(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】結合アッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/15 20060101AFI20230522BHJP
G01N 21/45 20060101ALI20230522BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20230522BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230522BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230522BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
G01N21/45 A ZNA
A61K38/19
A61P43/00 105
A61P37/06
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2019532729
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 CN2017116889
(87)【国際公開番号】W WO2018113621
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】201611180971.4
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516182063
【氏名又は名称】イムテップ エス.アー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャ,ジャスティン・シァォチン
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/028672(WO,A1)
【文献】特表2017-532059(JP,A)
【文献】 Bob Dass ET AL,Octet BLI Technology and Application Overview,PALL Life sciences,2016年02月05日,URL: https://med.virginia.edu/biomolecular-analysis-facility/wp-content/uploads/sites/168/2016/02/UVA_Webex-training_Feb-5_2016_Final.pptx, (20200724)
【文献】JULIE D. NEWMAN ET AL,Insulin Receptor Expression in the Burkitt Lymphoma Cells Daudi and Raji,MOLECULAR ENDOCRINOLOGY,1989年03月01日,Vol. 3, No. 3,pages 597 - 602,doi:10.1210/mend-3-3-597
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 33/15
G01N 21/45
A61K 38/19
A61P 43/00
A61P 37/06
C12Q 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体を含む製剤のMHCクラスII結合活性を決定する
、前記製剤のGMPグレード製造における品質管理アッセイのための方法であって、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いてMHCクラスII分子に対する前記LAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体の結合を決定することを含む、方法。
【請求項2】
MHCクラスII発現細胞上に存在するMHCクラスII分子に対する前記LAG-3タンパク質、断片、誘導体または類似体の結合を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記LAG-3タンパク質、断片、誘導体または類似体がBLIプローブの試薬層に固定化されており、かつ、前記MHCクラスII発現細胞が溶液中にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記MHCクラスII発現細胞が、少なくとも1E6/mLの密度で存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記MHCクラスII発現細胞が、少なくとも4E6/mLまたは8E6/mLの密度で存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記試薬層に対する前記MHCクラスII発現細胞の非特異的結合を最小限に抑えるために、前記試薬層がブロッキング試薬で前処理されている、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ブロッキング試薬がアルブミンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブロッキング試薬がウシ血清アルブミン(BSA)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記MHCクラスII発現細胞がRaji細胞である、請求項2~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記MHCクラスII発現細胞が、凍結保存溶液から得られた、解凍されてすぐ使用できる細胞である、請求項2~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
複数の異なる濃度の前記LAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体について、前記MHCクラスII分子への前記LAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体の結合速度を決定するステップと、前記結合速度についての用量反応曲線を生成するステップとを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体の基準試料のMHCクラスII結合活性を、前記製剤の前記LAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体の結合を決定するために使用したのと同じ条件下で、BLIを使用して前記MHCクラスII分子に対する前記基準試料の前記LAG-3タンパク質、その断片、誘導体、もしくは類似体の結合を決定することによって決定するステップと、前記基準試料について決定された前記MHCクラスII結合活性を前記製剤について決定された前記MHCクラスII結合活性と比較するステップとをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記基準試料の前記MHCクラスII結合活性が100%に設定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基準試料が、そのMHCクラスII結合活性を低下させるように処理されているLAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記基準試料の前記LAG-3タンパク質、断片、誘導体または類似体が、脱グリコシル化されているか、37℃で少なくとも12日間保存されているか、酸化されているか、酸もしくはアルカリ処理により変性されているか、または少なくとも5日間光に曝露されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
LAG-3タンパク質の断片、誘導体または類似体の
GMPグレード製造における品質管理アッセイとしての使用のための、前記断片、誘導体または類似体のMHCクラスII結合活性を決定するためのBLIプローブであって、
前記BLIプローブが、LAG-3タンパク質の断片、誘導体または類似体が固定化されている
試薬層を含む、BLIプローブ。
【請求項17】
前記試薬層に対する前記MHCクラスII発現細胞の非特異的結合を最小限に抑えるために、前記試薬層がブロッキング試薬で前処理されている、請求項16に記載のプローブ。
【請求項18】
前記ブロッキング試薬がアルブミンを含む、請求項17に記載のプローブ。
【請求項19】
前記ブロッキング試薬がBSAを含む、請求項17に記載のプローブ。
【請求項20】
LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体の
GMPグレード製造における品質管理アッセイとしての使用のための、前記LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体のMHCクラスII結合活性を決定するためのキットであって、前記LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体が固定化されている試薬層を有するBLIプローブと、MHCクラスII発現細胞とを含む、キット。
【請求項21】
前記試薬層に対する前記MHCクラスII発現細胞の非特異的結合を最小限に抑えるために、前記BLIプローブの前記試薬層がブロッキング試薬で前処理されている、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記ブロッキング試薬がアルブミンを含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記ブロッキング試薬がBSAを含む、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
前記MHCクラスII発現細胞が凍結細胞である、請求20~23のいずれか1項に記載のキット。
【請求項25】
前記MHCクラスII発現細胞がRaji細胞である、請求項20~24のいずれか1項に記載のキット。
【請求項26】
前記MHCクラスII発現細胞が少なくとも1E6/mLの密度で存在する、請求項20~25のいずれか1項に記載のキット。
【請求項27】
前記MHCクラスII発現細胞が少なくとも4E6/mLまたは8E6/mLの密度で存在する、請求項20~25のいずれか1項に記載のキット。
【請求項28】
LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体、もしくは類似体を含む基準試料をさらに含む、請求項20~27のいずれか1項に記載のキット。
【請求項29】
前記基準試料の前記MHCクラスII結合活性が既知である、請求項28に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月19日に中国特許庁に提出された「結合アッセイ」という名称の中国特許出願第201611180971.4号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)タンパク質の製剤、またはその断片、誘導体もしくは類似体のMHCクラスII結合活性を決定する方法、ならびにその方法に使用するためのプローブおよびキットに関する。
【背景技術】
【0003】
LAG-3タンパク質は、4つの細胞外免疫グロブリンスーパーファミリードメインを有するCD4ホモログI型膜タンパク質である。CD4と同様に、LAG-3はT細胞の表面でオリゴマー化し、抗原提示細胞(APC)上のMHCクラスII分子に結合するが、CD4よりも著しく高い親和性で結合する。LAG-3は活性化CD4+およびCD8+Tリンパ球に発現し、細胞表面でCD3/T細胞受容体複合体と会合し、シグナル伝達を負に調節する。結果として、それはT細胞の増殖、機能、および恒常性を負に調節する。LAG-3は、エフェクターまたはメモリーT細胞と比較して、疲弊したT細胞上で上方制御される。LAG-3はまた、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)上で上方制御され、そして抗LAG-3抗体を使用するLAG-3の遮断は抗腫瘍T細胞応答を増強し得る。
【0004】
IMP321は、高い親和性でMHCクラスIIに結合する組換え可溶性LAG-3Ig融合タンパク質である。これはMHCクラスII陽性抗原提示細胞(APC)を標的とするファーストインクラスの免疫増強剤である(Fougeray et al.A soluble LAG-3 protein as an immunopotentiator for therapeutic vaccines:Preclinical evaluation of IMP321.Vaccine 2006,24:5426-5433、Brignone et al.:IMP321 (sLAG-3) safety and T cell response potentiation using an influenza vaccine as a model antigen:A single-blind phase I study.Vaccine 2007,25:4641-4650、Brignone et al.:IMP321 (sLAG-3),an immunopotentiator for T cell responses against a HBsAg antigen in healthy adults:a single blind randomised controlled phase I study.J Immune Based Ther Vaccines 2007,5:5、Brignone et al.:A soluble form of lymphocyte activation gene-3 (IMP321) induces activation of a large range of human effector cytotoxic cells.J Immunol 2007,179:4202-4211)。IMP321は免疫抑制されていることが知られている以前に治療された進行性腎細胞癌患者で試験されており、3ヶ月以上にわたる反復注射によって治療されるすべての患者において循環活性化CD8 T細胞および長寿命エフェクターメモリーCD8 T細胞のパーセンテージの増加を誘導し、検出可能な毒性はない(Brignone et al.:A phase I pharmacokinetic and biological correlative study of IMP321,a novel MHC class II agonist in patients with advanced renal cell carcinoma.Clin Cancer Res 2009,15:6225-6231)。ほんの数ng/mLの濃度のIMP321がAPCに対してインビトロで活性であることが示されており、免疫系のアゴニストとしてのIMP321の大きな効力を示している(Brignone,et al.,2009、前出)。
【0005】
転移性乳がん(MBC)患者における研究において、Brignoneら(First-line chemoimmunotherapy in metastatic breast carcinoma:combination of paclitaxel and IMP321 (LAG-3Ig) enhances immune responses and antitumor activity.Journal of Translational Medicine 2010,8:71)は、IMP321が結合する一次標的細胞(MHCクラスII陽性単球/樹状細胞)と、続いて活性化する二次標的細胞(NK/CD8+エフェクターメモリーT細胞)の両方が、IMP321によって数か月間増殖および活性化されることを実証した。全部で30人の患者からの結果をプールし、そして腫瘍退縮を適切な既存対照群と比較することによって、彼らは、IMP321がこの臨床状況において有効な抗がん細胞性免疫応答の強力なアゴニストであることを示唆する客観的奏効率の倍増を観察した。
【0006】
WO99/04810は、ワクチン接種のためのアジュバントとしての、およびがん治療におけるLAG-3タンパク質、またはその断片もしくは誘導体の使用を記載している。がんおよび感染症の治療のためのLAG-3タンパク質、またはその断片もしくは誘導体の使用は、WO2009/044273に記載されている。
【0007】
LAG-3、およびその断片もしくは誘導体の医学的用途を考慮すると、医薬品製造管理および品質管理基準(GMP)に準拠するそのような化合物の製剤を提供する必要がある。そのような実務は、活性医薬品の製造および販売のための認可および認可を管理する機関によって推奨されるガイドラインに準拠するために必要とされる。これらのガイドラインは、製品が高品質であり、消費者または公衆に危険を及ぼさないことを保証するために製薬メーカーが満たす必要がある最低限の要件を規定する。タンパク質のGMPグレード製造における品質管理手順の一部として、そのような化合物の製剤が高レベルの生物活性を保持しているかどうかを決定することが必要である。
【0008】
しかしながら、我々は、タンパク質-タンパク質相互作用を決定するためのいくつかの従来の方法が、免疫細胞の表面に発現するMHCクラスII分子に対するLAG-3誘導体IMP321の特異的結合を決定するのに適していないことを見出した。特に、蛍光標識細胞分取(FACS)は、MHCクラスII発現細胞に結合する能力が異なるIMP321製剤を区別するのには適していなかった。FACSを使用して得られた結合曲線について、IMP321の濃度を増加させても、上部プラトーは観察されなかった。これは、収束プラトー(平行性)を必要とする、異なる製剤の相対的効力の計算を妨げる。
【0009】
我々はまた、IMP321が、MesoScale Discovery(MSD)電気化学発光(ECL)アッセイおよび酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に使用されるプレートに非特異的に結合することも見出した。ELISAおよびMSDアッセイに使用したプレートに対するIMP321の非特異的結合は、ブロッキング試薬としてカゼインを使用することによって劇的に減少したが、これはMSDアッセイにおける絶対シグナルを低下させた。MHCクラスII分子を発現する細胞を、MSDプレートに固定化したアッセイを用いて得られた結合曲線について、上部プラトーは観察されなかった。プレートに対するIMP321の非特異的結合の影響を最小限にするために、IMP321の結合後にMHCクラスII分子を発現する細胞を別のプレートに移した、異なるELISA技術も試験した。しかしながら、ウェル間のシグナル変動は許容できないことがわかった。これを考慮して、GMPグレードの製品を試験するための品質管理アッセイにおいて、固定化細胞に対するIMP321の特異的結合を決定するために、MSD ECLアッセイもELISAアッセイも使用することができないと結論付けられた。
【0010】
したがって、そのような化合物のGMPグレードの生産における品質管理アッセイとしての使用に適した、LAG-3タンパク質の製剤、またはその断片、誘導体もしくは類似体のMHCクラスII結合活性を決定するための方法を提供することが必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明によれば、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体を含む製剤のMHCクラスII結合活性を決定する方法であって、バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いてMHCクラスII分子に対するLAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体の結合を決定することを含む、方法が提供される。
【0012】
「バイオレイヤー干渉法(BLI)」という用語は、例えば米国特許第5,804,453号(Chen)に記載されているように、位相シフト干渉法に基づく光ファイバーアッセイを指すために本明細書で使用される。検体検出の感度および精度を向上させることを目的とした開発を含むBLI技術の開発は、ForteBio,Inc.のWO2005/047854およびWO2006/138294に記載されている。
【0013】
米国特許第5,804,453号は、光ファイバー端面に結合している検体を検出するためのプローブ、方法、およびシステムを記載している。検体検出は、検体分子の表面に対する結合から生じる光ファイバーの端面での厚さの変化に基づいており、検体の量が多いほど厚さに関連した干渉シグナルの変化が大きくなる。特に米国特許第5,804,453号の
図7aおよび
