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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】テープディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   B65H 35/07 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
B65H35/07 L
B65H35/07 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022022557
(22)【出願日】2022-02-17
【審査請求日】2022-03-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年3月10日、第31回ニイガタIDSデザインコンペティション2021、公益財団法人にいがた産業創造機構
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年3月26日、第31回ニイガタIDSデザインコンペティション2021受賞展MOYORe、公益財団法人にいがた産業創造機構
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年4月29日、新潟日報朝刊第9面、株式会社新潟日報社
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年10月13日、ギフトショー秋2021 LIFE×DESIGN、ビジネスガイド社
(73)【特許権者】
【識別番号】518003328
【氏名又は名称】庭野 正信
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】庭野 正信
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-061867(JP,U)
【文献】特開平10-167553(JP,A)
【文献】実公昭46-029515(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/00 - 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、
前記台座に連結して立設された支柱と、
テープを装着した際に、テープ本体から引き出されたテープ先端部の非粘着面と当接するテープ押さえ部と、
引き出された前記テープ先端部を切断するためのテープ切断部と、
前記テープ押さえ部よりも前記テープ切断部から離れた後方側の位置であり、かつ、前記テープ押さえ部よりも上方の位置に、前記テープを保持するテープ保持部と、を有し、
前記テープ本体の側面のうち少なくとも一方が開放された状態で、前記テープ本体が、前記テープ押さえ部よりも前記テープ切断部から離れた位置で保持され、
前記テープ押さえ部および前記テープ保持部は、軸部材であり、一端において前記支柱に固設され不動となっており、他端側から前記テープ本体の孔内に前記テープ保持部を挿通させて前記テープ本体を装着した場合に、前記テープ保持部が、前記テープ本体の前記テープ押さえ部側の内周面に当接し、前記テープ本体を前方斜め上方向に支持するとともに、前記テープ押さえ部が、前記テープ本体の外周面のうち、前記テープ保持部よりも前記テープ押さえ部側にある外周面に当接し、前記テープ本体を後方斜め上方向に支持することで、前記テープ保持部および前記テープ押さえ部の2軸のみで前記テープ本体を保持することを特徴とするテープディスペンサー。
【請求項2】
前記テープ押さえ部が、前記テープ先端部の非粘着面と当接するとともに、前記テープ本体の外周面と当接する、請求項1に記載のテープディスペンサー。
【請求項3】
前記テープ押さえ部は、回転可能な軸部材であり、表面に滑り止め加工が施されている、請求項1または2に記載のテープディスペンサー。
【請求項4】
前記テープ切断部は、刃を有する刃部材と、当該刃部材を介装する支持部材および調整部材とから構成され、
前記支持部材および前記調整部材が上端部に凹部を有することで、前記テープ切断部において前記刃が0.25mm以下の高さで露出する、請求項1ないしのいずれかに記載のテープディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロファンテープ、ビニールテープ、ガムテープ、布テープ等を巻き重ねたリング状のテープを回転可能に支持し、当該テープを必要量引き出してカットできるテープディスペンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セロファンテープ、ビニールテープ、ガムテープ、布テープ等を巻き重ねたリング状のテープの内側に回転ドラムを嵌合させ、回転ドラムの中心に設けた枢支軸の両端をテープディスペンサーの本体に設けた一対の軸受溝内に回転可能状態で保持し、回転ドラムを回転させながらテープを必要な長さだけ引き出し、テープディスペンサーの本体の先端部に設けた刃部でカットする構成のテープディスペンサーが、各種知られている(たとえば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平2-149655号公報
