(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】微細構造体を製造するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
A61M37/00 505
(21)【出願番号】P 2021513402
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2019073554
(87)【国際公開番号】W WO2020053043
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】102018215324.8
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】クーリック,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】フェール,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】エルホーファー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シェール,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ドマシュ,セバスチャン
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-517295(JP,A)
【文献】特開2013-162982(JP,A)
【文献】特開2000-233416(JP,A)
【文献】特開2016-158931(JP,A)
【文献】特開2017-209156(JP,A)
【文献】特開2012-200572(JP,A)
【文献】特開2011-078617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
B29C 39/00
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造体を製造するための装置であって、
ガス伝達性を有する少なくとも1つの型板を備えており、
前記少なくとも1つの型板は、微細構造体を製造するために、好ましくは円錐状の少なくとも1つの凹部を有しており、
真空が前記少なくとも1つの型板の少なくとも一側に
、前記少なくとも1つの型板の少なくとも1つの凹部に少なくとも対向して適用されるように真空を生成するために前記少なくとも1つの型板に連結されている少なくとも1つの真空生成装置と、
前記少なくとも1つの型板に連結されている真空チャンバと
を更に備えており、
前記真空チャンバは少なくとも1つの真空チャンバ開口部を有しており、
前記少なくとも1つの真空チャンバ開口部を閉じるための少なくとも1つのバルブを更に備えて
おり、
前記少なくとも1つのバルブは自閉式であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記真空チャンバは、好ましくは外部で生成された真空を前記真空チャンバ自体で少なくとも一時的に維持するように構成されていることを特徴とする請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの真空チャンバ開口部は、好ましくは真空を前記真空チャンバに生成するためのポンプに連結すべく構成されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの真空生成装置を前記型板に選択的に連結するための連結装置を更に備えていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記真空生成装置を前記真空チャンバに選択的に連結するための連結装置を更に備えていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記真空生成装置を前記少なくとも1つの真空チャンバ開口部に選択的に連結するための連結装置を更に備えていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのバルブは、好ましくは前記真空チャンバ内の既存の圧力比が維持されるように構成されていることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのバルブは弾性の閉鎖体であり、前記閉鎖体は、穿孔された後に好ましくは前記閉鎖体自体で密閉することを特徴とする請求項1~
7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのバルブは弾性プラグであることを特徴とする請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの型板に連結されている、好ましくは前記少なくとも1つの型板と一体に形成されている型を更に備えていることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記型は、前記真空チャンバに連結するためのフランジを有していることを特徴とする請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの型板及び/又は前記型はプラスチック材料、好ましくはシリコーンを有していることを特徴とする請求項
10又は
11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの型板及び/又は前記型はプラスチック材料、好ましくはシリコーンから形成されていることを特徴とする請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
前記真空チャンバはフランジ及び/又はねじ山を有していることを特徴とする請求項1~
11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
前記型及び前記真空チャンバを連結するための連結要素を更に備えていることを特徴とする請求項
10~
13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
