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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】注射針と注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/46 20060101AFI20230522BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
A61M5/46
A61M5/32 500
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020514433
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2019016607
(87)【国際公開番号】W WO2019203298
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018081378
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008537
【氏名又は名称】ASTI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(72)【発明者】
【氏名】稲生 昭典
(72)【発明者】
【氏名】野中 勇
(72)【発明者】
【氏名】小粥 教幸
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02633882(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0093049(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0020216(KR,A)
【文献】登録実用新案第3194715(JP,U)
【文献】特開2014-042669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/46
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針と、
上記針を先端側に突出させた状態で保持する針基と、
上記針基の外周側に上記針基の軸方向に沿って移動可能に設置されたアジャスターと、
を具備し、
上記アジャスターの軸方向位置を調整することにより上記針の突出長さを調整するようにし
上記アジャスターの外周側には上記針を覆うようにキャップが被冠され、
上記キャップを上記アジャスターに嵌合させてキャップを回転させることにより上記アジャスターを回転させることができるように構成されていることを特徴とする注射針。
【請求項2】
請求項1記載の注射針において、
上記針の先端を上記アジャスター内に格納できるようにしたことを特徴とする注射針。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の注射針において、
上記アジャスターは螺合構造により上記針基の軸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする注射針。
【請求項4】
請求項3記載の注射針において、
上記針基に針基側基準位置マーカーが設けられているとともに、上記アジャスターにもアジャスター側基準位置マーカーが設けられていることを特徴とする注射針。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の注射針において、
上記アジャスターの先端側への移動量はストッパー機構により一定量に制限されていることを特徴とする注射針。
【請求項6】
請求項5記載の注射針において、
上記ストッパー機構は上記アジャスター側の鍔部が上記針基側の雄ネジ部の端に当接することにより構成されていることを特徴とする注射針。
【請求項7】
請求項6記載の注射針において、
上記アジャスターには縦割溝が設けられていて、上記針基への装着時の拡径を可能にしていることを特徴とする注射針。
【請求項8】
請求項6記載の注射針において、
上記針基の雄ネジ部の横断面形状は非円形であり、上記アジャスターの鍔部の開口部の横断面形状も対応するように非円形であり、両者の回転方向位置を合せることにより上記雄ネジ部を上記アジャスター内に通すことができるように構成されていることを特徴とする注射針。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れかに記載の注射針において、
上記針は複数本であることを特徴とする注射針。
【請求項10】
請求項9記載の注射針において、
上記針の薬液流出口は上記針基の放射方向内側に指向していることを特徴とする注射針。
【請求項11】
請求項1~請求項10の何れかに記載の注射針において、
上記針基には把持用張出部が設けられていることを特徴とする注射針。
【請求項12】
請求項1記載の注射針において、
上記アジャスターには係合用凸部が設けられていて、上記キャップには上記係合用凸部に係合する係合用開口部が設けられていることを特徴とする注射針。
【請求項13】
請求項記載の注射針において、
上記キャップは上記アジャスターを包んで上記針基に回転を規制された状態で取り付けられることを特徴とする注射針。
【請求項14】
請求項13記載の注射針において、
上記キャップが上記針基に嵌合されている状態では上記キャップによって上記アジャスターを回転させることはできず、上記キャップを所定量引いて上記針基に対する嵌合を解除したとき上記キャップによって上記アジャスターを回転させることができるように構成されていることを特徴とする注射針。
【請求項15】
請求項12記載の注射針において、
上記キャップの背面側には上記アジャスターに嵌合されアジャスターを回転させることができる構成が設けられていることを特徴とする注射針。
【請求項16】
シリンジと、
上記シリンジの先端に設置された請求項1~請求項15の何れかに記載の注射針と、