図7bに示されるように、干渉シグナルの変化は、ファイバーの端部から反射された光とファイバー端部に担持された結合層から反射された光との間の位相シフトによる。
【0014】
米国特許第5,804,453号に記載されているプローブは、近位端部先端部および遠位端部先端部を有する光ファイバー部と、遠位端部先端に配置された試薬層とを含む。試薬層は、検出されている物質(検体)と反応(または結合)する。光ファイバー部は第1の屈折率を有し、試薬層は第2の屈折率を有する。いずれかの物質が試薬層に結合すると、試薬層と物質とを含む結果として生じる層が形成される。得られた層は、均質な屈折率を有するものとして扱うことができる。
【0015】
この方法は、光ファイバープローブを用いて試料溶液中の物質の濃度を決定することを可能にする。この方法は、(i)光ファイバープローブの遠位端を試料溶液に浸すステップと、(ii)光源を光ファイバープローブの近位端と光学的に結合するステップと、(iii)光ファイバー部の先端面と試薬層との間の界面から反射される少なくとも第1の光線と、試薬層と試料溶液との間の界面から反射されて光ファイバープローブの先端部から反射された第2の光線とを検出するステップと、(iv)1回目に第1および第2の光線によって形成された干渉縞を検出するステップと、(v)2回目に第1および第2の光線によって形成された干渉縞を検出するステップと、(vi)干渉縞にシフトが発生しているかどうかに基づいて試料溶液に存在するかどうかを決定するステップと、を含む。物質の濃度は、干渉縞のシフト、および第1回と第2回との間の差異に基づいて決定し得る。
【0016】
試料溶液中の物質の濃度を検出するためのシステムは、光線を提供するための光源、光ファイバープローブ、検出器、光ファイバーカプラ、光ファイバーコネクタ、およびプロセッサを有する。光ファイバーカプラは、入射光線を受光するための近位端を有する第1の光ファイバー部と、反射された干渉光線を検出器に送るための近位端を有する第2の光ファイバー部と、光ファイバープローブに接続するための遠位端を有する第3の光ファイバー部と、を含む。光ファイバープローブは、光ファイバーカプラに接続するための近位端と、その上に配置された試薬層を有する遠位端チップとを含む。光ファイバープローブは、入射光線から少なくとも第1の反射ビームと第2の反射ビームとを生成する。検出器は、第1および第2の反射ビームによって形成された干渉縞を検出する。カプラは、光源を光ファイバープローブと光学的に結合し、光ファイバープローブを検出器と光学的に結合する。プロセッサは、1回目に検出器によって検出された干渉縞に関連する位相を決定し、2回目に検出器によって検出された干渉縞に関連する位相を決定し、1回目および2回目に検出器によって検出された干渉縞に関連する位相のシフトに基づいて物質の濃度を決定する。
【0017】
BLI技術は、LAG-3タンパク質の製剤、またはその断片、誘導体もしくは類似体のMHCクラスII結合活性を決定するために使用することができ、そのような方法は、そのような化合物のGMPグレードの生産における品質管理アッセイとして特に有用であることを認識した。
【0018】
特定の実施形態では、本発明の方法は、MHCクラスII発現細胞上に存在するMHCクラスII分子に対するLAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体の結合を決定することを含む。そのような実施形態では、LAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体は、BLIプローブの試薬層に固定化されてもよく、そしてMHCクラスII発現細胞は溶液中にある。
【0019】
米国特許第5,804,453号に記載されているプローブ、方法、およびシステムは、以下にMHCクラスII発現Raji細胞に対する組換えLAG-3タンパク質誘導体IMP321の結合によって例示するように、LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体の製剤のMHCクラスII結合活性を決定するために本発明に従って使用され得る。
【0020】
以下の
図1aを参照すると、バイオセンサープローブ100は、光ファイバー102と、光ファイバー102の遠位先端にブロッキング試薬(例えばBSA)およびIMP321を含む試薬層104とを含む。ブロッキング試薬およびIMP321は、所定の濃度のIMP321またはブロッキング試薬を有する溶液中にチップを所定の時間浸すことによって光ファイバー102のチップに結合し得る。
【0021】
入射光線110は光ファイバー102を通ってその遠位端に向かって送られる。第1の屈折率を有する光ファイバー102と第2の屈折率を有する試薬層104との間に画定された界面106において、入射光線110の第1の部分112は反射され、入射光線110の第2の部分114は試薬層104を通って続く。典型的には、ブロッキング試薬およびIMP321は、光学的観点から、入射光線110の波長に対して小さいので、ブロッキング試薬およびIMP321は単一の試薬層104を形成するものとして扱うことができる。入射ビーム110の第2の部分114の、試薬層104の露出面に画定された界面108で、第1の部分116が反射され、第2の部分118が隣接する媒体に入る。入射ビーム110の第2の部分114の第1の部分116のうち、第1の部分160は光ファイバー102を通って逆方向に伝送され、第2の部分(図示せず)は界面106で試薬層104に反射される。
【0022】
光ファイバー102の近位端において、反射ビーム112および160が検出され分析される。その近位端を含む光ファイバー102に沿った任意の所与の点において、反射ビーム112および160は位相差を示すであろう。この位相差に基づいて、試薬層104の厚さS1を決定することができる。
【0023】
以下の
図1bを参照すると、プローブ100は、Raji細胞136を含む溶液134に浸されて、固定化IMP321に対する細胞の結合を決定する。細胞136は試薬層104内の固定化IMP321に結合し、それによってある期間にわたって細胞層132を形成する。層の厚さS
2は、試料流体134中のプローブ100の浸漬時間、ならびに試料流体134中の細胞136の濃度の関数となる。試料溶液中の他の分子138(図示せず)は試薬層104に結合しないであろう。
【0024】
この結合層の合計厚さS
2は、試薬層104単独の厚さS
1よりも大きくなるであろう。したがって、
図1aのプローブ100と同様に、入射ビーム110が光ファイバー102と結合層との間の界面106において、光ファイバー102の遠位先端に向けられると、入射ビーム110の第1の部分112が反射され、入射ビーム110の第2の部分120は結合層を通って続く。第2の部分120が細胞層132の細胞に達すると、それの第1の部分(図示せず)は、それが細胞の細胞膜および細胞骨格構造を満たすときに反射されるであろう。
【0025】
結合層と試料溶液134との間の第2の界面128では、入射ビーム110の第2の部分120の第2の部分124が反射され、入射ビーム110の第2の部分120の第3の部分122は試料溶液134を通って続く。入射ビーム110の第2の部分120の第2の部分124のうち、第1の部分126は光ファイバー102を通って戻り続け、第2の部分(図示せず)は界面106で結合層に反射して戻る。
【0026】
光ファイバー102の近位端において、反射ビーム112および126が検出され分析される。その近位端を含む光ファイバー102に沿った任意の所与の点において、反射ビーム112および126は位相差を示すであろう。この位相差に基づいて、結合層の厚さS2を決定することができる。
【0027】
結合層の厚さS2と試薬層104の厚さS1との間の差を決定することによって、細胞層132の厚さを決定することができる。結合層の厚さS2は、離散的な時点で決定(または「サンプリング」)される。このようにして、結合層の厚さS2と試薬層104の厚さS1との差の増加速度(すなわち、セル層132の厚さの増加速度)を決定することができる。この速度に基づいて、Raji細胞上のMHCクラスII分子に対する固定化IMP321の結合速度は、非常に短いインキュベーション期間内に決定することができる。
【0028】
Raji細胞の直径は約5~7μMで、光の波長の1000倍なので、得られる結果に影響を与えることが予想される。しかしながら、シグナル読み出しは約1~2nMであり、これは光が細胞の表面近くで反射されることを示す。シグナルの変化は再現性があり、細胞の結合と相関しており、結合速度の変化は測定範囲内であるため、光ファイバーの先端に固定化されたIMP321に対するRaji細胞の結合を決定することができる。
【0029】
製剤のMHCクラスII結合活性は、MHCクラスII分子に対するLAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体の結合速度として決定され得る。
【0030】
BLIアッセイを用いて得られた結合速度は溶液中のMHCクラスII発現細胞の密度に依存するが、非MHCクラスII発現細胞の密度が増加すると結合速度は低くかつ比較的平坦であることを我々は見出した。MHCクラスII発現細胞が少なくとも4E6/mL、好ましくは少なくとも6E6/mLまたは8E6/mLの密度で存在する場合、より高い速度および結合曲線のより高い上部プラトーが得られる。
【0031】
BLIプローブの試薬層をブロッキング試薬で前処理して試薬層に対するMHCクラスII発現細胞の非特異的結合を最小限に抑えると、BLIアッセイの特異性が改善されることを我々は見出した。任意の適切なブロッキング試薬、例えば、アルブミン、例えばウシ血清アルブミン(BSA)などの不活性タンパク質を含むブロッキング試薬を使用することができる。
【0032】
MHCクラスII発現細胞は、MHCクラスII分子を発現する免疫細胞であり得る。適切な例には、抗原提示細胞、または免疫細胞由来の細胞株の細胞が含まれる。特定の実施形態では、MHCクラスII発現細胞はB細胞またはB細胞株の細胞、例えばRaji細胞である。
【0033】
本発明の方法に使用されるMHCクラスII発現細胞は、凍結保存溶液から得られる解凍済みのすぐ使用できる細胞であり得ることを我々は見出した。そのような細胞の使用は、本発明の方法が実施される直前に細胞を培養する必要性を排除し、本発明の方法によって得られた結果の信頼性および再現性を確実にするのを助け得、異なる時点で得られた結果を比較することも可能にする。
【0034】
