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特許7282758高ジルコニア含有量を有する溶融ブロックを製造する為の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】高ジルコニア含有量を有する溶融ブロックを製造する為の方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/484 20060101AFI20230522BHJP
   C03B 5/43 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
C04B35/484
C03B5/43
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020520077
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018077399
(87)【国際公開番号】W WO2019072799
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】1759529
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】カボディ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ベスパ,ピエリック
(72)【発明者】
【氏名】バッツ,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】チッティ,オリヴィエ
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/131948(WO,A1)
【文献】特公昭39-024348(JP,B1)
【文献】特開平07-053258(JP,A)
【文献】特表2005-526683(JP,A)
【文献】仏国特許発明第1208577(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
C03B 5/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物に基づく重量百分率で、80%超のジルコニアを含む耐火ブロックを製造する為の方法であって、
a)還元条件下で投入物に基づく重量百分率で50%超のジルコンを含む投入物を溶融させて、該ジルコンを還元し、そして溶融物質を得ること、
b)該溶融物質に酸化条件を適用すること、
c)該溶融物質を鋳造すること、
d)該溶融物質が10kg超の重量を示すように構成されるブロックの形態で少なくとも部分的に固化するまで冷却すること
の逐次工程を含み、
前記投入物は、一方ではアルミナの粒子、並びに他方ではナトリウム源の粒子及び/又はホウ素源の粒子を含むこと、
該方法のパラメーターは、工程d)で得られる該ブロックが2.5%超のSiO を示すようにし、前記ジルコニアはZrO の結晶相を表す、前記方法。
【請求項2】
工程a)が、該溶融物質中の該シリカ含有量が15%未満になるまで継続され、且つ工程b)が、該溶融物質中の炭素含有量が500ppm未満になるまで継続される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該投入物が、該投入物に基づく重量百分率で、80%超のジルコンを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該投入物が、該投入物に基づく重量百分率で、還元剤量が2.0%超及び10.0%未満である組成を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記還元剤の該量が、4.0%超及び8.0%未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該投入物が、該投入物に基づく重量百分率で、0.2%超及び3.0%未満の量のアルミナを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
アルミナの該量が、0.5%超及び2.5%未満である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アルミナの該量が、1.5%未満である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
