(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】可変速モータによって管理される差動率を有する段付遊星歯車を含む差動システム及び関連する動作方法
(51)【国際特許分類】
F16H 48/36 20120101AFI20230522BHJP
F16H 3/72 20060101ALI20230522BHJP
F16H 3/64 20060101ALI20230522BHJP
B60K 23/04 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
F16H48/36
F16H3/72 A
F16H3/64
B60K23/04 E
(21)【出願番号】P 2020513803
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 US2018050086
(87)【国際公開番号】W WO2019051314
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-07
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518337692
【氏名又は名称】チュー,ショーン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ショーン
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09709148(US,B1)
【文献】特開2006-038229(JP,A)
【文献】米国特許第02746319(US,A)
【文献】国際公開第2014/147734(WO,A1)
【文献】特開平06-300095(JP,A)
【文献】特開2007-177916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/36
F16H 3/72
F16H 3/64
B60K 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の第1の車軸及び第2の車軸に係合するように構成され、前記車両の駆動軸によって駆動されるように構成される差動装置と、
前記車両の可変速可逆モータによって駆動されるように構成される差動制御ピニオン歯車と、
前記差動装置に係合するように、及び前記差動制御ピニオン歯車に係合するように構成される第1の複数の調整歯車であって、前記第1の複数の調整歯車が、
第1の遊星歯車キャリア、
段付遊星歯車の第1のセットであって、各々が前記第1の遊星歯車キャリアに結合され、各々が大きい方の直径部分及び小さい方の直径部分を含む、段付遊星歯車の第1のセット、並びに
段付遊星歯車の第2のセットであって、各々が前記第1の遊星歯車キャリアに結合され、各々が大きい方の直径部分及び小さい方の直径部分を含む、段付遊星歯車の第2のセットを備える、第1の複数の調整歯車と、
前記差動装置に係合するように、及び前記差動制御ピニオン歯車に係合するように構成される第2の複数の調整歯車であって、前記第2の複数の調整歯車が、
第2の遊星歯車キャリア、
段付遊星歯車の第3のセットであって、各々が前記第2の遊星歯車キャリアに結合され、各々が大きい方の直径部分及び小さい方の直径部分を含む、段付遊星歯車の第3のセット、並びに
段付遊星歯車の第4のセットであって、各々が前記第2の遊星歯車キャリアに結合され、各々が大きい方の直径部分及び小さい方の直径部分を含む、段付遊星歯車の第4のセットを備える、第2の複数の調整歯車と、を備え、
前記第1の複数の調整歯車及び前記第2の複数の調整歯車が、前記可変速可逆モータによって生み出される前記差動制御ピニオン歯車の回転を通じて、前記第2の車軸の
回転速度に対して前記第1の車軸の
回転速度を制御可能に変更するように構成される、歯車装置アセンブリ。
【請求項2】
前記第1の複数の調整歯車が、
前記差動制御ピニオン歯車によって駆動されるように構成される外歯を有し、前記段付遊星歯車の第1のセットとかみ合うように構成される内歯を有する、第1の外歯付き輪歯車をさらに備え、
前記第2の複数の調整歯車が、
前記差動制御ピニオン歯車によって駆動されるように構成される外歯を有し、前記段付遊星歯車の第3のセットとかみ合うように構成される内歯を有する、第2の外歯付き輪歯車をさらに備える、請求項1に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項3】
前記第1の外歯付き輪歯車の前記外歯が、前記差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成され、
前記第2の外歯付き輪歯車の前記外歯が、前記差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される、請求項2に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項4】
前記第1の外歯付き輪歯車の前記外歯が、前記差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成され、
前記歯車装置アセンブリが、前記差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される外歯の第1のセットを含む逆転軸をさらに備え、
前記第2の外歯付き輪歯車の前記外歯が、前記逆転軸の外歯の第2のセットとかみ合うように構成される、請求項2に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項5】
前記歯車装置アセンブリが、
前記差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される歯車、及び前記第1の外歯付き輪の前記外歯とかみ合うように構成される歯車を含む第1の延長軸と、
前記差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される歯車、及び前記第1の外歯付き輪の前記外歯とかみ合うように構成される歯車を含む第2の延長軸とをさらに含む、請求項2に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項6】
前記差動制御ピニオン歯車が、ベベルピニオン歯車であり、
前記差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される前記第1の延長軸の前記歯車が、ベベル歯車であり、
前記差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される前記第2の延長軸の前記歯車が、ベベル歯車である、請求項5に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項7】
前記第1の外歯付き輪の前記外歯とかみ合うように構成される前記第1の延長軸の前記歯車が、平歯車又ははすば歯車であり、
前記第2の外歯付き輪の前記外歯とかみ合うように構成される前記第2の延長軸の前記歯車が、平歯車又ははすば歯車である、請求項5又は6に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項8】
前記段付遊星歯車の第1のセット内の各段付遊星歯車の前記大きい方の直径部分の歯が、前記第1の外歯付き輪歯車の前記内歯とかみ合うように構成され、
前記段付遊星歯車の第3のセット内の各段付遊星歯車の前記大きい方の直径部分の歯が、前記第2の外歯付き輪歯車の前記内歯とかみ合うように構成される、請求項2から7のいずれか一項に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項9】
前記歯車装置アセンブリは、前記差動制御ピニオン歯車の回転が、前記第1の外歯付き輪歯車の第1の回転、及び前記第2の外歯付き輪歯車の等しくかつ反対の回転を駆動するように構成されており、
前記第1の複数の調整歯車及び前記第2の複数の調整歯車が、前記第1の外歯付き輪歯車のゼロ回転及び前記第2の外歯付き輪歯車のゼロ回転が、前記第1の車軸と前記第2の車軸との間の回転速度における差なしに相当するように構成される、又は、
前記第1の複数の調整歯車及び前記第2の複数の調整歯車が、第1の外歯付き輪歯車の回転速度が、前記第1の車軸と前記第2の車軸との間の回転速度における所望の差に比例するように構成される、請求項2から8のいずれか一項に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項10】
前記差動制御ピニオン歯車が、ベベルピニオン歯車であり、
前記第1の外歯付き輪歯車の前記外歯が、ベベル型であり、
前記第2の外歯付き輪歯車の前記外歯が、ベベル型である、請求項2、3、及び8から9のいずれか一項に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項11】
前記差動装置が、キャリアハウジングを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項12】
前記キャリアハウジングに結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる第1の差動太陽歯車であって、前記段付遊星歯車の第1のセットが、前記第1の差動太陽歯車に係合するように構成され、前記第1の複数の調整歯車が、前記第1の差動太陽歯車を通じて前記差動装置と相互作用する、第1の差動太陽歯車と、
前記キャリアハウジングに結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる第2の差動太陽歯車であって、前記段付遊星歯車の第3のセットが、前記第2の差動太陽歯車に係合するように構成され、前記第2の複数の調整歯車が、前記第2の差動太陽歯車を通じて前記差動装置と相互作用する、第2の差動太陽歯車とをさらに備える、請求項11に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項13】
前記段付遊星歯車の第1のセット内の各段付遊星歯車の前記小さい方の直径部分が、前記第1の差動太陽歯車に係合するように構成され、
前記段付遊星歯車の第3のセット内の各段付遊星歯車の前記小さい方の直径部分が、前記第2の差動太陽歯車に係合するように構成される、請求項12に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項14】
前記可変速可逆モータによって駆動される差動制御軸と前記差動制御ピニオン歯車との間でインターフェースをとる歯車装置減速アセンブリをさらに備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項15】
前記歯車装置減速アセンブリが、
前記差動制御軸に結合される、それに固定される、又はそれと一体にされる減速アセンブリ太陽歯車と、
減速アセンブリキャリアであって、前記差動制御ピニオン歯車が、前記減速アセンブリキャリアに結合される、それに固定される、又はそれと一体にされる減速アセンブリキャリアと、
前記差動装置の外箱に対して静止している減速アセンブリ内歯付き輪歯車と、
複数の遊星歯車であって、各々が前記減速アセンブリキャリアに結合され、各々が前記減速アセンブリ内歯付き輪歯車の歯に係合するように構成される、複数の遊星歯車と
を備える、遊星減速歯車アセンブリを含む、請求項14に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項16】
前記モータによって駆動されるように構成され、前記モータと前記差動制御ピニオン歯車との間に歯車装置減速を提供するウォームスクリュ歯車をさらに備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項17】
前記差動制御ピニオン歯車に結合される、それに装着される、又はそれと一体にされるウォーム車輪をさらに備え、前記ウォーム車輪が、前記ウォームスクリュ歯車によって係合され、かつ前記ウォームスクリュ歯車によって駆動されるように構成される、請求項16に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項18】
前記可変速可逆モータと、第1および第2外歯付き輪歯車との間に、一つ以上の減速歯車を備える、請求項2に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項19】
前記歯車装置アセンブリが、前記第1の車軸と前記第2の車軸との間の瞬間の差動トルクに関する情報を提供するように構成される一つ以上のトルクセンサをさらに備える、請求項2に記載の歯車装置アセンブリ。
【請求項20】
車両の第1の車軸及び第2の車軸に係合するように構成され、前記車両の駆動軸によって駆動されるように構成される差動装置と、
前記車両の操舵クラッチによって駆動されるように構成される差動制御ピニオン歯車と、
前記差動装置に係合するように、及び前記差動制御ピニオン歯車に係合するように構成される第1の複数の調整歯車であって、前記第1の複数の調整歯車が、
第1の遊星歯車キャリア、
前記第1の遊星歯車キャリアに結合される段付遊星歯車の第1のセット、及び
前記第1の遊星歯車キャリアに結合される段付遊星歯車の第2のセットを含む、第1の複数の調整歯車と、
前記差動装置に係合するように、及び前記差動制御ピニオン歯車に係合するように構成される第2の複数の調整歯車であって、前記第2の複数の調整歯車が、
第2の遊星歯車キャリア、
前記第2の遊星歯車キャリアに結合される段付遊星歯車の第3のセット、及び
前記第2の遊星歯車キャリアに結合される段付遊星歯車の第4のセットを含む、第2の複数の調整歯車と、を備え、
前記第1の複数の調整歯車及び前記第2の複数の調整歯車が、前記操舵クラッチによって生み出される前記差動制御ピニオン歯車の回転に基づいて、前記第2の車軸の
回転速度に対して前記第1の車軸の
回転速度を制御可能に変更するように構成される、差動的に操舵される車両のための歯車装置アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年9月8日に出願された米国仮出願第62/556,221号の利益及び優先権を主張するものであり、この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
大半の車両は、エンジン及び変速機を有する。エンジン及び変速機は、車両又は設備の駆動軸を回転させるために使用される。駆動軸は、駆動軸の回転エネルギーを、自動車などの車輪のある車両の場合は車両の車軸及び車輪へ、又は戦車及び軌道式ブルドーザなどの無限軌道車(tracked vehicle)の場合は車両のアクセル及び軌道へ伝達する差動装置に接続される。
【0003】
一般的に、車両が直線を走っているとき、車両の左側の軌道又は車輪及び車両の右側の軌道又は車輪は同じ速度で回転する。しかしながら、車両が向きを変えるとき、旋回の外側の軌道又は車輪は、旋回の内側の軌道又は車輪よりも遠くへ進まなければならない。その結果、旋回の外側の軌道又は車輪は、旋回中、内側の軌道又は車輪よりもわずかに速い速度で回転しなければならない。差動装置の使用は、車両の両側の対向する車軸が異なる速度で回転することを可能にする。したがって、車両の軌道又は車輪は各々、旋回に対応するのに相応しい速度で回転することができる。
【0004】
操舵は、差動操舵を用いる車両(例えば、戦車、軌道式ブルドーザ、スキッドステアローダなど)では、前輪操舵を用いる車輪を有する車両とは異なって実施される。差動的に操舵される車両及び前輪操舵される車両の両方が、旋回中の内側車輪と外側車輪(又は軌道)との間の車輪回転率における差を許し、これを制御する必要性を共有する。しかしながら、この共通性にもかかわらず、これら二つの種類の車両間での設計及び制御方法は、以下で論じられるようないくつかの重要な違いを有する。
【0005】
差動的に操舵される車両の場合、左軌道速度と右軌道速度との間、又は左車輪速度と右車輪速度との間の制御された差が、所望の旋回を実行する唯一の手段を提供し、結果として、これらの種類の車両は差動率に対する直接的な能動的制御を必要とする。この能動的制御を達成することを目指す多くの既知の歯車設計が存在する。いくつかの設計は、車両のけん引要素の片側に摩擦を印加して片側を遅くすることによって操舵制御を達成し、こうして、遅くされる側の方へ車両を旋回させる。そのような「制動式」の差動操舵系は、操舵の間に推進系が克服しなければならない摩擦損失に起因して、本質的に非効率的である。これらの「減算的」設計はまた、差動制動を通じて正確な回転率を達成することの難しさに起因して、精度に欠ける傾向がある。
【0006】
二重差動歯車などの他の設計は、差動率を選択的に変更するために別個の操舵入力軸を提供する。そのような歯車ベースの設計は、操舵入力が一方の車軸を、対向する車軸を遅くするのと均等に加速させるという意味では、回生である。これは、摩擦ベースの設計に対してより大きい操舵権限及び精度を可能にする。しかしながら、これらの歯車ベースの差動操舵設計は、典型的には、車軸に隣接して取り付けられ、かつ車軸と互いにかみ合っている複数の制御軸を用いる。例えば、Gleasmanらに対する米国特許第4,776,235号に説明及び描写されるスリップが強いられない操舵差動において、これらの隣接する制御軸は、
図1の要素22及び23で表示される。そのような設計は、制動ベースの差動操舵よりも効率的かつ精密であるが、これらは、典型的には、別個の駆動軸、制御軸、及び逆回転アイドラ軸を収容するために大きくて重いハウジングを必要とする。さらには、増大した数の逆回転歯車要素を介して推進力を伝達する必要性(直線走行中にさえ)は、寄生ドライブトレイン損失からドライブトレイン効率の低下を結果としてもたらす。
【0007】
前輪操舵される車両のための多くの従来の差動装置の場合、相対的な車輪回転率における差は、車両を操舵又は旋回するために使用されず、車両の操舵機敏性を保つため、並びに過剰なタイヤ摩耗及び駆動系結合を防ぐために受け入れられるにすぎない(オープン差動装置など)。オープン差動装置など、前輪操舵される車両のためのこれらの従来の差動装置は、一般的に、自動車の車輪が良好な道路条件に遭遇しているときの動作中には、よく機能する。しかしながら、この手法は、車両が滑りやすい条件又は不均等なけん引条件に遭遇する場合、望ましくない車輪スリップに対する脆弱性を結果としてもたらす。道路は、しばしば、旋回中に車輪をスリップさせる、又は横滑りさせる雪、氷、土、砂利、泥などに覆われる。そのような状況では、オープン差動装置は、スリップしている車輪に大きすぎる力を印加させ得る。これが車両の安全性に悪影響を及ぼし得る。これを軽減しようとする取り組みで、いくつかの差動装置設計は、望ましくない車輪スリップを検出し、すでにスリップしている車輪を遅くするために摩擦を印加することによってこれに反応するための機構を用いる。より最近の進歩は、旋回中のトルクベクタリングを介して、又は所与のけん引条件のための特別なけん引モードを先制してトグルすることによってなど、より先を見越したスリップ制御を提供することを目指す。それにもかかわらず、これらの方法は、依然として、操舵又は他の入力に応答して差動摩擦を(制動機又はクラッチのいずれかを介して)印加することによって、対向する車輪間の力を向け直す。望ましくない車輪スリップを制限するためのこの摩擦に対する依存は、制動ベースの差動的に操舵される車両への適用を害する同じ本質的な非効率性及び不正確性をもたらす。したがって、そのような摩擦ベースのスリップ制限けん引制御系がしばしば、登坂中に一つの車輪が突然地面から離れるなど、飛躍的なけん引不均衡に応答するとき、勢いを失うことを止めることができないということは驚くべきことではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、差動的に操舵される車両のための改善された差動システムが必要とされる。大幅なスリップを許すことなく、異なる車軸間の差動回転率を正確に制御する、前輪操舵される車両のための改善された差動システムもまた必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に説明される実施形態は、車両の異なる車軸間の差動回転を制御するためのシステム、歯車装置アセンブリ、及び方法を含む。
【0010】
一つの実施形態において、歯車装置アセンブリが提供される。歯車装置アセンブリは、車両の第1の車軸、第2の車軸、及び駆動軸に係合するように構成される差動装置を含む。歯車装置アセンブリは、差動装置に係合するように構成され、車両の可変速モータによって駆動されるように構成され、可変速モータによって生み出される回転に基づいて第2の車軸に対して第1の車軸の回転を制御可能に変更するように構成される、複数の調整歯車をさらに含む。複数の調整歯車は、遊星歯車キャリア、遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第1のセット、及び遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第2のセットを含む遊星歯車のサブアセンブリを含む。
【0011】
例となる実施形態において、遊星歯車の第2のセットは、車両の第1の車軸と結合するように構成される。
【0012】
例となる実施形態において、複数の調整歯車は、差動装置と結合されるか又はそれに装着される太陽歯車をさらに含み、太陽歯車は、遊星歯車の第1のセットに係合するように構成される。複数の調整歯車は、太陽歯車を通じて差動装置と相互作用する。例となる実施形態において、差動装置は、歯車キャリアを含み、太陽歯車は、歯車キャリアに装着される。一実施形態において、差動装置は、マイタ歯車キャリアを含み、太陽歯車は、マイタ歯車キャリアに装着される。
【0013】
例となる実施形態において、複数の調整歯車は、遊星歯車の第2のセットに係合するように構成される内歯車をさらに含み、内歯車は、可変速モータに対して静止している。
【0014】
例となる実施形態において、遊星歯車の第1のセットの公転速度は、第1の車軸の回転速度に比例する。さらなる実施形態において、複数の調整歯車は、遊星歯車の第1のセットの公転速度が可変速モータを使用して選択的に調整されることを可能にするように構成される。
【0015】
例となる実施形態において、複数の調整歯車は、回転運動を可変速モータから遊星歯車の第1のセットへ伝達する環状歯車又は輪歯車をさらに含む。さらなる実施形態において、環状歯車又は輪歯車は、遊星歯車の第1のセットに係合する内歯車歯を有する。さらにさらなる実施形態において、環状歯車又は輪歯車はまた、可変モータによって駆動される制御軸によって係合される外歯を有する。
【0016】
さらにさらなる実施形態において、複数の調整歯車は、環状歯車又は輪歯車のゼロ回転が、第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における差なしに相当するように、構成される。
【0017】
さらに別の実施形態において、複数の調整歯車は、環状歯車又は輪歯車の回転率が、第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差に比例するように、構成される。
【0018】
例となる実施形態において、複数の調整歯車は、可変速モータによって出力される回転率が、第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における差に比例するように、構成される。
【0019】
別の例となる実施形態において、歯車装置アセンブリは、第2の車軸に対して第1の車軸の回転率を変更又は維持するとき、摩擦に依存しない。
【0020】
別の実施形態において、方法は、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定することを含む。この決定は、車両のマイクロプロセッサを使用して、車両の現在の舵角及び車両の第1の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づき、第1の駆動軸が、第1の車軸及び第2の車軸が接続される差動装置に動力供給する。本方法はまた、第1の車軸及び第2の車軸の相対回転を制御して回転速度における所望の差動を許容範囲内に一致させるために、回転速度における所望の差動に基づいて車両の可変速モータに信号を送信することを含む。
【0021】
さらなる実施形態において、回転速度における所望の差動を決定することは、車両の検知された現在の旋回角度に関する情報を受信すること、及び車両の第1の駆動軸の検知された現在の回転速度に関する情報を受信することを含む。
【0022】
例となる実施形態において、可変速モータは、回転速度における所望の差動に比例する回転速度で制御軸を回転させることによって、第1の車軸及び第2の車軸の相対回転を制御する。
【0023】
例となる実施形態において、本方法は、車両が動いている間のセンサ入力に少なくとも部分的に基づいて、又はユーザ入力に応答して、許容範囲を変化させることをさらに含む。
【0024】
例となる実施形態において、本方法は、車両の第3の車軸と第4の車軸との間の回転速度における第2の所望の差動を決定することをさらに含む。この決定は、車両の現在の舵角及び車両の第2の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づき、第2の駆動軸が、第3の車軸及び第4の車軸が接続される第2の差動装置に動力供給する。本方法はまた、第3の車軸及び第4の車軸の相対回転を制御して回転速度における所望の第2の差動を第2の許容範囲内に一致させるために、回転速度における所望の第2の差動に基づいて車両の第2の可変速モータに信号を送信することを含み、第2の許容範囲は、許容範囲と同じであるか、又は異なる。
