(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】水処理装置、及び水素細菌増殖度判定方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/10 20060101AFI20230522BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20230522BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230522BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20230522BHJP
A61M 1/16 20060101ALN20230522BHJP
【FI】
B01D61/10
B01D61/02 500
C02F1/44 H
C02F1/461 A
A61M1/16 181
(21)【出願番号】P 2022094410
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】雨森 大治
(72)【発明者】
【氏名】小泉 義信
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正人
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-20221(JP,A)
【文献】特開2019-118645(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181074(WO,A1)
【文献】特開2020-142206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 1/461
A61M 1/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水又は前記原水を処理した処理水を導入し、前記原水又は前記処理水に水素を溶解させることにより溶存水素水を生成する水素溶解装置と、
前記水素溶解装置に接続され、前記溶存水素水に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水を生成する逆浸透膜処理装置と、
前記原水又は前記処理水から前記溶存水素水を経て前記逆浸透溶存水素水を生成する水処理運転の累積時間を把握する運転時間把握部と、
前記水素溶解装置から前記逆浸透膜処理装置に至る水処理系統における通水のしにくさを通水抵抗の大きさとして直接的、あるいは前記通水抵抗に応じて変動する指標に基づいて間接的に把握するための通水抵抗把握部と、
前記通水抵抗の標準値を前記累積時間に応じて想定される前記通水抵抗の変動を反映するように規定した標準通水抵抗判定値、及び前記通水抵抗把握部により把握される前記通水抵抗の大きさの乖離度に基づいて、前記水処理系統における水素細菌の増殖度に係る判定処理を行う判定処理部と、
を有すること、を特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記通水抵抗把握部が、前記水処理系統に設けられた水圧センサによって検知された検知水圧を指標として前記通水抵抗の大きさを把握するものであり、
前記標準通水抵抗判定値が、前記累積時間に応じて想定される標準的な水圧の変動を反映した標準水圧として規定されており、
前記乖離度は、前記検知水圧と前記標準水圧との差に基づいて導出され、
前記判定処理部は、前記乖離度が所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、前記水処理系統において前記水素細菌が増殖しているとの判定を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記水圧センサが、前記水処理系統において前記逆浸透膜処理装置が備える逆浸透膜よりも上流側に設けられていること、を特徴とする請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記水処理系統に設けられたポンプを有し、
前記通水抵抗把握部が、前記ポンプの稼働状態を示す稼働状態値を指標として前記通水抵抗の大きさを把握するものであり、
前記標準通水抵抗判定値が、前記累積時間に応じて想定される前記ポンプの標準的な前記稼働状態値の変動を反映した稼働状態標準値として規定されており、
前記乖離度は、前記通水抵抗把握部によって把握される前記稼働状態値と、前記稼働状態標準値との差に基づいて導出され、
前記判定処理部は、前記乖離度が所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、前記水処理系統において前記水素細菌が増殖しているとの判定を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記ポンプが、前記水処理系統において前記逆浸透膜処理装置が備える逆浸透膜よりも上流側に設けられていること、を特徴とする請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記ポンプが、デューティー比を用いた制御により動作制御されるものであり、
前記デューティー比が、前記稼働状態値とされること、を特徴とする請求項4又は5に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記通水抵抗把握部が、前記逆浸透膜処理装置から排出される排出水量を指標として前記通水抵抗の大きさを把握するものであり、
前記標準通水抵抗判定値が、前記累積時間に応じて想定される標準的な前記排出水量の変動を反映した標準排出水量として規定されており、
前記乖離度は、前記排出水量と前記標準排出水量との差に基づいて導出され、
前記判定処理部は、前記乖離度が所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、前記水処理系統において前記水素細菌が増殖しているとの判定を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記水処理系統に洗浄用の液体を通液させることにより、前記水処理系統の洗浄を行う洗浄運転を行えるものであり、
前記洗浄運転の実施時間、及び実施回数に基づいて前記洗浄運転の実施制御を行える制御装置を有し、
前記制御装置は、前記判定処理部により前記水処理系統において前記水素細菌が増殖しているとの判定がなされることを条件として、前記乖離度及び前記累積時間のいずれか一方又は双方に基づいて、前記洗浄運転の前記実施時間、及び前記実施回数のいずれか一方又は双方を設定し、当該設定に基づいて前記洗浄運転の前記実施制御を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記水処理系統に通液させる洗浄用の液体を昇温させる昇温装置、及び前記洗浄用の液体の一部又は全部として薬液を前記水処理系統に供給する薬液供給装置の少なくともいずれかを備えていること、を特徴とする請求項8に記載の水処理装置。
【請求項10】
原水又は前記原水を処理した処理水を導入し、前記原水又は前記処理水に水素を溶解させることにより溶存水素水を生成する水素溶解装置と、前記水素溶解装置に接続され、前記溶存水素水に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水を生成する逆浸透膜処理装置と、前記水素溶解装置から前記逆浸透膜処理装置に至る水処理系統における水素細菌の増殖度に係る判定処理を行う判定処理部と、を備えた水処理装置における前記水素細菌の増殖度を判定する水素細菌増殖度判定方法であって、
前記水処理系統における通水のしにくさを通水抵抗の大きさとして直接的、あるいは前記通水抵抗に応じて変動する指標に基づいて間接的に把握する通水抵抗把握ステップと、
前記水素溶解装置に貯留された前記水から前記溶存水素水を経て前記逆浸透溶存水素水を生成する水処理運転の累積時間に応じて想定される前記通水抵抗の変動を反映するように前記通水抵抗の標準値を規定した標準通水抵抗判定値、及び前記通水抵抗の大きさの乖離度に基づいて前記判定処理を行う判定ステップと、
