(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】パワートレイン、冷媒流量推定方法、および電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 9/18 20060101AFI20230522BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230522BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20230522BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230522BHJP
H02P 29/68 20160101ALI20230522BHJP
【FI】
B60L9/18 J
B60L3/00 J
B60L58/10
H02M7/48 Z
H02P29/68
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022109026
(22)【出願日】2022-07-06
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】202110769355.7
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521467113
【氏名又は名称】華為数字能源技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI DIGITAL POWER TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Office 01, 39th Floor, Block A, Antuoshan Headquarters Towers, 33 Antuoshan 6th Road, Futian District, Shenzhen, 518043, P.R.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】ジアンガン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジヤン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン・イ
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180397(JP,A)
【文献】特開2013-70466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0099791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 9/18
B60L 3/00
B60L 58/10
H02M 7/48
H02P 29/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータと、モータと、電子ポンプと、第1の冷却ループと、コントローラと、を備えるパワートレインであって、
前記第1の冷却ループ内の冷媒が、前記インバータを冷却するように構成され、
前記電子ポンプが、前記冷媒を、前記第1の冷却ループ内で循環させるように構成され、
前記インバータが、交流を前記モータに出力するように構成され、
前記モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、前記コントローラが、第1の瞬間における前記電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、前記第1の冷却ループ内の第1の位置の温度、前記インバータ内の第2の位置の温度、および前記インバータの電力損失に基づいて、前記第1の瞬間における冷媒流量を決定するように構成され、前記モータの前記相電流が前記予め設定された電流値未満であるとき、前記コントローラが、第2の瞬間における前記電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、前記第1の回転速度、前記第1の瞬間における前記冷媒流量、および前記第2の回転速度に基づいて、前記第2の瞬間における冷媒流量を決定するように構成される、パワートレイン。
【請求項2】
前記コントローラが、前記第1の位置の前記温度、前記第2の位置の前記温度、および前記インバータの前記電力損失に基づいて、前記第1の位置と前記第2の位置との間の熱抵抗を決定し、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記熱抵抗と、前記第1の位置の前記温度と、前記冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、前記第1の瞬間における前記冷媒流量を決定するように構成される、請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項3】
前記第1の位置が、前記第1の冷却ループ内の冷媒入口に配置され、
前記第2の位置が、前記インバータ内にある位置であって、前記第1の冷却ループの冷媒入口側の近くにある、位置に、配置され、前記第2の位置が、前記第1の冷却ループに垂直な方向において前記第1の位置に位置合わせされる、請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項4】
前記コントローラが、前記インバータのバス電圧、前記インバータの出力交流、前記インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、および前記インバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、前記インバータの前記電力損失を決定するようにさらに構成される、請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項5】
前記モータの前記相電流が前記予め設定された電流値未満であるとき、前記コントローラが、前記第1の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第1の回転速度の比、および前記第2の回転速度に基づいて、前記第2の瞬間における前記冷媒流量を決定するように構成され、前記第2の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第2の回転速度の比が、前記第1の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第1の回転速度の前記比に等しい、または前記第2の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第2の回転速度の前記比と前記第1の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第1の回転速度の前記比との間に予め設定された関数関係がある、請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項6】
前記コントローラが、レジスタを備え、前記コントローラが、
前記第1の位置の前記温度と、前記第2の回転速度と、前記第2の瞬間における前記冷媒流量と、の間の対応関係を前記レジスタに記憶し、
前記モータの前記相電流が再び前記予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における前記第1の位置の温度、前記第3の瞬間における前記電子ポンプの回転速度、および前記第1の位置の前記温度と、前記第2の回転速度と、前記第2の瞬間における前記冷媒流量と、の間の前記対応関係に基づいて、前記第3の瞬間における冷媒流量を決定する、
ようにさらに構成される、請求項5に記載のパワートレイン。
【請求項7】
前記パワートレインが、メモリをさらに備え、前記コントローラが、
前記第1の位置の前記温度と、前記第2の回転速度と、前記第2の瞬間における前記冷媒流量と、の間の対応関係を前記メモリに記憶し、
前記モータの前記相電流が再び前記予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における前記第1の位置の温度、前記第3の瞬間における前記電子ポンプの回転速度、および前記第1の位置の前記温度と、前記第2の回転速度と、前記第2の瞬間における前記冷媒流量と、の間の前記対応関係に基づいて、前記第3の瞬間における冷媒流量を決定する、
ようにさらに構成される、請求項5に記載のパワートレイン。
【請求項8】
前記コントローラが、第1の温度センサを使用することによって前記第1の位置の前記温度を決定し、または前記コントローラが、車両制御ユニット(VCU)によって送信された温度情報に基づいて、前記第1の位置の前記温度を決定する、請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項9】
前記第2の位置の前記温度が、温度測定デバイスを使用することによって測定され、前記温度測定デバイスが、
サーミスタまたは第2の温度センサのうちのいずれか一方である、請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項10】
前記モータが、電流センサを備え、
前記電流センサが、前記モータの前記相電流を検出し、検出結果を前記コントローラに送信するように構成される、請求項1に記載のパワートレイン。
【請求項11】
インバータと、モータと、電子ポンプと、第1の冷却ループと、コントローラと、を備えるパワートレインであって、
前記第1の冷却ループ内の冷媒が、前記インバータを冷却するように構成され、
前記電子ポンプが、前記冷媒を、前記第1の冷却ループ内で循環させるように構成され、
前記インバータが、交流を前記モータに出力するように構成され、
前記モータの相電流が予め設定された電流値よりも大きいとき、前記コントローラが、第1の瞬間における前記電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、前記インバータ内の第1の位置の温度、前記インバータ内の第2の位置の温度、前記冷媒の比熱容量、前記冷媒の密度、および前記インバータの電力損失に基づいて、前記第1の瞬間における冷媒流量を決定するように構成され、前記モータの前記相電流が前記予め設定された電流値未満であるとき、前記コントローラが、第2の瞬間における前記電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、前記第1の回転速度、前記第2の回転速度、および前記第1の瞬間における前記冷媒流量に基づいて、前記第2の瞬間における冷媒流量を決定するように構成される、パワートレイン。
【請求項12】
前記第1の位置が、前記インバータ内にある位置であって、前記第1の冷却ループの入口側の近くにある、位置に、配置され、前記第2の位置が、前記インバータ内にある位置であって、前記第1の冷却ループの出口側の近くにある、位置に、配置される、請求項11に記載のパワートレイン。
【請求項13】
前記パワートレインが、第1の温度センサと、第2の温度センサと、をさらに備え、
前記第1の温度センサが、前記インバータ内の前記第1の位置の前記温度を決定するように構成され、前記第2の温度センサが、前記第2の位置の前記温度を決定するように構成される、請求項11に記載のパワートレイン。
【請求項14】
前記コントローラが、前記インバータのバス電圧、前記インバータの出力交流、前記インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、および前記インバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、前記インバータの前記電力損失を決定するようにさらに構成される、請求項11に記載のパワートレイン。
【請求項15】
前記コントローラが、前記第1の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第1の回転速度の比、および前記モータの前記相電流が前記予め設定された電流値未満であるときの前記第2の回転速度に基づいて、前記第2の瞬間における前記冷媒流量を決定し、前記第2の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第2の回転速度の比が、前記第1の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第1の回転速度の前記比に等しい、または前記第2の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第2の回転速度の前記比と前記第1の瞬間における前記冷媒流量に対する前記第1の回転速度の前記比との間に予め設定された関数関係がある、請求項11に記載のパワートレイン。
【請求項16】
前記コントローラが、レジスタを備え、前記コントローラが、
前記第1の位置の前記温度と、前記第2の回転速度と、前記第2の瞬間における前記冷媒流量と、の間の対応関係を前記レジスタに記憶し、
前記モータの前記相電流が再び前記予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における前記第1の位置の温度、前記第3の瞬間における前記電子ポンプの回転速度、および前記第1の位置の前記温度と、前記第2の回転速度と、前記第2の瞬間における前記冷媒流量と、の間の前記対応関係に基づいて、前記第3の瞬間における冷媒流量を決定する、
ようにさらに構成される、請求項15に記載のパワートレイン。
【請求項17】
前記パワートレインが、メモリをさらに備え、前記コントローラが、
前記第1の位置の前記温度と、前記第2の回転速度と、前記第2の瞬間における前記冷媒流量と、の間の対応関係を前記メモリに記憶し、
前記モータの前記相電流が再び前記予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における前記第1の位置の温度、前記第3の瞬間における前記電子ポンプの回転速度、および前記第1の位置の前記温度と、前記第2の回転速度と、前記第2の瞬間における前記冷媒流量と、の間の前記対応関係に基づいて、前記第3の瞬間における冷媒流量を決定する、
ようにさらに構成される、請求項15に記載のパワートレイン。
【請求項18】
前記モータが、電流センサを備え、
前記電流センサが、前記モータの前記相電流を検出し、検出結果を前記コントローラに送信するように構成される、請求項11に記載のパワートレイン。
【請求項19】
パワートレインを備える電動車両であって、前記パワートレインが、インバータと、モータと、電子ポンプと、第1の冷却ループと、コントローラと、を備え、
前記第1の冷却ループ内の冷媒が、前記インバータを冷却するように構成され、
前記電子ポンプが、前記冷媒を、前記第1の冷却ループ内で循環させるように構成され、
前記インバータが、交流を前記モータに出力するように構成され、