【0025】
さらなる例となる実施形態において、第1及び第2の車軸は、車両の後車軸の軸であり、第3及び第4の車軸は、車両の前車軸の軸である。本方法は、車両の第1の駆動軸と第2の駆動軸との間の回転速度における第3の所望の差動を決定することをさらに含む。この決定は、車両の現在の旋回角度及び車両の変速機又は駆動モータによって出力される現在の回転速度に少なくとも部分的に基づく。本方法はまた、第1の駆動軸及び第2の駆動軸の相対回転を制御して回転速度における所望の第3の差動を第3の許容範囲内に一致させるために、回転速度における所望の第3の差動に基づいて車両の第3の可変速モータに信号を送信することを含む。
【0026】
例となる実施形態において、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定することはまた、車両の幅及び車両の軸距に関する情報に基づく。
【0027】
例となる実施形態において、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定することは、車両非対称性に基づいて直線走行中の差動基線に関連した因子を追加することを含む。さらなる実施形態において、直線走行中の差動基線に関連した因子は、車両が動いているときの時間期間中に、所望の差動率に対する検知された抵抗性に基づいて決定される。
【0028】
別の例となる実施形態において、本方法は、車両のマイクロプロセッサを使用して、車両の現在の舵角の大きさが最小舵角値よりも大きいかどうかを決定すること、及び車両の第1の駆動軸の現在の回転速度の大きさが非ゼロであるかどうかを決定することを含む。現在の旋回角度の大きさが最小旋回角度値よりも大きく、駆動軸の現在の回転速度の大きさが、最小駆動回転速度よりも大きい場合、本方法は、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定することを含む。この決定は、車両のマイクロプロセッサを使用して、車両の現在の舵角及び車両の第1の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づき、第1の駆動軸が、第1の車軸及び第2の車軸が接続される差動装置に動力供給する。本方法は、第2の車軸の回転に対して第1の車軸の回転を制御可能に変更するために、決定された回転速度における所望の差動に基づいて車両の可変速モータに信号を送信することをさらに含む。
【0029】
例となる実施形態において、現在の旋回角度の大きさが最小旋回角度値よりも大きく、駆動軸の現在の回転速度の大きさが非ゼロである場合、本方法は、車両の第3の車軸と第4の車軸との間の回転速度における第2の所望の差動を決定することを含む。この決定は、車両の現在の舵角及び車両の第2の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づき、第2の駆動軸が、第3の車軸及び第4の車軸が接続される第2の差動装置に動力供給する。本方法はまた、第4の車軸に対して第3の車軸の回転を制御可能に変更するために、決定された回転速度における第2の所望の差動に基づいて車両の第2の可変速モータに信号を送信することを含む。
【0030】
さらなる実施形態において、第1及び第2の車軸は、車両の後車軸の軸であり、第3及び第4の車軸は、車両の前車軸の軸である。本方法は、車両ベースの第1の駆動軸と第2の駆動軸との間の回転速度における第3の所望の差動を決定することを含む。この決定は、車両の現在の舵角及び車両の変速機又は駆動モータによって出力される現在の回転速度に少なくとも部分的に基づく。本方法はまた、第2の駆動軸の回転に対して第1の駆動軸の回転を制御可能に変更するために、決定された回転速度における第3の所望の差動に基づいて車両の可変速モータに信号を送信することを含む。
【0031】
さらなる実施形態において、本方法はまた、車両の検知された現在の旋回角度に関する情報を受信すること、及び車両の駆動軸の検知された現在の回転速度に関する情報を受信することを含む。さらなる実施形態において、最小舵角値は、0.01度~5度の範囲内に入る。さらなる実施形態において、本方法はまた、車両が動いている間のセンサ入力に少なくとも部分的に基づいて、又はユーザ入力に応答して、最小舵角を変化させることを含む。
【0032】
いくつかの実施形態は、第1の車軸と第2の車軸との間の回転における差動を制御するためのシステムを含む。本システムは、本明細書に説明されるような歯車装置アセンブリ、及び歯車装置アセンブリの制御軸を駆動するように構成される可変速モータを含む。いくつかの実施形態において、本システムはまた、所望の差動率を決定するように、及び可変速モータを制御するように構成されるプロセッサ又はマイクロプロセッサを含む。
【0033】
本明細書に説明される実施形態は、車両の異なる車軸間の差動回転を制御するための車両、システム、歯車装置アセンブリ、方法、及び車両の差動操舵のための方法を含む。
【0034】
実施形態は、車両の第1の車軸及び第2の車軸に係合するように構成され、車両の駆動軸によって駆動されるように構成される差動装置と、車両の可変速可逆モータによって駆動されるように構成される差動制御ピニオン歯車とを含む歯車装置アセンブリを含む。歯車装置アセンブリはまた、差動装置に係合するように、及び差動制御ピニオン歯車に係合するように構成される第1の複数の調整歯車と、差動装置に係合するように、及び差動制御ピニオン歯車に係合するように構成される第2の複数の調整歯車とを含む。第1の複数の調整歯車は、第1の遊星歯車キャリア、第1の遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第1のセット、及び第1の遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第2のセットを含む。第2の複数の調整歯車は、第2の遊星歯車キャリア、第2の遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第3のセット、及び第2の遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第4のセットを含む。第1の複数の調整歯車及び第2の複数の調整歯車は、可変速可逆モータによって生み出される差動制御ピニオン歯車の回転を通じて、第2の車軸の回転率に対して第1の車軸の回転率を制御可能に変更するように構成される。
【0035】
いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車及び第2の複数の調整歯車は、可変速可逆モータによって生み出される差動制御ピニオン歯車の回転を通じて、第2の車軸の回転率に対して第1の車軸の回転率を制御するように構成される。
【0036】
いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車及び第2の複数の調整歯車は、差動制御ピニオン歯車の回転率が、第1の車軸の回転率と第2の車軸の回転率との間の差に比例するように、構成される。
【0037】
いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車は、差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される外歯を有し、遊星歯車の第1のセットによって駆動されるように構成される内歯を有する第1の外歯付き輪歯車をさらに含み、第2の複数の調整歯車は、差動制御ピニオン歯車によって駆動されるように構成される外歯を有し、遊星歯車の第3のセットとかみ合うように構成される内歯を有する第2の外歯付き輪歯車をさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、第1の外歯付き輪歯車の外歯は、差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成され、第2の外歯付き輪歯車の外歯は、差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される。
【0039】
いくつかの実施形態において、第1の外歯付き輪歯車の外歯は、差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成され、歯車装置アセンブリはまた、差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される外歯の第1のセットを含む逆転軸を含み、第2の外歯付き輪歯車の外歯は、逆転軸の外歯の第2のセットとかみ合うように構成される。
【0040】
いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリはまた、差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される歯車、及び第1の外歯付き輪の前記外歯とかみ合うように構成される歯車を含む第1の延長軸と、差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される歯車、及び第1の外歯付き輪の外歯とかみ合うように構成される歯車を含む第2の延長軸とを含む。いくつかの実施形態において、差動制御ピニオン歯車は、ベベルピニオン歯車であり、差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される第1の延長軸の歯車は、ベベル歯車であり、差動制御ピニオン歯車とかみ合うように構成される第2の延長軸の歯車は、ベベル歯車である。いくつかの実施形態において、第1の外歯付き輪の外歯とかみ合うように構成される第1の延長軸の歯車は、平歯車又ははすば歯車であり、第2の外歯付き輪の外歯とかみ合うように構成される第2の延長軸の歯車は、平歯車又ははすば歯車である。
【0041】
いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリは、差動制御ピニオン歯車の回転が、第1の外歯付き輪歯車の第1の回転、及び第2の外歯付き輪歯車の等しくかつ反対の回転を駆動するように構成される。いくつかの実施形態において、差動制御ピニオン歯車は、ベベルピニオン歯車であり、第1の外歯付き輪歯車の外歯は、ベベル型であり、第2の外歯付き輪歯車の外歯は、ベベル型である。いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車及び第2の複数の調整歯車は、第1の外歯付き輪歯車のゼロ回転及び第2の外歯付き輪歯車のゼロ回転が、第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度の差なしに対応するように構成される。いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車及び第2の複数の調整歯車は、第1の外歯付き輪歯車の回転率が、第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差に比例するように、構成される。
【0042】
いくつかの実施形態において、差動装置は、キャリアハウジングを含む。いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリはまた、キャリアハウジングに結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる第1の差動太陽歯車であって、遊星歯車の第1のセットが第1の差動太陽歯車に係合するように構成されている、第1の差動太陽歯車と、キャリアハウジングに結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる第2の差動太陽歯車であって、遊星歯車の第3のセットが第2の差動太陽歯車に係合するように構成されている、第2の差動太陽歯車とを含み、第1の複数の調整歯車は、第1の差動太陽歯車を通じて差動装置と相互作用するように構成され、第2の複数の調整歯車は、第2の差動太陽歯車を通じて差動装置と相互作用するように構成される。いくつかの実施形態において、キャリアハウジングは、マイタ歯車キャリアである。
【0043】
いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリはまた、第1の車軸に結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる第1の車軸太陽歯車と、第2の車軸に結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる第2の車軸太陽歯車とを含み、遊星歯車の第2のセットは、第1の車軸太陽歯車に係合するように構成され、遊星歯車の第4のセットは、第2の車軸太陽歯車に係合するように構成される。
【0044】
いくつかの実施形態において、差動制御ピニオン歯車は、可変速可逆モータによって駆動される差動制御軸に結合される、それに装着される、又はそれと一体にされ、差動制御軸及び駆動軸は、同じ回転軸の周りを回転するように構成される。いくつかの実施形態において、駆動軸は、車両の差動制御軸を通って、及びそれを超えて延びる。いくつかの実施形態において、駆動軸は、差動制御軸の中に少なくとも部分的にネストされる。
【0045】
いくつかの実施形態において、差動制御ピニオン歯車は、差動装置の駆動軸とは反対の側に配設される。
【0046】
いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリは、差動的に操舵される車両のための歯車装置アセンブリであり、歯車装置アセンブリ及び可変速可逆モータは、可変速可逆モータによって生み出される回転に基づいて、第2の車軸の回転速度に対して第1の車軸の回転速度を制御可能に変更することによって、車両を操舵するように構成される。いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリは、差動的に操舵される車両のための歯車装置アセンブリであり、歯車装置アセンブリ及び可変速可逆モータは、可変速可逆モータによって生み出される差動制御ピニオン歯車の回転を使用することに基づいて、第2の車軸の回転速度に対して第1の車軸の回転速度を制御することによって、車両を操舵するように構成される。
【0047】
いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車はまた、第1の内歯車であって、遊星歯車の第2のセットを、可変速可逆モータに対して静止している第1の内歯車と係合させるように構成される、第1の内歯車を含み、第2の複数の調整歯車はまた、第2の内歯車であって、遊星歯車の第4のセットを、可変速可逆モータに対して静止している第2の内歯車と係合させるように構成される、第2の内歯車を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、第1の車軸の回転速度は、遊星歯車の第1のセットの公転速度に比例し、第2の車軸の回転速度は、遊星歯車の第3のセットの公転速度に比例する。
【0049】
いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車は、遊星歯車の第1のセットの公転速度が可変速可逆モータを使用して選択的に調整されることを可能にするように構成され、第2の複数の調整歯車は、遊星歯車の第3のセットの公転速度が可変速可逆モータを使用して選択的に調整されることを可能にするように構成される。
【0050】
いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車及び第2の複数の調整歯車は、可変速可逆モータによって出力される回転率が、可変速可逆モータによって出力される回転率に比例する第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における差を強いるように、構成される。
【0051】
いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリは、第2の車軸に対して第1の車軸の回転率を変更又は維持するとき、摩擦に依存しない。
【0052】
いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリは、第1の車軸と第2の車軸との間の瞬間の差動トルクに関する情報を提供するように構成される一つ以上のトルクセンサをさらに備える。
【0053】
いくつかの実施形態において、車両は、差動的に操舵される車両であり、歯車装置アセンブリは、クロスドライブ式変速機における使用のために構成される。
【0054】
別の実施形態は、差動的に操舵される車両のための歯車装置アセンブリを含む。歯車装置アセンブリは、車両の第1の車軸及び第2の車軸に係合するように構成され、車両の駆動軸によって駆動されるように構成される差動装置と、差動制御軸に接続される、それに装着される、又はそれと一体にされる差動制御ピニオン歯車であって、駆動軸が差動制御軸中に少なくとも部分的にネストされ、車両の可変速可逆モータによって駆動されるように構成される差動制御ピニオン歯車とを含む歯車装置アセンブリを含む。歯車装置アセンブリはまた、差動装置に係合されるように構成され、差動制御ピニオン歯車に係合されるように構成される第1の複数の調整歯車と、差動装置に係合するように構成され、差動制御ピニオン歯車に係合するように構成される第2の複数の調整歯車とを含み、第1の複数の調整歯車及び第2の複数の調整歯車は、可変速可逆モータによって生み出される差動制御ピニオン歯車の回転を通じて、第2の車軸の回転率に対して第1の車軸の回転率を制御可能に変更するように構成される。
【0055】
いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車及び第2の複数の調整歯車は、可変速可逆モータによって生み出される差動制御ピニオン歯車の回転を通じて、第2の車軸の回転率に対して第1の車軸の回転率を制御するように構成される。いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリは、クロスドライブ式変速機における使用のために構成される。
【0056】
別の実施形態は、差動的に操舵される車両を含む。差動的に操舵される車両は、エンジンと、第1の車軸と、第2の車軸と、駆動軸と、差動制御軸と、可変速可逆モータと、本明細書に説明される任意の実施形態に従う歯車装置アセンブリとを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、可変速可逆モータは、エンジンによって動力供給される油圧ポンプによって駆動される油圧可変速可逆モータである。いくつかの実施形態において、油圧可変速可逆モータは、エンジンによって動力供給される静圧可変速可逆モータである。
【0058】
いくつかの実施形態において、差動的に操舵される車両はまた、変速機を含み、歯車装置アセンブリ及び変速機は、車両のクロスドライブ式変速機ユニット内に含まれる。いくつかの実施形態において、差動的に操舵される車両はまた、トルク変換器を含み、可変速可逆モータは、トルク変換器によって駆動される。
【0059】
別の実施形態は、差動的に操舵される車両のための歯車装置アセンブリを含む。歯車装置アセンブリは、車両の第1の車軸及び第2の車軸に係合するように構成され、車両の駆動軸によって駆動されるように構成される差動装置と、車両の操舵クラッチによって駆動されるように構成される差動制御ピニオン歯車と、差動装置に係合するように、及び差動制御ピニオン歯車に係合するように構成される第1の複数の調整歯車と、差動装置に係合するように、及び差動制御ピニオン歯車に係合するように構成される第2の複数の調整歯車とを含む。第1の複数の調整歯車は、第1の遊星歯車キャリア、第1の遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第1のセット、及び第1の遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第2のセットを含む。第2の複数の調整歯車は、第2の遊星歯車キャリア、第2の遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第3のセット、及び第2の遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第4のセットを含む。第1の複数の調整歯車及び第2の複数の調整歯車は、操舵クラッチによって生み出される差動制御ピニオン歯車の回転に基づいて、第2の車軸の回転率に対して第1の車軸の回転率を制御可能に変更するように構成される。
【0060】
別の実施形態は、エンジンと、第1の車軸と、第2の車軸と、駆動軸と、差動制御軸と、可変速可逆モータと、本明細書に説明されるような歯車装置アセンブリとを含む前輪操舵される車両を含む。いくつかの実施形態において、可変速可逆モータは、電動モータである。
【0061】
別の実施形態は、可変速可逆モータ及び本明細書に説明されるような歯車装置アセンブリを含む差動的に操舵される車両を提供することと、可変速可逆モータを使用して差動制御ピニオン歯車の回転を制御することにより、車両の第1の車軸の回転率を車両の第2の車軸の回転率に対して制御することによって車両を操舵することと、を含む方法である。いくつかの実施形態において、本方法はまた、車両のコンピュータを使用して、実際の駆動軸回転速度を示す第1のセンサ信号、及び第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における実際の差動を示す第2のセンサ信号に少なくとも部分的に基づいて、差動制御ピニオン歯車の回転を調整することを含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、本方法は、第1の車軸と第2の車軸との間の差動トルクに関する情報を提供する一つ以上のトルクセンサからの一つ以上のセンサ信号に少なくとも部分的に基づいて、差動制御ピニオン歯車の回転を調整することを含む。
【0063】
別の実施形態において、方法は、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定することを含む。この決定は、車両のマイクロプロセッサを使用して、車両の現在の舵角及び車両の第1の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づき、第1の駆動軸が、第1の車軸及び第2の車軸が接続される差動装置に動力供給する。本方法はまた、車両のマイクロプロセッサを使用して、第1の車軸と第2の車軸との間の測定された差動トルクに基づいて、回転速度における所望の差動を修正することを含む。本方法はまた、第1の車軸及び第2の車軸の相対回転を制御して回転速度における所望の差動を第1の許容範囲内に一致させるために、回転速度における所望の差動に基づいて車両の可変速可逆モータに信号を送信することを含む。いくつかの実施形態において、回転速度における所望の差動を決定することは、車両の検知された現在の舵角に関する情報を受信すること、及び車両の第1の駆動軸の検知された現在の回転速度に関する情報を受信することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、第1の車軸と第2の車軸との間の現在の差動トルクに関する情報を受信すること、及び受信した情報に基づいて、測定された差動トルクを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、測定された差動トルクは、現在の差動トルクである。いくつかの実施形態において、測定された差動トルクは、以前に測定された差動トルクであり、以前に測定された差動トルクに関する情報は、車両のメモリに格納される。いくつかの実施形態において、測定された差動トルクは、瞬間の差動トルクである。いくつかの実施形態において、測定された差動トルクは、経時的な差動トルクの平均値である。いくつかの実施形態において、測定された差動トルクは、瞬間の差動トルク、現在の差動トルク、経時的な差動トルクの平均値、又は車両のメモリに格納された以前に測定された差動トルクの任意の組み合わせを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、回転速度における所望の差動を決定することは、車両の検知された現在の速度又は車両の第1の駆動軸の検知された現在の回転速度に基づいて、及び車両の検知された現在の舵角に基づいて、自然の差動率を決定することを含み、本方法は、車両のマイクロプロセッサを使用して、第1の車軸と第2の車軸との間の測定された差動トルクに基づいて、回転速度における所望の差動を修正した後に、回転速度における所望の差動を自然の差動率よりも大きくなるように設定することをさらに含む。所望の差動率は、車両をオーバステアすること、望ましくないアンダーステア状態を補正すること、又は望ましくないステアリングプルを片側に引き起こす状態を別途補正することに相当し得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、回転速度における所望の差動を決定することは、車両の検知された現在の速度、又は車両の第1の駆動軸の検知された現在の回転速度に基づいて、及び車両の検知された現在の舵角に基づいて、自然の差動率を決定することを含み、本方法は、車両のマイクロプロセッサを使用して、第1の車軸と第2の車軸との間の測定された差動トルクに基づいて、回転速度における所望の差動を修正した後に、回転速度における所望の差動を自然の差動率よりも小さくなるように設定することをさらに含む。所望の差動率は、車両をアンダーステアすること、望ましくないオーバステア状態を補正すること、又は望ましくないステアリングプルを片側に引き起こす状態を別途補正することに相当し得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、回転速度における所望の差動を決定することは、車両の検知された現在の速度又は車両の第1の駆動軸の検知された現在の回転速度に基づいて、及び車両の検知された現在の舵角に基づいて、自然の差動率を決定することを含み、本方法は、車両のマイクロプロセッサを使用して、第1の車軸と第2の車軸との間の測定された差動トルクに基づいて、回転速度における所望の差動を修正する前に、車両のユーザによって選択される設定に少なくとも部分的に基づいて、回転速度における所望の差動を、自然の差動率よりも小さくなるように、又は自然の差動率よりも大きくなるように設定することをさらに含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、回転速度における所望の差動を決定することは、車両の検知された現在の速度又は車両の第1の駆動軸の検知された現在の回転速度に基づいて、及び車両の検知された現在の舵角に基づいて、自然の差動率を決定することを含み、本方法は、車両の一つ以上のセンサから獲得される情報に少なくとも部分的に基づいて、回転速度における所望の差動を、自然の差動率よりも小さくなるように、又は自然の差動率よりも大きくなるように自動的に設定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、車両の一つ以上のセンサから獲得される情報は、車両の現在のヨーイングに関する情報を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、車両のマイクロプロセッサを使用して、第1の車軸と第2の車軸との間の測定された差動トルクに基づいて、回転速度における所望の差動を修正することは、車両のマイクロプロセッサによって自動的に実施される。
