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特許7283005点群データ処理方法および点群データ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】点群データ処理方法および点群データ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/04 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
G01C7/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019064792
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165717
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】安富 敏
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-32444(JP,A)
【文献】特開2010-243416(JP,A)
【文献】特開2017-19388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G01B 11/00-11/30
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)測定経路に沿って移動する測定装置により取得された測定データに基づいて、測定装置の軌跡を算出するステップと、
(b)前記軌跡と直交する鉛直面上で
前記軌跡と前記鉛直面との交点から水平面に下ろした垂線を基準とする、前記交点P周りの抽出角度範囲と、
前記鉛直面における前記交点を基準とする抽出距離範囲とを指定して、2次元図形を特定し、
前記2次元図形を前記軌跡に沿って延在させた領域を抽出領域として設定するステップと、
(c)前記測定データに含まれる、前記測定装置の周囲をスキャンすることにより取得した全周点群データから、特定の解析対象物を含む領域の点群データを、抽出点群データとして抽出するステップ
とを備え
前記ステップ(b)において、前記抽出角度範囲に含まれる点群データのうち、前記軌跡からの最短距離を比較して前記軌跡から最も遠い点を特定し、前記最も遠い点と前記軌跡との間の最短距離を抽出基準距離として指定することを特徴とする点群データ処理方法。
【請求項2】
前記2次元図形は、前記抽出距離範囲の高さを有する台形であることを特徴とする請求項1に記載の点群データ処理方法。
【請求項3】
前記2次元図形は、径方向に所定の幅を有する円環弧形状であることを特徴とする請求項1に記載の点群データ処理方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)において、平面直角座標系を所定の大きさの立方体が連続する様に区画し、
各立方体に含まれる点データの密度が所定の値以上である立方体を抽出し
所定の値以上の密度で点が含まれる前記立方体の内、軌跡からの最短距離が最も長い立方体を特定し、
その立方体の中心を、軌跡から最も遠い点であると特定することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の点群データ処理方法。
【請求項5】
(d)予め設定された複数の抽出モードから1の抽出モードを選択するステップと、
(e)選択された前記1の抽出モードに応じたパラメータを設定するステップとを備え、
前記設定されたパラメータを用いて、前記ステップ(a)~(c)を実行することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の点群データ処理方法。
【請求項6】
測定経路に沿って移動する測定装置により取得された測定データに基づいて、測定装置の軌跡を算出する軌跡算出部と、
前記軌跡と直交する鉛直面上で
前記軌跡と前記鉛直面との交点から水平面に下ろした垂線を基準とする、前記交点P周りの抽出角度範囲と、
前記鉛直面における前記交点を基準とする抽出距離範囲とを指定して、2次元図形を特定し、
前記2次元図形を前記軌跡に沿って延在させた領域を抽出領域として設定する抽出領域設定部と、
前記測定データに含まれる、前記測定装置の周囲をスキャンすることにより取得した全周点群データから、特定の解析対象物を含む領域の点群データを、抽出点群データとして抽出する抽出点群データ生成部とを備え、
