(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための方法および装置、車両並びにコンピュータ読み取り可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G10L 25/51 20130101AFI20230522BHJP
G10L 15/10 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G10L25/51
G10L15/10 200W
(21)【出願番号】P 2020560767
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2019055738
(87)【国際公開番号】W WO2019214866
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】102018207280.9
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ドルシュ ニコ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン ウド
(72)【発明者】
【氏名】フライシュマン トマス
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504112(JP,A)
【文献】特表2016-526205(JP,A)
【文献】特許第6297751(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/130212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 15/00-15/34,25/00-25/93
G06F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマイクロフォン(1)を用いて空気伝播音を電気信号(S)に変換し、評価のために音声および/または騒音検知装置(2)に伝送する、車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための方法において、
前記電気信号(S)をトリガ検知装置(3)内で予備評価し、トリガを検知すると前記音声および/または騒音検知装置(2)を、前記トリガ検知装置(3)を用いて非作動状態または限定的作動状態から完全作動状態に移動させ、
前記電気信号(S)、および前記トリガ検知装置(3)を用いて生成された別の電気信号(ST)を、前記マイクロフォン(1)の別個の信号出力(5,6)を介して前記音声および/または騒音検知装置(2)に伝送する、
ことを特徴とする、車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための方法。
【請求項2】
前記電気信号(S)が評価のために前記音声および/または騒音検知装置(2)に伝送される前に、前記電気信号(S)を増幅することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記電気信号(S)が予備評価のために前記トリガ検知装置(3)に伝送される前に、前記電気信号(S)を増幅することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
トリガを検知すると、少なくとも1つの別のマイクロフォン(1)を非作動状態または限定的作動状態から完全作動状態に移動させることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
組み込まれたトリガ検知装置(3)および/または組み込まれた前置増幅器(4)を備えたマイクロフォン(1)を使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記方法を、相応のプログラムコードを有するプログラムが記憶されているコントロールユニットに従って実行することを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための装置において、空気伝播音を電気信号(S)に変換するための少なくとも1つのマイクロフォン(1)と、前記電気信号(S)を評価するための音声および/または騒音検知装置(2)と、前記電気信号(S)を予備評価し、かつトリガ検知の際に前記音声および/または騒音検知装置(2)を作動させるために用いられるトリガ検知装置(3)とを有しており、
前記電気信号(S)、および前記トリガ検知装置(3)を用いて生成された別の電気信号(ST)を、前記マイクロフォン(1)の別個の信号出力(5,6)を介して前記音声および/または騒音検知装置(2)に伝送する、
車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための装置。
【請求項8】
前記トリガ検知装置(3)および/または前置増幅器(4)が前記マイクロフォン(1)内に組み込まれており、前記マイクロフォン(1)が少なくとも2つの信号出力(5,6)を有していることを特徴とする、請求項
7記載の装置。
【請求項9】
請求項
7または
8記載の装置および請求項
6記載の方法を実行するためのコントロールユニットを備えた車両。
【請求項10】
プログラムコードを有するプログラムが記憶されているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体において、前記プログラムコードは、前記プログラムがコンピュータで実行されると、請求項1から
6までのいずれか1項記載の方法を実行する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載した車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための方法に関する。また本発明は、車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための装置、このような装置を備えた車両、並びにこの方法を実行するためのプログラムコードを備えたプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車両の支援システムは、車両自体または車両の周囲に関する多数の情報を必要とする。従って、このような形式の支援システムを備えた車両は、通常は、車両の外室および/または内室を光学式および/または音響式に監視する装置を備えている。
【0003】