【0069】
例となる実施形態において、可変速可逆モータは、回転速度における所望の差動に比例する回転速度で制御軸を回転させることによって、第1の車軸及び第2の車軸の相対回転を制御する。
【0070】
例となる実施形態において、本方法は、車両が動いている間のセンサ入力に少なくとも部分的に基づいて、又はユーザ入力に応答して、第1の許容範囲を変化させることをさらに含む。
【0071】
例となる実施形態において、本方法は、車両の第3の車軸と第4の車軸との間の回転速度における第2の所望の差動を決定することをさらに含む。この決定は、車両の現在の舵角及び車両の第2の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づき、第2の駆動軸が、第3の車軸及び第4の車軸が接続される第2の差動装置に動力供給する。本方法はまた、第3の車軸及び第4の車軸の相対回転を制御して回転速度における所望の第2の差動を第2の許容範囲内に一致させるために、回転速度における所望の第2の差動に基づいて車両の第2の可変速可逆モータに信号を送信することを含み、第2の許容範囲は、第1の許容範囲と同じであるか、又は異なる。
【0072】
さらなる例となる実施形態において、第1及び第2の車軸は、車両の後車軸の軸であり、第3及び第4の車軸は、車両の前車軸の軸である。本方法は、車両の第1の駆動軸と第2の駆動軸との間の回転速度における第3の所望の差動を決定することをさらに含む。この決定は、車両の現在の舵角、及び車両の変速機又は駆動モータによって出力される現在の回転速度に少なくとも部分的に基づく。本方法はまた、第1の駆動軸及び第2の駆動軸の相対回転を制御して回転速度における所望の第3の差動を第3の許容範囲内に一致させるために、回転速度における所望の第3の差動に基づいて車両の第3の可変速可逆モータに信号を送信することを含む。
【0073】
例となる実施形態において、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定することはまた、車両の幅及び車両の軸距に関する情報に基づく。
【0074】
例となる実施形態において、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定することは、車両非対称性に基づいて直線走行中の差動基線に関連した因子を追加することを含む。さらなる実施形態において、直線走行中の差動基線に関連した因子は、車両が動いているときの時間期間中に、所望の差動率に対する検知された抵抗性に基づいて決定される。
【0075】
別の例となる実施形態において、本方法は、車両のマイクロプロセッサを使用して、車両の現在の舵角の大きさが最小舵角値よりも大きいかどうかを決定すること、及び車両の第1の駆動軸の現在の回転速度の大きさが非ゼロであるかどうかを決定することを含む。現在の舵角の大きさが最小舵角値よりも大きく、駆動軸の現在の回転速度の大きさが最小駆動回転速度よりも大きい場合、本方法は、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定することを含む。この決定は、車両のマイクロプロセッサを使用して、車両の現在の舵角及び車両の第1の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づき、第1の駆動軸が、第1の車軸及び第2の車軸が接続される差動装置に動力供給する。本方法は、第2の車軸の回転に対して第1の車軸の回転を制御可能に変更するために、決定された回転速度における所望の差動に基づいて車両の可変速可逆モータに信号を送信することをさらに含む。
【0076】
例となる実施形態において、現在の舵角の大きさが最小舵角値よりも大きく、駆動軸の現在の回転速度の大きさが非ゼロである場合、本方法は、車両の第3の車軸と第4の車軸との間の回転速度における第2の所望の差動を決定することを含む。この決定は、車両の現在の舵角及び車両の第2の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づき、第2の駆動軸が、第3の車軸及び第4の車軸が接続される第2の差動装置に動力供給する。本方法はまた、第4の車軸に対して第3の車軸の回転を制御可能に変更するために、決定された回転速度における第2の所望の差動に基づいて車両の第2の可変速可逆モータに信号を送信することを含む。
【0077】
さらなる実施形態において、第1及び第2の車軸は、車両の後車軸の軸であり、第3及び第4の車軸は、車両の前車軸の軸である。本方法は、車両ベースの第1の駆動軸と第2の駆動軸との間の回転速度における第3の所望の差動を決定することを含む。この決定は、車両の現在の舵角、及び車両の変速機又は駆動モータによって出力される現在の回転速度に少なくとも部分的に基づく。本方法はまた、第2の駆動軸の回転に対して第1の駆動軸の回転を制御可能に変更するために、決定された回転速度における第3の所望の差動に基づいて車両の可変速可逆モータに信号を送信することを含む。
【0078】
さらなる実施形態において、本方法はまた、車両の検知された現在の舵角に関する情報を受信すること、及び車両の駆動軸の検知された現在の回転速度に関する情報を受信することを含む。さらなる実施形態において、最小舵角値は、0.01度~5度の範囲内に入る。さらなる実施形態において、本方法はまた、車両が動いている間のセンサ入力に少なくとも部分的に基づいて、又はユーザ入力に応答して、最小舵角を変化させることを含む。
【0079】
いくつかの実施形態は、第1の車軸と第2の車軸との間の回転における差動を制御するためのシステムを含む。本システムは、本明細書に説明されるような歯車装置アセンブリ、及び歯車装置アセンブリの制御軸を駆動するように構成される可変速可逆モータを含む。いくつかの実施形態において、本システムはまた、所望の差動率を決定するように、及び可変速可逆モータを制御するように構成されるプロセッサ又はマイクロプロセッサを含む。
【0080】
図面は、本明細書で教示される例となる実施形態を例証することが意図され、相対的なサイズ及び寸法を示すこと、例又は実施形態の範囲を制限することは意図されない。図面において、同じ数字が、同様の機能の同様の特徴及び構成要素を参照するために図面全体を通して使用される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】いくつかの実施形態に従う、歯車装置アセンブリを含む車両の選択された電気部品及び機械部品を概略的に描写する図である。
【
図2】いくつかの実施形態に従う、歯車装置アセンブリを含む差動的に操舵される車両の選択された電気部品及び機械部品を概略的に描写する図である。
【
図3A】いくつかの実施形態に従う、ネスト化された駆動軸及び制御軸を有する回生歯車装置アセンブリを示す部分分解斜視図である。
【
図3B】
図3Aに示される歯車装置アセンブリの分解側面図である。
【
図3C】
図3Aに示される歯車装置アセンブリの部分分解側面図である。
【
図3D】
図3Aに示される歯車装置アセンブリの上面図である。
【
図4A】いくつかの実施形態に従う、駆動軸及び制御軸がアセンブリの対向する側にある、回生歯車装置アセンブリの分解斜視図である。
【
図4B】
図4Aに示される歯車装置アセンブリの側面図である。
【
図4C】
図4Aに示される歯車装置アセンブリの上面図である。
【
図4D】
図4Aに示される歯車装置アセンブリの分解上面図である。
【
図5A】いくつかの実施形態に従う、一つの複数の調整歯車を有する非回生歯車装置アセンブリの斜視図である。
【
図5B】
図5Aに示される歯車装置アセンブリの分解斜視図である。
【
図5C】
図5Aに示される歯車装置アセンブリの逆向きの分解斜視図である。
【
図6A】いくつかの実施形態に従う、一つの複数の調整歯車を有する別の非回生歯車装置アセンブリの側面図である。
【
図6B】
図6Aに示される歯車装置アセンブリの逆向きの側面図である。
【
図6C】
図6Aに示される歯車装置アセンブリの分解斜視図である。
【
図6D】
図6Aに示される歯車装置アセンブリの分解側面図である。
【
図7】歯車装置アセンブリのいくつかの実施形態において用いられる段付遊星歯車の斜視図である。
【
図8】いくつかの実施形態に従う、ネスト化された駆動軸及び制御軸を有し、段付遊星歯車を含む回生歯車装置アセンブリの斜視図である。
【
図9A】いくつかの実施形態に従う、遊星歯車が段付遊星歯車によって置き換えられている、
図6A~
図6Dに描写されるものに類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である。
【
図9B】いくつかの実施形態に従う、段付遊星歯車の配向が逆になっていること以外は
図9Aに描写されるものに類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である。
【
図10】いくつかの実施形態に従う、遊星歯車が段付遊星歯車によって置き換えられている、
図5A~
図5Cに描写されるものに類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である。
【
図11】いくつかの実施形態に従う、遊星歯車が段付遊星歯車によって置き換えられており、モータと操舵制御ピニオン歯車との間に歯車装置減速アセンブリを含む、
図3A~
図3Dに描写されるものに類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である。
【
図12】いくつかの実施形態に従う、遊星歯車が段付遊星歯車によって置き換えられており、操舵制御ピニオン歯車と結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる遊星減速歯車アセンブリを含む、
図4A~
図4Cに描写されるものに類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である
【
図13】いくつかの実施形態に従う、遊星歯車が段付遊星歯車によって置き換えられており、モータとウォームスクリュ歯車及びウォーム車輪を含む操舵制御ピニオン歯車との間に歯車装置減速アセンブリを含む、
図3A~
図3Cに描写されるものに類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である。
【
図14】いくつかの実施形態に従う、遊星歯車が段付遊星歯車によって置き換えられており、モータとウォームスクリュ歯車及びウォーム車輪を含む操舵制御ピニオン歯車との間に歯車装置減速アセンブリを含む、
図4A~
図4Dに描写されるものに類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である。
【
図15】単純遊星構成及び段付遊星歯車を含む複合遊星構成での調整歯車の歯車減速比の例となる計算の表である。
【
図16A】いくつかの実施形態に従う、遊星歯車が段付遊星歯車によって置き換えられており、ベベル歯車及び延長軸が可変速可逆モータのピニオン歯車を外歯付き輪歯車に接続している、
図4A~
図4Dに描写されるものに類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である。
【
図16B】
図16Aに描写される実施形態についての、可変速可逆モータのピニオン歯車との、及びそれぞれの外歯付き輪歯車とのベベル歯車及び延長軸の相互作用の斜視図である。
【
図17A】いくつかの実施形態に従う、遊星歯車が段付遊星歯車によって置き換えられており、可変速可逆モータのピニオン歯車が外歯付き輪歯車のうちの一つと直接かみ合い、逆転軸を介して他の外歯付き輪歯車と相互作用している、
図4A~
図4C描写されるものに類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である。
【
図17B】いくつかの実施形態に従う、外歯付き輪歯車のうちの一つとの、及び延長軸を介して他の外歯付き輪歯車との、可変速可逆モータのピニオン歯車の直接的な相互作用の斜視図である。
【
図18】いくつかの実施形態に従う、車両を動作させるための方法のフローチャートである。
【
図19】
図18に従う、後部差動装置についての回転速度における所望の差を決定することにおいて使用されるパラメータを例証する図である。
【
図20】いくつかの実施形態に従う、第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における差動を能動的に制御するための方法のフローチャートである。
【
図21】いくつかの実施形態に従う、後部差動装置を有する車両内の後車軸間の回転速度における所望の差を決定する方法のフローチャートである。
【
図22】いくつかの実施形態に従う、前部差動装置を有する車両内の前車軸間の回転速度における所望の差を決定する方法のフローチャートである。
【
図23】
図22に従う、前部差動装置についての回転速度における所望の差を決定することにおいて使用されるパラメータを例証する図である。
【
図24】いくつかの実施形態に従う、中央差動装置を有する車両についての前出力駆動軸と後出力駆動軸との間の回転速度における所望の差を決定するための例となる方法のフローチャートである。
【
図25】
図24に従う、中央差動装置についての回転速度における所望の差を決定することにおいて使用されるパラメータを例証する図である。
【
図26】いくつかの実施形態に従う、差動システムを動作させるための方法のフローチャートである。
【
図27】いくつかの実施形態に従う、差動システムを動作させるための別の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
いくつかの実施形態は、車軸間の回転における差動の制御のためのシステム、歯車装置アセンブリ、及び方法を含む。いくつかの実施形態は、車両の差動操舵のための方法を含む。いくつかの実施形態は、車両、車両のための歯車装置アセンブリ、及び推進力を提供するための方法、並びに車両の駆動車軸に対する差動率の歯車ベースの回生制御を含む。いくつかの実施形態は、従来の能動制御差動装置と比較してコンパクトな設計を有する、差動回転率の能動制御のための回生歯車装置アセンブリを組み込む。いくつかの実施形態は、従来の回生差動操舵システムよりも単純であり、より少ない制御軸を含む、差動回転率の能動制御のための(例えば、差動的に操舵される車両のための)回生歯車装置アセンブリを含む。
【0083】
歯車装置アセンブリのいくつかの実施形態は、差動装置(例えば、オープン差動装置)と、各車軸に一つずつ、二つの異なる複数の調整歯車とを含む。各複数の調整歯車は、遊星歯車の内側のセット、及び遊星歯車の内側のセットと歯車キャリアを共有する遊星歯車の外側の第2のセットを含む。差動装置の両側の複数の調整歯車は、歯車間の回転における差動を付与するために、同じ差動制御ピニオン歯車によって駆動され、こうして所望の操舵挙動を達成する。
【0084】
いくつかの実施形態において、差動的に操舵される車両のための操舵制御は、操舵入力信号に少なくとも部分的に基づいて、可変速可逆モータを使用して差動制御ピニオン歯車を回転させることによって達成される。実施形態は、所望の操舵挙動を達成するために、差動制御ピニオン歯車の回転を、第1の車軸の回転率と第2の車軸の回転率との間の強いられた差に変換する歯車装置アセンブリを用いる。この設計は回生であるため、十分に強力な可変速操舵モータは、いくつかの実施形態において、車両がニュートラルステアすること、又は適所でスピンすることを可能にする。
【0085】
回生差動制御のための既存の歯車ベースの設計と対照的に、いくつかの実施形態は、大半の自動車において慣例にあるように、推進力を単一の差動歯車アセンブリを通じて各駆動車軸に直接印加する。加えて、実施形態は、中間歯車又はアイドラ歯車を通じて動力を送信しないため、直線走行では逆回転軸は存在しない。さらには、いくつかの実施形態は、追加の隣接する制御軸の必要性なしに、すべての駆動及び操舵制御歯車を駆動車軸の単一のセットに沿って対称配置に位置付ける。
【0086】
その結果、いくつかの実施形態は、推進力と回生差動率制御との組み合わせを達成するためのより効率的で、よりコンパクトで、より軽量化した設計を用いる。
【0087】
いくつかの実施形態は、車軸間の回転における差動の制御のためのシステム、歯車装置アセンブリ、及び方法、並びに車両の差動操舵のための方法を含む。
【0088】
いくつかの実施形態は、第2の車軸に対する第1の車軸の回転率を変更するとき、摩擦に依存しない。そのような実施形態は、車軸及び車輪のスリップを許さず、それにより車両の安全性を向上させることから、有利であり得る。摩擦に依存しない実施形態はまた、摩擦に依存する部品を除去することが、摩擦に起因して摩耗する可能性のある部品を除去し、これにより長期的費用を低減し得るために有利である。摩擦に依存しない、又は車軸間の回転速度における所望の差動からのわずかな偏差だけを許す実施形態は、駆動車輪に不均等なトルクが供給されることに起因して発生するトルクステアの低減又は除去から利益を得ることができる。様々な実施形態の追加の態様及び利益が以下に説明される。
【0089】
本明細書に説明されるいくつかの実施形態は、差動的に操舵される車両に組み込まれ得るか、又はこれに関連して実施される。
図1は、いくつかの実施形態に従う、歯車装置アセンブリ14を組み込む差動的に操舵される車両8の図式的外観である。差動的に操舵される車両は、推進エンジン11、及び駆動軸12を回転させる変速機13を含む。駆動軸12は、歯車装置アセンブリ14に接続される。可変速可逆モータ24により駆動される差動制御軸25もまた、歯車装置アセンブリ14に接続される。歯車装置アセンブリケース16は、歯車装置アセンブリ14を保持及び保護し、歯車装置アセンブリ14の周りに油を保持する。
【0090】
歯車装置アセンブリ14は、車両8の推進のために、推進のための回転を駆動軸12から第1の車軸18及び第2の車軸20へ伝達し、車両の推進及び操舵のために、操舵のための回転を差動制御軸25から第1の車軸18及び第2の車軸20へ伝達する。車軸18、20は、車両の第1の軌道21'及び第2の軌道22'を駆動する。歯車装置アセンブリ14は、差動制御軸25の回転に基づいて、第2の車軸20の回転率に対する第1の車軸18の回転率における差動を強いるように構成される。このやり方では、差動制御軸25の回転は、第2の軌道22'の回転率に対する第1の軌道21'の回転率における差動を制御するために使用される。
【0091】
いくつかの状況では、これは、歯車装置アセンブリ14が、車両を操舵するために、差動制御軸25の回転を、第1の車軸18に印加される第1の差動操舵トルク、及び第2の車軸20に印加される第2の差動操舵トルクへ変換すると説明され得る。ほとんどの状況では、第2の差動操舵トルクは、第1の差動操舵トルクの符号と反対の符号を有する。
【0092】
車両を操舵しているとき、操舵輪、ヨーク、又はレバーなどの操舵入力デバイス23の動きは、可変速可逆モータ24に信号を提供する舵角センサ28によって測定される。いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24は、舵角センサ28により提供される信号によって直接制御される。そのような実施形態において、追加のセンサは必要とされない。いくつかの実施形態において、車軸回転速度センサ30及び駆動軸回転速度センサ29は、閉ループ及び速度感応式操舵調整を提供するために、車両のコンピュータ26に入力を提供する。
【0093】
いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24は、車両のコンピュータ26によって制御される。いくつかの実施形態において、エンジンコンピュータ26によって可変速可逆モータ24に送信される制御信号は、舵角センサ28、駆動軸回転速度センサ29、及び一つ以上の車軸回転速度センサ30から受信される入力によって決まる。
【0094】
可変速可逆モータ24は、歯車装置アセンブリ14と通信する差動制御軸25を駆動する。いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24は、一つ以上の他の歯車を通じて差動制御軸25に結合され得る。例えば、
図1は、差動制御軸25に装着される平歯車19とかみ合う可変速可逆モータ24によって駆動されるピニオン歯車27を示す。いくつかの実施形態において、減速歯車は、可変速可逆モータ24を差動制御軸25に結合するために使用され得る。ピニオン歯車27及び平歯車19は、減速歯車として機能する。いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24は、減速歯車を含み得る。いくつかの実施形態において、減速歯車は、可変速可逆モータ24を差動制御軸25に結合するために使用され得る。いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24は、差動制御軸25と直接結合し得る。
【0095】
差動的に操舵される車両のためのいくつかの実施形態において、速度感応式操舵機能は、車両の駆動軸速度が増大するのと同じ操舵入力信号値で差動制御ピニオン歯車の回転速度を減少させることによって提供される。いくつかの実施形態において、トルク変換器(図示せず)は、差動制御軸25に供給される操舵トルクの量が車両の全体的な速度により決まるように、変速機と可変速可逆モータ24との間に用いられ得、車両速度が小さいほど多くの操舵トルクが印加され、車両速度が大きいほど少ない操舵トルクが印加される。いくつかの実施形態において、コンピュータ26又は制御ユニットは、車両速度の関数として差動制御軸25に印加される操舵トルクの量を制御するために使用される。
【0096】
差動的に操舵される車両は、変速機13、可変速可逆モータ24、及び歯車装置アセンブリ14の機能のうちの一部又はすべてを、クロスドライブ式変速機ユニット31を形成する単一のエンクロージャに統合し得る。いくつかの実施形態において、本明細書に説明される歯車装置アセンブリ14は、最終駆動歯車として働くためにクロスドライブ式変速機ユニットに統合される。いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24は、クロスドライブ式変速機ユニットの出力のうちの一つである。
【0097】
差動的に操舵される車両のためのいくつかの実施形態において、エンジン11は、推進力、並びに車両を操舵するための可変速可逆モータ24を回転させるための動力の両方を提供するために使用される。しかしながら、操舵は、概して、推進から独立して制御されるため、そのような車両は、車両を操舵することに使われるエンジントルクの量を独立して調整するやり方を提供しなければならない。
【0098】
これを達成するための一つのやり方は、エンジンが油圧ポンプ(図示せず)を回転させるようにし、そしてこの油圧ポンプが、油圧モータ(例えば、静圧モータ)に動力供給して、操舵トルクを制御可能に印加することである。この場合、油圧モータは、差動制御軸25を駆動する可変速可逆モータ24として働く。油圧モータを含むいくつかの実施形態において、操舵入力デバイス23は、一つ以上の油圧弁を動かし、そしてこの油圧弁が可変速可逆モータ24の回転を制御する。静圧モータを含むいくつかの実施形態において、操舵入力デバイス23は、一つ以上の斜板の角度を変え、そしてこの斜板が可変速可逆モータ24の回転を制御する。
【0099】
