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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】投影方法
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/22 20060101AFI20230522BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230522BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20230522BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G03H1/22
G03B21/00 E
G03B21/14 Z
G02F1/01 D
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021035008
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2021157171
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】2004305.5
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517080957
【氏名又は名称】デュアリタス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミーソン クリスマス
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0064738(US,A1)
【文献】国際公開第2019/243096(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0041641(US,A1)
【文献】特開2012-226268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ平面上へ画像を投影するように構成された画像プロジェクタであって、
前記画像プロジェクタは、
投影用画像のホログラムと、第1の屈折力を有するレンズに対応するレンズ関数とを含むコンピュータ生成回折パターンを出力するように構成された処理エンジンと、
前記コンピュータ生成回折パターンを表示するように構成されたディスプレイデバイスと、
前記ディスプレイデバイスと前記ディスプレイ平面との間の光学素子であって、第2の屈折力を有するものと、
前記ホログラムおよびレンズ関数に従って光を空間変調するために、前記ディスプレイデバイスの軸外照射を提供するように配置された光源であって、前記コンピュータ生成回折パターンの前記レンズ関数と前記光学素子とが、前記ディスプレイ平面上に前記画像の再構成が形成されるように、前記ホログラムの変換を共同で実行するものと、を備え、
前記ディスプレイデバイスは、前記光学素子に対してゼロより大きい第1の角度で傾斜され、かつ前記ディスプレイ平面は、前記光学素子に対してゼロより大きい第2の角度で傾斜され、前記第2の角度は、前記第1の角度より小さい、
画像プロジェクタ。
【請求項2】
前記ディスプレイデバイスにおける前記光源からの光の入射角は、20度未満または15度未満の30度未満である、
請求項1に記載の画像プロジェクタ。
【請求項3】
前記ディスプレイデバイスおよびディスプレイ平面は、前記光学素子に対して同一方向で傾斜される、
請求項1または請求項2に記載の画像プロジェクタ。
【請求項4】
前記第1の角度と第2の角度との差は、前記ディスプレイデバイス上における前記光源からの光の入射角より小さい、
請求項1または請求項2に記載の画像プロジェクタ。
【請求項5】
前記第1の角度と前記第2の角度との差は、前記第1の屈折力の、前記第2の屈折力に対する比の関数である、
請求項1または請求項2に記載の画像プロジェクタ。
【請求項6】
前記第1の角度と前記第2の角度との差は、前記第1の屈折力の、前記第2の屈折力に対する比に反比例する、
請求項5に記載の画像プロジェクタ。
【請求項7】
前記光学素子は、前記ディスプレイデバイスから前記ディスプレイ平面への空間変調光の伝搬軸に対して垂直である、
請求項1または請求項2に記載の画像プロジェクタ。
【請求項8】
前記処理エンジンは、前記回折パターンを入力からリアルタイムで計算するように構成される、
請求項1または請求項2に記載の画像プロジェクタ。
【請求項9】
前記入力は、受信される再構成用の画像である、
請求項8に記載の画像プロジェクタ。
【請求項10】
前記ディスプレイ平面は、受光面を含む、
請求項1または請求項2に記載の画像プロジェクタ。
【請求項11】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の画像プロジェクタを含む
ヘッドアップディスプレイ。
【請求項12】
画像の投影方法であって、
画像平面までの伝搬距離を画定する光変調パターンを提供する工程であって、前記光変調パターンが、(i)画像のフーリエホログラムと、第1の屈折力を有するレンズに対応するレンズ関数との組合せ、または(ii)フレネルホログラムである工程と、
前記光変調パターンをディスプレイデバイスに表示する工程と、
前記ディスプレイデバイスを、ゼロより大きい入射角で照射する工程と、
第2の屈折力を有する光学素子を介して、ディスプレイ平面上で前記ディスプレイデバイスから空間変調光を受信する工程、とを含み、
前記ディスプレイデバイスは、前記光学素子に対してゼロより大きい第1の角度で傾斜され、かつ前記ディスプレイ平面は、前記光学素子に対してゼロより大きい第2の角度で傾斜され、前記第2の角度は、前記第1の角度より小さい、
画像の投影方法。
【請求項13】
前記光学素子は、前記ディスプレイデバイスと前記ディスプレイ平面との間に配置され、前記光変調パターンおよび前記光学素子は、前記ディスプレイ平面上に前記画像の再構成が形成されるように、前記ホログラムの変換を共同で実行する、
請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロジェクタに関する。より具体的には、本開示は、ホログラフィックプロジェクタおよびホログラフィック投影システムなどの画像プロジェクタに関する。一部の実施形態は、ホログラフィック再生フィールド内の画像スポットのサイズを縮小する方法に関し、かつ一部の実施形態は、ホログラフィック再生フィールド内の解像度を高める方法に関する。一部の実施形態は、ヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
オブジェクトから散乱される光は、振幅および位相の双方の情報を含んでいる。この振幅および位相情報は、たとえば、感光板上で周知の干渉技法により捕捉されて、干渉縞を含むホログラフィック記録、または「ホログラム」を形成することができる。ホログラムは、適切な光の照射により再構成されて、元のオブジェクトを表す2次元または3次元のホログラフィック再構成、または再生画像を形成し得る。
【0003】
コンピュータ生成ホログラフィは、干渉プロセスを数値的にシミュレートし得る。あるコンピュータ生成ホログラム「CGH」は、フレネル変換またはフーリエ変換などの数学的変換に基づく技法によって計算され得る。これらのタイプのホログラムは、フレネルホログラムと呼ばれる場合も、フーリエホログラムと呼ばれる場合もある。フーリエホログラムは、オブジェクトのフーリエ領域の表現、またはオブジェクトの周波数領域の表現と見なされる場合がある。また、CGHは、たとえば、コヒーレントレイトレーシングまたは点群技術によって計算される場合もある。
【0004】
CGHは、入射光の振幅および/または位相を変調するように配置される空間光変調器「SLM」上で符号化され得る。光変調は、たとえば、電気的にアドレス指定可能な液晶、光学的にアドレス指定可能な液晶またはマイクロミラーを用いて達成され得る。
【0005】
SLMは、セルまたはエレメントと呼ばれることもある複数の個々にアドレス指定可能なピクセルを備えることがある。光変調スキームは、バイナリ、マルチレベルまたは連続である。あるいは、デバイスが連続式であり得(すなわち、ピクセルで構成されない)、よって光変調がデバイス全体に渡って連続的であることもある。SLMは、変調された光が反射においてSLMから出力されることを意味する反射性であり得る。SLMは、同時に、変調された光が透過においてSLMから出力されることを意味する透過性であり得る。
【0006】
画像化のためのホログラフィックプロジェクタは、記載の技術を用いて提供され得る。このようなプロジェクタは、たとえば、ヘッドアップディスプレイ「HUD」、車両のヘッドランプ、および光検出および測距「LiDAR」にアプリケーションを見出している。
【0007】
本明細書では、改良されたホログラフィック投影システムを開示する。
【発明の概要】
【0008】
本開示の態様は、添付の独立請求項に規定されている。
【0009】
本明細書では、ディスプレイ平面上へ画像を投影するように構成される画像プロジェクタを開示している。画像プロジェクタは、処理エンジンと、ディスプレイデバイスと、光学素子と、光源とを備える。処理エンジンは、コンピュータ生成回折パターンを出力するように構成される。コンピュータ生成回折パターンは、投影用画像のホログラムと、第1の屈折力を有するレンズに対応するレンズ関数(lens function)とを含む。ディスプレイデバイスは、コンピュータ生成回折パターンを表示するように構成される。光学素子は、ディスプレイデバイスとディスプレイ平面との間で、ディスプレイデバイスからディスプレイ平面までの投影軸上に配置される。実施形態によっては、光学素子は、投影軸に対して垂直に配置される。光学素子は、第2の屈折力を有する。光源は、ホログラムおよびレンズ関数に従って光を空間変調するために、ディスプレイデバイスの軸外照射を提供するように配置される。コンピュータ生成回折パターンのレンズ関数および光学素子は、ディスプレイ平面上に画像の再構成が形成されるように、ホログラムの(ホログラム)変換を共同で実行する。ディスプレイデバイスは、光学素子に対してゼロより大きい第1の角度で傾斜される。ディスプレイ平面は、光学素子に対してゼロより大きい第2の角度で傾斜される。第2の角度は、第1の角度より小さい。誤解を避けるために記すと、第1の屈折力および第2の屈折力は、共にゼロより大きい。
【0010】