前記連結要素は、前記型及び前記真空チャンバを螺合して連結することを特徴とする請求項
15に記載の装置。
【請求項17】
前記連結要素は一種のキャップナットを有していることを特徴とする請求項
15又は
16に記載の装置。
【請求項18】
前記キャップナットは、前記型を覆って配置されて前記真空チャンバに螺合して連結されるようになしてあることを特徴とする請求項
17に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの型板を支持するためのガス伝達性の支持要素を更に備えていることを特徴とする請求項1~
16のいずれか1つに記載の装置。
【請求項20】
前記支持要素は、前記少なくとも1つの型板に平面的に接するようになしてあることを特徴とする請求項
19に記載の装置。
【請求項21】
前記微細構造体は、マイクロニードルであることを特徴とする請求項1~
20のいずれか1つに記載の装置。
【請求項22】
微細構造体を製造するためのハンドリングユニット、好ましくは筒状のハンドリングユニットであって、
請求項1~
18のいずれか1つに記載の装置を備えており、
前記ハンドリングユニットは、好ましくは製造工程全体で、製造される微細構造体のための支持要素として機能することを特徴とするハンドリングユニット。
【請求項23】
前記微細構造体は、マイクロニードルであることを特徴とする請求項
22に記載のハンドリングユニット。
【請求項24】
ガス伝達性を有する型板に充填するための方法であって、
前記型板は、微細構造体を製造するための少なくとも1つの凹部を有しており、
前記型板に連結されて、少なくとも1つの真空チャンバ開口部を有する真空チャンバと、前記少なくとも1つの真空チャンバ開口部を閉じるための少なくとも1つのバルブとが設けられており、
前記少なくとも1つのバルブは自閉式であり、
前記方法は、
- 充填する少なくとも1つの、好ましくは液体の物質を前記型板に供給する工程、及び
- 前記型板の少なくとも1つの側で
、前記型板の少なくとも1つの凹部に少なくとも対向して真空を生成する工程
を有し、
真空を生成する前記工程を、前記物質を前記型板に供給する工程前、前記物質を前記型板に供給する工程後及び/又は前記物質を前記型板に供給する工程中に行うことを特徴とする方法。
【請求項25】
- 真空を生成するために、前記真空チャンバの内部への連結部分を介して前記真空チャンバの内容物を排出する工程、及び/又は
- 大気圧又は正圧を発生させるために、前記真空チャンバの内部への連結部分を介して前記真空チャンバに充填する工程
を有することを特徴とする請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
真空を生成するために真空生成装置を前記型板に、好ましくは選択的に連結することを特徴とする請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
真空を生成するために真空生成装置を前記真空チャンバに、好ましくは選択的に連結することを特徴とする請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
- 前記真空チャンバの内部への連結部分を生じさせるために、前記バルブを貫通する工程を有することを特徴とする請求項
24~
27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
前記バルブは弾性を有し、
前記バルブを貫通する際に、弾性のバルブを穿孔することを特徴とする請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
請求項
24~
29のいずれか1つに記載の方法の特徴を有する、微細構造体を製造するための方法であって、
請求項1~
21のいずれか1つに記載の装置、又は請求項
22又は
23に記載のハンドリングユニットを使用することを特徴とする方法。
【請求項31】
前記微細構造体は、マイクロニードルであることを特徴とする請求項
30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造体、特にマイクロニードルを製造するための装置に関する。更に本発明は、微細構造体を製造するためのこのような装置を備えた、微細構造体、特にマイクロニードルを製造するためのハンドリングユニット、好ましくは筒状のハンドリングユニットに関する。更に本発明は、透過性、特にガス伝達性の型板に充填するための方法に関する。最後に、本発明は、透過性の型板に充填するための方法の工程を有する、微細構造体、特にマイクロニードルを製造するための方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
製造する微細構造体は、特にマイクロニードルアレイに配置されている、好ましくはマイクロニードルである。マイクロニードルは、経皮投与とも称される、活性剤を皮膚に直接投与する方法に使用される。このために、マイクロニードルは、外皮層を単に貫通するが、好ましくは神経及び血管に達することはなく、従って神経及び血管を傷つけないような長さを有する。しかしながら、マイクロニードルは上皮層に小さな穴を作るため、活性剤の摂取量が、活性剤を純粋に外部から適用する場合と比較すると大幅に増加する。
【0003】
例えば、支持面に取り付けられた複数のマイクロニードルを有するマイクロニードルアレイは、短期投与又は長期適用に使用され得る。活性剤をマイクロニードルから皮膚に投与する好ましいモードは、活性剤を含むマイクロニードルの一部又はマイクロニードル全体が溶解するか又は放出され、ひいては皮膚を介して身体に取り込まれることである。このために、マイクロニードルは、特に水溶性の物質又は材料から少なくとも部分的に製造されている。マイクロニードルによる活性剤の直接投与に加えて、活性剤をこのようにして皮膚に投与することを可能にするために、マイクロニードルが細孔若しくは空隙を有するか、又は中空針として構成されることが更に可能である。更に、マイクロニードル自体が活性剤を含まないことが可能である。この場合、活性剤をマイクロニードルの外側に外部から適用することができるか、又は、例えば、このような活性剤をマイクロニードルにより投与するためにマイクロニードルを皮膚から外した後、活性剤を含む物質を皮膚の該当部分に適用することができる。