を含む工程を経て前記水素細菌の増殖度を判定すること、を特徴とする水素細菌増殖度判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置、及び水素細菌増殖度判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血液透析において透析患者に酸化ストレスが発生することが知られている。これは、透析時に発生する活性酸素が原因であると考えられており、この活性酸素を消去して酸化ストレスの軽減を図ることが提案されている。
【0003】
このような知見に基づき、例えば、逆浸透膜(RO膜)で処理され、純化した水(以下、「逆浸透水」という。)に水素を溶存させることにより、高濃度の水素が溶存する透析液を製造する方法が提案されている。そして、この透析液を使用することにより、水素を生体内のヒドロキシラジカルと反応させ、酸化ストレスや炎症反応を抑制することができる。このような透析液を生成するために現粉末を希釈する透析用水を製造するための装置として、例えば下記特許文献1に開示されているような透析用水製造装置が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているような透析用水製造装置を用いて水素を含有した透析液(以下、「水素含有透析液」とも称す)を製造する場合、水素を豊富に含む液体が液体流路内を流れることになる。ここで、例えば装置外部から原水によって運ばれる等して、透析用水製造装置の内部に、水素細菌、あるいは水素利用菌、水素酸化細菌、水素菌等と呼ばれる細菌(以下、単に「水素細菌」とも称する)が極微量に留置され、液体流路内を流れる液体に含まれる水素を用いて増殖することがある。このようにして、水素細菌により液中の水素が消費されてしまうと、予定していた水素濃度を有する透析用水を得ることができない可能性がある。
【0006】
透析用水製造装置は、熱水等を用いた洗浄を定期的に行う等して、水素細菌を殺菌するために適切なメンテナンスを行えば、水素細菌の増殖を抑制できるものとされている。しかしながら、例えば洗浄時間が不足するなどして、想定されているのとは異なる方法による使用やメンテナンスが行われてしまうと、水素細菌を十分に殺菌して増殖を抑制できない可能性がある。
【0007】
ここで、透析用水製造装置により製造された透析用水、あるいは透析液の水素濃度が予定されている濃度よりも低い場合は、透析用水の製造を停止して透析用水製造装置のメンテナンスを行う必要がある。しかしながら、血液透析治療は、特定の時間継続して稼働させる必要がある。そのため、血液透析治療の現場においては、透析用水製造装置による透析用水の製造を停止してメンテナンスを行うといった運用を簡単には行えず、数時間ないし数日後の次のタイミングまで洗浄を行えない場合がありうるといった事情がある。このような場合には、透析用水製造装置のメンテナンスを行えるようになる時期まで、水素含有透析液を利用することにより得られるはずの効果が抑制されてしまう可能性がありうるといった問題があった。そのため、水素細菌を殺菌するために必要なメンテナンスを適切なタイミングで行えるようにすべく、水素細菌の増殖度を適確に判定可能な方法の実現が求められている。
【0008】
そこで本発明は、水素細菌が増殖している可能性があることを適確に把握可能な水処理装置、及び水素細菌増殖度判定方法の実現を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の水処理装置は、原水又は前記原水を処理した処理水を導入し、前記原水又は前記処理水に水素を溶解させることにより溶存水素水を生成する水素溶解装置と、前記水素溶解装置に接続され、前記溶存水素水に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水を生成する逆浸透膜処理装置と、前記原水又は前記処理水から前記溶存水素水を経て前記逆浸透溶存水素水を生成する水処理運転の累積時間を把握する運転時間把握部と、前記水素溶解装置から前記逆浸透膜処理装置に至る水処理系統における通水のしにくさを通水抵抗の大きさとして直接的、あるいは前記通水抵抗に応じて変動する指標に基づいて間接的に把握するための通水抵抗把握部と、前記通水抵抗の標準値を前記累積時間に応じて想定される前記通水抵抗の変動を反映するように規定した標準通水抵抗判定値、及び前記通水抵抗把握部により把握される前記通水抵抗の大きさの乖離度に基づいて、前記水処理系統における水素細菌の増殖度に係る判定処理を行う判定処理部と、を有すること、を特徴とするものである。
【0010】
(2)上述した本発明の水処理装置は、前記通水抵抗把握部が、前記水処理系統に設けられた水圧センサによって検知された検知水圧を指標として前記通水抵抗の大きさを把握するものであり、前記標準通水抵抗判定値が、前記累積時間に応じて想定される標準的な水圧の変動を反映した標準水圧として規定されており、前記乖離度は、前記検知水圧と前記標準水圧との差に基づいて導出され、前記判定処理部は、前記乖離度が所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、前記水処理系統において前記水素細菌が増殖しているとの判定を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0011】
(3)上述した本発明の水処理装置は、前記水圧センサが、前記水処理系統において前記逆浸透膜処理装置が備える逆浸透膜よりも上流側に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0012】
(4)上述した本発明の水処理装置は、前記水処理系統に設けられたポンプを有し、前記通水抵抗把握部が、前記ポンプの稼働状態を示す稼働状態値を指標として前記通水抵抗の大きさを把握するものであり、前記標準通水抵抗判定値が、前記累積時間に応じて想定される前記ポンプの標準的な前記稼働状態値の変動を反映した稼働状態標準値として規定されており、前記乖離度は、前記通水抵抗把握部によって把握される前記稼働状態値と、前記稼働状態標準値との差に基づいて導出され、前記判定処理部は、前記乖離度が所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、前記水処理系統において前記水素細菌が増殖しているとの判定を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0013】
(5)上述した本発明の水処理装置は、前記ポンプが、前記水処理系統において前記逆浸透膜処理装置が備える逆浸透膜よりも上流側に設けられていること、を特徴とする請求項4に記載のものであると良い。
【0014】
(6)上述した本発明の水処理装置は、前記ポンプが、デューティー比を用いた制御により動作制御されるものであり、前記デューティー比が、前記稼働状態値とされること、を特徴とするものであると良い。
【0015】
(7)上述した本発明の水処理装置は、前記通水抵抗把握部が、前記逆浸透膜処理装置から排出される排出水量を指標として前記通水抵抗の大きさを把握するものであり、前記標準通水抵抗判定値が、前記累積時間に応じて想定される標準的な前記排出水量の変動を反映した標準排出水量として規定されており、前記乖離度は、前記排出水量と前記標準排出水量との差に基づいて導出され、前記判定処理部は、前記乖離度が所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、前記水処理系統において前記水素細菌が増殖しているとの判定を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0016】
(8)上述した本発明の水処理装置は、前記水処理系統に洗浄用の液体を通液させることにより、前記水処理系統の洗浄を行う洗浄運転を行えるものであり、前記洗浄運転の実施時間、及び実施回数に基づいて前記洗浄運転の実施制御を行える制御装置を有し、前記制御装置は、前記判定処理部により前記水処理系統において前記水素細菌が増殖しているとの判定がなされることを条件として、前記乖離度及び前記累積時間のいずれか一方又は双方に基づいて、前記洗浄運転の前記実施時間、及び前記実施回数のいずれか一方又は双方を設定し、当該設定に基づいて前記洗浄運転の前記実施制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0017】