前記モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、前記コントローラが、第1の瞬間における前記電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、前記第1の冷却ループ内の第1の位置の温度、前記インバータ内の第2の位置の温度、および前記インバータの電力損失に基づいて、前記第1の瞬間における冷媒流量を決定するように構成され、前記モータの前記相電流が前記予め設定された電流値未満であるとき、前記コントローラが、第2の瞬間における前記電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、前記第1の回転速度、前記第1の瞬間における前記冷媒流量、および前記第2の回転速度に基づいて、前記第2の瞬間における冷媒流量を決定するように構成され、
前記電動車両が、パワーバッテリパックをさらに備え、
前記パワーバッテリパックが、電気エネルギーを前記パワートレインに供給するように構成され、
前記パワートレインが、前記パワーバッテリパックによって供給された前記電気エネルギーを機械エネルギーに変換して、前記電動車両を駆動するように構成される、電動車両。
【請求項20】
前記コントローラが、前記第1の位置の前記温度、前記第2の位置の前記温度、および前記インバータの前記電力損失に基づいて、前記第1の位置と前記第2の位置との間の熱抵抗を決定し、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記熱抵抗と、前記第1の位置の前記温度と、前記冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、前記第1の瞬間における前記冷媒流量を決定するように具体的に構成される、請求項19に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、モータ冷却技術の分野に関し、特に、パワートレイン、冷媒流量推定方法、および電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両のパワートレインは、モータ制御ユニット(Motor Control Unit、MCU)と、モータと、減速機と、冷却システムと、を含む。MCUは、インバータを含む。インバータは、直流(Direct Current、DC)/交流(Alternating Current、AC)コンバータとも呼ばれ得、電動車両のパワーバッテリパックによって供給された直流を交流に変換し、次いで、モータに交流を供給するように構成される。モータは、交流を機械エネルギーに変換するように構成され、モータは、電動車両を駆動するために、機械エネルギーを電動車両の車輪に伝達するように、減速機に整合する必要がある。動力伝達構成要素として、減速機は、歯車、軸受、ハウジングなどの構成要素を主に含む。冷却システムは、モータ制御ユニット、モータ、および減速機を冷却するように構成される。
【0003】
小型化に向けたパワートレインの進化に伴い、モータおよびMCUの温度をオンラインで推定し、車両の安全のための効果的な温度制御ポリシーを実施することが、極めて重要である。現在のオンライン温度推定方法によれば、冷却システムの冷媒流量が、推定され、かつ取得される必要があり、すなわち、冷媒流量推定の精度は、オンライン温度推定の精度に大きく影響する。
【0004】
図1に示されたパワートレインの場合、冷却システムは、矢印付き破線によって示された水冷却ループ14と、矢印付き実線によって示されたオイル冷却ループ15と、を使用する。水冷却ループ14は、インバータ11を冷却するように構成され、オイル冷却ループ15は、モータ12および減速機13を冷却するように構成される。既存の冷媒流量推定では、水冷却ループ内の冷媒流量が推定される。まず、電子ポンプ18の回転速度の信号および温度センサの信号が、取得される。温度センサの信号は、水冷却ループ内の現在の冷媒温度を示すために使用される。次いで、この瞬間における、対応する冷媒流量を取得するために、電子ポンプの回転速度と、冷媒温度と、冷媒流量と、の間の予め較正された対応関係が、車両熱管理システムから照会される。しかしながら、異なる車両モデルの熱管理システム間の違いにより、対応関係のデータ較正は、このように、異なる車両モデルに対して別々に実施される必要がある。その結果、データ較正は、時間を消費し、実用性が低い。
【発明の概要】
【0005】
前述の問題を解決するために、本出願は、データ較正が、異なる熱管理システムに対して、別々に実施される必要がないように、パワートレイン、冷媒流量推定方法、および電動車両を提供する。これは、データ較正によって消費される時間を短縮し、実用性を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、本出願はパワートレインを提供する。パワートレインは、インバータと、モータと、電子ポンプと、第1の冷却ループと、コントローラと、を含む。第1の冷却ループ内の冷媒は、インバータを冷却するように構成される。電子ポンプは、冷媒を、第1の冷却ループ内で循環させるように構成される。インバータは、交流をモータに出力するように構成される。モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、コントローラは、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、第1の冷却ループ内の第1の位置の温度、インバータ内の第2の位置の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定する。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第2の瞬間における電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、第1の回転速度、第1の瞬間における冷媒流量、および第2の回転速度に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0007】
パワートレインは、現在の冷媒流量を、リアルタイムに推定し得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。熱管理システム側の較正データは、取得される必要がない。これは、繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。
【0008】
また、モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、インバータの熱放散電力消費が大きい。この場合、温度検出データの相対誤差の影響は小さい。したがって、冷媒流量は、本出願における温度検出データを使用することによって、決定される。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、インバータの熱放散電力消費が低く、温度検出データの相対誤差の影響が大きい。この場合、本出願の解決策では、インバータの熱放散電力消費が低い場合の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらにインバータの低い熱放散電力消費の場合における電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0009】
1つの可能な実施態様では、コントローラは、第1の位置の温度、第2の位置の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の位置と第2の位置との間の熱抵抗を決定し、第1の位置と第2の位置との間の熱抵抗と、第1の位置の温度と、冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0010】
第1の位置と第2の位置との間の熱抵抗と、第1の位置の温度と、冷媒流量と、の間の対応関係は、予め決定され、かつ記憶され得る。また、較正処理におけるデータは、パワートレイン側で決定され得るデータであり、熱管理システム側の較正済みデータは、取得される必要がない。したがって、データ較正方法は、異なる熱管理システムに適用され、高い実用性を有し得る。
【0011】
1つの可能な実施態様では、第1の位置は、第1の冷却ループ内の冷媒入口に配置される。第2の位置は、インバータ内にある位置であって、第1の冷却ループの冷媒入口側の近くにある、位置に、配置され、第2の位置は、第1の冷却ループに垂直な方向において第1の位置に位置合わせされる。
【0012】
この場合、第1の位置の温度は、第1の冷却ループ内の最低温度であり、第1の位置と第2の位置との間の温度差は、比較的大きい。したがって、測定誤差によって引き起こされる温度差の相対誤差は小さく、すなわち、冷媒流量算出の結果に対する測定誤差の影響が低減される。
【0013】
1つの可能な実施態様では、コントローラは、インバータのバス電圧、インバータの出力交流、インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、およびインバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、インバータの電力損失を決定する。
【0014】
インバータのバス電圧、インバータの出力交流、インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、およびインバータの制御信号のデューティサイクルは、リアルタイムに、すべて取得され得る。
【0015】
1つの可能な実施態様では、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比、および第2の回転速度に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0016】
第2の瞬間における冷媒流量に対する第2の回転速度の比は、第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比に等しい、または第2の瞬間における冷媒流量に対する第2の回転速度の比と第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比との間に、予め設定された関数関係がある。
【0017】
1つの可能な実施態様では、コントローラは、レジスタを含み、さらにコントローラは、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係を、レジスタに記憶させる。モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第3の瞬間における第1の位置の温度、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度、および第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、第3の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0018】
モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第3の瞬間における第1の位置の温度を第1の温度として決定し、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度を第3の回転速度として決定する。第3の回転速度が、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に含まれる第2の回転速度に等しいとき、第3の回転速度に等しい第2の回転速度に対応する第2の流量は、第3の瞬間における冷媒流量として使用される。
【0019】
長い時間にわたってパワートレインが動作するにつれて、記憶された対応関係は、継続的に改善され、これにより、異なる冷媒温度および電子ポンプの異なる回転速度に対応する冷媒流量は、較正される。これは、電子ポンプの回転速度の比例スケーリングの方法に取って代わり、冷媒流量推定の精度を改善し得る。
【0020】
1つの可能な実施態様では、パワートレインはメモリをさらに含む。コントローラは、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係を、メモリに記憶させる。モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第3の瞬間における第1の位置の温度、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度、および第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、第3の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0021】
モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第3の瞬間における第1の位置の温度を第1の温度として決定し、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度を第3の回転速度として決定する。第3の回転速度が、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に含まれる第2の回転速度に等しいとき、第3の回転速度に等しい第2の回転速度に対応する第2の流量は、第3の瞬間における冷媒流量として使用される。
【0022】
長い時間にわたってパワートレインが動作するにつれて、記憶された対応関係は、継続的に改善され、これにより、異なる冷媒温度および電子ポンプの異なる回転速度に対応する冷媒流量は、較正される。これは、電子ポンプの回転速度の比例スケーリングの方法に取って代わり、冷媒流量推定の精度を改善し得る。
【0023】
1つの可能な実施態様では、コントローラは、第1の温度センサを使用することによって、第1の位置の温度を決定する、またはコントローラは、車両制御ユニット(Vehicle Control Unit、VCU)によって送信された温度情報に基づいて、第1の位置の温度を決定する。この場合、コントローラは、モータ制御ユニット(Motor Control Unit、MCU)であってもよく、車両制御ユニットと通信し得る。
【0024】
1つの可能な実施態様では、第2の位置の温度は、温度測定デバイスを使用することによって、測定される。温度測定デバイスは、サーミスタまたは第2の温度センサのうちのいずれか一方である。
【0025】
温度測定デバイスがサーミスタであるとき、サーミスタは、異なる温度係数に基づいて、正温度係数(Positive Temperature Coefficient、PTC)サーミスタ、および負温度係数(Negative Temperature Coefficient、NTC)サーミスタに分類され得る。
【0026】
1つの可能な実施態様では、モータは電流センサを含む。電流センサは、モータの相電流を検出し、検出結果をコントローラに送信するように構成される。
【0027】