実施形態において、ディスプレイデバイスおよびディスプレイ平面は、投影軸を含む同一平面を中心にして傾斜される。たとえば、ディスプレイデバイスおよびディスプレイ平面は、投影軸を含む水平面を中心にして傾斜されてもよい。実施形態において、ディスプレイデバイスおよびディスプレイ平面は、光学素子に対して同一方向または同一次元で傾斜される。実施形態によっては、光学素子の光軸は、ディスプレイデバイスからディスプレイ平面までの投影軸と同一直線上にある。実施形態において、ディスプレイデバイスと光学素子との間の相対的傾斜(すなわち、第1の角度)は、ディスプレイデバイス上の光の入射角に等しい。実施形態において、ディスプレイ平面と光学素子との間の相対的傾斜(すなわち、第2の角度)は、ディスプレイデバイス上の光の入射角より小さい。
【0011】
投影においては、投影スクリーン-すなわちディスプレイ平面-を、ディスプレイデバイスからの光の伝搬軸に対して垂直であるように方向付けることが従来的である。従来は、特に、画像が画像スポットまたは画像ピクセルで形成される場合、これによって最良の画像が形成される。しかしながら、本件発明者は、実際のところ、ホログラフィック投影では、ホログラフィックプロセスにより形成される画像スポット-特に、ホログラフィック再生フィールドのエッジにおける画像スポット、のサイズに悪影響が出ることから、この幾何学的形状によって準最適なホログラフィック再構成が生じることを発見している。発明者は、本明細書において、ディスプレイデバイスの軸外照射、およびホログラム変換(たとえば、フーリエまたはフレネル変換)に寄与する光学素子を用いるホログラフィック投影では、再生フィールド内のホログラフィック画像スポットのサイズを、ディスプレイデバイスに対してディスプレイ平面をディスプレイデバイス上の光の入射角より小さい(ただし、ゼロより大きい)角度だけ傾斜させることにより縮小できることを開示する。ディスプレイデバイスにおいては、画像スポット(画像ピクセル参照)が小さいほど有利である。
【0012】
第1の角度と第2の角度との差(すなわち、ディスプレイデバイスとディスプレイ平面との間の相対的傾斜)は、第1の屈折力と第2の屈折力との比に依存(たとえば、反比例)し得る。第1の角度と第2の角度との差は、第1の屈折力と第2の屈折力との比の関数であってもよい。第1の角度と第2の角度との比は、第1の屈折力と第2の屈折力との比の関数であっても(たとえば、反比例しても)よい。たとえば、第1の屈折力は、第2の屈折力に等しくてもよく、かつ第2の角度は、第1の角度の半分であってもよい。
【0013】
発明者は、ディスプレイデバイスの軸外照射を用い、かつディスプレイデバイスとディスプレイ平面との間に屈折力を有する光学素子がなければ、画像スポットのサイズが、ディスプレイデバイスとディスプレイ平面との間の相対的傾斜がゼロ(すなわち、ディスプレイデバイスとディスプレイ平面が実質的に平行)であるときに最小化されることを、先に発見している。本明細書で開示しているように、発明者は、ディスプレイデバイスの軸外照射を用い、かつディスプレイデバイスとディスプレイ平面との間に屈折力を有する光学素子が存在していれば、画像スポットのサイズは、ディスプレイデバイスとディスプレイ平面との間に相対的傾斜が存在するときに最小化されることを発見している。発明者は、第1の屈折力が第2の屈折力に実質的に等しい場合、画像スポットのサイズは、第2の角度が第1の角度の半分であるときに最小化されることを発見している。発明者は、さらに、第2の屈折力が第1の屈折力より増大するにつれて、第2の角度が減少し、画像スポットのサイズが最小化され得ることを発見している。光学素子の第2の屈折力は、ディスプレイデバイスとディスプレイ平面との間の相対的傾斜を増大させるように、または逆に、ディスプレイ平面の光学素子に対する傾斜を減少させる(すなわち、第2の角度を減少させる)ように、ディスプレイ平面をけん引するように見えると言ってもよい。したがって、相対的傾斜は、第2の屈折力より第1の屈折力のほうが優勢である(すなわち、レンズ関数の屈折力が光学素子の屈折力より実質的に大きい、-または、ソフトウェアレンズが「優勢」である)ときに最小(ゼロより大きい)であり得、かつ相対的傾斜は、第1の屈折力より第2の屈折力のほうが優勢である(すなわち、光学素子の屈折力がレンズ関数の屈折力より実質的に大きい、-または、ハードウェアレンズが「優勢」である)ときに最大であり得る。誤解を避けるために記すと、この発見は、第1の屈折力および第2の屈折力が非ゼロであるときに当てはまる。
【0014】
ディスプレイデバイスは、コリメートされた光で照射される。光学分野の当業者であれば、「法線入射」の概念に精通するであろう。しかしながら、本開示は、いわゆる「軸外照射」に関する。具体的には、本開示は、ホログラムを含む回折パターンを表示するディスプレイデバイスの軸外照射に関する。本明細書において、「軸外照射」という用語は、ディスプレイデバイス上の光の入射角が非ゼロ、またはゼロより大きい場合を指して使用される。より具体的には、入射光の光線と、入射点におけるディスプレイデバイスの平面に対する法線との間の方位角は、非ゼロまたはゼロより大きい。したがって、本開示は、ディスプレイデバイスの「非法線入射」に関すると言ってもよい。
【0015】
ディスプレイ平面は、ディスプレイデバイスから空間変調光を受信する。具体的には、空間変調光は、空間光変調器からの「出力経路」または「伝搬経路」を辿る。伝搬経路の軸を、本明細書では「出力光軸」または「伝搬軸」と定義する。伝搬軸は、ディスプレイデバイスからの光の一般的な伝搬方向を画定する、ディスプレイデバイスとディスプレイ平面との間の直線である。コンピュータ生成回折パターンが格子機能(技術上周知であるように、出力光ビームの方向を変え得る)を含まない場合、空間変調光の伝搬軸は、ディスプレイデバイスに対して、ディスプレイデバイスにおける光の入射角と同じ角度にある。ディスプレイデバイス上の光の入射角を、本明細書では「照射角」とも呼ぶ。当業者には理解されるであろうが、ディスプレイデバイスにより回折されない光は、ディスプレイデバイス上の光の入射角と同じ角度で出力される。したがって、この非回折光は、格子機能がない場合に空間変調光の伝搬経路の伝搬軸を辿って、ゼロ次再生フィールドにいわゆる「DCスポット」を形成する。空間光変調器からディスプレイ平面までの光の伝搬距離は、この伝搬軸に沿って測定される。
【0016】
実施形態によっては、コンピュータ生成回折パターンは、ソフトウェアレンズ関数と組み合わされるフーリエホログラムである。他の実施形態において、コンピュータ生成回折パターンは、(i)ソフトウェアレンズ関数と組み合わされるフーリエホログラム、または(ii)フレネルホログラムである。物理的レンズ(または、屈折力-すなわちレンズ効果、を有する任意の光学素子)は、ディスプレイデバイスからディスプレイ平面への伝搬経路に包含される。
【0017】
注目すべきことに、ディスプレイデバイス(すなわち、光変調面)からディスプレイ平面(すなわち、画像を含む平面)までの距離は、ホログラムと組み合わされるレンズ効果機能の屈折力および物理的、光学素子(たとえば、レンズ)の屈折力(すなわち、焦点距離)の双方により決定される。より具体的には、ディスプレイデバイスとディスプレイ平面との垂直距離または最短直線距離は、回折パターンおよび光学素子によって決定される。ソフトウェアレンズコンポーネント(または、受信光にレンズ効果を提供するコンポーネント)は、コンピュータ生成回折パターン内に(本明細書に記載するレンズ/レンズ効果機能として)埋め込まれ、または入っていて、レンズコンポーネントは、単に部分的にディスプレイデバイスからディスプレイ平面までの距離に寄与する-すなわち、ホログラム変換に寄与する、と考えてもよい。
【0018】
コンピュータ生成回折パターンを表す光変調データは、ディスプレイデバイスに提供される。光変調データは、データ値の2Dアレイなどのデータ値のアレイを含む。ディスプレイデバイス-たとえば、空間光変調器-は、複数のピクセルを含んでもよく、各光変調データ値は、対応する1つのピクセルに割り当てられてもよい。言い替えれば、空間光変調器の各ピクセルは、光変調データ値のアレイのうちの個々の光変調データ値に対応する光変調レベルで動作されてもよい。データ値は、位相遅延値または振幅減衰レベルであっても、これらの双方であってもよい。
【0019】
フーリエの事例では、ホログラム変換(たとえば、フーリエ変換)に必要なレンズ効果機能が、ソフトウェアにおいて、フーリエホログラムデータに追加されるレンズデータを用いて部分的に提供される。ディスプレイデバイス(たとえば、空間光変調器)からディスプレイ平面(たとえば、受光面)までのいわゆる伝搬距離は、レンズデータによりエミュレートされるソフトウェアレンズの集束力によって-完全に決定されるわけではなく-部分的に決定される。伝搬距離は、ソフトウェアレンズの焦点距離に光学素子の焦点距離を加えたものに等しくてもよい。伝搬距離は、いわゆるフーリエ経路の長さである。本方法は、さらに、フーリエ変換ホログラムの周波数-空間変換を実行するソフトウェアレンズおよびハードウェアレンズを含んでもよい。この場合、ディスプレイデバイスからディスプレイ平面までの距離は、2つのレンズの焦点距離に等しくてもよい。
【0020】
フレネルの事例では、伝搬距離が、ホログラムの計算に使用されるフレネル変換の一項によって部分的に画定される。この項は、ホログラム平面からディスプレイ平面までの距離に寄与する。すなわち、ディスプレイデバイス(たとえば、空間光変調器)から、受光面が位置合わせされるべき焦点面までの距離、である。したがって、空間光変調器からディスプレイ平面(たとえば、受光面)までの距離は、一部が、フレネル変換において符号化される伝搬距離zによって決定され、かつ一部が、光学素子の焦点距離によって決定される、と言ってもよい。
【0021】
ディスプレイデバイスにおける光源からの光の入射角(すなわち、照射角)は、45度未満または30度未満などの60度未満であってもよい。単に例示として記述する実施形態において、この角度は、20度または15度以下である。このような場合、よりコンパクトなシステムが提供される。実際には、この角度は、より大きいシステム設計の一部として最適化されてもよい。
【0022】
実施形態によっては、コンピュータ生成回折パターンは、位相遅延データ値のアレイを含む光変調データである。フーリエの事例では、レンズに対応する位相遅延データが容易に計算され、かつ計算負荷が高くないラップ式加算(wrapped addition)によってホログラムのホログラムデータと組み合わされてもよい。したがって、位相変調方式が好適であり得る。
【0023】
実施形態において、ディスプレイ平面は、受光スクリーンを含み、かつ受光面は、拡散性であってもよい。たとえば、受光面は、ディフューザであってもよい。受光面は、回転または振動などの移動性であってもよい。したがって、再生フィールドでキーストーン効果または画像ストレッチは観察されない。
【0024】
空間光変調器は、液晶オンシリコン空間光変調器であってもよく、かつ空間光変調器は、コヒーレント光で照射される。光源は、レーザダイオードなどのレーザであってもよい。
