(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】光学透明粘着シート、これを製造するための組成物およびこれを用いた平板表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20230522BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20230522BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230522BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230522BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230522BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J4/02
C09J11/06
G09F9/00 302
G09F9/30 308Z
C08F220/26
(21)【出願番号】P 2019558404
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 KR2018004926
(87)【国際公開番号】W WO2018199686
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2017-0055262
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,スン-ウー
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヘ-リム
(72)【発明者】
【氏名】ソン,イン-キュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,キョン-ムン
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094569(JP,A)
【文献】特開2013-122035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177147(US,A1)
【文献】特開2014-091775(JP,A)
【文献】特開2010-275373(JP,A)
【文献】特開2014-043543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 ー 201/10
G09F 9/00
G09F 9/30
C08F 220/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート単量体を部分重合させて製造された樹脂シロップおよび第2光開始剤を含む光学透明粘着シートであって、
前記(メタ)アクリレート単量体を部分重合させて製造された樹脂シロップは、ヒドロキシ基を含むアクリレート単量体、
単官能性(メタ)アクリレート単量体、
および第1光開始剤を含み、
前記樹脂シロップは、重量平均分子量が60万以上100万以下であり、
前記第2光開始剤は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾイルギ酸、1,4-ジベンゾイルベンゼン、ベンジル、ベンゾフェノンアクリルからなる群より選択される2種以上を含み、
前記光学透明粘着シートは、1次紫外線架橋結合後の貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×10
6~1.0×10
7Pa、70℃および1Hzで5.0×10
4~5.0×10
5Paであり、
2次紫外線架橋結合後の硬化後の貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.9×10
6~6.7×10
6Paであり、
2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10~100%である、光学透明粘着シート。
【請求項2】
前記光学透明粘着シートは、ゲル分率が30~70%である、請求項1に記載の光学透明粘着シート。
【請求項3】
前記ヒドロキシ基を含むアクリレート単量体は、前記(メタ)アクリレート単量体を部分重合させて製造された樹脂シロップの総重量に対して、5~20重量%含まれる、請求項
1に記載の光学透明粘着シート。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート単量体は、単官能である、請求項1に記載の光学透明粘着シート。
【請求項5】
前記第2光開始剤は、前記(メタ)アクリレート単量体を部分重合させて製造された樹脂シロップを100重量部とした時、0.1~5重量部含まれるものである、請求項1に記載の光学透明粘着シート。
【請求項6】
前記第2光開始剤は、前記ヒドロキシ基を含むアクリレート単量体および前記単官能性(メタ)アクリレート単量体の総計を100重量部とした時、0.1~5重量部含まれるものである、請求項
1に記載の光学透明粘着シート。
【請求項7】
請求項1に記載の光学透明粘着シートを含む平板表示装置。
【請求項8】
前記平板表示装置は、フレキシブルディスプレイ装置であることを特徴とする、請求項