前記抽出領域設定部は、前記抽出角度範囲に含まれる点群データのうち、前記軌跡からの最短距離を比較して前記軌跡から最も遠い点を特定し、前記最も遠い点と前記軌跡との間の最短距離を抽出基準距離として指定することを特徴とする点群データ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点群データ処理方法および点群データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の移動体に、GNSS(Grobal・Navigation・Satellite・System:全地球航法衛星システム)アンテナ、IMU(Inertial・Measuring・Unit:慣性計測装置)、カメラ、レーザスキャナ等からなる測定装置を搭載し、走行しながら建物や道路の形状,標識・ガードレール等、道路周辺の3次元位置情報を高精度で効率的に取得する、MMS(Mobile・Mapping・System:モバイルマッピングシステム)が知られている。
【0003】
MMSは、測定データの後処理を前提とするシステムである。したがって、まず、対象道路の計測区間を車両で走行しながら、GNSS航法信号に基づく自位置に関するデータ(以下、「衛星測位データ」という。)、IMUによる3次元の加速度および角速度データ(以下、「慣性測位データ」という。)ならびにレーザスキャナによるスキャン光の各点の測定データ(以下、「測定点群データ」という。)を取得し、次に、衛星測位データおよび慣性測位データに基いて車両の軌跡を算出し、算出した車両の軌跡と点群データとを合成して、成果物としての三次元点群データを生成する。
【0004】
レーザスキャナは全周に亘って点群を取得するため、取得した点群データには、解析対象物以外の構造物に起因する点データが多く含まれる。このため、解析対象物を解析するために、解析対象物を含む部分を手動で抽出する必要があり、抽出作業に手間がかかるという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1には、軌跡の下側の所定位置に配置した円柱領域および平行六面体領域を抽出領域として設定し、該抽出領域に属する点データを、対象点群データとして抽出する点群データ処理方法が開示されている。
【0006】
しかし、様々な構造物の解析に対応するために、全周点群データから対象点群データを抽出するためのさらなる点群データ処理方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2018/159690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、係る事情を鑑みてなされたものであり、測定経路を移動する測定装置により取得された全周点群データから、解析対象物を容易に抽出することができる点群データ処理方法および点群データ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様に係る点群データ処理方法は、(a)測定経路に沿って移動する測定装置により取得された測定データに基づいて、測定装置の軌跡を算出するステップと、(b)前記軌跡と直交する鉛直面上で前記軌跡と前記鉛直面との交点から水平面に下ろした垂線を基準とする、前記交点P周りの抽出角度範囲と、前記鉛直面における前記交点を基準とする抽出距離範囲とを指定して、2次元図形を特定し、前記2次元図形を前記軌跡に沿って延在させた領域を抽出領域として設定するステップと、(c)前記測定データに含まれる、前記測定装置の周囲をスキャンすることにより取得した全周点群データから、特定の解析対象物を含む領域の点群データを、抽出点群データとして抽出するステップとを備える。
【0010】
上記態様において、前記2次元図形は、前記抽出距離範囲の高さを有する台形であることも好ましい。
【0011】
また、上記態様において、前記2次元図形は、径方向に所定の幅を有する円環弧形状であることも好ましい。
【0012】
また、上記態様において、前記ステップ(b)において、軌跡からの最短距離が最も遠くなる点と、軌跡との間の最短距離を抽出基準距離として指定することも好ましい。
【0013】
また、上記態様において、前記ステップ(b)において、平面直角座標系を所定の大きさの立方体が連続する様に区画し、各立方体に含まれる点データの密度が所定の値以上である立方体を抽出し、所定の値以上の密度で点が含まれる前記立方体の内、軌跡からの最短距離が最も長い立方体を特定し、その立方体の中心を、軌跡Tから最も遠い点または最も近い点であると特定することも好ましい。
【0014】
