆動することによって、金型17、18aをコンベア43に対面させる。また、制御装置50は、上側金型17及び下側金型18aからオートカプラ装置を抜去する。そして、制御装置50は、
図7(B)に示すように、コンベア43を駆動することによって、金型17、18aをロータリーテーブル22へ搬入する(S15)。
【0060】
すなわち、制御装置50は、ロータリーテーブル41の第1位置P1に支持された金型17、18aを、ロータリーテーブル22の金型交換位置に移動させる。これにより、金型17、18aが存在した第1位置P1は、新たな受入領域46となる。ステップS14~S15の処理は、第2交換処理の一例である。
【0061】
次に、制御装置50は、
図8(A)に示すように、テーブル回転モータ23を駆動することによって、金型17、18aを成形位置に移動させる。次に、制御装置50は、開閉モータ24を駆動することによって、可動ダイプレート21の位置決め突起21aを、上側金型17の位置決め凹部(図示省略)に挿入する。
【0062】
そして、制御装置50は、マグクランプに電圧を印加することによって、可動ダイプレート21の所定位置に上側金型17を位置決めすると共に、ロータリーテーブル22の所定位置に下側金型18aを位置決めする(S16)。また、制御装置50は、オートカプラ装置26、27を上側金型17及び下側金型18aに装着する。ステップS16の処理は、第1位置決め処理の一例である。
【0063】
次に、制御装置50は、開閉モータ24を駆動することによって、下側金型18aから上側金型17を離間させる。次に、制御装置50は、
図8(B)に示すように、テーブル回転モータ23を駆動することによって、単独の下側金型18bを成形位置に移動させる。このとき、上側金型17は、可動ダイプレート21に位置決めされたまま移動しない。
【0064】
次に、制御装置50は、開閉モータ24を駆動することによって、上側金型17を成形位置の下側金型18bに型閉する。そして、制御装置50は、マグクランプに電圧を印加することによって、ロータリーテーブル22の所定位置に下側金型18bを位置決めする(S17)。また、制御装置50は、オートカプラ装置27を下側金型18bに装着する。ステップS17の処理は、第2位置決め処理の一例である。
【0065】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0066】
図6(A)及び
図7(B)に示すように、金型交換処理の実行前に単独の下側金型18bが支持された第2位置P
2に、金型交換処理の実行後に単独の下側金型13bが配置される。これにより、第2位置P
2には、上側金型に着脱されるオートカプラ装置を用意する必要がなくなる。
【0067】
一方、
図5のステップS13、S15を入れ替えると、金型交換処理の実行後の第2位置P
2に、金型12、13aが配置される。その結果、ロータリーテーブル41上で上側金型12の温度を調整することができない。そのため、金型12、13aを再びロータリーテーブル22に戻した後に、上側金型12が所定の温度に達するまで、射出成形処理を開始することができない。
【0068】
すなわち、上記の実施形態によれば、上側金型に着脱されるオートカプラ装置が第2位置P2に設置されていないという制約がある射出成形機10において、金型の総入れ替え時の上側金型12の温調を省略できるので、金型交換処理の効率が向上する。
【0069】
但し、
図5の金型交換処理が効果を発揮する射出成形機10の制約は、オートカプラ装置の数に限定されない。他の例として、
図5の金型交換処理は、ロータリーテーブル22が一方向(例えば、反時計回り)に回転可能な射出成形機10においても、効果を発揮する。
【0070】
上記の実施形態において、ロータリーテーブル22は、ステップS12で270°、ステップS14で180°、ステップS16で90°、ステップS17で180°回転する。すなわち、ロータリーテーブル22の総回転量は、720°となる。一方、
図5のステップS13、S15を入れ替えると、ロータリーテーブル22は、ステップS12で270°、ステップS14で180°、ステップS16で270°、ステップS17で180°回転する。すなわち、ロータリーテーブル22の総回転量は、900°となる。
【0071】
すなわち、上記の実施形態によれば、ロータリーテーブル22が一方向にしか回転できないという制約がある射出成形機10において、金型の総入れ替え時のロータリーテーブル22の総回転量が少なくなるので、金型交換処理の効率が向上する。
【0072】
また、上記の実施形態によれば、位置決め突起21aを用いて金型17、18aを位置決めし、位置決めされた上側金型17を基準にして下側金型18bを位置決めすることができる。その結果、金型交換処理の実行後に、射出成形処理を適切に実行することができる。さらに、上側金型17及び下側金型18a、18bが正しく位置決めされないことによって、オートカプラ装置26、27が装着できなくなることを防止できる。
【0073】
なお、上記の実施形態において、制御装置50は、第1交換処理(S12~S13)を実行した後に、第2交換処理(S14~S15)を実行してもよい。但し、第1交換処理及び第2交換処理の実行順序は、前述の例に限定されない。すなわち、制御装置50は、第2交換処理を実行した後に、第1交換処理を実行してもよい。
【0074】
また、成形機の具体例は、射出成形機に限定されない。成形機の他の例として、溶湯金属(成形材料)を金型に射出して、成形品を成形するダイカストマシンにも本発明を適用することができる。
【0075】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
10…射出成形機、11…金型、12,17…上側金型、13,13a,13b,18a,18b…下側金型、14…キャビティ、15,16…アダプタ、20…型締装置、21…可動ダイプレート、22,41…ロータリーテーブル、23,42…テーブル回転モータ、24…開閉モータ(開閉機構)、26,27…オートカプラ装置、30…射出装置、31…加熱シリンダ、32…ノズル、33…ノズルタッチモータ、40…金型搬出入装置、43…コンベア、44,45,46…受入領域、50…制御装置、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…表示入力装置