を具備したことを特徴とする注射装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、皮下又は皮内に目的物質を投与して種々の疾患の予防や治療を行うための注射針と注射装置に係り、特に、針による穿刺深さを調整できるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
注射針と注射装置を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。特許文献1に記載された経皮投薬装置は薬液注入針と注射器とから構成されている。上記薬液注入針には樹脂製の薬液注入針本体がある。この薬液注入針本体は円柱形状をなしていて、その基端側には中空部が形成されている。又、上記薬液注入針本体には3つの通孔が形成されていて、それら通孔には針がそれぞれ挿入・固定されている。
【0003】
一方、上記注射器は注射器本体とプランジャーとから構成されている。上記注射器本体の先端側を上記薬液注入針本体の中空部内に挿入することにより、上記薬液注入針が上記注射器に取り付けられる。
【0004】
そして、上記プランジャーを押圧して注射器本体内から薬液を吐出させると、上記薬液は上記薬液注入針本体の中空部から上記針内に入り、上記針の先端から皮下又は皮内に注入される。
又、使用前には上記薬液注入針は針ホルダーによってカバーされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5890430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成によると次のような問題があった。
針の皮下又は皮内への穿刺深さは様々であり一定ではない。一方、特許文献1に記載された経皮投薬装置の場合は、薬液注入針本体に固定されている針の突出長さ、すなわち、薬液注入針本体から突出している針の突出長さは固定されており、当然のことながら穿刺深さも固定される。その為、様々な穿刺深さに対応するためには、薬液注入針本体からの針の突出長さが異なる複数種類の薬液注入針を用意しなければならないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、針による穿刺深さを調整できる注射針と注射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1による注射針は、針と、上記を先端側に突出させた状態で保持する針基と、上記針基の外周側に上記針基の軸方向に沿って移動可能に設置されたアジャスターと、を具備し、上記アジャスターの軸方向位置を調整することにより上記針の突出長さを調整するようにし、上記アジャスターの外周側には上記針を覆うようにキャップが被冠され、上記キャップを上記アジャスターに嵌合させてキャップを回転させることにより上記アジャスターを回転させることができるように構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項2による注射針は、請求項1記載の注射針において、上記針の先端を上記アジャスター内に格納できるようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3による注射針は、請求項1又は請求項2記載の注射針において、上記アジャスターは螺合構造により上記針基の軸方向に移動可能に構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項4による注射針は、請求項3記載の注射針において、上記針基に針基側基準位置マーカーが設けられているとともに、上記アジャスターにもアジャスター側基準位置マーカーが設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項5による注射針は、請求項3又は請求項4記載の注射針において、上記アジャスターの先端側への移動量はストッパー機構により一定量に制限されていることを特徴とするものである。
又、請求項6による注射針は、請求項5記載の注射針において、上記ストッパー機構は上記アジャスター側の鍔部が上記針基側の雄ネジ部の端に当接することにより構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項7による注射針は、請求項6記載の注射針において、上記アジャスターには縦割溝が設けられていて、上記針基への装着時の拡径を可能にしていることを特徴とするものである。
又、請求項8による注射針は、請求項6記載の注射針において、上記針基の雄ネジ部の横断面形状は非円形であり、上記アジャスターの鍔部の開口部の横断面形状も対応するように非円形であり、両者の回転方向位置を合せることにより上記雄ネジ部を上記アジャスター内に通すことができるように構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項9による注射針は、請求項1~請求項8の何れかに記載の注射針において、上記針は複数本であることを特徴とするものである。
又、請求項10による注射針は、請求項9記載の注射針において、上記針の薬液流出口は上記針基の放射方向内側に指向していることを特徴とするものである。
又、請求項11による注射針は、請求項1~請求項10の何れかに記載の注射針において、上記針基には把持用張出部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項12による注射針は、請求項1記載の注射針において、上記アジャスターには係合用凸部が設けられていて、上記キャップには上記係合用凸部に係合する係合用開口部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項13による注射針は、請求項記載の注射針において、上記キャップは上記アジャスターを包んで上記針基に回転を規制された状態で取り付けられることを特徴とするものである。
