(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】車両用クリーナシステム
(51)【国際特許分類】
B60S 1/62 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
B60S1/62 110A
B60S1/62 110B
B60S1/62 120B
(21)【出願番号】P 2020508307
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010768
(87)【国際公開番号】W WO2019181766
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2018051234
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018051235
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪井 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠晃
(72)【発明者】
【氏名】河村 和貴
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131616(JP,A)
【文献】特開2008-198027(JP,A)
【文献】実開平05-072619(JP,U)
【文献】特開2016-009099(JP,A)
【文献】特開2013-159145(JP,A)
【文献】特開2012-236583(JP,A)
【文献】特開2005-075218(JP,A)
【文献】特開昭61-018543(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01862362(EP,A2)
【文献】特開2008-308066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部の情報を取得する外部センサと、
洗浄液を吐出して前記外部センサを洗浄するクリーナを有するクリーナユニットと、
前記洗浄液を貯留するタンクと、
前記クリーナユニットを制御するクリーナ制御部と、を有し、
前記クリーナ制御部は、前記タンク内の前記洗浄液が所定量以下の場合に、残量不足予測信号を、車両の走行を制御する車両制御部に出力可能に構成されて
おり、
前記車両制御部は、前記外部センサの出力に応じてアクセル制御信号とブレーキ制御信号とステアリング制御信号の少なくとも一つ以上が生成される自動運転モードと前記外部センサの出力と無関係に前記アクセル制御信号と前記ブレーキ制御信号と前記ステアリング制御信号が生成される手動運転モードとを選択的に実行可能に構成され、
前記クリーナ制御部は、前記車両制御部に前記残量不足予測信号を出力し、前記車両制御部に前記自動運転モードから前記手動運転モードに切り替えさせるように構成されている、車両用クリーナシステム。
【請求項2】
前記所定量は、前記タンク内の前記洗浄液の絶対量、前記タンクの満容量に対する前記洗浄液の残量の割合、前記クリーナの作動回数、前記洗浄液の消費予測に基づいて特定される前記洗浄液の使用可能な残り時間、走行予定距離または走行予定時間に対する前記洗浄液の使用可能な残量の少なくとも一つにより定められている、請求項
1に記載の車両用クリーナシステム。
【請求項3】
前記タンク内の前記洗浄液の残量を検出するセンサを有する、請求項1
または請求項
2に記載の車両用クリーナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用クリーナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、車両に搭載されたセンサなどに洗浄液を吐出する車両用クリーナが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、手動運転モードと自動運転モードを実行可能な自動運転車両において、自動運転モードに関するセンサの感度を良好に維持することが望まれる。このため、自動運転車両にも、自動洗浄モードで外部センサ等のセンサを洗浄可能な車両用クリーナが搭載されることがある。このような車両用クリーナは、自動運転モードでの走行に十分な残量の洗浄液が貯留されていることが好ましい。
【0005】
ところが、車両用クリーナを自動洗浄モードで実行する場合、ユーザは車両用クリーナの洗浄液の消費量の情報を取得しにくい。洗浄液の残量不足により外部センサを洗浄できずに外部センサが清浄でなくなれば、車両制御部は信頼性の高い外部情報に基づいて自動運転モードを実行することが難しい。
【0006】
一方、センサを洗浄可能な車両用クリーナシステムにおいて、タンク内の洗浄液の残量が少なくなってきた場合には、センサの感度を維持するための洗浄を継続しつつ、洗浄液を節約したいという要望がある。
【0007】
そこで本開示の第一の目的は、クリーナの洗浄液が残量不足となることを予防することが可能な車両用クリーナシステムを提供することにある。
【0008】
また、本開示の第二の目的は、センサの洗浄を継続しながら、クリーナの洗浄液を節約することが可能な車両用クリーナシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第一の目的を達成するため、本開示の一側面に係る車両用クリーナシステムは、
車両の外部の情報を取得する外部センサと、
洗浄液を吐出して前記外部センサを洗浄するクリーナを有するクリーナユニットと、
前記洗浄液を貯留するタンクと、
前記クリーナユニットを制御するクリーナ制御部と、を有し、
前記クリーナ制御部は、前記タンク内の前記洗浄液が所定量以下の場合に、残量不足予測信号を、車両の走行を制御する車両制御部に出力可能に構成されている。
【0010】
また、上記第二の目的を達成するため、本開示の一側面に係る車両用クリーナシステムは、
車両の外部の情報を取得する外部センサと、
洗浄液を吐出して前記外部センサを洗浄するクリーナを有するクリーナユニットと、
前記洗浄液を貯留するタンクと、
前記クリーナユニットを制御するクリーナ制御部と、を有し、
前記クリーナ制御部は、
前記タンク内の前記洗浄液の残量が所定量より多い場合に、前記クリーナを第1モードにより作動させ、
前記タンク内の前記洗浄液の残量が前記所定量以下の場合に、前記クリーナを前記第1モードよりも前記洗浄液の吐出量が少ない第2モードにより作動させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面によれば、クリーナの洗浄液が残量不足となることを予防することが可能な車両用クリーナシステムを提供することができる。