【0025】
実施形態では、第1の角度と第2の角度との差が第1の屈折力と第2の屈折力との比に反比例する(または、第2の屈折力と第1の屈折力との比に比例する)結果として、最適化された画像スポットが提供される。ある実施例において、第1の屈折力は、第2の屈折力に等しく、第2の角度は、第1の角度の半分である。
【0026】
光学素子は、ディスプレイデバイスからディスプレイ平面への空間変調光の伝搬軸に対して実質的に垂直であってもよい。言い替えれば、光学素子の光軸は、概して、画像プロジェクタの軸に平行である(たとえば、該軸と同一直線上にある)。実施形態において、画像プロジェクタは、ホログラフィックプロジェクタである。
【0027】
本明細書では、ホログラフィックプロジェクタも開示していて、該ホログラフィックプロジェクタは、ホログラム(たとえば、フーリエまたはフレネルホログラム)を表示するように配置される空間光変調器であって、ホログラムは、画像成分と、第1の屈折力を有するレンズ成分とを含む、空間光変調器と、受光面と、第2の屈折力を有する、空間光変調器から受光面までの光/投影軸上にある物理的レンズと、ホログラムに従って空間光変調器の軸外照射および空間変調光を提供するように配置される光源と、を備え、ホログラムのレンズ成分および物理的レンズは、受光面上にホログラムに対応するホログラフィック再構成が形成されるように、画像成分のホログラム変換(たとえば、フーリエまたはフレネル変換)を共同で実行し、物理的レンズは、空間光変調器に対してゼロより大きい一次角度で傾斜され、かつ受光面は、空間光変調器に対してゼロより大きい二次角度で傾斜され、二次角度は、一次角度より小さい。
【0028】
ある比較例では、処理エンジンと、空間光変調器と、光源と、受光面とを備えるホログラフィックプロジェクタが存在する。処理エンジンは、画像平面への伝搬距離を画定する(または、組み込む)コンピュータ生成回折パターンを出力する。空間光変調器は、コンピュータ生成回折パターンを表示する。光源は、空間光変調器をゼロより大きい入射角で照射する。受光面は、空間光変調器からの空間変調光を受信する。受光面は、空間光変調器に実質的に平行である。受光面は、空間光変調器から、コンピュータ生成回折パターンにより画定される伝搬距離によって分離される。ホログラフィック再構成は、如何なる表面上にも形成され得ることから、本明細書では、受光面を広義に参照する。
【0029】
本明細書において、「傾斜」または「相対的傾斜」という用語は、あるオブジェクトの全体的平面が、別の物体の全体的平面と非平行であることを反映して使用される。単純に言えば、2つのオブジェクトは、平行でない。光学分野の当業者には、レンズ、液晶ディスプレイパネルおよびスクリーンなどの光学部品は、実質的に平坦であることが認識されるであろう。また、当業者には、レンズ、ディスプレイデバイスまたは投影平面などの光学素子の光軸が、光学素子自体の全体的平面に対して実質的に垂直であることも認識されるであろう。したがって、第1のエレメントと第2のエレメントとの間に相対的傾斜が存在する場合、第1のエレメントの光軸は、第2のエレメントの光軸と実質的に非平行であると言ってもよい。従来の光学システムにおいて、各光学素子は、各光学素子の光軸がシステムの光軸と同一直線上にあるように、その平面を光学システムを通る光の光軸に対して垂直にして配置されることがある。しかしながら、ディスプレイデバイスの軸外照射の結果として、本開示が関連する光学システムでは、1つまたは複数の光学素子の各々の光軸がシステムの光軸に対して傾斜されるように、光学素子のうちの1つまたはそれ以上の平面が、光学システムを通る光の光軸に垂直に配置されて、従来の平面に対して傾斜される。1つまたは複数の光学素子の平面は、システムの光軸(たとえば、投影軸)に対して90度未満の角度で配置される、または、1つまたは複数の光学素子の光軸は、システムの光軸に対して90度未満の角度で配置される、と言ってもよい。
【0030】
「ホログラム」という用語は、オブジェクトについての振幅情報もしくは位相情報、またはこれらの何らかの組合せを含む記録を指して使用される。「ホログラフィック再構成」という用語は、ホログラムを照射することにより形成される、オブジェクトの光学的再構成を指して使用される。「再生平面」という用語は、本明細書において、ホログラフィック再構成が完全に形成される空間内の平面を指して使用される。「再生フィールド」という用語は、本明細書において、空間光変調器から空間変調光を受信できる、再生平面のサブエリアを指して使用される。「画像」、「再生画像」および「画像領域」といった用語は、ホログラフィック再構成を形成する光により照射される再生フィールドのエリアを指す。実施形態において、「画像」は、「画像ピクセル」と称され得る離散スポットを含み得る。
【0031】
「符号化」、「書込み」または「アドレス指定」といった用語は、SLMの複数のピクセルに、各々が各ピクセルの変調レベルを決定する複数の制御値を個々に提供するプロセスを説明するために使用される。SLMのピクセルは、複数の制御値の受信に応答して光変調分布を「表示」するように構成されると言ってもよい。したがって、SLMは、ホログラムを「表示」すると言ってもよい。
【0032】
許容可能な品質のホログラフィック再構成は、元のオブジェクトに関連する位相情報のみを含む「ホログラム」から形成可能であることが分かっている。このようなホログラフィック記録は、位相型ホログラムと呼ばれることがある。実施形態は、位相型ホログラムに関連するが、本開示は、振幅型ホログラフィにも等しく適用可能である。
【0033】
また、本開示は、元のオブジェクトに関連する振幅および位相情報を用いてホログラフィック再構成を形成することにも等しく適用可能である。実施形態によっては、これは、元のオブジェクトに関連する振幅および位相情報の双方を含むいわゆる完全複合ホログラムを用いる複素変調により達成される。このようなホログラムは、ホログラムの各ピクセルに割り当てられる値(グレーレベル)が振幅および位相成分を有するという理由で、完全複合ホログラムと呼ばれることがある。各ピクセルに割り当てられる値(グレーレベル)は、振幅成分および位相成分の双方を有する複素数として表されてもよい。実施形態によっては、完全複合コンピュータ生成ホログラムが計算される。
【0034】
コンピュータ生成ホログラムまたは空間光変調器のピクセルの位相値、位相成分、位相情報、または単に位相は、「位相遅延」の省略表現として参照されてもよい。すなわち、記述される位相値はいずれも、実際には、そのピクセルによりもたらされる位相遅れの量を表す(たとえば、0から2πまでの範囲の)数値である。たとえば、π/2の位相値を有すると記述される空間光変調器のピクセルは、受信される光の位相をπ/2ラジアン変更する。実施形態によっては、空間光変調器の各ピクセルは、複数の可能な変調値(たとえば、位相遅延値)のうちの1つにおいて動作可能である。「グレーレベル」という用語は、複数の利用可能な変調レベルを指して使用され得る。たとえば、「グレーレベル」という用語は、異なる位相レベルが異なるグレーシェードを提供しない場合でも、位相型変調器における利用可能な複数の位相レベルを指して便宜的に使用され得る。また、「グレーレベル」という用語は、複素変調器における利用可能な複数の複素変調レベルをも指して便宜的に使用され得る。
【0035】
本開示は、「ある焦点距離を有するレンズに対応するレンズデータ」に言及している。この言い回しは、レンズデータが光路内の物理的レンズなどのレンズの機能(すなわち、集束力)をエミュレートまたは提供することを反映して使用される。レンズデータは、ソフトウェアレンズとも呼ばれる。本開示によれば、ソフトウェアレンズは、屈折力を有する物理的レンズなどの光学素子と組み合わせて使用される。
【0036】
以下の詳細な説明では、異なる実施形態および実施形態グループが別個に開示されることがあるが、任意の実施形態または実施形態グループの特徴は、いずれも、任意の実施形態または実施形態グループの他の任意の特徴または特徴の組合せと組み合わされてもよい。すなわち、本開示においては、開示される特徴の全ての可能な組合せおよび置換が想定される。
【0037】
以下の図を参照して、特定の実施形態を単に例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】スクリーン上にホログラフィック再構成を生成する反射SLMを示す略図である。
図2A】ある例示的なGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムの第1の反復を示す。
図2B】該例示的なGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムの第2の後続反復を示す。
図2C】該例示的なGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムの代替的な第2の後続反復を示す。
図3】反射LCOS SLMの略図である。
図4A】本開示による基本的な光学セットアップを示す。
図4B図4Aに対応する略図である。
図5】複数のフィールドポイントを含む再生フィールドの略図である。
図6A】再生フィールドにおける例示的な画像スポットを示す。
図6B】再生フィールドにおける例示的な画像スポットを示す。
図6C】再生フィールドにおける例示的な画像スポットを示す。
図7A】ソフトウェアレンズおよびハードウェアレンズの相対屈折力に対して最適化された画像スポットを実現するために、システムの光軸に沿って配置された光学コンポーネントの傾きの例を略示している。
図7B】ソフトウェアレンズおよびハードウェアレンズの相対屈折力に対して最適化された画像スポットを実現するために、システムの光軸に沿って配置された光学コンポーネントの傾きの例を略示している。
図7C】ソフトウェアレンズおよびハードウェアレンズの相対屈折力に対して最適化された画像スポットを実現するために、システムの光軸に沿って配置された光学コンポーネントの傾きの例を略示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
諸図を通じて、同じ参照番号は、同一または類似の部品を指して使用される。
【0040】
本発明は、以下に記述する実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲全体に及ぶ。すなわち、本発明は、異なる形態で具現され得、よって例示を目的として提示される記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。
【0041】
別の構造体の上部分/下部分または他の構造体の上/下に形成されると記載されている構造体は、これらの構造体が互いに接触している事例、かつさらには、第3の構造体が間に配置されている事例を含むものと解釈されるべきである。