(9)上述した本発明の水処理装置は、前記水処理系統に通液させる洗浄用の液体を昇温させる昇温装置、及び前記洗浄用の液体の一部又は全部として薬液を前記水処理系統に供給する薬液供給装置の少なくともいずれかを備えていること、を特徴とするものであると良い。
【0018】
(10)本発明の水素細菌増殖度判定方法は、原水又は前記原水を処理した処理水を導入し、前記原水又は前記処理水に水素を溶解させることにより溶存水素水を生成する水素溶解装置と、前記水素溶解装置に接続され、前記溶存水素水に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水を生成する逆浸透膜処理装置と、前記水素溶解装置から前記逆浸透膜処理装置に至る水処理系統における水素細菌の増殖度に係る判定処理を行う判定処理部と、を備えた水処理装置における前記水素細菌の増殖度を判定する水素細菌増殖度判定方法であって、前記水処理系統における通水のしにくさを通水抵抗の大きさとして直接的、あるいは前記通水抵抗に応じて変動する指標に基づいて間接的に把握する通水抵抗把握ステップと、前記原水又は前記処理水から前記溶存水素水を経て前記逆浸透溶存水素水を生成する水処理運転の累積時間に応じて想定される前記通水抵抗の変動を反映するように前記通水抵抗の標準値を規定した前記標準通水抵抗判定値、及び前記通水抵抗把握部により把握される前記通水抵抗の大きさの乖離度に基づいて前記判定処理を行う判定ステップと、を含む工程を経て前記水素細菌の増殖度を判定すること、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水素細菌が増殖している可能性があることを適確に把握可能な水処理装置、及び水素細菌増殖度判定方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水処理装置の構成を示す説明図である。
【
図2】
図1の水処理装置を構成する水素溶解装置を模式的に示した断面図である。
【
図3】累積時間と通水抵抗の大きさとの関係を模式的に示したグラフである。
【
図4】
図1の水処理装置において行われる洗浄運転に関する制御フローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る水処理装置10、及び水素細菌増殖度判定方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、水処理装置10は、タンク20、水素溶解装置30、及び逆浸透膜処理装置40を備えており、これらを配管接続することにより水処理系統100を形成したものである。水処理装置10は、これらの構成に加えて、水処理系統100におけるタンク20よりも上流側の構成として、プレフィルタ12や、軟水化装置14、活性炭処理装置16等を備えている。さらに、水処理装置10は、水処理系統100におけるタンク20よりも下流側の構成として、電解水タンク50や、ポンプ60、水圧センサ70、昇温装置80、薬液供給装置90等を備えている。また、水処理装置10は、判定装置200、及び制御装置210を備えている。
【0023】
水処理装置10は、ポンプ60を作動させることにより、水処理系統100においてタンク20に貯められた水を圧送しつつ、圧送された水を水素溶解装置30、及び逆浸透膜処理装置40において処理することにより、水を例えば血液透析治療等において好適に利用可能な状態にして供給可能なものである。以下、水処理装置10を構成する各部の構成について、さらに具体的に説明する。
【0024】
プレフィルタ12は、水処理装置10の外部から供給される水道水や井戸水、地下水などの水(原水2)から不純物を除去するためのものである。プレフィルタ12は、適宜のフィルタによって構成できるが、例えば原水2に含まれる硬度成分(カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの溶解固形物等)から、鉄錆や砂粒子等の不純物を除去できるものとされている。
【0025】
軟水化装置14は、原水2に含まれている硬度成分をイオン交換による置換反応により除去し、軟水とする処理を行うためのものである。水処理系統100において、軟水化装置14は、プレフィルタ12に対して下流側に配管接続されている。そのため、軟水化装置14は、プレフィルタ12において不純物が除去された原水2からさらに硬度成分を除去し、原水2を軟水化することができる。
【0026】
活性炭処理装置16は、水処理系統100において、軟水化装置14に対して下流側に配管接続されている。活性炭処理装置16には、軟水化装置14により軟水化処理された原水2が供給される。活性炭処理装置16は、多孔質の吸着物質である活性炭を用いて、原水2に含まれる残留塩素、クロラミン、有機物などを物理的な吸着作用により除去する処理を行うためのものである。
【0027】
タンク20は、水処理系統100において、活性炭処理装置16に対して下流側に配管接続されている。そのため、タンク20には、プレフィルタ12において不純物が除去され、軟水化装置14において軟水化され、さらに活性炭処理装置16において残留塩素等の物質が除去された原水2が供給され、貯留される。
【0028】
水素溶解装置30は、水処理系統100において、タンク20に対して下流側に配管接続されている。水素溶解装置30は、タンク20から導入された原水2に水素を溶解させたもの(溶存水素水3)を生成するものである。水素溶解装置30は、原水2に水素を溶解させて溶存水素水3を生成できるものであればいかなるもので有っても良い。本実施形態では、水素溶解装置30として、電気分解処理を行うことにより、水素が溶存した溶存水素水3を生成可能なものが採用されている。
【0029】
さらに具体的には、
図2に示すように、水素溶解装置30は、固体高分子膜32や電解槽34を備えたものとすることができる。電解槽34は、電解槽本体34a、導入路34b、送水路34c、及び排水路34dを有する。また、水素溶解装置30は、電解槽本体34aの内部に、固体高分子膜32、陽極35、陰極36、誘電体層38を有する。
【0030】
電解槽本体34aは、電気分解が行われる原水2を貯留可能な槽状のものである。導入路34bは、タンク20から供給された原水2を電解槽本体34aの内部に導入するためのものである。送水路34cは、水素溶解装置30によって生成された溶存水素水3を水処理系統100の下流側に送出するための流路である。また、排水路34dは、水素溶解装置30における処理によって発生した排水(溶存酸素水)を外部に排出するための流路である。
【0031】
固体高分子膜32は、水素溶解装置30において電解質として機能するものである。固体高分子膜32は、電解槽34の短手方向略中央部において、電解槽34の長手方向に延びるように配置されている。これにより、電解槽34の内部空間は、固体高分子膜32を介して一方側の空間と、他方側の空間とに隔てられている。固体高分子膜32は、電気分解により、陽極35側で発生したオキソニウムイオン(H3O+)を陰極36側へと移動させる役割を有するものである。固体高分子膜32は、例えばスルホン酸基を有するフッ素系の樹脂材料により形成されたものを好適に使用することができる。より具体的には、ナフィオン(デュポン社製)、Flemion(旭硝子社製)、Aciplex(旭硝子社製)などを固体高分子膜32として好適に用いることができる。
【0032】
陽極35及び陰極36は、電解槽34への給電を行う給電体として機能するものである。陽極35及び陰極36は、固体高分子膜32を介して互いに対向するように配置されている。陽極35及び陰極36は、例えば、チタンや白金などの素材を用いて形成されている。陽極35と陰極36は、電気的に接続されている。
【0033】
誘電体層38は、固体高分子膜32と陽極35との間に形成された空間、及び固体高分子膜32と陰極36との間に形成された空間に配されている。誘電体層38は、例えばチタンや白金などの素材を用いて形成されている。
【0034】
水素溶解装置30において原水2を電気分解すると、陽極35側、及び陰極36側において以下のような反応が起こる。
陽極側:6H2O→4H3O++O2+4e-
陰極側:4H3O++4e-→2H2+4H2O
【0035】
