(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】義歯
(51)【国際特許分類】
A61C 13/01 20060101AFI20230522BHJP
A61C 13/10 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
A61C13/01
A61C13/10
(21)【出願番号】P 2021000846
(22)【出願日】2021-01-06
(62)【分割の表示】P 2016501580の分割
【原出願日】2014-03-12
【審査請求日】2021-02-03
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515260139
【氏名又は名称】グッド フィット テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】ギンスバーグ スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ギンスバーグ マーク
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517308(JP,A)
【文献】特開2008-168065(JP,A)
【文献】特開2006-326367(JP,A)
【文献】米国特許第05775900(US,A)
【文献】特開昭62-000342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/01
A61C 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ形器具を備えた義歯であって、
前記アーチ形器具は、
54.4℃と100℃との間の温度で形状が調整され得る材料を有するアーチ型床部と、
前記アーチ型床部に沿って位置付けられ、前記アーチ型床部に結合された複数の歯と、
を有しており、
前記アーチ型床部自体は、フランジ部分を有しておらず、
当該義歯は、前記アーチ形床部とは別個に用意されて前記アーチ形床部に結合された別個のフランジ部を更に備える
ことを特徴とする義歯。
【請求項2】
前記
アーチ型床部は、少なくとも部分的にポリマー及びモノマーからなり、
前記ポリマー及び前記モノマーの少なくとも一方が、可塑性を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の義歯。
【請求項3】
前記ポリマーと前記モノマーとの比率は、63.5重量%:36.5重量%である
ことを特徴とする請求項2に記載の義歯。
【請求項4】
前記
アーチ型床部は、54.4℃未満の温度に曝されることによって硬化された後、54.4℃と100℃との間の温度に再加熱される時に更に形状が調整され得る材料を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の義歯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用器具及び歯科システム並びにこれらを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、世界において、人の歯の喪失は最も大きな健康問題の一つであり、何百万人もの人々がこの状況に影響を受けている。その上、人々は長寿命になっているので、この状況は益々拡大し、人々は、年を取るにつれて歯の一部又は全部を取り替えるよう、益々義歯に依存するようになる。しかしながら、義歯は、一部の人々にとっては装着が厄介である場合がある。例えば、多くの高齢者は、日常活動の多くを行うのに義歯に依存している。例えば、義歯は、十分な食事を咀嚼し楽しむ能力を人に提供できるだけでなく、人々が適切に話すと共に、自信に満ちた笑顔を作るのを助けることができる。
【0003】
義歯は、患者に多くの利点をもたらすが、患者は、自分の歯科開業医(例えば、補綴専門医)を複数回訪れる必要があり、開業医もまた、良好な外観、感覚及び適合性を備えた好適な義歯セットを歯科医が得るまでに、同じ回数の技工手順(歯科医によって提供されたデータに基づいて歯をろう型に個別にセットすることなどを含むことができ、これは時間がかかり多くの労力を要する)に頼らなければならない可能性がある。訪問毎に、開業医は、必要とされる何らかの調整を行うために仮義歯を義歯製造者に送り返す場合があり、これには高度に熟練した専門技師の手作業が必要となる可能性がある。この理由により、義歯の作製は、科学というよりもむしろ芸術的であるように思われ、すなわち、所与の技師によってある特定の日に行った義歯の特定の調整が、別の日に同じ技師による同じ調整と異なっている場合がある。義歯(例えば、下側又は下顎の義歯)の1又はそれ以上の歯の配置に僅かな誤りにより、対応する義歯(例えば、上側又は上顎の義歯)と適合しない状態になる恐れがある。誤りが発生し易く非効率的なこの義歯の微調整プロセスにより、歯科費用が増大し、開業医及び患者の両方に不満を抱かせる可能性がある。従って、改善された歯科用器具及び歯科システム並びにこれらの製造法に対する要求がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、歯科用器具及びシステム並びにこれらの製造方法に関する。歯科開業医、患者、及び歯科用器具技工所が、従来の歯科手順及び技工よりも安価で且つ効率的にすることができる僅かに1回の患者訪問で、患者にとって好適な1又はそれ以上の歯科用器具(例えば、義歯)をより容易で効率的に得ることを目的とする。更に、1ヶ月で生産された「同一」の義歯のセットが、時間的に後で生産された別の「同一」の義歯セットと実質的に同様となるように、長期にわたってより一貫した方式で生産される義歯を提供することを目的とする。
【0005】
少なくとも1つの実施形態において、歯科アーチ形器具が提供される。アーチ形器具は、上側義歯に類似することができ、上側顎又は上顎のような患者の口腔の上側部分に対応し且つ嵌合することができる。代替として、アーチ形器具は、下側義歯に類似することができ、下側顎又は下顎のような患者の口腔の下側部分に対応し且つ嵌合することができる。例えば、アーチ形器具は、患者の上側(又は上顎)歯及び下側(又は下顎)歯、並びに歯肉部分のうちの対応する1つに嵌合するように製作することができる。アーチ形器具は、当該部分の1又はそれ以上の歯の少なくとも部分的な代替品として機能することができる。アーチ形器具は、患者の口腔と適合性のよい1又はそれ以上の材料又は化合物から構成することができる。より具体的には、化合物は、患者の口腔の内部と化学的に適合することができる。例えば、化合物は、ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)熱可塑性物質を含むことができる。
【0006】
アーチ形器具は、総義歯又は従来の義歯よりも小さくすることができる。典型的な義歯は、均一な床用材料に結合された歯のセットを含む。均一な床用材料は、歯に結合された舌側セクション(例えば、舌又は口腔に面する義歯の湾曲した歯保持部分)と、義歯に全体的な構造的完全性を提供し、舌側セクションから義歯の境界部まで延びるフレームワーク又はフランジセクションとを含む。アーチ形器具を用いて義歯を作製する場合、床用材料をアーチ形器具の床部に付加し、結果として得られる義歯のためのフランジを形成することができる。このようにして、アーチ形器具は、別個のフランジ部に一体化された義歯の舌側部を構成することができる。
【0007】
アーチ形器具は、患者の適合セッション中に利用することができる。例えば、アーチ形器具は、患者の口腔の対応する部分に挿入されて結合することができる。しかしながら、アーチ形器具が患者に合った好適なサイズにされた場合でも、アーチ形器具が患者の口腔に適切に又は快適に嵌合しない場合も多い。従って、少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具は調整可能とすることができる。より具体的には、アーチ形器具は、曲げ可能又は可撓性にすることができる1又はそれ以上の材料から製作することができる。しかしながら、アーチ形器具は、常時調整可能でなくてもよい。むしろ、アーチ形器具は、特定の温度に曝されたときにのみ調整可能とすることができる。例えば、アーチ形器具は、特定の温度を超えて加熱されたときにのみ調整可能とすることができる。従って、患者の訪問中に、歯科開業医によって選択された特定のアーチ形器具が患者の口腔に挿入可能であるように思われるが、幾らかの微調整が必要になる可能性がある場合、何らかの調整のためにアーチ形器具を歯科用器具製造所に送る必要がないことになる。むしろ、開業医は、単にアーチ形器具を少なくとも予め定められた温度まで加熱して、その場でアーチ形器具に対して必要な調整を行うことができる。例えば、アーチ形器具は、数分間熱に曝すことができ、次いで、快適に適合するのに必要とされる形状に調整することができ、次に、適合性を確認するために患者の口腔内に再挿入することができる。この調整プロセスは、アーチ形器具が患者の口腔内で適切且つ快適に嵌合するまで繰り返すことができる。
【0008】
少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具のペアが提供される。アーチ形器具は、対になる一方のものとすることができ、上側義歯に類似した上側又は上顎器具と、下側義歯に類似した対応する下側又は下顎器具と、を含むことができる。
【0009】
少なくとも1つの実施形態において、歯科アーチ形器具のキットが提供される。キットは、様々なサイズにされた対応する又はマッチするアーチ形器具のペアを含むことができる。各ペアは、上側又は上顎アーチ形器具と、下側又は下顎アーチ形器具とを含むことができ、1つのペアが他のペアよりも大きくすることができる。これらの実施形態において、開業医は、義歯の適合セッション中に、キットからアーチ形器具の1又はそれ以上のペアを選ぶことができる。例えば、第1のペアを選択して患者の口腔内に挿入する(例えば、一度に1つのアーチ形器具を、又は両方のアーチ形器具を同時に)ことができる。選ばれたアーチ形器具が特定の患者には大きすぎるか又は小さすぎる場合には、異なるサイズのペアを選ぶことができ、好適なペアが特定されるまで適合を繰り返すことができる。ペアの各アーチ形器具に必要となる可能性がある何らかの調整を上述の方式で行うことができる。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具の作製装置を提供することができる。本装置は、分離可能な上側部分及び下側部分を有する成型(モールド)装置を含むことができる。成型装置は、金属(例えば、真鍮、ベリリウム、等)から構成することができ、特定の構造的特徴を含むことができ、1又はそれ以上のアーチ形器具を生産するようなサイズ及び形状にすることができる。少なくとも1つの実施形態において、成型装置は、マスター義歯から作製できるマスターアーチ形器具から製造することができる。例えば、成型装置は、好適なサイズ及び形状のアーチ形器具を形成するために特定の部分(例えば、その床用材料の一部又は全部)が除去された1又はそれ以上のマスター義歯から製作することができる。
【0011】
少なくとも1つの実施形態において、ベースコンパウンドをアーチ形器具の製造に利用することができる。ベースコンパウンドは、完成したアーチ形器具が熱に曝されたときに特定の様態を示すことを可能にする特定の化学的特性を有することができる。例えば、ベースコンパウンドは、完成したアーチ形器具が十分な熱に曝されたときに形状を調整可能にできる特性を有することができる。一般に、患者が通常はアクセスすることのできないレベルの「十分な」熱を有し、患者が意図せずに適合製を変えてしまうのを防止できることが有利とすることができる。
【0012】
少なくとも1つの実施形態において、ベースコンパウンドは、ポリマー及びモノマーの混合物を含むことができる。ベースコンパウンドは、予め定められた量のポリマーを対応する量のモノマーと混合することによって形成することができ、冷却又は凍結して、アーチ形器具を作製するのに好適な練り状物質を形成することができる。
【0013】
少なくとも別の実施形態において、アーチ形器具作製装置はまた、インレー器具を含むことができる。インレー器具は、アーチ形器具の製造中に歯のセットを保持するように構成された湾曲形状のトレイとすることができる。インレー器具は、何れかの好適な材料(例えば、シリコーン)から構成することができ、製造されることになるアーチ形器具に類似したサイズ及び形状とすることができる。インレー器具はまた、アーチ形器具の生産中に歯のセットを受けるための複数の凹部を含むことができる。
【0014】
