(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】内燃機関の排気制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 41/04 20060101AFI20230523BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20230523BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230523BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20230523BHJP
F02D 41/14 20060101ALI20230523BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20230523BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20230523BHJP
F02P 5/15 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
F02D41/04
F01N3/023 Z ZAB
F01N3/24 E
F01N3/24 R
F02D41/02
F02D41/14
F02D43/00 301B
F02D43/00 301E
F02D45/00
F02D45/00 360A
F02D45/00 368F
F02P5/15 B
(21)【出願番号】P 2018173294
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】岩知道 均一
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-516379(JP,A)
【文献】特開2009-156106(JP,A)
【文献】特開2014-156807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0041362(US,A1)
【文献】特開平11-148399(JP,A)
【文献】特開2008-255972(JP,A)
【文献】特開2002-227688(JP,A)
【文献】特開2010-156248(JP,A)
【文献】国際公開第2015/004713(WO,A1)
【文献】特開2004-197657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/04
F01N 3/023
F01N 3/24
F02D 41/02
F02D 41/14
F02D 43/00
F02D 45/00
F02P 5/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に介装され、前記内燃機関から排出される粒子状物質を捕集するフィルターと、
前記フィルターに捕集された前記粒子状物質を焼却する再生制御を実施する制御装置とを備え、
前記制御装置が、前記再生制御において、
前記内燃機関の空燃比を理論空燃比よりもリーンな状態に維持しながら前記粒子状物質を焼却するリーン焼却制御と、
理論空燃比を平均空燃比として前記内燃機関の空燃比を所定の第一周期で振動させながら前記粒子状物質を焼却するストイキ焼却制御とを有し、
前記フィルターに捕集されている前記粒子状物質の堆積量が所定量以上、かつ、前記内燃機関から排出される窒素酸化物の濃度が所定濃度以下のとき前記リーン焼却制御を実施し、
前記粒子状物質の堆積量が所定量未満、または、前記窒素酸化物の濃度が所定濃度を超えるとき前記ストイキ焼却制御を実施する
ことを特徴とする、内燃機関の排気制御装置。
【請求項2】
前記制御装置が、前記再生制御を開始する際に、理論空燃比を平均空燃比として前記内燃機関の空燃比を前記ストイキ焼却制御時よりも小さな振幅で振動させながら前記フィルターを昇温させるストイキ昇温制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の排気制御装置。
【請求項3】
前記フィルターに捕集された前記粒子状物質の燃焼反応が安定化する前記フィルターの温度を所定温度と定義して、
前記制御装置が、前記フィルターの温度が前記所定温度に達したとき前記リーン焼却制御または前記ストイキ焼却制御を開始し、
前記フィルターの温度が前記所定温度に達しないとき前記ストイキ昇温制御を実施して前記フィルターの温度を昇温させる
ことを特徴とする、請求項2記載の内燃機関の排気制御装置。
【請求項4】
前記制御装置が、前記ストイキ昇温制御の実施中に前記内燃機関の点火時期をリタードさせる遅角制御を実施する
ことを特徴とする、請求項2または3記載の内燃機関の排気制御装置。
【請求項5】
