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特許7283263クレーン、クレーンにおけるウエイト状態判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】クレーン、クレーンにおけるウエイト状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/74 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
B66C23/74 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019118852
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021004118
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖弘
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-315843(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096749(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/183328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;19/00-23/94
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、予め特定識別データが記録された電子タグである本体タグと、
前記本体部に設けられ、それぞれ予め識別データが記録された電子タグである複数のウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データおよび前記ウエイトタグ各々におけるデータ要求の受信信号の強度を表す受信強度のデータを取得するタグリーダーと、
前記タグリーダーからデータを取得するデータ処理装置と、を備え、
前記タグリーダーは、前記無線通信により前記本体タグから前記特定識別データおよび前記受信強度のデータを取得する処理をさらに実行し、
前記データ処理装置は、
前記タグリーダーから前記本体タグに対応する前記特定識別データおよび前記受信強度のデータと前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータとを取得するデータ取得部と、
前記特定識別データに対応する前記受信強度を基準にして基準強度を設定する第1基準設定部と、
複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、前記基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別するデータ判別部と、
前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する装着判定部と、を有するクレーン。
【請求項2】
下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、予め特定識別データが記録された電子タグである本体タグと、
前記本体部に設けられ、それぞれ予め識別データが記録された電子タグである複数のウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データを読み取るタグリーダーと、
前記タグリーダーからデータを取得するデータ処理装置と、を備え、
前記タグリーダーは、
前記ウエイトタグ各々からの受信信号の強度である受信強度を検出する受信強度検出部を有し、
前記タグリーダーは、前記無線通信により前記本体タグから前記特定識別データを読み取る処理、および前記本体タグに対応する前記受信強度を検出する処理をさらに実行し、
前記データ処理装置は、
前記タグリーダーから前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータを取得するデータ取得部と、
複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、予め設定される基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別するデータ判別部と、
前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する装着判定部と、を有し、
前記データ取得部は、前記タグリーダーから前記本体タグに対応する前記特定識別データおよび前記受信強度のデータをさらに取得し、
前記データ処理装置は、前記特定識別データに対応する前記受信強度を基準にして前記基準強度を設定する第1基準設定部をさらに備える、クレーン。
【請求項3】
下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、それぞれ予め識別データが記録された電子タグである複数のウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データおよび前記ウエイトタグ各々におけるデータ要求の受信信号の強度を表す受信強度のデータを取得するタグリーダーと、
前記タグリーダーからデータを取得するデータ処理装置と、を備え、
前記データ処理装置は、
前記タグリーダーから前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータを取得するデータ取得部と、
得られた複数の前記受信強度のうち予め定められた特定識別データと一致する前記識別データに対応する1つを基準にして基準強度を設定する第2基準設定部と、
