IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフトの特許一覧

特許7282741金属錯体及び均一系触媒反応における使用のためのイリド-官能基化ホスファン
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】金属錯体及び均一系触媒反応における使用のためのイリド-官能基化ホスファン
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/54 20060101AFI20230522BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 1/32 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 15/14 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 17/266 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 25/28 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 45/61 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 49/782 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 69/65 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 209/10 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 211/48 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 211/54 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 217/84 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 249/02 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 251/16 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 255/50 20060101ALI20230522BHJP
   C07C 255/58 20060101ALI20230522BHJP
   C07D 213/74 20060101ALI20230522BHJP
   C07D 295/033 20060101ALI20230522BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230522BHJP
   C07F 1/12 20060101ALN20230522BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20230522BHJP
   C07F 15/04 20060101ALN20230522BHJP
【FI】
C07F9/54 CSP
B01J31/24 Z
C07C1/32
C07C15/14
C07C17/266
C07C25/28
C07C45/61
C07C49/782
C07C67/343
C07C69/65
C07C209/10
C07C211/48
C07C211/54
C07C213/02
C07C217/84
C07C249/02
C07C251/16
C07C253/30
C07C255/50
C07C255/58
C07D213/74
C07D295/033
C07B61/00 300
C07F1/12
C07F15/00 C
C07F15/04
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2020506938
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2018071550
(87)【国際公開番号】W WO2019030304
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】102017213817.3
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトーリア・デッシュライン-ゲスナー
(72)【発明者】
【氏名】トーステン・シャープ
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】Zeitschrift fur Naturforschung, Teil B: Anorganische Chemie, Organische Chemie,1978年,33B(4),p.396-398
【文献】Journal of the Chemical Society, Dalton Transactions : Inorganic chemistry,1983年,(11),p.2487-2493
【文献】Zhurnal Obshchei Khimii,1975年,45(3),p.704-705
【文献】ARKIVOC,2012年,2012(3),p.210-225
【文献】Pure and Applied Chemistry,1980年,52(4),p.1057-1062
【文献】Angewandte Chemie,1979年,91(10),p.848-850
【文献】Chemische Berichte,1984年,117(12),p.3374-3380
【文献】Justus Liebigs Annalen der Chemie,1966年,699,p.40-52
【文献】Chemische Berichte,1979年,112(2),p.510-516
【文献】European Journal of Inorganic Chemistry,2007年,(19),p.3083-3090
【文献】Science,2003年,301(5637),p.1223-1225
【文献】Teoreticheskaya i Eksperimental'naya Khimiya,1979年,15(6),p.727-731
【文献】Zhurnal Obshchei Khimii,1979年,49(6),p.1230-1235
【文献】Zeitschrift fur Naturforschung, B: A Journal of Chemical Sciences,1996年,51(2),p.267-276
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/02-9/6596
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は(II)
【化1】
[式中、Onは、ホスホニウム基-P(R3R4R5)(式中、R3、R4及びR5は、C1~6アルキル基、C4~10シクロアルキル基、C6~10アリール基からなる群から独立に選択される)であり、Xは、直鎖、分枝鎖又は環式C1~6アルキル基、C6~10アリール基、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~6アルケニル基、トリアルキルシリル(-SiR3R4R5)、アリールスルホニル(-SO2R12)基からなる群から選択され、R1及びR2は、C6~10アリール基、C1~6アルキル基、又はシクロアルキル基であり、R12はC6~10アリール基である]
によって表される、金属錯体又は金属塩の合成における、ホスファンリガンドの使用であって、
前記金属が、元素周期表の10又は11族の金属である、使用。
【請求項2】
R3、R4及びR5が、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択される、請求項1に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項3】
R3、R4及びR5が、同じであり、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、及びフェニルからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項4】
R 3 、R 4 及びR 5 が、同じであり、シクロヘキシル及びフェニルからなる群から選択される、請求項3に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項5】
Xが、メチル、エチル、シクロヘキシル、フェニル、p-トリル、トリメチルシリル、p-トリルスルホニル、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項6】
R1及びR2が、フェニル、シクロヘキシル、メチル、tert-ブチル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項7】
ホスファンリガンドを有する前記金属錯体及び塩が、均一系触媒反応において使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のホスファンリガンドの、触媒としての使用であって、リガンドが、in situで金属に加えられ、前記金属が、元素周期表の10又は11族の金属である、使用。
【請求項9】
金属の白金、パラジウム及びニッケルが使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項10】
金属の銅、銀及び金が使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項11】
リガンドが、
(i)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロ官能基化反応において;
(ii)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロアミノ化反応において;
(iii)アルキン及びアルケンへの触媒O-H付加反応において;
(iv)触媒カップリング反応において;
(v)触媒鈴木カップリング反応において;
(vi)触媒クロスカップリング反応において;並びに/又は
(vii)触媒Heckカップリング反応、及び薗頭カップリング反応において
使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項12】
リガンドが、
(v)ビアリールの調製のための、触媒鈴木カップリング反応において;
(vi)C-N及びC-Oカップリング反応のための触媒クロスカップリング反応において;並びに/又は
(vii)アリール化オレフィンの調製のための、触媒Heckカップリング反応、及びアリール化及びアルケニル化アルキンの調製のための、薗頭カップリング反応において
使用される、請求項11に記載のホスファンリガンドの使用。
【請求項13】
式(I)又は(II)
【化2】
[式中、Onは、ホスホニウム基-P(R3R4R5)(式中、R3、R4及びR5は、C1~6アルキル基、C4~10シクロアルキル基、C6~10アリール基からなる群から独立に選択される)であり、Xは、直鎖、分枝鎖又は環式C1~6アルキル基、C6~10アリール基、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~6アルケニル基、トリアルキルシリル(-SiR3R4R5)、アリールスルホニル(-SO2R12)基からなる群から選択され、R1及びR2は、C6~10アリール基、C1~6アルキル基又はシクロアルキル基であり、R12はC6~10アリール基である]
のホスファンリガンドを有する、金属錯体であって、
前記金属が、元素周期表の10又は11族の金属である、金属錯体。
【請求項14】
R3、R4及びR5が、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択される、請求項13に記載の金属錯体。
【請求項15】
R3、R4及びR5が、同じであり、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、及びフェニルからなる群から選択される、請求項13又は14に記載の金属錯体。
【請求項16】
R 3 、R 4 及びR 5 が、同じであり、シクロヘキシル、及びフェニルからなる群から選択される、請求項15に記載の金属錯体。
【請求項17】
Xが、メチル、エチル、シクロヘキシル、フェニル、p-トリル、トリメチルシリル、p-トリルスルホニル、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項13から16のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項18】
R1及びR2が、フェニル、シクロヘキシル、メチル、tert-ブチル及びそれらの組合せからなる群から独立に選択される、請求項13から17のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項19】
次の構造(V)又は(VI)
【化3】
[式中、X'は、アニオンであり、
Yは、
【化4】
であり、
On、X、R1、R2は、先行する請求項中で定義され、
R33、R34及びR35は、H、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール及びヘテロアリール基から独立に選択され;又は
R33、R34及びR35のうち少なくとも2つは、5~14個の炭素原子を有する炭素環を形成し、
Arは、置換若しくは非置換のアリール基を示す]
を有するパラジウムアリル錯体である、請求項13から18のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項20】
R33、R34及びR35が、直鎖、分枝鎖又は環式C1~10アルキル基、C 6~14アリール基から選択されるアリール基、C6~14ヘテロアリール基から選択されるヘテロアリール基から独立に選択され、上記の群のすべては、官能基で置換されることができ;並びに/又は
R33、R34及びR35のうちの少なくとも2つが、C4~10シクロアルキル基、又はC6~14アリール基である炭素環を形成し、これは、1つ又は複数の官能基で置換されることができ;並びに
Arが、C6~14アリール基から選択され、上記の群のすべてが、官能基で置換されることができ;並びに
官能基が、アルキル(-R11 )、C6~10アリール(-R12)、ハロゲン(-Hal)、ヒドロキシ(-OH)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR3)、アミノ(-NR11 2、-NHR11、-NH2)、メルカプト(-SH、-SR11)から選択され、R 3 は、C 1-6 アルキル基から選択され、R11は、更なるR11残基とは独立に、C1~6アルキル残基から選択される、
請求項19に記載の金属錯体。
【請求項21】
R 33 、R 34 及びR 35 が、C 1~6 アルキル基又はC 4~10 シクロアルキル基、C 6~10 アリール基から選択されるアリール基、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC 6~10 ヘテロアリール基から選択されるヘテロアリール基から独立に選択され、上記の群のすべては、官能基で置換されることができ;並びに/又は
R 33 、R 34 及びR 35 のうちの少なくとも2つが、C 4~10 シクロアルキル基、又はC 6~14 アリール基である炭素環を形成し、これは、1つ又は複数の官能基で置換されることができ;並びに
Arが、C 6~10 アリール基から選択され、上記の群のすべてが、官能基で置換されることができ;並びに
官能基が、C 1~6 アルキル基、C 6~10 アリール(-R 12 )、ハロゲン(-Hal)、ヒドロキシ(-OH)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR 3 )、アミノ(-NR 11 2 、-NHR 11 、-NH 2 )、メルカプト(-SH、-SR 11 )から選択され、R 3 は、C 1-6 アルキル基から選択され、R 11 は、更なるR 11 残基とは独立に、C 1~6 アルキル残基から選択される、
請求項20に記載の金属錯体。
【請求項22】
X'が、ハロゲン、トシレート、ノシレート及びメシレートの群から選択される、請求項19~21のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項23】
X'が、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トシレート、ノシレート及びメシレートの群から選択され、且つ/又はアリールが、フェニル、m-トリル、p-トリル、o-トリル、メシチル、1,3-ジイソプロピルフェニルから選択される、請求項19から21のいずれか一項に記載の金属錯体。
【請求項24】
カップリング反応を行うための方法であって、
- 少なくとも1種の基質、カップリングパートナー、及び請求項13から23のいずれか一項に記載の金属錯体を含有する反応混合物を用意する工程と;
- 金属錯体又はその誘導体の存在下で、前記基質を前記カップリングパートナーと反応させて、カップリング生成物を形成させる工程と
を含む、方法。
【請求項25】
前記金属錯体の金属が、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
基質が、置換芳香族化合物である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記置換芳香族化合物が、芳香族又は複素環式芳香族化合物である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記置換芳香族化合物が、脱離基、又は不飽和脂肪族基、又は脱離基で置換される、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記脱離基が、ハロゲン、トシレート、ノシレート及びメシレートからなる群から選択され、且つ/又は前記不飽和脂肪族基がアルケン又はアルキンからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
