(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】荷電粒子フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20230522BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H01J37/147
H01J37/244
(21)【出願番号】P 2021163967
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2018520489の分割
【原出願日】2016-09-02
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509027021
【氏名又は名称】サーモ エレクトロン サイエンティフィック インストルメンツ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ローネマス アラン
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-103379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/147
H01J 37/244
H01J 37/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気デフレクタを備える荷電粒子フィルタであって、
前記磁気デフレクタが、前記磁気デフレクタの試料端から検出器端まで前記磁気デフレクタを通過する軸に沿う孔を有し、使用時に荷電粒子が前記孔を通過し、
前記磁気デフレクタが、間隙によって
前記軸と直交する高さ方向に隔てられた2つの磁石から形成され、各磁石が、
前記高さ方向及び前記軸と直交する幅方向に延びる直線中央区分、及び前記直線中央区分から前記幅方向に延びると共に対向する磁石に向けて前記高さ方向に延びて対向する磁石を向く内側の実質的な曲面を有
する2つの端部を有し、前記内側の実質的な曲面の各々の形状が
、前記高さ方向及び前記幅方向で規定される平面において三角関数で規定される、荷電粒子フィルタ。
【請求項2】
前記内側の実質的な曲面は、前記2つの磁石間の前記間隙の1/10~10倍の範囲内の曲率半径を有する、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項3】
前記内側の実質的な曲面は、前記2つの磁石間の前記間隙の1/2~2倍の範囲内の曲率半径を有する、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項4】
前記2つの磁石間の前記間隙が、1mm~20mmの範囲内である、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項5】
前記2つの磁石間の前記間隙が、4mm~10mmの範囲内である、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項6】
前記磁石が永久磁石である、請求項1に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項7】
前記永久磁石が、焼結ネオジム鉄ボロン(Nd-Fe-B)材料を含む、請求項6に記載の荷電粒子フィルタ。
【請求項8】
磁気デフレクタを含む荷電粒子フィルタであって、前記磁気デフレクタが、前記磁気デフレクタの試料端から検出器端まで前記磁気デフレクタを通過する軸に沿う孔を有し、使用時に荷電粒子が前記孔を通過し、前記磁気デフレクタが、間隙によって
前記軸と直交する高さ方向に隔てられた2つの磁石から形成され、各磁石が、
前記高さ方向及び前記軸と直交する幅方向に延びる直線中央区分、及び前記直線中央区分から前記幅方向に延びると共に対向する磁石に向けて前記高さ方向に延びて対向する磁石を向く内側の実質的な曲面を有
する2つの端部を有し、前記内側の実質的な曲面の各々の形状が
、前記高さ方向及び前記幅方向で規定される平面において三角関数で規定される、荷電粒子フィルタと、
前記磁気デフレクタの前記検出器端に面して前記軸上に位置付けられた粒子検出器と、を備える、粒子分析器。
【請求項9】
前記内側の実質的な曲面は、前記2つの磁石間の前記間隙の1/10~10倍の範囲内の曲率半径を有する、請求項8に記載の粒子分析器。
【請求項10】
前記内側の実質的な曲面は、前記2つの磁石間の前記間隙の1/2~2倍の範囲内の曲率半径を有する、請求項8に記載の粒子分析器。
【請求項11】
前記2つの磁石間の前記間隙が、1mm~20mmの範囲内である、請求項8に記載の粒子分析器。
【請求項12】
前記2つの磁石間の前記間隙が、4mm~10mmの範囲内である、請求項8に記載の粒子分析器。
【請求項13】
前記磁石が永久磁石である、請求項8に記載の粒子分析器。
【請求項14】
前記永久磁石が、焼結ネオジム鉄ボロン(Nd-Fe-B)材料を含む、請求項13に記載の粒子分析器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2015年10月28日出願の米国特許出願番号第14/925,204号、表題「CHARGED PARTICLE FILTER」に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、概して、荷電粒子フィルタに関し、具体的には、ミクロ分析システムにおける粒子検出器に関連して用いるための荷電粒子フィルタに関する。