【0042】
時間関係の記述において-たとえば、イベントの時間順序が「後」、「後続」、「次」、「前」などのように記述される場合-、本開示は、別段の指摘のない限り、連続イベントおよび非連続イベントを包含するものと理解されるべきである。たとえば、この記述は、「ちょうど」、「即時」または「直」などの言い回しが使用されていない限り、連続的でない事例を包含するものと理解されるべきである。
【0043】
本明細書では、様々なエレメントについて記述する場合に、「第1の」、「第2の」、他の用語を用いることがあるが、これらのエレメントは、これらの用語によって限定されるべきものではない。これらの用語は、あるエレメントを別のエレメントから区別するためにのみ使用される。たとえば、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく、第1のエレメントは、第2のエレメントと呼ばれる可能性もあり、かつ同様に、第2のエレメントが第1のエレメントと呼ばれる可能性もある。
【0044】
以下の説明において、方向性に関する「水平」および「垂直」などの用語は、図面に示す光学配置の特徴の方向性を記述して各々を理解するために使用される。当業者には、実際の配置において、このような特徴の方向性は、アプリケーションの要件に依存して変わり得ることが理解されるであろう。
【0045】
異なる実施形態の特徴は、部分的または全体的に互いに結合または組み合わされてもよく、かつ互いに様々に相互運用されてもよい。実施形態の中には、互いに独立して実行され得るものもあれば、共依存関係で共に実行され得るものもある。
【0046】
光学的配置
図1は、コンピュータ生成ホログラムが単一の空間光変調器上で符号化される一実施例を示す。コンピュータ生成ホログラムは、再構成用オブジェクトのフーリエ変換である。したがって、ホログラムは、オブジェクトのフーリエ領域または周波数領域またはスペクトル領域表現であると言ってもよい。この実施形態において、空間光変調器は、反射型液晶オンシリコン「LCOS」デバイスである。ホログラムは、空間光変調器上で符号化され、かつホログラフィック再構成は、再生フィールド、たとえばスクリーンまたはディフューザなどの受光面、で形成される。
【0047】
光源110、たとえばレーザまたはレーザダイオード、は、コリメーティングレンズ111を介してSLM140を照射するように配置される。コリメーティングレンズは、概して平坦な光の波面をSLM上へ入射させる。図1において、波面の方向は、法線を外れている(たとえば、透明層の平面に対する真の直交から2度または3度外れている)。しかしながら、他の実施形態では、概して平坦な波面が法線入射で提供され、ビームスプリッタ配置を用いて入力光路と出力光路とが分離される。図1に示す実施例において、該配置は、光源からの光がSLMのミラー化された背面から反射され、光変調層と相互作用して射出波面112を形成するという類のものである。射出波面112は、その焦点をスクリーン125に有する、フーリエ変換レンズ120を含む光学系に印加される。より具体的には、フーリエ変換レンズ120は、SLM140から変調光ビームを受け取り、周波数-空間変換を実行してスクリーン125にホログラフィック再構成を生成する。
【0048】
注目すべきことに、このタイプのホログラフィでは、ホログラムの各ピクセルが再構成全体に寄与する。再生フィールド上の特定のポイント(または、画像ピクセル)と特定の光変調エレメント(または、ホログラムピクセル)との間に、1対1の相関関係はない。言い替えれば、光変調層を出る変調光は、再生フィールド全体に分散される。
【0049】
空間におけるホログラフィック再構成の位置は、フーリエ変換レンズの視度(集束能力)によって決定される。図1において、フーリエ変換レンズは、物理的レンズである。すなわち、フーリエ変換レンズは光学フーリエ変換レンズであり、フーリエ変換は、光学的に実行される。どんなレンズもフーリエ変換レンズとして機能することができるが、レンズ性能は、それが実行するフーリエ変換の精度を制限する。当業者は、レンズを用いて光学フーリエ変換を実行する方法を理解している。本開示によれば、フーリエ変換は、一部が、図1に示す物理的レンズによって実行され、かつ一部が、ホログラムと組み合わされる、またはホログラムに埋め込まれるいわゆるソフトウェアレンズによって実行される。
【0050】
ホログラム計算
実施形態によっては、コンピュータ生成ホログラムは、正レンズのフーリエ変換特性を利用することにより遠方場で画像が再構成されるフーリエ変換ホログラム、または単にフーリエホログラムまたはフーリエベースのホログラムである。フーリエホログラムは、再生平面における所望される光フィールドを、元のレンズ平面へフーリエ変換することによって計算される。コンピュータ生成フーリエホログラムは、フーリエ変換を用いて計算されてもよい。
【0051】
フーリエ変換ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムなどのアルゴリズムを用いて計算されてもよい。さらに、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、(写真などの)空間領域における振幅限定情報から、フーリエ領域におけるホログラム(すなわち、フーリエ変換ホログラム)を計算するために使用されてもよい。オブジェクトに関連する位相情報は、空間領域における振幅限定情報から効果的に「検索」される。実施形態によっては、コンピュータ生成ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムまたはその変形を用いて、振幅限定情報から計算される。
【0052】
Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、平面AおよびBの各々における光ビームの輝度断面I(x,y)およびI(x,y)が知られていて、I(x,y)およびI(x,y)が、1つのフーリエ変換によって関連づけられるときの状況について考慮する。所与の輝度断面で、平面AおよびBにおける位相分布の近似値、Ψ(x,y)およびΨ(x,y)が各々求められる。Gerchberg-Saxtonアルゴリズムでは、反復プロセスに従うことによって、この問題の解決策が見つかる。より具体的には、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、空間領域とフーリエ(スペクトルまたは周波数)領域との間で、I(x,y)およびI(x,y)を表すデータセット(振幅および位相)を繰り返し転送する間に、空間制約およびスペクトル制約を反復的に適用する。スペクトル領域における、対応するコンピュータ生成ホログラムは、アルゴリズムを少なくとも1回反復することによって得られる。アルゴリズムは、収束性であって、入力画像を表現するホログラムを生成するように構成される。ホログラムは、振幅型ホログラムであっても、位相型ホログラムまたは完全複合ホログラムであってもよい。
【0053】
実施形態によっては、位相型ホログラムは、参照によりその全体が開示に含まれる英国特許第2,498,170号明細書または英国特許第2,501,112号明細書に記載されているものなどの、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを用いて計算される。しかしながら、本明細書に開示する実施形態は、位相型ホログラムの計算を単に例示として説明する。これらの実施形態において、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、既知の振幅情報T[x,y]を生じさせるデータセットの、フーリエ変換の位相情報Ψ[u,v]を検索し、該振幅情報T[x,y]は、標的画像(たとえば、写真)を表す。フーリエ変換では、本来、大きさ(magnitude)と位相とが組み合わされることから、変換される大きさおよび位相は、計算されるデータセットの精度についての有用な情報を含む。したがって、アルゴリズムは、振幅情報および位相情報の双方に関するフィードバックを伴って、反復的に使用されてもよい。しかしながら、これらの実施形態では、画像平面で標的画像のホログラフィック表現を形成するために、位相情報Ψ[u,v]のみをホログラムとして用いる。ホログラムは、位相値のデータセット(たとえば、2Dアレイ)である。
【0054】
他の実施形態では、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを用いて完全複合ホログラムが計算される。完全複合ホログラムは、大きさ成分と位相成分とを有するホログラムである。このホログラムは、複素データ値のアレイを含むデータセット(たとえば、2Dアレイ)であり、各複素データ値は、大きさ成分と位相成分とを含む。
【0055】
実施形態によっては、アルゴリズムは、複素データを処理し、かつフーリエ変換は、複素フーリエ変換である。複素データは、(i)実数成分および虚数成分、または(ii)大きさ成分および位相成分を含むものと見なされてもよい。実施形態によっては、複素データのこれらの2つの成分は、アルゴリズムの様々な段階で異なるように処理される。
【0056】
図2Aは、一部の実施形態による、位相型ホログラムを計算するための一アルゴリズムの第1の反復を示す。アルゴリズムに対する入力は、ピクセルまたはデータ値の2Dアレイを含む入力画像210であり、各ピクセルまたはデータ値は、大きさ値、すなわち振幅値である。すなわち、入力画像210の各ピクセルまたはデータ値は、位相成分を有していない。したがって、入力画像210は、大きさ限定分布、すなわち振幅限定分布、あるいは輝度限定分布と見なされてもよい。このような入力画像210の一例は、写真であり、または、時系列のフレームを含む動画の一フレームである。アルゴリズムの第1の反復は、データ形成ステップ202Aで始まり、該ステップは、開始用の複素データセットを形成するために、ランダム位相分布(またはランダム位相シード)230を用いて入力画像の各ピクセルにランダム位相値を割り当てることを含み、該セットの各データエレメントは、大きさおよび位相を含む。開始用の複素データセットは、空間領域における入力画像を表すと言ってもよい。
【0057】