本発明の方法は、複数の異なる濃度のLAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体について、MHCクラスII分子に対するLAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体の結合速度を決定することと、例えば下記の実施例6に記載されるように、結合速度についての用量反応曲線を生成することと、を含み得る。
【0035】
本発明の方法は、LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体の基準試料のMHCクラスII結合活性を、製剤のLAG-3タンパク質、断片、誘導体、または類似体の結合を決定するために使用したのと同じ条件下で、BLIを使用してMHCクラスIIに対する基準試料のLAG-3タンパク質、その断片、誘導体、もしくは類似体の結合を決定することによって、決定することと、基準試料について決定されたMHCクラスII結合活性を製剤について決定されたMHCクラスII結合活性と比較することとをさらに含む。
【0036】
基準試料のMHCクラスII結合活性は、所定の濃度で、100%に設定し、例えば、本発明の方法を用いて作製されたLAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体を含む製剤のMHCクラスII結合活性の測定値の定性または検証を可能にするために様々な所望の濃度に希釈することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、基準試料は、そのMHCクラスII結合活性を低下させるように処理されているLAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体を含む。適切な処理としては、例えば、脱グリコシル化(例えば、PNGaseでの処理による)、37℃で少なくとも12日間の保存、酸化(例えば、1%もしくは0.1%の過酸化水素での処理による)、酸もしくはアルカリでの処理、または少なくとも5日間の光への曝露が含まれる。
【0038】
下記の実施例6は、溶液中のRaji細胞に対する固定化IMP321のMHCクラスII結合活性を決定するためのBLIアッセイを詳細に記載する。
【0039】
本発明によれば、試薬層を含む、LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体のMHCクラスII結合活性を決定するためのBLIプローブであって、試薬層に、LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体が固定化されているプローブもまた提供される。
【0040】
LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体のMHCクラスII結合活性を決定するためのキットであって、LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体が固定化されている試薬層を有するBLIプローブと、MHCクラスII発現細胞と、を含む、キットがさらに提供される。
【0041】
いくつかの実施形態では、BLIプローブの試薬層をブロッキング試薬で前処理して試薬層に対するMHCクラスII発現細胞の非特異的結合を最小限に抑える。任意の適切なブロッキング試薬、例えば、アルブミン、例えばウシ血清アルブミン(BSA)などの不活性タンパク質を含むブロッキング試薬を使用することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、MHCクラスII発現細胞は凍結細胞である。
【0043】
いくつかの態様において、MHCクラスII発現細胞はRaji細胞である。
【0044】
MHCクラスII発現細胞は、少なくとも1E6/mL、好ましくは少なくとも4E6/mL、または8E6/mLの密度で存在し得る。
【0045】
本発明のキットは、例えば上記のように、LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体を含む基準試料をさらに含み得る。好ましくは、基準試料のMHCクラスII結合活性は既知である(例えば、以下に記載されるCCL4放出アッセイによって決定されるように)。
【0046】
本発明のプローブおよびキットは、本発明の方法において使用することができる。
【0047】
LAG-3タンパク質は、単離された天然LAG-3タンパク質または組換えLAG-3タンパク質であり得る。LAG-3タンパク質は、霊長類またはマウスのLAG-3タンパク質、好ましくはヒトLAG-3タンパク質などの任意の適切な種に由来するLAG-3タンパク質のアミノ配列を含み得る。ヒトおよびマウスのLAG-3タンパク質のアミノ酸配列は、Huardらの
図1に提供されている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,11:5744-5749,1997)。ヒトLAG-3タンパク質の配列は、以下の
図25において繰り返される(配列番号1)。ヒトLAG-3の4つの細胞外Igスーパーファミリードメイン(D1、D2、D3、およびD4)のアミノ酸配列はまた、Huardらの
図1のアミノ酸残基:1~149(D1)、150~239(D2)、240~330(D3)、および331~412(D4)に同定されている。
【0048】
LAG-3タンパク質の誘導体には、MHCクラスII分子に結合することができるLAG-3タンパク質の可溶性断片、バリアント、または変異体が含まれる。MHCクラスII分子に結合することができるLAG-3タンパク質のいくつかの誘導体は公知である。そのような誘導体の多くの例は、Huardら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,11:5744-5749,1997)に記載されている。この文献は、LAG-3タンパク質上のMHCクラスII結合部位の分析を記載している。LAG-3の変異体を作製する方法、およびLAG-3変異体がクラスII陽性Daudi細胞に結合する能力を決定するための定量的細胞接着アッセイが記載されている。MHCクラスII分子に対するLAG-3のいくつかの異なる変異体の結合を決定した。いくつかの変異はクラスII結合を減少させることができたが、他の変異はクラスII分子に対するLAG-3の親和性を増加させた。MHCクラスIIタンパク質を結合するのに必須の残基の多くは、LAG-3 D1ドメイン中の大きな30アミノ酸のエクストラループ構造の基部に集まっている。ヒトLAG-3タンパク質のD1ドメインのエクストラループ構造のアミノ酸配列はGPPAAAPGHPLAPGPHPAAPSSWGPRPRRY(配列番号2)であり、
図25の下線を付した配列である。
【0049】
LAG-3タンパク質誘導体は、ヒトLAG-3 D1ドメインの30アミノ酸のエクストラループ配列、または1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するそのような配列のバリアントを含み得る。バリアントは、ヒトLAG-3 D1ドメインの30アミノ酸のエクストラループ配列と少なくとも70%、80%、90%、または95%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含みうる。
【0050】
LAG-3タンパク質の誘導体は、LAG-3タンパク質、好ましくはヒトLAG-3タンパク質のドメインD1、および任意選択でドメインD2のアミノ酸配列を含み得る。
【0051】
LAG-3タンパク質の誘導体は、LAG-3タンパク質、好ましくはヒトLAG-3タンパク質のドメインD1と、またはドメインD1およびD2と、少なくとも70%、80%、90%、または95%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0052】
LAG-3タンパク質の誘導体は、LAG-3タンパク質、好ましくはヒトLAG-3タンパク質のドメインD1、D2、D3、および任意選択でのD4のアミノ酸配列を含み得る。
【0053】
LAG-3タンパク質の誘導体は、LAG-3タンパク質、好ましくはヒトLAG-3の、ドメインD1、D2、およびD3と、またはドメインD1、D2、D3、およびD4と、少なくとも70%、80%、90%、または95%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0054】
アミノ酸配列間の配列同一性は、配列のアラインメントを比較することによって決定することができる。比較された配列中の同等の位置が同一のアミノ酸によって占められているとき、分子はその位置で同一である。同一性のパーセンテージとしてアラインメントを採点することは、比較された配列によって共有される、同一の位置におけるアミノ酸の数の関数である。配列を比較するとき、最適アラインメントは、配列中の可能性のある挿入および欠失を考慮に入れるために、1つ以上の配列にギャップを導入することを必要とし得る。配列比較法は、比較される配列中の同数の同一分子について、比較される2つの配列間のより高い関連性を反映して、できるだけ少ないギャップを有する配列アラインメントが、多くのギャップを有する配列より高いスコアを達成するようにギャップペナルティを使用し得る。最大同一性パーセントの計算は、ギャップペナルティを考慮に入れた最適アラインメントの生成を含む。
【0055】
配列比較を実施するための適切なコンピュータープログラムは、商業的および公的に広く利用可能である。例としては、MatGat(Campanella et al.,2003,BMC Bioinformatics 4:29、http://bitincka.com/ledion/matgatから入手可能なプログラム)、Gap(Needleman&Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)、FASTA(Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410、http://www.ebi.ac.uk/fastaから入手可能なプログラム)、Clustal W 2.0およびX2.0(Larkin et al.,2007,Bioinformatics 23:2947-2948、http://www.ebi.ac.uk/tools/clustalw2から入手可能なプログラム)、ならびにEMBOSS Pairwise Alignment Algorithms(Needleman & Wunsch,1970、前出、Kruskal,1983,In:Time warps,string edits and macromolecules:the theory and practice of sequence comparison,Sankoff&Kruskal(eds),pp1-44,Addison Wesley、http://www.ebi.ac.uk/tools/emboss/alignから入手可能なプログラム)が含まれる。すべてのプログラムは、デフォルトのパラメータを使用して実行できる。
