(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】潤滑油組成物およびそれを用いた潤滑剤
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20230522BHJP
C10M 105/76 20060101ALN20230522BHJP
C10M 105/38 20060101ALN20230522BHJP
C10M 105/18 20060101ALN20230522BHJP
C10M 107/02 20060101ALN20230522BHJP
C10M 101/02 20060101ALN20230522BHJP
C10M 135/36 20060101ALN20230522BHJP
C10M 135/18 20060101ALN20230522BHJP
C10M 135/04 20060101ALN20230522BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20230522BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20230522BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20230522BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20230522BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20230522BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M105/76
C10M105/38
C10M105/18
C10M107/02
C10M101/02
C10M135/36
C10M135/18
C10M135/04
C10M137/10 Z
C10M137/10 A
C10N50:10
C10N40:02
C10N10:04
C10N30:06
(21)【出願番号】P 2021552346
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2020037978
(87)【国際公開番号】W WO2021075325
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2019190818
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146180
【氏名又は名称】株式会社MORESCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】中垣 真央
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-253281(JP,A)
【文献】特開2003-261892(JP,A)
【文献】特開2002-069471(JP,A)
【文献】特開平09-188887(JP,A)
【文献】特開2005-248034(JP,A)
【文献】特開2000-063866(JP,A)
【文献】特開2005-331013(JP,A)
【文献】特開2009-019703(JP,A)
【文献】特表2016-500131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 169/04
C10M 105/76
C10M 135/36
C10M 135/18
C10M 135/04
C10M 137/10
C10M 175/04
C10N 10/04
C10N 50/10
C10N 40/02
C10N 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示され、質量平均分子量が900~4000であり、構造中の炭素とケイ素の比率(C/Si比)が3.03以上であり、かつ、粘度指数(VI)が300以上であるシリコーン油50~80質量%と、
(B)炭化水素系潤滑油10~49質量%と、
(C)硫黄化合物0.5~15質量%とを少なくとも含む、潤滑油組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1およびR
2は炭素数1~12のアルキル基またはアラルキル基であり、かつ、nは2~44の整数である)
【請求項2】
前記(C)硫黄化合物が、チアジアゾール系化合物、チオカーバメート系化合物、硫化オレフィン、チオリン酸エステル、ジアルキルチオリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
さらに、(D)酸化防止剤を含む、請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