第2の態様によれば、本出願は、別のパワートレインをさらに提供する。パワートレインは、インバータと、モータと、電子ポンプと、第1の冷却ループと、コントローラと、を含む。第1の冷却ループ内の冷媒は、インバータを冷却するように構成される。電子ポンプは、冷媒を、第1の冷却ループ内で循環させるように構成される。インバータは、交流をモータに出力するように構成される。モータの相電流が予め設定された電流値よりも大きいとき、コントローラは、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、インバータ内の第1の位置の温度、インバータ内の第2の位置の温度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定する。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第2の瞬間における電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、第1の回転速度、第2の回転速度、および第1の瞬間における冷媒流量に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0028】
パワートレインは、現在の冷媒流量を、リアルタイムに推定し得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。熱管理システム側の較正データは、取得される必要がない。これは、繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。
【0029】
また、モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、インバータの熱放散電力消費が大きい。この場合、温度検出データの相対誤差の影響は小さい。したがって、冷媒流量は、本出願における温度検出データを使用することによって、決定される。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、インバータの熱放散電力消費が低く、温度検出データの相対誤差の影響が大きい。この場合、本出願の解決策では、インバータの熱放散電力消費が低い場合の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらにインバータの低い熱放散電力消費の場合における電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0030】
1つの可能な実施態様では、第1の位置は、インバータ内にある位置であって、第1の冷却ループの入口側の近くにある、位置に、配置され、第2の位置は、インバータ内にある位置であって、第1の冷却ループの出口側の近くにある、位置に、配置される。
【0031】
この場合、第1の位置は、第2の位置から遠く、第1の位置と第2の位置との間の温度差は、大きい。したがって、測定誤差によって引き起こされる温度差の相対誤差は小さく、すなわち、冷媒流量推定の結果に対する測定誤差の影響が低減される。
【0032】
1つの可能な実施態様では、パワートレインは、第1の温度センサと、第2の温度センサと、をさらに含む。第1の温度センサは、インバータ内の第1の位置の温度を決定するように構成され、第2の温度センサは、第2の位置の温度を決定するように構成される。
【0033】
1つの可能な実施態様では、コントローラは、インバータのバス電圧、インバータの出力交流、インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、およびインバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、インバータの電力損失を決定する。
【0034】
1つの可能な実施態様では、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比、および第2の回転速度に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0035】
第2の瞬間における冷媒流量に対する第2の回転速度の比は、第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比に等しい、または第2の瞬間における冷媒流量に対する第2の回転速度の比と第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比との間に、予め設定された関数関係がある。
【0036】
1つの可能な実施態様では、コントローラは、レジスタをさらに含む。コントローラは、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係を、レジスタに記憶するようにさらに構成される。モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第3の瞬間における第1の位置の温度、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度、および第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、第3の瞬間における冷媒流量を決定するように構成される。
【0037】
モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第3の瞬間における第1の位置の温度を第1の温度として決定し、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度を第3の回転速度として決定する。第3の回転速度が、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に含まれる第2の回転速度に等しいとき、第3の回転速度に等しい第2の回転速度に対応する第2の流量は、第3の瞬間における冷媒流量として使用される。
【0038】
1つの可能な実施態様では、パワートレインはメモリをさらに含む。コントローラは、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係を、メモリに記憶させる。モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第3の瞬間における第1の位置の温度、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度、および第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、第3の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0039】
モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第3の瞬間における第1の位置の温度を第1の温度として決定し、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度を第3の回転速度として決定する。第3の回転速度が、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に含まれる第2の回転速度に等しいとき、第3の回転速度に等しい第2の回転速度に対応する第2の流量は、第3の瞬間における冷媒流量として使用される。
【0040】
1つの可能な実施態様では、モータは電流センサを含む。電流センサは、モータの相電流を検出し、検出結果をコントローラに送信するように構成される。
【0041】
第3の態様によれば、本出願の一実施形態は、パワートレインに適用される冷媒流量推定方法をさらに提供する。パワートレインは、インバータと、モータと、電子ポンプと、第1の冷却ループと、を含む。第1の冷却ループ内の冷媒は、インバータを冷却するように構成され、電子ポンプは、冷媒を、第1の冷却ループ内で循環させるように構成され、インバータは、交流をモータに出力するように構成される。冷媒流量推定方法は、
モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、第1の冷却ループ内の第1の位置の温度、インバータ内の第2の位置の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定することと、
モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、第2の瞬間における電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、第1の回転速度、第1の瞬間における冷媒流量、および第2の回転速度に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定することと、を含む。
【0042】
現在の冷媒流量は、この方法を使用することによって、リアルタイムに推定され得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。熱管理システム側の較正データは、取得される必要がない。これは、繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。
【0043】
また、モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、インバータの熱放散電力消費が大きい。この場合、温度検出データの相対誤差の影響は小さい。したがって、冷媒流量は、温度検出データを使用することによって、決定される。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、インバータの熱放散電力消費が低く、温度検出データの相対誤差の影響が大きい。この場合、インバータの低い熱放散電力消費の場合における冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらにインバータの低い熱放散電力消費の場合における電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0044】
1つの可能な実施態様では、第1の冷却ループ内の第1の位置の温度、インバータ内の第2の位置の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定することは、
第1の位置の温度、第2の位置の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の位置と第2の位置との間の熱抵抗を決定することと、
第1の位置と第2の位置との間の熱抵抗と、第1の位置の温度と、冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定することと、を含む。
【0045】
1つの可能な実施態様では、第1の冷却ループ内の第1の位置の温度、インバータ内の第2の位置の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定することの前に、本方法は、
第1の位置と第2の位置との間の熱抵抗と、第1の位置の温度と、冷媒流量と、の間の対応関係を予め決定することを、さらに含む。
【0046】
1つの可能な実施態様では、本方法は、
インバータのバス電圧、インバータの出力交流、インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、およびインバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、インバータの電力損失を決定することを、さらに含む。
【0047】
1つの可能な実施態様では、第1の位置と第2の位置との間の熱抵抗と、第1の位置の温度と、冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定することは、
第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比、および第2の回転速度に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定することを含み、第2の瞬間における冷媒流量に対する第2の回転速度の比が、第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比に等しい、または第2の瞬間における冷媒流量に対する第2の回転速度の比と第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比との間に、予め設定された関数関係がある。
【0048】
1つの可能な実施態様では、本方法は、
第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係を記憶することと、
モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における第1の位置の温度、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度、および第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、第3の瞬間における冷媒流量を決定することと、をさらに含む。
【0049】
第4の態様によれば、本出願の一実施形態は、パワートレインに適用される別の冷媒流量推定方法をさらに提供する。パワートレインは、インバータと、モータと、電子ポンプと、第1の冷却ループと、を含む。第1の冷却ループ内の冷媒は、インバータを冷却するように構成され、電子ポンプは、冷媒を、第1の冷却ループ内で循環させるように構成され、インバータは、交流をモータに出力するように構成される。冷媒流量推定方法は、
モータの相電流が予め設定された電流値よりも大きいとき、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、インバータ内の第1の位置の温度、インバータ内の第2の位置の温度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定することと、
モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、第2の瞬間における電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、第1の回転速度、第2の回転速度、および第1の瞬間における冷媒流量に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定することと、を含む。
【0050】
現在の冷媒流量は、この方法を使用することによって、リアルタイムに推定され得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。熱管理システム側の較正データは、取得される必要がない。これは、繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。
【0051】
また、モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、インバータの熱放散電力消費が大きい。この場合、温度検出データの相対誤差の影響は小さい。したがって、冷媒流量は、本方法による温度検出データを使用することによって、決定される。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、インバータの熱放散電力消費が低く、温度検出データの相対誤差の影響が大きい。この場合、本方法によれば、インバータの低い熱放散電力消費の場合における冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらにインバータの低い熱放散電力消費の場合における電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0052】
