(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】移動過程提示装置、移動過程提示方法、移動過程提示プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20230522BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20230522BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G06F30/10
G01C21/34
G08G1/00 A
(21)【出願番号】P 2019204122
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岡村 敬
(72)【発明者】
【氏名】松下 裕明
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141928(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/029888(WO,A1)
【文献】特開2005-321370(JP,A)
【文献】特開2018-088139(JP,A)
【文献】国際公開第2009/144994(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G01C 21/34
G08G 1/00
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置位置とは異なる場所にある構造物と、当該構造物を設置位置まで搬送する少なくとも1台の搬送車とを含む移動体の移動経路を作成する移動経路作成部と、
作成された前記移動経路における、前記移動体の想定される移動の状態を前記移動体が三次元モデルで表された移動体モデルによって提示する移動状態提示部と、を備え、
前記移動経路作成部は、前記移動経路を決定するために指定された、始点および終点と少なくとも1つの中継点とを含む複数の地点における前記移動体モデルの位置および向きに基づいて、隣り合う2つの前記地点の間の経路を補間することを特徴とする移動過程提示装置。
【請求項2】
前記移動経路作成部は、隣り合う2つの前記地点のそれぞれから、
両地点における前記移動体の向きを表す角度に対応する対応角度に基づく比率と、両地点間の距離とに基づいて算出した距離だけ両地点から前記対応角度の方向に離れた位置に、両地点にそれぞれ対応する2つの制御点を決定し、2つの前記地点および2つの前記制御点に基づいて、ベジエ曲線上の中間地点を補間することを特徴とする請求項1に記載の移動過程提示装置。
【請求項3】
前記移動体が
前記移動経路上を実際に移動しているときに取得した前記移動体の測位データによって得られる前記移動体の測位位置と、前記移動経路において当該測位位置に対応する前記移動体モデルが移動していく各地点の移動位置とを比較する位置比較部をさらに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の移動過程提示装置。
【請求項4】
前記位置比較部は、前記移動体モデルが前記移動経路上で移動を開始する時刻と、前記移動体が移動を開始したときに前記測位データが取得された時刻とを同期させることを特徴とする請求項3に記載の移動過程提示装置。
【請求項5】
前記位置比較部は、前記移動経路において前記測位位置に最も近い前記移動位置を前記測位位置に対応する前記移動位置として選択する請求項3または4に記載の移動過程提示装置。
【請求項6】
前記位置比較部は、前記測位位置にある前記移動体の向きに対して前記移動経路における前記移動体モデルの向きのなす角度が最も小さくなる前記移動位置を前記測位位置に対応する前記移動位置として選択することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の移動過程提示装置。
【請求項7】
現在の前記測位データに基づく前記移動体の現在位置を少なくとも用いて、当該現在位置から所定時間後の前記移動体の未来位置を予測し、当該未来位置を前記移動経路上の前記移動体モデルの位置と比較する位置予測部をさらに備えていることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の移動過程提示装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の移動過程提示装置としてコンピュータを機能させるための移動過程提示
プログラムであって、各部としてコンピュータを機能させるための移動過程提示プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の移動過程提示プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
コンピュータが実行する移動過程提示方法であって、
設置位置とは異なる場所にある構造物と、当該構造物を設置位置まで搬送する少なくとも1台の搬送車とを含む移動体の移動経路を作成する移動経路作成工程と、
作成された前記移動経路における、前記移動体の想定される移動の状態を前記移動体が三次元モデルで表された移動体モデルによって提示する移動状態提示工程と、を含み、
前記移動経路作成工程において、前記移動経路を決定するために指定された、始点および終点と少なくとも1つの中継点とを含む複数の地点における前記移動体モデルの位置および向きに基づいて、隣り合う2つの前記地点の間の経路を補間することを特徴とする移動過程提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置位置とは異なる場所にある構造物を設置位置まで移動させる移動過程を提示する移動過程提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁等の架設工事において、架設位置付近に地組ヤードを確保することが難しい場合、他の場所に確保した地組ヤードで大規模なブロックを組み立てた上で架設場所に移動させて架設するという一括架設工法が採られる。
【0003】
一般に、一括架設工法による架設工事では、ブロックを多軸台車のような搬送車によって予め定めておいた経路にしたがって移動させる。多軸台車は、重量物を載置することから、変換点(曲線)では、少しずつ向きの設定を変えながら車軸を動かすので、速く移動することが難しい。しかしながら、工事の時間が限られている場合、できるだけ搬送車を速く移動させることが要求される。