【背景技術】
【0003】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、2011年11月1日にBewickに発行された米国特許第8,049,182号(以下「Bewick」)に記載されるように(しかしながら、組み込まれた参照における何らかが本出願における何らかの記述と矛盾する場合、本出願を優先する)、
図1を参照すると、電子顕微鏡(EM)100におけるX線分析の場合、X線スペクトルは、収束電子ビーム102によって衝突されたときに試料101によって放出された個々のX線光子のエネルギーを検知し測定することによって測定される。各々のX線光子は、エネルギー粒子であり、エネルギーは、通常は、X線検出器105を用いて電荷に変換される。試料に向かって散乱して戻る電子、いわゆる「後方散乱電子(backscattered electrons)」(BSE)103もまた、X線検出器105に向かって移動し得る。X線光子と同じエネルギーを有する電子は、X線検出器105と同量のエネルギーを付与するため、同様の信号電荷をもたらす。通常、検出器に向かって移動する電子の数は、X線光子の数よりも著しく多いため、電子に起因する信号は、測定されたX線スペクトルの大部分を表し、X線光子による寄与を圧倒する可能性がある。スペクトルにおけるBSEの寄与は、通常は、一次ビームエネルギーまでのすべてのエネルギー全体に及ぶ大きな背景である。X線分析は、原則的には、荷電粒子(例えば、電子またはイオン)の入射ビームを用いて、任意の装置で行われ得、本明細書における説明は、電子に言及しているが、任意の荷電粒子装置において同じ原理が適用される。
【0004】
X線検出器は、普通は、高い透過性をもってグリッド上に支持された、通常はポリマーの薄箔によって、EMの真空から隔離される。BSEは、箔またはグリッドに当たると、箔またはグリッド内の材料のX線信号特性を生成し、これらのX線信号は、記録されたX線スペクトルに対するスプリアス寄与として現れる。入射ビームの結果として、X線光子が全方向に放出され、X線検出器は、X線検出器内部のセンサの有効領域によって規定された円錐の範囲内にある光子のみを検出する。この円錐によって規定される立体角が高くなるほど、信号がさらに収集され、このことは、非常に望ましい。立体角は、X線検出器の有効領域を増大させることによって増大させることができるため、大きなセンサ及び大きな口径が有用である。
【0005】
また、立体角は、センサを試料に近接して位置させることによって増大させることもできる。しかしながら、センサが試料101に近接して位置されると、センサを包含するX線検出器105の管構造体が、電子顕微鏡100の最後の磁極片104と衝突する可能性がある。この衝突は、例示を目的として、
図1に点Aで示される。
【0006】
したがって、検出器管(
図1にBで示される)の外径を最小限にして、電子顕微鏡の円錐磁極片と衝突することなく、検出器面と試料との間の距離を最小限にすることが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、荷電粒子フィルタは、磁気デフレクタの試料端から検出器端までの磁気デフレクタを通過する孔の軸に沿った孔を有する磁気デフレクタを備え、使用時にその孔を通って荷電粒子が通過し、磁気デフレクタは、孔の周囲に位置付けられた2つの磁石から形成され、2つの磁石間に間隙を有し、2つの磁石は各々、直線中央区分及び2つの端部を有し、各端部が曲面を形成し、曲面は、2つの磁石間の間隙の1/10~10倍の範囲内の高さと、間隙の1/10~10倍の範囲内の幅とによって規定されたアスペクト比を有する。2つの磁石間の前記間隙は、1mm~20mmの範囲内、例えば4mm~10mmの範囲内の間隙であり得る。2つの磁石の少なくとも一方の端部の曲面は、円錐区分であり得る。いくつかの実施形態では、2つの磁石の各々の少なくとも一方の端部の曲面は、円錐区分であり得る。ある実施形態では、円錐区分は、2つの磁石間の間隙の1/10~10倍の範囲内の曲率半径、例えば、2つの磁石間の間隙の1/2~2倍の範囲内の曲率半径を有し得る。いくつかの他の実施形態では、2つの磁石の少なくとも一方の端部の曲面は、三角関数であり得る。ある実施形態では、2つの磁石の各々の両方の端部の曲面は、三角関数であり得る。
【0008】
別の実施形態では、荷電粒子フィルタは、磁気デフレクタの試料端から検出器端までの磁気デフレクタを通過する孔の軸に沿った孔を有する磁気デフレクタを備え、使用時にその孔を通って荷電粒子が通過し、磁気デフレクタは、孔の周囲に位置付けられた2つの磁石から形成され、2つの磁石間に間隙を有し、2つの磁石は各々、直線中央区分及び2つの端部を有し、少なくとも一方の端部が孔の周囲に斜面を形成する。いくつかの実施形態では、両方の端部は、孔の周囲に斜面を形成する。斜面は、0.1~10.0の範囲内の傾斜、例えば、0.5~2.0の範囲内の傾斜を有し得る。
【0009】