第1の処理ブロック250は、開始用複素データセットを受信し、かつ複素フーリエ変換を実行してフーリエ変換された複素データセットを形成する。第2の処理ブロック253は、フーリエ変換された複素データセットを受信して、ホログラム280Aを出力する。実施形態によっては、ホログラム280Aは、位相型ホログラムである。これらの実施形態において、第2の処理ブロック253は、各位相値を量子化し、かつ各振幅値を1に設定して、ホログラム280Aを形成する。各位相値は、位相型ホログラムを「表示」するために使用される空間光変調器のピクセル上で表現され得る位相レベルに従って量子化される。たとえば、空間光変調器の各ピクセルが、異なる256の位相レベルを提供する場合、ホログラムの各位相値は、256の可能な位相レベルのうちの1つの位相レベルに量子化される。ホログラム280Aは、入力画像を表す位相型フーリエホログラムである。他の実施形態において、ホログラム280Aは、受信されたフーリエ変換複素データセットから導出された、(各々が振幅成分および位相成分を含む)複素データ値のアレイを含む完全複合ホログラムである。実施形態によっては、第2の処理ブロック253は、ホログラム280Aを形成するために、各複素データ値を、複数の許容可能な複素変調レベルうちの1つに制限する。制限するステップは、各複素データ値を、複素平面内の最も近い許容可能な複素変調レベルに設定することを含んでもよい。ホログラム280Aは、スペクトル領域、またはフーリエ領域、または周波数領域における入力画像を表すと言ってもよい。実施形態によっては、アルゴリズムは、この時点で停止する。
【0058】
しかしながら、他の実施形態において、アルゴリズムは、図2Aの点線矢印が表すように継続する。言い替えれば、図2Aの点線矢印に続くステップは、任意選択である(すなわち、全ての実施形態に必須ではない)。
【0059】
第3の処理ブロック256は、第2の処理ブロック253から修正された複素データセットを受信して逆フーリエ変換を実行し、逆フーリエ変換された複素データセットを形成する。逆フーリエ変換された複素データセットは、空間領域における入力画像を表すと言ってもよい。
【0060】
第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットを受信して、大きさ値の分布211A、および位相値の分布213Aを抽出する。場合により、第4の処理ブロック259は、大きさ値の分布211Aを評価する。具体的には、第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットの大きさ値の分布211Aを、当然ながらそれ自体が大きさ値の分布である入力画像210と比較してもよい。大きさ値の分布211Aと入力画像210との差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが許容可能であると判断してもよい。すなわち、大きさ値の分布211Aと入力画像210との差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが入力画像210を表すに足る精密さであると判断してもよい。一部の実施形態において、逆フーリエ変換された複素データセットの位相値の分布213Aは、この比較の目的に関しては無視される。大きさ値の分布211Aと入力画像210との比較については、任意の異なる数の方法が使用されてもよく、本開示が如何なる特定の方法にも限定されないことは認識されるであろう。実施形態によっては、平均二乗差が計算され、平均二乗差が閾値未満である場合、ホログラム280Aは、許容可能であると見なされる。第4の処理ブロック259が、ホログラム280Aを許容不可であると判断した場合、アルゴリズムのさらなる反復が実行されてもよい。しかしながら、この比較するステップは必須ではなく、よって他の実施形態において、実行されるアルゴリズムの反復数は、予め決定されるか、予め設定され、またはユーザによって規定される。
【0061】
図2Bは、アルゴリズムの第2の反復、およびそれ以降のアルゴリズムの反復を表す。先行する反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値の分布211Aは、入力画像210の大きさ値の分布を優先して拒絶される。第1の反復において、データ形成ステップ202Aは、入力画像210の大きさ値の分布とランダム位相分布230とを組み合わせることにより、第1の複素データセットを形成した。しかしながら、第2の反復およびその後の反復において、データ形成ステップ202Bは、(i)アルゴリズムの先行する反復からの位相値の分布213Aを、(ii)入力画像210の大きさ値の分布と組み合わせることにより、複素データセットを形成することを含む。
【0062】
図2Bのデータ形成ステップ202Bにより形成される複素データセットは、次に、図2Aを参照して説明した方法と同じように処理されて、第2の反復のホログラム280Bを形成する。よって、ここでは、プロセスの説明を省く。アルゴリズムは、第2の反復のホログラム280Bが計算されると停止してもよい。しかしながら、アルゴリズムは、さらに何回もの反復を実行してもよい。第3の処理ブロック256は、第4の処理ブロック259が必要とされる場合、またはさらなる反復が必要とされる場合にのみ必要になることが理解されるであろう。出力ホログラム280Bは、概して、反復されるごとに良くなる。しかしながら、実際には、目に見える改善が認められなくなる時点、または、処理時間が増えることの悪影響がさらなる反復の実行による利益を上回る時点に達することが常である。アルゴリズムが反復的かつ収束的であるとされる所以は、ここにある。
【0063】
図2Cは、第2の反復、およびその後の反復の代替実施形態を表す。先行する反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値の分布211Aは、代替的な大きさ値分布を優先して拒絶される。この代替実施形態において、代替的な大きさ値分布は、先行する反復の大きさ値分布211Aから導出される。具体的には、処理ブロック258が、入力画像210の大きさ値分布を、先行する反復の大きさ値分布211Aから減算し、この差を利得係数αでスケーリングし、かつスケーリングされた差を入力画像210から減算する。これは、以下の数式によって数学的に表され、下付きの文字および数字は、反復回数を示す。
【0064】
【数1】
【0065】
ここで、
F’は、逆フーリエ変換であり、
Fは、順フーリエ変換であり、
R[x,y]は、第3の処理ブロック256により出力される複素データセットであり、
T[x,y]は、入力画像または標的画像であり、
∠は、位相成分であり、
Ψは、位相型ホログラム280Bであり、
ηは、新しい大きさ値分布211Bであり、
αは、利得係数である。
【0066】
利得係数αは、定数であっても、変数であってもよい。実施形態によっては、利得係数αは、入ってくる標的画像データのサイズおよびレートに基づいて決定される。実施形態によっては、利得係数αは、反復回数に依存する。実施形態によっては、利得係数αは、単に反復回数の関数である。
【0067】
図2Cの実施形態における他の全ての点は、図2Aおよび図2Bと同じである。位相型ホログラムΨ(u,v)は、位相分布を周波数領域またはフーリエ領域に含むと言ってもよい。
【0068】
本開示によれば、空間光変調器上で符号化するためのホログラムを含む回折パターンは、レンズを表すデータ(すなわち、レンズ成分)ならびにオブジェクトを表すデータ(すなわち、ホログラム成分)を含む。図1に示す物理的なフーリエ変換レンズ120は、存在しない。コンピュータ生成ホログラムの分野において、レンズを表すホログラフィックデータの計算方法は、既知である。レンズを表すホログラフィックデータは、ソフトウェアレンズと呼ばれることがある。たとえば、位相型ホログラフィックレンズは、レンズの屈折率および空間的に異なる光路長に起因してレンズの各点で生じる位相遅延を計算することにより形成されてもよい。たとえば、凸レンズの中心における光路長は、レンズ縁部における光路長より長い。振幅型ホログラフィックレンズは、フレネルゾーンプレートによって形成されてもよい。コンピュータ生成ホログラムの技術分野では、物理的なフーリエレンズを必要とすることなくフーリエ変換を実行できるように、レンズを表すホログラフィックデータを、オブジェクトを表すホログラフィックデータと組み合わせる方法も知られている。実施形態によっては、レンズ効果データは、単純なベクトル加算などの簡単な加算によってホログラフィックデータと組み合わされる。さらなる実施形態において、空間光変調器上で符号化するためのホログラムを含む回折パターンは、格子データ-すなわち、ビームステアリングなどの格子機能を実行するように構成されるデータを含んでもよい。この場合も、コンピュータ生成ホログラフィの分野では、このようなホログラフィックデータを計算し、これを、オブジェクトを表すホログラフィックデータと組み合わせる方法が知られている。たとえば、位相型ホログラフィック格子は、ブレーズド格子の表面の各点で生じる位相遅延をモデル化することにより形成されてもよい。振幅型ホログラフィック格子は、振幅型ホログラムの角度ステアリングを提供するために、単に、オブジェクトを表す振幅型ホログラムに重ね合わされてもよい。説明を簡単にするために、本明細書に記載の実施例は、格子機能を含まない回折パターンで符号化される空間光変調器に関連し、よって、出力される空間変調光の伝搬軸は、空間光変調器により回折されない出力光の軸に対応する。
【0069】
実施形態によっては、画像データを受信し、かつアルゴリズムを用いてホログラムをリアルタイムで計算するように構成されるリアルタイムエンジンが提供されている。実施形態によっては、画像データは、一連の画像フレームを含む動画である。他の実施形態において、ホログラムは、予め計算され、コンピュータのメモリに記憶されて、SLM上へ表示するために必要に応じて再現される。すなわち、実施形態によっては、予め決められたホログラムのリポジトリが提供されている。
【0070】
実施形態は、単に例示として、フーリエホログラフィ、およびGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムに関する。本開示は、フレネルホログラフィに等しく適用可能である。
【0071】
光変調
空間光変調器は、コンピュータ生成ホログラムを表示するために使用されてもよい。ホログラムが位相型ホログラムである場合、位相を変調する空間光変調器が必要になる。ホログラムが完全複合ホログラムである場合は、位相および振幅を変調する空間光変調器が使用されてもよく、または、位相を変調する第1の空間光変調器と、振幅を変調する第2の空間光変調器とが使用されてもよい。
【0072】
実施形態によっては、空間光変調器の光変調素子(すなわち、ピクセル)は、液晶を含むセルである。すなわち、実施形態によっては、空間光変調器は、液晶デバイスであって、光学活性成分が液晶である。各液晶セルは、複数の光変調レベルを選択的に提供するように構成される。すなわち、各液晶セルは、どの時点においても、複数の可能な光変調レベルから選択される1つの光変調レベルで動作するように構成される。各液晶セルは、複数の光変調レベルから、異なる光変調レベルに動的に再構成可能である。実施形態によっては、空間光変調器は、反射型液晶オンシリコン(LCOS)空間光変調器であるが、本開示は、このタイプの空間光変調器に限定されない。