【0004】
マイクロニードルは、特にセラミック材料、金属又はポリマーから形成され得る。一又は複数の活性剤成分がこれらの材料に追加されてマイクロニードルの製剤になることが好ましい。
【0005】
治療用又は診断用のマイクロニードル又はマイクロニードルアレイを製造する先行技術の方法は、十分な品質及び/又は数の製造に適しておらず、又は限られた範囲しか適していない。
【0006】
マイクロニードルを製造するための一般的な方法では、例えばシリコーンから形成されている型を使用してマイクロニードル又はマイクロニードルアレイ全体を成型する。特に、型と型に供給される主に液体の製剤との疎水性の特性により、このような製造方法には多くの問題が生じる。一方、供給される製剤は型の型板に入らないか又は完全に入るわけではなく、ひいては型板を完全に満たすわけではない。更に、成型する製剤に空気含有物が生じる、及び/又は空気含有物が製剤と型の型板との間に生じる。その結果、例えば欠陥のあるマイクロニードルになり、誤った計量の投与により医療ミスに繋がり得る。
【0007】
本発明は、微細構造体の製造を改良した、微細構造体を製造するための装置、微細構造体を製造するためのハンドリングユニット、透過性の型板に充填するための方法、及び微細構造体を製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、請求項1,14,15及び19の特徴によって達成されている。
【0009】
本発明に係る微細構造体を製造するための装置は、特にマイクロニードルを製造するための装置であり、マイクロニードルは、好ましくはマイクロニードルアレイとして構成されている。好ましい実施形態によれば、微細構造体が本質的に成型によって製造され得るように、この装置は成型装置である。製造する微細構造体の材料、ひいては使用する成型材料は、好ましくはセラミック材料及び/又は金属及び特に好ましくはポリマー、例えばPVP 若しくはPLA である。例えば砂糖などの他の材料を更に使用できる。製造する微細構造体は、少なくとも部分的に溶解可能な、好ましくは水溶性の活性剤含有ニードルであることが特に好ましい。例えば、溶解可能なポリマーマイクロニードル又は溶解可能なポリマーマイクロニードルアレイの製造が好ましい。従って、装置は、上記の微細構造体を製造するように特に構成されている。
【0010】
装置は、少なくとも1つの透過性の型板を備えている。ここで、透過性とは、特にガス透過性又はガス伝達性を意味する。他方、型板は特に液体非透過性を有する。特に、透過性の代わりにガス伝達性又は空気伝達性という用語を使用することができる。従って、型板に供給される液体成型材料は、例えば型板を通過できないが、例えば空気含有物などのガスは型板を通過できる。透過性は、型板の孔、特に微小孔によって更に実現され得る。型板はマスター型であり、つまり、製造する微細構造体の外形の反対である。
【0011】
型板は、微細構造体を製造するための少なくとも1つの凹部を有している。従って、少なくとも1つの凹部は、例えば成型材料が充填され得る一種の開口部である。凹部内に製造される微細構造体が特に先の尖った円錐形状を有するように、凹部が本質的に円錐状の構成を有することが特に好ましい。特に、円錐状の凹部の基部領域は、型板の基部領域からテーパ状に延びている。円錐形状の代わりに又は円錐形状に加えて、特にピラミッド形状が更に可能である。従って、複数の凹部を有する型板にピラミッド状及び/又は円錐状の凹部が存在することが更に可能である。成型材料が供給されるとき、例えばマイクロアレイが製造されるように、型板が複数の、好ましくは同様の凹部を有することが好ましい。型板は凸状部分を更に有することができ、そのため、凹部は、定義によると凸状部分に隣り合って配置される。言い換えれば、型板は、複数の山及び/又は谷又はクレータと同様の一種の構造を有することができる。
【0012】
更に装置は、型板に連結されている真空生成装置を備えている。真空が型板の少なくとも1つの側に特には直接適用されるように、真空生成装置は型板に連結されている。型板の少なくとも1つの凹部に少なくとも対向して真空が適用されるように、真空生成装置が型板に連結されていることが特に好ましい。真空が型板の後側、つまり成型材料を受けない側に適用されることが好ましい。ここで、このような真空は、型板全体が、例えば真空炉などの真空チャンバ内に配置されることを特に意味しないが、直接的な型板の少なくとも1つの対応する側での直接、特に選択的な負圧発生を好ましくは意味する。例えば、これは、チャンバ又はチャンバのような装置、例えば管が周囲に向かって緊密に型板の対応する少なくとも1つの側に接して、負圧がこのチャンバ内で優勢になることにより実現され得る。ここで使用する定義によれば、真空は完全な真空である必要はなく、大気圧より低い圧力で十分である。従って、真空は負圧を表す。言い換えれば、真空は、真空が適用される領域と周囲領域との負圧の差を表す。例えば、(地球の)大気圧が主流の環境では、真空は大気圧より低い圧力である。少なくとも△0.8 bar 、特に好ましくは少なくとも△0.9 bar の差が真空圧と周囲との間に存在することが好ましい。例えば、大気圧が主流の環境では、真空は0.2 bar 未満、特に好ましくは0.1 bar 未満の圧力である。微細構造体を製造するための装置、ひいては特に装置の全ての外部部品が筒形状、特に円筒形状を有することが好ましい。
【0013】
好ましい態様によれば、装置は型板に連結されている真空チャンバを備えている。ここで、真空チャンバが真空チャンバ自体で真空を少なくとも一時的に維持することができるように、真空チャンバは特に構成されている。ここで、真空チャンバ内の真空が、例えば真空ポンプなどの外部装置によって生成されるか、又は生成されていることが好ましい。例えば真空ポンプなどのこの外部装置への連結を中断又は切断することが好ましい。外部装置と真空チャンバとの連結を切断するにもかかわらず、真空チャンバ内で生成される真空が少なくとも本質的に維持されることが好ましい。しかしながら、真空が維持されるとき、例えば型板による空気の取り込み及び/又は漏れなどにより、真空の小さな、特に連続的な減少が生じ得る。真空チャンバと外部装置との連結の中断は、真空チャンバを外部装置から分離することによって実現されることが好ましい。