2種以上の(D)酸化防止剤を含む、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の潤滑油組成物を用いた、潤滑剤。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の潤滑油組成物又は請求項5に記載の潤滑剤を用いた、グリース。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の潤滑油組成物又は請求項5に記載の潤滑剤を用いた、エマルション。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の潤滑油組成物を使用した、潤滑方法。
【請求項9】
軸受用である、請求項1~4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン油を含む潤滑油組成物およびそれを用いた潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油や潤滑油組成物は、様々な機械装置などの可動部や可動面間の摩擦や摩耗を低減するために用いられる。
【0003】
最近では、輸送機器の使用環境の拡大、過酷化により、機械装置の高度化、小型化が進んでいる。機械装置の高度化、小型化に伴い、幅広い温度範囲で使用できる粘度指数(VI)が高い(温度変化に対する粘度変化が小さい)潤滑油が求められている。VIが高い潤滑油は、低温での粘度が低く、潤滑油自体の粘性抵抗によるエネルギー損失が小さいことから省エネルギー性(省エネ性)の点で優れている。また、高温環境下においては、VIの低い潤滑油と比較し、過度に低粘度化することがないため、潤滑面で潤滑に必要な油膜を保持することができ、また適度な粘性を保持することから潤滑油の飛散が抑えられ周囲を汚染することが少ない。
【0004】
これまでは、一般に炭化水素系の潤滑油の粘度指数を高くする方法として、ポリメタクリル酸エステルやポリブテンなどの高分子化合物がVI向上剤として使用されてきた(特許文献1および2)。
【0005】
近年では、VIが高い潤滑油として知られるシリコーン油(以下、Si油とも称す)を潤滑油基材とした潤滑油組成物が提案されている(特許文献3および4)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来のVI向上剤を用いた潤滑油は、せん断力に対する耐性が低く、使用初期の粘度特性を長期間維持することができない(粘度指数が低下する)という問題があった。また、特許文献2では、特定の構造を有するポリメタクリル酸エステルを使用することで、せん断安定性を高くできる可能性を示しているが、高分子化合物を使用しているため、低温での粘性抵抗の上昇は避けられず、低温環境下で使用した際に省エネ性が欠けるといった問題が残った。
【0007】
一方、特許文献3記載の技術は、高いVIと潤滑性を両立する目的で、シリコーン油と鉱油系あるいはワックス異性化系基油を併用しているが、シリコーン油として炭化水素系の潤滑油との相溶性が悪いジメチルシリコーンを使用しているため、高いVIを有するシリコーン油を多量配合することができない。そのため、高いVIを実現するためには、シリコーン油と従来のポリメタクリル酸エステルやポリブテンなどのVI向上剤を併用する必要があり、従来の炭化水素系の潤滑油に比べてVI向上剤の配合量を減らすことはできたが、低温粘度の上昇や使用初期の粘度特性を長期間維持することができない(粘度指数が低下する)という問題は残った。
【0008】
また、特許文献4記載の技術では、炭化水素系の潤滑油と相溶性が高いアリール基を有するシリコーン油を使用することでシリコーン油の配合量を多くし、高いVIを維持することが出来た。しかし、アリール基を有するシリコーン油を多く配合した潤滑油組成物の潤滑性は低く、高い潤滑性を得るためには、相手材のエステル油の配合量を増やす必要があり、VIと潤滑性が両立できないという問題があった。
【0009】
さらに、最近では、省エネ性向上のため、潤滑油組成物の低粘度化が求められており、高温環境下かつ高い荷重の用途(例えば、自動車用途で使用される軸受、ギア等)で使用される場合、粘度指数が高い潤滑油組成物であっても潤滑油組成物の粘度低下に伴う油膜形成能の低下が起こり、金属同士の接触による摩耗が問題となる。そのためには、耐摩耗性をより改良できる非常に優れた潤滑性を有する潤滑油組成物や潤滑剤が必要とされる。
【0010】
本発明の課題は、前記問題点を解決することにある。すなわち、優れた潤滑性と高い粘度指数(VI)を兼ね備え、長期間安定に使用でき、幅広い温度範囲で使用できる潤滑油組成物であって、より高い潤滑性(耐摩耗性)を付与することができる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2015-172165号公報
【文献】特開2017-155193号公報
【文献】特開2012-207082号公報
