(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】巡視支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230523BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J13/00 301D
H02J13/00 301J
(21)【出願番号】P 2019028283
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】浅野 拓真
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-270981(JP,A)
【文献】特開2004-333453(JP,A)
【文献】特開2007-017203(JP,A)
【文献】特開2013-222345(JP,A)
【文献】特開2011-238021(JP,A)
【文献】特開2010-191675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷によって停電が発生した場合に、停電の原因となった設備を発見するために行う巡視を支援する巡視支援システムであって、
停電発生時刻及び停電範囲を含む事故情報を特定する配電自動化システムと、
リアルタイムで発生する落雷の落雷時刻及び落雷位置を含む落雷情報を蓄積する落雷情報データベースと、
設置されている電柱の電柱番号および電柱位置を含む電柱情報を格納した電柱情報データベースと、
前記配電自動化システムで特定された事故情報と前記各データベースを参照して、登録されている端末の画面に表示可能な地図上に表示させる表示情報を作成し、その表示情報を前記地図上に表示させるべく前記端末に送信する管理装置と、を有し、
前記管理装置は、
前記停電発生時刻を基準として、その時刻よりも前の所定時間内に発生した落雷の落雷位置を前記落雷情報データベースを参照して特定する落雷位置特定手段と、
前記落雷位置特定手段で特定された落雷位置から予め設定された設定範囲内に設置されている電柱を、前記電柱情報データベースを参照して抽出する落雷位置近傍電柱抽出手段と、
前記配電自動化システムで特定された前記停電範囲内に設置されている電柱を、前記電柱情報データベースを参照して抽出する停電範囲電柱抽出手段と、
前記落雷位置近傍電柱抽出手段で抽出された電柱と、前記停電範囲電柱抽出手段で抽出された電柱とが一致する電柱を絞り込む絞り込み手段と、
前記絞り込み手段で絞り込んだ電柱の位置と前記落雷位置特定手段で特定された落雷位置とを前記端末の画面に表示される地図上の対応位置にシンボル表示させる情報を前記表示情報として作成する表示情報作成手段と、
前記絞り込み手段で絞り込んだ電柱において、前記落雷位置特定手段で特定された落雷位置からの距離が短い順に順番を決定し、その情報を前記地図上に巡視順序として表示させる巡視順序表示手段と、
を具備することを特徴とする巡視支援システム。
【請求項2】
落雷位置特定手段で前記落雷位置を特定するための落雷を抽出するための前記所定時間、及び、前記落雷位置近傍電柱抽出手段で前記電柱を抽出するための前記設定範囲の少なくとも一方を調節可能とする抽出条件調節手段をさらに有することを特徴とする
請求項1記載の巡視支援システム。
【請求項3】
前記
落雷位置特定手段で特定された落雷位置が複数ある場合に、それぞれの落雷位置に対して前記表示情報を作成する
請求項1又は2に記載の巡視支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、落雷により配電線事故(停電)が発生した場合に、事故点である停電の原因となった設備を効率的に発見するために行う巡視を支援するための巡視支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、落雷により配電線事故(停電)が発生した場合、長時間事故の場合においては、ロックした配電線開閉器DMの区間の設備を巡視、点検し、停電の原因箇所(事故原因となった設備)を発見するようにしている。
また、短時間事故の場合においては、計測機能付き開閉器から得られる情報によって事故点の範囲を決めてその範囲の設備を点検し、計測機能付き開閉器が無い場合には、停電範囲の全てを巡視・点検し、事故原因となった設備を発見するようにしている。
【0003】
しかしながら、このような従来の巡視では多くの時間と労力を要し、迅速に事故点を発見して事故復旧を図るには限界がある。このため、効率的に巡視を行うために、従来においては、落雷による停電が発生すると、管理装置の落雷位置標定手段によって落雷の落雷位置が標定され、この落雷位置からの巡視エリアが、エリア割出手段によって割り出され、この際に、地域に設置されている各設備の識別情報や位置と、過去の落雷時における落雷位置と原因設備の識別情報とに基づいて、原因設備が位置する可能性が高いエリアから順に割り出され、この割り出された巡視エリアを含む巡視指令が、車両に搭載された装置へ送信される巡視支援システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