また、上記態様において、
(d)予め設定された複数の抽出モードから1の抽出モードを選択するステップと、
(e)選択された前記1の抽出モードに応じたパラメータを設定するステップとを備え、
前記設定されたパラメータを用いて、前記ステップ(a)~(c)を実行することも好ましい。
【0015】
また、本発明の別の態様に係る点群データ処理装置は、測定経路に沿って移動する測定装置により取得された測定データに基づいて、測定装置の軌跡を算出する軌跡算出部と、前記軌跡と直交する鉛直面上で前記軌跡と前記鉛直面との交点から水平面に下ろした垂線を基準とする、前記交点P周りの抽出角度範囲と、前記鉛直面における前記交点を基準とする抽出距離範囲とを指定して、2次元図形を特定し、前記2次元図形を前記軌跡に沿って延在させた領域を抽出領域として設定する抽出領域設定部と、前記測定データに含まれる、前記測定装置の周囲をスキャンすることにより取得した全周点群データから、特定の解析対象物を含む領域の点群データを、抽出点群データとして抽出する抽出点群データ生成部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様に係る点群データ処理方法および点群データ処理装置によれば、測定経路を移動する測定装置により取得された全周点群データから、解析対象物を容易に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)は、本発明の実施の形態に係る点群データ処理方法のための測定データを測定する測定装置の概要を示す図であり、(B)は、測定装置による測定の様子を模式的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る点群データ処理方法を実行する点群データ処理装置の機能構成図である。
図3】上記測定装置で測定する測定経路の一例を示す図である。
図4】同形態に係る点群データ処理方法における、点群データ生成処理のフローチャートである。
図5】同点群データ処理方法における、抽出領域設定処理のフローチャートである。
図6】同点群データ処理方法における、抽出領域設定方法を説明する図である。
図7】同点群データ処理方法における、抽出領域設定方法を説明する図である。
図8】(A)は、同点群データ処理方法による抽出処理前の全周点群データであり、(B)は、抽出処理後の抽出点群データである。
図9図8(A)の点群データを異なる方向から見た図である。
図10】同点群データ処理方法における、抽出領域設定処理の変形例を示す図である。
図11】同点群データ処理方法における、抽出領域設定処理の別の変形例を示す図である。
図12】同点群データ処理方法を実行する点群データ処理装置の別の変形例の機能構成図である。
図13】上記点群データ処理装置による点群データ処理のフローチャートである。
図14】同点群データ処理装置における、抽出モード選択画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の実施の形態の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、同様の構成要素には同一の名称を付して重複する説明は適宜省略する。
【0019】
<測定装置の構成>
実施の形態にかかる点群データ処理装置は、例えば、図1に示す測定装置20によって取得された測定データの後処理を実行する装置である。そこで、まず、測定装置20について説明する。
【0020】
測定装置20は、いわゆる、MMS(モバイルマッピングシステム)である。測定装置20は、GNSS装置21と、IMU22と、カメラ23と、レーザスキャナ24と、ロータリエンコーダ25と、同期制御装置26とを車両27に搭載して構成されている。
【0021】
GNSS装置21は、GNSS衛星等の航法衛星28からの航法信号を受信する受信装置である。GNSS装置21は、航法信号に基いて衛生測位データ、すなわち測定装置20の平面位置と高度を取得する。例えば、GNSS装置21は、測定装置20の座標を10回/秒間隔で取得する。
【0022】
IMU22は、慣性計測装置であり、3軸ジャイロと3方向の加速度計を備え、慣性測位データを取得する。
【0023】
カメラ23は、複数のカメラで構成される全方位カメラであり、上方向も含めて全周(2π空間)の動画を撮影する。ここでは説明を省略するが、カメラ23が撮影した動画の画像データは、レーザスキャナ24が測定する点群データと組み合わせて周囲の三次元情報の構築に利用される。
【0024】
