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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電池パックの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20230523BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20230523BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019066179
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164020
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 毅
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-219037(JP,A)
【文献】特開2013-112123(JP,A)
【文献】特開2017-24481(JP,A)
【文献】特開2005-247063(JP,A)
【文献】特開2012-96587(JP,A)
【文献】特開2013-136308(JP,A)
【文献】特表2013-541452(JP,A)
【文献】特開2013-109845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0136863(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102012015919(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
H01M 50/20- 50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向両側に車両前後方向に沿って設けられる一対のサイドメンバと、
前記一対のサイドメンバの上に架け渡され、車両の荷室の底面を構成するフロアパネルと、
前記フロアパネルの上に、その長手方向が車両幅方向に沿うように設置される電池パックと、
前記電池パックの長手方向に延び、前記電池パックの下面に接合されるとともに、前記一対のサイドメンバの一方の上で一端部が前記フロアパネルに固定され、他方の上で他端部が前記フロアパネルに固定されるブラケットと、
を備え、
前記ブラケットは、前記一端部と前記他端部にそれぞれ、車両幅方向外側に向かって車両前後方向に二股に分かれる一対の脚部を有し、
前記一対の脚部が前記フロアパネルに固定されること
を特徴とする電池パックの取付構造。
【請求項2】
前記ブラケットは、
二股に分かれる一対の脚部の根元に、車両の幅方向内側にくぼむ外側凹部を有すること
を特徴とする請求項1に記載の電池パックの取付構造。
【請求項3】
前記外側凹部は、前記電池パックの短手方向中央域で互いに対向して設けられていること
を特徴とする請求項2に記載の電池パックの取付構造。
【請求項4】
前記ブラケットは、
前記一対の脚部の両縁に、前記一対の脚部の外側に延びるフランジを有すること
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電池パックの取付構造。
【請求項5】
前記ブラケットは、
前記一対の脚部のそれぞれの車幅方向内側に、車両の幅方向外側にくぼむ内側凹部を有すること
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電池パックの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両の車室内に搭載された高電圧部品パックが開示されている。かかる高電圧部品パックは、フロアパネルに設けられた収納凹部に収納され、車両前後方向に間隔を開けて配置された一対のブラケットによって、車幅方向両側に設置されたサイドメンバの一方に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-177943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する高電圧部品パックは、車体の側突時にサイドメンバが内側に変形した場合に、高電圧部品パックは、変形したサイドメンバによって押されて潰れる虞がある。
【0005】