1つの可能な実施態様では、本方法は、
インバータのバス電圧、インバータの出力交流、インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、およびインバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、インバータの電力損失を決定することを、さらに含む。
【0053】
1つの可能な実施態様では、第1の回転速度、第2の回転速度、および第1の瞬間における冷媒流量に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定することは、
第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比、および第2の回転速度に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定することを含み、第2の瞬間における冷媒流量に対する第2の回転速度の比が、第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比に等しい、または第2の瞬間における冷媒流量に対する第2の回転速度の比と第1の瞬間における冷媒流量に対する第1の回転速度の比との間に、予め設定された関数関係がある。
【0054】
1つの可能な実施態様では、本方法は、
第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係を記憶することと、
モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における第1の位置の温度、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度、および第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の瞬間における冷媒流量と、の間の対応関係に基づいて、第3の瞬間における冷媒流量を決定することと、をさらに含む。
【0055】
第5の態様によれば、本出願は、電動車両をさらに提供する。電動車両は、前述の実施態様で提供されたパワートレインを含み、パワーバッテリパックをさらに含む。パワーバッテリパックは、電気エネルギーをパワートレインに供給するように構成され、パワートレインは、パワーバッテリパックによって供給された電気エネルギーを機械エネルギーに変換して、電動車両を駆動するように構成される。パワートレインは、現在の冷媒流量を、リアルタイムに推定し得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータは、パワートレイン側で決定され得るデータである。熱管理システム側の較正データは、取得される必要がない。これは、繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図2】本出願の一実施形態による、パワートレインの概略図である。
【
図3】本出願の一実施形態による、インバータおよび第1の冷却ループの概略図である。
【
図4】本出願の一実施形態による、熱抵抗と、冷媒温度と、冷媒流量と、の間の対応関係の曲線である。
【
図5】本出願の一実施形態による、インバータの概略図である。
【
図6】本出願の一実施形態による、冷媒温度と時間との間の対応関係の概略図である。
【
図7】本出願の一実施形態による、別のパワートレインの概略図である。
【
図8】本出願の一実施形態による、冷媒流量推定方法のフローチャート図である。
【
図9A】本出願の一実施形態による、別の冷媒流量推定方法のフローチャート図である。
【
図9B】本出願の一実施形態による、別の冷媒流量推定方法のフローチャート図である。
【
図10】本出願の一実施形態による、さらに別の冷媒流量推定方法のフローチャート図である。
【
図11A】本出願の一実施形態による、さらに別の冷媒流量推定方法のフローチャート図である。
【
図11B】本出願の一実施形態による、さらに別の冷媒流量推定方法のフローチャート図である。
【
図12】本出願の一実施形態による、電動車両の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本出願の実施形態で提供される技術的解決策を当業者に、より良く理解させるために、以下はまず、本出願で提供される技術的解決策の適用シナリオを説明する。
【0058】
本出願で提供される解決策は、パワートレイン内にある冷媒流量であって、インバータを冷却するために使用される、冷媒流量を、推定するために使用される。パワートレインは、シングルモータパワートレイン、またはマルチモータパワートレインであってもよい。パワートレインのインバータは、水またはオイルによって冷却されてもよい。これは、本出願の実施形態では限定されない。説明を容易にするために、以下は、パワートレインがシングルモータパワートレインであり、インバータが水によって冷却されるものとして説明する。
【0059】
図1は、既存のパワートレインおよびその冷却システムの概略図である。
【0060】
パワートレインは、インバータ11と、モータ12と、減速機13と、を含む。
【0061】
インバータ11は、パワーバッテリパックによって供給された直流を交流に変換し、次いで、その交流をモータ12に供給するように構成される。インバータ11は、三相3レベルインバータ、または三相2レベルインバータであってもよい。これは、本出願の実施形態では限定されない。
【0062】
モータ12は、モータハウジング125と、モータステータを形成するモータ・ステータ・シリコン鋼板121および端部巻線122と、を含み、加えて、モータロータを形成する磁性鋼123と、モータ回転シャフト124と、をさらに含む。
【0063】
減速機13は、モータ12を減速するように構成される歯車セットを含む。いくつかの実施形態では、歯車セットは、第1の中間シャフト歯車1301と、第2の中間シャフト歯車1302と、入力シャフト歯車1303と、出力シャフト歯車1304と、を含み、オイルフィルタ1305をさらに含む。
【0064】
パワートレインの冷却システムは、水冷却ループ14(図中矢印付き破線によって示されるループ)と、オイル冷却ループ15(図中矢印付き実線によって示されるループ)と、オイル-水熱交換器16と、を含む。水冷却ループ14およびオイル冷却ループ15は、接続されない。
【0065】
水冷却ループ14は、オイル-水熱交換器16に接続される水入口パイプ141および水出口パイプ142を含む。水冷却ループ14は、インバータ11を通り、熱放散がインバータ11で実施された後、オイル-水熱交換器16を通る。
【0066】
オイル冷却ループ15は、モータ12および減速機13を冷却するように構成される。
【0067】
オイル-水熱交換器16は、水冷却ループ14に属する経路と、オイル冷却ループ15に属する経路と、を含み、水冷却ループ14を使用することによって、オイル冷却ループ15の熱を放散する、すなわち二次熱交換が実施されるように、構成される。
【0068】
モータ制御ユニット(図示せず)は、インバータ11を制御して、直流を交流に変換する。このプロセスの間、エネルギーの一部は、変換効率に起因して失われ、失われたエネルギーのこの部分は、熱に変換される。同時に、交流がモータ12に入り、電磁誘導によってモータ12の回転のための機械エネルギーに変換される。このプロセスでは、熱エネルギーも、変換効率に起因して生成される。最後に、モータ12の高い回転速度が減速機13によって低下され、熱は、この変換プロセス中に依然として発生される。上記3つのプロセスにおけるエネルギー変換によって発生された熱は、冷却システムを通ってパワートレインから適時に排出される必要がある。
【0069】
冷却システムの不十分な冷却能力は、パワートレインの構成要素の耐用年数を結果として短くし、深刻な場合には損傷させる可能性さえある。したがって、冷却システムの冷却能力を確保することが極めて重要である。現在、冷却システム内の冷媒流量が、一般に判断基準として使用されている。冷媒流量が異常であるとき、冷却システムが故障していると決定される場合がある。
【0070】
加えて、モータおよびMCUの温度をオンラインでどのように効果的に推定し、効果的な温度制御ポリシーをどのように実行するかが、車両の安全性にとって極めて重要である。オンライン温度推定の現在の方法によれば、冷却システムの冷媒流量が、推定され、かつ取得される必要があり、すなわち、冷媒流量推定の精度は、オンライン温度推定の精度に大きく影響する。たとえば、流量誤差が30%に達するとき、温度推定の誤差は、10℃に達する。
【0071】
要約すると、冷媒流量をどのように正確に推定するかが、電動車両の安全性にとって極めて重要である。既存の冷媒流量推定では、水冷却ループ内の冷媒流量が推定される。冷媒の特定のタイプは、本出願の実施形態では限定されない。たとえば、いくつかの実施形態では、冷媒は、水とグリコールとの混合物である。既存の推定方法によれば、電子ポンプ18の回転速度、および温度センサの信号が取得され、次いで、この場合に、対応する冷媒流量を取得するために、電子ポンプの回転速度と、冷媒の温度と、冷媒流量と、の間の予め較正された対応関係が、車両熱管理システムから照会される。
【0072】
しかしながら、異なる車両モデルの熱管理システム間の違いにより、異なる車両モデルの熱管理システムは、前述の対応関係において異なる。たとえば、電子水ポンプの同じ回転速度、および同じ冷媒温度について、異なる車両モデルの熱管理システム内の冷媒流量は、熱管理システム間の違いに起因して異なる。したがって、較正が、異なる車両モデルに対して複数回実施される必要があり、結果、高い時間オーバーヘッドとなり、低い実用性となる。
【0073】
上記の問題を解決するために、本出願は、パワートレイン、冷媒流量推定方法、および電動車両を提供する。モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、パワートレインのコントローラは、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、第1の冷却ループ内の第1の位置の温度、インバータ内の第2の位置の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定する。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、第2の瞬間における電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、第1の回転速度、第1の瞬間における冷媒流量、および第2の回転速度に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定する。この解決策では、現在の冷媒流量を推定するためのデータは、パワートレイン側で決定され得るデータである。熱管理システム側の較正データは、取得される必要がない。したがって、この解決策で、異なる車両モデルに対して繰り返される較正作業が回避され、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善し、温度検出データの相対誤差の影響が緩和され、冷媒流量推定の精度を改善する。
【0074】
本出願における技術的解決策を当業者に、より良く理解させるために、以下は、本出願の実施形態における添付図面を参照して、本出願の実施形態における技術的解決策を説明する。
【0075】
本出願の記載における用語「第1(first)」および「第2(second)」は、記載の目的のためにだけ意図され、示した技術的特徴の相対的重要度を示したり示唆したり、示した技術的特徴の数量を暗示的に示したりするものとして理解されるべきではない。
【0076】
加えて、本出願では、「上部」および「下部」などの方向の用語は、限定しないが、添付の図面に概略的に配置された構成要素の向きによって画定され得る。これらの方向の用語は、相対的な概念であってもよく、「相対」の説明および明確化に使用され、図面の構成要素の方向の変化に応じて、対応して変化し得ることを理解されたい。
【0077】
本出願では、特に明確に、指定および限定されない限り、「接続」という用語は、広義に理解されるべきである。たとえば、「接続」は、固定接続、取り外し可能な接続、または一体構造であってもよく、直接接続であってもよく、または仲介を介した間接接続であってもよい。
【0078】
本出願の以下の説明では、説明を容易にするために、「ループ」は、冷却オイルを搬送し得る物理的構造または容器内の「パイプライン」を置き換えるために使用され、添付の図面の対応する参照において、矢印付き線(破線または実線)が、「ループ」を表すために使用される。
【0079】
流量は、単位時間内に密閉されたパイプラインの有効部分を通って流れる流体の量であり、瞬間流量としても知られる。体積によって表される流体の量は、体積流量と呼ばれ、質量で表される流体の量は、質量流量と呼ばれる。これは、本出願の以下の実施形態で限定されない。
【0080】
本出願の一実施形態は、電動車両のパワートレインを提供する。詳細は、以下の添付図面を参照して説明される。
【0081】
図2は、本出願の一実施形態による、パワートレインの概略図である。
【0082】
図に示された電動車両のパワートレインは、インバータ11と、モータ12と、コントローラ20と、電子ポンプ18と、第1の冷却ループ(図の破線枠内の領域A内の水冷却ループ部)と、を含む。
【0083】
第1の冷却ループ内の冷媒は、インバータ11を冷却するように構成される。電子ポンプ18は、冷媒を、第1の冷却ループ内で循環させるように構成される。
【0084】
インバータ11は、電動車両のパワーバッテリパックによって供給された直流を交流に変換し、次いで、その交流をモータ12に供給する。
【0085】
いくつかの実施形態では、パワートレインは、第1の温度センサ30をさらに含み、第1の温度センサ30は、第1の冷却ループ内の第1の位置の温度を検出するように構成される。インバータ11は、温度測定デバイスを含み、温度測定デバイスは、インバータ11内の第2の位置に配置される。温度測定デバイスは、コントローラ20に電気的に接続される。
【0086】
電子ポンプ18は、冷媒を、第1の冷却ループ内で循環させ、インバータ11を冷却するように構成される。本出願の本実施形態における電子ポンプ18は、モータ制御ユニット(Motor Control Unit、MCU)によって制御される。
【0087】
コントローラ20は、MCUであってもよいし、独立して配置されてもよい。これは、本出願の本実施形態では限定されない。コントローラ20がMCUであるとき、コントローラは、電子ポンプ18の動作状態をさらに制御し得る。
【0088】
以下は、コントローラが第1の冷却ループ内の冷媒流量を決定する方法を説明する。第1の冷却ループ内の冷媒流量は、電子ポンプ18が動作するときに伝達される冷媒流量として理解され得ることが理解されよう。
【0089】
インバータ11は、パワー半導体デバイスを含み、ダイオード、パワースイッチデバイスなどを含む。パワースイッチデバイスは、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Filed Effect Transistor、MOSFET)、炭化シリコン電界効果トランジスタ(Silicon Carbide Metal Oxide Semiconductor、SiC MOSFET)などであってもよい。これは、本出願の本実施形態では限定されない。インバータ11が動作するとき、インバータ11の電力損失は、主にパワー半導体デバイスの電力損失であり、インバータ11が大きい電流で動作するとき、インバータ11の電力損失は大きい。