【0073】
LCOSデバイスは、(たとえば、幅数センチメートルの)小開口内に光変調素子、またはピクセル、の高密度アレイを設ける。ピクセルは、典型的には約10ミクロン以下であって、回折角度が数度になり、光学系を小型にすることができる。他の液晶デバイスの大開口を照射するより、LCOS SLMの小開口を適切に照射するほうが容易である。LCOSデバイスは、典型的には反射型であり、これは、LCOS SLMのピクセルを駆動する回路を反射面の下に埋め込めることを意味する。その結果、開口率が高くなる。言い替えれば、ピクセルが密に詰まっているということで、ピクセル間にデッドスペースがほとんどないことを意味する。これは、再生フィールドの光学ノイズを低減するという理由で、有利である。LCOS SLMは、ピクセルが光学的に平坦であるという利点を有するシリコンバックプレーンを用いる。このことは、位相変調デバイスにとって特に重要である。
【0074】
以下、図3を参照して、適切なLCOS SLMを単に例示として説明する。LCOSデバイスは、単結晶シリコン基板302を用いて形成される。これは、基板の上面に配置される、間隙301aで離隔された平面四角形のアルミニウム電極301の2Dアレイを有する。電極301は各々、基板302に埋め込まれる回路302aを介してアドレス指定されることが可能である。電極は各々、個々の平面ミラーを形成する。電極アレイ上には、配向層303が配置され、配向層303上に液晶層304が配置される。第2の配向層305は、たとえばガラスである平坦な透明層306上に配置される。透明層306と第2の配向層305との間には、たとえばITO製である単一の透明電極307が配置される。
【0075】
方形電極301は各々、上方領域である透明電極307および介在する液晶材料と共に、ピクセルと呼ばれることが多い、制御可能な位相変調素子308を画定する。有効ピクセル領域、すなわちフィルファクタは、光学的に活性な全ピクセルの、ピクセル間スペース301aを考慮した割合である。透明電極307に関連して各電極301へ印加される電圧を制御することにより、個々の位相変調素子の液晶材料の特性が変えられ得、これにより位相変調素子上の入射光に可変遅延がもたらされる。その効果は、波面に位相限定の変調をもたらすことにあり、すなわち振幅効果は生じない。
【0076】
説明しているLCOS SLMは、空間変調光を反射させて出力する。反射型LCOS SLMには、信号線、ゲート線およびトランジスタが鏡面より下にあり、よってフィルファクタが高くなり(典型的には、90%より高い)、かつ解像度が高くなるという利点がある。反射型LCOS空間光変調器を用いるもう1つの利点は、液晶層の厚さを、透過デバイスを用いる場合に必要となる厚さの半分にできることにある。これにより、液晶のスイッチング速度は、大幅に向上する(動画を投影するための大きな利点となる)。しかしながら、本開示の教示は、透過型LCOS SLMを用いて等しく実装されてもよい。
【0077】
空間光変調器と受光面との相対的傾斜
図4Aは、3つの光チャネルを示す。各光チャネルは、光源と、空間光変調器と、受光面とを備える。各光チャネルは、ホログラフィック再構成を1色で提供する。したがって、複合色のホログラフィック再構成は、赤、緑および青チャネルなどの複数の単色チャネルを使用し、再生平面で単色再生フィールドを重ね合わせることによって提供され得る。各チャネルのホログラムは、そのチャネルのカラーコンテンツに合わせて調製される。図4Aは、3つの光チャネルを単なる例示として示している。3つのチャネルは、実質的に平行であって、共通の空間光変調器を共有し得、-たとえば、共通の空間光変調器のピクセルのサブセットが各々、個々の色チャネルに割り当てられてもよく-または、各チャネルが固有の空間光変調器を有してもよい。3つの対応する再生フィールドは、再生平面の同じ場所にあってもよい。本開示の教示内容は、1つの光チャネルまたは任意数の光チャネルを含むホログラフィックプロジェクタに等しく適用可能である。説明を簡単にするために、以下、単に1つの光チャネルのコンポーネントを参照する。
【0078】
図4Aは、対応する液晶オンシリコン空間光変調器403Aを照射する光源401Aを示している。空間光変調器403Aは、コンピュータ生成ホログラムを含む回折/光変調パターンを表示する。光は、空間光変調器403A上に、空間光変調器403Aの法線に対してゼロより大きい角度で入射する。空間光変調器403Aは、平坦かつ反射性であり、よって、空間変調光は、空間光変調器403Aの法線に対して同じ角度で出力される。空間変調光は、受光面405Aによって受信される。
【0079】
図4Bは、本開示による画像プロジェクタを示す略図である。具体的には、図4Bは、画像プロジェクタの伝搬軸に沿った光の方向を示す光線図である。光源401Bは、空間光変調器403Bを、空間光変調器403Bの法線に対して角度θで照射する。空間光変調器403Bは、コンピュータ生成ホログラムを含む回折/光変調パターンを表示する。図示の配置において、空間光変調器403Bは、反射性であって、回折/光変調パターンは、格子機能を含まない。したがって、空間変調光は、空間光変調器403Bにより、軸を有する伝搬経路に沿いに、空間光変調器403Bの法線に対して照射角と同じ角度θで反射される。伝搬軸の角度が透過型空間光変調器の場合と同じであることは、認識されるであろう。受光面405Bは、空間光変調器403Bから空間変調光を、受光面405Bの法線に対して角度αで受信する。注目すべきことに、空間光変調器403Bと受光面405Bとの間の光伝搬経路上に、レンズ450が配置されている。実施形態によっては、レンズ450は、図4Bに示すように、伝搬軸に対して実質的に垂直である。レンズの光軸は、伝搬軸と実質的に同一直線上にあってもよい。レンズ450のない(たとえば、図4Aに示すような)比較例では、空間光変調器403Bと受光面405Bとが平行であり-すなわち、空間光変調器403Bにより表示される回折/光変調パターンが格子機能を含まない場合、θは、αに等しい。実施形態によっては、θが20度であるが、θは、任意の非ゼロ値を有してもよい。
【0080】
空間光変調器403A/403Bの各ピクセルは、集合的に回折/光変調パターンを形成する個々の光変調レベルの光変調データを表示する。光変調データは、投影用の画像に対応するホログラムデータ(すなわち、ホログラム成分)を含む。光変調データは、屈折力を有するレンズに対応するレンズデータ(すなわち、レンズ成分)も含む。レンズは、焦点距離を有する。ホログラフィック再構成は、レンズデータおよびレンズ450の集束力に起因して、受光面405A/405Bの平面に形成される。先に説明したように、ホログラムと組み合わされるレンズは、「ソフトウェアレンズ」と呼ばれ得、物理的レンズを表す数学関数(mathematical function)である。ソフトウェアレンズは、屈折力が同じである物理的な光学レンズと同じ機能-すなわち集束力-を提供する。ソフトウェアレンズは、対応する光学コンポーネントの形状に対応する位相遅延値のアレイであってもよい。本明細書では、レンズ450を、ソフトウェアレンズと区別して「ハードウェアレンズ」と呼ぶ。画像のホログラフィック再構成は、受光面405A/405B上に形成される。ソフトウェアレンズおよびハードウェアレンズは、ホログラムの数学的変換-フーリエ変換など-を共同して実行する。フーリエ変換が周波数-空間変換であることは、理解されるであろう。フーリエ変換ホログラムを用いる実施形態では、ホログラムは、投影用画像の周波数領域表現であり、ホログラフィック投影は、画像の空間領域表現であり、レンズは、ホログラムの周波数-空間変換を実行する、と言ってもよい。
【0081】
この場合も、本開示は、θが非ゼロである(言い替えれば、ゼロより大きい)特定の事例に関し、発明者は、この特定の事例において、空間光変調器に表示されるホログラムのホログラフィック再構成における画像スポットのサイズを、受光面を空間光変調器に対して空間光変調器上照射の入射角より小さい角度で傾斜することにより縮小できることを観察により認めている。すなわち、受光面と空間光変調器との間の相対的傾斜または相対角度は、非ゼロかつθ未満である。言い替えれば、比較例とは対照的に、θとαとの差は、非ゼロであり、よって、受光面と空間光変調器は、平行でなく、したがって相対的傾斜を有する。この発見は、レイ・トレーシング・ソフトウェアを用いて検証されている。
【0082】
図5は、ホログラフィック再生フィールド501の略図であって、図6をより良く理解するために提供されている。図5の再生フィールド501は、再生フィールド内のポイントである9個のいわゆるフィールドポイントを、FP1~FP9とラベル付けして示している。レイトレーシングは、フィールドポイントFP1~FP9の各々において画像スポットのサイズおよび形状を決定するために使用された。
【0083】
図6は、図5の9個のフィールドポイントFP1~FP9に対応する9個の例示的な画像スポットを示す。画像スポットは、フィールドポイントに対応して左から右へ昇順数値で示されている。すなわち、FP1における画像スポットが左端に示され、FP9における画像スポットが右端に示されている。
【0084】
図6は、レイトレーシングにより取得された3つのロウにおける3つの例示的な画像スポットセットを個々に示している。一番上の画像スポットセット(図6A)は、波長450nmの青色光を用いて形成され、中央の画像スポットセット(図6B)は、波長520nmの緑色光を用いて形成され、かつ一番下の画像スポットセット(図6C)は、波長650nmの赤色光を用いて形成されている。画像スポットごとに示されている実線の円または点は、対応する回折限界である。
【0085】
誤解を避けるために記すと、ホログラフィック再生フィールド内の全ての画像スポットは、同じコンピュータ生成回折パターンから同時に形成される。たとえば、9個のフィールドポイントFP1~FP9における9個の画像スポットは、同時に形成される。これは、各画像が1ビットずつ形成されるビーム・スキャニング・システムとは対照的である。
【0086】
図6に例示的に示しているような画像スポットのレイトレーシングおよび分析によって、軸外照射では、空間光変調器と受光面とが互いに対してディスプレイデバイスにおける照射の入射角θより小さい非ゼロの角度で傾斜される場合に、より小さい画像スポットが形成されることが分かった。この発見は、軸外照射方式におけるホログラム変換に、ハードウェアレンズおよびソフトウェアレンズの双方が使用される場合に当てはまる。ソフトウェアレンズのみが使用される場合の最適構成は、参照により開示に含まれる国際公開出願第2019/243096号パンフレットに開示されている。この発見の詳細については、後述する。
【0087】