特許文献1によれば、例えば、周囲騒音を検出しかつ評価する、自動車の周囲を監視するための方法が公知である。周囲騒音は、自動車の周囲状況を分析するための情報源として用いられる。この方法を実行する際に、運転者情報システムが使用され、この運転者情報システムは、少なくとも1つのマイクロフォンおよびこのマイクロフォンによって検出された音響信号を評価するための手段を備えている。
【0004】
マイクロフォンによって検出されたデータの評価を、運転者の情報のために用いるかまたは支援システムの運転のために用いるかどうかとは無関係に、安全上重要なデータは連続的に検出されなければならない。このことはつまり、この場合に使用された装置が、少なくとも車両の運転中は、持続的に作動状態に切替えられていなければならない、ということである。これは電流消費の増大を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】ドイツ連邦共和国特許公開第10234611号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、電流消費を低減させることができるような、車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、請求項1の特徴を有する方法および請求項9の特徴を有する装置が提供される。好適な実施態様は、それぞれ従属請求項に記載されている。さらに、本発明による装置を備えた車両、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提案される。
【0008】
車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための方法においては、少なくとも1つのマイクロフォンを用いて空気伝播音が電気信号Sに変換され、評価のために音声および/または騒音検知装置に伝送される。本発明によれば、電気信号Sをトリガ検知装置内で予備評価し、トリガ検知の際に音声および/または騒音検知装置を、トリガ検知装置を用いて非作動状態または限定的作動状態から完全作動状態に移動させるようになっている。このことはつまり、通常は、音声および/または騒音検知装置が非作動または限定的非作動に切替えられていてよい、ということである。例えば、音声および/または騒音検知装置は、トリガ検知装置がトリガを検知するまで待機モードで駆動されてよい。トリガ検知装置がトリガを検知するとはじめて、信号の詳細な評価を行うために、音声および/または騒音検知装置が完全作動運転モードに移行される。
【0009】
音声および/または騒音検知装置が非作動または限定的非作動に切替えられることによって、電流消費は著しく低減され得る。それと同時に、トリガ検知装置によって、安全上重要なデータが検出されることが保証されている。トリガ検知装置による予備評価のためにやはり電流が必要とされるが、トリガ検知装置は限定的な評価しか行わないので、電流消費は比較的僅かである。従って、本発明による方法によれば、エネルギ効率的な音声および/または騒音検知が可能である。この場合、トリガとして、任意の騒音、単語または語順が利用され得る。さらに、音声および/または騒音検知装置を作動させる複数のトリガおよび/または所定の周波数範囲がトリガとして利用されてよい。
【0010】
好適な形式で、電気信号Sは、この電気信号Sが評価のために音声および/または騒音検知装置に伝送される前に、増幅される。このような形式で、評価の精度が高められる。このために、好適には音声および/または騒音検知装置に、前置増幅器が設けられている。
【0011】
さらに、電気信号Sは、この電気信号が予備評価のためにトリガ検知装置に伝送される前に増幅されることが提案される。このような形式で、予備評価の精度が高められ得る。
【0012】
複数のマイクロフォンが使用されている場合、空気伝播音音響式に監視するための方法は、トリガを検知すると、少なくとも1つの別のマイクロフォンが非作動状態または限定的作動状態から完全作動状態へ移動されるように、実行され得る。つまり、使用可能なすべてのマイクロフォンが継続的に作動または完全作動に切替えられている必要はない。このような形式で、電流消費はさらに低減される。
【0013】
トリガを検知するためには、例えば、空気伝播音を電気信号に変換し次いでトリガ検知装置を用いて予備評価するために、複数のマイクロフォンのうちの1つだけを作動または少なくとも限定的に作動させるだけで十分である。トリガが検知されると、音声および/または騒音検知装置のほかに、少なくとも1つの別のマイクロフォンが作動に切替えられる。このような形式で、音声および/または騒音検知装置に提供されるデータ密度が高められるので、評価の精度がさらに高められる。
【0014】
本発明の好適な実施例によれば、組み込まれたトリガ検知装置を備えたマイクロフォンが使用される。つまり、マイクロフォン内で電気信号の予備評価が行われるということである。従って、装置とマイクロフォンとの接続は、唯一の信号ラインを介して生ぜしめられる。
【0015】
選択的にまたは補足的に、組み込まれた前置増幅器を備えたマイクロフォンが信号増幅のために使用されることが、提案される。このような形式で、特にコンパクトに構成された配置が得られる。
【0016】
少なくともトリガ検知装置がマイクロフォン内に組み込まれている限り、マイクロフォンの共通の信号出力が、電気信号S、およびトリガ検知装置を用いて生成された別の電気信号STを音声および/または騒音検知装置に伝送するために使用されてよい。つまり、信号出力を備えた従来のマイクロフォンを使用することができる、ということである。電気信号Sを評価するために、音声および/または騒音検知装置がまず完全作動状態に移行されなければならないので、電気信号Sが、トリガの検知の際に、音声および/または騒音検知装置を作動させるために用いられる別の電気信号STによって重畳される、ことが提案される。
【0017】
選択的に、電気信号S、およびトリガ検知装置を用いて生成された別の電気信号STが、マイクロフォンの別個の信号出力を介して音声および/または騒音検知装置に伝送されるように提案される。この場合、少なくとも2つの信号出力を有するマイクロフォンが使用される。
【0018】
好適には、この方法は、相応のプログラムコードを有するプログラムが記憶されているコントロールユニットに従って実行される。これにより、この方法は自動化され得るので、車両の運転者が介入する必要がない。これは、音声および/または騒音検知装置が車両の支援システムのための情報源として用いられるときに、特に有利である。さらにこれに関連して、少なくとも1つのマイクロフォンが、車両の外室を空気伝播音音響式に監視する外部マイクロフォンであれば、有利である。