【0014】
特に、真空チャンバは型板の少なくとも1つの側、好ましくは1つの側のみに直接連結されている。この側は、凹部と反対の型板の側であることが好ましい。真空チャンバと型板との連結が特に周囲に対して緊密であるため、真空チャンバと型板との連結箇所の密閉が実現され、特に連結部分と周囲とのガス非透過性が存在する。例えば、型板は超音波溶接又は接着によって真空チャンバに連結され得る。型板及び真空チャンバが、一体に形成されるとも言われる、1つの部品として形成されることが更に可能である。ここで、シリコーンの型板に隣接しているポリマーの真空チャンバが、例えば複数部品射出成形によって製造されるように、一体構成が実現され得る。真空チャンバが閉じられていることが好ましい。例えば、型板及び真空チャンバが一体に形成される、及び/又は同一材料から形成されることが更に可能である。
【0015】
このような一体構成及び/又は同一材料の構成では、真空チャンバが、少なくとも△3bar 、特に少なくとも△4bar の真空チャンバの内部と周囲との圧力差に、崩壊することなく耐え得るように構成されていることが好ましい。例えば、真空チャンバのこのような安定した構成が、真空チャンバの壁の補強構造、例えば金属構造により実現され得る。真空チャンバのあらゆる構成で、つまり真空チャンバ及び型板が、例えば一体に形成されない、及び/又は同一材料から形成されない場合でも、補強構造が可能である。
【0016】
真空チャンバは中空のシリンダ、特に中空の円形のシリンダとして構成されていることが好ましい。真空チャンバは、型板が配置されている側の反対側に底部を有しており、この底部が特に真空チャンバを少なくとも部分的に閉じていることが好ましい。真空チャンバが、例えば中空のシリンダである場合、底部により真空チャンバが一種のポット形状を有する。
【0017】
型板が全ての側から容易にアクセス可能であるように、型板が真空チャンバに連結されていることが好ましい。従って、型板が、好ましくはポット形状を有する真空チャンバの底部の反対側の一端部で真空チャンバに連結されていることが特に好ましい。
【0018】
好ましい実施形態によれば、真空チャンバは、例えば孔などの少なくとも1つの真空チャンバ開口部を有している。この開口部は、特に好ましくは真空チャンバの底部に型板に対向して配置されていることが好ましい。真空チャンバ内に真空を生成することができるように、真空チャンバが、この開口部を介して、例えばポンプなどの真空生成装置に連結され得るか又は連結されていることが好ましい。
【0019】
装置が、真空生成装置と型板とを連結するための、特には選択的な連結装置を備えていることが好ましい。連結装置が真空チャンバ開口部の領域に配置されていることが好ましい。従って、ポンプを真空チャンバ開口部に連結して、ひいては真空を生成することが好ましくは可能である。次に、ポンプと真空チャンバ開口部とを分離する(切り離す)ことが好ましくは可能である。真空チャンバ自体によって真空を維持する真空チャンバが設けられる場合、真空チャンバ内の真空が分離後に維持されることが好ましい。真空生成装置から型板、特に真空チャンバ開口部に延びているガス伝達・連結装置、例えば管又はホース又は連結部分を連結又は切断することにより、真空チャンバ開口部と真空生成装置との連結又は分離を行うことが好ましい。或いは、ガス伝達・連結装置が型板、特に真空チャンバ開口部から延びて、真空生成装置に連結され得るか又は真空生成装置から切断され得ることが更に可能である。
【0020】
連結装置は、例えばねじ山付連結装置、プラグ連結部、急速継手又は連結フランジ装置を有し得る。例えば、連結装置が押込式又は吸引式の連結装置であることが更に可能である。従って、例えば、真空生成装置が一種の吸着カップなどを介した型板、好ましくは真空チャンバ、特に好ましくは真空チャンバの開口部への解放可能な連結を確立することが可能であるため、周囲に対して密閉された真空生成装置と真空チャンバとの連結が可能になる。連結装置は、要素が互いに連結されるべく適合されるように、型板又は真空チャンバと真空生成装置との間に好ましくは配置されている。連結装置の一部が型板若しくは真空チャンバに連結されている、特に一体に形成されている、及び/又は連結装置の別の部分が真空生成装置に連結されている、特に一体に形成されていることが好ましい。
【0021】
特に、装置は、少なくとも1つの真空チャンバ開口部を好ましくは選択的に閉じるための少なくとも1つのバルブを備えている。好ましい実施形態によれば、バルブは自閉式バルブとして構成されている。従って、バルブが例えば作動していないとき、バルブは真空チャンバを最初の状態で閉じる。バルブは、真空チャンバ内の既存の圧力比を維持するように好ましくは構成されている。バルブは、容積流を選択的に遮断するか又は容積流を通過させ得るように遮断弁として特に構成されている。
【0022】
装置のバルブは、好ましくは弾性閉鎖体、特に弾性プラグである。閉鎖体はプラスチック材料、特にエラストマ、例えばシリコーンを含んでいるか、又はこの材料から本質的に形成されていることが好ましい。閉鎖体は、折り返された後及び/又は移動した後及び/又は圧縮された後に最初の閉鎖位置に戻るように好ましくは構成されている。閉鎖体が穿孔された後に閉鎖体自身で密閉し、ひいては穿孔された開口部を閉じることが特に好ましい。閉鎖体が、例えば空気を抜くことにより負圧を発生させるために、例えば中空針により穿孔される場合、中空針を外すと、閉鎖体が真空チャンバを再度閉じる。従って、生成された真空が真空チャンバ内に維持されることが可能であり、真空チャンバが好ましくは単なる空隙であり、ひいては例えば真空ポンプなどの真空生成装置を備えない。バルブを弾性閉鎖体として構成することに加えて、バルブが逆止弁として構成されることが更に可能である。ここで、真空チャンバの内部から周囲への容積流が可能であるが、逆方向では逆止弁の機能により、このような流れを防止するような構成が好ましい。従って、負圧を真空チャンバのバルブに加えることが可能であり、容積流が真空チャンバから逆止弁を介して漏れて、ひいては負圧を真空チャンバ内に発生させる。従って、特にバルブ及び/又は中空針は連結装置に相当するか、又は連結装置の一部を形成する。真空チャンバが通気装置により真空から大気圧に戻り得るように、真空チャンバが、例えば少なくとも1つのバルブに関連する通気装置を有していることが可能である。