カップリングパートナーが、有機金属化合物を含む、請求項24から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記有機金属化合物が、有機ホウ素化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物、有機リチウム化合物、及びグリニャール化合物からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記有機金属化合物が、少なくとも1種の芳香族残基を含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記有機金属化合物が、少なくとも1種の不飽和脂肪族残基を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記有機金属化合物が、少なくとも1種の飽和脂肪族残基を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
カップリング反応が、
(i)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロ官能基化反応;
(ii)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロアミノ化反応;
(iii)アルキン及びアルケンへの触媒O-H付加反応;
(iv)触媒カップリング反応;
(v)触媒鈴木カップリング反応;
(vi)触媒クロスカップリング反応;並びに/又は
(vii)触媒Heckカップリング反応、並びに薗頭カップリング反応
からなる群から選択することができる、請求項24から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
請求項13に記載の金属錯体を調製するための方法であって、
ホスファンリガンドが、以下の工程:
(a)金属化イリドとハロホスファン、ジハロホスファン若しくは三塩化リンとの反応、
(b)イリド-官能基化ハロホスファン若しくはジハロホスファンと有機金属試薬との反応、
(c)オニウム塩のホスファニル化、塩基の存在下でのハロホスファンによるホスファニル化、又は
(d)塩基によるα-ホスファニル置換オニウム塩の脱プロトン化
を含む工程によって調製される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イリド-官能基化ホスファンリガンド、その調製、及び遷移金属化合物におけるその使用、並びに有機反応中の触媒におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
複合分子の合成は、例えば、医薬、染料、農芸化学、材料等の生産のための製品を調製するための、ファインケミカルズ産業における主な課題である。官能基化反応についての触媒方法は、その中で、例えば、カップリング反応(鈴木、Heck、薗頭等)又はオレフィン、アリール、若しくはアルキンの誘導体化のためのヒドロ官能基化(ヒドロアミノ化、ヒドロシリル化等)を頻繁に要する。かかる触媒作用は、使用される金属及びリガンドにより重大な影響を受ける。
【0003】
ホスファンは、その中でもとりわけ、触媒作用において最も頻繁に用いられるリガンドである。それらの電子及び立体パラメータを調整することは、触媒の活性を増加させる、選択性を決定する及び基質の多様性を拡大することを可能にするために重大な意味を持つ(A.C.Hillierら、Organometallics、22巻:4322(2003年);H.Clavierら.Chem.Commun.、46巻:841(2010年);Z.L.Niemeyer、A.Milo、D.P.Hickey、M.S.Sigman、Nature Chem.8巻:610(2016年);C.A.Tolman、Chem.Rev.77巻、313(1977年);G.Frenking、Organometallics、28巻、3901(2009年))。ホスファンの可変性及びそれらの電子及び立体特性を操作する可能性は、多くの他のリガンド系と比較して、それらの使用の好みを実証している。したがって、ホスファンは、広範囲な反応、例えば、パラジウム触媒カップリング反応(M.A.Wunscheら、Angew.Chem.Int.Ed.、54巻、11857(2015年);D.S.Surryら、Angew.Chem.Int.Ed.、47巻、6338(2008年);R.Martinら、Acc.Chem.Res.、41巻、1461(2008年);S.Kothaら、Tetrahedron、58巻、9633(2002年))、又は金触媒ヒドロアミノ化反応((Lavallo, V.ら;Angew.Chem.、Int.Ed.、52巻、3172(2013年);E.Mizushimaら、Org.Lett.、5巻、3349(2003年);Y.Wangら、Nature.Commun.、1巻(2014年))において使用される。新規な活性触媒系は、とりわけ、アダマンチル官能基化ホスファン(DE-A-10037961、WO02/10178、L.Chenら、J.Am.Chem.Soc.、138巻、6392(2016年);C.A.Fleckensteinら、Chem.Soc.Rev.、39巻、694(2010年);K.A.Agnew-Francisら、Adv.Synth.Catal.、358巻、675(2016年))、又はビアリールホスファンリガンド(US6,307,087、D.S.Surryら、Angew.Chem.、120巻、6438(2008年);Angew.Chem.Int.Ed.、47巻、6338(2008年);R.A.Altmanら、Nat.Protoc.、2巻、3115(2007年);D.S.Surryら、Chem.Sci.、2巻、27頁(2011年);E.J.Choら、Science、328巻、1679(2010年);D.A.Watsonら、Science、325巻、1661(2009年))に基づいている。ホスファンリガンドによる重要な均一系触媒反応の調査は、例えば、B.Cornils、W.A.Hermann、Applied Homogenous Catalysis with Organometallic Compounds、Vol 12、VCH、Weinheim、1996年において見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】DE-A-10037961
【文献】WO02/10178
【文献】US6,307,087
【非特許文献】
【0005】
【文献】A.C.Hillierら、Organometallics、22巻:4322(2003年)
【文献】H.Clavierら.Chem.Commun.、46巻:841(2010年)
【文献】Z.L.Niemeyer、A.Milo、D.P.Hickey、M.S.Sigman、Nature Chem.8巻:610(2016年)
【文献】C.A.Tolman、Chem.Rev.77巻、313(1977年)
【文献】G.Frenking、Organometallics、28巻、3901(2009年))
【文献】M.A.Wunscheら、Angew.Chem.Int.Ed.、54巻、11857(2015年)
【文献】D.S.Surryら、Angew.Chem.Int.Ed.、47巻、6338(2008年)
【文献】R.Martinら、Acc.Chem.Res.、41巻、1461(2008年)
【文献】S.Kothaら、Tetrahedron、58巻、9633(2002年)
【文献】Lavallo, V.ら;Angew.Chem.、Int.Ed.、52巻、3172(2013年)
【文献】E.Mizushimaら、Org.Lett.、5巻、3349(2003年)
【文献】Y.Wangら、Nature.Commun.、1巻(2014年)
【文献】L.Chenら、J.Am.Chem.Soc.、138巻、6392(2016年)
【文献】C.A.Fleckensteinら、Chem.Soc.Rev.、39巻、694(2010年)
【文献】K.A.Agnew-Francisら、Adv.Synth.Catal.、358巻、675(2016年)
【文献】D.S.Surryら、Angew.Chem.、120巻、6438(2008年)
【文献】Angew.Chem.Int.Ed.、47巻、6338(2008年)
【文献】R.A.Altmanら、Nat.Protoc.、2巻、3115(2007年)
【文献】D.S.Surryら、Chem.Sci.、2巻、27頁(2011年)
【文献】E.J.Choら、Science、328巻、1679(2010年)
【文献】D.A.Watsonら、Science、325巻、1661(2009年)
【文献】B.Cornils、W.A.Hermann、Applied Homogenous Catalysis with Organometallic Compounds、Vol 12、VCH、Weinheim、1996年
【文献】T.Scherpfら、Angew.Chem.Int.Ed.、54巻、8542(2015年)
【文献】Bestmann、H.J.ら;Angew.Chem.Int.Ed.、26巻、79頁(1987年)
【文献】Houben-Weyl、Methoden der organischen Chemie、1963年、volume XII、1 S33
【文献】D.Malhotraら、Angew.Chem.Int.Ed.、53巻、4456(2014年)
【文献】E.Mizushimaら、Org.Lett.、5巻、3349(2003年)
【文献】J.Langerら、ARKIVOC、3巻、210頁(2012年)
【文献】M.N.Albertiら、Org.Lett.、10巻、2465(2008年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リガンド設計は、反応を可能にするために、又は所望の方向に、これらを導くことが可能である触媒反応において決定的に重要である。したがって、例えば、新たなホスファンリガンドの開発は、より対費用効果の高い出発基質(例えば、ヨウ化物の代わりに塩化物)、より高い触媒生産性及び活性、並びにより広域な基質及び反応多様性を実現するためにしばしば求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
態様(1):式YPR1R2(I)、Y2PR1(II)及びY3P(III)
【0008】
【化1】
【0009】
Y=
【0010】
【化2】
【0011】
[式中、
Yは、カルバニオン中心を通してリン原子に結合されており且つオニウム基On及びX基を有するイリド置換基を表し、
Onは、他のイリド置換基におけるオニウム基のOnとは独立に、ホスホニウム基-P(R3R4R5)、アンモニウム基-N(R3R4R5)、スルホキソニウム基-SOR3R4及びスルホニウム基-S(R3R4)から選択され、
Xは、他のイリド置換基におけるX基とは独立に、水素、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール、アルケニル及びヘテロアリール基、シリル(-SiR3R4R5)、スルホニル(-SO2R3)、ホスホリル(-P(O)R3R4、-P(S)R3R4、-P(NR3)R4R5 2)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR3)及びアミノ(-NR3R4)基から選択され、
R1、R2、R3、R4及びR5は、存在する場合、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール及びヘテロアリール基から独立に選択され、ただし、Xが水素又はトリメチルシリルであり且つZがトリメチルホスホニウムである場合、R1及びR2はメチルでない、又はXがp-トルイルスルホニル(-SO2(p-トルイル))であり且つZがトリフェニルホスホニウムである場合、R1及びR2はフェニルでない]
のホスファンリガンド。
【0012】
2.(i)アルキル基が、直鎖、分枝鎖又は環式C1~10アルキル基から選択され、C1~6アルキル基又はC4~10-シクロアルキル基から好ましくは選択され、アリール基が、C6~14アリール基、好ましくは、C6~10アリール基から選択され、アルケニル基が、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~10アルケニル基から選択され、好ましくは、C2~6アルケニル基から選択され、ヘテロアリール基が、C6~14ヘテロアリール基から選択され、好ましくは、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC6~10ヘテロアリール基から選択され;且つ/又は(ii)官能基が、アルキル(-R11)、特に、C1~6アルキル基、C6~10アリール(-R12)、ハロゲン(-Hal)、ヒドロキシ(-OH)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR3)、アミノ(-NR11 2、-NHR11、-NH2)、メルカプト(-SH、-SR11)から選択され、R11は、更なるR11残基とは独立に、C1~6アルキル残基から選択される、項目1に記載のホスファンリガンド。
【0013】
3.式(I)又は(II)
【0014】
【化3】
【0015】
[式中、Onは、ホスホニウム基-P(R3R4R5)(式中、R3、R4及びR5は、C1~6アルキル基、C4~10シクロアルキル基、C6~10アリール基からなる群から独立に選択される)であり、Xは、直鎖、分枝鎖又は環式C1~6アルキル基、C6~10アリール基、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~6アルケニル基、トリアルキルシリル(-SiR3R4R5)、アリールスルホニル(R12-SO2R3)基からなる群から選択され、R1及びR2は、C6~10アリール基又はC1~6アルキル及びシクロアルキル基である]
によって表される、項目1又は2に記載のホスファンリガンド。
【0016】
4.R3、R4及びR5が、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択される、項目1~3のうちの一項又は複数項に記載のホスファンリガンド。
【0017】
5.R3、R4及びR5が、同じであり、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せからなる群から選択され、特に、シクロヘキシル及びフェニルである、項目1~4のうちの一項又は複数項に記載のホスファンリガンド。
【0018】
6.Xが、メチル、エチル、シクロヘキシル、フェニル、p-トリル、トリメチルシリル、p-トリルスルホニル、又はそれらの組合せからなる群から選択される、項目1~5のうちの一項又は複数項に記載のホスファンリガンド。
【0019】
7.R1及びR2が、フェニル、シクロヘキシル、メチル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択される、項目1~6のうちの一項又は複数項に記載のホスファンリガンド。
【0020】
態様(2):
8.項目1~3のいずれか一項に記載のホスファンリガンドを調製するための方法であって、
(a)金属化イリドとハロホスファン、ジハロホスファン若しくは三塩化リンとの反応、
(b)イリド-官能基化ハロホスファン若しくはジハロホスファンと有機金属試薬との反応、
(c)オニウム塩のホスファニル化(phosphanylation)、塩基の存在下でのハロホスファンによるホスファニル化、又は
(d)塩基によるα-ホスファニル置換オニウム塩の脱プロトン化
を含む、方法。
【0021】
態様(3):
9.金属錯体又は金属塩の合成における、項目1~3のいずれか一項に記載のホスファンリガンドの使用。
【0022】
10.前記金属錯体又は金属塩が、貴金属若しくは遷移金属錯体又は貴金属若しくは遷移金属化合物である、項目9に記載の使用。
【0023】
11. 項目1~7のいずれか一項に記載のホスファンリガンドを有する前記金属、貴金属又は遷移金属錯体及び塩が、均一系触媒反応において使用される、項目9又は10に記載の使用。
【0024】
態様(4):
12.金属、貴金属若しくは遷移金属錯体又は金属、貴金属若しくは遷移金属塩と組み合わせた項目1~7のいずれか一項に記載のホスファンリガンドの、触媒としての使用であって、リガンドが、in situで金属、貴金属又は遷移金属前駆化合物に加えられる、又は態様(3)に記載のホスファンリガンドの、単離した金属、貴金属又は遷移金属錯体が使用される、使用。
【0025】
13.金属の白金、パラジウム及びニッケル、好ましくは、パラジウムが使用される、項目9~12に記載の使用。
【0026】
14.金属の銅、銀及び金、好ましくは、金が使用される、項目9~13に記載の使用。
【0027】
15.リガンドが、
(i)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロ官能基化反応において;
(ii)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロアミノ化反応において;
(iii)アルキン及びアルケンへの触媒O-H付加反応において;
(iv)触媒カップリング反応において;
(v)特にビアリールの調製のための、触媒鈴木カップリング反応において;
(vi)触媒クロスカップリング反応、特に、C-N及びC-Oカップリング反応において;並びに/又は
(vii)特にアリール化オレフィンの調製のための、触媒Heckカップリング反応、並びに特にアリール化及びアルケニル化アルキンの調製のための、薗頭カップリング反応において
使用される、項目9~14に記載の使用。
【0028】
態様(5):