又、請求項14による注射針は、請求項13記載の注射針において、上記キャップが上記針基に嵌合されている状態では上記キャップによって上記アジャスターを回転させることはできず、上記キャップを所定量引いて上記針基に対する嵌合を解除したとき上記キャップによって上記アジャスターを回転させることができるように構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項15による注射針は、請求項12記載の注射針において、上記キャップの背面側には上記アジャスターに嵌合されアジャスターを回転させることができる構成が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項16による注射装置は、シリンジと、上記シリンジの先端に設置された請求項1~請求項15の何れかに記載の注射針と、を具備したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1による注射針によると、針と、上記針を先端側に突出させた状態で保持する針基と、上記針基の外周側に上記針基の軸方向に沿って移動可能に設置されたアジャスターと、を具備し、上記アジャスターの軸方向位置を調整することにより上記針の突出長さを調整するようにしたので、上記針による穿刺深さを調整することができ、従来のように突出長さが異なる複数種類の注射針を用意する必要がなくなった。
又、請求項2による注射針によると、請求項1記載の注射針において、上記針の先端を上記アジャスター内に格納できるようにしたので、例えば、注射後にキャップを取り付けるまでもなく、例えば、医師や看護師といった使用者の二度穿刺(穿刺後の誤穿刺)による針刺し事故を防止することができる。
又、請求項3による注射針によると、請求項1又は請求項2記載の注射針において、上記アジャスターは螺合構造により上記針基の軸方向に移動可能に構成されているので、上記針による穿刺深さを簡単な操作により調整できる。
又、請求項4による注射針によると、請求項3記載の注射針において、上記針基に針基側基準位置マーカーが設けられているとともに、上記アジャスターにもアジャスター側基準位置マーカーが設けられているので、上記針基側基準位置マーカーと上記アジャスター側基準位置マーカーの回転方向の位置関係によって上記アジャスターの回転数を正確に知ることができ、それにより上記針による穿刺深さを容易に、且つ、正確に調整できる。
又、請求項5による注射針によると、請求項3又は請求項4記載の注射針において、上記アジャスターの先端側への移動量はストッパー機構により一定量に制限されているので、上記アジャスターの先端側への脱落を防止できる。
又、請求項6による注射針によると、請求項5記載の注射針において、上記ストッパー機構は上記アジャスター側の鍔部が上記針基側の雄ネジ部の端に当接することにより構成されているので、簡単な構成によりストッパー機構を構成することができる。
又、請求項7による注射針によると、請求項6記載の注射針において、上記アジャスターには縦割溝が設けられていて、上記針基への装着時の拡径を可能にしているので、ストッパー機構の一部である鍔部を設けてもアジャスターの針基への取付が可能になり容易に組み立てることができる。
又、請求項8による注射針によると、請求項6記載の注射針において、上記針基の雄ネジ部の横断面形状は非円形であり、上記アジャスターの鍔部の開口部の横断面形状も対応するように非円形であり、両者の回転方向位置を合せることにより上記雄ネジ部を上記アジャスター内に通すことができるように構成されているので、これによっても、ストッパー機構の一部である鍔部を設けてもアジャスターの針基への取付が可能になり容易に組み立てることができる。
又、請求項9による注射針によると、請求項1~請求項8の何れかに記載の注射針において、上記針は複数本であるので、より効率良く注射を行うことができる。
又、請求項10による注射針によると、請求項9記載の注射針において、上記針の薬液流出口は上記針基の放射方向内側に指向しているので、注射した薬剤が広く拡散し、且つ、皮膚の浅い部位に留まるようにすることができる。
又、請求項11による注射針によると、請求項1~請求項10の何れかに記載の注射針において、上記針基には把持用張出部が設けられているので、例えば、シリンジの先端に注射針を取り付ける際、上記把持用張出部を把持して作業することができるので、アジャスターの不用意な回転を防止することができる。
又、請求項12による注射針によると、請求項1~請求項11の何れかに記載の注射針において、上記アジャスターの外周側には上記針を覆うようにキャップが被冠されるように構成されているので、針刺し事故を防止することができる。
又、請求項13による注射針によると、請求項12記載の注射針において、上記キャップは上記アジャスターに嵌合されていてキャップを回転させることにより上記アジャスターを回転させることができるように構成されているので、キャップにより蓋をしたままの状態でアジャスターを回転させて針の突出量の調整を行うことができる。それによっても針刺し事故を防止することができる。
又、請求項14による注射針によると、請求項13記載の注射針において、上記アジャスターには係合用凸部が設けられていて、上記キャップには上記係合用凸部に係合する係合用開口部が設けられているので、係合用開口部を係合用凸部に係合させることにより、キャップにより蓋をしたままの状態でアジャスターを回転させて針の突出量の調整を行うことができる。それによっても針刺し事故を防止することができる。
又、請求項15による注射針によると、請求項12記載の注射針において、上記キャップは上記アジャスターを包んで上記針基に回転を規制された状態で嵌合されているので、例えば、シリンジの先端に注射針を取り付ける際、上記キャップを把持して作業することができ、その際、アジャスターを不用意に回転させるようなこともない。
又、請求項16による注射針によると、請求項15記載の注射針において、上記キャップが上記針基に嵌合されている状態では上記キャップによって上記アジャスターを回転させることはできず、上記キャップを所定量引いて上記針基に対する嵌合を解除したとき上記キャップによって上記アジャスターを回転させることができるように構成されているので、キャップを所定量引くだけで、キャップ毎アジャスターを回転させて針の突出量の調整を行うことができる。それによっても針刺し事故を防止することができる。
又、請求項17による注射針によると、請求項15記載の注射針において、上記キャップの背面側には上記アジャスターに嵌合されアジャスターを回転させることができる構成が設けられているので、その構成を使用してキャップをしたままの状態でアジャスターを回転させて針の突出量の調整を行うことができる。