7に記載の平板表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学透明粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式携帯用装置、コンピュータディスプレイおよびタッチパネルのような電子装置の映像ディスプレイモジュールでは、表面保護層としてガラスまたはプラスチックフィルムを積層させる。映像ディスプレイ部分の外側またはタッチパネルのアクティブ領域の外側の余白にフレーム形状のテープまたは接着剤を適用することにより、このような表面保護層を映像ディスプレイモジュールまたはタッチパネルに固定させる。結果的に、映像ディスプレイ部分またはタッチパネルのアクティブ領域と表面保護層との間にギャップが形成される。
【0003】
透明性を増進し写像性を改善するために、映像ディスプレイモジュールまたはタッチパネルと表面保護層との間のギャップを、これらの材料と屈折率がほぼ一致する透明物質に代替する傾向が業界にあった。例示的な透明物質は、光学用粘着フィルム(OCAフィルム)、減圧性接着剤、接着剤、およびケイ素ゲルなどを含むが、これに限定されない。接着剤を用いる場合に、例えば、表面保護層および映像ディスプレイモジュールを積層した後に欠陥が発生する場合、表面保護層を分離して代替することが困難である。シリコンゲルは、その低い接着力によって信頼性の問題を有する。これに対し、減圧性接着剤(例えば、減圧性接着剤シート)は、十分に高い接着力にもかかわらず再積層(re-lamination)が可能であるが、溶媒による液状形であるので、均一な塗布が難しく、残存溶媒による浮き上がり現象などが発生する問題を有する。
【0004】
映像ディスプレイモジュール、光学部材、または表面保護層のような被着体の表面はたまに不均一である。表面保護層の表面、特に粘着フィルムまたは接着剤シートなどと接触する表面は、一般に装飾または遮光を目的として印刷するステップを経る。一部の場合には、印刷された部分は、表面保護層の表面上に高さが10μm以上の段(step)を発生させる。光学用粘着フィルムを用いて映像ディスプレイモジュールまたはタッチパネルを表面保護層に積層するにあたり、1つの潜在的問題は、光学用粘着フィルムが段に対して十分に一致しないことがあり、段の上に、またはその周りにギャップを誘発しうるということである。
【0005】
従来、韓国特許公開公報第10-2016-0011785号には、透明な光硬化性粘着剤組成物が提示されているが、被着剤の不均一な表面によって、接合時、段部埋め込み性および段差克服性が不足して、硬化後、被着剤の表面から浮き上がり現象が発生する問題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許公開公報第10-2016-0011785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するために、段部埋め込み性および段差克服性に優れ、硬化後、被着剤の表面から浮き上がり現象が最小化された光学透明粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリレート単量体を部分重合させて製造された樹脂シロップおよび光開始剤を含む光学透明粘着シートであって、
前記光学透明粘着シートは、1次紫外線架橋結合後の貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×106~1.0×107Pa、70℃および1Hzで5.0×104~5.0×105Paであり、2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10~100%である、光学透明粘着シートを提供する。
【0009】
また、本発明は、前述した光学透明粘着シートを製造するためのものである組成物を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、前述した光学透明粘着シートを含む平板表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、1次紫外線架橋結合後の貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×106~1.0×107Pa、70℃および1Hzで5.0×104~5.0×105Paであり、2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10~100%を満足することにより、段部埋め込み性および段差克服性に優れ、硬化後、被着剤の表面から浮き上がり現象が最小化された光学透明粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、光学透明粘着シート、これを製造するための組成物およびこれを含む平板表示装置に関する。本発明の光学透明粘着シートは、無基材フィルムであってもよい。また、本発明の組成物は、(メタ)アクリレートシロップ、光開始剤、および(メタ)アクリレート単量体を含むものであってもよい。本発明の光学透明粘着シートは、(メタ)アクリル共重合体、光開始剤、およびアクリレート単量体を含むことができ、本発明において、光学透明粘着シートが前記組成物を含むというのは、前記組成物で製造されることを意味することができる。前記組成物で製造された本発明の光学透明粘着シートは、貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×106~1.0×107Pa、70℃および1Hzで5.0×104~5.0×105Paであり、2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10~100%を満足することにより、段部埋め込み性および段差克服性に優れ、硬化後、被着剤の表面から浮き上がり現象が最小化できる。
【0013】