【0012】
本開示の一側面によれば、センサの洗浄を継続しながら、クリーナの洗浄液を節約することが可能な車両用クリーナシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の第一実施形態および第二実施形態の車両用クリーナシステムを搭載した車両の上面図である。
【
図2】第一実施形態および第二実施形態の車両システムのブロック図である。
【
図3】第一実施形態および第二実施形態の車両用クリーナシステムの模式図である。
【
図4】本開示の第一実施形態および第二実施形態の車両用クリーナシステムの主要部のブロック図である。
【
図5】本開示の第一実施形態の車両用クリーナシステムが実行するフローチャートである。
【
図6】本開示の第二実施形態の車両用クリーナシステムが実行するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一実施形態)
以下、本開示の第一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。
【0016】
図1は、第一実施形態に係る車両用クリーナシステム100(以下、クリーナシステム100とも称す)が搭載された車両1の上面図である。車両1は、クリーナシステム100を備えている。第一実施形態において、車両1は自動運転モードで走行可能な自動車である。
【0017】
まず、
図2を参照して車両1の車両システム2について説明する。
図2は、車両システム2のブロック図を示している。
図2に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、内部センサ5と、外部センサ6と、ランプ7と、HMI8(Human Machine Interface)と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、地図情報記憶部11とを備えている。さらに、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備えている。
【0018】
車両制御部3は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。車両制御部3は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、各種車両制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、各種車両制御データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)とにより構成されている。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。
【0019】
ランプ7は、車両1の前部に設けられるヘッドランプやポジションランプ、車両1の後部に設けられるリヤコンビネーションランプ、車両の前部または側部に設けられるターンシグナルランプ、歩行者や他車両のドライバーに自車両の状況を知らせる各種ランプなどの少なくとも一つである。
【0020】
HMI8は、ユーザからの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等をユーザに向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切り替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイである。
【0021】
内部センサ5は、自車両の情報を取得可能なセンサである。内部センサ5は、例えば、加速度センサ、車速センサ、車輪速センサ及びジャイロセンサ等の少なくとも一つである。内部センサ5は、車両1の走行状態を含む自車両の情報を取得し、該情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
内部センサ5は、HMI8の変位を検出するセンサ、ユーザが座席に座っているかどうかを検出する着座センサ、ユーザの顔の方向を検出する顔向きセンサ、車内に人がいるかどうかを検出する人感センサなどを備えていてもよい。
【0022】
外部センサ6は、自車両の外部の情報を取得可能なセンサである。外部センサは、例えば、カメラ、レーダ、LiDAR、GPS9、無線通信部10、等の少なくとも一つである。外部センサ6は、車両1の周辺環境(他車、歩行者、道路形状、交通標識、障害物等)を含む自車両の外部の情報を取得し、該情報を車両制御部3に出力するように構成されている。あるいは、外部センサ6は、天候状態を検出する天候センサや車両1の周辺環境の照度を検出する照度センサなどを備えていてもよい。
カメラは、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラは、可視光を検出するカメラや、赤外線を検出する赤外線カメラである。
レーダは、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ又はレーザーレーダ等である。
LiDARとは、Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Rangingの略語である。LiDARは、一般にその前方に非可視光を出射し、出射光と戻り光とに基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得するセンサである。
【0023】
外部センサ6の一種であるGPS9は、自車両である車両1に対する複数の人工衛星の距離を測定することにより車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。外部センサ6の一種である無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車の走行情報を他車から受信すると共に、車両1の走行情報を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。地図情報記憶部11は、地図情報が記憶されたハードディスクドライブ等の外部記憶装置であって、地図情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0024】