水素溶解装置30においては、陰極36における水素の生成原料としてオキソニウムイオン(H3O+)が使用され、電気分解処理の際にOH-イオンが発生しない。従って、水素溶解装置30は、溶存水素の量を増やすために高い電流値で電気分解処理を行った場合であっても、処理水のpHが変化しない。従って、水素溶解装置30においては、pHの上限値に起因して、処理水の溶存水素濃度が抑制されてしまうという不都合を生じることがなくなり、所望の高い電流値で電気分解処理を行い、処理水の溶存水素濃度を向上させることが可能になる。その結果、必要な溶存水素濃度を有する処理水を得ることが可能になる。
【0036】
水素溶解装置30は、上述した電気分解処理により生成した溶存水素水3を、電解槽本体34aの陰極36側に形成された送水路34cから、逆浸透膜処理装置40側に導出できる。本実施形態の水処理系統100では、水素溶解装置30と逆浸透膜処理装置40との間に電解水タンク50が設けられている。そのため、水素溶解装置30の送水路34cから導出された溶存水素水3は、逆浸透膜処理装置40に到達する前に、一旦、電解水タンク50に導入され、貯蔵される。一方、電気分解処理により、陽極35側で発生した溶存酸素水4は、陽極35側に形成された排水路34dにより、電解槽本体34aの外部へと排出される。
【0037】
逆浸透膜処理装置40は、水処理系統100において水素溶解装置30よりも下流側に配されている。本実施形態では、逆浸透膜処理装置40は、電解水タンク50を介して水素溶解装置30よりも下流側において配管接続されている。逆浸透膜処理装置40は、逆浸透膜42を用いて逆浸透膜処理を行うための装置である。
図1に示すように、逆浸透膜処理装置40は、逆浸透膜42、逆浸透水タンク44、及び逆浸透水ポンプ46を備えている。
【0038】
逆浸透膜42は、水素溶解装置30により生成した溶存水素水3に対して、逆浸透処理を行うためのものである。ここで、半透膜を境界にして、濃度の異なる溶液がある場合、低濃度の溶液から高濃度の溶液へ水が移動する現象(浸透)が生じる。これに対し、半透膜を境界にして、高濃度の溶液側に圧力を加えることにより、高濃度側の溶液から低濃度側の溶液へ水を移動させ、低濃度側に水が浸透する現象(逆浸透)を生じさせることができる。逆浸透膜42は、逆浸透膜処理装置40において逆浸透させた水(逆浸透水)を得る処理(逆浸透膜処理)を行うために設けられている。
【0039】
逆浸透膜処理装置40は、供給された水を逆浸透させることにより、微量金属類などの不純物を除去することができる。逆浸透膜処理装置40は、水素溶解装置30側(本実施形態では電解水タンク50)から供給された溶存水素水3から、さらに微量金属類などの不純物を除去することができる。本実施形態の水処理装置10では、上述したように水素溶解装置30において溶存水素水3を生成するまでの段階において、既にプレフィルタ12において不純物が除去され、軟水化装置14において軟水化され、さらに活性炭処理装置16において残留塩素等の物質が除去されている。そのため、水処理装置10は、逆浸透膜処理装置40によって溶存水素水3を逆浸透処理することにより、ISO13959(透析用水基準)に規定される水質基準を満たす水(逆浸透水)を得ることができる。また、水処理装置10においては、水素溶解装置30において生成された溶存水素水3を逆浸透膜処理装置40によって逆浸透処理する。そのため、水処理装置10は、逆浸透膜処理装置40における逆浸透処理を行うことにより、水素が溶存した逆浸透水(逆浸透溶存水素水5)を得ることができる。
【0040】
逆浸透水タンク44は、水処理系統100において、上述した逆浸透膜42よりも下流側に設けられている。逆浸透水タンク44は、逆浸透膜42による逆浸透膜処理がなされた逆浸透水(逆浸透溶存水素水5)を貯蔵するためのものである。逆浸透水ポンプ46は、逆浸透水タンク44に貯留されている逆浸透溶存水素水5を水処理系統100の系外に設けられた溶解装置110及び透析液供給装置120に向けて圧送するためのものである。
【0041】
逆浸透水ポンプ46は、逆浸透溶存水素水5が溶解装置110及び透析液供給装置120において使用される場合に所定のタイミングで作動し、溶解装置110及び透析液供給装置120に供給される。これにより、溶解装置110において所定の透析液が製成されるとともに、製成された透析液が透析液供給装置120に供給される。透析液は、透析液供給装置120から各患者監視装置(図示せず)へ供給され、患者の血液の浄化に用いられる。
【0042】
水処理装置10は、上述したタンク20や、水素溶解装置30、逆浸透膜処理装置40等を配管接続して構成される水処理系統100を洗浄するための構成として、昇温装置80や薬液供給装置90を備えている。
【0043】
ポンプ60は、水処理系統100において水を圧送するものである。ポンプ60は、水処理系統100においていかなる位置に設けられていても良いが、逆浸透膜処理装置40が備える逆浸透膜42よりも上流側に配置されていると良い。本実施形態では、ポンプ60は、電解水タンク50よりも水処理系統100の下流側(好ましくは電解水タンク50の直下流側)であって、逆浸透膜処理装置40よりも上流側(好ましくは逆浸透膜処理装置40の直上流側)の位置に配されている。これにより、タンク20に貯蔵された水(原水2)を必要とされる流量で水素溶解装置30に導入させるためのコントロールを精度良く行うことができる。ポンプ60は、印加電流値等により出力制御可能なものとすることができる。本実施形態では、ポンプ60は、デューティー比制御により出力制御可能なものとされている。
【0044】
水圧センサ70は、水処理系統100における水圧を検知可能なものである。水圧センサ70は、水処理系統100においていかなる位置に設けられていても良いが、逆浸透膜処理装置40が備える逆浸透膜42よりも上流側(好ましくは逆浸透膜42の直上流側)に配置されていると良い。水圧センサ70は、逆浸透膜処理装置40の装置内、あるいは装置外のいずれに配されていても良い。一般的に、膜状のものに対して水素細菌等の菌類が付着しやすいという特性を鑑みると、前述のように逆浸透膜42よりも上流側(好ましくは逆浸透膜42の直上流側)に水圧センサ70を配することにより、水圧に基づいて水処理系統100における通水抵抗の変動を精度良く検知可能となるためである。
【0045】
昇温装置80は、水処理系統100に対して洗浄運転時に供給される洗浄用の液体(例えば原水2や、原水に薬液を加えた液体)等を加熱して昇温させるものである。水処理装置10は、昇温装置80によって加熱された洗浄用の液体を水処理系統100に供給することにより、水素細菌等の殺菌や駆除を行うことができる。昇温装置80は、タンク20、及び逆浸透水タンク44のいずれか一方又は双方に設置すると良い。
図1に示した例においては、タンク20に対して第一の昇温装置80(第一昇温装置80a)を配するとともに、逆浸透水タンク44に第二の昇温装置80(第二昇温装置80b)を配している。
【0046】
タンク20に第一昇温装置80aを設置することにより、水処理系統100の洗浄に際して洗浄に用いる水を加温するときに、大量の水をまとめて加温できるため、洗浄運転を効率的に行える。また、原水2のシリカ含有率が高い場合に、水温が低いまま逆浸透膜42を透過させるとシリカで目詰まりが起こることから、タンク20に第一昇温装置80aを設置しておくことにより、第一昇温装置80aによって加温された原水2を洗浄用として供給し、前述のようなシリカによる逆浸透膜42の目詰まりを抑制できる。また、逆浸透水タンク44に第二昇温装置80bを配することにより、患者に使用する水温が低くならないよう、逆浸透水タンク44に貯留されている段階で適切な温度を保つことができる。さらに、逆浸透水タンク44に第二昇温装置80bを配することにより、水処理系統100においてタンク20よりも下流側の部分だけを洗浄するように洗浄用の水を流すときに、洗浄用の水を加温するために使用したり、洗浄用として第一昇温装置80aにおいて加温した水を、逆浸透水タンク44に到達した段階において必要に応じて第二昇温装置80bによって補助的に加温するといった使い方が可能となる。
【0047】
薬液供給装置90は、水処理系統100を洗浄に用いる薬液を供給するものである。薬液供給装置90は、例えばタンク20に対して配管接続される等、適宜の位置に配置することができる。薬液供給装置90は、例えば、
図1に示したように、水処理系統100をなす管路とは別にタンク20に対して接続された管路を設け、当該管路を介してタンク20に薬液を導入可能なように接続されたものとすることができる。
【0048】