インレー器具は、何れかの好適なプロセスを用いて製作することができる。少なくとも1つの実施形態において、インレー器具は、マスターアーチ形器具(例えば、上述したマスターアーチ形器具に類似した)、及び成型装置(例えば、上述した成型装置に類似した)を用いて製造することができる。より具体的には、マスターアーチ形器具は、成型装置の上側部分及び下側部分によって少なくとも部分的に囲むことができ、インレーコンパウンドは、成型装置に注入されて成型装置の内部及びマスターアーチ形器具の周囲の空き領域を充填することができる。このようにして、インレー器具を利用して、当該インレー器具を作製するのに使用されるマスターアーチ形器具の物理特性に類似することができるアーチ形器具を製造することができる。例えば、インレーコンパウンドは、1又はそれ以上の種類のシリコーンを含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、インレー器具はまた、1又はそれ以上の種類のエポキシを含むことができる。
【0015】
アーチ形器具に類似した他の歯科用器具もまた提供される。例えば、少なくとも1つの実施形態において、義歯型器具を提供することができる。義歯型器具は、義歯に類似することができるが、義歯型器具を調整可能にできる材料から構成することができる。少なくとも1つの実施形態において、義歯型器具を作製するために、アーチ形器具の作製装置に類似した作製装置がまた提供される。
【0016】
その上、義歯を作製するための様々な技術が様々な実施形態において提供される。例えば、義歯は、アーチ形器具及び義歯型器具の1又はそれ以上をコンピュータ支援設計(「CAD」)、コンピュータ支援製造(「CAM」)、三次元(「3D」)プリンティング、及び同様のもののうちの1又はそれ以上と組み合わせて活用することによって作製することができる。
【0017】
少なくとも1つの実施形態において、義歯が提供される。義歯は、アーチ形舌側部を含むことができる。舌側部は、床部と、床部上に配置された複数の歯と、を含むことができる。義歯はまた、床部に一体化された別個のフランジ部を含むことができる。
【0018】
少なくとも1つの実施形態において、顎に結合するためのアーチ形器具が提供される。アーチ形器具は、アーチ形床部と、床部上に配置された複数の歯と、を含むことができる。アーチ形器具の形状及び適合性は、アーチ形器具が予め定められた温度に曝されたときに調整可能にすることができる。
【0019】
少なくとも1つの実施形態において、患者の口腔に好適な少なくとも1つの義歯を提供する際に使用するためのキットが提供される。キットは、第1のペアの上側アーチ形器具及び下側アーチ形器具を含むことができる。キットはまた、上側アーチ形器具及び下側アーチ形器具の少なくとも第2のペアを含むことができる。アーチ形器具の第1のペア及び少なくとも第2のペアの各々は、患者の口腔の対応する部分に嵌合するように構成することができる。第1のペアの上側アーチ形器具及び下側アーチ形器具のサイズは、少なくとも第2のペアの上側アーチ形器具及び下側アーチ形器具のサイズとは異なることができる。第1のペア及び少なくとも第2のペアの上側アーチ形器具及び下側アーチ形器具の各々の形状は、アーチ形器具が予め定められた量の熱に曝されたときに調整可能にすることができる。
【0020】
少なくとも1つの実施形態において、部分アーチ形器具が提供される。部分アーチ形器具は、床部と、床部に沿って位置付けられた複数の歯とを備えることができる。床部は、複数の歯のうちの少なくとも1つの歯に隣接して配置された少なくとも1つの溝部を含むことができる。少なくとも1つの溝部は、患者の口腔内に少なくとも1つの歯を受けるように構成することができる。部分アーチ形器具は、該部分アーチ形器具が予め定められた温度に曝されたときに形状を調整可能にすることができる。
【0021】
少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具を作製する際に使用するインレー器具が提供される。インレー器具は、湾曲トレイを含むことができる。トレイは、該トレイの一方端から他方端にわたる凹部を有することができる。凹部は、複数の歯のうちのそれぞれの歯を受けるように各々構成された複数の歯受容部を有することができる。インレー器具はまた、湾曲トレイに結合された少なくとも1つの耳部を含むことができる。少なくとも1つの耳部は、成型装置の少なくとも1つの耳部受容部に結合するよう構成することができる。
【0022】
少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具を作製するための成型装置が提供される。成型装置は、第1のアーチ形凹部及び第1の注入スロットを有する下側部分と、第2のアーチ形凹部及び第2の注入スロットを有する上側部分とを備えることができる。下側部分と上側部分とが組み合わされたときに、第1の注入スロット及び第2の注入スロットが注入孔を形成することができる。第1の凹部は、インレー器具を受けるように構成することができ、第2の凹部は、注入孔を通じて注入される注入ベースコンパウンドを受けるように構成することができる。
【0023】
少なくとも1つの実施形態において、患者の口腔に結合するためのアーチ形器具を作製する方法が提供される。本方法は、複数の歯の各々をインレー器具のそれぞれの歯受容部内に配置する段階と、インレー器具を成型装置の下側部分の凹部に位置付ける段階と、インレー器具を間に挟装して下側部分を成型装置の上側部分に結合する段階と、を含むことができる。本方法はまた、成型装置の注入孔にベースコンパウンドを注入する段階と、ベースコンパウンドを加工して、該ベースコンパウンドを複数の歯と一体化する段階と、を含むことができる。
【0024】
少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具の床部を形成するよう機能するベースコンパウンドを作製する方法が提供される。本方法は、複数の材料を共に混合する段階を含むことができる。材料は、予め定められた比率で混合することができる。混合物は、アーチ形器具の作製中に複数の歯に接合するのに好適な特性を示すことができる。本方法はまた、混合物を加工してベースコンパウンドを提供する段階を含むことができる。
【0025】
少なくとも1つの実施形態において、モールド用のインレー器具を形成するよう機能するインレーコンパウンドを作製する方法が提供される。本方法は、複数の材料を共に混合する段階を含むことができる。材料は、予め定められた比率で混合することができる。混合物は、アーチ形器具の作製中に、複数の歯を保持する特性を示すことができる。本方法はまた、混合物を予め定められた温度で硬化させて、インレーコンパウンドを提供する段階を含むことができる。
【0026】
少なくとも1つの実施形態において、成型装置用のインレー器具を作製する方法が提供される。本方法は、成型装置の上側部分上にマスターアーチ形器具を配置する段階と、マスターアーチ形器具を間に挟装して成型装置の上側部分を下側部分に結合する段階と、を含むことができる。下側部分と上側部分とが共に結合されたときに、上側部分の注入スロット及び下側部分の注入スロットが成型装置の注入孔を形成することができる。本方法はまた、注入孔にインレーコンパウンドを注入する段階と、注入されたコンパウンドを加工してインレー器具を提供する段階と、を含むことができる。
【0027】
少なくとも1つの実施形態において、義歯型器具が提供される。義歯型器具は、床部及びフランジ部を有する一体構造体と、床部と一体化された複数の歯と、を含むことができる。義歯型器具は、義歯型器具が熱に曝されたときに調整可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の上述の特徴及び他の特徴、性質並びに様々な利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を考慮するとより明らかになるであろう。
【0029】
【
図1】少なくとも1つの実施形態による、患者の口腔の上顎部分に嵌合するように構成されたアーチ形器具の前方斜視図を示す。
【
図2】少なくとも1つの実施形態による、患者の口腔の下顎部分に嵌合するように構成されたアーチ形器具の上面図である。
【
図3A】少なくとも1つの実施形態による、アーチ形器具を作製するためのアーチ形器具作製装置の成型装置及びインレー器具の下側及び上側部分の上面図である。
【
図3B】少なくとも1つの実施形態による、
図3Aの成型装置及び
図3Aのインレー器具の下側部分の部分上面図を示す。
【
図3C】少なくとも1つの実施形態による、
図3A及び
図3Bの成型装置に結合され且つベースコンパウンド容器に結合されたベースコンパウンド供給装置の正面図を示す。
【
図3D】少なくとも1つの実施形態による、
図3Cのベースコンパウンド容器の様々な構成要素の斜視図を示す。
【
図3E】少なくとも1つの実施形態による、
図3A及び
図3Bの成型装置に結合された重合プレスの前方斜視図を示す。
【
図3F】少なくとも1つの実施形態による、成型装置を離型するための離型キットの斜視図である。
【
図4】少なくとも1つの実施形態による、トレイ内に配置された歯のセットの上面図を示す。
【
図5】少なくとも1つの実施形態による、義歯型器具の前方斜視図を示す。
【
図6】少なくとも1つの実施形態による、義歯の斜視図を示す。
【
図7】少なくとも1つの実施形態による、別のインレー器具及び歯の別のセットを含む、他の成型装置の下側及び上側部分の斜視図である。
【
図8】少なくとも1つの実施形態による、アーチ形器具を製作するための例示的なプロセスである。
【
図9】少なくとも1つの実施形態による、ベースコンパウンドを作製するための例示的なプロセスである。
【
図10】少なくとも1つの実施形態による、インレーコンパウンドを作製するための例示的なプロセスである。
【
図11】少なくとも1つの実施形態による、インレー器具を製作するための例示的なプロセスである。
【
図12】少なくとも1つの実施形態による、成型装置に結合されたクランプ装置の前方斜視図を示す。
【
図13】少なくとも1つの実施形態による、成型装置を離型した後の成型装置にアクセス可能なインレー器具の斜視図である。
【
図14A】少なくとも1つの実施形態による、成型装置の上側部分に結合されたマスター義歯の斜視図を示す。
【
図14B】少なくとも1つの実施形態による、マスター義歯及び
図14Aの成型装置の上側部分の上に注入されたシリコーンから形成することができる成型装置のシリコーン製下側部分の上方斜視図を示す。
【
図14C】少なくとも1つの実施形態による、インレー器具が形成され内部に配置された
図14Aの成型装置の下側部分を少なくとも部分的に取り囲むチューブの上方斜視図を示す。
【
図15】少なくとも1つの実施形態による、義歯を作製するための例示的なプロセスである。
【
図16】少なくとも1つの実施形態による、義歯を作製するための別の例示的なプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、患者の口腔の上顎部分に嵌合するように構成されたアーチ形器具100の前方斜視図を示す。
図2は、患者の口腔の下顎部分に嵌合するように構成されたアーチ形器具200の上面図である。
図1に示すように、アーチ形器具100は、アーチ形又は湾曲した床部110と、予め定められた順序で床部110上に配置された歯120のセットとを含むことができる。同様に、アーチ形器具200は、アーチ形床部210と、予め定められた順序で床部210上に配置された歯220のセットとを含むことができる。簡潔にするため、以下の説明では、アーチ形器具100についてのみ行う。しかしながら、同様の説明をアーチ形器具200にも行うことができる点は理解されたい。
【0031】
歯120は、人の口腔の上側又は上顎部分もしくは口腔の下側又は下顎部分に有することができる歯に類似することができる。歯120の各々は、歯又は義歯技工所によって提供される標準的な歯とすることができる。例えば、歯120は、予め作製することができ、様々な形状、サイズ及び色で提供することができる。このため、例えば、選ばれる数千の歯が存在することができ、各歯は、義歯の予め設定された場所を占めるように構成される。更に、歯120の各々は、特定の義歯上の固有位置に対応することができる。例えば、F型義歯(図示せず)用のN13及びIN2として特定又は表記される歯は、特定のタイプの上側義歯上の固有の場所に対応することができる。
【0032】
図1に示すように、歯120は、床部110の片側に予め定められた様態で配置することができる。従って、アーチ形器具100は、患者の歯茎の一部分上の歯に類似することができる。アーチ形器具100は、あらゆる好適な材料から構成することができる。例えば、アーチ形器具100は、アクリル系熱可塑性物質から構成することができる。この材料は、アーチ形器具100が少なくとも予め設定された温度に曝されたときに形状の変化又は調整能力をアーチ形器具100に提供することができる。
【0033】
アーチ形器具100は、患者の義歯セッションの一部として利用することができる。少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具100は、アーチ形器具のキット又はセット(図示せず)の一部として含めることができる。例えば、このキットは、整合する上側又は上顎及び下側又は下顎アーチ形器具の可変サイズのペアを含むことができる。例えば、適合セッション中に、患者が試用するためのキットから1又はそれ以上のアーチ形器具を選ぶことができる。例えば、選択されたアーチ形器具が患者の口腔には大きすぎた場合には、より小さなアーチ形器具を選ぶことができる。
