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特許7283205ロボットシステム、及び操作権限設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】ロボットシステム、及び操作権限設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20230523BHJP
   G05B 19/409 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/409 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019084120
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020179461
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】當眞 博太
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-44280(JP,A)
【文献】特許第5474765(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/22
B25J 13/06
G05B 19/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、
ユーザから前記ロボットの操作権限を取得するためのパスワードの入力及び前記ロボットを操作するための操作入力を受ける操作端末と、
複数の前記操作端末と通信可能に構成されて複数の前記操作端末のうち一の前記操作端末からの操作に基づき前記ロボットを駆動制御するロボットコントローラと、
を備え、
前記ロボットコントローラは、
前記操作端末に対して前記ロボットの操作権限を付与するための前記パスワードを記憶するパスワード記憶部と、
前記ロボットの操作権限をいずれの操作端末にも付与していない状態において最初に前記パスワード記憶部に記憶されている正しいパスワードが入力された一の操作端末に前記ロボットの操作権限を付与する操作権限付与処理部と、
前記操作権限を付与している前記操作端末との接続が切断されてその後一定期間回復しない場合、又は前記操作権限を付与している前記操作端末から操作権限を解放する操作が入力された場合に、前記操作端末に対する操作権限を解放する操作権限解放処理部と、
通信接続が確立した前記操作端末に対して前記パスワード記憶部に記録されている前記パスワードを送信するパスワード送信処理部と、
を有し、
前記操作端末は、
ユーザからの入力を受ける入力部と、
前記ロボットコントローラとの通信接続が確立した場合に当該ロボットコントローラに対し前記パスワード記憶部に記憶されているパスワードを要求するパスワード要求処理部と、
ユーザから前記入力部にパスワードが入力された場合に前記ロボットコントローラから受信したパスワードと前記入力部に入力されたパスワードとを照合するパスワード照合処理部と、
前記パスワード照合処理部における照合結果が一致していた場合に前記ロボットコントローラに前記ロボットの操作権限の付与を要求する操作権限要求処理部と、
を有し、
前記操作権限付与処理部は、前記操作権限要求処理部から前記操作権限の付与の要求があった場合に前記操作権限の付与の要求があった前記操作端末に前記操作権限を付与する、
ロボットシステム。
【請求項2】
前記ロボットコントローラは、
通信接続が確立した前記操作端末に対して前記操作権限の現在の付与状況を示す権限情報を送信する権限情報送信処理部を更に有し、
前記操作端末は、
ユーザに対し情報を表示する表示部と、
前記権限情報に基づく前記操作権限の付与状況が、いずれの操作端末にも未だ前記操作権限を付与していない場合には前記表示部にパスワードの入力画面を表示し、他の操作端末に既に前記操作権限を付与している場合には前記表示部に操作権限を付与しない旨を表示する表示処理部と、を更に有する、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記ロボットは、人との協働を前提とし、その動作環境に安全柵が不要となるように設計されたものである、
請求項1又は2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
操作端末に対してロボットの操作権限を付与するためのパスワードを記憶するパスワード記憶部を有し、複数の記操作端末と通信可能に構成されて複数の前記操作端末のうち一の前記操作端末からの操作に基づき前記ロボットを駆動制御するロボットコントローラ、において実行されるプログラムであって、
前記ロボットコントローラに、
前記ロボットの操作権限をいずれの操作端末にも付与していない状態において最初に前記パスワード記憶部に記憶されている正しいパスワードが入力された一の操作端末に前記ロボットの操作権限を付与する操作権限付与処理と、
前記操作権限を付与している前記操作端末との接続が切断されてその後一定期間回復しない場合、又は前記操作権限を付与している前記操作端末から操作権限を解放する操作が入力された場合に、前記操作端末に対する操作権限を解放する操作権限解放処理と、
通信接続が確立した前記操作端末に対して前記パスワード記憶部に記録されている前記パスワードを送信するパスワード送信処理と、
を実行させることができ、
前記操作端末に、
前記ロボットコントローラとの通信接続が確立した場合に当該ロボットコントローラに対し前記パスワード記憶部に記憶されているパスワードを要求するパスワード要求処理と、
ユーザから前記操作端末の入力部にパスワードが入力された場合に前記ロボットコントローラから受信したパスワードと前記入力部に入力されたパスワードとを照合するパスワード照合処理と、
前記パスワード照合処理における照合結果が一致していた場合に前記ロボットコントローラに前記ロボットの操作権限の付与を要求する操作権限要求処理と、
を実行させることができ、
前記操作権限付与処理は、前記ロボットコントローラから前記操作権限の付与の要求があった場合に前記操作権限の付与の要求があった前記操作端末に前記操作権限を付与する処理を含んでいる、
操作権限設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロボットシステム、及び操作権限設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
操作端末を用いてロボットを操作する際、ユーザから操作を受ける操作端末と操作の対象となるロボットとの関係は、1対1が基本である。これは、1台のロボットを複数の操作端末からの操作により同時に操作できるようにすると、複数の操作端末からの操作が混在してユーザの予期しない動作となる可能性があり危険だからである。このような問題は、ロボットの操作専用に構成されたいわゆるティーチングペンダントだけでなく、タブレット端末やスマートフォン等の市販の汎用品を操作端末として用いる場合にも同様である。