【0023】
好ましい実施形態によれば、装置は、型板に連結されている型を備えている。好ましくは成形型として構成されている型は、特に型板と一体に形成されている。従って、型板は型の一部を形成している。型板に加えて、型は更なる要素を有することが可能である。従って、例えば型は、成型材料を受けるための供給口などの形状を有することが可能である。特に、型は使い捨ての型とも称されるロストワックス型である。型は、好ましくは筒状の構成を有し、特に好ましくは中空のシリンダとして構成されており、中空の筒状の型である場合、型板は中空の筒状の型の内側に一種の底部を形成している。中空の筒状の型の端部の内の一方、特に基部領域に、この底部が設けられ得るか又は端部の間に配置され得る。型板が一種のカバーを形成するように、型板は、特に中空の筒状の型に連結され得る。型板が中空の筒状の型の内側に少なくとも部分的に配置される場合、中空の筒状の型の突出部分が供給口を形成し得る。ここで、供給口が成型材料の一部を受けて、ひいては成型微細構造体、特にマイクロニードルアレイが筒状の、例えば一種の円形の端部分を有することが更に可能である。従って、例えばマイクロニードルは、一体に形成された支持面と同時的に成型され得る。
【0024】
型は、真空チャンバに連結するためのフランジを有していることが好ましい。フランジは、特に型板と反対側の型の端部に配置されている。特に、フランジは型から径方向に延びている。
【0025】
好ましい実施形態によれば、型板及び/又は型はプラスチック材料、好ましくはエラストマ、特に好ましくはシリコーンを含んでいる。特に、型板及び/又は型はこのような材料から形成されている。型板の透過性が保証されるように、本質的に透過性、特にガス伝達性を有するシリコーンが使用されていることが好ましい。型板及び/又は型が金属を含んでおり、好ましくは金属から形成されていることが更に可能である。例えば、金属から形成されている実施形態では、型板が、型板のこのような透過性を可能にするために孔、好ましくは微小孔を有していることが可能である。
【0026】
真空チャンバがフランジ及び/又はねじ山を有していることが好ましい。真空チャンバがフランジを有している場合、フランジは、型、好ましくは型のフランジに連結するように構成されている。真空チャンバがねじ山を有している場合、ねじ山が型に連結するように更に構成されていることが好ましい。しかしながら、ここでは型が真空チャンバに直接又は間接的に螺合されるようになしてあることが可能である。間接連結の場合、例えばナットなどの追加のねじ要素が設けられ得る。ねじ山の代わりに又はねじ山に加えて、プラグ連結若しくはクリップ連結のための装置又はクランプなどの他の連結装置が考案され得る。
【0027】
好ましい実施形態によれば、装置は連結要素を備えている。連結要素は、好ましくは型と真空チャンバとを連結する機能を果たし、ねじ連結が好ましい。従って、連結要素は特にねじ山を有している。ここで、密閉連結が実現されるように、型と真空チャンバとが特に連結されている。ねじ連結の代わりに、(別の)形状嵌め連結及び/又は接合連結及び/又は圧力嵌め連結が可能である。例えば、溶接連結及び/又は半田連結及び/又は接着連結及び/又はクリップ連結が可能である。
【0028】
好ましい実施形態によれば、連結要素は一種のキャップナットを有している。ここで、キャップナットは、型を覆って配置されるようになしてあるか又は型のキャップとして機能するように特に構成されており、例えば真空チャンバに螺合され得る。例えば、フランジを有する型の場合、キャップナットは型を覆って配置されることができ、キャップナットの縁部がフランジに接する。例えば、キャップナットの突出したねじ山が真空チャンバのねじ山に螺合されることができ、ひいては型と真空チャンバとが連結され得る。
【0029】
例えば、型と真空チャンバとの連結は更に、型と真空チャンバとの直接連結とすることができる。従って、型と真空チャンバとの連結が形状嵌め連結及び/又は接合連結及び/又は圧力嵌め連結であることが可能である。例えば、これは、溶接連結及び/又は半田連結及び/又は接着連結及び/又は螺合連結及び/又はクリップ連結である。
【0030】
装置は型板を支持するための支持要素を備えていることが好ましい。ここで、支持要素は、型板に適用される真空によって生じる変形から型板を保護するように特に構成されている。支持要素がガス伝達性を有することが好ましい。このため、支持要素は、例えばグリッド及び/又はリブを有している。特に、支持要素は筒状の構成を有することができ、ガス伝達性を有する支持構造がシリンダの基部領域に配置されている。支持要素は型板に平面的に接するようになしてあることが好ましい。
【0031】
装置の部品間の連結部分が、好ましくは密閉されており、装置の内部が周囲に対して特に気密に、特に好ましくはハーメチックに密閉されるように、全ての連結部分が密閉されていることが好ましい。例えば、密閉連結をもたらす付勢力が存在するように、連結要素の有無に関わらず、型と真空チャンバとが連結されていることが好ましい。或いは又は加えて、密閉要素、好ましくは密閉環が部品間、特に型と真空チャンバとの間に設けられ得る。真空チャンバ内の真空により、部品に一種のセルフセンタリングが生じて、ひいてはより緊密な連結が実現されるので、密閉機能を与えるか又は高めることが有利な方法で可能である。
【0032】
微細構造体、特にマイクロニードルを製造するためのハンドリングユニットは、特に筒状のハンドリングユニット、特に好ましくは円筒状のハンドリングユニットである。ハンドリングユニットは、上記の機能の内の少なくとも1つを有する、微細構造体を製造するための装置を備えている。ハンドリングユニットは、製造する微細構造体のための一種の支持要素としての機能を果たし、ハンドリングユニットは、製造工程全体で支持要素としての機能を果たすことが好ましい。従って、ハンドリングユニットは、一方では微細構造体の成型工程に使用され得るが、搬送工程及び/又は更なる作業工程、例えば硬化及び/若しくは後処理及び/若しくは格納などに更に役立つ。従って、ハンドリングユニットは、成型工程の後、例えばコンベアベルト及び/又は手動で更に搬送され得るように好ましくは構成されている。ハンドリングユニットは、ロストワックスハンドリングユニット又はロストワックス成型ハンドリングユニットとも称される使い捨てのハンドリングユニットであることが好ましい。