該投入物が、該投入物に基づく重量百分率で、0.5%超及び5.0%未満の量のナトリウム源含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ナトリウム源の該量が、1.0%超及び4.5%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該投入物が、1.0%超及び10.0%未満の合計量の、該ジルコニアの安定化剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該投入物が、4.0%超の合計量の、該ジルコニアの安定化剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程d)で得られる該ブロックが、合計100%に対する下記化学組成:
ZrO:82.0%超及び97.0%未満、
SiO:0.5%超及び15.0%未満、
Al:0.2%超、
NaO:0.1%超、
ZrO、SiO、Al及びNaO以外の酸化物種:10.0%未満
を示すように、該投入物が構成される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程d)で得られる該ブロックが、合計100%に対する化学組成:
ZrO:86.0%超、
SiO:2.5%超、
Al:1.0~3.0%、
NaO:0.5%未満、
ZrO、SiO、Al及びNaO以外の酸化物種:5.0%未満
を示すように、該投入物が構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
周囲温度及び重量百分率で、上記ブロックのジルコニアの80%超が単斜晶である、又はジルコニアの25%超が正方晶であるように構成される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高ジルコニア含有量を有する溶融耐火ブロックを製造する為の方法、この方法によって得られるブロック、及びそのようなブロックを含むガラス溶融炉に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火ブロックの中には、ガラス溶融炉の構築の為に周知の優れた溶融ブロック、及び焼結ブロックがある。
【0003】
焼結ブロックとは異なり、溶融ブロックは、結晶化粒を結合する粒間ガラス質相を最も頻繁に含む。その結果、焼結ブロックによって、及び溶融ブロックによって提起される問題、並びにその解決の為に適合された技術的解決策は一般的に異なる。その結果、演繹的に、焼結ブロックの製造の為に開発された組成物は、溶融ブロックの製造にそのまま用いることはできず、逆もまた同様である。
【0004】
しばしば「電気溶融ブロック」と云われる溶融ブロックは、電気アーク炉における適切な原材料の混合物の溶融を通して、又は任意の他の好適な技術によって、得られる。次に、該溶融物質は、慣用的に、型で鋳造され、次に固化される。一般的に、得られた生成物は、次に、制御された冷却のサイクルを受けて、破壊することなく周囲温度に達する。この操作は、当業者によって「アニーリング」と呼ばれている。
【0005】
溶融ブロックの中でも、80重量%超、又はさらには85重量%超、のジルコニアを一般的に含む、非常に高いジルコニア含有量(VHZC:very high zirconia content)を有するものが、非常に高い耐食性のその品質及び生成されたガラスを着色せず、且つ生成されたガラスにおいて欠陥を生じないその能力によって周知である。
【0006】
仏国特許出願第1191665号明細書は、ジルコニア、アルミナ及びシリカを含有する耐火物の製造の為にジルコンを用いる方法を記載する。この方法は、強い還元条件下で、高残留炭素含有量を示す生成物をもたらす。それらから、滲出及び/又は起泡の危険性を生じ、ガラスにおいて欠陥を生じる。さらに、実質的に全ての相が結晶性である為に、これらの生成物は、特に、大きな寸法のブロックの場合、熱的変動に十分適応することが可能でない。該生成物はまた、大きな寸法のブロックの形態で用いるのに不適な多孔度も示す。結果的に、これらの生成物は、他の耐火物の製造の為の原材料の供給源(粒状形態の)としてのみ用いられる。
【0007】
欧州特許出願第403387号明細書は、重量百分率で、4%~5%のシリカSiO、およそ1%のアルミナAl、0.3%の酸化ナトリウム及び0.05%未満のPを含有する、高ジルコニア含有量を有する溶融鋳造生成物を記載する。
【0008】
仏国特許出願第2701022号明細書は、重量百分率で、0.05%~1.0%のP及び0.05%~1.0%の酸化ホウ素Bを含有する、高ジルコニア含有量を有する溶融鋳造生成物を記載する。
【0009】
仏国特許出願第2723583号明細書は、重量百分率で、3%~8%のシリカSiO2、0.1%~2.0%のアルミナAl、0.05%~3.0%の酸化ホウ素B、0.05%~3%のBaO+SrO+MgO、0.05%~0.6%のNaO+KO及び0.3%未満のFe+TiOを含有する、高ジルコニア含有量を有する溶融鋳造生成物を記載する。
【0010】