判定装置200は、上述したタンク20や、水素溶解装置30、逆浸透膜処理装置40を含んで構成される水処理系統100における水素細菌の増殖度に係る判定処理を行うものである。判定装置200は、運転時間把握部202、通水抵抗把握部204、及び判定処理部206を備えている。
【0049】
運転時間把握部202は、上述した水処理装置10によって原水2から溶存水素水3を経て逆浸透溶存水素水5を生成させるための運転(水処理運転)についての累積時間を把握するためのものである。運転時間把握部202は、水処理装置10を新規に設置して使用開始してからの累積時間を把握するものや、水処理系統100を洗浄するための運転(洗浄運転)を行った時点を起点として水処理運転が行われた累積時間を把握するもの等とすることが可能である。本実施形態では、運転時間把握部202は、水処理装置10を新規に設置して使用開始した後に累積時間の計測を開始し、水処理系統100の洗浄運転を行うことにより累積時間の計測値をリセットするものとされている。
【0050】
通水抵抗把握部204は、水処理系統100における通水のしにくさを通水抵抗Rrの大きさとして把握するものである。通水抵抗把握部204は、通水抵抗Rrの大きさを直接的に把握可能なセンサ等によって構成することも可能であるが、本実施形態では通水抵抗Rrの大きさに応じて変動する指標に基づいて間接的に把握するものとされている。
【0051】
具体的には、第一の例として、通水抵抗把握部204は、水処理系統100において逆浸透膜処理装置40の逆浸透膜42よりも上流側となる位置に設けられた水圧センサ70によって検知された検知水圧を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握可能なものとすることができる。また、第二の例として、通水抵抗把握部204は、水処理系統100をなす配管等に設けられたポンプ60の稼働状態を示す稼働状態値を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握可能なものとすることができる。ポンプ60の稼働状態を示す稼働状態値は、例えばポンプ60に流れる電流値等とすることが可能であるが、ポンプ60をデューティー比制御により動作させる場合にはデューティー比を稼働状態値とすることが可能である。また、第三の例として、通水抵抗把握部204は、逆浸透膜処理装置40から排出される排出水量、すなわち溶存酸素水4の排水量を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握可能なものとすることができる。通水抵抗把握部204は、第一の例から第三の例に例示したように、検知水圧、ポンプ60の稼働状態値、及び逆浸透膜処理装置40における溶存酸素水4の排水量のいずれか一つを指標として通水抵抗Rrの大きさを把握するものとする他、これらの指標を複数組み合わせて通水抵抗Rrの大きさを把握するようにすることも可能である。
【0052】
判定処理部206は、上述した通水抵抗把握部204により把握された通水抵抗Rrの大きさを活用して、水処理系統100において水素細菌が増殖しているか否かを判定する処理を行うものである。
【0053】
ここで、水処理装置10においては、水素細菌の増殖・繁殖が発生していない状態における通常の使用を継続した場合であっても、原水2に含まれている成分等により、自然と逆浸透膜42において詰まりが生じる。すなわち、水処理装置10においては、水素細菌の有無に関わらず、水処理運転の運転時間(累積時間)が増加するのに連動して、経時的に発生する。このような逆浸透膜42の詰まり(劣化)は、逆浸透膜42、水量、電解強度、気温、原水2の成分等の主要な使用条件が同じであれば、いずれの水処理装置10においても略同時期に同様の詰まり具合(劣化度合い)で逆浸透膜42の詰まり(劣化)が発生する。そのため、通水抵抗把握部204により把握される通水抵抗Rrの大きさと、累積時間との関係について、実際に経時的に記録したり、所定の演算式等に基づいてシミュレーションを行うことにより、標準的な通水抵抗Rrの大きさ(標準通水抵抗判定値Rj)を累積時間に応じて経時的に規定することができる。
図3に示すように、標準通水抵抗判定値Rjをグラフ化すると、上述した検知水圧、ポンプ60の稼働状態値、及び逆浸透膜処理装置40における溶存酸素水4の排水量等の通水抵抗Rrの大きさを把握するための指標値が、累積時間の増大に伴って上昇する直線あるいは曲線からなるグラフを作ることができる。
【0054】
一方、水処理系統100において水素細菌が増殖すると、それに応じて逆浸透膜42の膜詰まり、及び逆浸透膜42よりも上流側における圧力上昇(逆浸透膜42よりも下流側においては圧力低下)が発生するといった現象が生じる。また、水処理系統100において水素細菌が増殖すると、逆浸透膜処理装置40から排出される濃縮水(溶存酸素水4)の排水量が増加する現象が生じる。水素細菌の増殖により逆浸透膜42の詰まりが生じるのは、水素細菌が逆浸透膜42に取り付いてバイオフィルム化するためである。水素細菌の増殖に伴い、逆浸透膜42よりも上流側において圧力上昇が生じるのは、前述のようにして逆浸透膜42の透過率が下がることによって通水抵抗Rrが上昇し、逆浸透膜42よりも上流側における水処理系統100内の水に圧力がかかるためであると推測される。また、逆浸透膜処理装置40から排出される濃縮水(溶存酸素水4)の排水量が増加するのは、逆浸透膜42の膜詰まりによって逆浸透膜42における透過率が下がる結果、残存する濃縮水が増えるためであると考えられる。
【0055】
判定処理部206は、上述したような知見に基づき、水処理運転の累積時間に対応する標準通水抵抗判定値Rj、及び通水抵抗把握部204により把握された実測値に基づく通水抵抗Rrの大きさの乖離度Dに基づいて判定処理を行う。判定処理部206は、乖離度Dが所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、水処理系統において水素細菌が増殖しているとの判定を行う。
【0056】
具体的には、標準通水抵抗判定値Rjは、通水抵抗Rrの標準値であり、累積時間に応じて想定される通水抵抗Rrの変動を反映するように規定される。例えば、上述した第一の例のように、通水抵抗把握部204が水圧センサ70によって検知された検知水圧を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握可能なものである場合は、累積時間に応じて想定される標準的な水圧の変動を反映した標準水圧が標準通水抵抗判定値Rjとして規定される。また、上述した第二の例のように、通水抵抗把握部204がポンプ60の稼働状態を示す稼働状態値(例えばデューティ比)を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握可能なものである場合は、累積時間に応じて想定される標準的な稼働状態値の変動を反映した稼働状態標準値が標準通水抵抗判定値Rjとして規定される。上述した第三の例のように、通水抵抗把握部204が逆浸透膜処理装置40における溶存酸素水4の排水量を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握可能なものである場合は、累積時間に応じて想定される標準的な排出水量の変動を反映した標準排出水量が標準通水抵抗判定値Rjとして規定される。
【0057】
判定処理部206は、上述したようにして規定された標準通水抵抗判定値Rjと、通水抵抗把握部204により把握された実測値に基づく通水抵抗Rrとの乖離度Dを算出する。具体的には、
図3においてL1で示すように、水素細菌の増殖や繁殖が発生していない状態において想定される通水抵抗(標準通水抵抗判定値Rj)は、累積時間の増加に連動して所定の挙動(図示例では累積時間の増加に比例して通水抵抗Rrが増大する挙動)で増加するものと想定される。これに対し、水素細菌の増殖や繁殖が発生すると、その分だけ通水抵抗Rrが増大する。そのため、水素細菌の増殖や繁殖が発生すると、
図3においてL2で示すように、通水抵抗把握部204により把握される実測値に基づく通水抵抗Rrは、累積時間の増加に連動して示される標準通水抵抗判定値Rjの挙動から逸脱して増大すると考えられる。従って、累積時間が同じ条件下における標準通水抵抗判定値Rjの大きさと、実測値に基づく通水抵抗Rrの大きさとの間に乖離が生じる。例えば
