(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】付加製造システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B22F 12/45 20210101AFI20230522BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20230522BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20230522BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20230522BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230522BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20230522BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20230522BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230522BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20230522BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20230522BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20230522BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230522BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230522BHJP
【FI】
B22F12/45
B22F3/105
B22F3/16
B22F10/28
B23K26/00 N
B23K26/064 K
B23K26/073
B23K26/21 Z
B23K26/34
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020552758
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 US2019024832
(87)【国際公開番号】W WO2019191585
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-27
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518009515
【氏名又は名称】ヴァルカンフォームズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン,マーティン シー.
(72)【発明者】
【氏名】コムスタ,ヤン パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】スイートランド,マシュー
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-507377(JP,A)
【文献】特表2017-503683(JP,A)
【文献】特開2003-340924(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075801(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/100695(WO,A1)
【文献】特表2003-534942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105
B22F 10/28
B22F 12/45
B29C 64/153
B29C 64/268
B29C 64/277
B29C 64/282
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造システムであって、
ビルド表面と、
2つ以上のレーザーエネルギーソースと、
2つの以上の光ファイバであって、それぞれの光ファイバは、前記2つ以上のレーザーエネルギーソースのうちの関連するレーザーエネルギーソースに結合された第1の端部から、且つ、第2の端部から外に、レーザーエネルギーを伝送するように構成されており、前記2つ以上の光ファイバの前記第2の端部は、
1つのアレイの状態に配置されている、光ファイバと、
それぞれのレーザーエネルギーソースと関連する
レーザーエネルギーピクセルを形成するべく、それぞれの光ファイバから出力された前記レーザーエネルギーを成形するように、構築及び構成されたオプティクス組立体であって
、前記レーザーエネルギーピクセルは、前記ビルド表面上においてレーザーエネルギーピクセルの
アレイを形成するように構成されており、且つ、前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイに対する前記ビルド表面上の材料の層の曝露は、前記材料の層の少なくとも一部分を溶融している、オプティクス組立体と、
を含
み、
前記オプティクス組立体は、マイクロレンズのアレイと、前記オプティクス組立体の光学経路に沿って前記マイクロレンズのアレイの後に位置決めされた1つ又は複数の対物レンズとを含み、
前記マイクロレンズ及び前記1つ又は複数の対物レンズは、前記レーザーエネルギーピクセルの形状、サイズ、及び間隔を制御するように構成される、
システム。
【請求項2】
前記マイクロレンズのアレイは、レンズアレイである、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項3】
それぞれの前記レーザーエネルギーピクセルは、矩形レーザーエネルギーピクセルを含み、それぞれの矩形レーザーエネルギーピクセルは、実質的に均一なパワー密度を有している、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項4】
それぞれの前記レーザーエネルギーピクセルは、実質的に均一なパワー密度を有している、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項5】
それぞれの光ファイバから出力される前記レーザーエネルギーは、円形ビーム形状を有しており、且つ、前記レンズアレイは、それぞれの光ファイバから出力される前記レーザーエネルギーを、実質的に均一なパワー密度を有する矩形ビーム形状に変換するように構成される、請求項2に記載の付加製造システム。
【請求項6】
前記1つ又は複数の対物レンズは、前記ビルド表面上において前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイを形成するべく、前記レンズアレイから出力される前記レーザーエネルギーを縮小するように構成される、
請求項5に記載の付加製造システム。
【請求項7】
前記2つ以上のエネルギーソースのうちのそれぞれのレーザーエネルギーソースは、関連するレーザーエネルギーピクセルのパワーレベルを調節するべく独立的に制御可能である、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項8】
前記1つ又は複数のレーザーエネルギーピクセルのパワーレベルを調節することにより、前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイに沿ってパワー密度を調節する、
請求項7に記載の付加製造システム。
【請求項9】
前記オプティクス組立体は、前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイに対して垂直の方向に沿って前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイを移動させるように構成される、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項10】
前記オプティクス組立体に結合されたファイバマウントを更に含み、前記ファイバマウントは、前記光ファイバの前記第2の端部を受け入れ、且つ、前記光ファイバの隣接する第2の端部の間の間隔を画定するように構成される、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項11】
それぞれのレーザーソースから出力される最大パワーは、約200W~約1000Wである、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項12】
前記ビルド表面上に前記材料の層を堆積させるように構成された材料堆積システムを更に含む、請求項1に記載の付加製造システム。
【請求項13】
前記材料の層は、金属パウダーを含み、且つ、前記材料堆積システムは、前記ビルド表面上において前記金属パウダーを散布するように構成される、
請求項12に記載の付加製造システム。
【請求項14】
付加製造用の方法であって、
レーザーエネルギーピクセルのアレイを形成すべく、マイクロレンズのアレイと、前記マイクロレンズのアレイの後に位置決めされた1つ又は複数の対物レンズとを用いて、レーザーエネルギーを成形することと、
ビルド表面上の材料の層を
前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイに曝露するこ
とと、
前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイに対する前記材料の層の一部分の曝露に起因して、前記一部分を溶融することと、
を含む方法。
【請求項15】
