(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】改良されたタンパク質発現株
(51)【国際特許分類】
C12N 1/15 20060101AFI20230522BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230522BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230522BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20230522BHJP
A61K 38/38 20060101ALN20230522BHJP
【FI】
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12P21/02 C
C12N15/31
A61K38/38
(21)【出願番号】P 2019570064
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2018066344
(87)【国際公開番号】W WO2018234349
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518220970
【氏名又は名称】アルブミディクス リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ジョン アーサー フィニス
(72)【発明者】
【氏名】ペル クリストファー ノルダイデ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー マリー マクラフラン
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102296033(CN,A)
【文献】特開2010-029148(JP,A)
【文献】特開2011-103789(JP,A)
【文献】Curr. Genet.,2013年,vol.59,p.91-106
【文献】Curr. Genet.,2000年,vol.37,p.175-182
【文献】Mol. Micobiol.,2002年,vol46,p.545-556
【文献】Mol. Biol. Cell,1997年,vol.8,p.1699-1707
【文献】Mutagenesis,1990年,vol.5,p.39-44
【文献】FEMS Yeast Res.,2001年,vol.1,p.57-65
【文献】Biochem. Pharmacol.,2007年,vol.74,p.372-381
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真菌宿主細胞であって、
a.配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するGsh1タンパク質又はそのホモログであって、
野生型Gsh1タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、活性レベルの低減又は発現レベルの低減を示すように改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログ、
b.配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル
であって、野生型Gsh1タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、低減
された活性レベル、
c.配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するGSH1遺伝子又はそのホモログであって、
野生型GSH1遺伝子又はGsh1タンパク質を発現する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルの低減又は発現レベルの低減を示すように改変されたGSH1遺伝子又はそのホモログ、
d.配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するGSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベル
であって、野生型Gsh1タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、低減
された活性レベル、及び
e.Gsh1タンパク質又はGSH1遺伝子の欠失
から選択される1又は2以上を有すると共に、
異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで前記異種タンパク質は、植物又は動物タンパク質である、真菌宿主細胞。
【請求項2】
前記真菌宿主細胞が更に、
a.配列番号6に対して少なくとも90%の同一性を有するNot4タンパク質又はそのホモログであって、
野生型Not4タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、活性レベルの低減又は発現レベルの低減を示すように改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、
b.配列番号6に対して少なくとも90%の同一性を有するNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル
であって、野生型Not4タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、低減
された活性レベル、
c.配列番号5に対して少なくとも90%の同一性を有するNOT4遺伝子又はそのホモログであって、
野生型NOT4遺伝子又はNot4タンパク質を発現する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの低減又は発現レベルの低減を示すように改変されたNOT4遺伝子又はそのホモログ、
d.配列番号5に対して少なくとも90%の同一性を有するNOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベル
であって、野生型NOT4遺伝子又はNot4タンパク質を発現する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、低減
された活性レベル、及び
e.Not4タンパク質又はNOT4遺伝子の欠失
から選択される1又は2以上を有する、請求項1に記載の真菌宿主細胞。
【請求項3】
前記真菌宿主が、酵母又は糸状菌(filamentous fungus)である、請求項1又は2に記載の真菌宿主細胞。
【請求項4】
前記異種タンパク質が、配列番号10に対して少なくとも90%の同一性を有するアルブミン又はその断片若しくは融合体である、請求項1~3の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項5】
前記Gsh1タンパク質又はそのホモログが、配列番号2の47、48、49、50、51、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、409、451、452、453、454及び455から選択される位置に対応する位置に変異を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項6】
前記Gsh1タンパク質又はそのホモログが、配列番号2のR125、D49、H409、又はP453から選択される位置に対応する位置に変異を含む、請求項5に記載の真菌宿主細胞。
【請求項7】
配列番号2の位置125に対応する位置の変異が、A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W又はYへの置換である、請求項5に記載の真菌宿主細胞。
【請求項8】
配列番号2の位置125に対応する位置の変異が、G、C、D、又はEへの置換である、請求項7に記載の真菌宿主細胞。
【請求項9】
配列番号2の位置125に対応する位置の変異が、Gへの置換である、請求項8に記載の真菌宿主細胞。
【請求項10】
前記Gsh1タンパク質が配列番号4を含むか、配列番号4からなる、請求項1~9の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項11】
前記Not4タンパク質又はそのホモログが、配列番号6の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470から選択される位置に対応する位置に変異を含む、請求項2~10の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項12】
配列番号6の位置429に対応する位置の変異が、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYに対する置換である、請求項11に記載の真菌宿主細胞。
【請求項13】
配列番号6の位置429に対応する位置の変異が、I、G、A、V、又はLに対する置換である、請求項12に記載の真菌宿主細胞。
【請求項14】
配列番号6の位置429に対応する位置の変異が、I、G、A、V、又はLに対する置換である、請求項13に記載の真菌宿主細胞。
【請求項15】
前記Not4タンパク質が配列番号8を含むか、配列番号8からなる、請求項2~14の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項16】
前記真菌宿主が、サッカロミセス属(Saccharomyces)真菌である、請求項1~15の何れか一項に記載の真菌宿主細胞。
【請求項17】
前記サッカロミセス属(Saccharomyces)真菌が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項16に記載の真菌宿主細胞。
【請求項18】
異種タンパク質を産生するための方法であって、前記方法は、
a.真菌宿主細胞であって、
1.配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するGsh1タンパク質又はそのホモログであって、
野生型Gsh1タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、活性レベルの低減又は発現レベルの低減を示すように改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログ、
2.配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル
であって、野生型Gsh1タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、低減
された活性レベル、
3.配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するGSH1遺伝子又はそのホモログであって、
野生型GSH1遺伝子又はGsh1タンパク質を発現する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルの低減又は発現レベルの低減を示すように改変されたGSH1遺伝子又はそのホモログ、
4.配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するGSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベル
であって、野生型Gsh1タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、低減
された活性レベル、及び
5.Gsh1タンパク質又はGSH1遺伝子の欠失
から選択される1又は2以上を有する真菌宿主細胞を提供する工程、
b.前記宿主細胞を培養して前記異種タンパク質を産生させる工程
を含み、
ここで前記真菌宿主細胞は、異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで前記異種タンパク質は、植物又は動物タンパク質であり、
ここで前記方法は、更に、
(i)前記異種タンパク質が植物又は動物タンパク質であること、
(ii)前記培養が少なくとも1リットルの規模で行われること、
(iii)前記方法が更に、前記異種タンパク質を精製する工程を含むこと、及び
(iv)前記方法が更に、前記異種タンパク質を、治療的に許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤化することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療薬を製造する工程を含むこと
から選択される1又は2以上の特徴を有する、方法。
【請求項19】
前記方法が更に、
c.前記異種タンパク質を回収する工程、
d.前記異種タンパク質を精製する工程、
e.前記異種タンパク質を、治療的に許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤化することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療薬を製造する工程、及び
f.前記異種タンパク質を単位投与形態で提供する工程
から選択される1又は2以上の工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記異種タンパク質の収率を増加させるための、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記異種タンパク質の収率が、参照真菌宿主細胞における収率より少なくとも2%高
く、ここで前記参照真菌宿主細胞は、Gsh1タンパク質又はGSH1遺伝子が野生型であることを除いて、真菌宿主細胞と同一である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記参照真菌宿主細胞が、配列番号2のGsh1タンパク質を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記真菌宿主細胞が更に、
1.配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するNot4タンパク質又はそのホモログであって、
野生型Not4タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、活性レベルの低減又は発現レベルの低減を示すように改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、及び
2.配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル
であって、野生型Not4タンパク質を有する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、低減
された活性レベル、及び
3.配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するNOT4遺伝子又はそのホモログであって、
野生型NOT4遺伝子又はNot4タンパク質を発現する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの低減又は発現レベルの低減を示すように改変されたNOT4遺伝子又はそのホモログ、及び
4.配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するNOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベル
であって、野生型NOT4遺伝子又はNot4タンパク質を発現する他は同一の参照真菌宿主細胞におけるレベルと比較して、低減
された活性レベル、及び
5.Not4タンパク質又はNOT4遺伝子の欠失
を有する、請求項18~22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記異種タンパク質の収率が、参照真菌宿主細胞における収率より少なくとも2%高
く、ここで前記参照真菌宿主細胞は、Not4タンパク質又はNOT4遺伝子が野生型であることを除いて、真菌宿主細胞と同一である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記参照真菌宿主細胞が、配列番号6のNot4タンパク質を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記異種タンパク質の収率が、配列番号2のGsh1タンパク質を有する参照真菌宿主細胞における収率より少なくとも2%高い、請求項18~25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記異種タンパク質の収率が、配列番号2のGsh1タンパク質及び配列番号6のNot4タンパク質を有する参照真菌宿主細胞における収率より少なくとも2%高い、請求項18~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記異種タンパク質が、配列番号10に対して少なくとも90%の同一性を有するアルブミン又はその断片若しくは融合体を含むか、或いはアルブミン又はその断片若しくは融合体からなる、請求項18~27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記宿主細胞が少なくとも5Lのスケールで培養される、請求項18~28の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は紙媒体及びコンピューター読み取り可能な形態の配列表を含む。斯かる紙媒体及びコンピューター読み取り可能な形態の配列表は、本願明細書の一部であり、或いは引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は主に、親株よりも実質的に高いレベルでタンパク質を発現する真菌株の開発に関する。
【背景技術】
【0003】
約30年もの間、所望の異種タンパク質は微生物により産生されてきた。しかし、必要なコーディング配列を導入して発現を得たとしても、商業生産用にプロセスを最適化するためには、まだ達成すべきことが多く残っている。関心を集める領域の1つとして、株の改善、即ち、タンパク質をより高い収量又はより良い純度で産生できる宿主微生物の株の探索又は作製が挙げられる。
【0004】
産生量を向上する上で、良好な発現系を設計したら、次はコーディング配列のコピー数を増加させ、或いはmRNAの量又は安定性を上昇させ、或いはタンパク質の折り畳み及び/又は分泌を向上させ、或いはタンパク質の分解を低減するべく試みるであろう。しかし、所望される発現増強の効果がみられるのは、阻害因子を標的とした場合のみである。
【0005】
従って必要となるのは、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質の産生量の増加を可能とする宿主株である。
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、真菌細胞のGSH1における突然変異が、こうした異種タンパク質の産生量の増加を引き起こすことを見出した。
【0007】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のGSH1遺伝子産物はγ-グルタミルシステイン合成酵素(Gsh1p)である。この酵素は、グルタチオン(L-γ-グルタミルシステイニルグリシン;GSH)の合成における律速となる第1の段階を触媒する。第2の段階はグルタチオン合成酵素(Gsh2p)によって触媒される。グルタチオンは、幾つかの生合成経路や解毒反応の補因子、酵母のミトコンドリアゲノムの維持、細胞の酸化ストレスからの保護など、多数の重要な役割を持つ重要な分子である(Ayer et al., (2010), Free Radical Biology & Medicine, 49:1956-1968))。GSH1遺伝子を欠損する酵母細胞は、グルタチオンを含有する培地で培養しない限り、酸化条件や重金属への暴露など種々のストレス条件に過敏に反応し、最終的には成長停止に至る(Spector et al., (2001), The Journal of Biological Chemistry, 276, (10), 7011-7016)。グルタチオンは、酸化ストレス時に核を保護することも知られている(Hatem et al., (2014), Free Radical Biology & Medicine, 67, 103-114)。Biterova及びBarycki (2009)(The Journal of Biological Chemistry 284, 32700-32708)は、グルタチオン生合成の機序を調べるために、Ghs1(別名グルタミン酸システインリガーゼ)の結晶構造を分析したところ、ヒトグルタミン酸システインリガーゼの変異体が観察された(例:R127C、P158L、H370L、P414L)と述べている。
【0008】
従来(PCT/US2016/068239)、NOT4(別名MOT2)の変異により、宿主株で産生される異種タンパク質の収量が増加することが確認されている。本発明者らは今般、NOT4及びGSH1突然変異を組み合わせることにより、驚くべきことに収量がさらに増加することを見出した。
【0009】
Not4はユビキチン連結酵素であり、Ccr4-Not複合体の一部である。Ccr4-Not複合体は真核細胞において保存されており、酵母では本複合体は9つのコアサブユニット:Ccr4、Caf1、Caf40、Caf130、Not1、Not2、Not3、Not4、及びNot5からなる(Collart, 2003, Global control of gene expression in yeast by the Ccr4-Not complex. Gene 313: 1-16; Bai et al., 1999, The CCR4 and Caf1 proteins of the Ccr4-Not complex are physically and 機能ally separated from Not2, Not4, and Not5. Mol. Cell. Biol. 19: 6642-6651)。本複合体が環境からシグナルを識別すると共に、あらゆるレベルの遺伝子発現を纏め上げて、斯かるシグナルに効率的に反応するための、中心的な交換機として機能すると考えられている(Collart, 2012, The Ccr4-Not complex. Gene 492(1): 42-53)。Notタンパク質(Not1、Not2、Not3、Not4)は、転写調節への広範な関与が推測されるRNAポリメラーゼII複合体の構築に必要であると考えられている(Collart, 1994, Not1(cdc39), Not2(cdc36), Not3, and Not4 encode a global-negative regulator of transcription that differentially affects tata-element utilization. Genes & Development 8(5): 525-537; Collart, 2012, 上述)。
【0010】
最近では共結晶構造から、Ccr4-Not複合体の骨格タンパク質であるNot1のHEAT繰り返し領域に、Not4のC末端領域が巻き付いている様子が示唆されている(Bhaskar, 2015, Architecture of the ubiquitylation module of the yeast Ccr4-Not complex. Structure 23(5): 921-8)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
a.改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログ、及び/又は
b.改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は
c.改変されたGSH1遺伝子又はそのホモログ、及び/又は
d.改変されたGSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベル
を有する真菌宿主細胞を提供する。
【0012】
また、本発明は、更に
e.改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、及び/又は
f.改変されたNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は
g.改変されたNOT4遺伝子又はそのホモログ、及び/又は
h.改変されたNOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベル
を有する真菌宿主細胞を提供する。
【0013】
また、本発明は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、真菌宿主細胞の培養物であって、低減されたGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルを有すると共に、任意により更に低減されたNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルを有することを特徴とする、真菌宿主細胞の培養物を提供する。
【0014】
更に、本発明は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質を、真菌宿主細胞により産生する方法を提供する。
【0015】
本発明は、真菌宿主細胞による所望のポリペプチドの産生量を改変する方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質を提供する。所望のタンパク質としては、アルブミン、或いはその変異体、断片、及び/又は融合体が好ましい。
【0017】
更に、本発明は、斯かる所望のタンパク質を含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、患者を治療する方法であって、斯かる組成物の有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、上記の1又は2の特性を有する真菌宿主細胞を調製する方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、配列番号2に対して少なくとも50%の同一性を含むと共に、配列番号2の47、48、49、50、51、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、409、451、452、453、454及び455から選択される1又は2以上の位置に対応する位置に変異を含む、Gsh1タンパク質又はそのホモログを提供する。
【0021】
更に、本発明は、本発明のGsh1変異体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0022】
本明細書に記載の態様は、実施例及び/又は好適な態様の欄にのみ記載されたものも含め、他の任意の態様と組み合わせることが可能である。但し、斯かる組合せが不適切である旨を明示した場合を除く。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、20種のアミノ酸の分類及び相互関係を示すベン図である。
【0024】
【
図2】
図2は、プラスミドpDB5438の構成を示す。
【0025】
【
図3】
図3は、プラスミドpDB2305の構成を示す。ここで「HSA」は組換ヒトアルブミンを意味し、「mFL」はリーダー配列を意味する。
【0026】
【
図4】
図4は、プラスミドpDB2244の構成を示す。ここで「rHA」は組換ヒトアルブミンを意味し、「FL」はリーダー配列を意味する。
【0027】
【
図5】
図5は、プラスミドYCp50の構成を示す。
【0028】
【
図6】
図6は、プラスミドpDB5862の構成を示す。ここで「アルブミン変異体」は配列番号45をコードする核酸を意味し、「mFL」はリーダー配列を意味する。
【0029】
【
図7】
図7は、プラスミドpDB3936の構成を示す。
【0030】
【
図8】
図8は、プラスミドpDB5912の構成を示す。ここで「mFL」はリーダー配列を意味する。
【0031】
【
図9】
図9は、プラスミドpDB3029の構成を示す。ここで「Inv」はリーダー配列を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
アルブミン:「アルブミン」という語は、ヒト血清アルブミン(HSA)又はHSAドメインと同一及び/又は極めて類似の三次構造を有すると共に、HSA又はその関連ドメインと類似の特性を有するタンパク質を意味する。類似の三次構造とは、例えば、「親アルブミン」と同一の分類に属する種のアルブミンの構造である。アルブミンの主な特性としては、i)血漿の量を調節する能力(膨脹活性)、ii)約19日±5日という長い血漿半減期、iii)gp60、別名アルボンディン(albondin)への結合能、iv)FcRnへの結合能、v)リガンド結合能、例えば内因性分子、例えば酸性親油性化合物、例えばビリルビン、脂肪酸、ヘミン、及びチロキシンへの結合能(Kragh-Hansen et al, 2002, Biol. Pharm. Bull. 25, 695の表1も参照:本文献は引用により本明細書に組み込まれる)、及びvi)酸性又は電気陰性の性質を有する小型有機化合物、例えば薬物、例えばワルファリン、ジアゼパム、イブプロフェン、及びパクリタキセルへの結合能(Kragh-Hansen et al, 2002, Biol. Pharm. Bull. 25, 695の表1も参照:本文献は引用により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。あるタンパク質又は断片をアルブミンと特定する上で、これらの特性の全てが満たされる必要はない。例えば、ある断片が特定のリガンドや有機化合物への結合に関与するドメインを含まないの場合、斯かる断片の変異体はこれらの特性の全ては有さないものと推測される。
【0033】
アレル変異体:「アレル変異体」という語は、同一の染色体座を占める一遺伝子が有する2又はそれ以上の択一的形態の各々を意味する。アレル変異は天然において変異を通じて発生し、従って個体集団内における多型を生じうる。遺伝子変異はサイレントである(コードされるポリペプチドには変化が生じない)場合もあるが、従ってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列にも変化が生じる場合もある。あるポリペプチドのアレル変異体とは、遺伝子のアレル変異体によりコードされるポリペプチドである。
【0034】
cDNA:「cDNA」という語は、真核細胞又は原核細胞から得られる成熟後のスプライスされたmRNA分子からの逆転写により調製されるDNA分子を意味する。cDNAは、対応するゲノムDNA内に存在するイントロン配列を有さない。mRNAの前駆体たる初期一次RNA転写生成物は、スプライシングを含む一連の工程を経て、成熟後のスプライスされたmRNAとなる。
【0035】
コーディング配列:「コーディング配列」という語は、ポリペプチドのアミノ酸配列を直接特定するポリヌクレオチドを意味する。コーディング配列は通常はオープンリーディングフレームによって定められる。オープンリーディングフレームは開始コドン、例えばATG、GTG、又はTTGから始まり、停止コドン、例えばTAA、TAG、又はTGAで終わる。コーディング配列は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、又はこれらの組合せの何れであってもよい。
【0036】
調節配列:「調節配列」という語は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現に必要な核酸配列を意味する。各々の調節配列は、前記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して、また、他の調節配列に対して、固有(即ち、同一の遺伝子に由来)するものであってもよく、外来(即ち、異なる遺伝子に由来)するものであってもよい。斯かる調節配列としては、これらに限定されるものではないが、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、転写ターミネーター等が挙げられる。調節配列としては少なくともプロモーターと、転写及び翻訳の停止シグナルとが含まれていればよい。前記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコーディング領域に対する調節配列の連結を容易とするべく、特定の制限部位を導入する目的で、調節配列にリンカーを設けてもよい。
【0037】
発現:「発現」という語には、ポリペプチドの産生に関与する一連の工程が含まれる。斯かる工程としては、これらに限定されるものではないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、及び分泌が挙げられる。
【0038】
発現カセット:「発現カセット」という語は、ポリペプチドをコードすると共に、その発現を可能とする上流及び下流の調節配列を更にコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0039】
発現宿主:「発現宿主」という語は、所望のタンパク質、特に異種タンパク質を発現する宿主細胞を意味する。
【0040】
発現ベクター:「発現ベクター」という語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むと共に、その発現を可能とする調節配列と作動式に連結された、直鎖状又は環状のDNA分子を意味する。