車両制御部3は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルといったユーザにより操作される操作子の変位を検出する内部センサ5の出力と、車速センサや車輪速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサなどの車両の状態を検出する内部センサ5の出力と、車両1の外部の情報を取得する外部センサ6の出力が、入力されるように構成されている。車両制御部3は、これらの出力に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成し、必要に応じてこれらの信号を制御(加工)するように構成されている。
【0025】
ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。
【0026】
車両1は、自動運転モードと手動運転モードで走行可能である。車両制御部3は、自動運転モードと手動運転モードとを選択的に実行可能である。
【0027】
自動運転モードにおいて、車両制御部3は、車両1の外部の情報を取得する外部センサ6の出力に応じてステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を自動的に生成する。車両制御部3は、ユーザが操作可能な操作子の変位を検出する内部センサ5の出力と無関係に、外部センサ6の出力に応じてステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を自動的に生成する。
例えば、自動運転モードにおいて、車両制御部3は、前カメラ6cが取得した車両1の前方の周辺環境情報や、GPS9の現在位置情報と地図情報記憶部11に記憶された地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を自動的に生成する。自動運転モードにおいて、車両1はユーザによらずに運転される。
【0028】
手動運転モードにおいて、車両制御部3は、通常時に、外部センサ6の出力と無関係にステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。すなわち、手動運転モードにおいて、車両制御部3は、通常時に、外部センサ6の出力と無関係に、ユーザのステアリングホイールの操作に基づいてステアリング制御信号を生成する。車両制御部3は、通常時に、外部センサ6の出力と無関係に、ユーザのアクセルペダルの操作に基づいてアクセル制御信号を生成する。車両制御部3は、外部センサ6の出力と無関係に、ユーザのブレーキペダルの操作に基づいてブレーキ制御信号を生成する。手動運転モードにおいて、車両1は通常時はユーザにより運転される。
【0029】
なお、手動運転モードにおいて、車両制御部3は、例えば内部センサ5である車輪速センサの出力に応じてブレーキ制御信号を制御するアンチロックブレーキ制御を実行してもよい。また、手動運転モードにおいて、車両制御部3は、内部センサ5である操舵角センサ、車輪速センサやヨーレートセンサの出力に応じてステアリング制御信号やアクセル制御信号、ブレーキ制御信号の少なくとも一つを制御する横滑り防止制御(Electric Stability Control)、トラクション制御などを実行してもよい。
あるいは手動運転モードにおいて、車両制御部3は、緊急時に、前カメラ6cなどの外部センサ6の出力に応じてステアリング制御信号とブレーキ制御信号を生成するプリクラッシュ制御や衝突回避制御を実行してもよい。このように、手動運転モードにおいて、車両制御部3は、緊急時には、外部センサ6の出力に応じてステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号の少なくとも一つを生成してもよい。
【0030】
手動運転モードにおいて、通常時にステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が生成されるトリガーは、ユーザの操作するステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルといった操作子の変位である。手動運転モードにおいて、車両制御部3は、通常時に、操作子の変位により生成されたステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号といった信号を内部センサ5や外部センサ6の出力に応じて制御(加工)してもよい。本実施形態において、ユーザの運転を内部センサ5や外部センサ6の出力に応じてアシストするいわゆるアシスト運転モードは、手動運転モードの一形態である。
【0031】
2018年現在で知られている自動運転モードのレベル0~5の定義に従えば、本実施形態の自動運転モードはレベル3~5(緊急時等を除く)に該当し、本実施形態の手動運転モードはレベル0~2に該当する。
【0032】
図1に戻り、車両1は、外部センサ6として、前LiDAR6f、後LiDAR6b、右LiDAR6r、左LiDAR6l、前カメラ6c、後カメラ6dを有している。前LiDAR6fは車両1の前方の情報を取得するように構成されている。後LiDAR6bは車両1の後方の情報を取得するように構成されている。右LiDAR6rは車両1の右方の情報を取得するように構成されている。左LiDAR6lは車両1の左方の情報を取得するように構成されている。前カメラ6cは車両1の前方の情報を取得するように構成されている。後カメラ6dは車両1の後方の情報を取得するように構成されている。
【0033】
なお、
図1に示した例では、前LiDAR6fは車両1の前部に設けられ、後LiDAR6bは車両1の後部に設けられ、右LiDAR6rは車両1の右部に設けられ、左LiDAR6lは車両1の左部に設けられた例を示しているが、本開示はこの例に限られない。例えば車両1の天井部に前LiDAR、後LiDAR、右LiDAR、左LiDARがまとめて配置されていてもよい。
【0034】
車両1は、ランプ7として、右ヘッドランプ7rと左ヘッドランプ7lを有している。右ヘッドランプ7rは車両1の前部のうちの右部に設けられ、左ヘッドランプ7lは車両1の前部のうちの左部に設けられている。右ヘッドランプ7rは左ヘッドランプ7lよりも右方に設けられている。
【0035】
車両1は、フロントウィンドウ1fと、リヤウィンドウ1bを有している。
【0036】
