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  • 特許-地熱エネルギー装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】地熱エネルギー装置
(51)【国際特許分類】
   F03G 4/00 20060101AFI20230522BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
F03G4/00 521
E21B43/00 C
F03G4/00 511
F03G4/00 531
F03G4/00 501
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020563829
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 GE2019050001
(87)【国際公開番号】W WO2019155240
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】AP201814694
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GE
(73)【特許権者】
【識別番号】520294158
【氏名又は名称】イオラマシュビリ,ソロモン
(73)【特許権者】
【識別番号】520294169
【氏名又は名称】コクラゼ,シャルバ
(73)【特許権者】
【識別番号】520294170
【氏名又は名称】ベリツェ,エンリコ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】イオラマシュビリ,ソロモン
(72)【発明者】
【氏名】コクラゼ,シャルバ
(72)【発明者】
【氏名】ジンシャラゼ,ダビト
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-151198(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0330670(US,A1)
【文献】特開昭63-173806(JP,A)
【文献】実開昭64-034402(JP,U)
【文献】特開2013-043145(JP,A)
【文献】特開昭57-028816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 4/00 , 7/00
E21B 43/00
F01K 25/10
F24T 10/00 , 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面からボアホール(1)中に配置され、片方だけが閉じられた下降流パイプ(4)および上昇流パイプ(3)と、ボアホール(1)の深部で下降流パイプ(4)と上昇流パイプ(3)とを互いに連接する熱交換器(6)と、上昇流パイプ(3)、下降流パイプ(4)および交換器(6)中に充填された流体熱媒体と、下降流パイプ(4)中に配置された少なくとも一つの機械的逆止弁(12)と、地表面上で下降流パイプ(4)に設置された上記流体熱媒体とその蒸気凝縮物とをポンピングするためのポンプ(5)と、地表面上で上昇流パイプ(3)の上端に連結した蒸気タービン(7)と、この蒸気タービン(7)と上記ポンプ(5)とを連結するパイプラインおよび蒸気タービン(7)からの排気蒸気を凝縮させるためのおよび凝縮器(9)を有する地熱エネルギー装置において、
上昇流パイプ(3)の上記上端は地表面上で熱媒体を液体からガスに変える制御弁(10)からなる衝動加速器を介して蒸気タービン(7)に連結され、この制御弁(10)は制御装置によって制御され、この制御装置は制御弁(10)のロック/アンロック期間/周波数を制御して流体熱媒体の蒸気を共振周波数で脈動させ、制御弁(10)を介して蒸気タービン(7)へ送られる流体熱媒体の蒸気はノズル(11)によって加速される、
ことを特徴とする地熱エネルギー装置。
【請求項2】
上記ノズルが「ラバルノズル」である請求項1に記載の地熱エネルギー装置。
【請求項3】