これを達成するための別のやり方は、エンジン11によって回転される時計回り及び反時計回りの回転要素(図示せず)に係合するように設定される一対の左右の操舵クラッチ(図示せず)を提供することである。これらのクラッチのうちの一方の係合が、時計回り又は反時計回りのいずれかの操舵トルクを差動制御軸25に制御可能に印加する。そのような実施形態においては、可変速可逆モータ24ではなく、一対のクラッチ及び回転要素が、差動制御軸25を制御可能に駆動するために使用される。差動的に操舵される車両に関連した車両、歯車装置アセンブリ、及び方法のいくつかの実施形態及び特徴は、可変速可逆モータに関して本明細書では説明されるが、代替的に、実施形態のいずれにおいても、操舵クラッチ及び回転要素が、可変速可逆モータの代わりに用いられてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、駆動軸12は、示されるように差動制御軸25内に少なくとも部分的にネスト化されるが、差動制御軸25とは独立して回転する(以下に説明される
図3A~
図3Cも参照されたい)。具体的には、いくつかの実施形態において、差動制御軸25は中空であり、駆動軸12は、車両の差動制御軸25を通って、及びそれを超えて延びる(以下に説明される
図3A~
図3Cを参照されたい)。他の実施形態において、駆動軸12及び差動制御軸25は、異なる側面から歯車装置アセンブリに入る(例えば、以下に説明される
図4A~4Dを参照されたい)。
【0101】
本明細書に説明されるいくつかの実施形態は、前輪操舵される車両に組み込まれ得るか、又はこれに関連して実施される。
図2は、いくつかの実施形態に従う、歯車装置アセンブリ14を組み込む前輪操舵される車両9の図式的外観である。前輪操舵される車両9は、エンジン11、及び歯車装置アセンブリ14に接続される駆動軸12を回転させる変速機13を含む。車両9はまた、可変速モータ24を含み、これは、いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリ14に接続される、差動制御軸25を駆動する可変速可逆モータ24(例えば、可変速電動可逆モータ)である。可変速モータ24、差動制御軸25、及び歯車装置アセンブリ14は、車両の第1の車輪21に接続される第1の車軸18と車両の第2の車輪22に接続される第2の車軸20との間の回転速度における差動を制御するために使用される。
【0102】
一般的に言うと、前輪操舵される車両では、車軸間の回転速度における差動の制御は、車両を操舵するために使用されない。代わりに、所与の回転角度及び所与の車両速度についての車軸間の回転速度における自然の差動に相当する車軸間の回転速度における所望の差動に一致する、又はおよそ一致するための、車軸間の回転速度における差動の制御が、車輪のスリップを低減する若しくは防ぐため、又は理想に満たない道路状況下において、スリップする車輪への動力の伝達を低減する若しくは防ぐために使用され得る。所与の回転角度及び所与の車両速度についての車軸間の回転速度における自然の差動に相当する回転速度における所望の差動の計算の説明は、
図18~
図25に関して下に提供される。しかしながら、いくつかの前輪操舵の実施形態において、差動は、自然の差動率以外の率を有するように制御され得る。この自然の差動率は、スリップなし及び車両非対称性なしの理想の条件下での所与の回転角度及び所与の車両速度についての理想の差動率とも呼ばれ得る。例えば、いくつかの車両において、及びいくつかの条件において、車両の現在の舵角及び現在の速度に相当する回転率における自然の差動よりも大きい車軸間の回転における差動を強いることが望ましい場合がある。そのような車両及びそのような状況において、コンピュータは、車両の能動的なヨーイング制御を提供するために、現在の舵角及び現在の車両速度についての回転率における自然の差動よりも大きい回転率における差動を強いることを歯車装置アセンブリに指示し得る。
【0103】
前輪操舵される車両9では、操舵輪、ヨーク、又はレバーなどの操舵入力デバイス(図示せず)の動きは、コンピュータ26に信号を提供する舵角センサ28によって測定される。駆動軸回転速度センサ29は、所与の舵角及び駆動軸速度についての所望の差動率を計算することが必要とされるコンピュータに追加の信号を提供する。任意選択の差動回転センサ(例えば、車軸回転速度センサ30)が、コンピュータ26に閉ループフィードバックを提供するために用いられてもよい。コンピュータ26は、計算された所望の差動率に従って回転するように可変速モータ24に命令する。いくつかの場合において、減速歯車27は、所与の可変速可逆モータサイズ又は動力のための所望の差動回転をより効率的に提供するために用いられる。
【0104】
いくつかの実施形態において、車両はまた、第1の車軸と第2の車軸との間の現在又は瞬間の差動トルクを決定する一つ以上のトルクセンサを含む。例えば、車両9は、第1の車軸18についての現在のトルクを測定するセンサ7、及び第2の車軸20についての現在のトルクを測定するセンサ8を含む。いくつかの実施形態において、第1の車軸と第2の車軸との間のトルクにおける検知された現在の差動に少なくとも部分的に基づいて、自然の差動率とは異なる所望の差動率が用いられ得る。例えば、一つ以上のトルクセンサ7、8は、コンピュータ26に閉ループフィードバックを提供するために用いられ得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、可変速モータ(例えば、可変速可逆モータ)は、電動モータ(例えば、サーボモータ又はステッパモータ)である。他の実施形態において、可変速モータ(例えば、可変速可逆モータ)は、油圧モータである。用いられ得る可変速モータ(例えば、可変速可逆モータ)は、限定されるものではないが、電動モータ(例えば、サーボ又はステッパモータ)、及び静圧モータを含む。
【0106】
図2に概略的に示されるように、差動制御軸25は、駆動軸12とは異なる歯車装置アセンブリ14の側面から延びるが、他の前輪操舵される実施形態においては、駆動軸12は、差動制御軸25内に少なくとも部分的にネスト化される(例えば、以下に説明される
図3Dを参照されたい)。ネスト化された軸を用いる実施形態において、駆動軸12は、差動制御軸25とは独立して回転する。
【0107】
下に説明されるように、歯車装置アセンブリ14は、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転率における差動を制御するために使用される。
【0108】
歯車装置アセンブリ14の第1の例となる実施形態は、
図3A~
図3Dに描写される。歯車装置アセンブリ14は、車両の第1の車軸18及び第2の車軸20に係合するように構成され、車両の駆動軸12によって駆動されるように構成される(
図3Dを参照されたい)差動装置40(
図3Aを参照されたい)を含む。いくつかの実施形態において、差動装置40は、オープン差動装置に基づく。歯車装置アセンブリ14内で、駆動軸12は、ベベル型ピニオン歯車32で終わる。ピニオン歯車32は、第1及び第2の車軸18、20の回転の主軸35の周りに設置される大きいベベル型輪歯車34を回転させる。ベベル型輪歯車34は、歯車キャリア(例えば、マイタ歯車キャリア)、差動装置ケース、又は差動装置ケージとして説明され得るキャリアハウジング36に装着される。キャリアハウジング36は、ベベル型輪歯車34と一緒に回転する。キャリアハウジング36は、スパイダ歯車としても知られるマイタ歯車38を一つ又は二つ保有する。
図3A~
図3Dに描写される実施形態では、二つのマイタ歯車38が示される。マイタ歯車38は、回転の主軸35に垂直に配向される。いくつかの実施形態において、キャリアハウジング36は、ころ軸受48a、48bを使用して歯車装置アセンブリケース16内に回転可能に取り付けられる。
【0109】
両方の車軸18、20は、ベベル型駆動歯車43a、43bで終わる。第1の車軸18は、キャリアハウジング36内へ延び、この中で、第1の車軸のベベル型駆動歯車43aはベベル型マイタ歯車38とかみ合わされる。第2の車軸20は、ベベル型輪歯車34を通ってキャリアハウジング36内へ延び、ここで第2の車軸のベベル型駆動歯車43bは、ベベル型マイタ歯車38とかみ合う。
【0110】
ベベル型ピニオン歯車32、ベベル型輪歯車34、キャリアハウジング36、及びマイタ歯車38は、本明細書では、まとめて差動装置40と呼ばれ、これは、第1の車軸18、第2の車軸20、及び車両の駆動軸12に係合するように構成される。当業者は、差動装置40の部品が様々であり得ることを理解するものとする。例えば、歯車キャリア36は、異なる形状又は構成を有し得、ベベル型輪歯車34は、捻れベベル型輪歯車又は平歯車であり得る。二つより多くの、又は少ないマイタ歯車が存在し得る(例えば、四つのマイタ歯車が存在し得る)。
【0111】
歯車装置アセンブリ14はまた、車両の可変速可逆モータ24によって駆動されるように構成される差動制御ピニオン歯車33を含む(
図3Bを参照されたい)。可変速可逆モータの代わりに操舵クラッチ及び回転要素を用いる車両において、差動制御ピニオン歯車33は、操舵クラッチ及び回転要素によって駆動されるように構成される。歯車装置アセンブリ14はまた、第1の複数の調整歯車15a及び第2の複数の調整歯車15bを含み、これらは共に、差動装置40に係合するように、及び差動制御ピニオン歯車33によって駆動されるように構成される(
図3B及び
図3Dを参照されたい)。第1の複数の調整歯車15a及び第2の複数の調整歯車15bは、可変速可逆モータ24によって生み出される差動制御ピニオン歯車33の回転により、第2の車軸20の回転率に対して第1の車軸18の回転率を制御可能に変更するように構成される(
図3B及び
図3Dを参照されたい)。いくつかの実施形態において、差動制御ピニオン歯車33の回転により、第1の複数の調整歯車15aは、第1の差動トルクを第1の車軸18に印加するように構成され、第2の複数の調整歯車15bは、第2の差動トルクを第2の車軸20に印加するように構成される。第1の複数の調整歯車15a及び第2の複数の調整歯車15bは、可変速可逆モータ24による差動制御ピニオン歯車33の回転に基づいて、第1の車軸と第2の車軸との間の回転率における差動を強いるように構成される。いくつかの実施形態において、差動制御ピニオン歯車33は、差動制御軸25を通じて可変速可逆モータ24に接続される。
【0112】
いくつかの実施形態において、第2の複数の調整歯車15bの配置は、第1の複数の調整歯車15aの配置を概ね反映する。第1の複数の調整歯車15a及び第2の複数の調整歯車15bの両方が、差動装置40に近い内側のセット(遊星歯車の第1のセット61a、62a、63a、及び遊星歯車の第3のセット61b、62b、63b)、並びに差動装置40から遠い外側のセット(遊星歯車の第2のセット64a、65a、66a、及び遊星歯車の第4のセット64b、65b、66b)という遊星歯車の二つのセットを含む。第1の複数の調整歯車15a及び第2の複数の調整歯車15bの両方について、遊星歯車の内側及び外側のセットは、同じそれぞれの遊星歯車キャリアに結合される(例えば、遊星歯車の第1のセット61a、62a、63a、及び遊星歯車の第2のセット64a、65a、66aは、第1の遊星歯車キャリアに結合され、遊星歯車の第3のセット61b、62b、63b及び遊星歯車の第4のセット64b、65b、66bは、第2の遊星歯車キャリアに結合される)。
図3A~
図3Dに描写される実施形態において、各遊星歯車キャリアは、二つの端板及びピンを含む(例えば、第1の遊星歯車キャリアは、端板70a、72a、及びピン67a、68a、69aを含み、第2の遊星歯車キャリアは、端板70b、72b、及びピン67b、68b、69bを含む)。しかしながら、他の実施形態において、遊星歯車キャリアは、当該技術分野において知られるような他の構成を有し得る。
【0113】
遊星歯車のセット毎に三つの遊星歯車の選択は、単に例示にすぎず、部品間の機械エネルギーの説明される伝達を達成することができるという条件で、セット毎に任意の数の遊星歯車が使用され得ることを理解されたい。
【0114】
遊星歯車の内側のセット(遊星歯車の第1のセット61a、62a、63a、及び遊星歯車の第3のセット61b、62b、63b)は、それぞれの複数の調整歯車15a、15bを差動装置40に結合する。例えば、いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリ14はまた、差動装置のキャリアハウジング36に結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる第1の差動太陽歯車42a、及びキャリアハウジング36に結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる第2の第1の差動太陽歯車42bを含む。差動太陽歯車42a、42bは、ベベル型輪歯車34及び差動装置40のキャリアハウジング36と一緒に回転する。遊星歯車の内側のセット(遊星歯車の第1のセット61a、62a、63a、及び遊星歯車の第3のセット61b、62b、63b)各々が、それぞれの差動太陽歯車42a、42bに係合することによって差動装置40と係合する。
【0115】
差動太陽歯車42a、42bを用いて遊星歯車の内側のセットに係合し駆動する実施形態は、差動太陽歯車42a、42bが比較的小さいことが理由で、比較的小さい寄生抗力を有し得る。
【0116】
遊星歯車の外側のセット(遊星歯車の第2のセット64a、65a、66a、及び遊星歯車の第4のセット64b、65b、66b)は、それぞれの複数の調整歯車15a、15bをそれぞれの車軸18、20に結合する。例えば、いくつかの実施形態において、第1の車軸太陽歯車45aは、第1の車軸18に結合されるか、それに装着されるか、又はそれと一体にされ、第2の車軸太陽歯車45bは、第2の車軸18に結合されるか、それに装着されるか、又はそれと一体にされる。第1の車軸太陽歯車45aは、第1の車軸18と一緒に回転し、第2の車軸太陽歯車45bは、第2の車軸と一緒に回転する。遊星歯車の外側のセット(遊星歯車の第2のセット64a、65a、66a、及び遊星歯車の第4のセット64b、65b、66b)各々が、それぞれの車軸太陽歯車45a、45を通じてそれぞれの車軸18、20に係合する。
【0117】
遊星歯車の内側のセット(それぞれ、遊星歯車の第1のセット61a、62a、63a、及び遊星歯車の第3のセット61b、62b、63b)、並びに遊星歯車の外側のセット(それぞれ、遊星歯車の第2のセット64a、65a、66a、及び遊星歯車の第4のセット64b、65b、66b)を共通の遊星歯車キャリア(それぞれ、第1の遊星歯車キャリア及び第2の遊星歯車キャリア)に結合することによって、遊星歯車の内側のセット及び遊星歯車の外側のセットは、同じ公転速度でそれらのそれぞれの太陽歯車を公転することを強いられる。しかしながら、内側及び外側の遊星歯車は、共通の遊星歯車キャリアに取り付けられていることにより、同じ公転速度を共有する一方、それらは、互いから独立してスピンすることができる。
【0118】
遊星歯車の内側のセット(例えば、遊星歯車の第1のセット61a、62a、63a、及び遊星歯車の第3のセット61b、62b、63b)の公転速度は、それぞれの車軸(例えば、第1の車軸18及び第2の車軸20)の回転速度に比例する。
【0119】
いくつかの実施形態において、複数の調整歯車15a、15bは各々、可変速可逆モータ24に対して静止している歯車装置アセンブリケース16に対して静止している(例えば、歯車装置アセンブリケース16に取り付けられる、それに結合される、又はそれと一体にされる)内歯車46a、46bも含む。各内歯車46a、46bは、それぞれの遊星歯車の外側のセット(それぞれ、遊星歯車の第2のセット64a、65a、66a、及び遊星歯車の第4のセット64b、65b、66b)に係合する内歯47aを含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、複数の調整歯車15a、15bは各々、差動制御ピニオン歯車33と係合するように構成される外歯54a、54bを有し、それぞれの遊星歯車の内側のセット(遊星歯車の第1のセット61a、62a、63a、及び遊星歯車の第3のセット61b、62b、63b)とかみ合うように構成される内歯52a、52bを有する、外歯付き輪歯車50a、50bも含む。いくつかの実施形態において、外歯54a、54bは、示されるようにベベル型である。外歯付き輪歯車50a、50bを回転させることにより、外歯付き輪歯車50a、50bが回転される方向に応じて、加算又は減算回転を、それぞれの車軸18、20の他方の車軸に対する回転速度に付与する。外歯付き輪歯車50a、50bの両方は、差動制御ピニオン歯車33を回転させることにより外歯付き輪歯車50a、50bを共に同じ回転速度で反対方向に回転させるようなやり方で、差動制御ピニオン歯車33とかみ合わされ、こうして、ある量だけ一方の車軸に対して増大した回転率を強いて、車軸18、20間の回転率の差を強いるために同じ量だけ他方の車軸に対して減少した回転率を強いる。
【0121】
いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24の回転率は、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差に比例し、差動制御ピニオン歯車33の回転率は、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差に比例する。回転運動を可変速可逆モータ24からそれぞれの遊星歯車の内側のセットへ伝達するために外歯付き輪歯車50a、50bを用いる実施形態において、外歯付き輪歯車50a、50bの回転率もまた、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差に比例する。したがって、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差が存在しないとき、外歯付き輪歯車50a、50bの回転は存在しない。第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差が存在しない直線走行中、外歯付き輪歯車50a、50b、遊星歯車の内側のセット、及び遊星歯車の外側のセットはすべて、第2の車軸20の何分の一かの回転速度で回転する。外歯付き輪歯車50a、50bは、より小さい直径を有する歯車と比べて比較的高い慣性を有するため、外歯付き輪歯車50a、50bは、車軸間の回転速度における差が必要とされるときにのみ回転することが特に有益であり、回転速度における差が必要とされるとき、外歯付き輪歯車50a、50bの回転速度は、いずれかの車軸の回転速度よりも小さい。もしも外歯付き輪歯車50a、50bが、第2の車軸よりも速く回転することが必要とされる場合、システムは、外歯付き輪歯車50a、50bからかなりの抗力を経験する。
【0122】
差動装置40のキャリアハウジング36が回転するとき、差動太陽歯車42a、42bも回転する。差動太陽歯車42a、42bは各々がそれぞれの遊星歯車の内側のセットを回転させる。遊星歯車の内側のセットの公転運動は、共通のキャリアによって遊星歯車の外側のセットへ伝達される。遊星歯車の外側のセットは各々、それぞれの車軸18、20上のそれぞれの車軸太陽歯車45a、45bを回転させる。
【0123】
差動制御ピニオン歯車33は、可変速可逆モータ24によって選択的に回転される。差動制御ピニオン歯車33は、各外歯付き輪歯車50a、50bの外歯54a,54bとかみ合い、外歯付き輪歯車50a、50bを反対方向に回転させる。差動制御ピニオン歯車33が、異なる速度で可変速可逆モータ24によって回転され得ることから、外歯付き輪歯車50a、50bもまた異なる速度で回転され得ることを理解されたい。
【0124】
いくつかの実施形態において、第1の複数の調整歯車15a及び第2の複数の調整歯車15bは、第1の外歯付き輪歯車50aのゼロ回転及び第2の外歯付き輪歯車50bのゼロ回転が、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度の差なしに相当するように構成される。いくつかの実施形態において、第1の外歯付き輪歯車50aの回転率は、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差に比例する。
【0125】
上に説明されるように、第1の複数の調整歯車15a及び第2の複数の調整歯車15bは、比較的小さい付加抗力で、及び回転速度の変化に対する比較的小さい抵抗性で、可変速可逆モータを使用して第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における差の制御を可能にする。
【0126】
上に記されるように、差動制御ピニオン歯車33は、可変速可逆モータ24によって回転される。いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24は、減速歯車73を通じて差動制御ピニオン歯車33に接続し得る(
図4C及び
図4Dを参照されたい)。
【0127】
いくつかの実施形態において、差動制御ピニオン歯車33は、可変速可逆モータ24によって駆動される差動制御軸25に装着される。いくつかの実施形態において、差動制御軸25は、中空であり、駆動軸12は、差動制御軸25を通って延び、これは、本明細書ではネスト化された駆動軸及び差動制御軸を有する実施形態と称される。軸はネスト化されるが、差動制御軸25及び駆動軸12は、互いと独立して自由に回転する。これらのネスト化された軸実施形態は、コンパクトなレイアウトを提供する。差動制御軸が車両を操舵するために使用される実施形態では、これは、ネスト化された駆動軸及び操舵軸として説明され得る。
【0128】
他の実施形態において、駆動軸12及び差動制御軸25は、歯車装置アセンブリケース16の異なる側面から延び得る。いくつかの実施形態において、差動制御ピニオン歯車33は、駆動軸12に接続されるベベルピニオン歯車33とは反対側のキャリアハウジング36に位置付けられる(下に説明される
図4A~
図4Dを参照されたい)。
【0129】
駆動軸12は、内燃機関エンジン及び変速機などの車両推進系、静圧駆動によって、又は電動モータを通じて回転される。差動制御軸25を回転させるための動力は、既存の推進エンジン若しくはモータによって、又は別個の専用エンジン若しくは可変速可逆モータを通じて供給される。
【0130】
図3A~
図3Dに描写されるように、遊星歯車61a~66a、61b~66bは、段付歯車ではない。いくつかの実施形態において、遊星歯車は、
図7~
図15に関して下に説明されるように、段付遊星歯車である。いくつかの実施形態において、
図3A~
図3Dの実施形態における遊星歯車は、段付遊星歯車で置き換えられる。
【0131】
図3A~
図3Dに描写されるように、第1の車軸太陽歯車45a及び第2の車軸太陽歯車42bは、平歯車である。
図3~
図6に描写されるように、第1の差動太陽歯車42a及び第2の差動太陽歯車42bは、平歯車である。他の実施形態において、車軸太陽歯車及び差動太陽歯車は、他の構成を有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、差動太陽歯車、車軸太陽歯車、内側遊星歯車のセット、及び外側遊星歯車のセットのいずれか又はすべてが、はすばを有し得る(
図4A~
図4Cに示される実施形態を参照されたい)。そのような実施形態において、外歯付き輪歯車50a、50bの内歯52a、52bもまた、ヘリカル状である(
図4A~
図4Cに示される実施形態を参照されたい)。いくつかの実施形態において、遊星歯車は、段付であり得、はすばを有し得る。
【0132】
描写されるように、駆動軸のためのピニオン歯車32は、ベベル型である。いくつかの実施形態において、駆動軸のためのピニオン歯車32は、捻じれベベルピニオン歯車であり得、ベベル型輪歯車34は、捻じれベベル輪歯車であり得る(
図4A~
図4Cに示される実施形態を参照されたい)。いくつかの実施形態において、駆動軸のためのピニオン歯車は、ベベルピニオン歯車でなくてもよい(
図17A及び
図17Bに関して示され説明される実施形態を参照されたい)。いくつかの実施形態において、駆動軸のためのピニオン歯車は、ベベルピニオン歯車であるが、外歯付き輪歯車は、ベベル型ではない(
図16A及び
図16Bに関して示され説明される実施形態を参照されたい)。いくつかの実施形態において、ピニオン歯車は、一つ以上の他の歯車を介して外歯付き輪歯車の一方又は両方と相互作用する(
図16A~
図17Bに関して示され説明される実施形態を参照されたい)。
【0133】
図3A~
図3Dに描写されるように、第1の車軸18は、後車軸のための車両の右車軸であり、第2の車軸20は、後車軸のための車両の左車軸である。しかしながら、いくつかの実施形態において、第1の車軸18が左車軸であり、第2の車軸20が右車軸である。さらに、いくつかの実施形態において、第1の車軸18及び第2の車軸20は、前車軸の車軸である。いくつかの実施形態において、第1の車軸18及び第2の車軸20は、全輪駆動を有する車両における車両の前車軸と後車軸との間の差動回転率を提供する。
図3A~
図3Dに描写される実施形態において、各内歯車46a、46bの内側は、それぞれの外歯付き輪歯車50a、50bの内歯52a、52bと、同じサイズであり、同じ歯車装置を有する。しかしながら、これらの寸法及び歯車装置タイプは、性能を最適化するために、車輪サイズ及び車種などの多数の因子に応じて変更され得る。
【0134】
図4A~
図4Cは、第2の例となる実施形態に従う歯車装置アセンブリ14'を描写する。
図4A~
図4Cの歯車装置アセンブリ14'は、
図3A~
図3Dの歯車装置アセンブリ14に関連して上に説明される部品と同じ、又は類似する多くの部品を含み、したがって、同じ参照番号の多くを使用する。第1の例となる実施形態に関する上の説明の大半は、第2の例となる実施形態に適用可能である。実施形態間のいくつかの違いが、以下に説明される。