複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、前記基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別するデータ判別部と、
前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する装着判定部と、を有するクレーン。
【請求項4】
下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、それぞれ予め識別データが記録された電子タグである複数のウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データを読み取るタグリーダーと、
前記タグリーダーからデータを取得するデータ処理装置と、を備え、
前記タグリーダーは、
前記ウエイトタグ各々からの受信信号の強度である受信強度を検出する受信強度検出部を有し、
前記データ処理装置は、
前記タグリーダーから前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータを取得するデータ取得部と、
得られた複数の前記受信強度のうち予め定められた特定識別データと一致する前記識別データに対応する1つを基準にして基準強度を設定する第2基準設定部と、
複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、前記基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別するデータ判別部と、
前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する装着判定部と、を有する、クレーン。
【請求項5】
前記データ処理装置は、前記ウエイトの装着状態の判定結果を表す情報を通知する通知部をさらに有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のクレーン。
【請求項6】
前記通知部は、前記非装着ウエイトデータの情報をさらに通知する、請求項5に記載のクレーン。
【請求項7】
前記装着判定部は、前記装着ウエイトデータの数と既知の前記ウエイトの単体重量とに基づいて前記本体部に装着されている前記ウエイトの重量を判定する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のクレーン。
【請求項8】
複数の前記ウエイトが、前記上部旋回体に取り外し可能に装着される1つ以上のカウンターウエイトを含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のクレーン。
【請求項9】
複数の前記ウエイトが、前記下部走行体に取り外し可能に装着される1つ以上のボディウエイトをさらに含む、請求項8に記載のクレーン。
【請求項10】
下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、予め特定識別データが記録された電子タグである本体タグと、
前記本体部に設けられ、予め識別データが記録された電子タグであるウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データを取得するタグリーダーと、
前記タグリーダーからデータを取得するデータ処理装置と、を備えるクレーンにおけるウエイト状態判定方法であって、
前記タグリーダーが、前記無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データおよび前記ウエイトタグ各々における前記タグリーダーからの受信信号の強度を表す受信強度のデータを取得する処理を実行する工程と、
前記タグリーダーが、前記無線通信により前記本体タグから前記特定識別データおよび前記受信強度のデータを取得する処理を実行する工程と、
前記データ処理装置が、前記タグリーダーから前記本体タグに対応する前記特定識別データおよび前記受信強度のデータと前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータとを取得する工程と、
前記データ処理装置が、前記特定識別データに対応する前記受信強度を基準にして基準強度を設定すると、
前記データ処理装置が、複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、前記基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別する工程と、
前記データ処理装置が、前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する工程と、を含むクレーンにおけるウエイト状態判定方法。
【請求項11】
下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、予め特定識別データが記録された電子タグである本体タグと、
前記本体部に設けられ、予め識別データが記録された電子タグであるウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データを取得するタグリーダーと、
前記タグリーダーからデータを取得するデータ処理装置と、を備えるクレーンにおけるウエイト状態判定方法であって、
前記タグリーダーが、前記無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データを取得する処理および前記ウエイトタグ各々からの受信信号の強度である受信強度を検出する処理を実行する工程と、
前記タグリーダーが、前記無線通信により前記本体タグから前記特定識別データを取得する処理および前記本体タグに対応する前記受信強度を検出する処理を実行する処理を実行する工程と、