上昇流パイプ(3)の上端の衝動加速器の制御弁(10)が電磁的または電気機械的に制御可能な弁である請求項1または2に記載の地熱エネルギー装置。
【請求項4】
上昇流パイプ(3)の上端のタービン(7)が凝縮型蒸気タービンである請求項1~3のいずれか一項に記載の地熱エネルギー装置
【請求項5】
熱媒体がイソブタンまたはイソブタンとイソペンタンとの混合物である請求項1~4のいずれか一項に記載の地熱エネルギー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを含む種々のエネルギーを生成するためのバイナリ強制対流サイクル(binary, forced convection cycle)を有する地熱エネルギー装置(geothermal energy device)に関するものである。本発明の技術的目的は効率係数(coefficient of efficiency、CE)を高くし、構造を簡単にし、コストを下げることにある。
【背景技術】
【0002】
バイナリサイクルは2つの作動流体を使用する熱力学的サイクルであり、その1つの作動流体は高温条件下で飽和圧力が低く、他方の作動流体は蒸発温度が低い点に特徴がある。本願の場合、1つの作動流体は地中深部のボアホール中に自然に存在する温水(またはその乾燥空間中の高温ガス)であり、他方の作動流体は熱媒体(thermal agent、熱剤)、例えばイソブテンである。この熱媒体は上昇流パイプと下降流パイプを有する閉回路中に収容され、高圧でポンプで圧送される。このバイナリサイクルの本質的機能は地熱のエネルギーを地中深部から地表面上に導いて直接使用するか、および/または、機械エネルギーおよび/または電気エネルギーに変換することにある。地表面上へのエネルギー移動プロセスは作動流体間の熱交換によって行われる。
【0003】
地熱エネルギーは、地球の天然の熱エネルギーである。この熱はボアホール(borehole)を使って利用できるということは広く知られている。ボアホール中の地熱の勾配(深度による温度変化)は100メートル当たり平均して2.5~3℃でなる。この熱は蒸気または温水として地表面上に出現する。この熱を直接使用して家屋や建物の暖房をしたり、および/または、エネルギーを生成することができる。地熱発電所には乾燥蒸気プラント
、熱水蒸気プラントおよびバイナリーサイクルプラントの3つのタイプがある。
【0004】
地熱発電所には多くの利点(生成されたエネルギーは再生可能な24/7「グリーン」エネルギーであり、いくつかの予防コストと保守コスト等以外の追加のコストが必要ない)があるが、これらのタイプの発電所の広範囲の使用を妨げているいくつかの欠点があるという特徴がある。
【0005】
上記3種類の地熱発電所の全てに一般的な主たる欠点は、地下水層中に水を循環(原則として使用済み水の供給、充填)が必要な点にある。そのため、追加のボアホールと適当なインフラが必要になる。その結果、上記地熱発電所の費用対効果が大幅に低下する。さらに、使用済み水を地殻中へ過剰に注入することで発電所が停止することもよくある。
【0006】
地熱発電所の別の欠点は採掘トンネルから地表面上へ可燃性および/または有毒ガスおよび鉱物が放出されることにある。これによってその利用と中和のための追加コストが発生する。
【0007】
主たる問題(特に、バイナリサイクルの地熱発電所の場合)は大規模な地表面インフラストラクチャを必要とし、それによって土地資源が削減されることである。この問題は土地が不足している国では特に重要である。バイナリサイクルの地熱発電所では、このインフラストラクチャは、地表面面に出てくる熱水資源と熱媒体(作動流体)との間で効率的な熱交換が行われる。地表面上のインフラストラクチャが大きくなるほど、熱媒体の量も多くなり、発電所の能力はより強力になる。しかし、発電所インフラの土地資源の使用に関する規制の他に、他の問題がある。すなわち、熱媒体の量は、上昇する熱水の流れと地表面上でのこの資源の温度とによって制限される。従って、地表面上でのインフラの上記問題が克服できた場合に、熱媒体の量を大幅に増加させたとしても、発電所の能力を増加させることは保証できない。地球上の地熱資源は極めて膨大で、上記特徴(これはバイナリーサイクル発電所の特徴である)の大部分は成功裏に実施できるが、上記の問題のために地熱エネルギー開発の可能性は低い。
