IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-排気ガス浄化装置 図1
  • 特許-排気ガス浄化装置 図2
  • 特許-排気ガス浄化装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20230523BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230523BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20230523BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230523BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230523BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
F01N3/24 L ZAB
F01N3/08 B
F01N3/20 K
F01N3/24 C
F01N3/24 E
F01N3/28 A
F01N3/20 H
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 222
B01D53/94 400
B01J35/02 301
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019045918
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020148140
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲也
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0032533(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0255285(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0036680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F01N 3/08
F01N 3/20
F01N 3/28
B01D 53/94
B01J 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される排気ガスを浄化する酸化触媒を有する酸化触媒ユニットと、
前記酸化触媒よりも前記排気ガスの流れの下流側に前記酸化触媒と隣接して配置された第一加熱器を有する第一加熱器ユニットと、
前記第一加熱器よりも前記排気ガスの流れの下流側に位置し、噴射された尿素水によって前記排気ガスを還元して浄化する選択還元型触媒を有する選択還元型触媒ユニットと、
前記第一加熱器と前記選択還元型触媒との間に挟まれる接続領域に配置された前記尿素水を噴射する尿素水供給器と、前記尿素水供給器よりも前記排気ガスの流れの下流側に位置する前記接続領域に配置され、供給経路に供給された前記尿素水を拡散する拡散器とを有する尿素水供給ユニットと、
前記選択還元型触媒を加熱する第二加熱器を有する第二加熱器ユニットと、を有し、
前記排気ガスの流れの下流側に向かって順に前記酸化触媒ユニットと前記第一加熱器ユニットと前記尿素水供給ユニットと前記第二加熱器ユニットと前記選択還元型触媒ユニットを配置するとともに各ユニットを隣接させて、筐体ユニットに一体に格納する排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記酸化触媒は、ゼオライトを含んでいない、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジンの後処理として、排気ガス浄化装置が用いられている。排ガス浄化装置は、排気ガスの温度が相対的に低い時(例えば、エンジン始動時やアイドリング時)に、触媒による排気ガスの浄化性能が低下することから、触媒の温度を調整することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-265862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気ガスの温度が相対的に低い場合であっても、効率良く触媒を加熱して排気ガスの浄化性能を維持することが要請されている。
【0005】
