(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電動トラック
(51)【国際特許分類】
B62D 21/02 20060101AFI20230523BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20230523BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20230523BHJP
【FI】
B62D21/02 Z
B60K1/04 Z
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2019154773
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】安東 孝朗
(72)【発明者】
【氏名】木村 清
(72)【発明者】
【氏名】小此木 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健介
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-114970(JP,A)
【文献】特開2016-113063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60K 1/04
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ面と、前記ウェブ面の両端に設けられるフランジと、をそれぞれ備える一対のサイドフレームが車幅方向において互いに対向するラダーフレームを有する電動トラックあって、
ラダーフレームの前記一対のサイドフレーム間に配置されるバッテリを含むバッテリユニットと、
前記
サイドフレームに設けられ、前記ウェブ面と略平行なバッテリ保護面を有するプロテクタと、を含み、
前記プロテクタは、
前記バッテリユニットの車両前部の車幅方向両端の角部と前記バッテリ保護面とが対向するよう配置されていることを特徴とする、電動トラック。
【請求項2】
ウェブ面と、前記ウェブ面の両端に設けられるフランジと、をそれぞれ備える一対のサイドフレームが車幅方向において互いに対向するラダーフレームを有する電動トラックあって、
ラダーフレームの前記一対のサイドフレーム間に配置されるバッテリを含むバッテリユニットと、
前記サイドフレームに設けられ、前記ウェブ面と略平行なバッテリ保護面を有するプロテクタと、を含み、
前記プロテクタは、前記バッテリユニットの車両後部の車幅方向両端の角部と前記バッテリ保護面とが対向するよう配置されていることを特徴とする、電動トラック。
【請求項3】
ウェブ面と、前記ウェブ面の両端に設けられるフランジと、をそれぞれ備える一対のサイドフレームが車幅方向において互いに対向するラダーフレームを有する電動トラックあって、
ラダーフレームの前記一対のサイドフレーム間に配置されるバッテリを含むバッテリユニットと、
前記サイドフレームに設けられ、前記ウェブ面と略平行なバッテリ保護面を有するプロテクタと、を含み、
前記プロテクタは、前記ラダーフレームにおいて、車両前後方向でバッテリユニットが設けられているバッテリ領域に対して、前方側の領域である前方領域と前記バッテリ領域とに介在するよう配置されていることを特徴とする、電動トラック。
【請求項4】
ウェブ面と、前記ウェブ面の両端に設けられるフランジと、をそれぞれ備える一対のサイドフレームが車幅方向において互いに対向するラダーフレームを有する電動トラックあって、
ラダーフレームの前記一対のサイドフレーム間に配置されるバッテリを含むバッテリユニットと、
前記サイドフレームに設けられ、前記ウェブ面と略平行なバッテリ保護面を有するプロテクタと、を含み、
前記バッテリユニットは、第1バッテリ収容部と、前記第1バッテリ収容部よりも車幅方向に広く、車両上下方向の下方から前記第1バッテリ収容部に連結された第2バッテリ収容部とから形成され、
前記第1バッテリ収容部がサイドフレーム間に位置し、第2バッテリ収容部8bが前記サイドフレームの下方に位置するように搭載され、
