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特許7282709タンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルの予熱装置および予熱方法
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  • 特許-タンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルの予熱装置および予熱方法 図1
  • 特許-タンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルの予熱装置および予熱方法 図2
  • 特許-タンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルの予熱装置および予熱方法 図3
  • 特許-タンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルの予熱装置および予熱方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】タンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルの予熱装置および予熱方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20230522BHJP
   B22D 41/56 20060101ALI20230522BHJP
   B22D 41/60 20060101ALI20230522BHJP
   B22D 41/015 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B22D11/10 320A
B22D41/56
B22D11/10 310Z
B22D41/60
B22D41/015
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020048028
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146364
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】399009642
【氏名又は名称】JFE条鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 裕明
(72)【発明者】
【氏名】古川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 徹
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-163074(JP,A)
【文献】特開2000-071061(JP,A)
【文献】特開平03-052760(JP,A)
【文献】実開平06-048944(JP,U)
【文献】特開平10-286658(JP,A)
【文献】特開昭63-286268(JP,A)
【文献】実開平02-028359(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/10
B22D 41/56
B22D 41/60
B22D 41/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造にてタンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルと下ノズルのうちの前記上ノズルを予熱するために、前記下ノズルを交換する交換装置に装着される予熱装置であって、
前記上ノズルを予熱する熱源であり、かつ発熱体固定ボルトと螺合する第1ネジ孔を設けた板状発熱体と、
該板状発熱体を載置し、かつ前記発熱体固定ボルトと螺合する第2ネジ孔を前記第1ネジ孔に対向する位置に設け、さらに台座連結ボルトと螺合する第3ネジ孔を設けた上側台座と、
前記台座連結ボルトを螺合して貫通させたコンビネーションカラーを挿入するカラー摺動孔を前記第3ネジ孔に対向する位置に設け、さらに高さ調整ボルトと螺合する第4ネジ孔を中心に設けた下側台座と、
を有することを特徴とする予熱装置。
【請求項2】
前記板状発熱体と前記上側台座との間ならびに前記上側台座と前記発熱体固定ボルトの頭部との間に挟持される複数枚の座金と、