本発明は、貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×106~1.0×107Pa、70℃および1Hzで5.0×104~5.0×105Paであり、2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10%以下の場合、内部粘着剤内の凝集力が不足して耐久性条件で気泡による不良が発生し、100%以上の場合、凝集力が過度に上昇して被着剤との密着力が低下して耐久性を阻害させる。2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10~100%を満足させる場合、粘着剤内部の架橋密度の増加および適正凝集力の向上で耐久性を確保することができる。
【0014】
以下、本発明の構成を詳細に説明する。
(メタ)アクリレートシロップ
本発明において、(メタ)アクリレートは、「アクリレート」、「メタクリレート」、またはこれら両者を意味するものである。(メタ)アクリレートシロップが含まれる場合、粘着剤の凝集力と接着力および耐久性の向上に寄与することができる。
【0015】
本発明の(メタ)アクリレートシロップは、i)ヒドロキシ基を含むアクリレート、およびii)単官能(メタ)アクリレート単量体を含むことができる。前記i)ヒドロキシ基を含むアクリレート単量体を含む場合、凝集力の向上および密着力の向上に寄与することができる。前記i)ヒドロキシ基を含むアクリレートは、ヒドロキシ基を含みさえすればその種類が限定されないが、ヒドロキシ基を含むアルキルアクリレート単量体は、具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、5-ヒドロキシペンチルアクリレート、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート、8-ヒドロキシオクチルアクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコールアクリレート、および2-ヒドロキシプロピレングリコールアクリレートなどが挙げられる。
【0016】
前記ii)単官能の(メタ)アクリレート単量体は、この分野で公知の単官能の単量体であればその種類が限定されないが、具体的には、例えば、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシ酪酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、および2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどからなるグループより選択される1つ以上を含むことができる。エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上を含む場合、より好ましい。
【0017】
前記i)ヒドロキシ基を含むアクリレートは、前記i)ヒドロキシ基を含むアクリレート、および前記ii)単官能(メタ)アクリレート単量体を含む共重合体の総重量に対して、5~20重量%含まれ、5重量%未満であれば、高温および/または高湿条件下で凝集破壊が発生するなど耐久信頼性が低下する恐れがあり、20重量%を超えると、相溶性の低下で濡れ性および密着力が減少する恐れがある。
【0018】
本発明において、(メタ)アクリレートシロップは、重量平均分子量が60万以上100万以下であってもよいし、さらに好ましくは60万以上80万以下であってもよい。本発明の(メタ)アクリレートシロップの重量平均分子量が前記範囲を満足する場合、粘着特性および濡れ性、耐久性の向上を期待することができる。
【0019】
光開始剤
本発明の光学透明粘着シートは、ラジカル重合性基の反応を効率的に誘導するために光開始剤を含む。
【0020】
前記光開始剤は、紫外線などの照射によってラジカルを発生させて光重合を開始させられる一般的な開始剤であれば特に限定されず、この分野で公知の光重合開始剤が使用できる。具体的には、ベンゾイン系開始剤、ヒドロキシケトン系開始剤、アミノケトン系開始剤、および/またはホスフィンオキシド系開始剤などが挙げられ、より具体的には、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-Dimethoxy-2-phenylacetophenone)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Diphenyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide)、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ヒドロキシメチルフェニルプロパノン、ベンゾイルギ酸、1,4-ジベンゾイルベンゼン、ベンジルなどが挙げられる。
【0021】
前記光開始剤は、(メタ)アクリレートシロップと混合される場合には、ベンゾイン系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシケトン系開始剤、アミノケトン系開始剤、および/またはホスフィンオキシド系開始剤などからなる群より選択される2種以上を含むことができる。好ましくは、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(2,2-Dimethoxy-1,2-diphenylethan-1-one)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Diphenyl(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide)、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ヒドロキシメチルフェニルプロパノン、ベンゾイルギ酸、1,4-ジベンゾイルベンゼン、ベンジル、ベンゾフェノンアクリル(VISIOMER6973、エボニック)などからなる群より選択される2種以上を含むことができる。