前記プロテクタは、前記車幅方向において、前記第1バッテリ収容部の少なくとも1つの角部と前記バッテリ保護面とが対向するよう配置されていることを特徴とする、電動トラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動トラックに関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷低減の観点から、駆動用バッテリを備え、当該バッテリからモータに電力を供給することにより駆動する電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両の開発が進んでいる。近年、このような電動車両に関し、トラックなどの商用車の分野においても、電動車両の開発が行われている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、乗用車に比べて車両重量が大きい電気トラックにおいて十分な走行距離を可能とする電動車両を実用化するためには、車両に搭載可能なバッテリ容量を増大することが課題となる。よって、トラックにおいてこのようなバッテリを搭載する場合、フレーム間配置として、バッテリ容量を増大することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなレイアウトでバッテリを配置する場合、車両側方からの衝突(側突)発生に伴うフレーム変形によって、フレームのウェブ面ではなく、比較的接触面積が小さいフランジ端部がバッテリに対する物理的な入力ポイントとなってしまう。このような側突が発生した場合、面接触した場合と比較して高い物理的入力がバッテリに発生し、バッテリの側突時安全性を確保することができない虞がある。
【0006】
以上から、本願の解決すべき課題は、フレーム間に配置されたバッテリの側突安全性を確保することができる電動トラックを提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
(1)本適用例に係る電動トラックは、ウェブ面と、前記ウェブ面の両端に設けられるフランジと、をそれぞれ備える一対のサイドレールが車幅方向において互いに対向するラダーフレームを有する電動トラックあって、ラダーフレームの前記一対のサイドレール間に配置されるバッテリを含むバッテリユニットと、前記サイドフレームに設けられ、前記ウェブ面と略平行なバッテリ保護面を有するプロテクタと、を含み、前記プロテクタは、前記車幅方向において、前記バッテリユニットの少なくとも1つの角部と前記バッテリ保護面とが対向するよう配置されている。
【0009】
上記適用例に係る電動トラックにおいては、車幅方向Yにおいてバッテリユニットの角部とプロテクタのバッテリ保護面とが対向するように配置されていることで、車両に対する側突時において、バッテリユニットの角部がバッテリ保護面に面接触する。つまり、バッテリユニットの角部への物理的な入力が点で接触するよりも分散し、バッテリユニットに対する物理的入力を軽減することができる。これにより、フレーム間に配置されたバッテリの側突安全性を確保することができる。
【0010】
(2)また、本適用例に係る車両用バッテリユニットは、上記(1)において、前記プロテクタは、前記バッテリユニットの車両前部の車幅方向両端の角部と前記バッテリ保護面とが対向するよう配置されてもよい。つまり、側突時にバッテリユニットの角部がサイドフレームと接触しやすい範囲にプロテクタが配置されることとなる。これにより、側突時により安定的にバッテリユニットを保護することができる。
【0011】
(3)また、本適用例に係る車両用バッテリユニットは、上記(1)又は(2)において、前記プロテクタは、前記バッテリユニットの車両後部の車幅方向両端の角部と前記バッテリ保護面とが対向するよう配置されてもよい。つまり、側突時にバッテリユニットの角部がサイドフレームと接触しやすい範囲にプロテクタが配置されることとなる。これにより、側突時により安定的にバッテリユニットを保護することができる。
【0012】
(4)また、本適用例に係る車両用バッテリユニットは、上記(1)又は(2)において、前記プロテクタは、前記ラダーフレームにおいて、車両前後方向でバッテリユニットが設けられているバッテリ領域に対して、前方側の領域である前方領域と前記バッテリ領域とに介在するよう配置されてもよい。プロテクタがバッテリ領域と前方領域に介在するように配置されていることで、側突時においてバッテリユニットの右前角部、左前角部をより確実にバッテリ保護面に面接触させることができる。