【文献】特開2003-261892号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記構成の潤滑油組成物によって、上記目的を達することを見出し、この知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の一局面に係る潤滑油組成物は、(A)下記式(1)で示され、質量平均分子量が900~4000であり、構造中の炭素とケイ素の比率(C/Si比)が3.03以上であり、かつ、粘度指数(VI)が300以上であるシリコーン油50~80質量%と、(B)炭化水素系潤滑油10~49質量%と、(C)硫黄化合物0.5~15質量%とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0014】
【化1】
(式(1)中、R
1およびR
2は炭素数1~12のアルキル基またはアラルキル基であり、かつ、nは2~44の整数である)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の潤滑油組成物は、上述したように、(A)上記式(1)で示され、質量平均分子量が900~4000であり、構造中の炭素とケイ素の比率(C/Si比)が3.03以上であり、かつ、粘度指数(VI)が300以上であるシリコーン油50~80質量%と、(B)炭化水素系潤滑油10~49質量%と、(C)硫黄化合物0.5~15質量%とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0016】
このような構成とすることによって、非常に優れた潤滑性を有することにより高い耐摩耗性を付与することができ、かつ、長期間安定に使用でき、幅広い温度範囲で使用できる潤滑油組成物となる。
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
((A)シリコーン油)
本実施形態の潤滑油組成物に含まれるシリコーン油は、上記式(1)で示され、質量平均分子量が900~4000であり、構造中の炭素とケイ素の比率(C/Si比)が3.03以上であり、かつ、粘度指数(VI)が300以上である。このようなシリコーン油を使用することによって、優れた低温流動性と高い粘度指数を有する潤滑油組成物を提供することができる。
【0019】
式(1)中、R1およびR2は炭素数1~12のアルキル基またはアラルキル基である。R1およびR2の構造は特に限定はなく、直鎖でも分枝鎖でも環状でもよい。具体的には、例えば、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、オクチル、ノニル、ドデシル);シクロアルキル基(シクロヘキシル、シクロヘプチル);アラルキル基(ベンジル、フェニルエチル、イソプロピルフェニル)等が挙げられる。これらの官能基を構造中に1種単独または2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。特にアルキル基を有することが好ましい。
【0020】
R1およびR2の炭素数としては、低温で低粘度を維持するという観点から1~12が好ましく、1~10がより好ましく、1~8が特に好ましい。R1およびR2の炭素数が12を超えると、低温特性が著しく悪化するため、潤滑油組成物とした場合に低温度域での使用が困難となる。
【0021】
また、式(1)中、nは2~44の整数である。nが2未満となると、質量平均分子量が900を下回るため、潤滑油組成物とした場合に、引火点が低くなり、用途が制限される。
【0022】
また、本実施形態のシリコーン油は、構造中の炭素とケイ素の比率(C/Si比)が3.03以上である。後述する(B)炭化水素系潤滑油、(C)硫黄化合物との相溶性をより向上させるという観点からは、C/Si比が3.05以上であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態において、前記C/Si比は、下記の数式(1)で求められる値である。
(式1):C/Si比=(n×(R1の炭素数+1)+R2の炭素数の合計+4)÷(n+2)
【0024】
例えば、シリコーン油が下記式(2)で示される構造を有するシリコーン油である場合、R1=C3(n1=6)およびC1(n2=4)、R2=C1であるため、C/Si比は3.16である。
【0025】
【0026】
また、例えば、シリコーン油が下記式(3)で示される構造を有するシリコーン油である場合、R1=C2、n=10、R2=C1であるため、C/Si比は3.00である。
【0027】
【0028】
例えば、シリコーン油が下記式(4)で示される構造を有するシリコーン油である場合、R1=C8(n1=5)およびC1(n2=10)、R2=C1であるため、C/Si比は4.18である。
【0029】
【0030】
また、例えば、シリコーン油が下記式(5)で示される構造を有するシリコーン油である場合、R1=C6(n1=3)、C9(n2=2)、およびC1(n3=11)、R2=C1であるため、C/Si比は3.83である。
【0031】
【0032】
例えば、シリコーン油が下記式(6)で示される構造を有するシリコーン油である場合、R1=C8(n1=5)およびC1(n2=10)、R2=C1およびC8であるため、C/Si比は4.59である。
【0033】
【0034】
また、例えば、シリコーン油が下記式(7)で示される構造を有するシリコーン油である場合、アルキル基がR1=C1、n=9、R2=C12であるため、C/Si比は4.18である。