前記マイクロレンズのアレイは、レンズアレイである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイに沿ってパワー密度を調節するべく、それぞれのレーザーエネルギーピクセルのパワーレベルを制御することを更に含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ビルド表面との関係において前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイを移動させることを更に含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイを移動させることは、前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイを平行運動させること及び回転させることのうちの少なくとも1つを含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
材料堆積システムにより、前記ビルド表面上において材料の層を堆積させることを更に含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記材料の層は、金属パウダーを有しており、且つ、前記材料の層を堆積させることは、前記ビルド表面上において前記金属パウダーを散布することを含む、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記レーザーエネルギーピクセルの
アレイを形成することは、
2つ以上の光ファイバを通じて2つ以上のレーザーエネルギーソースからレーザーエネルギーを伝送することであって、それぞれの光ファイバは、1つのレーザーエネルギーソースに前記光ファイバの第1の端部において結合されている、ことと、
それぞれの光ファイバの前記レーザーエネルギー出力を円形ビーム形状から均一なパワー密度を有する矩形ビーム形状に変換するべく、
前記レンズアレイを通じて、それぞれの光ファイバの第2の端部から出力されたレーザーエネルギーを伝送することと、
前記矩形ビームを縮小するべく1つ又は複数の対物レンズを通じて前記矩形ビームを伝送することと、
を含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項22】
それぞれの前記レーザーエネルギーピクセルは、矩形レーザーエネルギーピクセルを含み、それぞれの矩形レーザーエネルギーピクセルは、実質的に均一なパワー密度を有している、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
それぞれの前記レーザーエネルギーピクセルは、実質的に均一なパワー密度を有している、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
[0001] 開示されている実施形態は、付加製造用のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 現時点において、市場においては、多くの金属付加製造の方法が入手可能である。これらの方法は、材料のソース(パウダー、ワイヤ、薄膜など)と、溶融/接合(レーザー溶融、eビーム溶融、溶接アーク、焼結など)を得るためのエネルギー追加の形態と、により、区分することができる。所与のプロセスにおける端部部分の分解能、精度、及び取得可能な特徴サイズは、初期材料の形態と、金属融合用のエネルギー配置を制御する能力と、に基づいている。所与のプロセスの有効レートは、通常、制御された方式によってビルド表面内にエネルギーを供給する能力により、制限されている。
【0003】
[0003] 金属付加製造用の選択型レーザー溶融プロセスにおいては、通常、レーザースポットが、金属パウダーの薄い層上においてスキャニングされている。レーザースポットによってスキャニングされた金属パウダーは、固体金属構造に溶融及び融合される。層が完成したら、構造がインデクシングされ、金属パウダーの新しい層が配置され、プロセスが反復される。以前の層上の予めスキャニング済みのエリア上に位置した新しい層上において、エリアがレーザースポットによってスキャニングされた場合には、パウダーは、以前の層の個体材料上に溶融及び融合される。このプロセスは、ほとんど任意の形態の3次元形状を構築するべく、多数回にわたって反復することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
[0004] 一実施形態において、付加製造システムは、ビルド表面と、2つ以上のレーザーエネルギーソースと、2つ以上の光ファイバと、を含む。それぞれの光ファイバは、2つ以上のレーザーエネルギーソースのうちの関連するレーザーエネルギーソースに結合された第1の端部から、且つ、第2の端部から外に、レーザーエネルギーを伝送するように構成されており、且つ、2つ以上の光ファイバの第2の端部は、1つのラインに沿って配置されている。付加製造システムは、それぞれのレーザーエネルギーソースと関連する矩形レーザーエネルギーピクセルを形成するべく、それぞれの光ファイバから出力されたレーザーエネルギーを成形するように、構築及び構成されたオプティクス組立体を更に含む。それぞれの矩形レーザーエネルギーピクセルは、実質的に均一なパワー密度を有しており、矩形レーザーエネルギーピクセルは、隣接するレーザーエネルギーピクセルの間に間隔を有することなしに、ビルド表面上においてレーザーエネルギーピクセルの線形アレイを形成するように構成されており、且つ、レーザーエネルギーピクセルの線形アレイに対するビルド表面上の材料の層の曝露は、材料の層の少なくとも一部分を溶融する。
【0005】
[0005] 別の実施形態において、付加製造用の方法は、レーザーエネルギーピクセルの線形アレイに対してビルド表面上の材料の層を曝露することを含む。それぞれのレーザーエネルギーピクセルは、矩形形状と、実質的に均一なパワー密度と、を有しており、且つ、この場合に、隣接するレーザーエネルギーピクセルの間に間隔が存在してはいない。方法は、レーザーエネルギーピクセルの線形アレイに対する一部分の曝露に起因して、材料の層の一部分を溶融することを更に含む。
【0006】
[0006] 上述の概念及び後述する更なる概念は、本開示が、この観点において制限されてはいないことから、任意の適切な組合せにおいて構成されうることを理解されたい。更には、本開示のその他の有利な且つ新規の特徴については、添付の図面との関連において検討された際に、様々な非限定的な実施形態に関する以下の詳細な説明から、明らかとなろう。
【0007】
図面の簡単な説明
[0007] 添付図面は、正確な縮尺で描画することを意図したものではない。図面において、様々な図に示されている、それぞれの同一の又はほぼ同一のコンポーネントは、同一の符号によって表されている場合がある。わかりやすさを目的として、すべてのコンポーネントが、すべての図面において、ラベル付与されているわけではない。図面は、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】[0008]ガウスパワー密度を有する円形ビームの概略表現である。
【
図2】[0009]ガウスパワー密度を有する2つの隣接した円形ビームのパワー密度を示す概略表現である。
【
図3】[0010]ガウスパワー密度を有する円形ビームの異なる位置におけるパワー密度の概略表現である。
【
図4】[0011]均一なパワー密度を有する矩形ビームの概略表現である。
【
図5】[0012]均一なパワー密度を有する矩形ビームの異なる位置におけるパワー密度の概略表現である。
【
図6】[0013]均一なパワー密度を有する矩形ピクセルの線形アレイの入射エネルギープロファイルの概略図を描く。
【
図7】[0013]均一なパワー密度を有する矩形ピクセルの線形アレイの入射エネルギープロファイルの概略図を描く。
【
図8】[0014]ガウスパワー密度を有する円形ピクセルの線形アレイの入射エネルギープロファイルの概略図を描く。
【
図9】[0014]ガウスパワー密度を有する円形ピクセルの線形アレイの入射エネルギープロファイルの概略図を描く。
【
図10】[0015]いくつかの実施形態による線形ピクセルアレイのパワー密度の概略表現を描く。
【
図11】[0016]線形ピクセルアレイ及び固定スポットアレイのパワー密度の概略表現を描く。
【
図12】[0017]いくつかの実施形態による線形ピクセルアレイのパワー密度出力の概略表現を描く。
【
図13】[0018]いくつかの実施形態による線形ピクセルアレイのパワー密度出力の概略表現を描く。
【
図14】[0019]焦点における線形ピクセルアレイの概略表現である。
【
図15】[0020]焦点から離れた線形ピクセルアレイの概略表現である。
【
図16】[0021]回転的にミスアライメントされた正方形ファイバによって生成されるピクセルのパターンの概略表現である。
【
図17】[0022]いくつかの実施形態による円形ビームプロファイルから成形された矩形ビームプロファイルの概略表現を描く。
【
図18】[0022]いくつかの実施形態による円形ビームプロファイルから成形された矩形ビームプロファイルの概略表現を描く。
【
図19】[0023]付加製造システムの一実施形態の概略表現である。
【
図20】[0024]オプティクス組立体の一実施形態の概略表現である。
【
図21】[0025]ファイバマウントの一実施形態の概略表現である。
【
図22】[0026]レンズアレイの一実施形態の概略表現である。
【
図23】[0027]オプティクス組立体の別の実施形態の概略表現である。
【
図24】[0028]ガルバノメータを含む付加製造システムの一実施形態の概略表現である。
【
図25】[0029]固定ミラー組立体を含む付加製造システムの一実施形態の概略表現である。
【
図26】[0030]いくつかの実施形態によるパウダーベッド表面上において形成された線形ピクセルアレイの概略表現である。
【
図27】[0031]付加製造システムの一実施形態の概略表現である。
【
図28】[0032]付加製造システムの別の実施形態の概略表現である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