カメラ23およびレーザスキャナ24の測定装置20(この場合はIMUの位置)に対する外部標定要素(位置および姿勢)は、予め測定され、その情報は既知となっている。
【0025】
レーザスキャナ24は、図1(B)に示すように、スキャン光Laを周囲全周(2π空間)にスパイラル状に照射し、道路30、建築物、樹木等の構造物からの反射光Lb(図1(B))を受光する。スキャン光Laの発光から反射光Lbの受光までの時間に基いて、反射点の三次元位置を各点において求めることでレーザスキャナ24の全周にわたる点群データを取得する。
【0026】
レーザスキャナ24は、車両27の移動に伴って、測定経路に沿って、スキャン範囲32の全周点群データである測定点群データを取得する。
【0027】
なお、図示の例ではレーザスキャナ24の数は1つである。しかし、これに限定されず、測定装置20は、3つ、5つ等複数のレーザスキャナ24を備えてもよい。レーザスキャナ24の数を増やせば点群密度が高くなり、また、影となる部分を最小限とすることができるので、より精度の高い測定が可能となる。
【0028】
ロータリエンコーダ25は、車両27のホイール29に取り付けられ、ホイール29の回転速度、回転角度から車両の移動距離データを取得する。
【0029】
同期制御装置26は、ケーブル等を介してまたは無線により、GNSS装置21、IMU22、カメラ23、レーザスキャナ24およびロータリエンコーダ25に接続されている。
【0030】
同期制御装置26は、IMU22による慣性測位データ取得時刻、カメラ23による画像データ取得時刻、レーザスキャナ24による点群データ取得時刻、およびロータリエンコーダ25によるホイール29の移動距離データの取得時刻を同期させる。
【0031】
測定装置20は、測定経路に沿って移動しながら、GNSS装置21、IMU22、カメラ23、レーザスキャナ24、およびロータリエンコーダ25により、衛星測位データ、慣性測位データ、測定点群データおよび移動距離データ(以下、これらのデータを総称して、「測定データ」という。)をそれぞれ取得する。
【0032】
<実施の形態>
以下、本発明の実施の形態にかかる、点群データ生成方法および点群データ処理装置100について説明する。点群データ処理装置100は、測定装置20が取得した測定データを用いて、測定経路周辺の三次元点群データ(成果点群データ)を生成する。
【0033】
点群データ処理装置100は、所謂パーソナルコンピュータである。点群データ処理装置100は、プロセッサとしてのCPU(Central・Processing・Unit)、主記憶装置としてのRAM(Random・Access・Memory)、ROM(Read・Only・Memory)、補助記憶装置としてのHDD(Hard・Disc・Drive)、および表示装置としての液晶ディスプレイ等のハードウェアを備える。
【0034】
点群データ処理装置100は、同期制御装置26を介して、GNSS装置21、IMU22、カメラ23、レーザスキャナ24およびロータリエンコーダ25に接続可能に構成されている。点群データ処理装置100は、車両の外部に配置されていてもよいし、車両の内部に配置されていてもよい。本明細書では、便宜上、車両外部に配置されているものとする。
【0035】
図2は、点群データ処理装置100の機能構成図である。点群データ処理装置100は、データ取得部111、軌跡算出部112、一次点群データ生成部113、抽出領域設定部114、抽出点群データ生成部115、測定標定点検出部116、測定標定点調整部117、往復完了判定部118、ノイズ判定部119、成果点群データ生成部120の各機能部、および記憶部130、表示部140、入力部150を備える。
【0036】
各機能部は、CPUがプログラムを実行することによりそれぞれの機能を実現する。各機能部の機能を実現するためのプログラムは、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD等の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0037】
データ取得部111は、入力インタフェース(図示せず)を介して測定データを受け付けて、記憶部130に格納する。
【0038】
入力インタフェースは、同期制御装置26に接続されるポートである。入力インタフェースは、例えば、USB(Universal・Serial・Bus)端子である。また、入力インタフェースは、LAN(Local・Area・Network)と接続されるポートであってもよい。
【0039】