【0090】
本出願の本実施形態におけるモータ12は、三相モータであり、モータ12の相電流は、モータの各相負荷の巻線を通って流れる電流である。モータ12の相電流が予め設定された電流値以上であるとき、この場合、インバータ11が、大きい電流で動作し、インバータ11の温度は、比較的高いことを示す。この場合、温度測定デバイスを使用することによって、コントローラ20によって取得された第2の位置の現在の温度は高く、これにより、第2の位置での温度測定の相対誤差は小さい。しかし、第1の冷却ループ内の冷媒が、インバータ11を冷却するにつれて、冷媒の温度が、徐々に上昇し、これにより、第1の温度センサの測定結果の相対誤差が小さくなる。
【0091】
この場合、コントローラ20は、温度測定デバイスを使用することによって、第2の位置の現在の温度を取得し、第1の位置の現在の温度、第2の位置の現在の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、現在の冷媒流量を決定する。
【0092】
モータ12の相電流が予め設定された電流値未満であるとき、この場合、インバータ11は小さい電流で動作し、インバータ11の温度は比較的低い。したがって、温度測定デバイスを使用することによって、コントローラ20によって取得された第2の位置の現在の温度は低く、これにより、第2の位置での温度測定の相対誤差は大きい。また、第1の温度センサの測定結果の相対誤差は大きい。これは、冷媒流量推定の誤差を大きくする。したがって、本出願では、モータ12の相電流が予め設定された電流値未満であるときの冷媒流量は、比例スケーリング方式で推定される。詳細は以下で説明される。
【0093】
モータ12の相電流が予め設定された電流値以上であるとき、コントローラ20は、第1の瞬間における冷媒流量を第1の流量として決定し、第1の瞬間における電子ポンプ18の回転速度を第1の回転速度として決定する。
【0094】
モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、電子ポンプ18の現在の回転速度を第2の回転速度として決定する。電子ポンプ18の回転速度は冷媒流量に比例するので、コントローラは、第1の回転速度、第1の流量、および第2の回転速度に基づいて、現在の冷媒流量を決定し得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、第1の流量に対する第1の回転速度の比は、第2の流量に対する第2の回転速度の比に等しい。
【0096】
いくつかの他の実施形態では、第1の流量に対する第1の回転速度の比は、第1の比であり、第2の流量に対する第2の回転速度の比は、第2の比である。第1の比および第2の比は通常、ある程度異なっており、これは、データ検出誤差によって引き起こされる。したがって、データ検出誤差によって引き起こされる影響を軽減するために、第1の比と較正係数との積が第2の比に等しくなるように、パワートレインに対して実験を行うことによって、較正係数は、事前に較正され得る。
【0097】
本出願の本実施形態におけるコントローラ20は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、プログラマブル論理デバイス(Programmable Logic Device、PLD)、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor、DSP)、またはそれらの組合せである。PLDは、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device、CPLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field-programmable Gate Array、FPGA)、汎用アレイ論理(Generic Array Logic、GAL)、またはこれらの任意の組合せであり得る。これは、本出願の本実施形態では限定されない。
【0098】
上記の説明では、コントローラ20が第1の温度センサ30を使用することによって、第1の冷却ループ内の第1の位置の温度を取得する例を使用した。実際の用途では、コントローラ20は、電動車両の車両制御ユニット(Vehicle Control Unit、VCU)によって送信された温度情報を代替的に受信し、その温度情報に基づいて、第1の位置の温度を決定し得る。
【0099】
結論として、現在の冷媒流量は、本出願の本実施形態で提供されるパワートレインを使用することによって、リアルタイムに推定され得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。これは、異なる車両モデルに対して繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。加えて、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、現在の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらに電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、比例スケーリング方式で決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0100】
以下は、コントローラによって冷媒流量を推定する実施態様について説明する。
【0101】
図3は、本出願の本実施形態による、インバータおよび第1の冷却ループの概略図である。
【0102】
パワー半導体デバイスモジュール1011~1013が、インバータのプリント基板(Printed Circuit Board、PCB)103上に配置される。各パワー半導体デバイスモジュールは、モータによって必要とされる単相電流を、対応して出力し、各パワー半導体デバイスモジュールは、パワースイッチデバイスと、ダイオードと、を含む。
【0103】
プリント基板103は、補助熱放散材料104を使用することによって、補助的に熱放散を実施する。いくつかの実施形態では、補助熱放散材料104は、熱伝導性シリコーングリースである。また、ラジエータ105をさらに配置して、冷媒との接触面積を大きくして、熱放散効率を改善させる。
【0104】
温度測定デバイスが、各パワー半導体デバイスモジュール上に、対応して配置される。図に示されるように、温度測定デバイス1021が、パワー半導体デバイスモジュール1011上に配置され、温度測定デバイス1022が、パワー半導体デバイスモジュール1012上に配置され、温度測定デバイス1023が、パワー半導体デバイスモジュール1013上に配置される。いくつかの実施形態では、温度測定デバイスは、サーミスタまたは第2の温度センサである。
【0105】
温度測定デバイスがサーミスタであるとき、サーミスタは、異なる温度係数に基づいて、正温度係数(Positive Temperature Coefficient、PTC)サーミスタ、および負温度係数(Negative Temperature Coefficient、NTC)サーミスタに分類され得る。サーミスタは通常、温度感度によって特徴付けられ、異なる温度で異なる抵抗値を有する。正温度係数サーミスタは、高い温度で、大きい抵抗値を有し、負温度係数サーミスタは、高い温度で、小さい抵抗値を有する。コントローラは、サーミスタの抵抗値と温度との間の予め較正された対応関係、およびサーミスタの現在の抵抗値に基づいて、サーミスタの現在の温度を決定する、すなわち、第2の温度を決定し得る。
【0106】
温度測定デバイスが第2の温度センサであるとき、第2の温度センサは、第2の位置の温度を検出し、検出結果をコントローラに送信するように構成される。
【0107】
図に示されるように、第1の冷却ループの冷媒入口はBであり、冷媒出口はAである。
【0108】
パワートレインの第1の温度センサは、第1の冷却ループ内の第1の位置の温度を検出するように構成される。コントローラは、温度測定デバイスを使用することによって、インバータ内の第2の位置の温度を取得する。
【0109】
第2の位置は、本出願の本実施形態では限定されない。たとえば、第2の位置が第1の冷却ループの冷媒出口に近いとき、第2の位置の温度は、温度測定デバイス1023を使用することによって、取得され得る。たとえば、第2の位置が第1の冷却ループの冷媒入口に近いとき、第2の位置の温度は、温度測定デバイス1021を使用することによって、取得され得る。
【0110】
以下では、パワー半導体デバイスにおけるパワースイッチデバイスがIGBTである例が、説明のために使用される。本出願の本実施形態の解決策では、パワー半導体デバイスの熱モデルは、熱抵抗を計算するために使用される。まず、冷媒温度が、第1の温度センサを使用することによって取得され、次いで、第1の位置と第2の位置との間の熱抵抗が、決定され、次いで、熱抵抗と、冷媒温度と、冷媒流量と、の間の予め較正された対応関係に基づいて、冷媒流量が決定される。
【0111】
この対応関係が較正されるとき、車両熱管理システムの電子ポンプの回転速度のパラメータは、較正処理に使用されない。熱抵抗は、パワートレイン側のパラメータであり、車両熱管理システムとは無関係である。これは、異なる車両モデルの熱管理システムに対して繰り返される較正作業を回避する。以下では、本出願の解決策の実施態様プロセスを説明する。
【0112】
まず、熱抵抗と、冷媒温度と、冷媒流量と、の間の対応関係は、予め試験を通して較正される。本出願の本実施形態における熱抵抗は、第2の位置に対する第1の位置の熱抵抗であり、第1の位置と第2の位置との間の熱抵抗として理解されてもよく、または第1の位置に対する第2の位置の熱抵抗として理解されてもよい。
【0113】
図4は、本出願の本実施形態による、熱抵抗と、冷媒温度と、冷媒流量と、の間の対応関係の曲線である。
【0114】
事前較正作業が実施され、すなわち、異なる冷媒温度における熱抵抗と冷媒流量との間の対応関係を取得するために、実験が、パワートレインに対して実施される。
【0115】
図中のデータ点は、現在の温度における、異なる熱抵抗と冷媒流量との間の対応関係を示す。熱抵抗の範囲は、パワートレインが正常に動作するときの熱抵抗の範囲をカバーしなければならない。冷媒流量の範囲は、パワートレインの電子ポンプが作動するときに維持され得る冷媒流量の範囲をカバーしなければならない。前述のデータ点は、関係曲線に当てはめられる。曲線1に対応する温度は、曲線2に対応する温度より低く、曲線2に対応する温度は、曲線3に対応する温度より低い。すなわち、より高い温度は、同じ熱抵抗下でより高い冷媒流量に対応する。
【0116】
いくつかの実施形態では、第1の位置は、第1の冷却ループの冷媒入口に配置されてもよく、第2の位置は、インバータ内にある位置であって、第1の冷却ループの冷媒入口側の近くにある、位置である。第2の位置は、第1の冷却ループに垂直な方向において第1の位置に位置合わせされる。この場合、第1の位置の温度は、第1の冷却ループ内の最低温度であり、第1の位置と第2の位置との間の温度差は、比較的大きい。これは、熱抵抗計算に対する温度測定誤差の影響を緩和する。
【0117】
モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、この場合、インバータが、大きい電流で動作し、インバータの温度は、比較的高いことを示す。この場合、コントローラは、温度測定デバイスを使用することによって、第2の位置の現在の温度を取得し、第1の温度センサを使用することによって、第1の位置の温度を取得し、さらに、インバータの現在の電力損失を決定する。
【0118】
以下は、コントローラがインバータの現在の電力損失を決定するプロセスを説明する。本出願の本実施形態の以下の説明では、インバータの電力損失は、主にパワー半導体デバイスの電力損失である。
【0119】
コントローラは、インバータのバス電圧、インバータの出力交流、インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、およびインバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、インバータの電力損失を決定する。詳細は以下で説明される。
【0120】
図5は、本出願の本実施形態による、インバータの概略図である。
【0121】
図に示されたインバータは、三相2レベルインバータであり、A、B、およびCの三相を出力する。以下は、説明のために、相Aに対応するブリッジアームのパワースイッチデバイスQ1の電力損失を決定する例を使用する。Q1と逆並列のダイオードD1は、独立して配置されたダイオードであってもよく、Q1のボディダイオードであってもよい。これは、本出願の本実施形態では限定されない。以下は、説明のために、パワースイッチデバイスがIGBTである例を使用する。
【0122】
相A電流iAが正の半周期にあるとき、Q1のみが電力損失を有し、D1は損失なしにスイッチオフのままである。この場合、Q1のオン状態損失PC1は、以下の式を使用することによって、決定される。
PC1=VON1*Iq*D (1)
【0123】
VON1は、Q1の導通電圧降下であり、Q1のジャンクション温度(Junction Temperature)およびオン状態電流Iqに従って、IGBTのマニュアルにおいて知られ得る。マニュアルデータは、事前に入力されて、メモリに記憶され、使用されるときに呼び出され得る。ジャンクション温度は、インバータのQ1の実際の動作温度であり、温度センサによって測定され得る。たとえば、Q1の動作温度は、第2の温度センサまたはサーミスタを使用することによって、検出されてもよい。
【0124】
Dは、Q1の制御信号のデューティサイクルである。Dが0であるとき、この場合、Q1がデフォルトのスイッチオン状態にあることを表す。Dが1であるとき、この場合、Q1がデフォルトのスイッチオフ状態にあることを示す。
【0125】
Q1のスイッチング損失は、導通損失PON1およびターンオフ損失POFF1を含む。導通損失PON1は、以下の式を使用することによって、決定される。
PON1=EON1/TS (2)
【0126】
EON1は、Q1が一度スイッチオンにされたときに引き起こされる損失であり、インバータの直流バスの電流電圧、Q1のジャンクション温度、オン状態電流Iqを使用することによって、IGBTのマニュアルにおいて知られ得る。Tsは、インバータの電流出力サイクルである。
【0127】
ターンオフ損失POFF1は、以下の式で決定される。
POFF1=EOFF1/TS (3)
【0128】
EOFF1は、Q1が一度スイッチオフにされたときに引き起こされる損失であり、インバータの直流バスの電流電圧、Q1のジャンクション温度、およびオン状態電流Iqを使用することによって、IGBTのマニュアルにおいて知られ得る。
【0129】
結論として、正の半周期におけるQ1の総電力損失P1は、以下の式を使用することによって、決定される。
P1=PC1+PON1+POFF1 (4)
【0130】
相A電流iAが負の半周期にあるとき、D1のみが電力損失を有し、Q1は損失なしにスイッチオフのままである。この場合、D1のオン状態損失PD1は、以下の式を使用することによって、決定される。