【0004】
また、移動経路を定める際には、図面上(2次元)での代表的な位置をいくつか決めておき、その位置に基づいて進路を定める。特に、大型の重量物を移動させる場合、代表的な位置を決める際に、その位置の周辺に存在する障害物を十分考慮しておかないと、実際の移動時に障害物に接触する問題が生じる虞がある。
【0005】
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、クレーンベント工法による施工においてクレーンの干渉問題を検討できるとともに、より現場条件にあった架設計画を可能にする橋梁架設シミュレーションシステムが開示されている。また、特許文献1には、多軸台車のような車両にベントモデルを載せられるようなモデルを作成することにより、橋梁架設シミュレーションシステムを移動式のベントを用いた橋梁の架設計画にも応用可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には、上述した移動経路を定める際に、代表的な位置以外の位置を障害物の位置を考慮して決めることが開示されていない。このため、特許文献1に開示されたシステムによっても、移動時の干渉を容易に検証することができないという問題がある。
【0008】
本発明の一態様は、移動体の移動時の干渉を容易に検証することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る移動過程提示装置は、設置位置とは異なる場所にある構造物と、当該構造物を設置位置まで搬送する少なくとも1台の搬送車とを含む移動体の移動経路を作成する移動経路作成部と、作成された前記移動経路における、前記移動体の想定される移動の状態を前記移動体が三次元モデルで表された移動体モデルによって提示する移動状態提示部と、を備え、前記移動経路作成部が、前記移動経路を決定するために指定された、始点および終点と少なくとも1つの中継点とを含む複数の地点における前記移動体モデルの位置および向きに基づいて、隣り合う2つの前記地点の間の経路を補間する。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る移動過程提示方法は、設置位置とは異なる場所にある構造物と、当該構造物を設置位置まで搬送する少なくとも1台の搬送車とを含む移動体の移動経路を作成する移動経路作成工程と、作成された前記移動経路における、前記移動体の想定される移動の状態を前記移動体が三次元モデルで表された移動体モデルによって提示する移動状態提示工程と、を含み、前記移動経路作成工程において、前記移動経路を決定するために指定された、始点および終点と少なくとも1つの中継点とを含む複数の地点における前記移動体モデルの位置および向きに基づいて、隣り合う2つの前記地点の間の経路を補間する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、移動体の移動時の干渉を容易に検証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る移動過程提示装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】上記移動過程提示装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】上記移動過程提示装置のディスプレイに表示される移動経路管理ウインドウを示す図である。
【
図4】上記移動経路作成部がCAD部に作成させる移動体モデルの移動経路を表した経路画面を示す図である。
【
図5】上記移動体が前進する場合の移動経路の例を示す図である。
【
図6】上記移動体が後進する場合の移動経路の例を示す図である。
【
図7】上記移動体が斜行する場合の移動経路の例を示す図である。
【
図8】上記移動体が斜行する場合の移動経路の他の例を示す図である。
【
図9】上記移動体が斜行する場合の経路補間方法を説明する図である。
【
図10】上記CAD部によって提供される架設現場の平面図を表す架設現場画面を示す図である。
【
図11】上記CAD部によって表示される3Dシミュレーション画面を示す図である。
【
図12】シミュレーションの初期状態で作成される移動経路を示す図である。
【
図13】
図12に示す移動経路に対して移動経路を決定する各要素を変更する処理を施した結果の移動経路を示す図である。
【
図14】上記移動経路作成部によって補間される地点の補間数を説明するための図である。
【
図15】上記移動過程提示装置におけるGPS情報変換部によって測位データに基づいて上記移動体モデルの位置および向きを算出する方法を説明するための図である。
【
図16】上記移動過程提示装置における位置比較部によって移動体の測位位置と上記移動経路において対応する移動体の移動位置とを比較する方法を説明するための図である。
【
図17】上記移動過程提示装置における位置予測部によって移動体の未来の位置を予測する合同法について説明するための図である。
【
図18】上記移動過程提示装置における位置予測部によって移動体の未来の位置を予測する成分加算法について説明するための図である。
【
図19】上記移動過程提示装置における位置予測部によって移動体の未来の位置を予測する差分法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態〕
本発明の一実施形態について
図1~
図19に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0014】
〈移動過程提示装置の概要〉
移動過程提示装置10の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る移動過程提示装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0015】
大規模な桁ブロック(大ブロック)などの構造物は、架設位置(設置位置)と異なる場所(地組ヤード)で組み立てられて、搬送車によって架設位置まで搬送される。
図1に示す移動過程提示装置10は、搬送車と搬送車に載置された構造物とを含む移動体の移動経路を作成する機能を有する。移動過程提示装置10は、移動体が作成した移動経路上を移動する状態を3Dで模擬的に提示する移動状態提示機能(移動シミュレーション機能)を有する。
【0016】
