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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】紙蓋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31B 50/59 20170101AFI20230522BHJP
【FI】
B31B50/59
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021133428
(22)【出願日】2021-08-18
(62)【分割の表示】P 2020540119の分割
【原出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021178517
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018162151
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
(72)【発明者】
【氏名】久富 祥人
(72)【発明者】
【氏名】門田 太郎
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-008276(JP,A)
【文献】特開2002-143937(JP,A)
【文献】実開昭58-004230(JP,U)
【文献】特開2011-212882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/00-70/99
B31C 1/00-99/00
B31D 1/00-99/00
B65D 3/00- 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主体とするブランクの周縁領域を、前記ブランクを押さえるためのドローダイとブランクホルダーとで基準位置において接触して押さえる第1工程と、
前記第1工程の前記周縁領域を前記ドローダイと前記ブランクホルダーとで接触して押さえながら、前記ブランクを加工するドローパンチの先端部分に設けられ囲壁状に突き出た環状突起部の先端を前記ブランクの中央領域の表面と接触させ、前記ブランクを加工するプランジャーの先端部分に設けられ前記環状突起部で囲まれる窪みと嵌合可能な縮径部の先端を、第1方向に前記基準位置を超えて移動させて、前記ブランクの前記中央領域を前記窪みの中に押し込み、内嵌合部を、前記ブランクの前記中央領域に形成する第2工程と、
前記第2工程の後、前記周縁領域を前記ドローダイと前記ブランクホルダーとで接触して押さえながら、前記環状突起部の先端を、前記ブランクと接触しながら前記第1方向とは反対の第2方向に前記基準位置を超えて移動させて前記中央領域を押し込み、外嵌合部を、前記内嵌合部が形成された前記中央領域に形成する第3工程と、を備え、
前記第3工程の後、
前記プランジャーを前記ブランクから離脱し、前記周縁領域を前記ブランクホルダーから離脱した上で前記ブランクホルダーと再接触させた状態で、前記ドローパンチを前記第1方向に移動させて前記ブランクから離脱させる工程と、
を、さらに備えることを特徴とする紙蓋の製造方法。
【請求項2】
前記内嵌合部を形成するとき、前記ブランクに第1成型荷重を付与し、
前記外嵌合部を形成するとき、前記ブランクに第2成型荷重を付与し、
前記第2成型荷重の付与方向は、前記第1成型荷重の付与方向と反対向きであることを特徴とする請求項1に記載の紙蓋の製造方法。
【請求項3】
前記内嵌合部及び前記外嵌合部のそれぞれは、前記ブランクに、絞り成型を用いて形成することを特徴とする請求項2に記載の紙蓋の製造方法。
【請求項4】
前記内嵌合部及び前記外嵌合部のそれぞれは、前記ブランクに、しごき成型を用いて形成することを特徴とする請求項2に記載の紙蓋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙蓋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙コップ等の紙容器の蓋として、プラスチック等の樹脂蓋が用いられている。しかし、樹脂蓋は、廃棄する際、紙コップや紙容器と分別する必要があり、消費者の手間となる。
【0003】
特許文献1には、天板と、天板の周側部に外壁と上壁と内壁とからなる下方に開いた溝部と、を有した紙蓋の製法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3432316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、雄型と雌型との間に天板の周側部を挟むことで、天板の周側部に、溝部の内壁、上壁、及び外壁のそれぞれを同時に形成する。
【0006】