このようなシステムを用いることで、過去の実績・実情から原因設備が位置する可能性が高いエリアから順に、巡視エリアが割り出されて、巡視指令が車両装置に送信されるため、この巡視エリアに従って巡視を行うことが可能となり、早期に原因箇所を発見することが可能となる。つまり、無作為に巡視するのではなく、原因設備・故障設備が位置する可能性が高いエリアから順に巡視することができるため、効果的かつ効率的に巡視することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、過去の実績・実情から原因設備が位置する可能性が高いエリアから順に、巡視エリアが割り出す手法は、それなりに効果的かつ効率的な巡視を行うために役立つものであるが、落雷による配電線事故の場合は、事故点が落雷場所付近であることが多い。
このため、過去の実績・実情とは別にリアルタイムで変化する落雷情報を有効に利用することも、事故点を早期に発見するために効果的かつ効率的な巡視を行う上で有効である。
また、上述した従来のシステムでは、車両にシステムが利用可能な装置を搭載しておく必要があり、車両を用いない巡視においては、効果が半減するものであった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、車両やそれに搭載する装置を用いなくても効率的な巡視を支援することができ、また、落雷による配電線事故(停電)が発生した場合に落雷情報をリンクさせて視覚的な情報を提供することで、より効果的かつ効率的な巡視を行うことが可能な巡視支援システムを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本願発明に係る巡視支援システムは、落雷によって停電が発生した場合に、停電の原因となった設備を発見するために行う巡視を支援する巡視支援システムであって、停電発生時刻及び停電範囲を含む事故情報を特定する配電自動化システムと、リアルタイムで発生する落雷の落雷時刻及び落雷位置を含む落雷情報を蓄積する落雷情報データベースと、設置されている電柱の電柱番号および電柱位置を含む電柱情報を格納した電柱情報データベースと、前記配電自動化システムで特定された事故情報と前記各データベースを参照して、登録されている端末の画面に表示可能な地図上に表示させる表示情報を作成し、その表示情報を前記地図上に表示させるべく前記端末に送信する管理装置と、を有し、前記管理装置は、
前記停電発生時刻を基準として、その時刻よりも前の所定時間内に発生した落雷の落雷位置を前記落雷情報データベースを参照して特定する落雷位置特定手段と、
前記落雷位置特定手段で特定された落雷位置から設定範囲内に設置されている電柱を、前記電柱情報データベースを参照して抽出する落雷位置近傍電柱抽出手段と、
前記配電自動化システムで特定された前記停電範囲内に設置されている電柱を、前記電柱情報データベースを参照して抽出する停電範囲電柱抽出手段と、
前記落雷位置近傍電柱抽出手段で抽出された電柱と、前記停電範囲電柱抽出手段で抽出された電柱とが一致する電柱に絞り込む絞り込み手段と、
前記絞り込み手段で絞り込んだ電柱の位置と前記落雷情報特定手段で特定された落雷位置とを前記端末の画面に表示される地図上の対応位置にシンボル表示させる情報を前記表示情報として作成する表示情報作成手段と、
前記絞り込み手段で絞り込んだ電柱において、前記落雷位置特定手段で特定された落雷位置からの距離が短い順に順番を決定し、その情報を前記地図上に巡視順序として表示させる巡視順序表示手段と、
を具備することを特徴としている。
【0009】
したがって、システムに登録されている作業者の端末に表示される地図上に、絞り込み手段で絞り込んだ電柱(落雷位置近傍電柱抽出手段で抽出された電柱と、停電範囲電柱抽出手段で抽出された電柱とが一致する電柱)を示すシンボルが表示されると共に、落雷情報特定手段で特定された落雷位置を示すシンボルが表示されるので、作業者は、自分が所有する端末の画面上に表示されている地図上のシンボル位置を確認することで、落雷位置を参照しつつその近傍の停電範囲内の電柱を優先的に巡視することが可能となる。
【0010】
また、前記絞り込み手段で絞り込んだ電柱において、前記落雷位置特定手段で特定された落雷位置からの距離が短い順に順番を決定し、その情報を前記地図上に巡視順序として表示させる巡視順序表示手段を更に具備するようにしたので、落雷位置に近い電柱からの巡視を促すことが可能となり、より効率的な巡視を視覚的に支援することが可能となる。