【0135】
歯車装置アセンブリ14'の第2の例となる実施形態において、歯車のうちの多くの歯は、第1の例となる実施形態内の対応する要素の構成とは異なる構成を有する。例えば、第2の例となる実施形態において、内歯車46a、46bの歯47a、47bは、ヘリカル状である。外歯付き輪歯車50a、50bの内歯52a、52bもまた、歯車装置アセンブリ14'において、ヘリカル状である。車軸太陽歯車45a、45bの歯、差動太陽歯車42a、42bの歯、及び遊星歯車のセットのすべて61a、62a、63a、64a、65a、66a、61b、62b、63b、64b、65b、66bの歯は、歯車装置アセンブリ14'において、すべてヘリカル状である。さらに、外歯付き輪歯車50a、50bは、輪の外側部分が差動制御ピニオン歯車33に向かって内側に延びており、歯車装置アセンブリ14'においては異なる形状を有する。差動装置40もまた、第1の例となる実施形態の歯車装置アセンブリ14と比べて、第2の例となる実施形態の歯車装置アセンブリ14'においていくつかの異なる態様を有する。キャリアハウジング36は、歯車装置アセンブリ14におけるキャリアハウジング36の全体的に概して箱形状と比べて、歯車装置アセンブリ14'においては全体的に円筒形状を有する。さらに、ベベル型輪歯車34は、駆動軸12によって駆動される捻じれベベルピニオン歯車32とかみ合うために、歯車装置アセンブリ14'においては捻じれベベル歯車である。また、差動装置40は、第1の実施形態における二つのマイタ歯車に対立するものとして、第2の実施形態においては四つのマイタ歯車38を含む。
【0136】
様々な歯車にはすばを使用することは、一般的に、はすば歯車が、より静かであり、直線カット歯車よりも多くの負荷を支えることができるため、有利であり得る。しかしながら、はすばを有する歯車は、一般的には、直線カット歯車よりも高価である。
【0137】
図3A~
図3Dに描写されるネスト化された軸実施形態とは異なり、歯車装置アセンブリ14'は、駆動軸12のためのピニオン歯車32が差動制御ピニオン歯車33とは反対側のキャリアハウジング36にある構成を含む。
図3A~
図3Dに示される実施形態において、差動制御軸25は、比較的短く、可変速可逆モータ24は、歯車装置アセンブリの近くに位置付けられる(
図4Cを参照されたい)。
【0138】
遊星歯車キャリアに対する遊星歯車の内側のセット及び遊星歯車の外側のセットの配置は、第2の例となる実施形態では第1の例となる実施形態とは異なる。例えば、第1の例となる実施形態では、各遊星歯車キャリアは、二つの端板70a、72a及び70b、72bをそれぞれ含み、端板の間に遊星歯車の内側のセット及び外側のセットが配設されている。第2の例となる実施形態では、各遊星歯車キャリア71a、71bは、遊星歯車の内側のセットを遊星歯車の外側のセットから分ける。
【0139】
図4A~
図4Cに描写されるように、遊星歯車61a~66a、61b~66bは、段付歯車ではない。いくつかの実施形態において、遊星歯車は、
図7~
図15に関して下に説明されるように、段付遊星歯車である。いくつかの実施形態において、
図4A~
図4Cの実施形態における遊星歯車は、段付遊星歯車で置き換えられる。
【0140】
上に記されるように、差動的に操舵される車両のための歯車装置アセンブリのいくつかの実施形態において、差動制御ピニオン歯車33は、可変速可逆モータの代わりに車両の操舵クラッチによって駆動されるように構成される。そのような実施形態において、操舵クラッチは、車両を操舵するために、第2の車軸20に対して第1の車軸18の回転率を制御可能に変更するために使用される。
【0141】
図5A~
図5Cは、第3の例となる実施形態に従う歯車装置アセンブリ14''を描写する。歯車装置アセンブリ14''の一部の要素は、上記の歯車装置アセンブリ14及び14'の要素に類似する。二つの大きな違いは、歯車装置アセンブリ14''が一方のみの複数の調整歯車を有し、回生ではないことである。歯車装置アセンブリ14内で、駆動軸12は、慣習的なベベル型ピニオン歯車32で終わる。ピニオン歯車32は、二つの後車軸18、20の回転の主軸35の周りに設置される大きいベベル型輪歯車34を回転させる。ベベル型輪歯車34は、マイタ歯車キャリア36に装着される。マイタ歯車キャリア36は、ベベル型輪歯車34と一緒に回転する。マイタ歯車キャリア36は、一つ以上のマイタ歯車38を保有する。示される実施形態では、二つのマイタ歯車38が示される。マイタ歯車38は、慣習的な様式で回転の主軸35に垂直に配向される。
【0142】
ベベル型ピニオン歯車32、ベベル型輪歯車34、マイタ歯車キャリア36、及びマイタ歯車は、本明細書では、まとめて差動装置40と呼ばれ、これは、第1の車軸18、第2の車軸20、及び車両の駆動軸12に係合するように構成される。当業者は、差動装置40の部品が様々であり得ることを理解するものとする。例えば、歯車キャリア36は、異なる形状又は構成を有し得、ベベル型輪歯車34は、捻れベベル型輪歯車であり得る。二つより多くの、又は少ないマイタ歯車が存在し得る(例えば、四つのマイタ歯車が存在し得る)。
【0143】
歯車装置アセンブリ14はまた、差動装置40に係合するように構成され、可変速モータ24によって駆動されるように構成され、可変速モータ24によって生み出される回転に基づいて第2の車軸20に対して第1の車軸18の回転を制御可能に変更するように構成される、複数の調整歯車を含む。複数の調整歯車は、遊星歯車キャリア、遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第1のセット61、62、63、及び遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第2のセット64、65、66を含む遊星歯車のサブアセンブリ60を含む。遊星歯車の第2のセット64、65、66は、車両の第1の車軸18と結合するように構成される。いくつかの実施形態において、遊星歯車の第2のセット64、65、66は、車両の第1の車軸18に装着される歯車45に係合し、これを回転させるように構成される。いくつかの実施形態において、遊星歯車の第2のセットは、第1の車軸18に装着又は結合される平歯車45又ははすば歯車に係合し、これを回転させるように構成される。
【0144】
いくつかの実施形態において、複数の調整歯車はまた、差動装置40と結合される、又はこれに装着される太陽歯車42を含み、太陽歯車40は、遊星歯車の第1のセット64、65、66に係合するように構成され、複数の調整歯車は、太陽歯車20を通じて差動装置40と相互作用する。いくつかの実施形態において、太陽歯車42は、差動装置の歯車キャリア36に装着される。太陽歯車42は、回転の主軸35上に配向される。したがって、太陽歯車42は、差動装置40のベベル型輪歯車34及び歯車キャリア36と一緒に回転するということを理解されたい。
【0145】
両方の車軸18、20は、ベベル型駆動歯車43、44で終わる。第2の車軸20は、ベベル型輪歯車34を通って延び、そのベベル型駆動歯車44が、差動装置40のマイタ歯車キャリア36内のベベル型マイタ歯車38とかみ合う。逆に、第1の車軸18は、太陽歯車42の中央を通って延び、そのベベル型駆動歯車43が、差動装置40のマイタ歯車キャリア36内のベベル型マイタ歯車38とかみ合う。
【0146】
いくつかの実施形態において、複数の調整歯車はまた、遊星歯車の第2のセット64、65、66に係合するように構成される内歯車(例えば、静止した内平歯車46)を含む。内歯車は、可変速モータに対して静止している。例えば、静止した内平歯車46は、差動装置ケーシング16に接続され、したがって動かない。いくつかの実施形態において、内歯車は、はすば内歯車である。
【0147】
いくつかの実施形態において、複数の調整歯車はまた、可変速モータ24によって駆動される制御軸25から遊星歯車の第1のセット61、62、63へ回転運動を伝達する環状歯車50又は輪歯車を含む。環状歯車50は、遊星歯車の第1のセット61、62、63に係合する内歯車歯52を有する。環状歯車もまた、外歯車歯54を有する。示される実施形態において、環状歯車50の内側は、内平歯車48の内側と、同じサイズであり、同じ歯車装置を有する。しかしながら、これらの寸法及び歯車装置タイプは、性能を最適化するために、車輪サイズ及び車種などの多数の因子に応じて変更され得る。環状歯車50は、マイタ歯車キャリア36の太陽歯車42の周りに位置決めされる。
【0148】
差動制御ピニオン歯車が外歯付き輪歯車の外歯に係合する
図3A~
図4Cに描写される実施形態と対照的に、
図5A~
図5Cに描写される実施形態では、制御軸25と関連付けられた歯車(例えば、ウォーム歯車56)は、環状歯車50の外歯車歯54に係合する。環状歯車に係合するためにウォーム歯車を用いる実施形態において、ウォーム歯車56は、差動装置ケーシングに固定されており、静止している。いくつかの実施形態において、制御軸と関連付けられた歯車は、異なる構成を有する(例えば、平歯車又ははすば歯車)。この第1の例となる実施形態では、制御軸25の回転軸は、駆動軸にほぼ平行に、及び車軸の回転軸35に垂直に配向される。しかしながら、他の実施形態では、制御軸25の回転軸は、車軸の回転の回転軸35に平行であり得るか、又は異なる配向を有し得る。
【0149】
制御軸25と関連付けられた歯車(例えば、ウォーム歯車56)は、可変速モータ24によって選択的に回転される。ウォーム歯車56は、回転すると、環状歯車50の外歯車歯54とかみ合い、環状歯車50を回転させる。ウォーム歯車56が異なる速度で可変速モータ24によって回転され得るため、環状歯車50もまた、異なる速度で選択的に回転され得るということを理解されたい。いくつかの実施形態において、ウォーム歯車56は、制御軸25が回転していないときには第1の車軸18及び第2の車軸20が異なる率で回転することを防げる。
【0150】
図5Cは、
図5Bと合わせて、遊星歯車のサブアセンブリ60を示す。サブアセンブリ60は、二つの端板70、72の間の三つのピン67、68、69の枠組み内に設置される六つの遊星歯車61、62、63、64、65、66を含む。遊星歯車61、62、63、64、65、66は、三つずつ二つのセットで配置される。遊星歯車の第1のセット61、62、63は、太陽歯車42を公転し、太陽歯車42を環状歯車50の内歯車歯52に接合する。遊星歯車の第2のセット64、65、66は、第1の車軸18上の平歯車45を公転し、平歯車45を内平歯車46に接合する。六つの遊星歯車61、62、63、64、65、66の使用は、単に例示にすぎず、部品間の機械エネルギーの説明される伝達が達成されるという条件で、任意の数の遊星歯車が使用され得ることを理解されたい。この第3の例となる実施形態では、遊星歯車キャリアは、端板70、72、及びピン67、68、69を含む。当業者は、遊星歯車キャリアが様々な異なる構成を有し得ることを理解するものとする。
【0151】
図5A~
図5Cに描写されるように、遊星歯車61~66は、段付歯車ではない。いくつかの実施形態において、遊星歯車は、
図7~
図15に関して下に説明されるように、段付遊星歯車である。いくつかの実施形態において、
図5A~
図5Cの実施形態における遊星歯車は、段付遊星歯車で置き換えられる。
【0152】
差動装置40内のマイタ歯車キャリア36が回転するとき、太陽歯車42も回転する。太陽歯車42は、遊星歯車の第1のセット61、62、63を回転させる。遊星歯車の第1のセット61、62、63の公転運動は、ピン67、68、69によって遊星歯車の第2のセット64、65、66へ伝達される。遊星歯車の第2のセット64、65、66は、第1の車軸18上の平歯車45を回転させる。平歯車45は、第1の車軸18、及びその第1の車軸18に装着されるいかなる車両車輪も回転させる。その結果、様々な相互接続により、遊星歯車の第1のセット61、62、63の公転速度は、第1の車軸18の回転速度に比例する。
【0153】
遊星歯車の第1のセット61、62、63の公転速度は、制御軸25により可変速モータ24に接続される歯車56(例えば、ウォーム歯車)によって選択的に調整され得る。モータが制御軸25を回転させると、制御軸に接続される歯車(例えば、ウォーム歯車56)が環状歯車50を回転させる。その回転方向に応じて、環状歯車50の回転は、遊星歯車の第1のセット61、62、63の公転速度を増大させるか、又はこの速度を減少させるかのいずれかである。遊星歯車の第1のセット61、62、63の公転速度が第1の車軸18の回転速度に比例するため、ウォーム歯車56の回転は、第1の車軸18の回転速度を増大させるか、又は減少させるかのいずれかであることを理解されたい。したがって、可変速モータ24を動作させることにより、複数の調整歯車は、第1の車軸18の回転速度が第2の車軸20の回転速度に対して選択的に調整される(例えば、増大又は減少される)ことを可能にする。複数の調整歯車は、環状歯車又は輪歯車50の回転率が、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差に比例するように、構成される。同様に、可変速モータによって出力される回転率は、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における結果として生じる差に比例する。環状歯車50又は輪歯車のゼロ回転は、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における差なしに相当する。
【0154】
二つの車軸18及び20は、互いに結合され、ウォーム歯車56の回転を介して差が許されない限りは一緒に等しく回転する。可変速モータ24が故障するようなことがあれば、ウォーム歯車56は回転しない。差動装置40は依然として動作し、二つの車軸18、20は、共通の回転率で引き続き一緒に回転することができる。いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリ14は、第2の車軸20に対して第1の車軸18の回転率を変更又は維持するとき、摩擦に依存しない。
【0155】
図6A~
図6Dは、第4の例となる実施形態の歯車装置アセンブリ14'''を描写する。
図6A~
図6Dの歯車装置アセンブリ14'''は、
図5A~
図5Cに関連して上に説明される部品と同じ、又は類似する多くの部品を含み、したがって、同じ参照番号の多くを使用する。
図5A~
図5Cに描写される第3の例となる実施形態に関する上の説明の大半は、第4の例となる実施形態に適用可能である。実施形態間のいくつかの差が、以下に説明される。
【0156】
環状歯車50に係合する制御軸25と接続されるウォーム歯車を用いる代わりに、歯車装置アセンブリ14'''は、環状歯車50に係合する制御軸25に接続される平歯車57を用いる。また、歯車装置アセンブリ14'''の第4の例となる実施形態では、制御軸25の回転軸は、第1の車軸18及び第2の車軸20の回転軸35に平行である。さらに、制御軸25は、より短く、可変速モータ24は、歯車装置アセンブリ14'''により近い。制御軸25回転軸が第1及び第2の車軸18、20の回転軸35に平行であり、制御軸が環状歯車50に係合する平歯車57(ウォーム歯車の代わりに)に結合されるというこの配置は、一般的には、第3の例となる実施形態における対応する部品の配置よりも、コンパクトであり軽重量である。加えて、歯車装置アセンブリ14'''の第4の例となる実施形態におけるこの配置は、計算された所望の率を実施することに抵抗する力がウォーム歯車の一方向の性質によってブロックされないことから、より幅広い許容差動率をより上手く受け入れることができる。代わりに、平歯車57は、これらの力を、制御軸25を通じて可変速モータに通信し、これらの力は、それらが許容範囲内に入る場合は、制御アルゴリズムによって可変速モータの回転率を変えることが許され、それらが許容範囲を超える場合はモータによって拒否され得る。
【0157】
歯車装置アセンブリ114'''の第4の例となる実施形態において、歯車のうちの多くの歯は、第1の例となる実施形態内の対応する要素の構成とは異なる構成を有する。例えば、第2の例となる実施形態では、静止した内歯車46の歯は、ヘリカル状である。環状歯車50又は輪歯車の内歯車歯52もまた、歯車装置アセンブリ14'''では、ヘリカル状である。第3の例となる実施形態では、第1の車軸18に装着される歯車45は、平歯車である。しかしながら、第4の例となる実施形態では、この歯車は、はすば平歯車45である。第3の例となる実施形態では、遊星歯車61、62、63、64、65、66は、各々が平歯車である。歯車装置アセンブリ14'''では、遊星歯車61、62、63、64、65、66は、各々がはすば平歯車である。歯車装置アセンブリ14'''では、太陽歯車42は、はすばを有する。これらの歯車にはすばを使用することは、一般的に、はすば歯車が、より静かであり、直線カット歯車よりも多くの負荷を支えることができるため、有利であり得る。
【0158】
歯車キャリア71に対する遊星歯車の第1のセット61、62、63、及び遊星歯車の第2のセット64、65、66の配置は、第4の例となる実施形態では第3の例となる実施形態とは異なる。例えば、第3の例となる実施形態では、遊星歯車のための歯車キャリアは、二つの端板70を含み、すべての遊星歯車がこれらの間にある。第4の例となる実施形態では、歯車キャリア71は、遊星歯車の第1のセット61、62、63を遊星歯車の第2のセット64、65、66から分ける。
【0159】
第4の例となる実施形態では、差動装置40の歯車キャリア36は、第2の例となる実施形態におけるマイタ歯車キャリア36のものとは異なる形状を有する。また、差動装置は、第3の例となる実施形態における二つのマイタ歯車に対立するものとして、歯車装置アセンブリ14'の第4の例となる実施形態においては四つのマイタ歯車38を含む。
【0160】
いくつかの実施形態において、複数の調整歯車は、遊星歯車キャリアを含む遊星歯車60のサブアセンブリ(例えば、端板72、端板70、及びピン67、68、69)、遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第1のセット61、62、63、及び遊星歯車キャリアに結合される遊星歯車の第2のセット64、65、66を含む。遊星歯車の第1のセット61、62、63と同じキャリア上にある遊星歯車の第2のセット64、65、66は、遊星歯車の第1のセット61、62、63を第1の車軸18と結合させる。例えば、いくつかの実施形態において、遊星歯車の第2のセット64、65、66は、第1の車軸18に装着される平歯車45を回転させる。遊星歯車の第1のセット61、62、63の公転速度は、第1の軸18の回転速度に比例する。遊星歯車の第1のセット61、62、63の公転速度は、可変速モータ24を使用して選択的に調節され得、それにより第1の車軸18の回転速度を選択的に調節する。例えば、いくつかの実施形態において、可変速モータ24は、内歯車歯52が遊星歯車の第1のセット61、62、63に係合する環状歯車50の外歯車歯54に係合するウォーム歯車56を回転させる。いくつかの実施形態において、複数の調整歯車は、環状歯車50を含む。モータ24を環状歯車50に接続する利益のうちの一つは、環状歯車50が遊星歯車60のサブアセンブリの外側に配設され、モータ24によって回転される軸に環状歯車50を接続することを容易にしていることである。
【0161】
いくつかの実施形態において、モータ24の回転率は、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差に比例する。回転運動をモータから遊星歯車の第1のセット61、62、63へ伝達するために環状歯車50を用いる実施形態では、環状歯車50の回転率もまた、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差に比例する。したがって、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差が存在しないとき、環状歯車50の回転は存在しない。第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差が存在しない直線走行中、環状歯車50、遊星歯車の第1のセット61、62、63、及び遊星歯車の第2のセット64、65、66はすべて、第2の車軸20の何分の一かの回転速度で回転する。環状歯車50が比較的高い慣性を有するため、環状歯車50は、車軸間の回転速度における差が必要とされるときにのみ回転することが特に有益であり、回転速度における差が必要とされるとき、環状歯車50の回転速度は、いずれかの車軸の回転速度よりもはるかに小さい。もしも環状歯車が第2の車軸よりも速く回転することが必要とされる場合、システムは、環状歯車からかなりの抗力を経験する。
【0162】
いくつかの実施形態において、複数の調整歯車は、遊星歯車の第1のセット61、62、63に係合し、これを駆動する太陽歯車42を通じて、差動装置40と相互作用する。遊星歯車の第1のセット61、62、63に係合し、これを駆動するために太陽歯車42を用いる実施形態は、太陽歯車42が比較的小さく、遊星歯車サブアセンブリ内の歯車のすべてのうち、回転させるのが最も容易な歯車であることから、比較的小さい規制抗力を有し得る。
【0163】
いくつかの実施形態において、複数の調整歯車は、環状歯車60、遊星歯車の第1のセット61、62、63、遊星歯車の第2のセット64、65、66、遊星歯車キャリア(例えば、端板72、端板70、及びピン67、68、69、又は遊星歯車キャリア71)、差動装置40に結合される太陽歯車42、及び平歯車45を含む。
【0164】
上に説明されるように、遊星歯車の第1のセット及び遊星歯車の第2のセットを共通のキャリア上に含む遊星歯車のサブアセンブリ、並びに遊星歯車のサブアセンブリが配設される環状歯車は、比較的小さい付加抗力で、及び回転速度の変化に対する比較的小さい抵抗性で、可変速可逆モータを使用して第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における差の制御を可能にする。
【0165】
歯車装置アセンブリ14''又は歯車装置アセンブリ14''''のいずれかは、
図7~
図15に関して以下に説明されるように、差動率を調整することを助ける段付調整歯車15a、15bを組み込むことができる。いくつかの実施形態において、
図6A~
図6Dの実施形態における遊星歯車は、段付遊星歯車で置き換えられる。
【0166】
いくつかの実施形態は、差動率を調整することを助けるために歯車装置減速を提供する。いくつかの実施形態において、この歯車装置減速は、調整歯車15、15a、及び15bのセット内に提供され得る。いくつかの実施形態において、この歯車装置減速は、操舵制御ピニオン歯車33とインターフェースをとって提供され得る。いくつかの実施形態において、この歯車装置減速は、調整歯車15a、15bのセット内に、かつ操舵制御ピニオン歯車33とインターフェースをとって提供され得る。
【0167】
差動制御調整歯車内の歯車装置減速は、いくつかの実施形態においては、それが、所与の可変速モータサイズについて差動率を制御するために増大されたトルクを提供することから有益である。これは、多くの場合可変速モータが、所望の回転を強いるために車両の慣性を克服することが求められる、差動的に操舵される車両において用いられるいくつかの実施形態には特に有益である。いくつかの実施形態におけるそのような歯車装置減速の別の利点は、それが、所望の差動率に反して作用する外部の力に対するシステムの抵抗性を増大させることである。減速比が大きいほど、所与の可変速モータが、衝撃、又は所望の差動率の邪魔をする他のけん引条件に耐えることは容易になる。
【0168】
調整歯車15a及び15bのセット内に減速を提供するいくつかの実施形態において、遊星歯車(例えば、61、62、63、64、65、66、及び61a、62a、63a、64a、65a、66a、61b、62b、63b、64b、65b、66b)のうちの少なくとも一部又はすべては、段付遊星歯車であり、各々が、大きい方の直径の歯車又は歯車部分、及び小さい方の直径の歯車又は歯車部分を含み、これらは互いと同軸であり、単一の段付遊星歯車として一緒に回転するように、互いに固定されるか、又は互いと一体である。本明細書で使用される場合、段付遊星歯車の大きい方の直径部分及び段付遊星歯車の小さい方の直径部分は、単一の一体型段付遊星歯車の異なる部分、又は単一の段付遊星歯車の異なる部分を形成するために互いに装着される異なる直径の歯車を指し得る。例えば、
図7は、各々が大きい方の直径部分161
L、162
L及び小さい方の直径部分161
S、162
Sを含む、例となる段付遊星歯車161、162、163、164の斜視図を描写する。簡略化のため、
図7は、各々が外側の輪歯車150及び内側の太陽歯車142の両方に係合する段付遊星歯車161、162、163、164の単一のセットを示す。しかしながら、使用中、同じキャリアに共に装着される段付遊星歯車の二つのセットが用いられる。段付遊星歯車を用いるいくつかの実施形態において、各大きい方の直径部分は、そのそれぞれの輪歯車又は内歯車(例えば、50、50a、50b、46、46a、46bb)の内歯とかみ合う。例えば、
図7は、輪歯車150の内歯とかみ合う大きい方の直径部分161
L、162
Lを描写する。段付遊星歯車を用いるいくつかの実施形態において、各小さい方の直径部分は、そのそれぞれの太陽歯車(例えば、42、42a、42b、45、45a、45b)とかみ合う。例えば、
図7は、太陽歯車142の歯とかみ合う小さい方の直径部分161
S、16