又、請求項18による注射装置によると、シリンジと、上記シリンジの先端に設置された請求項1~請求項17の何れかに記載の注射針と、を具備した構成になっているので、上記針による穿刺深さを調整できる注射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、注射装置の平面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、注射針を先端側から視た斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、注射針を基端側から視た斜視図である。
図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図2のIV-IV断面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、注射針の針と針基を先端側から視た斜視図である。
図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、注射針の針と針基を基端側から視た斜視図である。
図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、注射針のアジャスターを先端側から視た斜視図である。
図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、注射針のアジャスターを基端側から視た斜視図である。
図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、アジャスターを前進させて針の突出長さを短くした状態の注射針の縦断面図である。
図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、アジャスターをさらに前進させて針をアジャスター内に格納した状態の注射針の縦断面図である。
図11】本発明の第1の実施の形態を示す図で、先端側にキャップを取り付けて針を覆った状態の注射針を示す斜視図である。
図12】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図11のXII-XII断面図である。
図13】本発明の第2の実施の形態を示す図で、アジャスターを基端まで後退させた状態の注射針の縦断面図である。
図14】本発明の第2の実施の形態を示す図で、アジャスターを先端まで前進させた状態の注射針の縦断面図である。
図15】本発明の第2の実施の形態を示す図で、注射針を先端側から視た斜視図である。
図16】本発明の第3の実施の形態を示す図で、注射装置の平面図である。
図17】本発明の第3の実施の形態を示す図で、アジャスターを基端まで後退させた状態の注射針を先端側から視た斜視図である。
図18】本発明の第3の実施の形態を示す図で、アジャスターを基端まで後退させた状態の注射針を基端側から視た斜視図である。
図19】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図17のXIX-XIX断面図である。
図20】本発明の第3の実施の形態を示す図で、アジャスターを先端まで前進させた状態の注射針を先端側から視た斜視図である。
図21】本発明の第3の実施の形態を示す図で、アジャスターを先端まで前進させた状態の注射針を基端端側から視た斜視図である。
図22】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図20のXXII-XXII断面図である。
図23】本発明の第3の実施の形態を示す図で、注射針のアジャスターを先端側から視た斜視図である。
図24】本発明の第3の実施の形態を示す図で、注射針のアジャスターを基端側から視た斜視図である。
図25】本発明の第3の実施の形態を示す図で、注射針の針基を先端側から視た斜視図である。
図26】本発明の第3の実施の形態を示す図で、注射針の針基を基端側から視た斜視図である。
図27】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図27(a)はキャップを先端側から視た斜視図、図27(b)はキャップを基端側から視た斜視図、図27(c)はキャップの縦断面図である。
図28】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図28(a)はキャップ付の注射針を先端側から視た斜視図、図28(b)はキャップ付の注射針を基端側から視た斜視図、図28(c)はキャップ付の注射針の縦断面図である。
図29】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図29(a)はキャップの斜視図、図29(b)はキャップの針基側嵌合部を針基に嵌合させた状態を示す斜視図、図29(c)はキャップを逆向きにしてアジャスター側嵌合部をアジャスターに嵌合させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1乃至図12を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。この第1の実施の形態による注射装置1は、図1に示すように、シリンジ3とこのシリンジ3の先端に着脱可能に取り付けられた注射針5とから構成されている。
【0012】
上記シリンジ3は、先端側(図1中左側)と基端側(図1中右側)に開口された中空形状の注射筒7とこの注射筒7内に基端側(図1中右側)から挿入されたプランジャー9とから構成されている。上記注射筒7の先端側(図1中左側)は縮径されていて、注射針接続部11となっている。上記プランジャー9は上記注射筒7内を前後方向(図1中左右方向)に移動可能に設置されている。上記注射筒7内には図示しない薬液が充填され、上記プランジャー9を先端側(図1中左側)に移動させることにより上記薬液を上記注射筒7の先端から吐出させる。
【0013】