【文献】実開平7-969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のテープディスペンサーは、上記の通り、予めテープの内側に回転ドラムを嵌合させてからテープディスペンサーの本体にテープを回転可能に保持する構成であるため、テープを装着する度に、使用するテープに対して回転ドラムを嵌合させる必要があり、テープの装着時に使用者の手間となっていた。
また、テープのサイズに合った回転ドラムが必要となるため、テープのサイズによっては使用できないという問題があった。
さらに、回転ドラムを回転させながら、テープを必要な長さだけ引き出してカットする際に、テープがテープ本体から引き剥がれる際にバリバリという引き出し音が発生し、使用者に不快感を与える場合があった。
【0005】
本発明は、テープの装着が容易であり、様々なサイズのテープを使用することができ、かつ、テープの引き出し音の発生を抑制することができるテープディスペンサーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテープディスペンサーは、台座と、前記台座に連結して立設された支柱と、テープを装着した際に、テープ本体から引き出されたテープ先端部の非粘着面と当接するテープ押さえ部と、引き出された前記テープ先端部を切断するためのテープ切断部と、前記テープ押さえ部よりも前記テープ切断部から離れた後方側の位置であり、かつ、前記テープ押さえ部よりも上方の位置に、前記テープを保持するテープ保持部と、を有し、前記テープ本体の側面のうち少なくとも一方が開放された状態で、前記テープ本体が、前記テープ押さえ部よりも前記テープ切断部から離れた位置で保持され、前記テープ押さえ部および前記テープ保持部は、軸部材であり、一端において前記支柱に固設され不動となっており、他端側から前記テープ本体の孔内に前記テープ保持部を挿通させて前記テープ本体を装着した場合に、前記テープ保持部が、前記テープ本体の前記テープ押さえ部側の内周面に当接し、前記テープ本体を前方斜め上方向に支持するとともに、前記テープ押さえ部が、前記テープ本体の外周面のうち、前記テープ保持部よりも前記テープ押さえ部側にある外周面に当接し、前記テープ本体を後方斜め上方向に支持することで、前記テープ保持部および前記テープ押さえ部の2軸のみで前記テープ本体を保持することを特徴とする。
上記テープディスペンサーにおいて、前記テープ押さえ部が、前記テープ先端部の非粘着面と当接するとともに、前記テープ本体の外周面と当接する構成とすることができる。
上記テープディスペンサーにおいて、前記テープ押さえ部は、回転可能な軸部材であり、表面に滑り止め加工が施されている構成とすることができる。
上記テープディスペンサーにおいて、前記テープ切断部は、刃を有する刃部材と、当該刃部材を介装する支持部材および調整部材とから構成され、前記支持部材および前記調整部材が上端部に凹部を有することで、前記テープ切断部において前記刃が0.25mm以下の高さで露出する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、テープの装着が容易であり、様々なサイズのテープを使用することができ、かつ、テープの引き出し音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るテープディスペンサーを示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るテープディスペンサーを示す側面図である。
図3】従来のテープディスペンサーにおいてテープを引き出した場面を例示した図である。
図4】第1実施形態に係るテープディスペンサーにおいてテープを引き出した場面を例示した図である。
図5】第1実施形態に係るテープディスペンサーにおける引き出し角度を説明するための要部説明図である。
図6】第1実施形態におけるテープ保持軸とテープ押さえ軸との関係を説明するための図である(その1)。
図7】第1実施形態におけるテープ保持軸とテープ押さえ軸との関係を説明するための図である(その2)。
図8】第1実施形態に係るテープディスペンサーのテープ切断部の分解斜視図である。
図9】第1実施形態に係るテープディスペンサーにおける、テープ切断時のテープ先端部とテープ切断部とテープ押さえ軸との関係を説明するための図である。
図10】第2実施形態に係るテープディスペンサーを示す斜視図である。
図11】第2実施形態に係るテープディスペンサーを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図を参照して、本発明に係るテープディスペンサーについて説明する。なお、以下においては、テープディスペンサーの長手方向を前後方向とも称し、テープディスペンサーの幅方向を左右方向とも称して説明する。