前記制御装置が、前記再生制御を開始する前に、理論空燃比を平均空燃比として前記内燃機関の空燃比を前記ストイキ焼却制御時よりも小さな振幅で振動させるノーマル制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の内燃機関の排気制御装置。
【請求項6】
前記制御装置が、前記リーン焼却制御の実施中に前記内燃機関の点火時期をアドバンスさせる進角制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の内燃機関の排気制御装置。
【請求項7】
前記制御装置が、前記ストイキ焼却制御の実施中に前記フィルターの温度が高くなるほど前記内燃機関の点火時期をアドバンスさせる点火時期可変制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか1項に記載の内燃機関の排気制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスを浄化する排気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン(内燃機関)の排気通路にパティキュレートフィルター(以下フィルター)を介装させ、排気ガス中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter;以下PM)をフィルターで浄化する排気浄化システムが知られている。すなわち、フィルターでPMを捕集するとともに、そのPMをフィルター上で燃焼させることによって除去するものである。ディーゼルエンジン用のフィルターはDPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれ、ガソリンエンジン用のフィルターはGPF(Gasoline Particulate Filter)と呼ばれている。
【0003】
PMの主成分である煤(炭素)は、フィルターの表面に担持された触媒の近傍において、十分に高温な酸化雰囲気が形成されていれば、自然に燃焼(酸化)する。したがって、エンジンの排気温度が高温となる高回転状態では、PMはおのずと焼却される。一方、低回転状態では排気温度が上昇しにくいことからPMの堆積量が増加し、フィルターの目詰まりが生じやすくなる。そこで、PMの堆積量や目詰まりの度合いに応じて排気温度を積極的に上昇させることによって、PMを燃焼させる制御が実施されている。このような制御は、フィルターの濾過機能を蘇らせるように作用することから、再生制御,強制再生制御,アクティブ制御などと呼ばれている。
【0004】
ところで、フィルターの再生制御において、エンジンの空燃比を理論空燃比(ストイキ)よりもリッチな値とリーンな値との間で振動させることで、排気ガス性能を改善する技術が存在する。例えば、空燃比の振動中心を理論空燃比として、リッチ側への変動幅とリーン側への変動幅とを同一幅とする制御が提案されている(特許文献1参照)。空燃比の平均を理論空燃比近傍の値にすることで、触媒の浄化性能を確保しつつフィルターに捕集されたPMを燃焼させることができる。また、フィルター以外の触媒装置(三元触媒など)を含む排気浄化システムにおいても、空燃比を振動させることで排気ガス性能を改善することが提案されている(特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-156106号公報
【文献】特開2000-265885号公報
【文献】特開2012-241528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フィルターに捕集されたPMを燃焼させるためには、PMの近傍に十分な量の酸素を存在させることが望ましい。その点、空燃比をリッチ及びリーンに振動させれば、少なくともリーン期間における排気ガス中の酸素濃度を上昇させることができ、酸素量が確保できるように見える。しかしながら、理論空燃比が維持されている場合と比較して、リッチ期間における排気ガス中の酸素濃度は低下する。その結果、総合的な酸素量が不十分となりやすく、PMの燃焼開始タイミングの遅れや燃焼速度の低下により、フィルターの再生効率や排気ガス性能が低下する場合がある。
【0007】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、フィルターの再生効率及び排気ガス性能をともに向上させることができるようにした、内燃機関の排気制御装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)開示の内燃機関の排気制御装置は、内燃機関の排気通路に介装され、前記内燃機関から排出される粒子状物質を捕集するフィルターと、前記フィルターに捕集された前記粒子状物質を焼却する再生制御を実施する制御装置とを備える。前記制御装置は、前記再生制御において、前記内燃機関の空燃比を理論空燃比よりもリーンな状態に維持しながら前記粒子状物質を焼却するリーン焼却制御と、理論空燃比を平均空燃比として前記内燃機関の空燃比を所定の第一周期で振動させながら前記粒子状物質を焼却するストイキ焼却制御とを有し、前記フィルターに捕集されている前記粒子状物質の堆積量が所定量以上、かつ、前記内燃機関から排出される窒素酸化物の濃度が所定濃度以下のとき前記リーン焼却制御を実施し、前記粒子状物質の堆積量が前記所定量未満、または、前記窒素酸化物の濃度が前記所定濃度を超えるとき前記ストイキ焼却制御を実施する。