搬送車は、1台のトレーラーであったり、複数台の多軸台車であったりする。多軸台車は、各車軸の向きを360°変更することができる。このため、多軸台車の向きと進行方向とは必ずしも一致しない。
【0017】
また、移動過程提示装置10は、GPS(Global Positioning System)から取得した実際の移動体の測位位置と、作成した移動経路において対応する移動体の移動位置とを比較する位置比較機能を有する。
【0018】
また、移動過程提示装置10は、移動体の現在の測位位置に基づく移動体の現在位置を用いて、当該現在位置から所定時間後の移動体の未来の位置(未来位置)をとして予測し、当該未来位置を移動経路上の移動体の位置と比較する位置予測機能を有する。
【0019】
なお、本実施形態において、便宜上、移動体の位置は、単に移動経路上の点を示す位置だけではなく、大型の移動体の各部(特に移動体の外形を特定する部位)の位置により定まる向きも含むものとする。ただし、以降の説明では、位置および向きを明記する場合もある。
【0020】
〈移動過程提示装置の詳細〉
移動過程提示装置10は、コンピュータによって構成されている。コンピュータは、例えば、汎用のOS(Operating System)を実装しており、アプリケーションプログラムを実行する機能を備えたものであればよい。
【0021】
図1に示すように、移動過程提示装置10は、CPU(Central Processing Unit)1と、メインメモリ2と、ROM(Read Only Memory)3と、補助記憶装置4と、入力デバイス5と、ディスプレイ6と、CAD(Computer Aided Design)部7とを備えている。
【0022】
CPU1は、後述するモデル作成部11、移動経路作成部12、移動状態提示部13および連携表示処理部14(
図2参照)が行う処理を実現するための処理装置である。CPU1は、当該処理の実行に際して、メインメモリ2、補助記憶装置4、入力デバイス5などからデータを受け取り、当該データに対して演算または加工を施した上で、補助記憶装置4、ディスプレイ6等に出力する。
【0023】
メインメモリ2は、コンピュータにおける主記憶装置を構成するメモリであり、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)によって構成される。
【0024】
ROM3は、コンピュータの起動時やリセット時に実行されるBIOS(Basic Input Output System)などの、コンピュータの動作に不可欠なプログラムを記憶している。
【0025】
補助記憶装置4は、OS、各種のプログラム、各種のデータなどを記憶する大容量の記憶装置であり、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)などで構成される。
【0026】
入力デバイス5は、ユーザによる入力操作を行う機器であり、マウス、キーボードなどの各種の入力機器が装備される。入力デバイス5は、後述するモデル作成部11、移動経路作成部12、移動状態提示部13および連携表示処理部14(
図2参照)に対する入力操作を受け付ける。
【0027】
ディスプレイ6は、OSおよびプログラムの実行に伴ってコンピュータの内部で生成される画像の出力に用いられる機器である。
【0028】
CAD部7は、CPU1がメインメモリ2に保存されたCADのアプリケーションプログラムを実行することによって実現される機能部分である。CAD部7は、施工現場の図、移動体の移動シミュレーションを行う図などに必要に応じて加工を加えたり、これらの図の表示状態を変更したりといった処理を行う。CAD部7によって処理される図は、ディスプレイ6に表示される。
【0029】
入力デバイス5およびディスプレイ6は、コンピュータの本体に搭載される機器であってもよいが、外部機器としてコンピュータに有線または無線によって通信可能に接続される機器であってもよい。このような外部機器は、コンピュータと接続されることにより、コンピュータと一体に稼働する。
【0030】
続いて、移動過程提示装置10の詳細について説明する。
図2は、移動過程提示装置10のシステム構成を示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように、移動過程提示装置10は、モデル作成部11と、移動経路作成部12と、移動状態提示部13と、連携表示処理部14とを備えている。
【0032】
モデル作成部11は、後述する移動状態提示部13による移動状態提示工程に必要な3Dモデル(三次元モデル)を作成する。モデル作成部11は、モデルを作成するために、図示しないウインドウをディスプレイ6に表示させる。このウインドウは、搬送車を含む移動ベントのモデルを作成することができるように構成されている。具体的には、モデル作成部11は、登録されているパーツを利用してマクロ機能により移動ベントの詳細構造を構築する。また、モデル作成部11は、移動の対象となる大ブロックを移動ベントに載置して構成される移動体のモデルも作成する。モデル作成部11は、作成したモデルについてのモデル情報を補助記憶装置4に保存する。
【0033】
移動ベントは、搬送車の連結により荷台の大きさや搭載荷重を変えることができる全方向に移動可能な多軸台車をベースに、基礎梁部および中間架台部を備えることで構成される。基礎梁部は、桁を支える上部梁部と多軸台車とに荷重を分配する。中間架台部は、必要に応じて大ブロックを所定の高さに上下移動させることが可能なリフターを有している。移動ベントの大きさは、架設場所の桁下空間長や受け点の支持状態および移動時の安定状態等を考慮して決定される。
【0034】
移動経路作成部12は、大ブロックが組み立てられた地組ヤードから架設位置まで移動体を移動させる経路を作成する。移動経路作成部12は、ユーザによって予め指定された複数の地点(指定地点)における移動体の位置および向きに基づいて、2つの指定地点間の移動経路を補間する。指定地点として、移動経路の始点および終点と、少なくとも1つの中継点とが指定される。
【0035】
移動経路作成部12は、移動経路の補間において、隣り合う2つの指定地点の間に少なくとも1つの地点(補間地点)を中間地点として定め、この地点における移動体の位置および向きを特定する。移動経路作成部12は、作成した移動経路についての経路情報をCAD部7および移動状態提示部13に提供する。CAD部7は、経路情報に基づいて、移動経路を3Dで表した画像をディスプレイ6に表示させる。
【0036】