【0010】
《第1実施形態》
図1は第1実施形態に係るテープディスペンサーを示す斜視図であり、図2は第1実施形態に係るテープディスペンサーを示す側面図である。なお、図2においては、第1実施形態に係るディスペンサーにテープを取り付けた状態を示している。本実施形態に係るテープディスペンサー10は、図1および図2に示すように、台座1と、支柱2と、テープ保持軸3と、テープ押さえ軸4と、テープ切断部5とを有する。なお、本実施形態に係るテープディスペンサー10は、たとえば鉄、アルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属や、プラスチックなどの樹脂などにより構成することができる。
【0011】
台座1は、特に限定されないが、たとえば図1に示すように、上方からみた場合に長方形の板状の部材とすることができる。台座1の一方の側面は、支柱2と連結されている。また、台座1の裏面(接地面)には、滑り止めのために、樹脂などの滑り止め部材を取り付けたり、滑り止め加工を施したりすることができる。
【0012】
支柱2は、平板状の部材であり、下端部が台座1の側面と連結することで、立設して形成されている。また、支柱2には、テープ保持軸3とテープ押さえ軸4とが連結されている。さらに、テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4の位置が前後方向においてずれるように、支柱2は、上端ほど後方側に位置するように傾斜している。さらに、本実施形態では、図2に示すように、支柱2の中ほどの高さ位置にテープ押さえ軸4が取り付けられており、テープ押さえ軸4よりも上方の高さ位置にテープ保持部3が取り付けられている。これにより、テープ保持軸3は、テープ押さえ軸4よりも上方に位置し、かつ、テープ押さえ軸4よりも後方に位置することとなる。
【0013】
テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4は、支柱2に固設された軸部材である。本実施形態では、図1および図2に示すように、テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4は、円柱形状としているが、これに限定されず、多角柱状などの形状とすることができる。また、図1および図2に示すように、テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4は、軸部31,41と、テープTが外れないように、軸部31,41の両端にフランジ部32,42とを有する。なお、テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4は、フランジ部32,42を有しない構成とすることもできる。上述したように、テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4は、支柱2に取り付けられているとともに、前後方向においてずれるように配置されている。具体的には、図2に示すように、テープ保持軸3の中心とテープ押さえ軸4の中心とが前後方向においてWだけずれるように、テープ保持軸3がテープ押さえ軸4の後方に配置されている。
【0014】
テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4は、一端が支柱2に連結されており、他端側は露出した状態とされている。また、テープ押さえ軸4は、支柱2に対して回転自在に設けられており、テープ押さえ軸4の表面には、シリコンゴムなどを被覆することで、滑り止め加工が施されている。なお、テープ保持軸3も、同様に、支柱2に対して回転自在に設けてもよく、また、滑り止め加工などを施してもよい。
【0015】
次に、テープTを装着させた場面を例示して、第1実施形態に係るテープディスペンサー10の構成を説明する。テープディスペンサー10にテープTを取り付けた場合、図2に示すように、テープTは、テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4と当接した状態で保持される。具体的には、テープディスペンサー10にテープTを取り付けた場合に、テープ保持軸3は、リング状に巻き重ねられたテープTのテープ本体T1の内周面と当接することで、テープTを保持する。また、テープディスペンサー10は、テープ本体Tの側面のうち一方が開放された状態で、テープTを保持する。さらに、テープ押さえ軸4は、テープTのテープ本体T1から引き出したテープ先端部T2の非粘着面に当接し、テープTが剥離された際に生じる振動の発生を抑制することができる。
【0016】