しかしながら、高電圧部品パックが大容量の電池パックである場合には、大容量の電池パックが変形したサイドメンバによって押されて潰れると、電池から電解液が漏れたり、電池又は電気回路が短絡したりする可能性があり、安全性の観点で改善の余地があると考えられる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、車両の側突時におけるサイドメンバの内側への変形を抑制できる電池パックの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る電池パックの取付構造は、車両幅方向両側に車両前後方向に沿って設けられる一対のサイドメンバと、前記一対のサイドメンバの上に架け渡され、車室の荷室の底面を構成するフロアパネルと、前記フロアパネルの上に、その長手方向が車両幅方向に沿うように設置される電池パックと、前記電池パックの長手方向に延び、前記電池パックの下面に接合されるとともに、前記一対のサイドメンバの上で一端部と他端部がそれぞれ前記フロアパネルに固定されるブラケットと、を備え、前記ブラケットは、前記一端部と前記他端部にそれぞれ、車両前後方向に二股に分かれる一対の脚部を有し、前記一対の脚部が前記フロアパネルに固定される。
【0008】
上記(1)の構成によれば、車両の側突時の衝突荷重が一対の脚部に分散されるので、車両の変形量が低減され、サイドメンバの内側への変形を抑制できる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記ブラケットは、二股に分かれる一対の脚部の根元に、車両の幅方向内側にくぼむ外側凹部を有する。
【0010】
上記(2)の構成によれば、車両の側突時の衝突荷重が外側凹部で分散されるので、一対の脚部が裂けるのを抑制し、大きな衝突荷重を受けても変形を抑制できる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記外側凹部は、前記電池パックの短手方向中央域で互いに対向して設けられている。
【0012】
上記(3)の構成によれば、大きな衝突荷重を受け、車両の側突時の衝突荷重が一端部から他端部に伝わった場合でも他端部においても衝突荷重が一対の脚部に効率的に分散されるので、車両の大きな変形を抑制できる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)のいずれか一つの構成において、前記ブラケットは、前記一対の脚部の両縁に、外側に延びるフランジを有する。
【0014】
上記(4)の構成によれば、フランジによって脚部の剛性が高められ、大きな衝突荷重を受けても変形を抑制できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)から(4)のいずれか一つの構成において、前記ブラケットは、前記一対の脚部のそれぞれの車幅方向内側に、車両の幅方向外側にくぼむ内側凹部を有する。
【0016】
上記(5)の構成によれば、車両の側突時に凹部がきっかけとなり一対の脚部が折れ曲がり衝突荷重を吸収するので、衝突荷重を緩和できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、車両の側突時の衝突荷重が一対の脚部に分散されるので、車両の変形量が低減され、サイドメンバの内側への変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る電池パックの取付構造が採用される車両を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電池パックの取付構造を概略的に示す平面図である。
図3図2に示した電池パック2の取付構造を示すIII-III線断面図である。
図4図2に示した電池パック2の取付構造を示すIV-IV線断面図である。
図5図2に示したブラケットとフロアパネルとの関係を示す平面図である。
図6図5に示した第1のブラケットとフロアパネルとの関係を示す拡大斜視図である。
図7図6に示した第1のブラケットのVII-VII線端面図である。
図8図6に示した第1のブラケットのVIII-VIII線断面図である。
図9図6に示した第1のブラケットのIX-IX線断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る電池パックの取付構造が採用される車両が側面衝突された場合の車両の変形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1を概略的に示す図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、電池パック2が搭載される車両であって、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV,PHEV)等の電動車両である。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造を概略的に示す平面図である。図3は、図2に示した電池パック2の取付構造を示すIII-III線断面図であり、図4は、図2に示した電池パック2の取付構造を示すIV-IV線断面図である。図5は、図2に示した第1のブラケット31とフロアパネル12との関係を示す平面図である。図6は、図5に示した第1のブラケット31とフロアパネル12との関係を示す拡大斜視図である。図7は、図6に示した第1のブラケット31のVII-VII線端面図であり、図8は、図6に示した第1のブラケット31のVIII-VIII線断面図である。図9は、図6に示した第1のブラケット31のIX-IX線断面図である。