前記データ処理装置が、前記タグリーダーから前記本体タグに対応する前記特定識別データおよび前記受信強度のデータと前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータとを取得する工程と、
前記データ処理装置が、前記特定識別データに対応する前記受信強度を基準にして基準強度を設定する工程と、
前記データ処理装置が、複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、前記基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別する工程と、
前記データ処理装置が、前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する工程と、を含むクレーンにおけるウエイト状態判定方法。
【請求項12】
下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、それぞれ予め識別データが記録された電子タグである複数のウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データおよび前記ウエイトタグ各々におけるデータ要求の受信信号の強度を表す受信強度のデータを取得するタグリーダーと、
前記タグリーダーからデータを取得するデータ処理装置と、を備えるクレーンにおけるウエイト状態判定方法であって、
前記データ処理装置が、前記タグリーダーから前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータを取得する工程と、
前記データ処理装置が、得られた複数の前記受信強度のうち予め定められた特定識別データと一致する前記識別データに対応する1つを基準にして基準強度を設定する工程と、
前記データ処理装置が、複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、前記基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別する工程と、
前記データ処理装置が、前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する工程と、を含む、クレーンにおけるウエイト状態判定方法。
【請求項13】
下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能な本体部と、
前記本体部に設けられ、それぞれ予め識別データが記録された電子タグである複数のウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データを読み取るタグリーダーと、
前記タグリーダーからデータを取得するデータ処理装置と、を備えるクレーンにおけるウエイト状態判定方法であって、
前記タグリーダーが、前記無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データを取得する処理および前記ウエイトタグ各々からの受信信号の強度である受信強度を検出する処理を実行する工程と、
前記データ処理装置が、前記タグリーダーから前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータを取得する工程と、
前記データ処理装置が、得られた複数の前記受信強度のうち予め定められた特定識別データと一致する前記識別データに対応する1つを基準にして基準強度を設定する工程と、
前記データ処理装置が、複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、前記基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別する工程と、
前記データ処理装置が、前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する工程と、を含む、クレーンにおけるウエイト状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエイトの装着状態を判定可能なクレーンおよびクレーンにおけるウエイト状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンは、下部走行体および上部旋回体を含む本体部と、前記上部旋回体に起伏可能に連結されたブームとを備える。前記ブームは、吊荷が吊される吊りロープを支える。
【0003】
また、前記本体部の安定性を高める1つ以上のウエイトが、現場での作業条件に応じて前記本体部に装着される場合がある。具体的には、1つ以上のカウンターウエイトが、前記上部旋回体に装着される場合があり、1つ以上のボディウエイトが前記下部走行体に装着される場合がある。
【0004】
さらに、前記クレーンは、過負荷防止装置を備える。前記過負荷防止装置は、前記ブームの長さおよび前記ウエイトの装着状態の情報を含むクレーン構成情報、および、前記吊荷の重量に基づいて、前記ブームの動作および前記吊りロープの巻き上げまたは繰り出しの動作を制限する。
【0005】
前記ウエイトの装着状態の情報が、操作パネルなどの入力装置に対する人の操作によって入力される場合がある。この場合、情報の誤入力が生じやすい。
【0006】
また、前記ウエイトの数を検出するための複数の電子部品が、前記ウエイト各々と前記本体部とに設けられ、前記ウエイトが前記本体部に装着されるときに、前記複数の電子部品が信号線で接続される場合がある。この場合、前記信号線を接続するための高所作業が必要となり、安全上好ましくない。
【0007】