【0008】
バイナリサイクル地熱発電所は(タービンへ乾いた蒸気(温度が150℃以上)および温水の蒸気(温度が180℃以上)を送って発電する乾式蒸気および温水蒸気発電所とは異なって)、比較的冷たい地熱貯留層から発電する種類の地熱発電所である。バイナリサイクルの地熱発電所では、地表面上での水温は水蒸気を得るのに十分な高さにはない(大抵の地熱源は100℃以下)ので、地表面上からの熱水をいわゆる熱交換器に送り、この熱交換器で熱を第2(バイナリ)熱媒体に伝達する。熱媒体の沸騰温度は標準的な大気圧条件下で水よりもかなり低い(現在使用されているバイナリ熱媒体は例えば、イソブテンまたはイソブテンとイソペンタンとの混合物である)。流体(fluid)から気相への相転移時にエネルギーを生成するこのバイナリ熱媒体は、発電所のタービンへ送られる。バイナリ熱媒体は閉回路中に収容される。タービンからのバイナリ熱媒体は流体凝縮物(fluid condensate)に戻され、上記熱交換器へポンプ圧送されて、新しいサイクルが開始される。使用済み地熱水は下降ボアホールを介して含水岩中にポンプ圧送される。
【0009】
バイナリサイクル地熱発電所の作業に関する情報は、ウェブサイト:[非特許文献1](https://en.wikipedia.org/wiki/Binary_cycle)で提供されている。
【0010】
地熱エネルギー装置とエネルギー生成方法は[特許文献1](RU2621440C1)、[特許文献2](RU84922U1)、[特許文献3](RU2000111435A)、[特許文献4](RU2011121001A)、[特許文献5](RU2009131111A)、[特許文献6](RU2008114536A)に記載されている。
【0011】
2つのボアホールに取付けた2つの上昇流パイプおよび下降流パイプによって地熱鉱石から熱を回収する地熱発電所も公知である。2つのパイプは熱交換器を介して互いに接続され、下降流パイプを通った流体は上昇流パイプに移動される。それと同時に、地表面上には下降流パイプにはポンプが取付けられ、上昇流パイプにはタービンが取付けられる([特許文献7]国際公開第WO2015132404A1号公報)。
【0012】
また、上昇流パイプと下降流パイプの2本のパイプを備えたボアホール配置を有する地熱エネルギーのダブル方法および装置も公知である。各ボアホール中には土壌中を通過する水システムに接続された2つの異なる回路パイプが配置されている([特許文献8]、米国特許第US3975912A号明細書参照)。
【0013】
地熱鉱石からの熱の回収システムと、地表面面から排出される2本の上昇、下降流パイプを含む地熱発電所も公知である。2本のパイプはサーモシリンダー
介して互いに接続され、下降流パイプから蒸気に変わった流体はサーモシリンダーを通って上昇流パイプ中に流れる。地表面上には作動液から熱を奪ってそれを火力発電に伝達する装置が設置される([特許文献9]、国際公開第WO2012114297A2号公報参照)。
【0014】
本質的特徴が本発明に最も近いものは地表面上から1つのボアホール中に挿入された上昇流パイプと下降流パイプとを含む地熱熱交換システムで、この地熱熱交換システムでは2つのパイプがボイラー(熱交換器)を介して互いに接続され、下降流パイプからの流体はボイラーを介して上昇流パイプ中に流れ、地表面上では下降流パイプ中に流体を送り込むためのポンプが配置され、上昇流パイプにはタービンが取り付けられ、タービンは熱交換器にも接続されて熱を回収し、使用済み蒸気を凝縮する。その結果、凝縮水(流体)は再びポンプに送られる([特許文献10]、米国特許第US3470943号明細書参照)。
【0015】
しかし、上記の全ての装置および方法は、多かれ少なかれ、上記欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】ロシア特許第RU2621440C1号公報
【文献】ロシア特許第RU84922U1号公報
【文献】ロシア特許第RU2000111435A号公報