【0003】
従来技術として、操作に用いる操作端末を予めロボットコントローラに登録しておき、登録されていない操作端末とロボットコントローラとの通信接続を排除することで、ロボットコントローラと通信接続できる操作端末を限定し、これにより上記問題の解決を図ろうとするものがある。この場合、ユーザは、対象となる操作端末に固有のID情報、例えばIPアドレスやMACアドレス等を予めロボットコントローラに登録しておく。そして、ロボットコントローラは、操作端末から通信接続の要求があった場合に、予め登録された操作端末に対する通信接続は許可し、登録されていない操作端末に対する通信接続は拒否する。これにより、操作端末とロボットコントローラとの通信接続を1対1にすることができる。
【0004】
しかしながら、上記構成では、ID情報を登録した操作端末が例えば故障や紛失、若しくはバッテリが切れてしまって継続して使用できなくなり、代替の操作端末を用いてロボットの操作を行おうとした場合に、ユーザは、代替の操作端末のID情報をロボットコントローラに登録し直す必要がある。
【0005】
しかし、ロボットが例えば製造現場で使用されるものである場合、このような再登録の作業は現場の作業員には難しいこともあり、そのためロボットの管理者をわざわざ呼んで作業を行ってもらう必要があり、手間と時間を要する。しかしながら、生産現場等のように一刻も早い復旧が求められる現場では、一刻も早く代替の操作端末を使用できるようにすることが求められる。また、ロボットが例えば家庭等で使用されるものである場合、上述したような再登録の作業は、ロボットの使用に不慣れな一般ユーザには難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットと操作端末との1対1の関係を確保しつつ、操作権限を有する操作端末の切り替えを簡単に行うことができるロボットシステム、及び操作権限設定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本構成のロボットシステムは、ロボットと、ユーザから前記ロボットの操作権限を取得するためのパスワードの入力及び前記ロボットを操作するための操作入力を受ける操作端末と、複数の前記操作端末と通信可能に構成されて複数の前記操作端末のうち一の前記操作端末からの操作に基づき前記ロボットを駆動制御するロボットコントローラと、を備える。前記ロボットコントローラは、前記操作端末に対して前記ロボットの操作権限を付与するための前記パスワードを記憶するパスワード記憶部と、前記ロボットの操作権限をいずれの操作端末にも付与していない状態において最初に前記パスワード記憶部に記憶されている正しいパスワードが入力された一の操作端末に前記ロボットの操作権限を付与する操作権限付与処理部と、を有する。
【0009】
これによれば、ロボットコントローラは、ロボットの操作権限をいずれの操作端末にも付与していない状態において最初に正しいパスワードが入力された一の操作端末にロボットの操作権限を付与する。すなわち、ロボットコントローラは、最初に正しいパスワードが入力された一の操作端末のみに操作権限を付与するため、同時に複数の操作端末には操作権限を付与しない。これにより、ユーザから操作を受ける操作端末と操作の対象となるロボットとの関係を1対1の関係にすることができるため、複数の操作端末からの操作が混在してユーザの予期しない動作となることを防ぐことができ、安全性を確保することができる。
【0010】
更に、本構成によれば、ロボットコントローラは、正しいパスワードが入力された一の操作端末にロボットの操作権限を付与する。すなわち、ユーザが操作端末にパスワードを入力することによって、その操作端末はロボットの操作権限を取得することができる。これによれば、ユーザは、操作端末のID情報等をロボットコントローラに登録しなくても、パスワードを引き継ぐことで、操作権限を取得する操作端末を切り替えることができる。
【0011】
このように、本構成によれば、現在操作権限を有している操作端末が、例えば操作端末が例えば故障や紛失、若しくはバッテリが切れてしまって継続して使用できなくなり、代替の操作端末を用いてロボットの操作を行おうとした場合であっても、代替の操作端末のID情報をロボットコントローラに登録し直す等の作業を必要とせずに、操作端末側の操作だけで、すなわちロボットの管理者をわざわざ呼ばなくても現場の作業者だけで操作権限を有する操作端末の切り替えを素早く簡単に行うことができる。
【0012】
本構成のロボットシステムにおいて、前記操作端末は、ユーザからの入力を受ける入力部と、前記ロボットコントローラとの通信接続が確立した場合に当該ロボットコントローラに対し前記パスワード記憶部に記憶されているパスワードを要求するパスワード要求処理部と、ユーザから前記入力部にパスワードが入力された場合に前記ロボットコントローラから受信したパスワードと前記入力部に入力されたパスワードとを照合するパスワード照合処理部と、前記パスワード照合処理部における照合結果が一致していた場合に前記ロボットコントローラに前記ロボットの操作権限の付与を要求する操作権限要求処理部と、を有する。
【0013】
また、前記ロボットコントローラは、通信接続が確立した前記操作端末に対して前記パスワード記部に記録されている前記パスワードを送信するパスワード送信処理部、を更に有する。そして、前記操作権限付与処理部は、前記操作権限要求処理部から前記操作権限の付与の要求があった場合に前記操作権限の付与の要求があった前記操作端末に前記操作権限を付与する。
【0014】
これによれば、パスワードの照合を、ロボットコントローラではなく各操作端末が行う。そのため、ロボットコントローラに対して複数の操作端末から同時にアクセスがあった場合でも、ロボットコントローラは、各操作端末に入力されるパスワードを照合する必要がないため、ロボットコントローラの負荷を低減することができる。
【0015】
本構成のロボットシステムにおいて、前記操作端末は、ユーザからの入力を受ける入力部と、ユーザから前記入力部に入力があった場合にその入力情報を前記ロボットコントローラに送信する入力情報送信処理部と、を有する。また、前記ロボットコントローラは、前記操作端末から受信した前記入力情報と前記パスワード記憶部に記憶されているパスワードとを照合するパスワード照合処理部、を更に有する。そして、前記操作権限付与処理部は、前記パスワード照合処理部において前記操作端末から受信した前記入力情報と前記パスワード記憶部に記憶されているパスワードとが一致した場合に、前記入力情報を送信した前記操作端末に前記ロボットの操作権限を付与する。