移動状態提示部13は、移動経路作成部12によって作成された経路情報に基づいて、移動経路における移動体の想定される移動の状態を、モデル情報による3Dモデルによって模擬的に提示する。移動状態提示部13は、移動体の移動状態の提示において、補助記憶装置4に保存されているモデル情報および経路情報に基づいて、移動経路上の移動体の位置および向きの始点から終点までの推移を示す画像をCAD部7に作成させ、ディスプレイ6に表示させる。
【0037】
連携表示処理部14は、GPS情報受信部15と、GPS情報変換部16と、位置比較部17と、位置予測部18とを有している。
【0038】
GPS情報受信部15は、移動体に搭載された複数のGPSセンサ8のそれぞれから送信される測位データを受信する。GPS情報受信部15は、移動過程提示装置10が備えるシリアルポートのうち、予め設定されたシリアルポートを介してNMEA信号として測位データを受信する。GPSセンサ8は、移動体の向きを検出できるように、移動体を表す外形の各頂部に相当する位置に配置されることが好ましい。
【0039】
GPS情報変換部16は、次の3段階を経てGPS情報を変換する。GPS情報変換部16は、第1段階において、測位データを緯度経度座標から大座標(測量系)に変換し、第2段階において、測位データを大座標から小座標(数学系)に変換し、第3段階において、測位データを小座標から移動体の位置および向きに変換する。
【0040】
GPS情報変換部16は、第1段階において、予めユーザによって入力された工事ごとの直交座標系番号によって選択された直交座標系について、国土地理院から提供される関数に基づいて測位データを緯度経度座標から大座標に変換する。GPS情報変換部16は、第2段階において、工事ごとに登録された大座標と小座標とを対応付けたマッピングデータから算出されたマトリックスによって測位データを大座標から小座標に変換する。GPS情報変換部16は、第3段階において、GPSセンサ8ごとの第1および第2段階の変換の結果と、複数のGPSセンサ8の位置の重心(図心)との誤差が最も少なくなるように選択した角度成分を測位位置として最小二乗法利用して算出する。
【0041】
位置比較部17は、移動体が実際に移動しているときに、GPS情報変換部16からの移動体の測位位置を表す位置および向きを取得する。位置比較部17は、取得した測位位置と、補助記憶装置4に保存されている経路情報に基づいた、移動経路において測位位置に対応する移動体モデルが移動していく各地点の位置(移動位置)とを比較する。位置比較部17は、測位位置と移動位置との比較結果を、測位位置における移動体モデルと、移動経路上の移動体モデルとが併存する画像をCAD部7に作成させ、ディスプレイ6に表示させる。
【0042】
位置予測部18は、現在の測位データに基づく移動体の測位位置(現在位置)を少なくとも用いて、当該現在位置から所定時間後の前記移動体の未来位置として予測する。位置予測部18は、予測した未来位置を移動経路上の移動体モデルの位置と比較する位置予測部18は、後述する合同法、成分加算法および差分法のいずれか1つを用いて未来位置を予測する。
【0043】
〈移動過程提示装置の動作〉
(移動経路作成工程)
移動経路作成部12によって行われる移動経路作成工程について説明する。
図3は、ディスプレイ6に表示される移動経路管理ウインドウ100を示す図である。
図4は、移動経路作成部12がCAD部7に作成させる移動体の移動経路Rを表した経路画面200を示す図である。
【0044】
移動経路作成部12は、移動経路の作成のために、
図3に示す移動経路管理ウインドウ100をディスプレイ6に表示させる。移動経路管理ウインドウ100は、操作領域101と、設定領域102とを有している。
【0045】
操作領域101は、工程バー101aと、スライダ101bと、開始時刻表示ボックス101cと、現在時刻表示ボックス101dと、終了時刻表示ボックス101eと、再生ボタン101fと、一時停止ボタン101gと、停止ボタン101hとを有している。
【0046】
工程バー101aは、各工程の経路の範囲(長さ)を直線状に表している。工程バー101aにおいて、各工程に応じて異なる色が付されることにより区分されている。スライダ101bは、後述する経路画面200(
図4参照)において移動経路R上を移動する移動体モデルM(移動体のモデル)の各工程の位置を変更するために、ユーザの操作によって工程バー101aに沿って移動可能となるように設けられている。
【0047】
開始時刻表示ボックス101cは、移動体が移動を開始する時刻を表示するために設けられている。現在時刻表示ボックス101dは、移動体が現在移動している時刻を表示するために設けられている。終了時刻表示ボックス101eは、移動体が移動を終了した時刻を表示するために設けられている。
【0048】
再生ボタン101fは、経路画面200において、移動体モデルMを移動経路R上で移動させる表示動作をCAD部7に行わせるための操作ボタンである。一時停止ボタン101gは、移動動作を一時的に停止させるための操作ボタンである。停止ボタン101hは、移動動作を停止させるための操作ボタンである。
【0049】
設定領域102は、複数の設定画面が表示される領域であり、経路情報設定画面、GPS設定画面等が表示される。各設定画面は、タブのクリック操作によって選択される。経路情報設定画面は、移動経路を作成するための各種情報の表示と各種情報の変更の受け付けのために設けられている。GPS設定画面は、移動体に搭載されるGPSセンサ8の位置を登録するために設けられている。
【0050】
経路情報設定画面において設定される各種情報としては、工程番号、前位置、後位置、経路種、経路長、経路時間、停止時間、直線長等が行ごとに設けられている。また、経路情報設定画面は、移動経路作成部12によって経路が補間されるときに計算された経路長および経路時間が表示される。経路長は、各工程で補間された経路の長さである。経路時間は、各工程について、移動体が予め設定された移動速度で補間された経路を移動するときの移動時間であって、上記の経路長に基づいて計算された移動体の移動時間である。
【0051】
工程番号は、移動の各工程に付された番号である。前位置は各工程の経路の開始位置であり、後位置は各工程の経路の終了位置である。経路種は、経路の種類であり、後述するように前進経路、後進経路および斜行経路から選択される。停止時間は、各工程の終了位置で移動体が停止する時間である。直線長は、各工程の経路の開始位置と終点位置との直線距離である。経路長は、選択された経路種にしたがった各工程の経路の長さである。経路時間は、各工程の経路を移動体が移動する時間である。