[0033] 本発明者らは、パウダー層の厚さ、レーザースポットのサイズ、及びレーザースポットモーションの精度は、いずれも、選択型レーザー溶融プロセスによって生成される最終的な部分の寸法精度及び正確さに影響を及ぼすべく、組み合されうることを認識及び理解した。また、レーザースポットのサイズ及びパワーも、所与の機械プロセスのレート限度に影響しうる。例えば、所与のレーザースポットサイズについて、パウダー層の溶融を可能にするための最小スポットパワーが存在している。このポイント未満のレーザーパワーは、レーザースポットがパウダー表面上において静止状態にある場合にも、レーザースポットの下方のパウダーを溶融及び融合させるべく、十分なエネルギーを供給することができない。この最小エネルギーは、材料(例えば、金属パウダーのタイプ)、パウダーベッドの熱特性、及び所与のレーザー波長に伴うパウダー表面の吸収特性、に依存している。この結果、レーザースポットがパウダー表面上においてスキャニングされる場合に、この最小レーザーパワーは、所与のポイントがレーザービームスポットプロファイルの下方にある間に、スキャニング速度においてレーザービームがパウダーを溶融及び融合させるべくパウダーに所定の期間に十分なエネルギーを供給しうるように、増大しなければならない。スキャニング速度が大きいほど、スキャニングスポットの下方において連続的な溶融プールを維持するべく必要とされる最小パワーも大きくなる。
【0010】
[0034] これに加えて、本発明者らは、所与のレーザースポットサイズ下において供給されうるエネルギーの量に対する限度が存在していることを理解した。入射レーザーエネルギーは、通常、パウダーの表面上の非常に狭い層において吸収される。このエネルギーは、この薄い層内において、熱エネルギーに変換され、且つ、次いで、伝導及び対流が、この吸収されたエネルギーがパウダー層内に更に下方に拡散することを許容する。伝導は、個々のパウダー粒子の間の微細な接触ポイントによって制限されており、且つ、対流は、粒子の間のギャップを通じて発生する。過大なエネルギーが層表面上において入射した場合には、エネルギーは、十分に高速でパウダー層の全体内に拡散することができず、パウダー表面温度が、金属パウダー表面の各部分を蒸発させるのに十分に高い温度に到達することになる。この層表面における迅速な蒸発は、パウダー粒子がパウダー表面から放出されることをもたらすことになる。
【0011】
[0035] 高入射エネルギーは、パウダー表面上における表面蒸発をもたらしうる一方で、溶融プール内の金属の蒸発をも、もたらしうる。溶融プールとは、レーザースポットがパウダー表面上においてスキャニングされている間に金属パウダーのレーザー加熱によって生成される溶融金属の所定量である。また、溶融プールは、金属パウダーが溶融された後の、且つ、溶融金属が再度固体になるべく十分に冷却される前の、金属パウダーの一定量として表現することもできる。溶融プールからの金属の一部分がレーザースポットからの過剰なエネルギーに起因して蒸発した場合には、蒸発プロセスにおける金属の迅速な膨張が、溶融金属が溶融プールから放出されることをもたらしうる。これらの放出された粒子は、依然としてスキャニングされるべきエリア内のパウダー表面を変形させ、これにより、不均一な表面に起因した更なる溶融プール不安定性をもたらしうる。
【0012】
[0036] これに加えて、溶融金属の放出された粒子は、その大きな表面積、上昇した温度、及び放出プロセスにおける周囲のガスに対する曝露、に起因して、酸化物及び/又はその他の化合物を形成する傾向を有しうる。これらの粒子は、継続されるスキャンプロセスにおいてスキャニング及び溶融されるエリアに最終的にとどまり、最終的な部分の微細構造及び機械的プロパティに影響しうる。
【0013】
[0037] 入射レーザースポットエネルギーが過剰に大きく、且つ、結果として生じる金属蒸発の上記課題を低減するべくスキャン速度を増大させて補償した場合には、熱エネルギーは、すべての金属パウダーを十分に溶融及び融合するのに十分に速い速度ではパウダー層内に伝播しえない場合がある。従って、この結果、最終的な部分が、溶融していない金属パウダーのボイドを含むことになり、これは、最終的な部分のプロパティを損ないうる。
【0014】
[0038] いくつかの例においては、上述の課題には、所与のレーザースポットエネルギー及びスキャン速度において、すべての金属パウダーの十分な溶解を保証するように、パウダー層の厚さを低減することにより、対処することができる。しかし、所与の部分を構築するべく、多数の相対的に薄い層が必要とされることから、このような方式は、プロセスの有効レートを低減する。また、パウダー層の厚さは、平均パウダー粒子サイズ(通常は、15~45μmの範囲内)未満にはなりえないことから、層厚さに対する制限も存在している。
【0015】
[0039] レーザースポットパワー及び速度が増大するのに伴って、別の課題が発生する。スキャントラックの下方におけるすべての金属パウダーの十分な溶融を保証することを可能としつつ、入射パワー及びスキャニング速度が十分に増大された場合に、溶融プールが、依然として不安定になる場合がある。連続的な溶融プールを生成し、これが後から連続的な固体金属トラックに冷却されるのではなく、溶融プールが、不安定化し、個々の溶融液滴に分裂することを開始し、これらは、その後、処理済みのエリアの表面上において、きれぎれのボールに冷却される。しばしば「ボール化(balling)」と呼称される、この現象は、レイリー不安定性に起因した、きれぎれの液滴を形成するメカニズムである。この不安定性は、溶融プールの長さ対幅比率が特定の臨界値に到達したら、観察される。この結果、高表面張力勾配が、溶融プールのテール内におけるボイドの形成をもたらしうる。増大したレーザースポットスキャニング速度に伴って、溶融プールの長さが、溶融プールの幅よりも、格段に相対的に迅速に大きくなるのに伴って、長さ対幅比率が増大する。この溶融プール不安定性現象に寄与する更なるファクタは、特定のパウダー粒子の局所的構成、湿潤、マランゴニ流、及び重力である。
【0016】
[0040] 上述の内容に加えて、レーザーに基づいたパウダーベッド融合/溶融プロセスのレートを増大させるための別の可能な方法は、スポットサイズを増大させる、というものである。スポットサイズが増大するのに伴って、合計スポットパワーが増大しつつ、スポットの平均パワー密度が一定に留まり、これにより、有効マシンレートを増大させることができる。但し、本発明者らは、特定のサイズにおいては、追加されたパワーが、正味の有効パウダー処理レートの増大ではなく、金属蒸発を結果的にもたらすことから、このスポットサイズを増大させる能力は制限されることを認識した。また、スポットサイズが増大するのに伴って、最終的な完成した部分の空間分解能も減少する。特徴サイズの分解能が十分に減少してしまうと、結果的に得られる部分が、最終的な望ましい且つ有用な状態を得るために集約的な事後機械加工及び処理を必要とすることになることから、選択型レーザー溶融プロセスの利益が消失してしまう。
【0017】
[0041] 上述の内容に鑑み、現時点の機械における選択型レーザー溶融プロセスは、プロセスの物理的制限によって制約されている。高品質プロセス状態を維持しつつ、相対的に大きな正味の処理レートが可能ではない。これらの制限に対処するための試みの1つの方式は、ビームが、回転するミラーを使用して完全に独立的にスキャニングされる状態において、単一の機械に複数のレーザービームを追加する、というものであった。例えば、2つ、或いは、場合によっては、4つ、のビームを有する機械が、2~4kWの範囲内の合計パワーを伴って、利用可能である。この方式は、ビームスポットの数を増大させることにより、相対的に大きな有効マシンレートを許容しうるが、それぞれのスポットは、依然として、以上において概説されているエネルギー限度によって制約されている。更には、パウダー層上のそれぞれのスポット場所の間の位置精度が、部分精度及び分解能の低減を伴わない単一ポイントのマルチスポット処理を困難なものにしうる。
【0018】
[0042] マルチスポットレーザーシステムは、単一パウダーベッド内において複数の独立的な部分を生成するべく有用でありうる、十分に独立したレーザースポット制御を有しうるが、それぞれの部分/スポット組合せごとの有効レートは、依然として、プロセスパワー組合せによって制限されている。また、複数の独立的なスポットを単一部分上において使用することは可能であるが、この場合には、スポットの間の場所精度が、非常に重要になり、且つ、制御も非常に困難である。部分精度及び分解能が低減される場合があり、ビームとビーム位置決めメカニクスの間の干渉を回避するべく、注意しなければならない。機械サイズが、相対的に大きなビルド容積を収容するべく、増大するのに伴って、複数の独立的なスポットの間の位置精度を維持することが更に困難になる。
【0019】
[0043] また、マルチスポットレーザーシステムは、相互の関係において固定された最終的な供給オプティクスを有するように、構築することができる。この方式は、スポット場所の間の位置精度の課題の解決を支援しうるが、供給オプティクスのサイズに起因して、スポット場所のレイアウトが最適なものにならない場合がある。例えば、出力スポットを互いに近接して配置された状態に維持するために、供給オプティクスはそのサイズに起因して、スポットサイズよりも十分に更に離れた状態に配置されることを余儀なくされる。いくつかの例においては、ビームが、パウダー表面上の入射エリアにおいて、或いは、最終的な反射ミラー又はガルボスキャナ組立体の前の別の地点において、収束するように、互いに対して所定の角度にオプティクスを配置することにより、ビームを1つに集めることができる。但し、この方式に伴う課題は、複数のスポットの角度を有する入射が、それぞれのレーザースポットの下方において異なる溶融振る舞いをもたらす、という点にある。また、異なる入射角度は、それぞれのスポットが、それぞれの隣接するスポットに隣接して配置及び維持されうる近接性をも制限している。2つの隣接する円形スポットから均一な溶融フロントを取得するには、それぞれのスポット内のエネルギー密度が均一でなければならず、これは、異なる入射角度及び別個の供給オプティクスによって実現することが非常に困難でありうる。これを理由として、固定相対位置マルチスポットレーザーシステムは、通常、それぞれが別個の溶融プールを生成する個々の別個のスポットにより動作するように、構成されている。この結果、スキャニングパターンは、連続的なスキャンパス上のスポットの間のギャップにおいて増分的に階段状になるように、設計されている。更には、互いに隣接した状態において複数の固定オプティクスヘッドを配置することに伴う課題は、この方式に伴って一度に利用されうるレーザーユニットの数に対して、実際的な制限を課しており、従って、固定独立レーザーオプティクスヘッドシステムは、通常、4~5個の個々のレーザースポットに制限されている。