PD1=VON2*Id*D (5)
【0131】
VON2は、D1の導通電圧降下であり、Idは、ダイオードD1を通って流れる電流である。Dは、Q1の制御信号のデューティサイクルである。
【0132】
D1のスイッチング損失は、ターンオフ損失POFF2を含む。ターンオフ損失は、ダイオードD1がスイッチオフにされたときの逆回復プロセスによって引き起こされ、ターンオフ損失POFF2は、以下の式を使用することによって、決定される。
POFF2=EOFF2/TS (6)
【0133】
EOFF2は、D1が一度スイッチオフにされたときに引き起こされる損失であり、インバータの直流バスの電流電圧、D1のジャンクション温度、およびオン状態電流Iqを使用することによって、ダイオードのマニュアルにおいて知られ得る。Tsは、インバータの電流出力サイクルである。
【0134】
結論として、負の半周期におけるD1の総電力損失P1は、以下の式を使用することによって、決定される。
P1=PD1+POFF2 (7)
【0135】
1つのパワースイッチデバイスの電力損失および1つのダイオードの電力損失は、上記で決定され、インバータの総電力損失Ptotalは、インバータ内のダイオードおよびパワースイッチデバイスの数に関連して決定され得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、パワートレインは、上記のIqおよびIdを取得するために、電流センサをさらに含む。電流センサは、モータの相電流を検出し、検出結果をコントローラに送信するように構成される。
【0137】
インバータの電力損失を決定した後、コントローラは、第1の位置の現在の温度T
1、および第2の位置の現在の温度T
2を決定し、以下の式を使用することによって、第1の位置と第2の位置との間の現在の熱抵抗Rを決定する。
【数1】
【0138】
引き続き
図4を参照されたい。熱抵抗Rが決定された後、熱抵抗と冷媒流量との間の対応関係の曲線が、第1の位置の現在の温度に基づいて決定され、対応する冷媒流量が、決定された熱抵抗に基づいて決定される。
【0139】
モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、この場合、インバータは小さい電流で動作し、インバータの温度は比較的低い。本出願では、モータ12の相電流が予め設定された電流値未満であるときの冷媒流量は、比例スケーリング方式で推定される。詳細は以下で説明される。予め設定された電流値は、実際の状況に基づいて設定される。これは、本出願の本実施形態では限定されない。
【0140】
まず、モータの相電流が予め設定された電流値よりも大きいとき、第1の瞬間における冷媒流量は、第1の流量f1として取得され、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度は、第1の回転速度r1として決定され、第1の流量f1および第1の回転速度r1は、基準として使用される。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、電子ポンプの現在の回転速度は、第2の回転速度r2として決定され、さらに、現在の冷媒流量f2は、第1の回転速度r1、第1の流量f1、および第2の回転速度r2に基づいて決定される。
【0141】
1つの可能な実施態様では、流量に対する電子ポンプの回転速度の比は、固定値であり、すなわち、第1の流量f1に対する第1の回転速度r1の比は、第1の比であり、第2の流量f2に対する第2の回転速度r2の比は、第2の比であり、第1の比は第2の比に等しい。この場合、冷媒流量f2は、以下の式を使用することによって、決定される。
【数2】
【0142】
別の可能な実施態様では、第1の比および第2の比は通常、ある程度異なっており、これは、データ検出誤差によって引き起こされる。したがって、データ検出誤差によって引き起こされる影響を軽減するために、第1の比と較正係数との積が第2の比に等しくなるように、パワートレインに対して実験を行うことによって、較正係数は、事前に較正され得る。この場合、冷媒流量f2は、以下の式を使用することによって、決定される。
【数3】
【0143】
cは較正係数であり、較正係数cは、予め実験を通して較正される。
【0144】
さらに別の可能な実施態様では、現在の冷媒流量に対する第2の回転速度の比と、第1の流量に対する第1の回転速度の比と、の間に、予め設定された関数関係がある。予め設定された関数関係は、以下の式で示される。
f2=[c0*(r2/r1)0+c1*(r2/r1)1+・・・+ck*(r2/r1)k]*f1 (11)
【0145】
kは非負の整数である。C0、C1、...、Ckなどは、所定の係数である。
【0146】
図6は、本出願の本実施形態による、冷媒温度と時間との間の対応関係の概略図である。
【0147】
モータの相電流と時間との間の対応関係のマークは、4である。本出願の本実施形態で最終的に決定される冷媒温度と時間との間の対応関係のマークは、5である。全プロセスにおいて、パワー半導体デバイスの熱モデルを使用することによって決定される、冷媒温度と時間との対応関係のマークは、6である。全プロセスにおいて、電子ポンプの回転速度の比例スケーリングを使用することによって決定される、冷媒温度と時間との間の対応関係のマークは、7である。
【0148】
モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、5で示される対応関係は、7で示される対応関係と同じである。モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、5で示される対応関係は、6で示される対応関係と同じである。
【0149】
実際の用途では、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、冷媒流量推定のプロセスにおいて、推定ごとの冷媒温度と電子ポンプの回転速度との間の対応関係、および取得された冷媒流量が、さらに記憶され得る。長い時間にわたってパワートレインが動作するにつれて、記憶された対応関係は、継続的に改善される。これは、異なる冷媒温度および電子ポンプの回転速度に対応する冷媒流量の較正を実施する。これは、電子ポンプの回転速度の比例スケーリングの方法に置き換わり、冷媒流量推定の精度を改善する。詳細は以下で説明される。
【0150】
1つの可能な実施態様では、コントローラはレジスタを含む。レジスタは、データをコントローラ内に記憶するために使用されるいくつかの小さな記憶領域であり、動作に関与するデータおよび動作結果を記憶するように構成される。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、第2の流量を決定した後、コントローラは、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の流量と、の間の対応関係を、レジスタに記憶する。長い時間にわたってパワートレインが動作するにつれて、レジスタに記憶された対応関係は、継続的に改善される。第1の位置の温度は、冷媒温度を表す。これは、異なる冷媒温度および電子ポンプの回転速度に対応する冷媒流量の較正を実施する。
【0151】
モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における第1の位置の温度が、第1の温度として決定され、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度が、第3の回転速度として決定される。コントローラは、第1の温度および第3の回転速度に従って、対応する冷媒流量についてレジスタに記憶された対応関係を検索する。第1の温度における第3の回転速度が、対応関係に含まれる第2の回転速度に等しいとき、第1の温度における第3の回転速度に等しい第2の回転速度に対応する第2の流量は、第3の瞬間における冷媒流量として使用される。これは、第3の瞬間における冷媒流量推定を実施し、電子ポンプの回転速度の比例スケーリングの前述の方法を回避し、冷媒流量推定の精度を改善する。
【0152】
レジスタに記憶された対応関係内のデータは、長い時間にわたってパワートレインが動作するにつれて、継続的に更新され得、偶発的な誤差の影響は、平均値法を使用することによって、緩和され得ることが理解されよう。たとえば、同一の第1の温度および同一の第2の回転速度における複数の異なる冷媒流量が、複数回の推定を通して取得されたとき、取得された複数の異なる冷媒流量の平均値が計算され得、冷媒流量の最終的に取得された平均値は、第1の温度および第2の回転速度に対応する冷媒流量として使用される。
【0153】
別の可能な実施態様では、前述の対応関係は、独立して配置されたメモリに記憶される。コントローラは、前述の対応関係の記憶および読み出しを実施するために、メモリに電気的に接続される。他の説明は、前述の実施態様のものと同様であり、詳細は、ここでは再び記載されない。メモリは、限定しないが、相変化メモリ(Phase-Change RAM、PRAM)、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(Static Random-Access Memory、SRAM)、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(Dynamic Random Access Memory、DRAM)、および別のタイプのランダム・アクセス・メモリ(Random Access Memory、RAM)を含み、または電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(Electrically Erasable Programmable Read only Memory、EEPROM)であってもよい。
【0154】
結論として、現在の冷媒流量は、本出願の本実施形態で提供されるパワートレインを使用することによって、リアルタイムに、かつオンライン方式で推定され得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の現在の温度、第2の位置の現在の温度、およびインバータの電力損失は、パワートレイン側で決定され得るデータである。車両熱管理システム側のデータが、取得される必要はない。これは、異なる車両モデルに対して繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。また、モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、冷媒流量は、温度検出データを使用することによって、決定される。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、現在の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらに電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、比例スケーリング方式で決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0155】
本出願の一実施形態は、別のパワートレインをさらに提供し、別の方法が、冷媒流量を推定するために使用され得る。以下は、添付の図面を参照して具体的な説明を行う。
【0156】
図7は、本出願の一実施形態による、別のパワートレインの概略図である。
【0157】
図に示された電動車両のパワートレインは、インバータ11と、モータ12と、コントローラ20と、第1の温度センサ30と、第2の温度センサ40と、電子ポンプ18と、第1の冷却ループ(図の破線枠内の領域Aの水冷却ループ部)と、を含む。
【0158】
第1の冷却ループ内の冷媒は、インバータ11を冷却するように構成される。
【0159】
モータ12は、電流センサ(図示せず)を含む。電流センサは、モータの相電流を検出し、検出結果をコントローラ20に送信するように構成される。
【0160】
第1の温度センサ30は、インバータ内の第1の位置の温度を検出するように構成される。第2の温度センサは、インバータ内の第2の位置の温度を検出するように構成される。
【0161】
電子ポンプ18は、冷媒を、第1の冷却ループ内で循環させ、インバータ11を冷却するように構成される。本出願の本実施形態における電子ポンプ18は、モータ制御ユニット(Motor Control Unit、MCU)によって制御される。
【0162】
コントローラ20は、MCUであってもよいし、独立して配置されてもよい。これは、本出願の本実施形態では限定されない。コントローラ20がMCUであるとき、コントローラは、電子ポンプ18の動作状態をさらに制御し得る。
【0163】
以下は、コントローラが第1の冷却ループ内の冷媒流量を決定する方法を説明する。第1の冷却ループ内の冷媒流量は、電子ポンプ18が動作するときに伝達される冷媒流量として理解され得ることが理解されよう。
【0164】
引き続き
図3を参照されたい。本出願の本実施形態の解決策では、インバータの温度測定デバイス、すなわち、図の温度測定デバイス1021~1023が、再利用され得る。この場合、温度測定デバイスは、温度センサである。たとえば、温度測定デバイス1021および1022が再利用されるとき、温度測定デバイス1021は、第1の温度センサ30であり、温度測定デバイス1022は、第2の温度センサ40である。これは、第1の冷却ループ内に温度センサを配置することを回避し、コストを低減する。
【0165】
本出願の本実施形態におけるモータは、三相モータであり、モータの相電流は、モータの各相負荷の巻線を通って流れる電流である。モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、この場合、インバータが、大きい電流で動作し、インバータの温度は、比較的高いことを示す。この場合、コントローラによって取得される、第1の位置の温度と第2の位置の温度との間の相対誤差は小さい。
【0166】
この場合、コントローラは、第1の位置の温度、第2の位置の温度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の冷却ループ内の冷媒流量を決定する。
【0167】
モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、この場合、インバータは小さい電流で動作し、インバータの温度は比較的低い。したがって、コントローラによって取得される、第1の位置の温度と第2の位置の温度との間の相対誤差は大きい。本出願では、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるときの冷媒流量が、比例スケーリング方式で推定される。詳細は以下で説明される。
【0168】
モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、コントローラは、第1の瞬間における冷媒流量を第1の流量として決定し、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定する。
【0169】
モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、電子ポンプの現在の回転速度を第2の回転速度として決定する。電子ポンプの回転速度は冷媒流量に比例するので、コントローラは、第1の回転速度、第1の流量、および第2の回転速度に基づいて、現在の冷媒流量を決定し得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、第1の流量に対する第1の回転速度の比は、第2の流量に対する第2の回転速度の比に等しい。
【0171】
いくつかの他の実施形態では、第1の流量に対する第1の回転速度の比は、第1の比であり、第2の流量に対する第2の回転速度の比は、第2の比である。第1の比および第2の比は通常、ある程度異なっており、これは、データ検出誤差によって引き起こされる。したがって、データ検出誤差によって引き起こされる影響を軽減するために、第1の比と較正係数との積が第2の比に等しくなるように、パワートレインに対して実験を行うことによって、較正係数は、事前に較正され得る。
【0172】
結論として、現在の冷媒流量は、本出願の本実施形態で提供されるパワートレインを使用することによって、リアルタイムに推定され得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。これは、異なる車両モデルに対して繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。加えて、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、現在の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらに電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、比例スケーリング方式で決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0173】
以下は、コントローラによって冷媒流量を推定する実施態様について説明する。本出願の以下の説明では、流量が体積流量である例が、説明のために使用され、すなわち、流量は、密閉されたパイプラインの有効部分を通って、単位時間に流れる流体の体積である。
【0174】
コントローラは、インバータのバス電圧、インバータの出力交流、インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、およびインバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、インバータの電力損失を決定する。具体的実施態様については、前述の実施形態の関連説明、すなわち式(1)~(7)の前述の説明を参照されたい。詳細は、本実施形態に関して再びここでは説明されない。
【0175】
モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、Pは、パワー半導体デバイスの電力損失を表し、T1は、第1の位置の温度を表し、T2は、第2の位置の温度を表し、tは、時間を表し、C0は、冷媒の比熱容量を表し、ρは、冷媒の密度を表し、f1は、冷媒の流量を表し、Qは、冷媒が第1の位置と第2の位置との間の領域を冷却するとき、冷媒によって吸収される熱を表し、熱のこの部分はまた、パワー半導体デバイスの電力損失によって発生される熱であり、以下の式を満たす。
Q=C0*ρ*f1*t*(T2-T1) (12)
Q=P*t (13)
【0176】
式(12)および式(13)を参照すると、f
1は、以下の式を満たすと決定され得る。
【数4】
【0177】
冷媒の比熱容量C0および密度ρは、冷媒の固有の特性であり、冷媒のタイプに基づいて予め決定される。たとえば、第1の位置は、第1の冷却ループの入口に近く、第2の位置は、第1の冷却ループの出口に近い。この場合、第1の温度センサは、1021であり、第2の温度センサは、1023である。互いに遠く離れた2つの温度センサが選択されるため、T2とT1との差は、より明確である。これは、温度測定時の推定結果に対する相対誤差の影響を緩和する。この場合、Pは、すべてのパワー半導体デバイスモジュール1011~1013を用いたパワー半導体デバイスの総電力損失を表す。
【0178】
モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、この場合、インバータが、小さい電流で動作し、インバータの温度は、比較的低く、これにより、T2とT1との差は、明確ではない。そのため、温度測定時の相対誤差は、推定結果に大きく影響する。本出願では、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるときの冷媒流量が、比例スケーリング方式で推定される。詳細は以下で説明される。予め設定された電流値は、実際の状況に基づいて設定される。これは、本出願の本実施形態では限定されない。
【0179】
まず、モータの相電流が予め設定された電流値よりも大きいとき、前述の式(12)~(14)に従って、第1の瞬間における冷媒流量は、第1の流量f1として取得され、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度は、第1の回転速度r1として決定され、第1の流量f1および第1の回転速度r1は、基準として使用される。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、電子ポンプの現在の回転速度は、第2の回転速度r2として決定され、さらに、現在の冷媒流量f2は、第1の回転速度r1、第1の流量f1、および第2の回転速度r2に基づいて決定される。
【0180】
1つの可能な実施態様では、流量に対する電子ポンプの回転速度の比は、固定値であり、すなわち、第1の流量f1に対する第1の回転速度r1の比は、第1の比であり、第2の流量f2に対する第2の回転速度r2の比は、第2の比であり、第1の比は第2の比に等しい。この場合、冷媒流量f2は、式(9)に従って決定される。
【0181】
別の可能な実施態様では、第1の比および第2の比は通常、ある程度異なっており、これは、データ検出誤差によって引き起こされる。したがって、データ検出誤差によって引き起こされる影響を軽減するために、第1の比と較正係数との積が第2の比に等しくなるように、パワートレインに対して実験を行うことによって、較正係数は、事前に較正され得る。この場合、冷媒流量f2は、式(10)または式(11)に従って決定される。
【0182】
実際の用途では、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、冷媒流量推定のプロセスにおいて、推定ごとの冷媒温度と電子ポンプの回転速度との間の対応関係、および取得された冷媒流量が、さらに記憶され得る。長い時間にわたってパワートレインが動作するにつれて、記憶された対応関係は、継続的に改善される。これは、異なる冷媒温度および電子ポンプの回転速度に対応する冷媒流量の較正を実施する。これは、電子ポンプの回転速度の比例スケーリングの方法に置き換わり、冷媒流量推定の精度を改善する。詳細は以下で説明される。
【0183】
1つの可能な実施態様では、コントローラはレジスタを含む。レジスタは、データをコントローラ内に記憶するために使用されるいくつかの小さな記憶領域であり、動作に関与するデータおよび動作結果を記憶するように構成される。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、第2の流量を決定した後、コントローラは、第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の流量と、の間の対応関係を、レジスタに記憶する。長い時間にわたってパワートレインが動作するにつれて、レジスタに記憶された対応関係は、継続的に改善される。第1の位置の温度は、冷媒温度を表す。これは、異なる冷媒温度および電子ポンプの回転速度に対応する冷媒流量の較正を実施する。
【0184】
モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における第1の位置の温度が、第1の温度として決定され、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度が、第3の回転速度として決定される。コントローラは、第1の温度および第3の回転速度に従って、対応する冷媒流量についてレジスタに記憶された対応関係を検索する。第1の温度における第3の回転速度が、対応関係に含まれる第2の回転速度に等しいとき、第1の温度における第3の回転速度に等しい第2の回転速度に対応する第2の流量は、第3の瞬間における冷媒流量として使用される。これは、第3の瞬間における冷媒流量推定を実施し、電子ポンプの回転速度の比例スケーリングの前述の方法を回避し、冷媒流量推定の精度を改善する。
【0185】
レジスタに記憶された対応関係内のデータは、長い時間にわたってパワートレインが動作するにつれて、継続的に更新され得、偶発的な誤差の影響は、平均値法を使用することによって、緩和され得ることが理解されよう。たとえば、同一の第1の温度および同一の第2の回転速度における複数の異なる冷媒流量が、複数回の推定を通して取得されたとき、取得された複数の異なる冷媒流量の平均値が計算され得、冷媒流量の最終的に取得された平均値は、第1の温度および第2の回転速度に対応する冷媒流量として使用される。
【0186】
別の可能な実施態様では、前述の対応関係は、独立して配置されたメモリに記憶される。コントローラは、前述の対応関係の記憶および読み出しを実施するために、メモリに電気的に接続される。他の説明は、前述の実施態様のものと同様であり、詳細は、ここでは再び記載されない。
【0187】
結論として、異なる車両モデルに対して繰り返される較正作業は、本出願の本実施形態で提供されるパワートレインを使用することによって回避され、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。加えて、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、現在の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらに電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、比例スケーリング方式で決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0188】
前述の実施形態で提供された電動車両のパワートレインに基づいて、本出願の一実施形態は、冷媒流量推定方法をさらに提供する。以下は、添付の図面を参照して具体的な説明を行う。
【0189】
図8は、本出願の一実施形態による、冷媒流量推定方法のフローチャート図である。
【0190】
図に示された方法は、前述の実装実施形態で提供されたパワートレインに適用され得、本方法は、以下のステップを含む。
【0191】
S801:モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、第1の冷却ループ内の第1の位置の温度、インバータ内の第2の位置の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0192】
S802:モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、第2の瞬間における電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、第1の回転速度、第1の瞬間における冷媒流量、および第2の回転速度に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0193】
本出願の本実施形態で提供される方法によれば、現在の冷媒流量は、リアルタイムに推定され得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。これは、異なる車両モデルに対して繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。加えて、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、現在の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらに電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、比例スケーリング方式で決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0194】
以下は、特定のステップを参照して説明を行う。
【0195】
図9Aおよび
図9Bは、本出願の一実施形態による、別の冷媒流量推定方法の概略図である。
【0196】
S901:第2の位置に対する第1の位置の熱抵抗と、第1の位置の温度と、冷媒流量と、の間の対応関係を予め較正する。
【0197】
S902:モータの相電流が予め設定された電流値以上であるか否かを決定する。
【0198】
モータの相電流が予め設定された電流値以上である場合、S903を実施する。モータの相電流が予め設定された電流値未満である場合、S906を実施する。
【0199】
S903:インバータのバス電圧、インバータの出力交流、インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、およびインバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、インバータの電力損失を決定する。
【0200】
S904:第1の位置の温度、第2の位置の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、第2の位置に対する第1の位置の熱抵抗を決定する。
【0201】
いくつかの実施形態では、第1の位置は、第1の冷却ループの冷媒入口に配置され、第2の位置は、第1の冷却ループの冷媒入口側に近くにあり、第1の位置に位置合わせされる。
【0202】
S905:第2の位置に対する第1の位置の熱抵抗、第1の位置の温度、および対応関係に基づいて、冷媒流量を決定し、第1の瞬間における冷媒流量を第1の流量として決定し、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、第1の流量および第1の回転速度を記憶する。
【0203】
S906:第1の位置の温度に対応する冷媒流量、および電子ポンプの現在の回転速度が、記憶された対応関係に存在するか否かを決定する。
【0204】
第1の位置の温度に対応する冷媒流量、および電子ポンプの現在の回転速度が、記憶された対応関係に存在する場合、S907を実施する。第1の位置の温度に対応する冷媒流量、および電子ポンプの現在の回転速度が、記憶された対応関係に存在しない場合、S908を実施する。
【0205】
S907:記憶された対応関係に従って、第1の位置の温度に対応する冷媒流量、および電子ポンプの回転速度を取得し、冷媒流量推定の結果として冷媒流量を使用する。
【0206】
S908:電子ポンプの現在の回転速度を第2の回転速度として使用し、第1の流量、第1の回転速度、および第2の回転速度に基づいて、第2の流量を決定し、冷媒流量推定の結果として第2の流量を使用する。
【0207】
第1の流量に対する第1の回転速度の比は、第1の比であり、第2の流量に対する第2の回転速度の比は、第2の比である。