さらに別の実施形態では、荷電粒子フィルタは、荷電粒子フィルタ磁気デフレクタの試料端から検出器端までの磁気デフレクタを通過する孔の軸に沿った孔を有する磁気デフレクタを備え、使用時にその孔を通って荷電粒子が通過し、磁気デフレクタは、孔の周囲に位置付けられた2つの磁石から形成され、2つの磁石間に間隙を有し、2つの磁石は各々、直線中央区分及び2つの端部を有し、各端部が孔の周囲に少なくとも2つの曲面を形成する。少なくとも2つの曲面は、円錐区分、三角関数、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0010】
なお別の実施形態では、粒子分析器は、上述のような荷電粒子フィルタと、磁気デフレクタの検出器端に面して軸上に位置付けられた粒子検出器とを含む。
【0011】
本発明は、多くの利点を有し、例えば、検出器が、電子顕微鏡の円錐磁極片と衝突することなく、試料に近接して位置されることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】走査型電子顕微鏡における、試料の付近の構成要素の従来技術の配置の概略図である。
【
図2A】例示的な荷電粒子フィルタの側面図の概略図である。
【
図2B】例示的な荷電粒子フィルタの正面斜視図の概略図である。
【
図3A】例示的な荷電粒子フィルタの、円筒曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図3B】例示的な荷電粒子フィルタの、楕円曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図3C】例示的な荷電粒子フィルタの、放物曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図3D】例示的な荷電粒子フィルタの、双曲曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図3E】例示的な荷電粒子フィルタの、対照的な円筒曲面を含む磁石の側面斜視図の概略図である。
【
図3F】例示的な荷電粒子フィルタの、余弦関数によって記述される曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図3G】例示的な荷電粒子フィルタの、正接関数によって記述される曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図3H】例示的な荷電粒子フィルタの、正割関数によって記述される曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図3I】例示的な荷電粒子フィルタの、三次関数によって記述される曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図3J】例示的な荷電粒子フィルタの、孔に対して凸状である曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図4】例示的な荷電粒子フィルタの、非対称な曲面を含む磁石の側面斜視図の概略図である。
【
図5】例示的な荷電粒子フィルタの、斜面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図6】例示的な荷電粒子フィルタの、2つの曲面を含む磁石の一端部の側面斜視図の概略図である。
【
図7】例示的な粒子分析器の側面図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
同様の符号は、図のいくつかの図全体を通して対応する部分を指す。
【0014】
本明細書中の本発明の説明において、別段、黙示的または明示的に理解または記載されない限り、単数で現れる単語は、その複数の相手方を包含し、複数で現れる単語は、その単数の相手方を包含することが理解される。さらに、別段、黙示的または明示的に理解または記載されない限り、本明細書に記載した任意の所与の成分または実施形態について、その成分に対して列挙された可能性のある候補または代替物のいずれかが、概して、個々にまたは互いに組み合わせて使用され得ることが理解される。さらに、本明細書で示した図は、必ずしも縮尺通りに描画されておらず、要素のいくつかは、単に本発明を明確にするために描画されている場合があることが理解されるべきである。また、対応するか、または類似する要素を示すために、種々の図の中で符号が繰り返されている場合がある。さらに、別段、黙示的または明示的に理解または記載されない限り、かかる候補または代替物のいかなる列挙も、単なる図示であり、限定ではないことが理解されるだろう。加えて、別段の表示がない限り、明細書及び特許請求の範囲中に使用された材料、構成要素、反応状態等の分量を明示する数は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。
【0015】
したがって、反対の表示がなされない限り、明細書及び添付の特許請求の範囲中に記載された数的パラメータは、本明細書中に提示された主題事項により得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低でも、特許請求の範囲に対する等価物の原則の適用を限定することを企図しないように、各数的パラメータは、少なくとも、報告された有意な数字の数に照らして、かつ通常の丸め技術を適用することにより、解釈されるべきである。本明細書中に提示された主題事項の広範な範囲を記載している数値範囲及びパラメータは近似値であるにも関わらず、具体的な例に記載された数値は、できる限り精確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、本質的に、それぞれの試験的測定において見られた標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含有している。