車両1は、本開示の実施形態に係るクリーナシステム100を有している。クリーナシステム100は、洗浄対象物に付着する水滴や泥や塵埃等の異物を洗浄媒体を用いて除去するシステムである。本実施形態において、クリーナシステム100は、前ウィンドウウォッシャ(以降、前WWと称す)101、後ウィンドウウォッシャ(以降、後WWと称す)102、前LiDARクリーナ(以降、前LCと称す)103、後LiDARクリーナ(以降、後LCと称す)104、右LiDARクリーナ(以降、右LCと称す)105、左LiDARクリーナ(以降、左LCと称す)106、右ヘッドランプクリーナ(以降、右HCと称す)107、左ヘッドランプクリーナ(以降、左HCと称す)108、前カメラクリーナ109a、後カメラクリーナ109bを有する。各々のクリーナ101~109a、109bは一つ以上のノズルを有し、ノズルから洗浄液または空気といった洗浄媒体を洗浄対象物に向けて吐出する。なお、各々のクリーナ101~109a、109bをクリーナユニット110と呼ぶことがある。また、前LC103、後LC104、右LC105、左LC106、前カメラクリーナ109a、後カメラクリーナ109bをセンサクリーナと呼ぶことがある。
【0037】
前WW101は、フロントウィンドウ1fを洗浄可能である。後WW102は、リヤウィンドウ1bを洗浄可能である。前LC103は、前LiDAR6fを洗浄可能である。後LC104は、後LiDAR6bを洗浄可能である。右LC105は、右LiDAR6rを洗浄可能である。左LC106は、左LiDAR6lを洗浄可能である。右HC107は、右ヘッドランプ7rを洗浄可能である。左HC108は、左ヘッドランプ7lを洗浄可能である。前カメラクリーナ109aは、前カメラ6cを洗浄可能である。後カメラクリーナ109bは、後カメラ6dを洗浄可能である。
【0038】
図3は、クリーナシステム100の模式図である。クリーナシステム100は、クリーナ101~109a、109bの他に、前タンク111、前ポンプ112、後タンク113、後ポンプ114、クリーナ制御部116を有している。以下、前タンク111及び後タンク113のことをタンクと呼ぶことがある。
【0039】
クリーナ制御部116は、自動洗浄モードによりセンサクリーナ103~106、109a、109bを作動させるように構成されている。自動洗浄モードとは、ユーザの操作に応じて信号を出力するクリーナスイッチ(図示省略)の出力する信号によらずに、センサクリーナ103~106、109a、109bを作動させるモードである。
【0040】
前タンク111は、前タンク111内の洗浄液を、前WW101、前LC103、右LC105、左LC106、右HC107、左HC108、前カメラクリーナ109aに供給する。後タンク113は、後タンク113内の洗浄液を、後WW102、後LC104、後カメラクリーナ109bに供給する。
【0041】
前WW101、前LC103、右LC105、左LC106、右HC107、左HC108、前カメラクリーナ109aは、前ポンプ112を介して前タンク111に接続されている。前ポンプ112は前タンク111に貯留された洗浄液を、前WW101、前LC103、右LC105、左LC106、右HC107、左HC108、前カメラクリーナ109aに送る。
【0042】
後WW102と後LC104と後カメラクリーナ109bは、後ポンプ114を介して後タンク113に接続されている。後ポンプ114は後タンク113に貯留された洗浄液を後WW102と後LC104と後カメラクリーナ109bに送る。
【0043】
各々のクリーナ101~109a、109bには、ノズルを開状態にさせて洗浄液を洗浄対象物に吐出させるアクチュエータが設けられている。各々のクリーナ101~109a、109bに設けられたアクチュエータは、クリーナ制御部116に電気的に接続されている。また、クリーナ制御部116は、前ポンプ112、後ポンプ114、車両制御部3にも電気的に接続されている。
【0044】
図4は、クリーナシステム100の主要部のブロック図である。
図4に示すように、クリーナシステム100は、外部センサ6を洗浄するクリーナユニット110と、このクリーナユニット110の動作を制御するクリーナ制御部116とを有している。なお、
図4においては、クリーナユニット110として前LC103と前カメラクリーナ109aのみを示しているが、
図3に示したようにクリーナシステム100はこの他のクリーナユニット110を有していることはもちろんである。
【0045】
クリーナ制御部116は、各々のクリーナユニット110を制御するように構成されている。クリーナ制御部116は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサと1以上のメモリを含む少なくとも一つのマイクロコントローラと、トランジスタ等のアクティブ素子及びパッシブ素子を含むその他電子回路を含んでもよい。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)である。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)を含む。ROMには、クリーナユニット110の制御プログラムが記憶されてもよい。
【0046】
プロセッサは、ROMに記憶されたプログラム群から指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。また、電子制御ユニット(ECU)は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programammable Gate Array)等の集積回路(ハードウェア資源)によって構成されてもよい。さらに、電子制御ユニットは、少なくとも一つのマイクロコントローラと集積回路との組み合わせによって構成されてもよい。
【0047】
また、本実施形態において、車両用クリーナシステム100は、外部センサ6が清浄か否かを検出可能な汚れセンサ(図示省略)を有している。汚れセンサは、例えば外部センサ6の感度が所定の閾値より低下した場合に外部センサ6が汚れていると判定し、汚れ信号をクリーナ制御部116に送信するように構成されている。汚れセンサは、外部センサ6とは別に備えられるセンサであってもよく、外部センサ6自体に汚れていると判定させる機能を持たせた外部センサ6兼用のセンサであってもよい。
【0048】
ここで、外部センサ6の感度を維持するために、車両用クリーナシステム100の洗浄液の残量の情報を取得したいとの要望がある。特に、センサクリーナ103~106、109a、109bが自動洗浄モードで作動している場合、洗浄液がどのくらい消費されたのかの情報を取得することが難しい。さらに、自動運転モードで走行する車両1においては、外部センサ6の感度を良好に維持することが求められるため、センサクリーナ103~106、109a、109bの作動頻度は前WW101、後WW102などの作動頻度と比べて多くなり、センサクリーナ103~106、109a、109bのタンクの洗浄液の消費量が多くなる。車両制御部3が信頼性の高い外部情報に基づいて自動運転モードを実行するためには、洗浄液の残量不足により外部センサを洗浄できない状態を防ぐ必要があるので、特に自動運転モードにおいて洗浄液の残量が近い将来に不足することを知る必要がある。