【0035】
【0036】
前記C/Si比が3.03未満となると、(B)成分である炭化水素系の潤滑油との相溶性が悪くなり、潤滑油組成物として安定した性能を発揮できないという問題がある。一方、前記C/Si比について特に上限値は限定されないが、C/Si比が高くなりすぎると粘度指数が低くなるという観点から9.0以下であることが好ましい。
【0037】
上記構造を有するシリコーン油としては、例えば、具体的には、メチルヘキシルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0038】
本実施形態のシリコーン油の質量平均分子量は、900~4000である。質量平均分子量が900を下回ると、シリコーン油の引火点が200℃を下回り、潤滑油組成物とした場合の用途が制限される。また、質量平均分子量が4000を超えると40℃動粘度が200mm2/sを超えるため、潤滑油組成物の粘度が高くなり、省エネルギー性に欠ける。
【0039】
なお、本実施形態におけるシリコーン油の質量平均分子量とは、後述の実施例に示すように、1H-NMRまたは29Si-NMRを用いて測定した値である。なお、以下では質量平均分子量を単に「平均分子量」とも称す。
【0040】
本実施形態におけるシリコーン油の粘度指数(VI)は、VIが高い潤滑油組成物を得るために、300以上とする。より好ましくは350以上であることが好ましく、400以上であることが特に好ましい。本明細書において、VIとは、JIS K 2283(2000年)に基づいて測定・算出した値である。
【0041】
本実施形態の(A)シリコーン油としては、上述したようなシリコーン油を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて用いることもできる。
【0042】
上述したようなシリコーン油を合成する方法は特に限定されないが、例えば、分子構造中にSiH基を有する直鎖状のポリシロキサンとヘキサメチルジシロキサン等の低重合度のポリシロキサンを活性白土等の酸触媒存在下で平衡化反応させることで、低重合度化したSiH基を有するポリシロキサンを得ることができる。あるいは、窒素雰囲気下でSiH基を有するポリシロキサンに1-オクテン等のオレフィン化合物をヒドロシリル化触媒存在下で付加反応させることでメチルオクチルポリシロキサンを得ることができる。
【0043】
本実施形態の潤滑油組成物において、組成物全体に対する前記(A)シリコーン油の含有量は、粘度指数及び潤滑性の観点から50~80質量%である。特に55~80質量%であることが好ましく、65~75質量%であることがさらに好ましい。(A)成分の含有量が50質量%未満であると潤滑油組成物とした場合の粘度指数を向上させる効果が乏しく、また、80質量%を超える場合は、潤滑性が低くなるため好ましくない。
【0044】
((B)炭化水素系潤滑油)
本実施形態の潤滑油組成物は、炭化水素系潤滑油を有する。使用できる炭化水素系潤滑油としては、上述した(A)シリコーン油との相溶性があるものであれば特に限定はされないが、具体的には、例えば、エステル油、エーテル油、ポリαオレフィン(PAO)油、鉱油等が挙げられる。
【0045】
前記エステル油としては、具体的には、1価アルコール類または多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸とのエステルが挙げられる。
【0046】
前記1価アルコールまたは多価アルコールとしては、炭素数1~30、好ましくは炭素数4~20、より好ましくは炭素数6~18の炭化水素基を有する1価アルコールまたは多価アルコール類が挙げられる。前記多価アルコール類としては、具体的には、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0047】
また、前記1塩基酸または多塩基酸としては、炭素数1~30、好ましくは炭素数4~20、より好ましくは炭素数6~18の炭化水素基を有する1塩基酸または多塩基酸類が挙げられる。
【0048】
ここでいう炭化水素基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等の炭化水素基が挙げられる。
【0049】
本実施形態において(B)成分としてエステル油を使用する場合、上記したようなエステル油を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
好ましい実施形態では、エステル油として、引火点が200℃以上であり、流動点が-40℃以下の二塩基酸エステルまたは多価アルコール脂肪酸エステルを使用できる。特に、蒸発性が低いという観点より、トリメチロールプロパンの脂肪酸エステルやペンタエリスリトールの脂肪酸エステルといった多価アルコール脂肪酸エステルであることがより好ましい。
【0051】
前記エーテル油としては、具体的には、ポリオキシエーテルやジアルキルエーテル、芳香族系エーテル等が挙げられる。
【0052】