図3の例では、累積時間がtの時点から標準通水抵抗判定値Rjと通水抵抗Rrとの間に乖離が生じている。
【0058】
例えば、上述した第一の例のように水圧センサ70によって検知された検知水圧を指標として通水抵抗Rrを把握して判定処理を行う場合には、検知水圧と標準水圧との差に基づいて乖離度Dを導出する。同様に、上述した第二の例のようにポンプ60の稼働状態値を指標として通水抵抗Rrを把握して判定処理を行う場合には、稼働状態値と、稼働状態標準値との差に基づいて乖離度Dを導出する。また、上述した第三の例のように逆浸透膜処理装置40における溶存酸素水4の排水量を指標として通水抵抗Rrを把握して判定処理を行う場合には、排出水量と標準排出水量との差に基づいて乖離度Dを導出する。判定処理部206は、このようにして導出された乖離度Dが所定の閾値よりも大きいことを条件として、水処理系統において水素細菌が増殖しているとの判定を行う。
【0059】
制御装置210は、水処理装置10の動作制御を行うものである。制御装置210は、水処理装置10によって原水2から逆浸透溶存水素水5を生成するための水処理運転の他に、水処理系統100に洗浄用の液体を通液させることにより、水処理系統100の洗浄を行うための洗浄運転を行わせることができる。
【0060】
ここで、上述したように、水処理装置10は、水素細菌が増殖したり繁殖したりしていない状態において通常の使用を継続した場合であっても、原水2に含まれている成分等により、自然と逆浸透膜42において詰まりが生じる。そのため、水処理装置10は、水素細菌の増殖・繁殖が発生していない状態においては、水処理運転の累積時間等の開始条件に基づいて所定のタイミングにおいて制御装置210による制御のもと、水処理系統100の洗浄を行うことにより、逆浸透膜42をはじめとする水処理系統100を清浄に維持することができる。具体的には、水処理装置10は、水処理運転の累積時間が、所定の閾時間Ttに達することを条件として、水処理系統100の洗浄を行う運転(通常洗浄運転)を行うものとすることができる。なお、通常洗浄運転は、前述の累積時間が閾時間Tt以上になることに加えて、あるいは代えて他の条件を満足することを開始条件として行うものとすることも可能である。通常洗浄運転に際し、水処理装置10は、昇温装置80により原水2を所定温度まで昇温させたものを水処理系統100に供給しつつ、薬液供給装置90により洗浄用の薬液を供給することにより、水処理系統100に所定温度以上であって薬液を含む原水2を通過させる。これにより、水処理系統100を洗浄することができる。
【0061】
一方、水処理装置10は、上述した判定処理部206により水処理系統100において水素細菌が増殖しているとの判定がなされることを条件として、制御装置210による制御のもと、洗浄運転の実施制御を行うことができる。水素細菌の増殖時に行う洗浄運転(水素細菌洗浄運転)を行う際の運転条件は、水素細菌を除去可能なものであれば適宜のものとすることができる。例えば、水処理装置10は、制御装置210による制御のもと、乖離度D及び累積時間のいずれか一方又は双方に基づいて、水素細菌洗浄運転の実施時間、及び実施回数のいずれか一方又は双方を設定し、当該設定に基づいて水素細菌洗浄運転を行うものとすると良い。また、水処理装置10は、乖離度Dや累積時間に代えて、あるいはこれらの条件に加えて他の条件を満足することを開始条件として、水素細菌洗浄運転を行うようにすることも可能である。
【0062】
水素細菌洗浄運転は、上述した通常洗浄運転と同様の方法により行うことが可能である。すなわち、水素細菌洗浄運転は、昇温装置80により原水2を所定温度まで昇温させたものを水処理系統100に供給しつつ、薬液供給装置90により洗浄用の薬液を供給することにより、水処理系統100に所定温度以上であって薬液を含む原水2を通過させる。これにより、水処理系統100を洗浄することができる。なお、水素細菌洗浄運転及び通常洗浄運転は、同一の運転条件で運転するものであっても、相違する運転条件で運転するものであっても良い。例えば、水処理系統100に供給する原水2の温度を、通常洗浄運転と水素細菌洗浄運転とで相違させたり、水処理系統100に供給する薬液の量や濃度、種類等を通常洗浄運転と水素細菌洗浄運転とで相違させたりすると良い。また、水処理系統100に供給する薬液の量や濃度を相違させる場合には、通常洗浄運転及び水素細菌洗浄運転の一方(例えば通常洗浄運転)において水処理系統100に薬液を供給しないようにすることも可能である。
【0063】
以下、水処理装置10において、制御装置210による制御のもとで行われる洗浄運転に関する制御フローについて、
図4を参照しつつ説明する。
【0064】
(ステップ1)
制御装置210は、先ずステップ1において累積時間が閾時間Tt以上に到達したか否かを確認する。ここで、累積時間が閾時間Tt以上に到達していることが確認された場合には、制御フローがステップ2に進められる一方、累積時間が閾時間Ttに到達していない場合には、制御フローがステップ3に進められる。
【0065】
(ステップ2)
制御フローが上述したステップ1からステップ2に進むと、制御装置210は、上述した通常洗浄運転を実施し、水処理系統100の洗浄を行う。その後、制御フローがステップ5に進められる。
【0066】
(ステップ3)
制御フローが上述したステップ1からステップ3に進むと、判定処理部206は、通水抵抗把握部204によって把握されている実測値に基づく通水抵抗Rrの大きさと、現時点における水処理運転の累積時間に対応する標準通水抵抗判定値Rjの大きさとの乖離度Dを確認する。その結果、乖離度Dが所定の閾値以上に大きな値になっている場合には、判定処理部206によって水処理系統において水素細菌が増殖しているとの判定がなされ、制御フローがステップ4に進められる。一方、乖離度Dが閾値よりも小さい場合には、制御フローがステップ1に戻される。
【0067】
(ステップ4)
制御フローがステップ4に進むと、制御装置210は、上述した水素細菌洗浄運転を実施し、水処理系統100の洗浄を行う。その後、制御フローがステップ5に進められる。
【0068】
(ステップ5)
上述したステップ2において通常洗浄運転が実施された後、あるいは上述したステップ4において水素細菌洗浄運転が実施された後には、ステップ5において、運転時間把握部202により把握されている累積時間をリセットする処理が行われる。これにより、運転時間把握部202は、通常洗浄運転や水素細菌洗浄運転を終えた後に行われる水処理運転の累積時間を把握できるようになる。ステップ5が完了すると、
図4に示した一連の制御フローが完了し、制御フローがステップ1に戻される。
【0069】
水処理装置10は、洗浄運転について上述した制御フローを繰り返し実行することにより、水処理系統100を清浄に維持する。また、水処理装置10は、上述した制御フローに水素細菌の増殖状態を判定するための工程(ステップ3)を設けることにより、水素細菌の増殖に伴う不具合が生じないうちに、適切なタイミングで洗浄運転を行える。
【0070】
上述した実施形態、及び各実施例を踏まえれば、本発明は、以下の(1)~(8)に示すような特徴的構成を有し、本発明に特有の効果が得られる。
【0071】
(1)本実施形態の水処理装置10は、原水2又は前記原水2を処理した処理水を導入し、前記原水2又は前記処理水に水素を溶解させることにより溶存水素水3を生成する水素溶解装置30と、水素溶解装置30に接続され、溶存水素水3に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水5を生成する逆浸透膜処理装置40と、前記原水2又は前記処理水から溶存水素水3を経て逆浸透溶存水素水5を生成する水処理運転の累積時間を把握する運転時間把握部202と、水処理系統100における通水のしにくさを通水抵抗Rrの大きさとして直接的、あるいは通水抵抗Rrに応じて変動する指標に基づいて間接的に把握するための通水抵抗把握部204と、通水抵抗Rrの標準値を累積時間に応じて想定される通水抵抗Rrの変動を反映するように規定した標準通水抵抗判定値Rj、及び通水抵抗把握部204により把握される通水抵抗Rrの大きさの乖離度Dに基づいて水処理系統100における水素細菌の増殖度に係る判定処理を行う判定処理部206と、を有すること、を特徴とするものである。
【0072】