軌跡算出部112は、記憶部130から衛星測位データおよび慣性測位データを受け取り、カルマンフィルタを用いた処理により、平面直角座標系における測定装置20の軌跡を算出する。
【0040】
なお、上記の通り、レーザスキャナ24と測定装置20(IMU装置)の位置関係は既知となっており、関連付けられている。すなわち、本明細書において、「測定装置20の軌跡」は、「レーザスキャナ24の中心の軌跡」と関連付けられている。
【0041】
一次点群データ生成部113は、測定点群データを、算出した軌跡点データを用いて、平面直角座標系の一次点群データを生成する。
【0042】
抽出領域設定部114は、軌跡算出部112で取得した各軌跡点を基準として、抽出角度範囲および抽出距離範囲を設定し、抽出領域を設定する。
【0043】
抽出点群データ生成部115は、一次点群データから、抽出領域設定部114で設定した領域内に配置された点群データを抽出して、抽出点群データを生成し、抽出点群データを表示部140に出力し、記憶部130に記憶させる。
【0044】
測定標定点検出部116は、表示部140に表示された抽出点群データから、測定標定点41を検出する。
【0045】
測定標定点調整部117は、測定標定点検出部116で検出された測定標定点41と、既知の標定点座標とに基づいて、軌跡を再計算し、再計算された軌跡と、抽出点群データとに基づいて、調整点群データを生成する。
【0046】
往復完了判定部118は、測定経路の往路復路両方について調整点群データの生成を完了したか否かを判定する。
【0047】
ノイズ判定部119は、測定経路の往路と復路の調整点群データを比較して、一方にのみ存在するデータをノイズと判定する。
【0048】
成果点群データ生成部120は、ノイズ判定部119で、ノイズであると判断されたデータを削除し、往路と復路の点群データを合成して、成果点群データを生成し、表示部140に表示し、記憶部130に記憶させる。
【0049】
記憶部130は、測定データ、および各機能部で算出されたデータ、ならびにデータ処理装置100に機能を発揮させるための各種プログラムおよび設定を記憶する。記憶部130は、主記憶装置および補助記憶装置により実現されるが、主記憶装置のみ、または補助記憶装置のみで実現されてもよい。
【0050】
表示部140は、抽出点群データおよび成果点群データ等を表示する。表示部140は、表示装置により実現される。
【0051】
入力部150は、ユーザからの処理の開始等の種々の指示を入力するための、ユーザインターフェースであり、例えば、キーボード、マウス等である。
【0052】
<点群データ処理方法>
次に、本実施の形態に係る点群データ処理方法を説明する。
具体例として、測定装置20を用いて、所定の測定経路について往復して取得した測定データを用い、解析対象物が、図3に示すような、測定経路上の道路30に、所定の間隔で設置された標定点40であるとして説明する。標定点40には、反射シート等が設置されており、これを予めトータルステーションで測定して座標が既知とされている。
【0053】
図4は、点群データ処理方法のフローチャートである。処理を開始すると、ステップS101で、軌跡算出部112が、一方の経路について、記憶部130から衛星測位データおよび慣性測位データ受け取り、カルマンフィルタを用いた処理により、平面直角座標系の軌跡を算出する。
【0054】
次に、ステップS102で、一次点群データ生成部113が、同一の経路に係る測定点群データを、ステップS101で算出した軌跡を用いて、平面直角座標系データに変換し、全周の一次点群データを生成する。
【0055】
次に、ステップS103で、抽出領域設定部114が、抽出角度範囲および抽出距離範囲を設定し、抽出領域を設定する。抽出角度範囲の設定および抽出距離範囲の設定の詳細は後述する。
【0056】
次に、ステップS104で、抽出点群データ生成部115が、一次点群データから、抽出領域設定部114で定めた領域内に配置された点群データを抽出して、抽出点群データを生成し、抽出点群データを表示部140に表示し、記憶部130に記憶させる。
【0057】
次に、ステップS105で、測定標定点検出部116が、表示部140に表示された抽出点群データから、測定標定点41を検出し、当該部分が標定点40であることを指定する。道路に設置された標定点40には、反射シート等が設置されているため、点群データにおいて、測定標定点41は、反射強度の高い点または領域として現れる。
【0058】
標定点の検出および指定は、ユーザが、表示部に表示された抽出点群データのうち、反射強度が高い特定の形状の部分を標定点と認識して、マウスポインタなどで順次選択可能に構成することで実現してもよい。あるいは、反射強度および形状に基づいて点群データから自動的に抽出できるように構成されていてもよい。