前記上側台座と前記コンビネーションカラーとの間ならびに前記コンビネーションカラーと前記台座連結ボルトの頭部との間に挟持される複数枚の座金と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の予熱装置。
【請求項3】
連続鋳造にてタンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルと下ノズルのうちの前記上ノズルを予熱する予熱方法において、
前記上ノズルを予熱する熱源であり、かつ発熱体固定ボルトと螺合する第1ネジ孔を設けた板状発熱体と、
該板状発熱体を載置し、かつ前記発熱体固定ボルトと螺合する第2ネジ孔を前記第1ネジ孔に対向する位置に設け、さらに台座連結ボルトと螺合する第3ネジ孔を設けた上側台座と、
前記台座連結ボルトを螺合して貫通させたコンビネーションカラーを挿入するカラー摺動孔を前記第3ネジ孔に対向する位置に設け、さらに高さ調整ボルトと螺合する第4ネジ孔を中心に設けた下側台座と、
を有する予熱装置を前記下ノズルの交換装置に装着した後、前記高さ調整ボルトを回動させて前記第4ネジ孔に捻じ込むことによって前記下側台座の下端面と前記板状発熱体の上端面との距離を調整することによって、前記上ノズルの下端面と前記板状発熱体の上端面とを密着させて前記上ノズルを予熱することを特徴とする予熱方法。
【請求項4】
前記予熱装置が、
前記板状発熱体と前記上側台座との間ならびに前記上側台座と前記発熱体固定ボルトの頭部との間に挟持される複数枚の座金と、
前記上側台座と前記コンビネーションカラーとの間ならびに前記コンビネーションカラーと前記台座連結ボルトの頭部との間に挟持される複数枚の座金と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の予熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造にてタンディッシュから鋳型に溶鋼を供給する際に、その溶鋼の流路となる上ノズル(いわゆるタンディッシュノズル)と下ノズルのうちの上ノズルを予熱するための予熱装置および予熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板、棒鋼、条鋼等の鋼製品は、溶鋼の成分を調整する工程から、その溶鋼を鋳型に流し込んで凝固させる工程、さらに圧延等の加工を施して所定の形状、寸法に仕上げる工程を経て製造される。溶鋼を凝固させる工程においては、生産性向上の観点から連続鋳造が広く採用されており、成分を調整した溶鋼をタンディッシュに貯留して、ノズルを介して鋳型に供給する技術が普及している。図4は、連続鋳造の操業中のタンディッシュとノズルの例を模式的に示す断面図である。なお、鋳型は図示を省略する。図4に示す通り、溶鋼4の流路となるノズルは、タンディッシュ1に埋設される上ノズル2とタンディッシュ1の下方に延伸する下ノズル3とで構成される。
【0003】
連続鋳造の操業を開始する前は、タンディッシュ1の内部に溶鋼4は貯留されておらず、タンディッシュ1とノズル(すなわち上ノズル2、下ノズル3)は大気温度で保持されている。そして、操業の開始にあたって、溶鋼4をタンディッシュ1に貯留すると、溶鋼4の温度が低下してノズル内部で凝固して、上ノズル2や下ノズル3の閉塞(いわゆる目詰まり)が発生し、その結果、連続鋳造の稼働率の低下や生産性の低下を招く。
【0004】
さらに、閉塞したノズルの復旧作業中にタンディッシュ1内の溶鋼4の温度低下が不可避的に生じるので、その溶鋼4をスクラップとして処分せざるを得ず、その結果、溶鋼4の歩留まりの低下を招くという問題もある。
【0005】
連続鋳造の設備には、従来から、下ノズル3を交換するための交換装置(図示せず)が装備されているので、下ノズル3の閉塞が発生した場合には、予め加熱して昇温(以下、予熱という)した下ノズル3と交換すれば、短時間で操業を再開することが可能である。
【0006】
しかし上ノズル2は、タンディッシュ1の底部の耐火煉瓦壁に埋設されているので、容易に交換することはできない。そこで、上ノズル2の閉塞を防止する技術が検討されている。
【0007】
たとえば、予め溶鋼4をタンディッシュ1に貯留する前に、上ノズル2を上側から(すなわちタンディッシュ1内部から)バーナーで加熱することによって、上ノズル2の予熱を行なう技術が検討されている。この技術は、作業員がバーナーを用いて手作業で予熱を行なうので、長時間を要するばかりでなく、作業員の安全を確保するための付帯設備が必要であるから、予熱コストが増大するのは避けられず、その結果、連続鋳造コストの上昇を招く。
【0008】