しかし、ブランクに、内壁、上壁、及び外壁のそれぞれを同時に形成すると、ブランクが破断しやすい。内壁は、例えば内嵌合部に相当し、外壁は、例えば外嵌合部に相当する。このため、内嵌合部及び外嵌合部のそれぞれを備えた紙蓋には、歩留りよく製造することが難しい、という事情がある。この事情は、ブランクを“しわ抑え”しつつ、内嵌合部及び外嵌合部それぞれの形成に“しごき成型”を用いたとき、特に顕著である。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、その目的は、内嵌合部及び外嵌合部のそれぞれを備えた紙蓋を、歩留りよく製造することが可能な紙蓋の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る紙蓋の製造方法は、紙を主体とするブランクの周縁領域を、前記ブランクを押さえるためのドローダイとブランクホルダーとで基準位置において接触して押さえる第1工程と、前記第1工程の前記周縁領域を前記ドローダイと前記ブランクホルダーとで接触して押さえながら、前記ブランクを加工するドローパンチの先端部分に設けられ囲壁状に突き出た環状突起部の先端を前記ブランクの中央領域の表面と接触させ、前記ブランクを加工するプランジャーの先端部分に設けられ前記環状突起部で囲まれる窪みと嵌合可能な縮径部の先端を、第1方向に前記基準位置を超えて移動させて、前記ブランクの前記中央領域を前記窪みの中に押し込み、内嵌合部を、前記ブランクの前記中央領域に形成する第2工程と、前記第2工程の後、前記周縁領域を前記ドローダイと前記ブランクホルダーとで接触して押さえながら、前記環状突起部の先端を、前記ブランクと接触しながら前記第1方向とは反対の第2方向に前記基準位置を超えて移動させて前記中央領域を押し込み、外嵌合部を、前記内嵌合部が形成された前記中央領域に形成する第3工程と、を備え、前記第3工程の後、前記プランジャーを前記ブランクから離脱し、前記周縁領域を前記ブランクホルダーから離脱した上で前記ブランクホルダーと再接触させた状態で、前記ドローパンチを前記第1方向に移動させて前記ブランクから離脱させる工程と、を、さらに備えることを特徴とする。
【0010】
発明に係る紙蓋の製造方法は、第1発明において、前記内嵌合部を形成するとき、前記ブランクに第1成型荷重を付与し、前記外嵌合部を形成するとき、前記ブランクに第2成型荷重を付与し、前記第2成型荷重の付与方向は、前記第1成型荷重の付与方向と反対向きであることを特徴とする。
【0011】
発明に係る紙蓋の製造方法は、第発明において、前記内嵌合部及び前記外嵌合部のそれぞれは、前記ブランクに、絞り成型を用いて形成することを特徴とする。
【0012】
発明に係る紙蓋の製造方法は、第発明において、前記内嵌合部及び前記外嵌合部のそれぞれは、前記ブランクに、しごき成型を用いて形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明に係る紙蓋の製造方法によれば、ブランクの中央領域に内嵌合部を形成した後、ブランクの中央領域に外嵌合部を形成する。このため、ブランクの中央領域に内嵌合部と外嵌合部とを同時に形成する場合と比較して、ブランクの破断等が起こりにくくなる。したがって、紙蓋を、歩留りよく製造することが可能となる
【0015】
発明に係る紙蓋の製造方法によれば、第2成型荷重の付与方向を、第1成型荷重の付与方向と反対向きとする。このため、第1成型荷重及び第2成型荷重それぞれの付与方向を同じ向きとする場合と比較して、ブランクの破断を、さらに起こりにくくすることができる。
【0016】
発明に係る紙蓋の製造方法によれば、第2成型荷重の付与方向を、第1荷重の付与方向と反対向きとするので、ブランクの破断等の発生を抑制しつつ、ブランクに、絞り成型を用いて、内嵌合部と外嵌合部とを形成することができる。
【0017】
発明に係る紙蓋の製造方法によれば、第2成型荷重の付与方向を、第1荷重の付与方向と反対とするので、ブランクの破断等の発生を抑制しつつ、ブランクに、しごき成型を用いて、内嵌合部と外嵌合部とを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法によって製造可能な紙蓋の一例を示す模式平面図である。図1(b)は、図1(a)中のIB-IB線に沿う模式断面図である。
図2図2は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法の一例を概略的に示す流れ図である。
図3図3(a)は、ブランクの一例を示す模式平面図である。図3(b)~図3(d)は、ブランクの工程ごとの状態を示す模式断面図である。図3(e)及び図3(f)は、成型荷重の付与方向を示す模式断面図である。
図4図4は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法に使用可能な加工機の一例を示す模式断面図である。
図5図5は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法の一例を示す模式断面図である。