また、前記ポリαオレフィン油としては、ポリブテン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー等の炭素数2~15までのαオレフィンの重合物またはその水素化物が挙げられる。
【0053】
前記鉱油としては、パラフィン系、ナフテン系、中間基系等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;該常圧残油を減圧蒸留して得られた留出油;該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等のうちの1つ以上の処理を行って精製した鉱油、例えば、軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油、ブライトストック等、フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる鉱油等が挙げられる。
【0054】
本実施形態では、(B)成分として上述したような炭化水素系潤滑油を単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0055】
本実施形態の潤滑油組成物における(B)炭化水素系潤滑油の含有量は、潤滑性、粘度指数の観点から、組成物全体に対して10~49質量%である。より好ましくは、15~40質量%であり、さらに15~25質量%であることが特に好ましい。炭化水素系潤滑油の含有量が10質量%未満となると、十分な潤滑性を得ることが困難となり、また、49質量%を超える場合は、潤滑油組成物中のシリコーン油の含有量が少なくなり、潤滑油組成物の粘度指数が低くなるため好ましくない。
【0056】
さらに、本実施形態の潤滑油組成物は、(B)炭化水素系潤滑油として、エステル油を10質量%以上含むことによって、潤滑油組成物の潤滑性がさらに向上する。つまり、好ましい実施形態としては、前記(B)炭化水素系潤滑油として、エステル油を10~49質量%含んでいることが望ましい。
【0057】
((C)硫黄化合物)
本実施形態の(C)成分の硫黄化合物としては、チアジアゾール系化合物、ポリサルファイド、チオカーバメート系化合物、硫化油脂、硫化オレフィン、硫化エステル、硫化脂肪酸、チオリン酸エステル、チオフォスフェート、チオフォスファイト、ジアルキルチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジアルキルチオカルバミン酸亜鉛、ジアルキルチオリン酸亜鉛であれば特に限定なく使用することができるが、具体的には、チアジアゾール系化合物、チオカーバメート系化合物、硫化オレフィン、チオリン酸エステル、ジアルキルチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0058】
なかでも、チオリン酸エステル、ジチオカーバメート、硫化オレフィン、及びジメルカプトチアジアゾール系化合物から選択される少なくとも1つを使用することが好ましい。
【0059】
このような硫黄化合物を含むことにより、本実施形態の潤滑油組成物は、上述したような特性に加えて非常に高い潤滑性を有し、耐摩耗性を大きく向上させることができる。その理由は明らかではないが、硫黄化合物由来の潤滑膜が、使用初期より対象とする金属表面に形成され、高い耐摩耗性を発揮するためと推察される。
【0060】
本実施形態の潤滑油組成物における、(C)硫黄化合物の含有量は、十分な耐摩耗性を得るという観点、組成物全体に対して0.5~15質量%程度である。硫黄化合物の含有量が0.5質量%未満となると、十分な耐摩耗性を得られない場合があり、また、15質量%を超える場合は、硫黄化合物自体の蒸発により潤滑油組成物の蒸発量が増えること、潤滑油組成物の粘度指数が低くなることより好ましくない。
【0061】
なお、(C)硫黄化合物のより好適な含有量は、基油の組成、硫黄化合物の種類や硫黄含有量等によって異なる場合がある。例えば、硫化オレフィン等では、組成物全体に対して0.5~4.5質量%であることがより好ましく、チオリン酸エステル、ジチオカーバメート、及びジメルカプトチアジアゾール系化合物等では0.5~10.0質量%であることが好ましく、0.5~5.0質量%程度であることがさらに好ましい。
【0062】
((D)酸化防止剤)
本実施形態の潤滑油組成物は、上記成分に加えて、さらに(D)酸化防止剤を含むことが好ましい。それにより、潤滑油組成物の寿命を延長できるという利点がある。
【0063】
本実施形態に用いられる(D)酸化防止剤としては、一般的に潤滑油に使用される酸化防止剤を特に限定なく使用することができる。例えば、フェノール系化合物やアミン系化合物、リン系化合物等が挙げられる。
【0064】
より具体的には、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールなどのアルキルフェノール類、メチレン-4,4-ビスフェノール(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、亜リン酸エステル類等が挙げられる。
【0065】