【0052】
上記の各種情報は、設定領域102に直接入力されることで設定されもよいし、移動過程提示装置10が備える工程作成部(図示せず)によって設定された工程情報から複写されることで設定されてもよい。工程作成部は、地組ヤードにおける大ブロックの組立工程、大ブロックの移動工程、大ブロックの架設工程等の各工程についての情報を設定する。
【0053】
工程作成部は、CAD部7が後述する架設現場画面300(
図10参照)をディスプレイ6に表示させた状態で、架設現場画面300上でのユーザの入力デバイス5(例えばマウス)による操作で入力された各地点の位置および向きを設定する。例えば、位置の入力はマウスのマウスアップ操作によって行われる。また、向きは、位置の入力点に対して、マウスダウンの状態でマウスを移動させてマウスアップ操作された位置、すなわちマウスの移動方向で規定される。
【0054】
また、各種情報が表示される各工程に対応した各行は、工程バー101aに示された工程の色と同じ色が付されている。これにより、工程バー101aの各工程と、設定領域102における各工程とが明確に対応付けられている。
【0055】
移動経路作成部12は、設定領域102において設定された各種情報に基づいて、工程ごとに区分された経路データを作成し、当該経路データをスライダ101bの位置情報とともにCAD部7に出力する。
【0056】
CAD部7は、経路データに基づいて、例えば
図4に示すような経路画面200を作成する。CAD部7は、経路画面200において移動経路Rを各工程に応じて色分けする。
図4では、便宜上、移動経路Rにおいて工程ごとに異なる色をそれぞれ実線、破線、一点鎖線および二点鎖線によって表している。また、CAD部7は、移動経路R上のスライダ101bの位置情報に応じた位置に移動体モデルMを合成することにより、経路画面データを作成する。CAD部7は、経路画面データをディスプレイ6に与えることで、経路画面200をディスプレイ6に表示させる。
【0057】
なお、
図4では、経路画面200が移動経路Rを示すことを目的としている便宜上、簡易的に移動体モデルMを搬送車で示している。
【0058】
続いて、上述した経路種について説明する。
【0059】
図5は、移動体が前進する場合の移動経路の例を示す図である。
図6は、移動体が後進する場合の移動体の移動経路の例を示す図である。
図7は、移動体が斜行する場合の移動経路の例を示す図である。
図8は、移動体が斜行する場合の移動経路の他の例を示す図である。
【0060】
前進経路は、
図5に示すように、移動体モデルMが搬送車の前方の向きに進んでいく経路である。後進経路は、
図6に示すように、移動体モデルMが搬送車の前方の向きに進んでいく経路である。
図5および
図6において、破線の矢印は移動体モデルMの移動経路Rを示し、実線の矢印は移動体モデルMの前方方向を示している。これは、後述する
図7および
図8についても同じである。
【0061】
前進経路および後進経路は、直線に近い動きをするときや、S字曲線のように曲率の小さいカーブに沿った動きをするときに向いている。前進経路および後進経路で移動する搬送車としては、トレーラーが想定される。前進経路および後進経路は、
図5および
図6に示すように、移動体モデルMの向きで表される搬送車の荷台の向きが移動経路Rに応じて大きく変化することが多く、荷台の動きが複雑になりやすい。
【0062】
移動経路作成部12は、前進経路および後進経路をベジエ曲線によって規定し、制御点を始点および終点における向きと、始点および終点からの距離とに基づいて決定する。移動経路作成部12は、距離さを、始点および終点の間の距離に対する比率によって決める。移動経路作成部12は、前進経路の場合、向きを、始点では進行方向とし、終点ではその逆とする一方、後進経路の場合、前進経路の場合と逆向きにする。移動経路作成部12は、搬送車の向きを、ベジエ曲線の傾きと、前進経路および後進経路のいずれかであるかによって決定する。
【0063】
斜行経路は、
図7および
図8に示すように、移動体モデルMが搬送車の向きの斜め方向に進んでいく経路である。斜行経路は、搬送車が多軸台車であるときに向いている。斜行経路は、
図7および
図8に示すように、一般に円に近い軌道を描くことにより、移動体モデルMの向きで表される搬送車の荷台の向きが移動経路Rに対する変化は小さく、荷台の動きが単純化される。
【0064】
移動経路作成部12は、斜行経路をベジエ曲線によって規定し、隣り合う2つの地点のそれぞれから、位置および向きを有する2つの制御点を決定し、2つの地点および2つの制御点に基づいて、ベジエ曲線上の中間地点を補間する。これにより、2つの地点間の円軌道がベジエ曲線で近似される。したがって、滑らかな移動経路を作成することができる。
【0065】
次に、移動経路作成部12による斜行経路の補間について説明する。
図9は、斜行経路の場合の経路補間方法を説明する図である。
【0066】
図9に示すように、始点P0と終点P1との距離をDとし、始点P0における移動体の向き(始点P0および終点P1を通る直線に対する角度)をθ0とし、終点P1おける移動体の向きをθ1とする。向きθ0,θ1の角度差dθは、dθ=│θ1-θ0│によって表される。
【0067】
まず、移動経路作成部12は、角度差dθを上記の直線を中心に2等分した角度dθ/2から、始点P0に対する制御点P0’の角度θ0’と、終点P1に対する制御点P1’の角度θ1’を得る。次に、移動経路作成部12は、制御点を得るための角度θについての上述した比率pを次式に基づいて算出する。
【0068】
p(θ)=5.6×10-8θ3-1.9×10-6θ2+3.8×10-4θ+0.3
移動経路作成部12は、上記の角度θ0’,θ1’のそれぞれについて算出した比率p0,p1と距離Dとを乗算することによって、始点P0に対する制御点P0’の離れ距離p0・Dおよび終点P1に対する制御点P1’の離れ距離p1・Dを得る。このようにして制御点の位置が特定される。
【0069】
なお、前進経路および後進経路の場合、移動経路作成部12は、上記の比率pを固定値(例えば0.4)として離れ距離p・Dを算出する。
【0070】
移動経路作成部12は、始点P0、終点P1および制御点P0’,P1’の4点に基づいてベジエ曲線上の補間点の座標P(t,P0,P0’,P1’,P1)を次式に基づいて算出する。
【0071】
P(t,P0,P0’,P1’,P1)
=(1-t)3P0+3(1-t)2tP0’+3(1-t)t2P1’+t3P1
上式において、tは0~1までの値をとる媒介変数である。