図6図6(a)~図6(d)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法の一例を示す模式断面図である。
図7図7(a)~図7(d)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法の一例を示す模式断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、載置面及び押さえ面のそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、ドローダイ、ブランクホルダー、環状突起部、及びプランジャーのそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。
図10図10は、ドローダイ、ブランクホルダー、環状突起部、及び縮径部のそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
(紙蓋の一例)
図1(a)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法によって製造可能な紙蓋の一例を示す模式平面図、図1(b)は、図1(a)中のIB-IB線に沿う模式断面図である。
【0021】
図1(a)及び図1(b)に示すように、紙蓋1は、内嵌合部11と、外嵌合部12とを有している。内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれは、紙蓋1の周縁部OEPに設けられている。外嵌合部12は、内嵌合部11の外側に設けられている。内嵌合部11及び外嵌合部12は、紙蓋1の天面13から突出した形状を持つ。内嵌合部11の頂部と、外嵌合部12の頂部とは一体である。一体となった頂部を、本明細書では、頂部14という。本実施形態では、頂部14は、丸みを帯びた形状である。頂部14の下で、内嵌合部11と外嵌合部12との間には、内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれを囲壁とし、頂部14を底とした環状凹部15が設けられている。紙容器2は、環状凹部15に嵌合される。紙容器2は、例えば、紙コップである。内嵌合部11は、紙容器2の容器部内周面21と嵌合し、外嵌合部12は、紙容器2のカール部外周面21と嵌合する。また、紙蓋1の末端部分には、フランジ部16が設けられている。
【0022】
紙蓋1は、内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれを備えているので、内嵌合部11のみ、又は外嵌合部12のみを備えた紙蓋と比較して、紙容器2と、より強固に嵌合させることが可能である。
【0023】
(製造方法の一例)
図2は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法の一例を概略的に示す流れ図である。図3(a)は、ブランクの一例を示す模式平面図である。図3(b)~図3(d)は、ブランクの工程ごとの状態を示す模式断面図である。図3(e)及び図3(f)は、成型荷重の付与方向を示す模式断面図である。
【0024】
図2に示すように、紙蓋の製造方法は、概略、
ステップA:ブランクを加工機に取り付ける工程
ステップB:加工機においてブランクを成型加工する工程
ステップC:成型加工されたブランクを加工機から取り外す工程
の手順を含む。一実施形態に係る紙蓋の製造方法では、ステップBを、以下のように行う。
【0025】
まず、原紙から、例えば、図3(a)に示すように、平面から見て、円形状のブランク10を打ち抜く。次いで、図2、及び図3(b)に示すように、ステップST.1において、ブランク10の周縁領域10aを押さえる。周縁領域10aは、ブランク10の縁に仮想的に設定した領域である(図3(a))。周縁領域10aは、ブランク10において、押さえられている領域を指す。周縁領域10aの形状は、例えば環状である。なお、ブランク10を打ち抜く工程は、ステップST.1と同時に行うこともできる。この場合、後述するブランクホルダーが下降し、原紙からブランク10を打ち抜くと同時に、ブランク10の周辺領域10aを押さえる。
【0026】
次に、図2及び図3(c)に示すように、ステップST.2において、周縁領域10aを押さえながら、内嵌合部11を、ブランク10の中央領域10bに形成する。中央領域10bは、周縁領域10aのリングの内側に、仮想的に設定した領域である(図3(a))。中央領域10bは、ブランク10において、押さえられていない領域を指す。中央領域10bの形状は、例えば円状である。
【0027】
次に、図2及び図3(d)に示すように、ステップST.3において、周縁領域10aを押さえながら、外嵌合部12を、内嵌合部11が形成された中央領域10bに形成する。
【0028】