非常に高いジルコニア含有量を有する溶融ブロック、例えばSEFPRO社によって製造及び販売されているER1195、は、慣用的に、酸化条件下で製造される。今日、それらは、ガラス作製炉において広く用いられている。しかしながら、その高コストは、特にガラス作製炉の上部構造の為の、それらの使用を制限しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
結果的に、現在の方法よりもコストの低く、非常に高いジルコニア含有量を有する溶融ブロックを製造する為の方法についてのニーズが存在する。
【0012】
本発明の目的は、このニーズを満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、酸化物に基づく重量百分率で、80%超、好ましくは85%超、のジルコニアを含む耐火ブロックを製造する為の方法であって、
a)還元条件下で重量百分率で50%超のジルコンを含む投入物を溶融させて、該ジルコンを還元し、そして溶融物質を得ること、
b)該溶融物質に酸化条件を適用すること、
c)該溶融物質をキャスト(鋳造)すること、
d)該溶融物質がブロックの形態で少なくとも部分的に固化するまで冷却すること、
e)任意的に、上記ブロックを加熱処理すること、特にアニーリング加熱処理すること
の逐次工程を含む、上記方法に関する。
【0014】
本発明の詳細な説明の続く記載からより詳細に観察されるように、本発明に従う方法は、有利には、製造されるブロックの全ての酸化物を含有する投入物の溶融を通して、迅速且つ低コストで、ガラス作製炉において用いることができる耐火ブロックをうることを可能にする。特に、ジルコンは、中間処理なしに他の原材料と共に、該投入物に直接導入される。
【0015】
本発明に従う方法はまた、下記の任意的な特徴の1つ以上を含みうる:
工程a)が、該溶融物質中の該シリカ含有量が15%未満になるまで継続される、
工程b)が、該溶融物質中の炭素含有量が500ppm未満になるまで継続される、
工程a)において、該投入物が、該投入物に基づく重量百分率で、70%超、好ましくは80%超、のジルコンを含む、
工程a)において、該投入物が、該投入物に基づく重量百分率で、還元剤、好ましくは炭素、の量が、2.0%超、好ましくは4.0%超、及び/又は10.0%未満、好ましくは8.0%未満、である組成を示す、
該投入物が、該投入物に基づく重量百分率で、0.2%超及び3.0%未満、好ましくは0.5%超及び/又は2.5%未満、好ましくは1.5%未満、の量のアルミナを含む、
該投入物が、該投入物に基づく重量百分率で、0.5%超及び/又は5.0%未満、好ましくは1.0%超及び4.5%未満、の量のナトリウム源、好ましくは炭酸ナトリウム、を含む、
投入物が、該投入物に基づく重量百分率で、1.0%超、好ましくは4.0%超、及び/又は10.0%未満、の合計量の、該ジルコニアの安定化剤を含む。
【0016】
本発明は、本発明に従う方法によって得られる又は得られた可能性のあるブロックにさらに関する。明瞭性の為に、そのようなブロックは、以下、「本発明に従うブロック」と呼ばれる。
【0017】
本発明に従うブロックは、好ましくは、合計100%に対する下記化学組成:
ZrO:82.0%超及び97.0%未満、
SiO:0.5%超及び15.0%未満、
Al:0.2%超、
NaO:0.1%超、
ZrO、SiO、Al及びNaO以外の酸化物種:10.0%未満、
並びに、より好ましくは、合計100%に対する下記化学組成:
ZrO:86.0%超、
SiO:2.5%超、
Al:1.0~3.0%、
NaO:0.5%未満、
ZrO、SiO、Al及びNaO以外の酸化物種:5.0%未満
を示す。
【0018】
好ましくは、周囲温度において、重量百分率で、該ブロックのジルコニアの80%超は単斜晶であり、又はジルコニアの25%超は正方晶である。
【0019】
より好ましくは、本発明に従うブロックは、10kg超の重量を示す。
【0020】
本発明はさらに、特に1000℃超の温度に上昇する領域、及びとりわけ溶融ガラスと接触することになる領域、又は溶融炉の、特に上部構造の、雰囲気と接触することになる領域、に本発明に従うブロックを含むガラス溶融炉に関する。特に、本発明は、本発明に従うブロックを含む又はこれによって構成される上部構造を含むガラス溶融炉に関する。
【0021】
定義
ブロックは、慣用的に、溶融物質が得られるまで、投入物を溶融し、次に冷却によりこの物質を固化することを用いる方法によってそれが得られた場合、「溶融」されたと言われる。
【0022】
「投入物」は、炉に導入される原材料の総量によって構成される。
【0023】
「溶融物質」は、その形状を保つ為に容器中に保持される必要がある液体塊である。それは、その中に幾らかの固体粒子を有しうるが、それらが上記塊を構造化することを可能にするには不十分な量である。