【0072】
また、移動経路作成部12は、移動体の向きθ(t)を次式に基づいて比較的単純に補間する。
【0073】
θ(t) = (1-t)θ0+tθ1
移動経路作成部12は、移動経路管理ウインドウ100において予め設定された始点と、終点と、少なくとも1つの中継点とを含む複数の地点に基づき、上記のような手法を用いて、隣り合う2つの地点間に新たな地点についての位置および向きを生成して経路を補間する。
【0074】
以上のように、移動経路作成部12は、移動経路を決定するために指定された、始点および終点と少なくとも1つの中継点とを含む複数の地点における移動体モデルの位置および向きに基づいて、隣り合う2つの前記地点の間の経路を補間する。
【0075】
これにより、予め複数の地点における移動体の位置および向きを指定することで、補間によって移動経路が作成される。したがって、中間地点の移動体の位置および向きを指定する必要がない。
【0076】
(移動状態提示工程)
移動状態提示部13によって行われる移動状態提示工程について説明する。
図10は、CAD部7によって提供される架設現場の平面図を表す架設現場画面300を示す図である。
図11は、CAD部7によって表示される3Dシミュレーション画面400を示す図である。
図12は、シミュレーションの初期状態で作成される移動経路を示す図である。
図13は、
図12に示す移動経路に対して移動経路を決定する各要素を変更する処理を施した結果の移動経路を示す図である。
図14は、移動経路作成部12によって補間される地点の補間数を説明するための図である。
【0077】
ここでは、移動経路の各工程を斜行経路にてシミュレーションする例について説明する。
【0078】
まず、移動状態提示部13は、移動経路作成部12によって各種情報に基づいて作成された経路情報を取得し、CAD部7に、
図10に示すような架設現場画面300と、
図11に示すような3Dシミュレーション画面400とを作成させる。
【0079】
CAD部7は、架設現場の図面データに基づいて架設現場画面300を作成し、経路情報から取得した移動経路のデータに基づいて、架設現場画面300上に移動経路を合成する。CAD部7は、このように作成した架設現場画面300のデータをディスプレイ6に与えて、ディスプレイ6に架設現場画面300を表示させる。
図10に示すように、架設現場画面300には、移動経路Rが示される。
【0080】
また、CAD部7は、架設現場の立体図のデータに基づいて3Dシミュレーション画面400を作成し、経路情報から取得した移動経路のデータに基づいて、3Dシミュレーション画面400に表されている背景画像上に移動経路を合成する。また、CAD部7は、補助記憶装置4のモデル情報から取得した移動体モデルMのデータと、経路情報から取得した各種情報とに基づいて、3Dシミュレーション画面400に表されている画像上に移動経路Rに沿って移動する移動体モデルMを合成する。
【0081】
CAD部7は、このように作成した3Dシミュレーション画面400のデータをディスプレイ6に与えて、ディスプレイ6に3Dシミュレーション画面400を表示させる。
図11に示すように、3Dシミュレーション画面400には、移動経路Rが示される。
【0082】
図12に示すように、予め設定された地点P01~P05に対して経路が補間されることにより移動経路Rが作成されて、架設現場画面300および3Dシミュレーション画面400に示される。この初期状態では、開始時刻、経路種、移動体の移動速度、停止時間等の値がデフォルト値である。
【0083】
これらの値を変更する場合、ユーザは、移動経路管理ウインドウ100において、変更が必要な値を変更する操作を行って、各種情報を編集する。移動状態提示部13は、移動経路作成部12は、変更された値を設定して新たな経路情報を作成して移動状態提示部13に受け渡す。移動状態提示部13は、受けた経路情報に基づく新たな移動経路Rに基づいて架設現場画面300および3Dシミュレーション画面400を用いたシミュレーション動作を行う。
【0084】
図13に示す新たな移動経路Rは、開始時刻、経路種、移動速度、停止時間が変更されている。経路種については、地点P02から地点P03までの工程で斜行経路から前進経路に変更されている。これにより、該当の工程では、移動経路作成部12によって、前進経路にしたがった経路の補間が行われる。また、終了時刻については、移動経路作成部12によって、開始時刻、移動速度および停止時間の変更に応じた時刻が自動計算されて示される。
【0085】
移動経路作成部12は、このように更新された各種情報に基づいて作成した経路情報を補助記憶装置4に保存する。なお、移動経路作成部12は、移動経路の作成において補間する補間地点の数を
図14に示すように決定する。
【0086】
具体的には、移動経路作成部12は、
図14に示すように、予め設定された2つの設定地点Pn,Pn+1の間に補間地点Pn1~Pn10を補間する。
図14において、丸は設定地点Pn,Pn+1および補間地点Pn1~Pn10の位置を表し、丸の中の矢印は向きを表している。移動経路作成部12は、補間地点Pn1~Pn10の点数を次式に基づいて算出する。
【0087】
MAX(1,C1*D/V+C2*φ/ω)
上式において、Dは2つの設定地点Pn,Pn+1の間の距離(m)を表し、Vは搬送車の速度(m/s)を表し、φは設定地点Pn,Pn+1の間の角度差の絶対値(rad)を表し、ωは搬送車の平均回転角速度(rad/s)を表している。また、上式について、MAX(a,b)は、aおよびbのうち、大きい方を取得することを表す。C1およびC2は、定数であり、デフォルト値をそれぞれC1=2.0、C2=1.0とする。
【0088】
上式において、C2*φ/ωの項を設けているのは、1つの地点で移動体が回転する場合があるため、角度差が大きい場合には補間地点の補間が必要となることによる。
【0089】
上式におけるC1*D/Vの項は、ほぼ均等時間間隔(C1=2の場合は0.5秒)で補間地点を補間することを目的として設けられている。これにより、GPSセンサ8による位置取得が均等時間間隔で行われる。それゆえ、測位位置と移動位置とを比較するときに移動経路によって補間される補間地点の密度差が生じないようにすることができる。上式におけるC2*φ/ωの項は、移動経路の曲率が大きい場合、ベクトル変化が大きいので、より密に補間地点を補間することができるように補正することを目的として設けられている。
【0090】