【0033】
透過性の型板に充填するための本発明に係る方法は、特にガス伝達性の型板に充填するための方法である。型板は、微細構造体を製造するための少なくとも1つの凹部を有している。1つの方法工程では、充填する物質を型板に置く。物質は、特に少なくとも1つの活性成分を含む成型材料の製剤である。ここで、成型材料として特にポリマーが使用される。少なくとも1つの物質を連続的に又は混合物として供給することができる。連続的に供給する場合、一方で混合物を複数の段階で供給するか、又は様々な製剤成分を複数の段階で供給することが可能である。更に、方法工程は、型板の少なくとも1つの側で真空を生成する。特に、真空は少なくとも1つの凹部に対向して生成される。真空を生成する方法工程は、物質を型板に供給する工程前及び/又は物質を型板に供給する工程後及び/又は物質を型板に供給する工程中に行われ得る。真空の生成を様々な供給段階の間に行うことが更に可能である。真空により、物質と型板との間のガス含有物、特に空気含有物を抜くことができ、ひいては供給する物質を型板に完全に充填することができる。
【0034】
この方法の好ましい実施形態によれば、真空が生成されるように真空チャンバの内部への連結部分を介して、型板に連結されている真空チャンバ内の内容物を排出する。内容物の排出の代わりに又は内容物の排出に加えて、大気圧又は正圧を発生させるために真空チャンバの内部への連結部分を介して真空チャンバに充填する工程を行うことができる。内容物の排出により、型板からガス含有物を抜くために真空を生成することができる。大気圧又は正圧を発生させることにより、好ましくは物質の供給後、例えば微細構造体の硬化後、型板から微細構造体を容易に解放する又は外すことが可能である。
【0035】
特に、真空生成装置を型板、好ましくは真空チャンバ、特に好ましくは真空チャンバの真空チャンバ開口部に、好ましくは選択的に連結することにより、真空を生成する。ここで、真空の生成前に真空生成装置を連結することが好ましい。特に、連結後及び/又は真空の生成後に真空生成装置を分離する。
【0036】
真空チャンバのバルブを貫通する、特に穿孔することによって、真空チャンバの内部に連結することが好ましい。バルブは特に弾性バルブであり、バルブは特に好ましくは弾性プラグである。バルブは、中空針又はカニューレによって好ましくは穿孔される。例えば、バルブが中空針によって穿孔されると、ガス、特に空気を真空チャンバから中空針を通って抜くことができ、ひいては真空を生成することができる。バルブは自閉式の構成を有することが好ましい。従って、中空針を外した後、穿孔箇所が穿孔箇所自体で閉鎖又は密閉することが可能である。従って、真空チャンバで生成される真空が真空チャンバ自体によって維持され得る。
【0037】
物質を供給する工程の後であって型から外す前に透過性の型板に充填するための方法が別の成型工程を有することが好ましい。ここで特に、型板内の物質、好ましくは硬化材料を加圧する。好ましい実施形態によれば、この加圧を、型板と反対の物質側で行う。加圧のために、例えば圧力スタンプを使用することができる。このために、圧力スタンプを型板内の物質に押圧することが好ましい。物質の周囲、つまり好ましくは真空が適用されない領域、特に好ましくは微細構造体を製造するための装置又はハンドリングユニットの周囲で正圧を発生させることが更に考えられる。この正圧は特に、この正圧が優勢になる領域の圧力と真空が型板に適用される領域の圧力との正圧の差である。この圧力差は、特に約△3bar 、特に好ましくは約△4bar である。微細構造体を製造するための装置又はハンドリングユニットの周囲に圧力、特に約△3bar 、特に好ましくは4bar の気圧を発生させることが特に好ましい。微細構造体を製造するための装置又はハンドリングユニットが正圧チャンバ内に配置されることにより、正圧を発生させることが好ましい。
【0038】
物質を型板に供給した後、型板を使用して製造される構造体を型から外す工程、つまり、構造体を型板から解放する工程を好ましくは行う。この工程は、例えば上記のように大気圧又は正圧を真空チャンバに発生させる工程を有することができる。従って、大気圧又は正圧を真空チャンバに発生させる工程は、型から外す工程のサブ工程とすることができるか、又は型から外す工程全体を構成することができる。型から外す工程は、構造体を型板から特に手動で又は機械的に外す工程を好ましくは有する。構造体を型板から外す工程を、好ましくは真空グリッパによって行う。例えば大気圧又は正圧を真空チャンバ内に発生させることにより構造体を型板から落下させる又は押し出すことが更に可能である。更に、例えば接着テープなどの接着層を、例えば一種のリフトアーム及び/又は可動アームを使用して構造体に置き、その後、リフトアーム及び/又は可動アームが、このリフトアーム及び/又は可動アームに接着層を介して連結されている構造体を型板から外す及び/又は解放することにより、構造体を型板から外すことが可能である。ここで、その後に構造体を受入装置に取り付けることができるように、接着層は両側に接着性を有することができる。
【0039】
本発明に係る微細構造体を製造するための方法は、特にマイクロニードルを製造するための方法である。この方法は、透過性の型板に充填するための方法の上述した方法の特徴又は工程と共に好ましくは行われる。微細構造体を製造するための方法を実行する際に、上述したような微細構造体を製造するための装置又は上述したようなハンドリングユニットを使用することが特に好ましい。
【0040】
従って、透過性の型板に充填するための方法及び/又は微細構造体を製造するための方法は、微細構造体を製造するための装置及び/又はハンドリングユニットの一又は複数の記載された特徴によって補われ得る。更に、微細構造体を製造するための装置及び/又はハンドリングユニットは、透過性の型板に充填するための方法及び/又は微細構造体を製造するための方法の特徴を実行するように好ましくは構成されている。
【0041】