2を描写する。これは、入力輪歯車150と太陽歯車142との間に歯車装置減速を達成する。同様に、段付歯車は、内歯車(例えば、50、50a、50b)と出力太陽歯車(例えば、45、45a、45b)との間に歯車装置減速を達成するために使用され得る。大きい方の直径及び小さい方の直径の遊星歯車又は歯車部分の直径間のより大きい「段」差は、より大きい歯車装置減速に相当する。いくつかの実施形態において、段付遊星歯車についての小さい方の直径部分の直径と大きい方の直径部分の直径との比は、1:1.1~1:4.0の範囲内に入る。他の実施形態において、比は、この範囲外である。
【0169】
図7では、様々な要素(例えば、輪歯車150、歯車キャリアなどの追加の構造物)は、明白性のために省略される。さらに、
図7では、小さい方の直径部分及び大きい方の直径部分における直径の相対的な差は縮尺通りではない。いくつかの実施形態において、段付遊星歯車は、ヘリカル状である。
図7では、四つの段付遊星歯車が描写されるが、四つより多い又は少ない段付遊星歯車が、いくつかの実施形態においては用いられ得る。
【0170】
図8は、いくつかの実施形態に従う、段付遊星歯車64a、65a、66aを含む歯車装置アセンブリの部分を描写する。各段付遊星歯車64a、65a、66aの大きい方の直径部分は、外歯付き輪歯車50aの内歯とかみ合い、各段付遊星歯車64a、65a、66aの小さい方の直径部分は、第1の車軸太陽歯車45aとかみ合う。
【0171】
図9Aは、遊星歯車61、62、64、66が段付遊星歯車によって置き換えられることを除き、平歯車57が環状歯車50に係合する
図6A~
図6Dに描写されるものと類似する実施形態についての歯車装置図を概略的に描写する。示されるように、遊星歯車61及び62に取って代わる段付遊星歯車は各々、ハウジング36に装着される、又はそれと一体にされる太陽歯車42の歯とかみ合う小さい方の直径部分161
S、162
Sと、外歯付き輪歯車50の内歯とかみ合う大きい方の直径部分161
L、162
Lと含む。同様に、遊星歯車64及び66に取って代わる段付遊星歯車は各々、車軸18に装着される、それに結合される、又はそれと一体にされる太陽歯車45の歯とかみ合う小さい方の直径部分164
S、166
Sと、内歯車46とかみ合う大きい方の直径部分164
L、166
Lとを含む。
【0172】
いくつかの実施形態において、段付遊星歯車のセットのうちの一部又はすべての配向は、異なる用途のための異なるレイアウト及び異なるトルク負荷を受け入れるために、所望の場合は逆にされてもよい。
図9Bは、段付遊星歯車の配向が逆にされていることを除き、
図9Aのものに類似する歯車装置図を概略的に描写する。具体的には、
図9Aでは、段付遊星歯車大きい方の直径部分161
L、162
Lは、段付遊星歯車の第1のセットの段付遊星歯車小さい方の直径部分161
S、162
Sよりも、車軸18に沿ってさらに外へ、及び差動装置キャリアハウジング36の中心部分からさらに遠くにある。対照的に、
図9Bでは、段付遊星歯車小さい方の直径部分161
S、162
Sは、段付遊星歯車の第1のセットの段付遊星歯車大きい方の直径部分161
L、162
Lよりも、車軸18に沿ってさらに外へ、及び差動装置キャリアハウジング36の中心部分からさらに遠くにある。
【0173】
図9Aでは、段付遊星歯車小さい方の直径部分164
S、166
Sは、段付遊星歯車の第2のセットの段付遊星歯車大きい方の直径部分164
L、166
Lよりも、車軸18に沿ってさらに外へ、及び差動装置キャリアハウジング36の中心部分からさらに遠くにある。対照的に、
図9Bでは、段付遊星歯車大きい方の直径部分164
L、166
Lは、段付遊星歯車の第2のセットの段付遊星歯車小さい方の直径部分164
S、166
Sよりも、車軸18に沿ってさらに外へ、及び差動装置キャリアハウジング36の中心部分からさらに遠くにある。
【0174】
他の実施形態において、段付遊星歯車大きい方の直径部分は、段付遊星歯車の第1のセット及び段付遊星歯車の第2のセットの両方の段付遊星歯車小さい方の直径部分よりも、車軸に沿ってさらに外へ、及び差動装置キャリアハウジング36の中心部分からさらに遠くにあり得る。
【0175】
他の実施形態において、段付遊星歯車小さい方の直径部分は、段付遊星歯車の第1のセット及び段付遊星歯車の第2のセットの両方の段付遊星歯車大きい方の直径部分よりも、車軸に沿ってさらに外へ、及び差動装置キャリアハウジング36の中心部分からさらに遠くにあり得る。
【0176】
図10は、遊星歯車61、62、64、66が段付遊星歯車によって置き換えられることを除き、ウォーム歯車35が環状歯車50に係合する
図5A~
図5Cに描写されるものと類似する実施形態についての歯車装置図を概略的に描写する。示されるように、遊星歯車61及び62に取って代わる段付遊星歯車は各々、ハウジング36に装着される、それに結合される、又はそれと一体にされる太陽歯車42の歯とかみ合う小さい方の直径部分161
S、162
Sを含み、また外歯付き輪歯車50の内歯とかみ合う大きい方の直径部分161
L、162
Lも含む。同様に、遊星歯車64及び66に取って代わる段付遊星歯車は各々、車軸18に装着される、又はそれと一体にされる太陽歯車45の歯とかみ合う小さい方の直径部分164
S、166
Sと、内歯車46とかみ合う大きい方の直径部分164
L、166
Lとを含む。
【0177】
図11は、遊星歯車61a、62a、64a、65a、61b、62b、64b、65bが、小さい方の直径部分161a
S、162a
S、164a
S、165a
S、161b
S、162b
S、164b
S、165b
S、及び大きい方の直径部分161a
L、162a
L、164a
L、165a
L、161b
L、162b
L、164b
L、165b
Lを各々が含む段付遊星歯車によって置き換えられることを除いて、
図3A~
図3Dに描写されるものと類似する実施形態ついての歯車装置図を概略的に描写する。
図11の実施形態はまた、モータ24と操舵制御ピニオン歯車33との間に歯車装置減速アセンブリの形態で歯車装置減速を提供する。
【0178】
いくつかの実施形態において、歯車装置減速アセンブリは、操舵制御ピニオン歯車33と結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる遊星減速キャリア157を含む遊星減速歯車アセンブリ155を含む。遊星減速歯車アセンブリ155はまた、遊星減速太陽歯車158、複数の遊星歯車(例えば、159a、159b)、及び遊星減速内歯付き輪歯車153を含む。操舵制御軸25は、複数の遊星歯車159aを公転するように設置される遊星減速太陽歯車158を回転させる。この遊星減速歯車アセンブリの内歯付き輪歯車153は、差動装置16の外ケースに対して静止している。したがって、歯車装置減速が、入力遊星減速太陽歯車158と、操舵制御ピニオン歯車33に装着される、それに結合される、又はそれと一体にされる出力遊星減速キャリア157との間に達成される。
【0179】
図12は、遊星歯車61a、62a、64a、65a、61b、62b、64b、65bが、小さい方の直径の歯車又は歯車部分及び大きい方の直径の歯車又は歯車部分を各々が含む段付遊星歯車161a、162a、164a、165a、166a、162b、164b、165bによって置き換えられることを除いて、
図4A~
図4Cに描写されるものと類似する実施形態についての歯車装置図を概略的に描写する。
図12では、段付遊星歯車は、ラベル付けされるが、大きい方の直径部分及び小さい方の直径部分は、個々にラベル付けされない。段付遊星歯車の大きい方の直径部分及び小さい方の直径部分の個々のラベル付けについては、
図11を参照されたい。
【0180】
図12の実施形態は、操舵制御ピニオン歯車33と結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる遊星減速キャリア157を含む遊星減速歯車アセンブリ155通じて、モータ24と操舵制御ピニオン歯車33との間に歯車装置減速を提供する。遊星減速歯車アセンブリ155は、遊星減速太陽歯車158、複数の遊星歯車(例えば、159a、159b)、及び遊星減速内歯付き輪歯車153を含む。操舵制御軸25は、複数の遊星歯車159a、159bを公転するように設置される遊星減速太陽歯車158を回転させる。この遊星減速歯車アセンブリの内歯付き輪歯車153は、差動装置16の外ケースに対して静止している。したがって、歯車装置減速が、入力遊星減速太陽歯車158と、操舵制御ピニオン歯車33に装着される、それに結合される、又はそれと一体にされる出力遊星減速キャリア157との間に達成される。
【0181】
図13は、遊星歯車61a、62a、64a、65a、61b、62b、64b、65bが、小さい方の直径部分及び大きい方の直径部分を各々が含む段付遊星歯車161a、162a、164a、165a、166、162b、164b、165bによって置き換えられること、並びにモータ24と、ウォームスクリュ歯車156及びウォーム車輪173を含む操舵制御ピニオン歯車33との間の歯車装置減速アセンブリ151を除いて、
図3A~
図3Cに描写されるものと類似する実施形態についての歯車装置図を概略的に描写する。ウォーム車輪173は、操舵制御ピニオン歯車33に結合される、それに装着される、又はそれと一体にされる。モータ24は、ウォームスクリュ歯車145を回転させ、今度はこれが、ウォーム車輪173及び操舵制御ピニオン歯車33を駆動する。
【0182】
図14は、遊星歯車61a、62a、64a、65a、61b、62b、64b、65bが、小さい方の直径部分及び大きい方の直径部分を各々が含む段付遊星歯車161a、162a、164a、165a、166、162b、164b、165bによって置き換えられること、並びにモータ24と、ウォームスクリュ歯車156及びウォーム車輪173を含む操舵制御ピニオン歯車33との間の歯車装置減速歯車装置減速アセンブリ151を除いて、
図4A~
図4Cに描写されるものと類似する実施形態についての歯車装置図を概略的に描写する。
【0183】
所与のサイズの複合遊星歯車の全体的な歯車装置減速比は、以下のように計算され得る。
【0184】
すべての歯車が同じモジュールである(例えば、すべての歯車上の歯が同じサイズであり、同じプロファイルを有する)と仮定し、Tsは、太陽歯車上の歯の数であり、Trは、輪歯車上の歯の数であり、Tpsは、複合遊星歯車の小さい方の直径の遊星歯車(又は遊星歯車部分)上の歯の数であり、Tpbは、複合遊星歯車の大きい方の直径の遊星歯車(又は遊星歯車部分)上の歯の数である。
【0185】
1.静止した太陽と仮定して、内側の遊星セットの減速比を計算する。
【0186】
この場合、「入力」は輪歯車であり、「出力」は、遊星キャリアである。
【0187】
Rsを輪歯車の回転速度とする。
【0188】
1.1)この輪と、(輪がかみ合う)大きい方の直径の遊星歯車又は遊星歯車部分との制約比は、Tr/Tpbである。
【0189】
1.2)小さい方の直径の遊星歯車又は遊星歯車部分と、(Tpsがかみ合う)太陽歯車との制約比はTps/Tsである。
【0190】
1.3)したがって、輪歯車とキャリアとの比(RC_ratio)は、上の二つの制約の積、つまりRC_ratio=(Tr/Tpb)*(Tps/Ts)である。
【0191】
1.4)輪歯車とキャリアとの間の回転速度における差(ΔRC)は、ΔRC=Rs/(1+RC_ratio)として計算される。
【0192】
1.5)所与の輪速度についてのキャリア速度Csは、Cs=Rs-ΔRCである。
【0193】
1.6)内側の遊星セットの減速比は、RsとCsとの間の比、つまりInner_ratio=Rs/Csである。
【0194】
2.静止した輪と仮定して、外側の遊星セットの減速比を計算する。
【0195】
この場合、「入力」は遊星キャリアであり、「出力」は、太陽歯車である。
【0196】
Cs=キャリアの回転速度とする(上のステップ1.5より)。
【0197】
2.1)太陽と、(太陽がかみ合う)小さい方の直径の遊星歯車(又は遊星歯車部分)との制約比は、Ts/Tpsである。
【0198】
2.2)大きい方の直径の遊星歯車(又は遊星歯車部分)と、(Tpbがかみ合う)輪歯車との制約比はTpb/Trである。
【0199】
2.3)したがって、キャリアと太陽歯車との比(CS_ratio)は、上の二つの制約の積、つまりCS_ratio=(Ts/Tpb)*(Tpb/Tr)である。
【0200】
2.4)キャリアと太陽歯車との間の回転速度における差ΔCSは、ΔCS=Cs/(CS_ratio)として計算される。
【0201】
2.5)所与の輪速度についての太陽歯車速度Ssは、Ss=Cs+ΔCSである。
【0202】
2.6)外側の遊星セットの減速比は、CsとSsとの間の比、つまりOuter_ratio=Cs/Ssである。
【0203】
外側の比及び内側の比を乗算することにより、複合遊星アセンブリについての全体的な歯車装置減速比、Overall_Ratio=Inner_ratio*Outer_ratioを得る。
【0204】
図15は、単純遊星構成及び複合(段付)遊星構成にある調整歯車についての歯車減速比の例となる計算を示し、大きい方の直径の遊星歯車部分が、輪歯車とかみ合い、小さい方の直径の遊星歯車部分が太陽歯車とかみ合う。
図15に示されるように、一つの実施形態において、段付遊星歯車を有する複合遊星構成を用いることは、歯車装置比を0.571から2.00へ増大させる。
【0205】
図16Aは、遊星歯車61a、62a、64a、65a、61b、62b、64b、65bが、小さい方の直径部分及び大きい方の直径部分を各々が含む段付遊星歯車161a、162a、164a、165a、166、162b、164b、165bによって置き換えられること、並びにベベル歯車、及び差動制御ピニオン歯車33を外歯付き輪歯車50a、50bと接続する延長軸を伴うことを除いて、
図4A~
図4Cに描写されるものと類似する実施形態についての歯車装置図を概略的に描写する。具体的には、第1の延長軸75aは、ベベル差動制御ピニオン歯車33とかみ合うベベル歯車を含み、第1の外歯付き輪歯車50aとかみ合う平歯車又ははすば歯車を含む。第2の延長軸75bは、
図16Bに描写されるように、ベベル差動制御ピニオン歯車33とかみ合うベベル歯車を含み、第2の外歯付き輪歯車50aとかみ合う平歯車又ははすば歯車を含む。
【0206】
図17Aは、いくつかの実施形態に従う、遊星歯車61a、62a、64a、65a、61b、62b、64b、65bが、小さい方の直径部分及び大きい方の直径部分を各々が含む段付遊星歯車161a、162a、164a、165a、166、162b、164b、165bによって置き換えられること、並びに外歯付き輪歯車50aのうちの一つと直接かみ合い、逆転軸76を介して他の外歯付き輪歯車50bと相互作用する可変速可逆モータの差動制御ピニオン歯車33を伴うことを除いて、
図4A~
図4Cに描写されるものと類似する実施形態についての概略的な歯車装置図である。
図17Bにも示されるように、差動制御ピニオン歯車は、ベベルピニオン歯車ではなく、代わりに平歯車である。
【0207】
図16A、
図16B、
図17A、及び
図17Bにおける、差動制御ピニオン歯車33及び外歯付き輪歯車50a、50bを相互接続するための配置は、差動調整歯車の二つのセット間により大きい分離を提供し、これが、差動制御ピニオン歯車33のサイズを増大させる必要なしに、キャリア36のためのより大きくより幅広の軸受のためのさらなる空間を提供する。この配置はまた、差動制御ピニオン歯車33が、外歯付き輪歯車50a及び50bとの関連でより小さくされ得ることから、差動制御のための増大された歯車装置減速も提供することができる。
【0208】
本発明システムは、異なる車両における使用、又は異なる車両との使用のために多くのやり方で具現化され得るが、以下に説明されるいくつかの実施形態は、例証の目的のため、後輪駆動を有する車両に関して説明され、以下に説明されるいくつかの実施形態は、差動的に操舵される車両に関して説明される。後輪駆動に関する説明は、単に例示にすぎず、添付の特許請求項の範囲を解釈するときに制限と見なされるべきではない。当業者は、本明細書に開示されるシステム、歯車装置アセンブリ、及び方法の異なる態様が、後輪駆動、前輪駆動、及び全輪駆動を有する車両において実施され得ることを理解するものとする。
【0209】
当業者は、本明細書に説明される歯車装置アセンブリの様々な部品が、修正され得るか、又は等価の部品若しくは部品のグループで代替され得ること、並びにそのような代替及び修正が本発明の範囲内に入ることを理解するものとする。
【0210】
差動操舵のためのいくつかの実施形態の使用
差動的に操舵される車両において、操舵制御は、典型的には、操舵輪又はハンドルなどの操舵入力デバイス23を通じて提供される。いくつかの実施形態において、操舵の大きさ及び方向を測定する舵角センサ28は、入力デバイス28に装着される。舵角センサによって測定されるような、中心から離れる方への動きの大きさ及び方向は、可変速可逆モータ24によって制御されるような、差動制御ピニオン歯車33の回転の度合い及び方向を決定するための一次入力を提供する。
【0211】
いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24は、油圧又は静圧モータである。そのような実施形態において、装着された舵角センサ28に加えて、又はそれに代わって、操舵入力デバイスが、可変速可逆モータ24の回転の度合い及び方向を制御するために一つ以上の制御弁又は斜板を直接制御し得る。いくつかの実施形態において、車両は、遠隔で動作され得る。そのような実施形態において、可変速操舵モータは、車両内の運転者又はオペレータによって制御される車両内の操舵入力デバイスを介する代わりに、遠隔操舵信号に応答して受信器ユニットからの信号によって制御される。
【0212】
いくつかの実施形態において、特に、車両が著しい走行速度(>20mph)を経験し得る場合、速度感応操舵制御を提供することが有益であり得る。そのような実施形態において、追加のセンサ29が、駆動軸回転速度を測定するために提供される。次いで、減速関数が、車両の駆動軸速度が増大するにつれて可変速可逆モータ24に対する操舵信号の大きさを減少させるために、コンピュータ26によって適用される。
【0213】
いくつかの実施形態において、可変速可逆モータ24は、閉ループ動作を通じてコンピュータによって制御される。フィードバックセンサは、実際の差動回転率を測定するために、差動制御軸25上に、又は代替的に一つ以上の車軸30上に提供される。一つの車軸回転センサのみが提供される場合、これは、実際の差動率を計算するために駆動軸回転速度センサと比較され得る。これは、車両の最終駆動比によって除算される駆動軸回転率である、差動装置なしの場合の車軸の予測される回転率からの車軸回転センサの偏差を測定することによって行われる。この場合の偏差は、実際の差動回転率である。次いで、実際の差動回転率を、車両を操舵するための所望の差動率に向けて調整するために、コンピュータによって調整が行われる。
【0214】
いくつかの実施形態は、本明細書に説明されるような歯車装置アセンブリ14を組み込む差動的に操舵される車両を操舵する方法を含む。本方法は、車両の可変速可逆モータ24を使用して差動制御ピニオン歯車33の回転を制御することにより、車両の第1の車軸18の回転率を車両の第2の車軸18に対して制御することによって車両を操舵することを含む。いくつかの実施形態において、本方法はまた、車両のコンピュータ26又は制御ユニットを使用して、実際の駆動軸回転速度を示す第1のセンサ信号(例えば、センサ29からの信号)、及び第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における実際の差動を示す第2のセンサ信号(例えば、センサ30からの信号)に基づいて可変速可逆モータ24によって提供される回転を調整することを含む。
【0215】
前輪操舵を有する車両における実施形態の使用
前輪操舵(例えば、アッカーマン)ジオメトリを装備した車両に適用されるような本明細書に説明されるシステム及び歯車装置アセンブリのいくつかの実施形態の目標のうちの一つは、任意の所与の舵角及び車両速度について車両の自然の差動率と略一致する計算された差動率を機械的に達成するために、差動制御ピニオン歯車33(又は、
図5A~
図5Cに描写される実施形態ではウォーム歯車56、若しくは
図6A~
図6Dに描写される実施形態では平歯車57)を回転させることである。この目標は、計算された差動率が、車両の操作挙動を変化させるために修正されない、並びに自然の差動率が、アッカーマンジオメトリを有し、かつ車輪スリップなしで平坦な表面上で旋回する等しい右及び左のタイヤサイズが取り付けられた車両によって経験されるという特定の実施形態を特に説明する。そのような状況では、この自然の差動率は、計算された及び「所望の」差動率に相当する。
【0216】
いくつかの実施形態において、この所望の差動率からの偏差は許されず、したがって、不均等なけん引条件など外的影響は、システムに影響しない。この場合、本システム又は歯車装置アセンブリは、旋回中の異なる回転率を許すことができない溶接又は係止された車軸に悩まされることなく、低けん引状況において、溶接された車軸(又は係止された差動装置)に類似して実施する。
【0217】
いくつかの実施形態に従う、歯車装置アセンブリ14、14'を含む車両を動作させる方法は、
図2と合わせて
図18に関して説明される。例証の目的のため、本方法は、後輪駆動車両を示す
図2に関して説明される。当業者は、本方法が前輪駆動車両において実施され得ること、及び差動装置が前車軸間にあり得ることを理解するものとする。同様に、本方法は、全輪駆動車両における前駆動軸と後駆動軸との間の中央差動装置において実施され得る。可変速可逆モータ24を動作させることにより、差動回転率が変化され得、具体的には、後車軸18のうちの一方(又は、前部差動装置の場合は前車軸のうちの一方、若しくは中央差動装置の場合は出力駆動軸のうちの一方)の回転速度は、可変速可逆モータ24が回転する方向及び速度に応じて、他方の車軸20(又は、前部差動装置の場合は他方の前車軸、若しくは中央差動装置の場合は他方の出力駆動軸)の回転速度に対して増大又は減少され得る。
【0218】
舵角センサ28を使用して、エンジンコンピュータ26は、車両9が真っ直ぐに走行するように構成されるか、左に旋回して走行するように構成されるか、又は右に旋回して走行するように構成されるかを決定することができる。ブロック80を参照されたい。さらには、回転速度センサ29を使用して、駆動軸12のRPMが決定され得る。ブロック82を参照されたい。ブロック84によって示されるように、エンジンコンピュータ26は、車両の舵角及び駆動軸12の回転速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の車軸18の回転速度と第2の車軸20の回転速度との間の所望の差動回転率を計算する。いくつかの実施形態において、所望の差動回転率は、駆動軸が、毎分非ゼロの回転率を有し、舵角センサが、車両が旋回して走行するように構成されることを示す場合にのみ計算される。次いで、所望の差動回転率は、第1の車軸18の回転速度と第2の車軸の回転速度との間の実際の差動回転率と比較される。ブロック86を参照されたい。
【0219】
実際の差動回転率と所望の差動回転率との間の差が許容範囲内であるかどうかに関して決定がなされる。ブロック87を参照されたい。実際の差動回転率と所望の差動回転率との間の差が許容範囲内である場合、いくつかの実施形態において、何の行動も起こさない。ブロック89を参照されたい。他の実施形態において、実際の差動回転率と所望の差動回転率との間の差が許容範囲内である場合、可変速可逆モータは、モータの回転を実際の差動回転率と能動的に協調させて、モータ抵抗を減少させ、より大きい操舵機敏性に有利に働くように活性化され得る。ブロック89を参照されたい。実際の差動回転率と所望の差動回転率との間の差が許容範囲内でない場合、この差に基づいた制御信号値が、可変速可逆モータ24に送信される。次いで、可変速可逆モータ24は、実際の差動回転率が所望の差動回転率により緊密に一致するように、第1の車軸18の実際の回転速度を加速又は減速するように動作する。ブロック88を参照されたい。この方法は、連続した閉ループプロセスとして実施され得る。したがって、第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転における差動は、可変速可逆モータ24によって差動制御ピニオン歯車33を介して制御される。したがって、不均等なけん引条件に起因するスリップは、減少されるか、又は防がれる。
【0220】
差動率の物理的制御は、差動制御ピニオン歯車33(
図5A~
図5Cに描写される実施形態ではウォーム歯車56、若しくは
図6A~
図6Dに描写される実施形態では平歯車57)を通じて提供される。以下の表は、差動制御ピニオン歯車33、駆動軸12、又は推進軸と、車両の挙動との関係を示す。当業者は、本開示を考慮して、これらの関係が、ウォーム歯車56若しくは平歯車57又は追加の歯車装置部品が、差動制御ピニオン歯車33と外歯付き輪歯車50a、50bとの間に用いられる実施形態ではどのように修正されるかを理解するものとする。
【0221】
【0222】
アッカーマン操舵ジオメトリを装備し、等しいサイズのタイヤを有する車両は、停止中、又は直線を走行している間は、著しい差動活動を示さない。車両が旋回を実行すると、内側車輪及び外側車輪の異なる旋回半径を受け入れるためにオープン差動装置の内歯車が回転する量は、車両の舵角及び速度に比例する。理想的な平坦及び乾燥した表面では、舵角、速度、及び車両の差動率間には明確な関係がある。この率は、本明細書では、所与の車両速度での所与の旋回角度についての車両の理想の差動率又は車両の自然の差動率と称される。
【0223】