実施形態によっては、受光面と空間光変調器との間の相対角度は、ハードウェアレンズの屈折力とソフトウェアレンズの屈折力との相対値によって決定される。具体的には、相対角度は、ハードウェアレンズの屈折力の、ソフトウェアレンズの屈折力に対する割合に比例する場合もあれば、逆に、ソフトウェアレンズの屈折力の、ハードウェアレンズの屈折力に対する割合に反比例する場合もある。すなわち、ソフトウェアレンズの屈折力が一定のままである場合、ハードウェアレンズの屈折力が増大すると、受光面と空間光変調器との間の相対角度は増加し、かつハードウェアレンズの屈折力が減少すると、受光面と空間光変調器との間の相対角度は減少する。ある比較例では、ハードウェアレンズの屈折力がゼロであり、よって相対的傾斜は、当然ゼロである。別の比較例では、ソフトウェアレンズの屈折力がゼロであり、よって相対的傾斜は、受光面が伝搬軸に対して実質的に垂直であるように、空間光変調器上の入射角に実質的に等しいものとなる。しかしながら、実施形態において、ソフトウェアレンズの屈折力は、非ゼロであり、かつハードウェアレンズの屈折力も非ゼロである。実施形態によっては、相対角度は、入射角と、ソフトウェアレンズとハードウェアレンズの屈折力の比との積の半分に等しい。実施形態において、相対的傾斜/角度は、プロジェクタの投影軸を含む平面または該投影軸の方向に対する、受光面および空間光変調器の個々の平面の傾斜/角度の差である。
【0088】
相対的傾斜に対する物理/投影レンズの効果
特定の理論になんら束縛されるものではないが、レイ・トレーシング・ソフトウェアを用いた結果は、コンピュータ生成回折パターンにより提供されるレンズ関数の屈折力に相対する、空間光変調器と受光面との間の光伝搬経路上に配置される物理的レンズの屈折力が、画像スポットのサイズを最適化するための受光面の最適な傾斜に影響することを示している。具体的には、発明者は、受光面の最適な傾斜(すなわち、最適サイズの画像スポットを達成するための傾斜)が、物理的レンズの屈折力が増大するにつれて、最大傾斜θ-空間光変調器(SLM)に対して平行-から引き離されることを発見している。
【0089】
図7A~Cは、発明者が観察した、物理的レンズの屈折力が受光面(たとえば、ディフューザまたはスクリーン)の最適な傾斜に与える例示的効果を略示したものである。各実施例において、光学システムの各光学コンポーネントの角度または傾斜は、説明を容易にするために図4Bの配置を「展開」した光軸700と相対的に示されている。各実施例において、システムの光軸700は、光源701A~Cと受光面705A~Cとの間の水平線によって示されている。光源701A~Cおよび物理的レンズ750A~Cは、光軸と同一直線上に配置され、よって、その個々の平面は、光軸に垂直である。SLM703A-Cの平面は、光軸700に対し、本明細書に記載の照射角に対応する角度θで配置されている。照射角θは、図7A図7Cの各実施例で同じである。受光面705A~Cの平面は、光軸700に対し、本明細書で記述しているような、受光面上に形成される画像スポットのサイズを最小化するための最適な傾斜に対応する角度αで配置されている。受光面705A~Cの平面の傾斜/角度、およびSLM703A~Cの平面の傾斜/角度は、光軸700を含む同じ平面を中心としている。図示の実施例において、この平面(光学コンポーネントの傾斜の中心)は、各光学コンポーネントを横方向/水平方向に二等分する(すなわち、図7A図7Cの紙面へと伸びる)水平面である。受光面705A~Cの平面の傾斜は、SLM703A~Cの平面の傾斜と同じ方向である。したがって、角度αおよびθは、同じ符号を有する。具体的には、SLM703A-Cおよび受光面705A-Cは、水平光軸700に対して時計回りの方向へ傾斜されるように示されている。受光面705A~Cの最適な傾斜または角度αは、SLM703A~C上に表示される回折パターンのソフトウェアレンズに対する、物理的レンズ750A~Cの屈折力の相違に起因して、図7A図7Cの実施例ごとに異なる。全ての実施例において、ソフトウェアレンズの屈折力およびハードウェアレンズの屈折力は、非ゼロである。
【0090】
図7Aは、SLM703A上に表示される回折パターンのソフトウェアレンズの屈折力が物理的レンズ750Aの屈折力に匹敵する場合の、第1の実施例を示す。この文脈において、「匹敵する」という用語は、実質的に同じ、または同程度であることを意味する。本実施例において、受光面705Aの平面の最適角度αは、SLM703の平面の角度θ(すなわち、最大傾斜角α)と物理的レンズ750Aの垂直/平面(すなわち、傾斜角ゼロ)との間である。屈折力の比(ソフトウェアの屈折力対ハードウェアの屈折力)が1:1または1であるとき、受光面705Aの角度αは、照射角θの半分であり(すなわち、α=θ/2)、よって、角度θとαとの差-SLM703Aおよび受光面705Aの平面間の相対角度-もまた、照射角θの半分(すなわち、θ-α=θ/2)であることが分かる。
【0091】
図7Bは、SLM703B上に表示される回折パターンのソフトウェアレンズの屈折力が物理的レンズ750Bの屈折力より実質的に大きく、よって、ソフトウェアレンズが「優勢」である場合の、第2の実施例を示す。たとえば、この文脈において、「実質的に大きい」という用語は、大きさの違いが1桁であることを意味し得る。たとえば、屈折力の比(ソフトウェアの屈折力対ハードウェアの屈折力)は、10:1または10であり得る。本実施例において、受光面705Bの平面の最適角度αは、SLM703Bの平面の角度θよりほんの僅か小さく、よって、相対的傾斜は小さい(すなわち、SLMとディフューザ/スクリーンとが平行になりがちである)。これは、相対的傾斜(すなわち、θ-α)が屈折力の比(ソフトウェアの屈折力対ハードウェアの屈折力)に反比例することによるものであり、よって、相対的傾斜は、ソフトウェアレンズがより優勢になるにつれて減少する。
【0092】
図7Cは、物理的レンズ750Cの屈折力がSLM703C上に表示される回折パターンのソフトウェアレンズの屈折力より実質的に大きく、よって、ハードウェアレンズが「優勢」である場合の、第3の実施例を示す。たとえば、この場合も同じく、「実質的に大きい」という用語は、大きさの違いが1桁であることを意味し得る。たとえば、屈折力の比(ソフトウェアの屈折力対ハードウェアの屈折力)は、1:10または0.1であり得る。本実施例において、受光面705Cの平面の最適角度αは、物理的レンズ750Aの垂線/平面よりほんの僅か小さく、よって、相対的傾斜は大きい(すなわち、θより小さいが、θへと向かいがちである)。これは、相対的傾斜(すなわち、θ-α)が屈折力の比(ソフトウェアの屈折力対ハードウェアの屈折力)に反比例することによるものであり、よって、相対的傾斜は、ハードウェアレンズがより優勢になるにつれて増大する。
【0093】
実施例
表2~表7に記載している結果は、表1に示す事例において達成されている。空間光変調器は、ホログラムとソフトウェアレンズとを含む、格子機能なしの回折パターンを表示する。物理的/投影レンズの光軸は、空間光変調器と受光面との間の投影軸と同一直線上にある。したがって、物理的レンズの平面は、投影軸に垂直である。したがって、空間光変調器の平面は、投影レンズの平面に対してθだけ傾斜され、かつ受光面の平面は、投影レンズの平面に対してαだけ傾斜される。表1に示す角度θおよびαは、各々、空間光変調器および受光面の平面の法線に対する角度である。相対角度は、空間光変調器の平面の角度の、受光面の平面の角度に対する差(度単位)であって、θとαとの差(すなわち、θ-α)になる。本実施例において、受光面は、ディフューザである。
【0094】
【表1】
【0095】
下記の結果は、ソフトウェアレンズの屈折力より1桁以上大きい屈折力を有する物理的レンズと、波長650nmの赤色光とを用いて得たものである。したがって、この実施例では、図7Cに関連して先に述べた第3の実施例の場合のように、物理的レンズが優勢である(すなわち、物理的レンズの屈折力がソフトウェアレンズの屈折力より実質的に大きい)。したがって、最適化された画像スポットを達成するためのSLM平面およびディフューザ平面間の相対的傾斜は、比較的大きいものであるべきであり、別の言い方をすれば、ディフューザ平面の角度αは、比較的小さいものであるべきである。
【0096】
フィールドポイントFP3、FP5、FP7およびFP9(図5参照)で形成される画像スポットは、ホログラフィック再生フィールドのエッジで形成され、よって、先に述べたように、不都合なサイズ増加に最も曝されることに留意されたい。したがって、これらのフィールドポイントに関わる結果は、表2~表7の各々の最後に記されている。
【0097】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0098】
表2~表7における結果は、軸外照射の場合、空間光変調器と受光面とが非平行であり、かつ互いに対し、照射角θより小さい角度で傾斜される(すなわち、相対角度がゼロより大きくθより小さい)場合に、より小さい画像スポットが形成されることを示している。この実施例では、傾斜の方向または符号を無視すれば、θ=15度で、ディフューザ平面の最適角度α=1.57度となる。これにより、形成される画像スポットのサイズは、表2に示すように、全てのフィールドポイントFP1~FP7で最小化される。本明細書で記述しているように、画像スポットは、小さいほど、ホログラフィック再生フィールドにおいてより高い解像度を提供するという理由で好ましい。画像スポットが最大になる最悪の結果は、表5に示すように、ディフューザ平面がSLMに平行である場合、すなわちα=-15度のときである。大きい画像スポットは、表6および表7に示すように、ディフューザ平面の正の傾斜(すなわち、ディフューザの、SLMとは反対方向への傾き)が増大しても発生する。
【0099】
上述の実施例が、ソフトウェアレンズの屈折力の、ハードウェアレンズの屈折力に対する比の極端な例を表すものであることは留意される。具体的には、上述の実施例では、ハードウェアレンズの屈折力が優勢であり(すなわち、ソフトウェアレンズの屈折力より実質的に大きい)、ディフューザ平面の最適傾斜αは、最小であって、ディスプレイデバイスの傾斜角θより小さい。したがって、SLM平面とディフューザ平面との相対的傾斜は、最大であるが、ディスプレイデバイスの傾斜角θより小さい(すなわち、相対的傾斜は、SLM傾斜15度より小さい)。これは、図7Cに示す第3の実施例と整合する。他の極例は、物理的レンズが存在しない(すなわち、ハードウェアレンズの屈折力がゼロである)国際公開出願第2019/243096号パンフレットに記載の例に類似する。この場合、ハードウェアレンズの屈折力がゼロより大きいが、ソフトウェアレンズの屈折力が優勢である場合、ディフューザ平面の最適傾斜αは、最大であってもディスプレイデバイスの傾斜角θより小さい。したがって、SLM平面とディフューザ平面との相対的傾斜は、最小であるがゼロより大きい(すなわち、SLM平面とディフューザ平面とがほぼ平行である)。これは、図7Bに示す第2の実施例と整合する。物理的レンズ(すなわち、ハードウェアレンズ)およびソフトウェアレンズの屈折力が同じである場合、最適な画像スポットサイズを達成するためのディフューザの相対的傾斜は、これら双方の極例の間にあることが発見されている。たとえば、LCOSが15度で傾斜される(すなわち、θ=15度である)場合、ディフューザ平面の最適傾斜は、角度α=7.5度であり、つまりは、相対的傾斜も7.5度である。