【0013】
(5)また、本適用例に係る電動車両は、上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記プロテクタは、前記バッテリ保護面が車幅方向において前記フランジの端部よりも車幅方向内側に位置してもよい。このようにバッテリ保護面が車幅方向においてサイドフレームのフランジの端部よりも内側に位置していることで、側突時にバッテリユニットの角部をサイドフレームよりも先にバッテリ保護面に接触させることができる。
【0014】
(6)また、本適用例に係る電動車両は、上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記プロテクタは、前記バッテリ保護面が車幅方向において前記フランジの端部よりも車幅方向外側に位置してもよい。これにより、側突時にバッテリユニットの角部がサイドフレームのフランジと先に接触したとしても、当該角部はその後すぐにバッテリ保護面と面接触することとなり、角部への物理的入力を緩和することができる。
【0015】
(7)また、本適用例に係る電動車両は、上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記バッテリユニットは、第1バッテリ収容部と、前記第1バッテリ収容部よりも車幅方向に広く、車両上下方向の下方から前記第1バッテリ収容部に連結された第2バッテリ収容部とから形成され、前記第1バッテリ収容部がサイドフレーム間に位置し、第2バッテリ収容部8bが前記サイドフレームの下方まで位置するように搭載され、前記プロテクタは、前記車幅方向において、前記第1バッテリ収容部の少なくとも1つの角部と前記バッテリ保護面とが対向するよう配置されていてもよい。これにより、サイドフレーム間、及びサイドフレームの下方のスペースを有効に利用してバッテリの収容量を増加させつつ、プロテクタにより側突時の第1バッテリ収容部の角部への物理的入力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用バッテリユニットを備えた電動車両の概略構成を示す上面図である。
【
図2】バッテリユニットの概形を表す斜視図である。
【
図3】
図1のA矢印から視た車両の要部正面図である。
【
図4】
図3の右サイドフレーム及びプロテクタ部分を拡大した要部正面図である。
【
図6】バッテリユニットの角部とプロテクタとの位置関係を示す上面図である。
【
図7】車両の左側方からの衝突発生時のバッテリユニット付近の状態を示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0018】
図1には本発明の一実施形態に係る車両用バッテリの支持装置が搭載された車両の全体構成を概略的に示す上面図が示されている。以下同図に基づき本実施形態の構成について説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0019】
まず、
図1に示すように、車両1は、ラダーフレーム2、キャブ3、荷箱4、車輪機構5、駆動ユニット6、駆動電力供給部7、バッテリユニット8、バッテリユニット8を支持する支持装置9、バッテリユニット8を保護するプロテクタ10を備える電動トラックである。なお、
図1では、車両1の上面からキャブ3及び荷箱4を透過するように見た場合の上面図として表している。
【0020】
車両1は、走行用駆動源として電動機(後述するモータ6a)を備える電気自動車として想定されているが、電動車両であればよく、例えばエンジンをさらに備えるハイブリッド自動車であってもよい。また、車両1は電気トラックに限定されることなく、車両を駆動するためのバッテリを備える他の商用車であってもよい。
【0021】
ラダーフレーム2は、左右一対のサイドフレーム20と複数のクロスメンバ21を有している。サイドフレーム20は、車両1の車両前後方向Xに沿って延在し、互いに車幅方向Yに対して平行に配置された左サイドフレーム20L及び右サイドフレーム20Rからなる。複数のクロスメンバ21は、本実施形態では前方から順番に第1クロスメンバ21a、第2クロスメンバ21b、第3クロスメンバ21c、及び第4クロスメンバ21dの4つのクロスメンバを有し、それぞれ左サイドフレーム2Lと右サイドフレーム2Rとを連結している。そして、ラダーフレーム2はキャブ3、荷箱4、駆動ユニット6、駆動電力供給部7、バッテリユニット8、及び車両1に搭載されるその他の重量物を支持している。