【文献】ロシア特許第RU2011121001A号公報
【文献】ロシア特許第RU2009131111A号公報
【文献】ロシア特許第RU2008114536A号公報
【文献】国際公開第WO2015132404A1号公報
【文献】米国特許第US3975912A号明細書
【文献】国際公開第WO2012114297A2号公報
【文献】米国特許第US3470943号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】https://en.wikipedia.org/wiki/Binary_cycle
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
発明の目的および技術的成果(technical outcome)は地熱エネルギープラントの効率(CE)を高くし、構造を簡素化し、コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の技術的な結果は、本発明の地熱エネルギー装置が下記を有するという事実によって達成される。すなわち、本発明の地熱エネルギー装置は流体の熱媒体が充填され、且つ地表面ボアホールから閉じた地表面から出た少なくとも2本の上昇流パイプおよび下降流パイプを含み、これらのパイプはボアホールの深部で熱交換器を介して互いに接続されている。さらに、下降流パイプには1つまたは複数の一連の機械式の下向(一方向)逆止弁が装備されており、地表面上には熱媒体(その蒸気凝縮物)を押圧するポンプが下降流パイプに取り付けられている。地表面上の上昇流パイプの端部は蒸気タービンに向かっている。本発明の地熱エネルギー装置はさらに、熱媒体蒸気およびその凝縮物をタービンから上記ポンプへ移送するパイプを含んでいる。
【0020】
本発明は以下の顕著な特徴を有している:
(1)上昇流パイプの端部には制御弁が装備されているが、本発明の地熱エネルギー装置はこの制御弁のロック/アンロック期間/周波数を制御するデバイスをさらに含んでいる。
(2)制御弁から排出された熱媒体の蒸気はノズルを通ってタービンに送られる。
(3)上記ノズルは「ラバルノズル」として実行される。
(4)上昇パイプの端部には電磁式または電気機械式の制御弁が装備されている。
(5)上昇パイプの端部は凝縮型蒸気タービンに向けられる。
(6)熱媒体として低温蒸発物質、例えばイソブタンまたはイソブタンとイソプレンとの混合物を使用する。
(7)ボアホールは地表面からのみ一方的に閉じられている。
【0021】
以下、本発明の本質を添付図面で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】地熱エネルギーデバイスの性能原理図。
図2】熱媒体が蒸気タービンに送られる図、熱媒体蒸気の温度、圧力、速度の変化図および制御弁のレイアウト図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図示した地熱エネルギー装置は、地表面(2)からボアホール(1)へ(結合された)連続回路として設定された上昇流パイプ(3)と下降流パイプ(4)を含んでいる。地表面上で下降流パイプにはポンプ(5)が設置されている。上昇流パイプと下降流パイプはボアホール深部で熱交換器(6)に接続されている。上昇流パイプの地表面上の端部は凝縮型蒸気タービン(7)に向かっている。このタービン(7)は発電機(8)に接続され、発電装置(8)には蒸気タービンからの排気蒸気の凝縮器(9)と、凝縮物を上記ポンプに再供給するためのパイプとが含まれる。上昇流パイプの端部には制御弁(10)が装備され、この制御弁(10)には制御装置(場合によってはコンピューターを含む)(図示せず)が付いている。制御弁(10)は電磁タイプまたは電気機械タイプを含む各種タイプにすることができ、ロック/アンロック期間/周波数を調整制御する機能を備えることができる。制御弁(10)と蒸気タービン(7)との間には「ラバルノズル(Laval nozzle)」として機能する蒸気ノズル(11)が配置される。下降流パイプにはパイプに送り込まれた熱媒体が一方向(熱交換器の方向)のみへ流れるようにするための複数(少なくとも1つ)の逆止弁(12)が装備されている。熱水の損失や有害ガスの大気への霧化を防止するために、ボアホールは保護用蓋(13)で閉じられている。