【0034】
好適なサイズのアーチ形器具が特定されると、患者の口腔の対応する部分にほぼ嵌合することができるが、口腔内で必ずしも正確且つ快適には嵌合しない場合がある。これらの事例では、特定されたアーチ形器具は、少なくとも予め定められた温度に曝すことができ、これによりアーチ形器具が曲げ可能又は可撓性にすることができる。すなわち、アーチ形器具は、短時間(加熱に関連した)で調整可能になることができる。
【0035】
少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具は、患者の口腔内に配置されている間、硬質状態から調整可能状態に変化することができる。これらの実施形態において、アーチ形器具は、予め定められた範囲の温度に曝されたとき(例えば、100°F(37.8°C)~130°F(54.4°C)のような、口腔内組織を損傷する程十分には高くない温かい流体に曝されたとき)に調整可能状態となることができる材料から構成することができる。少なくとも別の実施形態において、アーチ形器具の調整性は、より高い温度範囲(例えば、130°F(54.4°C)~少なくとも212°F(100°C))に限定することができ、従って、患者の口腔外で調整することが必要となる場合がある(例えば、歯科開業医によって、又は技工所内で、これにより技工所での加工セッション後に患者の追加の訪問を必要とする可能性がある)。これらの実施形態において、アーチ形器具は、僅かに異なる材料又は化合物から構成することができる。アーチ形器具を調整可能状態に変化させるためにどのような温度が必要とされるかにかかわらず、調整されたアーチ形器具は、予め定められた時間で冷却放置することができ、調整プロセスは、アーチ形器具が患者の口腔の対応する部分に正確且つ快適に嵌合するまで繰り返し行うことができる。
【0036】
上側(又は上顎)及び下側(又は下顎)アーチ形器具の両方が必要とされる場合、上側又は下側のアーチ形器具に行われた何らかの調整は、他方のアーチ形器具に対して対応する調整が必要となる可能性があり、上側及び下側アーチ形器具の各々は、患者の口腔内部で適切に相互作用するまで、継続して調整する場合がある。通常、患者の上側及び下側の歯の位置は、患者の下顎又は下側顎部によって制御することができる。従って、初めに下側アーチ形器具に好適な調整を行い、その後で、上側アーチ形器具に対して対応する調整を行う(例えば、上側アーチ形器具の歯が下側アーチ形器具の歯と適切に整列できるように)ことが好ましい。
【0037】
少なくとも1つの実施形態において、各アーチ形器具を更に加工して、患者用の義歯の完全なセットを形成することができる。例えば、床用材料(例えば、ろう又はアクリル部分)を各アーチ形器具に追加して(例えば、床部110)、舌側部及び別個のフランジ部を含む完全な義歯を形成することができる。この工程は、患者訪問中に歯科開業医によって直接、又は検査技師によって実施することができる。後者によって行われた場合、技工手順後に、患者が少なくとももう1回訪問することが必要となる可能性がある。
【0038】
少なくとも1つの実施形態において、上側及び下側アーチ形器具のペア(例えば、アーチ形器具100及び200)は、緊急用義歯を作製するための計測手段として店頭で(例えば薬局で)患者又は顧客に提供することができる。患者は、アーチ形器具が互いに又は患者の対向する既存の歯又は義歯と適切に嵌合し相互作用するまで、(例えば、上述のようにアーチ形器具を温かい又は高温の水に曝すことによって)店頭用アーチ形器具を調整することができる。必要に応じて、患者は、測定装置として機能することができる調整されたアーチ形器具を義歯技工所に送って、交換用義歯の完全なセットを作成することができる。
【0039】
永久義歯の作製には数ヶ月(例えば、4~6ヶ月)要することが多いので、訪問中に歯科インプラントを取り付けた患者は、家に持ち帰るために部分又は全部暫間義歯を提供されることが多い。暫定義歯は、多くの場合、患者用に事前に用意され、作製するために患者が複数回事前に訪問しておくことが必要な場合がある。従って、少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具は、暫間の緊急/予備又は長期にわたるインプラント義歯の作製用に提供される。
【0040】
少なくとも1つの別の実施形態において、インプラント義歯として使用するのに好適なアーチ形器具の床部は、アーチ形器具100及び200の何れかと同様とすることができ、歯のセットに結合された床部を含むことができる。しかしながら、床部は、非インプラント義歯において使用することができるアーチ形器具の床部(例えば、アーチ形器具100の床部110)とは異なる特有の形状を有することができる。すなわち、インプラント用アーチ形器具の少なくとも床部の構造的特徴は、インプラント支持補綴として使用するのに最適化することができる。例えば、修正アーチ形器具の床部は、患者のインプラントと相互作用する1又はそれ以上の凹部、ディンプル又は同様のものを含むことができる。
【0041】
少なくとも別の実施形態において、インプラント義歯として使用するのに好適なアーチ形器具は、その床部の部分に沿って汎用ピックアップチャンネルを含むことができる。このチャンネルは、床部内に一連の凹部又は単一の長い凹部の何れかとして成形することができ、一連の凹部(又は単一の長い凹部)が、患者の歯茎に既に埋め込まれている何れかの歯科インプラント(例えば、金属ねじ等)上に存在するように患者の歯茎ラインに沿って配置するように構成することができる。チャンネルは、インプラントされた材料に固定、重合、又は他の方法で結合するために(例えば、アクリルで)低温硬化することができる。インプラントが最終的に(例えば、数ヶ月後に)患者の骨と融合するときに、修正されたアーチ形器具は、必要に応じて更に調整することができる。
【0042】
上述のように、独自に形成された床部又はピックアップチャンネルを有するアーチ形器具はまた、その構造的完全性を維持するために補強することができる。例えば、アーチ形器具は、補強材料又は補強材(例えば、テフロンストリップ)で被覆又は他の方法で一体化することができる。アーチ形器具は、作製中又は作製後の何れかの好適な時点でこの補強材料を用いて被覆することができる。
【0043】
少なくとも1つの実施形態において、汎用ピックアップチャンネルを有するアーチ形器具は、成型装置301に類似した成型装置を用いて作製することができる。しかしながら、成型装置の上側部分の凹部は、アーチ形器具の床部において汎用ピックアップチャンネルを形成するリッジ又は突出する特徴部を含むことができる(例えば、ベースコンパウンド359のようなベースコンパウンドは、リッジ付近又はその周囲に流動することができ、硬化されると、結果として得られるアーチ形器具の汎用ピックアップチャンネルがもたらされる)。リッジはまた、作製された際にアーチ形器具を補強するため上述の補強材(例えば、テフロンストリップ)を受けることができる。従って、汎用ピックアップチャンネルを有するアーチ形器具の作製プロセスは、プロセス800に類似することができるが、(例えば、ベースコンパウンドを注入する前に)成型装置の上側部分の凹部のリッジに隣接して、リッジに沿って、又はリッジ上に少なくとも1つの補強材を配置する段階を含むことができ、結果として得られるアーチ形器具が補強材で補強され且つピックアップチャンネルを含むことができるようになる。
【0044】
少なくとも別の実施形態において、アーチ形器具は、上述したような独自の形態又はピックアップチャンネルを含まなくてもよい。むしろ、開業医は、必要な場合にアーチ形器具によって収容される必要があるインプラントの数に応じて、アーチ形器具の床部に沿って1又はそれ以上のピックアップチャンネルを孔加工又は他の方法で形成することができる。
【0045】
一部の患者は、既存の歯を有することもあるが、1又はそれ以上の欠損歯の代りに「フリッパー」器具又はブリッジを必要とすることがある。従って、少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具は、同様に、部分アーチ形器具を形成するように修正することができる。これらの実施形態において、総アーチ形器具の選択部分をトリミング又は切断して、患者の既存の歯を受けるための1又はそれ以上の溝部を形成することができる。その結果、修正されたアーチ形器具は、患者の欠損歯に対応する歯のみを含むことができる。総アーチ形器具と同様に、修正されたアーチ形器具もまた、患者の口に嵌合して即時のフリッパー又はブリッジとして機能するよう調整(例えば、上述のように)することができる。修正されたアーチ形器具の何れかの切断部分はまた、何らかの鋭利な縁部又は表面を平滑にするよう(例えばアクリルで)低温硬化することができる。少なくとも1つの実施形態において、修正されたアーチ形器具が患者にブリッジを提供するために使用されるときには、1又はそれ以上のインプラント又はアバットメント(支台)を準備することができ、修正されたアーチ形器具の対応する歯は、インプラント又はアバットメントに嵌合することができる(例えば、修正されたアーチ形器具の上述の汎用ピックアップチャンネルが歯科インプラントと一体化できる方法と同様に)。
【0046】
次いで、
図3A~3Fを参照すると、アーチ形器具作製装置は、上側部分320から分離可能な下側部分310を有する成型装置301を含むことができる。本装置はまた、インレー器具330と、ベースコンパウンド359を成型装置301内に供給又は注入するためのベースコンパウンド供給装置340と、を含むことができる。本装置はまた、ベースコンパウンド359を貯蔵し、ベースコンパウンド359を供給装置340に提供するための少なくとも1つのベースコンパウンド容器350を含むことができる。
【0047】
図3Dに示すように、例えば、ベースコンパウンド容器350は、ベースコンパウンド359を貯蔵するための収容部分351と、収容部分351を少なくとも部分的にシールするための1又はそれ以上のキャップ352と、を含むことができる。ベースコンパウンド容器350はまた、コンパウンド注入ノズル(又はチューブ)354を有する供給又は注入キャップ353を含むことができる。キャップ352は、ベースコンパウンド容器350の下側及び上側開口部をシールすることができ、ベースコンパウンド359が供給又は注入されるときに取り外すことができる。例えば、キャップ352は、ベースコンパウンド359を注入する前に取り外すことができ、注入キャップ353は、ベースコンパウンド容器350の一方の開口部に固定(例えば、ねじ止め)することができ、ベースコンパウンド容器350の他の開口部は、供給装置340のピストン(例えば、流体集成型ピストン)(図示せず)に結合することができる。ベースコンパウンド容器350は、アーチ形器具100又は200のようなアーチ形器具を製造するのに必要とされる何らかの好適な量のベースコンパウンド359を貯蔵するように構成することができる。
図3Cに示すように、ベースコンパウンド容器350が供給装置340に結合されると、ベースコンパウンド359を成型装置301内に供給又は注入することができる。
【0048】
成型装置301の下側及び上側部分310及び320の各々は、少なくとも部分的に金属(例えば、真鍮、ベリリウム)から構成することができる。下側部分310は、アーチ形凹部312を含むことができ、上側部分320は同様のアーチ形凹部322を含むことができる。例えば、
図3A及び3Bに示すように、凹部312は、インレー器具330を受けるような形状及びサイズにすることができる。
【0049】
下側部分310は、上側部分320の締結具324に対応して相互作用し又は嵌合することができる1又はそれ以上の締結通路314を含むことができる。加えて、下側及び上側部分310及び320は、供給又は注入スロット316及び326にそれぞれ通じることができる開口部315及び325を含むことができる。注入スロット325及び326は、下側及び上側部分310及び320が互いに結合されたときに供給又は注入孔317を形成することができる。注入孔317は、ベースコンパウンド容器350の注入ノズル又はチューブ354の少なくとも一部を受ける程に大きいとすることができる。下側及び上側部分310及び320の各々はまた、これらの対応する本体から僅かに突出する端部319及び329をそれぞれ含むことができる。端部319及び329は、下側及び上側部分310及び320を互いに結合解除するように把持又は保持することができる(以下でより詳細に説明される)。
【0050】
少なくとも1つの実施形態において、成型装置301は、マスターアーチ形器具を用いて製作することができる。例えば、成型装置301は、1又はそれ以上の既製の又はマスター義歯を用いて製作することができ、マスター義歯は、好適なサイズ及び形状にされたマスターアーチ形器具(例えば、アーチ形器具100及び200に類似した)を形成するために取り除かれる特定の部分(例えば、床用材料又はフランジ部)を有する。マスターアーチ形器具を用いて、適切なサイズ及び形状にされた凹部312及び322を形成するように下側及び上側部分310及び320の各々を生成することができる。このようにして、他のアーチ形器具を製造するために成型装置301が使用される場合、結果として得られるアーチ形器具は、マスターアーチ形器具と同様のサイズ、形状、及び構造的特徴を有することができる。