【0059】
次に、ステップS106で、測定標定点調整部117が、検出された測定標定点と、既知の標定点座標とに基づいて軌跡を再計算し、再計算された軌跡に基づいて調整点群データを生成する。
【0060】
次に、ステップS107で、往復完了判定部118が、測定経路の往復両方について調整点群データの生成が完了したか否かを判定する。
【0061】
一方の経路(例えば往路)についてのみ完了している場合(No)、処理は、ステップS101に戻り、他方の経路(例えば復路)についてステップS101~S107の処理を繰り返す。
【0062】
一方、ステップS107において、両方の経路について完了している場合(Yes)、ステップS108で、ノイズ判定部119が、往路と復路との調整点群データを比較して、一方の経路にのみ含まれるデータが存在するかどうかを判断する。
【0063】
ステップS108において、一方にのみ存在するデータがある場合(Yes)、ノイズ判定部119が、当該一方にのみ含まれるデータをノイズであると判断し、ステップS109において、当該ノイズ点群データを削除する。その後処理はステップS110に移行する。
【0064】
ステップS108において、一方のみに含まれる点群データがない場合(No)、ノイズ判定部119が、当該調整点群データをノイズのないデータであると判断し、処理は、ステップS110に移行する。
【0065】
ついで、ステップS110で、成果点群データ生成部120が、S109においてノイズが削除された調整点群データ、またはステップS108でノイズがないと判断された調整点群データを、往路と復路で合成して、成果点群データを生成する。そして、成果点群データを表示部140に出力し、記憶部130に記憶させて、処理を終了する。
【0066】
次に、ステップS103の、抽出領域の設定について図5~7を参照しながら説明する。図5は、ステップS103の詳細なフローチャートである。
【0067】
抽出領域の設定が開始すると、ステップS201で、抽出領域設定部114が、図6(A)に示すように、測定装置20の軌跡Tと直交する任意の鉛直面Vを設定する。図6(A)は、ステップS101で算出された軌跡を平面直角座標系で表したものである。便宜的に、測定装置20はE軸上を東方向に進行したものとする。
【0068】
次に、図6(B)に示すように、ステップS202で、抽出領域設定部114が、鉛直面V上において、抽出角度範囲Θを、軌跡Tと鉛直面Vとの交点Pから水平面Hにおろした垂線Lを基準として、交点P周りに-θ≦Θ≦+θと指定する。図6(B)は軌跡Tと直交する任意の鉛直面Viを測定装置20の進行方向に見た図である。
【0069】
抽出角度幅θ,θの値は、予め設定されている。一般に、標定点40は、図3に示すように、車道の中央に設置されているか、路肩等所定の位置に設置されている。このため、抽出角度幅θ,θの値は、交点Pの道路からの高さと道幅または設置位置との関係等からある程度予測できる。このような予測に基づいて、例えば、一車線道路で、標定点が車道の中央に設置されている場合には、θ=θ=40°とし、二車線道路で、標定点が中央線上等に設置されている場合には、θ=60°,θ=40°のように設定されている。
【0070】
次に、ステップS203で、抽出領域設定部114が、抽出基準距離lを設定する。抽出基準距離lは、図7(A)に示すように、任意の鉛直面Vにおけるの軌跡Tと鉛直面Vとの交点Pからの鉛直方向の距離として設定される。
【0071】
抽出基準距離lの値は、予め設定されていてもよい。例えば、路面から軌跡Tまでの距離は、測定装置20の高さhと略等しいと推定される。測定装置20の路面からの距離hは、既知とされている。従って、図7(B)に示すように、測定装置20の高さhを抽出基準距離lとして設定することができる。
【0072】
測定装置20を用いた測定において、鉛直下方向で測定される構造物は主に道路30であるため、測定装置20の高さhを抽出基準距離lとして設定することにより、簡便且つ適切に抽出基準距離lを設定することができる。
【0073】
次に、ステップS204で、予め定められた抽出幅d,dを用いて、抽出距離範囲Dを、軌跡との交点Pからl-d≦D≦l+dと指定する。
【0074】
抽出距離幅d,dは、例えば、本例の様に道路周辺の点を抽出したい場合は、d,d=30cmのように設定することができる。なお、抽出距離幅d,dは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0075】