そこで、本実施形態の車両用クリーナシステム100は、クリーナの洗浄液が近い将来に残量不足になることをユーザに通知する構成を有している。
【0049】
クリーナシステム100は、洗浄液の残量の情報を取得する構成として、残量センサを有している。
図4に示すように、クリーナシステム100は、残量センサとして、前タンク111内の洗浄液の残量を検出する前タンク残量センサ120と、後タンク113内の洗浄液の残量を検出する後タンク残量センサ(図示省略)とを有している。前タンク残量センサ120及び後タンク残量センサは、それぞれ、クリーナ制御部116に電気的に接続され、検出した洗浄液の残量の情報をクリーナ制御部116に出力するように構成されている。
前タンク残量センサ120と後タンク残量センサとは同一の構成であるので、以下、前タンク残量センサ120について説明し、後タンク残量センサの説明を省略する。
【0050】
前タンク残量センサ120は、前タンク111内に設けられている。前タンク残量センサ120は、本例では、前タンク111内の洗浄液の絶対量を検出する。前タンク111内の洗浄液の残量は、例えば、前タンク111内の洗浄液の液面を検出し、この液面の検出結果に基づいて洗浄液の残量の絶対量(例えば100ml)を特定することにより検出される。
【0051】
なお、前タンク残量センサ120は、前タンク111内の洗浄液の相対量を検出するセンサであってもよい。洗浄液の相対量は、例えば前タンク111の満容量に対する洗浄液の残量の割合であり、満容量が2000mlで洗浄液の残量が100mlの場合には5%である。
【0052】
クリーナシステム100は、洗浄液の残量が少なくなったことを車両制御部3に通知するように構成されている。具体的には、クリーナ制御部116は、タンク内の洗浄液が所定量以下の場合に洗浄液の残量が近い将来に不足すると判定して残量不足予測信号を生成し、この残量不足予測信号を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0053】
ここで、所定量は、タンク内の洗浄液の絶対量、タンクの満容量に対する洗浄液の残量の割合、クリーナの作動回数、洗浄液の消費予測に基づいて特定される洗浄液の使用可能な残り時間、走行予定距離または走行予定時間に対する洗浄液の使用可能な残量の少なくとも一つにより定められる。
【0054】
タンク内の洗浄液の絶対量により定められる所定量は、例えば100mlなどの液量である。タンクの満容量に対する洗浄液の残量の割合により定められる所定量は、例えばタンクの満容量の10%である。
【0055】
所定量がクリーナの作動回数により定められる場合、洗浄液の残量は、前タンク残量センサ120のような別体のセンサを用いずに、クリーナ制御部116が推定してもよい。例えば、クリーナ制御部116は、クリーナ101~109a、109bの作動回数により、タンクの洗浄液の残量を推定してもよい。クリーナ101~109a、109bの作動回数により定められる所定量は、例えば、クリーナ制御部116に予め記憶された前タンク111の満容量に対するクリーナの最大作動回数から、クリーナ101~109a、109bの実際の作動回数を差し引いて推定される作動可能回数(例えば2000回)である。
【0056】
所定量は、洗浄液の消費予測に基づいてクリーナ制御部116により定められてもよい。洗浄液の消費予測は、過去の洗浄液の消費量に関する情報及び将来の走行予定情報を用いて定められてもよい。
過去の洗浄液の消費量に関する情報は、例えば、過去10時間における洗浄液の消費量が100ml、過去一か月における洗浄液の消費量が100ml、過去100kmの走行で消費した洗浄液が消費量100ml等である。例えば、過去10時間における洗浄液の消費量が100mlであり、前タンク111内の洗浄液の残量が200mlである場合、洗浄液の消費予測に基づいて特定される洗浄液の使用可能な残り時間は20時間である。
将来の走行予定情報は、カーナビゲーションシステムでユーザが設定した情報に基づいて定められてもよい。将来の走行予定情報は、例えば、カーナビゲーションシステムにおける目的地までの走行予定距離(例えば200km)、目的地までの走行予定時間(例えば2時間30分)である。例えば、過去100kmの走行における洗浄液の消費量情報が100mlであり、カーナビゲーションシステムで指定された走行予定距離が200kmである場合、走行予定距離に対する洗浄液の使用可能な残量は200mlである。
【0057】
クリーナ制御部116から残量不足予測信号を取得した車両制御部3は、ユーザに洗浄液の残量が近い将来に不足することを通知する。洗浄液の残量が近い将来に不足することの通知は、例えば、警告ランプの点灯、「走行予定距離に対する洗浄液が不足しています」等の文字や音声であってもよい。警告ランプや文字情報の表示は、例えば、車内に設置されたモニター(図示省略)に表示されてもよい。
【0058】
また、残量不足予測信号を取得した車両制御部3は、車両1が自動運転モードを実行している場合には、ユーザに、自動運転モードを解除することを通知する。車両1が自動運転モードを実行していない場合には、残量不足予測信号を取得した車両制御部3は、ユーザに、自動運転モードを実行できないことを通知する。ユーザへの通知は、洗浄液の残量が近い将来に不足することの通知と同様に、「洗浄液が不足しています。自動運転モードを解除します。」との音声や警告ブザー、ランプの点灯、自動運転モードを解除する旨の文字表示などで行うことができる。
【0059】
車両1は、車両制御部3による自動運転モードを解除する通知の後に、自動運転モードが解除されるとともに、ユーザによる手動運転モードに切り替えられる。このように、自動運転モードを解除する前に自動運転モードを解除する通知が行われるので、車両1はユーザによる手動運転に適切に引き継がれて走行が継続される。
【0060】
図5は、クリーナ制御部116が実行するフローチャートである。
図5に示すように、クリーナ制御部116は、タンク内の洗浄液の残量の情報を取得する(ステップS01)。例えば、クリーナ制御部116は、前タンク111に設けられた前タンク残量センサ120から、前タンク111内の洗浄液の残量の絶対量が100mlであるとの情報を取得する。
【0061】