このような紙蓋の製造方法によれば、ブランク10に内嵌合部11を形成した後、ブランク10に外嵌合部12を形成する。このため、ブランク10に内嵌合部11と外嵌合部12とを同時に形成する場合と比較して、ブランク10の破断等が起こりにくくなる。さらに、ブランク10に外嵌合部12を形成した後、ブランク10に内嵌合部11を形成する場合と比較しても、ブランク10の破断等が起こりにくくなる。したがって、内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれを備えた紙蓋1を、歩留りよく製造することができる。
【0029】
図3(e)及び図3(f)に示すように、内嵌合部11を“絞り成型”又は“しごき成型”を用いて形成する場合、第1成型荷重F1がブランク10に付与される。同様に、外嵌合部12を“絞り成型”又は“しごき成型”を用いて形成する場合、第2成型荷重F2がブランク10に付与される。本明細書において、“絞り成型”とは、金型(後述するドローダイ110、ブランクホルダー120、ドローパンチ130、及びプランジャー140)間のクリアランスが、原紙、又はブランク10の紙厚と同等、もしくは紙厚より大きく設定され、そのようなクリアランスに、原紙又はブランク10が通されて成型されること、と定義する。また、“しごき成型”とは、金型間のクリアランスが、どこか1箇所でも、上記紙厚よりも小さく設定され、そのようなクリアランスに、原紙又はブランク10が通されて成型されること、と定義する。
【0030】
図3(e)に示すように、第2成型荷重F2の付与方向は、第1成型荷重F1の付与方向と反対向きとすることもできる。第2成型荷重F2の付与方向を、第1成型荷重F1の付与方向と反対向きとすれば、第1、第2成型荷重F1及びF2それぞれの付与方向を同じ向きとする場合(図3(f))と比較して、ブランク10の破断を、さらに起こりにくくすることができる。したがって、内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれを備えた紙蓋1の歩留りを、さらに向上させることが可能である。
【0031】
内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれは、ブランク10の周縁領域10aを押さえながら形成される。このため、紙蓋1の製造に“しわ抑え”を利用できる。一実施形態に係る紙蓋の製造方法は、内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれを、ブランク10を“しわ抑え”しつつ、“絞り成型”又は“しごき成型”を用いる。そして、一実施形態に係る紙蓋の製造方法によれば、“しわ抑え”しつつ、“絞り成型”又は“しごき成型”を用いて、内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれを形成したとしても、紙蓋1を、歩留りよく製造することができる。この利点は、第2成型荷重F2の付与方向を、第1成型荷重F1の付与方向と反対向きとすることで、さらによく得ることができる。
【0032】
以下、紙蓋の製造方法の一例を、さらに詳細に説明する。
<加工機の一例>
図4は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法に使用可能な加工機の一例を示す模式断面図である。
【0033】
加工機100は、ドローダイ110と、ブランクホルダー120と、ドローパンチ130と、プランジャー140と、を備えている。
【0034】
ドローダイ110は、プランジャーガイドホール111と、載置面112とを有する。プランジャーガイドホール111は、例えば、円形のホールである。載置面112は、プランジャーガイドホール111の外側に設けられている。載置面112は、ブランクホルダー120と向き合う。載置面112は、ブランク10を載置することが可能な面である。
【0035】
ブランクホルダー120は、パンチガイドホール121と、押さえ面122とを有する。パンチガイドホール121は、円形のホールである。押さえ面122は、パンチガイドホール121の外側に設けられている。押さえ面122は、載置面112と向き合う。ブランクホルダー120は、載置面112上に載置されたブランク10を押さえる。
【0036】
ドローパンチ130は、パンチガイドホール121内を、第1方向Z1及び第2方向Z2のそれぞれの方向に移動可能である。第1方向Z1及び第2方向Z2のそれぞれは、載置面112と交差、例えば、直交する。第2方向Z2は、第1方向Z1と反対向きである。ドローパンチ130の先端部分には、環状突起部131が設けられている。環状突起部131は、例えば、ドローパンチ130のパンチ面132から、囲壁状に突き出ている。これにより、ドローパンチ130の先端部分には、環状突起部131で囲まれ、パンチ面132を底とした窪み133が得られる。環状突起部131は、プランジャーガイドホール111の内周面と、クリアランスを設けて嵌合可能である。環状突起部131の先端は、曲面となっている。