これらの中でも、潤滑性のさらなる向上という観点から、リン酸エステル、亜リン酸エステル類、酸性リン酸エステル、ホスホン酸エステル等のリン系化合物を含むことが好ましい。
【0066】
さらに、本実施形態の潤滑油組成物は2種以上の(D)酸化防止剤を併用することが好ましい。例えば、一次酸化防止剤として機能するフェノール系化合物やアミン系化合物と、リン系化合物といった二次酸化防止剤を併用することが特に好ましい。
【0067】
本実施形態の潤滑油組成物が(D)酸化防止剤を含む場合、組成物全体に対する前記(D)酸化防止剤の含有量は、酸化抑制と蒸発量低減の観点から、1~10質量%とする。より好ましくは、2~7質量%であり、さらには1~5質量%であることが特に好ましい。前記(D)成分の含有量が1質量%未満であると潤滑油組成物とした場合に蒸発性が高くなるおそれがあり、また、10質量%を超える場合は、酸化防止剤自体の蒸発により潤滑油組成物の蒸発量が増えること、潤滑油組成物の粘度指数が低くなることより好ましくない。
【0068】
より潤滑性を高めるという観点からは、上記(C)硫黄化合物と(D)酸化防止剤の合計量が、組成物全体に対して、2.5~8.0質量%程度であることが好ましい。
【0069】
(その他の添加剤)
本実施形態の潤滑油組成物には、その性能をさらに向上させる目的で、または、必要に応じてさらなる性能を付与するために、本発明の効果を損なわない範囲で、金属不活性化剤、消泡剤、増粘剤、着色剤等の各種添加剤を単独でまたは複数を組み合わせて配合しても良い。
【0070】
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0071】
消泡剤としては、例えば、ポリシロキサン、ポリアクリレート、及びスチレンエステルポリマー等が挙げられる。
【0072】
増粘剤としては、例えば、金属石鹸(例えば、リチウム石鹸)、シリカ、膨張黒鉛、ポリ尿素、粘土(例えば、ヘクトライトまたはベントナイト)等が挙げられる。
【0073】
本実施形態に潤滑油組成物に上記したような添加剤を配合する場合、その添加量は、潤滑剤組成物全体(総質量)に対して、0.0~10.0質量%、あるいは0.1~5質量%程度の量で使用され得る。本実施形態の潤滑油組成物を用いてグリースを生成するための増粘剤は、潤滑剤グリース組成物全体(総質量)に対して、5~25質量%の量で使用され得る。
【0074】
(調製方法)
本実施形態の潤滑油組成物を調製する方法としては、特に限定はなく、例えば、(A)シリコーン油と(B)炭化水素系油、及び(C)硫黄化合物、並びに、必要に応じて(D)酸化防止剤やその他添加剤を100℃に加熱して混合することによって調整することができる。
【0075】
(用途)
本実施形態の潤滑油組成物は、長期間安定して、幅広い温度で使用することが可能であるため、各種潤滑剤として使用することができる。例えば、軸受用潤滑剤、含浸軸受用の潤滑剤、グリース基油、冷凍機油、可塑剤等として好適に使用される。特に、非常に優れた潤滑性を有し耐摩耗性を付与することができるため、高荷重の用途に好適である。
【0076】
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0077】
本発明の一局面に係る潤滑油組成物は、(A)上記式(1)で示され、質量平均分子量が900~4000であり、構造中の炭素とケイ素の比率(C/Si比)が3.03以上であり、かつ、粘度指数(VI)が300以上であるシリコーン油50~80質量%と、(B)炭化水素系潤滑油10~49質量%と、(C)硫黄化合物0.5~15質量%とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0078】
このような構成により、非常に優れた潤滑性を有することにより高い耐摩耗性を付与することができ、かつ、長期間安定に使用でき、幅広い温度範囲で使用できる潤滑油組成物を提供することができる。
【0079】
さらに、前記潤滑油組成物において、前記(C)硫黄化合物が、チアジアゾール系化合物、チオカーバメート系化合物、硫化オレフィン、チオリン酸エステル、ジアルキルチオリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。それにより、上記効果をより確実に得ることができる。
【0080】
さらに、前記潤滑油組成物が(D)酸化防止剤を含むことが好ましく、2種以上の(D)酸化防止剤を含むことがより好ましい。それにより、上記効果をより確実に得ることができ、さらに蒸発量を低減させることもできる。
【0081】
本発明の他の局面に関する潤滑剤は、上述の潤滑油組成物を用いることを特徴とする。
【0082】
また、本発明には、上記潤滑組成物や潤滑剤を用いたグリース及びエマルション、並びに、それらを使用した潤滑方法、及び、上記潤滑組成物や潤滑剤の軸受用途への使用が包含される。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
まず、本実施例で使用した各原料を以下に示す。
【0085】
〔シリコーン油の合成〕
・シリコーン油1(オクチルシリコーン)