【0041】
断片:「断片」という語は、成熟ポリペプチドのアミノ及び/又はカルボキシ末端、及び/又は、成熟ポリペプチドの内部領域から、1又は2以上の(数個の)アミノ酸が欠失されてなるポリペプチドを意味する。断片は、あるポリペプチドに由来する単一の中断のない配列であってもよいが、ポリペプチドの異なる部位に由来する2又はそれ以上の配列を含んでいてもよい。アルブミンに関して言えば、断片のサイズは約20アミノ酸残基以上、好ましくは30アミノ酸残基以上、より好ましくは40アミノ酸残基以上、より好ましくは50アミノ酸残基以上、より好ましくは75アミノ酸残基以上、より好ましくは100アミノ酸残基以上、より好ましくは200アミノ酸残基以上、より好ましくは300アミノ酸残基以上、より一層好ましくは400アミノ酸残基以上、最も好ましくは500アミノ酸残基以上である。好ましい態様では、断片はアルブミンの1又は2以上のドメインに相当する。本発明において好ましいアルブミンのドメインとしては、配列番号10のアミノ酸残基1~194±1~15アミノ酸からなるHSAドメインIに対して、少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5%、又は100%の同一性を有するドメイン;配列番号10のアミノ酸残基192~387±1~15アミノ酸からなるHSAドメインIIに対して、少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5%、又は100%の同一性を有するドメイン;及び、配列番号10のアミノ酸残基381~585±1~15アミノ酸からなるHSAドメインIIIに対して、少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5%、又は100%の同一性を有するドメイン;並びに、これらのドメインのうち1又は2以上(数個)、例えばドメインI及びII、ドメインII及びIII、又はドメインI及びIIIが、互いに連結されてなるものが挙げられる。なお、アルブミンのドメイン間の正確な境界を定める、一般に認められた基準は存在しないため、前記の範囲は互いに重複していてもよく、ドメインのN末端及び/又はC末端において、各々±1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15アミノ酸、好ましくは±1~15アミノ酸、より好ましくは±1~10アミノ酸、最も好ましくは±1~5アミノ酸の違いがあってもよい。惹いては、各ドメインの長さに最大30アミノ酸、好ましくは最大20アミノ酸、より好ましくは最大10アミノ酸のばらつきがあってもよい。また、複数のドメイン間の境界上に存在するアミノ酸残基が何れのドメインに属するかには、幾分の意見の相違があるかもしれない。同様の理由により、アルブミンドメインのアミノ酸残基に関して、前述の数とは異なる文献が存在する可能性もある。しかし、当業者であれば、斯かる文献の教示及び上記の教示を勘案することで、どのようにアルブミンドメインを特定するかを理解するであろう。非ヒトアルブミンの対応するドメインについては、EMBOSSパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)、好ましくはバージョン3.0.0以降、より好ましくはバージョン5.0.0以降のNeedleプログラムにより実行されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)により、HSAとのアラインメントを行うことで決定できる。使用される任意パラメーターは、例えばギャップオープンペナルティー(gap open penalty)が10、ギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)が0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。利用可能な他のアラインメントツールとしては、例えば本明細書に記載のMUSCLEが挙げられる。なお、DockalとKjeldsenとではドメインの定義が異なる場合がある:Dockal et al(The Journal of Biological Chemistry, 1999, Vol. 274(41): 29303-29310)によるHSAのドメインの定義は、ドメインIが配列番号10のアミノ酸1~197、ドメインIIが配列番号10のアミノ酸189~385、ドメインIIIが配列番号10のアミノ酸381~585である。Kjeldsen et al(Protein Expression and Purification, 1998, Vol 13: 163-169)によるHSAのドメインの定義は、ドメインIが配列番号10のアミノ酸1~192、ドメインIIが配列番号10のアミノ酸193~382、ドメインIIIが配列番号10のアミノ酸383~585である。各ドメインはそれ自体2つの相同のサブドメイン、即ち1~105と120~194、195~291と316~387、及び388~491と512~585からなり、これらはそれぞれ残基Lys106~Glu119、Glu292~Va1315、及びGlu492~Ala511を含む柔軟なサブドメイン間リンカー領域により連結されてなる。
【0042】
従って、本発明では以下のようにドメインを定義することが好ましい。まず、アミノ酸番号は配列番号10(HSA)に対応する。しかし、当業者であれば、これらの番号を用いて、他のアルブミン配列における対応するドメインを特定することが可能である。ドメインIは、アミノ酸1から開始してもよく、しなくてもよく、アミノ酸192、193、194、195、196又は197の何れか、好ましくはアミノ酸192、194又は197の何れかで停止してもよく、しなくてもよい。ドメインIIは、アミノ酸189、190、191、192又は193、好ましくはアミノ酸189、192又は193の何れかで開始してもよく、しなくてもよく、アミノ酸382、383、384、385、386又は387、好ましくはアミノ酸382、285又は387の何れかで停止してもよく、しなくてもよい。ドメインIIIは、アミノ酸381、382又は383、好ましくはアミノ酸381又は383で開始してもよく、しなくてもよく、アミノ酸585で停止してもよく、しなくてもよい。非ヒトアルブミンのドメインのアミノ酸長及び/又は残基数は、HSAのドメインと同一でも異なってもよい。例えば、1又は2以上(数個)の他のアルブミン、断片、誘導体、変異体、及び/又は融合体について、HSAのドメインI、II及び/又はIIIに対応するドメインを特定するために、多重アラインメント又はペアワイズアラインメントを作成してもよい。
【0043】
融合パートナー:本明細書を通じて、融合パートナーとは、アルブミン或いはその変異体及び/又は断片と遺伝子工学的に連結されていてもよい非アルブミン部分を意味する。
【0044】
異種タンパク質:異種タンパク質とは、宿主細胞により天然では産生されないタンパク質であって、好ましくは選択マーカー(例えば抗生物質抵抗性マーカー、栄養要求性選択マーカー等)、シャペロン、FLP、REP1、又はREP2等のタンパク質を含まないタンパク質を意味する。
【0045】
宿主細胞:「宿主細胞」という語は、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸コンストラクト又は発現ベクターの形質転換(transformation)、トランスフェクション(transfection)、形質導入(transduction)等を許容しうる任意の細胞型を意味する。「宿主細胞」という語は、複製時に生じた変異により親細胞との同一性が失われた親細胞の任意の子孫を包含する。
【0046】
成熟ポリペプチド:「成熟ポリペプチド」という語は、翻訳及び任意の翻訳後修飾、例えばN末端プロセシング、C末端切断、グリコシル化、リン酸化等を経たポリペプチドの最終形態を意味する。ヒトアルブミンの成熟配列を配列番号10に、未成熟形態の例を配列番号12にそれぞれ示す。
【0047】
成熟ポリペプチドコーディング配列:「成熟ポリペプチドコーディング配列」という語は、成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。ヒトアルブミンの成熟ポリペプチドコーディング配列の例を配列番号9に、ヒトアルブミンの未成熟形態のコーディング配列の例を配列番号11にそれぞれ示す。
【0048】
ミュータント:「ミュータント」(mutant)という語は、変異体(variant)をコードするポリヌクレオチドを意味する。
【0049】
核酸コンストラクト:「核酸コンストラクト」という語は、天然遺伝子から単離され、或いは核酸セグメントを含むように改変され、天然では存在しない形態となった、或いは合成された、一本鎖又は二本鎖の核酸分子であって、1又は2以上の調節配列を含むものをいう。
【0050】
作動式に連結された:「作動式に連結された」という語は、ポリヌクレオチドのコーディング配列に対して調節配列が適切な位置に配置され、調節配列によってコーディング配列の発現が誘導されるように構成されることをいう。
【0051】
親又は親アルブミン:「親」又は「親アルブミン」という語は、本発明のアルブミン変異体を産生するべく改変を加える元のアルブミンを意味する。親は天然(野生型)ポリペプチドでもそのアレルでもよく、その変異体でもよい。好ましい態様では、親アルブミンは野生型アルブミン、より好ましくは配列番号12に開示のヒト由来の野生型アルブミン(UNIPROT: P02768.2)又はその成熟配列(配列番号10)である。他の野生型アルブミンとしては、表1に示す非網羅的なリストから選択することができる。
【0052】
【0053】
好ましくは、親アルブミンは成熟アルブミンである。他の態様では、親アルブミンは、配列番号10に対して少なくとも70%、より好ましくは75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.8%同一であると共に、アルブミン、例えばHSAの主な特性の少なくとも1つを維持するか、又は、類似の三次構造を有するものをいう。アルブミンの主な特性は、Sleep, 2015, “Albumin and its application in drug delivery”, Expert Opinion on Drug Delivery 12(5): 793-812に要約されている(本文献は参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0054】
配列同一性:2つのアミノ酸配列又は2つのヌクレオチド配列の間の類似度は「配列同一性」(sequence identity)というパラメーターを用いて記載される。
【0055】
本発明の目的において、2つのアミノ酸配列の間の配列同一性は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)、好ましくはバージョン5.0.0以降を用いて実施されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)により決定される。使用されるパラメーターは、ギャップオープンペナルティー(gap open penalty)が10、ギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)が0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needleの「最長同一性」(longest identity)と付された出力値(-nobrief オプションを用いて得られる)を、配列同一性として使用する。これは以下のように計算される。
【数1】
【0056】
本発明の目的において、2つのデオキシリボヌクレオチド配列の間の配列同一性は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, 同上)、好ましくはバージョン5.0.0以降を用いて実施されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, 同上)により決定される。使用されるパラメーターは、ギャップオープンペナルティー(gap open penalty)が10、ギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)が0.5、EDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needleの「最長同一性」(longest identity)と付された出力値(-nobrief オプションを用いて得られる)を、配列同一性として使用する。これは以下のように計算される。
【数2】
【0057】
変異体:「変異体」(variant)という語は、親ポリペプチド、例えばアルブミンに由来するポリペプチドであって、1又は2以上(数個)の位置に、改変、即ち置換、挿入、及び/又は欠失を有するものを意味する。置換(substitution)とは、ある位置を占めるアミノ酸が、異なるアミノ酸で置き換えられることを意味し、欠失(deletion)とは、ある位置を占めるアミノ酸が取り除かれることを意味し、挿入(insertion)とは、ある位置を占めるアミノ酸の隣に1~3アミノ酸が付け加えられることを意味する。改変されたポリペプチド(変異体)は、人為的な介入により、親ポリペプチド、例えばアルブミンをコードするポリヌクレオチド配列に修飾を加えることにより得ることができる。変異体アルブミンは、配列番号10に対して、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より一層好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、又は少なくとも99.8%同一である。また、親アルブミン、例えばHSAの、主要な特性の少なくとも1つ又は類似の三次構造を維持していてもよく、いなくてもよい。一般に、HSAの変異体又は断片は、HSAと比較して少なくとも10%(好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は95%)のリガンド結合活性(例えばビリルビン結合性)を有すると共に、HSAと比較して重量対重量比率で少なくとも50%(好ましくは少なくとも70%、80%、90%、又は95%)の膨脹活性を有する。アルブミン、アルブミン変異体、又はアルブミンの断片の膨脹活性、別名コロイド浸透圧は、Hoefs, J.C. (1992) Hepatology 16:396-403に記載の方法で決定することができる(本文献は参照により本明細書に組み込まれる。)。ビリルビン結合性は、例えばHSAを基準とした527nmの蛍光増強により測定することができる。ビリルビン(1.0mg)を50μLの1M NaOHに溶解させ、脱塩水で1.0mLに希釈する。ビリルビンのストックを、蛍光光度計のキュベット内で100mM Tris-HCI、pH8.5、1mM EDTAで希釈し、0.6nmolビリルビン/mLとする。励起波長448nm、発光波長527nm(スリット幅10nm)で蛍光を測定し、HSA:ビリルビン比0~5mol:molの範囲に亘ってHSAで較正する。変異体は、そのFcRn結合親和性及び/又は血漿半減期が、親アルブミンと比較して改変されていてもよい。
【0058】
変異Gsh1タンパク質の場合も、活性がアルブミン活性ではなくGsh1活性であることを除けば、同様の原理を適用することができる。親Gsh1タンパク質は、配列番号2に対して少なくとも50、60、70、80又は90%の同一性を有していてもよく、より好ましくは配列番号2に対して100%の同一性を有していてもよい。変異Gsh1タンパク質は、配列番号2に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、又は少なくとも99%の同一性を有していてもよい。
【0059】
変異Not4タンパク質の場合も、活性がアルブミン活性ではなくNot4活性であることを除けば、同様の原理を適用することができる。親Not4タンパク質は、配列番号6に対して少なくとも50、60、70、80又は90%の同一性を有していてもよく、より好ましくは配列番号6に対して100%の同一性を有していてもよい。変異Not4タンパク質は、配列番号6に対して少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、又は少なくとも99%の同一性を有していてもよい。
【0060】
変異体ポリペプチド配列は、天然に見出されないものであることが好ましい。
【0061】
ベクター:「ベクター」(vector)という語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、これと作動式に連結された、その発現を誘導する調節配列とを含む、直鎖状又は環状のDNA分子を意味する。ベクターにはプラスミドが含まれる。ベクターには発現ベクターが含まれる。
【0062】
野生型:「野生型」(wild-type:WT)アルブミンという語は、天然で動物又はヒトに見出されるアルブミンと同一のアミノ酸配列を有するアルブミンを意味する。配列番号10はヒト野生型アルブミンの例である。「野生型」ヒトアルブミン(HSA)の配列は、GenBank登録番号AAA98797.1として参照可能である(Minghetti et al. “Molecular structure of the human albumin gene is revealed by nucleotide sequence within q11-22 of chromosome 4”, J. Biol. Chem. 261 (15), 6747-6757 (1986))(本文献は参照により本明細書に組み込まれる。)。野生型アルブミンの例を表1(上掲)に示す。
【0063】
アミノ酸位置を指定する際の規則
本発明の目的においては、配列番号2に開示されるポリペプチドを用いて、Gsh1タンパク質のホモログ中の対応するアミノ酸残基を決定する。Gsh1タンパク質のホモログのアミノ酸配列を、配列番号2に開示されるポリペプチドとアラインし、このアラインメントに基づいて、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)、好ましくはバージョン5.0.0以降を用いて実施されるNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)により、配列番号2に開示されるポリペプチド中の任意のアミノ酸残基に対応するアミノ酸位置番号をを決定することができる。使用されるパラメーターは、ギャップオープンペナルティー(gap open penalty)が10、ギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)が0.5、及びEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Not4の場合も、配列番号6に基づき、同様の原理を適用することができる。
【0064】
Gsh1タンパク質のホモログ中の対応するアミノ酸残基の特定は、幾つかのコンピュータープログラム、例えば、これらに限定されるものではないが、MUSCLE(multiple sequence comparison by log-expectation;バージョン3.5以降;Edgar, 2004, Nucleic Acids Research 32: 1792-1797)、MAFFT(バージョン6.857以降; Katoh and Kuma, 2002, Nucleic Acids Research 30: 3059-3066; Katoh et al., 2005, Nucleic Acids Research 33: 511-518; Katoh and Toh, 2007, Bioinformatics 23: 372-374; Katoh et al., 2009, Methods in Molecular Biology 537: 39-64; Katoh and Toh, 2010, Bioinformatics 26: 1899-1900)、及びClustalWを用いたEMBOSS EMMA(1.83以降;Thompson et al., 1994, Nucleic Acids Research 22: 4673-4680)により、それぞれのデフォルトパラメーターを用いて、複数のポリペプチド配列のアラインメントを作成することにより決定することができる。Not4の場合も、配列番号6に基づき、同様の原理を適用することができる。
【0065】
本発明のポリペプチドを記述するに当たり、参照の便宜のために、以下に説明する命名法を採用する。一般に許容されているIUPACの一文字又は三文字のアミノ酸略称を用いる。
【0066】
置換。アミノ酸置換の場合、以下の命名法を用いる:元のアミノ酸、位置、置換後のアミノ酸。従って、位置226のトレオニンのアラニンによる置換は、「Thr226Ala」又は「T226A」と表す。多重変異は加算記号(「+」)で区切って示す。例えば、「Gly205Arg+Ser411Phe」又は「G205R+S411F」は、位置205のグリシン(G)をアルギニン(R)で、位置411のセリン(S)をフェニルアラニン(F)で、それぞれ置換することを表す。
【0067】
欠失。アミノ酸欠失の場合、以下の命名法が用いられる:元のアミノ酸、位置、*。従って、位置195のグリシンの欠失は、「Gly195*」又は「G195*」と表す。多重欠失は加算記号(「+」)で区切って、例えば「Gly195*+Ser411*」又は「G195*+S411*」のように表す。
【0068】
挿入。上述のように、挿入には、ある位置を占めるアミノ酸(「所定の(或いは「元の」)アミノ酸」、「X」)のN側(「上流」、「X-1」)に対するものと、C側(「下流」、「X+1」)に対するものとが挙げられる。
【0069】
元のアミノ酸(‘X’)のC側(「下流」、「X+1」)へのアミノ酸挿入の場合、以下の命名法が用いられる:元のアミノ酸、位置、元のアミノ酸、挿入されたアミノ酸。従って、位置195のグリシンの後へのリシンの挿入は、「Gly195GlyLys」又は「G195GK」と記す。アミノ酸の多重挿入の場合は、[元のアミノ酸、位置、元のアミノ酸、挿入されたアミノ酸#1、挿入されたアミノ酸#2;等]と記す。例えば、位置195のグリシンの後へのリシン及びアラニンの挿入は、「Gly195GlyLysAla」又は「G195GKA」と記す。
【0070】
このような場合、挿入された複数のアミノ酸残基は、挿入されたアミノ酸残基に先立つアミノ酸残基の位置番号に対して、小文字を付して区別する。上記の例の場合、その順番は以下のとおりとなる。
【0071】
【0072】
元のアミノ酸(X)のN側(「上流」、「X-1」)に対するアミノ酸挿入の場合、以下の命名法が用いられる:元のアミノ酸、位置、挿入されたアミノ酸、元のアミノ酸。従って、位置195のグリシン(G)の前へのリシン(K)(K)の挿入は、「Gly195LysGly」又は「G195KG」と記す。アミノ酸の多重挿入の場合は、[元のアミノ酸、位置、挿入されたアミノ酸#1、挿入されたアミノ酸#2;等、元のアミノ酸]と記す。例えば、位置195のグリシンの前へのリシン(K)及びアラニン(A)の挿入は、「Gly195LysAlaGly」又は「G195KAG」と記す。
【0073】
このような場合、挿入された複数のアミノ酸残基は、挿入されたアミノ酸残基に続くアミノ酸残基の位置番号に対して、ダッシュ付きの小文字を付して区別する。上記の例の場合、その順番は以下のとおりとなる。
【0074】
【0075】
多重改変。多重改変を含むポリペプチドは、加算記号(「+」)で区切って示す。例えば、「Arg170Tyr+Gly195Glu」又は「R170Y+G195E」は、位置170のアルギニンをチロシンで、位置195のグリシンをグルタミン酸で、それぞれ置換することを表す。
【0076】
異なる改変。ある位置に複数の異なる改変を導入可能な場合には、これらの異なる改変をコンマで区切って示す。例えば、「Arg170Tyr,Glu」は、位置170のアルギニンをチロシン又はグルタミン酸で置換することを示す。即ち、「Tyr167Gly,Ala+Arg170Gly,Ala」は、以下の変異体を表す:「Tyr167Gly+Arg170Gly」、「Tyr167Gly+Arg170Ala」、「Tyr167Ala+Arg170Gly」、及び「Tyr167Ala+Arg170Ala」。
【0077】
本発明の詳細な説明
本発明の第1の側面は、
a.改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログ、及び/又は
b.改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は
c.改変されたGSH1遺伝子又はそのホモログ、及び/又は
d.改変されたGSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベル。
を有する真菌宿主細胞を提供する。
【0078】
改変されたGsh1タンパク質は、参照Gsh1タンパク質、例えば野生型Gsh1タンパク質、例えば配列番号2に対して改変されたものであってもよい。改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログは、配列番号2に対して少なくとも50%の同一性、より好ましくは少なくとも55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、或いは配列番号2に対して少なくとも99.9%の同一性を有することが好ましい。改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログは、配列番号2に対して最高99.9、99.8、99.7、99.6、99.5、99.4、99.3、99.2、99.1、99、98、97、96、95、90、85、80、75、70、65、又は最高60%の同一性を有していてもよく、いなくてもよい。中でも、改変されたGsh1タンパク質は、配列番号4を含むか、配列番号4からなることが好ましい。
【0079】
Gsh1タンパク質又はそのホモログの改変されたレベルは、Gsh1タンパク質又はそのホモログの低減された発現レベル、及び/又は、Gsh1タンパク質又はそのホモログの低減された活性レベルであることが好ましい。前記の改変されたレベル、例えば低減されたレベルは、参照真菌宿主細胞、例えば前記Gsh1タンパク質が配列番号2を含むか、配列番号2からなる真菌宿主細胞におけるレベルに対して改変されたレベルであることが好ましい。斯かる参照真菌宿主のGsh1タンパク質は、野生型Gsh1配列、例えば配列番号2であってもよい。適切な参照真菌宿主細胞としては、S.セレビシエ(S. cerevisiae)S288C又はS.セレビシエ(S. cerevisiae)DXY1が挙げられる。S288Cは遺伝子型MATα SUC2 gal2 mal2 mel flo1 flo8-1 hap1 ho bio1 bio6を有する。DXY1は遺伝子型leu2-3、leu2-122、can1、pra1、ubc4、ura3:yap3を有する(Kerry-Williams et al., (1998) Yeast 14:161-169:本文献は参照により本明細書に組み込まれる)。他の適切な参照真菌宿主細胞としては、前記のGSH1遺伝子又はGsh1タンパク質又はホモログを除き、前記宿主細胞と同一である細胞が挙げられる。例えば、参照細胞のGSH1遺伝子が野生型(例えば配列番号1)であってもよく、参照細胞のGSH1遺伝子が野生型Gsh1タンパク質(例えば配列番号2)であってもよく、或いは参照がによりコードされるGsh1タンパク質が野生型(例えば配列番号2)であってもよい。好ましくは、本発明の宿主細胞は、前記のGSH1遺伝子又はGsh1タンパク質又はホモログを除き、親株と同一であってもよい。参照真菌宿主は適宜「対応する」真菌宿主と呼ぶ場合がある。参照真菌宿主は親真菌宿主であってもよい。
【0080】
低減されたGsh1タンパク質のレベル及び/又はGsh1タンパク質の活性レベルは、例えば、前記GSH1遺伝子を突然変異又は欠失させることにより、突然変異を有するGsh1タンパク質又はそのホモログを生じさせ、或いは、Gsh1タンパク質又はそのホモログを完全に不在とすることにより、前記遺伝子のオープンリーディングフレームを除去又は変更することにより、前記GSH1遺伝子の調節配列、例えばプロモーター配列及び/又はターミネーター配列を突然変異又は変更することにより、例えば適切な干渉RNA、例えばアンチセンスmRNAを導入して、前記GSH1遺伝子の転写を阻害又は低減することにより、適切な転写活性化遺伝子を導入、調節、又は改変することにより、或いは、Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルを阻害する剤を導入することにより、達成することができる。タンパク質レベル及びタンパク質活性を測定する方法は、本技術分野で周知である。
【0081】
前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベルは、低減された活性レベルであってもよく、その結果の活性レベルは、親又は参照真菌宿主細胞、例えば野生型真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルの0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、又は98%から、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98又は99%までの範囲であってもよい。真菌宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベル、例えば低減された活性レベルは、上述の参照真菌宿主細胞、例えば親真菌宿主細胞又は野生型真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルと比較して改変された、例えば低減されたものであってもよい。従って、前記宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルは、参照真菌宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルの最高99%、例えば参照真菌宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルの最高98、97、96、95、90、80、70、60、50、40、30、20、又は最高10%であってもよい。Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルは、ゼロ又は実質的にゼロまで低減されていてもよい。
【0082】
Gsh1タンパク質又はそのホモログの改変された発現レベル(量)は、低減された活性レベルであってもよく、その結果の活性レベルは、参照真菌宿主細胞、例えば野生型真菌宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベルの0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98%から、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99%までの範囲であってもよい。真菌宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの改変された発現レベル、例えば低減された発現レベルは、上述の参照真菌宿主細胞、例えば親真菌宿主細胞又は野生型真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベルと比較して改変された、例えば低減されたものであってもよい。従って、前記宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベルは、参照真菌宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベルの最高99%、例えば参照真菌宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベルの最高98、97、96、95、90、80、70、60、50、40、30、20、又は最高10%であってもよい。Gsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベルは、ゼロ又は実質的にゼロまで低減されていてもよい。
【0083】
真菌宿主細胞は、機能的なGSH1遺伝子又はホモログ、又は、Gsh1タンパク質又はホモログを欠いていてもよい。例えば、前記真菌宿主細胞は、Gsh1タンパク質又はそのホモログの低減された発現レベル、又はin 低減されたGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルを生じうるよう改変されたGSH1遺伝子を含んでいてもよい。真菌宿主細胞は、例えば遺伝子の欠失等により、GSH1遺伝子又はそのホモログを欠いていてもよく、及び/又は、Gsh1タンパク質又はそのホモログを欠いていてもよい。
【0084】
GSH1活性は、例えばVolohonsky等によるChemico-Biological Interactions 140 (2002) 49-65(参照により本明細書に組み込まれる)、特に第2.8.1節に記載のアッセイ等により測定することができる。Gsh1発現レベルは、例えばELISA等によってタンパク質の量を決定することにより、或いは定量RT-PCR等によってRNAレベルを測定することにより、決定することができる。
【0085】
真菌宿主細胞は、配列番号2の47、48、49、50、51、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、409、451、452、453、454及び455から選択される位置に対応する位置、好ましくは、
配列番号2の位置47、48、49、50及び51の何れかに対応する位置、好ましくは位置49に対応する位置、