【0016】
図2Aに示される一実施形態では、荷電粒子フィルタ200は、磁気デフレクタ210の試料端230から検出器端240までの磁気デフレクタ210を通過する孔220の軸に沿った孔220を有する磁気デフレクタ210を含み、電子顕微鏡100での使用時にその孔220を通って荷電粒子が通過する。矩形の磁石を用いたX線検出器105との比較が、
図2Aにさらに示される。試料101の平面に対する孔220の軸が、孔106の軸と同じ角度(30°)である状態で、磁気デフレクタ210の検出器端240から試料101までの距離Cは、最後の磁極片104と衝突することなく、検出器104の面と試料101との間の距離Eにおいて、検出器105から試料101の平面までの対応する距離Dを下回り、これは、上述の理由から非常に有利である。
【0017】
図2Bを参照すると、荷電粒子フィルタ200の磁気デフレクタ210は、孔220の周囲に位置付けられた2つの磁石250及び260から形成される。原則的に、磁石は、電磁石であり得るが、本用途については、永久磁石がより実用的であると考えられる。2つの磁石250及び260には、多種多様な磁性材料、例えばDexter Magnetic Technology(Elk Grove Village,IL)より入手可能な、最大エネルギー積50MGOeを有する焼結ネオジム鉄ボロン(Nd-Fe-B)等が好適である。
【0018】
図2Bを再度参照すると、それぞれ、2つの磁石250及び260の直線区分280及び281は、孔220に対して対照的に位置し、各々が2つの端部285、295及び286、296を有し、各端部は、孔220の周囲に曲面を形成し、2つの磁石250と260との間に間隙270を有する。直線中央区分280及び281は、通常は、試料101の平面に対して平行に向けられる(
図2A参照)。2つの磁石250と260との間の間隙270は、1mm~20mmの範囲内であり得、例えば4mm~10mmの範囲内の間隙であり得る。いくつかの実施形態では、間隙270は、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mm、7.0mm、7.5mm、8.0mm、8.5mm、9.0mm、9.5mm、10.0mm、10.5mm、11.0mm、11.5mm、12.0mm、12.5mm、13.0mm、13.5mm、14.0mm、14.5mm、15.0mm、15.5mm、16.0mm、16.5mm、17.0mm、17.5mm、18.0mm、18.5mm、19.0mm、または19.5mmの間隙であり得る。特定の実施形態では、間隙270は、6.6mmである。
【0019】
複数の形状及び形状の組み合わせが、それぞれ、2つの磁石250及び260の端部285、295、及び286、296の曲面に好適である。以下に説明された曲面の説明及び関連する図面において、明確にするために磁石の一端部が示されている場合、磁石の他端部は、本明細書で説明された曲面のいずれか1つから形成されることができ、4つの端部285、295及び286、296は、特に断らない限り、互いに異なる曲面から形成されることができる。
図3Aに示されるように、曲面310は、2つの磁石250と260との間の間隙270(
図2Bに示される)の1/10~10倍の範囲内の高さ315と、間隙270の1/10~10倍の範囲内の幅325とによって規定されたアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、それぞれ、2つの磁石250及び260の各々の一端部285、295または286、296の曲面は、円錐区分、例えば
図3Aに示されるような円筒曲面310、
図3Bに示されるような楕円曲面320、
図3Cに示されるような放物曲面330、または
図3Dに示されるような双曲曲面340である。曲面は、
図3A~3Dに示されるように、直線中央区分280に対して接する(正接)得るか、または直線中央区分からオフセットされることができる(図示せず)。いくつかの実施形態では、それぞれ、2つの磁石250及び260の各々の両方の端部285、295、及び286、296の曲面は、上述のような円錐区分であり得る。
【0020】
ある実施形態では、円筒曲面310は、2つの磁石250及び260の間の間隙270の1/10~10倍の範囲内の曲率半径、例えば、2つの磁石250及び260間の間隙270の1/2~2倍の範囲内の曲率半径を有する。上述の特定の実施形態では、両端部285及び295の円筒曲面310は、
図3Eに示されるように、曲率半径12mm(及び、上述のように、対応する間隙6.6mm)を有する。
【0021】
ある実施形態では、それぞれ、2つの磁石250及び260の一端部285、295または286、296の曲面は、三角関数によって記述され、例えば曲面350は、
図3Fに示されるように余弦関数によって記述され、曲面360は、
図3Gに示されるように正接関数によって記述され、曲面370は、