【0100】
追加的機能
実施形態は、単なる例として、電気的に活性化されるLCOS空間光変調器に言及している。本開示の教示内容は、本開示に従ってコンピュータ生成ホログラムを表示することができる、たとえば任意の電気的に活性化されるSLMs、光学的に活性化されるSLM、デジタルマイクロミラーデバイスまたは微小電気機械デバイスなどの任意の空間光変調器に等しく実装されてもよい。
【0101】
実施形態によっては、光源は、レーザダイオードなどのレーザである。実施形態によっては、受光面は、ディフューザ表面、またはディフューザなどのスクリーンである。本開示のホログラフィック投影システムは、改良されたヘッドアップディスプレイ(HUD)またはヘッドマウントディスプレイを提供するために使用されてもよい。実施形態によっては、HUDを提供するために車両内に設置されたホログラフィック投影システムを備える車両が提供されている。車両は、自動車、トラック、バン、大型トラック、オートバイ、電車、飛行機、ボートまたは船舶などの自走車両であってもよい。
【0102】
ホログラフィック再構成の品質は、ピクセル化された空間光変調器を用いるという回折性の結果である、いわゆるゼロ次問題による影響を受けることがある。このようなゼロ次光は「ノイズ」と見なすことができ、たとえば鏡面反射光、およびSLMからの他の不要な光が含まれる。
【0103】
フーリエホログラフィの例では、この「ノイズ」はフーリエレンズの焦点に集束され、ホログラフィック再構成の中心に明るいスポットをもたらす。ゼロ次光は単純にブロックされ得るが、これは、明るいスポットを暗いスポットに置き換えることを意味する。一部の実施形態は、ゼロ次のコリメート光のみを除去するための角度選択フィルタを含む。実施形態は、参照によりその全体が開示に含まれる欧州特許第2,030,072号明細書に記載されているゼロ次の管理方法も含む。
【0104】
実施形態によっては、ホログラムのサイズ(各方向のピクセル数)は、ホログラムが空間光変調器を満たすように空間光変調器のサイズに等しい。すなわち、ホログラムは、空間光変調器の全てのピクセルを用いる。他の実施形態では、ホログラムのサイズは、空間光変調器のサイズより小さい。これらの他の実施形態のうちの幾つかでは、ホログラムの一部(すなわち、ホログラムのピクセルの連続するサブセット)が未使用のピクセルで繰り返される。この技術は、空間光変調器の表面積が幾つかの「タイル」に分割され、その各々がホログラムの少なくとも1つのサブセットを表す、「タイリング」と呼ばれることがある。したがって、各タイルのサイズは、空間光変調器より小さくなる。
【0105】
実施形態によっては、「タイリング」の技法は、画質を向上させるために実装される。具体的には、一部の実施形態は、タイリングの技術を実装して、ホログラフィック再構成に入る信号コンテンツの量を最大化しながら、画像ピクセルのサイズを最小化する。
【0106】
実施形態によっては、空間光変調器に書き込まれるホログラフィックパターンは、少なくとも1つのタイル全体(すなわち、完全なホログラム)と、タイルの少なくとも1つの部分(すなわち、ホログラムのピクセルの連続するサブセット)とを含む。
【0107】
ホログラフィック再構成は、空間光変調器により画定されるウィンドウ全体のゼロ次の回折次数内で作成される。1次および後続の次数は、画像と重ならないように、かつ空間フィルタを用いてブロックされ得るように、十分に変位されることが好ましい。
【0108】
実施形態において、ホログラフィック再構成は、カラーである。本明細書に開示する実施例では、3つの異なる色の光源と、対応する3つのSLMとを用いて複合カラーが提供される。これらの例は、空間的に分離された色「SSC」と呼ばれることがある。本開示に包含される変形例では、各色の異なるホログラムが同じSLMの異なる領域に表示され、次いで複合カラー画像を形成するために組み合わされる。しかしながら、当業者には、本開示のデバイスおよび方法の少なくとも一部は、複合カラーホログラフィック画像を提供する他の方法に等しく適用可能であることが理解されるであろう。
【0109】
これらの方法のうちの1つは、フレーム・シーケンシャル・カラー「FSC」として既知である。ある例示的なFSCシステムでは、3つのレーザ(赤、緑、青)が使用され、各レーザが単一のSLMに連続して発射され、ビデオの各フレームが生成される。色は、人である目視者が3つのレーザで形成される画像の組合せから多色画像を見ることに足る速度で循環される(赤、緑、青、赤、緑、青、他)。したがって、各ホログラムは、色固有である。たとえば、1秒あたり25フレームのビデオでは、第1のフレームが、赤色レーザを1/75秒間発射し、次に緑色レーザが1/75秒間発射され、最後に青色レーザが1/75秒間発射されて生成される。次に、次のフレームが、赤色レーザから始めて生成され、以下同様に続く。
【0110】
FSC方式の利点は、SLM全体が各色に使用されることにある。これは、SLMの全てのピクセルが各カラー画像に使用されることにより、生成される3つのカラー画像の品質が損なわれないことを意味する。しかしながら、FSC方式の欠点は、各レーザの使用時間が3分の1でしかないことから、生成される画像全体の明るさが、SSC方式で生成される対応する画像の3分の1になることにある。この欠点は、レーザをオーバードライブすること、またはより強力なレーザを用いることで対処できる可能性もあるが、そのためには、より多くの電力使用を要し、コストが高まり、かつシステムが大型化することになる。
【0111】
SSC方式の利点は、3つのレーザが全て同時に発射されることから、画像が明るくなることにある。しかしながら、スペースの制限によって1つのSLMしか使用できない場合、SLMの表面積を3つの部分に分割し、実質的に3つの別個のSLMとして機能させることがある。これの欠点は、各単色画像に利用可能なSLM表面積が減少して、各単色画像の品質が低下することである。したがって、多色画像の品質が相応して低下する。利用可能なSLM表面積の減少は、SLMで使用できるピクセルが少なくなり、よって、画像の品質が低下することを意味する。画像品質の低下は、その解像度の低下に起因する。実施形態は、参照によりその全体が開示に含まれる英国特許第2,496,108号明細書に開示されている改良されたSSC技術を利用する。
【0112】
実施例は、SLMを可視光で照射することを記述しているが、当業者には、たとえば、本明細書で開示しているように、光源およびSLMを、赤外光または紫外光を方向付けるために等しく使用し得ることが理解されるであろう。たとえば、当業者は、ユーザに情報を提供する目的で、赤外光および紫外光を可視光に変換する技術に気づくことになるであろう。たとえば、本開示は、この目的で蛍光体および/または量子ドット技術を用いることにまで及ぶ。
【0113】
一部の実施形態は、2Dホログラフィック再構成を単に例示として記述している。他の実施形態において、ホログラフィック再構成は、3Dホログラフィック再構成である。すなわち、実施形態によっては、コンピュータ生成ホログラムは各々、3Dホログラフィック再構成を形成する。
【0114】
本明細書に記載の方法およびプロセスは、コンピュータ可読媒体上で具体化されてもよい。「コンピュータ可読媒体」という用語は、データを一時的または永続的に記憶するように構成される、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、バッファメモリ、フラッシュメモリおよびキャッシュメモリなどの媒体を包含する。また、「コンピュータ可読媒体」という用語は、命令が、1つまたは複数のプロセッサにより実行されると、機械に、本明細書に記載の方法論のいずれか1つまたはそれ以上を完全にまたは部分的に実行させるように、機械により実行されるための命令を記憶することができる任意の媒体または複数の媒体の組合せをも包含すると解釈されるものとする。
【0115】
「コンピュータ可読媒体」という用語は、クラウドベースの記憶システムも包含する。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ソリッドステートメモリチップ、光ディスク、磁気ディスクまたはこれらの任意の適切な組合せといった例示的形態である1つまたは複数の有形かつ非一時的なデータリポジトリ(たとえば、データボリューム)を含むが、これらに限定されない。一部の例示的な実施形態において、実行のための命令は、キャリア媒体によって伝達されてもよい。このようなキャリア媒体の例としては、一時的媒体(たとえば、命令を伝達する伝搬信号)が含まれる。
【0116】
当業者には、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な変更および変形を行えることが明らかであろう。本開示は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内の全ての変更および変形を包含する。
【符号の説明】
【0117】
110 光源
111 コリメーティングレンズ
112 射出波面
120 フーリエ変換レンズ
125 スクリーン
140 SLM
202A データ形成ステップ
202B データ形成ステップ
210 入力画像
211A 大きさ値の分布
211B 大きさ値の分布
213A 位相値の分布
230 ランダム位相分布
250 第1の処理ブロック
253 第2の処理ブロック
256 第3の処理ブロック
258 処理ブロック
259 第4の処理ブロック
280A ホログラム
280B 第2の反復のホログラム
301 アルミニウム電極
301a 間隙
302 単結晶シリコン基板
302a 回路
303 配向層
304 液晶層
305 第2の配向層
306 透明層
307 透明電極
308 位相変調素子
401A 光源
401B 光源
403A 液晶オンシリコン空間光変調器
403B 空間光変調器
405A 受光面
405B 受光面
450 レンズ
501 ホログラフィック再生フィールド
700 光軸
701A 光源
701B 光源
701C 光源
703A SLM
703B SLM
703C SLM
705A 受光面
705B 受光面
705C 受光面
750A 物理的レンズ
750B 物理的レンズ
750C 物理的レンズ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C