16.式YPR1R2(I)、Y2PR1(II)及びY3P(III)
【0029】
【化4】
【0030】
Y=
【0031】
【化5】
【0032】
[式中、
Yは、カルバニオン中心を通して、リン原子に結合されており且つオニウム基On及びX基を有するイリド置換基を表し、
Onは、他のイリド置換基におけるオニウム基のOnとは独立に、ホスホニウム基-P(R3R4R5)、アンモニウム基-N(R3R4R5)、スルホニウム基-SOR3R4及びスルホニウム基-S(R3R4)から選択され、
Xは、他のイリド置換基におけるX基とは独立に、水素、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール、アルケニル及びヘテロアリール基、シリル(-SiR3 3R4R5)、スルホニル(-SO2R3)、ホスホリル(-P(O)R3R4、-P(S)R3R4、-P(NR3)R4R5 2)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR)及びアミノ(-NR2)基から選択され、
R1、R2、R3、R4及びR5は、存在する場合、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール及びヘテロアリール基から独立に選択され、ただし、Xが水素又はトリメチルシリルであり且つZがトリメチルホスホニウムである場合、R1及びR2はメチルでない、又はXがp-トルイルスルホニル(-SO2(p-トルイル))であり且つZがトリフェニルホスホニウムである場合、R1及びR2はフェニルでない]
のホスファンリガンドを含む金属錯体。
【0033】
17.(i)アルキル基が、直鎖、分枝鎖又は環式C1~10アルキル基から選択され、C1~6アルキル基又はC4~10-シクロアルキル基から好ましくは選択され、アリール基が、C6~14アリール基、好ましくは、C6~10アリール基から選択され、アルケニル基が、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~10アルケニル基から選択され、好ましくは、C2~6アルケニル基から選択され、ヘテロアリール基が、C6~14ヘテロアリール基から選択され、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC6~10ヘテロアリール基から好ましくは選択され;且つ/又は(ii)官能基が、アルキル(-R11)、特に、C1~6アルキル基、C6~10アリール(-R12)、ハロゲン(-Hal)、ヒドロキシ(-OH)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR3)、アミノ(-NR11 2、-NHR11、-NH2)、メルカプト(-SH、-SR11)から選択され、独立に、更なるR11残基のR11が、C1~6アルキル残基から選択される、項目16に記載の金属錯体。
【0034】
18.式(I)又は(II)
【0035】
【化6】
【0036】
[式中、Onは、ホスホニウム基-P(R3R4R5)(式中、R3、R4及びR5は、C1~6アルキル基、C4~10シクロアルキル基、C6~10アリール基からなる群から独立に選択される)であり、Xは、直鎖、分枝鎖又は環式C1~6アルキル基、C6~10アリール基、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~6アルケニル基、トリアルキルシリル(-SiR3R4R5)、アリールスルホニル(R12-SO2R3)基からなる群から選択され、R1及びR2は、C6~10アリール基又はC1~6アルキル及びシクロアルキル基である]
のホスファンリガンドを有する、項目16又は17に記載の金属錯体。
【0037】
19.R3、R4及びR5が、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択される、上記項目のうちの一項又は複数項に記載の金属錯体。
【0038】
20.R3、R4及びR5が、同じであり、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せからなる群から選択され、特に、シクロヘキシル及びフェニルである、項目16~19のうちの一項又は複数項に記載の金属錯体。
【0039】
21.Xが、メチル、エチル、シクロヘキシル、フェニル、p-トリル、トリメチルシリル、p-トリルスルホニル、又はそれらの組合せからなる群から選択される、項目16~20のうちの一項又は複数項に記載の金属錯体。
【0040】
22.R1及びR2が、フェニル、シクロヘキシル、メチル、tert-ブチル及びそれらの組合せからなる群から独立に選択される、項目16~21のうちの一項又は複数項に記載の金属錯体。
【0041】
23.前記錯体が、次の構造(V)又は(VI)
【0042】
【化7】
【0043】
[式中、Xは、アニオンであり、
Y、R1、R2は、先行する項目中で定義され、
R33、R34及びR35は、H、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール及びヘテロアリール基から独立に選択され;又は
R33、R34及びR35のうち少なくとも2つは、5~14個の炭素原子を有する炭素環を形成し、Arは、置換若しくは非置換の、特に、置換アリール基を表す]
を有するパラジウムアリル錯体である、項目18~22に記載の金属錯体。
【0044】
24.R33、R34及びR35が、直鎖、分枝鎖又は環式C1~10アルキル基、好ましくは、C1~6アルキル基又はC4~10-シクロアルキル基から独立に選択され、アリール基が、C6~14アリール基、好ましくは、C6~10アリール基から選択され、アルケニル基が、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~10アルケニル基、好ましくは、C2~6アルケニル基から選択され、ヘテロアリール基が、C6~14ヘテロアリール基、好ましくは、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC6~10ヘテロアリール基から選択され、前述の基のすべてが、官能基で置換することができ;且つ/又はR33、R34及びR35のうちの少なくとも2つが、C4~10シクロアルキル基、又はC6~14アリール基である炭素環を形成し、これは、1つ又は複数の官能基で置換することができ;Arが、C6~14アリール基、好ましくは、C6~10アリール基から選択され、ヘテロアリール基が、C6~14ヘテロアリール基、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC6~10ヘテロアリール基から好ましくは、選択され、前述の基のすべてが、官能基で置換することができ;官能基が、アルキル(-R11)、特に、C1~6アルキル基、C6~10アリール(-R12)、ハロゲン(-Hal)、ヒドロキシ(-OH)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR3)、アミノ(-NR11 2、-NHR11、-NH2)、メルカプト(-SH、-SR11)から選択され、R11は、更なるR11残基とは独立に、C1~6アルキル残基から選択される、項目23に記載の金属錯体。
【0045】
25.Xが、ハロゲン、トシレート、ノシレート及びメシレートの群から選択される、項目23又は24に記載の金属錯体。
【0046】
26.Xが、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トシレート、ノシレート及びメシレートの群から選択され、且つ/又はアリールが、フェニル、m-トリル、p-トリル、o-トリル、メシチル、1,3-ジイソプロピルフェニルから選択される、項目16~25のうちの一項又は複数項に記載の金属錯体。
【0047】
27.カップリング反応を行うための方法であって、
- 少なくとも1種の基質、カップリングパートナー、及び項目16~26に記載の金属錯体、又は項目1に記載のリガンドを含む金属錯体を含有する反応混合物を用意する工程と;
- 金属錯体又はその誘導体の存在下で、前記基質を前記カップリングパートナーと反応させて、カップリング生成物を形成させる工程と
を含む、方法。
【0048】
28.前記金属錯体の金属が、貴金属及び/又は遷移金属である、項目27に記載の方法。
【0049】
29.前記金属錯体の金属が、元素周期表の10又は11族の金属である、項目27又は28に記載の方法。
【0050】
30.前記金属錯体の金属が、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、及びそれらの組合せからなる群から選択される、項目27~29の一項又は複数項に記載の方法。
【0051】
31.基質が、置換芳香族化合物である、項目27~30の一項又は複数項に記載の方法。
【0052】
32.前記置換芳香族化合物が、芳香族又は複素環式芳香族化合物である、項目31に記載の方法。
【0053】
33.前記置換芳香族化合物が、脱離基、又は不飽和脂肪族基、又は脱離基で置換される、項目31又は32に記載の方法。
【0054】
34.前記脱離基が、ハロゲン、トシレート、ノシレート及びメシレートからなる群から選択され、且つ/又は前記不飽和脂肪族基が、特に、2~12個、特に、2~8個の炭素原子を有する、アルケン又はアルキンからなる群から選択される、項目33に記載の方法。
【0055】
35.カップリングパートナーが、有機金属化合物を含む、項目27~34のうちの一項又は複数項に記載の方法。
【0056】
36.前記有機金属化合物が、有機ホウ素化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物、有機リチウム化合物、及びグリニャール化合物からなる群から選択される、項目35に記載の方法。
【0057】
37.有機金属化合物が、少なくとも1種の芳香族残基を含む、項目35又は36に記載の方法。
【0058】
38.前記有機金属化合物が、少なくとも1種の不飽和脂肪族残基を含む、項目36に記載の方法。
【0059】
39.前記有機金属化合物が、少なくとも1種の飽和脂肪族残基を含む、項目36に記載の方法。
【0060】
40.カップリング反応が、
(i)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロ官能基化反応;
(ii)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロアミノ化反応;
(iii)アルキン及びアルケンへの触媒O-H付加反応;
(iv)触媒カップリング反応;
(v)特にビアリールの調製のための、触媒鈴木カップリング反応;
(vi)触媒クロスカップリング反応、特に、C-N及びC-Oカップリング反応;並びに/又は
(vii)特にアリール化オレフィンの調製のための、触媒Heckカップリング反応、並びに特にアリール化及びアルケニル化アルキンの調製のための、薗頭カップリング反応
からなる群から選択することができる、項目27~39の一項又は複数項に記載の方法。
【0061】
41.(i)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロ官能基化反応;
(ii)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロアミノ化反応;
(iii)アルキン及びアルケンへの触媒O-H付加反応;
(iv)触媒カップリング反応;
(v)特に、ビアリールの調製用の触媒鈴木カップリング反応;
(vi)触媒クロスカップリング反応、特に、C-N及びC-Oカップリング反応;並びに/又は
(vii)特にアリール化オレフィンの調製のための、触媒Heckカップリング反応、並びに特にアリール化及びアルケニル化アルキンの調製のための、薗頭カップリング反応
からなる群から選択することができる、均一系触媒反応中、有利には、カップリング反応における項目16~26に記載の金属錯体の使用。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に記載されるリン原子及びそれらの遷移金属錯体へのα-位においてカルバニオン炭素中心を有する式(I)、(II)及び(III)のイリド-官能基化ホスファンリガンドが、上記の目的を達成するということが現在判明している。
【0063】
したがって、本発明は、
(1)式YPRR'(I)、Y2PR(II)及びY3P(III)
【0064】
【化8】
【0065】
Y=
【0066】
【化9】
【0067】
[式中、
Yは、カルバニオン中心を通してリン原子に結合されており且つオニウム基On及びX基を有するイリド置換基を表し、
Onは、他のイリド置換基におけるオニウム基のOnとは独立に、ホスホニウム基-PRR'2、アンモニウム基-NRR'2、スルホキソニウム基-SOR2及びスルホニウム基-SRR'から選択され、
Xは、他のイリド置換基におけるX基とは独立に、水素、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール、アルケニル及びヘテロアリール基、シリル(-SiR3)、スルホニル(-SO2R)、ホスホリル(-P(O)R2、-P(S)R2、-P(NR)R2)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR)及びアミノ基(-NR2)から選択され、
R及びR'は、存在する場合、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール及びヘテロアリール基から独立に選択される]
のホスファンリガンド;
(2)態様(1)に記載のホスファンリガンドを調製する方法であって、
(a)金属化イリドとハロホスファン、ジハロホスファン若しくは三塩化リンとの反応、
(b)イリド-官能基化ハロホスファン若しくはジハロホスファンと有機金属試薬との反応、
(c)オニウム塩のホスファニル化、塩基の存在下でのハロホスファンによるホスファニル化、又は
(d)塩基によるα-ホスファニル置換オニウム塩の脱プロトン化
を含む、方法;
(3)遷移金属錯体又は遷移金属塩の合成における態様(1)に記載のホスファンリガンドの使用;及び
(4)遷移金属錯体又は遷移金属塩と組み合わせた態様(1)に記載のホスファンリガンドの、触媒としての使用であって、これらのリガンドが、in situで遷移金属前駆化合物に加えられ、又は態様(3)に従って得られるホスファンリガンドの、単離された遷移金属錯体が使用される、使用
に関する。
【0068】
本発明の態様(1)は、式YPRR'(I)、Y2PR(II)及びY3P(III)のホスファンリガンドを提供する。
【0069】
【化10】
【0070】
以下において、イリド置換基は、しばしば、Yと略される、すなわち、
【0071】
【化11】
【0072】
Y=
【0073】
【化12】
【0074】
である。
【0075】
式中で、R及びR'は、更に、官能基(例えば、アミン、エーテル)を有する又は有さないアルキル、アリール及び複素環式芳香族残基を示す。
【0076】
「On」は、正電荷を有する置換基、例えば、オニウム基、主に、ホスホニウム基-PRR'2、アンモニウム-NRR'2、スルホキソニウム基-SOR2、又はスルホニウム基-SRR'を表す。リン原子に直接結合される炭素原子は、形式的に負電荷を有する。
【0077】
Xは、更なる官能基を有する又は有さないアルキル、アリール又はアルケニル基、複素環式芳香族、並びに水素又は官能基、例えば、シリル、スルホニル(-SO2R(式中、R=アルキル、アリールである))、ホスホリル(-P(O)R2、-P(S)R2、-P(NR)R2)、-CN、アルコキシ(-OR)、アミノ(-NR2)を表し、残基Rは、常に、アルキル及びアリール残基を含む。
【0078】
好ましくは、アルキル基は、直鎖、分枝鎖又は環式C1~10アルキル基、好ましくは、C1~6アルキル基から選択され、アリール基は、C6~14アリール基、好ましくは、C6~10アリール基から選択され、アルケニル基は、一価-若しくは多価不飽和の、直鎖、分枝鎖又は環式C2~10アルケニル基、好ましくは、C2~6アルケニル基から選択され、ヘテロアリール基は、C4~14ヘテロアリール基、好ましくは、B、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC6~10ヘテロアリール基から選択される。官能基は、アルキル(-R'')、ペルフルオロアルキル(-CxF2x+1(式中、x=1~6である)、例えば、-CF3、-C2F5等)、ハロゲン(-Hal)、ヒドロキシ(-OH)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR'')、カルボニル(-CO2H、-CO2R''、-COR''、-CONHR'')、アミノ(-NR''2、-NHR''、-NH2)、アミド(-NHCOR''、-NHSO2R'')、メルカプト(-SH、-SR'')、スルホニル(-SO3H、-SO2R'')、リン(-PR''3、-P(O)R''2、-P(S)R''2、-P(NR)R''2)、シリル(-SiR''3)及びニトロ基から選択され、独立に、更なるR''残基のR''は、C1~6アルキル及びC6~14アリール残基から選択されることが更に好ましい。
【0079】
単純なイリド置換の他に、ホスファンはまた、2重に及び3重にイリド-置換して、式(II)Y2PR及び(III)Y3Pのホスファンを得ることもできる。態様(1)の好ましい実施形態は、式(I)
【0080】
【化13】
【0081】
[式中、Onは、トリアリールホスホニウム基、特に、トリフェニルホスホニウム基であり、Xは、トリアルキルシリル、シアノ(-CN)、メチル又はアリールスルホニル基、特に、トリメチルシリル又はp-トリルスルホニル基であり、R及びR'は、アリール又はアルキル基、特に、フェニル、シクロヘキシル又はメチル基である]
のホスファンリガンドである。
【0082】
本発明の態様(2)は、本発明によるイリド-官能基化ホスファンリガンドの調製に関する。これらは、2つの代替の合成経路を介して合成することができ、これによって、置換パターンの広範な変化が可能になる。すなわち、合成は、α-金属化イリドによって達成することができ、これを、対応するクロロホスファン(経路A)と、又はα-ホスファニル-置換ホスホニウム塩(経路B)のα-脱プロトン化によって、反応させる。