以上のように、移動状態提示部13は、作成された前記移動経路における、前記移動体の想定される移動の状態を前記移動体が三次元モデルで表された移動体モデルによって提示する。これにより、移動体の位置および向きを移動体モデルによって容易に確認することができる。したがって、構造物、特に大ブロックのような大型の構造物の搬送時の干渉の検証を容易にすることができる。
【0091】
(位置比較工程)
位置比較部17によって行われる位置比較工程について説明する。
図15は、GPS情報変換部16によって測位データに基づいて移動体モデルMの位置および向きを算出する方法を説明するための図である。
図16は、位置比較部17によって移動体の測位位置と上記移動経路において対応する移動体の移動位置とを比較する方法を説明するための図である。
【0092】
GPS情報変換部16は、
図15に示す手順に従って、移動体モデルMの現在の測位位置を算出する。
【0093】
まず、
図15の(A)に示すように、移動体の各部に搭載される複数のGPSセンサ8の位置が予め登録されている。GPSセンサ8の位置の登録は、例えば、移動経路管理ウインドウ100における設定領域102に表示される上述したGPS設定画面において行われる。
図15の(A)に示す例では、移動体モデルMの頂部(角の部分)に4つのGPSセンサ8が搭載された搭載位置G1~G4が表されている。
【0094】
GPS情報受信部15は、
図15の(B)に示すように、4つのGPSセンサ8からの測位データの受信を待ち受けている。ここで、GPS情報受信部15は、搭載位置G4に搭載されたGPSセンサ8が故障するなどの理由により、GPSセンサ8からの測位データ(個別測位位置S4)を受信できなかったとする。このため、GPS情報受信部15は、4つのGPSセンサ8のうちの搭載位置G1~G3に搭載された3つのGPSセンサ8からの測位データ(個別測位位置S1~S3)を受信する。この場合、
図15の(C)に示すように、GPS情報変換部16は、受信できた測位データに基づく個別測位位置S1~S3と、搭載位置G1~G3とをそれぞれペアリングする。
【0095】
次いで、
図15の(D)に示すように、GPS情報変換部16は、搭載位置G1~G3の平均と個別測位位置S1~S3の平均とが一致するために必要な移動体モデルMの移動距離T(dx,Dy)を生成する。移動距離Tは、方向の成分も含んでいる。GPS情報変換部16は、移動体モデルMを移動距離T移動させる。
【0096】
さらに、
図15の(E)に示すように、GPS情報変換部16は、移動体モデルMの一端(ここでは搭載位置G1側の一端)を個別測位位置S1~S3の平均の位置を中心に1°刻みで回転させる。これにより、GPS情報変換部16は、個別測位位置S1~S3のそれぞれの誤差が最小になる回転角Φを算出する。そして、
図15の(F)に示すように、GPS情報変換部16は、移動距離Tおよび回転角Φに基づいて測位位置S0を取得する。
【0097】
位置比較部17は、移動体モデルMが移動していく各地点の移動位置から、GPS情報変換部16から提供された測位位置S0に対応する移動位置を選択する。位置比較部17は、測位位置S0および選択された移動位置を比較するために、CAD部7に与えて、測位位置S0にある移動体モデルMと算出した移動位置にある移動体モデルMとを併せて表示する比較画面をCAD部7に作成させる。CAD部7は、比較画面を生成して、ディスプレイ6に表示させる。
【0098】
これにより、測位データに基づく移動体の実際の位置が、移動経路で示される予定していた進路上の位置と一致しているか否かを確認できる。また、移動体の実際の位置が予定していた進路上の位置と一致していない場合、移動体の実際の移動軌跡が移動経路に対してどの程度ずれているかを確認することができる。
【0099】
位置比較部17は、移動体モデルMが移動経路上で移動を開始する時刻(第1時刻)と、実際の移動体が移動を開始したときに測位データが取得された時刻(第2時刻)とを同期させてもよい。
【0100】
これにより、測位データに基づく移動体の位置が、移動経路上の対応する移動体の位置から遅れているか否かがわかる。したがって、大ブロックの搬送作業が移動経路によって定まる計画時間通りに進んでいるか否かをいち早く確認することができる。
【0101】
あるいは、位置比較部17は、測位位置に近い移動位置を測位位置に対応する移動位置として選択してもよい。このため、位置比較部17は、移動位置を
図16に示すようにして算出する。
【0102】
例えば、位置比較部17は、始点P0と終点P1との間における補間地点のうち、測位位置S0にある移動体モデルMrと最も近い(両者の位置差Lが最小となる)補間地点Pt1を移動位置として選択する。あるいは、位置比較部17は、始点P0と終点P1との間における補間地点のうち、測位位置S0にある実際の移動体(移動体モデルMr)の向きに対して各補間地点の移動体モデルMの向きのなす角度が最も小さくなる(両者の角度差Θが最小となる)補間地点Pt2を移動位置と決定する。
【0103】
なお、位置比較部17は、上記の距離に基づく移動位置の選択方法と、上記の向きに基づく移動位置の選択方法とを適宜組み合わせて移動位置を選択してもよい。
【0104】
位置比較部17は、距離Lおよび角度Θのいずれに基づいて移動位置を決定するかを次の評価式によって得た評価値Eを用いて評価することにより選択する。
【0105】
E=(0.1+Θ)×√(0.1+(L/Lmax))
上式において、Lmaxは、移動経路Rの全体についての距離差Lの最大値である。上式により得られた評価値Eが小さいほど、該当する移動位置が測位位置によく対応していると評価することができる。上式では、距離差Lが小さくなるよりも角度差Θが小さくなる方が評価値Eは小さくなる。
【0106】
距離差Lに基づいて移動位置を選択することにより、
図16に示すように、測位位置にある移動体モデルMrと測位位置に最も近い移動位置にある移動体モデルM1とを比較する。これにより、移動体が計画した進路を移動しているか否かを容易に確認することができる。
【0107】
角度差Θに基づいて移動位置を選択することにより、
図16に示すように、測位位置にある移動体モデルMrと移動体モデルMrの向きが最も近い移動位置にある移動体モデルM2とを比較する。これにより、距離差Lに基づいて移動位置を選択よりも適切な移動位置を選択することが可能になる。例えば、移動経路のカーブの曲率が小さい地点で測位位置と移動位置とを比較する場合、その地点で測位位置と移動位置との距離差Lが少し大きくても、角度差Θが小さければ、当該移動位置が測位位置によく対応していると考えられる。