次に、ステップS205で、図7(A)に示すように、抽出領域設定部114が、指定された、抽出角度範囲Θおよび抽出距離範囲Dを用いて、鉛直面V上に、台形の2次元図形Sを特定する。
【0076】
次に、ステップS206で、図7(C)に示すように、抽出領域設定部114が、2次元図形Sを軌跡に沿って延在させた領域を、抽出領域Aとして設定し、処理は、ステップS104に移行する。
【0077】
この様にして、抽出した抽出点群データの例を図8に示す。図8(A)は、抽出処理前の一次点群データを示し、図8(B)は、抽出処理後の抽出点群データを示す同じ経路の鳥瞰図である。また、図9(A)は、図8(A)と同じ一次点群データの、図8(A)に示す白線四角の部分を拡大した平面図であり、図9(B)は、路上からの視点で図9(A)の矢印方向に見た図である。
【0078】
図8(A)に示すように、抽出処理前の一次点群データでは、道路30は、樹木50その他の構造物に基づく点群データにより覆われている。このため、表示された点群データから目視により、測定標定点41を判別することは困難である。図9(B)の様に表示方向を変えることで、測定標定点41を検出することができるが、このために、拡大や、表示領域の変更等を繰り返す必要があり、検出作業が煩雑となる。
【0079】
一方、図8(B)に示すように、抽出処理後は道路30および測定標定点41が、容易に検出できる。
【0080】
このように、本実施の形態にかかる点群データ生成方法によれば、測定経路について測定装置の全周に亘って取得された点群データから、解析対象物についての点群データを簡単に抽出することができる。
【0081】
図8(A)の状態のように、測定装置20の走行経路の上方に樹木や建造物などの構造物があり、一次点群データにより、標定点が検出されにくい状況は、測定時に測定装置20上方が遮られていることを意味する。このような場合、GNSS装置21の受信状態が悪くなり、軌跡の誤差が大きくなりやすい。
【0082】
このため、高精度の3次元点群データを取得するためには、測定標定点41により、軌跡及び点群データを調整することが重要である。このように、解析対象物を標定点として点群データの抽出を行い、容易に検出することは、軌跡および点群データの調整が容易となり特に有利である。
【0083】
一方、点群データ処理装置100は、測定標定点検出部116,測定標定点調整部117、往復完了判定部118、ノイズ判定部119、および成果点群データ生成部120を備えず、ステップS101~S104の処理のみを行う、点群データ抽出装置として構成されていてもよい。
【0084】
この場合には、一次点群データとして、既に調整後の軌跡を用いて調整した点群データなど、様々な段階の全周点群データを用いることができる。
【0085】
なお、本例においては、解析対象物を道路30に設定された標定点40として説明したが、本方法は、標定点40のみならず、道路30の路面形状または路面付近に設置された構造物等に用いることができる。
【0086】
<変形例1>
ステップS203における抽出基準距離lの設定は、予め設定するだけでなく、以下の通り自動的に設定してもよい。一つの例としては、図10(A)に示すように、抽出角度範囲Θに含まれる点データの内、軌跡Tから最も遠い点Qを特定し、その間の距離を抽出基準距離lとして設定してもよい。図10(A)は、軌跡の始点Pにおける鉛直面Vから進行方向に見た図である。
【0087】
この場合は、単純に、各点Q,Q,Q,・・・から、軌跡Tまでの最短距離を演算し、それらを比較して、最も遠い点を最も遠い点Qと特定する。そして、Qと軌跡Tとの最短距離を、抽出基準距離lとして設定する。
【0088】
測定装置20を用いた測定において、鉛直下方向で測定される構造物は主に道路30であり最も遠い点Qは、道路30の路面またはその周辺に存在している可能性が高い。従って、点Qを基準としてその上下方向に所定の抽出距離幅d,dの範囲を抽出距離範囲Dとして指定することで、道路30の路面周辺の構造物に基づく点群データを的確に抽出するための抽出領域の設定が可能になる。
【0089】
あるいは、最も遠い点Qとして、単純に、最も低い点を特定しても良い。最も低い点は、最も遠い点Qの近傍にあると考えられ、路面の測定を考慮した場合、路面は最も低い点を含む可能性が高いためである。図10(A)では、最も遠い点Qが、最も低い点と合致している。このように、最も低い点を基準としてその上下方向に所定の抽出距離幅d,dの範囲を抽出距離範囲Dとして指定しても、道路30の路面周辺の構造物に基づく点群データを的確に抽出するための抽出領域の設定が可能になる。