【0083】
経路A:経路Aのために必要とされるα-金属化イリドは、金属塩基、例えば、有機リチウム化合物又はアルカリ金属アミド等による古典的イリドの脱プロトン化により調製することができる(T.Scherpfら、Angew.Chem.Int.Ed.、54巻、8542(2015年);Bestmann、H.J.ら;Angew.Chem.Int.Ed.、26巻、79頁(1987年))。RR'PClタイプ(R、R'=アルキル、アリール残基)のクロロホスファンとのその反応は、直接の経路において、イリド-官能基化ホスファンを生成する。三塩化リンが、用いられる場合、YPCl2タイプの、イリド-官能基化クロロホスファンはまた、調製することができ、これを、更なる工程において、有機金属試薬(又は有機リチウム、有機マグネシウム及び有機亜鉛試薬)と反応させて、アルキル/アリールホスファンを形成することができる。金属塩基とのクロロホスファンの反応は、例えば、Houben-Weyl、Methoden der organischen Chemie、1963年、volume XII、1 S33に記載されている。三塩化リン及びジクロロホスファンの使用によって、やはりイリド-置換ホスファンを増加させる手段が可能になる。
【0084】
経路B:調製方法Bは、経路Aへの実用的な代替であり、これによって、感受性の金属化された中間体の単離を回避される。古典的なオニウム塩から進行して、ホスファン部分の導入は、塩基の存在下でハロホスファンを用いることにより行われる。過剰量の塩基が用いられる場合、イリド-官能基化ホスファンの形成は、直接の経路で達成される。したがって、本方法によって、容易に利用可能な出発物質からの又は市販の前駆物質からのリガンドの調製が可能になる。
【0085】
新規なホスファンは、遷移金属化合物と反応させて、例えば、金属Ni、Pd、Pt、Rh、Ir、Cu及びAuの化合物と対応する錯体を形成する。これらの錯体は、固体として単離することも、in situで生成することもでき、更に触媒の適用のために用いることができる。これらの錯体において、ホスファンリガンドによって、ドナーの能力が、古典的なホスファンリガンドの能力を超える非常に強力なドナーリガンドであることが証明される。これは、Tolmanパラメータ(TEP)によって、すなわち、赤外分光法及び対応するRh(acac)(CO)L複合体(L=ホスファンリガンドであり、acac=アセチルアセトナトである)におけるCO伸縮振動の決定によって実証され得る(C.A.Tolman、Chem.Rev.77巻、313頁(1977年))。
【0086】
イリド-官能基化ホスファンリガンドの遷移金属錯体を、異なる均一に触媒される反応において、例えば、パラジウム触媒カップリング反応(例えば、C-C-、C-O、C-Nカップリング)、及び金触媒ヒドロアミノ化反応において使用される。これらの反応において、これらは、一般のホスファンリガンドと類似の錯体のそれを超える異常に高い活性を示す。したがって、アルキンの金触媒ヒドロアミノ化において、高い変換率が、既に室温で観察される。部分的に、10,000を超えるTONは、達成される。他のホスファンリガンドとの類似の反応は、通常、添加物の更なる追加のより高い反応温度を要する(D.Malhotraら、Angew.Chem.Int.Ed.、53巻、4456(2014年);E.Mizushimaら、Org.Lett.、5巻、3349(2003年))。更に、これらの系は、触媒作用が、更なる予備的保護手段を取らずにやはり行われ得るように、水及び大気の酸素によって極めて頑強であることが部分的に証明された。これらの系は、例えば、フェニルアセチレンの自己触媒されたヒドロアミノ化に適用し、これは、水の存在下でも、触媒活性のいかなる減少も示さなかった。パラジウム触媒カップリング及びクロスカップリング反応の場合では、比較的穏やかな反応条件は、適用されることもあり、アリール塩化物の更なるカップリングを実現し得る。例えば、C-Nカップリング反応の場合では、高い変換率は、異なる基質であっても、室温で既に達成し得る。
【0087】
したがって、本発明は、式YPR1R2(I)、Y2PR1(II)及びY3P(III)
【0088】
【化14】
【0089】
Y=
【0090】
【化15】
【0091】
[式中、
Yは、カルバニオン中心を通してリン原子に結合されており且つオニウム基On及びX基を有するイリド置換基を表し、
Onは、他のイリド置換基におけるオニウム基のOnとは独立に、ホスホニウム基-P(R3R4R5)、アンモニウム基-N(R3R4R5)、スルホキソニウム基-SOR3R4及びスルホニウム基-S(R3R4)から選択され、
Xは、他のイリド置換基におけるX基とは独立に、水素、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール、アルケニル及びヘテロアリール基、シリル(-SiR3R4R5)、スルホニル(-SO2R3)、ホスホリル(-P(O)R3R4、-P(S)R3R4、-P(NR3)R4R5 2)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR3)及びアミノ(-NR3R4)基から選択され、
R1、R2、R3、R4及びR5は、存在する場合、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール及びヘテロアリール基から独立に選択され;
特に、ただし、Xが水素又はトリメチルシリルであり且つZがトリメチルホスホニウムである場合、R1及びR2はメチルでない、又はXがp-トルイルスルホニル(-SO2(p-トルイル))であり且つZがトリフェニルホスホニウムである場合、R1及びR2はフェニルでない]
のホスファンリガンドに関する。
【0092】
これらのリガンドにおいて、
(i)アルキル基は、直鎖、分枝鎖又は環式C1~10アルキル基、好ましくは、C1~6アルキル基から選択され、アリール基は、C6~14アリール基、好ましくは、C6~10アリール基から選択され、アルケニル基は、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~10アルケニル基、好ましくは、C2~6アルケニル基から選択され、ヘテロアリール基は、C6~14ヘテロアリール基、好ましくは、B、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC6~10ヘテロアリール基から選択される、並びに/又は
(ii)官能基は、アルキル(-R11)、ペルフルオロアルキル(-CxF2x+1(式中、x=1~6である)、例えば、-CF3、-C2F5等)、ハロゲン(-Hal)、ヒドロキシ(-OH)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR'')、カルボニル(-CO2H、-CO2R''、-COR''、-CONHR'')、アミノ(-NR''2、-NHR''、-NH2)、アミド(-NHCOR''、-NHSO2R'')、メルカプト(-SH、-SR'')、スルホニル(-SO3H、-SO2R'')、リン(-PR''3、-P(O)R''2、-P(S)R''2、-P(NR)R''2)、シリル(-SiR''3)及びニトロ基から選択され、独立に、更なるR''残基のR''は、C1~6アルキル及びC6~14アリール残基から選択される。
【0093】
特定の実施形態は、式(I)又は(II)
【0094】
【化16】
【0095】
[式中、Onは、ホスホニウム基-P(R3R4R5)(式中、R3、R4及びR5は、C1~6アルキル基、C4~10シクロアルキル基、C6~10アリール基からなる群から独立に選択される)であり、Xは、直鎖、分枝鎖又は環式C1~6アルキル基、C6~10アリール基、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~6アルケニル基、トリアルキルシリル(-SiR3R4R5)、アリールスルホニル(R12-SO2R3)基からなる群から選択され、R1及びR2は、C6~10アリール基又はC1~6アルキル及びシクロアルキル基である]
によって表されるホスファンリガンドに関する。
【0096】
R3、R4及びR5は、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択することができる。R3、R4及びR5は、同じであっても、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せ、特に、シクロヘキシル及びフェニルからなる群から選択してもよい。
【0097】
Xは、メチル、エチル、シクロヘキシル、フェニル、p-トリル、トリメチルシリル、p-トリルスルホニル、又はそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0098】
R1及びR2は、フェニル、シクロヘキシル、メチル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択することができる。
【0099】
他の実施形態は、
(a)金属化イリドとハロホスファン、ジハロホスファン若しくは三塩化リンとの反応、
(b)イリド-官能基化ハロホスファン若しくはジハロホスファンと有機金属試薬との反応、
(c)塩基の存在下でのハロホスファンによるオニウム塩のホスファニル化、又は
(d)塩基によるα-ホスファニル置換オニウム塩の脱プロトン化
を含む、ホスファンリガンドを調製するための方法に関する。
【0100】
ホスファンリガンドは、金属錯体又は金属塩の合成において用いることができる。
【0101】
特に、これらは、貴金属若しくは遷移金属錯体でも貴金属若しくは遷移金属化合物でもよい。特に、元素周期表の10又は11族の金属は、使用することができる。
【0102】
前述したホスファンリガンドを有する金属、貴金属又は遷移金属錯体及び塩は、均一系触媒反応において使用することができる。
【0103】
特に、態様(3)によるホスファンリガンドは、金属、貴金属若しくは遷移金属錯体、又は金属、貴金属若しくは遷移金属塩と組み合わせて、触媒として使用することができ、リガンドは、in situで金属、貴金属若しくは遷移金属前駆化合物に加えられ、又は態様(3)によるホスファンリガンドの単離した金属、貴金属若しくは遷移金属錯体は、遷移金属錯体又は遷移金属塩の合成において使用することができる。
【0104】
一実施形態では、金属の白金、パラジウム及びニッケル、好ましくは、パラジウムは、使用することができる。
【0105】
他の実施形態では、金属の銅、銀及び金、好ましくは、金は、使用することができる。
【0106】
上記の使用において、リガンドは、
(i)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロ官能基化反応において;
(ii)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロアミノ化反応において;
(iii)アルキン及びアルケンへの触媒O-H付加反応において;
(iv)触媒カップリング反応において;
(v)特にビアリールの調製のための、触媒鈴木カップリング反応において;
(vi)触媒クロスカップリング反応、特に、C-N及びC-Oカップリング反応において;並びに/又は
(vii)特にアリール化オレフィンの調製のための、触媒Heckカップリング反応、及び特にアリール化及びアルケニル化アルキンの調製のための、薗頭カップリング反応において
使用することができる。
【0107】
特に、本特許出願は、式YPR1R2(I)、Y2PR1(II)及びY3P(III)
【0108】
【化17】
【0109】
Y=
【0110】
【化18】
【0111】
[式中、
Yは、カルバニオン中心を通してリン原子に結合されており且つオニウム基On及びX基を有するイリド置換基を表し、
Onは、他のイリド置換基におけるオニウム基のOnとは独立に、ホスホニウム基-P(R3R4R5)、アンモニウム基-N(R3R4R5)、スルホキソニウム基-SOR3R4及びスルホニウム基-S(R3R4)から選択され、
Xは、他のイリド置換基におけるX基とは独立に、水素、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール、アルケニル及びヘテロアリール基、シリル(-SiR3R3R4R5)、スルホニル(-SO2R3)、ホスホリル(-P(O)R3R4、-P(S)R3R4、-P(NR3)R4R5 2)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR3)及びアミノ(-NR3R4)基から選択され、
R1、R2、R3、R4及びR5は、存在する場合、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール及びヘテロアリール基から独立に選択され、ただし、Xが水素又はトリメチルシリルであり且つZがトリメチルホスホニウムである場合、R1及びR2はメチルでない、又はXがp-トルイルスルホニル(-SO2(p-トルイル))であり且つZがトリフェニルホスホニウムである場合、R1及びR2はフェニルでない]
のホスファンリガンドを含む金属錯体に関する。
【0112】
アルキル基は、直鎖、分枝鎖又は環式C1~10アルキル基、好ましくは、C1~6アルキル基又はC4~10シクロアルキル基から選択することができ、アリール基は、C6~14アリール基、好ましくは、C6~10アリール基から選択され、アルケニル基は、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~10アルケニル基、好ましくは、C2~6アルケニル基から選択され、ヘテロアリール基は、C6~14ヘテロアリール基、好ましくは、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC6~10ヘテロアリール基から選択される、且つ/又は
(ii)官能基は、アルキル(-R11)、特に、C1~6アルキル基、C6~10アリール(-R12)、ハロゲン(-Hal)、ヒドロキシ(-OH)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR3)、アミノ(-NR11 2、-NHR11、-NH2)、メルカプト(-SH、-SR11)から選択され、独立に、更なるR11残基のR11は、C1~6アルキル残基から選択される。
【0113】
金属錯体は、特に、貴金属若しくは遷移金属錯体でも、貴金属若しくは遷移金属化合物でもよい。特に、元素周期表の10又は11族の金属は、使用することができる。
【0114】
一実施形態では、金属の白金、パラジウム及びニッケル、好ましくは、パラジウムは、使用することができる。
【0115】
他の実施形態では、金属の銅、銀及び金、好ましくは、金は、使用することができる。
【0116】
有利には、これらは、式(I)又は(II)
【0117】
【化19】
【0118】
[式中、Onは、ホスホニウム基-P(R3R4R5)(式中、R3、R4及びR5は、C1~6アルキル基、C4~10シクロアルキル基、C6~10アリール基からなる群から独立に選択される)であり、Xは、直鎖、分枝鎖又は環式C1~6アルキル基、C6~10アリール基、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~6アルケニル基、トリアルキルシリル(-SiR3R4R5)、アリールスルホニル(R12-SO2R3)基からなる群から選択され、R1及びR2は、C6~10アリール基又はC1~6アルキル及びシクロアルキル基である]
のホスファンリガンドを有する金属錯体であり得る。
【0119】
特に、R3、R4及びR5は、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択することができる、又はR3、R4及びR5は、同じであっても、メチル、エチル、ブチル、シクロヘキシル、フェニル、及びそれらの組合せ、特に、シクロヘキシル及びフェニルからなる群から選択してもよい。
【0120】
金属錯体において、Xは、メチル、エチル、シクロヘキシル、フェニル、p-トリル、トリメチルシリル、p-トリルスルホニル、又はそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0121】
やはり、R1及びR2は、フェニル、シクロヘキシル、メチル、tert-ブチル、及びそれらの組合せからなる群から独立に選択することができる。
【0122】
有利なリガンドは、特に、次のTable 1(表1)
【0123】
【表1】
【0124】
による、置換基を有する上記の式(I)又は(II)のリガンドであり得、表中、PPh3は、トリフェニルホスフィンを表し、PCy3は、トリシクロヘキシルホスフィンを表す。
【0125】
金属錯体は、特に、貴金属若しくは遷移金属錯体でも、貴金属若しくは遷移金属化合物でもよい。特に、元素周期表の10又は11族の金属は、使用することができる。
【0126】
一実施形態では、金属の白金、パラジウム及びニッケル、好ましくは、パラジウムは、使用することができる。
【0127】
他の実施形態では、金属の銅、銀及び金、好ましくは、金は、使用することができる。
【0128】
金属錯体はまた、更なるリガンド、例えば、中性の電子ドナーリガンド等、例えば、ジベンジリデンアセトン(DBA)、一酸化炭素CO、NHCリガンド、ホスフィン、例えば、トリフェニルホスフィン又はトリシクロヘキシルホスフィン、及びアミン、例えば、トリエチルアミン又はトリブチルアミンを有し得る。やはり、荷電リガンド、例えば、ハロゲン等、特に、塩化物、臭化物及びヨウ化物、又は擬ハロゲン化物メシレート、トリフレート、アセテートは、存在することができる。置換又は非置換アリール及びアリルリガンドはまた、モノ-若しくはジオレフィンとなり得るように、存在することができ、これは、直鎖又は環式、例えば、シクロオクタジエン等であり得る。
【0129】