【0022】
前記光開始剤は、前記ヒドロキシ基を含むアクリレート単量体および前記単官能性(メタ)アクリレート単量体の総計を100重量部とした時、0.1~5重量部、さらに好ましくは0.5~2重量部含まれる。
【0023】
また、前記光開始剤は、(メタ)アクリレートシロップを100重量部とした時、0.1~5重量部、さらに好ましくは0.5~2重量部含まれる。
【0024】
前記光開始剤が前記範囲内に含まれる場合、添加したにもかかわらず効果がわずかな問題が発生せず、耐久性、信頼性および透明性などの物性が改善できる。
【0025】
添加剤
本発明の光学透明粘着シートの製造方法は、上記で説明されたものを除けば、この分野で通常用いられる方法で実施できる。この時、この分野で用いられる分子量調節剤、触媒なども制限なく使用可能である。
【0026】
本発明の光学透明粘着シートは、ゲル分率が30~70%であってもよい。ゲル分率が前記範囲を満足する場合、耐久性、段部埋め込み性と段差克服性の効果も改善できる。
【0027】
本発明の光学透明粘着シートを塗布する方法は特に限定されず、光学透明粘着シートを塗布した後、これを光照射により硬化させる。本出願において、例えば、紫外線照射方式を適用する場合に、前記紫外線照射は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、またはキセノンランプ(xenon lamp)などの手段を用いて行うことができる。
【0028】
また、光照射工程の前または後に、組成物内の架橋剤の官能基と重合体の熱硬化性官能基との反応を誘導する適切な熟成工程を進行させることもでき、その過程での条件は、適切な架橋反応が起こることができれば、特に限定されない。
【0029】
本発明の光学透明粘着シートは、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、眩しさ防止フィルム、光視野角補償フィルム、または輝度向上フィルムなどの光学フィルムを互いに積層したり、前記光学フィルムまたはその積層体をディスプレイパネルなどのような被着体に付着させるための用途に使用できる。
【0030】
特に、本発明の光学透明粘着シートは、フレキシブルディスプレイ装置に好ましく使用できる。
【0031】
また、光学透明粘着シートの製造方法は、この分野で公知の方法が制限なく使用可能である。
【0032】
本発明の光学透明粘着シート組成物で形成された光学透明粘着シートを含むことを特徴とする平板表示装置を提供する。
【0033】
前記平板表示装置は、フレキシブルディスプレイ装置であることがさらに好ましい。
以下、本発明を実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明は、下記の実施例によって限定されず、多様に修正および変更可能である。
【0034】
製造例:(メタ)アクリレートシロップの製造
製造例1
窒素ガスが還流し、温度調節が容易となるように冷却装置を設けた1Lの反応器に、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)単量体50重量%、イソボルニルアクリレート(IBOA)単量体40重量%、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)単量体10重量%からなる単量体混合物を投入した後、酸素を除去するために窒素ガスを1時間パージングした後、80℃に維持した。前記単量体混合物を均一に混合した後、前記単量体混合物を総重量を100重量部とした時、光開始剤として1-Hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketoneを1重量部投入した。この後、撹拌させ、UVランプ(10mW)を照射して、固形分25%のアクリルシロップを製造した。
【0035】
製造例2~5
前記製造例1と同様に実施するが、下記表1の組成で(メタ)アクリレートシロップを製造した。
【0036】
試験例1.重量平均分子量および分子量分布の評価
(メタ)アクリレートシロップの重量平均分子量および分子量分布は、GPCを用いて、以下の条件で測定した。検量線の作製には、Agilent systemの標準ポリスチレンを用いて、測定結果を換算した。
【0037】
<重量平均分子量の測定条件>
測定器:Agilent GPC(Agilent 1200 series、米国)
カラム:PL Mixed B2つ連結
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/min
濃度:~1mg/mL[0094](100μL injection)
【0038】
【0039】
実施例1~7および比較例1~3
前記製造例の(メタ)アクリレートシロップ、光開始剤の含有量を下記表2の組成で混合して粘着剤組成物を製造した。
【0040】
前記製造された粘着剤組成物を、シリコン離型剤がコーティングされた離型フィルム上に、厚さが150μmとなるように塗布し、その上に離型フィルムを接合して粘着シートを作製した後、1次UV照射後、シートを完成した。
【0041】