配列番号2の位置120、121、122、123、124、125、126、127、128、129又は130の何れかに対応する位置、好ましくは位置123、124、125、126又は127に対応する位置、より好ましくは位置125に対応する位置、或いは
配列番号2の位置409に対応する位置、
配列番号2の位置451、452、453、454又は455の何れかに対応する位置、好ましくは位置453に対応する位置
から選択される位置に変異を含む、改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログを有していてもよい。
【0086】
中でも、前記真菌宿主細胞が、配列番号2の位置125に対応する位置に変異を含む、改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログを有することが最も好ましい。
【0087】
変異は、1又は2以上の(例えば数個の)位置における置換、挿入、及び/又は欠失の何れであってもよい。置換が好ましい。
【0088】
真菌宿主細胞は、改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログをコードするポリヌクレオチド配列、例えば配列番号3を含んでいてもよい。遺伝コードの縮重ゆえに、他のポリヌクレオチド配列も、適切な改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログをコードすることが可能である。
【0089】
アミノ酸は種々の周知の種類に分類される。従って、一部のアミノ酸は他のアミノ酸よりもよりより密接に関連する。本明細書で使用する場合、「保存的(同類)アミノ酸置換」(conservative amino acid substitution)は、同一群内で生じる置換であって、通常はタンパク質機能に実質的な影響を与えない置換を意味する。「保存的(同類)置換」(conservative substitution)という場合は、例えば
図1に示す群内の置換を意味する。ここで
図1は、保存レベルを可視化するための系を示すベン図である。通常、保存性の低い置換ほど、置換前のアミノ酸と置換後のアミノ酸との間に、より多くの境界(線)は存在する。「保存的アミノ酸置換」としては、同一群内で行われる置換、例えば、
芳香族アミノ酸:F、H、W、Y;
脂肪族アミノ酸:I、L、V;
疎水性アミノ酸:A、C、F、H、I、K、L、M、T、V、W、Y;
荷電アミノ酸:D、E、H、K、R等;
正荷電アミノ酸:H、K、R;
負荷電アミノ酸:D、E;
極性アミノ酸:C、D、E、H、K、N、Q、R、S、T、W、Y;
小型アミノ酸:A、C、D、G、N、P、S、T、V等;
極小アミノ酸:A、C、G、S;
という群内での置換が挙げられる。
【0090】
或いは、「同類置換」としては、
脂肪族側鎖を有するアミノ酸:G、A、V、L、I;
芳香族側鎖を有するアミノ酸:F、Y、W;
硫黄含有側鎖を有するアミノ酸:C、M;
脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸:S、T;
塩基性側鎖を有するアミノ酸:K、R、H;
酸性アミノ酸及びそのアミド誘導体:D、E、N、Q;
という群内での置換が挙げられる。
【0091】
置換は、本技術分野で公知の技術、例えば米国特許第4,302,386号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示の位置特異的突然変異生成法等により行うことができる。
【0092】
非保存的アミノ酸置換とは、1の群から他の群への置換、例えば芳香族側鎖を有する群から脂肪族側鎖を有する群への置換等が挙げられる。
【0093】
真菌宿主細胞が有する改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログは、配列番号2と比較して、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W及びYから選択される非保存的アミノ酸への置換を有することが好ましい。
【0094】
配列番号2の位置125に対応する位置の変異は、天然の配列におけるアミノ酸、例えばRから、天然の配列とは異なるアミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはC、D、E又はGへの置換、より好ましくはGへの置換であってもよい。斯かる置換としては、正荷電アミノ酸から、脂肪族、芳香族、疎水性、小型、極小、極性、又は負荷電アミノ酸への置換、好ましくは負荷電アミノ酸又は極小アミノ酸への置換が挙げられる。特に好ましい置換はRからGへの置換である。Kへの置換はそれほど好ましくない。
【0095】
配列番号2の位置49に対応する位置の変異は、天然の配列におけるアミノ酸、例えばDから、天然の配列とは異なるアミノ酸、例えばA、C、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはH、K又はRへの置換、より好ましくはK又はRへの置換であってもよい。斯かる置換としては、負荷電アミノ酸から正荷電アミノ酸への置換が挙げられる。Eへの置換はそれほど好ましくない。
【0096】
配列番号2の位置409に対応する位置の変異は、天然の配列におけるアミノ酸、例えばHから、天然の配列とは異なるアミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはA、I、L、V、M、F、W、Yへの置換、より好ましくはA、I、L、Vへの置換、最も好ましくはLへの置換であってもよい。斯かる置換としては、芳香族アミノ酸から脂肪族アミノ酸への置換が挙げられる。特に好ましい置換はHからLへの置換である。
【0097】
配列番号2の位置P453に対応する位置の変異は、天然の配列におけるアミノ酸、例えばPから、天然の配列とは異なるアミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはA、I、L、V、M、F、W又はYへの置換、より好ましくはA、I、L、Vへの置換、最も好ましくはLへの置換であってもよい。斯かる置換としては、芳香族アミノ酸から脂肪族アミノ酸への置換が挙げられる。特に好ましい置換はPからLへの置換である。
【0098】
改変されたGsh1タンパク質は、配列番号2の位置R125に対応する変異を含むことが好ましい。
【0099】
改変されたGsh1タンパク質は、配列番号4を含むか、配列番号4からなることが好ましく、即ち変異R125Gを含むことが好ましい。斯かる改変されたGsh1タンパク質は、例えばGsh1タンパク質(例えば配列番号1)をコードするヌクレオチド配列を用いて提供することができる。単一ヌクレオチド多型(SNP)A373Gを含むこうしたヌクレオチド配列は、例えば配列番号3を用いて提供することができる。
【0100】
或いは、前記改変されたレベルは、増加したレベルであってもよい。Gsh1タンパク質又はそのホモログの増加したレベル又は増加した活性レベルは、所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の収率を減少させる可能性が高い。斯かる収率の減少は、例えば前記所望のタンパク質が宿主細胞の生存に有害である場合などに望ましい。増加したレベルとは、参照宿主、例えば親宿主におけるレベルの少なくとも101、102、103、104、105、110、120、130、140、150、175、又は200%であってもよい。
【0101】
位置R125は位置D49と塩橋相互作用を生じると考えられている。何れかのアミノ酸を変異させることで、斯かる相互作用を阻害できる可能性がある。R125をD又はEに突然変異させ、或いはD49をR又はKに突然変異させて、静電反発作用を生じさせることにより、位置125と49との間の相互作用を不安定化させることができると期待される。しかし、R125をKに変異させ、及び/又は、D49をE(グルタミン酸)に変異させると、斯かる相互作用が維持される可能性がある。
【0102】
Gsh1タンパク質は、宿主細胞に対して外因性であってもよく、内因性であってもよい。Gsh1タンパク質が宿主細胞に対して外因性である場合、宿主細胞はその内因性のGsh1タンパク質を維持していてもよく、欠いていてもよい。
【0103】
本発明の第1の側面に係る真菌宿主は、更に、
改変されたNot4タンパク質又はそのホモログ、及び/又は
改変されたNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は
改変されたNOT4遺伝子又はそのホモログ、及び/又は
改変されたNOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベル
を有していてもよい。
【0104】
NOT4は別名MOT2とも呼ばれる。改変されたNot4タンパク質は、例えば参照Not4タンパク質、例えば野生型Not4タンパク質、例えば配列番号6と比較して、改変されていてもよい。改変されたNot4タンパク質又はそのホモログは、配列番号6に対して少なくとも70%の同一性、より好ましくは少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、或いは配列番号6に対して少なくとも99.9%の同一性を有することが好ましい。改変されたNot4タンパク質又はそのホモログは、配列番号6に対して最高99.9、99.8、99.7、99.6、99.5、99.4、99.3、99.2、99.1、99、98、97、96、95、90、85、80、75、70、65、又は最高60%の同一性を有していてもよく、いなくてもよい。中でも、改変されたNot4タンパク質が配列番号8を含むか、配列番号8からなることがより好ましい。
【0105】
Not4タンパク質又はそのホモログの改変されたレベルは、Not4タンパク質又はそのホモログの低減された発現レベル、又は、低減されたNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルことが好ましい。改変されたレベル、例えば低減されたレベルは、参照真菌宿主細胞におけるレベル、例えばNot4タンパク質が配列番号6を含むか、配列番号6からなる真菌宿主細胞におけるレベルに対して改変されたレベルであることが好ましい。参照真菌宿主のNot4タンパク質は、例えば野生型Not4配列、例えば配列番号6であってもよい。適切な参照真菌宿主細胞としては、上述したS.セレビシエ(S. cerevisiae)S288C又はS.セレビシエ(S. cerevisiae)DXY1が挙げられる。他の適切な参照真菌宿主細胞としては、NOT4遺伝子又はNot4タンパク質又はホモログを除いて宿主細胞と同一である細胞が挙げられる。例えば、参照細胞のNOT4遺伝子が野生型(例えば配列番号5)であってもよく、参照細胞のNOT4遺伝子が野生型Not4タンパク質(例えば配列番号6)をコードしていてもよく、参照細胞によってコードされるNot4タンパク質が野生型(例えば配列番号6)であってもよい。好ましくは、本発明の宿主細胞は、NOT4遺伝子又はNot4タンパク質又はホモログを除いて、親株と同一であることが好ましい。参照真菌宿主を、「対応する」(corresponding)真菌宿主という場合もある。参照真菌宿主は親真菌宿主であってもよい。
【0106】
Not4タンパク質のレベル又はNot4タンパク質の活性レベルの低減は、例えば、以下の手法により達成することができる。NOT4遺伝子を突然変異又は欠失させることにより、Not4タンパク質又はそのホモログに突然変異を生じさせ、或いは、Not4タンパク質又はそのホモログを完全に不在とすること。遺伝子のオープンリーディングフレームを除去又は変更すること。NOT4遺伝子の調節配列、例えばプロモーター配列及び/又はターミネーター配列を突然変異又は変更すること。例えば適切な干渉RNA、例えばアンチセンスmRNAを導入することにより、或いは、適切な転写活性化遺伝子を導入、調節、又は改変することにより、或いは、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルを阻害する剤を導入することにより、NOT4遺伝子の転写を阻害又は低減すること。タンパク質レベルを測定する方法は本技術分野で周知である。
【0107】
Not4タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベルは、低減された活性レベルであってもよく、その結果の活性レベルは、親又は参照真菌宿主細胞、例えば野生型真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの0、10、20、30、40、50、60、70、80又は90%から、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、又は98%までの範囲であってもよい。真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベル、例えば低減された活性レベルは、上述の参照真菌宿主細胞、例えば親真菌宿主細胞又は野生型真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルと比較して改変され、例えば低減されたものであってもよい。従って、宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルは、参照真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの最高99%、例えば参照真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルの最高98、97、96、95、90、80、70、60、50、40、30、20、又は最高10%であってもよい。Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルは、ゼロ又は実質的にゼロまで低減されていてもよい。
【0108】
Not4タンパク質又はそのホモログの改変された発現レベル(量)は、低減された活性レベルであってもよく、その結果の活性レベルは、参照真菌宿主細胞、例えば野生型真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルの0、10、20、30、40、50、60、70、80又は90%から、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、又は98%までの範囲であってもよい。真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの改変された発現レベル、例えば低減された発現レベルは、上述の参照真菌宿主細胞、例えば親真菌宿主細胞又は野生型真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルと比較して改変され、例えば低減されたものであってもよい。従って、前記宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルは、参照真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルの最高99%、例えば参照真菌宿主細胞におけるNot4タンパク質又はそのホモログの発現レベルの最高98、97、96、95、90、80、70、60、50、40、30、20、又は最高10%であってもよい。Not4タンパク質又はそのホモログの発現レベルは、ゼロ又は実質的にゼロまで低減されていてもよい。
【0109】
真菌宿主細胞は、機能的なNOT4遺伝子又はホモログ、又は、Not4タンパク質又はそのホモログを欠いていてもよい。例えば、真菌宿主細胞は、Not4タンパク質又はそのホモログの低減された発現レベル、又は、低減されたNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベルを生じるように改変されたNOT4遺伝子を含んでいてもよい。真菌宿主細胞は、NOT4遺伝子又はそのホモログを、例えば欠失等により欠いていてもよく、及び/又は、Not4タンパク質又はそのホモログを欠いていてもよい。
【0110】
Not4の発現レベルは、例えばELISAによってタンパク質の量を決定することにより、或いは、定量RT-PCRによってRNAレベルを測定することにより、決定することができる。
【0111】
改変されたNot4タンパク質又はそのホモログは、そのNot1タンパク質又はそのホモログとの相互作用が改変されるように、突然変異していてもよい。例えば、Not4タンパク質又はそのホモログのN末端領域は、例えば配列番号6の位置426~439に対応するアミノ酸を含むα-ヘリックスにおいて、突然変異していてもよい。
【0112】
従って、本発明は、Not1との相互作用、例えば疎水性相互作用が、野生型Not4タンパク質(例えば配列番号6)と野生型Not1タンパク質(例えば配列番号13)との間の相互作用よりも弱められた、Not4タンパク質又はそのホモログを更に有する真菌宿主細胞を提供する。
【0113】
真菌宿主細胞は、
配列番号6の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470から選択される位置、
好ましくは、
配列番号6の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、又は439、好ましくは位置429、430、434、又は437、最も好ましくは位置429に対応する位置、
配列番号6の460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470、好ましくは位置463、464、又は466に対応する位置、又は
配列番号6の438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、又は456、好ましくは位置442、445、447又は452に対応する位置
から選択される位置に対応する位置に変異を含む、改変されたNot4タンパク質又はそのホモログを有していてもよい。
【0114】
斯かる変異は、1又は2以上の(例えば数個の)位置における、置換、挿入、及び/又は欠失であってもよい。中でも置換が好ましい。
【0115】
真菌宿主細胞は、改変されたNot4タンパク質又はそのホモログをコードするポリヌクレオチド配列、例えば配列番号7を含んでいてもよい。遺伝コードの縮重ゆえに、他のポリヌクレオチド配列によって、適切な改変されたNot4タンパク質又はそのホモログをコードすることも可能である。
【0116】
真菌宿主細胞は、配列番号6と比較して改変されたNot4タンパク質又はそのホモログであって、変異としてA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W及びYから選択されるアミノ酸、好ましくは非保存的アミノ酸への置換を含む、改変されたNot4タンパク質又はそのホモログを含んでいてもよい。
【0117】
配列番号6の位置429に対応する位置の変異は、例えば天然配列におけるアミノ酸、例えばFから、天然配列とは異なるアミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、好ましくはG、A、V、L、又はIへの置換、より好ましくはV、L又はIへの置換、最も好ましくはIへの置換であってもよい。斯かる置換は、非保存的アミノ酸によるものでもよい。斯かる置換は脂肪族アミノ酸への置換であってもよい。特に好ましい置換はFからIへの置換である。
【0118】
配列番号6の位置430に対応する位置の変異は、例えば、天然配列におけるアミノ酸、例えばLから、天然配列とは異なるアミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYへの置換であってもよい。斯かる置換は非保存的アミノ酸への置換であってもよい。
【0119】
位置434に対応する位置の変異は、例えば天然配列におけるアミノ酸、例えばLから、天然配列とは異なるアミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYへの置換であってもよい。斯かる置換は非保存的アミノ酸への置換であってもよい。
【0120】
配列番号6の位置437に対応する位置の変異は、例えば天然配列におけるアミノ酸、例えばLから、天然配列とは異なるアミノ酸、例えばA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYへの置換であってもよい。斯かる置換は非保存的アミノ酸への置換であってもよい。
【0121】
好ましい改変されたNot4タンパク質としては、配列番号6の位置F429に対応する変異を含むものが挙げられる。
【0122】
好ましい改変されたNot4タンパク質としては、配列番号8を含むか、配列番号8からなるタンパク質、即ち、変異F429Iを含むタンパク質が挙げられる。斯かる改変されたNot4タンパク質は、例えば、Not4タンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えば配列番号5)において、SNPとしてT1285Aを含むヌクレオチド配列(例えば配列番号7)を用いて提供することができる。
【0123】
或いは、改変されたレベルは、増加したレベルであってもよい。Not4タンパク質又はそのホモログの増加したレベル又は増加した活性は、所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の収率を低下させる可能性が高い。斯かる減少した収率は、例えば、所望のタンパク質が宿主細胞の生存にとって有害であるような場合に望ましい。増加したレベルとしては、例えば参照宿主、例えば親宿主におけるレベルと比較して、少なくとも101、102、103、104、105、110、120、130、140、150、175、又は200%であってもよい。
【0124】
Not4タンパク質は、宿主細胞に対して外因性であってもよく、宿主細胞に対して内因性であってもよい。Not4タンパク質が宿主細胞に対して外因性である場合には、宿主細胞は内因性のNot4タンパク質を維持していてもよく、欠いていてもよい。
【0125】
真菌宿主は、(1)改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログのレベル、及び/又は、改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は、改変されたGSH1遺伝子又はそのホモログ、及び/又は、改変されたGSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベルと、(2)Not4タンパク質又はそのホモログの改変されたレベル、及び/又は、Not4タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベル、及び/又は、改変されたNOT4遺伝子又はそのホモログ、及び/又は、改変されたNOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベルとを、ともに有していてもよい。中でも、真菌宿主は、(1)低減されたGsh1タンパク質又はそのホモログのレベル、或いは、低減されたGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は、低減されたGSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベルと、(2)低減されたNot4タンパク質又はそのホモログのレベル、又は、低減されたNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は、低減されたNOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベルとを有していることが好ましい。或いは、真菌宿主は、(1)低減されたGsh1タンパク質又はそのホモログのレベル、又は、低減されたGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は、低減されたGSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベルと、(2)増加したNot4タンパク質又はそのホモログのレベル、又は、Not4タンパク質又はそのホモログの増加した活性レベル、及び/又は、増加したNOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベルとを有していてもよい。或いは、真菌宿主は、(1)増加したGsh1タンパク質又はそのホモログのレベル、又は、Gsh1タンパク質又はそのホモログの増加した活性レベル、及び/又は、増加したGSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベルと、(2)低減されたNot4タンパク質又はそのホモログのレベル、又は、低減されたNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は、低減されたNOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベルとを有していてもよい。同様の選択肢は、GSH1及びNOT4の発現レベルにも当てはまる。「増加した」(increased)及び「低減された」(decreased)という用語については、本明細書に記載したとおりである。
【0126】
Gsh1の改変されたレベル、例えば低減されたレベルは、例えば参照真菌宿主細胞、例えばGsh1タンパク質が配列番号2を含むか、配列番号2からなる真菌宿主細胞におけるレベルと比較して改変され、例えば低減されたものであることが好ましく、Not4の改変されたレベル、例えば低減されたレベルは、参照真菌宿主細胞におけるレベル、例えばNot4タンパク質が配列番号6を含むか、配列番号6からなる真菌宿主細胞におけるレベルと比較して改変され、例えば低減されたものであることが好ましい。斯かる参照真菌宿主のGsh1タンパク質は、例えば野生型Gsh1配列、例えば配列番号2であってもよい。参照真菌宿主のNot4タンパク質は、例えば野生型Not4配列、例えば配列番号6であってもよい。適切な参照真菌宿主細胞としては、上述のS.セレビシエ(S. cerevisiae)S288C又はS.セレビシエ(S. cerevisiae)DXY1が挙げられる。他の適切な参照真菌宿主細胞としては、前記のGSH1遺伝子又はGsh1タンパク質又はホモログ、及び、NOT4遺伝子又はNot4タンパク質又はホモログを除き、宿主細胞と同一である細胞が挙げられる。例えば、前記参照細胞のGSH1遺伝子が、野生型(例えば配列番号1)であってもよく、或いは、前記参照細胞のGSH1遺伝子が、野生型Gsh1タンパク質(例えば配列番号2)をコードするものであってもよく、或いは、前記参照細胞によりコードされるGsh1タンパク質が、野生型(例えば配列番号2)であってもよい。また、前記参照細胞のNOT4遺伝子が、野生型(例えば配列番号5)であってもよく、或いは、前記参照細胞のNOT4遺伝子が、野生型Not4タンパク質(例えば配列番号6)をコードするものであってもよく、或いは、前記参照細胞によりコードされるNot4タンパク質が、野生型(例えば配列番号6)であってもよい。中でも、本発明の宿主細胞は、前記のGSH1遺伝子又はGsh1タンパク質又はホモログと、NOT4遺伝子又はNot4タンパク質又はホモログとを除けば、親株と同一であることが好ましい。参照真菌宿主を「対応する」(corresponding)真菌宿主と呼ぶ場合もある。参照真菌宿主は、例えば親真菌宿主であってもよい。
【0127】
真菌宿主細胞は、組換真菌宿主細胞であってもよい。
【0128】
真菌宿主細胞は、酵母又は糸状菌であってもよい。本明細書で使用する場合、「真菌」(fungi)には、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)、及び接合菌門(Zygomycota)(Hawksworth et al., In, Ainsworth and Bisby's Dictionary of The Fungi, 8th edition, 1995, CAB International, University Press, Cambridge, UKの定義による)が含まれると共に、卵菌類(Oomycota)(Hawksworth et al., 1995, 同上, page 171にて列記)及びあらゆる栄養胞子形成菌類(Hawksworth et al., 1995, 同上)も含まれる。
【0129】
好ましい側面では、真菌宿主細胞は、酵母細胞である。本明細書で使用する場合、「酵母」(yeast)には、子嚢胞子形成酵母(エンドミセス:Endomycetales)、担子胞子形成酵母、及び、不完全菌類に属する酵母(分芽菌:Blastomycetes)が挙げられる。斯かる酵母の分類は将来変更される可能性もあるため、本発明の目的においては、Biology and Activities of Yeast (Skinner, F.A., Passmore, S.M., and Davenport, R.R., eds, Soc. App. Bacteriol. Symposium Series No: 9, 1980, pages 1 to 27)の記載に基づいて酵母を定義するものとする。
【0130】
より好ましい側面では、酵母宿主細胞は、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クルイウェロミセス(Kluyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、又はヤロウイア(Yarrowia)細胞である。
【0131】
より好ましい側面では、酵母宿主細胞は、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロミセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、又はヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)細胞である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)宿主が特に好ましい。
【0132】
S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の遺伝子型の特徴のうち1又は2以上を有していてもよく、いなくてもよい:leu2-3、leu2-122、can1、pra1、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2、pmt1::URA3(国際公開第2014/138371号:引用により本明細書に組み込まれる)、例えばS.セレビシエ(S. cerevisiae)BXP10。S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、MATaを含むことが好ましい。
【0133】
S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の遺伝子型のうち1又は2以上を含んでいてもよく、いなくてもよい:MATa、leu2-3、leu2-112、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2;更にPDI1、URA3及びYIplac211がPDI1遺伝子座に組み込まれたもの(Finnis et al 2010, Microbial Cell Factories 9:87)、例えばS.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9。
【0134】
S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の遺伝子型のうち1又は2以上を含んでいてもよく、いなくてもよい:MATα、leu2、pep4-3、例えばFinnis et al 1993, Eur. J. Biochem, 212: 201-210に記載のS.セレビシエ(S. cerevisiae)MT302/28B。
【0135】
S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の遺伝子型を含んでいてもよく、いなくてもよい: MATα、SUC2、gal2、mal2、mel、flo1、flo8-1、hap1、ho、bio1、bio6(Mortimer and Johnston (1986) Genetics 113:35-43)、例えばS.セレビシエ(S. cerevisiae)S288C。
【0136】
好ましいS.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主株は、以下の全てを含むか、以下の全てからなる:MATa、leu2-3、leu2-122、can1、pra1、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2、及びpmt1::URA3。
【0137】
他の好ましいS.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の全てを含むか、以下の全てからなる:MATa、leu2-3、leu2-112、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2、更にPDI1、URA3及びYIplac211がPDI1遺伝子座に組み込まれたもの。
【0138】
他の好ましいS.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の全てを含むか、以下の全てからなる:MATα、SUC2、gal2、mal2、mel、flo1、flo8-1、hap1、ho、bio1、bio6。
【0139】
他の好ましいS.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、以下の全てを含むか、以下の全てからなる:MATα、leu2、pep4-3。