したがって、有利には、金属錯体は、特に、ジベンジリデンアセトン(DBA)、一酸化炭素CO、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジル、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トリフレート、アセテート、アリル、フェニル、p-トリル、o-トリル、メシチル、シクロオクタジエン、及びそれらの組合せからなる群から選択されるリガンドを更に含むことができる。
【0130】
特に、次のTable B~Gから得られた金属錯体は、使用することができる。
【0131】
Table B
Table Bは、Table Aに記載の32種のホスファンリガンドのうちの少なくとも1種、並びにジベンジリデンアセトン(DBA)、一酸化炭素CO、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジル、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トリフレート、アセテート、アリル、フェニル、p-トリル、o-トリル、メシチル、シクロオクタジエン、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のリガンドを有する、白金錯体を示す。
【0132】
Table C
Table Cは、Table Aに記載の32種のホスファンリガンドのうちの少なくとも1種、並びにジベンジリデンアセトン(DBA)、一酸化炭素CO、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジル、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トリフレート、アセテート、アリル、フェニル、p-トリル、o-トリル、メシチル、シクロオクタジエン、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のリガンドを有する、パラジウム錯体を示す。
【0133】
Table D
Table Dは、Table Aに記載の32種のホスファンリガンドのうちの少なくとも1種、並びにジベンジリデンアセトン(DBA)、一酸化炭素CO、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジル、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トリフレート、アセテート、アリル、フェニル、p-トリル、o-トリル、メシチル、シクロオクタジエン、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のリガンドを有する、ニッケル錯体を示す。
【0134】
Table E
Table Eは、Table Aに記載の32種のホスファンリガンドのうちの少なくとも1種、並びにジベンジリデンアセトン(DBA)、一酸化炭素CO、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジル、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トリフレート、アセテート、アリル、フェニル、p-トリル、o-トリル、メシチル、シクロオクタジエン、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のリガンドを有する、銅錯体を示す。
【0135】
Table F
Table Fは、Table Aに記載の32種のホスファンリガンドのうちの少なくとも1種、並びにジベンジリデンアセトン(DBA)、一酸化炭素CO、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジル、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トリフレート、アセテート、アリル、フェニル、p-トリル、o-トリル、メシチル、シクロオクタジエン、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のリガンドを有する、銀錯体を示す。
【0136】
Table G
Table Gは、Table Aに記載の32種のホスファンリガンドのうちの少なくとも1種、並びにジベンジリデンアセトン(DBA)、一酸化炭素CO、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジル、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トリフレート、アセテート、アリル、フェニル、p-トリル、o-トリル、メシチル、シクロオクタジエン、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のリガンドを有する、金錯体を示す。
【0137】
金属錯体は、それ自体公知の方法で、例えば、有利には所望の更なるリガンド(例えば、ニッケルテトラカルボニル、(THT)AuCl(THT=テトラヒドロチオフェン)、アリルパラジウム(II)塩化物2量体、パラジウムアセテート、パラジウム塩化物、又はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)×ジベンジリデンアセトン)を既に有する金属塩又は金属錯体を1種又は複数のホスファンリガンドと、場合によって適した溶媒中で反応させることにより得ることができる。
【0138】
前述の金属錯体は、均一系触媒反応、特に、カップリング反応において使用することができ、前記カップリング反応は、
(i)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロ官能基化反応;
(ii)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロアミノ化反応;
(iii)アルキン及びアルケンへの触媒O-H付加反応;
(iv)触媒カップリング反応;
(v)特にビアリールの調製のための、触媒鈴木カップリング反応;
(vi)触媒クロスカップリング反応、特に、C-N及びC-Oカップリング反応;並びに/又は
(vii)特にアリール化オレフィンの調製のための、触媒Heckカップリング反応、並びに特にアリール化及びアルケニル化アルキンの調製のための、薗頭カップリング反応
からなる群から選択することができる。
【0139】
更に、金属錯体は、構造(V)を有するパラジウムアリル錯体でも又は構造(VI)を有するパラジウムアリール錯体でもよい。
【0140】
【化20】
【0141】
[式中、Xは、アニオンであり、
Y、R1、R2は、先行する項目中で定義することができ、
R33、R34及びR35は、H、非置換であっても又は官能基で置換されていてもよいアルキル、アリール及びヘテロアリール基から独立に選択することができ;又は
R33、R34及びR35のうち少なくとも2つは、5~14個の炭素原子を有する炭素環を形成し、
Arは、置換若しくは非置換の、特に、置換アリール基を示す]。
【0142】
したがって、R33、R34及びR35は、直鎖、分枝鎖又は環式C1~10アルキル基、好ましくは、C1~6アルキル基又はC4~10シクロアルキル基から独立に選択することができ、アリール基は、C6~14アリール基、好ましくは、C6~10アリール基から選択され、アルケニル基は、一価-若しくは多価不飽和の直鎖、分枝鎖又は環式C2~10アルケニル基、好ましくは、C2~6アルケニル基から選択され、ヘテロアリール基は、C6~14ヘテロアリール基、好ましくは、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC6~10ヘテロアリール基から選択され、上記の群のすべては、官能基と置換することができ;並びに/又は
R33、R34及びR35のうちの少なくとも2つは、C4~10シクロアルキル基、又はC6~14アリール基である炭素環を形成し、これは、1つ又は複数の官能基と置換することができ;
Arは、C6~14アリール基、好ましくは、C6~10アリール基から選択され、ヘテロアリール基は、C6~14ヘテロアリール基、好ましくは、N、O及びSから選択される1~5個のヘテロ原子を有するC6~10ヘテロアリール基から選択され、上記の群のすべては、官能基で置換されることができ;並びに/又は
官能基は、アルキル(-R11)、特に、C1~6アルキル基、C6~10アリール(-R12)、ハロゲン(-Hal)、ヒドロキシ(-OH)、シアノ(-CN)、アルコキシ(-OR3)、アミノ(-NR11 2、-NHR11、-NH2)、メルカプト(-SH、-SR11)から選択され、独立に、更なるR11残基のR11は、C1~6アルキル残基から選択される。
【0143】
特に、Xは、ハロゲン、トシレート、ノシレート及びメシレートの群から選択することができ、特に、Xは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、トシレート、ノシレート及びメシレートの群から選択することができ、且つ/又はアリールは、フェニル、m-トリル、p-トリル、o-トリル、メシチル、1,3-ジイソプロピルフェニルから選択することができる。
【0144】
前述したホスファンリガンドのうちの少なくとも1種を含有するパラジウム錯体、特に、パラジウムアリル錯体及びパラジウムアリール錯体は、均一系触媒反応において、特に、カップリング反応において使用することができ、前記カップリング反応は、
(i)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロ官能基化反応;
(ii)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロアミノ化反応;
(iii)アルキン及びアルケンへの触媒O-H付加反応;
(iv)触媒カップリング反応;
(v)特にビアリールの調製のための、触媒鈴木カップリング反応;
(vi)触媒クロスカップリング反応、特に、C-N及びC-Oカップリング反応;並びに/又は
(vii)特にアリール化オレフィンの調製のための、触媒Heckカップリング反応、並びに特にアリール化及びアルケニル化アルキンの調製のための、薗頭カップリング反応
からなる群から選択することができる。
【0145】
更に、本特許出願は、
- 少なくとも1種の基質、カップリングパートナー、及び上記金属錯体のうちの少なくとも1種、又は前述のリガンドのうちの1つを含む金属錯体を含有する反応混合物を用意する工程と;
- 金属錯体又はその誘導体の存在下で、前記基質を前記カップリングパートナーと反応させて、カップリング生成物を形成させる工程と
を含むカップリング反応を行うための方法に関する。
【0146】
ここでも、前述した金属錯体の金属は、貴金属及び/又は遷移金属、特に、元素周期表の10又は11族の金属であり得、これによって、金属錯体の金属が、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、及びそれらの組合せからなる群から選択される場合、有用であるということが証明されている。
【0147】
基質は、置換芳香族化合物であり得、特に、置換芳香族化合物は、芳香族又は複素環式芳香族化合物であり得る。これは、とりわけ、脱離基、又は不飽和脂肪族基、又は脱離基で置換することができ、前記脱離基が、ハロゲン、トシレート、ノシレート及びメシレートからなる群から選択され、且つ/又は前記不飽和脂肪族基が、特に、2~12個、特に、2~8個の炭素原子を有するアルケン又はアルキンからなる群から選択される場合、有用であることが証明されている。
【0148】
カップリングパートナーは、有機金属化合物を含むことができ、特に、これは、有機ホウ素化合物、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物、有機リチウム化合物、及びグリニャール化合物からなる群から選択することができ、有利には、前記有機金属化合物には、少なくとも1つの芳香族残基が含まれ、又は前記有機金属化合物には、少なくとも1つの不飽和脂肪族残基が含まれ、又は前記有機金属化合物には、少なくとも1つの飽和脂肪族残基が含まれる。
【0149】
やはり、本特許出願は、カップリング反応が、
(i)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロ官能基化反応;
(ii)アルキン及びアルケンの触媒ヒドロアミノ化反応;
(iii)アルキン及びアルケンへの触媒O-H付加反応;
(iv)触媒カップリング反応;
(v)特にビアリールの調製のための、触媒鈴木カップリング反応;
(vi)触媒クロスカップリング反応、特に、C-N及びC-Oカップリング反応;並びに/又は
(vii)特にアリール化オレフィンの調製のための、触媒Heckカップリング反応、並びに特にアリール化及びアルケニル化アルキンの調製のための、薗頭カップリング反応
からなる群から選択される、そのような方法に関する。
【0150】
本発明は、次の実施例によって、更に説明される。実施例は、イリド-官能基化ホスファン、それらの遷移金属錯体の調製、及び触媒作用におけるその使用について模範的であり、実施例は、本発明の保護の範囲を限定するものとして、決して理解されるものではない。
【実施例
【0151】
(実施例1)
イリド-官能基化ホスファンの調製
A)モノクロロホスファンを有する金属化イリドによる調製(経路A)
金属化イリド[Ph3PCSO2Tol]Naから得られたOn=PPh3、R=R'=Cy、X=SO2Tolであるイリド-官能基化ビス(シクロヘキシル)ホスファンの調製
【0152】
【化21】
【0153】
金属化イリド[Ph3PCSO2Tol]Na2.05g(4.5mmol)を、THF40mlに溶解し、-50℃まで冷却した。この温度で、ジシクロヘキシルクロロホスファン1.13ml(5.4mmol)を、黄色の反応溶液にゆっくりと加え、これを、最後に、室温まで加温したときに漂白した。溶媒を、減圧下で除去した後、形成された無色の固形物を、トルエン30mlに溶解し、懸濁液をろ過した。溶媒を新たに還元することによって、固形物が形成された。後者をろ過し、それによって、生成物は、無色の固形物として得ることができた(収率:1.97g、3.2mmol、71%)。
1H-NMR (250 MHz, THF-d8): δ = 0.78-1.29 (m, 10H, CHCy), 1.47-1.79 (m, 10H, CHCy), 2.13-2.23 (m, 2H, CHCy), 2.31 (s, 3H, CHSTol), 6.90-7.10 (m, 4H, CHSTol, メタ/オルト), 7.35-7.61 (m, 9H, CHPPh, メタ/パラ), 7.65-7.78 (m, 6H, CHPPh, オルト). 31P{1H}-NMR (250 MHz, THF-d8): δ = -5.79 (d, 2JPP = 164.3 Hz: PCy), 25.58 (d, 2JPP = 164.4 Hz; PPh3). TEP = 2055.1 cm-1.
【0154】
On=PPh3、X=SO2Tol、R=R'=Ph(T.Scherpfら、Angew.Chem.Int.Ed.、54巻、8542(2015年))、iPr、アダマンチル又はシクロヘキシルであり、
On=PPh3、X=CN、R=R'=Ph、又はCyである、
単純なイリド-官能基化ホスファンの調製もまた、本プロトコールに従って行った。
【0155】
更に、On=PPh3及びX=CNであるビス(イリド)-官能基化ホスファンY2PPhを、本プロトコールに従って調製した。
【0156】
B)ジクロロホスファン中間体による調製(経路A)
金属化イリド[Ph3PCSO2Tol]Naから得られたOn=PPh3、R=R'=Cy、X=SO2Tolであるイリド-官能基化ジメチルホスファンの調製
【0157】
【化22】
【0158】
50Mlのシュレンク管中で、金属化イリド3.01g(6.66mmol)を、THF35mlに溶解した。その後、三塩化リン0.70ml(1.10g、7.99mmol)を、速やかに滴加し、加熱して、5分間沸騰させた。反応溶液を終夜撹拌した後、溶媒を減圧下で除去し、固体をジクロロメタンに溶解した。続いて、懸濁液をフィルターカニューレによってろ過し、溶媒を再度減圧下で除去した。沈殿した固体を、ベンゼンで洗浄し、シュレンクフリット(Schlenk frit)によってろ過し、減圧下で乾燥した。したがって、イリド-官能基化ジクロロホスファンは、無色の固形物として得ることができる(収率:2.88g、5.44mmol、82%)。
1H-NMR (500.1 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 2.37 (s, 3 H; CH3), 7.04-7.07 (m, 2 H; CHTol,meta), 7.22-7.25 (m, 2 H; CHTol,ortho), 7.49-7.55 (m, 6 H; CHPPh,meta), 7.64-7.69 (m, 3 H; CHPPh,para), 7.71-7.77 (m, 6 H; CHPPh,ortho). 13C{1H}-NMR (125.8 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 21.5 (s, CH3), 62.9 (dd, 1JCP = 111.8 Hz, 1JCP = 91.8 Hz; CPCS), 124.1 (dd, 1JCP = 92.8 Hz, 3JCP = 3.6 Hz; CPPh,ipso), 129.1 (s, CHTol,meta), 129.2 (d, 3JCP = 12.8 Hz; CHPPh,meta), 129.7 (d, 4JCP = 1.9 Hz; CHTol,ortho), 133.5 (d, 4JCP = 2.9 Hz; CHPPh,para), 135.2 (dd, 2JCP = 10.2 Hz, 4JCP = 1.9 Hz; CHPPh,ortho), 142.4 (s, CTol,para), 143.9 (s, CTol,ipso). 31P{1H}-NMR (162.0 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 19.7 (d, 2JPP = 110.1 Hz), 159.2 (br).