上記注射針5は、図1乃至図4に示すように、針基21とこの針基21の先端側(図4中左側)に突出した状態で取り付けられた4本の針23、23、23、23とアジャスター25とから構成されている。
【0014】
上記針基21の基端側には、図4に示すように、シリンジ接続用凹部27が形成されている。このシリンジ接続用凹部27に上記シリンジ3の注射針接続部11が挿入される。又、図2図4図5に示すように、上記針基21には、上記シリンジ接続用凹部27内と先端側(図4中左側)に開口された4個の針固定用貫通孔29、29、29、29が形成されている。上記針23、23、23、23は、これら針固定用貫通孔29、29、29、29内に貫通・配置され、上記針固定用貫通孔29、29、29、29内に注入された接着剤31、31、31、31によって固定されている。又、上記針23、23、23、23の薬液流出口23aは斜めにカットされていて上記針基21の放射方向内側に指向している。
【0015】
又、図4図5図6に示すように、上記針基21の先端側(図4中左側)には雄ネジ部33が形成されている。又、図5図6に示すように、上記雄ネジ部33の図5中上下端側は成形上の理由から切り欠かれている。図中切欠部を符号34、34で示す。又、図4図5図6に示すように、上記針基21の基端部(図4中右端部)には、凸部35、35が180°対向する位置にそれぞれ突出・形成されている。又、上記針基21の軸方向(図4中左右方向)中央よりやや後方(図4中右側)には、基端側ストッパー37、37が180°対向する位置にそれぞれ突出・形成されている。
【0016】
上記アジャスター25は、図4図7図8に示すように、筒状の部材であり、内周面には上記針基21の雄ネジ部33に螺合する雌ネジ部39が形成されている。上記アジャスター25は、上記雌ネジ部39と上記針基21の雄ネジ部33との螺合構造により、上記針基21に軸方向に沿って移動可能に取り付けられている。
【0017】
上記アジャスター25を回転操作して上記針基21の軸方向(図4中左右方向)に沿って移動させることにより、図4図9図10に示すように、上記針23、23、23、23の突出長さ(図4中符号Lで示す)ひいては上記針23、23、23、23による穿刺深さを調整する。上記アジャスター25が図4中右端に位置しその基端が基端側ストッパー37、37に当接した状態では、上記針23、23、23、23の突出長さ(L)は最大(Lmax)になっている。
因みに、本実施の形態の場合には図4に示す状態における針23の最大突出長さ(Lmax)を、例えば、4mmに設定している。
【0018】
その状態から上記アジャスター25を図4中左端を真正面に視て反時計方向に回転させて図4中左方向に移動させていくことにより、針23、23、23、23が徐々に上記アジャスター25内に格納されていき、針23、23、23、23の突出長さ(L)は徐々に短くなっていく。
尚、実際に使用する際は、有効に穿刺を行うことができるように、上記針23、23、23、23の突出長さ(L)を、例えば、最低でも1mm程度とする。
又、穿刺後は、図10に示すように、上記針23、23、23、23が上記アジャスター25の内側に完全に格納されるまで上記アジャスター25を先端側に移動させる。それによって、医師や看護師といった使用者の二度穿刺(穿刺後の誤穿刺)による針刺し事故を防止する。
因みに、図10において、針23、23、23、23の先端は上記アジャスター25の先端から、例えば、少なくとも1~3mm程度内側に引っ込んだ状態にある。
【0019】
又、図11に示すように、上記針基21には針基側基準位置マーカー40aが突出・形成されており、上記アジャスター25にもアジャスター側基準位置マーカー40bが突出・形成されている。上記アジャスター25が最も基端側にあるとき(図4に示す状態)に上記針基側基準位置マーカー40aと上記アジャスター側基準位置マーカー40bの回転方向の位置が一致するように設定されている。
【0020】
例えば、上記アジャスター25を上記初期状態から先端側に移動させていく場合、上記針基側基準位置マーカー40aと上記アジャスター側基準位置マーカー40bにより、上記アジャスター25が何回転したかを視認することができる。その回転数と上記雄ネジ部33と雌ネジ部39とからなる螺合構造のリードから上記針23、23、23、23の突出量を任意の値に設定することができる。すなわち、図4に示す初期状態における針23、23、23、23の最大突出長さ(Lmax)はわかっており(この実施の形態の場合には4mm)、一方、上記アジャスター25の回転数からアジャスター25の先端側への移動量もわかる。よって、初期最大突出長さ(Lmax)からその移動量(図9中符号L´で示す)を差し引けば、上記針23、23、23、23の突出長さ(L)ひいては穿刺深さを設定することができる。
【0021】
又、図11図12に示すように、使用前には、キャップ41が上記注射針5のアジャスター25の先端側(図12中左側)に着脱可能に被冠されている。上記キャップ41には係合用開口部43、43が180°対向する位置に形成されているとともに、上記アジャスター25の外周側には係合用凸部45、45が180°対向する位置に突出・形成されている。上記キャップ41の係合用開口部43、43を上記アジャスター25の係合用凸部45、45に係合させることにより上記キャップ41を上記アジャスター25に固定する。
【0022】
尚、図12に示すように、上記針23、23、23、23が上記アジャスター25の先端側(図12中左側)に突出された初期状態であっても、上記針23、23、23、23の先端が上記キャップ41の内面に当接することはない。
【0023】
次に、この第1の実施の形態による作用について説明する。
まず、使用前には、上記注射針5は、図11図12に示すような状態にある。
次に、上記シリンジ3の注射筒7内に薬液を充填する。
次に、上記注射針5を上記シリンジ3の注射筒7に取り付ける。
次に、上記キャップ41を取り外し、図1図4に示すような使用可能な状態とする。この状態では針23、23、23、23はその突出長さ(L)が最大突出長さ(Lmax)の状態にある。
【0024】
次に、アジャスター25を図1図4中左端を真正面から視て反時計方向に回転させ上記アジャスター25を図1図4中左側に適当量移動させ、針23、23、23、23の突出長さ(L)ひいては上記針23、23、23、23による穿刺深さを任意に調整する。
