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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】2剤式化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230522BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20230522BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230522BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/02
A61K8/23
A61K8/24
A61K8/25
A61K8/26
A61K8/36
A61K8/365
A61K8/73
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020523664
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2019021476
(87)【国際公開番号】W WO2019235342
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2018108602
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】水野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小野 昭則
(72)【発明者】
【氏名】浅井 歩
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-336413(JP,A)
【文献】特開2017-048168(JP,A)
【文献】特開2007-015996(JP,A)
【文献】特開2002-265318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に混合される水溶液状の第1剤と粉末状の第2剤とからなり、
第1剤が(A)を含み、第2剤が(B)~(E)を含み、
第1剤と第2剤の質量比([第1剤]/[第2剤])が0.4~1.4である、2剤式化粧料。
第1剤:
(A)水 第1剤全量中に50質量%以上
第2剤:
(B)平均分子量200万~500万のポリアクリル酸塩 第2剤全量中に4~12質量%
(C)2価又は3価の金属塩粉末 第2剤全量中に0.1~5質量%
(D)カルボン酸誘導体 第2剤全量中に0.1~5質量%
(E)発熱性物質 第2剤全量中に40~65質量%
ただし、
(C)金属塩粉末が塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびジヒドロキシアルミニウムアセテートから選択される1種以上であり、かつ
(E)発熱性物質がリン酸水素二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、活性化ゼオライトから選択される1種以上である。
【請求項2】
(B)平均分子量200万~500万のポリアクリル酸塩、(D)カルボン酸誘導体、又はこれらの両方が、第1剤にも含まれる、請求項1記載の2剤式化粧料。
【請求項3】
第2剤が(F)分子量2万~400万の高重合ポリエチレングリコールをさらに含む、請求項1又は2に記載の2剤式化粧料。
【請求項4】
第2剤が(G)板状セルロースをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の2剤式化粧料。
【請求項5】
第2剤が(H)親水性微粒子シリカをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の2剤式化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液状の第1剤と粉末状の第2剤とからなる2剤式化粧料に関する。より詳しくは、使用時に第1剤と第2剤とを混ぜることにより、温感効果を与えるのに十分な温度に発熱すると同時に、つきたての餅のような独特の質感と感触を備えたゲル状となる2剤式化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
パック化粧料は古くから用いられている化粧品の一つであり、皮膚に潤いを与えて滑らかさや柔らかさを引き出したり、後から適用するスキンケアの有効成分の浸透を促進させる効果を有する。また、近年では、水分と接触した際に発熱する発熱性物質、例えば、多価アルコールなどの保湿剤、ゼオライト、金属塩又は金属酸化物などを配合することにより、皮膚の血行を促進して新陳代謝を高めるとともに、リラクゼーション、疲労回復などの効果を狙った温感パック化粧料も種々提案されている。
【0003】
温感パック化粧料は、皮膚に適用後に皮膚や外気から水分を吸収して発熱する1剤式(例えば、特許文献1)と、使用時に発熱性物質と水分とを混ぜ合わせて発熱を開始させてから皮膚に適用する2剤式(例えば、特許文献2)とに大別することができる。
1剤式の温感パック化粧料としては、非水系又は低含水系のゲル状又はペースト状組成物の形態をとるものや、このような組成物を不織布等の支持体に含浸又は塗布させてシート状としたものが普及している。一方、2剤式の温感パック化粧料としては、発熱性物質を含む第1剤と、水を含む第2剤とから構成され、使用時にこれらを混ぜ合わせることによってペースト状組成物となるものが一般的である。