【0051】
幾つかの例では、成型(モールド)装置301はまた、歯(例えば、歯120)を作製するのに使用される専用のモールドとすることができる。成型装置301は、凹部312内に各歯に対応するそれぞれの受容部(図示せず)を有することができる。これらの受容部の各々は、対応する歯の所望の解剖学的構造に応じた形状及びサイズにすることができる。歯を作製する段階の一環として、1又はそれ以上の化合物が成型装置301内に供給され、歯受容部の各々を充填してそれぞれの歯を形成するようにすることができる。その後、歯は、空気を吹き付けることによって成型装置301から取り外すことができる。加えて、その後、歯は、研磨又は他の仕上げプロセスによって仕上げることができる。
【0052】
成型装置301の構造は硬質にすることができ、従って、各作製歯の寸法又は公差のばらつきを(例えば、約2ミクロンに)制限することができる。しかしながら、歯の何らかの研磨により、歯の形状及びサイズが変化して、従って、これらの寸法ばらつきが増大する可能性がある。これにより、その後でのアーチ形器具の作製の際に、成型装置301のそれぞれの歯受容部内に歯が戻されて好適に嵌合するのが阻止される可能性がある。この寸法公差の増大が望ましくない場合には、歯を研磨しなくてもよい。しかしながら、研磨が望ましい場合には、インレー器具330を利用して、必要とされる追加の公差を提供することができる。
【0053】
インレー器具330は、何らかの好適な材料から構成することができる。例えば、インレー器具330は、少なくとも部分的にシリコーンのようなインレーコンパウンドから構成することができる(例えば、以下でより詳細に説明される)。インレー器具330は、アーチ形トレイ332を含むことができる。トレイ332は、成型装置301の注入孔317を通ってベースコンパウンド359を受けるように構成された入口点337を含むことができる。トレイ332はまた、耳部338を含むことができ、該耳部338は、成型装置301の対応する耳部受容部318内に嵌合するような形状及びサイズにすることができる。これは、例えば、インレー器具330を凹部312と位置合わせして、インレー器具330を所定位置に保持するのを助けることができる。トレイ332は、一方端333から他方端335に延びる凹部332を含むことができる。凹部332は、ベースコンパウンド358の一部を受けるような形状及びサイズにすることができ、この一部は、結果として得られるアーチ形器具(例えば、アーチ形器具100及び200の何れか一方)の床部を形成することができる。加えて、凹部332は、各々が歯のセットのうちの特定の歯を受けるような形状及びサイズにすることができる複数の歯受容部336を含むことができる。
図4を概略的に参照すると、
図4は、アーチ形器具を形成するのに使用できる歯のセット420の一例である。各歯受容部336は、歯420のうちの対応する1つの歯が内部に配置されたときに、ベースコンパウンド359が当該受容部に流入するのを阻止する程十分な深さを有することができる。すなわち、対応する歯が歯受容部内に配置されたとき、及びベースコンパウンド359が凹部332内に流動したときに、ベースコンパウンド359は、当該歯の一部の周りのみに流動し、歯受容部自体には流れないようにすることができる。
【0054】
図3A~3Fに戻って、少なくとも1つの実施形態において、インレー器具330はまた、成型装置301を製作するのに使用されるマスターアーチ形器具に類似することができるマスターアーチ形器具を用いることにより製作することができる。インレー器具330を生成するために、例えば、マスターアーチ形器具は、成型装置301内(例えば、凹部322内)に位置付けることができ、インレーコンパウンド(以下でより詳細に説明される)を成型装置301の注入保持部317に注入することができる。マスターアーチ形器具は、成型装置301内の空き容積全体を占有しない場合がある(例えば、マスターアーチ形器具が凹部312を占有しない場合がある)ので、注入されたインレーコンパウンドがこれらの空き領域を充填することができ、その内部で硬化することができる。その後、成型装置301が開放されると、マスターアーチ形器具の歯に対応する歯凹部の占有面積を有するインレー器具330は、成型装置301から取り外すことができる。
【0055】
少なくとも1つの実施形態において、本装置はまた、注入孔シール構成要素360を含むことができる。
図3Aに示すように、シール構成要素360は、ボールに類似することができ、何らかの好適な材料から構成することができる。例えば、シール構成要素は、金属(例えば、鋼鉄)ボールとすることができる。アーチ形器具の製造中、シール構成要素360は、注入孔317に挿入することができる。例えば、シール構成要素360は、注入孔317内に十分に深く挿入されて、注入管354を注入孔317内に挿入可能にできるようにし、また、ベースコンパウンド359を成型装置301内(例えば、凹部312及び322の空き領域内)に注入可能にすることができる。次いで、ベースコンパウンド359は、結果として得られるアーチ形器具の床部(例えば、床部110及び210の何れか)を形成するように加工することができる。
【0056】
少なくとも1つの実施形態において、アーチ作製装置はまた、成型装置301内に注入されたベースコンパウンド359を重合するための重合プレス370を含むことができる。例えば、
図3Eに示すように、重合プレス370は、ある温度範囲の熱を提供するように制御(例えば電気的に)することができ、幾つかの特徴の中で特に、ベースコンパウンド359を加熱するために成型装置301を受けてこれに嵌合することができる加熱部分372を含むことができる。
【0057】
図示されていないが、少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具作製装置はまた、成型装置301で形成されたアーチ形器具を後加工するための1又はそれ以上の後加工工具を含むことができる。例えば、これらの後加工工具は、アーチ形器具から余分な材料を除去し、該アーチ形器具を仕上げ加工する1又はそれ以上の研磨及びトリミング工具を含むことができる。
【0058】
更に、少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具作製装置はまた、下側及び上側部分310及び320を互いに結合解除するための離型キットを含むことができる。例えば、
図3Fに示すように、離型キット380は、離型装置382、圧縮空気供給装置384、及び下側部分310を上側部分320から結合解除する際に有用とすることができる様々な他の工具(例えば、ハンマー、その他)を含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、離型装置382は、成型装置301の下側部分310の端部319及び成型装置301の上側部分320の端部329の何れか一方と係合するスロットを含むことができる。例えば、装置382が何れかの端部319又は329に係合された後、圧力を加えて下側及び上側部分310及び320を分離することができる。少なくとも別の実施形態において、空気圧作動式ピストン(図示せず)を用いて、各々の端部319及び329を押圧して下側及び上側部分310及び320を分離することができる。下側及び上側部分310及び320が結合解除されると、その後、成型装置301で形成された結果として得られるアーチ形器具を成型装置301から取り出すことができる。
【0059】
図3A~3Fに図示した構成要素の全てがアーチ形器具の作製中に必要とされるわけではない点を理解されたい。例えば、少なくとも1つの実施形態において、インレー器具330は、アーチ形器具の作製中に利用しない場合もある。これらの実施形態において、歯(例えば、歯120又は420)は、最小限の歯解剖学的構造の形状にされた下側部分310の凹部312のそれぞれの受容部(図示せず)(例えば、各歯に対する僅かに大きな受容部)内に直接配置することができる。これにより、加工した歯に関する上述の公差問題の一部を回避することができ、成型装置301を一般的な歯の製造に使用することができる。
【0060】
また、アーチ形器具の作製の各ステップにおいて他の構成要素又は装置を利用することができる点を理解されたい。加えて、
図3Aは、各々が単一の凹部をそれぞれ有する下側及び上側部分310及び320のみを示しているが、下側及び上側部分310及び320の各々は、1つよりも多い凹部を含むことができる点を理解されたい。例えば、下側部分310は、凹部312に類似した2又はそれ以上の凹部を含むことができ、上側部分320は、凹部320に類似した2又はそれ以上の凹部を含むことができる。このようにして、成型装置301を利用して、複数のアーチ形器具を同時に作製することができる。
【0061】
異なるモールド(例えば、成型装置301に類似した)を設けることができる点を理解されたい。例えば、異なる歯技工所は、形状及びサイズが異なる歯を作製することができる。従って、別のモールドは、これらの歯を収容するように構築することができる。
【0062】
加えて、アーチ形器具を作製する装置について
図3A~3Fに関して説明してきたが、部分アーチ形器具(例えば、上述の部分アーチ形器具など)を作製するために同様の装置を設けることができる点を理解されたい。
【0063】
その上、義歯、義歯型器具及び同様のものなどの他の歯科用器具を作製するための類似の装置を設けることができる。
【0064】
図5は、義歯500(例えば、下顎義歯)の斜視図を示す。
図5に示すように、義歯500は、アーチ形器具100及び200の何れかよりも大きくすることができ、床部すなわち舌側部510及びフランジ部515を有する単体構造体505と、床部部分510の片側に一体化された歯のセット520と、を含むことができる。フランジ部515は、義歯500の構造的完全性を維持するためのフレームワークを提供することができる。
【0065】
図6は、アーチ形器具(例えば、アーチ形器具100及び200)に類似した調整可能とすることができる義歯型器具600の斜視図を示す。しかしながら、アーチ形器具はフランジ部(例えば、義歯500のフランジ部515のような義歯の床用材料)を含まない場合があるが、義歯型器具600は、このような部分を含むことができる。従って、義歯型器具600は、形状及びサイズが実際の義歯に類似することができる。例えば、
図6に示すように、義歯型器具600は、実際の義歯(例えば、義歯500)と類似して、床部又は舌側部610及びフランジ部615を有する単体構造体605と、床部又は舌側部610上に配置された歯のセット620と、を含むことができる。
【0066】
実際の義歯の傾向として実質的に硬質で非可撓性であるのとは異なり、義歯型器具600は、熱に曝されたときに可撓性又は調整可能になることが可能な1又はそれ以上の材料から構成することができる。例えば、義歯型器具600は、少なくとも部分的に熱可塑性物質から構成することができ、アーチ形器具100及び200と類似して、温水又は高温水(例えば、約175°F(79.4°C)で)で加熱されたときに少なくとも部分的に調整可能状態になることができる。その上、
図6に示すように、義歯型器具600は、加熱時に義歯型器具600を調整可能にすることができる隆起部又は折り曲げ部612を含むことができる。例えば、隆起部612は、床部部分610のアーチ形状の幅調整を可能にすることができる。
【0067】
義歯型器具600は、暫間又は永久義歯として使用することができる。少なくとも1つの実施形態において、義歯型器具600は、選択され、加工され(例えば、トリミングされ)て、予め定められた時間熱に曝す(例えば、約175°F(79.4°C)の高温水に約3分間浸漬する)ことができる。義歯型器具600は、加熱されると形状を調整可能にすることができる(例えば、アーチ形床部の幅を調整することができる)。この調整可能状態において、義歯型器具600は、患者の口腔内に挿入され、口腔の対応する部分に結合され、必要に応じて調整することができる。義歯型器具600が調整された後、加工して、ろう試適又は仕上げされた義歯を形成するためのモデルとして使用することができる。一部の実施例として、調整された器具600の境界部はトリミングすることができ、最終印象を(例えば、アルギン酸塩を用いて)形成することができ、歯型、色調及び位置を選択することができ、垂直方向寸法を定めることができ、咬合を位置合わせすることができる。
【0068】
義歯型器具600はまた、調節可能である理由から、患者の上顎の物理的モデルを得るのに使用することができる。例えば、義歯型器具600は、実際の義歯を作製するのに必要な情報を収集することができる義歯データ点収集装置として使用することができる。
【0069】
図6は、上顎義歯型器具のみを示しているが、類似の下顎義歯型器具(図示せず)も設けることができ、患者の下顎の物理的モデルを得るのに使用できる点を理解されたい。
【0070】
図5及び
図6に示すように、義歯及び義歯型器具は、各々がアーチ形器具には含まれていない床用材料又はフランジ部を含むことができるので、アーチ形器具よりも大きくなることができる。従って、より大きな凹部(例えば、凹部312及び322よりも大きい)を有するモールドを利用して、これらの器具を作製することができる。