【0019】
さらに、車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するために提案された装置は、空気伝播音を電気信号Sに変換するための少なくとも1つのマイクロフォン、並びに電気信号Sを評価するための音声および/または騒音検知装置を有している。さらにこの装置は、電気信号Sを予備評価し、かつトリガ検知の際に音声および/または騒音検知装置を作動させるために用いられるトリガ検知装置を有している。それによりこの装置は、特に本発明による方法を実行するために適している。つまり、この装置は特にエネルギ効率的に駆動可能であり、電流消費の低減が可能である。
【0020】
本発明による装置の好適な実施例によれば、トリガ検知装置および/または前置増幅器がマイクロフォン内に組み込まれている。このような形式で、コンパクトに構成された配置が得られる。マイクロフォンは、電気信号S、およびトリガ検知装置の別の電気信号STを音声および/または騒音検知装置に伝送するために、少なくとも1つの信号出力を必要とする。しかしながら好適には、マイクロフォンは少なくとも2つの信号出力を有しているので、信号SおよびSTは、別個の信号出力を介して音声および/または騒音検知装置に伝送され得る。
【0021】
提案された装置は、車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するために用いられるので、さらにこのような装置およびコントロールユニットを備えた車両が提案されており、このコントロールユニットに従って本発明による方法は実行される。このために、コントロールユニット内には、相応のプログラムコードを有するプログラムが記憶されている。
【0022】
さらに、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が要求されており、この記憶媒体にプログラムコードを有するプログラムが記憶されていて、このプログラムコードは、前記プログラムがコンピュータで実行されると、本発明による方法を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の好適な実施例による本発明の装置の概略図である。
【
図2】本発明による装置のためのマイクロフォンの概略図である。
【
図3】第2の好適な実施例による本発明の装置の概略図である。
【
図4】第3の好適な実施例による本発明の装置の概略図である。
【
図5】第4の好適な実施例による本発明の装置の概略図である。
【
図6】第5の好適な実施例による本発明の装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好適な実施例を以下に図面を用いて詳しく説明する。
【0025】
図1には、車両の外室および/または内室を空気伝播音音響式に監視するための装置が示されており、この装置はハウジング7を備えたマイクロフォン1を有していて、ハウジング7内にトリガ検知装置3および前置増幅器4が組み込まれている。マイクロフォン1に音波8がぶつかると、マイクロフォン1は音波を電気信号Sに変換し、この電気信号Sがトリガ検知装置3および前置増幅器4に伝送される。トリガ検知装置3で信号Sが予備評価される。トリガが検知されると、信号Sの詳細な評価を実行するために、トリガ検知装置3は信号S
Tを、マイクロフォン1に接続された音声および/または騒音検知装置2に伝送する。しかしながら、音声および/または騒音検知装置2は、この装置2に信号S
Tが到達するまで非作動に切替えられている。信号S
Tが到達してからはじめて、音声および/または騒音検知装置は、信号Sまたは前置増幅器4を用いて増幅された信号S
Vを評価することができる。
【0026】
信号SまたはS
V、およびS
Tを別個に、音声および/または騒音検知装置2に伝送するために、マイクロフォン1は、例えば
図2に示されているように、2つの信号出力5,6を有していてよい。信号SまたはS
Vは信号出力5を介してマイクロフォン1を通過し、これに対して信号S
T′は、信号出力6を介して音声および/または騒音検知装置2に伝送される。さらに、マイクロフォン1は、電力供給のために少なくとも1つの入力9,10を必要とし、この場合、ここでは
図2に示された第2の入力10がアース接続のために用いられる。
【0027】
図1の変化実施例が
図3に示されている。ここでは、前置増幅器4だけがマイクロフォン1のハウジング7内に組み込まれている。トリガ検知装置3は、ハウジング7の外に配置されている。しかも接続回路は、トリガ検知装置3が増幅された信号S
Vを得るように選択されている。
【0028】
別の変化例は
図4に示されている。ここでは、前置増幅器4およびトリガ検知装置3はいずれもハウジング7の外側に配置されていて、信号Sは、増幅されずにトリガ検知装置3に伝送されるが、音声および/または騒音検知装置2に増幅されて伝送されるように接続されている。
【0029】
図5および
図6には、本発明による装置の別の実施例が示されており、この場合、これらの装置は、それぞれ複数のマイクロフォン1,1′,1″を有している。さらに、マイクロフォン1,1′,1″の各ハウジング7,7′,7″内には、信号S,S′,S″を増幅するために、それぞれ1つの前置増幅器4,4′,4″が組み込まれている。
【0030】
例えば
図5から分かるように、トリガ検知装置3は同様にマイクロフォン1内に組み込まれていてよい。トリガ検知装置3は、このトリガ検知装置3によって、残りのマイクロフォン1′,1″並びに音声および/または騒音検知装置2の作動がいつ必要となるかを検知するために、持続的に作動接続されている。残りのマイクロフォン1′,1″を作動させることによって、別の音波8′,8″が検出され、電気信号S,S′,S″に変換され、増幅されるので、音声および/または騒音検知装置は、評価の精度を高める複数の増幅された信号S
V,S
V′,S
V″を受け取る。
【0031】
図5の実施例ではトリガ検知装置3がマイクロフォン1のハウジング7内に組み込まれているのに対して、
図6の実施例は、別個のトリガ検知装置3を有している。
【符号の説明】
【0032】
1,1′,1″ マイクロフォン
2 音声および/または騒音検知装置
3 トリガ検知装置
4,4′,4″ 前置増幅器
5,6 信号出力
7,7′,7″ ハウジング
8,8′,8″ 音波
9,10 入力
S,S′,S″,ST 信号、電気信号
SV,SV′,SV″ 増幅された信号