【0009】
(2)前記制御装置が、前記再生制御を開始する際に、理論空燃比を平均空燃比として前記内燃機関の空燃比を前記ストイキ焼却制御時よりも小さな振幅で振動させながら前記フィルターを昇温させるストイキ昇温制御を実施することが好ましい。
(3)前記フィルターに捕集された前記粒子状物質の燃焼反応が安定化する前記フィルターの温度を所定温度と定義して、前記制御装置が、前記フィルターの温度が前記所定温度に達したとき前記リーン焼却制御または前記ストイキ焼却制御を開始し、前記フィルターの温度が前記所定温度に達しないとき前記ストイキ昇温制御を実施して前記フィルターの温度を昇温させることが好ましい。
【0010】
(4)前記制御装置が、前記ストイキ昇温制御の実施中に前記内燃機関の点火時期をリタードさせる遅角制御を実施することが好ましい。
【0011】
(5)前記制御装置が、前記再生制御を開始する前に、理論空燃比を平均空燃比として前記内燃機関の空燃比を前記ストイキ焼却制御時よりも小さな振幅で振動させるノーマル制御を実施することが好ましい。
【0012】
(6)前記制御装置が、前記リーン焼却制御の実施中に前記内燃機関の点火時期をアドバンスさせる進角制御を実施することが好ましい。
(7)前記制御装置が、前記ストイキ焼却制御の実施中に前記フィルターの温度が高くなるほど前記内燃機関の点火時期をアドバンスさせる点火時期可変制御を実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
リーン焼却制御では、フィルターに導入される排気ガス中の酸素濃度を上昇させることができ、粒子状物質(PM)の焼却効率を向上させることができる。一方、ストイキ焼却制御では、粒子状物質(PM)が燃焼しうる酸素濃度をある程度確保しつつ窒素酸化物(NOx)の発生を抑えることができる。これらの制御を併用することで、フィルターの再生効率及び排気ガス性能をともに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】内燃機関の排気制御装置の構成を説明するための図である。
【
図2】空燃比及び点火時期を制御する制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】(A)は空燃比と酸素(O
2)濃度との関係を示すグラフであり、(B)は空燃比と一酸化炭素(CO)濃度との関係を示すグラフである。
【
図4】空燃比の変動パターンを示すグラフであり、(A)はノーマル制御、(B)はストイキ昇温制御、(C)はリーン焼却制御、(D)はストイキ焼却制御に関する。
【
図5】フィルターの再生速度を説明するためのグラフであり、フィルター近傍の酸素濃度とフィルターに捕集された粒子状物質(PM)の減少速度との関係を示すものである。
【
図6】再生制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図7】再生制御の作用を説明するための経時変化グラフであり、(A)は空燃比、(B)は点火時期、(C)は空燃比制御の種類、(D)は窒素酸化物(NOx)濃度、(E)は粒子状物質(PM)堆積量、(F)はフィルター温度に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.装置構成]
以下、図面を参照して、実施形態としての内燃機関の排気制御装置について説明する。
図1に示すように、本件の排気制御装置は、エンジン1(内燃機関)を搭載した車両20に適用される。エンジン1の種類はディーゼルエンジンであってもよいし、ガソリンエンジンであってもよい。このエンジン1には、運転状態に関する情報を取得するための各種センサー(例えば図示しないエンジン回転数センサー,トルクセンサー,アクセル開度センサー,スロットル開度センサー,吸気圧センサー,吸気流量センサーなど)が設けられる。また、エンジン1の排気通路2には、少なくともフィルター4が介装され、好ましくは酸化触媒3も介装される。
図1に示す例では、フィルター4が酸化触媒3の下流側に配置されているが、具体的な配設位置や順序は変更可能である。
【0016】
酸化触媒3は、排気ガスに含まれる各種有害成分を効率よく浄化するための触媒装置であり、少なくとも酸化能を有する触媒を含む。酸化触媒3は、排気ガスに含まれる未燃燃料(HC,炭化水素)や一酸化炭素(CO)といった有害成分を酸化する機能を持ち、その反応熱で排気ガスの温度を上昇させるように作用する。本実施形態の酸化触媒3は三元触媒(TWC, Three-Way Catalyst)であり、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を還元する機能も併せ持つ。酸化触媒3は、触媒反応性を確保すべく、高温な排気ガスが通過する位置に配置することが好ましい。例えば