本実施形態の水処理装置10は、水処理装置10は、水素細菌が増殖することにより、通水抵抗Rrが標準通水抵抗判定値Rjよりも大きくなるといった本発明者らの知見を活用したものである。かかる知見に基づき、本実施形態の水処理装置10は、運転時間把握部202によって水処理運転の累積時間を把握しつつ、水処理系統100における通水のしにくさを表す通水抵抗Rrの大きさを通水抵抗把握部204によって把握することにより、累積時間に応じて通水抵抗Rrが変動することを想定して規定された標準通水抵抗判定値Rjと、通水抵抗把握部204により把握される通水抵抗Rrの大きさとの乖離度Dに基づいて、判定処理部206により水素細菌の増殖度に係る判定できるものとされている。従って、本発明によれば、上記実施形態の水処理装置10のように、水素細菌が増殖している可能性があることを適確に把握できるようになる。
【0073】
(2)上記(1)に係る本実施形態の水処理装置10は、通水抵抗把握部204が、水処理系統100に設けられた水圧センサ70によって検知された検知水圧を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握するものであり、標準通水抵抗判定値Rjが、累積時間に応じて想定される標準的な水圧の変動を反映した標準水圧として規定されており、乖離度Dは、検知水圧と標準水圧との差に基づいて導出され、判定処理部206は、乖離度Dが所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、水処理系統100において水素細菌が増殖しているとの判定を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0074】
上述した水処理装置10は、水素細菌の増殖に伴って通水抵抗Rrが大きくなるのに応じて、水処理系統100における水圧が高くなるとの知見に基づき、水処理系統100に設けられた水圧センサ70によって検知された検知水圧を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握できるものとされている。そのため、上述した水処理装置10は、水圧センサ70の検知水圧に基づいて水素細菌の増殖度を適確に把握できる。
【0075】
(3)上記(1)又は(2)に係る本実施形態の水処理装置10は、水圧センサ70が、水処理系統100において逆浸透膜処理装置40が備える逆浸透膜42よりも上流側に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0076】
上述した水処理装置10において、水素細菌の増殖が増殖することにより、通水抵抗Rrが大きくなるのに応じて水処理系統100における水圧が高くなる傾向は、逆浸透膜42よりも上流側において顕著にあらわれると想定される。かかる知見に基づき、水処理装置10は、上記(3)のように、逆浸透膜42よりも上流側に設けられた水圧センサ70の検知水圧に基づいて通水抵抗Rrの大きさを把握するものとされている。従って、上記(3)の構成によれば、水素細菌の増殖度をより一層適確に把握できる。
【0077】
(4)上記(1)~(3)に係る本実施形態の水処理装置10は、水処理系統100に設けられたポンプ60を有し、通水抵抗把握部204が、ポンプ60の稼働状態を示す稼働状態値を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握するものであり、標準通水抵抗判定値Rjが、累積時間に応じて想定されるポンプ60の標準的な稼働状態値の変動を反映した稼働状態標準値として規定されており、乖離度Dは、通水抵抗把握部204によって把握される稼働状態値と、稼働状態標準値との差に基づいて導出され、判定処理部206は、乖離度Dが所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、水処理系統100において水素細菌が増殖しているとの判定を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0078】
上述した水処理装置10は、水素細菌の増殖に伴って通水抵抗Rrが大きくなるのに応じて、ポンプ60の稼働状態値が水素細菌の増殖が生じていない場合の標準的な値(稼働状態標準値)と比べて乖離した状態になるとの知見に基づき、水処理系統100に設けられたポンプ60の稼働状態値を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握できるものとされている。そのため、上述した水処理装置10は、ポンプ60の稼働状態値に基づいて水素細菌の増殖度を適確に把握できる。
【0079】
(5)上記(1)~(4)に係る本実施形態の水処理装置10は、ポンプ60が、水処理系統100において逆浸透膜処理装置40が備える逆浸透膜42よりも上流側に設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0080】
水処理装置10において水素細菌の増殖に伴う通水抵抗Rrの増大に応じてポンプ60の稼働状態値が稼働状態標準値から乖離する傾向は、ポンプ60が逆浸透膜42よりも上流側に配置されている場合に顕著にあらわれると想定される。かかる知見に基づき、水処理装置10は、上記(5)のように、逆浸透膜42よりも上流側に設けられたポンプ60の稼働状態値に基づいて通水抵抗Rrの大きさを把握するものとされている。従って、上記(5)の構成によれば、水素細菌の増殖度をより一層適確に把握できる。
【0081】
(6)上記(1)~(5)に係る本実施形態の水処理装置10は、ポンプ60が、デューティー比を用いた制御により動作制御されるものであり、デューティー比が、稼働状態値とされること、を特徴とするものであると良い。
【0082】
上述した水処理装置10は、上記(6)のようにポンプ60がデューティ比制御されるものであるため、デューティ比を稼働状態値として用いることにより、ポンプの稼働状態を精度良く把握できる。
【0083】
(7)上記(1)~(6)に係る本実施形態の水処理装置10は、通水抵抗把握部204が、逆浸透膜処理装置40から排出される排出水量を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握するものであり、標準通水抵抗判定値Rjが、累積時間に応じて想定される標準的な排出水量の変動を反映した標準排出水量として規定されており、乖離度Dは、排出水量と標準排出水量との差に基づいて導出され、判定処理部206は、乖離度Dが所定の基準値以上に大きな値になることを条件として、水処理系統100において水素細菌が増殖しているとの判定を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0084】
水処理装置10において水素細菌の増殖に伴って通水抵抗Rrが増大するのに応じて、逆浸透膜処理装置40から排出される排出水量が増加する傾向にあるとの知見に基づき、水素細菌が増殖していない状態において想定されう排出水量(標準排出水量)と実際の排出水量との差に基づいて通水抵抗Rrの大きさを把握できるものとされている。そのため、上述した水処理装置10は、標準排出水量排出水量との差に基づいて導出される乖離度Dを基準として、ポンプ60の稼働状態値に基づいて水素細菌の増殖度を適確に把握できる。
【0085】
(8)上記(1)~(7)に係る本実施形態の水処理装置10は、水処理系統100に洗浄用の液体を通液させることにより、水処理系統100の洗浄を行う洗浄運転を行えるものであり、洗浄運転の実施時間、及び実施回数に基づいて洗浄運転の実施制御を行える制御装置210を有し、制御装置210は、判定処理部206により水処理系統100において水素細菌が増殖しているとの判定がなされることを条件として、乖離度D及び累積時間のいずれか一方又は双方に基づいて、洗浄運転の実施時間、及び実施回数のいずれか一方又は双方を設定し、当該設定に基づいて洗浄運転の実施制御を行うこと、を特徴とするものであると良い。
【0086】
上述した水処理装置10は、判定処理部206により水素細菌が増殖しているとの判定がなされることを条件として、制御装置210による制御のもと洗浄運転を行うものとされている。また、上述した水処理装置10は、水素細菌の増殖に伴う洗浄運転(水素細菌洗浄運転)を行う場合に、乖離度D及び累積時間のいずれか一方又は双方に基づいて、洗浄運転の実施時間、及び実施回数のいずれか一方又は双方を設定して洗浄運転を行うものとされている。そのため、上述した水処理装置10は、水素細菌が増殖が発生したときに、適確なタイミング及び方法により洗浄運転を行うことができる。