図7は、インレー器具730及び歯780を含む成型装置701の下側及び上側部分710及び720それぞれの斜視図である。成型装置701は、成型装置301に類似することができ、インレー器具730は、インレー器具330に類似することができ、歯780は、歯420に類似することができる。しかしながら、
図7に示すように、下側及び上側部分710及び720は、凹部312及び322よりも大きい凹部712及び722をそれぞれ含むことができ、これにより、より多くのベースコンパウンド(例えば、ベースコンパウンド359)を収容して、より大きな歯科用器具を形成することができる。
【0071】
図8は、アーチ形器具(例えば、アーチ形器具100及び200の何れか)を製作するための例示的なプロセス800である。プロセス800はステップ802から始めることができる。ステップ804において、プロセスは、複数の歯の各々をインレー器具のそれぞれの歯受容部内に配置する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、複数の歯420の各々をインレー器具330のそれぞれの歯受容部336内に配置する段階を含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、歯は、アーチ形器具の作製中に容易にアクセスできるように歯トレイの様々な容器内に予め定められた順序で(例えば、
図4に示すように)事前配列することができる。
【0072】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、歯をインレー器具上に配置する段階の前又は後で、複数の歯の少なくとも1つの歯に接合材料を塗布する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、歯420をインレー器具330上に配置する段階の前又は後で、複数歯420の少なくとも1つの歯に接合材料(例えば、モノマー、その他)を塗布する段階を含むことができる。これは、後で注入されるベースコンパウンド(例えば、ベースコンパウンド359)に歯を接合するのを助けることができる。
【0073】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、複数の歯をインレー器具上に配置する段階の後で、複数の歯の少なくとも1つの歯の位置を調整する段階を含むことができる。例えば、プロセスはまた、歯420をインレー330上に配置する段階の後で、複数歯420の少なくとも1つの歯の位置を調整する(例えば、ねじ回し及び同様のものなどの工具を用いて)段階を含むことができる。これにより、各歯が確実にインレー内に、その後で成型装置内に適切に位置決めされるのを確実にすることができる。
【0074】
ステップ806において、プロセスは、インレー器具を成型装置の下側部分の凹部に位置付ける段階を含むことができる。例えば、プロセスは、インレー器具330を成型装置301の下側部分310の凹部312内に位置付ける段階を含むことができる。
【0075】
ステップ808において、プロセスは、間にインレー器具を挟装して成型装置の下側部分を上側部分に結合する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、間にインレー器具330を挟装して成型装置301の下側部分310を上側部分320に結合する段階を含むことができる。
【0076】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、下側及び上側部分を共に結合する段階の前に、上側部分の凹部に離型剤の層を施工する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、下側及び上側部分310及び320を共に結合する段階の前に、凹部322に離型剤の層を塗布する段階を含むことができる。離型剤は、シリコーン及び/又はテフロンを含むことができ、プロセスの後工程において、成型装置の上側部分から床部(例えば、ベースコンパウンド359から形成された床部110又は210のような)を分離するのを助けることができる。少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、成型装置の下側部分の凹部に同様に離型剤の層を施工する段階を含むことができる。
【0077】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、下側及び上側部分を共に結合する段階の前に、成型装置の下側部分の注入スロット及び上側部分の注入スロットの何れかにシール構成要素を位置付ける段階を含むことができる。例えば、プロセスは、下側及び上側部分310及び320を共に結合する段階の前に、注入スロット325及び326の何れかにシール構成要素360を位置付ける段階を含むことができる。
【0078】
ステップ810において、プロセスは、モールドの注入孔にベースコンパウンドを注入する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、成型装置301の注入孔317にベースコンパウンド359を注入する段階を含むことができる。
図3A~3Fに関して上述したように、ベースコンパウンド容器350をベースコンパウンド供給装置340に結合し、ベースコンパウンド359を成型装置301に供給又は注入することができる。これは、供給装置340のピストン(図示せず)をコンパウンド容器350の一方端(例えば、注入キャップ353が結合された容器350の端部の反対側にある)に結合して、ベースコンパウンド359を注入ノズル354の外に押し出すようにピストンを制御することによって達成することができる。このステップは、注入されたベースコンパウンドの一部が注入孔317からオーバーフローし始める(例えば、開口部315及び325の周りに)まで続けることができる。
【0079】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、ベースコンパウンドを注入する段階の前に、ベースコンパウンドの温度を上昇させる段階を含むことができる。例えば、プロセスは、ベースコンパウンド359(凍結又はその近傍の低温に曝されている可能性がある)を注入する段階の前に、ベースコンパウンド359の温度を上昇させる段階を含むことができる。より具体的には、プロセスは、ベースコンパウンド容器350の温度を上昇させる段階を含むことができる。
【0080】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、ベースコンパウンドを注入する段階の前に、ベースコンパウンド供給装置の注入ノズル内に存在する可能性があるあらゆる空気を放出して、空気が成型装置内に注入されるのを防ぐ段階を含むことができる。例えば、プロセスはまた、ベースコンパウンド359を注入する段階の前に、ベースコンパウンド供給装置340に結合されたときにベースコンパウンド容器350の注入ノズル354内に存在する可能性があるあらゆる空気を放出して、空気が成型装置301内に注入される防ぐ段階を含むことができる。
【0081】
ステップ812において、プロセスは、ベースコンパウンドを複数の歯と一体化させるように加工する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、注入されたベースコンパウンド359を歯420と一体化させるように加工する段階を含むことができる。より具体的には、プロセスは、重合プレス370を用いて、ベースコンパウンド359を重合させる段階を含むことができる。例えば、成型装置301は、重合プレス370の加熱部分372に結合することができ、予め定められた温度で1又はそれ以上の加熱サイクルを受けることができる。例えば、成型装置301は、重合プレス370によって約125℃で約6分間加熱することができる。プロセスはまた、重合化の後に、モールドを冷却する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、成型装置301を低温の水道水に約4分間浸漬することによって成型装置301を冷却する段階を含むことができる。
【0082】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、成型装置を離型する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、(例えば、下側部分310を上側部分320から分離することによって)成型装置301を離型する段階を含むことができ、詳細には、プロセスは、モールドの下側部分と上側部分との間の1又はそれ以上の締結具を除去する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、締結通路314から締結具324を取り外す段階を含むことができる。成型装置301が離型されると、加工されたベースコンパウンド359及び歯420によって形成されるアーチ形器具(例えば、アーチ形器具100、200に類似した)にアクセスすることができる。
【0083】
少なくとも1つの実施形態において、離型装置(例えば、離型装置382)を利用して、成型装置の下側及び上側部分を分離することができる。これらの実施形態において、プロセスは、離型装置をモールドの予め定められた部分に係合させる段階を含むことができる。例えば、プロセスは、離型装置382を(例えば、デバイス382のスロットを介して)端部319及び329の何れかに係合させる段階を含むことができる。プロセスはまた、離型装置に力を作用して、下側及び上側部分を分離させる段階を含むことができる。例えば、プロセスはまた、離型装置392に力を作用して、下側及び上側部分310及び320を分離させる段階を含むことができる。少なくとも他の実施形態において、プロセスは、追加として又は代替として、1又はそれ以上の空気圧作動式ピストンを端部319及び329に係合させて、反対向きの力をこれらに作用させ、下側及び上側部分310及び320を分離する段階を含むことができる。
【0084】
幾つかの事例では、一体化されたベースコンパウンド及び歯から形成された結果として得られるアーチ形器具は、離型段階の後で上側部分に付着又は固着している可能性がある。上側部分からアーチ形器具を取り外すために、プロセスは、アーチ形器具に力を作用して、アーチ形器具を上側部分から分離する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、アーチ形器具に力を作用して(例えば、圧縮空気を介して、軟質金属製ねじ回し及びハンマーの1又はそれ以上を介して、その他)、アーチ形器具を上側部分320から分離する段階を含むことができる。
【0085】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスは、離型段階の後で、アーチ形器具を加工する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、成型装置301を離型する段階の後で、一体化されたベースコンパウンド359及び歯420から形成されたアーチ形器具の1又はそれ以上を加工する段階を含むことができる。加工段階は、アーチ形器具の検査、トリミング、洗浄、及び研磨段階を含むことができる。例えば、プロセスは、損傷又は形状の歪みがないかアーチを検査する段階を含むことができる。別の実施例として、プロセスは、アーチ形器具から何らかの余分な材料を除去する段階を含むことができる。これは、バルドー(Baldor)旋盤上の高速研磨機、アクリル製掘削器具、ブロー工具、及びアーバーバンドの1又はそれ以上を使用して、余分な材料を分離、ブロー、又はトリミングする段階を含むことができる。更に別の実施例として、プロセスは、1又はそれ以上の床用材料をアーチの床部に加えて義歯を形成し、次いで、結果として得られる義歯を研磨する段階を含むことができる。研磨段階は、鎖歯車(図示せず)を介してアーチ形器具の選択部分に軽石の中間及び微細なグリット粉を加える段階を含むことができる。追加的に又は代替として、研磨段階はまた、鎖歯車(同様に図示せず)を介してアーチ形器具の選択部分に最終光沢アクリル艶出し剤を加える段階を含むことができる。結果として得られる義歯の何らかの好適な部分を研磨できる点を理解されたい。
【0086】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、モールド及びインレー器具を洗浄する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、成型装置301(例えば、それぞれ、下側及び上側部分310及び320それぞれの凹部312及び322)及びインレー器具330を洗浄する段階を含むことができる。これにより、モールド及びインレー器具が、別のアーチ形器具の作製で用いるのに依然として構造的に好適であることが保証される。
【0087】