舵角及び速度に加えて、車両の自然の差動率もまた、その軸距及び幅によって決まる。説明の目的のため、車両軸距は、lと称され、車幅は、dと称される。車幅dは、左車輪の中心から右車輪の中心まで、及び軸距lと同じユニットにおいて、測定される。さらに説明の目的のため、舵角は、φと称され、中心車軸の毎分回転数は、RPMである。
図19は、後部差動率を計算するときのこれらの変数を例証する。
【0224】
中心車軸のRPMは、多くの場合、回転の極一部を検出することができる精密かつ正確な測定である。これはまた、回転の大きさだけでなく方向も検出することができるベクトル量、例えば、+26.215RPM又は-0.218RPMであり、+及び-は、等式での使用のための方向標識として使用される。本明細書で使用される場合、正のRPMは、前進車両運動に相当し、負のRPMは、後進車両運動に相当する。
【0225】
舵角φは、車台との平行からの度数で提供されるため、直線での走行は、φ=0°を提供する。適度の右旋回は、φ=20°となり、適度の左旋回は、φ=-20°となる。このφ角度は、二つの旋回車輪間の仮想の車輪のものであり、車両のステアリングコラム又はラックから容易に測定され得る。
【0226】
車両が動いていないとき、又はφがゼロに等しいとき、自然の差動率もまたゼロである。これらの状況において、四つの車輪すべての角運動速度は同じであり、差動運動は所望されない。前に論じられるように、いくつかの実施形態において、所望の(この場合はゼロ)差動率からの著しい偏差を防ぐことが有利であり得る。これらの実施形態において、この偏差は、様々な操舵モータ24と差動制御ピニオン歯車33との間で高減速歯車など(ウォーム歯車など)の機構を用いることによって、又は閉ループ動作において十分に強力な可変速可逆モータ24を使用することによって防がれ得る。不均等なけん引条件が所望のゼロ差動率に対して作用するときにさえ、この機構は、これらの条件が、第1の車軸18と第2の車軸20との間の実際の差動を所望のゼロ差動から離れる方へ変化させることを防ぐ。例えば、車両が一方の車輪を氷の上に、反対の車輪を乾いた舗道の上に有する状況を検討してみる。動力は、駆動軸12に印加され、操舵輪は、直進走行のために構成される。ゼロの舵角が存在するため、差動活動は所望されず、したがって、両側の車輪21、22が等しい速度で旋回することが望ましい。この場合、差動制御ピニオン歯車33は停止している。しかしながら、不均等なけん引条件は、等しい速度で旋回する両方の車輪にとって好ましくない。氷の上の車輪は、摩擦が少ないことからより速く旋回しようとするが、所望の差動率からのこのような偏差は、氷の上の車輪が乾いた舗道の上の車輪よりも速くスピンすることを防ぐために差動制御ピニオン歯車33の回転を制御することによって防がれる。したがって、動力は、車輪が互いに係止されているかのように等しく送達される。
【0227】
RPMが非ゼロであり、φが非ゼロであるとき、所望の差動率もまた非ゼロである。この差動率は、本明細書では、毎分回転数又はRPMDiffと称されるベクトル量であり、一方の車軸の反対の車軸に対する回転速度における差を表す。差動制御ピニオン歯車33は、等しいが反対の回転差を、第1の車軸18と関連付けられた第1の複数の調整歯車15a及び第2の車軸と関連付けられた第2の複数の調整歯車15bに適用するため、差動制御ピニオン歯車を回転させる効果をより良く理解するために参照車軸を選択することが有益である。本明細書に説明される例では、第1の車軸18(例えば、右車軸)が、参照車軸として選択されている。しかしながら、他の実施形態では、これは逆転されてもよい。RPMDiffの符号は、車両のその側面において入力される差動の回転の方向を示す。正は、車両の前進方向における車軸回転を示し、負は、車両の後進方向における車軸回転を示す。例えば、差動制御ピニオン歯車33は、車両が前進移動しており、かつ左折をしている場合、正の(加算の)調整を選択された右側参照車軸に適用するように回転する必要がある。これは、車両の右側車輪が、左車輪と比較してより大きい旋回半径を網羅するために、左側よりも速く動くためであり、そのため追加の(加算の)回転速度が、その側面に提供される一方で、等しい回転速度が、左側から差し引かれる。上に記されるように、第1の複数の調整歯車15aを通じて右車軸18に対して正の調整を適用することと同時に、差動制御ピニオン歯車33は、第2の複数の調整歯車15bを通じて左車軸20の回転率に対して等しい負の調整を適用する。これは、歯車装置アセンブリの平衡のとれた回生態様を例証する。
図5A~
図6Dに描写される実施形態は、回生歯車装置アセンブリではない。
【0228】
ここでは、車両が等しい強度及び速度の右折をしていることを除いて同じシナリオを検討してみる。RPMDiffの符号は、参照右車軸18に対する負かつ減算の効果を示すために逆転される。車両が逆に走行するとき、符号もまた、RPMDiffの加算又は減算の性質を守るために逆にされなければならない。言い換えると、差動制御ピニオン歯車33の回転の方向は、車両が前進走行から後進走行へと切り替わると逆になるが、参照車軸に対する差動制御ピニオン歯車の回転の加算又は減算の性質は維持される。
【0229】
【0230】
RPMDiffは、差動制御ピニオン歯車33のRPMに等しくなくてもよいことに留意されたい。可変速可逆モータ24は、参照車軸のRPMが、RPMDiffの量だけ増大するか、又は減少するかのいずれかであるように、差動制御ピニオン歯車33を回転させる。差動制御ピニオン歯車33の実際のRPMは、歯車装置減速などの因子に起因して異なる。しかしながら、差動制御ピニオン歯車33の回転は、RPMDiffに直接比例する。
【0231】
図20は、いくつかの実施形態に従う、第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における差動を能動的に制御するための例となる方法1000のフローチャートである。ステップ1002において、舵角センサ28及び回転速度センサ(例えば、駆動軸回転速度センサ)29は、車両の制御ユニットに信号を送信する。制御ユニットは、車両のコンピュータ(例えば、コンピュータ26)、又は車両のコンピュータとは別の制御ユニットであり得る。ステップ1004において、制御ユニットは、受信した信号の両方(ステップ1002からの)が非ゼロを読み取っているかどうかを決定する。いくつかの実施形態において、制御ユニットは代わりに、両方の信号がゼロ周辺の指定の範囲の外側であるかどうかを決定する。両方の信号が非ゼロ(又はゼロ周辺の指定の範囲の外側)である場合、方法1000は、ステップ1006へと継続し、そうでない場合は、方法1000は、ステップ1002へと戻る。
【0232】
ステップ1006において、制御ユニットは、毎分差動回転数を計算する(本明細書ではRPMDiffと称される)。毎分差動回転数は、駆動軸角運動速度、舵角、及び車両寸法の関数として計算される。ステップ1008において、可変速可逆モータは、差動制御ピニオン歯車33を回転させる。ステップ1010において、差動制御ピニオン歯車33は、反対方向にある各々の対向する車軸18、20に取り付けられるそれぞれの複数の調整歯車15a、15bの外歯付き輪歯車50a、50bを回転させ、これは、それぞれの車軸18、20の回転速度における差に比例的に影響する。この方法は、適切なフィードバックセンサを使用した連続した閉ループプロセスとして実施され得る。
【0233】
図21は、いくつかの実施形態に従う、後部差動装置を有する車両内の後車軸間の回転速度における差を制御するための方法1100のフローチャートである。
図19は、
図21に従って後部差動装置についての回転速度における所望の差を計算することにおいて使用されるパラメータを例証する。後部差動装置では、RPMDiffの値は、方法1100を通じて計算され得る。ステップ1102において、舵角φを示すセンサデータが受信される(例えば、舵角センサ28から)。ステップ1104において、中心車軸における回転速度(RPM)を示すセンサデータが受信される(例えば、駆動軸回転センサ29から)。ステップ1106において、幅(d)及び軸距(l)などの車両パラメータは、車両メモリから受信される。
【0234】
ステップ1108において、舵角φ及びRPMが非ゼロ値である(すなわち、車両が動いており、かつ旋回している)かどうかが決定される。いくつかの実施形態において、制御ユニットは代わりに、舵角φ及びRPMが共にゼロ周辺の指定の範囲の外側であるかどうかを決定する。両方の値が非ゼロ(又はゼロ周辺の指定の範囲の外側)である場合、方法1100は、ステップ1110へと継続する。ステップ1110において、舵角が正であるか、又は負であるか、すなわち、車両が、それぞれ、右に旋回しているか、又は左に旋回しているかが決定される。
【0235】
舵角φが正である場合、車両が右に旋回していることを意味し、方法1100は、ステップ1122へと継続する。ステップ1122において、内側の車輪角度φ
i及び外側の車輪角度φ
oは、幅d及び軸距lの関数として計算される。これらのパラメータは、
図19に例証される。アッカーマン表現(以下の等式1.1及び1.2)を使用して、内側車輪の角度φ
i又は外側車輪の角度φ
oのいずれかが、所与のφに基づいて決定され得る。
【0236】
右旋回では、φ>0の場合、
【0237】
【0238】
左旋回では、φ<0の場合、
【0239】
【0240】
内側(右)車輪と外側(左)車輪との間の走行距離における差は、比Rdとして表現され得る。ステップ1124において、Rdは、外側旋回半径roを内側旋回半径riで割ることによって、等式2.3において以下に示されるように計算される(ri及びroの例証については
図19を参照されたい)。RPMDiffの右旋回計算では、φ>0の場合、riは、以下のように計算される。
ri=cotφi*l 等式2.1
【0241】
roは、以下のように計算される。
ro=(cotφi*l)+d 等式2.2
したがって、
【0242】
【0243】
Rdは、舵角が減少すると、減少し、1に近づく。舵角が大きいほど、内側半径と外側半径との間に存在する差は大きく、Rdの値が大きくなる。ステップ1126において、等式2.4内でRd及びRPMを使用することにより、右後(参照)車輪のより遅い角運動速度を提供する。
【0244】
【0245】
ステップ1128において、RPMDiffは、右車輪と中間車軸との間のRPM差として計算される。これは、RPMiからRPMを差し引くことによって求めることができる。
RPMDiff=RPMi-RPM 等式2.5
【0246】
これによりRPMDiffの負の値が得られ、この場合はこれが右側旋回中に右側における前進RPMから差し引かれることから、適切である。
【0247】
ステップ1130において、制御ユニットは、差動制御ピニオン歯車33、第1の複数の調整歯車15a、及び第2の複数の調整歯車15bを用いて右車軸の回転速度にRPMDiffを追加するように可変速可逆モータに信号を送信する。
【0248】
ステップ1110において、舵角φが負である場合、車両が左に旋回していることを意味し、方法1100は、ステップ1112へと継続する。ステップ1112において、内側の車輪角度φ
i及び外側の車輪角度φ
oは、幅d及び軸距lの関数として計算される。これらのパラメータは、
図19に例証される。ステップ1114において、Rdは、φ
i、φ
o、l、及びdの関数として計算される。
【0249】
ステップ1116において、Rd及びRPMを使用することにより、左後車輪のより遅い角運動速度を提供する。ステップ1118において、RPMDiffは、左旋回について計算され、φ<0である場合、ri、ro、及びRPMDiffは、以下のように計算される。
ri=cot|φi|*l 等式2.6
ro=(cot|φi|*l)+d 等式2.7
RPMDiff=RPM-RPMi 等式2.8
【0250】
RPMDiffのための減算の並びは、本発明の参照車軸は依然として右側にあるが、内側車輪がここでは右ではなく左であることから、逆にされる。
【0251】
ステップ1120において、制御ユニットは、差動制御ピニオン歯車33、第1の複数の調整歯車15a、及び第2の複数の調整歯車15bを用いて右車軸の回転速度にRPMDiffを追加するように可変速可逆モータに信号を送信する。
【0252】
図22は、いくつかの実施形態に従う、前部差動装置を有する車両内の前車軸間の回転速度における差を制御するための方法1300のフローチャートである。参照車軸は、この場合、右前車軸であり、そのため差動制御ピニオン歯車33は、この車軸に対する所望のRPMDiffを達成するために回転される。この設計の回生性質、及び左調整歯車上の差動制御ピニオン歯車の反対の活動に起因して、左前車軸は、回転率に対する等しくかつ反対の調整を経験するということを思い起こされたい。簡略性のため、これらの計算のための参照点としての右車軸。例となる方法1300は、前部差動装置のための回転速度における所望の差を計算するために使用され得る。
図23は、
図22に従って前部差動装置についての回転速度における所望の差を計算することにおいて使用されるパラメータを例証する。
【0253】
前部差動装置では、RPMDiffの値は、
図22に描写される方法を通じて計算され得る。ステップ1302において、舵角φを示すセンサデータが受信される(例えば、舵角センサ28から)。ステップ1304において、中心車軸における回転速度(RPM)を示すセンサデータが受信される(例えば、駆動軸回転速度センサ29から)。ステップ1306において、幅(d)及び軸距(l)などの車両パラメータは、車両メモリから受信される。
【0254】
ステップ1308において、舵角φ及びRPMが非ゼロ値である(すなわち、車両が動いており、かつ旋回している)かどうかが決定される。いくつかの実施形態において、制御ユニットは代わりに、舵角φ及びRPMが共にゼロ周辺の指定の範囲の外側であるかどうかを決定する。これらの値が非ゼロ(又はゼロ周辺の指定の範囲の外側)である場合、方法1300は、ステップ1310へと継続する。ステップ1310において、舵角が正であるか、又は負であるか、すなわち、車両が、それぞれ、右に旋回しているか、又は左に旋回しているかが決定される。
【0255】
舵角φが正である場合、車両が右に旋回していることを意味し、方法1300は、ステップ1322へと継続する。ステップ1322において、内側の車輪角度φ
i及び外側の車輪角度φ
oは、幅d及び軸距lの関数として計算される。これらのパラメータは、
図23に例証される。
【0256】
内側(右)前車輪及び外側(左)前車輪との間の走行距離における差は、比Rdとして表現され得る。ステップ1324において、Rdは、外側旋回半径roを内側旋回半径riで割ることによって、等式3.3において以下に示されるように計算される(ri及びroの例証については
図21を参照されたい)。前車輪のri値及びro値は、後車輪のものとは異なるということに留意されたい。RPMDiffの右旋回計算では、φ>0の場合、ri及びroは、以下のように計算される。
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
いくつかの実施形態において、roはまた、ピタゴラスの定理
【0261】
【数8】
を使用して計算され得、式中、ro
rは、後車輪の外側旋回半径である。
【0262】
Rdは、舵角が減少すると、減少し、1に近づく。舵角が大きいほど、内側半径と外側半径との間に存在する差が大きく、Rdの値は大きくなる。Rdの調整された値を使用することにより、旋回中の右前車輪の異なる角運動速度を補正する。ステップ1326において、以下の等式内でRd及びRPMを使用することにより、以下を提供する。
【0263】
【0264】
ステップ1328において、RPMDiffは、車軸の中央と右車輪との間の角運動速度差である。これは、RPMiからRPMを差し引くことによって求めることができる。
RPMDiff=RPMi-RPM 等式3.5
【0265】
ステップ1330において、制御ユニットは、差動制御ピニオン歯車33、第1の複数の調整歯車15a、及び第2の複数の調整歯車15bを用いて右車軸の回転速度にRPMDiffを追加するように可変速可逆モータに信号を送信する。
【0266】
ステップ1310において、舵角φが負である場合、すなわち、車両が左に旋回している場合、方法1300は、ステップ1312へと継続する。ステップ1312において、内側の車輪角度φ
i及び外側の車輪角度φ
oは、幅d及び軸距lの関数として計算される。これらのパラメータは、
図21に例証される。ステップ1314において、Rdは、φ
i、φ
o、l、及びdの関数として計算される。
【0267】
ステップ1316において、Rd及びRPMを使用することにより、左前車輪のより遅い角運動速度を提供する。ステップ1318において、RPMDiffは、左旋回について計算され、φ<0である場合、ri、ro、及びRPMDiffは、以下のように計算される。
【0268】
【0269】
【数11】
RPMDiff=RPM-RPMi 等式3.8
【0270】
RPMDiffのための減算の並びは、参照車軸は依然として右側にあるが、内側車輪がここでは右ではなく左であることから、逆にされる。
【0271】
ステップ1320において、制御ユニットは、差動制御ピニオン歯車33、第1の複数の調整歯車15a、及び第2の複数の調整歯車15bを用いて右車軸の回転速度にRPMDiffを追加するように可変速可逆モータに信号を送信する。
【0272】
図24は、いくつかの実施形態に従う、中央差動装置を有する車両内の前出力駆動軸と後出力駆動軸との間の回転速度における所望の差を決定するための方法1500のフローチャートである。
図25は、
図24に従って中央差動装置についての回転速度における所望の差を決定することにおいて使用されるパラメータを例証する。参照車軸は、この場合、前出力軸であり、そのため差動制御ピニオン歯車33は、この出力軸に対する所望のRPMDiffを達成するように回転される。この設計の回生性質、及び後調整歯車上の差動制御ピニオン歯車の反対の活動に起因して、後出力軸は、回転率に対する等しくかつ反対の調整を実現するということを思い起こされたい。簡略性のため、本発明者らは、前出力軸をこれらの計算のための参照軸として有する。
【0273】
全輪駆動用途においては、旋回中に前車軸と後車軸との間の異なる半径を受け入れるために中央差動装置が存在する。前部、後部、及び中央差動装置が存在するとき、差動装置への入力(変速機からの出力)の回転速度は、RPMとして使用され、これは、計算を通じて、任意の所与の舵角及び速度における、中央差動装置の前及び後出力軸のRPMを提供することができる。これらの値は、次いで、上記の前部又は後部差動装置のためのRPMdiff値を計算するためのRPMとしての役割を果たすことができ、したがって、三つの差動装置すべてについての差動率が単一の回転速度測定値から計算されることを可能にする。
【0274】
中央差動装置では、RPMDiffの値は、
図24に描写される方法を使用して計算され得る。ステップ1502において、舵角φを示すセンサデータが受信される(例えば、舵角センサ28から)。ステップ1504において、中心車軸における回転速度(RPM)を示すセンサデータが受信される(例えば、駆動軸回転センサ29から)。このRPMは、多くの場合、回転の極一部を検出することができる精密な測定値である。これはまた、方向を示す符号(+は前進を示し、-は後進を示す)を有するベクトル量である。ステップ1506において、幅(d)及び軸距(l)などの車両パラメータは、車両メモリから受信される。
【0275】
ステップ1508において、舵角φ及びRPMが非ゼロ値である(すなわち、車両が動いており、かつ旋回している)かどうかが決定される。いくつかの実施形態において、制御ユニットは代わりに、舵角φ及びRPMが共にゼロ周辺の指定の範囲の外側であるかどうかを決定する。これらの値が非ゼロ(又はゼロ周辺の指定の範囲の外側)である場合、方法1500は、ステップ1510へと継続する。
【0276】
次に、ri(後部差動装置旋回半径)及びro(前部差動装置旋回半径)が、以下のように計算される(ri及びroの例証については
図23を参照されたい)。
【0277】
【0278】
【0279】
ステップ1510において、前車軸と後車軸との間の走行距離における差は、本明細書では比Rdとして表現される。Rdは、以下のように計算される。
【0280】
【0281】
ステップ1512において、(より遅い)後出力のRPMは、以下の等式毎に計算される。
【0282】
【0283】
ステップ1514において、RPMDiffは、以下のように計算される。
RPMDiff=RPM-RPMr 等式4.5
【0284】
RPMrはここでは、上記の後部差動計算のためのRPM値として使用され得る。前出力軸のより速い角運動速度(RPMf)は、以下のように計算され得る。
RPMf=RPMr*Rd 等式4.6
【0285】
RPMfはここでは、上記の前部差動計算のためのRPM値として使用され得る。ステップ1516において、制御ユニットは、差動制御ピニオン歯車33、第1の複数の調整歯車15a、及び第2の複数の調整歯車15bを用いて前出力の回転速度にRPMDiffを追加するように可変速可逆モータに信号を送信する。
【0286】
上の計算は、特に小さい値のφでは、正確な浮動小数点数を必要とする。いくつかの実施形態において、制御ユニット内の浮動小数点演算は、IEEE754などの好適な慣例を用いて実施される。
【0287】
上に計算されるような差動率からの著しい偏差を許さない実施形態、及び/又は、以前に論じられるような減速歯車若しくはウォーム歯車など、偏差を防ぐための機構が用いられる実施形態において、差動制御ピニオン歯車を駆動するために可変速可逆モータ(例えば、サーボ又はステッパモータ)によって必要とされる動力は、大きい必要はない。大半のアッカーマン操舵される車両において、可変速可逆モータが、モータを歯車装置アセンブリに接続する歯車(例えば、差動制御ピニオン歯車33、ウォーム歯車56、又は平歯車57)を回転させる最大回転速度は、駆動軸の最大回転速度と比べて比較的小さい。さらには、これらの実施形態において、理想のけん引条件下で、差動制御ピニオン歯車33、ウォーム歯車56、又は平歯車57に印加されるような計算された回転は、車両の自然の差動率に密に整列し、それに従う。したがって、これらの条件下で可変速可逆モータが経験する抵抗は、存在するとしても非常に小さい。
【0288】
一方の車輪が地面から離れる場合など、外部条件が自然の差動率に有利に働かないとき、いくつかの実施形態は、そのスリップしている車輪に対して動力が失われることを防ぐ減速又はウォーム歯車などの機構を組み込む。差動装置が自然の差動率を、外部条件がこれに抵抗するとしても、維持しているこの状況では、減速歯車、又は偏差を防ぐための他の機構は、トルク負荷の増大を経験し得る。この状況では、小さい可変速可逆モータが、増大された抵抗に対抗して動作し続けることは困難であり得、したがって、可変モータのバーンアウトを防ぐために、抵抗が特定のしきい値未満に戻るまで差動制御ピニオン歯車を一時的に静止状態に保持するように可変速可逆モータに命令することが有利であり得る。このシナリオでは、差動装置は、それがあたかも係止又は溶接された差動装置であるかのように、車両に動力供給し続け、けん引不均衡からの抵抗が正常範囲に戻るとき、システムは、上に説明されるような計算された差動率を適用することに戻る。
【0289】
本明細書に開示されるシステム及び歯車装置アセンブリが提供する差動制御の度合いにより、所望の差動率は、自然の率とは異なるものへと調整され得る。例えば、制御ユニットは、車両オーバステア又はアンダーステアを、差動率をそれぞれ減少又は増大させることによって補正するようにプログラムされ得る。そのような実施形態においては、十分に強力な可変速可逆モータが、起こり得る増大された抵抗を克服するために用いられなければならない。
【0290】
いくつかの実施形態において、十分に強力な可変速可逆モータ24は、車両が自然の旋回を実施することを可能にし得る。これは、多点旋回を実施する必要なしに狭い空間内で車両を180度旋回させるなど、窮屈な操縦に有利であり得る。差動調整歯車の回生及び対称の性質は、この種の操縦が推進駆動軸12のいかなる関与もなしにもっぱら差動制御ピニオン歯車33だけを通じて実施されることを可能にする。そのような操縦においては、自然の旋回が操舵輪の意図しない動きによって影響を受けないように、操舵輪を固定位置に係止又は保持する必要がある。
【0291】
差動制御システムは、不均一なトレッド摩耗又はタイヤ空気圧の差に起因するタイヤサイズの変化を調整するために校正される必要があり得る。差動率を小さい量又は割合だけ増大又は減少させることができる、手動トリム、又は校正つまみが使用され得る。例えば、左及び右に異なるサイズのタイヤを有する、動いている車両は、操舵輪が真っ直ぐに保たれているときさえも片側に逸れて進む傾向があり得る。車両を直進させ続けるために、つまみを使用して差動率を調整し得る。より具体的には、この調整は、差動制御システムが、より小さい半径を有するタイヤの回転速度を増大させ、したがって反対側の大きい方のタイヤを減速させるようにし得る。この調整は、より速くスピンしている小さい方のタイヤが走る距離が、任意の単位時間においてより遅く旋回している大きい方のタイヤが走る距離に一致するまで行われる。いくつかの実施形態において、そのような調整は、センサ入力に基づいて自動的になされ得る。
【0292】
いくつかの実施形態において、所望の差動率は、第1の車軸と第2の車軸との間のトルクにおける検知又は測定された差動に基づいて修正され得る。いくつかの実施形態において、所望の差動率は、トルクにおける瞬間の現在の測定された差動に基づいて修正され得る。いくつかの実施形態において、所望の差動率は、ある時間期間にわたって測定されるトルクにおける差動に基づいて修正され得る。いくつかの実施形態において、一つ以上のトルクセンサは、第1の車軸と第2の車軸との間のトルクにおける差を決定するために測定値を獲得するために用いられ、またこの測定値に少なくとも部分的に基づき、コンピュータは、二つの車輪間でトルクがどれくらい均衡又は不均衡であるかを決定し、トルクがどれくらい不均衡であるかに少なくとも部分的に基づいて、所望の差動率を修正する。