【0023】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、車両前後方向後側に電池パック2が搭載される車両であって、車両前後方向最も後側にリアバンパ(図示せず)を備えるとともに、リアバンパの前方、車両幅方向両側にタイヤホイールハウス14を備える。本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、例えば、車両前後方向において車室の後方に荷室が設けられ、荷室の車両幅方向両側にタイヤホイールハウス14が配置される。
【0024】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、フロアパネル12の上に電池パック2が設置される車両であって、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、上述したリアバンパ及びタイヤホイールハウス14のほかに、一対のサイドメンバ11(図3参照)及びフロアパネル12を備える。
【0025】
一対のサイドメンバ11は、車両1を構成する骨格部材であり、タイヤホイールハウス14の内側を車両前後方向に沿って設けられる。一対のサイドメンバ11は、それぞれ上面が開口した溝形の骨格部材であって、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより継ぎ目なく設けられる。一対のサイドメンバ11は、車両幅方向内側が下面から開口に向けて漸次拡開し、開口の車両幅方向内側の縁部に車両幅方向内側に向かって延びるフランジを有するとともに、開口の車両幅方向外側の縁部に上方に向かって延びるフランジを有する。
【0026】
フロアパネル12は、車両1の床を構成する床部材であり、上述した一対のサイドメンバ11の上に架け渡され、フロアパネル12の上方域に車室及び荷室を区画する。フロアパネル12は、一般に、複数のフロアパネルから構成され、車両前後方向の分割位置によってフロントフロアパネル(図示せず)、センターフロアパネル(図示せず)又はリアフロアパネル123に分類される。そして、センターフロアパネルは、車室の床面を構成し、リアフロアパネル123は、荷室の底面を構成する。これらのフロアパネルのそれぞれは、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより継ぎ目なく設けられる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1では、車両前後方向後側となるリアフロアパネル123の上に、その長手方向が車両幅方向に沿うように電池パック2が設置されるので、以下の説明では、リアフロアパネル123をフロアパネル123と総称する。
【0028】
フロアパネル123は、車両幅方向内側の大きな領域が下方にくぼんでおり(図3参照)、この下方にくぼんだ大きな領域の車両前後方向前側の領域が電池パック2の設置領域となる。また、フロアパネル123の電池パック2の設置領域に対応する車両幅方向両側の領域に一対のリンフォース(図示せず)が設置される。一対のリンフォースは、フロアパネル123を補強する部材であって、車両前後方向に沿って配置される。一対のリンフォースは、フロアパネルの下面に設置され、上述した一対のサイドメンバ11とフロアパネル123によって閉鎖される空間に収容される。
【0029】
また、図3に示すように、フロアパネル123は、車両幅方向両側の縁部のそれぞれに上方に向かって延びるフランジを有する。フロアパネル123の上方に向かって延びるフランジは、サイドメンバ11の上方に向かって延びるフランジにスポット溶接によって接合される。また、サイドメンバ11の車両幅方向内側に延びるフランジは、フロアパネル123にスポット溶接によって接合される。
