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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】放熱構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20230522BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20230522BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
H05K7/20 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022001927
(22)【出願日】2022-01-07
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 諒太
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】糸山 水季
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】周俊榮
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332505(JP,A)
【文献】特表平08-508611(JP,A)
【文献】特表2008-527737(JP,A)
【文献】特開昭55-048953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/373
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱する電気部品の放熱構造の製造方法であって、
多孔質材に伝熱性流体を含浸させる含浸工程と、
前記電気部品の表面に前記伝熱性流体を塗布する工程の後に、前記伝熱性流体が含浸された前記多孔質材を前記電気部品の表面に載置する載置工程と、
放熱体を前記多孔質材に当接させて、該放熱体と前記電気部品とにより前記多孔質材を挟持する挟持工程と、
を有することを特徴とする放熱構造の製造方法。
【請求項2】
発熱する電気部品の放熱構造の製造方法であって、
多孔質材に伝熱性流体を含浸させる含浸工程と、
前記伝熱性流体が含浸された前記多孔質材を前記電気部品の表面に載置する載置工程と、
放熱体の表面に前記伝熱性流体を塗布する工程の後に、前記放熱体を前記多孔質材に当接させて、該放熱体と前記電気部品とにより前記多孔質材を挟持する挟持工程と、
を有することを特徴とする放熱構造の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放熱構造の製造方法において、
前記伝熱性流体は液体金属である
ことを特徴とする放熱構造の製造方法
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の放熱構造の製造方法において、
前記多孔質材は金属材であり、少なくとも表面がニッケルである
ことを特徴とする放熱構造の製造方法
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の放熱構造の製造方法において、
前記多孔質材はメッシュである
ことを特徴とする放熱構造の製造方法
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の放熱構造の製造方法において、
前記多孔質材はスポンジである
ことを特徴とする放熱構造の製造方法
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の放熱構造の製造方法において、
前記放熱構造は基板および該基板に実装された半導体チップを備える電子機器に適用されるものであり、
前記半導体チップはサブストレートおよびダイを備え、
前記電気部品は前記ダイである
ことを特徴とする放熱構造の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCなどの携帯用情報機器にはGPU、CPUなどの半導体チップが設けられている。GPU、CPUは基板に実装させる部分であるサブストレートと、該サブストレートの表面に設けられた矩形のダイとを有する形状になっている。また、サブストレートの表面には小さいキャパシタがダイの周囲に設けられている場合がある。
【0003】
GPU、CPUなどの半導体チップは発熱体であり、その消費電力(特に高負荷時)によっては放熱させる必要がある。GPU、CPUを放熱させる手段としてベーパーチャンバ、ヒートスプレッダまたはヒートシンクなどの放熱体を用い、このような放熱体を介してダイの表面に当接させて熱を拡散させることがある。ダイと放熱体との間には、熱を効率的に伝達させるために液体金属や伝熱性グリスなどの流動体を介在させる場合がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-146819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体金属は伝熱性グリスよりも伝熱性が高く、ダイから放熱体へ効果的に熱を伝えることができる。一方、液体金属は伝熱性グリスよりも流動性が高いという特徴がある。電子機器は携帯して移動すると振動や衝撃を受けやすい。そうすると、流動性のある液体金属はダイおよび放熱体から受ける繰り返しの力により、ダイと放熱体との隙間から漏れ出る懸念がある。