【0020】
[0044] シングル又はマルチスポット選択型溶融システムにおける上述のパワー密度制限に対処するべく使用される更に別の方式は、平均してラインの形状を有する加熱エリアを生成するべく、線形経路に沿って非常に迅速に往復方向にスポットをスキャニングするというものである。但し、非常に高速のスキャン速度によっても、結果的に得られる平均ライン形状は、上述のように、パウダー化された金属層の熱伝達特性により、パワー入力において依然として制限される。例えば、過大なパワーは、金属蒸発及び金属プール不安定性を依然としてもたらす。
【0021】
[0045] 以上の内容に鑑み、本発明者らは、ライン形状の入射エネルギーソースを利用する選択型レーザー溶融システムと関連する多数の利益を認識及び理解した。例えば、このようなシステムは、上述の方式との比較において、有効材料処理レートの増大を提供しうる。いくつかの実施形態においては、入射エネルギーの瞬間的形状は、第2の次元(例えば、ラインの幅)よりも大きな第1の次元(例えば、ラインの長さ)を有するラインである。ラインを横切る且つこれに沿ったパワー密度プロファイルは、実質的に均一となるように制御される能力を有することができると共に、ラインは、プライマリスキャニング方向がラインの長い次元に垂直である状態において、少なくとも2つの方向においてスキャニングされることが可能でありうる。いくつかの実施形態においては、ラインのパワー密度プロファイルは、時間において変調することができる。
【0022】
[0046] 本明細書において記述されている実施形態は、パウダーベッド金属付加製造において相対的に大きなビルド容積にわたって部分分解能及び精度を維持しつつ、記述されている有効レーザーパワー供給限度の増大により、上述の課題の多くに対処している。本明細書において記述されているシステム及び方法は、任意の大きな量のレーザーパワーを、単一エンティティとしてスキャニングされうる制御可能なプロファイルにおいて、ビルド表面に供給することができる。いくつかの実施形態においては、この入射レーザーパワーの理想的な形状は、長い次元及び短い次元を有するラインであり、この場合に、プライマリスキャニング方向は、ラインの長い次元に対して垂直である。ラインの長い方向におけるパワー密度を実質的に均一な状態にすることができる。
【0023】
[0047] いくつかの態様によれば、入射レーザーエネルギーのラインは、その個々のパワーレベルを個々に制御された状態にしうる、互いに隣接した状態において配置された複数の個々のレーザーエネルギーピクセルから、構成されている。それぞれのレーザーエネルギーピクセルは、独立的にターンオン又はターンオフすることができると共に、それぞれのピクセルのパワーは、独立的に制御することができる。任意の単一のピクセルにわたるパワー密度は、ピクセルがターンオンされた際にピクセルがトップハットエネルギープロファイルを有するように、実質的に均一でありうる。いくつかの実施形態においては、2つの隣接するピクセルのパワー密度は、両方のピクセルが、ターンオンされ、且つ、同一のパワー密度に設定された際に、結果的に得られるラインの長さ方向の長さにわたって均一なパワー密度を生成することができる。
【0024】
[0048] 結果的に得られる、ピクセルに基づいたラインが、主には、ラインの長い軸に垂直にスキャニングされていることから、前進速度及びピクセルパワー密度は、依然として、従来の単一スポットレーザー選択型溶融プロセスとほぼ同一のパワー及び速度限度により、制約されている。但し、互いに直接的に隣接する複数のスポットが存在していることから、有効プロセスレートは、単一のピクセルレートのほぼN倍となることが可能であり、この場合に、Nは、利用可能なピクセルの数である。また、それぞれのピクセルが、個々にターンオン及びオフされうることから、有効部分分解能及び精度は、単一スポットシステムに匹敵しうる状態に留まっている。システムは、単一ピクセルのみをターンオンすることにより、単一スポットシステムとして動作することが可能であるが、この場合、有効システムレートは、実質的に、単一スポットシステムと同一のものとなる。
【0025】
[0049] いくつかの実施形態においては、付加製造システムは、直列に配列されたレンズの組を含む、ラインを生成するためのオプティクス組立体(例えば、オプティクスボックス)内において構成された光学経路を含む。或いは、この代わりに、又はこれに加えて、ビームの回転又は折り曲げのために、1つのミラー又は複数のミラーをビーム経路に追加することが可能であり、且つ/又は、1軸パウダーベッドスキャニングのために、ガルボスキャナをビーム経路に追加することができる。
【0026】
[0050] いくつかの態様によれば、それぞれのレーザーエネルギーピクセルのレーザーエネルギーは、独立的に制御可能なレーザーエネルギーソースによって生成され、且つ、それぞれのレーザーエネルギーソースと関連する個々の光ファイバを通じてオプティクス組立体に供給されている。いくつかの例においては、それぞれの個々の光ファイバは、単一の光ファイバを形成するべく、1つに繋ぎ合わせられたファイバセグメントを含みうる。或いは、この代わりに、又はこれに加えて、単一光ファイバ経路は、2つのファイバの端部を1つに結合するべく、光学コネクタを使用することにより、生成することもできる。複数(例えば、2つ以上)の独立的なレーザーエネルギーソースからの光ファイバのすべてが、オプティクス組立体にルーティングされている。オプティクス組立体内において、光ファイバの端部は、光ファイバの端部が平行であると共にアライメントされていることを保証するマウンティングフィクスチャ(例えば、ファイバホルダ)内において受け入れられている。複数の光ファイバケーブルの端部は、それぞれの光ファイバからの出口においてクリアな且つ均一な光経路を保証するべく、切断及び研磨することができる。また、複数の光ファイバケーブルの端部は、反射防止被覆によって被覆することもできる。これらのファイバ終端から、すべての個々のレーザービームは、オプティクス組立体内の光学レンズ及びミラーの単一の組を通過している。この構成は、すべてのレーザーエネルギーソースの光学経路を同一状態に維持しており、且つ、光学システムのサイズを最小限に維持しつつ、個々のレーザーエネルギーソースからの個々のピクセルが隣接状態において留まることを保証している。
【0027】
[0051] すべてのオプティクスが同一のレンズアレイを通じて同一の光学経路を辿っている状態において、結果的に得られるレーザーエネルギーラインは、その形状を維持しており、且つ、単一ミラー組立体によって反射することができると共に、単一軸のガルボスキャナに取り付けられたミラーを使用してスキャニングすることができる。この結果、高レート選択型レーザー溶融プロセスを生成するべく、任意の多数のレーザーシステムをピクセルに基づいたラインに組み合わせることができる。
【0028】
[0052] 更に詳しく後述するように、いくつかの実施形態においては、オプティクス組立体からの出力は、ガルボスキャナを利用してパウダー層に向かって導くことが可能であり、次いで、パウダー層上の非垂直入射におけるビーム形状歪を極小化するべく、f-θ又はテレセントリックレンズなどの、レンズ又はレンズ組立体を通過させることができる。
【0029】
[0053] いくつかの実施形態においては、オプティクス組立体の出力は、ガルボスキャナを使用してプライマリ方向においてスキャニングされうる一方で、オプティクス組立体の全体は、モーター化されたステージアクチュエータを使用してプライマリ方向に垂直のセカンダリ方向においてスキャニングされている。或いは、この代わりに、オプティクス組立体の出力は、プライマリ方向においてガルボスキャナを利用して高速モーションでスキャニングされうる一方で、オプティクスボックスは、直交するように取り付けられたモーター化されたステージを使用して、プライマリ方向、及びプライマリ方向に垂直のセカンダリ方向の両方において、相対的に低速のモーションでスキャニングされている。その他の実施形態においては、オプティクス組立体からの出力は、なんらのガルボスキャナステージをも伴うことなしに、モーター化されたステージ運動のみを使用してスキャニングされうる。更なる実施形態においては、ピクセルラインの長い軸に垂直のラインを移動するよう、両方のステージを作動させるべく、オプティクス組立体から出力されたピクセルアレイラインが、モーションステージとの関係において固定角度において方向付けされるように、オプティクス組立体を取り付けることができる。或いは、この代わりに、これは、オプティクス組立体からの出力がガルボスキャナを使用してスキャニングされることにより、実現することもできる。その他の実施形態においては、オプティクス組立体からの出力は、モーションの際に、モーションステージとの関係において動的に回転させることができる。或いは、この代わりに、オプティクスボックスの動的な回転は、オプティクスボックスとの関係において固定されたガルボスキャナと結合することもできる。
【0030】
[0054] 特定の実施形態においては、オプティクス組立体は、他の軸におけるモーター化されたモーションと組み合わせて、ビルド表面上のパウダー層に垂直の上方及び下方へのモーションを許容する、モーター化されたステージ上に取り付けることもできる。これは、ビームがガルボスキャナによって往復方向においてスキャニングされることに伴って、出力ビームの合焦の改善を許容することができる。或いは、この代わりに、オプティクス組立体内の光学経路は、高速な動的焦点距離調節を可能にするべく、自動合焦アレイを含みうる。これは、相対的に幅広のガルボスキャニングレンジに対応するべく、相対的に大きな焦点距離調節を許容しうる。