【0016】
これによれば、パスワードの照合を、各操作端末ではなくロボットコントローラ自が行う。そのため、ロボットコントローラは、各操作端末に対してパスワードを送信する必要がない。したがって、パスワードがロボットコントローラの外部に漏れる可能性を極力低減することができ、その結果、高いセキュリティを確保することができる。
【0017】
(請求項4)
ここで、上述したように、例えば操作権限を有している操作端末が、故障やバッテリ切れ等によってロボットコントローラとの通信が切断されてしまうことも考えられる。この場合、その操作端末が有している操作権限がいつまでも解放されないと、代替の操作端末に操作権限を付与することができず、代替の操作端末に切り替えることができない。また、ユーザがロボットの操作を終了した場合には、操作権限を解放して素早く他の操作端末でロボットを操作できるようにする必要もある。
【0018】
そこで、本構成のロボットシステムにおいて、前記ロボットコントローラは、前記操作権限を付与している前記操作端末との接続が切断されてその後一定期間回復しない場合、又は前記操作権限を付与している前記操作端末から操作権限を解放する操作が入力された場合に、前記操作端末に対する操作権限を解放する操作権限解放処理部を更に有している。
【0019】
これによれば、操作権限を有している操作端末が、故障やバッテリ切れ等によってロボットコントローラとの通信が切断されてしまって一定期間以上回復しない場合や、ユーザの任意で、操作権限を解放することができる。これにより、ロボットコントローラは、他の操作端末に素早く操作権限を付与することができるようになる。
【0020】
本構成のロボットシステムにおいて、前記ロボットコントローラは、通信接続が確立した前記操作端末に対して前記操作権限の現在の付与状況を示す権限情報を送信する権限情報送信処理部を更に有する。また、前記操作端末は、ユーザに対し情報を表示する表示部と、前記権限情報に基づく前記操作権限の付与状況が、いずれの操作端末にも未だ前記操作権限を付与していない場合には前記表示部にパスワードの入力画面を表示し、他の操作端末に既に前記操作権限を付与している場合には前記表示部に操作権限を付与しない旨を表示する表示処理部と、を更に有している。
【0021】
これによれば、ロボットコントローラは、ある操作装置に既に操作権限を付与している場合には他の操作端末に対して重ねて操作権限を付与しないように構成される。そして、ユーザは、表示部に表示された内容から、ロボットの現在の操作権限の状況を把握することができ、その結果、ユーザの利便性の向上が図られる。
【0022】
本構成のロボットシステムにおいて、前記ロボットは、人との協働を前提とし、その動作環境に安全柵が不要となるように設計されたものである。このようなロボットは、ロボットの使用に慣れている従来の生産現場等だけでなく、ロボットの使用に慣れていない非製造業の企業や一般家庭での使用も想定される。これに対し、本構成のロボットシステムは、上述したようにロボットコントローラに操作装置のID情報等を登録することなく、操作権限を有する操作端末の切り替えを簡単に行うことができる。したがって、ロボットの使用に慣れていない非製造業の企業や一般家庭のユーザでも簡単に利用することができる。
【0023】
本構成の操作権限設定プログラムは、上記のロボットシステムを実現するためのものである。すなわち、本構成の操作権限設定プログラムを、既存のロボットコントローラ及び既存の操作端末にインストールして実行させることで、既存のロボットコントローラ及び既存の操作端末を上記のロボットシステムとして構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1施形態によるロボットシステムの構成の一例を概念的に示すブロック図
図2】第1施形態によるロボットシステムの制御フローの一例を示すフローチャート(その1)
図3】第1施形態によるロボットシステムの制御フローの一例を示すフローチャート(その2)
図4】第1施形態によるロボットシステムの制御フローの一例を示すフローチャート(その3)
図5】第1施形態によるロボットシステムについて、操作端末の表示部に表示される内容の一例を示す図(その1)
図6】第1施形態によるロボットシステムについて、操作端末の表示部に表示される内容の一例を示す図(その2)
図7】第1施形態によるロボットシステムについて、操作端末の表示部に表示される内容の一例を示す図(その3)
図8】第1施形態によるロボットシステムについて、操作端末の表示部に表示される内容の一例を示す図(その4)
図9】第1施形態によるロボットシステムについて、操作端末の表示部に表示される内容の一例を示す図(その5)
図10】第1施形態によるロボットシステムについて、操作端末の表示部に表示される内容の一例を示す図(その6)
図11】第1施形態によるロボットシステムについて、操作端末の表示部に表示される内容の一例を示す図(その7)
図12】第2施形態によるロボットシステムの構成の一例を概念的に示すブロック図
図13】第2施形態によるロボットシステムの制御フローの一例を示すフローチャート(その1)
図14】第2施形態によるロボットシステムの制御フローの一例を示すフローチャート(その
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に共通する部位には同一符号を付して説明する。
【0026】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1図11を参照しながら説明する。第1実施形態のロボットシステム1は、図1に示すように、ロボット10、ロボットコントローラ20、アクセスポイント30、及び操作端末40を備えて構成されている。
【0027】
ロボット10は、例えば複数の駆動軸を有する多関節ロボットである。本実施形態の場合、ロボット10は、例えば人が一人で持ち運ぶことができる程度に小型及び軽量のものであり、例えば6つの可動軸を有する多関節ロボットである。すなわち、本実施形態のロボット10は、可搬型の小型ロボットである。また、この場合、ロボット10は、例えば人との協働を前提としており、その動作環境に安全柵が不要となるように設計されている。ロボット10は、例えばロボットコントローラ20を内蔵しており、全体の重量が約4kg、可搬重量が約500g程度に設定されている。
【0028】
なお、ロボット10は、上述した可搬型の小型ロボットに限らない。例えばロボット10は、持ち運びを前提としない設置型のロボットでも良く、また、安全柵の設置を前提とするロボットでも良い。また、ロボット10は、ロボットコントローラ20を内蔵しない構成であっても良い。
【0029】