【0090】
<変形例2>
あるいは、別の例として、以下の通り抽出基準距離lを設定してもよい。
まず、図11(A)に示すように、平面直角座標系の抽出角度範囲Θに、所定の寸法の立方体C,C・・・・を積み重ね、各立方体に含まれる点の密度が所定の値以上である立方体を抽出する。図11(A)では、着色した部分が、所定の値以上の密度で点が含まれる立方体である。
【0091】
次に、抽出領域設定部114が、所定の値以上の密度で点が含まれる立方体の内、軌跡Tからの最短距離が最も遠くなる立方体Cを特定する。その立方体の中心を、軌跡Tから最も遠い点Qであると特定する。
【0092】
次に点Qと軌跡Tとの最短距離、すなわち、図11(B)に示す、点Qを通る鉛直面V上での交点Pとの距離を抽出基準距離lとして算出する。
【0093】
この様に、所定の密度以上で点データを含む所定の寸法の立方体の、軌跡からの距離を比較して、最も遠い点Qを特定することにより、土ホコリなどのノイズによる点データの影響を省くことができるので、より的確な抽出基準距離lの設定が可能となる。
【0094】
<変形例3>
また、別の変形例として抽出角度範囲Θと、抽出距離範囲Dとにより特定される2次元図形が、上記の台形ではなく、図10(B)に示すような、幅が抽出距離範囲Dで、中心角が抽出角度範囲Θとなる円環弧形状Sでもよい。
【0095】
<変形例4>
さらなる変形例として、実施の形態にかかる点群データ処理装置100を、解析対象物の位置等に応じて抽出モードを切り替え可能に構成してもよい。図12は、該変形例にかかる点群データ処理装置100aの機能構成図である。
【0096】
点群データ処理装置100aは、点群データ処理装置100と同様のハードウェアを備える、パーソナルコンピュータである。しかし、点群データ処理装置100aは、点群データ処理装置100に加えて抽出モード選択部121と選択モード設定部122とを備える。
【0097】
抽出モード選択部121は、ユーザが抽出モードを選択するための表示を表示部140に表示する。ユーザによる入力部150を用いた抽出モードの選択を可能とする。
【0098】
選択モード設定部122は、選択された抽出モードに応じたパラメータ(抽出角度幅θ,θ、抽出基準距離l,抽出距離幅d,d)を設定する。
【0099】
図13は、点群データ処理装置200の点群データ処理のフローチャートである。 処理を開始すると、まず、ステップS401において、抽出モード設定部121は、図14に示すような、抽出モードを選択する表示80を表示部140に表示して、ユーザが測定モードを選択する。
【0100】
図14に示す例では、表示80は、路面1、路面2および任意設定の3つのモードがあり、路面1、路面2はそれぞれ、1車線道路で、標定点が車道の中央に設置されている場合と、2車線道路で、標定点が中央線上に設置されている場合に対応している。また、ラジオボタンをマウスポインタ81でオンにすることで、当該モードを選択可能に構成されている。なお、図14の状態は、路面1のモードを選択した状態を示す。
【0101】
記憶部130には、あらかじめ、表1に示すような、それぞれの抽出モードに対応した抽出角度幅θ,θ、抽出基準距離l,抽出距離幅d,dが設定されており、例えばテーブル等の形式により記憶されている。
【0102】
【表1】
【0103】
ユーザが、測定モードを選択すると、ステップS402に移行して、選択モード設定部122が、それぞれの抽出モードに設定されている、抽出角度幅θ,θ、抽出基準距離l,抽出距離幅d,dをそれぞれ設定する。
【0104】
次にステップS403に移行して、以下ステップS403~S412では、ステップS101~S110と同じ処理を、ステップS402で設定された値に基づいて実行する。
【0105】
このように、1つのデータ処理装置に複数の抽出モードを実行可能に構成すれば、道路における標定点の位置等に応じた適切なの抽出条件を容易に設定することができる。
【0106】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施例は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
20 測定装置
100,100a 点群データ処理装置
114 抽出領域設定部
121 抽出モード選択部
122 選択モード設定部
T 軌跡
S 2次元図形
A 抽出領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14