本発明の目的は、排気ガスの温度影響を緩和しつつ選択還元型触媒による排気ガスの浄化性能を維持できる排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の排気ガス浄化装置は、エンジンから排出される排気ガスを浄化する酸化触媒を有する酸化触媒ユニットと、酸化触媒よりも排気ガスの流れの下流側に酸化触媒と隣接して配置された第一加熱器を有する第一加熱器ユニットと、第一加熱器よりも排気ガスの流れの下流側に位置し、噴射された尿素水によって排気ガスを還元して浄化する選択還元型触媒を有する選択還元型触媒ユニットと、第一加熱器と選択還元型触媒との間に挟まれる接続領域に配置された尿素水を噴射する尿素水供給器と、尿素水供給器よりも排気ガスの流れの下流側に位置する接続領域に配置され、供給経路に供給された尿素水を拡散する拡散器とを有する尿素水供給ユニットと、選択還元型触媒を加熱する第二加熱器を有する第二加熱器ユニットと、を有し、排気ガスの流れの下流側に向かって順に酸化触媒ユニットと第一加熱器ユニットと尿素水供給ユニットと第二加熱器ユニットと選択還元型触媒ユニットを配置するとともに各ユニットを隣接させて、筐体ユニットに一体に格納する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排気ガスの温度影響を緩和しつつ選択還元型触媒による排気ガスの浄化性能を維持できる排気ガス浄化装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】排気ガス浄化装置を示す斜視図
図2図1の排気ガス浄化装置を断面で示す側面図。
図3】排気ガスの温度変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[排気ガス浄化装置100の構成]
図1及び図2を参照して、実施形態の排気ガス浄化装置100の構成を説明する。
【0010】
図1は、排気ガス浄化装置100を示す斜視図である。図2は、図1の排気ガス浄化装置100を断面で示す側面図である。
【0011】
排気ガス浄化装置100は、エンジンから排出される排気ガスを浄化する装置であり、図1に示すように、排気通路にDOCユニット110、第1EHCユニット120、尿素水供給ユニット130、第2EHCユニット140、SDPFユニット150および筐体ユニット160を含んで構成されている。
【0012】
DOCユニット110は、排気ガスEに含まれる一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)を浄化する。DOCユニット110は、図2に示すように、酸化触媒111及び担体112を含んでいる。酸化触媒111は、エンジンから排出される、例えば、一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)を酸化させて浄化する。酸化触媒111には、例えば、酸化機能を有するディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)を用いる。酸化触媒111には、炭化水素(HC)を吸着するゼオライトが含まれていない。このため、酸化触媒111は、炭化水素(HC)を吸着することなく、炭化水素を酸化する。担体112は、酸化触媒111を担持し排気ガスEを通過させる。
【0013】
第1EHCユニット120は、DOCユニット110の下流側にDOCユニット110と隣接して設けられ、DOCユニット110を通過した排気ガスEを加熱して、尿素水供給ユニット130の尿素インジェクター131から噴射された尿素水Uのアンモニア(NH3)への分解を促進する。尿素水Uの分解は150℃程度から進行するため、排気ガスEの温度が分解温度以下の場合に、その排気ガスEを加熱して昇温させる。第1EHCユニット120により、排気ガスEを180℃以上に加熱して、排気ガスEに含有される未燃焼の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)成分を燃焼させて浄化する。
【0014】
第1EHCユニット120は、図2に示すように、DOCユニット110に用いられている酸化触媒111、担体122、第1ヒータ123(第一加熱器)および第1温度センサー124を含んでいる。担体122は、酸化触媒111を担持し排気ガスEを通過させる。
第1ヒータ123は、担体122と接合され、排気ガスEを加熱することによって酸化触媒111を加熱する。第1ヒータ123は、DOCユニット110に含まれる酸化触媒111よりも排気ガスEの流れの下流側に酸化触媒111と隣接して配置されている。尚、第1ヒータ123に、酸化触媒111を絶縁性を保った状態で塗布して固着させることによって、酸化触媒111を直接的に保持する構成としてもよい。第1温度センサー124は、排気ガスEの温度を測定する。排気ガスEの温度は、車両の制御部に送信され、車両が運転を継続している間、排気ガスEの温度が一定値以上になるように、第1ヒータ123が制御される。