【0056】
例えば、EMBOSSペアワイズアラインメントアルゴリズムの「ニードル」法を用いて配列比較を行うことができ、これはそれらの全長にわたって考慮したときに2つの配列の最適アラインメント(ギャップを含む)を決定し、同一性パーセントスコアを提供する。アミノ酸配列比較のデフォルトのパラメータ(「タンパク質分子」オプション)は、Gap Extendペナルティ:0.5、Gap Openペナルティ:10.0、Matrix:Blosum 62とすることができる。
【0057】
配列比較は、基準配列の全長にわたって実施することができる。
【0058】
LAG-3タンパク質誘導体は、免疫グロブリンFcアミノ酸配列、好ましくはヒトIgG1 Fcアミノ酸配列に、場合によりリンカーアミノ酸配列によって融合されていてもよい。
【0059】
LAG-3タンパク質の誘導体がMHCクラスII分子に結合する能力は、Huardら(前出)に記載されているように定量的細胞接着アッセイを用いて決定することができる。MHCクラスII分子に対するLAG-3タンパク質の誘導体の親和性は、クラスII分子に対するヒトLAG-3タンパク質の親和性の、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%であり得る。MHCクラスII分子に対するLAG-3タンパク質の誘導体の親和性は、クラスII分子に対するヒトLAG-3タンパク質の親和性の、少なくとも50%である。
【0060】
MHCクラスII分子に結合することができるLAG-3タンパク質の適切な誘導体の例には、以下を含む誘導体が含まれる。
ヒトLAG-3配列のアミノ酸残基23~448、
LAG-3のドメインD1およびD2のアミノ酸配列、
以下の位置の1つ以上にアミノ酸置換を有するLAG-3のドメインD1およびD2のアミノ酸配列、ARGがGLUで置換されている73位、ARGがALAまたはGLUで置換される75位、ARGがGLUで置換されている76位、ASPがALAに置換されている位置30位、HISがALAで置換されている56位、TYRがPHEで置換されている77位、ARGがALAで置換されている88位、ARGがALAで置換されている103位、ASPがGLUで置換されている109位、ARGがALAで置換されている115位、
アミノ酸残基54~66が欠失したLAG-3のドメインD1のアミノ酸配列、
組換え可溶性ヒトLAG-3Ig融合タンパク質(IMP321)-ヒトIgG1 Fcに融合したhLAG-3の細胞外ドメインをコードするプラスミドでトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣細胞において産生された200kDa二量体。IMP321の配列は、US2011/0008331の配列番号17に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明の実施形態は、以下の図面を参照して、ほんの一例として以下に記載される。
【0062】
【
図1】本発明の一実施形態による、LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体、もしくは類似体のMHCクラスII結合活性を決定するために使用されるプローブの動作を示す図である(米国特許第5,804,453号から得られる図)。
【
図2】Raji細胞に対するIMP321の結合を測定するためのFACSアッセイの結果を示す。
【
図3】Raji細胞に対するIMP321の結合を決定するためのMesoScale Discovery(MSD)電気化学発光(ECL)アッセイを概略的に示す。
【
図4】
図4(a)は、Raji細胞の存在下および非存在下で、異なる濃度のIMP321でのMSDアッセイについて得られたECLシグナルのプロットを示す。
図4(b)は、Raji細胞の存在下および非存在下で、異なる濃度のリツキサンでのMSDアッセイについて得られたECLシグナルのプロットを示す。
【
図5】
図5(a)は、5%BSAまたは10%FBSでELISAプレートをブロッキングした後の、異なる濃度のIMP321でのELISAについて得られたODシグナルのプロットを示す。
図5(b)は、PBS中の30%FBSでELISAプレートをブロッキングした後の、異なる濃度のIMP321またはリツキサンでのELISAについて得られたODシグナルのプロットを示す。
図5(c)は、RPIM1640中の5%BSAでELISAプレートをブロッキングした後の、異なる濃度のIMP321またはリツキサンでのELISAについて得られたODシグナルのプロットを示す。
【
図6】
図6(a)は、異なるブロッキング試薬(1%脱脂乳、3%脱脂乳、カゼイン)でELISAプレートをブロッキングした後の、異なる濃度のIMP321またはリツキサンでのELISAについて得られたODシグナルのプロットを示す。
図6(b)は、異なるブロッキング試薬(1%ゼラチン、3%ゼラチン、またはPBS)でELISAプレートをブロッキングした後の、異なる濃度のIMP321またはリツキサンでのELISAについて得られたODシグナルのプロットを示す。
【
図7】
図7(a)は、異なる播種密度のRaji細胞に対して、異なる濃度のIMP321でのMSDアッセイについて得られた生のECLシグナルのプロットを示す。
図7(b)は、異なる播種密度のRaji細胞に対して、異なる濃度のIMP321でのMSDアッセイについて得られた特異的ECLシグナルのプロットを示す。
【
図8】カゼインでMSDプレートをブロッキングした後の、Raji細胞またはHLA-DR
dimL929細胞に対する異なる濃度のIMP321の結合についてのMSDアッセイについて得られたECLシグナルのプロットを示す。
【
図9】Raji細胞を含む試料溶液中にセンサーの先端を浸した状態で、センサーの光ファイバーの遠位先端に固定されたプロテインA結合センサーおよびIMP321を有するBLIプローブを左側に概略的に示す。この方法の基本的なステップは図の右側に示されている。
【
図10】
図10(a)は、会合ステップにおいて溶液中のRaji細胞に対する固定化IMP321の用量依存的結合についてのBLIアッセイにおいて得られた結合シグナルのプロットを示す。
図10(b)は、BLIアッセイにおけるRaji細胞に対するIMP321の用量依存的結合の標準曲線を示す。
【
図11】
図11(a)は、BLIアッセイでの、溶液中の異なる濃度のRaji細胞(MHCクラスIIを発現している)またはJurkat細胞(MHCクラスIIを発現していない)に対する固定化IMP321の結合の結合曲線および解離曲線を示す。
図11(b)は、さまざまな濃度のRaji細胞について得られた結合シグナルのグラフを示す。
【
図12】
図12(a)は、BLIアッセイでの、溶液中のRaji細胞に対する固定化IMP321、ヒュミラ、またはアバスチンの結合の結合曲線および解離曲線を示す。
図12(b)は、異なる固定化タンパク質について得られた結合シグナルのグラフを示す。
【
図13】溶液中のRaji細胞に対するIMP321の異なる固定化製剤の結合についてのBLIアッセイにより測定された、それらの予想される効力に対する結合効力のパーセンテージのプロットを示す。
【
図14】
図14(a)は、溶液中で予め培養したRaji細胞に対する異なる濃度の固定化IMP321の結合についてのBLIアッセイによって得られた結合シグナルのプロットを示す。
図14(b)は、溶液中の予め凍結したRaji細胞に対する異なる濃度の固定化IMP321の結合についてのBLIアッセイによって得られた結合シグナルのプロットを示す。
【
図15】
図15(a)は、Raji細胞に対する異なる濃度の固定化IMP321または脱グリコシル化IMP321の結合についての細胞に基づくアッセイによって得られた下流のCCL4放出のプロットを示す。
図15(b)は、Raji細胞に対する異なる濃度の固定化IMP321または脱グリコシル化IMP321の結合についてのBLIアッセイによって得られた結合シグナルのプロットを示す。
【
図16】Raji細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、IMP321または不適切に(37℃で12日間)保存したIMP321の結合シグナルのプロットを示す。
図16(a)に示される結果はCCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイによって得られ、そして
図16(b)に示される結果はBLIアッセイによって得られた。
【
図17】Raji細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、IMP321または不適切に(37℃で1ヶ月間)保存したIMP321の結合シグナルのプロットを示す。
図17(a)に示される結果はCCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイによって得られ、そして
図17(b)に示される結果はBLIアッセイによって得られた。
【
図18】Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または酸化IMP321(1%の過酸化水素による)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図18a)またはBLIアッセイ(
図18b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
【
図19】Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または酸化IMP321(0.1%の過酸化水素による)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図19a)またはBLIアッセイ(
図19b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