【0004】
これまでの温感パック化粧料は、シート状のものを除けばいずれも流動的なペースト状組成物ばかりであり、その質感、感触、使用態様はどれも似ていて、目新しさに欠けるのが実情である。
温感パック化粧料の価値をより多くのユーザーに知ってもらうためにも、ユーザーの好奇心を刺激するような、よりインパクトのある製品が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-126345号公報
【文献】特開平06-336413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、従来に無い独特の質感と感触を備えた2剤式化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、所定量の水を配合した第1剤と、所定量のポリアクリル酸塩、2価又は3価の金属塩粉末、カルボン酸誘導体、発熱性物質を配合した第2剤とを、所定の質量比で混合することにより、これまでの流動的なペースト状組成物とは異なる、つきたての餅のような粘弾性と密着力を備えた独特なゲル状の温感パック化粧料を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
使用時に混合される水溶液状の第1剤と粉末状の第2剤とからなり、
第1剤が(A)を含み、第2剤が(B)~(E)を含み、
第1剤と第2剤の質量比([第1剤]/[第2剤])が0.4~1.4である、2剤式化粧料を提供する。
第1剤:
(A)水 第1剤全量中に50質量%以上
第2剤:
(B)平均分子量200万~500万のポリアクリル酸塩 第2剤全量中に1~15質量%
(C)2価又は3価の金属塩粉末 第2剤全量中に0.01~15質量%
(D)カルボン酸誘導体
(E)発熱性物質
【発明の効果】
【0009】
本発明の2剤式化粧料は、第1剤と第2剤とを混ぜ合わせることにより、(E)発熱性物質が(A)水と接触して発熱し、顔に適用した際に適度な温感効果を与える温度へと達する。また、それと同時に、(A)水に溶解した(B)ポリアクリル酸塩、(C)2価又は3価の金属塩粉末、(D)カルボン酸誘導体が3三次元に架橋された高分子ネットワークを形成して、独特のもちもちした質感や感触を有するゲル状組成物(以下、「ゲル状組成物」と称する場合がある)を形成する。
本発明の2剤式化粧料から生じるゲル状組成物は、内部に大量の水を含んでいるにも拘わらず、従来の一般的な温感パック化粧料のような流動性がなく、強い弾力性を有する。また、通常の使用状態であれば押しても水がしみ出すことがなく、表面に触れてもわずかに湿り気を感じるのみで、手を濡らすこともない。さらに、顔の皮膚に対しては適度な付着性を有しつつ、手指に対して粘着しにくいため、使用の際に手を汚さず、洗い流す煩わしさがない。また、適度な柔軟性を有するため、適用部位や用途に合わせて自在に変形、引き延ばしが可能である。
このように、本発明の2剤式化粧料は、従来に無いつきたての餅のような独特の質感と感触を有し、なおかつ、使い勝手が良いことから、ユーザーの好奇心を刺激するのに十分なインパクトを有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の2剤式化粧料について詳しく説明する。
【0011】
<第1剤>
本発明における第1剤は水溶液状であり、必須に(A)水を含む。
(A)水
(A)水は、特に限定されるものではなく、通常化粧料に配合される精製水、イオン交換水などを使用することができる。
(A)水の配合量は、第1剤全量中に50質量%以上が好ましく、より好ましくは55~85質量%、さらに好ましくは60~75質量%である。
【0012】
(任意成分)
第1剤には、(A)水以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を配合することができる。これらの成分としては水溶性成分が挙げられ、具体的には、保湿剤、植物エキスなどの各種薬剤、キレート剤、防腐剤等が挙げられる。これら任意成分は1種又は2種以上を配合することができる。
【0013】
例えば、心地よい温感効果と保湿効果を得るために、第1剤に多価アルコールを配合することが好ましい。多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビット、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンチレングリコール、イソプレングリコール、トレハロース等が挙げられる。なかでも、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0014】
また、特に優れた保湿効果を有することが知られているPOE/POPジメチルエーテルのようなアルキレンオキシド誘導体を配合すると、本発明の2剤式化粧料を使用した後に適用するスキンケアの効果を高められるため好ましい。
【0015】
<第2剤>
本発明における第2剤は粉末状であり、(B)ポリアクリル酸塩、(C)2価又は3価の金属塩粉末、(D)カルボン酸誘導体、(E)発熱性物質を含む。
【0016】
(B)ポリアクリル酸塩