【0024】
ブロックは、その全ての寸法が10mmを超え、好ましくは50mmを超え、好ましくは100mmを超え、且つコーティングとは異なり、成形及び離型の操作を含む方法を通して得られる物体である。ブロックは、例えば、平行六面体の一般的な形状、又は代替的に、例えば、仏国特許出願第2142624号明細書又は欧州特許出願第354844号明細書に記載されている「十字」型の形状、を有しうる。
【0025】
別途言及されない限り、該投入物に関する全ての含有量は、該投入物に基づく重量百分率である。
【0026】
粒子は、その全ての寸法が、10mm以下、好ましくは5mm未満、好ましくは2mm未満、の物体である。
【0027】
構成成分で「できた」、又は構成成分「の」粒子、例えば「アルミナの」又は「アルミナでできた」粒子、は、粒子に基づく重量百分率で、80%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、好ましくは98%超、好ましくは99%超、のこの構成成分を含む該粒子である。
【0028】
明瞭性の為に、酸化物の化学式が、組成物中のこれらの酸化物の含有量を示す為に用いられる。例えば、「ZrO」、「SiO」又は「Al」は、これらの酸化物の含有量を示し、「ジルコニア」、「シリカ」及び「アルミナ」は、それぞれZrO、SiO及びAlで構成されるこれらの酸化物の結晶相を示す為に用いられる。それにも関わらず、元素Zr、Si及びAlはまた、特にジルコンの形態で、他の相、すなわちZrSiO相、に存在しうる。
【0029】
別途言及されない限り、本発明に従うブロック中の酸化物の全ての含有量は、該酸化物に基づく重量百分率である。金属元素の酸化物の重量含有量は、当該産業の通常の慣例に従い、最も安定な酸化物の形態で表されるこの元素の総含有量に関する。
【0030】
HfOは、ZrOから化学的に解離されない。しかしながら、本発明に従うと、HfOは、該投入物に意図的に添加されない。その結果、HfOは、微量の酸化ハフニムのみを示し、この酸化物は、一般的に5%未満、一般的に2%未満、の含有量で酸化ジルコニウム源中に常に天然に存在している。本発明に従うブロックにおいて、HfOの重量含有量は、好ましくは5%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満、である。明瞭性の為に、酸化ジルコニウム及び微量の酸化ハフニムの総含有量は、形而上的に「ZrO」によって、又は「ZrO+HfO」によって示されうる。その結果として、HfOは、「ZrO、SiO、Al及びNaO以外の酸化物種」内に含まれない。
【0031】
「不純物」という語によって、原材料と共に導入される不可避の構成成分、又はこれらの構成成分との反応から生じると理解される。不純物は、必要不可欠な構成成分ではなく、単に許容される。例えば、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、オキシカーバイド、炭窒化物、並びに鉄、チタン、バナジウム及びクロムの金属種の群の一部を形成する化合物は、不純物である。
【0032】
本発明の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明を読み、添付の図面を検討することでさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、実施例2のブロックの微細構造の写真である。
図2図2は、実施例2のブロックの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
方法
本発明に従う方法に従って製造されるブロックの組成は、溶融されている投入物だけでなく、それぞれ工程a)及びb)において還元及び酸化条件が適用される条件にも依存する。所望のブロックの組成の関数としての、これらの異なるパラメーターの制御は、当業者に周知である。
【0035】
好ましくは、該方法のパラメーターは、工程d)で得られる該ブロックが、下記化学組成:
ZrO:82.0%超、好ましくは84.0%超、好ましくは86.0%超、及び/又は97.0%未満、若しくはさらには95.0%未満、若しくはさらには94.0%未満、ZrOは100%までの残分を構成する、及び/又は
SiO;0.5%超、好ましくは1.5%超、好ましくは2.5%超、好ましくは4.0%超、若しくはさらには6.0%超、8.0%超、8.5%超、及び/又は15.0%未満、若しくはさらには12.0%未満、10.0%未満、若しくはさらには8.0%未満、及び/又は
Al:0.2%超、好ましくは1.0%超、及び/又は3.0%未満、好ましくは2.0%未満、及び/又は
NaO:0.1%超、若しくはさらには0.2%超、及び/又は0.6%未満、好ましくは0.5%未満、若しくはさらには0.4%未満、及び/又は