次に、第1実施形態に係るテープディスペンサー10の使用方法について説明する。本実施形態に係るテープディスペンサー10では、上述したように、テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4が一方の端部側が露出した状態とされているため、テープ保持軸3およびテープ押さえ部4が露出している側から、テープ本体T1の孔内にテープ保持軸3だけを挿通させるだけで(テープ本体T1の孔内にテープ押さえ軸4が挿通しないように)、テープTをテープディスペンサー10に容易かつ手間なく装着することができる。そして、テープ先端部T2を、テープ本体T1から引き出し、テープ押さえ部4の下側を通して、テープ切断部5まで引き出すことで、テープTを必要量だけ引き出しカットすることができる。なお、テープTをテープディスペンサー10から取り外す場合も、テープ保持軸3が露出している側から、テープ本体T1を取り外すだけでよい。
【0017】
ここで、テープ押さえ軸4の機能の詳細について説明する。図3は、従来のテープディスペンサーにおいてテープTを引き出す場面を例示した図であり、図4は、本実施形態に係るテープディスペンサー10においてテープTを剥離する場面を例示した図である。従来のテープディスペンサーでは、図3(a),(b)に示すように、テープTを引き出した際に、テープTのテープ先端部T2が勢いよく接着面から引き?がされることにより、引き出したテープ先端部T2に振動が発生し、ビリビリというような引き出し音が発生する。このような引き出し音は、使用者に不快感を与える原因となり、できる限り抑制することが好ましい。この点、本実施形態に係るテープディスペンサー10は、図4(a)に示すように、テープTを引き出した際に、テープTのテープ先端部T2が勢いよく接着面から引き?がされると、図4(b)に示すように、テープ押さえ部4が引き出したテープ先端部T2の非粘着面と当接するため、引き出されたテープ先端部T2の振動を抑制することができ、その結果、引き出し音の発生を抑制することができる。また、本実施形態に係るテープディスペンサー10では、テープ本体T1の大きさが所定値以上(たとえば巻芯径(テープ本体T1の内径)が25mm以上、好ましくは50mm以上、より好ましくは76mm以上)である場合に、テープ押さえ部4が、テープ先端部T2だけではなく、テープ本体T1とも当接し、テープ本体T1の振動も抑制し、引き出し音の発生をより効果的に抑制することができる。
【0018】
特に、本実施形態に係るテープディスペンサー10では、テープ押さえ軸4をシリコンゴムなどの滑り止めを配したローラーとすることにより、図5に示すように、テープTを引き出す際、テープ本体T1をテープTの送り方向に回転させ、リング状のテープ本体T1と、テープ本体T1から引き出されたテープ先端部T2との剥離境界において、その角度θを鈍角とすることができ、剥離境界においてテープTが引き剥がされる部分が面ではなく線とすることができるため、引き出し音の発生を低減することができる。すなわち、引き出し音の発生は、図3(A)に示すように、テープ本体T1が自由回転をする場合、テープを引き出した際に、図3(B)に示すように、粘着力により保持されていた接着面の均衡が瞬間的に破られ勢いよく接着面から引き剥がされることにより、テープ先端部T2およびテープ本体T1に振動が発生し、ビリビリといった不快な引き出し音が発生する。特に、テープ本体T1から引き出されたテープ先端部T2との剥離境界において、その角度θが鋭角となる状態では、テープTを引き出す力が一定以上となるまではテープTの剥離が開始されず、テープTを引き出す力が一定以上となった瞬間にテープTがいっぺんに剥離されてしまい、引き出し音が発生してしまう傾向が高い。
【0019】
このような問題を解消するため、図5で示すように、角度θが鈍角の状態でテープ先端部T2を引き出し、同時に、テープ本体T1を矢印D1の方向に引き出した同量分回転させることで角度θを維持することができれば、テープ本体T1が面で引き?がされることがなくなり、引き出し音の発生を抑えることができる。本実施形態では、上記の角度θが鈍角の状態でテープ先端部T2を引き出し、同時にテープ本体T1を矢印D1の方向に引き出した同量分回転させることを実現するために、図5に示すように、テープ押さえ軸4としてシリコンゴム等の滑り止めを配したローラーを設置し、テープ先端部T2を引き出す際に、テープ押さえ軸4がテープの摩擦により引き出した距離と同じ外周分矢印D2の方向に回転し、テープ本体T1がテープ押さえ軸4との摩擦によりテープ押さえ軸4と同じ外周分回転し、角度θが一定に保たれた状態となるように構成している。また、本実施形態では、テープ保持軸3をテープ本体T1の内周側に設置することで、テープTを引く際に、F1,F2の方向に力が加わり、テープ本体T1がテープ押さえ軸4に密着し、テープ本体T1の振動も抑制することができる。なお、テープ押さえ軸4に滑り止めが施されていない場合でも、テープ押さえ軸4とテープTをテープ本体T1から剥離する境界点の位置関係から、角度θは鈍角のままとなりやすく引き出し音の発生は抑えられるが、テープ本体T1が自由に回転してしまう状況では、テープTの剥離が断続的に起こるため、滑り止めが施されている場合よりもその効果は弱くなると考えられる。そのため、テープ押さえ軸4には滑り止めを施すことが好ましい。