ゲル状組成物の粘度や性状の調整のために高分子化合物を配合することは、化粧料に限らず種々の分野において広く検討されている。本発明では、これらのなかでも特に平均分子量が200万~500万、より好ましくは400万~500万のポリアクリル酸塩を用いることにより、従来に無いつきたての餅のような独特の質感と感触を有するゲルを実現する。(B)ポリアクリル酸塩としては、化粧料や医薬部外品などに水溶性増粘剤として配合され得るポリアクリル酸の塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩あるいはアンモニウム塩等を用いることができる。
【0017】
本発明で用いられるポリアクリル酸塩は市販品であってもよく、例えば、ポリアクリル酸の完全中和物(ナトリウム塩)であるアロンビス(登録商標)SX(重量平均分子量:400万~500万)、アロンビス(登録商標)MX(重量平均分子量:200万~300万)や、 ポリアクリル酸の部分中和物であるアロンビス(登録商標)AH-106X(重量平均分子量:400万~500万、中和度40モル%)、アロンビス(登録商標)AH-105X(重量平均分子量:400万~500万、中和度50モル%)等を用いることができる(いずれも、東亞合成株式会社)。
【0018】
(B)ポリアクリル酸塩の配合量は、第2剤全量中に1~15質量%であり、より好ましくは4~12質量%、さらに好ましくは5~8質量%である。ポリアクリル酸塩の含有量が1質量%未満であると、もちもちとした独特の質感が低下する場合があり、15質量%を超えると、ゲル状組成物の柔軟性が低下し、取り扱いが難しくなる傾向がある。
【0019】
また、架橋反応の進行をスムーズにしてゲル形成速度を向上させ、もちもちとした独特の質感をより一層高めるために、(B)ポリアクリル酸塩を、第2剤だけでなく、第1剤にも配合することができる。第1剤に(B)ポリアクリル酸塩を配合する場合、その配合量は第1剤全量中に3質量%以下とすることが好ましい。3質量%を超えて配合すると却って第2剤と混合しにくくなり不均一となる傾向がある。
【0020】
(C)2価又は3価の金属塩粉末
(C)2価又は3価の金属塩粉末(以下、単に「(C)粉末」と称する場合がある)は、(B)ポリアクリル酸塩の架橋剤として作用する。(C)粉末としては、2価又は3価の金属塩、好ましくはアルミニウム塩およびマグネシウム塩、の1種以上を使用することができる。具体的には、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびジヒドロキシアルミニウムアセテート等を挙げることができる。特に、硫酸アルミニウムカリウム(カリミョウバン)やその無水物(焼ミョウバン)が好ましい。
【0021】
(C)粉末の配合量は、第2剤全量中に0.01~15質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%である。当該範囲外であると、本発明に独特の質感と感触が得られない傾向がある。
【0022】
(D)カルボン酸誘導体
(D)カルボン酸誘導体は、架橋反応の促進剤として配合される。(D)カルボン酸誘導体は、そのキレート能により、(B)ポリアクリル酸塩と協力的に作用して反応を促進させるものと考えられる。(D)カルボン酸誘導体としては、例えば、酒石酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、サリチル酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸等の金属イオンに対してキレートもしくは配位能をもつ有機酸とその誘導体などが利用できる。これらのなかでも特に酒石酸が好ましい。
【0023】
(D)カルボン酸誘導体の配合量は、第2剤全量中に0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。0.01質量%未満であると、本発明に特有の弾力と粘着力とを備えたゲルの形成が難しく、10質量%を超えて配合するとゲルの酸性度が高くなり過ぎたり、ゲルが柔らかくなり手指にくっつきやすくなる傾向がある。
【0024】
また、上記(B)ポリアクリル酸塩と同様に、(D)カルボン酸誘導体についても、第2剤だけでなく、第1剤中にも配合することが好ましい。第1剤に(D)カルボン酸誘導体を配合する場合、その配合量は第1剤全量中に1質量%以下とすることが好ましい。1質量%を超えて配合すると却って手指にくっつきやすくなり取扱いが困難となる傾向がある。
【0025】
(E)発熱性物質
(E)発熱性物質は、水分と接触することにより水和反応熱を生じるものであり、温感作用を有する化粧料に広く配合されている。発熱性物質としては、リン酸水素二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の発熱性無機塩や、活性化ゼオライトが挙げられる。これらのなかでも特にリン酸水素二ナトリウムが好ましい。これは、入手が容易であることに加え、水和した際の温度が約45℃と熱すぎず、扱いやすいからである。
【0026】
(E)発熱性物質の配合量は、第2剤全量中に20~70質量%であり、より好ましくは40~65質量%、さらに好ましくは50~60質量%である。20質量%未満であると、十分な温感を付与することができず、70質量%を超えて配合するともちもちとした独特の質感が低下し、ざらつきにつながる場合がある。
【0027】
(任意成分)
第2剤には、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の粉末成分、油分、増粘剤、酸化防止剤、香料等の任意成分を配合することができる。