【0087】
(9)上記(1)~(8)に係る本実施形態の水処理装置10は、水処理系統100に通液させる洗浄用の液体を昇温させる昇温装置80、及び洗浄用の液体の一部又は全部として薬液を水処理系統100に供給する薬液供給装置90の少なくともいずれかを備えていること、を特徴とするものであると良い。
【0088】
水処理装置10は、上述したように昇温装置80や薬液供給装置90を備えたものとすることにより、水素細菌の増殖に伴う洗浄運転(水素細菌洗浄運転)を行う場合に、水素細菌を十分に除去することができる。
【0089】
(10)本実施形態に係る水素細菌増殖度判定方法は、原水2又は前記原水2を処理した処理水を導入し、前記原水2又は前記処理水に水素を溶解させることにより溶存水素水3を生成する水素溶解装置30と、水素溶解装置30に接続され、溶存水素水3に対して逆浸透膜処理を行うことにより逆浸透溶存水素水5を生成する逆浸透膜処理装置40と、を備えた水処理装置10における水素細菌の増殖度を判定する水素細菌増殖度判定方法であって、水処理系統100における通水のしにくさを通水抵抗Rrの大きさとして直接的、あるいは通水抵抗Rrに応じて変動する指標に基づいて間接的に把握する通水抵抗把握ステップと、前記原水2又は前記処理水から溶存水素水3を経て逆浸透溶存水素水5を生成する水処理運転の累積時間に応じて想定される通水抵抗Rrの変動を反映するように通水抵抗Rrの標準値を規定した標準通水抵抗判定値Rj、及び通水抵抗把握部204により把握される通水抵抗Rrの大きさの乖離度Dに基づいて水処理系統100における水素細菌の増殖度に係る判定処理を行う判定ステップと、を含む工程を経て水素細菌の増殖度を判定すること、を特徴とするものである。
【0090】
本実施形態に係る水素細菌増殖度判定方法は、水処理装置10において水素細菌が増殖することにより、水処理系統100における通水抵抗Rrが、水素細菌が増殖していない場合に比べて増大するとの知見に着目して行われるものである。かかる知見に基づいて、本実施形態に係る水素細菌増殖度判定方法は、通水抵抗把握ステップにおいて水処理系統100における通水抵抗を把握するとともに、判定ステップにおいて標準通水抵抗判定値Rj、及び実測値を反映した通水抵抗Rrとの乖離度Dに基づいて水素細菌の増殖度を判定できるものとされている。そのため、本実施形態に係る水素細菌増殖度判定方法は、水素細菌の増殖に伴う通水抵抗Rrの増大といった現象を活用して、水処理装置10における水素細菌の増殖を適確に把握することができる。
【0091】
≪変形例≫
なお、本発明の水処理装置及び水素細菌増殖度判定方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であり、上記実施形態において例示したものや、上記(1)~(10)に係るものに限定されるものではない。
【0092】
例えば、水処理装置10は、上記(2)や(3)のように水圧センサ70により検知される検知水圧を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握するもの、上記(4)~(6)のようにポンプ60の稼働状態値を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握するもの、上記逆浸透膜処理装置40から排出される排出水量を指標として通水抵抗Rrの大きさを把握するもののように通水抵抗Rrの大きさを間接的に把握するものではなく、通水抵抗Rrを直接的に把握するものとしても良い。また、水処理装置10は、通水抵抗Rrの大きさを把握するうえで、水圧センサ70の検知水圧、ポンプ60の稼働状態値、逆浸透膜処理装置40から排出される排出水量のいずれか一つを通水抵抗Rrの指標値として活用するものとする他に、これらから選ばれる複数、あるいは全ての指標を総合的に活用して通水抵抗Rrの大きさを把握するものであっても良い。
【0093】
また、本実施形態の水処理装置10は、昇温装置80や薬液供給装置90を備えたものとして例示したが、本発明はこれに限定されず、昇温装置80及び薬液供給装置90のいずれか一方又は双方を備えていないものとすることも可能である。また、ポンプ60や水圧センサ70の配置についても、上記実施形態において示したものに限定されない。なお、ポンプ60の稼働状態値や、水圧センサ70による検知水圧を通水抵抗Rrの大きさを把握するために用いる場合には、通水抵抗Rrを把握するうえで支障とならない位置に配置することが望ましく、通水抵抗Rrの変化を適切に捉えることができる位置に配置することがより一層望ましい。
【0094】
本実施形態においては、上記(8)のように、水素細菌洗浄運転を行う場合に、乖離度D及び累積時間のいずれか一方又は双方に基づいて、洗浄運転の実施時間、及び実施回数のいずれか一方又は双方を設定して洗浄運転を行うものとする構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。水処理装置10は、水素細菌が増殖が発生したときに、適確なタイミング、及び水素細菌を除去するうえで適切な方法により洗浄運転を行うことができのであれば、上述した方法に限定されず、適宜の方法で洗浄運転を行うようにすると良い。また、洗浄運転は、所定の累積時間毎に行う通常洗浄運転と、水素細菌の増殖時に行われる水素細菌洗浄運転とを同一の方法で行うようにしても、異なる方法で行うようにしても良い。
【0095】
また、本実施形態では、水素溶解装置30よりも上流側にタンク20を設け、タンク20に貯留した原水2を水素溶解装置30に供給する構成を例示したが、本発明はこれに限定されない。水処理装置10は、例えば、タンク20を設けず、原水2を水素溶解装置30に対して供給可能としたり、原水2に何らかの処理を施した処理水を水素溶解装置30に供給できるようにしたりすると良い。また、本実施形態では、タンク20よりも上流側の構成として、プレフィルタ12や軟水化装置14、活性炭処理装置16等を設けた構成を例示したが、本発明はこれに限定されず、これらの一部又は全部を省略した構成としたり、他の構成を加えたものとしたりしても良い。
【0096】
本願発明は、上述した実施の形態に記載の構成に限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲において適宜設計変更等することが可能である。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、課題を解決するための手段、発明を実施するための形態等に記載の任意の構成要素または課題を解決するための手段、発明を実施するための形態等に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても、本願または本願に基づく分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、水素溶解装置と逆浸透膜処理装置とを備えた水処理装置全般において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0098】
2 :原水
3 :溶存水素水
5 :逆浸透溶存水素水
10 :水処理装置
20 :タンク
30 :水素溶解装置
40 :逆浸透膜処理装置
42 :逆浸透膜
60 :ポンプ
70 :水圧センサ
80 :昇温装置
90 :薬液供給装置
100 :水処理系統
202 :運転時間把握部
204 :通水抵抗把握部
206 :判定処理部
210 :制御装置
D :乖離度
Rj :標準通水抵抗判定値
Rr :通水抵抗
【要約】
【課題】水素細菌が増殖している可能性があることを適確に把握可能な水処理装置、及び水素細菌増殖度判定方法の実現を目的とした。
【解決手段】水処理装置10は、水素溶解装置30と、逆浸透膜処理装置40とを有する。水処理装置10は、原水2から溶存水素水3を経て逆浸透溶存水素水5を生成する水処理運転の累積時間を把握する運転時間把握部202と、通水抵抗Rrの大きさを把握するための通水抵抗把握部204と、標準通水抵抗判定値、及び通水抵抗把握部204により把握される通水抵抗の大きさの乖離度に基づいて水素溶解装置40から逆浸透膜処理装置40に至る水処理系統100における水素細菌の増殖度に係る判定処理を行う判定処理部206と、を有する。
【選択図】
図1