:0.1%超、若しくはさらには0.2%超、及び/又は0.6%未満、好ましくは0.5%未満、若しくはさらには0.4%未満、及び/又は
ZrO、SiO、Al、NaO及びB以外の酸化物種:10.0%未満、好ましくは9.0%未満、より好ましくは8.0%未満、5.0%未満、若しくはさらには3.0%未満、若しくは2.0%未満、若しくは1.0%未満、若しくは0.5%未満
を示すように変性される。
【0036】
該投入物は、50重量%超のジルコンを含む。
【0037】
該ジルコンは、全体又は一部において酸化ジルコニウムZrOを提供しうる。必要であれば、場合により安定化された、ジルコニアの粒子が、該投入物に添加されうる。
【0038】
好ましくは、該投入物がまた、工程d)において得られるブロック中で所望されるジルコニアの安定化の関数として、周知の様式で変性される。特に、該投入物は、0.5%超、1.5%超、3.0%超、4.0%超、5.0%超、若しくはさらには6.0%超、及び/又は10.0%未満、9.0%未満、若しくはさらには8.0%未満、のジルコニアの安定化剤、特にCaO及び/又はY及び/又はMgO及び/又はCeO、好ましくはCaO及び/又はY、を含みうる。特に、該投入物は、0.5%超、1.5%超、2.0%超、及び/又は5.0%未満、4.0%未満、若しくはさらには3.0%未満、のYを含みうる。
【0039】
一つの実施態様に従って、該投入物は、重量百分率で、ブロックのジルコニアの80%超、好ましくは90%超、若しくはさらには99%超、又は実質的に100%、が周囲温度で単斜晶であるように変性される。
【0040】
接合部封止、起泡及び熱的変動に対するブロックの挙動の改善を可能にする他の実施態様に従うと、該投入物は、ブロックのジルコニアの75%未満、好ましくは70%未満、が単斜晶であるように変性される。好ましくは、該投入物は、重量百分率で、ブロックのジルコニアの25%超、好ましくは30%超、が、周囲温度において、好ましくは正方晶型で、安定化されるように変性される。
【0041】
好ましくは、該投入物は、酸化物Al、B、NaO、KO、Y、BaO、SrO、MgO、CaO、CeO、Fe、TiO、Ta及びNbの合計が、工程d)で得られるブロックの重量の10.0%未満、好ましくは9.0%未満、より好ましくは8.0%未満、又はさらには5.0%未満、又はさらには3.0%未満、を表すように変性される。
【0042】
好ましくは、該投入物は、酸化物Al、B、Y及びCaOの各々が、工程d)で得られるブロックの重量の3.0%未満、好ましくは2.0%未満、より好ましくは1.5%未満、を表すように変性される。
【0043】
好ましくは、該投入物は、酸化物NaO、KO、BaO、SrO、MgO、CeO、Fe、TiO、Ta及びNbの各々が、工程d)で得られるブロックの重量の1.0%未満、好ましくは0.9%未満、より好ましくは0.8%未満、又はさらには0.6%未満、又はさらには0.5%未満、を表すように変性される。
【0044】
好ましくは、ZrO、SiO、Al、NaO、B、Y、CaO、MgO及びCeO以外の酸化物種は不純物である。
【0045】
好ましくは、該投入物は、粉末の混合物によって構成される。
【0046】
好ましくは、該投入物は、重量百分率で、下記組成:
ジルコンの粒子:60%超、好ましくは70%超、好ましくは80%超、好ましくは85%超、及び/又は
還元剤、好ましくは炭素、の粒子:2.0%超、好ましくは3.0%超、好ましくは4.0%超、若しくはさらには5.0%超、及び/又は10.0%未満、好ましくは8.0%未満、及び/又は
アルミナの粒子:0.2%超、好ましくは0.5%超、若しくはさらには0.8%超、及び/又は好ましくは3.0%未満、好ましくは2.5%未満、好ましくは2.0%未満、若しくはさらには1.5%未満、若しくはさらには1.0%未満、及び/又は
ナトリウム源、好ましくは炭酸ナトリウム、の粒子:0.5%超、好ましくは1.0%超、好ましくは1.5%超、好ましくは2.0%超、若しくはさらには3.0%超、若しくはさらには3.5%超、及び/又は好ましくは5.0%未満、好ましくは4.5%未満、若しくはさらには4.0%未満、及び/又は
酸化ホウ素の粒子:0.5%超、若しくはさらには1.0%超、若しくはさらには1.5%超、若しくはさらには2.0%超、及び/又は好ましくは5.0%未満、好ましくは4.0%未満、若しくはさらには3.0%未満、及び/又は
他の粒子、すなわち、ジルコン、還元剤、アルミナ、ナトリウム源及び酸化ホウ素の粒子以外:10%未満、好ましくは5%未満、若しくはさらには3%未満、若しくはさらには1%未満、若しくはさらには0.5%未満、若しくはさらには0.1%未満
を示す。
【0047】