【
図20】Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または酸処理IMP321(pH3.0での)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図20a)またはBLIアッセイ(
図20b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
【
図21】Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または酸処理IMP321(pH3.1またはpH3.6での)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図21a)またはBLIアッセイ(
図21b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
【
図22】Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または塩基処理IMP321(pH9.2またはpH9.75での)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図22a)またはBLIアッセイ(
図22b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
【
図23】Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または光曝露IMP321(25℃で5日間)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図23a)またはBLIアッセイ(
図23b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
【
図24】Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または光曝露IMP321(25℃で10日間)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図24a)またはBLIアッセイ(
図24b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
【
図25】成熟型ヒトLAG-3タンパク質のアミノ酸配列を示す。4つの細胞外Igスーパーファミリードメインはアミノ酸残基1~149(D1)、150~239(D2)、240~330(D3)、331~412(D4)にある。ヒトLAG-3タンパク質のD1ドメインのエクストラループ構造のアミノ酸配列は太字で下線を付している。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下の実施例1~5は、それらが組換えLAG-3タンパク質誘導体IMP321のGMPグレード生産のための品質管理アッセイとしての使用に適しているかどうかを決定するための、様々な異なる結合アッセイの評価を記載する。どのアッセイも適切であるとは認められなかった。実施例6~11は、細胞に基づくBLI方法、およびIMP321の製剤のMHCクラスII結合活性を決定するためのそれらの適合性の実証を記載する。
【0064】
実施例1
Raji細胞に対するIMP321の結合を決定するための蛍光標識細胞分取(FACS)アッセイの使用の評価
FACSアッセイを実施して、Raji細胞に対するIMP321の結合を決定した。100%、75%、および50%のMHCクラスII結合活性を有するIMP321試料を試験した。100%活性を有する試料は、所定の濃度で既知のMHCクラスII結合活性を有する基準試料であった。75%および50%の活性を有する試料は、基準試料の希釈によって調製された。
【0065】
得られた結合曲線を
図2に示す。それらは、上部プラトーに達していないことを示し、それ故、100%活性を有する基準試料と他の試料との結合曲線の間に平行性はなかった。これは、異なる試料の相対的効力の計算を妨げた。
【0066】
実施例2
Raji細胞に対するIMP321の結合を決定するためのMeso Scale Discovery(MSD)アッセイの使用の評価
この実施例は、Raji細胞に対するIMP321の結合を決定するためのメソスケールディスカバリー(MSD)アッセイの評価を記載する。
【0067】
Meso Scale Discoveryプラットフォーム(MSD-ECL)は、検出抗体にコンジュゲートしている電気化学発光標識を使用する。これらの標識は、適切な化学的環境で電気によって刺激されたときに光を発しし、次いでそれは主要なタンパク質と分子を測定するために使用することができる。
【0068】
Meso Scale Discoveryプラットフォーム(MSD-ECL)によってプレート電極に電気が印加され、標識による発光がもたらされる。次いで、光強度を測定して試料中の検体を定量する。
【0069】
検出プロセスは、Meso Scale Discovery(MSD-ECL)のマイクロプレートの底部にある電極で開始され、電極付近の標識のみが励起され検出される。このシステムは、620nmで発光するルテニウムとの二重還元反応のための触媒として高濃度のトリプロピルアミンを含む緩衝液を使用する。
【0070】
使用したMSDアッセイを
図3に概略的に示す。手短に、PBS中の1ウェルあたり約2×10
4細胞のRaji細胞を、25uL/ウェルで、Single-SPOT96ウェルMSDプレート(Meso Scale Discovery, Gaithersburg, MD)に播種した。ブロッキング緩衝液(25uL/ウェル)でブロッキングする前に、プレートを室温で1~1.5時間インキュベートした。次いで、IMP321基準標準物質または試料の段階希釈物を、50uL/ウェルで二重のウェルにロードした。室温での約1時間のインキュベーションの後、ルテニウムをコンジュゲートした抗ヒトFcを50uL/ウェルで用いて結合IMP321を検出した。界面活性剤なしのMSD読み取り緩衝液を用いて電気化学発光シグナルを得た。ECL数は、アッセイ範囲内で細胞表面に対するIMP321の結合に比例するはずである。
【0071】
マイクロプレートの底部にある高結合炭素電極は、Raji細胞の容易な付着を可能にする。このアッセイは、抗IMP321抗体にコンジュゲートしている電気化学発光標識を使用する。MSD機器によってプレート電極に電気が印加され、標識による発光がもたらされる。次いで光強度を測定して、固定化Raji細胞の表面上のMHCクラス分子に結合したIMP321の存在を定量する。
【0072】
Raji細胞を含むおよび含まないIMP321を含む試料について得られた結果を
図4(a)に示し、Raji細胞を含むまたは含まないリツキサンを含む試料について得られた結果を
図4(b)に示す。
【0073】
結果は、MSDプレートに対するIMP321の非特異的結合がRaji細胞の非存在下で観察されたことを示している。比較すると、リツキサンのRaji細胞に対する特異的結合が観察された。
【0074】
Raji細胞は、1963年の11歳のナイジェリアのバーキットリンパ腫の男性患者のBリンパ球に由来する細胞株の細胞である。リツキサン(リツキシマブ)は、B細胞の表面に主に見られるタンパク質CD20に対するキメラモノクローナル抗体である。
【0075】
実施例3
ELISAプレートに対するIMP321の非特異的結合の評価
この実施例は、異なるブロッキング試薬を使用する酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)に使用されるプレートに対するIMP321およびリツキサンの非特異的結合の評価を記載する。
【0076】
手短に、マイクロプレートをブロッキング試薬によって25℃で2時間ブロッキングした。試料およびリツキサン対照を希釈緩衝液で2μg/mlに希釈し、次いで2倍希釈系列によりさらに希釈した。希釈した試料を添加してインキュベートする前後にマイクロプレートを洗浄し、十分に排水した。二次抗体と共にインキュベートした後、SpectraMax M2(450~650nm)を用いた分光測定法によりシグナルを測定した。
【表1】
【0077】
結果を
図5に示す。
図5(a)は、増加する濃度のIMP321および5%BSAまたは10%FBSでブロッキングしたELISAプレートを用いたELISAの結果を示す。
図5(b)は、増加する濃度のIMP321またはリツキサンおよびPBS中30%FBSでブロッキングしたELISAプレートを用いたELISAの結果を示す。
図5(c)は、増加する濃度のIMP321またはリツキサンおよびRPIM 1640中5%BSAでブロッキングしたELISAプレートを用いたELISAの結果を示す。
【0078】
結果は、ブロッキング試薬としてBSAまたはFBSを使用したとき、ELISAプレートに対するIMP321の強い非特異的結合があるが、リツキサンではそうならないことを示している。
【0079】
次いで、ELISAプレートに対するIMP321の非特異的結合を排除することができるかどうかを確かめるために、IMP321またはリツキサンと共に様々な種類のブロッキング試薬を試験した。
【表2】
【0080】
結果を
図6に示す。
図6(a)は、ブロッキング試薬として1%の脱脂乳、3%の脱脂乳、またはブロッカーカゼインブロッキング緩衝液(Thermo)を用いたIMP321またはリツキサンの結果を示す。
図6(b)は、ブロッキング試薬として1%ゼラチン、3%ゼラチン、またはPBSを用いたIMP321またはリツキサンの結果を示す。
【0081】
結果は、カゼインがELISAプレートに対するIMP321の非特異的結合を減少させるための最良のブロッキング試薬であることを示している。
【0082】
実施例4
Raji細胞に対するIMP321の結合を決定するための、カゼインブロッキング緩衝液を用いたMeso Scale Discovery(MSD)アッセイの使用の評価
この実施例は、カゼインブロッキング緩衝液を使用して異なる播種密度のRaji細胞に対するIMP321の結合を決定するためのMSDアッセイの評価を記載する。
【0083】
実施例2に記載したものと同様にMSDアッセイを実施して、その実施例で観察されたMSDプレートに対するIMP321の非特異的結合がカゼインブロッキング緩衝液を用いて最小化され得るかどうかを評価した。
【表3】
【0084】
結果を