【0140】
宿主は、倍数体、二倍体、又は単数体である。単数体又は二倍体の酵母宿主が好ましく、中でも好ましいのは単数体である。
【0141】
宿主交配型としては、例えばMATa又はMATα(Mat-アルファ)が挙げられる。S.セレビシエ(S. cerevisiae)宿主は、ヒトアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体をコードするプラスミドを含むことが好ましい。
【0142】
「糸状菌」(filamentous fungi)には、真菌類(Eumycota)及び卵菌類(Oomycota)亜区分のあらゆる糸状形態が含まれる(Hawksworth et al., 1995, 同上の定義による)。糸状菌(filamentous fungi)の特徴は、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナン、及び他の複合多糖類から構成される菌糸壁(mycelial wall)である。栄養成長は菌糸伸長によって行われ、炭素異化は偏性好気性である。対称的に、酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等による栄養成長は、単細胞性葉状体の出芽によって行われ、炭素異化としては発酵の場合もある。
【0143】
好ましい糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞は、Acremonium、Aspergillus、Aureobasidium、Bjerkandera、Ceriporiopsis、Chrysosporium、Coprinus、Coriolus、Cryptococcus、Filibasidium、Fusarium、Humicola、Magnaporthe、Mucor、Myceliophthora、Neocallimastix、Neurospora、Paecilomyces、Penicillium、Phanerochaete、Phlebia、Piromyces、Pleurotus、Schizophyllum、Talaromyces、Thermoascus、Thielavia、Tolypocladium、Trametes、又はTrichodermaを含んでもよく、含まなくてもよい。
【0144】
真菌宿主細胞は、所望のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでいてもよい。所望のタンパク質は、異種タンパク質であることが好ましい。異種タンパク質とは、天然では宿主細胞によって産生されないタンパク質である。好ましくは、例えば選択マーカー、例えば抗生物質抵抗性マーカー又は栄養要求性マーカー、シャペロン、FLP又はFRT等を含まないことが好ましい。
【0145】
真菌宿主細胞は発現宿主であってもよい。真菌宿主細胞は発現カセットを含んでいてもよく、これは例えば所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードしていてもよい。斯かる発現カセットは、例えばベクター、例えばプラスミドの中に存在していてもよい。真菌宿主細胞は発現ベクターを含んでいてもよい。
【0146】
所望のタンパク質は、植物性タンパク質若しくは動物性タンパク質又はそれらの変異体であってもよく、なくてもよい。所望のタンパク質は、アルブミン、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン(antistasin)、ダニ抗凝固ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小モジュラー免疫医薬(登録商標)(「SMIP」)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、Kunitzドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号(援用により本明細書に組み込まれる。)に記載のもの、アルブミン融合体を有するものも含む)、インターフェロン、インターロイキン、IL-10、IL-11、IL-2、インターフェロンα(アルファ)種及び亜種、インターフェロンβ(ベータ)種及び亜種、インターフェロンγ(ガンマ)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL-1-受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣体、トロンボポイエチン(TPO)及びTPO模倣体、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン(cyanovirin)-N、5-ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIV gp41、HIV gp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエクステンジン(exendin)-4、GLP-1又はGLP-2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(ベータ)、腫瘍壊死因子、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、FGF、凝固因子(前駆体及び活性型を含む)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand's)因子、アルファ1-抗トリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝生成物、抗生物質、又は上記の何れかの変異体若しくは断片の配列を含んでいてもよく、いなくてもよい。
【0147】
当該変異体は、上記のタンパク質のうち1又は2以上に対して、少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有することが好ましい。
【0148】
好ましい所望のタンパク質は、血清タンパク質、例えばアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体であってもよく、なくてもよい。斯かるアルブミンは、配列番号6に対して、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、98.2、98.4、98.6、98.8、99、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、又は99.9から、70、75、80、85、90、95、96、97、98、98.2、98.4、98.6、98.8、99、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、又は100%の配列同一性を有することが好ましい。中でも、前記アルブミンは、配列番号10を含み、又は配列番号10からなることが最も好ましい。
【0149】
前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体は、配列番号10と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19個から、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個までの変異を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。アルブミン変異体は、配列番号10と比較して、1~10個の変異を含むことが好ましく、1~5個の変異を含むことがより好ましい。好ましい変異としては置換が挙げられる。
【0150】
アルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体は、配列番号6の位置K573に対応する位置にA、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを、より好ましくは、配列番号10の位置K573に対応する位置にP、H、W又はYを含んでいてもよく、いなくてもよい。特に、アルブミン変異体は、配列番号10に対して少なくとも95%の同一性(より好ましくは少なくとも96、97、98又は99%の同一性)を有すると共に、配列番号10の位置573に対応する位置にPを含むことが好ましい。
【0151】
前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体は、配列番号10の位置E492に対応する位置に、A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを、好ましくは配列番号10の位置E492に対応する位置にG、D、F、H、M又はRを、より一層好ましくは配列番号10の位置E492に対応する位置にG又はDを、含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。特に、アルブミン変異体は、配列番号10に対して少なくとも95%の同一性(より好ましくは少なくとも96、97、98又は99%の同一性)を有すると共に、配列番号10の位置E492に対応する位置にGを含むことが好ましい。
【0152】
前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体は、配列番号10の位置K574に対応する位置にA、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを、より好ましくは配列番号10の位置K574に対応する位置にH、G、D、F、N、S又はYを、より一層好ましくは配列番号10の位置K574に対応する位置にD、F、G又はHを、含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。特に、アルブミン変異体は、配列番号10に対して少なくとも95%の同一性(より好ましくは少なくとも96、97、98又は99%の同一性)を有すると共に、配列番号10の位置K574に対応する位置にHを含むことが好ましい。
【0153】
前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体は、配列番号10の位置Q580に対応する位置にA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W又はYを、より好ましくは配列番号10の位置Q580に対応する位置にK又はRを、含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。特に、アルブミン変異体は、配列番号10に対して少なくとも95%の同一性(より好ましくは少なくとも96、97、98又は99%の同一性)を有すると共に、配列番号10の位置Q580に対応する位置にKを含むことが好ましい。
【0154】
好ましくは、アルブミン変異体は、位置492、573、574及び580に対応する位置から選択される1又は2以上の位置に変異を、例えば上述の置換を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。例えば、前記アルブミン変異体は、配列番号45を含み、又は配列番号45からなっていてもよい。
【0155】
他の好ましいアルブミン変異体、その断片、及び/又は、その融合体としては、国際公開第2011/051489号、国際公開第2011/124718号、国際公開第2012/059486号、国際公開第2012/150319号、国際公開第2014/072481号、国際公開第2013/135896号、国際公開第2015/036579号、国際公開第2010/092135号、国際公開第2013/075066号、国際公開第2014/179657号、国際公開第2009/126920号、国際公開第2010/059315号、国際公開第2011/103076号、国際公開第2012/112188号、国際公開第2015/063611号、及び国際公開第2017/029407号(これらは各々参照により本明細書に組み込まれる)に記載の変異体、或いはその断片又は融合体が挙げられる。
【0156】
斯かるアルブミンは、アルブミン又はその変異体の断片であってもよく、なくてもよい。
【0157】
斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体は、親アルブミン、或いはその断片及び/又は融合体と比較して、FcRnに対する結合親和性がより強められ、又は弱められてなる(好ましくは、より強められてなる)。
【0158】
斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体のFcRn(例えばshFcRn)に対するKDは、対応するHSA又はそのコンジュゲートのKDよりも低くてもよい。アルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体のFcRnに対するKDは、HSAのFcRnに対するKD×0.9未満、より好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.5未満、より好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.1未満、より一層好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.05未満、より一層好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.02未満、より一層好ましくはHSAのFcRnに対するKD×0.01未満、最も好ましくは、HSAのFcRnに対するKD×0.001未満であることが好ましい(ここで×は倍数を表す)。KDが低いほど結合親和性は強くなる。
【0159】
斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体のFcRnに対するKDは、対応するHSA又はそのコンジュゲートのKDよりも高くてもよい。アルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体のFcRnに対するKDは、HSAのFcRnに対するKD×2以上、より好ましくはHSAのFcRnに対するKD×5以上、より好ましくはHSAのFcRnに対するKD×10以上、より一層好ましくはHSAのFcRnに対するKD×25以上、最も好ましくはHSAのFcRnに対するKD×50以上であることが好ましい。斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体は、FcRnに対して全く結合しなくてもよい。KDが高いほど結合親和性は弱くなる。
【0160】
KDを決定及び/又は比較する際には、以下のパラメーターのうち1又は2以上(例えば数個)(好ましくは全て)を用いてもよい。
機器: Biacore 3000 instrument(GE Healthcare)。
フローセル:cm5センサーチップ。
FcRn:ヒトFcRn、好ましくは可溶性ヒトFcRn、任意によりタグを連結。タグの例としてはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)又はヒスチジン(His)、最も好ましくはHis、例えばベータ-2-ミクログロブリンのC末端に6つのヒスチジン残基を付加。
FcRnの量:1200~2500RU。
【0161】
結合化学:アミンカップリング化学(例えば機器メーカーが提供するプロトコールの記載に準拠)。
結合方法:カップリングは、例えば10mM 酢酸ナトリウム、pH5.0(GE Healthcare)中20μg/mLのタンパク質を注入して実施する。ラニングバッファー及び希釈用バッファーとしては、リン酸緩衝液(67mM リン酸緩衝液、0.15M NaCl、0.005% Tween 20)、pH5.5を使用すればよい。表面の再生は、HBS-EP緩衝液(0.01M HEPES、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20)、pH7.4(Biacore AB)を注入して行えばよい。
【0162】
試験分子(例えばHSA又は変異体)の注入量:20~0.032μM。
注入流速:定速、例えば30μL/mL。
注入温度:25℃。
データ評価用ソフトウェア:BIAevaluation 4.1ソフトウェア(Biacore AB)。
【0163】
斯かるアルブミン変異体、或いはその断片及び/又は融合体の血漿半減期は、親アルブミン、或いはその断片及び/又は融合体と比較してより長く、又はより短くてもよいが、より長いことが好ましい。
【0164】
血漿半減期は、適切な個人において、インビボで決定するのが理想的である。しかし、動物又はヒトで実験を行うと、時間及び費用が掛かる上に、倫理的な懸念が避けられない。よって、血漿半減期が延長又は短縮されたことを確認するためには、インビトロアッセイを用いることが望ましい。アルブミンのその受容体(FcRn)への結合は、血漿半減期にとって重要な因子であること、また、受容体結合性と血漿半減期との相関によれば、アルブミンのその受容体への親和性が高いほど、血漿半減期は長くなることが知られている。従って、本発明では、アルブミンのFcRnへの親和性が高いほど、血漿半減期が延長されており、アルブミンのその受容体への親和性が低いほど、血漿半減期が短縮されていると判断ことができる。
【0165】
アルブミンのその受容体FcRnへの結合は、親和性という言葉と、「より強い」(stronger)又は「より弱い」(weaker)という表現を用いて表すことができる。即ち、HSAのFcRnに対する親和性よりもFcRnに対する親和性が強い分子は、HSAよりもFcRnへの結合性が強く、HSAのFcRnに対する親和性よりもFcRnに対する親和性が弱い分子は、HSAよりもFcRnへの結合性が弱いと判断ことができる。「結合親和性」(binding affinity)という言葉に替えて、「結合係数」(binding coefficient)という言葉を用いてもよい。
【0166】
「血漿半減期がより長い」又は「血漿半減期がより短い」という記載、及び類似の表現は、対応する親又は参照又は対応するアルブミン分子との対比に基づくものと解すべきである。即ち、本発明の変異体アルブミンに関して、血漿半減期がより長いとは、斯かる変異体が、本明細書に記載の改変を有する他は同一の配列を有する対応するアルブミンと比較して、より長い血漿半減期を有することを意味する。
【0167】
斯かるアルブミン、或いはその変異体及び/又は断片は、遺伝子工学的に融合パートナーと連結されていてもよく、いなくてもよい。融合パートナーは、非アルブミンタンパク質であることが好ましい。融合パートナーは、例えばアルブミンのN’末端又はC’末端に連結される。アルブミン部分とパートナー部分との間には、1又は2以上のスペーサーアミノ酸が存在していてもよい。融合パートナーは、アルブミン配列内に挿入されていてもよい。融合パートナーは、例えば少なくとも5アミノ酸長、例えば少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、又は少なくとも100アミノ酸長である。斯かる融合パートナーの最大長は、例えば35、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000アミノ酸長である。
【0168】
融合体タンパク質は、1又は2以上の融合パートナーを有していてもよい。これらは例えばアルブミンのN’又はC’末端に連結され、或いはアルブミン配列内に挿入される。融合体タンパク質は、1又は2以上(例えば数個、例えば2、3、4又は5)コピーの同一の融合パートナーを有していてもよく、2種又はそれ以上の異なるパートナーを有していてもよい。斯かる融合パートナーは、例えば上述した所望のタンパク質又は異種タンパク質の中から選択される。
【0169】
好ましい融合体タンパク質は、GLP-1活性を有するポリペプチド、例えば国際公開第2014/138371号(引用により本明細書に組み込まれる。特に第13、14、26、34~37ページを参照)に記載のものを含んでいてもよい。例えば、好ましい融合体タンパク質は、HSA(配列番号10)、或いはHSAの変異体(例えば配列番号45)及び/又は断片が、1コピーのGLP類似物(例えば配列番号14又は15)と遺伝子工学的に連結されたものを含んでいてもよく、HSA(配列番号10)、或いはHSAの変異体(例えば配列番号45)及び/又は断片が、GLP類似物のタンデムリピート(例えば配列番号15、52、又は53)と遺伝子工学的に連結されたものを含んでいてもよい。例えば、融合体タンパク質は、配列番号16(アルビグルチド:albiglutide)を含んでいてもよく、配列番号16からなるものでもよい。
【0170】
斯かるアルブミン、変異体、或いはその断片及び/又は融合体の産生に特に適した真菌宿主細胞としては、これらに限定されるものではないが、アスペルギルス(Aspergillus)(国際公開第06/066595号)、クルイウェロミセス(Kluyveromyces)(Fleer, 1991, Bio/technology 9: 968-975)、ピチア(Pichia)(Kobayashi, 1998, Therapeutic Apheresis 2: 257-262)、及びサッカロミセス(Saccharomyces)(Sleep, 1990, Bio/technology 8: 42-46)が挙げられる。これらの文献は、各々引用により本明細書に組み込まれる。
【0171】
所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)は、分泌タンパク質であってもよく、なくてもよい。即ち、宿主細胞によりコードされるタンパク質は、シグナルペプチド(文献によっては「リーダー配列」と記載される場合もある)を含んでいてもよく、いなくてもよい。通常、タンパク質が宿主細胞から分泌される際に、シグナルペプチド配列はタンパク質から切断されるため、最終的な(成熟)タンパク質は、シグナルペプチド配列を含まない。適切なシグナルペプチド配列の例を以下に挙げる。シグナルペプチドは、プロペプチドを含んでいてもよく、いなくてもよい。
【0172】
或いは、所望のタンパク質は、細胞内タンパク質であってもよく、なくてもよい。
【0173】
所望のタンパク質は、プラスミドによりコードされるものであってもよく、なくてもよい。
【0174】
所望のタンパク質は、染色体核酸によりコードされるものであってもよく、なくてもよい。
【0175】
適切なプラスミドとしては、2ミクロンファミリープラスミド、例えば国際公開第2006/067511号(引用により本明細書に組み込まれる。特に強調すべきは「2ミクロンファミリープラスミド」(“The 2μm-family plasmids”、第46~61ページ)と題された項目である。)に記載のものが挙げられる。2ミクロンファミリープラスミドと総称される斯かるプラスミドとしては、チゴサッカロミセス・ルーキシィ(Zygosaccharomyces rouxii)(旧来の分類はチゴサッカロミセス・ビスポラス(Zygosaccharomyces bisporus))由来のpSR1、pSB3、及びpSB4、チゴサッカロミセス・バイリィ(Zygosaccharomyces bailii)由来のプラスミドpSB1及びpSB2、チゴサッカロミセス・フェルメンタティ(Zygosaccharomyces fermentati)由来のプラスミドpSM1、クルイベロミセス・ドロソフィラルム(Kluyveromyces drosphilarum)由来のプラスミドpKD1、ピチア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens)由来の未だ命名されていないプラスミド(「pPM1」)、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の2μmプラスミド(例えば国際公開第2006/067511号の
図1に示す)及び変異体(例えばScp1、Scp2、及びScp3)が挙げられる(Volkert, et al., 1989, Microbiological Reviews 53: 299; Murray et al., 1988, J. Mol. Biol. 200: 601; Painting, et al., 1984, J. Applied Bacteriology 56: 331)。
【0176】
2ミクロンファミリープラスミドは、通常は少なくとも3つのオープンリーディングフレーム(「ORF」)を含む。これらのORFは各々、2ミクロンファミリープラスミドを多重コピープラスミドとして安定的に維持する機能を有するタンパク質をコードする。これら3つのORFによりコードされるタンパク質は、FLP、REP1、及びREP2と記される。2ミクロンファミリープラスミドが、FLP、REP1、及びREP2をコードするこれら3つのORFの全てを含んでいない場合には、欠落しているタンパク質をコードするORFを、他のプラスミド又は染色体組み込みにより、トランスで補う必要がある。
【0177】
好ましいプラスミドとしては、S.セレビシエ(S. cerevisiae)由来の2ミクロンプラスミドが挙げられる。これは所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードすることが好ましい。
【0178】
Gsh1タンパク質、Not4タンパク質、及び/又は、所望の(例えば異種の)タンパク質が、1又は2以上の調節配列と作動式に連結されたヌクレオチド配列によってコードされてもよい。この場合、斯かる調節配列は、これと適合する条件下で、適切な宿主細胞によるコーディング配列の発現を誘導するように構成される。
【0179】
斯かるポリヌクレオチドは、ポリペプチドの発現を提供するように、種々の方法で改変されてもよい。発現ベクターによっては、斯かるポリヌクレオチドをベクターへ挿入する前に、これを改変することが望ましい、或いは必要である場合がある。組換DNA法を用いたポリヌクレオチドの改変技術は、本技術分野では公知である。
【0180】
調節配列としては、プロモーターが挙げられる。これは、斯かるポリヌクレオチドを発現させるべく、宿主細胞により認識されるポリヌクレオチドである。プロモーターは、斯かるポリペプチドの発現を媒介する転写調節配列を含む。斯かるプロモーターは、宿主細胞において転写活性を示す任意のポリヌクレオチドであってよい。例としては、ミュータント、切断型、及びハイブリッドプロモーターが挙げられる。また、宿主細胞に対して同種又は異種の細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子であってもよい。
【0181】
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において本発明の核酸コンストラクトの転写を誘導する適切なプロモーターの例としては、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アセトアミナーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)中性アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)耐酸性アルファアミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)、又はアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)グルコアミラーゼ(glaA)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)アルカリ性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)トリオーズリン酸イソメラーゼ、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼ(国際公開第96/00787号)、フザリウム・ヴェネナタム(Fusarium venenatum)アミログルコシダーゼ(国際公開第00/56900号)、フザリウム・ヴェネナタム(Fusarium venenatum)Daria(国際公開第00/56900号)、フザリウム・ヴェネナタム(Fusarium venenatum)Quinn(国際公開第00/56900号)、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ベータ-グルコシダーゼ、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドラーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)セロビオヒドラーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼI、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼ III、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼIV、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)エンドグルカナーゼV、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼ I、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)キシラナーゼII、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)ベータ-キシロシダーゼ、並びにNA2 tpiプロモーター(アスペルギウス(Aspergillus)中性アルファアミラーゼ遺伝子由来の改変プロモーターであって、その非翻訳リーダーがアスペルギウス(Aspergillus)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーで置換されてなるもの;非限定的な例としては、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)中性アルファアミラーゼ遺伝子由来の改変プロモーターであって、その非翻訳リーダーアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子由来の非翻訳リーダーで置換されたもの);並びにそのミュータント、切断型、及びハイブリッドプロモーターの遺伝子から得られるプロモーターが挙げられる。
【0182】
酵母宿主において有用なプロモーターとしては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ガラクトキナーゼ(GAL1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(ADH1、ADH2/GAP)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)メタロチオネイン(CUP1)、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)3-ホスホグリセリン酸キナーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。酵母宿主細胞における他の有用なプロモーターとしては、Romanos et al., 1992, 同上に記載のものが挙げられる。
【0183】
調節配列としては、転写ターミネーターも挙げられる。これは、転写を終了するために、宿主細胞によって認識される配列である。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’末端に、作動式に連結される。宿主細胞において機能しうる任意のターミネーターを用いることができる。
【0184】
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において好ましいターミネーターとしては、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)アルファ-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、及びフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。
【0185】
酵母宿主細胞において好ましいターミネーターとしては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)cytochrome C(CYC1)、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)グリセルアルデヒドー3ーリン酸デヒドロゲナーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。酵母宿主細胞において有用な他のターミネーターとしては、Romanos et al., 1992, 同上に記載のものが挙げられる。
【0186】
調節配列としては、mRNA安定化領域も挙げられる。これは、プロモーターの下流且つ遺伝子のコーディング配列の上流に配置され、遺伝子の発現を増強する。
【0187】
調節配列としては、リーダーも挙げられる。これは、宿主細胞による翻訳にとって重要なmRNAの非翻訳領域である。リーダー配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの5’末端に、作動式に連結される。宿主細胞において機能しうる任意のリーダーを用いることができる。
【0188】