【0037】
プランジャー140は、プランジャーガイドホール111内を、第1方向Z1及び第2方向Z2のそれぞれの方向に移動可能である。プランジャー140の先端部分には、縮径部141が設けられている。縮径部141の直径D1は、プランジャー140の基径部142の直径D2よりも小さい。縮径部141は、環状突起部131と、クリアランスを設けて嵌合可能である。
【0038】
加工機100は、例えばプレス機である。例えば、図4に示されるような加工機100を使用することで、ブランク10から、内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれを備えた紙蓋1を、製造することができる。
【0039】
図5図6(a)~図6(d)、及び図7(a)~図7(d)は、この発明の一実施形態に係る紙蓋の製造方法の一例を示す模式断面図である。図5図6(a)~図6(d)、及び図7(a)~図7(d)のそれぞれには、ブランク10の模式断面と加工機100の模式断面とが示されている。
【0040】
<ステップA>
図5に示すように、ブランク10を、ドローダイ110の載置面112上に載置する。なお、この説明では、載置面112の位置を基準位置RPとする。
【0041】
<ステップB>
次に、図6(a)に示すように、ブランクホルダー120を、第2方向Z2に移動させ、ブランク10の周縁領域10aを、ブランクホルダー120の押さえ面122で押さえる。
【0042】
図8(a)及び図8(b)は、ブランク10、ドローダイ、及びブランクホルダーのそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。図8(a)は、ブランク10が載置面112上に載置された状態を示し、図8(b)は、周縁領域10aが押さえ面122で押さえられた状態を示す。
【0043】
図8(b)に示すように、ブランク10を押さえ面で押さえた際、載置面112と押さえ面122との間には、第1クリアランス151が設けられる。第1クリアランス151の幅W1は、ブランク10の紙厚T10(図8(a))よりも、小さく設定される。これにより、ブランク10はつぶれ、ブランク10に“しわ抑え”を実施することが可能となる。なお、ブランクホルダー120には、“しわ抑え”のための荷重が与えられてもよく、第1クリアランス151の幅W1は、ブランク10の紙厚T10と同等、又は紙厚T10より大きくてもよい。
【0044】
次に、図6(b)に示すように、ドローパンチ130を、ブランク10へ向かう第2方向Z2に移動させる。これにより、ドローパンチ130は、例えば、環状突起部131の先端が、ほぼ基準位置RPに達するように下降される。これにより、環状突起部131の先端は、ブランク10の表面と接する、又は近接される。なお、図6(b)に示す状態では、ブランク10の中央領域10bは、ドローパンチ130と、プランジャー140との間に位置する。
【0045】
次に、図6(c)に示すように、プランジャー140を、ブランク10へ向かう第1方向Z1に移動させる。これにより、プランジャー140は、縮径部141の先端が、基準位置RPを超えるように上昇される。縮径部141が、例えば、基準位置RPを超えてくると、縮径部141は、窪み133の中へ進出する。これにより、ブランク10の中央領域10bは、窪み133の中に、縮径部141によって押し込まれる。このとき、ドローパンチ130の先端部分(環状突起部131)が曲面であり、かつ、プランジャー140の縮径部141の先端コーナー部も曲面(R加工されている)であると、ブランク10の中央領域10bをスムーズに押し込むことができる。押し込み量は、本実施形態では、約10mmである。なお、押し込み量は、紙蓋1のサイズや、紙蓋1の用途に応じて様々に変更される。
【0046】
このようにして、周縁領域10aを押さえ面122で押さえながら、中央領域10bを窪み133の中に押し込む。これにより、周縁領域10aを“しわ抑え”しつつ、内嵌合部11を、中央領域10bに“絞り成型”を用いて形成できる。
【0047】
図9(a)及び図9(b)は、ドローダイ110、ブランクホルダー120、環状突起部131、及びプランジャー140のそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。図9(a)は、押し込み前の状態を示し、図9(b)は、押し込み中の状態を示す。
【0048】
図9(b)に示すように、縮径部141と環状突起部131との間には、第2クリアランス152が設けられる。第2クリアランス152の幅W2は、ブランク10の紙厚T10(図8(a))と同等、もしくは紙厚T10よりも、小さく設定される(W2≦T10)。これにより、周縁領域10aを“しわ抑え”しつつ、内嵌合部11を、中央領域10bに“しごき成型”を用いて形成できる。
【0049】