【0006】
液体金属は、ガリウムを主成分とする場合があって銅やハンダと化学反応を起こしうる。また、液体金属は導電性があるため漏出して周辺のキャパシタなどの電気素子に触れるとショートするため、何らか対策が必要である。この対策として、例えばサブストレートに設けられている電気素子とダイとの間に絶縁壁を設けることが考えられる。しかし、電気素子とダイとが接近していると絶縁壁を設けるスペースが確保されない。また、漏出によりダイと放熱体との間に設けられている液体金属の量は減少してしまい、伝熱性能が低減する懸念がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、発熱する電気部品と放熱体との間の伝熱性能の低下を防止することのできる放熱構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1態様に係る放熱構造は、発熱する電気部品の放熱構造であって、前記電気部品の表面に沿って設けられる放熱体と、前記電気部品と前記放熱体とによって挟持される多孔質材と、を有し、前記多孔質材には伝熱性流体が含浸されている。これにより、伝熱性流体が多孔質材に保持されて漏出が防止され、発熱する電気部品と放熱体との間の伝熱性能の低下を防止することができる。
【0009】
前記伝熱性流体は液体金属であってもよい。液体金属によれば一層好適な伝熱性能が得られる。
【0010】
前記多孔質材は金属材であり、少なくとも表面がニッケルであってもよい。これにより、多孔質材の変質が防止される。
【0011】
前記多孔質材はメッシュであってもよい。
【0012】
前記多孔質材はスポンジであってもよい。
【0013】
基板および該基板に実装された半導体チップを備え、前記半導体チップはサブストレートおよびダイを備え、前記電気部品は前記ダイであってもよい。これにより情報機器における最も発熱する電気部品の1つとしてのダイを効果的に冷却することができる。
【0014】
本発明の第2態様に係る電子機器は、上記の放熱構造を備える。
【0015】
本発明の第3態様に係る放熱構造の製造方法は、発熱する電気部品の放熱構造の製造方法であって、多孔質材に伝熱性流体を含浸させる含浸工程と、前記伝熱性流体が含浸された前記多孔質材を前記電気部品の表面に載置する載置工程と、放熱体を前記多孔質材に当接させて、該放熱体と前記電気部品とにより前記多孔質材を挟持する挟持工程と、を有する。これにより、多孔質材に対して伝熱性流体を十分に含浸させることができる。
【0016】
前記載置工程に先立ち、前記電気部品の表面に前記伝熱性流体を塗布する工程を有してもよい。これにより、多孔質材に含浸された伝熱性流体を電気部品の表面に確実に接触させることができる。
【0017】
前記挟持工程に先立ち、前記放熱体の表面に前記伝熱性流体を塗布する工程を有する。これにより、多孔質材に含浸された伝熱性流体を放熱体の表面に確実に接触させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記態様によれば、伝熱性流体は多孔質材に含浸および保持されていることから漏出が防止され、発熱する電気部品と放熱体との間の伝熱性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる放熱構造および携帯用情報機器の一部を示す分解斜視図である。
図2図2は、GPUの斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態にかかる放熱構造の模式断面側面図である。
図4図4は、放熱構造の製造方法を示すフローチャートである。
図5図5は、載置工程の様子を示す模式断面側面図である。
図6図6は、挟持工程の様子を示す模式断面図である。
図7図7は、放熱構造の変形例にかかる製造方法の工程の様子を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる放熱構造、放熱構造の製造方法、および電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明にかかる実施形態にかかる放熱構造10および携帯用情報機器12の一部を示す分解斜視図である。
【0022】
携帯用情報機器(電子機器)12は、例えばノート型PC、タブレット端末またはスマートフォンなどであり、GPU(Graphics Processing Unit)14を備えている。放熱構造10は携帯用情報機器12に対して好適に用いられるが、据え置き型のデスクトップ型コンピュータなどの電子機器に適用することも可能である。GPU14はリアルタイム画像処理が可能な半導体チップである。GPU14は高速演算を行うことにより相応の発熱があるため放熱が必要となる。携帯用情報機器12では、GPU14の放熱手段としてベーパーチャンバ(放熱体)16を備えている。