また特許文献1には、通電によって発熱する発熱体を内蔵した上ノズルが開示されている。この技術は、上ノズルの製造コストが増大するのは避けられず、その結果、連続鋳造コストの上昇を招く。さらに、発熱体に電流を供給する配線が溶鋼から放射される高温に曝されることによって断線しやすいという問題もある。上ノズルは、既に説明した通りタンディッシュ1の底部の耐火煉瓦壁に埋設されているので、配線を新たに取り付けるのは困難である。つまり、配線が断線すると予熱はできないから、上ノズルの閉塞が発生し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-153347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来の技術の問題点を解消し、連続鋳造にてタンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルの予熱を簡便な手段を用いて短時間で安価に行なうことが可能となり、ひいては溶鋼の歩留まり低下を抑制できる予熱装置および予熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上ノズルの予熱を簡便な手段で行なう技術を検討するにあたって、従来からタンディッシュの付帯設備として装備されている下ノズルの交換装置に着目した。つまり、交換装置に発熱体を装着して上ノズルを下側から昇温させれば、上ノズルの予熱を簡便な手段を用いて行なうことが可能となる。また、作業員が手作業で予熱を行なう必要がないので、予熱に要する時間を短縮することができる。さらに、従来から装備されている機器を活用することによって、発熱体とその台座のみを開発すれば予熱を行なうことが可能となるので、新たな設備の導入コストを抑制できる。
【0012】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち本発明は、連続鋳造にてタンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルと下ノズルのうちの上ノズルを予熱するために、下ノズルを交換する交換装置に装着される予熱装置であって、
上ノズルを予熱する熱源であり、かつ発熱体固定ボルトと螺合する第1ネジ孔を設けた板状発熱体と、
板状発熱体を載置し、かつ発熱体固定ボルトと螺合する第2ネジ孔を第1ネジ孔に対向する位置に設け、さらに台座連結ボルトと螺合する第3ネジ孔を設けた上側台座と、
台座固定ボルトを螺合して貫通させたコンビネーションカラーを挿入するカラー摺動孔を第3ネジ孔に対向する位置に設け、さらに高さ調整ボルトと螺合する第4ネジ孔を中心に設けた下側台座と、
を有する予熱装置である。
【0013】
本発明の予熱装置は、
板状発熱体と上側台座との間ならびに上側台座と発熱体固定ボルトの頭部との間に挟持される複数枚の座金と、
上側台座とコンビネーションカラーとの間ならびにコンビネーションカラーと台座連結ボルトの頭部との間に挟持される複数枚の座金と、
を有することが好ましい。
【0014】
また本発明は、連続鋳造にてタンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルと下ノズルのうちの上ノズルを予熱する予熱方法において、
上ノズルを予熱する熱源であり、かつ発熱体固定ボルトと螺合する第1ネジ孔を設けた板状発熱体と、
板状発熱体を載置し、かつ発熱体固定ボルトと螺合する第2ネジ孔を前記第1ネジ孔に対向する位置に設け、さらに台座固定ボルトと螺合する第3ネジ孔を設けた上側台座と、
台座固定ボルトを螺合して貫通させたコンビネーションカラーを挿入するカラー摺動孔を前記第3ネジ孔に対向する位置に設け、さらに高さ調整ボルトと螺合する第4ネジ孔を中心に設けた下側台座と、
を有する予熱装置を下ノズルの交換装置に装着した後、高さ調整ボルトを回動させて第4ネジ孔に捻じ込んで下側台座の下端面と板状発熱体の上端面との距離を調整することによって、上ノズルの下端面と板状発熱体の上端面とを密着させて上ノズルを予熱する予熱方法である。
【0015】
本発明の予熱方法においては、
板状発熱体と上側台座との間ならびに上側台座と発熱体固定ボルトの頭部との間に挟持される複数枚の座金と、
上側台座とコンビネーションカラーとの間ならびにコンビネーションカラーと台座連結ボルトの頭部との間に挟持される複数枚の座金と、
を有する予熱装置を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、連続鋳造にてタンディッシュから鋳型に供給される溶鋼の流路となる上ノズルの予熱を簡便な手段を用いて短時間で安価に行なうことが可能となり、ひいては溶鋼の歩留まり低下を抑制でき、さらに連続鋳造の生産性向上、稼働率向上を図ることができるので、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る予熱装置を用いて上ノズルを予熱する例を模式的に示す断面図である。