微細構造体を製造するための装置及び/又はハンドリングユニットは1つの型板だけでなく複数の型板を備えることができる。更に、透過性の型板に充填するための方法及び/又は微細構造体を製造するための方法を、1つの型板又は複数の型板を使用して実行することができる。
【0042】
以下に本発明を、以下の図面を参照して好ましい実施形態に基づき詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明に係る微細構造体を製造するための装置を備えた本発明に係るハンドリングユニットの好ましい実施形態を示す斜視略図である。
【
図2】本発明に係る微細構造体を製造するための装置を備えた本発明に係るハンドリングユニットの別の好ましい実施形態を示す断面略図である。
【
図3】本発明に係る微細構造体を製造するための装置を備えた本発明に係るハンドリングユニットの別の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【
図4】
図3の発明に係る微細構造体を製造するための装置を備えた本発明に係るハンドリングユニットの実施形態を示す分解図である。
【
図5】
図3のハンドリングユニットに基づき、透過性の型板に充填するための方法を含む、本発明に係る微細構造体を製造するための方法の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図面には、同一の部品又は要素が同一の参照番号で示されている。特に明瞭化のために、既に特定されている要素は、好ましくは全ての図面に参照番号が記載されない。
【0045】
図1は、本発明に係るハンドリングユニット100 の実施形態及び本発明に係る微細構造体を製造するための装置10の実施形態を示す。
【0046】
装置10は、円筒状の真空チャンバ18を備えている。真空チャンバ18は、真空チャンバ18の実施形態に関して中空の筒形状を有するように中空の内部を有している。真空チャンバ18は、一端部40で型板12に連結されている。ここでは、型板12が真空チャンバと一体に形成されることが可能である。他方、型板12及び真空チャンバ18が、例えば接着及び/又は超音波溶接によって互いに連結されている2つの部品であることが可能である。型板12及び真空チャンバ18の好ましい実施形態では、型板12及び真空チャンバ18を複数部品射出成形によって共に製造する。従って、真空チャンバ18が、特に真空チャンバの形状を維持するようになしてあるポリマーから形成され、型板12がシリコーンから形成されることが可能である。従って、型板12が真空チャンバ18に注入される。注入によって製造される連結部分は、特に超音波溶接によって補強され得る。
【0047】
型板12は複数の凹部14を有しており、図示されているように、これらの凹部は下方に向かって先細になる円錐状の凹部14である。型板は透過性、つまり伝達性を有し、特にガス伝達性を有する。型板12が、例えばシリコーンから形成されている場合、シリコーン材料が本質的にガス伝達性を有することが好ましい。ここで、型板は微細構造体、特にマイクロニードルアレイのためのマスター型である。例えば、成型製剤が型板に供給されるとき、成型材料が凹部14に流れて、これらの凹部14にマイクロニードルを形成する。成型材料が凹部を越えて突出するような量で供給される場合、マイクロニードルアレイのための支持面を例えば円形に形成することが可能である。
【0048】
真空チャンバ18は、真空チャンバ18の反対側42に底部38を有している。この底部38は、特に真空チャンバ18と一体に形成されており、真空チャンバ18の材料と同一の材料から形成されている。底部38は、孔として構成されている真空チャンバ開口部20を有している。この真空チャンバ開口部20はバルブ22によって閉じられている。図示されている実施形態では、バルブは、好ましくはエラストマ製の弾性層である。ここで、弾性層22は、例えば中空針36によって穿孔されると、中空針を介した真空チャンバの内部34との連結を可能にするように構成されている。その後、中空針36を外すと、弾性層22自体が閉じて、ひいては周囲に対する真空チャンバ18の、好ましくはハーメチックシールを保証する。これにより、例えばポンプなどの真空を生成するための装置(不図示)に型板又は真空チャンバを連結するための連結装置の実施形態が考案されている。
【0049】
図示されているように、装置10は円筒形状を有している。
【0050】
図2は、本発明に係る微細構造体を製造するための装置10を備えた本発明に係るハンドリングユニット100 の
図1と同様の実施形態を示すが断面略図として示す。ここでも、装置10は、型板12が一側に連結されている筒状の真空チャンバ18を備えており、反対側で底部38によって閉じられている。図示された実施形態では、
図2に単に概略的に示されているバルブ22は逆止弁22である。この逆止弁22は、容積流、特に空気流が真空チャンバの内部34から真空チャンバの周囲に向かって移動することを可能にするが、反対方向、つまり周囲から真空チャンバの内部34への容積流を遮断する。
【0051】
図示されているように、装置10は型板12の下方に支持要素30を備えている。この支持要素30はガス伝達性を有し、特に一種のグリッド構造として構成されている。特に、支持要素30は型板12の後側に平面的に接する。真空チャンバ18の内部34に真空が存在する場合、前記真空は型板12の下側32に作用する。型板が例えばシリコーン製の弾性型板12である場合、真空によって型板12が内側に向かって変形し得る。この変形により、例えば製造する微細構造体のためのマスター型板が欠陥品になり得る、及び/又は、他方では型板12が破損し得る、例えば裂け得る。好ましくは形状を維持するようになしてある隣接する支持要素30は、型板12が変形することを防止する。支持構造がグリッドとして構成される場合、支持要素がリブ又は穿孔プレートの形態で構成されることが可能である。例えば、金属ワイヤで好ましくは形成される補強構造として構成される支持要素が型板12で及び/又は型板12に直接一体化されることが更に可能である。
【0052】