【0028】
(F)高重合ポリエチレングリコール
第2剤に配合するのが好ましい任意成分としては、例えば、高重合ポリエチレングリコールを挙げることができる。高重合ポリエチレングリコールを配合することにより、肌に対する密着力を著しく改善することができる。好適な高重合ポリエチレングリコールは、平均分子量が2万~400万、より好ましくは2万~60万の粉末状の酸化エチレン重合体であり、市販品としてはポリオックスTM WSR205(ダウ・ケミカル日本株式会社)、ポリオックスTM WSR301(ダウ・ケミカル日本株式会社)等を挙げることができる。
第2剤に高重合ポリエチレングリコールを配合する場合、 第2剤全量中に2質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1~1質量%、さらに好ましくは0.3~0.5質量%である。2質量%を超えて配合すると却ってべたつきを感じやすくなり好ましくない。
【0029】
(G)板状セルロース
また、板状セルロースを配合することによっても、肌への密着力を改善することができる。板状セルロースはセルロース由来の微細粉末であり、平均粒子径が100~600μm、より好ましくは200~400μmのものが好ましい。市販品としてはKCフロック W-100G(日本製紙株式会社)等を挙げることができる。
第2剤に板状セルロースを配合する場合、 第2剤全量中に20質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1~10質量%、さらに好ましくは3~5質量%である。20質量%を超えて配合すると却って密着性が低下し好ましくない。
【0030】
(H)親水性微粒子シリカ
また、第2剤の粉末流動性(充填性)向上のために、親水性微粒子シリカを配合することが好ましい。本発明において親水性微粒子シリカとは比表面積が150~400m/gの親水性フュームドシリカであり、市販品としてはアエロジル(登録商標)200(日本アエロジル株式会社)、アエロジル(登録商標)380S(日本アエロジル株式会社)等を挙げることができる。
第2剤に親水性微粒子シリカを配合する場合、 第2剤全量中に2質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.3~1.5質量%、さらに好ましくは0.5~1質量%である。2質量%を超えて配合すると却って使用感触を損ない、密着力も低下するため好ましくない。
【0031】
(I)分散剤
さらに、架橋反応速度が速すぎると、第1剤と第2剤とを十分に混合できないうちに反応が局所的に進んでしまい、全体的に均一なゲルが得られなくなる傾向がある。これを防ぐために、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の分散剤を配合することが好ましい。
第2剤に分散剤を配合する場合、第2剤全量中に5質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。5質量%を超えて配合すると却ってゲルが形成されるまでに時間がかかるため、使用時の温度が低くなってしまい好ましくない。
【0032】
なお、第2剤にグリセリン、ジプロピレングリコール等の多価アルコールを配合すると粉末が凝集して流動性が低下する傾向があるため、これらを全く配合しないか、配合しても1.0質量%までに抑えることが好ましい。
【0033】
<2剤式化粧料>
(1)第1剤と第2剤の配合比
本発明の2剤式化粧料は、第1剤と第2剤とを混ぜ合わせることにより、第1剤に含まれる(A)水と第2剤に含まれる(E)発熱性物質とが接触し、その水和反応により発熱する。また、これと同時に、第1剤に含まれる(A)水に、第2剤に含まれる(B)ポリアクリル酸塩、(C)粉末、(D)カルボン酸誘導体が溶解し、反応して、3三次元に架橋された高分子ネットワークを形成する。この高分子ネットワークにより、流動性が無く、適度な粘弾性、柔軟性、密着性を有する独特のもちもちした質感と感触が発現する。ここで、第2剤だけでなく、第1剤中にも(B)ポリアクリル酸塩及び/又は(D)カルボン酸誘導体を配合して良いことは上述したとおりである。
【0034】
本発明の2剤式化粧料は、第1剤と第2剤とを、質量比([第1剤]/[第2剤])にして0.4~1.4の範囲、さらには0.7~1.2の範囲となるように含むのが好ましい。このような質量比とすることにより、第1剤と第2剤を混合した際に、(A)水と(E)発熱性物質との比率(質量比)を1:1に近づけることができ、効率の良い発熱が可能である。
【0035】
(2)物理特性
本発明の2剤式化粧料は、つきたての餅のような独特の質感と感触を発現する。本明細書において「つきたての餅のような独特の質感と感触」とは、柔らかな弾力があり、高伸長性でありながら低縮性という特徴的な柔軟性と、高い密着性とを有することを指す。この独特の質感と感触は、従来の2剤式パック又は温感パックには無いものであり、例えば、典型的な温感パックである石膏マスクは、使用時はペースト状であるが、冷えると硬くなる性質を有している。一方、本発明の2剤式化粧料は、使用時に自由に成形できるくらいに高い柔軟性を持ち、冷えてもこの柔軟性を維持することができる。