ロボットコントローラ20は、図示しない制御回路やサーボ制御部、電源装置等を備えている。ロボットコントローラ20は、予め記憶された動作プログラムや操作端末40により設定された教示データ等に従って各軸のサーボモータを制御することで、ロボット10の駆動を制御する。
【0030】
ロボットコントローラ20は、複数の操作端末40と同時に通信可能に構成されている。そして、ロボットコントローラ20は、通信可能に接続された複数の操作端末40のうち所定の条件を満たした一の操作端末40、すなわち正しいパスワードが入力された操作端末40にのみロボット10の操作権限を付与する。換言すれば、ロボットコントローラ20は、ロボット10の操作権限をいずれの操作端末40にも付与していない状態において、最初つまり最先に正しいパスワードが入力された操作端末40に対してロボット10の操作権限を付与する。そして、ロボットコントローラ20は、操作権限を付与した一の操作端末40からの操作に基づいて、ロボット10を駆動制御することができる。
【0031】
具体的には、ロボットコントローラ20は、制御部21、通信インタフェース22、パスワード記憶部23、パスワード送信処理部24、権限情報送信処理部25、操作権限付与処理部26、及び操作権限解放処理部27を有している。制御部21は、ロボットコントローラ20の制御を行う。制御部21は、例えばCPU211や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶領域212を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。通信インタフェース22及びパスワード記憶部23は、制御部21に電気的に接続されている。
【0032】
通信インタフェース22は、ロボットコントローラ20の外部の機器と直接又は間接的に、有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。本実施形態の場合、通信インタフェース22は、アクセスポイント30に有線接続されており、アクセスポイント30を介して外部の機器である操作端末40と無線通信可能に接続される。なお、アクセスポイント30は、ロボットコントローラ20に内蔵されていても良い。また、通信インタフェース22は、操作端末40と有線接続される構成であっても良い。また、アクセスポイント30は、無線又は有線LANにより、操作端末40と通信可能に接続されても良いし、インターネットや電話回線を介して操作端末40と通信可能に接続されても良い。
【0033】
パスワード記憶部23は、通信接続されている複数の操作端末40のうち一の操作端末40に対してロボット10の操作権限を付与するためのパスワードを記憶する。パスワード記憶部23は、記憶領域212の一部の領域を使用しても良いし、記憶領域212とは別の記憶領域で構成しても良い。パスワードは、例えば文字や数字や記号で構成されている。
【0034】
パスワードは、製造メーカーおいて予め設定された値であって、ロボット10に固有でかつ書き換え不可能に構成することができる。また、パスワードは、ユーザの任意で設定可能つまり書き換え可能に構成しても良い。この場合、パスワードは、必ずしもロボット10に固有である必要はなく、複数のロボット10が同一のパスワードを有することは妨げられない。本実施形態の場合、パスワードは、ロボット10のIPアドレスやMACアドレスとは異なる値であっても良く、そのロボット10固有の値に設定することができる。また、パスワードは、必ずしも秘密状態に管理する必要はなく、例えばロボット10やロボットコントローラ20の筐体表面に表示してあっても良い。
【0035】
制御部21の記憶領域212は、操作端末40にロボット10の操作権限を付与するための操作権限付与プログラムを記憶している。なお、操作権限付与プログラムは、例えばインターネット等の電気通信回線を介してメーカーのサーバーからアプリとしてダウンロードし、このアプリをロボットコントローラ20にインストールすることで随時追加できる構成であっても良い。
【0036】
制御部21は、CPU211において操作権限付与プログラムを実行することにより、パスワード送信処理部24、権限情報送信処理部25、操作権限付与処理部26、及び操作権限解放処理部27をソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、パスワード送信処理部24、権限情報送信処理部25、操作権限付与処理部26、及び操作権限解放処理部27は、例えば制御部21と一体の集積回路としてハードウェア的に実現してもよい。
【0037】
パスワード送信処理部24は、パスワード送信処理を実行する。パスワード送信処理は、通信接続が確立した操作端末40に対してパスワード記部23に記録されているパスワードを送信する処理を含む。本実施形態の場合、ロボットコントローラ20に複数の操作端末40が接続された場合、パスワード送信処理部24は、接続された全ての操作端末40にパスワードを暗号化して送信する。この場合、操作端末40は、受信したパスワードを表示等することなくユーザに認知させないようにする。
【0038】
権限情報送信処理部25は、権限情報送信処理を実行する。権限情報送信処理は、操作端末40からの要求に応じて、ロボット10の操作権限の現在の付与状況を示す権限情報を送信する処理を含む。この場合、操作権限の現在の付与状況を示す権限情報とは、ロボットコントローラ20が既に他の操作端末40にロボット10の操作権限を付与しているか、または、未だ、いずれの操作端末40にもロボット10の操作権限を付与していないか、を示す情報である。
【0039】
操作権限付与処理部26は、操作権限付与処理を実行する。操作権限付与処理は、ロボットコントローラ20との通信接続が確立している一又は複数の操作端末40のうち、パスワード記憶部23に記憶されている正しいパスワードが入力された一の操作端末40にロボット10の操作権限を付与する処理を含む。
【0040】
この場合、操作端末40は、ロボットコントローラ20が他の操作端末40に未だ操作権限を付与しておらず、かつ操作端末40にユーザから正しいパスワードの入力があった場合には、ロボットコントローラ20に対して操作権限の付与を要求する。そして、操作権限付与処理部26は、操作端末40から操作権限の付与の要求があった場合に、その操作権限の付与の要求があった操作端末40に対してロボット10の操作権限を付与する処理を実行する。
【0041】
操作権限解放処理部27は、操作権限解放処理を実行する。操作権限解放処理は、操作権限を付与している操作端末40との接続が切断されてその後一定期間回復しない場合、又は操作権限を付与している操作端末40から操作権限を解放する操作が入力された場合に、操作端末40に対する操作権限を解放する処理を含む。
【0042】