次に、クリーナ制御部116は、所定量の情報と取得した洗浄液の残量とを比較する。例えば、所定量が50mlである場合、クリーナ制御部116は、取得した洗浄液の絶対量100mlと所定量50mlとを比較する。その場合、取得した洗浄液の残量が所定量より多いので(ステップS02:No)、クリーナ制御部116はステップS01に戻り、タンク内の洗浄液の残量を取得する。
【0062】
一方、所定量が例えば200mlである場合、クリーナ制御部116は、取得した洗浄液の残量100mlと所定量200mlとを比較する。クリーナ制御部116が取得した洗浄液の残量の情報が所定量以下であるので(ステップS02:Yes)、クリーナ制御部116は前タンク111内の洗浄液の残量が近い将来に不足すると判定する。洗浄液の残量が近い将来に不足すると判定したクリーナ制御部116は、残量不足予測信号を生成する。クリーナ制御部116は、残量不足予測信号を車両制御部3に出力する(ステップS03)。
【0063】
このように、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100によれば、クリーナ制御部116は、タンク内の洗浄液が所定量以下の場合に残量不足予測信号を車両制御部3に出力するように構成されている。このため、クリーナ103~106、109a、109bを作動させるための洗浄液の残量が近い将来に不足することをユーザに知らせることができる。
【0064】
つまり、洗浄液の残量不足により外部センサ6を洗浄できずに外部センサ6が清浄でなくなれば、車両制御部3は信頼性の高い外部情報に基づいて自動運転モードを実行することが難しい。本実施形態に係る車両用クリーナシステム100とは異なり、残量不足予測信号を出力することが無い構成の車両においては、ユーザがクリーナの洗浄液の残量を判断しなくてはならない。この場合、ユーザが、クリーナの洗浄液の残量が近い将来に不足すると知ることは難しい。
これに対し、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100によれば、洗浄液が所定量以下の場合には残量不足予測信号が出力されるので、クリーナ103~106、109a、109bの洗浄液の残量が近い将来に不足することを知ることが出来る。このように、外部センサ6を清浄に保つための洗浄液が近い将来に不足することを確実に認識することができるので、不足した洗浄液を補充してから走行する等、洗浄液の残量が確保された状態で走行することができる。これにより、クリーナの洗浄液が残量不足となることを予防することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100によれば、洗浄液の残量が近い将来に不足することの判定基準となる所定量は、タンク内の洗浄液の絶対量、タンクの満容量に対する洗浄液の残量の割合、クリーナの作動回数、洗浄液の消費予測に基づいて特定される洗浄液の使用可能な残り時間、走行予定距離または走行予定時間に対する洗浄液の使用可能な残量の少なくとも一つにより定められている。このため、タンク内の残量を適切に特定して、クリーナの洗浄液の残量が近い将来に不足するかどうかの判定を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100によれば、タンク内の洗浄液の残量を検出する前タンク残量センサ120及び後タンク残量センサを有するので、前タンク111内や後タンク113内の洗浄液の残量を直接検出して残量の情報を取得することができる。このようにして取得した残量の情報を用いて、クリーナの洗浄液の残量が近い将来に不足するかどうかの判定を行うことができる。
【0067】
さらに、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100によれば、クリーナ制御部116は車両制御部3に残量不足予測信号を出力し、車両制御部3に自動運転モードから手動運転モードに切り替えさせるように構成されている。このため、洗浄液の残量が不足して外部センサ6を清浄な状態に維持できない状態で自動運転モードが実行されることが防がれる。
【0068】
(第二実施形態)
次に、本開示の第二実施形態に係る車両用クリーナシステム100Aについて、
図1から
図4までおよび
図6を参照しながら説明する。第一実施形態に係る車両用クリーナシステム100の構成要素と実質的に同一の構成や機能を有する第二実施形態に係る車両用クリーナシステム100Aの構成要素については、第一実施形態と同一の参照符号を付与し、繰り返しとなる説明は省略する。
【0069】
車両用クリーナシステム100Aにおいて、タンク内の洗浄液の残量が少なくなってきた場合には洗浄液を節約したいという要望がある。特に、車両制御部3が信頼性の高い外部情報に基づいて自動運転モードを実行するためには、外部センサ6の感度を良好に維持することが求められている。この外部センサ6の感度を維持するために、洗浄液の残量が少なくなってきた場合には、洗浄液の残量に応じて洗浄液の吐出量を調整したいという要望がある。
そこで、第二実施形態の車両用クリーナシステム100Aは、タンク内の洗浄液の残量を取得する構成及び洗浄液の残量に応じて洗浄液の吐出量を調整可能な構成を有している。
【0070】
クリーナシステム100Aは、タンク内の洗浄液の残量に応じてクリーナ101~109a、109bを作動させる。具体的には、クリーナ制御部116は、タンク内の洗浄液の残量が所定量より多い場合に、クリーナ101~109a、109bを第1モードにより作動させ、タンク内の洗浄液の残量が所定量以下の場合に、クリーナ101~109a、109bを第1モードよりも洗浄液の吐出量が少ない第2モードにより作動させる。
【0071】
所定量は、実施形態1における洗浄液の残量の所定量と同様に、タンク内の洗浄液の絶対量、タンクの満容量に対する洗浄液の残量の割合、クリーナ101~109a、109bの作動回数、洗浄液の消費予測に基づいて特定される洗浄液の使用可能な残り時間、走行予定距離または走行予定時間に対する洗浄液の使用可能な残量の少なくとも一つにより定められる。
【0072】
第1モードは、洗浄液の残量が所定量より多い状態で使用されるモードである。この第1モードにおいては、クリーナ制御部116は、車両用クリーナシステム100Aにおける通常の吐出量の洗浄液を吐出して外部センサ6を洗浄する。例えば、第1モードにおいて、クリーナ制御部116は、洗浄液を1回の洗浄につき3ml吐出するように、クリーナ101~109a、109bを作動させる。
【0073】