【0159】
【化23】
【0160】
50mlのシュレンク管中で、イリド-官能基化ジクロロホスファン299mg(0.56mmol)を、THF10mlに溶解し、THF中のメチルリチウム2.35ml(1.13mmol、0.48M)をゆっくりと加えた。終夜溶液を撹拌した後、溶媒を減圧下で除去し、残留物をベンゼン15mlに溶解した。その後、懸濁液をフィルターカニューレによってろ過し、溶媒を再度減圧下で除去した。真空乾燥後、ジメチルホスファンを、無色の固形物として単離することができる(0.38g、0.78mmol;82%)。
1H-NMR (500.1 MHz, C6D6): δ [ppm] = 1.70 (s, 6 H; CH3,PMe), 1.96 (s, 3 H; CH3,Tol), 6.74-6.75 (m, 2 H; CHTol,meta), 6.96-6.99 (m, 6 H; CHPPh,meta), 7.03-7.05 (m, 3 H; CHPPh,para), 7.59-7.60 (m, 2 H; CHTol,ortho), 7.75-7.77 (m, 6 H; CHPPh,ortho). 13C{1H}-NMR (125.8 MHz, C6D6): δ [ppm] = 16.0 (dd, 1JCP = 13.9 Hz, 3JCP = 6.5 Hz; CH3,PMe), 21.1 (s, CH3,Tol), 42.2 (dd, 1JCP = 107.8 Hz, 1JCP = 53.7 Hz; CPCS), 126.9 (s, CHTol,ortho), 128.3 (d, 3JCP = 12.0 Hz; CHPPh,meta), 128.6 (s, CHTol,meta), 131.7 (d, 4JCP = 2.8 Hz; CHPPh,para), 135.0 (dd, 2JCP = 9.5 Hz, 4JCP = 2.5 Hz; CHPPh,ortho), 139.8 (s, CTol,para), 148.5 (s, CTol,ipso). 31P{1H}-NMR (162.0 MHz, C6D6): δ [ppm] = -46.4 (d, 2JPP = 146.5 Hz), 23.6 (d, 2JPP = 146.5 Hz). TEP = 2059.7 cm-1.
【0161】
On=PPh3、X=SO2Tol又はCN、R=R'=Ph、Me、iPr又はCyである単純なイリド-官能基化ホスファンの調製を、本プロトコールに従って行った。
【0162】
更に、On=PPh3及びX=CNであるイリド-官能基化ホスファンY2PCyを、本プロトコールに従って調製した。
【0163】
C)オニウム塩のリン酸化及び脱プロトン化による調製(経路B)
対応するオニウム塩は、市販である、又は標準の合成方法、例えば、対応するホスファン、硫化物又はハロゲン化アルキル及びトシレートによるアミン前駆物質の4級化等により調製することができる。塩(例えば、次の反応式中のA等)は、金属塩基、例えば、カリウムtert-ブタノラート、金属水素化物又はリチウム/ナトリウム/カリウムビス(トリメチルシリル)アミドで脱プロトン化することができ、ハロホスファンと直接反応して、ホスファニル-置換オニウム塩(例えば、B)を形成する。後者は、事前の処理をせずに、別の当量の塩基を有する所望のイリド-官能基化ホスファンに変換することができる。単純な見本は、ハロゲン化アルキルによる4級化、その後の脱プロトン化により、市販のビス(ジフェニルホスフィノ)メタン及びビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)メタンから得ることができる(J.Langerら、ARKIVOC、3巻、210頁(2012年))。他の官能基化は、次の反応式に従って実現することができる。特に、ホスファン、硫化物、アミン、イミン、N-複素環及びスルホキシドは、On部分として有用であることが証明されている。
【0164】
【化24】
【0165】
D)実施例:メチル-(Z=Me)及びシリル-官能基化(Z=SiMe3)イリドホスファンの合成
X=Me及びHal=Iであるオニウム塩A(ここでは、エチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物)は、公知の文献のプロトコール(M.N.Albertiら、Org.Lett.、10巻、2465(2008年))に従って調製することができ、又は購入することができる(CAS:4736-60-1)。R=Cyであるイリド-官能基化ホスファンYMePCy2の形成を、
【0166】
【化25】
【0167】
により行う。
【0168】
エチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物190g(4.50mmol)及び水素化カリウム500mg(12.5mmol)を、THF20mlに加えた。懸濁液を、60℃で4時間加熱し、それから、水素の形成は、もはや観察することはできなかった。続いて、ジシクロヘキシルヨードホスファン1.60g(5.0mmol)を滴加し、混合物を、再度、60℃で16時間加熱した。溶媒が、減圧下で除去された後、ヘキサン20mlを加えた。混合物を、沸点まで加熱し、まだ熱い間にろ過した。溶媒を、再び減圧下で除去し、残留固体を、ヘキサン及びトルエンの1:1の混合物をできる限り低量で溶解した。-75℃で3日間溶液を貯蔵することにより、所望のホスファンは、だいだい色の結晶性固形物として単離することができた(1.63g、3.35mmol、74%)。
1H NMR: (400.1 MHz, CD2Cl2): δ= 1.20-1.59 (m, 10H, Cy), 1.70-1.89 (m, 6H, Cy), 1.89-2.07 (m, 4H, Cy), 2.11 (dd, 3H, 3JHP = 16.3 Hz, 3JHP = 2.4 Hz, CH3), 2.21-2.30 (m, 2H, Cy), 7.05-7.10 (m, 9H, CHPPh, ortho及びCHPPh, para), 7.69-7.79 (m, 6H, CHPPh, meta), 31P{1H}-NMR: (162.1 MHz, , CD2Cl2): δ = -2.44 (d, 2JPP = 176.8 Hz, PCy2), 25.4 (d, 2JPP = 176.8 Hz, PPh3). TEP: 2050.1 cm-1.
【0169】
On=PPh3、X=Et、CH2Ph、Cy、SiMe3、R=R'=Ph、Me又はCyであるイリド-官能基化ホスファンの調製を、本プロトコールに従ってやはり行った。
【0170】
【化26】
【0171】
トリメチルシリルメチレンフェニルホスホニウムヨウ化物2.00g(4.20mmol)及び水素化カリウム250mg(6.23mmol)を、THF20mlに加えた。懸濁液を、室温で16時間加熱し、それから、水素の形成は、もはや観察することはできなかった。黄色の懸濁液を、ろ過し、THF5mlで洗浄し、滴下漏斗に移し、ジシクロヘキシルヨードホスファン(1.5g、4.63mmol)のトルエン20ml溶液に-78℃でゆっくりと加えた。溶液を、室温までゆっくりと加熱し、次いで、24時間撹拌した。沈殿した固体を、ろ過し、トルエン5mlで2回洗浄し、減圧下で乾燥した。この固体及びKHMDS(3.36mmol)670mgを、THF20mlに溶解し、1時間撹拌した。沈殿した固体をろ過により除去し、溶媒を減圧下で除去し、残留固体を沸騰ヘキサン50mlに溶解し、まだ熱い間にろ過した。溶液を、ゆっくりとRTまで冷却させ、16時間放置した。形成された黄色の結晶の上部の溶液を除去し、結晶を、冷ヘキサン5mlで3回洗浄し、その後、減圧下で乾燥した(1.07g、1.98mmol、47%)。
1H NMR: (400.1 MHz, C6D6): δ = 0.28 (s, 6.3 H, SiMe3, trans), 0.40 (s, 2.7 H, SiMe3, cis), 0.89-2.25 (m, 20H, Cy), 2.34-2.60 (m, 2H, Cy), 7.02-7.11 (m, 9H, CHPPh, ortho及びCHPPh, para), 7.73-7.82(m, 6H, CHPPh, meta), 31P{1H}-NMR: (162.1 MHz, , C6D6): δ = 8.3 (d, 2JPP = 37.2 Hz, PCy2, cis) , 12.8 (d, 2JPP = 172.2 Hz, PCy2, trans), 19.7 (d, 2JPP = 37.2 Hz, PPh3, cis) , 29.1 (d, 2JPP = 172.2 Hz, PPh3, trans), TEP: 2048.9 cm-1.
【0172】
【化27】
【0173】
エチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物4.00g(10mmol)及び水素化カリウム600mg(15mmol)を、THF20mlに加えた。懸濁液を、室温で16時間加熱し、それから、水素の形成は、もはや観察することはできなかった。赤色の懸濁液を、ろ過し、THF5mlで洗浄し、滴下漏斗に移し、強く撹拌しながら、シクロヘキシルジクロロホスファン(460mg、2.5mmol)のTHF20ml溶液にゆっくりと滴加した。溶液を、RTで16時間撹拌した。沈殿した固体を、ろ過し、THF10mlで2回洗浄した。得られた赤色の溶液の溶媒を減圧下で除去し、得られた固体を減圧下で乾燥した。シクロヘキサン20mlを加え、混合物を沸騰するまで加熱し、まだ熱い間にろ過し、次いで、RTまでゆっくりと冷却させ、赤い固体を沈殿させた。上澄み溶液を除去し、ペンタン2mlで2回洗浄し、減圧下で乾燥した(0.68g、0.98mmol、39%)。
1H NMR: (400.1 MHz, C6D6): δ = 1.17-1.36 (m, 3H, Cy,), 1.47-1.60 (m, 2H, Cy,), 1.70-1.80 (m, 1H, Cy,), 1.84-1.94 (m, 2H, Cy,), 2.22-2.32 (m, 2H, Cy), 2.52 (dd, 3JHP = 17.4 Hz, 3JHP = 2.0 Hz 6H, Me), 2.75-2.86 (m, 1H, Cy), 7.98-7.04 (m, 12H, CHPPh, ortho), 7.04-7.11 (m, 6H, CHPPh, para), 7.62-7.70 (m, 12H, CHPPh, meta), 31P{1H}-NMR: (162.1 MHz, C6D6): δ = -20.3 (t, 2JPP = 175.1 Hz, PCy), 19.5 (d, 2JPP = 175.1 Hz, PPh3)
【0174】
【化28】
【0175】
シュレンクフラスコ中で、エチルトリシクロヘキシルホスホニウムヨウ化物10.0g(22.9mmol)を、THF75mlに懸濁した。懸濁液を、氷浴中で0℃まで冷却し、n-BuLiのヘキサン1.58M溶液14.5ml(22.9mmol)をゆっくりと滴加した。現在清澄であった溶液を、室温まで加温し、ジシクロヘキシルホスファン塩化物2.45ml(2.67g、11.5mmol)を加えた。無色の固形物は、直ちに沈殿し、懸濁液を、60℃で16時間加熱した。無色の固形物を、ろ過し、THF各20mlで2回洗浄し、アルゴン下で貯蔵した。ろ液を、減圧下で乾燥し、得られた固体を、シクロヘキサン100mlに溶解し、ろ過し、シクロヘキサンを再度減圧下で除去した。減圧下で乾燥した後、生成物を、無色の固形物として単離することができた(4.93g、9.77mmol、85%)。
【0176】
【化29】
【0177】
1H NMR (400 MHz, C6D6) δ = 1.08 - 1.23 (m, 9H, CH2, PCy3, H3 + H4), 1.32 - 1.43 (m, 2H, CH2, PCy2, H4), 1.43 - 1.58 (m, 12H, CH2, PCy3, H2 + PCy2, H2 + H3), 1.58 - 1.66 (m, 5H, CH2, PCy3, H4 + PCy2, H2), 1.67 - 1.79 (m, 6H, CH2, PCy3, H3), 1.76 - 1.83 (m, 2H, CH2, PCy2, H4), 1.82 - 1.96 (m, 11H, CH2, PCy3, H2 + PCy2, H2 + CH3), 1.95 - 2.09 (m, 4H, CH2, PCy3, H3 + CH, PCy2, H1), 2.11 - 2.23 (m, 2H, CH2, PCy2, H2), 2.23 - 2.34 (m, 2H, CH2, PCy2, H3), 2.34 - 2.52 (m, 3H, CH, PCy3, H1) ppm. 13C {1H} NMR (101 MHz, C6D6) δ = -1.7 (dd, 1JCP = 108.8 Hz, 1JCP = 21.1 Hz, P-C--P), 14.8 (dd, 2JCP = 8.4 Hz, 2JCP = 0.7 Hz, CH3), 26.6 - 27.0 (m, CH2, PCy3, C4), 27.7 - 27.8 (m, CH2, PCy2, C4), 27.8 (d, 3JCP = 11.0 Hz, CH2, PCy3, C3), 28.0 - 28.4 (m, CH2, PCy3, C2), 28.5 (d, 3JCP = 11.8 Hz, CH2, PCy2, C3), 29.0 (d, 3JCP = 8.1 Hz, CH2, PCy2, C3), 32.9 (d, 2JCP = 9.9 Hz, CH2, PCy2, C2), 33.67 (dd, 1JCP = 49.5 Hz, 3JCP = 8.9 Hz, CH, PCy3, C1) 33.69 (d, 2JCP = 19.8 Hz, CH2, PCy2, C2), 38.4 (dd, 1JCP =13.8 Hz, 3JCP = 5.3 Hz, CH, PCy2, C1) ppm. 31P {1H} NMR (162 MHz, C6D6) δ = 1.0 (d, 2JPP = 128.9 Hz, PCy2), 30.6 (d, 2JPP = 128.9 Hz, PCy3) ppm. CHNS: 計算値: C: 76.14, H: 11.58. 実測値: C: 75.62, H: 11.32.