操作端末40は、ロボットコントローラ20に対してロボット10を操作するためのものであり、ロボットの操作専用に構成されたいわゆるティーチングペンダントだけでなく、タブレット端末やスマートフォン等の市販の汎用品を用いることができる。操作端末40は、端末制御部41、入力部42、表示部43、通信インタフェース44、パスワード要求処理部45、権限情報要求処理部46、表示処理部47、パスワード照合処理部48、及び操作権限要求処理部49を有している。
【0043】
端末制御部41は、操作端末40の制御を行う。端末制御部41は、例えばCPU411や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶領域412を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。入力部42、表示部43、及び通信インタフェース44は、端末制御部41に電気的に接続されている。
【0044】
入力部42は、ユーザの入力操作を受け付けるためのものである。入力部42は、例えばユーザのタッチ操作による入力を受け付けるタッチパネルで構成されている。表示部43は、例えば液晶パネルや有機ELパネルであって、各種情報を表示する。この場合、入力部42及び表示部43は、重ねて配置されており、これによりタッチパネルディスプレイを構成する。なお、入力部42は、物理的なボタンを有する構成であっても良い。
【0045】
通信インタフェース44は、操作端末40の外部の機器と直接又は間接的に、有線又は無線通信を行うためのインタフェースである。本実施形態の場合、操作端末40の通信インタフェース44は、アクセスポイント30に無線接続され、これにより、アクセスポイント30を介してロボットコントローラ20の通信インタフェース22に通信可能に接続される。
【0046】
また、端末制御部41の記憶領域412は、ロボットコントローラ20からロボット10の操作権限を取得するための操作権限取得プログラムを記憶している。操作権限取得プログラムは、ロボットコントローラ20の記憶領域212に記憶されている操作権限付与プログラムに対応しており、操作権限付与プログラムと共に操作権限設定プログラムを構成する。ロボットコントローラ20の制御部21で操作権限付与プログラムが実行され、操作端末40の端末制御部41で操作権限取得プログラムが実行されることにより、ロボットコントローラ20と操作端末40とが協働し、これにより操作端末40にロボット10の操作権限を付与するための処理が実行される。
【0047】
操作権限取得プログラムは、例えば端末制御部41の記憶領域412に予め記憶されていても良い。また、操作権限取得プログラムは、例えばインターネット等の電気通信回線を介してメーカーのサーバーからアプリとしてダウンロードし、このアプリを端末制御部41にインストールすることで随時追加できる構成であっても良い。
【0048】
端末制御部41は、CPU411において操作権限取得プログラムを実行することにより、パスワード要求処理部45、権限情報要求処理部46、表示処理部47、パスワード照合処理部48、及び操作権限要求処理部49をソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、操作端末40がロボットの操作専用に構成されたいわゆるティーチングペンダント等である場合には、パスワード要求処理部45、権限情報要求処理部46、表示処理部47、パスワード照合処理部48、及び操作権限要求処理部49は、例えば端末制御部41と一体の集積回路としてハードウェア的に実現しても良い。
【0049】
パスワード要求処理部45は、パスワード要求処理を実行する。パスワード要求処理は、操作端末40とロボットコントローラ20との通信接続が確立した場合に、通信接続が確立したロボットコントローラ20に対して、パスワード記憶部23に記憶されているパスワードを要求する処理を含む。ロボットコントローラ20のパスワード送信処理部24は、操作端末40のパスワード要求処理部45から要求があった場合に、上述したパスワード送信処理を実行する。これにより、パスワード記憶部23に記憶されているパスワードは、通信接続が確立された操作端末40に送信される。
【0050】
権限情報要求処理部46は、権限情報要求処理を実行する。権限情報要求処理は、通信接続が確立したロボットコントローラ20に対して、そのロボットコントローラ20における、ロボット10の操作権限の現在の付与状況を要求する処理を含む。ロボットコントローラ20は、操作端末40から権限情報の要求があると、当該ロボットコントローラ20の現在の操作権限の付与状況を示す権限情報を送信する。
【0051】
表示処理部47は、表示部43を制御して各種情報を表示部43に表示させる表示処理を実行する。表示処理は、ロボットコントローラ20に複数の操作端末40が接続されている場合において、いずれの操作端末40にも未だロボット10の操作権限を付与していない場合には、表示部43に、図7に示すようなパスワードの入力画面を表示する処理を含む。また、表示処理は、ロボットコントローラ20に複数の操作端末40が接続されている場合において、他の操作端末40に既に操作権限を付与している場合には、表示部43に、図6に示すような操作権限を付与しない旨を表示する処理を含む。
【0052】
パスワード照合処理部48は、パスワード照合処理を実行する。パスワード照合処理は、表示部43に図7に示すパスワードの入力画面が表示されている場合において、ユーザから入力部42にパスワードが入力された場合に、パスワード要求処理によってロボットコントローラ20から送信されたパスワードと、ユーザによって入力部42に入力されたパスワードとを照合し、両者が一致しているか否かを判断する処理を含む。
【0053】
操作権限要求処理部49は、操作権限要求処理を実行する。操作権限要求処理は、パスワード照合処理部48の結果が一致していた場合、つまり、パスワード要求処理によってロボットコントローラ20から送信されたパスワードと、ユーザによって入力部42に入力されたパスワードとが一致していた場合に、ロボットコントローラ20に対してロボット10の操作権限の付与を要求する処理を含む。これにより、ロボットコントローラ20は、操作端末40の操作権限要求処理部49から操作権限付与の要求があると、操作権限付与処理部26の作用により、その操作端末40にロボット10の操作権限を付与する。
【0054】
一方、パスワード照合処理部48の結果が一致しない場合、つまり、パスワード要求処理によってロボットコントローラ20から送信されたパスワードと、ユーザによって入力部42に入力されたパスワードとが不一致である場合には、操作端末40は、ロボットコントローラ20に対してロボット10の操作権限の付与を要求しない。このため、この場合、操作端末40にはロボット10の操作権限が付与されない。
【0055】