また、前記クレーンが、前記ウエイト各々に取り付けられた電子タグに記録されたデータを無線通信により取得するタグリーダーを備え、前記タグリーダーの取得データに基づいて前記ウエイトの装着状態を検出することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-188383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記本体部に未装着の前記ウエイトが、前記クレーンの作業現場に置かれる場合がある。この場合、前記本体部に設けられた前記タグリーダーが、未装着の前記ウエイトに取り付けられた前記電子タグからデータを取得してしまう。
【0010】
仮に、前記タグリーダーがデータを取得できた全ての前記電子タグの数が前記ウエイトの装着数としてカウントされると、前記ウエイトの装着状態の誤判定が生じるおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、未装着のウエイトが現場に存在する場合でも、ウエイトの装着状態を自動的に正しく判定することができるクレーンおよびウエイト状態判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一の局面に係るクレーンは、本体部と、タグリーダーと、データ処理装置と、を備える。前記本体部は、下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能である。前記タグリーダーは、前記本体部に設けられ、それぞれ予め識別データが記録された電子タグである複数のウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データおよび前記ウエイトタグ各々における前記タグリーダーからの受信信号の強度を表す受信強度のデータを取得する。前記データ処理装置は、前記タグリーダーからデータを取得する。前記データ処理装置は、データ取得部と、データ判別部と、装着判定部と、を有する。前記データ取得部は、前記タグリーダーから前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータを取得する。前記データ判別部は、複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、予め設定される基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別する。前記装着判定部は、前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する。
【0013】
本発明の他の局面に係るクレーンは、本体部と、タグリーダーと、データ処理装置と、を備える。前記本体部は、下部走行体および前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体を含み、複数のウエイトを装着可能である。前記タグリーダーは、前記本体部に設けられ、それぞれ予め識別データが記録された電子タグである複数のウエイトタグがそれぞれ取り付けられた複数の前記ウエイトが周囲に存在する状況下において、無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データを読み取る。前記データ処理装置は、前記タグリーダーからデータを取得する。前記タグリーダーは、前記ウエイトタグ各々からの受信信号の強度である受信強度を検出する受信強度検出部を有する。前記データ処理装置は、データ取得部と、データ判別部と、装着判定部と、を備える。前記データ取得部は、前記タグリーダーから前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータを取得する。前記データ判別部は、複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、予め設定される基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別する。前記装着判定部は、前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する。
【0014】
本発明の他の局面に係るクレーンにおけるウエイト状態判定方法は、前記本体部と、前記タグリーダーと、前記データ処理装置と、を備えるクレーンにおいて前記ウエイトの装着状態を判定する方法である。本方法は、以下の4つの工程を含む。前記4つの工程は、前記タグリーダーが、前記無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データおよび前記ウエイトタグ各々における前記タグリーダーからの受信信号の強度を表す受信強度のデータを取得する処理を実行する工程を含む。さらに、前記4つの工程は、前記データ処理装置が、前記タグリーダーから前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータを取得する工程を含む。さらに、前記4つの工程は、前記データ処理装置が、複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、予め設定される基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別する工程を含む。さらに、前記4つの工程は、前記データ処理装置が、前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する工程を含む。
【0015】