【0011】
ここで、落雷位置特定手段で前記落雷位置を特定するための落雷を抽出するための前記所定時間、及び、前記落雷位置近傍電柱抽出手段で前記電柱を抽出するための前記設定範囲の少なくとも一方を調節可能とする抽出条件調節手段をさらに有するとよい。
このような抽出条件調節手段を設けることで、巡視範囲や巡視効率の程度を調節することが可能となり、また、現場に合わせた巡視対応が可能となる。
【0012】
なお、前記落雷位置情報特定手段で特定された落雷位置が複数ある場合には、発生した事故がいずれの落雷に起因しているのか不明であるので、それぞれの落雷位置に対して前記表示情報を作成するようにするとよい。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本願発明によれば、作業者が所有する登録端末の画面に表示される地図上に、落雷位置近傍電柱抽出手段で抽出された電柱と、停電範囲電柱抽出手段で抽出された電柱と、が一致する電柱に対応したシンボルが表示されると共に、落雷情報特定手段で特定された落雷位置を示すシンボルが表示されるので、作業者はこの地図上に表示されたシンボルを参照しつつ巡視ルートを決定することが可能となるので、事故点を発見するための巡視を効果的且つ効率的に行うことが可能となる。
また、常時携帯している端末を登録しておくことで、車中を問わずどこにいても、携帯している端末に表示される地図上で停電直近の落雷位置と停電範囲にある落雷位置近傍の電柱位置とを確認できるので、専用の装置が不要であり、設置個所を決めておく必要もなくなる。
【0014】
ここで、絞り込み手段で絞り込んだ電柱に対して、落雷位置特定手段で特定された落雷位置からの距離が短い順に順番を決定し、その情報を地図上に巡視順序として表示させることで、作業者は自身で巡視ルートを決定しなくても、落雷位置に近い電柱からの巡視を促すことが可能となり、より効率的な巡視を視覚的に支援することが可能となる。しかも、このような構成においては、点検する電柱の優先付けが自動的に行われるので、作業員の経験、能力によらない効率的な原因箇所の発見が可能となり、事故復旧を迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本願発明に係る巡視支援システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本願発明に係る電柱情報データベースの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本願発明に係る落雷情報データベースの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、管理装置による支援処理を示したフローチャートである。
【
図5】
図5は、電柱位置が示された地図上に、事故区間(停電範囲)と落雷位置を中心とする設定範囲とを便宜上表示させた説明図である。
【
図6】
図6は、
図4の処理に基づき、携帯端末の表示部の表示された地図上に停電直前の落雷位置とその近傍の停電範囲の電柱とをシンボル表示させた図である。
【
図7】
図7は、落雷情報が示された表であり、落雷位置を中心とする設定範囲を調節する機能と、落雷情報を収集するための時間を調節する機能を雪面する図である。
【
図8】
図8は、管理装置による支援処理の変形例を示したフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8の処理に基づき、携帯端末の表示部に表示された地図上に停電直前の落雷位置とその近傍の停電範囲の電柱とをシンボル表示させ、さらに停電電柱Cのうち、落雷位置から近い順番を番号表示させた例を示す図である。
【
図10】
図10は、停電直前の落雷が2箇所ある場合の例を示すもので、電柱位置が示された地図上に、事故区間(停電範囲)と落雷位置を中心とする設定範囲とを便宜上表示させた説明図である。
【
図11】
図11(a)は、2箇所の落雷に対して、
図4の処理に基づき、携帯端末の表示部に表示された地図上に停電直前の落雷位置とその近傍の停電範囲の電柱とをシンボル表示させた図であり、
図11(b)は、2箇所の落雷に対して、
図8の処理に基づき、携帯端末の表示部に表示された地図上に停電直前の落雷位置とその近傍の停電範囲の電柱とをシンボル表示させ、さらに停電電柱Cのうち、落雷位置から近い順番を番号表示させた例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る巡視支援システムを示す概略構成図である。この巡視支援システムは、落雷によって配電事故(停電)が発生した場合に、配電事故(停電)の原因となった設備を発見するために行う巡視を支援するためのシステムであり、電力会社に設置された管理装置1と、この管理装置に登録されている端末(主として携帯端末2)とを有して構成され、管理装置1と各携帯端末2とは通信可能に接続されている。