【0030】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1では、センターフロアパネルとリアフロアパネル123の境界部分の上面にクロスメンバ16が設けられる。クロスメンバ16は、上述した一対のサイドメンバ11と同様に、車両1を構成する骨格部材であり、車両幅方向に沿って設けられる。クロスメンバ16は、下面が開口した溝形の骨格部材であって、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより継ぎ目なく設けられる。クロスメンバ16は、開口の車両前後方向前側の縁部に車両前後方向前側に向かって延びるフランジを有するとともに、開口の車両前後方向後側の縁部に車両前後方向後側に向かって延びるフランジを有する。クロスメンバ16の一端部は一対のサイドメンバ11の一方の上でフロアパネル123に固定され、クロスメンバ16の他端部は一対のサイドメンバ11の他方の上でフロアパネル123に固定される。そして、クロスメンバ16の車両前後方向前側に向かって延びるフランジはセンターフロアパネルにスポット溶接によって接合され、クロスメンバ16の車両前後方向後側に向かって延びるフランジはリアフロアパネル123にスポット溶接によって接合される。
【0031】
電池パック2は、トレイ21とカバー22で構成される容器に、複数の電池セルが一塊となった電池モジュール23とDC-DCコンバータ24等の高電圧部品を収容したものである。
【0032】
図3に示すように、トレイ21は、上面が開口した平面視略矩形の浅い箱状の容器である。トレイ21は、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより一様の厚みを有する。トレイ21の底面は、平面視略矩形であってその幅方向中央域が長手方向に沿って僅かに上方に盛り上がっている(図4参照)。トレイ21の側面は、トレイ21の下面から開口(上面)に向けて漸次(徐々に)拡開され、長手方向両側の外側側面及び幅方向両側の外側側面がそれぞれ傾斜している。また、トレイ21の開口の周りにはフランジ21Cが設けられている。フランジ21Cは、カバー22が接合される部分であり、開口(上面)の全周に亘り設けられている。フランジ21Cは、開口から外側に水平に張り出され、その上面に水平な接合面が設けられる。
【0033】
図4に示すように、トレイ21は、その内側に一対のインナーフレーム211を有する。一対のインナーフレーム211は、トレイ21の幅方向に対をなし、トレイ21の長手方向に沿って設置される。インナーフレーム211は、例えば、鋼板を折り曲げることにより一様の厚みを有する。インナーフレーム211は、トレイ21の底面に沿って設けられる底板部分と底板部分から斜めに延びてトレイ21の内側側面に沿って延びる側板部分とを有する。インナーフレーム211の底板部分は、トレイ21の底面において盛り上がったトレイ21の幅方向中央域と向かい合う位置に凹と凸が交互に連続する接合部分を有する。インナーフレーム211の底板部分は、接合部分の凹でトレイ21の底面において盛り上がったトレイ21の幅方向中央域にスポット溶接によって接合され、インナーフレーム211の側板部分はトレイ21の内側側面に設けられる傾斜面にスポット溶接によって接合される。
【0034】
カバー22は、トレイ21と略同じ大きさの容器であって、下面が開口した平面視略矩形の浅い箱状の容器である。カバー22は、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより一様の厚みを有する。カバー22の上面は、平面視略矩形であってその幅方向に沿って複数のビード(図2参照)を有している。カバー22の側面は、上面から開口(下面)に向けて漸次(徐々に)拡開され、長手方向両側の外側側面及び幅方向両側の外側側面が傾斜している。また、カバー22の開口の周りにはフランジ22Cが設けられている。フランジ22Cは、トレイ21に接合される部分であり、開口(下面)の全周に亘り設けられている。フランジ22Cは、開口から外側に水平に張り出され、その下面に水平な接合面が設けられる。
【0035】
例えば、カバー22は、カバー22のフランジ22Cに設けられた複数の穴をそれぞれ貫通するボルトをトレイ21のフランジ21Cの下面に設けられた複数のナット(ウエルドナット)に締結することによって、トレイ21に取り付けられる。
【0036】
図2に示すように、上述した電池パック2には、複数のブラケット31,32,33,34が接合される。
【0037】
複数のブラケットのうち第1のブラケット31は、トレイ21の長手方向に延び、トレイ21の下面及び両側の外側側面に接合される。第1のブラケット31は、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより一様の厚みを有する。
【0038】
図5に示すように、第1のブラケット31は、トレイ21の長手方向に延びる長尺なブラケットであって、一端部31Aと他端部31Bにそれぞれ、車両前後方向に二股に分かれる一対の脚部31AF,31AR,31BF,31BRを有する。第1のブラケット31は、一端部31Aと他端部31Bとの間(本体部分)でトレイ21の底面が盛り上がったトレイ21の幅方向中央域の下面及び両側の外側側面に沿って湾曲する(図3及び図4参照)。第1のブラケット31の本体部分(一端部31Aと他端部31Bとの間の部分)の横断面は、図4に示すように、大きなくぼみの中央に小さな突起を有する波形であって、大きなくぼみの両側に外側に延びるフランジを有する。