図1中に示すように、エンジン1のエキゾーストマニホールドに近接した位置(エキゾーストマニホールドの直下流側や過給機の直下流側など)に配置するとよい。
【0017】
フィルター4は、エンジン1から排出される粒子状物質(PM)を捕集するための濾過装置である。PMの主成分は煤(炭素)であり、粒状に凝集した煤の周囲に未燃燃料成分,潤滑油の成分,硫黄化合物などが付着したものである。エンジン1から排出されるPMの大きさは、数マイクロメートル以下(1マイクロメートルは10-6[m])であり、フィルター4にはPMの大きさに見合った径の細孔が多数形成される。また、フィルター4の表面には、PMを燃焼させるための触媒が担持される。フィルター4に捕集されたPMの堆積量や詰まり具合については、制御装置10で管理される。
【0018】
排気通路2において、フィルター4よりも上流側には上流圧センサー5が設けられ、フィルター4よりも下流側には下流圧センサー6が設けられる。これらのセンサー5,6は、排気ガスの圧力を検出する圧力センサーである。上流圧センサー5は上流圧P1を検出し、下流圧センサー6は下流圧P2を検出する。一般に、フィルター4に捕集されたPMの堆積量が増加するにつれて上流圧P1が高くなり、下流圧P2が低くなる。したがって、これらの圧力情報を参照することで、フィルター4の詰まり具合やPMの堆積量を推定することが可能となる。本実施形態では、上流圧P1と下流圧P2との差圧に基づいてPMの堆積量を推定する。
【0019】
フィルター4よりも下流側には、温度センサー7,NOxセンサー8,PMセンサー9が設けられる。温度センサー7は排気ガスの温度(排気温度)を検出するサーモセンサーである。同様に、NOxセンサー8は排気ガスに含まれる窒素酸化物の濃度(NOx濃度)を検出し、PMセンサー9は排気ガスに含まれるPMの濃度(PM濃度)を検出するのに用いられるが、省略することも可能である。排気温度の情報は、フィルター温度を推定するのに用いられる。また、NOx濃度の情報は、酸化触媒3及びフィルター4を通過した窒素酸化物の量を把握するのに用いられる。PM濃度は、フィルター4で捕集されずに通過したPM量が多いほど上昇し、PMの堆積量の推定にも用いることができる。
【0020】
上記の各種センサー5~9で検出された情報は、制御装置10に伝達される。制御装置10は、エンジン1の運転状態を制御するための電子制御装置(コンピューター)であり、フィルター4の濾過状態及び排気ガス性能を向上させる制御を実施する。この制御装置10には、公知のハードウェア構成を適用することが可能である。例えば
図2に示すように、制御装置10には、プロセッサー21(中央処理装置),メモリ22(メインメモリ),記憶装置23(ストレージ),インタフェース装置24などが内蔵され、これらが内部バス25を介して互いに接続される。車両ECUやエンジンECUといった公知のECUを制御装置10として機能させてもよい。
【0021】
本実施形態の制御装置10は、各種センサー5~9で検出された情報に基づき、エンジン1の燃料噴射弁11(インジェクター)及び点火装置12(イグナイター)を制御する。エンジン1に供給される燃料混合気の空燃比は、燃料噴射弁11から噴射される燃料の噴射量や噴射タイミングを調節することで変更可能である。同様に、点火時期(燃焼サイクルにおける点火のタイミング)は、点火装置12で火花を発生させるタイミングを調節することで変更可能である。
【0022】
[2.制御構成]
制御装置10は、ノーマル制御,ストイキ昇温制御,リーン焼却制御,ストイキ焼却制御の四制御を実施する。ノーマル制御を除く三制御は、フィルター4に捕集されたPMを焼却する再生制御に含まれる。これらの再生制御がいずれも実施されないときに、ノーマル制御が実施される。再生制御は、エンジン1の運転状態がフィルター4の再生に適した状態であり、かつ、フィルター4の再生開始条件が成立した場合に、再生制御が開始される。前者の条件は、以下の条件1~3のいずれかに基づいて確認することができる。同様に後者の条件は、条件4~6のいずれかに基づいて確認することができる。
【0023】
条件1.エンジン回転数が規定値以下である
条件2.スロットル開度が規定開度以下である
条件3.エンジン冷却水温が規定温度以上である
条件4.PM堆積量が規定量以上である
条件5.上流圧P1と下流圧P2との差圧が規定値以上である
条件6.フィルター4の下流のPM濃度が規定濃度以上である
【0024】