プロセス800は、アーチ形器具の作製について上述してきたが、同様のプロセスを利用して、義歯又は義歯型器具などの他の歯科用器具を作製することができる点を理解されたい。例えば、モールド501及びインレー530を利用して、これらの歯科用器具のうちの1又はそれ以上を作製することができる。これらの歯科用器具を作製する種々のステップは、アーチ形器具用のステップと同様とすることができるので、その説明は繰り返さない。
【0088】
図9は、ベースコンパウンド(例えば、アーチ形器具の作製で用いるのに好適なベースコンパウンド359)を作製するための例示的なプロセス900である。プロセス900は、ステップ902から始まることができる。ステップ904において、プロセスは、複数の材料を共に混合する段階を含むことができ、材料は予め定められた比率で混合され、その混合物は、アーチ形器具の作製中に複数の歯に接着するのに好適な特性を示す。例えば、プロセスは、複数の材料を共に混合する段階を含むことができ、複数の材料は、アーチ形器具の製作中にアーチの少なくとも床部部分(例えば、アーチ100の床部110)を形成するのに好適で且つ複数の歯(例えば、歯120)を接合するのに好適な特性を有する。結果として得られるベースコンパウンドは、調整可能なアーチ形器具の床部を形成することができるので、結果として得られる床部が操作時(例えば、様々な温度に曝されたとき)に特定の様態を示すことを可能にする材料又は化合物を選択することが好ましいとすることができる。
【0089】
少なくとも1つの実施形態において、材料は、アクリル系熱可塑性物質を形成するように加工することができる、ポリマー及びモノマー(例えば、清澄液の形態で予混合されたモノマー可塑剤)を含むことができる。これらの材料又は化合物は、例えば、63.5重量%のポリマーと36.5重量%のモノマーなど、予め定められた比率で混合することができる。例えば、プロセスは、予め定められた量のポリマー(例えば、381グラム)及びモノマー(例えば、219グラム)を計量して、混合装置内で予め定められた時間(例えば、混合装置の下端部に乾燥ポリマーが確実に残らないほど十分な時間)で混合する段階を含むことができる。混合物は、1又はそれ以上のベースコンパウンド容器(例えば、ベースコンパウンド容器350)を充填するのに好適な何れかの量で調製することができる。
【0090】
ステップ906において、プロセスは、混合物を加工してベースコンパウンドを提供する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、ポリマー及びモノマーの混合物を加工してベースコンパウンドを提供する段階を含むことができる。上述の実施形態において、ポリマー及びモノマーが材料又は化合物の混合物で使用される場合、プロセスは、混合装置をシールして、混合物が比較的厚い分散系から、アーチ形器具の床部(例えば、アーチ形器具100の床部110)を形成するのに好適とすることができる均質な練り状混合物に変化できるようにする段階を含むことができる。
【0091】
ポリマー及びモノマーが混合物の材料又は化合物として選択される場合、プロセスはまた、シールされた混合装置を(例えば、冷凍庫又は恒温室で)比較的一定の温度に維持する段階を含むことができる。シールされた混合装置がより低い温度(例えば、25℃未満)で長期間にわたって維持されると、モノマーは、可塑剤から少なくとも部分的に分離し、ポリマーによって吸収することができ、可塑剤の一部が、混合物の残部に対して浮上する可能性がある。これが発生するのを防ぐため、プロセスはまた、混合物が練り状のベースコンパウンド(例えば、ベースコンパウンド359)になるまで、混合物を不定期に攪拌する段階を含むことができる。ベースコンパウンドは、混合装置から1又はそれ以上のベースコンパウンド容器(例えば、ベースコンパウンド容器350)に移送することができ、その後、ベースコンパウンド容器は、(例えば、それぞれのキャップ352で)シールすることができる。必要に応じて、プロセスはまた、ベースコンパウンドが肥厚化又は重合するのを防止するために、(例えば、冷凍することによって)ベースコンパウンド容器の温度を下げる段階を含むことができる。一部の例では、ベースコンパウンドは、液体に変換するのを防止するために、冷凍庫から取り出した後約20分以内に使用するのが好ましいとすることができる。
【0092】
上述のように、インレー器具(例えば、インレー器具330及び530)は、インレーコンパウンドから製造することができる。インレーコンパウンドは、何らかの好適なプロセスを用いて形成することができ、何らかの好適な種類の材料から構成することができる。少なくとも1つの実施形態において、インレーコンパウンドは、アーチ形器具の作製中に使用されるときには、異なる条件下では特定の様態を示すのが好ましいとすることができる。例えば、インレーコンパウンドは、歯の位置がずれないようにアーチ形器具の作製プロセス中、歯(例えば、歯420)に十分な保持力を提供できることが好ましい。保持力を提供するため、インレーコンパウンドは、少なくとも予め定められた硬度を示す必要がある。
【0093】
別の実施例として、インレーコンパウンドは、アーチ作製プロセスにおける離型ステップ(例えば、プロセス800の離型ステップ)中に十分な損耗に耐えることが望ましいとすることができる。このことを提供するために、インレーコンパウンドは、硬化したときに様々な力に対する少なくとも予め定められた抵抗を示す必要がある。更に別の例として、インレーコンパウンドは、短時間で硬化可能であることが好ましいとすることができる。
【0094】
少なくとも1つの実施形態において、インレーコンパウンドは、シリコーンを含むことができる。シリコーンに加えて、インレーコンパウンドはまた、触媒として作用する活性剤を含むことができる。シリコーンは、1又はそれ以上の種類のシリコーンを含むことができる。例えば、シリコーンは、シリコーン社により提供されるP-60及びP-70の1又はそれ以上を含むことができる。P-60及びP-70は、少なくとも硬度65を有することができ、この硬度は、モールド内で歯に対して十分な保持力を提供することができ、モールドの離型中に特定の損耗に耐えることができる。その上、P-60及びP-70はまた、比較的迅速に(例えば、120°Cで約20分間)硬化することができ、アーチ形器具の作製中の熱に耐えることができ、ベースコンパウンド(例えば、ベースコンパウンド359)との化学的相互作用に抗することができる。
【0095】
図10は、インレーコンパウンドを作製するための例示的なプロセス1000である。プロセス1000はステップ1002から始まることができる。プロセスは、ステップ1004において、複数の材料を共に混合する段階を含むことができ、材料は、予め定められた比率で混合され、混合物は、アーチ形器具の製作中に複数の歯を所定位置に保持する特性を示す。例えば、プロセスは、P-60(又はP-70)と活性化剤とを予め定められた比率(例えば、P-60(又はP-70)が10に対して活性剤が1)で共に混合する段階を含むことができる。混合物は、アーチ形器具(例えば、アーチ形器具100又は200)の作製中に、歯(例えば、歯420)を保持する特性を示すことができる。
【0096】
ステップ1006において、プロセスは、予め定められた温度で混合物を加工してインレーコンパウンドを提供する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、(例えば、少なくとも水銀柱29インチの真空下で数分間脱気することによって)混合物を真空下に曝す段階を含むことができる。
【0097】
図11は、インレー器具(例えば、インレー器具330と同様)を製作するための例示的なプロセス1100である。プロセス1100は、プロセス800に類似することができ、
図3A及び3Bに関して上述したアーチ形器具作製装置に類似した、インレー器具作製装置を利用することができる。インレー器具作製装置は、アーチ形器具作製装置の構成要素と同じ又は類似することができる1又はそれ以上の構成要素を含むことができる。例えば、インレー器具作製装置は、成型装置301及びベースコンパウンド容器350、又は類似する成型装置及び類似するベースコンパウンド容器を含むことができる。
【0098】
プロセス1100は、ステップ1102から始まることができる。プロセスは、ステップ1104において、成型装置の上側部分上にマスターアーチ形器具を配置する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、アーチ形器具100又は200に類似することができるマスターアーチ形器具を成型装置301の上側部分320上に配置する段階を含むことができる。より具体的には、プロセスは、上側部分320の凹部322にマスターアーチ形器具を配置する段階を含むことができる。
【0099】
ステップ1106において、プロセスは、マスターアーチ形器具を挟装してモールドの下側部分を上側部分に結合する段階を含み、ここで下側及び上側部分が共に結合されたときに、下側部分の注入スロット及び下側部分の注入スロットが、成型装置の注入孔を形成する。例えば、プロセスは、マスターアーチ形器具を挟装して成型装置301の下側部分310を上側部分320に結合する段階を含むことができ、ここで下側及び上側部分310及び320が共に結合されたときに、下側部分310の注入スロット316及び上側部分320の注入スロット326が、注入孔317を形成する。この結合ステップは、
図8に関連して上述した成型装置の下側及び上側部分の結合に類似することができる。
【0100】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスは、成型装置の下側及び上側部分を共に結合する段階の前に、離型剤を下側及び上側部分の選択領域に塗布する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、離型剤(例えば、テフロン)を成型装置301の下側及び上側部分310及び320の選択部分に塗布する段階を含むことができる。加えて、プロセスはまた、ステップ1106の結合段階の前に、モールドの下側部分の注入スロット及びモールドの上側部分の注入スロットの何れかにシール構成要素を位置付ける段階を含むことができる。例えば、この位置決めステップは、
図8に関連して上述した位置決め段階に類似することができる。
【0101】
ステップ1108において、プロセスは、インレーコンパウンドを注入孔に注入する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、インレーコンパウンド(以下でより詳細に説明される)を注入孔317に注入する段階を含むことができる。この注入ステップは、
図8に関連して上述した成型装置へのベースコンパウンドの注入に類似することができる。少なくとも1つの実施形態において、インレーコンパウンドが成型装置内の空き領域を充填して、成型装置の下側及び上側部分の注入スロットに達するまで、インレーコンパウンドを注入することができる。より具体的には、インレーコンパウンドは、凹部312を充填して、注入スロット316及び326(例えば、注入孔317の内側開口端)に達するまで注入することができる。その後、注入スロット316及び326(ひいては注入孔317)の全体を充填するために、異なる材料を注入することができる。例えば、ベースコンパウンド359に類似したアクリル又はコンパウンドを使用して、注入スロットを充填することができる。このようにして、材料(例えば、アクリル)により、インレー器具は、プロセスの後段階での離型ステップ中の潜在的な引裂きを防止することができる。
【0102】
ステップ1110において、プロセスは、注入されたインレーコンパウンドを加工してインレー器具を提供する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、注入されたインレーコンパウンドを加工してインレー器具330を提供する段階を含むことができる。この段階は、モールドをクランプして圧力下に維持し、モールド(ひいては注入されたインレーコンパウンド)を予め定められた時間(例えば、約30分)熱に曝す段階を含むことができる。
図12は、モールド1201(成型装置301に類似することができる)に結合されたクランプ装置1200の前方斜視図を示す。クランプ装置1200は、加熱中にモールドを加圧下に維持するのに使用することができる。
図12に示すように、クランプ装置1200は、プレート1202と、ベース部1206に固定されたボルト1204とを含むことができる。ボルト1204は、ベース部1206の一部を貫通してねじ留めすることができる。キー1208を用いて、ボルト1204を上方に解放し又は下方にねじ込み、プレート1202をモールド1201に向けて押圧することができる。
【0103】
図11に戻って参照すると、少なくとも1つの実施形態において、プロセスは、インレーコンパウンドを加工する段階の後で、インレー器具にアクセスするために成型装置を離型する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、インレーコンパウンドを加工する段階の後で、インレー器具330に類似することができるインレー器具にアクセスするために、成型装置301を離型する段階を含むことができる。この離型ステップは、