【0025】
次に、上記注射装置1の針23、23、23、23側を図示しない穿刺対象物としての皮膚に向け、上記針23、23、23、23を上記皮膚に対して垂直穿刺させる。このとき、上記アジャスター25の先端面(図1図4中左側の面)が皮膚に当接し所定の穿刺深さでの穿刺が実行される。
次に、上記シリンジ3のプランジャー9を先端側(図1図4中左側)に押圧・付勢し、上記薬液を注入する。
【0026】
注射が終わったら、上記針23、23、23、23を上記皮膚から離間させる。その後、上記アジャスター25を図1図4中左端を真正面から視て反時計方向に回転させて先端側(図1図4中左側)に移動させ、図10に示すように、上記針23、23、23、23の先端側を上記アジャスター25内に格納する。これにより二度穿刺(穿刺後の誤穿刺)を防止する。さらに、先端にキャップ41を被冠して蓋をし、そのまま注射装置1全体を廃棄する、或いは、注射針5をシリンジ3から外して注射針5のみを廃棄する。
【0027】
次に、この第1の実施の形態による効果について説明する。
まず、針23、23、23、23の突出長さ(L)ひいては穿刺深さを任意に調整することができる。これは、針基21の外周側にアジャスター25を移動可能に取り付けてその軸方向位置を任意に調整可能に構成したからである。
又、針23、23、23、23の突出長さ(L)ひいては穿刺深さを任意に調整可能としたことにより、突出長さが異なる複数種類の注射針5を用意する必要もなく、コストの低減はもとより注射針5の管理の容易化を図ることができる。
又、図10に示すように、穿刺後には、上記針23、23、23、23の先端を上記アジャスター25内に格納することができ、それによって、キャップ41を取り付けるまでもなく、医師や看護師といった使用者の二度穿刺(穿刺後の誤穿刺)による針刺し事故を防止することができる。
又、キャップ41を取り付けることにより安全性をさらに高めることができる。
又、使用前には上記アジャスター25の先端側にキャップ41が被冠されているため、例えば、使用前における使用者の怪我等を防止することができる。
又、上記アジャスター25は針基21の外周側に螺合構造により移動可能に取り付けられているので、アジャスター25を容易に移動させることができ、それによって、上記針23、23、23、23の突出長さ(L)ひいては穿刺深さの調整作業の容易化を図ることができる。
又、上記針基21には針基側基準位置マーカー40aが形成されているとともに、上記アジャスター25にもアジャスター側基準位置マーカー40bが形成されているので、上記アジャスター25の回転数を視認することができ、それによって、上記針23、23、23、23の突出長さ(L)ひいては穿刺深さを正確に調整することができる。
又、上記針23、23、23、23の薬液流出口23aは上記針基21の放射方向内側に指向しているため、注射した薬剤が広く拡散し、且つ、皮膚の浅い部位に留まるようにすることができる。
【0028】
次に、図13乃至図15を参照しながら、本発明の第2の実施の形態について説明する。前記第1の実施の形態の場合には、アジャスター25の先端側への移動量についてこれを特に制限する構成にはなっていなかったが、この第2の実施の形態の場合には、これを一定量に制限するように構成している。以下、説明する。
【0029】
まず、図13に示すように、アジャスター25の基端側(図13中右端側)にアジャスター側ストッパー51が設けられている。このアジャスター側ストッパー51は環状であって鍔状に設けられている。一方、針基21に設けられている雄ねじ部33の基端部(図13中右端側)が針基側ストッパー53として機能する。そして、上記アジャスター25を先端側(図13中左側)に移動させていき、図14に示すように、上記アジャスター側ストッパー51が針基側ストッパー53に当接することによりアジャスター25の先端側(図14中左側)へのそれ以上の移動が制限される。それによって、針23、23、23、23の上記アジャスター25内への確実な格納と、アジャスター25の針基21からの脱落防止を図る。
【0030】
又、上記アジャスター25にアジャスター側ストッパー51を設けたことにより、アジャスター25の針基21への装着が懸念される。そこで、図15に示すように、上記アジャスター25に縦割溝55を設けている。上記アジャスター25を上記針基21に装着する場合には、上記縦割溝55の範囲内でアジャスター25を若干拡径させて行う。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明を省略する。
【0031】
上記構成によると、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができる。
又、上記アジャスター25の先端側への移動量を一定量に制限しているので、上記アジャスター25の針基21からの不用意な脱落を防止することかできる。
又、使用者は、上記アジャスター25を上記アジャスター側ストッパー51が針基側ストッパー53に当接するまで前進させることにより、針23、23、23、23が二度穿刺(穿刺後の誤穿刺)を防止できる位置まで上記アジャスター25内に格納されたことを確認することができる。
【0032】
次に、図16乃至図28を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。この第3の実施の形態による注射針105は、図16乃至図22に示すように、針基121とこの針基121の先端側(図4中左側)に突出した状態で取り付けられた4本の針123、123、123、123とアジャスター125とから構成されている。
【0033】
上記針基121の基端側には、図19に示すように、シリンジ接続用凹部127が形成されている。このシリンジ接続用凹部127に上記シリンジ3の注射針接続部11が挿入される。又、図17図19に示すように、上記針基121には、上記シリンジ接続用凹部27内と先端側(図25中左側)に開口された4個の針固定用貫通孔129、129、129、129が形成されている。
【0034】