【0018】
管理装置1は、落雷が発生した場合に、その落雷日時、落雷位置を含む落雷情報を標定する落雷情報標定システム3と接続・リンクされ、そこで収取された落雷情報を格納する落雷情報データベース(落雷情報DB)4を備えている。また、管理装置1は、停電発生時刻及び停電範囲を含む事故情報を特定する配電自動化システム5が接続・リンクされ、この配電自動化システム5で特定された事故情報がリアルタイムで管理装置1に送信されるようになっている。
【0019】
そして、管理装置1は、電柱情報データベース6と、前記落雷情報データベース4と、処理部7と、通信部8とを備えている。
電柱情報データベース6は、例えば
図2に示されるように、管轄エリア内に設置されている電柱の電柱番号、位置情報(緯度、経度)、電柱に配設されている付属設備などが記憶されている。
落雷情報データベース4は、例えば
図3に示されるように、落雷情報標定システムで標定された過去の落雷時における落雷日時と落雷位置(緯度、経度)などがリアルタイムで随時蓄積されている。
【0020】
処理部7は、配電自動化システムで特定された事故情報や、各データベースを参照して、登録されている各携帯端末2に送信するための表示情報を作成し、その表示情報を、登録されている携帯端末2の画面に表示可能な地図上に表示させるべく該携帯端末2へ通信部8を介して送信するようにしている。
【0021】
各携帯端末2は、表示部21と、GPS部22と、通信部23と、これらを制御する制御部24とを有している。
表示部21は、予めインストールされるか、通信部を介して受信した地図データなどを表示させるディスプレイである。GPS部は、GPS衛星から発信された電波を受信して携帯端末2の位置(緯度、経度)を演算・検出し、表示部に表示された地図上に現在位置を表示させる機能等を有している。通信部は、外部と通信するための通信機器であり、前記管理装置の通信部から送信されたデータを受信可能となっている。
【0022】
以上のような管理装置1と携帯端末2用いて、配電事故(停電)の原因となった設備を発見するために行う巡視を支援するために、例えば、
図4に示されるような処理が行われる。
【0023】
管理装置1は、管轄エリア内で配電線事故(停電)が発生したか否かをモニタリングしており(ステップ50)、管轄エリア内で配電線事故が発生したと判定した場合に、配電自動化システムから配信される事故情報から得られた事故発生時刻を基準としてそれ以前の設定時間内(例えば、1分以内)に管轄エリア内で落雷があったか否かを落雷情報データベース4を参照して判定し(ステップ52)、前記設定時間内に落雷がなければ、配電線事故が落雷に起因するものではないと判定して、この処理フローを終了する。
【0024】
これに対して、ステップ52において、事故発生時刻を基準としてそれ以前の設定時間内(例えば、1分以内)に管轄エリア内で落雷があったと判定された場合には、配電自動化システムから配信された事故情報に基づき、電柱データベースを参照して停電範囲内にある全ての電柱Aの情報(電柱番号、電柱位置など)を抽出する(ステップ54)。
【0025】
また、管理装置1は、事故発生時刻前の設定時間内(例えば、1分以内)の落雷情報(落雷に日時、落雷位置など)を落雷データベース4を参照して収集する(ステップ56)。
ここで事故発生時刻を基準としてそれ以前の設定時間内の落雷情報としたのは、落雷発生から停電事故までの間にタイムラグがあり、また、落雷は多数発生するので、落雷情報を収集する時間を絞らないと事故とは関係のない落雷情報も抽出する可能性が高くなるからである。
【0026】
そして、電柱情報データベースを参照して、収集した落雷情報の落雷位置を中心として、予め設定された範囲内(例えば、半径300m範囲内)の電柱Bの情報(電柱番号と電柱位置など)を抽出する(ステップ58)
【0027】
その後、ステップ54で抽出した停電範囲の電柱Aとステップ58で抽出した落雷近傍の電柱Bとで一致する電柱Cを抽出する(ステップ60)。すなわち、巡視対象となる電柱を、配電自動化システムで特定された停電範囲内に設置されている電柱であり、且つ、落雷位置近傍にある電柱に絞り込む。
【0028】
そして、絞り込んだ電柱Cの位置とステップ56で収集された落雷位置とを前記携帯端末2の表示部21に表示される地図上の対応位置にシンボル表示させるための表示情報を作成し(ステップ62)、その表示情報を携帯端末2に表示される地図上に表示させるべく通信部8を介して登録された携帯端末2に送信する(ステップ64)。
【0029】