【0022】
キャブ3は、図示しない運転席を含む構造体であり、ラダーフレーム2の前部上方に設けられている。一方、荷箱4は、車両1によって搬送される荷物等が積載される構造体であり、ラダーフレーム2の後部上方に設けられている。
【0023】
車輪機構5は、本実施形態においては、車両前方に位置する左右の前輪5a、2つの前輪5aの車軸としてのフロントアクスル5b、車両後方に位置しかつ左右に各2つ配置された後輪5c、及び後輪5cの車軸としてのリアアクスル5dから構成される。そして、本実施形態に係る車両1においては、後輪5cが駆動輪として機能するように駆動力が伝達され、車両1が走行することになる。なお、車輪機構5は、図示しないサスペンション機構を介してラダーフレーム2に懸架され、車両1の重量を支持している。
【0024】
駆動ユニット6はモータ6a、減速機構6b、及び差動機構6cを有する。モータ6aは、後述する駆動電力供給部7から交流電力が供給されることにより、車両1の走行に必要な駆動力を発生させる。減速機構6bは、図示しない複数のギアを含み、モータ6aから入力された回転トルクを減速して差動機構6cに出力する。差動機構6cは、減速機構6bから入力される動力を左右の後輪5cに対して振り分ける。すなわち、駆動ユニット6は、減速機構6b及び差動機構6cを介して、モータ6aの駆動トルクを車両1の走行に適した回転速度に減速してリアアクスル5dに駆動力を伝達する。これにより駆動ユニット6は、リアアクスル5dを介して後輪5cを回転させて車両1を走行させることができる。
【0025】
駆動電力供給部7は、いわゆるインバータを含むPDU(power drive unit)であり、バッテリユニット8から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ6aへ供給し、車両1に対するアクセル操作に応じてモータ6aの回転速度を制御する。本実施形態の駆動電力供給部7は、第4クロスメンバ21d上に配置されている。
【0026】
ここで、
図2から
図6を参照すると、
図2にはバッテリユニットの概形を表す斜視図が、
図3には
図1のA矢印から視た車両の要部正面図が、
図4には
図3の右サイドフレーム及びプロテクタ部分を拡大した要部正面図が、
図5にはプロテクタの概形を表す斜視図が、
図6にはバッテリユニットの角部とプロテクタとの位置関係を示す上面図が、それぞれ示されている。以下、これらの図に基づき、バッテリユニット8及びバッテリユニット8の周辺構造について説明する。
【0027】
バッテリユニット8は、車両1を走行させるためのエネルギー源としてモータ6aに電力を供給する二次電池ユニットである。具体的にはバッテリユニット8は、外殻をなす金属(例えばアルミニウム)のハウジング内に、車両1に必要とされる電力を蓄えるために比較的大型の大容量バッテリモジュール(図示せず)を複数備えている。また、バッテリユニット8は、複数の電動補機とそれらに電力を供給する配電ユニットとが車両1に搭載されている場合には(いずれも図示せず)、当該配電ユニットにも電力を供給できるように構成されてもよい。
【0028】
図2に示すように、バッテリユニット8は、車両前後方向Xに対していずれも同じ長さの略直方体形状である第1バッテリ収容部8aと第2バッテリ収容部8bとが車両上下方向Zに一体となるように形成されている。第1バッテリ収容部8aの上部には、第2クロスメンバ21bが横断可能に車両幅方向に延びる凹部8cが形成されている。
【0029】
このような構成のバッテリユニット8において、第1バッテリ収容部8aには、前部両端にて車両上下方向Zに延びるバッテリ右前角部8aFR、バッテリ左前角部8aFLがあり、後部両端にて車両上下方向Zに延びるバッテリ右後角部8aRR、バッテリ左後角部8aRLがある。また、凹部8cには、前部両端にて車両上下方向Zに延びる凹部右前角部8cFR、凹部左前角部8cFLがあり、後部両端にて車両上下方向Zに延びる凹部右後角部8cRR、凹部左後角部8cRLがある。