図8に関連して上述した成型装置301の離型段階に類似することができる。
図13は、成型装置の離型段階の後にアクセスすることができるインレー器具1330の斜視図である。例えば、インレー器具1330は、成型装置に注入されたインレーコンパウンドから構成することができ、成型装置を離型した後にアクセスすることができる。インレー器具1330は、インレー器具330に類似することができるが、入口点(例えば入口点337に類似した)を含まず、しかも耳部(例えば、耳部338に類似した)を含まない。
【0104】
図11に戻って参照すると、少なくとも1つの実施形態において、プロセスは、離型段階の後で、インレー器具を加工する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、成型装置301を離型する段階の後で、インレー器具1330を加工する段階を含むことができる。加工段階は、インレー器具の検査、トリミング、及び洗浄段階のうちの1又はそれ以上を含むことができる。例えば、プロセスは、損傷、気泡、又は形状の歪みについてインレーを検査する段階を含むことができる。別の実施例として、プロセスは、インレー器具からの何らかのはみ出し部をトリミングする段階を含むことができる。更に別の実施例として、プロセスは、インレー器具の一部をトリミングして、入口点及び少なくとも1つの耳部を形成する段階を含むことができる。この実施例を引き続き説明すると、プロセスは、インレー器具1330の一部をトリミングして、入口点(例えば、インレー器具330の入口点337に類似した)及び耳部(例えば、インレー器具330の耳部338に類似した)を形成する段階を含むことができる。より具体的には、プロセスは、入口点がモールドの下側部分の注入スロット(例えば、成型装置301の下側部分310の注入スロット316)と整列するように、インレー器具1330の一部をトリミングする段階を含むことができる。入口点は、アーチ形器具の作製中に注入されたベースコンパウンド(例えば、ベースコンパウンド359)が注入中にインレー器具1330を塞がずに変位させないように、注入スロットと整列することができる。例えば、
図3Bを概略的に参照すると、入口点337は、インレー器具330の内側に向かって拡大することができ、その結果、注入された何らかのベースコンパウンドは、インレー器具330内に円滑に流入することができるようになる。
図11に戻って参照すると、プロセスはまた、耳部が成型装置の対応する耳部受容部(例えば、成型装置301の耳部受容部318に類似した)内に嵌合することができるようにインレー器具1330の一部分をトリミングする段階を含むことができる。
【0105】
少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、成型装置及びインレー器具を洗浄する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、成型装置301(例えば、下側及び上側部分310及び320のそれぞれ凹部312及び322)及びインレー器具を洗浄する段階を含むことができる。
【0106】
プロセス1100は、アーチ形器具の作製で使用するのに好適なインレー器具の製造について上述してきたが、同様のプロセスを利用して、義歯又は義歯様の形状にされた何らかの器具の作製で使用するのに好適なインレー器具を製造することができる点を理解されたい。例えば、義歯500又は義歯型器具600は、同様の歯科用器具を作製する際の使用に好適なインレー器具を作製するためのマスター鋳造物又は器具として使用することができる。より具体的には、
図7の成型装置701のような成型装置は、義歯500又は義歯型器具600と共に利用して、
図7の器具730に類似したインレーン装置を作製することができる。インレー器具730のようなインレー器具の作製は、インレー器具330のようなインレー器具を作製するプロセスに類似することができ、従って、その説明は繰り返さない。
【0107】
上述のように、硬質の成型装置(金属製成型装置のような)の歯受容部は、歯寸法の大きなばらつき公差を許容しない可能性があるので、歯科用器具を作製するために硬質の成型装置を使用することが困難な場合がある。インレー器具(例えば、インレー器具330又は730)を用いて、このばらつきの一部を吸収することができるが、歯科用器具を作製するために、元の成型装置と実質的に同様のエポキシ製成型装置を作製し利用することができる。このようにして、結果として得られるエポキシ製成型装置において固有のインレー領域が設けられ、歯の寸法ばらつきに適応することができる。
【0108】
図14Aは、成型装置の上側部分1420に結合されたマスター義歯1400の斜視図を示す。義歯1400は、義歯500に類似することができ、成型装置は、成型装置701に類似することができる。少なくとも1つの実施形態において、エポキシ製成型装置の作製プロセスは、マスター義歯1400及び上側部分1420を使用してエポキシ製成型装置の相補的な下側部分を形成する段階を含むことができる。より具体的には、プロセスは、上側部分1420をチューブ又はパイプ(例えば、PVC)(図示せず)と整列させて少なくとも部分的に取り囲む段階を含むことができる。次いで、プロセスは、シリコーンを注いてチューブ内及びマスター義歯1400及び上側1420の周りの空き領域を充填する段階を含むことができる。
図14Bは、注ぎ込まれたシリコーンから形成することができる成型装置のシリコーン製下側部分1450の上方斜視図を示す。ここで、シリコーン製下側部分を用いて、最終エポキシ製鋳造物を形成することができる。例えば、プロセスは、シリコーン製下側部分1450にエポキシを注ぎ込み、エポキシを硬化させて、成型装置のエポキシ製上側部分を形成する段階を含むことができる。
【0109】
少なくとも別の実施形態において、プロセスは、初めに成型装置のシリコーン製下側部分を作製し、次いでシリコーン製下側部分にエポキシを注ぎ込んで成型装置のエポキシ製上側部分を形成するのではなく、(例えば、インレー器具330を形成するプロセスと同様に)成型装置の下側部分と上側部分との間にマスター義歯を挟装してインレー器具を形成し、次いで、インレー器具及び成型装置の下側部分にエポキシを注ぎ込む段階を含むことができる。例えば、
図14Cは、インレー器具1430が形成されて配置された成型装置の下側部分1410を少なくとも部分的に取り囲むチューブ1498の上方斜視図を示している。プロセスは、囲まれた下側部分1410及びインレー器具1430にエポキシを注ぎ込み、エポキシを硬化させて、成型装置のエポキシ製上側部分を形成する段階を含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、プロセスはまた、注ぎ込み段階の前に、離型剤のコーティングをチューブ1498、下側部分1410及びインレー器具1430に塗布して、脱気されたエポキシ材料を下側部分1410及びインレー器具1430内及び表面上に塗布する段階を含むことができる。プロセスはまた、振動装置を用いて下側部分1410、インレー器具1430及びチューブ1498を振動させ、注ぎ込まれたエポキシ中に空気が捕捉されるのを防止する段階を含むことができる。
【0110】
何らかの好適な材料又は成形材料(例えば、エポキシ以外)を使用しても成型装置を作製することができる点は理解されたい。加えて、エポキシ製成型装置は、マスター義歯及びマスター成型装置の上側部分を用いて作製されように上述したが、同様のエポキシ製成型装置は、マスターアーチ形器具(例えば、アーチ形器具100又は200)及びマスター成型装置の対応する上側部分(例えば、成型装置301の上側部分320)、マスター義歯型器具(例えば、義歯型器具600)及びマスター成型装置の対応する上側部分(例えば、成型装置301の上側部分720)、並びに同様のものを用いて作製することができる点も理解されたい。
【0111】
アーチ形器具の作製を
図8に関連して上述してきたが、アーチ形器具(部分又は全部)はまた、他の何らかの方法を用いて作製できることを理解されたい。これらの方法は、例えば、コンピュータ支援設計(「CAD」)、コンピュータ支援製造(「CAM」)、三次元(3D)プリンティング、及び同様のものを含むことができる。更に、これらの方法の1又はそれ以上を利用して、他の歯科用器具(例えば、義歯型器具600)、並びに部分及び全部義歯(例えば、義歯500及び1400)を作製することができる。
【0112】
コンピュータ支援設計(「CAD」)システム及びコンピュータ支援製造(「CAM」)システムは、製品を迅速に前例のない嵌合精度で供給することができる。これらのシステムは、様々な歯科製品を作製するために成功裏に利用されてきた。例えば、信頼性の高いクラウンを作製するために、CAM生産技術又はCAMミル加工技術が成功裏に利用されてきた。しかしながら、従来のCAD技術及びCAM技術では、義歯を効率的且つ確実に作製することはできなかった。CAMによる義歯の最大の課題の1つは、CAMミル加工された義歯床における歯の適合性が不十分であることに対処しなければならない点である。概略的に上述されたように、義歯は、主として、少なくとも2つの別個の材料、すなわち床部(例えば、歯肉)及びフランジ部用のピンク色のアクリルと、歯用の白色のアクリル(又は磁器)とから構成される。一部の義歯は、歯を構成する層の数に応じて、3つ又はそれ以上の異なる材料を含む可能性がある。例えば、一部の歯は、色が僅かに異なる少なくとも2つのアクリル層から、場合によっては3又はそれ以上の層から作ることができる。典型的なCAMミル加工は均一な材料のブロックを「加工」するので、作製された歯は単一層の歯に限定され、この単一層の歯は、二層又は多層の歯よりも劣っている可能性がある(例えば、構造的完全性、外観及び感触)。そのため、義歯のCAMミル加工における現行の最新技術は、歯肉部分をミル加工し、次いでCAMミル加工された歯肉にサードパーティ製造の歯を接着する段階を含む。
【0113】
しかしながら、(例えば、歯を受ける又はこれに結合するための)CAMミル加工した歯肉孔は、約10ミクロン程の公差で作製することができるが、サードパーティ製造の歯の寸法は、特に歯が押圧された後に行われる研磨及び仕上げプロセスに起因して、遙かに大きなばらつき又は公差を有する場合がある。これにより、対応するCAMミル加工された歯肉孔に歯を正確に嵌合させるのが困難になる可能性がある。更に、CAMミル加工された義歯が、従来的に作製された多層の歯と審美的に匹敵するように作製できる場合でも、ミル加工された歯は、依然としてミル加工後に研磨及び加工が必要となり、これは同様の寸法ばらつきを生じる可能性がある。
【0114】
加えて、CAD及びCAM技術を用いて歯科用器具を作製するには、患者の口腔のモデルを得ること、及びモデルに基づいて義歯の設計を作成する必要がある。しかしながら、患者の口腔の物理的モデルを生成する従来技術は、複数の歯茎の型を取るステップ、モデル及びカスタムの印象トレイを作製するステップ、マスター鋳造物を作成するステップ、及び顎咬合関係を決定するステップなど、様々なステップが含む場合がある。これらのステップは、患者の複数回の訪問が必要となるので、従来のモデル化技術は、CAD及びCAMによる義歯作製の迅速さ及び経済性を活用することができない。
【0115】
従って、様々な実施形態において、CAD技術及びCAM技術の効率性を活用して、歯科用器具、義歯及び同様のものを作製すると共に、上述の欠点のうちの1又はそれ以上を克服している。
【0116】
少なくとも1つの実施形態において、義歯型器具(例えば、義歯型器具600)を利用して、CAD及びCAMによる義歯作製プロセス中に患者の口腔の物理的モデルを得ることができる。より具体的には、義歯型器具が(例えば、
図6に関連して上述のように)患者の口腔の対応する部分に挿入及び調整されて嵌合すると、調整された義歯型器具は、患者の口腔の部分の物理的モデルとして役立つことができ、限定ではないが、最終印象の解剖学的構造、解剖学的構造の標識点及び伸展、垂直方向寸法、正中線、中心位、笑線、切縁長さ、瞳孔間平面及び耳翼耳珠平面、歯のサイズ、色合い及びモールドを含むデータを提供することができる。このモデルは、(例えば3-Dスキャナー又は同様なもの用いてスキャンすることによって)CADシステムに提供されて、対応する義歯の義歯モデルを生成することができる。次いで、この義歯モデルは、実際の義歯を作製するためCAMシステムに提供することができる。
【0117】
少なくとも1つの実施形態において、患者の口腔の物理的モデルは、追加的に又は代替として、口腔内スキャンによって得ることができる。例えば、スキャンにより、口腔内部、残存歯(もしあれば)、インプラント(もしあれば)、軟組織、骨格器具(例えば、CTスキャンによる)、ある範囲の顔表情にわたる外観の顔特徴、顎運動、及び同様のものに関する情報を得ることができる。スキャンしたデータは、適切な嵌合、位置合わせ及び咬合を有する義歯設計をもたらすのに好適な患者の口腔のデジタルモデルを作成するソフトウェアを用いて統合することができる。
【0118】