【0031】
[0055] 実施形態に応じて、レーザーエネルギーピクセルの線形アレイ(即ち、ラインアレイ)は、ラインアレイの長さ方向の長さに沿って、均一なパワー密度を有することができる。いくつかの例においては、ライン出力ピクセルアレイは、それぞれのピクセルの関連するレーザーエネルギーソースごとに異なるパワー出力レベルを設定することにより、ラインアレイの長さ方向の長さに沿って、不均一なパワー密度を有することができる。更には、線形アレイの端部上の個々のピクセルは、長さ方向において、相対的に短い長さ又は相対的に長い長さを有するラインアレイを生成するべく、選択的にターンオフ又はオンすることができる。いくつかの実施形態においては、単一のピクセルを除くすべてのピクセルは、微細特徴プロファイリング用の単一ポイントピクセルを取得するべく、選択的にターンオフすることができる。特定の実施形態においては、線形アレイは、それぞれの相対的に小さな線形アレイに沿ったパワー密度が同一である、複数の相対的に小さな線形アレイに分割することができる。或いは、この代わりに、又はこれに加えて、複数の相対的に小さな線形アレイは、それぞれの相対的に小さなアレイ内においては均一であるが、アレイごとに異なる、異なるパワー密度を有することもできる。いくつかの例においては、複数の相対的に小さな線形アレイは、小さなアレイの間で異なるパワー密度を有するとともに、それぞれの相対的に小さなアレイにわたって異なるパワー密度を有することができる。
【0032】
[0056] 更には、いくつかの実施形態においては、レーザーエネルギーの線形アレイ内の様々なピクセルのパワーレベルは、付加製造プロセスの全体を通じて独立的に制御することができる。例えば、様々なピクセルは、線形アレイの長さに沿って望ましいパワー密度を提供するべく、選択的に、ターンオンされてもよく、ターンオフされてもよく、或いは、中間パワーレベルにおいて動作させられてもよい。
【0033】
[0057] 本開示のいくつかの態様によれば、光ファイバを出た後の入射レーザービームの光学経路は、パウダー表面上において均一なライン形状を得るために重要でありうる。いくつかの実施形態においては、付加製造システムの光学経路は、1つ又は複数の対物レンズによって後続される、1つ又は複数のマイクロレンズ(例えば、1つ又は複数のマイクロレンズアレイ)を含む、レンズアレイを含む。独立的なレーザーエネルギーソースからのすべてのビームは、レンズアレイ内の同一のレンズの組及びオプティクス組立体内の同一の対物レンズを通過する。更に詳しく後述するように、レンズアレイ(1つ又は複数のマイクロレンズを含む)は、それぞれの光ファイバソースから出力されたレーザーエネルギーをコリメートするように、且つ、ガウスパワー分布を有する円形ビームプロファイルから、両方の軸において均一なパワー分布を有する矩形ビームプロファイル(例えば、トップハットパワー分布)に、ビーム形状を変換するように、構成することができる。このようにして、レンズアレイは、レーザーエネルギー出力を矩形レーザーエネルギーピクセルのアレイに変換することができる。対物レンズは、組み合わせられたラインアレイの焦点距離を定義するように、且つ、レンズアレイからの出力を縮小するべく機能するように、構成することができる。この縮小は、ファイバホルダ内の隣接するファイバの間の距離によって設定された初期間隔から、パウダー表面上の望ましいピクセル間隔に、ピクセル間隔を小さく変更している。例えば、対物レンズは、隣接するピクセルの間に間隔が存在しないように、アレイを縮小するよう構成することができる。
【0034】
[0058] いくつかの態様によれば、オプティクス組立体から出力されたレーザーラインは、2つの以上の矩形ピクセルを有する線形アレイであってよく、この場合に、ラインは、ピクセルのすべてがオン状態にある際のその幅よりも、長い。例えば、2つレーザーエネルギーソースを有するシステムにおいて、両方のレーザーが同一のレーザーパワーを出力するように制御されている場合には、ラインの長さにわたるパワー密度は、実質的に均一である。或いは、この代わりに、これら2つのピクセルのパワーレベルは、ラインの長さにわたって変化するパワー密度を有するライン出力を結果的にもたらす、異なるレベルを有するように、制御することもできる。その他の実施形態においては、相対的に長いレーザーラインを実現するべく、2つ超のピクセルを利用することができる。いくつかのこのような実施形態においては、同一のパワー出力を有するようにそれぞれのピクセルを制御することにより、ラインの長さにわたるパワー密度を均一な状態に維持することができる。或いは、この代わりに、異なるパワーレベルを有するようにピクセルを独立的に制御することにより、ラインに沿ったパワー密度の任意の組合せを得ることもできる。
【0035】
[0059] 本発明者らは、それぞれのレーザーエネルギーソースから出力されたビームの、円形ガウスプロファイルから正方形トップハットプロファイルへの変換は、パウダー表面上における複数トラックシングルパス溶融プール安定性を可能にするために重要であることを理解した。例えば、
図1は、その中心線の周りにおいてガウスパワー密度を有する円形ビームを示している。
図2に示されているように、2つの円形ガウスビームが互いに隣接した状態に配置された場合に、パワー密度は、正確なビームパワー密度に応じて組み合わせられる。両方の円形プロファイルの中心を通じたライン上における組み合わせられたパワー密度の合計は、
図2の右のグラフにおいて示されているものとなる。組み合わせられたパワー密度は、ピーク及び谷を定義しており、且つ、均一ではない。
図3に示されているように、これら2つのスポットが、その積層された方向に直交する方向において移動した場合には、パウダー表面上の異なるトラックは、入射ビームの中心線との関係におけるトラックの位置に応じて、異なるパワープロファイルに曝露されることになる。個々の円形ビームの中心上に直接存在しているトラック(
図3のトラックA)は、個々の円形ビームの中心線からオフセットされたトラック(
図3のトラックB)との比較において、相対的に大きなピーク強度を有する相対的に幅広のビーム形状に対応することになる。異なるトラックにおける最も大きな差は、個々のビーム中心線上のトラックと、2つの隣接する円形ビームが交差する地点におけるトラックとの間のものとなる。この移動ライン下の異なるトラックにおける有効入射ビーム幅及びピークパワー密度の差は、上述のものなどの、異なる溶融レート及び溶融プール不安定性を結果的にもたらすことになる。
【0036】
[0060] 上述の円形ガウスビーム形状とは対照的に、それぞれの独立的なレーザーエネルギーソースからの出力が、(例えば、1つ又は複数のマイクロレンズを使用して)均一なパワー密度を有する矩形ビーム形状(即ち、トップハットプロファイル)に成形された場合には、結果的に得られるビーム形状及びパワー密度は、
図4に示されているものである。結果的に得られる矩形ビーム形状のX及びY方向の両方において、パワープロファイルは、実質的に均一である。この結果、2つの矩形プロファイルが、隣接した状態において配置され、且つ、その長さ方向の積層された長さに直交するように移動した場合には、隣接するビームプロファイルのパワープロファイルは、ライン投射の長さ方向の長さにわたってだけでなく、ラインの短い幅にわたって実質的に均一なプロファイルを提供するように、組み合わせられる。これは、それぞれのトラックライン(
図5のトラックC、D、及びE)が、ラインがパウダー表面上においてスキャニングされるのに伴って、すべてのその他のトラックと同一の有効ビーム幅及びピークパワーに対応することを意味している。
【0037】
[0061] 更には、本発明者らは、高品質の融合材料トラックを生成するには、パウダー表面上の入射レーザーエネルギーラインの正味のパワー曝露の均一性が重要であることを理解した。
図6~
図9に示されているように、複数の隣接矩形トップハットプロファイルピクセルから構成されたライン(
図6~
図7)は、隣接する円形ガウスピクセルから構成された類似のライン(
図8~
図9)との比較において、スキャニングされたビーム内のすべての地点において、相対的に均一な入射エネルギープロファイルを生成する。矩形トップハットプロファイルによれば、ラインの幅にわたる中心線パワー密度が相対的に均一であるのみならず、ラインの幅にわたる中心線から外れたパワー密度も、相対的に均一である。円形ガウスプロファイルが円形トップハットプロファイル(即ち、均一なパワー密度を有する円形ビーム形状)に変換された場合にも、矩形及び円形ビーム形状の間の中心線パワー密度プロファイルは同一のものとなる一方で、矩形ビーム形状のオフ中心線パワー密度は、トップハット円形ビーム形状のオフ中心線パワー密度の場合よりも、格段に相対的に均一となる。従って、すべてのケースにおいて、それぞれのピクセルごとの矩形トップハットビーム形状は、ガウス又はトップハットプロファイルの円形ビーム形状から構成された類似のマルチピクセルラインよりも、マルチピクセルライン内のすべての地点において、相対的に均一なパワー密度を生成することになる。更には、相対的に均一なパワー密度は、相対的に小さな溶融プール不安定性を生成することができると共に、相対的に大きな処理速度、相対的に高いパワー密度、及び相対的に幅広のプロセスウィンドウを許容することができる。
【0038】