【0030】
また、
図3に示すように、第1バッテリ収容部8aは、車幅方向Yに対して、上記した左サイドフレーム20Lと右サイドフレーム20Rとの間に収まる幅に設定されている。一方、第2バッテリ収容部8bは、車幅方向Yの長さが第1バッテリ収容部8aよりも広い幅に設定され、車両上下方向Zの下方から第1バッテリ収容部8aに連結されている。
【0031】
すなわち、バッテリユニット8は、車両前後方向Xに垂直な平面における断面形状が逆T型となる形状を備えている。そして、バッテリユニット8は、第1バッテリ収容部8aと第2バッテリ収容部8bとの幅の違いにより生じる段差部分をサイドフレーム20が通るように配置される。これにより、バッテリユニット8は、左サイドフレーム20Lと右サイドフレーム20Rとの間、及びサイドフレーム20の下方のスペースを有効に利用して、バッテリの収容量を増加させている。
【0032】
バッテリユニット8は、第2バッテリ収容部8bの車幅方向Yの外側面であるバッテリ側面8bSにおいて、支持装置9を介して、サイドフレーム20と連結されている。本実施形態においては、支持装置9は、片側のバッテリ側面8bSに対して車両前後方向Xに3か所、両側合わせて6か所設けられている。ただし、支持装置9は、バッテリユニット8の重量及び寸法に応じ、その数量を適宜変更することができる。
【0033】
支持装置9は、フレーム側ブラケット9a、弾性連結部9b、及びバッテリ側ブラケット9cを有し、バッテリユニット8をラダーフレーム2に弾性的に懸架している。
【0034】
フレーム側ブラケット9aは、サイドフレーム20の車幅方向Yにおける側面、すなわちサイドフレーム20の外側面に対して複数のボルト(図示せず)で連結される金属部材である。詳しくは、フレーム側ブラケット9aは、背面がサイドフレーム20と当接し、背面下部から車幅方向Y外方に底面が突出し、当該底面に弾性連結部9bが連結されている。フレーム側ブラケット9aは、背面と底面の両方に直交しながら両者に連続する略直角三角形状の側面を一対有している。
【0035】
弾性連結部9bは、フレーム側ブラケット9aとバッテリ側ブラケット9cとを車両上下方向Zの上下で弾性的に連結する連結部材である。例えば、弾性連結部9bは、フレーム側ブラケット9aとバッテリ側ブラケット9cとの間にいわゆるラバーブッシュが介在し、フレーム側ブラケット9aを介して連結するラダーフレーム2と、バッテリ側ブラケット9cを介して連結するバッテリユニット8との相対変位に伴う応力を吸収する。
【0036】
バッテリ側ブラケット9cは、バッテリ側面8bSから車幅方向Y外方に突出した金属部材であり、弾性連結部9bと連結されることによりバッテリユニット8を懸架している。
【0037】
プロテクタ10は、サイドフレーム20に設けられている。サイドフレーム20は、詳しくは
図4に示すように、車両上下方向Zに延びるウェブ20aと、当該ウェブ20aの上辺から車幅方向Yの内側に延びる上側フランジ20b、及び当該ウェブ20aの下辺から車幅方向Yの内側に延びる下側フランジ20cとから構成されている。つまり、サイドフレーム20は、車幅方向Yの内側に開口した断面コの字状(断面略C字状)をなしている。
【0038】
プロテクタ10は、
図4、
図5に示されるような断面形状であり、サイドフレーム20のウェブ20aと平行なバッテリ保護面11を有し、金属(例えばアルミニウム)で形成されている。バッテリ保護面11は平板状をなしている。
【0039】
またプロテクタ10は、サイドフレーム20のウェブ20aと当接している平板状のプロテクタ背面部12と、プロテクタ背面部12の上辺から車幅方向Yの内側に延び、サイドフレーム20の上側フランジ20bと当接しているプロテクタ上面部13aと、プロテクタ背面部12の下辺から車幅方向Yの内側に延び、サイドフレーム20の下側フランジ20cと当接しているプロテクタ下面部13bを有している。なお、プロテクタ背面部12には図示しない締結孔が形成され、プロテクタ10は当該締結孔にボルト等の締結部材を用いてサイドフレーム20のウェブ20aに取り付けられている。
【0040】
さらに、プロテクタ10は、バッテリ保護面11とプロテクタ背面部12とが、車幅方向Yに延びる3つの平行な連結部14により連結されている。なお、プロテクタ上面部13a及びプロテクタ下面部13bの端部は、バッテリ保護面11と同一平面上に位置するように、バッテリ保護面11に向けて湾曲している。