還元剤の粒子は、好ましくはコークスの粒子及び/又は木炭の粒子及び/又はアルミニウムの粒子、である。好ましくは、還元剤の該粒子は、重量百分率で、95.0%超の炭素、又はさらには96.5%超の炭素、又はさらには98.0%超の炭素、又はさらには99.0%超の炭素、を好ましくは含む、コークスの粒子である。好ましくは、還元剤の該粒子は、ピッチコークスの粒子である。
【0048】
好ましくは、該投入物は、一方ではアルミナの粒子、並びに他方ではナトリウム源の粒子及び/又はホウ素源の粒子を含む。有利には、それらから、熱機械的応力に対する良好な抵抗を付与するケイ素化相の形成が生じる。
【0049】
一つの実施態様において、アルミナの粒子及びナトリウム源の粒子は、工程b)において、溶融物質の浴に添加される。
【0050】
ジルコン及び/又は還元剤及び/又はアルミナ及び/又はナトリウム源及び/又はホウ素源は、同量で、粒状形態以外の形態で提供されうる。しかしながら、粒状形態が好ましい。
【0051】
工程a)において、溶融は、ジルコンをジルコニア及びシリカの形態に、少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に、解離する為に、還元条件下で実施される。シリカは、次第に揮発する。該投入物中に存在する他の酸化物の量は、還元条件によって実質的に影響されない。
【0052】
その結果、還元条件は、ブロック中の所望のシリカ含有量が達成されるまで、維持される。次に、工程b)における酸化条件への進行は、シリカ含有量の安定化を可能にする。
【0053】
当業者に周知の、還元条件を得ることを可能にする全ての技術が可能である。
【0054】
特に、溶融は、好ましくは撹拌なしに、電極が投入物に浸漬される抵抗炉操作を通して、又はショート電気アークの組合せ作用を通して、好ましくは実施される。ショートアークを得る為に必要とされる電圧及び電流は、当業者に周知の数値パラメーター、例えば、炉の大きさ、電極の数及び大きさ、に依存する。
【0055】
好ましくは、溶融は、2000℃超の温度で、好ましくは、2時間未満、又はさらには1時間30分未満、又はさらには1時間未満、及び好ましくは30分超、又はさらには45分超の期間、操作される。
【0056】
好ましくは、還元条件は、重量百分率で、投入物の少なくとも80%超、90%超、好ましくは実質的に100%、が溶融物質に変換されるまで、維持される。
【0057】
工程b)において、工程a)の終わりに得られる溶融物質の浴は、溶融状態で維持され、酸化条件に付される。
【0058】
酸化条件を得ることを可能にする全ての技術が想定される。
【0059】
酸化条件は好ましくは、還元を生じない、中庸のロング電気アークと再酸化に有利な撹拌との組合せ作用を通して得られる。優先的には、仏国特許出願第1208577号明細書並びにその追加特許出願第75893号明細書及び第82310号明細書に記載されている、ロングアークによる溶融方法が用いられる。この方法は、そのアークが、溶融物質の浴と、この浴から距離を隔てた少なくとも1つの電極との間を流動する、電気アーク炉を用いること、並びに一方では該アーク自体の作用を通して、又は他方では酸化ガス(例えば、空気又は酸素)を該浴中に噴霧することによって、若しくはさらに、酸素を放出する物質、例えば過酸化物若しくは硝酸塩、を該浴に添加することによってのいずれかで、該溶融浴上の酸化雰囲気を維持しながら且つ上記浴を撹拌しながら、その還元作用が最小値に低減されるように、該アークの長さを調整することからなる。
【0060】
酸化条件の適用は基本的に、残留炭素含有量に対して作用する。好ましくは、該酸化条件は、溶融物質の浴中の炭素含有量が、250ppm未満、又はさらには200ppm未満、又はさらには100ppm未満、になるまで維持される。
【0061】
好ましくは、工程b)の継続時間は、1時間未満、又はさらには45分未満、又はさらには30分未満、及び5分超、又はさらには10分超、又はさらには20分、である。
【0062】
工程b)は、主として原材料としてジルコンの利用を可能にする一方、残留炭素含有量及び得られるブロックの多孔度を制限することを可能にする。該ブロックの製造コストは、それらによって低減される。
【0063】
工程c)において、該溶融物質は、慣用的に、型で鋳造される。
【0064】
好ましくは、該型は、その全ての寸法が100mmを超えるブロック及び/又は10kg超のブロックの製造を可能にする寸法を表す。
【0065】
工程d)において、冷却は好ましくは、100℃/時未満、好ましくは50℃/時未満、好ましくは20℃/時未満、の速度で実施され、1時間当たりおよそ10℃の速度が非常に適切である。
【0066】
工程e)において、工程d)から得られたブロックは、アニーリングに付されうる。特に、該型で鋳造される溶融物質が例えば剛性の塊を得る為に少なくとも部分的に固化される場合、この塊は、該型から抽出され、そしてその冷却の制御を促進する環境に置かれる。