【0108】
位置比較部17は、上述した第1時刻および第2時刻を同期させて、測位位置S0と移動位置(第1移動位置)との比較を比較画面に表示させる。あるいは、位置比較部17は、測位位置S0にある移動体モデルMrと各補間地点とを距離で比較した結果として選択された移動位置(第2移動位置)を比較画面に表示させる。あるいは、位置比較部17は、測位位置S0にある移動体モデルMrと各補間地点とを向きで比較した結果として選択された移動位置(第3移動位置)を比較画面に表示させる。
【0109】
位置比較部17は、第1~第3移動位置を測位位置S0とともにそれぞれ個別の比較画面に表示させ、これらの比較画面のうち複数の比較画面を同時に表示させてもよい。また、位置比較部17は、上記の個別の比較画面から選択した1つの画面のみを表示させるようにしてもよい。
【0110】
なお、位置比較部17は、評価値Eを用いて距離Lおよび角度Θのいずれかに基づいて移動位置を選択するが、これに限らず、移動経路における工程毎に距離Lおよび角度Θのいずれに基づいて移動位置を選択するかを設定するようにしてもよい。工程ごとに移動位置の選択方法を適宜設定することにより、移動経路の形状などに応じて、測位位置との誤差がより少ない移動位置を選択することができる。
【0111】
(位置予測工程)
位置予測部18によって行われる位置予測工程について説明する。
図17は、位置予測部18によって移動体の未来の位置を予測する合同法について説明するための図である。
図18は、位置予測部18によって移動体の未来の位置を予測する成分加算法について説明するための図である。
図19は、位置予測部18によって移動体の未来の位置を予測する差分法について説明するための図である。
【0112】
位置予測部18は、以下の合同法、成分加算法および差分法のいずれか1つの方法に基づいて移動体の未来の位置(未来位置)を予測する。なお、
図17~
図19においては、便宜上、同じ移動体モデルであっても、時間の推移を表現するために、異なる符号を付記している。
【0113】
位置予測部18は、合同法により、
図17に示すように、現在の測位位置(現在位置)にある移動体モデルMr2と、現在から所定時間遡った過去の測位位置(過去位置)にある移動体モデルMr1との位置関係に基づいて未来位置を予測する。具体的には、位置予測部18は、移動体モデルMr1(
図17に二点鎖線にて示す)を移動体モデルMr2に重ねたときの移動体モデルMr2(
図17に二点鎖線にて示す)の位置を、現在から所定時間後の移動体モデルMr3の位置として予測する。
【0114】
上記の合同法によれば、タイヤなど摩擦抵抗の大きな物体の挙動予測に有効である。
【0115】
位置予測部18は、成分加算法により、
図18に示すように、現在位置と過去位置とについて、過去位置の移動体モデルMr1に対する現在位置の移動体モデルMr2の並進成分および角度成分の変化に基づいて未来位置を予測する。具体的には、位置予測部18は、上記の並進成分および角度成分を算出し、現在位置での並進成分および角度成分にそれぞれ並進成分および角度成分の変化を加算することにより、未来位置を予測する。
【0116】
上記の成分加算法によれば、慣性力が高く摩擦抵抗が小さな物体の挙動予測に対して有効である。
【0117】
位置予測部18は、差分法により、
図19に示すように、移動体モデルMr2がある現在位置に対応する移動経路上の移動体モデルM2の位置との差分に基づいて未来位置を予測する。具体的には、位置予測部18は、移動体モデルMr2の現在位置と、移動体モデルM2の位置との差分を算出し、現在から所定時間後の移動経路上の移動体モデルM3の位置に対して差分を有する位置を未来位置として予測する。
【0118】
上記の差分法によれば、現在位置と移動経路上で現在位置に対応する位置との差分が所定時間後に維持されると想定して、未来位置が予測される。これにより、動きの遅い移動体の比較的短時間(例えは10秒)の先の移動体の位置を予測することができる。
【0119】
以上のように、位置予測部18は、未来位置を予測するために、現在位置を少なくとも用いている。また、位置予測部18は、未来位置を移動経路上で未来位置と対応する移動位置と比較するために、これらの未来位置および移動位置の情報と画像をCAD部7に与える。これにより、CAD部7は、未来位置にある移動体モデルと、未来位置に対応する移動位置にある移動体モデルとを示す画像を作成して、ディスプレイ6に表示させる。
【0120】
これにより、現在位置と他の位置との関係から未来の移動体の位置を簡易的に予測することができる。移動体の未来の位置から、移動経路からの移動体のわずかなずれによって、移動体が障害物に接触することが予測される場合には、ずれを修正することにより、接触を回避することができる。
【0121】
〔ソフトウェアによる実現例〕
移動過程提示装置10の制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。当該制御ブロックは、特に、モデル作成部11、移動経路作成部12、移動状態提示部13、GPS情報変換部16、位置比較部17および位置予測部18が該当する。
【0122】
後者の場合、移動過程提示装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラム(移動過程提示プログラム)の命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU1を用いることができる。
【0123】
上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM3等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、RAM(Random Access Memory)によって構成されるメインメモリ2に上記プログラムを展開してもよい。
【0124】
また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。
【0125】
なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0126】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0127】
10 移動過程提示装置
12 移動経路作成部
13 移動状態提示部
17 位置比較部
18 位置予測部
M 移動体モデル
R 移動経路
Pn1~Pn10 補間地点(中間地点)