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において好ましいリーダーとしては、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ及びアスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)トリオースリン酸イソメラーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。
【0189】
酵母宿主細胞に適したリーダーとしては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)エノラーゼ(ENO-1)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)3-ホスホグリセリン酸キナーゼ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルファ因子、及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルコールデヒドロゲナーゼ/グリセルアルデヒドー3ーリン酸デヒドロゲナーゼ(ADH2/GAP)の遺伝子から得られるものが挙げられる。
【0190】
調節配列としては、ポリアデニル化配列も挙げられる。これは、ポリペプチドエンコーディング配列の3’末端に作動式に連結され、転写の際に宿主細胞によって、転写されたmRNA配列に対してポリアデノシン残基を付加するシグナルとして認識される配列である。宿主細胞において機能しうる任意のポリアデニル化配列を用いることができる。
【0191】
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において好ましいポリアデニル化配列としては、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)アントラニル酸シンターゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)アルファ-グルコシダーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKA アミラーゼ、及びフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)トリプシン様プロテアーゼの遺伝子から得られるものが挙げられる。
【0192】
酵母宿主細胞において有用なポリアデニル化配列としては、Guo and Sherman, 1995, Mol. Cellular Biol. 15: 5983-5990に記載のものが挙げられる。
【0193】
調節配列としては、シグナルペプチドコーディング領域も挙げられる。これは、ポリペプチドのN末端に連結され、ポリペプチドを細胞の分泌経路に誘導する、シグナルペプチドをコードする配列である。ポリヌクレオチドのコーディング配列の5’末端は、ポリペプチドをコードするコーディング配列のセグメントに、翻訳リーディングフレームにおいて連結された、天然のシグナルペプチドコーディング配列を含んでいてもよい。或いは、コーディング配列の5’末端は、コーディング配列に対して外来のシグナルペプチドコーディング配列を含んでいてもよい。コーディング配列が天然のシグナルペプチドコーディング配列をふくまない場合には、外来のシグナルペプチドコーディング配列が必要である。或いは、ポリペプチドの分泌を増強するために、外来のシグナルペプチドコーディング配列によって、天然のシグナルペプチドコーディング配列をそのまま置換してもよい。しかし、発現されたポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に誘導しうる、任意のシグナルペプチドコーディング配列を用いることができる。
【0194】
糸状菌(filamentous fungi)宿主細胞において有効なシグナルペプチドコーディング配列としては、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)中性アミラーゼ、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)グルコアミラーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)セルラーゼ、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)エンドグルカナーゼV、ヒュミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)リパーゼ、及びリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテアーゼの遺伝子から得られるシグナルペプチドコーディング配列が挙げられる。
【0195】
酵母宿主細胞、例えばアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体の産生のための酵母宿主細胞において好ましいシグナルペプチドとしては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルファ因子の遺伝子から得られるシグナルペプチド、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)インベルターゼの遺伝子から得られるシグナルペプチド、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)KEX2の遺伝子から得られるシグナルペプチド、例えば配列番号17を含む、又は配列番号17からなるもの、又は、改変されたKEX2シグナルペプチド配列、例えば配列番号18を含む、又は配列番号18からなるものが挙げられる。
【0196】
特に好ましいシグナルペプチドとしては:
国際公開第90/01063号(引用により本明細書に組み込まれる)に教示される、交配因子アルファシグナルペプチド配列とヒトアルブミンシグナルペプチド配列との融合体を含むシグナルペプチド(斯かるシグナルペプチド配列の例を配列番号19に示す);
配列番号20のペンタペプチドモチーフを含むシグナルペプチド(ここでペンタペプチドモチーフは、シグナルペプチド配列の疎水性ドメインに、例えば未成熟タンパク質の-10~-25の位置に存在する(ここで位置-1は、成熟配列の第一のアミノ酸のN末端に直接隣接するシグナルペプチド配列のアミノ酸を指し、或いはプロペプチドを含むシグナルペプチド配列の場合、位置-1は、プロペプチドの第一のアミノ酸のN末端に直接隣接するシグナルペプチド配列のアミノ酸を指す))(斯かるシグナルペプチド配列の例は、国際公開第2004/009819号(引用により本明細書に組み込まれる)に開示されている);
配列番号20のペンタペプチドモチーフを含むように改変されたアルブミンシグナルペプチド(ペンタペプチドモチーフがシグナルペプチド配列の疎水性ドメイン内に存在していてもよい)(斯かる改変されたシグナルペプチド配列の例を配列番号21に示す)(ここで斯かるペンタペプチドモチーフは、インベルターゼシグナルペプチド内に挿入されて、改変されたインベルターゼシグナルペプチドを生成するように構成されてもよい(改変されたインベルターゼシグナルペプチドの例を配列番号41及び配列番号42に示す));又は
配列番号20のペンタペプチドモチーフを含むと共に、シグナルペプチド配列のC’末端にプロペプチドを含むように改変されたアルブミンシグナルペプチド(ここでペンタペプチドモチーフは、シグナルペプチド配列の疎水性ドメイン内に配置されてもよい)(斯かる改変されたシグナルペプチド配列の例を、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24に示す)が挙げられる。
【0197】
例えば、アルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体の発現の場合、配列番号19、配列番号24、及び配列番号42を含む、又はこれらからなるシグナルペプチドが特に好ましい。
【0198】
他の有用なシグナルペプチドコーディング配列は、Romanos et al., 1992, 同上に記載されている。
【0199】
調節配列としては、プロペプチドコーディング配列も挙げられる。これは、ポリペプチドのN末端に位置するプロペプチドをコードする配列である。その結果として生じるポリペプチドは、プロ酵素又はプロポリペプチド(又は場合によってはチモーゲン)として知られている。プロポリペプチドは一般に不活性であり、触媒又は自己触媒作用によってプロポリペプチドからプロペプチドが切断されると、活性ポリペプチドに転換される。プロペプチドコーディング配列としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)アルファ因子の遺伝子から得られるものが挙げられる。
【0200】
シグナルペプチド及びプロペプチド配列がともに存在する場合、プロペプチド配列はポリペプチドのN末端に隣接して配置され、シグナルペプチド配列はプロペプチド配列のN末端に隣接して配置される。
【0201】
宿主細胞の増殖に伴いポリペプチドの発現を調節する調節配列を追加することも望ましい。調節系の例としては、調節性化合物の存在等の化学的又は物理的な刺激に応答して、遺伝子の発現を開始又は停止する系が挙げられる。酵母では、ADH2系又はGAL1系を使用することができる。糸状菌(filamentous fungi)では、アスペルギルス・ニジェール(Aspergillus niger)グルコアミラーゼプロモーター、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)TAKAアルファ-アミラーゼプロモーター、及びアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)グルコアミラーゼプロモーターを使用することができる。調節配列の他の例としては、遺伝子の増幅を可能とするものが挙げられる。真核系では、これらの調節配列としては、メトトレキサートの存在下で増幅されるジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子や、重金属により増幅されるメタロチオネイン遺伝子等が挙げられる。これらの例では、前記のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、斯かる調節配列と作動式に連結されることになる。
【0202】
宿主株は、1又は2以上のシャペロンタンパク質を発現又は過剰発現してもよく、しなくてもよい。例としては、国際公開第2005/061718号、国際公開第2006/067511号、国際公開第2006/136831号、又は国際公開第2014/138371号に記載のものが挙げられる。これらは何れも引用により本明細書に組み込まれる。例えば、宿主株は、以下の遺伝子のうち1又は2以上を過剰発現してもよく、しなくてもよい:AHA1、CCT2、CCT3、CCT4、CCT5、CCT6、CCT7、CCT8、CNS1、CPR3、CPR6、ERO1、EUG1、FMO1、HCH1、HSP10、HSP12、HSP104、HSP26、HSP30、HSP42、HSP60、HSP78、HSP82、JEM1、MDJ1、MDJ2、MPD1、MPD2、PDI1、PFD1、ABC1、APJ1、ATP11、ATP12、BTT1、CDC37、CPR7、HSC82、KAR2、LHS1、MGE1、MRS11、NOB1、ECM10、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSC1、SSE2、SIL1、SLS1、ORM1、ORM2、PER1、PTC2、PSE1、UBI4、及びHAC1、又は切断型イントロン欠失HAC1(Valkonen et al., 2003, Applied Environ. Micro., 69: 2065)、並びにTIM9、PAM18(別名TIM14)、及びTCP1(別名CCT1)、或いはこれらの変異体。中でも、PDI1(配列番号25)又はその変異体若しくは断片、及び/又は、ERO1(配列番号26)又はその変異体若しくは断片の過剰発現が好ましい。過剰発現としては、宿主細胞におけるシャペロンの天然レベルでの発現と比較して、シャペロンの発現が少なくとも25、50、75、100、200、300、400、500%増加することが挙げられる。過剰発現はシャペロン量の増加に相当してもよく、或いはシャペロン活性に相当してもよい。過剰発現は、例えばシャペロンをコードする遺伝子のコピー数を増加させることにより、例えば当該遺伝子を2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のコピー数で含む宿主細胞を提供すること等により達成される。変異体シャペロンは、元のシャペロンに対して少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有することが好ましい。斯かる変異体は、シャペロンの機能的な活性を維持していることが好ましい。
【0203】
宿主細胞は、プロテアーゼ又はその断片及び/又は変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸を含んでいてもよく、いなくてもよい。宿主細胞は、プロテアーゼ、例えばカルシウム依存性セリンプロテアーゼ、例えばキラー発現プロテアーゼ(Killer expression protease:Kex2p)、又はその断片及び/又は変異体等をコードする核酸を少なくとも1つ、含んでいてもよく、いなくてもよい。プロテアーゼ変異体又は断片は機能的である、例えば認識配列Arg-Arg/X又はLys-Arg/Xのカルボキシ末端で、ポリペプチドを切断する能力を有することが好ましい。KEX2ヌクレオチド配列は配列番号27を含み、或いは配列番号27からなっていてもよく、Kex2pタンパク質は配列番号28を含み、或いは配列番号28からなっていてもよい。KEX2及びKex2pの変異体は、それぞれ配列番号27及び配列番号28と、少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%の同一性を有していてもよい。KEX2は過剰発現されていてもよく、いなくてもよい。
【0204】
宿主細胞、最も好ましくはS.セレビシエ(S. cerevisiae)は、PDI1及び/又はERO1を過剰発現し、Kex2pをコードする核酸を少なくとも1つ含むことが好ましい。
【0205】
GsH1タンパク質、Not4タンパク質、又はそのホモログをコードするヌクレオチド配列、及び所望のタンパク質は、本技術分野で公知の任意の突然変異誘発法、例えば部位特異的突然変異誘発法、合成遺伝子構築法、半合成遺伝子構築法、ランダム突然変異誘発法、シャッフリング等により調製することができる。
【0206】
部位特異的突然変異誘発法は、親をコードするポリヌクレオチド内の1又は2以上の所定の部位に、1又は2以上の(例えば数個の)変異を導入する技術である。
【0207】
部位特異的突然変異誘発法は、インビトロにおいて、所望の変異を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRにより達成することができる。また、部位特異的突然変異誘発法は、インビトロにおいて、親をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド内の一部位を制限酵素で切断した後、前記ポリヌクレオチド内に変異を含むオリゴヌクレオチドを連結することを含むカセット突然変異誘発法により達成することもできる。通常は、プラスミドとオリゴヌクレオチドとを同一の制限酵素で切断することにより、プラスミド及び挿入物に粘着末端を形成し、相互に連結を可能とすることが好ましい。例えばScherer and Davis, 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76: 4949-4955;及びBarton et al., 1990, Nucleic Acids Res. 18: 7349-4966等を参照のこと。
【0208】
部位特異的突然変異誘発法は、本技術分野で公知の方法により、インビボデ達成することもできる。例えば、米国特許出願公開第2004/0171154号公報;Storici et al., 2001, Nature Biotechnol. 19: 773-776;Kren et al., 1998, Nat. Med. 4: 285-290;及びCalissano and Macino, 1996, Fungal Genet. Newslett. 43: 15-16等を参照のこと。
【0209】
本発明では任意の部位特異的突然変異誘発法を使用できる。ポリペプチドの調製に使用可能なキットは多数市販されている。
【0210】
合成遺伝子構築法は、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を設計し、インビトロで合成することを含む。遺伝子合成には多数の技術を用いることができる。例としては、Tian et al. (2004, Nature 432: 1050-1054)が記載する多重マイクロチップ系技術や、光プログラム可能なマイクロ流通チップを用いてオリゴヌクレオチドの合成及び組み立てを行う類似の技術が挙げられる。
【0211】
単一又は多重のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入は、既知の突然変異誘発法、組換法、及び/又は、シャッフリング法を実施し、続いて関連するスクリーニング方を実施することにより、作製及び検証することができる。例としては、Reidhaar-Olson and Sauer, 1988, Science 241: 53-57;Bowie and Sauer, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 2152-2156;国際公開第95/17413号;又は国際公開第95/22625号に記載の方法が挙げられる。使用可能な他の方法としては、エラー許容性(error-prone)PCR、ファージディスプレイ(例えばLowman et al., 1991, Biochemistry 30: 10832-10837;米国特許第5,223,409号公報;国際公開第92/06204号)、及び領域特異的突然変異誘発法(Derbyshire et al., 1986, Gene 46: 145;Ner et al., 1988, DNA 7: 127)等が挙げられる。
【0212】
突然変異誘発/シャッフリング法を高スループット自動スクリーニング法と組み合わせ、宿主細胞が発現するクローン化突然変異誘発ポリペプチドの活性を検出することもできる(Ness et al., 1999, Nature Biotechnology 17: 893-896)。活性ポリペプチドをコードする突然変異誘発DNA分子の宿主細胞殻の回収及び即時の配列決定は、本分野で標準的な方法により実施することができる。これらの方法により、ポリペプチド中の個々のアミノ酸残基の重要性を、迅速に決定することが可能となる。
【0213】
半合成遺伝子構築法は、合成遺伝子構築法、及び/又は、部位特異的突然変異誘発法、及び/又は、ランダム突然変異誘発法、及び/又は、シャッフリング法の各側面を組み合わせることにより実施することができる。半合成構築法は、合成されたポリヌクレオチド断片を用い、これをPCR技術と組み合わせたことを特徴とする方法である。従って、例えば遺伝子のある所定の領域を新規に(de novo)合成し、他の領域を部位特異的突然変異誘発プライマーを用いて増幅し、更に他の領域をエラー許容性(error-prone)PCR又はエラー非許容性(non-error prone)PCR増幅に供することができる。その後、ポリヌクレオチドのサブ配列をシャッフルしてもよい。
【0214】
本発明の第2の側面は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、真菌宿主細胞の培養物であって、当該真菌宿主細胞が、改変された、例えば低減された、Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル、又は、改変された、例えば低減された、Gsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベルを有する、培養物を提供する。
【0215】
本発明の第2の側面に係る真菌宿主細胞の培養物は更に、Not4タンパク質又はそのホモログの改変された活性レベル、例えば低減された活性レベル、及び/又は、Not4タンパク質又はそのホモログの改変された発現レベル、例えば低減された発現レベルを有していてもよい。本発明の第2の側面に係る真菌宿主細胞は、本発明の第一の側面について説明したものと同様である。
【0216】
或いは、本発明の第2の側面は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、真菌宿主細胞の培養物であって、当該真菌宿主細胞が、上昇したGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル、及び/又は、上昇したGsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベルを有する、培養物を提供する。これは例えば、所望のタンパク質の産生が宿主の生存に有害である場合等に有用である。斯かる本発明の第2の側面の代替例に係る真菌宿主細胞は、本発明の第一の側面について説明したものと同様である。斯かる例は例えば、宿主の生存性に害を及ぼす所望のタンパク質の産生に有用である。
【0217】
或いは、本発明の第2の側面は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む真菌宿主細胞の培養物であって、Gsh1タンパク質又はそのホモログの増加した活性レベル、及び/又は、Gsh1タンパク質又はそのホモログの増加した発現レベルを有することを特徴とする真菌宿主細胞の培養物を提供する。これは例えば、所望のタンパク質の産生が宿主の生存に有害である場合等に有用である。斯かる本発明の第2の側面の別態様に係る真菌宿主細胞は、本発明の第一の側面について説明したものと同様である。
【0218】
また、本発明の第2の側面は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む真菌宿主細胞の培養物であって、(i)Gsh1タンパク質又はそのホモログの増加した活性レベル、及び/又は、Gsh1タンパク質又はそのホモログの増加した発現レベルと、(ii)Not4タンパク質又はそのホモログの増加した活性レベル、及び/又は、Not4タンパク質又はそのホモログの増加した発現レベルとを有することを特徴とする真菌宿主細胞の培養物を提供する。これは例えば、所望のタンパク質の産生が宿主の生存に有害である場合等に有用である。斯かる本発明の第2の側面の別態様に係る真菌宿主細胞は、本発明の第一の側面について説明したものと同様である。
【0219】
斯かる方法は、グルタチオンの存在下での培養を含んでいてもよい。これは特に、真菌宿主が例えば変異又は欠失等により、機能的なGsh1タンパク質を欠失している場合に有用である。また、その機能を完全に又は部分的に保持するGsh1タンパク質を、真菌宿主細胞が含む場合にも有用な可能性もある。グルタチオンは発酵培地中に、少なくとも0.05mM、例えば約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450mMから、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500mMまで、好ましくは約0.5から約50mMまで、より好ましくは約1~約10mM、より好ましくは約3~約7mM、最も好ましくは約5mMの濃度で存在することができる。
【0220】
本発明の第3の側面は、所望のタンパク質、例えば異種タンパク質を、真菌宿主細胞により産生する方法であって、本発明の第一の側面に係る真菌宿主細胞、又は、本発明の第2の側面に係る培養物を供し、前記真菌宿主細胞又はその培養物を培養して、前記所望のタンパク質を産生させることを含む、方法を提供する。斯かる方法を使用することで、例えば、真菌宿主細胞による所望のポリペプチドの産生量を改変することができる。ある例によれば、1又は2以上のタンパク質の産生量を増加させることが望ましい。他の例によれば、あるタンパク質、例えば宿主細胞に対して毒性を有しうるタンパク質について、その産生量を低減することが望ましい。
【0221】
斯かる所望のタンパク質は、宿主細胞から分泌されるものであってもよく、なくてもよいが、分泌タンパク質であることが好ましい。
【0222】
宿主細胞は例えば、所望のタンパク質の産生に適した栄養培地中、本技術分野で公知の方法により培養することができる。例えば、斯かる細胞は、震盪フラスコ培養により、或いは小スケール又は大スケール発酵(例えば連続、バッチ、供給バッチ、又は固相発酵等)により、実験室又は工業用発酵漕により、適切な培地中、ポリペプチドの発現及び/又は単離を許容する条件下で培養することができる。培養は、例えば炭素及び窒素源並びに無機塩を含む適切な栄養培地中、本技術分野で公知の方法を用いて実施することができる。適切な培地は、市販の製造業者から入手してもよく、(例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログ等で)公表されている組成に基づき調製してもよい。好ましい培地としては、実施例5に記載のMW11Dを含む培地が挙げられる。所望のタンパク質が栄養培地中に分泌される場合、所望のタンパク質を培地から直接回収してもよい。所望のタンパク質が分泌されない場合、例えば細胞溶解物から回収すればよい。
【0223】
培養は小スケールでも大スケールでもよく、例えばマイクロタイタープレートスケール(例えば培養培地体積10~500μL)、震盪フラスコスケール(例えば培養体積5~1000mL)、或いは発酵漕又は同等の系のスケール(例えば少なくとも培養体積5mL、より好ましくは少なくとも1、2、3、4又は5L、より好ましくは少なくとも10、50、100Lから、例えば少なくとも500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000Lまで)のいずれでもよい。
【0224】
培養は、例えば宿主細胞に適したpHで行うことができる。S.セレビシエ(S. cerevisiae)の場合、そのpHは5~7、例えば5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、又は6.9から、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9又は7までの範囲とすることができる。好ましいpH範囲は、約6.0から約6.4までの範囲である。
【0225】
培養時の温度は、約20℃~約35℃、例えば約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34℃から、34又は35℃まで、好ましくは約28~約32℃、より好ましくは約30℃とすることができる。
【0226】
培養時には攪拌を加えてもよく、加えなくてもよい。攪拌は、例えば培養容器を回転させたり、培養容器内に攪拌手段を配置したりして行うことができる。攪拌を加えることが好ましい。
【0227】
所望のタンパク質の検出は、所望のタンパク質に特異的な本技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。斯かる検出方法としては、これらに限定されるものではないが、特異抗体の使用や、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられる。
【0228】
好ましいHPLCとしては、ゲル浸透HPLC(GP-HPLC)が挙げられる。適切な装置としてはLC2010 HPLC系(Shimadzu)を用い、これにUV検出器を装備し、Shimadzu VP7.3クライアントサーバーソフトウェアで制御したものが挙げられる。例えば注入量を75μLとし、これを7.8mm id×300mm長さのTSK G3000SWXLカラム(Tosoh Bioscience)に、6.0mm id×40mm長さのTSK SWガードカラム(Tosoh Bioscience)を組み合わせたものに導入する。試料のクロマトグラフ測定は、例えば25mM リン酸ナトリウム、100mM 硫酸ナトリウム、0.05%(w/v)アジ化ナトリウム、pH7.0中、1mL・分-1で、稼働時間20分間で実施することができる。試料の定量は、例えば280nmでUV検出を行い、ピーク面積を既知の濃度(例えば10mg/mL)の組換ヒトアルブミン標準品と比較し、相対吸光係数で補正することにより行うことができる。
【0229】
本方法は任意により、前記所望のタンパク質を回収することを含む。例としては、宿主細胞又は宿主細胞培養物から、例えば細胞培地又は細胞溶解物から、所望のタンパク質を単離してもよい。
【0230】
所望のタンパク質の回収は、本技術分野で公知の方法を用いて実施しうる。例えば、所望のタンパク質の栄養培地からの回収は、従来の方法、例えばこれらに限定されるものではないが、収集、遠心分離、濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸散、又は沈殿を用いて行うことができる。
【0231】
本方法は任意により、前記所望のタンパク質を精製することを含む。所望のタンパク質の精製は、本技術分野で公知の種々の方法により実施しうる。例としては、これらに限定されるものではないが、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性、疎水性、クロマト分画、及びサイズ排除)、電気泳動法(例えば予備的等電点電気泳動法)、示差溶解性(例えば硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE、又は抽出法(例えばProtein Purification, Janson and Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989)等を用いて、実質的に純粋な所望のタンパク質を得ることができる。
【0232】
代替的な側面によれば、所望のタンパク質を回収する代わりに、所望のタンパク質を発現する本発明の宿主細胞を、所望のタンパク質の供給源として用いることもできる。
【0233】
前記所望のタンパク質(例えば所望の異種タンパク質)を培養宿主細胞又は培地から精製する工程は、任意により細胞固定化、細胞分離、及び/又は、細胞破砕を含んでいてもよい。但し、斯かる工程とは異なる他の少なくとも1つの精製工程、或いは細胞固定化、分離、及び/又は破砕の工程を含む。
【0234】
細胞固定化技術、例えば細胞をアルギン酸ナトリウムビーズに内包させる技術は、本技術分野で公知である。同様に、細胞分離技術、例えば遠心分離、濾過(例えば直交流濾過)、膨張床(expanded bed)クロマトグラフィー等も、本技術分野で公知である。同様に、細胞破砕の方法、例えばビーズミル処理、超音波処理、酵素暴露等も、本技術分野で公知である。
【0235】
他の少なくとも1つの精製工程は、タンパク質精製に適した工程であれば、本技術分野で公知の任意の工程を用いることができる。例えば、組換発現アルブミンの回収のための精製技術は、国際公開第2010/128142号、アルブミン特異性リガンド、例えば2-クロロ-4,6-ジ(2’-スルホアニリノ)-S-トリアジン等を用いた親和性精製;国際公開第92/04367号、マトリックス由来染料の除去;欧州特許出願第464590号公報、酵母由来色素の除去;欧州特許出願第319067号公報、アルカリ沈殿及びそれに続くアルブミンの親油性相への暴露;並びに、国際公開第96/37515号、米国特許第5728553号、及び国際公開第00/44772号公報に記載の、完全精製工程等が挙げられる。これらは何れも引用により本明細書に組み込まれる。
【0236】
アルブミン以外の他の所望のタンパク質も、斯かるタンパク質の精製に有用であることが知られている任意の技術を用いて、培地から精製することができる。
【0237】
適切な方法としては、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸又は溶媒抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、濃縮、希釈、pH調節、透析濾過、限界濾過、高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)、逆相HPLC、導電率調節等が挙げられる。
【0238】
任意により、斯かる方法は、単離されたタンパク質を、商業的又は工業的許容しうるレベルに至るまで精製することを含んでいてもよい。商業的又は工業的許容しうるレベルの純度としては、例えば少なくとも0.01g・L-1、0.02g・L-1、0.03g・L-1、0.04g・L-1、0.05g・L-1,0.06g・L-1,0.07g・L-1、0.08g・L-1、0.09g・L-1、0.1g・L-1、0.2g・L-1、0.3g・L-1、0.4g・L-1、0.5g・L-1、0.6g・L-1、0.7g・L-1、0.8g・L-1、0.9g・L-1、1g・L-1、2g・L-1、3g・L-1、4g・L-1、5g・L-1、6g・L-1、7g・L-1、8g・L-1、9g・L-1、10g・L-1、15g・L-1、20g・L-1、25g・L-1、30g・L-1、40g・L-1,50g・L-1、60g・L-1、70g・L-1、80g・L-1、90g・L-1、100g・L-1、150g・L-1、200g・L-1,250g・L-1、300g・L-1、350g・L-1、400g・L-1、500g・L-1、600g・L-1、700g・L-1、800g・L-1、900g・L-1、1000g・L-1、又はそれ以上のタンパク質濃度が挙げられる。商業的又は工業的許容しうるレベルの純度としては、例えば単離タンパク質中に存在する他の物質(例えば1又は2以上(例えば数個)の夾雑物)の比率が、少なくとも例えば少なくとも50%未満、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%、0.00001%、又は0.000001%未満、最も好ましくは0%のレベルで存在することが挙げられる。