【0023】
ベーパーチャンバ16は、2枚の金属プレート(例えば銅板)の周縁部を接合して内側に密閉空間を形成したプレート状のものであり、密閉空間に封入した作動流体の相変化によって熱を高効率に拡散可能である。ベーパーチャンバ16の密閉空間内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。
【0024】
ベーパーチャンバ16には2本の略平行するヒートパイプ18が設けられ、さらに該ヒートパイプ18の端部はファン20に接続されている。ヒートパイプ18は、薄く扁平な金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体を封入したものであり、ベーパーチャンバ16と同様にウィックが設けられている。
【0025】
GPU14等の発熱体の放熱手段としては、ベーパーチャンバ16以外にも、各種の放体が適用可能である。放熱体としては、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属プレート、グラファイトプレート、ヒートレーン、ヒートシンク等が挙げられる。
【0026】
図2は、GPU14の斜視図である。図2では放熱構造10の構成要素を省略している。GPU14はサブストレート22と、ダイ(電気部品)24とを有する。サブストレート22は基板26に実装される薄い板状部であり、平面視で矩形となっている。ダイ24は演算回路を含む部分であり、サブストレート22の上面からやや突出するように設けられている。ダイ24は、平面視でサブストレート22よりも小さい矩形であり、該サブストレート22の上面略中央に設けられている。GPU14は携帯用情報機器12の中で最も発熱する部品の一つであり、その中でもダイ24が特に発熱する。換言すれば、ダイ24が携帯用情報機器12の中で最も発熱する電気部品の1つである。なお、携帯用情報機器12はCPU(Central Processing Unit)を備えている。CPUはGPUと同様にサブストレートおよびダイを備えており、放熱構造10の適用が可能である。さらに、放熱構造10はGPU14やCPU以外の半導体チップ、またはその他の発熱する電気部品の放熱にも適用可能である。
【0027】
サブストレート22の上面には多くの小さいキャパシタ28がダイ24を取り囲むように配列されている。キャパシタ28はダイ24の四方を、場所によって1列または2列で配列されている。キャパシタ28はダイ24の比較的近傍に設けられている。キャパシタ28の高さはダイ24よりも低い。
【0028】
図3は、本発明の実施形態にかかる放熱構造10の模式断面側面図である。放熱構造10は、上記のベーパーチャンバ16と、該ベーパーチャンバ16ダイ24の表面とによって挟持されるメッシュ(多孔質材)30とを有する。メッシュ30には液体金属(伝熱性流体)32が含浸されている。
【0029】
液体金属32は基本的には常温で液体となっている金属であるが、少なくとも携帯用情報機器12の基板26に通電され、GPU14が稼働した通常の使用状態の温度で液体となっていればよい。液体金属32は金属であることから熱伝導性、導電性に優れる。また、液体金属32は液体であることから流動性がある。
【0030】
液体金属32は基本的にメッシュ30の全幅にわたって含浸されており、ダイ24の表面とベーパーチャンバ16の表面とに接し、両者を良好に熱接続している。液体金属32は基本的にメッシュ30の全面にわたって含浸されているが、条件によっては余分量の吸収余地としてメッシュ30端部などには含浸されていない箇所があってもよい。
【0031】
メッシュ30は、ダイ24の表面と同じか、またやや大きい矩形となっており、ダイ24の表面を覆っている。メッシュ30にはダイ24における発熱分布などに応じて多少の小さい孔を設けて、該孔を液体金属32の液溜まりとしてもよい。
【0032】
メッシュ30としては、ワイヤを編んだもの、または板材に対してエッチングなどによって多数の孔を設けたものなどが適用可能である。メッシュ30は、樹脂材などでもよいが金属材とすると好適な伝熱性能が得られる。メッシュ30を金属材とする場合、ニッケル材(ニッケルを主成分とする合金を含む)または銅、アルミニウム材などをニッケルメッキしたものを用いるとよい。つまり、メッシュ30は少なくとも表面をニッケル材とすることにより、液体金属32によって変質することが防止できる。メッシュ30をニッケル材で構成することにより、メッキ処理を省略することができる。また、銅材やアルミニウム材をニッケルメッキすることにより、好適な熱伝導性が得られる。
【0033】