少なくとも1つの実施形態において、アーチ形器具(例えば、アーチ形器具100又は200)は、義歯を作製するのにCAD技術及びCAM技術と組み合わせることができる。例えば、患者の口腔の物理的モデル(例えば、義歯型器具1300のような義歯型器具を用いて、又は患者の口腔の口腔内スキャンによって得られる)は、複数のアーチ形器具のデジタルモデル(例えば、事前スキャン及び事前格納モデル)のデータベースにアクセスすることができるシステム(例えば、コンピュータシステム)に提供することができる。
【0119】
システムは、物理モデルにマッチするアーチ形器具を選ぶことができる。例えば、システムは、アーチ形器具のサイズ、及びアーチ形器具の歯のサイズに基づいて、アーチ形器具を選ぶことができる。別の実施例として、システムは、歯の色合い、患者の既存の歯の写真、及び同様のものに基づいてアーチ形器具を選ぶことができる。更に別の実施例として、システムは、性別、患者の好み、臨床医又は開業医の好み、及び同様のものなどの一般的患者情報に基づいてアーチ形器具を選ぶことができる。
【0120】
利用可能なアーチ形器具モデルの何れもが物理的モデルにマッチしていない事例では、各アーチ形器具モデルは、(例えば、手動入力によって、或いは、対応する実際のアーチ形器具の1又はそれ以上のデジタルスキャンを介して)ある公差範囲で増大させることができる。各アーチ形器具モデルについてのこの追加データは、各アーチ形器具の構造的及び審美的完全性を維持しながら、各アーチ形器具に対して行うことができる調整の量(例えば、何らかの寸法)に関する情報を提供することができる。このようにして、システムは、物理的モデルと最も密接にマッチするアーチ形器具を特定することができる。更に、システムはまた、適正な適合を得るためにアーチ形器具をどのように調整する(例えば、どのような寸法でどの程度まで)必要があるかに関する調整情報を提供することができる。次いで、歯科開業医(例えば、臨床医)は、選択されたアーチ形器具に対応する実際のアーチ形器具を選択することができ、調整情報に基づいてアーチ形器具を調整することができる。少なくとも1つの実施形態において、システムはまた、調整されたアーチ形器具のデジタルスキャンを得て、調整されたアーチ形器具モデルを作成することができる。システムは更に、調整されたモデルに基づいて、調整されたアーチ形器具が良好に適合するかどうかを決定することができる。上述のプロセスは、適切な調整により好適なアーチ形器具が特定されるまで繰り返すことができる。
【0121】
このモデルは、(例えば、3Dスキャナー又は同様のものを用いてスキャンすることによって)CADシステムに提供されて、対応する義歯の義歯モデルを生成することができる。次いで、この義歯モデルは、CAMシステムに提供されて、実際の義歯を作製することができる。適切なアーチ形器具が選択され調整された後、(例えば、ミル加工又は3Dプリンティングを介して)CAM作製された義歯床のデジタルモデルは、サイズ及び向きが操作され(例えば、義歯床のデジタルモデルにおいてチャンネルを形成することができる)、CAM製作された義歯床へのアーチ形器具の一体化を誘導することができる。これにより、義歯床のデジタルモデルにおける適切な咬合が最終義歯において確実に維持することができる。
【0122】
アーチ形器具は既に含んでいるので、歯を受けるための孔を含む歯肉床部をコンピュータ支援で製造することは必要ではない場合がある。これにより、上述の歯のばらつき又は公差問題を排除することができる。むしろ、CAMミル加工された義歯床は、アーチ形器具の床部に一体化するために、比較的大きな公差の表面(例えば、ミクロンではなく、ミリメートル程度)を含むことだけを必要とすることができ、何らかの公差範囲内で作製することができる。
【0123】
少なくとも1つの実施形態において、各アーチ形器具のデジタルモデルは、2又はそれ以上のモデル構成要素に分割することができ、これによりモデルの比較又はマッチングプロセスの融通性を提供することができる。例えば、各モデルは、前方歯セットのサブモデル、左後方歯セットの別のサブモデル、右後方歯セットの更に別のサブモデルのような、サブモデルに分割することができる。
【0124】
図15は、義歯を作製するための例示的プロセス1500である。プロセス1500は、ステップ1502から始まることができる。ステップ1504において、プロセスは、患者の口腔のデジタルモデルを生成する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、口腔の口腔内スキャンを介した患者の口腔のデジタルモデルを含むことができる。別の実施例として、プロセスは、義歯型器具600のような義歯型器具を用いて、患者の口腔のデジタルモデルを生成する段階を含むことができる。この実施例では、プロセスは、義歯型器具を患者の口腔の対応する部分に結合し、義歯型器具が患者の口腔に正確に快適に結合するまで、義歯型器具を調整する段階を含むことができる。代替として、プロセスは、患者の口腔に結合する前に義歯型器具を調整する段階を含むことができる。
【0125】
ステップ1506において、プロセスは、デジタルモデルと相関するアーチ形器具モデルを特定する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、患者の口腔のデジタルモデルに相関した又は類似した複数の格納されたアーチ形器具モデルから1つのアーチ形器具モデルを特定する段階を含むことができる。
【0126】
ステップ1508において、プロセスは、アーチ形器具モデルに基づいて義歯床をミル加工する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、1又はそれ以上の一連のミル加工ブロックから義歯床をCAMミル加工して、義歯のフランジ部を形成する段階を含むことができる。フランジ部は、アーチ形器具モデルに対応するアーチ形器具と一体化するようにミル加工することができる。
【0127】
ステップ1510において、プロセスは、義歯床をアーチ形器具モデルに対応するアーチ形器具に一体化する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、CAMミル加工された義歯床を、患者の口腔のデジタルモデルと相関する特定されたアーチ形器具モデルに対応するアーチ形器具(例えば、アーチ形器具100又は200)に一体化する段階を含むことができる。
【0128】
少なくとも1つの実施形態において、義歯床用材料(例えば、フランジ部材料)と予め一体化されたアーチ形器具を含むブロック器具が設けられる。アーチ形器具は、(上述したモデル比較及びマッチング技術を用いて)患者に好適なものとして特定することができ、対応するブロック器具は、予め一体化された義歯床用材からフランジ部を整形するようミル加工して、義歯を形成することができる。このようにして、フランジ床用材料がアーチ形器具と予め一体化されているので、アーチ形器具をCAMミル加工されたフランジ部に一体化する必要がないものとすることができる。このことはまた、アーチ形器具の床部と義歯床用材料のミル加工された部分との間の完全なマッチング(例えば、色合い、配合、その他)を提供することができる。
【0129】
少なくとも1つの実施形態において、1又はそれ以上の義歯を形成するために、複数材料又は多層ミル加工ブロックが提供される。より具体的には、各ブロックは、(例えば、多層歯を生成するため)様々な色合いの1又はそれ以上の層で歯の色をした材料(例えば、アクリル)のアーチを含むことができる。材料のアーチは、歯肉の色をした材料(例えば、アクリル)に埋め込むことができ、歯間歯肉部分から歯部分を区別するため窪みを表面に沿って含むことができる。
【0130】
少なくとも1つの実施形態において、複数の義歯を形成するために、一連の複数材料ミル加工ブロックが提供される。一連のブロックは、異なるサイズの個々のアーチ形器具と類似した、異なるサイズのアーチ形の歯の色をした材料(例えば、異なる寸法の歯の色をした層)を含むことができ、異なるサイズにされた義歯を形成するのに使用することができる。
【0131】
各複数材料ブロックは、スキャンされてシステムの1又はそれ以上のコンピュータ構成要素内に格納することができるブロックモデルに対応することができる。これらのモデルは、義歯の作製プロセス中にアクセスして、患者の口腔のモデルに基づいて好適なミル加工ブロックを特定することができる。
【0132】
図16は、義歯を作製するための別の実施例示的なプロセス1600である。プロセス1600は、ステップ1602から始まることができる。ステップ1604において、プロセスは、患者の口腔のデジタルモデルを生成する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、口腔の口腔内スキャンにより患者の口腔のデジタルモデルを生成する段階を含むことができる。別の実施例として、プロセスは、義歯型器具600のような義歯型器具を用いて、患者の口腔のデジタルモデルを生成する段階を含むことができる。
【0133】
ステップ1606において、プロセスは、複数の複数材料ミル加工ブロックからデジタルモデルと相関する複数材料ミル加工ブロックを特定する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、事前格納されたミル加工ブロックのコンピュータモデルにアクセスすることによって、複数の複数材料ミル加工ブロックから複数材料ミル加工ブロックを特定する段階を含むことができる。患者の口腔のデジタルモデルに相関し又は密接にマッチしたモデルの何れかを選ぶことができる。
【0134】
ステップ1608において、プロセスは、複数材料ミル加工ブロックをミル加工して義歯を作製する段階を含むことができる。例えば、プロセスは、特定された複数材料ミル加工ブロックをCAMミル加工して患者の口に対応する義歯を作製する段階を含むことができる。
【0135】
少なくとも1つの実施形態において、義歯は、従来のCAMミル加工(例えば、義歯のフランジ部がミル加工されて、歯肉孔がサードパーティ製造の歯に結合される)と同様に、CAMミル加工技術によって作製することができる。しかしながら、歯肉孔(例えば、義歯の床部上にあり歯を受け入れ又は結合するための孔)をミル加工して、(例えば、従来のCAMミル加工のように)対応する歯のサイズに完全に一致するサイズを有するのではなく、その代りに、歯肉孔は、孔の深さに沿って変動する公差で作製することができる。より詳細には、歯の根元における内部解剖学的構造は、歯(例えば、他の歯と触れる唇表面及び舌表面)の咬合解剖学的構造の公差よりも大きい公差を有することができる。従って、歯肉孔は、歯を支持する孔内に深くなるほど大きな公差でミル加工することができる。このようにして、孔の下端におけるより大きな公差は、対応する歯の根元のより大きな公差に対応することができる。
【0136】
少なくとも1つの実施形態において、義歯は、3Dプリンティング技術を用いて作製することができる。例えば、(例えば、上述のモデル比較技術を用いて)特定されたアーチ形器具をCAMミル加工されたフランジと一体化するのではなく、特定されたアーチ形器具は、3Dプリンティングされたフランジと一体化することができる。別の実施例として、(例えば上述のように)深さに沿って変動する公差を有する孔を備えた歯肉部分をミル加工するのではなく、歯肉部分は、このような変動する公差を有する孔を三Dプリンティングすることができる。
【0137】
様々なCAD、CAM、及び3Dプリンティングによる作製技術を、総義歯の作製に関連して上述してきたが、同様の技術は、部分義歯を作製するために提供及び利用できることを理解されたい。
【0138】
以上の説明は、説明の目的で特定の実施形態を参照して行ってきた。しかしながら、上記の例示的な考察は、本発明を網羅すること、又は本発明を開示された厳密な形態に限定することを意図したものではない。上記教示に鑑みて多くの変更及び変形が可能である。実施形態は、本発明の原理及びその実際の用途が最も良好に説明され、これにより当業者が本発明及び様々な実施形態を企図された特定の用途に好適なものとして様々な変更を伴って最も良好に活用できるように選択され記載された。実施形態の1又はそれ以上の特徴は、本発明の技術的思想及び範囲から逸脱することなく、別の実施形態の1又はそれ以上の特徴と組み合わせて、システム及び/又は方法を提供できることを理解されたい。
【0139】
加えて、プロセス800、900、1000、1100、1500及び1600の各々のステップは単なる例示に過ぎず、各ステップは変更、追加、又は省略を行うことができる点を理解されたい。
【0140】
更に、前述の実施形態は、例示の目的で提示され、限定ではない。当業者であれば、本発明は、説明した以外の実施形態によって実施することができ、本発明は、以下の請求項によってのみ限定されることを理解する。
【符号の説明】
【0141】
100 上顎用アーチ形器具
102 床部
104 歯
200 下顎用アーチ形器具
202 床部
204 歯
310 成型装置
310 下側部分
318 耳受容部
320 上側部分
330 インレー器具
336 歯受容部
338 耳部
340 床部形成材料供給装置
350 床部形成材料容器
359 床部形成材料
370 重合プレス
380 離型キット
500 義歯
510 舌状部分
515 フランジ部
600 義歯型器具
610 舌状部分
615 フランジ部