[0062] いくつかの態様によれば、焦点内において位置決めされたパウダー表面に伴って付加製造プロセスを動作させることが、重要でありうる。例えば、これは、入射ビームエリアが、パウダー表面上において極小化されるのに伴って、最大の可能なパワー密度を保証することができる。また、これは、それぞれのピクセルのサイズを極小化することができると共に、結果的に得られる溶融プール及び融合した部分特徴の最高可能分解能を許容している。焦点外における動作は、入射ビームの低い有効パワー密度を結果的にもたらす場合があり、これは、相対的に低速のスキャニング速度を必要とすることを結果的にもたらす可能性があり、且つ、正味の処理レートを低速化させる場合がある。或いは、この代わりに、同一の速度で動作して類似の処理レートを得るべく、相対的に高パワーのレーザーエネルギーソースが必要とされる場合もある。これらの大きな正味のパワーは、上述のように、溶融プール不安定性をもたらす場合があり、これは、また結果的に、プロセスパラメータの安定した組内において動作するべく、相対的に小さな処理速度を必要とすることにもなろう。また、焦点内において動作することは、マルチピクセルラインの幅にわたるパワー密度プロファイルを実質的に均一な状態において維持することを支援しうる。焦点の外における動作によれば、ピクセルがオーバーラップしうると共に、ラインの長さにわたるパワー密度プロファイルが、望ましくないピーク及び谷を有しうる。特定の実施形態に応じて、対物レンズのタイプ、数、及び間隔は、望ましい縮小の程度、望ましい焦点距離、及び望ましい焦点のサイズに依存している。
【0039】
[0063]
図10~
図13を参照し、レーザーエネルギーピクセルの線形アレイ内のパワー分布の影響の別の例について説明する。具体的には、
図10は、表面上に(例えば、パウダーベッド表面に)投射されうる線形アレイ200を描いており、且つ、線形アレイは、一連の隣接する矩形レーザーエネルギーピクセル201~205を含む。上述のように、個々のピクセルの幅にわたるパワー密度は、異なる分布を有することが可能であり、且つ、隣接するピクセルの異なる分布のパワー密度の相互作用が、線形アレイ200のパワー密度の均一性を決定することになる。個々のピクセル用のパワー密度分布がガウス形態210をとる場合に、複数の隣接するピクセルが同一のパワーレベルに設定された際には、個々のピクセル220、221、222は、個々のピクセルの空間的な合計である出力パワー密度分布を有する単一出力ライン230を形成するために組み合わせられる。この単一の出力ライン230上の密度の変動は、それぞれのピクセル内の変動のみならず、ピクセルの間のオーバーラップエリアの合計に起因している。個々のピクセル用のパワー密度分布が均一な分布(即ち、トップハット形態)215をとる場合に、線形アレイ200内の隣接するピクセルが同一のパワーレベルに設定された際には、個々のピクセル225、226、227は、単一出力ライン235を形成するために組み合わせられる。ガウスピクセルとの比較において、それぞれの個々のピクセルの幅にわたって相対的に変動が少ないことから、且つ、隣接するピクセルの間に相対的にオーバーラップエリアが少ないことから、結果的に得られる出力ライン235は、ガウスピクセルからのライン230との比較において、相対的に均一なパワー密度分布を有する。同一の内容は、単一出力ラインの幅にわたるパワー分布の場合にも適用される。ピクセルの幅にわたるトップハットプロファイル215は、幅にわたるガウス分布210の場合よりも、相対的に均一なパワー密度分布を結果的にもたらしている。
【0040】
[0064]
図11に示されているように、独立的に制御可能なレーザーエネルギーピクセル251~255を含む、単一出力線形アレイ250の使用は、個々のレーザーエネルギー入力がその光学アレイのサイズに対応するべく互に傾斜されなければならない、個々の固定スポットアレイ270の使用と比べて、利点を有する。単一出力線形アレイ250においては、個々のピクセルは、いずれも同一の角度において表面(例えば、パウダーベッド表面)上に入射している。この角度は、表面(280)に対して垂直であることが可能であり、或いは、プライマリスキャン方向から離れるように(281)、或いは、プライマリスキャン方向に向かって(282)、表面に対して鋭い角度を有することもできる。すべてのピクセルは、常に、同一の角度を維持している。このラインの幅にわたってトップハットパワー密度プロファイルを有するケースの場合には、鋭い角度用のパワー密度(283、284)は、実際の入射角度に応じて低ピーク値を有するが、相対的に幅広の幅を有する。対照的に、ガウス分布の場合には、ラインの幅にわたるパワー密度は、垂直入射ピクセル287との比較において、鋭い入射角度を有する細長いリードイン286又は細長いテール288を示している。
【0041】
[0065] 更には、個々のスポットアレイ270によれば、その光学アレイのサイズ制限に起因して、入射ビームは常に、プライマリスキャン方向に向かう方向(301)、離れる方向(302)の両方における鋭い入射角度の組合せから構成されることになり、且つ、垂直入射スポット(300)をも含みうる。トップハットパワー密度分布を有する個々のスポットの場合、異なる方向からの同一の入射角度303、305を有するスポットについては、類似のパワー分布を結果的にもたらすが、垂直スポット304については、異なるパワー密度を結果的にもたらす。ガウスパワー分布の場合、異なる入射角度は、同時に細長いリードイン306及び細長いテール308によってスキャニングするいくつかのスポットと、リードイン又はテールを伴わない潜在的な垂直スポット入射307と、を結果的にもたらすことになる。これは、異なる入射ビームにおけるスキャン速度の最適化を妨げる。入射角度が増大するのに伴って、異なるスキャンパワー密度プロファイルの管理の困難さが増大する。
【0042】
[0066]
図12は、異なる可能な出力を有するラインアレイを示す。上部プロットは、ラインを形成する8つのピクセルの潜在的なアレイを示す。このライン内のそれぞれのピクセルは、
図12の最上部のプロットにおいて示されているように、ラインの長さに沿って均一なパワー密度を有するフル幅ラインを生成するべく、同一のパワー密度に設定することができる。いくつかの例においては、個々のピクセルは、
図12の中央プロットにおいて示されているように、相対的に短い個々のラインを生成するべく、ターンオフすることができる。或いは、この代わりに、それぞれのピクセルのパワーレベルは、ラインの長さに沿って、或いは、複数の相対的に小さなラインに沿って、ほとんど任意のパワー密度のラインを生成するべく、個々に設定することができる。合計ライン幅が増大し、且つ、ピクセルカウントが増大するのに伴って、ラインの長さに沿って不均一なパワー密度を設定する能力は、エッジ効果に対応するべくプロセスを適合させるために有用でありうる。他のピクセルに両側において隣接している、パウダーベッド表面上のピクセルは、ラインのエッジ上のピクセルよりも、安定した溶融プール状態を得るために相対的に少ない合計入射パワーを必要としうる。これは、相対的に多くのパワーによって対応しなければならないラインのエッジにおける対流及び伝導熱損失に起因している。また、以前のスキャン層からの、個々のピクセルの下方の融合材料の存在又は欠如は、所与のピクセルの溶融プールの局所的な熱特性に影響を及ぼしうる。これらのエッジ効果及び以前のスキャン効果に対する1つの解決策は、スキャンの際のその地点におけるそのピクセルの境界条件に応じて、ラインの長さにわたってカスタムパワー密度を設定する、というものである。
図12の下部プロットは、2つのエッジにおける相対的に大きなパワーを有するラインパワー密度と、ラインの残りのピクセルにわたる階段状のプロファイルと、を示している。
【0043】
[0067]
図13は、線形アレイ内の個々のピクセルをターンオフする能力の別の例を描いている。
図12との関係において上述した構成と同様に、これも、異なる長さのラインセグメントのみならず、複数の相対的に短いセグメントの使用を許容しうる。
図13の上部プロットにおいて示されているように、線形アレイは、個々のピクセルの分解能まで下方に分割することができる。オプティクス組立体のスキャニングモーション中に様々な地点において個々のピクセルをターンオン又はオフすることによる、パウダーベッド融合プロセスから形成される3D特徴の究極の分解能は、単一ピクセルのものである。また、ライン長は、
図13の中央の2つのプロットにおいて示されている複数のピクセルから、
図13の下部プロットにおいて示されている単一のプロットまで、形成することができる。単一ピクセル分解能は、線形アレイ内のピクセルの任意ものから生成することができる。この結果、任意の地点において任意の単一ピクセルを起動することにより、線形アレイのスキャニングモーションにおける任意の地点での微細分解能特徴を生成することができる。また、単一ピクセル分解能はラインアレイの単一スキャンから取得することができ、そのラインアレイには、パウダーベッド表面上において移動するオプティクスユニットにおいて連続的な隣接ピクセルをターンオン及びオフすることにより、スキャニングモーションの方向に対して所定の角度を有するという特徴がある。
【0044】
[0068] 更に詳細に後述するように、1つ又は複数のマイクロレンズを含むレンズアレイの後の、1つ又は複数の対物レンズが、組み合わせられたビーム(例えば、レーザーエネルギーピクセルの線形アレイ)の焦点距離及び焦点を定義することができる。ビームの焦点距離は、光学組立体の最後の対物レンズから焦点までの距離である。焦点において、それぞれのビーム又はピクセルは、その最小寸法を有しており、且つ、それぞれのビームは、隣接ビームに直接的に隣接している。例えば、隣接レーザーエネルギーピクセルのエッジが互いに接触状態となるように、隣接するビームの間には間隔が存在していなくてもよい。
図14には、この焦点における状態が概略的に示されている。(ビーム経路に沿ったいずれかの方向において)ビームの焦点から離れるにつれて、ビームの寸法は増大しており、且つ、ビームは、
図15に示されているように、互いにオーバーラップすることを開始しうる。焦点は、通常、ビームサイズが定義された範囲内である、ビーム経路に沿った領域として定義されている。この例においては、これは、矩形プロファイル寸法が既定の値未満である、ビーム経路内の領域として定義することができる。いくつかの例において、焦点は、実際の単一の地点ではなく、ビーム経路に沿った長さとして定義することができ、また個々のビームのサイズ(例えば、ピクセル寸法)が定義済み焦点サイズ未満に減少した際に開始し、ビームが定義済み焦点サイズ超に拡大して戻った際に終了するように定義されている。
【0045】