【0178】
エチルトリシクロヘキシルホスホニウムヨウ化物の回収
THFで洗浄後残存する無色の固形物を、減圧下で乾燥し、DCM15mlに溶解した。溶液を、ろ過し、溶媒を、減圧下で除去し、乾燥した。エチルトリシクロヘキシルホスホニウムヨウ化物を、無色の固形物として得た(4.27g、9.8mmol、85%)。
【0179】
【化30】
【0180】
シュレンクフラスコ中で、エチルトリシクロヘキシルホスホニウムヨウ化物2.55g(5.84mmol)を、THF25mlに懸濁した。懸濁液を氷浴中で0℃まで冷却し、n-BuLiのヘキサン2.1M溶液及び2.78ml(5.84mmol)をゆっくりと滴加した。現在清澄であった溶液を、室温まで加温した。ジ-tert-ブチルクロロホスファン0.55ml(0.53g、2.92mmol)を加え、混合物を、60℃で16時間加熱した。無色の固形物を、ろ過し、THF各5mlで2回洗浄した。ろ液を減圧下で乾燥し、得られた固体をシクロヘキサン50mlに溶解した。新たにろ過した後、溶媒を減圧下で除去し、生成物を、無色の固形物として単離した(1.32g、1.51mmol、52%;最適化されてない収率)。
【0181】
【化31】
【0182】
1H NMR (400 MHz, C6D6) δ = 1.08 - 1.24 (m, 9H, CH2, Cy, H3 + H4), 1.54 (d, 3JHP = 10.7 Hz, 18H, CH3, tBu), 1.44 - 1.67 (m, 9H, CH2, Cy, H2 + H4), 1.63 - 1.76 (m, 6H, CH2, Cy, H3), 2.04 (d, 3JPH = 13.0 Hz, 6H, CH2, Cy, H2), 2.11 (dd, 3JHP = 13.8 Hz, 3JHP = 3.1 Hz, 3H, CH3), 2.16 - 2.32 (m, 3H, CH, Cy, H1) ppm. 13C {1H} NMR (101 MHz, C6D6) δ = 4.5 (dd, 1JCP = 102.9 Hz, 1JCP = 27.3 Hz, P-C--P), 18.2 (dd, 2JCP = 8.6 Hz, 2JCP = 0.6 Hz, CH3), 27.0 (CH2, Cy, C4), 28.2 (d, 3JCP = 10.6 Hz, CH2, Cy, C3), 29.6 - 29.8 (m, CH2, Cy, C2), 33.3 (d, 2JCP = 14.4 Hz, CH3, tBu), 36.5 (dd, 1JCP = 23.4 Hz, 1JCP = 6.6 Hz, C,tBu) 37.0 (dd, 1JCP = 47.9 Hz, 3JCP = 9.0 Hz, CH, Cy, C1) ppm. 31P {1H} NMR (162 MHz, C6D6) δ = 26.4 (d, 2JPP = 146.9 Hz, PtBu2), 30.4 (d, 2JPP = 146.9 Hz, PCy3) ppm.
【0183】
【化32】
【0184】
シュレンク管中で、ベンジルトリシクロヘキシルホスホニウムヨウ化物500mg(1.11mmol)を、秤量し、THF10mLに懸濁した。懸濁液に、n-BuLi溶液(ヘキサン中の2.18M)0.51ml(1.11mmol;1当量)を、清澄な溶液が形成されるまで、ゆっくりと滴加した。溶液を、45分間撹拌し、その後、Cy2PCl0.32ml(335mg;1.44mmol;1.3当量)を加えた。懸濁液を、室温で16時間撹拌した。固体を、ろ過し、THF各10mlで2回洗浄し、高真空下で1.5時間乾燥した(558mg)。得られた固体並びにカリウムtert-ブタノラート133mg(1.19mmol)をシュレンク管中で秤量し、乾燥トルエン20mlに懸濁した。懸濁液を、16時間撹拌し、次いで、ろ過した。固体を、トルエン10mlで2回洗浄した。ろ液の溶媒を、減圧下で除去し、生成物を、無色の固形物として得た(0.35g、0.62mmol、56%;最適化されてない収率)。
【0185】
【化33】
【0186】
1H NMR (400 MHz, Tol-d8) δ = 1.00 - 1.22 (m, 9H, CH2, PCy3, H3 + H4), 1.22 - 1.64 (m, 19H, CH2, PCy2, H2 + H3 + H4 PCy3, H2, H3), 1.64- 1.83 (m, 12H, CH2, PCy2, H3 + H4 PCy3, , H3), 1.83- 2.01 (m, 10H, CH2, PCy2, H2 PCy3, , H2), 2.33- 2.46 (m, 5H, CH, PCy2, H1, PCy3, H1), 6.97- 7.00 (m, 1H, CH, Ph, para), 7.18- 7.25 (m, 2H, CH, Ph, meta), 7.34- 7.40 (m, 2H, CH, Ph, ortho) ppm. 31P{1H}-NMR (162.1MHz, Tol-d8): δ [ppm]= -5.4 (d, 2JPP = 132.0 Hz, PtBu2), 21.5 (d, 2JPP = 132.0 Hz,) ppm.
【0187】
(実施例2)
イリド-官能基化ホスファンの遷移金属錯体の調製
A)ニッケルカルボニル錯体
例として、実施例1.B)において調製されるOn=PPh3、R=R'=Me、X=SO2Tolであるイリド-官能基化ホスファンを有する錯体の合成を、以下に述べる。
【0188】
【化34】
【0189】
30mlのシュレンク管中で、ホスファン0.10g(0.20mmol)を、ペンタン5mlに懸濁した。その後、ベンゼン中の0.7Mニッケルテトラカルボニル0.43ml(0.31mmol)を、速やかに滴加し、反応混合物を、室温で2時間撹拌した。続いて、溶媒を、カニューレを用いて除去し、固体を、ペンタン各5mlで2回洗浄した。溶媒を除去し、減圧下で乾燥した後、錯体を、灰色がかった固体として得た(79.1mg、0.13mmol、61%)。
1H-NMR (500.1 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 1.97 (d, 2JPH = 4.70 Hz, 6 H; CH3,PMe), 2.30 (s, 3 H; CH3,Tol), 6.93-6.95 (m, 2 H; CHTol,meta), 7.16-7.17 (m, 2 H; CHTol,ortho), 7.38-7.42(m, 6 H; CHPPh,meta), 7.53-7.58(m, 9 H; CHPPh,ortho+para). 13C{1H}-NMR (125.8 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 21.4 (s, CH3,Tol), 23.4 (dd, 1JCP = 26.8 Hz, 3JCP = 3.5 Hz; CH3,PMe), 39.1 (dd, 1JCP = 105.6 Hz, 1JCP = 3.2 Hz; CPCS), 125.9 (s, CHTol,ortho), 126.9 (dd, 1JCP = 91.5 Hz, 3JCP = 1.9 Hz; CPPh,ipso), 128.8 (d, 3JCP = 12.4 Hz; CHPPh,meta), 129.0 (s, CHTol,meta), 132.8 (d, 4JCP = 3.0 Hz; CPPh,para), 135.1 (d, 2JCP = 9.8 Hz; CHPPh,ortho), 140.7 (s, CTol,para), 146.7 (dd, 3JCP = 1.21 Hz, 3JCP = 1.2 Hz;CHTol,ipso), 196.2 (s, CCO). 31P{1H}-NMR (162.0 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = -11.8 (d, 2JPP = 75.6 Hz), 20.3 (d, 2JPP = 75.6 Hz). 元素分析: 実測値: C, 58.41; H, 4.51; S, 4.97. 計算値: C, 58.80; H, 4.46; S, 5.06.
【0190】
B)塩化金錯体
例として、実施例1.A)において調製されるOn=PPh3、R=R'=Ph、X=SO2Tolであるイリド-官能基化ジフェニルホスファンを有する錯体の合成を、以下に述べる。
【0191】
【化35】
【0192】
50mlのシュレンク管中で、ホスファン0.20g(3.26mmol)及び(THT)AuCl(THT=テトラヒドロチオフェン)0.11g(3.26mmol)を、THF5mlに溶解し、反応混合物を、室温で終夜撹拌して、無色の沈殿物を形成させた。固体を、シュレンクフリットでろ過し、減圧下で乾燥して、所望の金錯体を得た(0.32g、0.38mmol、77%)。
1H-NMR (500.1 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 2.27 (s, 3 H; CH3), 6.20-6.23 (m, 2 H; CHTol,ortho), 6.70-6.72 (m, 2 H; CHTol,meta), 7.41-7.51 (m, 12 H; CHPPh,ortho+meta), 7.61-7.62 (m, 2 H; CHAuPPh,para), 7.63 - 7.66 (m, 7 H; CHAuPPh,meta+PPh,para), 7.86-7.90 (m, 4H; CHAuPPh,ortho). 13C{1H}-NMR (125.8 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 21.3 (s, CH3), 42.8 (dd, 1JCP = 101.4 Hz, 1JCP = 57.6 Hz; CPCS), 126.0 (dd, 1JCP = 86.9 Hz, 3JCP = 8.8 Hz; CPPh,ipso), 126.0 (s, CHTol,ortho), 128.5 (dd, 2JCP = 11.7 Hz, 4JCP = 0.8 Hz; CHPPh,ortho), 128.9 (s, CHTol,meta), 129.1 (d, 3JCP = 12.5 Hz; CPPh,meta), 131.1 (d, 4JCP = 2.6 Hz; CHAuPPh,para), 133.4 (d, 4JCP = 2.8 Hz;CHPPh,para), 133.4 (dd, 1JCP = 63.0 Hz, 3JCP = 8.2 Hz; CAuPPh,ipso), 135.2 (d, 3JCP = 13.6 Hz; CHAuPPh,meta), 135.4 (dd, 2JCP = 9.2 Hz, 4JCP = 1.2 Hz; CHAuPPh,ortho), 141.7 (s, CTol,para), 144.4 (s, CHTol,ipso). 31P{1H}-NMR (162.0 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 21.4 (d, 2JPP = 68.3 Hz), 22.1 (d, 2JPP = 68.3 Hz). 元素分析: 実測値: C, 54.19; H, 3.90; S, 3.68. 計算値: C, 53.88; H, 3.81; S, 3.78.
【0193】
触媒反応において用いるすべての金-ホスファン錯体(以下を参照のこと)を、本プロトコールに従って調製した。
【0194】
C)パラジウムアリル錯体
例として、イリド-置換ホスファンの3種のパラジウムアリル錯体の合成を、本明細書に記載する。本明細書に記載したもの以外に更なるリガンドを有する錯体は、記載したプロトコールに従って調製することができる。
【0195】
実施例1.A)において調製されたOn=PPh3、R=R'=Ph、X=SO2Tolであるイリド-官能基化ジフェニルホスファンを有する錯体の合成:
【0196】
【化36】
【0197】
50mlのシュレンク管中で、ホスファン201mg(0.325mmol)及びアリルパラジウム(II)塩化物2量体59mg(0.163mmol)を、ジクロロメタン10mlに懸濁し、室温で1時間撹拌した。その後、溶媒を、減圧下で1mlまで減少させ、固体が沈殿するまで、混合物をペンタンと混合した。後者を、シュレンクフリットでろ過し、その後、減圧下で乾燥して、褐色を帯びた固体としてパラジウム錯体を得た(163mg、0.21mmol、63%)。
1H-NMR (500.1 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 1.8-2.5 (br, 2H; CH2,allyl), 2.22 (s, 3 H; CH3), 2.76 (br, 1 H; CH2, allyl), 4.12 (m, 1 H; CH2,allyl), 4.84 (br, 1H; CHallyl), 6.71-6.73 (m, 2 H; CHTol,meta), 6.76-6.78 (m, 2 H; CHTol,ortho), 7.16-7.18 (m, 4 H; CHPdPPh,meta), 7.22-7.25 (m, 2 H; CHPdPPh,para), 7.41-7.45 (m, 6 H; CHPPh,meta), 7.53-7.57 (m, 3H; CHPPh,para), 7.84-7.88 (m, 4H; CHPdPPh,ortho), 7.97-8.01 (m, 6H; CHPPh,ortho). 13C{1H}-NMR (125.8 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 21.3 (s, CH3), 42.3 (dd, 1JCP = 105.2 Hz, 1JCP = 20.4 Hz; CPCS), 64.7 (br; CH2,allyl), 78.3 (d, 2JCP = 31.8 Hz; CH2,allyl), 117.7 (d, 2JCP = 4.3 Hz; CHallyl), 126.5 (s, CHTol,ortho), 127.4 (d, 2JCP = 10.3 Hz; CHPdPPh,meta), 128.3 (dd, 1JCP = 94.0 Hz, 3JCP = 1.2 Hz; CPPh,ipso), 128.4 (dd, 1JCP = 55.1 Hz, 3JCP = 12.4 Hz; CHPdPPh,ipso), 128.5 (s, CHTol,meta), 128.5 (d, 3JCP = 12.8 Hz; CHPPh,meta), 129.4 (d, 4JCP = 2.0 Hz; CHPdPPh,para), 132.3 (d, 4JCP = 3.0 Hz; CHPPh,para), 135.2 (d, 2JCP = 10.5 Hz; CHPdPPh,ortho), 136.2 (d, 2JCP = 10.1 Hz; CHPPh,ortho), 140.9 (s, CTol,para), 144.2 (s, CTol,ipso). 31P{1H}-NMR (162.0 MHz, CD2Cl2): δ [ppm] = 9.9 (d, 2JPP = 67.3 Hz), 22.9 (d, 2JPP = 67.3 Hz).