ノーマル制御,ストイキ昇温制御,ストイキ焼却制御では、理論空燃比R0を平均空燃比として、エンジン1の空燃比を振動させる制御が実施される。ここで、空燃比を理論空燃比R0の近傍で振動させることの意義について説明する。理論空燃比R0の近傍では、空燃比が増大する(リーンになる)につれて、排気ガスの酸素濃度が増加する。このとき、空燃比に対する酸素濃度の増加勾配は一定にはならず、空燃比が大きいほど増加勾配も大きくなる。これにより、図3(A)に示すように、理論空燃比R0の前後で空燃比をリッチ側及びリーン側へと振動させたときの平均酸素濃度D1は、理論空燃比R0が維持された状態での平均酸素濃度D0よりも大きくなる。また、D2は空燃比の振幅をさらに大きくした場合の平均酸素濃度である。このように、空燃比の振幅を大きくするほど、排気通路2内における酸素濃度の平均値が上昇し、酸化触媒3やフィルター4にとってトータルの酸素量が確保されやすくなる。
【0025】
同様に、理論空燃比R0の近傍では、空燃比が増大する(リーンになる)につれて、排気ガスの一酸化炭素濃度が減少する。このとき、空燃比に対する一酸化炭素濃度の減少勾配は一定にはならず、空燃比が大きいほど減少勾配が小さくなる。これにより、図3(B)に示すように、理論空燃比R0の前後で空燃比をリッチ側及びリーン側へと振動させたときの平均一酸化炭素濃度E1は、理論空燃比R0が維持された状態での平均一酸化炭素濃度E0よりも大きくなる。また、E2は空燃比の振幅をさらに大きくした場合の平均一酸化炭素濃度である。このように、空燃比の振幅を大きくするほど、排気通路2内における一酸化炭素濃度の平均値が上昇し、一酸化炭素の酸化反応が促進されるとともにフィルター温度が上昇する。
【0026】
続いて、制御装置10で実施される四制御のそれぞれの特徴を説明する。
ノーマル制御では、
図4(A)に示すように、エンジン1の空燃比(目標空燃比)が理論空燃比R
0を中心として、比較的小さく振動するように制御される。この空燃比振動は、リッチ側の振幅とリーン側の振幅とが同一の振動であり、全振幅A
1は例えば0.4程度(すなわちR
0±0.2の空燃比振動)とされる。また、空燃比振動の周波数B
1は1Hz前後に設定される。この空燃比振動において空燃比がリッチになっている時間は、リーンになっている時間に等しく、周期C
1の半分に設定される。以下、ノーマル制御の空燃比振動の周期のことを標準周期C
1とも呼ぶ。
【0027】
ストイキ昇温制御は、フィルター温度がPMの燃焼反応にやや不足していると考えられる場合に実施される制御であり、おもにフィルター4の昇温を目的として実施される。ストイキ昇温制御は、フィルター温度が所定温度に達するまで継続される。ここでいう所定温度とは、PMの燃焼反応が良好となる温度であって、例えば600~650℃程度の温度とする。また、フィルター温度が所定温度に達した後には、リーン焼却制御,ストイキ焼却制御のいずれかが実施される。なお極寒冷環境など、リーン焼却制御やストイキ焼却制御の実施中にフィルター温度が所定温度を下回った場合には、再度ストイキ昇温制御を実施してもよい。
【0028】
ストイキ昇温制御では、
図4(B)に示すように、エンジン1の空燃比(目標空燃比)が理論空燃比R
0を中心として振動するように制御される。空燃比振動の振幅は、少なくともノーマル制御時よりも大きく設定され、好ましくはノーマル制御時の1.5~3.0倍程度の振幅に設定される。例えば、ノーマル制御時の全振幅A
1が0.4であるとき、ストイキ昇温制御時の全振幅A
2は0.8程度(すなわちR
0±0.4の空燃比振動)とされる。また、空燃比振動の周波数B
2についても、ノーマル制御時と同一、または、ノーマル制御時よりもやや大きく(例えば1~2Hz程度に)設定される。つまり、ストイキ昇温制御における空燃比振動の周期(第二周期C
2)は、標準周期C
1以下とされる。
【0029】
また、ストイキ昇温制御中には、ノーマル制御時と比較して、エンジン1の点火時期を遅角方向に移動させるリタード制御(遅角制御)が実施される。ストイキ昇温制御中の点火時期を遅らせることで排気温度が上昇し、フィルター温度が迅速に上昇する。なお、リタード制御における点火時期は、あらかじめ設定された固定タイミングとしてもよいし、エンジン1の運転状態(エンジン回転数やエンジン負荷など)に応じて算出される可変タイミングとしてもよい。
【0030】
リーン焼却制御及びストイキ焼却制御は、ともにPMの焼却を目的として実施される制御である。前者の制御は、PMの燃焼速度や酸化反応性を高めたい場合に用いて好適である。一方、後者の制御は、PMの酸化反応を維持しつつエンジン1から排出されるNOx量を削減したい場合に用いて好適である。本実施形態では、これらの制御を併用することで、フィルター4の再生効率の向上と排気ガス性能の向上とを両立させている。
【0031】
リーン焼却制御では、
図4(C)に示すように、エンジン1の空燃比(目標空燃比)が理論空燃比R
0よりもリーンな所定空燃比R
1に維持される。所定空燃比R
1の値は、少なくとも理論空燃比R
0よりも大きな値とし、好ましくは所望の燃焼速度が得られる酸素濃度が確保される値とする。なお、
図5に示すように、PMの燃焼速度は酸素濃度が約3.0%を下回ると急激に減少する。このことから、約3.0%の酸素濃度が確保される空燃比(16~18程度)を所定空燃比R