[0069] いくつかの例において、矩形トップハットビーム形状は、マイクロレンズを含むレンズアレイの使用を伴うことなしに、取得することができる。例えば、独立したレーザーエネルギーソースからパワーを供給するべく、正方形光ファイバが使用されている場合には、ファイバホルダにおけるファイバからの出力は、既に、正方形の両方の方向において均一なパワー密度を有する正方形トップハット形状を有している。ファイバマウント内に取り付けられた正方形光ファイバからの独立的な出力は、ファイバ表面上における縮小及び合焦のために、対物レンズスタック内にまっすぐ導くことができる。
【0046】
[0070] 但し、本発明者らは、正方形ファイバの使用は、ファイバマウント内におけるファイバのアライメント及び取付に関する更なる要件を課しうることを理解した。具体的には、正方形トップハット形状がファイバ自体によって確立されている正方形ファイバによれば、ファイバマウントは、間隔及び軸方向アライメントのみならず、正方形形状の間の回転アライメントをも確立しなければならない。正方形ファイバが回転的にアライメントされていない場合には、結果的に得られるピクセルのパターンも、
図16に示されているように、同様にミスアライメントされることになる。対照的に、
図17~
図18に示されているように、円形ビームを矩形ビームに成形するべく、円形ファイバ及び1つ又は複数のマイクロレンズを含むレンズアレイによれば、その軸の周りにおけるファイバの向きは、重要なパラメータではない。ピクセルの究極の矩形形状及びピクセルの向きが、レンズのアレイによって確立及び維持されていることから、円形ファイバがどのような向きであっても適切である。レンズアレイのそれぞれのマイクロレンズは、単一のモノリシック部分として製造されうることから、矩形ビーム形状の間のアライメントを維持することは、それぞれのレンズの製造に固有のものであり、制御することができる。従って、矩形ピクセルが対物レンズを通過した後、ファイバ光学組立体からの出力は、ファイバを回転的にアライメントする必要性を伴うことなしに、パウダー表面上において均一なピクセルアレイを生成することになる。
【0047】
[0071] 次に
図19~
図28を参照し、本開示による付加製造システムの特定の非限定的な実施形態について更に詳細に説明する。本開示は、本明細書において記述されている特定の実施形態にのみ限定されるものではないことから、これらの実施形態との関係において記述されている様々なシステム、コンポーネント、特徴、及び方法は、個々に、且つ/又は、任意の望ましい組合せにおいて、使用されうることを理解されたい。
【0048】
[0072]
図19は、付加製造システム10の一実施形態を描いている。システムは、関連する光ファイバ2に結合された、2つ以上の独立的なレーザーエネルギーソース1を含む。例えば、独立的なレーザーエネルギーソース1は、10~2000Wの最大出力パワーを有するNd:Yagファイバレーザーであってよい。いくつかの例においては、それぞれのレーザーエネルギーソースの最大出力パワーは、200~1000Wであってよい。他の実施形態においては、レーザーソースは、ファイバ結合されたダイオードレーザーを含みうる。それぞれの独立的なレーザーエネルギーソース1用のそれぞれの独立的な光ファイバ2は、それぞれの光ファイバの第1の端部が、関連するエネルギーソースに結合されると共に、それぞれの光ファイバの第2の端部が、オプティクス組立体内において受け入れられるように、オプティクス組立体3にルーティングされている。更に詳しく後述するように、オプティクス組立体3は、ビルド表面上において配置されたパウダーベッド表面7上に導かれる、組み合わせられた光学出力6を生成している。
【0049】
[0073] それぞれの独立的なレーザーエネルギーソース1は、制御ケーブル5を使用することにより、中央制御ユニット4に接続されている。中央制御ユニット4は、それぞれのレーザーエネルギーソース1を独立的に制御するように、構成されている。例えば、中央制御ユニットは、オン/オフ信号及びパワー出力信号をそれぞれの独立的なレーザーエネルギーソースに提供することができる。それぞれの独立的なレーザーエネルギーソース1へのパワー出力信号は、最小パワーレベルから最大出力パワーレベルまで、レーザーエネルギーソースの出力パワーを制御することができる。例えば、出力パワーレンジは、それぞれの独立的なレーザーエネルギーソース1の最大パワー出力の10%~100%であってよい。
【0050】
[0074]
図20は、オプティクス組立体3の一実施形態を描いている。オプティクス組立体3内において、それぞれの光ファイバ2の端部は、ファイバマウント20内に受け入れられている(
図21を参照されたい)。ファイバマウント20は、隣接する光ファイバ2の間の間隔を固定しており、光ファイバ2の軸が平行であり且つアライメントされていることを保証している。ファイバマウント20の出力側において、光ファイバ2の端部は、均一であり且つ一貫性を有するビームがそれぞれの個々の光ファイバ2から出ることを保証するべく、切断され、クリーニングされ、且つ、研磨されている。個々の光ファイバ2からの組み合わせられたレーザー出力34は、一連の光学レンズ21~29に向かって導かれている。組み合わせられたレーザー出力34は、ファイバマウント20内において線形に配置された個々の光ファイバ2を通じて、隣接する独立的なレーザーソース1の投射から1つのラインを形成している。
【0051】
[0075]
図21に最良に示されているように、すべての独立的なレーザーソース1がオンである際に、組み合わせられたレーザー出力34は、個々のピクセル50~54を有する連続ライン55を形成している。このオプティクス組立体内の光学経路に沿った地点において、隣接するピクセル50~54はオーバーラップしていてもよく、或いは、ピクセルは互いに分離されていてもよい。組み合わせられたレーザーエネルギー出力34におけるピクセル50~54のオーバーラップの程度は、レーザーエネルギー出力がファイバマウント20においてファイバ2を出た後、ピクセル50~54を通過するまでの光学経路に依存しうる。この結果、任意の適切な数の独立的なレーザーエネルギーソース1を単一の組み合わせられたレーザー出力34内に結合することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、独立したレーザーエネルギーソース1の数は、2~20、5~50、又は10~100の範囲である。
【0052】
[0076] オプティクス組立体3内の組み合わせられたレーザー出力34は、一連のレンズ21~29を通過する。レンズ21~29の数及びタイプは、オプティクス組立体からの組み合わせられた光学出力6の望ましい出力形状及び焦点距離に依存する。
図22において示されているように、第1レンズ21は、低速軸コリメータ22によって後続される高速軸コリメータであり、これらは、組み合わせられたレーザー出力34を、隣接するピクセル60、61、62の間において制御されたオーバーラップを有するライン形状に形成するべく使用されており、この場合に、それぞれのピクセルは、独立的なレーザーエネルギーソース1の出力によって生成されている。また、高速軸コリメータ21及び低速軸コリメータ22は、例えば、光ファイバからの円形ビームプロファイルを矩形レーザーエネルギーピクセルに変換するために、それぞれの独立的なレーザーソース1のビーム形状を変更するべく、使用されている。結果的に得られるピクセル形状60、61、62は、すべての独立的なレーザーソース1がターンオンされた際に、連続的な出力ライン63を形成する。次いで、この連続的な出力ライン63は、更なる一連のレンズ23~29(
図20を参照されたい)を通過し、これらは、制御され組み合わせられた光学出力6を形成するべく、オプティクス組立体3内の出力ラインを成形及び合焦する。
【0053】
[0077] オプティクス組立体3は、レーザーエネルギーの連続出力ライン63を折り曲げるように構成された特定のミラー30、31、32を含みうる。いくつかのケースにおいては、この折り曲げは、オプティクス組立体3の寸法を限られた状態において維持することを支援している。描かれている実施形態においては、連続出力ライン63は、オプティクス組立体3内において2回にわたって折り曲げられている。但し、本開示は、この観点において限定されてはいないことから、出力ライン63は、折り曲げられなくてもよく、1回、3回、又は任意のその他の適切な回数だけ、折り曲げられてもよいことを理解されたい。オプティクス組立体3は、ファイバマウント20、レンズ20~29、及びミラー30~32用のマウンティング及びアライメント特徴を含むフレーム36を更に含む。また、オプティクス組立体3は、組み合わせられた光学出力6の焦点距離を調節しうる、調節可能なレンズ27、28、29の組を有する調節可能な焦点アレイ37を含むこともできる。
【0054】
[0078] 特定の実施形態に応じて、オプティクス組立体3の組み合わせられた光学出力6は、個々の光ファイバ2の入力との関係において直角となるように、個々の光ファイバ2に対して平行となるように、或いは、光ファイバ2との関係において任意の角度となるように、任意の適切な向きにおいて組立体を離脱することができる。
【0055】
[0079]