【0015】
なお、ここでは第1EHCユニット120が酸化触媒111、及び、担体122を有する場合の説明をしたが、第1EHCユニット120が酸化触媒111、及び、担体122を有さずに第1ヒータ123のみを有するものであってもよい。この場合には、尿素インジェクター131から噴射された尿素水を更に過熱しやすくなる。
【0016】
尿素水供給ユニット130は、第1EHCユニット120の下流側に設けられ、第1EHCユニット120を通過し加熱された排気ガスEに対して尿素水Uを供給する。尿素水供給ユニット130は、図2に示すように、尿素インジェクター131(尿素水供給器)およびミキサー(拡散器)132を含んでいる。尿素インジェクター131は、排気ガスEに対して尿素水Uを霧状に噴射して供給する。尿素インジェクター131は、第1ヒータ123よりも排気ガスEの流れの下流側の直後に尿素水Uの供給経路を設けている。ここで、下流側の直後とは、後述するSDPFユニット150と第1EHCユニット120の第1ヒータ123との間に挟まれた接続領域を意味する。尿素インジェクター131は、図1および図2において、尿素水Uの貯蔵タンク、送液機構および噴射機構等の図示を省略している。ミキサー132は、尿素インジェクター131の下流側で前述した接続領域に配置され、霧状の尿素水Uを拡散させつつ排気ガスEの下流側に通過させる。ミキサー132は、排気ガスEの流れによって受動的に回転するブレードを備えている。
【0017】
第2EHCユニット140は、尿素水供給ユニット130の下流側で前述した接続領域に設けられ、尿素水供給ユニット130を通過し尿素水Uが噴射された排気ガスEを加熱して、窒素酸化物(NOx)の浄化開始時間を早期化する。SCR触媒141において、排気ガスEの温度が170℃程度から窒素酸化物(NOx)を浄化の反応が進行するため、排気ガスEが反応進行温度以下の場合に、その排気ガスEを加熱して、SCR触媒141の温度を上昇させる。
【0018】
第2EHCユニット140は、図2に示すように、SCR触媒141、担体142、第2ヒータ143および第2温度センサー144を含んでいる。SCR触媒141は、選択還元型触媒であって、窒素酸化物(NOx)を還元して浄化する。SCR触媒141には、貴金属が含まれていない。担体142は、SCR触媒141を担持し排気ガスEを通過させる。第2ヒータ143は、担体142と接合され、排気ガスEを加熱することによってSCR触媒141を加熱する。第2ヒータ143は、ミキサー132の下流であって接続領域に設けられている。尚、第2ヒータ143に、SCR触媒141を絶縁性を保った状態で塗布して固着させることによって、SCR触媒141を直接的に保持する構成としてもよい。第2温度センサー144は、排気ガスEの温度を測定する。排気ガスEの温度は、車両の制御部に送信され、車両が運転を継続している間、排気ガスEの温度が一定値以上になるように、第2ヒータ143が制御される。
【0019】
SDPFユニット150は、第2EHCユニット140の下流側に設けられ、排気ガスEに含まれる窒素酸化物(NOx)および粒子状物質(PM)を浄化する。SDPFユニット150は、図2に示すように、第2EHCユニット140に用いられているSCR触媒141、フィルタ152および第3温度センサー154を含んでいる。フィルタ152は、SCR触媒141を担持し排気ガスEを通過させる。第3温度センサー154は、排気ガスEの温度を測定する。排気ガスEの温度は、車両の制御部に送信され、車両が運転を継続している間、排気ガスEの温度が一定値以上になるように、第2EHCユニット140の第2ヒータ143が制御される。
【0020】
筐体ユニット160は、DOCユニット110、第1EHCユニット120、尿素水供給ユニット130、第2EHCユニット140およびSDPFユニット150を一体に格納している。筐体ユニット160は、DOCユニット110からSDPFユニット150に向かって、排気ガスEを流通させる。筐体ユニット160は、エンジンの排気側に取り付けられている。
【0021】
[排気ガス浄化装置100の作用効果]
図3を参照して、実施形態の排気ガス浄化装置100の作用効果を説明する。
【0022】
図3は、排気ガスEの温度変化を示すグラフである。
【0023】