図3Hに示されるように正割(セカント)関数によって記述され、それらのそれぞれの逆関数(正弦、余接、余割)によって記述される。いくつかの実施形態では、それぞれ、2つの磁石250及び260の両端部285、295、及び286、296の曲面は、上述のような三角関数によって記述される。いくつかの他の実施形態では、
図3Iに示されるように、それぞれ、2つの磁石250及び260の一端部または両端部285、295、及び286、296の曲面380は、三次関数によって記述される。ある実施形態では、一端部または両端部の曲面は、2つ以上の関数、例えば、フーリエ級数正弦及び余弦関数、またはべき級数関数(ax+bx
2+cx
3+…)の和によって記述される。
図3Jに示される別の実施形態では、曲面390は、孔220に対して凸状である。
【0022】
いくつかの実施形態では、
図4に示されるように、それぞれ、2つの磁石250及び260の各々の一方の端部285、286の曲面410は、それぞれ、2つの磁石250及び260の各々の他方の端部295、296の曲面420とは異なる関数によって記述される。2つの曲面410及び420は、上述の曲面の任意の組み合わせによって記述されることができる。
【0023】
磁気デフレクタを形成する2つの磁石の端部の表面は、複数の表面から形成されることができる。別の実施形態では、荷電粒子フィルタは、上述のような磁気デフレクタを含むが、2つの磁石250及び260が各々、
図5に示されるように、孔の周囲に斜面510を形成する一端部285、296または286、296を有することを除く。いくつかの実施形態では、両端部285、295、及び286、296が、孔の周囲に斜面510を形成する。斜面510は、0.1~10.0の範囲内の傾斜、例えば0.5~2.0の範囲内の傾斜を有し得る。いくつかの実施形態では、斜面510は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、または10.0の傾斜を有し得る。
【0024】
さらに別の実施形態では、荷電粒子フィルタは、上述のような磁気デフレクタを含むが、2つの磁石250及び260が各々、
図6に示されるような、孔の周囲に2つの曲面610及び620を形成する一端部285、295、または286、296を有することを除く。2つの曲面610及び620は、円錐区分、三角関数、または上述の曲面の任意の組み合わせを含み得る。また、3つ以上の曲面区間を含み、上述のような斜面区間を含む曲面が好適である。
【0025】
図7に示されるなお別の実施形態では、粒子分析器700は、上述のような荷電粒子フィルタ200と、磁気デフレクタ210の検出器端240に面して軸上に位置付けられた粒子検出器710とを含む。粒子分析器700は、ハウジング720、磁束帰還部730、及びコリメータ740をさらに含む。多種多様なX線検出器、例えば、PNDetector(ドイツ、ミュンヘン)から入手可能な粒子検出器710が好適である。
他の実施形態
【0026】
いくつかの実施形態が説明されてきた。それにもかかわらず、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな修正がなされてもよいことが理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の請求項の範囲内である。以下に本発明の実施態様を記載する。
(実施態様1)磁気デフレクタを備える荷電粒子フィルタであって、
前記磁気デフレクタが、前記磁気デフレクタの試料端から検出器端まで前記磁気デフレクタを通過する軸に沿う孔を有し、使用時に荷電粒子が前記孔を通過し、
前記磁気デフレクタが、前記孔の周囲に位置付けられた2つの磁石から形成され、前記2つの磁石間に間隙を有し、
前記2つの磁石が各々、直線中央区分及び2つの端部を有し、
前記2つの磁石の前記直線中央区分は、前記軸と直交する高さ方向で互いに対向すると共に、前記高さ方向及び前記軸と直交する幅方向に延びており、
各磁石の前記2つの端部は、前記直線中央区分から前記幅方向に延びると共に、対向する磁石に向けて前記高さ方向に延びており、
各端部が、前記2つの磁石の前記直線中央区分間の前記間隙の1/10~10倍の範囲内の前記直線中央区分から前記高さ方向への高さと、前記間隙の1/10~10倍の範囲内の前記直線中央区分から前記幅方向への幅と、によって規定されたアスペクト比を有する表面を有する、荷電粒子フィルタ。
(実施態様2)前記表面が斜面を有する、実施態様1に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様3)前記斜面が、0.1~10.0の範囲内の傾斜を有する、実施態様2に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様4)前記斜面が、0.5~2.0の範囲内の傾斜を有する、実施態様3に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様5)両方の端部が、前記孔の周囲に斜面を形成する、実施態様2に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様6)前記斜面が、0.1~10.0の範囲内の傾斜を有する、実施態様5に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様7)前記斜面が、0.