【0239】
斯かるタンパク質は、例えば少なくとも0.01g・L-1、0.02g・L-1、0.03g・L-1、0.04g・L-1、0.05g・L-1,0.06g・L-1,0.07g・L-1、0.08g・L-1、0.09g・L-1、0.1g・L-1、0.2g・L-1、0.3g・L-1、0.4g・L-1、0.5g・L-1、0.6g・L-1、0.7g・L-1、0.8g・L-1、0.9g・L-1、1g・L-1、2g・L-1、3g・L-1、4g・L-1、5g・L-1、6g・L-1、7g・L-1、8g・L-1、9g・L-1、10g・L-1、15g・L-1、20g・L-1、25g・L-1、30g・L-1、40g・L-1,50g・L-1、60g・L-1、70g・L-1、80g・L-1、90g・L-1、100g・L-1、150g・L-1、200g・L-1,250g・L-1、300g・L-1、350g・L-1、400g・L-1、500g・L-1、600g・L-1、700g・L-1、800g・L-1、900g・L-1、1000g・L-1、又はそれ以上の濃度濃度で供される。
【0240】
所望のタンパク質を精製することにより、医薬的に許容可能なレベルの純度を達成することが好ましい。タンパク質が医薬的に許容可能なレベルの純度を有するとは、タンパク質が実質的に発熱物質を含まず、惹いては、タンパク質の活性とは関連しない医薬作用を引き起こすことなく、タンパク質の医薬有効量を投与できる濃度を意味する。
【0241】
本方法は任意により、前記所望のタンパク質を、治療上許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療製剤を製造することを含む。
【0242】
得られた所望のタンパク質は、その既知の用途のうち何れかに用いるものでもよく、用いなくともよい。斯かる用途の例としては、アルブミンの場合、患者に静脈内(i.v.)投与することにより、重傷の火傷、ショック及び貧血を治療することに加え、補充培養培地としての使用や、他のタンパク質の製剤の賦形剤としての使用が挙げられる。
【0243】
本発明の方法により得られた治療的、診断的、工業的、家庭的、又は栄養的に有用な所望のタンパク質は、単独で供給又は投与してもよいが、1又は2以上の許容しうる担体又は希釈剤と組み合わせ、製剤(例えば医薬製剤、特に治療的及び/又は診断的に有用なタンパク質の場合)の形態とすることが好ましい。担体又は希釈剤が「許容しうる」とは、所望のタンパク質と適合しうると共に、需要者への投与を意図した製剤の場合、その受容者に有害でないことを意味する。通常、担体又は希釈剤は水又は食塩水であり、無菌で且つ発熱物質を含まない。
【0244】
任意により、こうして製剤化されたタンパク質を単位投与形態として、例えば錠剤、カプセル、注射溶液等の形態で提供してもよい。
【0245】
任意により、斯かる方法は更に、前記所望のタンパク質を単位投与形態として提供することを含む。
【0246】
本発明の第4の側面は、所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の産生量を増加させる方法であって、本発明の第3の側面に係る方法を提供する。
【0247】
また、本発明の第4の側面は、所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の産生量を増加させるための、本発明の第一の側面に係る宿主細胞、又は、本発明の第2の側面に係る培養物の使用を提供する。
【0248】
産生量とは、溶液、例えば培養液や細胞溶解混合物等の中における、生成物、例えば所望のタンパク質等の量を意味する。産生量は、例えば参照宿主株からの産生量を100%として、相対量として表してもよい。宿主株と比較する場合、所定の条件群の下で産生量を測定することが好ましい。絶対産生量は、例えばμL当たりng(ng/μL)又はL当たりg(g/L)として表現することができる。また、産生量は、例えば比細胞産生率(rate of specific cellolar productivuty:YPXT)として表現することもできる。
【0249】
前記所望のタンパク質の産生量は、参照真菌宿主細胞、例えば野生型Gsh1タンパク質、例えば配列番号2のタンパク質を有する真菌宿主細胞からの産生量(g/L又はYPXT)と比較して、少なくとも2%高い、より好ましくは少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高いことが好ましい。参照真菌宿主細胞は、配列番号2のGsh1タンパク質を有することが好ましい。
【0250】
中でも、前記所望のタンパク質の産生量が、参照真菌宿主細胞、例えば野生型Not4タンパク質、例えば配列番号6を有する真菌宿主細胞からの産生量(g/L又はYPXT)と比較して、少なくとも2%高い、より好ましくは少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高いことが好ましい。参照真菌宿主細胞は、配列番号6のNot4タンパク質を有することが好ましい。
【0251】
更には、前記所望のタンパク質の産生量が、参照真菌宿主細胞、例えば野生型Gsh1タンパク質、例えば配列番号2を有する真菌宿主細胞、及び、野生型Not4タンパク質、例えば配列番号6を有する真菌宿主細胞からの産生量(g/L又はYPXT)と比較して、少なくとも2%高い、より好ましくは少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高いことが好ましい。参照真菌宿主細胞は、配列番号2のGsh1タンパク質と配列番号6のNot4タンパク質とを有することが好ましい。
【0252】
所望のタンパク質は、本発明の第一の側面について説明したとおりであり、特にアルブミン、或いはその変異体、断片及び/又は融合体である。
【0253】
本発明の第5の側面は、本発明の第3又は第4の側面に係る方法により作製された所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)を提供する。
【0254】
また、本発明は、本発明の第5の側面の所望のタンパク質を含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。斯かる医薬組成物は、更に1又は2以上の医薬的に許容可能な担体、例えば米国食品医薬品局又は欧州医薬品庁等の規制当局によって承認されたものを含んでいてもよい。更に、本発明は、患者を治療する方法であって、斯かる医薬組成物の有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0255】
本発明の第6の側面は、本発明の第1の側面に係る真菌宿主細胞又は本発明の第2の側面に係る培養物を調製する方法を提供する。当該方法は、(親)真菌宿主細胞を遺伝子的に改変することにより、結果として得られるGsh1タンパク質又はそのホモログを改変し、Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルを改変、例えば低減し、GSH1遺伝子又はホモログ又はその調節配列を改変し、或いはGSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベルを改変することを含む。任意により、前記方法は、(親)真菌宿主細胞を遺伝子的に改変することにより、結果として得られる結果として得られるNot4タンパク質又はそのホモログを改変し、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルを改変、例えば低減し、NOT4遺伝子又はホモログ又はその調節配列を改変し、或いはNOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベルを改変することを含んでいてもよい。活性及び/又は発現レベルの変異、欠失、及び修飾は、本発明の第1、第2、及び第3の側面について説明したとおりである。宿主細胞を改変する方法は、本技術分野で公知である。前記宿主細胞の遺伝子修飾に代わる手法として、阻害剤又は促進剤を増殖培地に添加することにより、Gsh1タンパク質のレベル又は活性レベルを改変してもよい。同様に、前記宿主細胞の遺伝子修飾に代わる手法として、阻害剤又は促進剤を増殖培地に添加することにより、Not4タンパク質のレベル又は活性レベルを改変してもよい。
【0256】
本発明の第7の側面は、配列番号2に対して少なくとも50%の同一性を含むと共に、配列番号2の47、48、49、50、51、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、409、451、452、453、454及び455、から選択される1又は2以上の位置、好ましくは(a)57~51;(b)120~130;(c)409又は(d)451~455に対応する位置から選択される位置に変異を含む、Gsh1タンパク質、又はそのホモログを提供する。配列番号2の位置125に対応する位置の変異が特に好ましい。
【0257】
本発明の第7の側面に係るGsh1タンパク質は、例えば本発明の第1の側面について説明したとおりである。斯かるGsh1タンパク質は、配列番号4を含むか、配列番号4からなることが好ましい。本発明の第7の側面のGsh1タンパク質は、単離されたタンパク質であってもよく、なくてもよい。
【0258】
本発明の第8の側面は、本発明のGsh1変異体、例えば配列番号2の変異体であって、野生型Gsh1タンパク質、例えば配列番号2、又はそのホモログをコードする宿主細胞と比べて、Gsh1タンパク質の発現レベルが低減されてなる変異体若しくはそのホモログ、及び/又は、Gsh1タンパク質の活性レベルが低減されてなる変異体若しくはそのホモログをコードするポリヌクレオチドを提供する。斯かるGsh1タンパク質は、本発明の第1から第6の側面について説明したとおりである。
【0259】
好ましいポリヌクレオチドとしては、変異R125G(配列番号4)を有するGsh1タンパク質が挙げられる。斯かるポリヌクレオチド配列の例は、配列番号3に供される。
【0260】
また、本発明は例えば、本発明のGsh1変異体をコードするポリヌクレオチドと、これと作動式に連結された1又は2以上の調節配列とを含む核酸コンストラクトであって、前記調節配列が、適切な宿主細胞内で、且つ、前記調節配列と適合しうる条件下で、前記コーディング配列の発現を誘導するように構成された、核酸コンストラクトにも関する。適切な調節配列は、本発明の第1から第7の側面について説明したとおりである。
【0261】
斯かる核酸コンストラクトは更に、本発明のNot4変異体をコードするポリヌクレオチドと、これと作動式に連結された1又は2以上の調節配列とを含むと共に、前記調節配列が、適切な宿主細胞内で、且つ、前記調節配列と適合しうる条件下で、前記コーディング配列の発現を誘導するように構成されていてもよい。適切な調節配列は、本発明の第1から第7の側面について説明したとおりである。
【0262】
斯かるポリヌクレオチドは、ベクター内に位置していてもよく、宿主細胞のゲノム内に位置していてもよい。
【0263】
従って、本発明は、本発明のGsh1変異体をコードするポリヌクレオチド、プロモーター、並びに、転写及び翻訳停止シグナルを含む組換ベクターにも関する。任意により、前記ベクターは更に、本発明のNot4変異体をコードするポリヌクレオチド、プロモーター、並びに、転写及び翻訳停止シグナルを含んでいてもよい。Gsh1とNot4は、同一のポリヌクレオチド(例えばベクター)によりコードされていてもよく、異なるポリヌクレオチド(例えばベクター)によりコードされていてもよい。また、本発明は、Gsh1をコードするポリヌクレオチドと、Gsh1のレベル又はGsh1の活性を改変しうる、例えば低減しうる、1又は2以上(例えば数個)の調節配列とを含むベクターにも関する。任意により、斯かるポリヌクレオチド(例えばベクター)は更に、Not4をコードするポリヌクレオチドと、Not4のレベル又はNot4の活性を改変しうる、例えば低減しうる、1又は2以上(例えば数個)の調節配列とを含んでいてもよい。種々のヌクレオチド及び調節配列を組み合わせることで、組換ベクター内に1又は2以上の有用な制限部位を組み込んでもよく、これにより、変異体をコードするポリヌクレオチドを、斯かる部位に挿入又は置換することが可能となる。或いは、ポリヌクレオチド又はそれを含む核酸コンストラクトを、適切な発現用ベクターに挿入することにより、斯かるポリヌクレオチドを発現させてもよい。ベクターを作製する際には、コーディング配列が発現用の適切な調節配列と作動式に連結されるように、コーディング配列をベクター内に配置する。
【0264】
組換ベクターは、組換DNA手順に簡便に供することができ、且つ、斯かるポリヌクレオチドの発現を生じさせることが可能な限り、任意のベクター(例えばプラスミド又はウイルス)であってよい。ベクターの選択は、通常はベクターを導入する宿主細胞との適合性に依存する。ベクターは直鎖状でも閉鎖環状プラスミドでもよい。
【0265】
ベクターは自己複製ベクター、即ち染色体外に存在し、染色体複製とは独立に複製されるベクターであってもよい。その例としては、プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体、又は人工染色体が挙げられる。ベクターは自己複製を行うための何らかの手段を含んでいてもよい。或いはベクターは、宿主細胞内に導入されるとゲノムに組み込まれると共に、導入された染色体と一緒に複製されるものであってもよい。更に、宿主細胞のゲノムに取り込まれるべきDNAは、単一のベクター又はプラスミドにまとめて含まれていてもよく、2又はそれ以上のベクター又はプラスミドに分割して含まれていてもよい。更にはトランスポゾンを用いてもよい。
【0266】
ベクターは、形質転換、トランスフェクト、形質導入等された細胞の選択を可能とする、1又は2以上の選択マーカーを含むことが好ましい。選択マーカーとしては、殺生物性、ウイルス抵抗性、重金属に対する抵抗性、栄養要求体に対する原栄養性等を提供する遺伝子生成物を発現する遺伝子が挙げられる。
【0267】
斯かるベクターは、ベクターが宿主細胞のゲノム内に組み込まれること、又は、ベクターがゲノムとは独立に細胞内で自己複製することを可能とする要素を含むことが好ましい。
【0268】
ベクターが宿主細胞ゲノム内に組み込まれるには、ベクターが相同又は非相同組換によりゲノム内に組み込まれるように、ポリヌクレオチド内の変異体をコードする配列、又は、ベクターの他の任意の要素の構成を設計してもよい。或いは、ベクターが(1又は2以上の)染色体内の(1又は2以上の)位置に対して、相同組換により正確に組み込まれるように、ベクターに追加のポリヌクレオチドを付与してもよい。正確な位置で組み込みが生じる確率を高めるべく、組み込みのための要素として、対応する標的配列に対して高い配列同一性を有する十分な数の核酸、例えば100~10,000塩基対、400~10,000塩基対、及び800~10,000塩基対の核酸を設けることで、相同組換の可能性を向上させることができる。斯かる組み込みのための要素は、宿主細胞ゲノム内の標的配列と相同であれば、任意の配列とすることができる。更に、組み込みのための要素は、ポリヌクレオチドをコードする配列であってもよく、コードしない配列であってもよい。或いは、ベクターは、宿主細胞のゲノムに対して、非相同組換により組み込まれてもよい。
【0269】
ベクターが自己複製を生じるように、所望の宿主細胞内での自律的複製を可能とする複製起点を、ベクターに含めてもよい。複製起点としては、細胞内で自己複製を媒介するよう機能しうる任意のプラスミド複製子が挙げられる。「複製起点」又は「プラスミド複製子」という語は、プラスミド又はベクターのインビボでの複製を可能とするポリヌクレオチドを意味する。
【0270】
酵母宿主細胞で使用可能な複製起点の例としては、2ミクロン複製起点、ARS1、ARS4、ARS1とCEN3との組合せ、及び、ARS4とCEN6との組合せが挙げられる。
【0271】
糸状菌(filamentous fungi)細胞で有用な複製起点の例としては、AMA1及びANS1が挙げられる(Gems et al., 1991, Gene 98: 61-67;Cullen et al., 1987, Nucleic Acids Res. 15: 9163-9175;国際公開第00/24883号)。AMA1遺伝子の単離、及び、当該遺伝子を含むプラスミド又はベクターの構築は、国際公開第00/24883号に開示の方法に従って行うことができる。
【0272】
所望のタンパク質の産生を高めるために、本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞に2コピー以上導入してもよい。ポリヌクレオチドのコピー数の増加は、少なくとも1コピー分多い配列を宿主細胞のゲノム内に組み込むことにより、或いは、ポリヌクレオチドと共に増幅可能な選択マーカー遺伝子を導入し、その後に適切な選択物質の存在下で細胞を培養することで、増幅されたコピー数の選択マーカー遺伝子を含む細胞、惹いては増幅されたコピー数のポリヌクレオチドを含むを含む細胞を選択することにより、達成することができる。
【0273】
上述の要素を連結して本発明の組換ベクターを構築するための手法は、当業者には既知である(例えばSambrook et al., 1989, Molecular クローニング, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor, New Yorkを参照)。
【0274】
好適な態様
【0275】
1.a.Gsh1タンパク質又はそのホモログ、及び/又は
b.Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベル、及び/又は
c.GSH1遺伝子又はそのホモログ、及び/又は
d.GSH1遺伝子又はそのホモログの発現レベル
が改変された、真菌宿主細胞。
【0276】
2.前記改変されたレベルが、低減されたレベルである、態様1の真菌宿主細胞。
【0277】
3.前記改変されたレベルが、増加したレベルである、態様1の真菌宿主細胞。
【0278】
4.前記改変されたレベルが、参照真菌宿主細胞、例えば、
a.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログが、野生型Gsh1タンパク質又はそのホモログである、真菌宿主細胞、
b.前記Gsh1タンパク質が配列番号2を含むか、配列番号2からなる真菌宿主細胞、
c.S.セレビシエ(S. cerevisiae)S288C、又は
d.S.セレビシエ(S. cerevisiae)DXY1
のレベルと比較して改変されたレベルである、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0279】
5.改変された
e.Not4タンパク質又はそのホモログ、及び/又は
f.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベル、及び/又は
g.NOT4遺伝子又はそのホモログ、及び/又は
h.NOT4遺伝子又はそのホモログの発現レベル
を有する、態様1~4の何れかの真菌宿主細胞。
【0280】
6.前記改変されたレベルが、低減されたレベルである、態様5の真菌宿主細胞。
【0281】
7.前記改変されたレベルが、増加したレベルである、態様5の真菌宿主細胞。
【0282】
8.前記改変されたレベルが、参照真菌宿主細胞、例えば、
a.前記Not4タンパク質又はそのホモログが、野生型Not4タンパク質又はそのホモログである、真菌宿主細胞、
b.前記Not4タンパク質が配列番号6を含むか、配列番号6からなる真菌宿主細胞、
c.S.セレビシエ(S. cerevisiae)S288C、又は、
d.S.セレビシエ(S. cerevisiae)DXY1
のレベルに対して改変されたレベルである、態様5又は6の真菌宿主細胞。
【0283】
9.所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0284】
10.前記所望のタンパク質が、アルブミン、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン、ダニ抗凝血ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小型モジュラー免疫医薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals(登録商標):“SMIP”)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、クニッツ(Kunitz)ドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のタンパク質及びそのアルブミン融合体)、インターフェロン、インターロイキン、IL-10、IL-11、IL-2、インターフェロンα(alpha)種及び亜種、インターフェロンβ(beta)種及び亜種、インターフェロンγ(gamma)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL-1受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣薬、トロンボポエチン(TPO)及びTPO模倣薬、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン-N、5-ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIVgp41、HIVgp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエキセンディン(exendin)-4、GLP-1又はGLP-2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(beta)、腫瘍壊死因子、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、FGF、凝固因子(前活性型又は活性型)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand)因子、α(alpha)1-アンチトリプシン、プラスミノーゲン活性化剤、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝産物、抗生物質、或いは上記何れかの変異体又は断片から選択される、態様9の真菌宿主細胞。
【0285】
11.前記所望のタンパク質が、アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体を含むか、アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体からなる、態様9又は10の真菌宿主細胞。
【0286】
12.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも70%の同一性を有する、態様11の真菌宿主細胞。
【0287】
13.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有する、態様11の真菌宿主細胞。
【0288】
14.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも70%の同一性、好ましくは配列番号10に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有すると共に、配列番号10のK573に対応する位置にA、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを含む、態様13の真菌宿主細胞。
【0289】
15.アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10のK573に対応する位置にP、H、W又はYを含む、態様14の真菌宿主細胞。
【0290】
16.前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも98%の同一性を有すると共に、配列番号10のK573に対応する位置にPを含む、態様15の真菌宿主細胞。
【0291】
17.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも70%の同一性、好ましくは配列番号10に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有すると共に、配列番号10のE492に対応する位置にA、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを含む.態様13~16の何れかの真菌宿主細胞。
【0292】
18.アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10のE492に対応する位置に、G、D、F、H、M又はRを含む、態様17の真菌宿主細胞。
【0293】
19.前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも98%の同一性を有すると共に、配列番号10のE492に対応する位置に、G又はDを含む、態様18の真菌宿主細胞。
【0294】
20.前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも98%の同一性を有すると共に、配列番号10のE492に対応する位置にGを含む、態様19の真菌宿主細胞。
【0295】
21.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも70%の同一性、好ましくは配列番号10に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有すると共に、配列番号10のK574に対応する位置にA、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを含む、態様13~20の何れかの真菌宿主細胞。
【0296】
22.アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10のK574に対応する位置にH、G、D、F、N、S又はYを含む、態様21の真菌宿主細胞。
【0297】
23.前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも98%の同一性を有すると共に、配列番号10のK574に対応する位置にD、F、G又はHを含む、態様22の真菌宿主細胞。
【0298】
24.前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも98%の同一性を有すると共に、配列番号10のK574に対応する位置にHを含む、態様23の真菌宿主細胞。
【0299】
25.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも70%の同一性、好ましくは配列番号10に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有すると共に、配列番号10のQ580に対応する位置にA、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W又はYを含む、態様13~24の何れかの真菌宿主細胞。
【0300】
26.アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10のQ580に対応する位置にK又はRを含む、態様25の真菌宿主細胞。
【0301】
27.前記アルブミン、又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも98%の同一性を有すると共に、配列番号10のK573に対応する位置にKを含む、態様26の真菌宿主細胞。
【0302】
28.前記アルブミン融合体が、配列番号45のアルブミン変異体を含む、態様13~26の何れかの真菌宿主細胞。
【0303】
29.前記アルブミン変異体が配列番号45を含むか、配列番号45からなる、態様13~26の何れかの真菌宿主細胞。
【0304】
30.前記融合体が、アルブミン又はその変異体、断片若しくは融合体ではない融合パートナーを含む、態様11~29の何れかの真菌宿主細胞。
【0305】
31.前記融合体が、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン、ダニ抗凝血ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小型モジュラー免疫医薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals)(登録商標)(“SMIP”)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、クニッツ(Kunitz)ドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のもの、インターフェロン、インターロイキン、IL-10、IL-11、IL-2、インターフェロンα(alpha)種及び亜種、インターフェロンβ(beta)種及び亜種、インターフェロンγ(gamma)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL-1受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣薬、トロンボポエチン(TPO)及びTPO模倣薬、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン-N、5-ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIVgp41、HIVgp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエキセンディン(exendin)-4、GLP-1又はGLP-2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(beta)、腫瘍壊死因子、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、FGF、凝固因子(前活性型又は活性型)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand)因子、α(alpha)1-アンチトリプシン、プラスミノーゲン活性化剤、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝産物、抗生物質、或いは上記何れかの変異体又は断片から選択される融合パートナーを含む、態様12~30の何れかの真菌宿主細胞。
【0306】
32.前記融合パートナーが、グルカゴン様タンパク質又はその類似物を含むか、グルカゴン様タンパク質又はその類似物からなる、態様30又は31の真菌宿主細胞。
【0307】
33.前記融合パートナーが配列番号14、15、51、又は52を含むか、配列番号14、15、51、又は52からなる、態様32の真菌宿主細胞。
【0308】
34.前記所望のタンパク質が配列番号16を含むか、配列番号16からなる、態様9~33の何れかの真菌宿主細胞。
【0309】
35.前記改変されたGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、親真菌宿主細胞、例えば野生型真菌宿主細胞における、前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルに対して改変されたレベルである、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0310】
36.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの99%以下まで低減されている、態様35の真菌宿主細胞。
【0311】
37.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの95%以下まで低減されている、態様36の真菌宿主細胞。
【0312】
38.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの90%以下まで低減されている、態様37の真菌宿主細胞。
【0313】
39.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの80%以下まで低減されている、態様38の真菌宿主細胞。
【0314】
40.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの70%以下まで低減されている、態様39の真菌宿主細胞。
【0315】
41.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの60%以下まで低減されている、態様40の真菌宿主細胞。
【0316】
42.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの50%以下まで低減されている、態様41の真菌宿主細胞。
【0317】
43.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの40%以下まで低減されている、態様42の真菌宿主細胞。
【0318】
44.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの30%以下、好ましくは20%以下まで低減されている、態様43の真菌宿主細胞。
【0319】
45.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルの実質的に0%まで低減されている、態様44の真菌宿主細胞。