【0020】
また、本実施形態に係るテープディスペンサー10では、テープ本体T1の孔内にテープ保持軸3を挿通することができ、かつ、テープTの厚みがテープ保持軸3とテープ押さえ軸4との間の距離よりもテープ本体T1の厚みが薄いテープであれば、特に、サイズを限定することなく、様々なサイズのテープTを使用することができる。すなわち、従来のテープディスペンサーは、回転ドラムにテープTを嵌合して装着した後に、テープTを嵌合した回転ドラムをディスペンサー本体に取り付ける構成を有しており、回転ドラムに合わないサイズのテープTを使用することはできないという問題があった。これに対して、本実施形態に係るテープディスペンサー10では、回転ドラムを用いる必要がないため、様々なサイズのテープTを利用することができる。
【0021】
また、図2に示すように、本実施形態に係るテープディスペンサー10は、一定の大きさ以上(たとえば、テープ本体T1の直径が、テープ保持軸3からテープ押さえ部4までの距離以上)のテープを装着すると、テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4の2点でテープを保持することができる。この場合、テープTの位置が固定され、引き出し時のテープ本体T1のブレを抑制することができるため、滑らかに(テープの巻体が振動することなく)、テープTを引き出すことが可能となる。
【0022】
具体的に、図7および図8を参照して、第1実施形態に係るテープ保持部3とテープ押さえ軸4との関係を説明する。ここで、図7に示すように、テープ本体T1の内径をD1、テープ本体T1の芯(図7で灰色で示す部分)の外径をD2、テープ本体T1の外径(芯に巻かれたテープを含む外径)をD3、テープ保持軸3の軸部31の直径をD4、テープ保持軸3のフランジ部32の直径をD5(D4≦D5)、テープ押さえ軸4の軸部41の直径をD6、テープ押さえ軸4のフランジ部42の直径をD7(D6≦D7)、テープ保持軸3とテープ押さえ軸4との距離(中心間の距離)をWとするとき、本実施形態において、テープ保持部3およびテープ押さえ軸4は、下記(1)または(2)の関係を有する。なお、本実施形態では、テープ保持部3をテープ本体T1の孔内に挿通することで、テープ保持部3によりテープ本体T1を保持する構成であるため、D1>D5となる。
(1)W<(D1+D2-D4+D6)/2、かつ、(2)W>(D3-D1+D5+D7)/2
【0023】
すなわち、本実施形態に係るテープディスペンサー10において、引き出し音の防音機能を発揮するためには、テープTを使い切った状態(テープ本体T1が芯だけの状態)のときでも、テープ本体T1の内径とテープ保持軸3が当接するとともに、テープ本体T1の外径とテープ押さえ軸4も当接することが望ましい。このような状態を、図7(A)で説明すると、距離L1(テープ本体T1の内周とテープ保持軸3との接点から、テープ本体T1の外周とテープ押さえ軸4との接点までの距離)よりも、距離L2(テープ本体T1の内周とテープ保持軸3との接点から、反対側のテープ本体T1の外周までの距離)L2が大きくなればよいこと(L1<L2)がわかる。ここで、図7(A)に示すように、距離L1は、L1=W+(D4-D6)/2で表すことができ、距離L2は、L2=W+(D4-D6)/2で表せることができる。そのため、L1<L2は、W+(D4-D6)/2<W+(D4-D6)/2と表すことができ、当該式を整理すると、上記(1)の関係が求められることとなる。
【0024】
また、本実施形態に係るテープディスペンサー10において、テープ本体T3をテープ保持軸3で保持するためには、新品の状態のテープ本体T3の厚みL3(テープ本体T1の巻き芯および巻き芯に巻かれているテープ部分の合計の厚み)よりも、テープ保持軸3とテープ押さえ軸4との間の距離L4が大きくなる必要がある(L3<L4)。ここで、図7(B)に示すように、新品の状態のテープ本体T3の厚みL3は(D3-D2)/2で表すことができ、テープ保持軸3とテープ押さえ軸4との間の距離L4はW-{(D5+D7)/2}で表すことができる。そのため、L3<L4は、(D3-D2)/2<W-{(D5+D7)/2}と表すことができ、当該式を整理すると、上記(2)の関係が求められる。
【0025】
さらに、本実施形態に係るテープディスペンサー10では、テープ保持軸3がテープ押さえ軸4よりも上方に位置し、かつ、テープ保持軸3がテープ押さえ軸4よりもテープ切断部5から遠い後方に位置するため、図5に示すように、テープTの引き出し角度θを鈍角とすることができる。テープTの引き出し角度θを鈍角とすることで、鋭角である場合と比べて、使用者がテープTを引き出す力(テープ先端部T2を前方に引き出す力)を、テープTを引き剥がす力により利用することができるため、テープTを引き出し易くすることができる。
【0026】