次に、図2図11も参照して、ロボットシステム1において行われる制御内容について、ユーザが行う操作を含めて説明する。なお、この場合、ロボットコントローラ20及び操作端末40の電源は予め入っているものとする。また、ロボットコントローラ20は、操作権限付与プログラムが起動している状態であるものとする。
【0056】
まず、ユーザは、図2のステップS11において、表示部43に表示されたアプリのアイコンをタッチするなどしてアプリの起動操作を行う。すると、ステップS12において操作端末40の端末制御部41は、記憶領域412に記憶されている操作権限取得プログラムをCPU411において実行し、これにより操作権限を取得するためのアプリが起動する。
【0057】
端末制御部41は、操作権限を取得するためのアプリを起動すると、ステップS13において、表示処理部47の処理により、接続先のロボットの情報を入力するための画面(以下、接続先入力画面51と称する)を表示部43に表示させる。図5は、表示部43に表示される接続先入力画面51の一例である。この場合、表示部43には、例えば通信接続可能なロボット、すなわち接続先の候補となるロボットの名称やそのロボットのIPアドレス等の情報511~513が一覧として表示される。
【0058】
表示部43に接続先入力画面51が表示されると、ユーザは、図2のステップS14において、操作端末40の入力部42を操作して接続先の情報を入力する。この場合、表示部43には、例えば通信接続可能なロボット10の名称やIPアドレス等の情報511~513が一覧として表示され、ユーザは、その一覧の中から希望する接続先をタッチして選択する。この場合、操作端末40と通信接続可能なロボット10とは、例えば操作端末40と無線通信可能な領域内に存在する全てのロボット10としても良いし、予め操作端末40に登録された特定のロボット10としても良い。なお、接続先の候補となるロボットの情報を一覧として表示し選択させる構成に限らず、ロボットの名称とIPアドレスを直接入力し指定するようにしても良い。
【0059】
操作端末40の入力部42に接続先が入力されると、操作端末40は、図2のステップS15において、接続要求処理を実行する。接続要求処理は、操作端末40からロボットコントローラ20に対して通信接続の確立を要求する処理である。ロボットコントローラ20は、操作端末40からの接続要求を受けると、ステップS16において接続処理を実行し、これにより操作端末40との通信接続を確立する。
【0060】
操作端末40とロボットコントローラ20との通信接続が確立すると、操作端末40は、ステップS17において、パスワード要求処理及び権限情報要求処理を実行し、ロボットコントローラ20に対して、当該ロボットコントローラ20に設定されたパスワード及び現在の操作権限の付与状況の送信を要求する。ロボットコントローラ20は、操作端末40からの要求を受けると、ステップS18において、パスワード送信処理及び権限情報送信処理を実行する。これにより、ロボットコントローラ20は、パスワード記憶部23に記憶されているパスワードと、現在の操作権限の付与状況を示す権限情報とを、操作端末40に送信する。
【0061】
次に、操作端末40は、ステップS19において、ロボットコントローラ20から送信された操作権限の付与状況を判断する。そして、操作端末40は、ロボットコントローラ20が自己以外の他の操作端末40に既に操作権限が付与されている場合には(ステップS19でYES)、ステップS20へ処理を移行させる。そして、操作端末40は、ステップS20において表示処理を実行し、例えば図6に示すように、操作権限の付与が不可能である旨を示す表示(以下、操作権限付与不可表示52と称する)を表示部43に表示させる。そして、操作端末40は、ステップS13へ処理を戻し、再度、接続先入力画面51を表示部43に表示させる。
【0062】
一方、未だいずれの操作端末40にも操作権限を付与されていない場合(ステップS19でNO)、操作端末40は、図3に示すステップS21へ処理を移行させる。そして、操作端末40は、ステップS21において、表示処理部47の処理により、例えば図7に示すように、パスワードの入力を受け付けるための画面(以下、パスワード入力画面53と称する)を表示部43に表示させる。
【0063】
次に、図3のステップS22においてユーザが入力部42を操作してパスワードを入力すると、操作端末40は、ステップS23においてパスワード照合処理部48の作用によりパスワード照合処理を実行する。ユーザが入力したパスワードがロボットコントローラ20から送信されたパスワードと一致していない場合、すなわちユーザが入力したパスワードが誤ったものである場合(ステップS23でNO)、操作端末40は、ステップS24へ処理を移行させる。
【0064】
ステップS24において、操作端末40は、表示処理を実行し、例えば図8に示すようにパスワードが一致しない旨を示す表示であるパスワード不一致表示54を表示部43に表示させる。その後、操作端末40は、図3に示すステップS21に処理を戻し、パスワード入力画面53を表示部43に再度表示させる。
【0065】
一方、ユーザが入力したパスワードがロボットコントローラ20から送信されたパスワードと一致していた場合、すなわちユーザが入力したパスワードが正しいものである場合(図3のステップS23でYES)、操作端末40は、ステップS25へ処理を移行させる。そして、ステップS25において、操作端末40は、操作権限要求処理を実行し、ロボットコントローラ20に対してロボット10の操作権限の付与を要求する。
【0066】
ロボットコントローラ20は、操作端末40から操作権限の付与の要求があると、ステップS26において、操作権限付与処理を実行する。これにより、ロボットコントローラ20は、ロボットコントローラ20に通信接続されている複数の操作端末40のうち、操作権限の付与の要求があった一の操作端末40に対して、ロボット10の操作権限を付与する。
【0067】
操作端末40は、ロボットコントローラ20からロボット10の操作権限を取得すると、ステップS27において表示処理を実行する。この場合、操作端末40は、表示処理部47の作用により、例えば図9に示すような、操作権限を付与した旨を示す表示である操作権限付与表示55を表示部43に表示させる。その後、操作端末40は、ステップS28へ処理を移行し、例えば図10に示すような操作画面56を表示部43に表示させて、ユーザからのロボット10の操作入力の受け付けを開始する。
【0068】
この場合、操作端末40は、図10に示すように、ロボット10を操作するための操作画面56と共に、ロボット10の権限を解放するための操作権限解放ボタン57を、同一画面上に同時に表示させる。ユーザは、操作権限解放ボタン57をタッチ操作することで、操作端末40に付与されているロボット10の操作権限を解放することができる。操作権限が解放されると、ロボットコントローラ20は、図2及び図3に示した制御内容に従って、再度、操作端末40に対してロボット10の操作権限を付与できるようになる。