第2モードは、洗浄液の残量が所定量以下の場合に使用されるモードである。洗浄液の残量が所定量以下の場合は、継続的に外部センサ6を洗浄するための洗浄液の残量を確保するべく、洗浄液の吐出量を抑えたい状態である。そこで、第2モードでは、クリーナ制御部116は、第1モードの洗浄液の吐出量よりも少ない吐出量でクリーナ101~109a、109bを作動させる。例えば、第1モードの洗浄液の吐出量が1回の洗浄について3mlの場合、第2モードの洗浄液の吐出量は1回の洗浄について1mlである。
【0074】
図6は、クリーナ制御部116が実行するフローチャートである。
図6に示すように、クリーナ制御部116は、車両制御部3またはユーザの操作から、クリーナ作動信号を取得する(ステップS11)。例えば、クリーナ制御部116は、自動洗浄モードの実行中に、車両制御部3から外部センサ6を洗浄するためのクリーナ作動信号を取得する。
【0075】
次に、クリーナ制御部116は、タンク内の洗浄液の残量の情報を取得する(ステップS12)。例えば、クリーナ制御部116は、前タンク111に設けられた前タンク残量センサ120から、前タンク111内の洗浄液の残量の絶対量が100mlであるとの情報を取得する。なお、前タンク残量センサ120を用いずに、クリーナ101~109a、109bの作動回数等に基づいて、クリーナ制御部116が前タンク111内の残量を演算して推定してもよい。
【0076】
次に、クリーナ制御部116は、前タンク111内の洗浄液の残量が0に等しいかどうかを判定する(ステップS13)。
前タンク111の内の洗浄液の残量が0である場合(ステップS13:Yes)、クリーナ制御部116は洗浄液による洗浄を行わない。この場合には、クリーナ103~109a、109bから空気を吐出して外部センサ6の洗浄が行われる。
前タンク111内の洗浄液の残量が0ではない場合(ステップS13:No)、クリーナ制御部116は、前タンク111内の残量が所定量以下であるか否かの判定を行う(ステップS14)。
【0077】
前タンク111内の洗浄液の残量が所定量より多い場合(ステップS14:No)、クリーナ制御部116は101~109a、109bを第1モードにより作動させる(ステップS15)。
例えば、ステップS12で取得した残量が100mlであり、所定量が50mlである場合、残量は所定量以下ではないので(ステップS14:No)、クリーナ制御部116はクリーナ101~109a、109bを第1モードにより作動させる(ステップS15)。
【0078】
一方、前タンク111内の洗浄液の残量が所定量以下の場合(ステップS14:Yes)、クリーナ制御部116は、クリーナ101~109a、109bを第2モードにより作動させる(ステップS16)。
例えば、ステップS12で取得した残量が100mlであり、所定量が200mlである場合、洗浄液の残量は所定量以下であるので(ステップS14:Yes)、クリーナ制御部116は第2モードでクリーナ101~109a、109bを作動させる(ステップS16)。
【0079】
このように、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100Aによれば、クリーナ制御部116は、タンク内の残量が所定量より多い場合にはクリーナ101~109a、109bを第1モードで作動させ、タンク内の残量が所定量以下の場合にはクリーナ101~109a、109bを第1モードよりも洗浄液の吐出量が少ない第2モードで作動させる。このため、タンク内の洗浄液が所定量以下の場合に、外部センサ6の洗浄を継続しながら、洗浄液の吐出量を抑えることができる。これにより、タンク内の洗浄液を節約することができる。
【0080】
つまり、洗浄液の残量不足により外部センサ6を洗浄できずに外部センサ6が清浄でなくなれば、車両制御部3は信頼性の高い外部情報に基づいて自動運転モードを実行することが難しい。本実施形態に係る車両用クリーナシステム100Aとは異なり、第1モード及び第2モードを備えず、一定の洗浄液の吐出量でクリーナを作動させるクリーナシステムにおいては、クリーナの洗浄液を節約したい場合、ユーザがクリーナの洗浄液を抑えるためにクリーナの作動回数を手動で減らしたり、吐出量の調整ができない自動洗浄モードの実行を控えたりしなくてはならない。しかし、このような調節では、外部センサを清浄に保つための洗浄を継続しながら、洗浄液を節約することは難しい。
これに対し、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100Aによれば、タンク内の洗浄液の残量が所定量より多い場合に、クリーナ制御部116はクリーナ101~109a、109bを第1モードにより作動させる。タンク内の洗浄液の残量が所定量以下の場合に、クリーナ制御部116は、クリーナ101~109a、109bを、第1モードよりも洗浄液の吐出量が少ない第2モードにより作動させる。このため、外部センサ6を清浄に保つための洗浄液を使用しながら、洗浄液の残量を節約することが出来る。
【0081】
また、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100Aによれば、第1モード、第2モードの判定基準となる所定量は、タンク内の洗浄液の絶対量、タンクの満容量に対する洗浄液の残量の割合、クリーナ101~109a、109bの作動回数、洗浄液の消費予測に基づいて特定される洗浄液の使用可能な残り時間、走行予定距離または走行予定時間に対する洗浄液の使用可能な残量の少なくとも一つにより定められている。このため、タンク内の残量を適切に特定して、第1モード、第2モードのうち適切なモードでクリーナ101~109a、109bを作動させることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る車両用クリーナシステム100Aによれば、タンク内の洗浄液の残量を検出する前タンク残量センサ120及び後タンク残量センサを有するので、前タンク111内や後タンク113内の洗浄液の残量を直接検出して残量の情報を取得することができる。このようにして取得した残量の情報を用いて、第1モード、第2モードのうち適切なモードを選択することができる。
【0083】
<種々の変形例>
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0084】
上記した各実施形態では、クリーナ制御部116は自動洗浄モードを実行する例を説明したが、クリーナ制御部116は手動によりクリーナ101~109a、109bを作動させる手動モードを実行してもよい。
【0085】