この「つきたての餅のような独特の質感と感触」は、第1剤と第2剤とを混ぜ合わせて得られるゲル状組成物が、概ね以下の物理特性(硬度、密着性)を満たすような場合に該当すると考えられる。すなわち、テクスチャー・アナライザーTAXT Plus(英弘精機株式会社)を用いて、針入時5mm/sec、戻り時3mm/secの条件下で測定した15mm針入時の荷重値「荷重値A」、及び、15mm針入後初期位置に戻った時の荷重値「荷重値B」が、それぞれ以下の数値範囲となる場合である。
【0036】
(i)「荷重値A」
2剤式化粧料から得られるゲル状組成物の「荷重値A」が100~3000gの範囲であり、好ましくは300~1000gの範囲である。「荷重値A」が当該範囲外であると、つきたての餅のような独特の質感と感触が低下し、使用しにくくなる傾向がある。特に「荷重値A」が3000gを超えると、もちもちとした質感が無くなり、十分な密着性が得られなくなる。
【0037】
(ii)「荷重値B」
ゲル状組成物の「荷重値B」が、-1g以上である。-1g未満であると、手指への粘着が顕著になり、取扱いが難しくなる傾向がある。
【0038】
(3)使用方法
本発明の2剤式化粧料を使用するには、まず、第1剤と第2剤を混ぜ合わせて弾力性の高いゲル状組成物を得る。次いで、得られたゲル状組成物を適当な形状、大きさに引き延ばして、顔の皮膚に適用する。ゲル状組成物は、混合後直ちに発熱を開始して35~45℃程度に達し、発熱は5~10分間程度保持される。この間に温感効果により、血行促進、代謝不良の改善、リラックス効果、疲労回復等が達成される。使用後は、ゲル状組成物を手で簡単に剥がすことができる。水で洗い流したり、タオルや紙で拭き取る必要もない。
【実施例
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0040】
(1)質感と感触
調製した試料の第1剤と第2剤を混合して得られたゲル状組成物の質感と感触について、専門パネル10名により下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
A:専門パネル8名以上が、つきたての餅のような独特の質感と感触を有すると認めた。
B:専門パネル6名以上8名未満が、つきたての餅のような独特の質感と感触を有すると認めた。
C:専門パネル3名以上6名未満が、つきたての餅のような独特の質感と感触を有すると認めた。
D:専門パネル3名未満が、つきたての餅のような独特の質感と感触を有すると認めた。
【0041】
(2)温感効果
調製した試料の第1剤と第2剤を混合して得られたゲル状組成物を、専門パネル10名の顔に塗布し、温感効果を下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
A:専門パネル8名以上が、温感効果があると認めた。
B:専門パネル6名以上8名未満が、温感効果があると認めた。
C:専門パネル3名以上6名未満が、温感効果があると認めた。
D:専門パネル3名未満が、温感効果があると認めた。
【0042】
(3)密着力
調製した試料の第1剤と第2剤を混合して得られたゲル状組成物を、専門パネル10名の顔に塗布し、密着力を下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
A:専門パネル8名以上が、顔に対して適度な密着力を有し、手指に対しては粘着しにくいと認めた。
B:専門パネル6名以上8名未満が、顔に対して適度な密着力を有し、手指に対しては粘着しにくいと認めた。
C:専門パネル3名以上6名未満が、顔に対して適度な密着力を有し、手指に対しては粘着しにくいと認めた。
D:専門パネル3名未満が、顔に対して適度な密着力を有し、手指に対しては粘着しにくいと認めた。
【0043】
[実施例1~5及び比較例1~6]
下記の表1に示す処方にて2剤式化粧料を調製し、上記評価方法に従って各特性を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0044】
【表1】
1:アロンビス(登録商標)S(東亞合成株式会社)
2:ポリオックスTM WSR205(ダウ・ケミカル日本株式会社)
3:セオラス(登録商標)PH-101(旭化成ケミカルズ株式会社)
4:KCフロック(登録商標)W-100G(日本製紙株式会社)
5:アエロジル(登録商標)200(日本アエロジル株式会社)
6:アイオノール CP(ジャパンケムテック株式会社)
【0045】
表1に示されるとおり、本発明の必須成分である(A)~(E)を所定の量で含む2剤式化粧料は、全ての評価項目において十分な結果が得られた(実施例1)。また、板状セルロース(G)を配合することにより顔への付着力が向上し(実施例2)、ポリアクリル酸ナトリウム(B)および酒石酸(D)を第2剤だけでなく第1剤にも配合すると、質感と感触が向上することが確認された(実施例3)。さらに、微粒子焼ミョウバン(C)と酒石酸(D)を好ましい配合率にすることで、独特な質感と感触がより一層向上することが確認された(実施例4)。また、高重合ポリエチレングリコール(F)を配合すると、顔への付着力を著しく改善できることが確認された(実施例5)。
一方、ポリアクリル酸ナトリウム(B)の配合量が本発明に規定する範囲に満たない場合や他の増粘剤に変更した場合、並びに、3価の金属塩粉末である微粒子焼ミョウバン(C)の配合量を本発明に規定する範囲以上とした場合には、質感と感触が不十分であり、密着力に劣っていた(比較例1~4)また、第1剤と第2剤の配合比を本発明に規定する範囲外とした場合も、温感効果や質感及び感触が不十分であり、密着力が劣っていた(比較例5,6)