図2図1に示す予熱装置の板状発熱体の上端面と上ノズルの下端面との間隔を調整する機構を示す断面図である。
図3】板状発熱体の例を模式的に示す断面図である。
図4】タンディッシュとノズルの例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る予熱装置6を用いて上ノズル2を予熱する例を模式的に示す断面図である。なお、タンディッシュは図示を省略する。図2は、図1に示す予熱装置6の板状発熱体7の上端面と上ノズル2の下端面との距離を調整(以下、高さ調整という)する機構を示す断面図である。
【0019】
本発明に係る予熱装置6は、高さ調整ボルト12を1本使用するが、発熱体固定ボルト10、台座連結ボルト11の本数ならびに板状発熱体7、上側台座8、下側台座9の形状(たとえば円形、六角形、矩形等)は特に限定しない。以下では一例として、矩形の板状発熱体7、上側台座8、下側台座9と発熱体固定ボルト10、台座連結ボルト11を4本ずつ組み合わせて使用する例について説明する。
【0020】
まず図2(a)を参照して、予熱装置6の構成について説明する。本発明に係る予熱装置6では、板状発熱体7と上側台座8とが発熱体固定ボルト10を介して連結して固定される。矩形の板状発熱体7の角部(4ケ所)には発熱体固定ボルト10を螺合させるために第1ネジ孔21が設けられる。また、矩形の上側台座8の角部(4ケ所)には、第1ネジ孔21に対向して第2ネジ孔22が設けられて、発熱体固定ボルト10は第2ネジ孔22を貫通し、さらに第1ネジ孔21内で係止する。
【0021】
こうして板状発熱体7と上側台座8とを連結して固定する発熱体固定ボルト10の緩みを防止するとともに、板状発熱体7や上側台座8の損傷を防止するために、板状発熱体7の下端面と上側台座8の上端面との間、ならびに上側台座8の下端面と発熱体固定ボルト10の頭部との間に座金20(いわゆるワッシャ)を適宜挟むことが好ましい。
【0022】
さらに、上側台座8と下側台座9は台座連結ボルト11を介して連結される。上側台座8には台座連結ボルト11を螺合させるために第3ネジ孔23が4ケ所に設けられる。また、矩形の下側台座9には、第3ネジ孔23に対向してカラー摺動孔25が4ケ所に設けられる。カラー摺動孔25の内面には台座連結ボルト11と螺合するネジは設けられておらず、コンビネーションカラー26が摺動可能に貫通して挿入される。そのコンビネーションカラー26の内面に台座連結ボルト11と螺合するネジが設けられる。つまり、台座連結ボルト11はコンビネーションカラー26を貫通し、さらに第3ネジ孔23内で係止する。
【0023】
上側台座8と下側台座9とを連結する台座連結ボルト11の緩みを防止するとともに、上側台座8、下側台座9やコンビネーションカラー26の損傷を防止するために、上側台座8の下端面とコンビネーションカラー26の上端との間、ならびに台座連結ボルト11の頭部とコンビネーションカラー26の下端との間に座金20を適宜挟むことが好ましい。
【0024】
下側台座9の中心部(1ケ所)には、高さ調整ボルト12を螺合させる第4ネジ孔24が設けられる。なお上側台座8の中心部には、高さ調整ボルト12を螺合させるネジ孔は設けない。
【0025】
次に図2(a)~(c)を参照して、板状発熱体7の上端面と下側台座9の下端面との距離の調整について説明する。なお、板状発熱体7の上端面と下側台座9の下端面との距離の調整は、後述する通り、板状発熱体7の高さの調整に相当するものである。
【0026】
図2(a)に示すように、下側台座9の第4ネジ孔24に高さ調整ボルト12を螺合させて貫通させる。引き続き高さ調整ボルト12をネジ込んで上昇させることによって、図2(b)に示すように、高さ調整ボルト12の先端を上側台座8の下端面に当接させる。高さ調整ボルト12をさらに回動させると、上側台座8を板状発熱体7とともに上昇させる力が作用する。あるいは、上側台座8によって高さ調整ボルト12の上昇が妨げられて、第4ネジ孔24を介して下側台座9を押し下げる力が作用する。その結果、図2(c)に示すように、カラー摺動孔25の内面とコンビネーションカラー26の外面が摺動しながら、下側台座9の上端面と上側台座8の下端面との間隔が拡大する。
【0027】
つまり本発明に係る予熱装置6では、高さ調整ボルト12を回動させて第4ネジ孔24にネジ込むことによって、板状発熱体7の上端面と上ノズル2の下端面との距離を調整することができる。
【0028】