本発明の他の局面に係るクレーンにおけるウエイト状態判定方法は、前記本体部と、前記タグリーダーと、前記データ処理装置と、を備えるクレーンにおいて前記ウエイトの装着状態を判定する方法である。本方法は、以下の4つの工程を含む。前記4つの工程は、前記タグリーダーが、前記無線通信により前記ウエイトタグ各々から前記識別データを取得する処理および前記ウエイトタグ各々からの受信信号の強度である受信強度を検出する処理を実行する工程を含む。さらに、前記4つの工程は、前記データ処理装置が、前記タグリーダーから前記ウエイトタグごとの前記識別データおよび前記受信強度のデータを取得する工程を含む。さらに前記4つの工程は、前記データ処理装置が、複数の前記ウエイトタグに対応する複数の前記識別データを、予め設定される基準強度を超える前記受信強度に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別する工程を含む。さらに前記4つの工程は、前記データ処理装置が、前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部への前記ウエイトの装着状態を判定する工程を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、未装着のウエイトが現場に存在する場合でも、ウエイトの装着状態を自動的に正しく判定することができるクレーンおよびウエイト状態判定方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態に係るクレーンの構成図である。
図2図2は、第1実施形態に係るクレーンにおける制御関連機器の構成を表すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係るクレーンにおけるメインコントローラー、過負荷防止装置およびECUの構成を表すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係るクレーンにおけるタグリーダーの構成を示すブロック図である。
図5図5は、第1実施形態に係るクレーンにおけるウエイト状態判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、第2実施形態に係るクレーンの構成図である。
図7図7は、第3実施形態に係るクレーンにおけるタグリーダーの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
[第1実施形態:クレーン10の構成]
第1実施形態に係るクレーン10は、吊り荷を吊り上げつつ移動させる移動式クレーンである。
【0020】
図1に示されるように、クレーン10は、下部走行体11、上部旋回体12、キャブ13、走行装置14、ガントリ15、第1ウインチ装置161、第2ウインチ装置162、ブーム21、フック30、起伏ロープ31および吊りロープ32などを備える。
【0021】
キャブ13、ガントリ15、第1ウインチ装置161および第2ウインチ装置162は、上部旋回体12によって支持されている。キャブ13は、上部旋回体12と一体に構成されている。ブーム21は、上部旋回体12に対し起伏可能に連結されている。
【0022】
上部旋回体12は、下部走行体11上に旋回可能に設けられている。下部走行体11は、上部旋回体12を旋回可能に支持する台座部分である。上部旋回体12は、不図示の駆動源によって旋回駆動される。
【0023】
上部旋回体12が旋回する場合、キャブ13、ガントリ15、第1ウインチ装置161、第2ウインチ装置162およびブーム21も、上部旋回体12とともに旋回する。
【0024】
走行装置14は、下部走行体11と一体に構成されている。走行装置14は、下部走行体11を支持し、走行可能である。図1は、走行装置14がクローラー式の装置である例を示す。なお、走行装置14が、車輪で走行する装置であってもよい。
【0025】
起伏ロープ31は、ブーム21の先端部から、ガントリ15に設けられたガントリシーブ23を経て第1ウインチ装置161へ張り渡されている。第1ウインチ装置161は、起伏ロープ31を介してブーム21を支える。
【0026】
吊りロープ32は、フック30から、ブーム21の先端部に設けられたブームポイントアイドラーシーブ22を経て第2ウインチ装置162へ張り渡されている。第2ウインチ装置162は、吊りロープ32を介してフック30およびフック30に吊される吊荷を支える。
【0027】
第1ウインチ装置161は、起伏ロープ31の巻き取り、または、繰り出しを行うことにより、ブーム21を起伏させる。第2ウインチ装置162は、吊りロープ32の巻き取り、または、繰り出しを行うことにより、フック30を昇降させる。
【0028】
ここで、下部走行体11および上部旋回体12のことをクレーン10の本体部と称する。前記本体部の安定性を高める1つまたは複数のウエイト17が、現場での作業条件に応じて前記本体部に装着される場合がある。ウエイト17は、前記本体部の安定性を高めるために前記本体部に装着される。
【0029】
ウエイト17は、上部旋回体12に取り外し可能に装着される1つ以上のカウンターウエイト171を含む。さらに、ウエイト17が、下部走行体11に取り外し可能に装着される1つ以上のボディウエイト172を含む場合もある。
【0030】
図2に示されるように、クレーン10は、エンジン41、油圧ポンプ42および油圧制御弁43などの駆動系の機器を備える。さらに、クレーン10は、メインコントローラー61、過負荷防止装置62、ECU(Engine Control Unit)63および補助記憶装置64などの制御系の機器を備える。
【0031】
さらに、クレーン10は、キャブ13内に設けられた操作装置51および表示装置52などのヒューマンインターフェースのための装置と、クレーン10の状態を検出する検出装置44とを備える。検出装置44は、各種のセンサーを含む。
【0032】
操作装置51は、前記操縦者の操作を受け付ける装置である。表示装置52は情報を表示する装置である。操作装置51は、操作レバー511、操作ボタン512および入力装置513などを含む。
【0033】