【0039】
図6に示すように、一対の脚部31AF,31AR(31BF,31BR)は、上方が開口した溝形(ハット形)であって、その底面に上方に盛り上がるビードを有し、開口の両側に外側に延びるフランジ31A1を有する。したがって、一対の脚部31AF,31AR(31BF,31BR)の横断面は、図7に示すように、溝の中央に小さな山形の突起を有し、更に、溝の両側に外側に延びるフランジ31A1,31A2を有する。
【0040】
また、二股に分かれる一対の脚部31AF,31AR(31BF,31BR)の根元に車両の幅方向内側に向かって互いに車幅方向で、電池パック2の短手方向中央域に沿って対向してくぼむ(外側)凹部31AM(31BM)を有する。(外側)凹部31AM(31BM)は、脚部31AF,31AR(31BF,31BR)の溝を形成する外側の壁と該壁からトレイ21の外側に延びるフランジ31A1とに亘り設けられ、図8に示すように、凹部31AMを囲むように壁31A3が設けられている。
【0041】
また、二股に分かれる一対の脚部31AF,31AR(31BF,31BR)のそれぞれのトレイ21の車両幅方向内側にトレイ21の車両幅方向外側に向かってくぼむ(内側)凹部31AF1,31AR1(31BF1,31BR1)を有する。(内側)凹部31AF1,31AR1(31BF1,31BR1)は、脚部31AF,31AR(31BF,31BR)の溝を形成する内側の壁と該壁から外側に延びるフランジ31A2とに亘り設けられ、図9に示すように、凹部31AF1,31AR1を囲むように壁31A4が設けられている。
【0042】
図2に示すように、第1のブラケット31の本体部分(一端部31Aと他端部31Bとの間の部分)は、トレイ21の底面が盛り上がったトレイ21の幅方向中央域の下面及び両側の側面に沿って設置され、第1のブラケット31のフランジはインナーフレーム211の底板部分とともにトレイ21にスポット溶接により接合される。また、第1のブラケット31のフランジはトレイ21の開口の周りに設けられたフランジ21Cにスポット溶接により接合される。
【0043】
複数のブラケットのうち第2のブラケット32と第3のブラケット33は、電池パック2をフロアパネル123の上に設置した場合に車両前後方向前側となる、トレイ21の幅方向一方側に間隔を開けて設置される。第2のブラケット32と第3のブラケット33は、トレイ21の幅方向に延び、トレイ21の幅方向一方側の外側側面に接合される。第2のブラケット32と第3のブラケット33は、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより一様の厚みを有する。第2のブラケット32と第3のブラケット33は、トレイ21の外側側面に沿って湾曲する。第2のブラケット32と第3のブラケット33の横断面は、大きなくぼみの中央に小さな突起を有する波形であって、大きなくぼみの両側に外側に延びるフランジを有する。第2のブラケット32と第3のブラケット33の一端部は、トレイ21の幅方向一方側に間隔を開けて設置され、トレイ21にスポット溶接により接合される。
【0044】
複数のブラケットのうち第4のブラケット34は、電池パック2をフロアパネル123の上に設置した場合に車両前後方向後側となる、トレイ21の幅方向他方側の中央に設置される。第4のブラケット34は、トレイ21の幅方向に延び、トレイ21の幅方向他方側の外側側面に接合される。第4のブラケット34は、例えば、プレス加工することにより一様の厚みを有する。第4のブラケット34は、トレイ21の外側側面に沿って上面が凹となるように湾曲する。第4のブラケット34の横断面は、大きなくぼみの中央に小さな突起を有する波形であって、大きなくぼみの両側に外側に延びるフランジを有する。第4のブラケット34の一端部は、トレイ21の幅方向他方側の略中央に設置され、トレイ21にスポット溶接により接合される。
【0045】
複数のブラケット31,32,33,34が接合された電池パック2(トレイ219)は、フロアパネル123の上に長手方向が車両幅方向に沿って設置される。フロアパネル123は、上述したように、車両幅方向内側の大きな領域が下方にくぼんでおり、電池パック2の下半部分(トレイ21の部分)がフロアパネル123の下方にくぼんだ領域の車両前後方向前側の領域(電池パック2の設置領域)に収容される(図4参照)。
【0046】
電池パック2(トレイ21)に接合された第1のブラケット31は、車両幅方向両側に配置されるタイヤホイールハウス14の内側において、一対のサイドメンバ11の上で一端部31Aに設けられた一対の脚部31AF,31ARと他端部31Bに設けられた31BF,31BRがそれぞれフロアパネル123に固定される。例えば、第1のブラケット31は、第1のブラケット31の一端部31Aの脚部31AF,31ARと他端部31Bの脚部31BF,31BRとに設けられた穴をそれぞれ貫通するボルトをフロアパネル123の下面に設けられたナット(ウエルドナット)に締結することによって、フロアパネル123に固定される。