携帯端末2側は、予めインストールされた地図ソフトを立ち上げて表示部21に地図データを表示させることで、又は、通信部23を介して外部から地図情報を受信し、オンラインで表示部21に地図を表示させることで、その地図上に落雷位置と絞り込んだ停電電柱Cがシンボル表示される。携帯端末2の表示部21に表示される地図上に表示させるシンボル表示としては、例えば、絞り込んだ電柱位置を「・」で示し、落雷位置を「×」で示すとよい。
【0030】
このような処理に基づき、携帯端末2の表示部21に表示される状態を説明すると、例えば、管轄エリアの事故範囲(停電範囲)が
図5の一点鎖線で囲まれた範囲であるとし、事故発生時刻を基準としてそれ以前の1分前に発生した落雷が1箇所であり、その落雷位置「×」を中心とした半径(R)300mの範囲が破線で囲まれた範囲であるとすると、携帯端末2の表示部21には、
図6に示されるように、両範囲がオーバーラップする範囲内の電柱のシンボル表示「・」と、落雷位置を示すシンボル表示「×」とが、携帯端末2の表示部21に表示される地図上の対応位置に表示される。
ここで、携帯端末2の表示部21には、
図5に示されるように、事故範囲(一点鎖線)や落雷位置からの設定範囲(破線)も同時に表示させるようにしてもよい。
【0031】
したがって、本システムに登録されている作業者の携帯端末2には、表示部21に表示されている地図上に、停電直前の落雷位置がシンボル表示されると共に、その落雷位置近傍の電柱であって、停電範囲にある電柱がシンボル表示されるので、作業者は、自己が所有する携帯端末2の表示部21に表示されている地図上のシンボル表示を確認することで、落雷位置を参照しつつその近傍の停電範囲内の電柱を優先的に巡視することが可能となる。すなわち、作業者はこの地図上に表示されたシンボルを参照しつつ巡視ルートを決定することが可能となるので、事故点を発見するための巡視を効果的且つ効率的に行うことが可能となる。
【0032】
なお、上述においては、落雷近傍の電柱を抽出する設定範囲を300mに設定し、落雷情報を収集する時間を事故発生前の1分間に設定したが、設定範囲や収取時間は、落雷場所や各種条件に応じて変更できるようにしてもよい。例えば、
図7に示されるように、落雷情報を表示させる画面上において、設定範囲や収集時間をプルダウン形式で選択できるようにしてもよい。
このような設定範囲や収集時間の調整により、巡視範囲や巡視効率の程度を調節することが可能となり、また、現場に合わせた巡視対応の調整が可能となる。
【0033】
図8に、管理装置による制御動作例の変形例が示されている。この処理においては、落雷位置と停電電柱Cとを携帯端末2の表示部21に表示する地図上にシンボル表示させる表示情報を作成すると共に(ステップ62)、停電電柱Cのうち、落雷位置から近い順に順番を決定し、その順番を番号表示させる表示情報を作成する(ステップ63)。
【0034】
そして、ステップ62の表示情報とステップ63の表示情報を登録端末2に送信し(ステップ64)、例えば、
図9に示されるように、携帯端末2の表示部21に表示されている地図上に落雷位置と停電電柱Cをシンボル表示させると共に、停電電柱Cのシンボル表示の直近にステップ63で決定した番号を表示させる。
【0035】
したがって、巡視を行う作業者は、携帯している携帯端末2の表示部21に表示された地図上に表示されるシンボル表示と番号を参照して、番号が若い停電電柱Cから順次巡視することが可能となり、停電の原因となった設備の早期発見を期待することが可能となる。
すなわち、このような構成においては、点検する電柱の優先付けが自動的に行われるので、作業員の経験や能力に依存しない巡視が可能となり、原因箇所の効率的な発見が可能となり、事故復旧を迅速に行うことが可能となる。
【0036】
なお、以上の構成は、停電時刻を基準としてその前の所定時間内の落雷が1つしかない場合について説明したが、所定時間内に複数の落雷があった場合には、事故原因がどの落雷に起因するのかを判別することはできないので、それぞれの落雷に対して、上述した処理を行うとよい。
【0037】
例えば、所定時間内に2つの落雷が確認された場合には、
図10に示されるように、それぞれの落雷位置を基準として設定範囲内の停電電柱Cを抽出し、
図4の処理に基づき、その停電電柱のシンボル表示を落雷位置のシンボル表示と共に携帯端末2の表示部21に表示させた地図上に
図11(a)のように表示させる。この際、
図8の処理に基づき、落雷位置から近い順に番号を割り当て、
図11(b)に示されるように、その番号を地図上に電柱のシンボル表示の直近に表示させるようにしてもよい。
【0038】
また、各携帯端末2が有しているGPS機能を利用し、携帯端末2の現在位置をさらに加味して絞り込んだ停電電柱Cを効率的な巡視するルートを演算・決定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 管理装置
2 携帯端末
21 表示部
3 落雷情報評定システム
4 落雷情報データベース
5 配電自動化システム
6 電柱情報データベース