【0024】
この地熱エネルギー装置は以下のように動作する。
【0025】
最初に、制御弁(10)がロック位置にある時に、下降流パイプ(4)および上昇流パイプ(3)に熱媒体のイソブタンを充填する。これはポンプ(5)によって行う。このポンピングの結果、パイプ内でイソブタンが流体状態になる。最大量のイソブタンがシステム中にポンピングされる。ボアホールの深部の地熱エネルギーによって上記パイプ(3、4)および熱交換器(6)中で流体イソブタンの温度が上昇する(しかし、温度が上昇しても、高圧条件下では熱媒体は蒸発しない)。圧力および温度の特定の「作動」インジケーター(「作動指数」、"working" indicators)に達した後に、制御弁(10)を開く(この「作動」インジケーターは地熱エネルギー装置の構成、熱交換器の深さ位置、地熱源の特性などによって異なる)。その結果、エネルギー供給がオンになる。制御弁(10)が開く毎に流体のイソブタン蒸気(位置エネルギーと運動エネルギーの両方を有する)が上昇流パイプの端部から噴霧され、ノズル(11)でアトマイズ(霧化)され、蒸気タービン(7)へ送られる。熱媒体の温度「T」および圧力「P」は制御弁(10)からラバルノズル(11)の移行ゾーンに入る時に急激に低下し、状態が(流体からガスへ)変化し、その蒸気の速度「V」はラバルノズルの加速ゾーンで増加する。その結果、熱媒体の運動エネルギーが(速度の2乗に比例して)大幅に増加し、蒸気タービン(7)を効果的に回転作動させる。タービンの回転は発電機(8)に伝達され、電気が生成される。凝縮型タービン(7)から排出された熱媒体の蒸気は凝縮器(9)を通って流体状態に戻り、ポンプ(5)によって下降流パイプ中に再度集められる。
【0026】
上記プロセスでの制御弁(10)のロック解除の継続時間/頻度は(例えばコンピューターによって機械的または自動的に調整され、ロック解除の継続時間/頻度は、タービンで「落ちる(“fallen”)」熱媒体の運動エネルギーが可能最大値に到達するように、地熱エネルギー装置の構成要件のパラメーター(上昇流パイプ、下降流パイプおよび熱交換器の容量、従ってシステム中の熱媒体の容量、ポンプのモードおよび能力、地熱源の特性、ノズルの構成など)に適合するように調整される。地熱エネルギー装置の最適モードと設置は最大効果が得られるように制御弁(10)を調整することで経験的に達成できる(モードの理論計算は極めて簡単にできる)。このように調整された地熱エネルギー装置は定期的な修理、その他のメンテナンス作業の後にのみ「較正("calibrated")」できる。
【0027】
本発明の重要な特徴は特許請求の範囲の特徴部分に記載されており、本発明で達成された結果は以下の原因と結果の関連性を有する:
【0028】
本発明の強制対流サイクルの地熱エネルギー装置(例えば発電所)では、熱交換が地表面ではなく地下深くの地熱ボアホール内で行われる([図1]を参照)。この目的のためには既存のハイドロサーマル(hydrothermal)(温水)ボアホール(1)およびペトロサーマル(petro thermal)(いわゆる乾いた、空の井戸、例えば採掘済みのオイルや天然ガスの井戸)の両方を使用することができる。
地熱のボアホール(ペトロサーマルまたはハイドロサーマルボアホール)では、地表面(13)に到達する場所が密閉され、その地表面面(2)から2本のパイプ(下降流パイプ(4)および上昇流パイプ(3))が下降している。これら2本のパイプはボアホールの深部で熱交換器(6)によって互いに接続されている。可動な熱媒体はポンプ(5)によって下降流パイプ中に入り、熱交換器を通過し、上昇流パイプ中に移動する。(液体状態の)熱媒体は下降流パイプの全長に取付けられたいくつかの機械式逆止弁(12)によって一方向にのみに送られる。熱交換器、下降流パイプおよび上昇流パイプは耐熱、耐圧材料で作られている必要がある。可動の熱媒体(作動流体)はバイナリサイクルの地熱発電所で使用されている作動流体に似ている。上記のインフラストラクチャは本発明の地下部分である。