入力装置513は、前記操縦者による情報入力を受け付ける。例えば、入力装置513は、表示装置52と一体に構成されたタッチパネルなどである。また、入力装置513が、前記操縦者の音声操作による情報入力を受け付ける装置であってもよい。
【0034】
検出装置44は、荷重センサー441およびブーム角度センサー442などを含む。荷重センサー441は、前記吊荷の重さを検出する。ブーム角度センサー442は、ブーム21の起伏角度を検出する。
【0035】
メインコントローラー61、ECU63、過負荷防止装置62、検出装置44および表示装置52は、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワーク9を通じて相互に通信可能である。
【0036】
各種の検出装置44の検出結果は、車載ネットワーク9を通じてメインコントローラー61、ECU63および過負荷防止装置62へ伝送される。
【0037】
エンジン41は、油圧ポンプ42を駆動する。油圧制御弁43が、ECU63またはメインコントローラー61からの制御信号に従って不図示の油圧モーターなどの目的の駆動部へ圧縮油を供給する。前記駆動部は、ウインチ装置16または上部旋回体12などの駆動対象を駆動する。
【0038】
メインコントローラー61は、操作装置51に対する操作または各種の検出装置44の検出結果に応じて、油圧制御弁43などの制御対象を制御する。
【0039】
ECU63は、各種の検出装置44の検出結果に応じて、または、メインコントローラー61からの前記制御指令に従って、エンジン41および油圧制御弁43の一部を制御する。補助記憶装置64は、コンピューター読み取り可能な不揮発性の記憶装置である。例えば、SSD(Solid State Drive)またはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などが、補助記憶装置64として採用される。
【0040】
過負荷防止装置62は、ブーム21の長さおよびウエイト17の装着状態の情報を含むクレーン構成情報、および、荷重センサー441の検出結果に基づいて、ブーム21の動作および起伏ロープ31の巻き取りまたは繰り出しの動作を制限する。
【0041】
図3に示されるように、メインコントローラー61、ECU63および過負荷防止装置62は、それぞれMPU(Miro Processing Unit)601、RAM(Random Access Memory)602、不揮発性メモリー603および通信インターフェイス604などを備える。なお、RAM602および不揮発性メモリー603は、コンピューター読み取り可能な記憶装置である。
【0042】
MPU601は、予め不揮発性メモリー603に記憶されたプログラムを実行することにより、各種のデータ処理および制御を実行するプロセッサーの一例である。
【0043】
RAM602は、MPU601によって実行される前記プログラムおよびMPU601が導出もしくは参照するデータを一時記憶する揮発性のメモリーである。
【0044】
不揮発性メモリー603は、MPU601によって実行される前記プログラムおよびMPU601が参照するデータを記憶する。例えば、不揮発性メモリー603がEEPROMまたはフラッシュメモリーなどであることが考えられる。
【0045】
通信インターフェイス604は、自装置のMPU601と他装置との間の車載ネットワーク9を通じたデータ通信を制御する装置である。
【0046】
クレーン10には、複数のウエイト17が用意されている。これら複数のウエイト17の一部または全部が、前記本体部に装着される。
【0047】
複数のウエイト17には、それぞれ予め識別データD11が記録された電子タグである複数のウエイトタグ18が取り付けられている。例えば、識別データD11は、クレーン10の機種、ウエイト17の種類またはウエイト17の単体重量のうちの1つまたは複数を識別可能なデータである。ここで、ウエイト17の種類は、カウンターウエイト171またはボディウエイト172である。
【0048】
そして、クレーン10は、前記本体部に設けられたタグリーダー7をさらに備える。図1に示される例では、タグリーダー7は、上部旋回体12に配置されている。これにより、タグリーダー7は、有線の車載ネットワーク9を通じて過負荷防止装置62と通信可能である。
【0049】
タグリーダー7は、複数のウエイトタグ18がそれぞれ取り付けられた複数のウエイト17が周囲に存在する状況下で、無線通信によりウエイトタグ18各々から識別データD11を取得する。ここで、タグリーダー7の周囲は、クレーン10の作業現場における前記本体部から離れた位置を含む領域である。
【0050】
例えば、タグリーダー7は、ウエイトタグ18各々とBluetoothまたはLPWA(Low Power Wide Aare)通信などの無線通信を行うことにより、ウエイトタグ18各々から識別データD11を取得する。前記LPWA通信は、例えばLoRaWANまたはSIGFOXなどの通信規格に準拠した通信である。
【0051】
過負荷防止装置62は、タグリーダー7から車載ネットワーク9を通じて識別データD11などを取得可能である。過負荷防止装置62はデータ処理装置の一例である。過負荷防止装置62は、タグリーダー7から取得した識別データD11に基づいて、前記本体部におけるウエイト17の装着状態を判定する。
【0052】
クレーン10は、無線通信網を含むネットワーク回線を通じて不図示の外部の管理装置と通信を行う通信装置65も備える。過負荷防止装置62はは、メインコントローラー61および通信装置65を通じて、クレーン10の状況を表すデータを前記管理装置へ送信することができる。なお、過負荷防止装置62が、通信装置65と接続されていてもより。この場合、過負荷防止装置62は、通信装置65を通じて、クレーン10の状況を表すデータを前記管理装置へ送信する。
【0053】
ところで、前記本体部に未装着のウエイト17が、クレーン10の作業現場に置かれる場合がある。この場合、前記本体部に設けられたタグリーダー7が、未装着のウエイト17に取り付けられたウエイトタグ18からデータを取得してしまう。