10Lセパラブルフラスコに信越化学工業(株)製のメチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:KF-99)1125gと信越化学工業(株)製のデカメチルシクロペンタシロキサン(商品名:KF-995)2866g、信越化学工業(株)製のヘキサメチルジシロキサン(商品名:KF-96L-0.65CS)874g、活性白土56gを入れ、90℃で4時間撹拌した。室温に冷却した後、ろ過によって活性白土を取り除いた。
【0086】
続いて、ろ液を10Lの四つ口フラスコに入れ、加熱・減圧し、低分子量のシリコーン化合物を除去し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(シリコーンA)3016gを得た。得られたシリコーンAと過剰量の水酸化ナトリウム水溶液及びn-ブタノールを反応させ、水素ガス発生量を測定した。水素ガス発生量は86mL/gであった。得られた水素ガス発生量からシリコーンA中のヒドロシリル基由来の水素量を求めると0.39質量%であった。
【0087】
得られたシリコーンAを5Lの四つ口フラスコに2319g(2.16mol)入れ、滴下ロートに出光興産(株)製の1-オクテン(商品名:リニアレン8)1221g(10.88mol)とエヌ・イー・ケムキャット(株)製の白金触媒であるPt-CTS-トルエン溶液0.3mL(Pt換算:4ppm)入れ、窒素置換を行った。シリコーンAを加熱し、液温が60℃に到達した後、1-オクテンと白金触媒の混合物の滴下を開始した。この時、液温を80~110℃に保つよう滴下の速度を調節した。1-オクテンと白金触媒の混合物をすべて滴下した後、100℃で2時間熟成した。熟成終了後、1H-NMRを使用してSiH基のピークの消失を確認した。続いて、加熱・減圧し、反応物から過剰の1-オクテンを除去し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルオクチルシロキサン共重合体(シリコーン1)を3251g得た。
【0088】
1H-NMRを使用して得られたシリコーン1を解析した結果、平均分子量1741、有機基R1(C8)を持つユニット(n1)の平均個数4.7個、有機基R1’(C1)を持つユニット(n2)の平均個数10.3個、分子構造中のC/Si比は4.05であることがわかった。
【0089】
シリコーン1のNMRデータは以下の通りであった。
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム、基準物質:TMS)
δ=0.40~0.60ppmの積分値を10.0とすると、
δ=0.01~0.08ppmの積分値は80.8
δ=0.08~0.10ppmの積分値は19.1
【0090】
・シリコーン油2(オクチルシリコーン)
2Lセパラブルフラスコに信越化学工業(株)製のメチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:KF-99)451gと信越化学工業(株)製のデカメチルシクロペンタシロキサン(商品名:KF-995)1149g、信越化学工業(株)製のヘキサメチルジシロキサン(商品名:KF-96L-0.65CS)57g、活性白土10gを入れ、90℃で4.5時間撹拌した。室温に冷却した後、ろ過によって活性白土を取り除いた。
【0091】
続いて、ろ液を2Lの四つ口フラスコに入れ、加熱・減圧し、低分子量のシリコーン化合物を除去し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(シリコーンB)1474gを得た。得られたシリコーンBと過剰量の水酸化ナトリウム水溶液及びn-ブタノールを反応させ、水素ガス発生量を測定した。水素ガス発生量は96mL/gであった。得られた水素ガス発生量からシリコーンB中のヒドロシリル基由来の水素量を求めると0.43質量%であった。
【0092】
シリコーンBを2Lの四つ口フラスコに641g入れ、滴下ロートに出光興産(株)製の1-オクテン(商品名:リニアレン8)382g(3.41mol)とエヌ・イー・ケムキャット(株)製の白金触媒であるPt-CTS-トルエン溶液80μL(Pt換算:3ppm)入れ、窒素置換を行った。シリコーンBを加熱し、液温が60℃に到達した後、1-オクテンと白金触媒の混合物の滴下を開始した。この時、液温を80~110℃に保つよう滴下の速度を調節した。1-ヘキセンと白金触媒の混合物をすべて滴下した後、100℃で2時間熟成した。熟成終了後、1H-NMRを使用してSiH基のピークの消失を確認した。続いて、加熱・減圧し、反応物から過剰の1-オクテンを除去し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルオクチルシロキサン共重合体(シリコーン2)を906g得た。
【0093】
1H-NMRを使用して得られたシリコーン2を解析した結果、平均分子量3868、有機基R1(C8)を持つユニット(n1)の平均個数11.1個、有機基R1’(C1)を持つユニット(n2)の平均個数24.1個、分子構造中のC/Si比は4.14であることがわかった。