【0293】
図26は、例となる実施形態に従う、差動システムを動作させるための例となる方法1700のフローチャートである。方法1700は、一つ以上のプロセッサを含む制御ユニットが、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定するようにプログラムされるステップ1702で開始する。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、車両のメインコンピュータ26である。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、車両のメインコンピュータに含まれない。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、車両のエンジンを動作させるコンピュータ26である。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、車両のエンジンを動作させるコンピュータ26とは別である。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、一つ以上のマイクロプロセッサを含む。制御ユニットは、コンピュータ実行可能命令を実施するための任意の好適な構成を有することができる。回転速度における所望の差動は、車両の現在の舵角(例えば、舵角センサ28によって提供されるような)、及び車両の第1の駆動軸12の現在の回転速度(例えば、駆動軸回転センサ29によって提供されるような)に少なくとも部分的に基づいて決定される。第1の駆動軸12は、第1の車軸18及び第2の車軸20が接続される差動装置40に動力供給する。
【0294】
ステップ1704において、制御ユニットは、第1の車軸18及び第2の車軸20の相対回転を制御して回転速度における所望の差動を許容範囲内に一致させるために、ステップ1702において決定された回転速度における所望の差動に基づいて、車両の可変速可逆モータ24に信号を送信するようにプログラムされる。
【0295】
例となる実施形態において、許容範囲は、所望の差動値の±0%~±15%の範囲内に入り得る。別の例となる実施形態において、許容範囲は、所望の差動値の±1%~±5%の範囲内に入り得る。
【0296】
いくつかの実施形態において、制御ユニットは、ユーザ入力に応答して許容範囲を変えるようにプログラムされ得る。例えば、ユーザ入力は、他の可能性のあるオプションの中から、車両のための「オフロード」又は「悪路」駆動オプションの選択を示し得る。
【0297】
いくつかの実施形態において、制御ユニットは、車両が動いている間のセンサ入力に少なくとも部分的に基づいて許容範囲を変えるようにプログラムされ得る。センサ入力は、G力センサ、又は車両のサスペンションと関連付けられたセンサからの入力であり得る。許容範囲は、ある時間期間にわたるセンサからの入力に基づいて変えられ得る。この時間期間は、5秒~20分の範囲に入り得る。他の実施形態においては、時間期間は、1分~10分の範囲に入り得る。
【0298】
別の例では、制御ユニットは、車両が不整地の上を移動していることを示すセンサ読み取りに基づいて自動的に許容範囲を調整し得る。例えば、制御ユニットは、車両が動いている間のある時間期間にわたって、加速度センサ又はサスペンションと関連付けられたセンサからのセンサ入力を受信し、受信したセンサ入力に応答して許容範囲を調整し得る。好適な時間期間が選択され得る。例えば、いくつかの実施形態において、時間期間は、5秒~20分の範囲に入り得る。いくつかの実施形態において、時間期間は、1分~10分の範囲に入り得る。
【0299】
例となる実施形態において、可変速可逆モータ24は、可変速可逆モータに結合される車両の歯車装置アセンブリ14を使用して、第1の車軸18及び第2の車軸20の相対回転を制御する。歯車装置アセンブリは、本明細書に説明される歯車装置アセンブリ14、14'のいずれかであり得る。
【0300】
制御ユニットは、車両の検知された現在の舵角に関する情報を受信し、車両の第1の駆動軸12の検知された現在の回転速度に関する情報を受信して、ステップ1702において回転速度における所望の差動を決定し得る。
【0301】
例となる実施形態において、可変速可逆モータは、ステップ1702において決定された回転速度における所望の差動に比例する回転速度で差動制御ピニオン歯車33を回転させることによって、第1の車軸18及び第2の車軸20の相対回転を制御し得る。この方法は、適切なフィードバックセンサを使用した連続した閉ループプロセスとして実施され得る。
【0302】
いくつかの実施形態において、車両の第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差動はまた、車両の幅及び車両の軸距に関する情報に基づいて決定される。
【0303】
いくつかの実施形態において、車両の第1の車軸18と第2の車軸20との間の回転速度における所望の差動を決定することは、車両非対称性に基づいて直線走行中の差動基線に関連した因子を追加することを含む。いくつかの実施形態において、この因子は、制御ユニットによって自動的に決定され得る。この因子は、車両が動いているときのある時間期間中に、所望の差動率に対する検知された抵抗性に基づいて決定され得る。いくつかの実施形態において、時間期間は、5秒~20分の範囲に入り得る。いくつかの実施形態において、時間期間は、1分~10分の範囲に入り得る。
【0304】
いくつかの実施形態において、所望の差動は、例えば、第1の車軸と第2の車軸との間の差動トルクの測定値に基づいて修正され得る。いくつかの実施形態において、差動トルクの測定値は、所望の差動を継続して修正するためにフィードバックとして使用される。いくつかの実施形態において、長期間の経時的に比較的一定の差動トルクの測定値は、現在及び将来の用途のためにコンピュータによってメモリ内に格納される修正因子を決定するために使用される。いくつかの実施形態において、差動トルクにおける可変又は瞬間の変化の測定値もまた、所望の差動を修正するために適用されるが、コンピュータによってメモリ内に格納される必要はない。
【0305】
いくつかの実施形態において、方法1700は、車両の第3の車軸と第4の車軸との間の回転速度における第2の所望の差動を決定することをさらに含み得る。第2の所望の差動は、車両の現在の舵角及び車両の第2の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。第2の駆動軸は、第3の車軸及び第4の車軸が接続される第2の差動装置に動力供給し得る。方法1700は、第3の車軸及び第4の車軸の相対回転を制御して回転速度における所望の第2の差動を第2の許容範囲内に一致させるために、回転速度における所望の第2の差動に基づいて車両の第2の可変速可逆モータに信号を送信することをさらに含み得る。第2の許容範囲は、ステップ1704における許容範囲と同じであり得るか、又は異なり得る。
【0306】
例となる実施形態において、第1及び第2の車軸は、車両の後車軸の軸であり得、第3及び第4の車軸は、車両の前車軸の軸であり得る。いくつかの実施形態において、方法1700は、車両の現在の舵角、及び車両の変速機又は駆動モータによって出力される現在の回転速度に少なくとも部分的に基づいて、車両の第1の駆動軸と第2の駆動軸との間の回転速度における第3の所望の差動を決定することをさらに含み得る。方法1700はまた、第1の車軸及び第2の車軸の相対回転を制御して回転速度における所望の第3の差動を第3の許容範囲内に一致させるために、回転速度における所望の第3の差動に基づいて車両の第3の可変速可逆モータに信号を送信することを含み得る。
【0307】
図27は、例となる実施形態に従う、差動システムを動作させるための方法1800のフローチャートである。方法1800は、車両の制御ユニットが、車両の現在の舵角の大きさが最小舵角値よりも大きいかどうか、及び車両の第1の駆動軸の現在の回転速度の大きさが非ゼロであるかどうかを決定するようにプログラムされるステップ1802で開始する。いくつかの実施形態において、非ゼロ駆動軸回転速度条件は、回転速度が約0.002rpm未満であるときに満たされる。
【0308】
これらの条件が満たされる場合、ステップ1804において、マイクロプロセッサは、車両の第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における所望の差動を決定するようにプログラムされる。回転速度における所望の差動は、車両の現在の舵角及び車両の第1の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づいて決定される。第1の駆動軸は、第1の車軸及び第2の車軸が接続される差動装置に動力供給する。
【0309】
ステップ1806において、車両のマイクロプロセッサは、第2の車軸の回転に対して第1の車軸の回転を制御可能に変更するために、ステップ1804において決定された回転速度における所望の差動に基づいて車両の可変速可逆モータに信号を送信するようにプログラムされる。この方法は、適切なフィードバックセンサを使用した連続した閉ループプロセスとして実施され得る。
【0310】
例となる実施形態において、可変速可逆モータ24は、可変速可逆モータ24に結合される車両の歯車装置アセンブリ14、14'を使用して、第1の車軸及び第2の車軸の相対回転を制御する。歯車装置アセンブリは、本明細書に説明される歯車装置アセンブリ14、14'のいずれかであり得る。
【0311】
例となる実施形態において、現在の舵角の大きさが最小舵角値よりも大きく、駆動軸の現在の回転速度の大きさが、非ゼロである場合、車両のマイクロプロセッサは、第3の車軸と第4の車軸との間の回転速度における第2の所望の差動を決定するようにプログラムされる。回転速度における第2の所望の差動は、車両の現在の舵角及び車両の第2の駆動軸の現在の回転速度に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。第2の駆動軸は、第3の車軸及び第4の車軸が接続される第2の差動装置に動力供給し得る。この実施形態において、方法1800は、第4の車軸に対して第3の車軸の回転を制御可能に変更するために、回転速度における決定された第2の所望の差動に基づいて車両の第2の可変速可逆モータに信号を送信することをさらに含み得る。
【0312】
例となる実施形態において、第1及び第2の車軸は、車両の後車軸の軸であり得、第3及び第4の車軸は、車両の前車軸の軸であり得る。この実施形態において、方法1800は、車両の現在の舵角、及び車両の変速機又は駆動モータによって出力される現在の回転速度に少なくとも部分的に基づいて、車両の第1の駆動軸と第2の駆動軸との間の回転速度における第3の所望の差動を決定することを含み得る。方法1800は、第2の駆動軸の回転に対して第1の駆動軸の回転を制御可能に変更するために、回転速度における決定された第3の所望の差動に基づいて車両の第3の可変速可逆モータに信号を送信することをさらに含み得る。
【0313】
制御ユニットは、車両の検知された現在の舵角に関する情報を受信し、車両の駆動軸の検知された現在の回転速度に関する情報を受信し得る。
【0314】
いくつかの実施形態において、最小舵角値は、0.01度~5度の範囲内に入る。いくつかの実施形態において、方法1800は、車両が動いている間のセンサ入力に少なくとも部分的に基づいて、最小舵角を変化させることを含む。他の実施形態において、方法1800は、ユーザ入力に応答して最小舵角を変化させることを含む。
【0315】
いくつかの実施形態において、車両内の差動回転率を制御する方法は、現在の舵角及び現在の駆動軸速度に関する情報を用いる必要がなく、また所望の差動回転率を計算することを含む必要がなく、舵角センサ及び駆動軸速度センサは利用されない。そのような実施形態において、制御ユニットは、車軸間の回転率における差が指定限界を超えることを防ぐ。そのような実施形態は、説明される他の例となる実施形態のうちのいくつかと比較して、不均等なけん引の条件においてより大きい車輪スリップを許し得るが、依然として、指定限界を超える差動回転値に対応する過剰な車輪スリップを防ぐ。
【0316】
そのような実施形態は、車軸(例えば、第1の車軸18、第3の車軸)の回転速度をその車軸についての他方の車軸(例えば、第2の車軸20、第4の車軸)の回転速度に関連して継続して測定するために、センサ又はセンサのセットを用いることができる。そのような実施形態はまた、可変速可逆モータに作用するトルクを測定するためにセンサを用いることができる。そのような実施形態は、可変モータが、プログラムされた最大許容範囲内で第1の車軸18及び第2の車軸20の回転速度間の差を作り出すために作用する任意のトルクに従って回転することを許す。そのような最大範囲は、そのような実施形態を装備した車両のための非スリップ条件において妥当に達成され得る第1の車軸と第2の車軸との間の回転速度における最大の差に部分的に基づいて決定される。測定された差動速度がこの最大許容範囲を超えるならば、可変モータは、測定された実際の差動力に反して活性化されることになる。
【0317】
所望の差動率を計算し適用するために舵角センサ28及び駆動軸回転センサ29を用いる実施形態において、これらのセンサのうちの一方又は両方が全く機能せず、非妥当な信号を生み出すか、又は別の方式で信頼できなくなるシナリオに対処するための動作モードを提供することが望ましい場合がある。そのようなシナリオは、所望の差動率を正確に計算することができないという結果をもたらし、これは、車両の操作機敏性に悪影響を与え得る。そのようなセンサ故障が検知されると、通常動作ではこれらのセンサに依存するそのような実施形態は、最大の妥当な限界まで第1の車軸18及び第2の車軸20の回転速度間の差を作り出すために作用する任意の回転力に従って可変速可逆モータが回転することを許す動作の安全モードに入る。そのような安全モードは、現在の舵角及び現在の駆動軸速度に関するデータに依存しない上記の実施形態に動作が類似する。
【0318】
所望の差動回転速度からの変動
上の議論は、差動装置によって接合される各車軸についての所望の回転速度を決定することを含む方法、又は所与の条件セットについて、差動装置によって接合される車軸間の回転速度における所望の差を決定するための方法のいくつかの実施形態に取り組む。しかしながら、車両を動作させるための、本明細書に説明されるいくつかの方法は、車両が動作する実世界の条件を反映する、決定された所望の率からの許容差又は偏差を含む。さらに、当業者は、本開示を考慮して、各車軸についての決定された所望の回転速度からの、又は車軸間の回転速度における決定された所望の差からのわずかな偏差を伴って動作する車両が、依然として本発明の範囲内に入ることを理解するものとする。いくつかの実施形態において、所望の差動率は、以下の別個の章に説明されるような所望の操舵挙動(例えば、オーバステア及びアンダーステア)を得るために、自然の差動率とは異なるように意図的に選択又は設定される。
【0319】
前輪操舵される車両のためのいくつかの実施形態において、制御方法は、車両の所与の構成に基づいて許容差動回転率の上境界及び下境界を計算する。次いで、可変速可逆モータ24は、差動制御ピニオン歯車33をこの計算された境界内にあるように管理する。けん引不均衡に起因する任意の望ましくない車輪スリップは、これが計算された境界の範囲外であることから、防がれる。
【0320】
上記のいくつかの方法は、所与のシナリオについて、所望の差動率をどのように計算し、適用するかを開示する。しかしながら、この計算された率は、正しく空気の入ったタイヤを有する車両での理想の道路条件下でのみ一致されることが理解される。一致している計算された率は、所与の入力信号についての計算された率が、車両がその瞬間に実際に経験する差動率と合致することを意味する。これは、可変速可逆モータに対する最小抵抗の状況でもある。現実には、車両は、非対称に空気の入ったタイヤ又は摩耗タイヤで、差動サスペンション作用を作り出す道路表面上で動作され得る。その結果、そのような現実世界の変動を受け入れるために、所望の差動率からの偏差に対する耐性を許容することが必要である。考慮すべきいくつかの因子が存在し、これらは以下に説明される。
【0321】
妥当な上境界及び下境界
いくつかの実施形態において、差動装置に接続されるモータは、以下に説明されるものなどの予期せぬ条件を受け入れるために、決定された所望の差動率とは異なる車軸間の差動回転率をもたらす率で回転することが許されることが重要である。しかしながら、決定された所望の差動率からの偏差の絶対率は、決定された所望の率をそれぞれ下回る及び上回る最小値及び最大値までに限られなければならない。これにより、これを超えると車両が通常制御下ではそのような差動率を経験しないことを予期することが合理的である妥当な上境界及び下境界を確立する。妥当性の範囲は、車種、その意図した性能目標、及び車両寸法などのいくつかの因子に基づいて、各車両について各製造業者によって決定されるべきである。一般的に言うと、決定された所望の差動率に対するより幅広い妥当範囲は、より寛大である一方、より狭い範囲は、所望の差動率を達成することをより積極的に求めることとなり、増大されたタイヤ摩耗を導き得る。
【0322】
車両非対称性に起因する一定の偏差
車両における非対称性に起因する決定された所望の差動率からの偏差を受け入れるため、一つ以上の圧力若しくはトルクセンサセンサ、又はいくつかの他の方法若しくはデバイスが、可変速可逆モータが経験している抵抗を測定するために用いられ得る。このセンサは、車両の片側のタイヤに空気が十分に入っていないなどの車両非対称性から生じる所望の差動率からの一定の偏差を検出することができる。例えば、直線走行において、空気が十分に入っていないタイヤは、他のタイヤと同じ距離を取り戻すためにより速くスピンする必要があり、こうして、計算された所望の率(直線走行においてはゼロであるべきだが、ここでは非対称性を受け入れるために非ゼロでなければならない)からの一定の偏差する力を作り出す。この状況では、アルゴリズムは、新しい「一定の」非対称性を計算に入れるために自己調整し、おそらくは、情報ディスプレイを介して運転者に通知するか、又は、この状況がいくらかの既定の持続時間にわたって継続する場合はOBDコードをトリガする。差動装置が新しい「正常」へ自己調整しなければならないそのようなシナリオ(車両非対称性に起因する一定の偏差)は、キッチンスケールの容器重量機能を利用することに類似するものと考えられ得る。上に説明されるように、いくつかの実施形態において、制御ユニットは、ある時間期間にわたって所望の差動率を強いることに対する検知された耐性に基づいて、所望の差動率への自動調整を行うようにプログラムされ得る。そのような調整値は、長期差動トリムと称され得る。
【0323】
非対称のサスペンション走行又は他の環境因子に起因する瞬間の偏差
追加的な偏差源は、非対称のサスペンション走行又は起伏の多い地形条件に由来する。しかしながら、これは、妥当な上境界及び下境界の計算の因子とされるべきである。製造業者が、所望の率を上回る及び下回る狭い範囲の妥当な境界を望み、その結果として、極端なサスペンション走行が妥当境界を定期的に超える場合、サスペンション走行を計算に入れ、特定のサスペンション条件下でより大きい偏差を許すことが必要になり得る。この場合、センサは、車両のサスペンションの位置を監視し、より大きい許容偏差を提供するために使用され得る。例えば、車両の片側が、重いサスペンション走行を引き起こす起伏の多い土地に遭遇した場合、そちら側の車輪は、より多くの「地面」を走っており、反対側の車輪よりもわずかに速く回転することを許される必要がある。上に説明されるように、いくつかの実施形態において、範囲は、ユーザ入力に基づいて調整され得る。また上に説明されるように、いくつかの実施形態において、範囲は、運動中のセンサ入力(例えば、トルクセンサ、加速度センサ、又はサスペンションと関連付けられたセンサからの入力)に基づいて、使用中に自動的に調整され得る。そのような調整値は、短期差動トリムと称され得る。
【0324】
自然の差動率からの所望の差動率の意図的偏差
いくつかの実施形態において、及びいくつかの状況下では、所望の差動率は、自然の差動率から意図的に変化又は逸脱する。例えば、所望の差動率は、車両の操作に影響を与えるため、又は望ましくない車両挙動の大きさを補正するか、若しくは別のやり方で減少させるために、自然の差動率から意図的に逸脱し得る(例えば、増大された車両機敏性に相当し、オーバステアに有利に働く、自然の率よりも大きい所望の率)。いくつかの実施形態において、この意図的偏差は、自動的であり、一つ以上の車両センサからの現在の入力に応答している(例えば、車両のヨーイングを示す車両の加速度に関するセンサ情報に応答している)。
【0325】
様々な実施形態の態様及びいくつかの利益は、単に例証の目的にすぎない上の
図1~
図4Dで用いられる参照番号に対して以下に説明される。当業者は、本開示を考慮して、以下の記載が車両の他の構成及び他の歯車装置アセンブリにも同様に当てはまることを理解するものとする。
【0326】
いくつかの実施形態は、車両の制御ユニット、コンピュータ、又はコンピューティングデバイス(例えば、エンジンコンピュータ26)によって制御される可変速可逆モータ24(例えば、サーボモータ、ステッパモータ、油圧モータ)に接続される歯車装置アセンブリ14、14'を提供する。歯車装置アセンブリ14、14'は、車両の第1の車軸18及び第2の車軸20と接続する差動装置40、並びに、可変速可逆モータ24を使用して第2の車軸20の回転率に対して第1の車軸18の回転率を制御可能に変更するように構成される第1及び第2の複数の調整歯車15a、15bを含む。上に記されるように、いくつかの実施形態において、操舵クラッチが、第2の車軸20の回転率に対して第1の車軸18の回転率を制御可能に変更するために、可変速可逆モータ24の代わりに使用される。
【0327】
いくつかの実施形態において、歯車装置アセンブリ14、14'は、第2の車軸20の回転率に対して第1の車軸18の回転率を変更するとき、摩耗に依存しない。これは、前輪操舵される車両では、摩耗、例えば、限られたスリップ差動に依存する歯車装置アセンブリは、車軸及び車輪のいくらかのスリップを許し、これが車両の安全性を減じることがあるため、有益である。対照的に、第2の車軸20に対して第1の車軸18の回転率を変更するために摩擦に依存しない、本明細書に開示される歯車装置アセンブリのいくつかの実施形態は、車軸及び車輪のいかなるスリップも許さない。さらに、限られたスリップ差動は、スリップしている車輪へのトルクのいくらかの損失を許し、これは、第2の車軸に対して第1の車軸の回転率を変更するときに摩擦に依存しない本明細書で特許請求される実施形態では発生しない。
【0328】
車軸間の回転速度における決定された所望の差動を厳しく強制する実施形態は、スリップを許さない。しかしながら、車軸間の回転速度における実際の差動が、少量のスリップを許す指定の上境界及び下境界内で所望の差動から逸脱することを許す実施形態さえも、差動のため、及び限られたスリップ差動のために設計された従来の摩擦ベースと比較したとき、少量のスリップしか許さない。
【0329】
摩擦に依存しない、又は車軸間の回転速度における所望の差動からのわずかな偏差だけを許すいくつかの実施形態の別の利益は、駆動車輪に不均等なトルクが供給されることに起因して発生するトルクステアの低減又は除去である。慣習的な限られたスリップ差動は、実際には、左車輪と右車輪との間でトルクをシフトして、左車輪と右車輪との間の大きいトルク差を許すことに起因して、トルク操舵を誇張することができる。許容回転率を管理することにより、本明細書に説明される方法及び歯車アセンブリは、加速下で左車輪と右車輪との間の回転速度の差を引き起こすトルク不均衡を防ぐことができる。いくつかの実施形態において、トルク操舵が最も顕著である高加速度下で、回転速度における所望の差動からの許容偏差は、トルク操舵をさらに防ぐために左車輪及び右車輪が一緒に回転することを確実にするために、低減され得る。
【0330】
摩擦に依存しない、又は車軸間の回転速度における所望の差動からのわずかな偏差だけを許すいくつかの実施形態の別の利益は、車輪スリップに対処する、又はそれを軽減するラグ時間の低減又は除去である。多くの摩擦ベースの設計は、車輪スリップを検出するために車輪速度センサを利用し、スリップを低減するために摩擦部品を適用する。低けん引力下での登坂などの特定の状況において、スリップを検出し軽減するために必要とされる遅延は、坂を登る車両運動量において望ましくない損失を引き起こし得る。経時的に各車軸の所望の差動回転率を継続して計算し適用することにより、このシステムは、この望ましくない遅延に悩まされない。
【0331】
本明細書内の教示に基づいて当業者によって認識され得るように、多数の変更及び修正が、添付の特許請求の範囲において規定されるような本発明の趣旨から逸脱することなく、本開示の上記の実施形態及び他の実施形態に対してなされ得る。したがって、実施形態のこの詳細な説明は、制限的意味に対抗するものとして、例証的意味でとられるものとする。当業者は、日常的な実験以上のものを使用しなくとも、本明細書に説明される特定の実施形態に対する多くの等価物を認識する、又は解明することができるものとする。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。