1にすることが好ましい。
【0032】
また、リーン焼却制御中には、ノーマル制御時と比較して、エンジン1の点火時期を進角方向に移動させるアドバンス制御(進角制御)が実施される。リーン焼却制御中の点火時期を進めることで排気温度が低下し、フィルター温度の過昇温が発生しにくくなる。なお、リーン焼却制御における点火時期は、あらかじめ設定された固定タイミングとしてもよいし、エンジン1の運転状態(エンジン回転数やエンジン負荷など)に応じて算出される可変タイミングとしてもよい。
【0033】
ストイキ焼却制御においても、ストイキ昇温制御と同様に、エンジン1の空燃比(目標空燃比)が理論空燃比R
0を中心として振動するように制御される。ストイキ焼却制御では、
図4(D)に示すように、空燃比振動の振幅が少なくともストイキ昇温制御時よりも大きく設定され、好ましくはストイキ昇温制御時の1.5~3.0倍程度の振幅に設定される。例えば、ストイキ昇温制御時の全振幅A
2が0.8であるとき、ストイキ焼却制御時の全振幅A
3は1.2程度(すなわちR
0±0.6の空燃比振動)とされる。また、空燃比振動の周波数B
3についても、ストイキ昇温制御時と同一、または、ストイキ昇温制御時よりもやや大きく(例えば5Hz程度に)設定される。つまり、ストイキ焼却制御における空燃比振動の周期(第一周期C
3)は、標準周期C
1以下かつ第二周期C
2以下とされる。
【0034】
また、ストイキ焼却制御中には、フィルター温度に応じて点火時期を変更する点火時期可変制御が実施される。ここでは、フィルター温度が高温になるほど点火時期が進角寄りに設定され、フィルター温度が低温になるほど点火時期が遅角寄りに設定される。本実施形態では、ストイキ焼却制御における点火時期がエンジン1の運転状態(エンジン回転数やエンジン負荷など)とフィルター温度とに基づいて設定される。このような設定により、フィルター温度が所定温度に維持されやすくなり、PMの燃焼反応が安定化する。
【0035】
リーン焼却制御及びストイキ焼却制御は、フィルター4に捕集されているPM堆積量、または、エンジン1から排出されるNOx濃度に基づいて切り替えられる。例えば、NOx濃度が所望の所定濃度以下であることを前提として、PM堆積量が所定量以上である場合に、リーン焼却制御を実施する。一方、NOx濃度が所定濃度を超える場合や、PM堆積量が所定量未満である場合には、再生終了条件が成立するまでストイキ焼却制御を実施する。再生終了条件は、例えば以下の条件7~9に基づいて確認することができる。
条件7.PM堆積量が第二規定量以下である
条件8.上流圧P1と下流圧P2との差圧が第二規定値以下である
条件9.フィルター4の下流のPM濃度が第二規定濃度以下である
【0036】
リーン焼却制御及びストイキ焼却制御との切り替えに際し、PM堆積量及びNOx濃度のいずれか一方のみを参照するような制御としてもよいし、これらの制御を交互に実施してもよい。リーン焼却制御及びストイキ焼却制御が実施される回数や順序は不問である。また、リーン焼却制御とストイキ焼却制御との切り替えに際し、再生制御の実施頻度に基づいてPM堆積量,NOx濃度のいずれか一方を参照するような制御としてもよい。
【0037】
例えば、PM堆積量が所定量以上である間はリーン焼却制御を実施し、PM堆積量が所定量未満になったらストイキ焼却制御を実施する。あるいは、NOx濃度が所定濃度未満のときにリーン焼却制御を実施し、NOx濃度が所定濃度以上になったらストイキ焼却制御を実施する。その後、NOx濃度が所定濃度未満になったらリーン焼却制御を再開する。前述の通り、リーン焼却制御はPMを迅速に燃焼させる上で有利であり、ストイキ焼却制御はエンジン1から排出されるNOx量を減少させる上で有利である。したがって、これらを状況に応じて使い分けることで、フィルター4の再生効率を向上させつつ排気ガス性能をも向上させることが可能となる。
【0038】
なお、上記の四制御の特徴をまとめると、以下の通りである。
【表1】
【0039】
[3.フローチャート]
図6は、制御装置10で実施される再生制御の手順を説明するためのフローチャートであり、
図7は再生制御の制御作用を説明するためのグラフである。
図6のフローは、エンジン1が作動しているときに所定の周期で繰り返し実施される。まず、エンジン1の運転状態に関する情報(例えばエンジン回転数やスロットル開度など)が取得される(ステップA1)。また、上流圧センサー5及び下流圧センサー6で検出された上流圧P
1と下流圧P
2とに基づき、これらの差圧が算出される(ステップA2)。
【0040】
続いて、エンジン1の運転状態が、フィルター4の再生制御を実施することが可能な状態であるか否かが判定される(ステップA3)。このステップでは、例えば条件1~3の少なくともいずれか一つ以上(好ましくは三つすべての条件)が成立するか否かが判定される。ステップA3の条件が成立した場合には、フィルター4の再生開始条件が成立するか否かが判定される(ステップA4)。このステップでは、条件4~6の少なくともいずれか一つ以上成立するか否かが判定される。