テープ切断部5は、図1および図2に示すように、台座1の前端部に設けられている。ここで、図8は、第1実施形態に係るテープディスペンサー10のテープ切断部5の分解斜視図である。図8に示すように、テープ切断部5は、支持部材51と、刃部材52と、調整部材53とから構成されている。支持部材51は、台座1の先端に略垂直に立設固定された平板状の部材であり、傾斜部512が前方ほど低くなるように傾斜して形成されている。これにより、刃部材52に当てたテープ先端部T2を下に引っ張って切断する際に、テープ先端部T2が支持部材51に触れないように、あるいは、支持部材51の凹部511のみに触れるようになる。また、刃部材52は、テープ先端部T2を切断するための刃であり、支持部材51と調整部材53との間に介装されている。本実施形態では、刃部材52の上端部521が、支持部材51の凹部511および調整部材53の凹部531から0.25mm以下、好ましくは0.15mm~0.25mm突出した状態で、刃部材52が固定されている。これにより、一般的なテープの厚さはセロテープ、OPPテープが0.05mm程度、マスキングテープ、ビニールテープなどは0.1mm程度であるため、テープ先端部T2を刃部材52で好適に切断することができるとともに、人間の表皮の厚さはおおよそ0.2mm程度であるため、万が一、使用者の指が刃部材5bに触れた場合でも血管などを傷つけることを有効に防止することができる。さらに、調整部材53は、凹部531と傾斜部532とを有する。凹部531は、上端部533よりも0.3~0.4mm程度凹んで形成されており、これにより、刃部材52の上端部521を突出させることができる。また、傾斜部532は、後方ほど低くなるように傾斜して形成され、凹部531の上端は刃部材52に対し略直角の平面となっている。これにより、刃部材52に当てたテープ先端部T2を切断する際に、テープ先端部T2の粘着面が傾斜部532に触れて粘着保持され、テープ先端部T2が調整部材53の凹部531に触れずに好適にテープ先端部T2が刃部材52の上端部521に押し当てられ切断が容易となっている。支持部材51、刃部材52、および調整部材53は、図示しない螺子等の固定部材により、一体的に固定されている。螺子などの固定部材を取り外すことで、刃部材52を交換可能となっている。
【0027】
テープ切断時におけるテープ先端部T2とテープ切断部5とテープ押さえ軸4の関係を示すために図9(a)の破線部の断面を(b)において図示した。テープ本体T1より引き出されたテープ先端部T2は、テープ押さえ軸4に接しテープ切断部5へ引き出されるが、このとき、テープ先端部T2を調整部材53の傾斜部532に粘着保持するため、テープ押さえ軸4の接線とテープ切断部5の調整部材53を結ぶ延長線が、調整部材53の傾斜部532の延長平面lに対して高い位置となるように、テープ押さえ軸4とテープ切断部5が構成されることが好ましい。また、刃部材52の上端部521が、調整部材53の傾斜部532の延長平面lより突出しないように構成することが好ましい。
【0028】
このような構成から、本実施形態に係るテープディスペンサー10において、テープTを必要量引き出して切断する場合には、テープ押さえ軸4をテープ先端部T2の非粘着面に当接させた状態で、テープ先端部T2を前方に必要量引き出し、テープ先端部T2の切断個所をテープ切断部5へ押し当てて、下に引っ張ることで、刃部材52によりテープ先端部T2を切断することができる。
【0029】
以上のように、第1実施形態に係るテープディスペンサー10は、テープTを装着した際に、テープ本体T1から引き出されたテープ先端部T2の非粘着面と当接するテープ押さえ軸4と、引き出されたテープ先端部T2を切断するためのテープ切断部5と、を有し、テープ本体T1が、テープ押さえ軸4よりもテープ切断部5から離れた後方の位置で保持される。これにより、第1実施形態に係るテープディスペンサー10では、テープ先端部T2がテープ押さえ部4と当接した状態で、テープTが引き出されるため、テープTの引き出し時の引き出し音の発生を抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態に係るテープディスペンサー10では、従来のテープディスペンサーのように回転ドラムを用いずに、テープ押さえ軸4よりも上方の位置であり、かつ、テープ押さえ軸4よりもテープ切断部5から離れた後方側の位置に、テープ本体T1の内周面に当接することでテープTを保持するテープ保持軸3をさらに有しているため、使用できるテープのサイズが広汎となり、種々のサイズのテープを使用することが可能となる。さらに、テープ押さえ軸4およびテープ保持軸3は、一端において支柱2と連結しているが、他端側からテープ本体T1の孔内にテープ保持軸3を挿通させることでテープTが装着可能となっているため、テープTの着脱が容易となっている。