このような予熱装置6を、図1に示すように、交換装置5に装着する。この時、板状発熱体7が上方に位置し、下側台座9が下方に位置するように装着する。そして、高さ調整ボルト12を第4ネジ孔24にねじ込んで、上側台座8とともに板状発熱体7を上昇させることによって、上ノズル2の下端面と板状発熱体7の上端面とを密着させる(図示省略)。
【0029】
本発明では、予熱装置6を交換装置5に装着する手段は限定しない。たとえば、交換装置5の形状(たとえば突起等)を活用して、予熱装置6を載置すれば、簡便に予熱を行なうことができる(図1参照)。さらにピンやボルト等を併用することによって、予熱装置6の位置ずれや脱落を防止できる。
【0030】
また、板状発熱体7の構成は特に限定しないが、図3に板状発熱体7の一例を模式的に断面図として示す。
【0031】
図3に示す板状発熱体7は、矩形の金属製板状外殻13の内部に電熱線内蔵ヒーター14を埋設したものである。この板状発熱体7は、電流供給配線15を介して電流を供給することによって電熱線内蔵ヒーター14から発生した熱が、金属製板状外殻13を経て、熱伝導によって下方から上ノズル2に蓄熱される。したがって、金属製板状外殻13は熱伝導性の優れた素材(たとえば無酸素銅等)を使用することが好ましい。
【0032】
本発明に係る予熱装置6を用いて上ノズル2を予熱する際には、タンディッシュ1内に溶鋼は貯留されていない。また、予熱が終了した後、高さ調整ボルト12を操作して板状発熱体7を上ノズル2から離脱させ、次いで予熱装置6を交換装置5から取り外す。そして、交換装置5を用いて下ノズル3を上ノズル2の下方に取り付けて、タンディッシュ1に溶鋼を貯留して連続鋳造の操業を開始する(図4参照)。したがって、予熱装置6は溶鋼4からの過剰な高温に曝される惧れはないので、高熱に起因する変形や故障の発生は防止できる。
【0033】
以上に説明した通り、本発明によれば、上ノズルの予熱を簡便な手段を用いて行なうことが可能となる。また、作業員が手作業で予熱を行なう必要がないので、予熱に要する時間を短縮することができる。さらに、既存の交換装置5を活用することによって、発熱体とその台座のみを開発すれば予熱を行なうことが可能となるので、新たな設備の導入コストを抑制できる。
【実施例
【0034】
本発明を適用して上ノズル2の予熱を行ない、さらに連続鋳造を行なう試験操業を開始するにあたって、まず、図3に示す板状発熱体7を製作した。無酸素銅からなる正方形の金属製板状外殻13の寸法は、縦横それぞれ120mm、厚さ12mmとし、4本の電熱線内蔵ヒーター14を平行に並べて埋設した。各々の電熱線内蔵ヒーター14の容量は1200W(仕様電圧220V、重量1.4kg)であった。
【0035】
こうして板状発熱体7を製作し、電流供給配線15から電流を供給して昇温テストを行なったところ、板状発熱体7の最高到達温度は600℃であり、上ノズル2の予熱を行なう際の板状発熱体7の上端面と上ノズル2の下端面との距離を0mmとする(すなわち密着さる)ことで上ノズル2の予熱が可能であることを見出した。
【0036】
次いで、図2に示す予熱装置6を製作して、交換装置5に装着した(図1参照)。引き続き高さ調整ボルト12を操作して、板状発熱体7を上ノズル2に密着させた。
【0037】
こうして予熱装置6を用いて上ノズル2を下側から昇温(通電時間2hr)させた後、高さ調整ボルト12を操作して、板状発熱体7を上ノズル2から離脱させて、交換装置5から取り外した。そして、交換装置5を用いて下ノズル3を上ノズル2の下方に取り付けて、タンディッシュ1に溶鋼を貯留して連続鋳造の操業を開始したところ、ノズル(すなわち上ノズル2および下ノズル3)の閉塞は発生しなかった。
【0038】
引き続き6ケ月間に亘って予熱装置6を用いて連続鋳造の操業を継続したところ、ノズルの閉塞は皆無であり、溶鋼の歩留まり向上に寄与した。また、ノズルの閉塞が発生しないので、タンディッシュ1に貯留する溶鋼の温度を5℃低下させても支障なく操業できた。その結果、溶鋼の成分を調整する精錬工程で溶鋼の温度を低下させることが可能となり、精錬工程における省エネルギーに寄与する効果が得られた。
【符号の説明】
【0039】
1 タンディッシュ
2 上ノズル
3 下ノズル
4 溶鋼
5 交換装置
6 予熱装置
7 板状発熱体
8 上側台座
9 下側台座
10 発熱体固定ボルト
11 台座連結ボルト
12 高さ調節ボルト
13 金属製板状外殻
14 電熱線内蔵ヒーター
15 電流供給配線
20 座金
21 第1ネジ孔
22 第2ネジ孔
23 第3ネジ孔
24 第4ネジ孔
25 カラー摺動孔
26 コンビネーションカラー
図1
図2
図3
図4