図23は、オプティクス組立体500の別の実施形態を描いている。この実施形態においては、独立的な光ファイバ600は、オプティクス組立体500の一側部において進入しており、且つ、光ファイバの端部601は、ファイバマウント602によって受け入れられている。ファイバマウントは、個々のファイバ601の端部が、堅固に保持され、光学組立体内においてアライメントされ、且つ、平行であることを保証している。特定の実施形態に応じて、ファイバマウント内の個々のファイバの間の間隔は、約500ミクロン~約10mmであってよい。例えば、いくつかの実施形態においては、隣接するファイバの間の間隔は、約1mm又は約2mmであってよい。個々のファイバ601の端部は、ファイバマウント602の出口において、クリービングされ、摩滅され、且つ、研磨されている。次いで、個々のファイバ601の端部からのビーム出力は、ファイバ601の端部の中心を通過するプレーンに対して垂直である第1方向においてビームをコリメートする円筒形レンズ603に導かれている。次いで、ビームは、第1方向に直交する第2方向においてビームをコリメートする円筒形マイクロレンズアレイ604を通過する。次いで、ビームは、円形ガウスからのビームを第1方向において矩形トップハット形状に成形する別の円筒形レンズ605を通過する。次いで、ビームは、ビームを円形ガウスから第2方向において矩形トップハット形状に成形する円筒形マイクロレンズアレイ606を通過する。次いで、この後に、ビームは、それぞれ、第1及び第2方向においてフーリエ変換を生成する円筒形マイクロレンズ607及び608を通過する。この時点において、ビームは、ミラー610を使用して折り曲げることが可能であり、或いは、ビームがまっすぐな経路内において継続することを許容することもできる。ビームは、ビームを縮小し、且つ、焦点距離及び焦点を設定する、一連の球面対物レンズ611~616の組を通過する。ビーム経路は、対物レンズを通過する前に、この際に、又はこの後に、ミラー613によって折り曲げることができる。縮小は、10:1、又は5:1、又は20:1、或いは、これらの任意の範囲の係数によるものであってよい。焦点距離は、対物レンズのタイプ及び間隔を調節することにより、100mm、200mm、300mm、或いは、任意のその他の適切な値において設定することができる。最後の対物レンズからの出力ビーム620は、パウダー表面に向かってまっすぐに導かれてもよく、或いは、ミラー又はスキャニングガルバノメータによって制御されたミラーを使用することにより、パウダー表面に向かって導かれてもよい。
【0056】
[0080] 円筒形レンズ及びマイクロレンズは、ビーム出力をコリメート及び成形するものとして上述されているが、他のタイプのレンズも適しうることを理解されたい。例えば、他の実施形態においては、ビーム出力をコリメート及び/又は成形するべく、円筒形レンズ、球面レンズ、及び円錐レンズの任意の適切な組合せを利用することができる。同様に、球面対物レンズについて上述されているが、他のレンズ形状(例えば、円筒形及び/又は円錐形レンズ)を対物レンズに利用することができる。従って、本開示は、任意の特定のレンズ形状又はレンズ形状の組合せに限定されるものではないことを理解されたい。
【0057】
[0081] 次に
図24を参照すれば、組み合わせられた光学出力6は、ガルバノメータ上において取り付けられたミラー80に向かって導くことができる。描かれている実施形態においては、組み合わせられた光学出力6は、ガルバノメータに取り付けられたミラー80により、パウダーベッド表面7に向かって方向転換されている。ガルバノメータに取り付けられたミラー80は、角度84にわたって回転することから、(ミラー80において反射した後の)組み合わせられた光学出力81、82は、角度83によって定義されるパウダーベッド表面7上の距離にわたってスキャニングされている。ガルバノメータに取り付けられたミラー80の位置は、ガルバノメータコントローラ85によって駆動されており、そして、ガルバノメータコントローラは、電気制御ケーブル86より、中央制御ユニット4に接続されている。組み合わせられた光学出力81、82がスキャニングされうる角度83は、オプティクス組立体3からの組み合わせられた光学出力6の焦点距離に依存している。いくつかの実施形態においては、オプティクス組立体3(
図16を参照されたい)内における調節可能な焦点アレイ37の使用は、パウダーベッド表面7をスキャニングするための相対的に幅広の角度83を可能にしている。また、いくつかの例においては、ガルバノメータに取り付けられたミラー組立体80を有するオプティクスボックス3は、パウダーベッド表面7に対して移動することが可能であり、これにより、複数のスキャニングモードを可能にしうる。
【0058】
[0082]
図25に描かれているように、いくつかの実施形態においては、オプティクス組立体3からの組み合わせられた光学出力6は、光学出力91がオプティクス組立体3の位置との関係において固定されるように、固定ミラー組立体90を使用してパウダーベッド表面7に向かって導くことができる。次いで、望ましいスキャニングパターンを得るべく、オプティクス組立体3をパウダーベッド表面7との関係において移動させることができる。
【0059】
[0083] 上述のように、パウダーベッド表面に向かって導かれる、オプティクス組立体からの組み合わせられた光学出力は、独立的なレーザーエネルギーソースの出力から形成された2つ以上の隣接する矩形レーザーエネルギーピクセルの線形アレイの形態であり、線形アレイは、望ましい部分を形成するべく、パウダーベッド上の材料の一部分を選択的に溶融するために、パウダーベッド表面上においてスキャニングすることができる。
【0060】
[0084]
図26は、複数の隣接した矩形レーザーエネルギーピクセル101~105を含む、パウダーベッド表面100上の線形アレイ110の概略表現を描いている。特定の実施形態に応じて、レーザーエネルギーピクセルは、任意の適切なサイズを有するべく、(例えば、1つ又は複数のマイクロレンズを含むレンズアレイを介して)成形することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、それぞれの矩形ピクセルは、約50ミクロン~約200ミクロンの幅を有することができる。一実施形態においては、それぞれのピクセルは、約100ミクロンの幅を有することができる。更には、それぞれの個々のピクセル101~105のパワーレベルは、個々の独立的なレーザーエネルギーソースの出力を調節することにより、独立的に制御することができる。また、それぞれのピクセル101~105は、関連するレーザーエネルギーソースを制御することにより、独立的にターンオン及びオフすることができる。
【0061】
[0085] 結果的に得られる線形アレイ110は、線形アレイ110の長い方の寸法に対して垂直である少なくともプライマリ方向115においてのみならず、線形アレイ110の長い方の方向に対して平行であるセカンダリ方向116においても、パウダーベッド表面100上においてスキャニングすることができる。例えば、プライマリ方向115におけるスキャニングは、オプティクス組立体を移動させることにより、或いは、ガルバノメータに取付されたミラー組立体又はその他の適切な構成を使用してオプティクス組立体からの組み合わせられた光学出力をスキャニングすることにより、実現することができる。また更に、いくつかの例においては、ガルバノメータに取り付けられたミラー組立体によってスキャニングしつつ、オプティクス組立体を移動させるという組合せを、プライマリ方向においてパウダーベッド表面上において組み合わせられた光学出力をスキャニングするために使用することもできる。セカンダリ方向116におけるスキャニングは、パウダーベッド表面100との関係においてオプティクス組立体を移動させることにより、実現することができる。プライマリ及びセカンダリ方向の両方における同時スキャニングは、パウダーベッド表面100上において任意の望ましいパターンをスキャニングするために使用することができることを理解されたい。
【0062】
[0086]
図27は、オプティクス組立体3が、軸を中心としたオプティクス組立体3の回転を許容する回転ステージ上に取り付けられている別の実施形態を描いている。この構成は、線形アレイ110がパウダーベッド表面100上において新しい位置111まで回転することを許容している。いくつかの例においては、これにより、パウダーベッド表面上の後続のパスが異なる方向において実施されることを許容することができ、この結果、両方の層のスキャニングにおけるラインアレイの十分な利用を可能にしつつ、連続する層112、113上の溶融トラックが所定の角度において互に回転した状態となるようにすることができる。例えば、いくつかの実施形態においては、連続する層の間のオプティクス組立体3の回転角度は、約30°~約90°(例えば、約30°、約45°、又は約90°)である。オプティクス組立体3の回転の軸は、線形アレイ110の中心を通過する軸130とアライメントさせることができる。或いは、この代わりに、オプティクス組立体の回転の軸は、軸131に沿ってなど、線形アレイ110の中心から離れるように位置決めすることができる。このような一実施形態においては、線形アレイ110の位置シフトは、線形アレイ110の中心からの回転軸の変位に基づいて算出することができる。次いで、このオフセットには、プライマリ及びセカンダリスキャン位置にオフセットを適用することにより、対応することができる。いくつかの実施形態においては、オプティクス組立体3は、パウダーベッド表面100上の任意の望ましい向きの線形アレイ110を得るべく、プライマリ及びセカンダリスキャン方向115、116において移動しつつ、同時に回転させることができる。
【0063】
[0087]
図28は、マルチソースパウダーベッドレーザー融合システム用の1つの可能なレイアウトを示している。ビルド表面510は、垂直方向スライドシステム560を使用して上下にインデクシングすることができる。リコータヘッド570は、垂直方向スライドが下方にインデクシングされた後にビルド表面上に材料の層(例えば、パウダー状の金属)を追加するように、構成されている。複数のレーザーソースから光ファイバを受け取っているオプティクス組立体500は、横方向のモーションを生成しうるクロススライド540上に取り付けられた別の垂直方向スライド550上に取り付けられている。クロススライドのそれぞれの端部は、クロススライドが他方の横方向次元において移動することを可能にする線形スライド520、530上において、ガントリスタイルで取り付けられている。この結果、オプティクス組立体からの出力501は、適宜、ビルド表面全体にわたってスキャニングンさせることができる。
【0064】
[0088] 本教示については、様々な実施形態及び例との関連において説明したが、これは、本教示がこのような実施形態又は例に限定されることを意図したものではない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替肢、変更、及び均等物を包含している。従って、上述の説明及び図面は、例示を目的としたものにすぎない。