【0041】
ステップA3,A4の条件の少なくともいずれか一方が成立しない場合には、ノーマル制御が実施される(ステップA5)。一方、ステップA3,A4の条件がともに成立する場合には、フィルター4の再生制御が開始され(ステップA6)、ステップA7以降の処理が実施される。例えば、
図7(E)に示すように、PM堆積量が規定量G
0以上になった時刻t
0に、再生制御が開始される。
【0042】
ここで、温度センサー7で検出された排気温度に基づき、フィルター温度が推定されるとともに、そのフィルター温度が所定温度に達しているか否かが判定される(ステップA7)。この条件が成立する場合には、フィルター4の表面におけるPMの燃焼反応が期待できるものと判断され、リーン焼却制御やストイキ焼却制御を実施するためのフロー(ステップA9)に進む。
【0043】
一方、フィルター温度が所定温度に達していない場合には、ストイキ昇温制御でエンジンの燃料噴射弁11が制御されるとともに、リタード制御で点火装置12が制御される。例えば
図7(A),(B)の時刻t
0~t
1間に示すように、空燃比が理論空燃比R
0の近傍で振動するように制御されるとともに、点火時期が通常の点火時期θ
0よりも遅角された第一点火時期θ
1に変更される。
【0044】
これにより、フィルター温度が迅速に上昇し、短時間で所定温度に達する。また、ストイキ昇温制御における平均空燃比が理論空燃比R
0であることから、
図7(D)に示すように、エンジン1からNOxがほとんど排出されることがなく、良好な排気ガス性能が維持される。その後、フィルター温度が所定温度に達すると、制御がステップA9に進む。例えば
図7(F)に示すように、フィルター温度が所定温度H
1に達した時刻t
1に、ストイキ昇温制御が終了している。
【0045】
ステップA9では、NOxセンサー8で検出されたNOx濃度が所定濃度以下であるか否かが判定される。また、ステップA10では、PMの堆積量が所定量以上であるか否かが判定される。これらの条件がともに成立すると、リーン焼却制御とアドバンス制御とが実施される。例えば
図7(A),(B)の時刻t
1~t
2間に示すように、空燃比が所定空燃比R
1に維持されるとともに、点火時期が通常の点火時期θ
0よりも進角された第二点火時期θ
2に変更される。
【0046】
ステップA9,A10のいずれかの条件が不成立の場合には、ストイキ焼却制御と点火時期可変制御とが実施される(ステップA12)。
図7(D),(E)に示す例では、時刻t
2にPM堆積量が所定量G
1未満となり、リーン焼却制御がストイキ焼却制御へと切り替えられている。このとき、
図7(A),(B)の時刻t
2~t
3間に示すように、空燃比が理論空燃比R
0の近傍で大きく振動するように制御されるとともに、フィルター温度に応じて点火時期が変更される。これにより、フィルター温度が所定温度に維持されやすくなり、PMの燃焼反応が安定化する。また、平均空燃比が理論空燃比R
0であることから、
図7(D)に示すように、エンジン1から排出されるNOx量が直ちに減少し、良好な排気ガス性能が維持される。
【0047】
その後、再生終了条件が成立するか否かが判定される(ステップA13)。このステップでは、条件7~9の少なくともいずれか一つ以上成立するか否かが判定され、条件が成立すると再生制御が終了する(ステップA14)。
図7(F)に示す例では、PM堆積量が第二規定量G
2以下になった時刻t
3に再生制御が終了し、ノーマル制御が再開している。一方、ステップA13の条件が成立しない場合にはステップA9に進み、リーン焼却制御やストイキ焼却制御が継続される。このようにリーン焼却制御やストイキ焼却制御が状況に応じて使い分けられるため、フィルター4の再生効率及び排気ガス性能がともに改善される。
【0048】
[4.作用・効果]
(1)上述の実施形態では、フィルター4の再生制御においてリーン焼却制御とストイキ焼却制御とが併用される。リーン焼却制御では、フィルター4に導入される排気ガス中の酸素濃度を上昇させることができ、PMの焼却効率を向上させることができる。一方、ストイキ焼却制御では、PMが燃焼しうる酸素濃度をある程度確保しつつ、エンジン1で発生するNOx量を抑えることができる。したがって、これらを状況に応じて使い分けることで、フィルター4の再生効率及び排気ガス性能をともに向上させることができる。
【0049】
(2)上述の実施形態では、再生制御を開始する際に、ストイキ昇温制御が実施される。ストイキ昇温制御では、フィルター温度を短時間で所定温度(PMが焼却される温度)まで上昇させることができ、フィルター4の再生効率及び排気ガス性能をともに向上させることができる。また、ストイキ昇温制御時の空燃比の振幅をストイキ焼却制御時の空燃比の振幅よりも小さくすることで、再生制御の開始時におけるエンジン1の燃焼安定性を確保することができる。また視点を変えれば、ストイキ焼却制御時の空燃比の振幅をストイキ昇温制御時の空燃比の振幅よりも大きくすることで、排気通路2内における酸素濃度の平均値を上昇させることができ、フィルター4の再生効率をより高めることができる。