【0067】
該方法はまた、ブロックに所望の寸法を付与することを可能にする、機械加工のさらなる段階を含みうる。
【0068】
ブロック
工程d)で得られるブロックは好ましくは、80%超、好ましくは85%超、のジルコニアを含む。
【0069】
非常に高いジルコニア含有量は、製造されるガラスの品質に有害な欠陥を生じることなしに、高耐食性の要件に応えることを可能にする。
【0070】
好ましくは、重量百分率で、ブロックのジルコニウムの80%超、90%超、95%超、好ましくは実質的に100%、がジルコニアの形態である。
【0071】
シリカの存在は有利であり、粒間ガラス質相の形成が、ジルコニアの可逆性同素体変換の間にその体積の変動を効果的に適応させること可能にする。しかしながら、過度に高いシリカ含有量は、石(ブロックの粘着力の喪失から結果として生じた耐火ブロックの断片)の放出を通してガラス中に欠陥を生じ、そして耐食性を劣化させうる。
【0072】
残留炭素含有量は、該ブロックに基づく重量百分率で、好ましくは500ppm未満、好ましくは250ppm未満、好ましくは200ppm未満、又はさらには100ppm未満、である。
【0073】
好ましくは、該ブロックの総多孔度は、15%未満、又はさらには10%未満、又はさらには5%未満、である。
【0074】
特に上部構造又はタンクのブロックに関する一つの実施態様に従うと、該ブロックの総多孔度は、5%未満、又はさらには2%未満、又はさらには1%未満、である。
【実施例
【0075】
下記の非限定実施例は、本発明を例示する目的で示される。
下記の原材料が、これらの実施例で用いられた:
33%シリカを含有するジルコンサンド(zircon sand)、
Pechiney社によって販売され、平均で99.4%のアルミナを含有するAC44型アルミナ、
NaO源である、炭酸ナトリウム、
およそ98%の炭素を含む、ピッチコークス(pitch coke)。
【0076】
工程a)において、該投入物は、直径130mmの2つのグラファイト電極を備えられたHeroult型の単相電気アーク炉の、直径およそ1mのタンクに導入される。実施例1~5について、全ての原材料が、表1に示される割合で混合され、そして溶融の開始前に該タンクに入れられる。実施例6は、工程b)の開始時に、アルミナ及び炭酸ナトリウムが、他の原材料から得られた溶融物質の浴内に導入される点で実施例1~5と異なる。
【0077】
次に、該投入物は、およそ130Vの電圧、2300Aの電流、及び充電された2kWh/kg超で供給された比電気エネルギーにより抵抗炉操作を通して、還元条件下で溶融される。
【0078】
工程b)において、溶融物質の該浴は、およそ210Vの電圧で、仏国特許出願第1208577号明細書に記載されているように、ロングアークを用いて酸化条件下で15~40分間維持され、実施例2及び4については、それぞれ240又は120リットルの酸素が注入される。
【0079】
次に、該溶融物質は、型で鋳造されて、180×180×350mmのフォーマットのブロックが得られる。
【0080】
【表1】
【0081】
得られたブロックの化学分析が表2に示される。これは、蛍光X線分光法によって実施される平均化学分析であり、重量百分率で示される。
【0082】
結晶相は、X線回折によって同定された。これは、表2に示されている。「Z-m」は、単斜晶ジルコニアを表し、「Z-t」は、正方晶ジルコニアを表す。
【0083】
【表2】
【0084】
得られたブロックは、5.1~5.4の密度、及びケイ素化相中にジルコニア樹状突起の形態の構造を示す(図1は実施例2に対応する)。
【0085】
これらの実施例は、ジルコニアの主な供給源としてジルコンを用いることによって、図2に示されているように、実質的に亀裂のない、非常に高いジルコニア含有量を示すブロックを得ることが可能であることが観察されることを認めている。
【0086】
これらのブロックは、有利には、工業条件下で用いるのに完全に適している。
【0087】
さらに、他の試験は、非常に高いジルコニア含有量を有する物質について認められる特性、特に、ガラス作製炉の蒸気による腐食への耐性、が本発明に従う方法を用いることで実質的に低下しないことが確認されることを認めている。
【0088】
本発明に従うブロックのサンプル(実施例2)が、製品ER1195のサンプルと比較された。100mmの長さ及び24mmの直径を有する棒の形態のサンプルが、100℃/時での昇温及び降温による、1500℃で4時間の2回のサイクルに付される。%で表される浸出の値に対応する、これらの2回のサイクル後の該サンプルの体積の変化(単位%)が測定される。3%未満の値が、参照製品の値に従って得られた。
【0089】
当然のことながら、本発明は、例示及び非限定例の意味で提供される、記載され且つ示される実施態様に限定されない。
図1
図2