内嵌合部11を、“絞り成型”、又は“しごき成型”を用いて形成する際には、プランジャー140に、第1成型荷重F1が与えられる。第1成型荷重F1の付与方向は、第1方向Z1である。第1成型荷重F1の値の1つの例は、例えば、約3kNである。第1成型荷重F1の大きさも、紙蓋1のサイズや、紙蓋1の用途に応じて様々に変更される。第1成型荷重F1は、荷重機(図示せず)からプランジャーに与えられる。荷重機の例としては、弾性体を介して荷重を対象物に与える荷重機を挙げることができる。そのような荷重機の例としては、エアーシリンダーを挙げることができる。エアーシリンダーは、弾性体としてエアーを含む。なお、荷重機は、プランジャー140を、第1方向Z1や、第2方向Z2に移動させる移動機構としても使用される。
【0050】
次に、図6(d)に示すように、ドローパンチ130を、ブランク10へ向かう第2方向Z2に移動させる。第2方向Z2は、第1方向Z1と反対向きである。これにより、ドローパンチ130は、環状突起部131の先端が、基準位置RPを超えるように下降される。ドローパンチ130は、ブランク10を、プランジャー140とともに、プランジャーガイドホール111の中へ押し込む。押し込み量は、本実施形態では、基準位置RPから約10mmである。なお、押し込み量は、紙蓋1のサイズや、紙蓋1の用途に応じて様々に変更される。
【0051】
このようにして、周縁領域10aを押さえ面122で押さえながら、中央領域10bをプランジャー140とともに、プランジャーガイドホール111の中に押し込む。これにより、周縁領域10aを“しわ抑え”しつつ、外嵌合部12を、中央領域10bに“絞り成型”を用いて形成できる。
【0052】
図10は、ドローダイ110、ブランクホルダー120、環状突起部131、及び縮径部141のそれぞれを部分的に拡大して示す模式断面図である。図10は、押し込み後、又は押し込み中の状態を示す。
【0053】
図10に示すように、環状突起部131とプランジャーガイドホール111との間には、第3クリアランス153が設けられる。第3クリアランス153の幅W3は、ブランク10の紙厚T10(図8(a))と同等、もしくは紙厚T10よりも、小さく設定される(W3≦T10)。これにより、周縁領域10aを“しわ抑え”しつつ、外嵌合部12を、中央領域10bに“しごき成型”を用いて形成できる。
【0054】
外嵌合部12を、“絞り成型”、又は“しごき成型”を用いて形成する際には、ドローパンチ130に、第2成型荷重F2が与えられる。第2成型荷重F2の付与方向は、第2方向Z2である。第2成型荷重F2の付与方向は、第1成型荷重F1の付与方向と反対向きである。第2成型荷重F2の値の1つの例は、例えば、約6.5kNである。第2成型荷重F2の大きさも、紙蓋1のサイズや、紙蓋1の用途に応じて様々に変更される。第2成型荷重F2は、荷重機(図示せず)からプランジャーに与えられる。荷重機の例としては、機械的に荷重を対象物に与えることが可能な荷重機を挙げることができる。そのような荷重機の例としては、サーボプレスを挙げることができる。サーボプレスは、サーボモータを含む。なお、荷重機は、ドローパンチ130を、第2方向Z2や、第1方向Z1に移動させる移動機構としても使用される。また、サーボモータを用いると、例えば、ドローパンチ130を、2段階で精密に下降制御することができる。第1段階は、基準位置RPまでの下降であり、第2段階は、基準位置RPを超え最終下降位置までのより精密な下降である。サーボモータによれば、ドローパンチ130を、最終下降位置で確実に停止させ、保持できる。
【0055】
第2成型荷重F2の大きさは、第1成型荷重F1よりも大きくしてもよい。この場合、プランジャー140がエアーシリンダー等の弾性体を含む移動機構もしくは荷重機で支えられていると、第2成型荷重F2と第1成型荷重F1との差分で、プランジャー140を押し下げることができる。このため、型締めした状態(中央領域10bをドローパンチ130とプランジャー140とで挟み込んだ状態)を維持したまま、環状突起部131の先端をプランジャーガイドホール111の中に押し込むことができる。しかも、プランジャー140は、ドローパンチ130で押し下げられるため、プランジャー140の位置制御が不要になる、という利点を得ることもできる。
【0056】
外嵌合部12を形成する際、載置面112と押さえ面122との間に周縁領域10aを残しながら、中央領域10bを、プランジャー140とともに、プランジャーガイドホール111の中に押し込むようにしてもよい。この場合、ブランク10の末端部分には、フランジ部16が形成される。ブランク10がフランジ部16を備えていると、ブランク10の取り外し工程(ステップC)において、以下のようなブランク10の取り外しを行うことができる。
【0057】
<ステップC>