【0069】
すなわち、操作端末40は、ロボット10の操作権限を取得してロボット10の操作が可能になると、図4のステップS29示すように、ユーザからの操作権限の解放操作の入力つまり図10の操作権限解放ボタン57がタッチ操作されたか否かを判断する。ユーザによる操作権限解放入力があった場合、すなわち操作権限解放ボタン57に対してタッチ操作が行われた場合(ステップS30でYES)、操作端末40は、ステップS31へ処理を移行させる。
【0070】
そして、操作端末40は、ステップS31において、解放信号送信処理を実行する。解放信号送信処理は、ロボットコントローラ20に対して、操作端末40が現在有している操作権限の解放を要求する信号である。ロボットコントローラ20は、操作端末40から送信された操作権限解放信号を受信すると、ステップS32において操作権限解放処理を実行し、操作端末40に付与していたロボット10の操作権限を解放する。これにより、他の操作端末40にも操作権限を付与できようになる。
【0071】
そして、操作端末40は、ステップS33において表示処理を実行し、図11に示すように、操作権限を解放した旨を示す表示である操作権限解放表示58を表示部43に表示させる。そして、操作端末40は、図2のステップS13に処理を戻す。
【0072】
また、操作端末40が操作権限を保有し、図10に示す操作画面56が表示部43に表示されている場合において、ユーザによる操作権限解放入力がない場合、すなわち操作権限解放ボタン57に対してタッチ操作が行われていない場合(ステップS30でNO)、ロボットコントローラ20は、図4のステップS34の処理を実行する。
【0073】
この場合、ロボットコントローラ20は、操作権限を付与した操作端末40との通信接続が維持されているか否かを判断する。操作端末40との通信接続が維持されている場合、つまり一定期間以上の通信接続の切断が無い場合(ステップS34でNO)、ロボットコントローラ20は、操作端末40に対して操作権限を付与した状態を維持する。
【0074】
一方、操作端末40との通信接続が維持できなかった場合、つまり一定期間以上の通信接続の切断が有った場合(ステップS34でYES)、ロボットコントローラ20は、ステップS35おいて操作権限解放処理を実行し、操作端末40に付与していたロボット10の操作権限を解放する。これにより、他の操作端末40に対して図2のステップS13以降の処理を実行可能にし、他の操作端末40にも操作権限を付与できようになる。
【0075】
以上説明した実施形態によれば、ロボットシステム1は、ロボット10と、操作端末40と、ロボットコントローラ20と、を備える。操作端末40は、ユーザからロボット10の操作権限を取得するためのパスワードの入力及びロボット10を操作するための操作入力を受けることができる。ロボットコントローラ20は、複数の操作端末40と通信可能に構成されて複数の操作端末40のうち一の操作端末40からの操作に基づきロボット10を駆動制御することができる。
【0076】
そして、ロボットコントローラ20は、パスワード記憶部23と、操作権限付与処理部26と、を有する。パスワード記憶部23は、操作端末40に対してロボット10の操作権限を付与するためのパスワードを記憶する。操作権限付与処理部26は、ロボットコントローラ20との通信接続が確立している一又は複数の操作端末40のうちパスワード記憶部23に記憶されている正しいパスワードが入力された一の操作端末40にロボット10の操作権限を付与する。
【0077】
これによれば、ロボットコントローラ20は、正しいパスワードが入力された一の操作端末40にロボット10の操作権限を付与する。すなわち、ロボットコントローラ20は、正しいパスワードが入力された一の操作端末40に操作権限を付与するため、同時に複数の操作端末40には操作権限を付与しない。これにより、ユーザから操作を受ける操作端末40と操作の対象となるロボット10との関係を1対1の関係にすることができるため、複数の操作端末40からの操作入力が混在してユーザの予期しない動作となることを防ぐことができ、安全性を確保することができる。
【0078】
更に、本実施形態によれば、ロボットコントローラ20は、正しいパスワードが入力された一の操作端末40にロボット10の操作権限を付与する。すなわち、ユーザが操作端末40にパスワードを入力することによって、その操作端末40はロボット10の操作権限を取得することができる。これによれば、ユーザは、操作端末40のID情報等をロボットコントローラ20に登録しなくても、パスワードを引き継ぐことで、操作権限を取得する操作端末40を切り替えることができる。
【0079】
このように、本実施形態によれば、現在操作権限を有している操作端末40が、例えば操作端末40が例えば故障や紛失、若しくはバッテリが切れてしまって継続して使用できなくなり、代替の操作端末40を用いてロボット10の操作を行おうとした場合であっても、代替の操作端末40のID情報をロボットコントローラ20に登録し直す等の作業を必要とせずに、操作権限を有する操作端末40の切り替えを素早く簡単に行うことができる。
【0080】
操作端末40は、入力部42と、パスワード要求処理部45と、パスワード照合処理部48と、操作権限要求処理部49と、を有している。入力部42は、ユーザからの入力を受ける。パスワード要求処理部45は、ロボットコントローラ20との通信接続が確立した場合に当該ロボットコントローラ20に対しパスワード記憶部23に記憶されているパスワードを要求する処理を実行する。パスワード照合処理部48は、ユーザから入力部42にパスワードが入力された場合にロボットコントローラ20から受信したパスワードと入力部42に入力されたパスワードとを照合する処理を実行する。操作権限要求処理部49は、パスワード照合処理部48における照合結果が一致していた場合にロボットコントローラ20にロボット10の操作権限の付与を要求する処理を実行する。
【0081】
また、ロボットコンローラ20は、パスワード送信処理部24を更に有している。パスワード送信処理部24は、通信接続が確立した操作端末40に対してパスワード記部23に記録されているパスワードを送信する処理を実行する。そして、操作権限付与処理部26は、操作権限要求処理部49から操作権限の付与の要求があった場合に操作権限の付与の要求があった操作端末40に操作権限を付与する。
【0082】
これによれば、パスワードの照合を、ロボットコントローラ20ではなく各操作端末40が行う。そのため、ロボットコントローラ20に対して複数の操作端末40から同時にアクセスがあった場合でも、ロボットコントローラ20は、各操作端末40に入力されるパスワードを照合する必要がないため、ロボットコントローラ20の負荷を低減することができる。
【0083】