メッシュ30は、液体金属32を含浸させることのできる他の多孔質材、例えばスポンジなどの発泡体で置き換えてもよい。本願における多孔質材とは、樹脂、金属などを問わず液体金属32などの伝熱性流体を含浸させることのできる材質を指すものとする。多孔質材としてのスポンジは、樹脂および金属(金属たわしのようなもの)のいずれでもよい。また、本願における多孔質材は弾性体、剛体のいずれでもよい。
【0034】
ベーパーチャンバ16は、基本的にダイ24の表面に沿って平行に設けられるが、メッシュ30やスポンジの全面に当接するように設けられていればよく、メッシュ30の僅かな弾性変形や厚みの不均一さに応じてわずかに非平行(略平行)であってもよい。また、液体金属32はメッシュ30に含浸されているため、図3では液体金属32単体の層を示していないが、ミクロ的にはダイ24とメッシュ30との間、又ダイ24とべーパーチャンバ16との間に液体金属32の層が存在していてもよい。
【0035】
このような、放熱構造10および携帯用情報機器12では、ダイ24とベーパーチャンバ16とがメッシュ30に含浸された液体金属32によって熱接続されていることから、好適な伝熱性能が得られる。また、携帯用情報機器12が携帯され移動する際に振動や衝撃を受けると、液体金属32にはダイ24およびベーパーチャンバ16から繰り返し圧力が加えられるが、該液体金属32は流動性があるものの、メッシュ30に含浸されていることから該メッシュ30との濡れ性などの作用によって含浸された状態が維持され、周囲に漏出することがない。
【0036】
このため、液体金属32はダイ24とベーパーチャンバ16との間に適量が保持されることから、伝熱性能の低下が防止できる。また、キャパシタ28や基板26に実装された他の電気部品に液体金属32が触れてしまうことが防止される。
【0037】
液体金属32は基本的にキャパシタ28に触れることがないため、該キャパシタ28は絶縁材34(図3では仮想線で示す)で覆わなくてもよい。また、液体金属32は基本的に基板26に実装された電気部品に触れることがないためサブストレート22の四周を囲うスポンジ壁36(図3では仮想線で示す)などで仕切らなくてもよい。つまり、放熱構造10では接着剤などの絶縁材34やスポンジ壁36が不要であることから、部品点数および組み立て工数の削減を図ることができる。ただし、設計条件により、または不測の事態を考慮し、放熱構造10においても絶縁材34やスポンジ壁36などを設けてもよい。
【0038】
本願発明者は、放熱構造10のようにダイ24とベーパーチャンバ16との間に液体金属32だけではなくメッシュ30が介在している場合と、液体金属32だけが介在している場合との比較実験を行った。実験によれば両者で伝熱性能について有意な差は見られず、放熱構造10が良好な性能を有していることが確認された。
【0039】
また、本願発明者が行った実験によれば液体金属32だけが介在している場合には、所定の大きい振動、衝撃を加えると液体金属32が漏出して伝熱性能の低下が認められたが、放熱構造10では同様の実験の前後で有意な変化は見られず、良好な性能が維持されていることが確認された。
【0040】
さらに、本願発明者はダイ24とベーパーチャンバ16との間に、液体金属32ではなく伝熱性グリスだけが介在している場合についても同様の実験を行った。伝熱性グリスは液体金属32よりも流動性が低いがそれでも多少の漏出があり、伝熱性能の多少の低下が認められた。すなわち、振動によってダイ24とベーパーチャンバ16との間から漏出するのは液体金属32だけに固有の現象ではなく伝熱性流体に共通する現象であり、本実施の形態にかかる放熱構造10の多孔質材に含浸させるのは伝熱性グリスを含む伝熱性流体とすることで漏出を防止する作用が得られる。なお、本願でいう伝熱性流体とは液体だけにかぎらず、半固体や粘性体など流動性を有するものを指し、グリスやオイルコンパウンドなどを含む。多孔質材は、含浸させる伝熱性流体の粘性、流動性および濡れ性などに基づいて素材、厚みおよび微細孔の径などを選択するとよい。
【0041】
次に、放熱構造10の製造方法について説明する。図4は、放熱構造10の製造方法を示すフローチャートである。図5は、載置工程の様子を示す模式断面側面図である。図6は、挟持工程の様子を示す模式断面図である。放熱構造10の製造方法では、図4に示す工程に先だってGPU14が基板26に実装されているものとする。基板26は携帯用情報機器12の筐体に対して組み付けられている状態でもよいし、組み付け前の状態でもよい。
【0042】
図4のステップS1(含浸工程)において、メッシュ30に液体金属32を適量含浸させる。含浸の手段は、例えば液体金属32の槽内にメッシュ30を浸漬させ、またはメッシュ30に液体金属32を塗布するとよい。液体金属32はメッシュ30に対して含浸しにくい場合もあるが、この時点ではメッシュ30は放熱構造10に組み入れる前段階の単体となっており扱いが容易であり、しかも上下前後左右の6面が開放されており液体金属32を含浸させやすい。また、この時点ではメッシュ30は単体であることから、液体金属32が適正に含浸されているか目視または所定の手段により検査することができる。
【0043】