図7に示す。
図7(a)は、異なる濃度のIMP321での異なる播種密度のRaji細胞(0~5×10
4細胞/ウェル)に対するIMP321の結合の結果を示す。結果は、最大IMP321結合の細胞密度依存的増加を示す。
図7(b)は、異なる播種密度(1×10
3~5×10
4細胞/ウェル)のRaji細胞に対するIMP321の特異的結合の結果を示す。結果は、特異的IMP321結合の細胞密度依存的増加を示す。
【0085】
カゼインブロッキング緩衝液を用いるMSDアッセイを用いて、Raji細胞に対するIMP321の結合を、異なる濃度のIMP321でのHLA-DR
dimL929細胞(これらの細胞はMHCクラスIIを発現しない)に対するIMP321の結合と比較した。L929は、株Lからクローン化された線維芽細胞様細胞株である。結果を
図8に示す。結果は、MSDプレートに対するIMP321の非特異的結合がカゼインブロッカーの存在下で顕著に減少したことを示す。しかしながら、特異的結合シグナルは低く、そしてIMP321用量-結合曲線の上部プラトーは観察されなかった。
【0086】
カゼインブロッキング緩衝液を使用するMSDアッセイは、プレート固定化Raji細胞に対するIMP321の特異的結合を実証するために使用することはできないと結論付けられた。
【0087】
実施例5
Raji細胞に対するIMP321の結合を決定するためのELISAアッセイの使用の評価
この実施例は、Raji細胞に対するIMP321の結合を決定するための細胞に基づく直接ELISAおよび細胞に基づくトランスファーELISAの能力の評価を記載する。
【0088】
直接ELISA(実施例3に記載のアッセイと同様に)を、異なるブロッキング試薬(5%BSA、10%FBS、0.5%カゼイン、または3%ゼラチン)の存在下で、異なる量のプレート固定化Raji細胞(10,000、5,000、または2,500細胞)、および異なる濃度のIMP321またはペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F、N結合型糖タンパク質からの高マンノース型、ハイブリッド型、および複合型オリゴ糖の最も内側のGlcNAcとアスパラギン残基の間を切断するアミダーゼ)で処理されたIMP321によって実施した。直接ELISAアッセイに使用される条件は、以下の表に要約されている。
【表4】
【0089】
【0090】
結果は、プレート固定化Raji細胞に対する用量依存的IMP321結合を示す。
【0091】
IMP321がELISAプレートに非特異的に結合するかどうかを調べるために、以下の表に要約される条件下で、Raji細胞の非存在下で直接ELISAを実施した。
【表6】
【0092】
【0093】
結果は、プレート固定化Raji細胞の非存在下でのELISAプレートに対するIMP321の強い非特異的結合を示す。カゼインブロッキング試薬もゼラチンブロッキング試薬も、IMP321のPNGase処理も非特異的結合を除去しなかった。
【0094】
細胞に基づく直接ELISAは、プレート固定化Raji細胞に対するIMP321の特異的結合を実証するために使用することはできないと結論付けられた。
【0095】
トランスファーセルELISAを実施して、固定化Raji細胞に対する、異なる濃度のIMP321、またはPNGaseで処理したIMP321の結合を決定した。Raji細胞を、IMP321または処理したIMP321に結合させた後に別のプレートに移した。アッセイに使用した条件は以下の表に要約されている。
【表8】
【0096】
【0097】
結果は、ウェル間のシグナル変動は品質管理方法には許容できないことを示している。この方法もまた労働集約的である。細胞に基づくトランスファーELISAは、プレート固定化Raji細胞に対するIMP321の特異的結合を実証するために使用することはできないと結論付けられた。
【0098】
実施例6
バイオレイヤー干渉法(BLI)を用いたLAG-3タンパク質誘導体IMP321の製剤の結合活性を測定するための細胞に基づくアッセイ
IMP321は、MHCクラスII分子に対して高い親和性を有するLAG-3タンパク質の可溶性組換え誘導体である。この実施例は、BLIを使用して、MHCクラスII発現Raji細胞に対するIMP321の結合活性を測定するための細胞に基づくアッセイを記載する。アッセイは簡単かつ迅速であり、そして基準標準物質と試料との間の比較を可能にする。
【0099】
図9は、Raji細胞を含む試料溶液中にセンサーの先端を浸した状態で、センサーの光ファイバーの遠位先端に固定されたプロテインA結合センサーおよびIMP321を有するBLIプローブを左側に概略的に示す。この方法の基本的なステップは図の右側に示されている。アッセイは以下により詳細に記載される。
【0100】
材料:
1)Raji細胞:ATCC/CCL-86
2)RPMI 1640:Invitrogen/22400-089
3)HI-FBS:Invitrogen/10100147
4)DPBS:ハイクローン/SH30028.01B
5)BSA:Sigma/A3032
6)IMP321基準試料
7)Raji細胞増殖培地:RPMI 1640、10%HI-FBS
8)結合アッセイ希釈液:DPBS、0.5%BSA
9)プロテインAトレイ(ForteBio-18-5010)
10)96平底ウェル黒色プレート(Greiner-655209)
11)シングルおよびマルチチャンネルピペット:Sartorius and Eppendorf/various
12)細胞計数器:Roche/Cedex HiResおよびBeckman/ViCell
13)バイオレイヤー干渉計:ソフトウェアバージョン7.0以降を搭載したFortebio/Octet Red
【0101】
方法:
1.すぐ使用できるRaji細胞の調製
1)液体窒素フリーザーからNバイアルのRaji細胞を取り出し、37℃のウォーターバスで素早く解凍する。
2)バイアルの内容物を無菌的に、およそN×9mLのRaji細胞増殖培地を含む滅菌遠心分離チューブに移す。静かにピペッティングしてよく混ぜる。
3)細胞を300×gで5分間遠心する。結合アッセイ希釈液に細胞を再懸濁し、細胞計数器または血球計でそれらを計数する。
4)1mLあたり4.0E6~8.0E6細胞に細胞密度を調整するために十分な量の結合アッセイ希釈液に一定量の細胞ストック懸濁液を加え、使用するために氷上に保つ。
【0102】
2.IMP321基準標準物質、対照および試料の調製
注:1)精度を確保するために逆ピペッティングを使用する。
2)泡沫と泡の発生を避けるか最小限に抑えるために、穏やかにボルテックスする。
1)基準標準物質:
1.1)必要に応じてIMP321基準標準物質のバイアルを解凍する。2~8
oCで保存する。有効期限は解凍日から7日間である
1.2)IMP321基準標準物質を製剤緩衝液中で約1.0mg/mLに希釈する。新鮮なものを調製し、新鮮なものを使用する。ブランクとして製剤緩衝液を用いて分光光度的にタンパク質濃度を決定する。
1.3)測定されたタンパク質濃度に基づいて、RMを希釈して以下に記載されるような適切な濃度に標準曲線を調製する。ボテックス(votex)により希釈液を混合する。
【表10】
【0103】
1.4)標準曲線のために希釈C-Jを使用する。曲線の直線部分および上部および下部のプラトーを含めるために、必要に応じて追加の濃度を使用することができる。
2)対照の準備
2.1)対照は、上記ステップ1.3で調製したチューブCからの基準試料の独立した希釈物である。上記の表に記載されているようにさらに希釈する。ボテックスにより希釈液を混合する。
2.2)対照に希釈C-Jを使用する。
3)試料の調製
3.1)タンパク質濃度に基づいて、IMP321試料をアッセイ希釈液で約1.0mg/mLに希釈する。新鮮なものを調製し、新鮮なものを使用する。
3.2)上記表に記載されるように、標準曲線を作成するためにさらに希釈して適切な濃度にする。ボテックスにより希釈液を混合する。
3.3)試料に希釈C-Jを使用する。曲線の直線部分および上部および下部のプラトーを含めるために、必要に応じて追加の濃度を使用することができる。
【0104】
3.Octetシステムの検出ステップ
1)バイオセンサーをPBS中で少なくとも10分間水和する。
2)アッセイプレートを準備する。黒色のポリプロピレン製マイクロプレートで、以下の試料プレートマップに従って、ウェル当たり200μLのPBS、アッセイ希釈液、AD中のIMP321の滴定、またはRaji細胞をそれぞれ適切なウェルに移す。
【表11】
3)下記のパラメータ設定で動的アッセイを設定する。
4)データを保存する場所とファイル名を入力する。
5)GOをクリックしてアッセイを実施する。
【表12】
【0105】
4.データを分析する
1)Octet Data Analysisソフトウェアで、分析するデータフォルダをロードする。
2)加工タブで、結合ステップを選択する。次に「選択したステップの定量化」をクリックする。
3)濃度情報を適宜入力する。
4)結果タブで、結合速度式としてR平衡(Req)を選択する。この式は、実験中に生成された結合曲線に適合し、平衡時の応答を出力シグナルとして計算する。
5)結合速度を計算するをクリックする。結果は自動的に表に表示される。
6)レポートを保存ボタンをクリックしてMSエクセルレポートファイルを生成する。
7)4パラメータロジスティック曲線近似プログラムであるSoftMax Proを使用して、ug/mLで表されるIMP321濃度に対する結合速度(nm)により標準曲線または試料曲線を作成する。例を
図10に示す。
8)基準標準物質と試料のEC50比を用いて試料の相対結合効力を計算する。
【0106】
5.システムの適合性とアッセイの許容基準
以下の基準をすべて満たす場合、アッセイは有効である。
1)すぐ使用できるRaji細胞生存率>=60%
2)対照の相対活性は80%~120%以内である。
3)対照のシグナル対バックグラウンド比(パラメータD/パラメータA)>=2。
4)平行度(比較可能性):標準との勾配比は0.8から1.4の間である。
5)アッセイ対照の結果が上記の基準を満たさない場合、アッセイは無効とみなされる。
【0107】
6.報告可能な値
1)臨床試料については、試料についての報告可能な値は、以下に詳述するように、2つまたは3つの有効かつ独立したアッセイ結果の平均として定義される。
差異%は次のように計算される。
絶対値(アッセイ1の結果-アッセイ2の結果)/平均値(アッセイ1の結果、アッセイ2の結果)×100%