上述した各実施形態では、外部センサ6を洗浄するクリーナとして、LiDAR6f、6b、6r、6l、前カメラ6cおよび後カメラ6dを洗浄するセンサクリーナ103~106、109a、109bを説明したが、本開示はこれに限られない。クリーナシステム100は、レーダを洗浄するクリーナなどを、センサクリーナ103~106、109a、109bの代わりに有していてもよいし、センサクリーナ103~106、109a、109bとともに有していてもよい。
【0086】
なお、LiDAR6f、6b、6r、6lなどの外部センサ6は、検出面と、検出面を覆うカバーを有していることがある。外部センサ6を洗浄するクリーナは、検出面を洗浄するように構成されていてもよいし、センサを覆うカバーを洗浄するように構成されていてもよい。
【0087】
クリーナシステム100が吐出する洗浄液は、水、あるいは洗剤を含む。フロントウィンドウ1f、リヤウィンドウ1b、右ヘッドランプ7r、左ヘッドランプ7l、前LiDAR6f、後LiDAR6b、右LiDAR6r、左LiDAR6l、前カメラ6c、後カメラ6dのそれぞれに吐出する洗浄媒体は、相異なっていてもよいし、同じでもよい。
【0088】
なお、上述した各実施形態では、クリーナ101、103、105~109aが前タンク111に接続され、クリーナ102、104、109bが後タンク113に接続された例を説明したが、本開示はこれに限られない。
クリーナ101~109a、109bが単一のタンクに接続されていてもよい。クリーナ101~109a、109bがそれぞれ互いに異なるタンクに接続されていてもよい。
あるいは、クリーナ101~109a、109bが、その洗浄対象の種類ごとに共通のタンクに接続されていてもよい。例えば、前LC103、後LC104、右LC105、左LC106が共通の第一タンクに接続され、右HC107、左HC108が第一タンクと異なる第二タンクに接続されるように構成してもよい。
あるいは、クリーナ101~109a、109bが、その洗浄対象の配置位置ごとに共通のタンクに接続されていてもよい。例えば、前WW101と前LC103と前カメラクリーナ109aが共通の前タンクに接続され、右LC105と右HC107が共通の右タンクに接続され、後WW102と後LC104と後カメラクリーナ109bが共通の後タンクに接続され、左LC106と左HC108が共通の左タンクに接続されるように構成してもよい。
【0089】
また上述した各実施形態では、クリーナ101~109a、109bに設けられたアクチュエータを作動させることによりクリーナ101~109a、109bから洗浄媒体を吐出させる例を説明したが、本開示はこれに限られない。
クリーナ101~109a、109bのそれぞれに常閉バルブが設けられており、タンクとクリーナ101~109a、109bとの間が常に高圧となるようにポンプが作動されており、クリーナ101~109a、109bに設けられたバルブをクリーナ制御部116が開けることにより、クリーナ101~109a、109bから洗浄媒体を吐出させるように構成してもよい。
あるいは、クリーナ101~109a、109bのそれぞれがそれぞれ個別のポンプに接続されており、それぞれのポンプを個別にクリーナ制御部116が制御することにより、クリーナ101~109a、109bからの洗浄媒体の吐出を制御するように構成してもよい。この場合、クリーナ101~109a、109bのそれぞれは、相異なるタンクに接続されていてもよいし、共通のタンクに接続されていてもよい。
【0090】
クリーナ101~109a、109bのノズルには、洗浄媒体を吐出する1つ以上の吐出穴が設けられている。クリーナ101~109a、109bのノズルには、洗浄液を吐出する1つ以上の吐出穴と、空気を吐出する1つ以上の吐出穴とが設けられていてもよい。
【0091】
各々のクリーナ101~109a、109bは、それぞれ個別に設けてもよいし、複数をユニット化して構成してもよい。例えば、右LC105と右HC107を単一のユニットとして構成してもよい。この場合、右ヘッドランプ7rと右LiDAR6rとが一体化された態様に対して、右LC105と右HC107を単一のユニットとして構成するとよい。
【0092】
また、単一の電子制御ユニットがクリーナ制御部116と車両制御部3の両方として機能するように構成されてもよい。
【0093】
上記第二実施形態では、第1モード、第2モードにおける吐出量を絶対量(ml)で説明したが、第1モード、第2モードにおける作動態様は上記した例示に限らない。例えば、1秒間当たりの吐出量が一定である場合に、第1モードは洗浄液を3秒間吐出し、第2モードは洗浄液を1秒間吐出するように設定されていてもよい。また、1回当たりの吐出量が一定である場合に、第1モードは3回洗浄液を吐出し、第2モードは1回洗浄液を吐出するように設定されていてもよい。また、第1モードは1回当たりの吐出量2mlを3回、第2モードは1回当たりの吐出量1mlを1回等、吐出量(ml等)、吐出時間(秒等)及び吐出回数(回)の少なくとも二つ以上の組み合わせにより、第1モードの吐出量と第2モードの吐出量を異ならせるように設定されていてもよい。
また、第1モード、第2モードにおいて、洗浄液の吐出に加えて、空気(洗浄媒体)を吐出してもよい。例えば、1秒当たりの洗浄液及び空気の吐出量が一定である場合に、第1モードは洗浄液を3秒間及び空気を3秒間吐出し、第2モードは洗浄液を1秒間及び空気を1秒間吐出するように設定されていてもよい。
【0094】
また、第2モードは、第1モードよりも洗浄液の吐出量が少ないモードであればよく、洗浄液を吐出しないモードとしてもよい。例えば、1秒当たりの洗浄液及び空気の吐出量が一定である場合に、第1モードは洗浄液を1秒間及び空気を1秒間吐出し、第2モードは洗浄液を吐出せずに空気を2秒間吐出するように設定されていてもよい。
【0095】
また、上記第二実施形態では第1モード及び第2モードの2種類を例に説明したが、モードの作動態様は上記に限らない。例えば、クリーナ制御部は、上記第1モードよりも洗浄液の残量が少なく、上記第2モードよりも洗浄液の残量が多い第3モードによりクリーナ101~109a、109bを作動させる等、複数のモードによりクリーナ101~109a、109bを作動させてもよい。
【0096】
また、上記第二実施形態ではクリーナ作動信号を取得した後に第1モード、第2モードを判定する例を説明したが、クリーナ作動信号の取得のタイミングは上記した例に限らない。例えばクリーナ制御部116が第1モード、第2モードのいずれかを選択した後に、クリーナ作動信号を取得してもよい。
【0097】
本出願は、2018年3月19日に出願された日本国特許出願(特願2018-51234号)と、2018年3月19日に出願された日本国特許出願(特願2018-51235号)とに基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。