ステップS2において、ダイ24の表面をクリーニングし、さらに液体金属32を適量塗布する。液体金属32は基本的にダイ24の全面に塗布するものとする。ステップS2は次のステップS3に先立つタイミングで行えばよい。図5ではダイ24の表面に塗布された液体金属32を太線で示している。
【0044】
ステップS3(載置工程)において、図5に示すように、液体金属32が含浸されたメッシュ30をダイ24の表面に載置する。この工程によりダイ24に塗布されている液体金属32とメッシュ30に含浸されている液体金属32とが混じり合う。このため、メッシュ30に含浸されている液体金属32はダイ24の表面と確実に接触することになる。ただし、液体金属32とダイ24の表面との濡れ性が良好である場合など条件によっては事前のステップS2を省略してもよい。
【0045】
ステップS4において、ベーパーチャンバ16の表面をクリーニングし、さらに液体金属32を適量塗布する。液体金属32を塗布するのはベーパーチャンバ16におけるメッシュ30と接触する部分とする。また、液体金属32の塗布部分には予めニッケルメッキをしておくとよい。ステップS4は次のステップS5に先立つタイミングで行えばよい。図6ではベーパーチャンバ16の表面に塗布された液体金属32を太線で示している。
【0046】
ステップS5(挟持工程)において、図6に示すように、ベーパーチャンバ16をメッシュ30に当接させて、該ベーパーチャンバ16とダイ24とによりメッシュ30を挟持する。ベーパーチャンバ16は、ねじなどによって基板26や筐体に固定する(図1参照)。
【0047】
この工程によりベーパーチャンバ16に塗布されている液体金属32とメッシュ30に含浸されている液体金属32とが混じり合う。このため、メッシュ30に含浸されている液体金属32はベーパーチャンバ16の表面と確実に接触することになる。ただし、液体金属32とベーパーチャンバ16の表面との濡れ性が良好である場合など条件によっては事前のステップS4を省略してもよい。
【0048】
また、この工程ではメッシュ30に対して予め液体金属32が含浸されているため、ステップS2によるダイ24の表面の液体金属32およびステップS4によるベーパーチャンバ16の表面の液体金属32をメッシュ30に深く含浸させる必要はない。そのため、この時点では含浸のためにベーパーチャンバ16をメッシュ30およびダイ24に対して強く押圧させたり、または長い時間押圧させる必要がない。さらに、仮にこの時点でメッシュ30に液体金属32を含浸させると、該メッシュ30はベーパーチャンバ16で覆われてしまうため含浸の状態を検査することが困難であるが、事前のステップS1で含浸させれば検査が容易である。
【0049】
図7は、放熱構造10の変形例にかかる製造方法の工程の様子を示す模式断面図である。この方法では、液体金属32が含浸されていないメッシュ30の周囲をベーパーチャンバ16に固定しておき、そのままメッシュ30をダイ24に当接させる。この場合、メッシュ30は周囲の固定部38をハンダまたはカシメによってベーパーチャンバ16に固定しておく。
【0050】
この方法ではメッシュ30の一面がベーパーチャンバ16によって塞がれていることから、なるべく内部の空気の排出がされやすいように固定部38をメッシュ30の全周ではなく断続的に設けて開放箇所を確保して、ダイ24の表面の液体金属32を含浸させるようにしてもよい。
【0051】
また、ダイ24の表面の液体金属32をメッシュ30に含浸することを促進させるためには、例えばベーパーチャンバ16およびメッシュ30をある程度強くダイ24に押し付ける、ベーパーチャンバ16およびメッシュ30をある程度長い時間ダイ24に押し付ける、またはベーパーチャンバ16およびメッシュ30の押し付け力を経時的に変化させるなどの対応をとってもよい。なお、固定部38の箇所はメッシュ30に含浸された液体金属32が周囲に漏出するのを防止する作用がある。なお、図4図7に示す製造方法は、多孔質材としてスポンジを用いる場合や伝熱性流体としてグリスを用いる場合にも適用可能である。
【0052】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10 放熱構造
12 携帯用情報機器(電子機器)
16 ベーパーチャンバ(放熱体)
22 サブストレート
24 ダイ(電気部品)
28 キャパシタ
30 メッシュ(多孔質材)
32 液体金属(伝熱性流体)
【要約】
【課題】発熱する電気部品と放熱体との間の伝熱性能の低下を防止することのできる放熱構造、放熱構造の製造方法、および電子機器を提供する。
【解決手段】放熱構造10は発熱するGPU14のダイ24の放熱を行う。放熱構造10は、ダイ24の表面に沿って設けられるベーパーチャンバ16と、ダイ24とベーパーチャンバ16とによって挟持される多孔質材30とを有する。多孔質材30には液体金属32が含浸されている。多孔質材30は金属材であり、少なくとも表面がニッケルである。多孔質材30はメッシュまたはスポンジである。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7