バイナリ熱媒体の相転移を刺激し、システム効率を高くするために、地上のインフラストラクチャで上昇流パイプがいわゆる「衝撃加速器(“impulsive accelerator")」を有するタービンに接続される([図2])。このタービンは制御された弁(例えば電磁弁)(10)とラバロノズル(Laval nozzle)(11)とで構成される。この制御された弁は所定の周波数で動作(開閉の「脈動」)する。この制御された弁はノズルからのガス(熱媒体蒸気)の運動エネルギーを共振増加させる期間/周波数が得られるように「脈動」("pulsate")しなければならない。この運動エネルギーは速度E=0.5mv2の二乗に正比例することは知られている。その結果、熱媒体の速度の共振増加によって運動エネルギーが共振増加し、その結果、発電所の効率が急激に増加する。共振周波数自体はノズルから出てくるガス(熱媒体、バイナリ作動流体)の振動の周波数によって決まり、これは多くの要因(ノズルおよびバルブの形状、選択した作動流体、(上昇流パイプとタービンセルの)圧力差、上昇流パイプ中の作動流体の温度、地熱源特性など)に依存する。
【0029】
制御された弁から出る霧状のガスは一定の振動周波数を有し、この周波数は理論的に計算できるという事実は下記文献で証明されている:
【文献】http://www.transformacni-technologie.cz/en_40.html
【文献】http://www.neftemagnat.ru/enc
【0030】
下降流パイプのロックされた制御弁(10)、ポンプ(5)および機械式逆止弁(12)を使用することによって、熱交換器(6)および上昇流パイプ(3)中の沸騰温度を大幅に超えても、熱媒体が流体のまま維持できる圧力を生成することができる。その結果、上昇流パイプとタービンセル(大気圧下にある)との間の圧力差によって制御弁(10)が開くと衝撃波が発生して熱媒体の相転移(「微小爆発、“microexplosion”」模倣)が決まる。この衝撃波運動エネルギーの共振増分は上記文献で説明されている。
【0031】
地上のインフラストラクチャは、上記熱交換器カメラ、「衝撃加速器」および付随構造を除いて、既存の熱媒体サイクル地熱発電所のインフラストラクチャに似ている。すなわち、地表面(2)上には熱媒体を下降流パイプ(4)中に送り込むためのポンプ(5)と、上昇流パイプに取付けられた「衝撃加速器」を有するタービン(7)([図2)と、タービンからの熱媒体を冷却して(流体状態に変換するのに)必要な凝縮器(9)と、発電用の発電機(8)とを有している。
【0032】
熱交換プロセスを地下に移し、タービンセルに衝撃加速器を追加することによって下記の利点が得られる:
(1)無尽蔵のエネルギー源へ直接アクセスでき、それによって、熱媒体の量を増やすことによって発電所のキャパシティー(容量)を増やすことができる。
(2)ハイドロサーマル天然資源のない場所でも石油サーマルボアホール内に発電設備を配置できる。
(3)地下地平線に水をポンプ輸送するための追加のボアホールの掘削(地熱発電所で最もコストのかかる部分)の必要がない。従って、使用済み水を地表面上に汲み上げるためのコストも不要になる。
(4)ハイドロサーマル(熱水)資源が失われることがない。
(5)大気中に硫黄水素が噴霧されることがなく、有毒な可燃性鉱物やガスを利用するためのインフラストラクチャを配置する必要がなくなる。
(6)地上インフラが節約でき、発電所に必要な土地資源が節約される。
(7)地熱発電所の効率が上がる。
【0033】
本発明は、地熱エネルギーを広く使用する上での阻害要因のいくつかを取り除くことができる。その結果、再生可能な無尽蔵の24時間(round-the-clock)の生態学的地熱発電および熱発生を広く導入でき、その結果、経済的、生態学的、社会的利益が得られる。
【0034】
本発明は、再生可能な無尽蔵の24時間利用可能な「グリーン」で経済的な発電および熱エネルギーの生成量の大幅な増加に貢献する。広範囲の人々および費用対効果が高い温室組織およびコスト的にその必要がある冷蔵農場で、対応製品(電気および熱)を手頃な価格にすることができるようになる。
図1
図2