【0320】
46.前記宿主細胞が、機能的なGSH1遺伝子又はホモログ、又は、機能的なGsh1タンパク質又はそのホモログを欠いている、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0321】
47.前記宿主細胞が、GSH1遺伝子又はホモログ、又は、Gsh1タンパク質又はホモログを欠いている、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0322】
48.前記Gsh1タンパク質又はそのホモログが、配列番号2の47、48、49、50、51、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、409、451、452、453、454及び455から選択される位置に対応する位置に変異を含む、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0323】
49.前記位置が、配列番号2のR125に対応する、態様48の真菌宿主細胞。
【0324】
50.前記位置が、配列番号2のH409に対応する、態様48又は49の真菌宿主細胞。
【0325】
51.前記位置が、配列番号2のP453に対応する、態様48~50の何れかの真菌宿主細胞。
【0326】
52.前記変異が置換、好ましくは非保存的アミノ酸への置換である、態様48~51の何れかの真菌宿主細胞。
【0327】
53.配列番号2の位置125に対応する位置の変異が、A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはC、D、E又はGへの置換、より好ましくはGへの置換である、態様52の真菌宿主細胞。
【0328】
54.配列番号2の位置125に対応する位置の変異が、正荷電アミノ酸から脂肪族、芳香族、疎水性、小型、極小、極性、又は負荷電アミノ酸への置換、好ましくは負荷電アミノ酸から極小アミノ酸への置換である、態様48~53の何れかの真菌宿主細胞。
【0329】
55.配列番号2の位置D49に対応する位置における変異が、A、C、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはH、K又はRへの置換、より好ましくはK又はRへの置換である、態様48~54の何れかの真菌宿主細胞。
【0330】
56.配列番号2の位置49に対応する位置の変異が、負荷電アミノ酸から正荷電アミノ酸への置換である、態様48~55の何れかの真菌宿主細胞。
【0331】
57.配列番号2の位置H409に対応する位置の変異が、A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはA、I、L、V、M、F、W、Yへの置換、より好ましくはA、I、L、Vへの置換、最も好ましくはLへの置換である、態様48~56の何れかの真菌宿主細胞。
【0332】
58.配列番号2の位置H409に対応する位置の変異が、芳香族アミノ酸から脂肪族アミノ酸への置換である、態様48~57の何れかの真菌宿主細胞。
【0333】
59.配列番号2の位置P453に対応する位置の変異が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはA、I、L、V、M、F、W、Yへの置換、より好ましくはA、I、L、Vへの置換、最も好ましくはLへの置換である、態様48~58の何れかの真菌宿主細胞。
【0334】
60.配列番号2の位置P453に対応する位置の変異が、芳香族アミノ酸から脂肪族アミノ酸への置換である、態様48~59の何れかの真菌宿主細胞。
【0335】
61.前記Gsh1タンパク質が配列番号4を含むか、配列番号4からなる、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0336】
62.改変されたGSH1遺伝子、例えば配列番号4をコードするポリヌクレオチドを含む、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0337】
63.前記改変されたNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルが、親真菌宿主細胞、例えば野生型真菌宿主細胞の前記Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル又は発現レベルに対して改変されたレベルである、態様5~62の何れかの真菌宿主細胞。
【0338】
64.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルの90%以下まで低減されている、態様63の真菌宿主細胞。
【0339】
65.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルの80%以下まで低減されている、態様64の真菌宿主細胞。
【0340】
66.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルの70%以下まで低減されている、態様65の真菌宿主細胞。
【0341】
67.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルの60%以下まで低減されている、態様66の真菌宿主細胞。
【0342】
68.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルの50%以下まで低減されている、態様67の真菌宿主細胞。
【0343】
69.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルの40%以下まで低減されている、態様68の真菌宿主細胞。
【0344】
70.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルの30%以下まで低減されている、態様69の真菌宿主細胞。
【0345】
71.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルの20%以下まで低減されている、態様70の真菌宿主細胞。
【0346】
72.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが、前記親真菌宿主細胞のNot4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルの実質的に0%まで低減されている、態様71の真菌宿主細胞。
【0347】
73.前記宿主細胞が、機能的なNOT4遺伝子又はホモログ、又は、機能的なNot4タンパク質又はそのホモログを欠いている、態様5~72の何れかの真菌宿主細胞。
【0348】
74.前記宿主細胞が、NOT4遺伝子又はホモログ、又は、Not4タンパク質又はそのホモログを欠いている、態様5~73の何れかの真菌宿主細胞。
【0349】
75.前記NOT4遺伝子又はホモログ、又は、Not4タンパク質又はそのホモログが、前記Not4タンパク質又はそのホモログの、Not1タンパク質又はそのホモログとの相互作用を改変するように突然変異している、態様5~74の何れかの真菌宿主細胞。
【0350】
76.前記Not4タンパク質又はそのホモログが、配列番号6の426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469又は470から選択される位置に対応する位置に変異を含む態様5~75の何れかの真菌宿主細胞。
【0351】
77.前記位置が、配列番号6の429、430、434、又は437に対応する位置から選択される、態様76の真菌宿主細胞。
【0352】
78.前記位置が、配列番号6の463、464又は466に対応する位置から選択される、態様76又は77の真菌宿主細胞。
【0353】
79.前記位置が、配列番号6の442、445、447又は452に対応する位置から選択される、態様76~78の何れかの真菌宿主細胞。
【0354】
80.前記変異が置換、好ましくは非保存的アミノ酸への置換である、態様76~79の何れかの真菌宿主細胞。
【0355】
81.配列番号6の位置429に対応する位置の変異が、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYに対する置換、好ましくはG、A、V、L又はIに対する置換、より好ましくはI、L又はVに対する置換、最も好ましくはIに対する置換である、態様76~80の何れかの真菌宿主細胞。
【0356】
82.配列番号6の位置429に対応する位置の変異が、芳香族アミノ酸から脂肪族アミノ酸への置換である、態様76~81の何れかの真菌宿主細胞。
【0357】
83.前記Not4タンパク質が配列番号8を含むか、配列番号8からなる、態様76~82の何れかの真菌宿主細胞。
【0358】
84.改変されたNOT4遺伝子、例えば配列番号8をコードするポリヌクレオチドを含む、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0359】
85.前記宿主細胞が、NOT4遺伝子又はホモログ、又は、Not4タンパク質又はそのホモログを欠いている、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0360】
86.AHA1、CCT2、CCT3、CCT4、CCT5、CCT6、CCT7、CCT8、CNS1、CPR3、CPR6、ERO1、EUG1、FMO1、HCH1、HSP10、HSP12、HSP104、HSP26、HSP30、HSP42、HSP60、HSP78、HSP82、JEM1、MDJ1、MDJ2、MPD1、MPD2、PDI1、PFD1、ABC1、APJ1、ATP11、ATP12、BTT1、CDC37、CPR7、HSC82、KAR2、LHS1、MGE1、MRS11、NOB1、ECM10、SSA1、SSA2、SSA3、SSA4、SSC1、SSE2、SIL1、SLS1、ORM1、ORM2、PER1、PTC2、PSE1、UBI4、及びHAC1、又は切断型イントロン欠失HAC1、TIM9、PAM18、TCP1、又はそれらの変異体のうち1又は2以上のシャペロンが過剰発現している、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0361】
87.KEX2又はその変異体若しくは断片が、発現又は過剰発現している、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0362】
88.PDI1又はその変異体が過剰発現しているか、或いはERO1又はその変異体が過剰発現している、態様86又は87の真菌宿主細胞。
【0363】
89.PDI1又はその変異体が過剰発現していると共に、ERO1又はその変異体が過剰発現している、態様86又は87の真菌宿主細胞。
【0364】
90.PDI1又はその変異体が過剰発現していると共に、KEX2又はその変異体が発現又は過剰発現している態様86又は87の真菌宿主細胞。
【0365】
91.ERO1又はその変異体が過剰発現していると共に、KEX2又はその変異体が発現又は過剰発現している、態様86又は87の真菌宿主細胞。
【0366】
92.PDI1又はその変異体が過剰発現していると共に、ERO1又はその変異体が過剰発現していると共に、KEX2又はその変異体が発現又は過剰発現している、態様86~91の何れかの真菌宿主細胞。
【0367】
93.前記真菌宿主が、酵母又は糸状菌(filamentous fungus)である、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0368】
94.前記宿主細胞が、サッカロミセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、ハンセヌラ属(Hansenula)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ピチア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、又はヤロウィア属(Yarrowia)である、前記態様の何れかの真菌宿主細胞。
【0369】
95.前記サッカロミセス属(Saccharomyces)が、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ディアスタティクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ダグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、又はサッカロミセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)、好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、態様94の真菌宿主細胞。
【0370】
96.所望のタンパク質、例えば異種タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む、真菌宿主細胞の培養物であって、前記真菌宿主細胞のGsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが低減されてなることを特徴とする、真菌宿主細胞の培養物。
【0371】
97.Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベル及び/又は発現レベルが低減されてなる、態様96の真菌宿主細胞の培養物。
【0372】
98.前記宿主細胞が、態様1~95の何れかに定義される宿主細胞である、態様96又は97の真菌宿主細胞の培養物。
【0373】
99.真菌宿主細胞から所望のタンパク質、例えば異種タンパク質を産生するための方法であって、
a.態様1~94の何れかの真菌宿主細胞、又は、態様96~98の何れかの培養物を提供し、
b.前記の真菌宿主細胞又は培養物を培養して、前記所望のタンパク質を産生させ、
c.任意により前記所望のタンパク質を回収し、
d.任意により前記所望のタンパク質を精製する、
e.任意により前記所望のタンパク質を、治療的に許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤化することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療薬を製造し、
f.任意により前記所望のタンパク質を単位投与形態で提供する
ことを含む方法。
【0374】
100.所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の収率を増加させるための方法であって、
a.改変された、
1.Gsh1タンパク質又はそのホモログ、及び/又は
2.Gsh1タンパク質又はそのホモログの(好ましくは低減された)活性レベル、及び/又は
3.GSH1遺伝子又はそのホモログ、及び/又は
4.GSH1遺伝子又はそのホモログの(好ましくは低減された)発現レベル
を有する真菌宿主細胞(例えば酵母又は糸状菌(filamentous fungus))、例えば態様1~94の何れかの真菌宿主細胞を提供し、
b.前記宿主細胞を培養して前記所望のタンパク質を産生させ、
c.任意により前記所望のタンパク質を回収し、
d.任意により前記所望のタンパク質を精製し、
e.任意により前記所望のタンパク質を、治療的に許容しうる担体又は希釈剤と共に製剤化することにより、ヒト又は動物への投与に適した治療薬を製造し、
f.任意により前記所望のタンパク質を単位投与形態で提供する
ことを含む方法。
【0375】
101.前記培養がグルタチオンの存在下で行われる、態様99又は100の方法。
【0376】
102.前記グルタチオンが、少なくとも0.05mMの濃度で存在する、態様101の方法。
【0377】
103.前記グルタチオンが、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450mM~約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500mMの濃度で存在する、態様102の方法。
【0378】
104.前記グルタチオンが、約1~約10mMの濃度で存在する、態様103の方法。
【0379】
105.前記グルタチオンが、約3~約7mMの濃度で存在する、態様104の方法。
【0380】
106.前記グルタチオンが、約5mMの濃度で存在する、態様105の方法。
【0381】
107.前記所望のタンパク質の収率が、参照真菌宿主細胞、例えば野生型Gsh1タンパク質、例えば配列番号2を有する真菌宿主細胞における収率より少なくとも2%高い、態様99~106の何れかの方法。
【0382】
108.前記収率が、参照真菌宿主細胞における収率より少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高い、態様107の方法。
【0383】
109.前記所望のタンパク質の収率が、参照真菌宿主細胞、例えば配列番号2のGsh1タンパク質を有する真菌宿主細胞における収率より少なくとも2%高い、態様107又は108の方法。
【0384】
110.前記収率が、参照真菌宿主細胞における収率より少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高い、態様109の方法。
【0385】
111.前記真菌宿主細胞が、改変された、
1.Not4タンパク質又はそのホモログ、及び/又は
2.Not4タンパク質又はそのホモログの(好ましくは低減された)活性レベル、及び/又は
3.NOT4遺伝子又はそのホモログ、及び/又は
4.NOT4遺伝子又はそのホモログの(好ましくは低減された)発現レベル
を有する、例えば態様5~95の何れかの真菌宿主細胞である、態様99~110の何れかの方法。
【0386】
112.前記所望のタンパク質の収率が、参照真菌宿主細胞、例えば野生型Not4タンパク質、例えば配列番号6を有する真菌宿主細胞における収率より少なくとも2%高い、態様111の方法。
【0387】
113.前記収率が、参照真菌宿主細胞における収率、例えば野生型Not4タンパク質、例えば配列番号6を有する真菌宿主細胞より少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高い、態様112の方法。
【0388】
114.前記所望のタンパク質の収率が、参照真菌宿主細胞、例えば配列番号2のGsh1タンパク質を有する真菌宿主細胞における収率より少なくとも2%高い、態様111~113の何れかの方法。
【0389】
115.前記収率が、参照真菌宿主細胞、例えば配列番号2のGsh1タンパク質を有する真菌宿主細胞における収率より少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高い、態様114の方法。
【0390】
116.前記所望のタンパク質の収率が、参照真菌宿主細胞、例えば配列番号2のGsh1タンパク質及び配列番号6のNot4タンパク質を有する真菌宿主細胞における収率より少なくとも2%高い、態様111~115の何れかの方法。
【0391】
117.前記所望のタンパク質の収率が、参照真菌宿主細胞、例えば配列番号2のGsh1タンパク質及び配列番号6のNot4タンパク質を有する真菌宿主細胞における収率より少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、35、40、45、又は少なくとも50%高い、態様116の方法。
【0392】
118.前記所望のタンパク質が、アルブミン、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン、ダニ抗凝血ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小型モジュラー免疫医薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals)(登録商標)(“SMIP”)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、クニッツ(Kunitz)ドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のタンパク質及びそのアルブミン融合体)、インターフェロン、インターロイキン、IL-10、IL-11、IL-2、インターフェロンα(alpha)種及び亜種、インターフェロンβ(beta)種及び亜種、インターフェロンγ(gamma)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL-1受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣薬、トロンボポエチン(TPO)及びTPO模倣薬、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン-N、5-ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIVgp41、HIVgp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエキセンディン(exendin)-4、GLP-1又はGLP-2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(beta)、腫瘍壊死因子、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、FGF、凝固因子(前活性型又は活性型)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand)因子、α(alpha)1-アンチトリプシン、プラスミノーゲン活性化剤、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝産物、抗生物質、或いは上記何れかの変異体又は断片から選択される、態様99~117の何れかの方法。
【0393】
119.前記所望のタンパク質が、アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体を含むか、或いはアルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体からなる、態様99~118の何れかの方法。
【0394】
120.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも70%の同一性を有する、態様119の方法。
【0395】
121.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有する、態様120の方法。
【0396】
122.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも70%の同一性、好ましくは配列番号10に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、95、96、97、98又は99%の同一性を有すると共に、配列番号10のK573に対応する位置にA、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYを含む、態様121の方法。
【0397】
123.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10のK573に対応する位置にP、H、W又はYを含む、態様122の方法。
【0398】
124.前記アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体が、配列番号10に対して少なくとも98%の同一性を有すると共に、配列番号10のK573に対応する位置にPを含む、態様123の方法。
【0399】
125.前記融合体が、アルブミン又はその変異体、断片、及び/又は融合体ではない融合パートナーを含む、態様119~124の何れかの方法。
【0400】
126.前記融合体が、モノクローナル抗体、エトポシド、血清タンパク質(例えば血液凝固因子)、アンチスタシン、ダニ抗凝血ペプチド、トランスフェリン、ラクトフェリン、エンドスタチン、アンジオスタチン、コラーゲン、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン系分子、又はその何れかの断片(例えば小型モジュラー免疫医薬(Small Modular ImmunoPharmaceuticals)(登録商標)(“SMIP”)又はdAb、Fab’断片、F(ab’)2、scAb、scFv又はscFv断片)、クニッツ(Kunitz)ドメインタンパク質(例えば国際公開第03/066824号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のもの、インターフェロン、インターロイキン、IL-10、IL-11、IL-2、インターフェロンα(alpha)種及び亜種、インターフェロンβ(beta)種及び亜種、インターフェロンγ(gamma)種及び亜種、レプチン、CNTF、CNTFAx15、IL-1受容体アンタゴニスト、エリスロポエチン(EPO)及びEPO模倣薬、トロンボポエチン(TPO)及びTPO模倣薬、プロサプチド(prosaptide)、シアノビリン-N、5-ヘリックス、T20ペプチド、T1249ペプチド、HIVgp41、HIVgp120、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、tPA、ヒルジン、血小板由来成長因子、副甲状腺ホルモン、プロインシュリン、インシュリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、例えばエキセンディン(exendin)-4、GLP-1又はGLP-2、インシュリン様成長因子、カルシトニン、成長ホルモン、形質転換成長因子β(beta)、腫瘍壊死因子、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、FGF、凝固因子(前活性型又は活性型)、例えば、これらに限定されるものではないが、プラスミノーゲン、フィブリノーゲン、トロンビン、プレトロンビン、プロトロンビン、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand)因子、α(alpha)1-アンチトリプシン、プラスミノーゲン活性化剤、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X及び因子XIII、神経成長因子、LACI、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、グルコースオキシダーゼ、血清コリンエステラーゼ、アプロチニン、アミロイド前駆体タンパク質、インターアルファトリプシン阻害剤、抗トロンビンIII、アポリポタンパク質種、タンパク質C、タンパク質S、代謝産物、抗生物質、或いは上記何れかの変異体又は断片から選択される融合パートナーを含む、態様120~125の何れかの方法。
【0401】
127.前記融合パートナーが、グルカゴン様タンパク質又はその類似物を含むか、グルカゴン様タンパク質又はその類似物からなる、態様126の方法。
【0402】
128.前記融合パートナーが、配列番号14、15、51、又は52を含むか、配列番号14、15、51、又は52からなる態様127の方法。
【0403】
129.前記所望のタンパク質が、配列番号16を含むか、配列番号16からなる、態様118~128の何れかの方法。
【0404】
130.前記宿主細胞が、少なくとも1Lのスケールで培養される、態様99~129の何れかの方法。
【0405】
131.前記宿主細胞が、少なくとも2Lのスケールで培養される、態様130の方法。
【0406】
132.前記宿主細胞が、少なくとも5Lのスケールで培養される、態様131の方法。
【0407】
133.前記宿主細胞が、少なくとも10Lのスケールで培養される、態様132の方法。
【0408】
134.前記宿主細胞が、少なくとも1000Lのスケールで培養される、態様133の方法。
【0409】
135.前記宿主細胞が、少なくとも5000Lのスケールで培養される、態様134の方法。
【0410】
136.前記所望のタンパク質が、前記真菌宿主細胞から分泌される、態様99~135の何れかの方法。
【0411】
137.前記所望のタンパク質が、シグナルペプチドを含む未成熟タンパク質に由来する、態様136の方法。
【0412】
138.前記シグナルペプチドが、配列番号17、18、19、21、22、23、24、41、又は42を含むか、配列番号17、18、19、21、22、23、24、41、又は42からなり、或いは、配列番号20のペンタペプチドモチーフを含むシグナルペプチドである、態様137の方法。
【0413】
139.前記シグナルペプチドが、配列番号19を含むか、配列番号19からなる、態様138の方法。
【0414】
140.前記シグナルペプチドが、配列番号24を含むか、配列番号24からなる、態様138の方法。
【0415】
141.前記シグナルペプチドが、配列番号42を含むか、配列番号42からなる、態様138の方法。
【0416】
142.前記所望のタンパク質が、細胞内に存在する、態様99~135の何れかの方法。
【0417】
143.態様99~142の何れかの方法により産生される所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)。
【0418】
144.予防、治療、又は診断のための、態様143の所望のタンパク質。
【0419】
145.態様143又は144の所望のタンパク質と、医薬的に許容可能な担体とを含む組成物、例えば医薬組成物。
【0420】
146.態様143又は144の所望のタンパク質、又は、態様145の組成物を、患者に投与することを含む、治療方法。
【0421】
147.態様1~95の何れかの真菌宿主細胞、又は、態様96~98の何れかの培養物を調製する方法であって、(親)真菌宿主細胞を遺伝子的に改変し、Gsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベル及び/又は活性レベルを低減することを含む方法。
【0422】
148.(親)真菌宿主細胞を遺伝子的に改変し、Not4タンパク質又はそのホモログの発現レベル及び/又は活性レベルを低減することを更に含む、態様147の方法。
【0423】
149.真菌宿主細胞におけるGsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベル及び/又は活性レベルを低減する手段の、前記真菌宿主細胞からの所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の収率を増加させるための使用であって、前記手段が例えば、前記GSH1遺伝子を突然変異又は欠失させることにより、突然変異を有するGsh1タンパク質又はそのホモログを生じさせ、或いは、Gsh1タンパク質又はそのホモログを完全に不在とすること、前記遺伝子のオープンリーディングフレームを除去又は変更すること、前記GSH1遺伝子の調節配列、例えばプロモーター配列及び/又はターミネーター配列を突然変異又は変更すること、例えば適切な干渉RNA、例えばアンチセンスmRNAを導入して、前記GSH1遺伝子の転写を阻害又は低減すること、適切な転写活性化遺伝子を導入、調節、又は改変すること、或いは、Gsh1タンパク質又はそのホモログの活性レベルを阻害する剤を導入することによる手段である、使用。
【0424】
150.真菌宿主細胞において、Gsh1タンパク質又はそのホモログの発現レベル及び/又は活性レベルを低減すると共に、Not4タンパク質又はそのホモログの活性レベルを低減する手段の、前記真菌宿主細胞からの所望のタンパク質(例えば異種タンパク質)の収率を増加させるための使用であって、前記手段が例えば、前記GSH1遺伝子を突然変異又は欠失させると共に、前記NOT4遺伝子を突然変異又は欠失させることにより、突然変異を有するGsh1タンパク質又はそのホモログを生じさせ、或いは、Gsh1タンパク質又はそのホモログを完全に不在とすると共に、突然変異を有するNot4タンパク質又はそのホモログを生じさせ、或いは、Not4タンパク質又はそのホモログを完全に不在とすること、前記遺伝子のオープンリーディングフレームを除去又は変更すること、前記GSH1及び/又はNOT4遺伝子の調節配列、例えばプロモーター配列及び/又はターミネーター配列を突然変異又は変更すること、適切な干渉RNA、例えばアンチセンスmRNAを導入し、前記GSH1及び/又はNOT4遺伝子の転写を阻害又は低減すること、或いは、Gsh1タンパク質又はホモログ及び/又はNot4タンパク質又はホモログの活性レベルを阻害する剤を導入することにより、適切な転写活性化遺伝子を導入、調節、又は改変することによる手段である、使用。
【0425】
151.配列番号2に対して少なくとも50%の同一性を含むと共に、配列番号2の47、48、49、50、51、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、409、451、452、453、454及び455から選択される1又は2以上の位置に対応する位置に変異を含む、Gsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0426】
152.前記位置が、配列番号2のR125に対応する、態様151のGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0427】
153.前記位置が、配列番号2のH409に対応する、態様151又は152のGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0428】
154.前記位置が、配列番号2のP453に対応する、態様151~153の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0429】