次に、図7(a)に示すように、周縁領域10aを押さえ面122で押さえながら、プランジャー140を、第2方向Z2に移動させる。これにより、プランジャー140が、ブランク10から離脱される。ドローパンチ130は、最終下降位置で保持されている。このため、ドローパンチ130は、中央領域10bと、例えば接したままである。ドローパンチ130を最終下降位置で保持しておけば、プランジャー140をブランク10から離脱させても、ブランク10が落下することはない。
【0058】
次に、図7(b)に示すように、ドローパンチ130を最終下降位置で保持しながら、ブランクホルダー120を、第1方向Z1に移動させる。これにより、ブランクホルダー120が、ブランク10から離脱される。次いで、ブランクホルダー120を、周縁領域10aと押さえ面122との間に第4クリアランス154を設けて待機させる。
【0059】
次に、図7(c)に示すように、ドローパンチ130を、第1方向Z1に移動させる。このとき、このとき、環状突起部131は、環状凹部15に食い込んでいることが多い(環状凹部15については図1(b)又は図7(d)参照)。環状突起部131が環状凹部15に食い込んでいると、ブランク10は、ドローパンチ130にくっ付いた状態で第1方向Z1に移動する。
【0060】
次に、図7(d)に示すように、ドローパンチ130を、第1方向Z1にさらに移動させる。本実施形態では、ブランク10の末端部分にフランジ部16が形成されている(フランジ部16については図1(b)参照)。フランジ部16は、周縁領域10aである。このため、ドローパンチ130を、第1方向Z1にさらに移動させることで、周縁領域10aを、押さえ面122と再接触させることができる。環状突起部131は、周縁領域10a(フランジ部16)が押さえ面122によって支持されながら、環状凹部15から抜き出されていく。やがて、ブランク10は、ドローパンチ130から離脱する。これにより、ブランク10は、加工機100から取り外すことが可能な状態となる。
【0061】
このように、外嵌合部12を、載置面112と押さえ面122との間に周縁領域10aを残しながら、中央領域10bに形成すると、ブランク10には、周縁領域10aが最終的に残る。残された周縁領域10aを、押さえ面122と再接触させることで、たとえ、環状突起部131が環状凹部15に食い込んでいたとしても、ブランク10をドローパンチ130から簡単に取り外すことができる。ドローパンチ130には、例えば、ブランク10を離脱させるためのノックアウト等のブランク取り外し機構を設ける必要もない。
【0062】
このように一実施形態に係る紙蓋の製造方法に従うことにより、内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれを備えた紙蓋1が製造される。
【0063】
紙蓋1は、例えば、紙容器2の蓋として使用される。紙容器2には、例えば、液体が収容されることがある。このため、紙蓋1に使用される紙としては、例えば、疎水性の紙、撥水性の紙、表面が防水加工された紙、又は表面が撥水加工された紙等、耐水紙と呼ばれる紙がよい。また、紙の面に樹脂を積層したラミネート紙や、樹脂をコーティングしたコート紙等でもよい。ただし、紙蓋1に使用される紙は、消費者のニーズにあわせて適宜変更することができる。したがって、紙蓋1に使用される紙は、耐水紙、ラミネート紙、及びコート紙に限られるものではない。
【0064】
このような一実施形態によれば、内嵌合部11及び外嵌合部12のそれぞれを備えた紙蓋1を、歩留りよく製造することが可能な紙蓋の製造方法を提供できる。
【0065】
以上、この発明の一実施形態を説明したが、上記一実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一のものでもない。また、この発明は、上記一実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記一実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1:紙蓋
11:内嵌合部
12:外嵌合部
13:天面
14:頂部
15:環状凹部
16:フランジ部
2:紙容器
21:容器部内周面
22:カール部外周面
10:ブランク
10a:周縁領域
10b:中央領域
100:加工機
110:ドローダイ
111:プランジャーガイドホール
112:載置面
120:ブランクホルダー
121:パンチガイドホール
122:押さえ面
130:ドローパンチ
131:環状突起部
132:パンチ面
133:窪み
140:プランジャー
141:縮径部
142:基径部
151:第1クリアランス
152:第2クリアランス
153:第3クリアランス
OEP:周縁部
F1:第1成型荷重
F2:第2成型荷重
Z1:第1方向
Z2:第2方向
D1:縮径部141の直径
D2:基径部142の直径
T10:紙厚
W1:第1クリアランスの幅
W2:第2クリアランスの幅
W3:第3クリアランスの幅
RP:基準位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10