実施形態の排気ガス浄化装置100は、酸化触媒111よりも排気ガスEの流れの下流側であって、かつ、尿素インジェクター131(尿素水供給器)よりも排気ガスEの流れの上流側に、第1ヒータ123(第一加熱器)を有している。また、排気ガス浄化装置100は、尿素インジェクター131よりも排気ガスEの流れの下流側に、SCR触媒141を有している。すなわち、尿素インジェクター131(尿素水供給器)は、第1ヒータ123とSCR触媒141の間に挟まれた接続領域に配置されるため、第1ヒータ123と尿素インジェクター131(尿素水供給器)との距離を極力近づけることができる。
【0024】
このような構成によれば、排気ガスEが相対的に低温であっても、第1ヒータ123によって排気ガスEを加熱すると共に尿素水Uを加熱(気化)し、加熱された排気ガスEを、加熱された尿素水UとSCR触媒141によって十分に還元させて浄化することができる。排気ガスEが相対的に低温とは、車両の連続運転時における排気ガスEの温度と比較して、車両のエンジン始動時やアイドリング時における排気ガスEの温度が相対的に低いことを表している。図3に示すように、本実施形態においては、車両の運転の状態によらず、排気ガスEを一定の温度以上に保っていることから、その排気ガスEをSCR触媒141によって十分に還元させて浄化することが容易である。一方、図3に示すように、対比例においては、車両のエンジン始動時やアイドリング時に、排気ガスEが低温であることから、その排気ガスEをSCR触媒141によって十分に還元させて浄化することが難しい。このように、排気ガス浄化装置100は、排気ガスEの温度影響を緩和しつつSCR触媒141による排気ガスEの浄化性能を維持できる。
【0025】
また、実施形態の排気ガス浄化装置100は、尿素インジェクター131(尿素水供給器)よりも排気ガスEの流れの下流側に位置し、SDPFユニット150と第1EHCユニット120の第1ヒータ123との間に挟まれた接続領域に尿素水Uを拡散するミキサー132(拡散器)を備えている。すなわち、第1ヒータ123とミキサー132(拡散器)との距離を極力近づけることができる。
【0026】
このような構成によれば、ミキサー132によって排気ガスEを均等に拡散させるとともに、ミキサー132を介して排気ガスEを間接的に加熱すると共に尿素水Uを間接的に加熱(気化)することができる。ここで、ミキサー132は、第1ヒータ123によって排気ガスEを介して十分に加熱される。この結果、排気ガス浄化装置100は、第1ヒータ123によって排気ガスEを加熱すると共に、ミキサー132によって排気ガスEを加熱することによって、排気ガスEの温度影響を緩和しつつSCR触媒141による排気ガスEの浄化性能を維持できる。
【0027】
また、実施形態の排気ガス浄化装置100は、SCR触媒141を加熱する第2ヒータ143(第二加熱器)をSDPFユニット150と第1EHCユニット120の第1ヒータ123との間に挟まれた接続領域に有している。
【0028】
このような構成によれば、相対的に低温のSCR触媒141を加熱して反応が十分に進行するようにして、窒素酸化物(NOx)の浄化を開始できるまでの時間を短縮することができる。この結果、排気ガス浄化装置100は、排気ガスEの温度影響を緩和しつつSCR触媒141による排気ガスEの浄化性能を維持できる。
【0029】
また、実施形態の排気ガス浄化装置100において、酸化触媒111は、ゼオライトを含んでいない。
【0030】
このような構成によれば、排気ガスEに含まれる炭化水素(HC)をゼオライトによって吸着させることなく、第1ヒータ123によって加熱して処理することができる。この結果、排気ガス浄化装置100は、特に炭化水素(HC)の浄化能力を高めた上で、排気ガスEの温度影響を緩和しつつSCR触媒141による排気ガスEの浄化性能を維持できる。
【0031】
[実施形態の排気ガス浄化装置100の態様]
本発明を実施するに当たり、上記の実施形態は一例であり、具体的な態様を種々に変更して実施できる。
【0032】
排気ガス浄化装置100は、排気ガスEの流れが垂直方向(重力方向)に沿うように設けているが、排気ガスEの流れが水平方向に沿うように設けてもよい。
【符号の説明】
【0033】
100…排気ガス浄化装置、110…DOCユニット、111…酸化触媒、112…担体、120…第1EHCユニット、122…担体、123…第1ヒータ(加熱器)、124…第1温度センサー、130…尿素水供給ユニット、131…尿素インジェクター、132…ミキサー(拡散器)、140…第2EHCユニット、141…SCR触媒(選択還元型触媒)、142…担体、143…第2ヒータ(第二加熱器)、144…第2温度センサー、150…SDPFユニット、152…フィルタ、154…第3温度センサー、160…筐体ユニット、E…排気ガス、U…尿素水。
図1
図2
図3