2)2つのアッセイの差異%が20%以下の場合、2つのアッセイの平均結果を報告する。
3)2つのアッセイの差異%が20%を超える場合、1つの追加の有効なアッセイを実行する。
4)3試料アッセイのCVが25%以下の場合、3アッセイの平均結果を報告する。
5)3試料アッセイのCVが25%を超える場合、報告可能な値はない。再試験計画との不一致を起こす。
6)試料の報告可能な値がCOAに記載されている仕様を満たしていない場合は、再試験計画との不一致を起こす。
【0108】
7.再試験計画
次のように試料の再試験を実行します。
1)3つの有効で独立したアッセイで試料を再試験する
2)3試料アッセイのCVが25%以下の場合、3アッセイの平均結果を報告する。
3)3試料アッセイのCVが25%を超える場合、報告可能な値はない。
4)再試験の結果がCOAに記載されている規格外(OOS)である場合、結論は不合格である。
【0109】
実施例7
BLIアッセイにおける溶液中のRaji細胞に対する固定化IMP321の特異的結合の決定
実施例6に記載のBLIアッセイを使用して、溶液中の異なる濃度(8E6/mL、4E6/mL、2E6/mL、1E6/mL)のRaji細胞に対する固定化IMP321の結合を決定した。Jurket細胞を陰性対照として使用した。得られた結合曲線および解離曲線を
図11(a)に示す。
図11(b)は、異なるRaji細胞濃度について得られた結合シグナルのグラフを示す。結果は、結合シグナルがRaji細胞の濃度に依存すること、すなわち、Raji細胞の濃度が高いほど、高い結合速度およびより高い上部プラトーが得られることを示している。同じアッセイにおいて、Jurket細胞の特異的結合は観察されなかった。
【0110】
Raji細胞に対する固定化IMP321の結合を固定化ヒュミラまたはアバスチンによる結合と比較すること以外は実施例6に記載したようにさらなるBLIアッセイを行った。得られた結合曲線および解離曲線を
図12(a)に示す。
図12(b)は、異なる固定化タンパク質について得られた結合シグナルのグラフを示す。結果は、ヒュミラまたはアバスチンではなく、IMP321がRaji細胞に結合することを示している。
【0111】
これらの結果から、BLIアッセイは溶液中のRaji細胞に対する固定化IMP321の特異的結合を決定することができると結論付けられた。
【0112】
実施例8
BLIアッセイにより測定したIMP321結合活性と既知の結合効力との相関
種々のレベルのRaji細胞結合効力を有する基準標準物質から希釈したIMP321の試料をBLIアッセイに用いて、アッセイにより測定された結合活性が試料の既知の結合効力と相関するかどうかを決定した。結果を以下の表に示す。
図13は、BLIアッセイによって測定された結合効力パーセンテージ対それらの予想される効力のプロットを示す。
【表13】
【0113】
結果は、BLIアッセイによって測定された結合効力と予想される結合効力との間の良好な相関関係を示す。各試料の平均回収率は90%から110%であり、結合曲線の良好な平行性(すなわち許容可能な勾配比および収束プラトー)を伴った。
【0114】
実施例9
MHCクラスII結合活性を測定するためのBLIアッセイにおける凍結細胞の使用
実施例6に記載のBLIアッセイを実施して、培養または凍結保存溶液から得られた溶液中のRaji細胞に対する固定化IMP321の結合を比較した。溶液中の培養Raji細胞に対する異なる濃度の固定化IMP321の結合について得られた結合シグナルのプロットを
図14(a)に示す。溶液中の予め凍結したRaji細胞に対する異なる濃度の固定化IMP321の結合について得られた結合シグナルのプロットを
図14(b)に示す。
【0115】
結果は、凍結されたRaji細胞が培養されたRaji細胞と非常によく似た挙動をするので、凍結保存溶液を新鮮な培養溶液の代わりに使用することができ、それによってアッセイの頑健性および転写性が改善される。
【0116】
実施例10
インプロセス試料試験
実施例6に記載のBLIアッセイを実施して、IMP321の様々な異なる製剤のMHCクラスII結合活性を決定し、CCL4放出アッセイによって決定されるように製剤の生物活性を比較した。
【0117】
THP-1はヒト単核白血病細胞株である。LAG-3タンパク質またはストレスを受けた試料で誘導されると、THP-1細胞はサイトカインCCL4を分泌し、これはCCL4 ELISAキットで定量することができる。CCL4放出のレベルは、LAG-3タンパク質、またはその断片、誘導体もしくは類似体の製剤の生物活性を測定するために使用することができる。
【表14】
【0118】
異なるIMP321試料の生物活性は、CCL4放出アッセイによって決定された生物活性と相関していると結論付けられた。
【0119】
実施例11
ストレスを受けたIMP321試料のBLIアッセイ試験および細胞に基づくCCL4放出アッセイとの相関
実施例6に記載のBLIアッセイを用いて、異なる処理(PNGaseでの処理による脱グリコシル化、37℃での保存、1%または0.1%過酸化水素処理による酸化、pH3.0、3.6、または3.1の酸による処理、pH9.2、9.75のアルカリによる処理、または光への曝露)にさらされたIMP321試料のMHCクラスII結合活性を測定した。結果を
図15~24に示す。
【0120】
図15(a)は、Raji細胞に対する異なる濃度の固定化IMP321または脱グリコシル化IMP321の結合についての細胞に基づくアッセイによって得られた下流のCCL4放出のプロットを示す。
図15(b)は、Raji細胞に対する異なる濃度の固定化IMP321または脱グリコシル化IMP321の結合についてのBLIアッセイによって得られた結合シグナルのプロットを示す。
図16は、Raji細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、IMP321または不適切に(37℃で12日間)保存したIMP321の結合シグナルのプロットを示す。
図16(a)に示される結果はCCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイによって得られ、そして
図16(b)に示される結果はBLIアッセイによって得られた。
図17は、Raji細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、IMP321または不適切に(37℃で1ヶ月間)保存したIMP321の結合シグナルのプロットを示す。
図17(a)に示される結果はCCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイによって得られ、そして
図17(b)に示される結果はBLIアッセイによって得られた。
図18は、Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または酸化IMP321(1%の過酸化水素による)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図18a)またはBLIアッセイ(
図18b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
図19は、Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または酸化IMP321(0.1%の過酸化水素による)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図19a)またはBLIアッセイ(
図19b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
図20は、Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または酸処理IMP321(pH3.0での)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図20a)またはBLIアッセイ(
図20b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
図21は、Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または酸処理IMP321(pH3.1またはpH3.6での)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図21a)またはBLIアッセイ(
図21b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
図22は、Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または塩基処理IMP321(pH9.2またはpH9.75での)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図22a)またはBLIアッセイ(
図22b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
図23は、Rajiの細胞に対する、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または光曝露IMP321(25℃で5日間)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図23a)またはBLIアッセイ(
図23b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
図24は、異なる濃度の、固定化した、未処理のIMP321または光曝露IMP321(25℃で10日間)の結合について、CCL4放出を測定する細胞に基づくアッセイ(
図24a)またはBLIアッセイ(
図24b)によって得られたシグナルのプロットを示す。
【0121】
(実施例6に記載されるような方法により決定される)それらのMHCクラスII結合活性と比較した生物活性を(異なるIMP321試料のCCL4放出により決定されるように、以下の表に示す。
【表15】
【0122】
結果は、CCL4放出によって決定されるように、処理された各IMP321試料の生物活性と、本発明によるBLIアッセイによって決定されるようにそのMHCクラスII結合活性との間に良好な相関関係を示す。BLIアッセイによるMHCクラスII結合活性の決定は、IMP321製剤の生物活性を決定するために使用され得ると結論付けられた。
【配列表】