例えば、図示されていない真空ポンプがバルブ22を介して真空チャンバ18に連結される場合、真空チャンバ18の内部34に真空が生成され得る。例えば、真空チャンバ18の図示された下側に一種の吸着カップを取り付けて、吸着カップがバルブ22を覆って把持することにより、真空の生成が実現され得る。吸着カップが吸着効果をもたらす場合、真空チャンバ18内に真空が確立されるように、特に逆止弁として構成されているバルブ22が開き、真空チャンバの内部34から周囲への容積流、特に空気流を可能にする。
【0053】
図3は、本発明に係る微細構造体を製造するための装置10を備えた本発明に係るハンドリングユニット100 の別の実施形態を示す斜視図である。
図4は、対応する分解図を示す。装置10は、内部34を有する中空の筒状の真空チャンバ18(ここでは断面として示されている)を備えている。図示されているように、真空チャンバは、中央孔20を有する底部38を下側に有している。孔20は、真空チャンバの周囲を真空チャンバの内部34に連結する。
【0054】
孔20はバルブ22によって閉じられている。図示された実施形態では、バルブ22は、例えばエラストマなどの弾性材料から好ましくは形成された、特に自閉式プラグである。
【0055】
真空チャンバ18の内部34の直径より大きい直径を有する、真空チャンバ18の凹部54の内側に、中空の筒状の支持要素が配置されており、好ましくは凹部54の肩部及び真空チャンバ18の凹部54の内壁に接する。図示されているように、支持要素30は、複数のリブ44から構成された支持構造を上側の基部領域に有している。
【0056】
型24のフランジ26は、真空チャンバ18の前端部に、図示されているように真空チャンバ18の上端部で特に同軸に同一の外径で接する。このフランジ26は筒状の型24から外側に向かって径方向に延びており、型24は特に成形型24である。型24はフランジ26と一体に形成されている。型24は、フランジ26の反対側の端部に型板12を有している。ここでは、型板12は型24と一体に形成され得るか、又は型板12及び型24が2つの部品であることが可能である。一体構成により、型板12及び型24が射出成形により共に製造され得る、及び/又は同一の材料、好ましくはシリコーンから形成され得る。
【0057】
装置10が組み立てられるか又は取り付けられるとき、型板12は、リブ44から構成されている支持要素30の支持構造に平面的に接する。従って、支持要素30及び支持要素30の支持構造は、図示されているように型板12が下方に変形することを夫々防止する。
【0058】
組み立てられた実施形態を実現するために、装置10は連結要素28を備えている。更に筒状の構成である連結要素は、図示されているように上端部で内側に向かって径方向に延びている縁部48を有している。連結要素28の内壁はねじ山50を有している。特に雌ねじ山として構成されているこのねじ山50は、好ましくは雄ねじ山として構成されている真空チャンバ18のねじ山46に螺合され得る。このような組み立ての場合、連結要素28は一種のキャップナットとして、真空チャンバ18の前端部に接する型24を覆って配置される。連結要素28のねじ山50及び真空チャンバ18のねじ山46を用いた実施形態の代わりに、例えば、圧入連結の形態での連結要素28及び真空チャンバ18の異なる連結が可能である。このような連結により、装置10、特に支持要素30が内部に配置される真空チャンバ18、前端部に配置される型24、及びキャップの形態で真空チャンバを覆って配置されて真空チャンバに螺合される連結要素28の連結実施形態又は組み立てが可能になる。プラグ22は、好ましくは一種の圧入により孔20に連結されているか、又はこの方法で孔20に保持されている。更に、プラグ22は2つの径方向に厚い肉厚部分52を有しており、プラグ22が挿入されると、肉厚部分52は、特にプラグ22が孔20に嵌合するように使用されている弾性材料のため変形する。挿入後、肉厚部分52は孔20の上側及び/又は下側で膨張するため、位置が固定される。
【0059】
図5は、本発明に係る微細構造体を製造するための方法の例を示し、本発明に係る透過性の型板に充填するための方法は、前記方法の一部を形成する。この方法は、
図3の実施形態に係る微細構造体を製造するための装置10に基づき、例示的な方法の状態I-IVと共に示されている。
【0060】
第1の状態Iでは、例えばマイクロニードルアレイを製造するための製剤、特に成型製剤を型板12に供給する。特にシリコーンから形成されている型板12の疎水性の特性により、製剤と型板12との間、特に製剤と型板12の凹部14との間に空気含有物が生じ得る。状態Iでは、真空チャンバ18に真空が未だ存在せず、好ましくは真空チャンバ18に大気圧が存在する。
【0061】
状態IIは、中空針36による弾性プラグ22の穿孔を示す。従って、真空チャンバの内部34が周囲に連結される。例えば、中空針36に連結されている不図示の真空ポンプを介して、真空チャンバの内部34に負圧が生成され得る。言い換えれば、工程IIでは真空ポンプが連結されて、特に真空が生成される。
【0062】
状態IIIは、中空針36をプラグ22、ひいては真空チャンバの内部34から外している状態を示す。中空針36を外した後、真空チャンバ18が周囲に対して閉じられるように、弾性プラグ22自体が閉じる。そのため、真空チャンバ18で生成される真空が真空チャンバ18自体によって維持されることが可能である。言い換えれば、工程IIIでは真空ポンプを分離する。
【0063】
状態IVは、真空チャンバ自体により真空を維持する例を示す。この真空は、真空チャンバ18自体によって少なくとも15分間維持されることが好ましい。
【0064】
真空チャンバの内部34内の真空により、気体が透過性の型板12を通って取り込まれることが保証される。ここで、特に型板12と型板12に供給される製剤との間の空気含有物が、型板12を通って真空チャンバの内部34に取り込まれる。従って、特に型板12と製剤との間のいかなる空気含有物も無しで型板12のマスター型に製剤が好ましくは完全に充填される。従って、製造するマイクロニードルアレイの欠陥、特に構造上の欠陥を最小限に抑え、欠陥のないマイクロニードルアレイを製造することが可能である。
【0065】
第1の状態Iでの製剤の供給が例として記載されているが、真空チャンバの内部34での真空生成後及び/又は真空生成中に製剤を供給することが可能である。従って、本明細書に記載されて
図5に示されている方法工程は、他の実施形態、特に
図1及び
図2の実施形態に更に適用され得る。