5~2.0の範囲内の傾斜を有する、実施態様6に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様8)前記表面が曲面を有する、実施態様1に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様9)前記2つの磁石の各々の少なくとも一方の端部の曲面が、円錐区分である、実施態様8に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様10)前記円錐区分が、前記2つの磁石間の前記間隙の1/10~10倍の範囲内の曲率半径を有する、実施態様9に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様11)前記円錐区分が、前記2つの磁石間の前記間隙の1/2~2倍の範囲内の曲率半径を有する、実施態様10に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様12)前記2つの磁石の各々の両方の端部の曲面が、円錐区分である、実施態様9に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様13)前記円錐区分が、前記2つの磁石間の前記間隙の1/10~10倍の範囲内の曲率半径を有する、実施態様12に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様14)前記円錐区分が、前記2つの磁石間の前記間隙の1/2~2倍の範囲内の曲率半径を有する、実施態様13に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様15)前記2つの磁石の各々の少なくとも一方の端部の曲面が、前記高さ方向及び前記幅方向で規定される平面において三角関数で規定される、実施態様8に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様16)前記2つの磁石の各々の両方の端部の曲面が、前記高さ方向及び前記幅方向で規定される平面において三角関数で規定される、実施態様15に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様17)前記2つの磁石間の前記間隙が、1mm~20mmの範囲内である、実施態様8に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様18)前記2つの磁石間の前記間隙が、4mm~10mmの範囲内である、実施態様17に記載の荷電粒子フィルタ。
(実施態様19)磁気デフレクタを含む荷電粒子フィルタであって、前記磁気デフレクタが、前記磁気デフレクタの試料端から検出器端まで前記磁気デフレクタを通過する軸に沿う孔を有し、使用時に荷電粒子が前記孔を通過し、前記磁気デフレクタが、前記孔の周囲に位置付けられた2つの磁石から形成され、前記2つの磁石間に間隙を有し、前記2つの磁石が各々、直線中央区分及び2つの端部を有し、前記2つの磁石の前記直線中央区分は、前記軸と直交する高さ方向で互いに対向すると共に、前記高さ方向及び前記軸と直交する幅方向に延びており、各磁石の前記2つの端部は、前記直線中央区分から前記幅方向に延びると共に、対向する磁石に向けて前記高さ方向に延びており、各端部が、前記2つの磁石の前記直線中央区分間の前記間隙の1/10~10倍の範囲内の前記直線中央区分から前記高さ方向への高さと、前記間隙の1/10~10倍の範囲内の前記直線中央区分から前記幅方向への幅と、によって規定されたアスペクト比を有する表面を有する、荷電粒子フィルタと、
前記磁気デフレクタの前記検出器端に面して前記軸上に位置付けられた粒子検出器と、を備える、粒子分析器。
(実施態様20)前記表面が曲面を有する、実施態様19に記載の粒子分析器。
(実施態様21)前記2つの磁石の少なくとも一方の端部の曲面が、円錐区分である、実施態様20に記載の粒子分析器。
(実施態様22)前記円錐区分が、前記2つの磁石間の前記間隙の1/10~10倍の範囲内の曲率半径を有する、実施態様21に記載の粒子分析器。
(実施態様23)前記円錐区分が、前記2つの磁石間の前記間隙の1/2~2倍の範囲内の曲率半径を有する、実施態様22に記載の粒子分析器。
(実施態様24)前記2つの磁石の少なくとも一方の両方の端部の曲面が、円錐区分である、実施態様21に記載の粒子分析器。
(実施態様25)前記円錐区分が、前記2つの磁石間の前記間隙の1/10~10倍の範囲内の曲率半径を有する、実施態様24に記載の粒子分析器。
(実施態様26)前記円錐区分が、前記2つの磁石間の前記間隙の1/2~2倍の範囲内の曲率半径を有する、実施態様25に記載の粒子分析器。
(実施態様27)前記2つの磁石の少なくとも一方の端部の曲面が、前記高さ方向及び前記幅方向で規定される平面において三角関数で規定される、実施態様20に記載の粒子分析器。
(実施態様28)前記2つの磁石の各々の両方の端部の曲面が、前記高さ方向及び前記幅方向で規定される平面において三角関数で規定される、実施態様27に記載の粒子分析器。
(実施態様29)前記2つの磁石間の前記間隙が、1mm~20mmの範囲内である、実施態様20に記載の粒子分析器。
(実施態様30)前記2つの磁石間の前記間隙が、4mm~10mmの範囲内である、実施態様29に記載の粒子分析器。