【0198】
実施例1.D)において調製されるOn=PCy3、R=R'=Cy、X=Meであるイリド-官能基化ジシクロヘキシルホスファンとの錯体の合成:
【0199】
【化37】
【0200】
ホスファンY*MePCy2(300mg、0.60mmol)及びアリルパラジウム(II)塩化物2量体(109mg、0.30mmol)をトルエン7mlに溶解し、清澄な溶液が形成されるまで、撹拌した。撹拌を中止し、溶液を、室温で3日間貯蔵した。黄色の結晶が、ゆっくりと形成され、これを、溶媒から分離し、次いで、ペンタン5mlで3回洗浄し、減圧下で乾燥した(230mg、0.33mmol、56%;最適化されてない収率)。
【0201】
【化38】
【0202】
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2) δ = 1.12 - 1.58 (m, 25H, CH2, PCy3 + PCy2), 1.62 (dd, 3JHP = 12.4 Hz, 3JHP = 8.3 Hz, 3H, CH3), 1.67 - 2.05 (m, 25H, CH2, PCy3 + PCy2), 2.10 - 2.24 (m, 2H, CH, PCy2, H1), 2.43 - 3.70 (vbr, 2H, CH2, C3H5), 2.54 - 2.72 (m, 3H, CH, PCy3, H1), 3.54 (dd, 2JHH = 13.7 Hz, 3JHH = 8.5 Hz, 1H, CH2, C3H5), 4.25 - 4.40 (m, 1H, CH2, C3H5), 5.19 - 5.41 (m, 1H, CH, C3H5) ppm. 13C {1H} NMR (101 MHz, CD2Cl2) δ = -2.7 (dd, 1JCP = 112.1, 1JCP = 46.8 Hz, P-C--P), 16.4 (m, CH3), 26.9 (d, 4JCP = 1.5 Hz, CH2, PCy3, C4), 27.2 - 27.5 (m, CH2, PCy2, C4), 27.8 (d, 3JCP = 13.4 Hz, CH2, PCy2, C3), 28.1 (d, 3JCP = 11.3 Hz, CH2, PCy3, C3), 28.60 (d, 3JCP = 9.9 Hz, CH2, PCy2, C3), 28.63 (d, 2JCP = 2.6 Hz, CH2, PCy3, C2), 30.0 - 30.5 (m, CH2, PCy2, C2), 31.2 (d, 2JCP = 5.2 Hz, CH2, PCy2, C2), 32.7 - 36.6 (m, CH, PCy2, C1), 38.4 - 39.6 (br, CH, PCy3, C1), 52.5 - 52.9 (m, CH2, C3H5), 79.5 (d, 2JCP = 28.4 Hz, CH2, C3H5), 114.9 (d, 2JCP = 4.4 Hz, CH, C3H5) ppm. 31P {1H} NMR (162 MHz, CD2Cl2) δ = 20.5 (d, 2JPP = 63.5 Hz, PCy2), 31.5 (d, 2JPP = 63.5 Hz, PCy3) ppm. CHNS: 計算値: C: 61.13, H: 9.23. 実測値: C: 61.03, H: 9.34.
【0203】
実施例1.D)において調製されたOn=PCy3、R=R'=Cy、X=Meであるイリド-官能基化ホスファンとの錯体の合成:
【0204】
【化39】
【0205】
ホスファンY*MePtBu2(300mg、0.66mmol)及びアリルパラジウム(II)塩化物2量体(115mg、0.32mmol)を、トルエン10mlに溶解し、室温で16時間撹拌した。だいだい色の固体が形成され、これを、ろ過し、トルエン10mlで洗浄し、次いで、減圧下で乾燥した(265mg、0.42mmol、66%)。
【0206】
【化40】
【0207】
1H NMR (400 MHz, CD2Cl2) δ = 1.02 - 1.56 (m, 15H, CH2, Cy, H2 + H3 + H4), 1.21 (d, 3JHP = 13.0 Hz, 9H, CH3, tBu), 1.47 (d, 3JHP = 13.3 Hz, 9H, CH3, tBu), 1.57 - 1.67 (m, 3H, CH2, Cy, H4), 1.68 - 1.89 (m, 9H, CH2, Cy, H3 + CH3), 1.84 - 1.99 (br, 3H, CH2, Cy, H2), 2.08 - 2.20 (br, 3H, CH2, Cy, H2), 2.69 - 2.99 (br, 3H, CH, Cy, H1), 2.91 - 3.85 (vbr, 2H, CH2, C3H5), 3.56 (dd, 2JHH = 13.5 Hz, 3JHH = 8.4 Hz, 1H, CH2, C3H5), 4.27 - 4.35 (m, 1H, CH2, C3H5), 5.16 - 5.62 (m, 1H, CH, C3H5). 13C {1H} NMR (101 MHz, CD2Cl2) δ = 4.0 (dd, 1JCP = 105.1 Hz, 1JCP = 41.3 Hz, P-C--P), 18.0 - 19.5 (m, CH3), 26.9 (d, 4JCP = 1.5 Hz, CH2, PCy3, C4), 27.9 (d, 3JCP = 12.4 Hz, CH2, Cy, C3), 28.4 (d, 3JCP = 11.0 Hz, CH2, Cy, C3), 29.0 (CH2, Cy, C2), 29.6 (CH2, Cy, C2), 31.6 (CH3, tBu), 32.9 (CH3, tBu), 34.4 (d, 1JCP = 48.1 Hz, CH, Cy, C1), 42.0 - 42.3 (m, C,tBu), 56.3 (d, 2JCP = 2.4 Hz, CH2, C3H5), 79.1 - 79.7 (m, CH2, C3H5), 113.7 (CH, C3H5) ppm. 31P {1H} NMR (162 MHz, CD2Cl2) δ = 30.8 (d, 2JPP = 63.4 Hz, PCy3), 58.0 (br, PtBu2) ppm. CHNS: 計算値: C: 58.58, H: 9.36. 実測値: C: 58.85, H: 9.31.
【0208】
D)パラジウム(0)錯体及びそれらの酸化的付加生成物
例として、実施例1.D)において調製されるOn=PCy3、R=R'=Cy及びX=Meであるイリド-官能基化ジシクロヘキシルホスファンを有するパラジウムベンジリデンアセトン錯体の合成を、本明細書に記載する。類似のパラジウム錯体は、対応するプロトコールに従って他のホスファンリガンドにより合成することができる。
【0209】
【化41】
【0210】
J.Young NMR管を、ホスファンY*MePCy230mg(59μmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)×ジベンジリデンアセトン34mg(59μmol)で満たした。両方の固体を、重水素化THF0.6mlに懸濁し、30分間振り混ぜた。反応を、核磁気共鳴分光法によってモニターし、反応が終了した後、生成物を、THF溶液にペンタンをゆっくりと拡散させることにより結晶化させた。生成物は、赤色の結晶の形態で得ることができた(45mg;53μmol;89%)。過剰量のホスファンリガンドが用いられる場合、ビスホスファンパラジウム(0)錯体をやはり単離することができる。
【0211】
【化42】
【0212】
31P {1H} NMR (162 MHz, THF-d8) δ = 26.9 (d, 2JPP = 82.1 Hz, PCy2), 31.6 (d, 2JPP = 82.1 Hz, PCy3). 1H NMR (400 MHz, THF-d8) δ = 1.02 - 1.86 (m, 50H), 1.53 (dd, 2JHP = 12.6 Hz, 2JHP = 7.2 Hz, 3H), 1.87 - 2.06 (m, 2H, CH, PCy2, H1), 2.09 - 2.32 (m, 3H, CH, PCy3, H1), 5.97 - 6.17 (m, 2H, dba), 6.35 - 6.73 (m, 2H, dba), 7.10 - 7.31 (m, 8H, dba), 7.30 - 7.43 (m, 8H, dba), 7.49 - 7.63 (m, 4H, dba), 7.63 - 7.73 (m, 8H, dba), 7.73 - 7.79 (m, 2H, dba).
【0213】
例として、実施例1.D)において調製されたOn=PCy3、R=R'=Cy及びX=Meであるイリド-官能基化ジシクロヘキシルホスファンを有するパラジウム(II)アリールクロリド錯体の合成を、本明細書に記載する。他のパラジウム(II)錯体は、他のすべてのホスファンリガンド並びに更なるアリール塩化物及び臭化物との類似性によって、合成することができる。
【0214】
【化43】
【0215】
ホスファンY*MePCy2(500mg、0.99mmol、1当量)及びビス(ジベンジリデンアセトン)-パラジウム(0)(742mg、1.09mmol)を、THF10ml中でRTで30分間撹拌した。溶液をろ過し、p-クロロトルエン1mlを加え、溶液を48時間撹拌した。暗黄色の沈殿物をろ過し、THF10mlで3回洗浄した。減圧下で乾燥した後、生成物を、暗黄色の固体として得た(515mg、0.69mmol、70%)。この錯体は、DCMを除く、すべての一般的な溶媒に不溶性であるが、ゆっくりと分解することが証明された。
【0216】
【化44】
【0217】
31P {1H} NMR (162 MHz, CD2Cl2) δ = 32.5 (d, 2JPP = 49.6 Hz), 35.1 (d, 2JPP = 49.6 Hz) ppm. 1H NMR (400 MHz, CD2Cl2) δ = 0.95 - 2.08 (m, 52H, CH + CH2, PCy2 + PCy3), 1.55 (dd, 3JHP = 12.8 Hz, 3JHP = 9.4 Hz, 3H, CH3), 2.14 (s, 3H, CH3, Tolyl), 2.57 (br, 3H, CH, PCy3, H1), 6.68 (m, 2H, CH, Tolyl), 7.08 (m, 2H, CH, Tolyl) ppm.
【0218】
(実施例3)
イリド-官能基化ホスファンとの遷移金属-触媒反応
A)アルキンの金触媒ヒドロアミノ化
この目的のために、実施例2B)のプロトコールに従って調製されたホスファン塩化金錯体を、アルキン及びアミンの1:1混合物に溶解し、ナトリウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート1当量を加えた。混合物を、以下の表に示した通りの条件下で反応させ、次の変換率及び収率を得た。触媒作用は、水性条件下で、又は反応混合物の空気への曝露下で、いかなる収率の減少も示さなかった。
【0219】
【表2】
【0220】
B)O-Hのアルキンへの金触媒分子内付加
ヒドロアミノ化に加えて、アルキンへのOHの付加はまた、行うことができる。したがって、THF中の4-ペンチン酸は、室温で、0.5モル%YSPCy2AuCl及び等モル量のナトリウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートと反応させると、14時間以内に完全に所望のラクトンになる。
【0221】
【化45】
【0222】
C)Pd-触媒C-Nカップリング反応
アミン及びハロ芳香族のC-Nカップリング反応を、公知の合成プロトコールに従って、それぞれのイリド-置換ホスファンで行った。市販のパラダサイクル(palladacycle)ジ-μ-クロロビス[2'-(アミノ-N)[1,1'-ビフェニル]-2-イル-C]ジパラジウム(II)を、パラジウム前駆物質として使用し、THF中のホスファンリガンド1当量と反応させた。ナトリウムtert-ブタノラートを加えて、アミン及びブロモ-又はクロロ芳香族を反応させた。
【0223】
【表3】
【0224】
グローブボックス中で、カリウムtert-ブタノラート(又はナトリウムtert-ブタノラート)1.5~2.0当量を、ネジ付き容器に加えた。グローブボックスの外側で、アリール塩化物(0.9~1.2mmol)及びアミン1.1当量並びに溶媒2mlを加えた。第2の容器中で、触媒溶液(以下を参照のこと)を調製し、触媒の対応する量を、この反応に加えた。反応混合物を、室温で撹拌した。表に示された期間の後、反応を、水で急冷し、生成物を、カラムクロマトグラフィーによって単離した。或いは、収率を、核磁気共鳴分光法によって決定した。p-フルオロクロロベンゼンの場合にはα,α,α-トリフルオロトルエン、及びフッ素-非含有クロロ芳香族の場合には1,3,5-トリメトキシベンゼンを、内部標準として用いた。定義された反応時間の後に決定する場合、少量の反応溶液を、取り除き、少量の水で急冷した。有機相を取り除き、ろ過し、溶媒を除去した。残留物を、CDCl3に溶解し、この変換を、生成物ピーク対内部標準比によって決定した。
【0225】
類似のやり方において、アリール臭化物は、このカップリング反応に使用することができる。
【0226】
触媒調製:
1)リガンドL1(又はL2~L6)及び等モル量のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(又はPd(OAc)2)を、THF(又はジオキサン、若しくはトルエン;Table(表)を参照のこと)に溶解し、室温で30分間撹拌した。その後、適切な量の溶液を、反応容器に加えた。
2)プレ触媒P1、P2、P4~P8を、THFに溶解し、室温で30分間撹拌した。その後、適切な量の溶液を、反応容器に加えた。
3)プレ触媒P3の対応する量を、反応溶液に直接加えた。
【0227】
公知のリガンド系とのリガンドの触媒活性の比較
【0228】
【化46】
【0229】
【表4】
【0230】
リガンドとしてのP*MePCy2(L1)による異なるアリール塩化物の適用
【0231】
【化47】
【0232】
収率は、単離した収率である。
【0233】
異なるアミン並びにP*MePCy2(L1)及びP*MePtBu2(L2)に基づいた触媒系の適用
【0234】
【化48】
【0235】
【表5】
【0236】
【表6】
【0237】
【表7】
【0238】
【表8】
【0239】
【表9】
【0240】
D)Pd-触媒C-Cカップリング反応
ボロン酸及びハロ芳香族のC-Cカップリング反応を、公知の合成プロトコールに従って、それぞれのイリド-置換ホスファンで行った。市販のパラダサイクルジ-μ-クロロビス[2'-(アミノ-N)[1,1'-ビフェニル]-2-イル-C]ジパラジウム(II)を、パラジウム前駆物質として使用し、THF中のホスファンリガンド1当量と反応させた。リン酸カリウムの水溶液を加えて、アミン及びブロモ-又はクロロ芳香族を反応させた。
【0241】
【表10】
【0242】
YPhoとのHeck反応
グローブボックス中で、炭酸カリウムを、撹拌棒付きシュレンク容器に加えた。乾燥DMF(ジメチルホルムアミド)2ml、アリールハロゲン化物(1.1mmol)及びオレフィン(2.1mmol)を加えた。
【0243】
触媒及びリガンドの原液を、シュレンク容器中で0.2mmolパラジウムアセテートPd(OAc)2及び0.2mmol YPhosを混合することにより調製した。乾燥THF(テトラヒドロフラン)1mlを加え、混合物を30分間撹拌し、このようにして得られた溶液0.1mlを、反応混合物に加え、すべてを、140℃で3時間撹拌した。収率を、内部標準としてα,α,α-トリフルオロトルエンを用いた、F-NMR分析により決定した。
【0244】
【化49】
【0245】
資金調達
本出願が基づくプロジェクトについて、欧州研究会議(ERC:European Research Council)の助成金は、European Union for Research and Innovation「Horizon 2020」(助成合意書番号677749)のプログラムの範囲内で提供された。