前記粘着シートの貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置(MCR-301、Anton Paar社)を用いて25℃および70℃での貯蔵弾性率を測定した。より詳細には、粘着層サンプルのサイズを長さ30mm×幅30mmとし、測定試料をGlass Plateに接合後、測定tipと接着した状態で、-30~100℃の温度領域で周波数1.0Hz、変形2%、昇温速度5℃/minの条件下で測定し、25℃および70℃での測定値を読み取ることにより求めた。1次UV硬化後の貯蔵弾性率および2次UV硬化後の貯蔵弾性率の測定結果を下記表2に示した。
【0042】
【0043】
実験例1:ゲル分率(%)評価
実施例1~7および比較例1~3で製造された光学透明粘着無基材フィルム付き偏光板を、23℃、65%RHで1日間養生した。精秤した250メッシュの金網(100mm×100mm)に粘着剤層を約0.25g貼り付け、ゲル分が漏れないように取り囲む。精密天秤で重量を正確に測定した後、金網をエチルアセテート溶液に3日間浸漬する。浸漬された金網を取り出して、少量のエチルアセテート溶液で洗浄し、120℃で24時間乾燥した後、重量を測定する。測定された重量を用いて、下記の数式1でゲル分率を計算した。
【0044】
【0045】
[式中、Aは金網の重量(g)、Bは粘着剤層を貼り付けた金網の重量(B-A:粘着剤の重量、g)、Cは浸漬後乾燥した金網の重量(C-A:ゲル化された樹脂の重量、g)である]。
【0046】
実験例2:段差埋め込み性評価
実施例1~7および比較例1~3の組成で製造された粘着剤組成物を、シリコン離型剤がコーティングされた離型フィルム上に、厚さが150μmとなるように塗布し、その上に離型フィルムを接合して粘着シートを作製した後、1次UV照射後、2次UV照射処理してシートを完成した。前述した方法で作製した粘着フィルムの片面の離型PETを剥離し、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET100)に貼り合わせて、片面にPET100基材が接合された粘着フィルムを作製した。これを縦50mm、横40mmに裁断したものを試験片とした。次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET50)を縦40mm、横30mm、幅5mmの枠となるように裁断した。裁断したPET50による厚さ50μmの枠を、残る片面の離型PETを剥離したPET100上に置き、他のPET100に挟むように接合した(PET100/粘着剤/PET50/PET100の構成)。これを、50℃の雰囲気下、0.5MPaの圧力で、20分間オートクレーブ処理した後、メタルハライドランプで3Jを照射してサンプルを作製した。その後、温度80℃の雰囲気下で24時間放置し、50μmの厚さの枠の内側部分を目視観察して、50μmの厚さの段差に対する埋め込み性を以下のように評価した。
【0047】
○:気泡の混入全くなし
△:やや気泡あり
×:多くの気泡あり
実験例3:耐久性(耐熱、耐湿熱)評価
実施例1~7およびまたは比較例1~3の組成をもって、実験例2と同様の方法で製造された光学透明粘着シートの片面の離型フィルムを剥離し、40μmのCOPフィルムと粘着剤面にコロナ処理し接合して製造された粘着シートを90mm×170mmの大きさに切断し、離型フィルムを剥離した後、ガラス基板(110mm×190mm×0.7mm)付着して試験片を作製した。この時、加えられた圧力は5kg/cm2であり、気泡や異物が生じないようにクリーンルーム作業をした。耐熱特性は100℃の温度で500時間放置した後に気泡や剥離の発生の有無を観察し、耐湿熱特性は85℃の温度および85%RHの条件下で500時間放置した後に気泡や剥離の発生の有無を観察した。
【0048】
<評価基準>
◎:気泡や剥離なし
○:気泡や剥離<5個
△:5個≦気泡や剥離<10個
×:10個≦気泡や剥離
前記組成物に対して測定した物性の結果を下記表3にまとめて記載した。
【0049】
【0050】
本発明の貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×106~1.0×107Pa、70℃および1Hzで5.0×104~5.0×105Paであり、2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10~100%を満足する実施例1~7の光学透明粘着シートの場合、非常に優れた耐久性を示し、優れた耐久性を有することは優れた密着力を有することを意味し、密着力が向上して、段部埋め込み性と段差克服性の効果にも優れていることを確認した。
【0051】
これに対し、本発明の貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×106~1.0×107Pa、70℃および1Hzで5.0×104~5.0×105Paであり、2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10~100%を満足しない比較例1~2の場合、耐久性が不良であった。耐久性が不良で密着力が低下し、これによって段部埋め込み性と段差克服性の効果がほとんどないことを確認した。また、低い光量による反応率の低下により、1次UV貯蔵弾性率を満足しない比較例3は、段差埋め込み性、耐久性とも不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、1次紫外線架橋結合後の貯蔵弾性率が25℃および1Hzで1.0×106~1.0×107Pa、70℃および1Hzで5.0×104~5.0×105Paであり、2次紫外線架橋結合後の硬化後の25℃貯蔵弾性率増加率が前記1次紫外線架橋結合後の25℃貯蔵弾性率対比10~100%を満足することにより、段部埋め込み性および段差克服性に優れ、硬化後、被着剤の表面から浮き上がり現象が最小化された光学透明粘着シートを提供することができる。