【0094】
シリコーン2のNMRデータは以下の通りであった。
1H-NMR(溶媒:重クロロホルム、基準物質:TMS)
δ=0.40~0.60ppmの積分値を10.0とすると、
δ=0.01~0.08ppmの積分値は80.2
δ=0.08~0.10ppmの積分値は8.1
【0095】
(炭化水素系潤滑油)
・エステル油:日油(株)製のペンタエリスリトール脂肪酸エステル、製品名:ユニスター HR-32(40℃動粘度:33.5:mm2/s、100℃動粘度:5.8mm2/s、VI:115、引火点:274℃、流動点:-50℃)
・エーテル油:(株)MORESCO製のアルキルジフェニルエーテル「モレスコハイルーブ LB-100」(40℃動粘度:102.6mm2/s、100℃動粘度:12.6mm2/s、VI:117)
・PAO油:Chevron Phillips製のポリαオレフィン、製品名:Synfluid PAO 6 cSt(40℃動粘度:30.5mm2/s、100℃動粘度:5.9mm2/s、VI:137)
・PAG(ポリブチレングリコール):DOW株式会社製「UCON OSP-32」(40℃動粘度:32.0mm2/s、100℃動粘度:6.5mm2/s、VI:146)
・鉱油:コスモ石油ルブリカンツ(株)製の鉱油、製品名:コスモピュアスピンTK(40℃動粘度:9.3mm2/s、100℃動粘度:2.5mm2/s、VI:94)
・流動パラフィン:(株)MORESCO製の「モレスコホワイト P-70」(40℃動粘度:12.6mm2/s、100℃動粘度:2.9mm2/s、VI:56)
【0096】
(硫黄化合物)
・硫黄系化合物1:イソブテン硫化物、RheinChemie製、「RC 2545」・硫黄系化合物2:ジチオカーバメート、DOG DEUTSCHE OELFABRIK製「DeoAdd V 300」
・硫黄系化合物3:ジメルカプトチアジアゾール系化合物、RheinChemie製「RC 8213」
・硫黄系化合物4:チオリン酸エステル、LUBRIZOL製「LUBRIZOL IC9AW31」
・硫黄系化合物5:ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ADEKA製「アデカキクルーブ Z-112」
【0097】
(酸化防止剤)
・一次酸化防止剤1:BASF製の芳香族アミン系化合物、「IRGANOX L-57」
・一次酸化防止剤2:BASF製のフェノール系化合物、「IRGANOX L-135」
・二次酸化防止剤:城北化学工業(株)製の亜リン酸エステル系化合物、「JP-310」
【0098】
(その他)
・リン系極圧剤:脂肪酸リン酸エステルのアミン塩、Kingindustries製「NA-LUBE AW-64」
・金属不活性剤:VANDERBILT製のベンゾトリアゾール化合物「CUVAN303」
【0099】
〔実施例1~22および比較例1~7〕
それぞれの成分を、下記表1~3に示す割合(質量%)となるように配合して、(A)シリコーン油と(B)炭化水素系油、(C)硫黄化合物、及び(D)酸化防止剤、その他添加剤を100℃に加熱して混合することによって実施例1~22および比較例1~7の潤滑油組成物を調製した。
【0100】
得られた各実施例および各比較例の潤滑油組成物について、潤滑性を以下の試験方法で評価した。
(潤滑性)
潤滑性評価を、高速4球試験で行った。具体的には、Falex潤滑試験機(#6)を使用して評価した。試験条件は、回転速度:1200rpm、潤滑油組成物の温度:75℃、荷重:392N、試験時間:60分として、摩耗痕径で評価を行った。摩耗痕径による評価基準は、600μm超:×、550~600μm:○、550μm未満:◎とした。
【0101】
結果を表1~3に示す。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
(考察)
実施例1~22より、シリコーン油、炭化水素系潤滑油、および硫黄化合物を含む本発明の潤滑油組成物によって、非常に高い潤滑性(耐摩耗性)を達成できることが示された。特に、硫黄化合物の種類や含有量、酸化防止剤との併用によっては、摩耗痕径を550μm未満、さらには500μm未満とできる実施例もあった。
【0106】
一方、比較例1~5では、硫黄化合物を含んでいないため、実施例より潤滑性に劣っていた。硫黄化合物の代わりにリン系極圧剤を含む比較例6や、硫黄化合物を0.1質量%しか含んでいない比較例7でも、十分な潤滑性を得ることができなかった。
【0107】
この出願は、2019年10月18日に出願された日本国特許出願特願2019-190818を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
【0108】
本発明を表現するために、前述において具体例等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の潤滑油組成物は、優れた潤滑性を有する潤滑油として使用できるため、軸受用潤滑剤、含浸軸受用の潤滑剤、グリース基油、冷凍機油、可塑剤等として好適に用いることができる。特に高荷重の用途に好適である。