【0041】
また、
図4に示すように、本実施形態におけるプロテクタ10は、車幅方向Yにおけるバッテリ保護面11の表面位置Y1は、サイドフレーム20の上側フランジ20b及び下側フランジ20cの端部位置Y2よりも車幅方向Yの内側にある。つまり、バッテリ保護面11の表面位置Y1の方がサイドフレーム20よりもバッテリユニット8に近い位置にある。
【0042】
そして、
図6に示すように、本実施形態の車両1には、バッテリユニット8の角部に対応して、6つのプロテクタ10が配置されている。
【0043】
具体的には、バッテリ右前角部8aFR、バッテリ左前角部8aFLと車幅方向Yにおいて対向する位置に右前プロテクタ10FR、左前プロテクタ10FLが配置されている。また、バッテリ右後角部8aRR、バッテリ左後角部8aRLと車幅方向Yにおいて対向する位置に右後プロテクタ10RR、左後プロテクタ10RLが配置されている。さらに、凹部右後角部8cRR、凹部左後角部8cRLと車幅方向Yにおいて対向する位置に右中央プロテクタ10MR、左中央プロテクタ10MLが配置されている。
【0044】
つまり、車両1のラダーフレーム2において、車両前後方向Xでバッテリユニット8が設けられているバッテリ領域BAに対して、前方側の領域を前方領域FA、後方側の領域を後方領域RAとすると、右前プロテクタ10FR及び左前プロテクタ10FLはバッテリ領域BAと前方領域FAに介在し、右後プロテクタ10RR及び左後プロテクタ10RLはバッテリ領域BAと後方領域RAに介在するように配置されている。
【0045】
このように構成された車両1では、車両側方からの衝突(以下、側突という)発生に伴うフレーム変形に対して、プロテクタ10がバッテリユニット8の角部と当たることとなる。
【0046】
詳しくは、
図7に車両の左側方からの衝突発生時のバッテリユニット付近の状態を示した上面図が示されており、以下同図に基づき本実施形態の電動トラックの作用効果について説明する。
【0047】
図7に示すように、車両1の左側方から衝撃を受けると、サイドフレーム20は比較的側突に対する剛性の低い第2クロスメンバの前方位置や、バッテリユニット8後部付近にて変形が生じる。
【0048】
具体的には、左サイドフレーム20Lは、左前プロテクタ10FLとバッテリユニット8のバッテリ左前角部8aFLが離れる方向に変形する。また、左サイドフレーム20Lは、左後プロテクタ10RLとバッテリユニット8のバッテリ左後角部8aRLも離れる方向に変形する。
【0049】
一方、右サイドフレーム20Rは、右前プロテクタ10FRとバッテリユニット8のバッテリ右前角部8aFRが近づく方向に変形して、右前プロテクタ10FRのバッテリ保護面11とバッテリ右前角部8aFRが接触する。また、右サイドフレーム20Rは、右後プロテクタ10RRのバッテリ保護面11とバッテリユニット8のバッテリ右後角部8aRRも近づく方向に変形して、右後プロテクタ10RRとバッテリ右後角部8aRRが接触する。
【0050】
このように、車幅方向Yにおいてバッテリユニット8の角部とプロテクタ10のバッテリ保護面11とが対向するように配置されていることで、車両1に対する側突時において、バッテリユニット8の角部がバッテリ保護面11に面接触する。これにより、バッテリユニット8の角部への物理的な入力が点で接触するよりも分散し、バッテリユニット8に対する物理的入力を軽減することができる。
【0051】
また、プロテクタ10は、バッテリユニット8の車両前部の車幅方向Y両端のバッテリ右前角部8aFR、バッテリ左前角部8aFLや車両後部の車幅方向Y両端のバッテリ右後角部8aRR、バッテリ左後角部8aRLに対向するように配置されていることで、側突時にバッテリユニット8の角部が最もサイドフレーム20と接触しやすい範囲にプロテクタ10が配置されることとなる。これにより、側突時により安定的にバッテリユニット8を保護することができる。
【0052】
なお、本実施形態のように、バッテリユニット8に第2クロスメンバ21bが横断する凹部8cが形成されている場合に、凹部右後角部8cRR及び凹部左後角部8cRLに対向する位置にも右中央プロテクタ10MR及び左中央プロテクタ10MLが設けられていることで、サイドフレーム20がより複雑な変形をした場合でもバッテリユニット8の角部を保護することができる。