ここで、例えば操作権限を有している操作端末40が、故障やバッテリ切れ等によってロボットコントローラ20との通信が切断されてしまうことも考えられる。この場合、その操作端末40が有している操作権限がいつまでも解放されないと、代替の操作端末40に操作権限を付与することができず、代替の操作端末40に切り替えることができない。
また、ユーザがロボット10の操作を終了した場合には、操作権限を解放して素早く他の操作端末40でロボット10を操作できるようにする必要もある。
【0084】
そこで、本実施形態のロボットコントローラ20は、操作権限解放処理部27を更に有している。操作権限解放処理部27は、操作権限を付与している操作端末40との接続が切断されてその後一定期間回復しない場合、又は操作権限を付与している操作端末40から操作権限を解放する操作が入力された場合に、操作端末40に対する操作権限を解放する処理を実行する。
【0085】
これによれば、操作権限を有している操作端末40が、故障やバッテリ切れ等によってロボットコントローラ20との通信が切断されてしまって一定期間以上回復しない場合や、ユーザの任意で、操作権限を解放することができる。これにより、ロボットコントローラ20は、他の操作端末40に素早く操作権限を付与することができるようになる。
【0086】
また、ロボットコントローラ20は、権限情報送信処理部25を更に有している。権限情報送信処理部25は、通信接続が確立した操作端末40に対して操作権限の現在の付与状況を示す権限情報を送信する処理を実行する。また、ユーザに対し情報を表示する表示部43と、表示処理部47を有している。表示処理部47は、権限情報に基づく操作権限の付与状況が、いずれの操作端末40にも未だ操作権限を付与していない場合には表示部43にパスワー入力画面53を表示し、他の操作端末40に既に操作権限を付与している場合には表示部43に操作権限付与不可表示52を表示する処理を実行する。
【0087】
これによれば、ロボットコントローラ20は、ある操作端末40に既に操作権限を付与している場合には他の操作端末40に対して重ねて操作権限を付与しないように構成される。そして、ユーザは、表示部43に表示された内容から、ロボット10の現在の操作権限の状況を把握することができ、その結果、ユーザの利便性の向上が図られる。
【0088】
また、ロボット10は、人との協働を前提とし、その動作環境に安全柵が不要となるように設計されたものである。このようなロボット10は、ロボットの使用に慣れている従来の生産現場等だけでなく、ロボットの使用に慣れていない非製造業の企業や一般家庭での使用も想定される。これに対し、本実施形態のロボットシステム1は、上述したようにロボットコントローラ20に操作端末40のID情報等を登録することなく、操作権限を有する操作端末40の切り替えを簡単に行うことができる。したがって、ロボットの使用に慣れていない非製造業の企業や一般家庭のユーザでも簡単に利用することができる。
【0089】
(第2実施形態)
次に、図12図14を参照して説明する。上記第1実施形態において、操作端末40に入力されたパスワードは、操作端末40のパスワード照合処理部48で正しいパスワードであるか否かを判断される。これに対し、本実施形態において、操作端末40に入力されたパスワードは、操作端末40からロボットコンローラ20に送信され、ロボットコントローラ20の処理によって正しいパスワードであるか否かを照合する。そして、この場合、ロボットコントローラ20の操作権限付与処理部26は、ロボットコントローラ20で行われたパスワードの照合結果に基づいて、操作端末40に対する操作権限の付与を行う。
【0090】
具体的には、第2実施形態のロボットコントローラ20は、第1実施形態のパスワード送信処理部24に換えて、パスワード照合処理部48を有している。パスワード照合処理部48は、第1実施形態において操作端末40が有していたパスワード照合処理部48と同様に、パスワード照合処理を実行する。すなわち、パスワード照合処理部48は、操作端末40の入力部42に入力されたパスワードつまり入力情報と、ロボットコントローラ20のパスワード記憶部23に記憶されているパスワードとを照合し、両者が一致しているか否かを判断する。
【0091】
また、第2実施形態の操作端末40は、第1実施形態のパスワード要求処理部45及びパスワード照合処理部48を有しておらず、代わりに図12に示すように入力情報送信処理部50を有している。入力情報送信処理部50は入力情報送信処理を実行する。入力情報送信処理は、例えば表示部43に図7に示すパスワード入力画面53が表示されている場合において、ユーザから入力部42にパスワードが入力された場合に、そのパスワードつまり入力情報を、ロボットコンローラ20に送信する処理である。
【0092】
この構成において、上記第1実施形態における制御内容との相違点について見ると、操作端末40は、図13に示すように、ステップS17におけるパスワード要求処理が不要となる。また、入力部42にユーザからパスワードが入力されると、操作端末40は、図14のステップS31において入力情報送信処理を実行し、これによりロボットコントローラ20にユーザから入力された入力情報を送信する。
【0093】
その後、ロボットコントローラ20は、ステップS23において、操作端末40に入力されたパスワードを照合する。そして、ロボットコントローラ20は、照合結果が不一致の場合(ステップS23でNO)はその旨を操作端末40に返し、一致した場合(ステップS23でYES)はステップS26においてロボット10の操作権限をその操作端末40に付与する。
【0094】
この構成によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
更に、本実施形態によれば、パスワードの照合を、各操作端末40ではなくロボットコントローラ20自が行う。そのため、ロボットコントローラ20は、各操作端末40に対してパスワードを送信する必要がない。したがって、パスワードがロボットコントローラ20の外部に漏れる可能性を極力低減することができ、その結果、高いセキュリティを確保することができる。
【0095】
上記説明した一実施形態は、上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0096】
図面中、1はロボットシステム、10はロボット、20はロボットコントローラ、23はパスワード記憶部、24はパスワード送信処理部、25は権限情報送信処理部、26は操作権限付与処理部、27は操作権限解放処理部、40は操作端末、42は入力部、43は表示部、45はパスワード要求処理部、46は権限情報要求処理部、47は表示処理部、48はパスワード照合処理部、49は操作権限要求処理部、50は入力情報送信処理部、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14