上記針123、123、123、123は上記針固定用貫通孔129、129、129、129内に貫通・配置され、上記針固定用貫通孔129、129、129、129内に注入された接着剤131、131、131、131によって固定されている。又、図17図19に示すように、上記針123、123、123、123の薬液流出口123aは斜めにカットされていて上記針基121の放射方向内側に指向している。
【0035】
又、図19に示すように、上記針基121の先端側(図19中左側)には雄ネジ部133が形成されている。又、図25図26に示すように、上記雄ネジ部133の両側部は切り欠かれていて切欠部134、134となっている。又、図19図20図21に示すように、上記針基121の基端(図4中右端)には、凸部135、135が180°対向する位置にそれぞれ突出・形成されている。又、上記針基121の軸方向(図19中左右方向)中央よりやや後方(図19中右側)には把持用張出部137が略菱形で鍔状に突出・形成されている。この把持用張出部137は上記アジャスター125の基端側への後退を一定量に規制するストッパーとしても機能する。又、上記針基121には、図20図21図25図26に示すように、成形時のひけ(収縮による窪み)防止を目的として4個の凹部139、139、139、139が直交する方向にそれぞれ設けられている。
【0036】
上記アジャスター125は、図17図18図19に示すように、鍔部141とこの鍔部141に固着された円筒部143とから構成されている。上記鍔部141の円筒面には開口部145、145が180°対向する位置に形成されている。又、上記円筒部143の上記鍔部141側端部には爪147、147が180°対向する位置に突設されている。上記円筒部143を上記鍔部141の内径部内に挿し込むことにより上記爪147、147が上記開口部145、145に係合し、それによって、上記円筒部143が鍔部141に一体化される。
【0037】
又、図24に示すように、鍔部141の開口部142は円形の両側部を欠いた形状になっていて平坦面144、144となっている。これは上記針基121の雄ネジ部133の形状に対応する。アジャスター125内に針基121の雄ネジ部133を通す場合には、針基121の雄ネジ部133の切欠部134、134の位置とアジャスター125の鍔部141の開口部142の平坦面144、144の位置を一致させる。又、取り付けた後、上記アジャスター125を回転させて先端側に移動させる際、上記鍔部141が上記雄ネジ部133の端に当接することによりストッパー機能が発揮されそれ以上の移動は規制される。針基121の雄ネジ部133の切欠部134、134の位置とアジャスター125の鍔部141の開口部142の平坦面144、144の位置が一致すれば抜くことはできるが回転させながら移動させることはできない。
【0038】
上記円筒部143の内周面には上記針基121の雄ネジ部133に螺合する雌ネジ部149が形成されている。上記アジャスター125は上記雌ネジ部149と上記針基121の雄ネジ部133との螺合構造により、上記針基121の軸方向に沿って移動可能に取り付けられている。
【0039】
図16図18図20図21に示すように、上記円筒部143の外周面であって直交する4箇所にはリブ状のガイド用凸部151、151、151、151が突設されている。又、上記ガイド用凸部151、151、151、151の上記鍔部141側の端部には係合用凸部153、153、153、153が突設されている。
【0040】
一方、図27図28に示すように、キャップ155がありそのキャップ155の内周面には上記ガイド用凸部151、151、151、151に回転方向から係合するガイド用凸部157、157、157、157が設けられている。すなわち、上記キャップ155を上記アジャスター125に被冠すると、アジャスター125側のガイド用凸部151、151、151、151の間にキャップ155側のガイド用凸部157、157、157、157が位置することになる。又、上記ガイド用凸部157、157、157、157は縦長V字状に設けられている。それによってガイド機能が効果的に発揮され上記キャップ155の上記アジャスター125への被冠が円滑になされる。又、上記ガイド用凸部157、157、157、157の間には係合用開口部159、159、159、159が設けられている。これら係合用開口部159、159、159、159が上記係合用凸部153、153、153、153に係合する。
キャップ155を注射針105に被冠した状態を図28に示す。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同じであり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明を省略する。
【0041】
よって、前記第1の実施の形態の場合と略同様の効果を奏することができる。
又、把持用張出部137が設けられているので、例えば、シリンジ3の先端に注射器5を取り付ける際、左手で上記把持用張出部137を把持するとともに右手でシリンジ3を把持し、注射針接続部11を注射針接続用凹部127内に挿し込んでいくことにより取り付けることができ、キャップ155やアジャスター125を把持する必要がないので、アジャスター125を不用意に回転させてきつくしてしまうこともない。
【0042】
次に、図29を参照して本発明の第4の実施の形態を説明する。前記第1~第3の実施の形態の場合には、キャップを注射針のアジャスターに回転を規制した状態で嵌合させる構成としたが、この第4の実施の形態の場合には、針基側に回転を規制させた状態で嵌合させるように構成している。以下、説明する。
【0043】
図29(a)に示すように、キャップ201はキャップ本体203を備えていて、このキャップ本体203の一端側には針基側嵌合部205が設けられているとともに、他端側にはアジャスター側嵌合部207が設けられている。上記針基側嵌合部205には係合部209、209が180°対向する位置に設けられている。これら係合部209、209が、図29(b)に示すように、針基121の把持用張出部137の係合部211、211に係合する。
【0044】