【0031】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10は、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aを示す斜視図であり、図11は、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aを示す側面図である。第2実施形態に係るテープディスペンサー10aは、以下に説明すること以外は、第1実施形態に係るテープディスペンサー10と同様に構成され、第1実施形態に係るテープディスペンサー10と同様に動作する。
【0032】
図10に示すように、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aは、支柱2にテープ押さえ軸4が設けられているが、テープ保持軸3が設けられていない。そのため、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aでは、テープTを装着した場合に、図11に示すように、台座1の上面にテープTの外周面の一部が当接した状態でテープTが載置されることとなり、台座1が、テープTを保持するテープ保持部として機能する。なお、図10においては、台座1の上面を、平坦な面として例示しているが、テープTが左右に動いた場合にテープディスペンサー10aから飛び出ないように、テープTが載置される台座1の部分を凹部に形成することもできる。
【0033】
次に、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aの使用方法について説明する。まず、テープTを台座1の上であり、かつ、テープ押さえ軸4の後方に配置する。そして、テープ先端部T2の非粘着面をテープ押さえ軸4に当接させた状態で、テープ先端部T2を必要量引き出す。なお、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aでは、テープ先端部T2を前方に引き出す場合でも、テープ本体T1の前方にテープ押さえ軸4が存在するため、テープ本体T1はテープ押さえ軸4の真後ろの位置で固定される。また、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aでも、引き出されたテープ先端部T2は、非粘着面においてテープ押さえ軸4と当接するため、テープTの引き出し時の振動を抑制することができ、引き出し音の発生を抑制することができる。そして、必要量引き出したテープ先端部T2を、テープ切断部5で切断することで、使用者は必要な量のテープTを得ることができる。
【0034】
以上のように、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aも、第1実施形態に係るテープディスペンサー10と同様に、テープTを装着した際に、テープ本体T1から引き出されたテープ先端部T2の非粘着面と当接するテープ押さえ軸4を有し、テープ本体T1が、テープ押さえ軸4よりもテープ切断部5から離れた後方の位置で保持されるため、テープ先端部T2がテープ押さえ部4と当接した状態で、テープTを引き出すことができ、テープTの引き出し音の発生を抑制することができる。また、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aでは、テープ本体T1の外周面と当接するようにテープTが台座1により保持されるため、従来のテープディスペンサーのように回転ドラムを用いなくても、テープTを容易に装着することができとともに、様々なサイズのテープTを使用することが可能となる。
【0035】
さらに、第2実施形態に係るテープディスペンサー10aは、支柱2にテープ保持軸3を有しない構成のため、第1実施形態に係るテープディスペンサー10と比べて、テープディスペンサー10aのサイズを小さくすることができ、また、製造コストを低減することもできる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
たとえば、上述した第1実施形態において、使用するテープTのサイズに応じて、テープ保持軸3およびテープ押さえ軸4の間隔を任意に調整可能とする位置調整機構を、支柱2に備える構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
10,10a…テープディスペンサー
1…台座
2…支柱
3…テープ保持軸
4…テープ押さえ軸
5…テープ切断部
51…支持部材
52…刃部材
53…調整部材
T…テープ
T1…テープ本体
T2…テープ先端部
【要約】
【課題】テープの装着が容易であり、様々なサイズのテープを使用することができ、かつ、テープの引き出し音の発生を抑制することができるテープディスペンサーを提供すること。
【解決手段】テープTを装着した際に、テープ本体T1から引き出されたテープ先端部T2の非粘着面と当接するテープ押さえ部4と、引き出されたテープ先端部T2を切断するためのテープ切断部5と、を有し、テープ本体T1が、テープ押さえ部4よりもテープ切断部5から離れた位置で保持されることを特徴とするテープディスペンサー。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11