155.前記変異が置換、好ましくは非保存的アミノ酸への置換である、態様151~154の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0430】
156.配列番号2の位置R125に対応する位置の変異が、A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはC、D、E又はGへの置換、より好ましくはGへの置換である、態様152~155の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0431】
157.配列番号2の位置R125に対応する位置の変異が、正荷電アミノ酸から脂肪族、芳香族、疎水性、小型、極小、極性、又は負荷電アミノ酸への置換、好ましくは負荷電アミノ酸から極小アミノ酸への置換である、態様151~156の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0432】
158.配列番号2の位置D49に対応する位置の変異が、A、C、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはH、K又はRへの置換、より好ましくはK又はRへの置換である、態様151~157の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0433】
159.配列番号2の位置49に対応する位置の変異が、負荷電アミノ酸から正荷電アミノ酸への置換である、態様151~158の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0434】
160.配列番号2の位置H409に対応する位置の変異が、A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはA、I、L、V、M、F、W、Yへの置換、より好ましくはA、I、L、Vへの置換、最も好ましくはLへの置換である、態様151~159の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0435】
161.配列番号2の位置H409に対応する位置の変異が、芳香族アミノ酸から脂肪族アミノ酸への置換である、態様151~160の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0436】
162.配列番号2の位置P453に対応する位置の変異が、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W又はYへの置換、好ましくはA、I、L、V、M、F、W、Yへの置換、より好ましくはA、I、L、Vへの置換、最も好ましくはLへの置換である、態様151~161の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0437】
163.配列番号2の位置P453に対応する位置の変異が、芳香族アミノ酸から脂肪族アミノ酸への置換である、態様151~162の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【0438】
164.配列番号4を含むか、或いは配列番号4からなる、態様151~163の何れかのGsh1タンパク質又はそのホモログ。
【実施例】
【0439】
以下の非制限的な実施例を参照しながら本発明を説明する。
【0440】
実施例1:サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)GSH1遺伝子の変異
【0441】
S.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9は遺伝子型cir° MATa、leu2-3、leu2-112 ubc4 ura3 yap3::URA3 lys2 hsp150:LYS2を有し、更にPDI1、URA3及びYIplac211がPDI1遺伝子座に組み込まれてなる(Finnis et al, 2010, Microbial Cell Factories 9: 87)。本発明者等は、S.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9(アルブミンをコードするプラスミドで形質転換されたもの)が、その前駆体株、例えばS.セレビシエ(S. cerevisiae)DB1と比較して、組換ヒトアルブミンをより高い産生量で産生できるとの知見を得た。S.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9の特性決定によれば、GSH1遺伝子内に一塩基ポリヌクレオチド多型(SNP)が存在することが判明した。このSNPがS.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9のタンパク質産生量向上に寄与しているか否かを決定するために、以下の手順に従って、このSNP(A373G)を野生型のもの(即ち位置373がA)に戻した。これに伴い、ミュータントGsh1タンパク質(G125)も野生型野生型(R125)変更された。野生型GSH1遺伝子及びGsh1タンパク質をそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。前記ミュータント(即ちSNPを含む)GSH1遺伝子及びGsh1タンパク質をそれぞれ配列番号3及び配列番号4に示す。
【0442】
S.セレビシエ(S. cerevisiae)のGSH1遺伝子は染色体X上に存在する。ミュータントGSH1遺伝子のSNP(A373G)を野生型のものに戻すべく、遺伝子断片をGSH1遺伝子座内に導入し、塩基373GをAに変更した。これにより、ミュータントGsh1タンパク質(位置125がG)が野生型Gsh1タンパク質(位置125がR)に変更された。
【0443】
これを達成するために、まずPCRにより、GSH1オープンリーディングフレームの上流領域と同一のDNA配列を5’末端に含むDNAプライマーを用いて、適切な選択マーカー(KanMX)を増幅した。これらのPCRプライマーは以下のMBP267及びMBP268である。KanMXはジェネティシン(Geneticin:G418)に対する抵抗性を付与する。
【0444】
プライマー MBP267:
5’-ATACTATTGTAATTCAAAAAAAAAAAGCGAATCTTCCCATGCCTGTTGCTGCTCTTGAATGGCGACAGCCTATTGCCCCAGTGTTCCCTCAACAACCTTGCGTACGCTGCAGGTCG-3’(配列番号29)
【0445】
プライマー MBP268:
5’-ACAGTTGTAGTCACGTGCGCGCCATGCTGACTAATGGCAGCCGTCGTTGGGCAGAAGAGAATTAGTATGGTACAGGATACGCTAATTGCGCTCCAACTACATCGATGAATTCGAGCTCG-3’(配列番号30)
【0446】
PCR反応を実施してプラスミドpDB5438からKanMX遺伝子を増幅した(
図2)。条件は以下のとおりとした。100ngのプラスミドpDB5438、0.5μMの各プライマー、0.2μMのdNTPを用い、初回の変性は98℃で30秒、次に98℃で10秒、62℃で30秒のアニーリング、72℃で2分間の伸長からなるサイクルを35回行い、その後に72℃で4分間の最終伸長を行ってから、4℃に冷却した。以上の操作は、Applied Biosystems 2720サーマルサイクラー及びNEB Q5 Hot Start High-Fidelity DNAポリメラーゼPCRキット(M0493S)を使用し、総反応体積は50μLとし、製造メーカーの指示に従って実施した。
【0447】
得られた生成物である5’-GSH1 5’UTR-KanMX-GSH1 5’UTR-3’をゲル電気泳動で分析したところ、そのサイズは予想どおり約1.7kbであった。この増幅PCR産物を精製した。この精製物を用いて、GSH1が野生型である(即ち配列番号1の)S.セレビシエ(S. cerevisiae)株を形質転換した。形質転換にはSigma Yeast形質転換キットを使用し、以下の点を除いては製造メーカーの指示に従って実施した。即ち、形質転換混合物を遠心分離した後、ペレットを0.5mLのYEPD培地に再懸濁し、4.5mLのYEPDを含む振盪フラスコに移した。なお、YEPD(g/L)の組成は以下の通り。10gのBacto(登録商標)酵母エキスTechnical、20gのBacto(登録商標)ペプトン、20gのグルコース。
【0448】
この振盪フラスコを振盪しながら(200rpm)30℃で16時間インキュベートした。この培養物を毎分3,000回転(rpm)で5分間遠心分離し、上澄みを静かに除去した。次にこのペレットを1Mソルビトールで洗浄してから、0.5mLの1Mソルビトールに再懸濁した。約100μLを新規調製したG418寒天プレート(G418最終濃度300μg/mL)に播種し、寒天表面を下にして30℃で4日間インキュベートした。なお、G418寒天プレートは以下のように調製した。0.17gの酵母窒素ベース((NH4)2SO4不含有、アミノ酸不含有)、0.1gグルタミン酸(一ナトリウム塩、Sigma G-1626)、及び0.069gのCSM-Leu粉末を、100mLのH2O(注射用無菌水、非発熱性、低張性)に溶解し、フィルターで滅菌した。次に、1.5gのBacto寒天を加え、この瓶をスチーマーで1時間加熱し、次に水槽で55℃に冷却した。0.6mLの50mg/mLジェネティシン(Geneticin:G418)及び4mLの無菌50%デキストロース(w/v)を加えて混合した。混合物のアリコートをペトリ皿に注いで静置した。
【0449】
G418抵抗性の形質転換体からゲノムDNAを抽出し、これをテンプレートとして、プライマーMBP288及びMBP289を用いて第2のPCRを実施し、KanMX遺伝子が挿入されたGSH1 5’UTRと、GSH1 ORFの5’部分(塩基422まで)とを含む、5’-GSH1 5’UTR-KanMX-GSH1 5’UTR-GSH1 ORF断片(配列番号31)を増幅した。
【0450】
プライマーMBP288:5’-GATTTTATCGGTCAAAGG-3’(配列番号32)
【0451】
プライマーMBP289:5’-CTATCTTGTCTCGCATATTC-3’(配列番号33)
【0452】
PCRの材料、方法、及び条件は、以下の点を除いて上述の通りとした。1μLのゲノムDNAを用い、アニーリング温度は55℃とし、伸長時間は各サイクル3分間ずつ、最後は7分間とした。生成物をゲル電気泳動で分析し、予想どおりサイズが約2.9kbであることを確認した。この増幅PCR産物を、QIAGEN QIAquick PCR精製キットを用い、製造メーカーの指示に従って精製した。得られた精製物を用いて、上述の形質転換法により、DP9[pDB2305](
図3)を形質転換した。S.セレビシエ(S. cerevisiae)DP9は、GSH1 SNP(A373G、これによりR125Gとなる)を含む株である。pDB2305はヒトアルブミンの発現用のプラスミドである(
図3)。G418寒天プレートでの増生及び選択を上記手順に従い行った。抵抗性コロニーからゲノムDNAを抽出し、プライマーMBP290及びMBP292を用いたPCRにより、ORFの100bp上流からORFの塩基446までの領域をカバーする546bpの断片を増幅した。サイクルの条件を、初回の変性が98℃で1分間、次に98℃で10秒の変性、61℃で20秒のアニーリング、72℃で2.5分間の伸長からなるサイクルを35回、最後に72℃で7分間の最終伸長に変更した他は、前記と同一のキット及び条件を用いた。
【0453】
プライマーMBP290:5’-TCTCGAGTCACTTGTAGAAG-3’(配列番号34)
【0454】
プライマーMBP292:5’-GAGCCCACATGCAAGTT-3’(配列番号35)
【0455】
得られた生成物を、Qiagen QIAquick 96 PCR精製キットを用いて清浄化した。Life Technologies BigDye Terminator v3.1 Cycleシークエンシングキットを用いて、製造メーカーの指示に従って生成物の配列決定を行った。総反応体積は50μLとし、清浄化された生成物50ngをテンプレートとし、1μMのプライマーMBP291を4μL用いた。条件は以下の通りとした。初回変性は96℃で1分間とし、続いて96℃で10秒の変性、50℃で5秒のアニーリング、60℃で4分間の伸長からなるサイクルを25回実施し、その後4℃まで冷却した。シークエンシング反応物を沈殿させ、HiDi(Applied BioSystems)に再懸濁し、Applied BioSystems 3130xl Genetic Analyserにより分析した。
【0456】
プライマーMBP291:5’-GTAGGGTGGTTTAGAGTATC-3’(配列番号36)
【0457】
配列決定分析の結果、1つの形質転換体が野生型のAを位置373に有していた(R125)。この株をPRG13[pDB2305]と命名した。また、2つの形質転換体は依然としてGを位置373に有していた(G125)。これらの株をPSG10[pDB2305]及びPSG11[pDB2305]と命名した。これら3つの形質転換体を、0.5mLのBMMD(0.17%(w/v)のアミノ酸及び硫酸アンモニウムを含まない酵母窒素ベース(Difco)、37.8mMの硫酸アンモニウム、36mMのクエン酸、126mMのオルトリン酸水素二ナトリウム、pH6.5、2%(w/v)のグルコース、NaOHでpH6.5に調整)を各ウェルに含む48ウェルのマイクロタイタープレート(MTP)で培養した。このMTPを湿度室で振盪しながら(200rpm)30℃で72時間インキュベートした。次に、各ウェルから50μLの細胞培養物を、各ウェルに0.45mLのBMMDを含む新たな48ウェルMTPの3ウェルに移した。この新たなMTPを湿度室で振盪しながら(200rpm)30℃で96時間インキュベートした。
【0458】
遠心分離で上澄みを単離し、組換アルブミンの生産量をGP-HPLC分析により決定した。GP-HPLC分析は、LC2010 HPLC系(Shimadzu)にUV検出器を装着したものを用い、Shimadzu VP7.3クライアントサーバーソフトウェアの制御下で行った。7.8mm id×300mm長さのTSK G3000SWXL カラム(Tosoh Bioscience)に、6.0mm id×40mm長さのTSK SW ガードカラム(Tosoh Bioscience)を組み合わせたものに、75μLを注入した。試料のクロマトグラムの取得は、25mM リン酸ナトリウム、100mM 硫酸ナトリウム、0.05%(w/v)アジ化ナトリウム、pH7.0を1mL・分-1で流通しながら、ランタイム20分間で行った。試料の定量は、280nmのUV検出によりピーク面積を決定し、既知濃度(10mg/mL)の組換ヒトアルブミン標準との比を求め、それらの相対吸光係数に基づき補正を行った。
【0459】
表2に示すように、このSNPの存在により、平均アルブミン収率は21%増加していた。
【0460】
【0461】
この作業を更にS.セレビシエ(S. cerevisiae)株を用いて繰り返した。簡単に述べると、GSH1 SNPを野生型に戻すために、同一の形質転換操作をS.セレビシエ(S. cerevisiae)株BXP10[pDB2244](
図4)に対して実施した。pDB2244はヒトアルブミンを発現するプラスミドである。この株を振盪フラスコに移し、約10mLの増殖培地を入れた50mLフラスコで、200rpmで振盪しながら30℃でインキュベートした。SNPを含む形質転換体、即ちBSG3[pDB2244]によるアルブミンの収率を、SNPが野生型に変換された形質転換体、即ちBRG5[pDB2244]によるアルブミンの収率と比較した。BXP10は遺伝子型MATa、leu2-3、leu2-122、can1、pra1、ubc4、ura3、yap3::URA3、lys2、hsp150::LYS2、及びpmt1::URA3を有する。
【0462】
表3に示すように、このSNPの存在により、アルブミン産生量は68%増加していた(各株につき3回の重複実験)。
【0463】
【0464】
実施例2:S.セレビシエ(S. cerevisiae)GSH1遺伝子の欠失による組換タンパク質産生の増強
【0465】
実施例1で使用したのと同じ2つのS.セレビシエ(S. cerevisiae)株において、SNPを元に戻すために前記のGSH1遺伝子を欠失させた。この欠失は、前記のGSH1遺伝子をマーカーKanMXで置換することにより行った。従って、結果として得られる株は、どのようなGsh1タンパク質も産生できない。欠失を実施するために、必要なDNAをプラスミドインサートとして配置し、両側にAcc65I制限部位を配置した。このDNA断片は、KanMX DNAと、5’側に配置された、GSH1 ORFのすぐ上流の300bp、3’側に配置された、GSH1 ORFのすぐ下流の300bpの両不ランキング配列からなる(配列番号43)。このプラスミドをAcc65Iで消化し、QIAGENゲル抽出キットを用いてトリス-酢酸塩-EDTA(TAE)アガロースゲルからKanMX断片を精製した。このDNAを用いて、酵母株DP9[pDB2305]及びBXP10[pDB2244]を形質転換した。ここでpDB2305及びpDB2244は、ヒト血清アルブミン用の発現カセットを含むプラスミドである。形質転換操作の最後に、酵母細胞をYEPD培地に再懸濁し、200rpmで振盪しながら30℃で一晩培養した。翌日にこの培養細胞を、L-グルタチオンを5mM添加した(実施例1に記載した)G418プレートに播種した。コロニーを(同様にG418及びL-グルタチオンを含む)新たなプレートにパッチとして播種し、パッチが生育したら、ゲノムDNAを抽出してPCRに供した。このPCRには、前記のDNA断片が完全に導入されていれば、その接合部に隣接するはずの配列をプライマーとして用いた。BXP10内のGSH1が欠失された3つの形質転換体(これらの形質転換体はBDG1、BDG2、及びBDG10と命名された)と、DP9内のGSH1が欠失された1つの形質転換体(この形質転換体はPDG14と命名された)が同定された。これらの株を、SNPが元に戻された、或いは戻されていない前述の株と共に、BMMDを入れた48ウェルのプレートで培養した。欠失株については、5mMのL-グルタチオンをウェルに添加し、他の株については、L-グルタチオンの存在下又は不在かで培養した。上清をGP-HPLCでアッセイし、ヒト血清アルブミンの発現レベルを定量した。
【0466】
【0467】
表4に示すように、GSH1が欠失したBXP10[pDB2244]では、野生型GSH1を有する株と比較してアルブミン収率が結果した。加えて、これも実施例1で示したように、GSH1におけるSNPの存在により、野生型GSH1を含む株と比較してアルブミン収率が結果した。
【0468】
【0469】
表5に示すように、GSH1が欠失したDP9[pDB2305]では、野生型GSH1を有する株と比較しても、SNPを含むGSH1を有する株と比較しても、アルブミン収率が増加した。
【0470】
実施例3:GSH1遺伝子の変異により10Lスケールでのアルブミン発酵収率が増加
【0471】
実施例1のBXP10由来株を、発酵槽を用いて10リットルのスケールで培養し、比細胞生産(YPXT)収量の比を求めた(表6)。発酵は実施例5と同様に実施した。
【0472】
【0473】
SNP A373G(その結果R125G)を含むGSH1を有する株では、平均増加率は4.6%であった。これは統計的に有意であった。P値=0.069
【0474】
実施例4:S.セレビシエ(S. cerevisiae)からの組換タンパク質の収率がGSH1の変異により増加する作用は、NOT4の変異の存在によってさらに増強される
【0475】
以前(PCT/US2016/068239、これは参照により本明細書に組み込まれる)、宿主株による異種タンパク質の収率が、NOT4(別名MOT2)の変異によって増加することを報告した。
【0476】
NOT4の変異とGSH1の変異との組み合わせによる収率への影響を決定するために、(これらの遺伝子の一方又は両方の野生型を有するプラスミド、或いはいずれも有しないプラスミドによって形質転換することにより)宿主細胞内でこれらの変異の一方又は両方を補完し、又は何れも補完せず、結果として以下に相当する表現型を有する株を調製した。
(A)SNP含有GSH1及びSNP含有NOT4、
(B)SNP含有GSH1及び野生型NOT4、
(C)野生型GSH1及びSNP含有NOT4、並びに
(D)野生型GSH1及び野生型NOT4。
【0477】
得られた株の培養上清をGP-HPLC分析することにより、異種タンパク質の収量を測定した。
【0478】
野生型NOT4及び/又はGSH1を含むプラスミドの産生のために、酵母株DB1由来のゲノムDNAを用いてPCRを実施した。この株は野生型NOT4及び野生型GSH1を有する。プライマー対(表7)を用いて、野生型ORFとNOT4及びGSH1の上流及び下流配列とを含むDNAを生成した。これらのプライマーは、プラスミドYCP50へのクローニングを可能とするための制限酵素部位を含むように設計した(
図5及びRose et al., 1987, Gene, 60, 237-243)。PCRは表8に従って実施した。
【0479】
【0480】
【0481】
PCR条件は以下の通りとした。0.1μgのゲノムDNA、0.5μMの各プライマー、0.2μMのdNTPを用い、初回の変性は98℃で30秒、次に98℃で10秒の変性、上記温度で30秒のアニーリング、及び72℃で2分間の伸長からなるサイクルを35回、最後の伸長は72℃で4分間、その後4℃に冷却した。以上の操作は、Applied Biosystems 2720サーマルサイクラー及びNEB Q5 Hot Start High-Fidelity DNAポリメラーゼPCRキット(M0493S)を使用し、総反応体積は50μLとし、製造メーカーの指示に従って実施した。得られた産物をゲル電気泳動で分析したところ、そのサイズは予想通り、NOT4が約2.5kb、GSH1が約3.3kbであった。この増幅PCR産物を、QIAGEN QIAquick PCR精製キットを用い、製造メーカーの指示に従って精製した。
【0482】
精製したPCR産物及びYCP50プラスミドを制限酵素で消化した。制限酵素及び緩衝剤は何れもNew England Biolabs(NEB)のものを用い、製造メーカーの指示に従って使用した。消化としては、NOT4 PCR産物についてはEcoRI + HindIII、YCP50についてはEcoRI + HindIII、GSH1 PCR産物についてはSphI + SalI、YCP50についてはSphI + SalIを実施した。緩衝剤としてはCutSmart緩衝剤を使用し、制限酵素は何れもNEB High Fidelity(“HF”)酵素(即ちEcoRI-HF等)であった。消化物を約1.37℃で5時間インキュベートした。PCR産物の消化物はQIAGEN QIAquick PCR精製キットで精製し、TAEアガロースゲルからのYCP50 DNAの精製は、QIAGEN QIAquick ゲル抽出キットを用いて、製造メーカーの指示に従って行った。
【0483】
消化及び精製された各PCR産物を、同じ酵素で切断したYCP50 DNAにライゲートした。ライゲーションは、NEB Quickライゲーションキット(M2200S)を用い、製造メーカーの指示に従って行った。PCR産物:YCP50のモル比は3:1とした。各ライゲーション反応液1μLを用いて、製造メーカーの指示に従って、NEB 5-alpha コンピテント(高効率)大腸菌細胞(M2987I)を形質転換し、細胞をLBアンピシリンプレートに播種した。得られたコロニーから一晩培養物を調製し、QIAGEN QIAprep spin miniprepsを実施した。制限酵素消化により、クローニングが首尾よく行われたと思われるプラスミドを同定した。
【0484】
次に、YCP50-NOT4プラスミドをSphI + SalIで消化し、TAE アガロースゲルから、QIAGEN QIAquickゲル抽出キットを用いて、製造メーカーの指示に従ってDNAを精製した。このDNAを、SphI + SalIで消化したGSH1 PCR産物にライゲートし、QIAquick PCR精製キットを用いて精製した。インサート:バックボーンのDNAモル比は3:1とした。NEB 5-alphaコンピテント(高効率)細胞を(上述のように)形質転換し、プラスミドDNAを(上述のように)精製した。制限酵素消化により正しいプラスミドを特定した。
【0485】
これにより、新たに3つのプラスミド:YCP50-NOT4、YCP50-GSH1及びYCP50-NOT4-GSH1が得られた。これらのプラスミドと、YCP50単体とを用いて、組換ヒト血清アルブミン発現用のプラスミドpDB2305を含むDYB7 ura3[pDB2305]を形質転換した。DYB7は、Payne et al, (2008) Applied and Environmental Microbiology 74 (24) 7759-7766に記載されている。形質転換は、Sigma酵母形質転換キットを用い、以下を除いては製造メーカーの指示に従って実施した。即ち、形質転換混合物の遠心分離工程後に、ペレットを200μL 1Mソルビトールに再懸濁し、その100μLをBMMD寒天プレートに播種した。このプレートをコロニーが生じるまで30℃でインキュベートした。
【0486】
各形質転換物当たり一つのコロニーを、1ウェル当たり0.5mLのBMMDを含む48ウェルのマイクロタイタープレートのウェルに播種した。このプレートを200rpmで振盪しながら30℃で2日間インキュベートした後、各ウェルに同体積の40%トレハロースを混合し、プレートを-80℃で保存した。後日、プレートを解凍し、各ウェルから50μLを、450μLのBMMDを含む新たなプレートのウェルに移した。このプレートを200rpmで振盪しながら30℃で2日間インキュベートし、他の新たなプレートに移して再培養した(450μLのBMMDに50μL)。このプレートを4日間培養した。次にこのプレートを2000rpmで5分間遠心分離し、各々200μLの上清をHPLCバイアルに移した。実施例に記載の手順により、上清中のヒト血清アルブミン量をGP-HPLCで定量した。
【0487】
新たなプラスミドであるYCP50-NOT4、YCP50-GSH1、及びYCP50-NOT4-GSH1の配列を決定し、各々正しいインサートを含んでいることを確認した。配列決定は上記実施例に記載の通りに行ったが、今回は各反応当たり150~300ngのプラスミドDNAを用いた。
【0488】
培養上清のGP-HPLC分析により測定した相対アルブミン収率を表9(下記)に示す。
【0489】
【0490】
収率は、SNP含有遺伝子の両方が補完された株(D)との相対値で示す。NOT4のSNPを有する(C)では、収率は31%増加し、GSH1のSNPを有する(B)では、収率は77%増加し、両方のSNPを有する(A)では、収率は84%増加した。これらの補完実験は、GSH1及びNOT4変異がアルブミン収率に性の影響を与えると共に、これらを組み合わせることで収率が更に増加することを示している。
【0491】
斯かる収率の増加はより大きなスケールでも見られると予想される。その理由としては、実施例1及び2によればGSH1の変異又は欠失が小スケールにおけるS.セレビシエ(S. cerevisiae)のアルブミン生産収率に影響を与えたこと、実施例3及び5によれば同様の結果が10Lスケールでも見られたこと、更に先行出願PCT/US2016/068239によればNOT4の変異又は欠失が小スケール及び10Lスケールの双方でS.セレビシエ(S. cerevisiae)のアルブミン生産収率に影響を与えたことが挙げられる。
【0492】
実施例5:S.セレビシエ(S. cerevisiae)GSH1遺伝子の変異が10Lスケールでのアルブミン収率に影響を与えた
【0493】
S.セレビシエ(S. cerevisiae)株DYB7 ura3[pDB2305/YCP50-NOT4]、DYB7 ura3[pDB2305/YCp50-GSH1]、及びDYB7 ura3[pDB2305/YCP50-NOT4-GSH1]による組換タンパク質発現の生産量を、10L発酵槽での培養により調べた(Wigley et al, (2007) Genetic Engineering News. 27 (2): 40 - 42)。発酵は、以下に説明する点を除き、国際公開第97/33973号(参照により本明細書に組み込まれる)の実施例1に記載の手順に従い、MW11D培地を用いて行った。MFCSの代わりにWonderware Supervisory Control and Data Acquisitionソフトウェアを用い、発酵槽の使用前に容器をクエン酸で洗浄し、Na2MoO4.5H2Oの代わりにNa2MoO4.2H2Oを含む微量元素ストック液を用い、アンモニア溶液を用いてpHをpH6.2に調節し、容器への初回の無菌空気の導入は0.5vvmではなく約1.0vvm(即ち1.0リットル)とし、発酵時の気流増加を二段階ではなく一段階とし、即ち約1.0vvmの気流を維持し、比増殖速度を約0.06h-1、指数定数(K)を0.06に維持した。ここで「vvm」とは単位流体体積当たり1分当たりの気体体積流量を意味する。
【0494】
相対収率を(1リットル当たり産物グラム数として)表10に示す。
【0495】
【0496】
SNPを含むGSH1を有する株では、野生型に相当する表現型のGSH1を有する株と比較して、アルブミンの収率が増加した。
【0497】
実施例6:サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)におけるGSH1遺伝子の変異又は欠失は、アルブミン変異体の発現を増強し、GSH1の欠失は、アルブミン融合体タンパク質(アルブミン-IL-1Ra)及びscFv(vHvL)-FLAGの発現を増強した。
【0498】
本実施例で発現されるタンパク質は、(a)WT HSA(配列番号10)と比較して4つの変異を有するアルブミン変異体(配列番号45)、(b)遺伝子操作によりヒト血清アルブミンのC末端に融合されたIL-1Ra(配列番号47、「アルブミン-IL-1Ra」)、及び、(c)C末端にFLAGタグ(DYKDDDDK、配列番号50)を有するscFv、FITC8(配列番号49)である(Evans et al 2010, Protein Expression and Purification 73:113-124:本文献は、参照文献16及び17と共に、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0499】
アルブミン-IL-1Ra発現等の調製のために、プラスミドpDB3936(
図7)を制限酵素Acc65I及びBamHIで切断し、プラスミドpDB5912(アルブミン-IL-1Ra発現カセットを含む)を酵素NsiI及びPvuIで切断した。pDB5912のプラスミドマップを
図8に示し、アルブミン-IL-1RaをコードするDNA配列を配列番号46に示す。制限酵素及び緩衝剤は何れもNew England Biolabsから入手した。両プラスミド消化物を、Qiagen PCR精製キットを用い、製造メーカーの指示に従って精製した。
【0500】
3つの株、即ちPDG14[pDB2305]、PSG11[pDB2305]、及びPRG13[pDB2305]を、YEPD培地を入れた振盪フラスコで培養し、更に3時間二次培養して、プラスミド(pDB2305)を除去した。最終培養物の希釈物をYEPDプレートに播種し、これらのプレートから得られた単一コロニーをYEPDにパッチとして播種した。YEPDのパッチをBMMD + 5mM L-グルタチオン プレートに移し、30℃でインキュベートした。BMMD + 5mM L-グルタチオンの下では成長しなかったことから、これらの細胞ではプラスミドが除去されていることが確認された。これらの酵母株を各々、Sigma Yeast 形質転換キットを用い、製造メーカーの指示に従って、(前記アルブミン変異体発現用)プラスミドpDB5862(pDB5862のプラスミドマップを
図9に示し、前記アルブミン変異体をコードするDNA配列を配列番号44に示す)、(scFv(vHvL)-FLAG発現用)プラスミドpDB3029(pDB3029のプラスミドマップを
図9に示し、scFv-FLAGをコードするDNA配列を配列番号48に示す)、又は精製及び制限消化したpDB3936及びpDB5912(ギャップ修復プラスミドpDB3936:GR:pDB5912からのアルブミン-IL-1RA発現用)によって形質転換した。これらの細胞をBMMDプレートに播種し、30℃で5日間培養した。各株6つの形質転換体を、5mM L-グルタチオンを含む0.5mLのBMMDを各ウェルに有する48ウェルMTPで培養した。このプレートを湿度室で200rpmで振盪しながら30℃で48時間培養した。このプレートから各培養物50μLを、5mMのL-グルタチオンを含む450μLのBMMDを入れた新たなプレートに移して、二次培養を行った。このプレートを96時間インキュベートした。
【0501】
遠心分離によって上清を単離し、組換タンパク質(アルブミン変異体、アルブミン-IL-1Ra、又はScFv)の生産量を、実施例1に示すようにGP-HPLCにより決定した。
【0502】
表11に示すように、SNP(A373G)の存在又は欠失の結果、アルブミン変異体の収率は増大した。野生型GSH1(PRG13)を有する株と比較して、GSH1(PSG11)にSNPを含む株では15%、GSH1(PDG14)の欠失を含む株では23%、収率が増大した。
【0503】
【0504】
表12に示すように、欠失が存在する結果、アルブミン-IL-1Raの収率は増加した。野生型GSH1を含む株(PRG13)と比べて、欠失を含む株(PDG14)の収率は14%増加した。
【0505】
【0506】
表13に示すように、欠失が存在する結果、ScFv-FLAGの収率は増加した。野生型GSH1を有する株(PRG13)と比較して、GSH1を欠失する株(PDG14)による収率は38%増加した。
【0507】
【配列表】