【0208】
いくつかの実施形態では、第1の比は第2の比に等しい。
【0209】
いくつかの他の実施形態では、第1の比および第2の比は通常、ある程度異なっており、これは、データ検出誤差によって引き起こされる。したがって、データ検出誤差によって引き起こされる影響を軽減するために、第1の比と較正係数との積が第2の比に等しくなるように、パワートレインに対して実験を行うことによって、較正係数は、事前に較正され得る。
【0210】
いくつかの他の実施形態では、現在の冷媒流量に対する第2の回転速度の比と第1の流量に対する第1の回転速度の比との間には予め設定された関数関係があり、第2の流量は、その予め設定された関数関係に従って決定される。
【0211】
S909:第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の流量と、の間の対応関係を記憶する。
【0212】
記憶された対応関係は、後続の冷媒流量推定のために使用され得る。すなわち、モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における第1の位置の温度は、第1の温度として決定され、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度は、第3の回転速度として決定される。第1の温度における第3の回転速度が、対応関係に含まれる第2の回転速度に等しいとき、第1の温度における第3の回転速度に等しい第2の回転速度に対応する第2の流量は、第3の瞬間における冷媒流量として使用される。
【0213】
S910:プロセスを終了する。
【0214】
以下は、本出願の一実施形態による、別の冷媒流量推定方法を説明する。
【0215】
図10は、本出願の一実施形態による、さらに別の冷媒流量推定方法のフローチャート図である。
【0216】
本方法は以下のステップを含む。
【0217】
S1001:モータの相電流が予め設定された電流値よりも大きいとき、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、インバータ内の第1の位置の温度、インバータ内の第2の位置の温度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0218】
S1002:モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、第2の瞬間における電子ポンプの回転速度を第2の回転速度として決定し、第1の回転速度、第2の回転速度、および第1の瞬間における冷媒流量に基づいて、第2の瞬間における冷媒流量を決定する。
【0219】
本出願の本実施形態で提供される方法によれば、現在の冷媒流量は、リアルタイムに推定され得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。これは、異なる車両モデルに対して繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。加えて、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、現在の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらに電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、比例スケーリング方式で決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0220】
以下は、特定のステップを参照して説明を行う。
【0221】
図11Aおよび
図11Bは、本出願の一実施形態による、さらに別の冷媒流量推定方法のフローチャート図である。
【0222】
S1101:モータの相電流が予め設定された電流値以上であるか否かを決定する。
【0223】
モータの相電流が予め設定された電流値以上である場合、S1102を実施する。モータの相電流が予め設定された電流値未満である場合、S1104を実施する。
【0224】
S1102:インバータのバス電圧、インバータの出力交流、インバータ内のパワー半導体デバイスの動作温度、およびインバータの制御信号のデューティサイクルに基づいて、インバータの電力損失を決定する。
【0225】
S1103:第1の位置の温度、第2の位置の温度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の冷却ループ内の冷媒流量を決定し、第1の瞬間における冷媒流量を第1の流量として決定し、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定し、第1の流量および第1の回転速度を記憶する。
【0226】
いくつかの実施形態では、第1の位置は、第1の冷却ループの入口に近く、第2の位置は、第1の冷却ループの出口に近い。
【0227】
S1104:第1の位置の温度に対応する冷媒流量、および電子ポンプの現在の回転速度が、記憶された対応関係に存在するか否かを決定する。
【0228】
第1の位置の温度に対応する冷媒流量、および電子ポンプの現在の回転速度が、記憶された対応関係に存在する場合、S1105を実施する。第1の位置の温度に対応する冷媒流量、および電子ポンプの現在の回転速度が、記憶された対応関係に存在しない場合、S1106を実施する。
【0229】
S1105:記憶された対応関係に従って、第1の位置の温度に対応する冷媒流量、および電子ポンプの回転速度を取得し、冷媒流量推定の結果として冷媒流量を使用する。
【0230】
S1106:電子ポンプの現在の回転速度を第2の回転速度として使用し、第1の流量、第1の回転速度、および第2の回転速度に基づいて、第2の流量を決定し、冷媒流量推定の結果として第2の流量を使用する。
【0231】
第1の流量に対する第1の回転速度の比は、第1の比であり、第2の流量に対する第2の回転速度の比は、第2の比である。
【0232】
いくつかの実施形態では、第1の比は第2の比に等しい。
【0233】
いくつかの他の実施形態では、第1の比および第2の比は通常、ある程度異なっており、これは、データ検出中の誤差によって引き起こされる。したがって、データ検出誤差によって引き起こされる影響を軽減するために、第1の比と較正係数との積が第2の比に等しくなるように、パワートレインに対して実験を行うことによって、較正係数は、事前に較正され得る。
【0234】
いくつかの他の実施形態では、現在の冷媒流量に対する第2の回転速度の比と第1の流量に対する第1の回転速度の比との間には予め設定された関数関係があり、第2の流量は、その予め設定された関数関係に従って決定される。
【0235】
S1107:第1の位置の温度と、第2の回転速度と、第2の流量と、の間の対応関係を記憶する。
【0236】
記憶された対応関係は、後続の冷媒流量推定のために使用され得る。すなわち、モータの相電流が再び予め設定された電流値未満であるとき、第3の瞬間における第1の位置の温度は、第1の温度として決定され、第3の瞬間における電子ポンプの回転速度は、第3の回転速度として決定される。第1の温度における第3の回転速度が、対応関係に含まれる第2の回転速度に等しいとき、第1の温度における第3の回転速度に等しい第2の回転速度に対応する第2の流量は、第3の瞬間における冷媒流量として使用される。
【0237】
S1108:プロセスを終了する。
【0238】
前述の方法におけるステップは、単に説明を容易にするためのものであり、本出願の技術的解決策に対する限定を構成するものではない。当業者は、本出願の原理から逸脱することなく、前述の方法におけるステップ、およびステップの順序を、さらに適切に調整することができ、その調整も、本出願の保護範囲内に入るものとする。
【0239】
前述の実施形態で提供されたパワートレインに基づいて、本出願の一実施形態は、パワートレインが適用される電動車両をさらに提供する。以下は、添付の図面を参照して具体的な説明を行う。
【0240】
図12は、本出願の一実施形態による、電動車両の概略図である。
【0241】
本出願の本実施形態で提供される電動車両1200は、パワーバッテリパック1201と、パワートレイン1202と、を含む。
【0242】
パワーバッテリパック1201は、パワートレイン1202に電気エネルギーを供給するように構成される。パワートレイン1202は、パワーバッテリパック1201によって供給された電気エネルギーを機械エネルギーに変換して、電動車両を駆動するように構成される。
【0243】
パワートレイン1202は、シングルモータパワートレインまたはマルチモータパワートレインであってもよい。これは、本出願の本実施形態では限定されない。
【0244】
パワートレイン1202の冷却システムは、水冷却ループと、オイル冷却ループと、オイル-水熱交換器と、を含む。水冷却ループおよびオイル冷却ループは、接続されない。水冷却ループは、インバータを通り、熱放散がインバータで実施された後、オイル-水熱交換器を通る。オイル冷却ループは、モータおよび減速機を冷却するように構成される。本出願の本実施形態における冷媒流量は、水冷却ループ内の冷媒流量である。冷媒の特定のタイプは、本出願の本実施形態では限定されない。いくつかの実施形態では、冷媒は、水とグリコールとの混合物であってもよい。
【0245】
1つの可能な実施態様では、パワートレイン1202は、インバータと、モータと、電子ポンプと、第1の冷却ループと、コントローラと、を含む。第1の冷却ループ内の冷媒は、インバータを冷却するように構成される。電子ポンプは、冷媒を、第1の冷却ループ内で循環させるように構成される。インバータは、パワーバッテリパックによって供給された直流を交流に変換し、次いで、モータに交流を供給するように構成される。モータの相電流が予め設定された電流値以上であるとき、コントローラは、第1の冷却ループ内の第1の位置の現在の温度、インバータ内の第2の位置の現在の温度、およびインバータの電力損失に基づいて、現在の冷媒流量を決定し、第1の瞬間における冷媒流量を第1の流量として決定し、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定する。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、電子ポンプの現在の回転速度を第2の回転速度として決定し、第1の回転速度、第1の流量、および第2の回転速度に基づいて、現在の冷媒流量を決定する。
【0246】
パワートレインは、現在の冷媒流量をリアルタイムに推定し得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。これは、異なる車両モデルに対して繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。また、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、インバータの熱放散電力消費が低く、温度検出データの相対誤差の影響が大きい。この場合、現在の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらに電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0247】
別の可能な実施態様では、パワートレイン1202は、インバータと、モータと、第1の温度センサと、第2の温度センサと、第1の冷却ループと、電子ポンプと、コントローラと、を含む。第1の冷却ループ内の冷媒は、インバータを冷却するように構成され、第1の温度センサは、インバータ内の第1の位置の温度を検出するように構成され、第2の温度センサは、インバータ内の第2の位置の温度を検出するように構成される。電子ポンプは、冷媒を、第1の冷却ループ内で循環させる。モータの相電流が予め設定された電流値よりも大きいとき、コントローラは、第1の位置の温度、第2の位置の温度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度、およびインバータの電力損失に基づいて、第1の冷却ループ内の冷媒流量を決定し、第1の瞬間における冷媒流量を第1の流量として決定し、第1の瞬間における電子ポンプの回転速度を第1の回転速度として決定する。モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、コントローラは、電子ポンプの現在の回転速度を第2の回転速度として決定し、第1の回転速度、第1の流量、および第2の回転速度に従って、現在の冷媒流量を決定する。
【0248】
いくつかの他の実施形態では、コントローラはまた、インバータ内のパワー半導体デバイスの電気的パラメータを検出して、インバータ内の第1の位置およびインバータ内の第2の位置の温度情報を決定し得る。この場合、前述の第1の温度センサおよび第2の温度センサは、パワートレインに配置されなくてもよい。これは、ハードウェアコストを低減する。
【0249】
現在の冷媒流量は、本出願の本実施形態で提供されるパワートレインを使用することによって、リアルタイムに推定され得る。現在の冷媒流量を推定するためのデータ、すなわち、第1の位置の温度、第2の位置の温度、インバータの電力損失、電子ポンプの回転速度、冷媒の比熱容量、冷媒の密度などは、パワートレイン側で決定され得るデータである。これは、異なる車両モデルに対して繰り返される較正作業を回避し、時間のオーバーヘッドを低減し、解決策の実用性を改善する。加えて、モータの相電流が予め設定された電流値未満であるとき、現在の冷媒流量は、インバータの高い熱放散電力消費の場合における冷媒流量、および電子ポンプの対応する回転速度を使用することによって、さらに電子ポンプの現在の回転速度に基づいて、比例スケーリング方式で決定される。これは、冷媒流量推定の精度をさらに改善する。
【0250】
本出願では、「少なくとも1つの(項目)」は、1つ以上を指し、「複数の」は、2つ以上を指すことを理解されたい。「および/または(and/or)」は、関連付けられた対象間の関連付け関係を記載するために使用され、3つの関係が存在し得ることを示す。
【0251】
上記の説明は、本出願の特定の実施態様にすぎない。当業者は、本出願の原理から逸脱することなく、改善および改良を、さらに行えることに留意されたい。これらの改善および改良も、本出願の保護範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0252】
11 インバータ
12 モータ
13 減速機
14 水冷却ループ
15 オイル冷却ループ
16 オイル-水熱交換器
18 電子ポンプ
20 コントローラ
30 第1の温度センサ
40 第2の温度センサ
103 プリント基板
104 補助熱放散材料
105 ラジエータ
121 モータ・ステータ・シリコン鋼板
122 端部巻線
123 磁性鋼
124 モータ回転シャフト
125 モータハウジング
141 水入口パイプ
142 水出口パイプ
1011 パワー半導体デバイスモジュール
1012 パワー半導体デバイスモジュール
1013 パワー半導体デバイスモジュール
1021 温度測定デバイス
1022 温度測定デバイス
1023 温度測定デバイス
1200 電動車両
1201 パワーバッテリパック
1202 パワートレイン
1301 第1の中間シャフト歯車
1302 第2の中間シャフト歯車
1303 入力シャフト歯車
1304 出力シャフト歯車
1305 オイルフィルタ