【0047】
電池パック2(トレイ21)に接合された第2のブラケット32と第3のブラケット33の他端部は、クロスメンバ16に固定される。例えば、第2のブラケット32と第3のブラケット33の他端部は、第2のブラケット32と第3のブラケット33の他端部に設けられた穴をそれぞれ貫通するボルトをクロスメンバ16に設けられたネジ穴に締結することによって、クロスメンバ16に固定される。
【0048】
電池パック2(トレイ21)に接合された第4のブラケット34の他端部は、フロアパネル123に固定される。例えば、第4のブラケット34の他端部は、第4のブラケット34の他端部に設けられた穴を貫通するボルト341をフロアの下面に設けられたナット(ウエルドナット)342に締結することにより固定される。
【0049】
図10は、本発明の一実施形態に係る電池パックの取付構造が採用される車両が側面衝突された場合の車両の変形を示す図である。
【0050】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造は、上述したように、第1のブラケット31は、一端部31Aと他端部31Bにそれぞれ、車両前後方向に二股に分かれる一対の脚部31AF,31AR,31BF,31BRを有し、一対の脚部31AF,31AR,31BF,31BRがフロアパネル123に固定される。これにより、車両の側突時の衝突荷重が枝分かれしている一対の脚部が車両前後方向に広がることで分散されるので、車両の変形量が低減され、図10に示すように、サイドメンバ11の内側への変形を抑制でき、また電池パック2の変形量を軽減できる。
【0051】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造において、第1のブラケット31は、上述したように、二股に分かれる一対の脚部31AF,31AR,31BF,31BRの根元に、車両の幅方向内側にくぼむ(外側)凹部31AM,31BMを有する。これにより、図10に示すように、車両の側突時の衝突荷重が(外側)凹部31AM,31BMで効率的に分散されるので、一対の脚部が裂けるのを抑制し、大きな衝突荷重を受けても変形を抑制できる。
【0052】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造において、車両の幅方向内側にくぼむ(外側)凹部31AM,31BMは、電池パック2の短手方向中央域で互いに対向して設けられている。これにより、大きな衝突荷重を受け、車両の側突時の衝突荷重が一端部から他端部に伝わった場合でも他端部においても衝突荷重が一対の脚部に効率的に分散されるので、車両の大きな変形を抑制できる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造において、第1のブラケット31は、上述したように、一対の脚部31AF,31AR(31BF,31BR)の両縁に、外側に延びるフランジ31A1,31A2を有する。これにより、フランジによって脚部の剛性が高められ、図10に示すように、大きな衝突荷重を受けても変形を抑制できる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造において、第1のブラケット31は、上述したように、一対の脚部31AF,31AR,31BF,31BRのそれぞれの車幅方向内側に、車両の幅方向外側にくぼむ(内側)凹部31AF1,31AR1,31BF1,31BR1を有する。これにより、車両の側突時に(内側)凹部31AF1,31AR1,31BF1,31BR1がきっかけとなり、図10に示すように、一対の脚部31AF,31AR,31BF,31BRが折れ曲がり荷重を吸収するので、衝突荷重を緩和できる。
【0055】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
11 サイドメンバ
12 フロアパネル
123 リアフロアパネル(フロアパネル)
14 タイヤホイールハウス
16 クロスメンバ
2 電池パック
21 トレイ
21C フランジ
211 インナーフレーム
22 カバー
22C フランジ
23 電池モジュール
24 DC-DCコンバータ
31 第1のブラケット(ブラケット)
31A 一端部
31AF,31AR 脚部
31AM (外側)凹部
31AF1,31AR1 (内側)凹部
31A1,31A2 フランジ
31A3,31A4 壁
31B 他端部
31BF,31BR 脚部
31BM (外側)凹部
31BF1,31BR1 (内側)凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10