上記針基側嵌合部には直交する4箇所に係合用開口部213、213、213、213が形成されていて、これら係合用開口部213、213、213、213はアジャスター125に設けられた4個の係合用凸部(第3の実施の形態における係合用凸部153と同様の係合用凸部)に係合する。
【0045】
上記アジャスター側嵌合部207にも直交する4箇所に係合用開口部215、215、215、215が形成されていて、これら係合用開口部215、215、215、215もアジャスター125に設けられた上記4個の係合用凸部に係合する。
尚、その他の構成は前記第3の実施の形態と同じであり、図中同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0046】
上記構成によると、常時は図29(b)に示すような状態にあり、キャップ201の針基側嵌合部205が注射針のアジャスター125を包んで針基121の一部に嵌合されていて、その係合部209、209が針基121の把持用張出部137の係合部211、211に係合している。この状態でシリンジの先端に注射針105を取り付ける場合には、左手でキャップ201を把持し右手でシリンジを把持し、シリンジの注射針取付部を針基121のシリンジ取付用凹部127内に挿し込む。その際、キャップ201が把持用張出部127ひいては針基121に固定されているので不用意に回転することはなく、よって、アジャスター125が不用意に回転することもない。
【0047】
次に、針の突出長さを調整する場合について説明する。この場合には、図29(c)に示すように、キャップ201のアジャスター側嵌合部207をアジャスター125に嵌合させる。その状態で、キャップ201を把持してアジャスター125を回転させ針の突出長さを調整する。それによって、針の突出長さ調整時における針刺し事故を防止することができる。
【0048】
尚、本発明は前記第1~第4の実施の形態に限定されない。
まず、前記第1~第4の実施の形態の場合には、4本針の構成を例に挙げて説明したが、1本、2本、3本、5本以上の場合も考えられる。
又、前記第1~第4の実施の形態の場合には、アジャスターを螺合構造により移動可能に構成したが、それに限定されるものではなく、例えば、適度な嵌め合い構造により移動可能にしても良い。
又、前記第2の実施の形態において、縦割溝をアジャスター側基準位置マーカーとして用いることも考えられる。
又、前記第2の実施の形態の場合には、ストッパー機構によりアジャスターによる針の確実な格納とアジャスターの脱落防止を図るようにしたが、針の突出長さを所定範囲に制限する目的で使用する構成も考えられる。例えば、使用前の初期状態において、針の突出長さを4mmに設定しておき、アジャスターの前進がストッパー機構により制限された時の針の突出長さを1mmとする、といった構成である。
又、前記第1~第4の実施の形態の場合には、アジャスターを先端側を真正面から視て反時計方向に回転させることにより針の突出長さを短くするように構成したが、その逆向きでも良い。
又、前記第1~第4の実施の形態の場合には、アジャスターを中空円筒形状としたがそれに限定されるものではなく、例えば、四角形、その他の形状でも良い。例えば、四角形にした場合であって、1回転で1mm変化する場合であれば、90°回転させることにより1/4mmだけ突出長さを変えることができる。
又、前記第1~第4の実施の形態の場合には、キャップを外した状態でアジャスターを回転させて針の突出長さを調整するようにしたが、キャップを被冠させたままの状態で調整するようにしても良い。それによって針刺し事故の発生を防止することができる。
又、アジャスター或いは針基に成形或いは印刷により針の突出長さの目安となる目盛を設けても良い。
又、前記第1~第4の実施の形態においては、針の薬液流出口を放射方向内向きとしたがそれに限定されるものではない。
又、前記第4の実施の形態においては、針基側嵌合部とアジャスター側嵌合部を反対向きに設けたが、針基側嵌合部のみを設けた構成も考えられる。その際、キャップを所定量先端側に引くことにより針基側嵌合部の針基側への嵌合を解除して、アジャスターに嵌合するように構成することも考えられ、その状態でキャップ毎アジャスターを回転させて針の突出長さを調整しても良い。
例えば、第4の実施の形態の場合には、図29(b)に示す状態において、係合用開口部213はアジャスター側の係合用凸部に係合しているが、上記係合用開口部213の軸方向長さを長くしておき、キャップを所定量先端側に引いて針基側嵌合部の針基側への嵌合を解除しても、係合用開口部213のアジャスター側の係合用凸部に対する係合状態を維持できる構成にしておけば、その状態でキャップ毎アジャスターを回転させて針の突出長さを調整することができる。
又、別の例として、第4の実施の形態を示す図29(b)に示す状態において、係合用開口部213がアジャスター側の係合用凸部を通り過ぎて係合しない構成とし、キャップを所定量先端側に引いて針基側嵌合部の針基側への嵌合を解除したとき、係合用開口部213がアジャスター側の係合用凸部に係合するような構成にしておくことも考えられる。この場合にも、その状態でキャップ毎アジャスターを回転させて針の突出長さを調整することができる。
その他、図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、皮下又は皮内に目的物質を投与して種々の疾患の予防や治療を行うための注射針と注射装置に係り、特に、針による穿刺深さを調整できるように工夫したものに関し、例えば、美容皮膚科の治療に用いる注射針と注射装置に好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 注射装置
3 シリンジ
5 注射針
21 針基
23 針
23a 薬液流出孔
25 アジャスター
33 雄ネジ部
39 雌ネジ部
40a 針基側基準位置マーカー
49b アジャスター側基準位置マーカー
41 キャップ
51 アジャスター側ストッパー(ストッパー機構の一部)
53 針基側ストッパー(ストッパー機構の一部)
55 縦割溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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