【0050】
(3)上述の実施形態では、フィルターの温度が所定温度に達するまではストイキ昇温制御が実施され、その後にリーン焼却制御やストイキ焼却制御が開始される。このように、フィルター温度が所定温度になってからリーン焼却制御,ストイキ焼却制御のいずれかが実施されるため、PMの焼却効率を向上させることができる。一方、フィルター温度が所定温度になるまではストイキ昇温制御が継続されるため、短時間でフィルター温度を上昇させることができる。ひいては、短時間でリーン焼却制御やストイキ焼却制御を開始させることができ、フィルター4の再生効率及び排気ガス性能をともに向上させることができる。
【0051】
(4)上述の実施形態では、ストイキ昇温制御の実施中にリタード制御(遅角制御)が実施される。これにより、フィルター4の昇温速度を上昇させることができ、より短時間でフィルター温度を上昇させることができる。つまり、リーン焼却制御やストイキ焼却制御が開始されるまでの準備期間を短縮することができ、フィルター4の再生効率及び排気ガス性能をともに向上させることができる。
【0052】
(5)上述の実施形態では、PM堆積量やNOx濃度に基づいてリーン焼却制御とストイキ焼却制御とが切り替えられる。これにより、例えばNOx性能が過度に妨げられない範囲でリーン焼却制御を活用して、フィルター4の再生効率を高めることができる。あるいは、フィルター4の濾過性能が過度に妨げられない範囲でストイキ焼却制御を活用して、排気ガス性能を高めることができる。したがって、フィルター4の再生効率及び排気ガス性能をともに向上させることができる。
【0053】
(6)なお、リーン焼却制御とストイキ焼却制御との切り替えに際し、再生制御の実施頻度に基づいてPM堆積量,NOx濃度のいずれか一方を参照するような制御とすることも考えられる。例えば、再生制御の実施頻度が高い車両20においては、たとえ今回の再生制御で焼却されたPM量が足りなかったとしても、次回の再生制御で焼却すれば問題がないことがある。このような場合、PM堆積量を参照せずにNOx濃度のみに基づいてリーン焼却制御とストイキ焼却制御とを切り替えることで、フィルター4の再生効率よりも排気ガス性能を優先的に向上させることができる。反対に、PM堆積量のみに基づいてリーン焼却制御とストイキ焼却制御とを切り替えることで、フィルター4の再生効率を優先的に向上させることができる。
【0054】
(7)上述の実施形態では、再生制御を開始する前にノーマル制御が実施される。ノーマル制御では、エンジン1の燃焼状態を安定化させつつ、燃費を向上させることができる。また、排気通路2上に酸化触媒(三元触媒)3が介装されている場合には、酸化触媒(三元触媒)3での一酸化炭素(CO)の浄化性能やNOx浄化性能を確保することができ、排気ガス性能を向上させることができる。
【0055】
(8)上述の実施形態では、リーン焼却制御の実施中にアドバンス制御(進角制御)が実施される。これにより、フィルター温度の過昇温を抑制することができる。特に、ストイキ昇温制御の実施中にリタード制御(遅角制御)が実施される場合には、排気温度が急上昇しているため、フィルター温度が所定温度(例えば600~650℃)を大幅に超えやすくなってしまう。これに対し、ストイキ昇温制御の後に実施されるリーン焼却制御で温度上昇に歯止めをかけることで、より確実に過昇温の発生を防止することができる。
【0056】
(9)上述の実施形態では、ストイキ焼却制御の実施中に点火時期可変制御が実施される。点火時期可変制御では、フィルター温度が高温になるほど点火時期が進角寄りに設定され、フィルター温度が低温になるほど点火時期が遅角寄りに設定される。このような設定により、フィルター温度を所定温度(例えば600~650℃)に維持しやすくすることができ、フィルター4の再生効率をさらに向上させることができる。
【0057】
[5.変形例]
上記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、本実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0058】
上述の実施形態ではエンジン1を搭載した車両20を例示したが、本件の適用対象を車両20に限定する意図はない。例えば、船舶や航空機などに搭載されるエンジン1のフィルター4を制御装置10の管理対象としてもよい。あるいは、発電機や産業用機械に内蔵されるエンジン1のフィルター4についても、制御装置10の管理対象とすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン(内燃機関)
2 排気通路
3 酸化触媒(三元触媒)
4 フィルター
5 上流圧センサー
6 下流圧センサー
7 温度センサー
8 NOxセンサー
9 PMセンサー
10 制御装置
11 燃料噴射弁
12 点火装置