【0053】
また、プロテクタ10は、バッテリ領域BAと前方領域FA、及びバッテリ領域BAと後方領域RAに介在するように配置されていることで、側突時においてバッテリユニット8のバッテリ右前角部8aFR、バッテリ左前角部8aFL、バッテリ右後角部8aRR、バッテリ左後角部8aRL、をより確実にバッテリ保護面11に面接触させることができる。
【0054】
さらに、本実施形態のプロテクタ10は、バッテリ保護面11が車幅方向Yにおいてサイドフレーム20の上側フランジ20b及び下側フランジ20cの端部よりも内側に位置していることで、側突時にバッテリユニット8の角部をサイドフレーム20よりも先にバッテリ保護面11に接触させることができる。
【0055】
また、本実施形態のバッテリユニット8は、サイドフレーム20間に位置する第1バッテリ収容部8aと、サイドフレーム20下方まで位置する第2バッテリ収容部8bから形成されていることで、サイドフレーム20間、及びサイドフレーム20の下方のスペースを有効に利用してバッテリの収容量を増加させつつ、プロテクタ10により側突時の第1バッテリ収容部8aの角部への物理的入力を軽減することができる。
【0056】
以上のことから本実施形態に係る電動トラックである車両1は、フレーム間に配置されたバッテリの側突安全性を確保することができる。
【0057】
以上で本発明に係る電動トラックの実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0058】
上記実施形態のプロテクタ10は、車幅方向Yにおけるバッテリ保護面11の表面位置Y1がサイドフレーム20の上側フランジ20b及び下側フランジ20cの端部位置Y2よりも内側にあるが、バッテリ保護面とサイドフレームのフランジ端部との位置関係はこれに限られるものではない。例えば、
図8にプロテクタの変形例が示されている。なお、同図においてサイドフレーム等のプロテクタ以外の構成は上記実施形態と同じであり、同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
図8に示す変形例のプロテクタ10’は、バッテリ保護面11’の車幅方向における表面位置Y1’が、サイドフレーム20の上側フランジ20b及び下側フランジ20cの端部位置Y2よりも車幅方向Yの外側にある。
【0060】
このような構成では、側突時にバッテリユニット8の角部がサイドフレーム20の上側フランジ20b又は下側フランジ20cと先に接触したとしても、当該角部はその後すぐにバッテリ保護面11’と面接触することとなり、角部への物理的入力を緩和することができる。
【0061】
また、上記実施形態のプロテクタ10は、バッテリ保護面11の他に、プロテクタ背面部12、プロテクタ上面部13a、プロテクタ下面部13b、連結部14から構成されているが、プロテクタの形状はこれに限られるものではなく、他の形状をなしていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態のバッテリユニット8と駆動電力供給部7は別体として車両1に設けられているが、バッテリユニットとして、ハウジングの内部又は外部に駆動電力供給部が一体として設けられた構成であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態のバッテリユニット8は、第1バッテリ収容部8a及び第2バッテリ収容部8bからなる断面逆T型形状をなしているが、例えば直方体や立方体等の他の形状のバッテリユニットにも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両(電動トラック)
2 ラダーフレーム
3 キャブ
4 荷箱
5 車輪機構
6 駆動ユニット
7 駆動電力供給部
8 バッテリユニット
8a 第1バッテリ収容部
8b 第2バッテリ収容部
9 支持装置
10 プロテクタ
11 バッテリ保護面
12 プロテクタ背面部
13a プロテクタ上面部
13b プロテクタ下面部
14 連結部
20 サイドフレーム
20a ウェブ
20b 上側フランジ
20c 下側フランジ
21 クロスメンバ