【0054】
仮に、タグリーダー7が識別データD11を取得できた全てのウエイトタグ18の数がウエイト17の装着数としてカウントされると、ウエイト17の装着状態の誤判定が生じるおそれがある。
【0055】
一方、クレーン10においては、過負荷防止装置62が、後述するウエイト状態判定処理を実行する(図5参照)。これにより、過負荷防止装置62は、未装着のウエイト17が現場に存在する場合でも、ウエイト17の装着状態を自動的に正しく判定することができる。
【0056】
[タグリーダー7の構成]
ここで、図4を参照しつつ、タグリーダー7の構成について説明する。図4に示されるように、タグリーダー7は、送信回路71、受信回路72、アンテナ73、MPU74、ROM75、RAM76および通信インターフェイス77を備える。
【0057】
送信回路71は、MPU74の指令に従ってウエイトタグ18に対してデータ要求信号を送信する。送信回路71は、アンテナ73を通じて前記データ要求信号を送信する。
【0058】
受信回路72は、前記データ要求信号に対する応答信号であるデータ搬送信号を受信し、前記データ搬送信号に復調処理を施すことにより、前記データ搬送信号に含まれるデータを特定する。
【0059】
本実施形態において、前記データ搬送信号に含まれるデータは、識別データD11、バッテリー残量データD12および信号強度データD13である。バッテリー残量データD12は、ウエイトタグ18各々が備えるバッテリーの残量を表すデータである。
【0060】
信号強度データD13は、ウエイトタグ18各々における前記データ要求信号の強度を表す受信強度のデータである。ウエイトタグ18各々は、タグリーダー7から受信する前記データ要求信号の強度を検出する回路を備える。前記データ要求信号は、ウエイトタグ18各々におけるタグリーダー7からの受信信号の一例である。通常、タグリーダー7からウエイトタグ18までの距離が長いほど、ウエイトタグ18における前記受信強度が小さい。
【0061】
受信回路72は、アンテナ73を通じて前記データ搬送信号を受信し、識別データD11、バッテリー残量データD12および受信強度データD13を含むタグデータD1をMPU74へ伝送する。
【0062】
MPU74は、過負荷防止装置62からの指令に従って、送信回路71に前記データ要求信号を送信させ、さらに、受信回路72から取得したタグデータD1を過負荷防止装置62へ送信する。
【0063】
MPU74は、予めROM75に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、ウエイトタグ18などの電子タグからのデータの取得、過負荷防止装置62からの指令の取得および過負荷防止装置62へのデータの出力に関する処理を実行する。
【0064】
RAM76は、MPU74が実行するプログラムおよびMPU74が参照または出力するデータを一次記憶する。
【0065】
通信インターフェイス77は、MPU74と他装置との間の車載ネットワーク9を通じたデータ通信を制御する装置である。
【0066】
[ウエイト状態判定処理]
次に、図5に示されるフローチャートを参照しつつ、前記ウエイト状態判定処理の手順の一例について説明する。
【0067】
過負荷防止装置62は、MPU601が予め定められたコンピュータープログラムを実行することによって実現される複数の処理モジュールを含む。これら複数の処理モジュールが、前記ウエイト状態判定処理を実行する。前記複数の処理モジュールは、データ取得部6a、基準設定部6b、データ判別部6c、装着判定部6d、バッテリー判定部6e、通知部6fおよび制限部6gを含む。
【0068】
以下の説明において、S101~S108は、前記ウエイト状態判定処理において過負荷防止装置62によって実行される複数の工程の識別符号を表す。また、S201~S203は、前記ウエイト状態判定処理においてタグリーダー7によって実行される複数の工程の識別符号を表す。
【0069】
例えば、予め定められたウエイト判定開始操作が入力装置513に対して行われたときに、データ取得部6aが前記ウエイト状態判定処理を開始する。まず、過負荷防止装置62が前記ウエイト状態判定処理において実行する工程について説明する。
【0070】
<工程S101>
前記ウエイト状態判定処理において、まず、データ取得部6aが、タグリーダー7に対してリード指令を出力する。前記リード指令は、ウエイトタグ18からデータを取得する処理をタグリーダー7に開始させる指令である。
【0071】
<工程S102>
次に、データ取得部6aは、タグリーダー7からタグデータD1を取得する。前述したように、タグデータD1は、識別データD11、バッテリー残量データD12および受信強度データD13を含む。
【0072】
<工程S103>
次に、基準設定部6bが、後の工程S105において受信強度データD13との比較の対象となる基準強度を設定する。工程S103の処理を実行する基準設定部6bは、第1基準設定部の一例である。
【0073】
工程S103において、基準設定部6bは、工程S102で得られた複数の受信強度データD13のうち予め定められた特定識別データD2と一致する識別データD11に対応する1つを基準にして前記基準強度を設定する。
【0074】
特定識別データD2は、複数のカウンターウエイト171のうちの1つであるベースウエイトに取り付けられたウエイトタグ18に予め記録されている。前記ベースウエイトは、上部旋回体12に装着される可能性がある複数のカウンターウエイト171のうち、必ず上部旋回体12に装着される1つである。
【0075】
即ち、基準設定部6bは、前記ベースウエイトに取り付けられたウエイトタグ18に対応する前記受信強度を基準にして前記基準強度を設定する。これにより、前記基準強度が、タグリーダー7が前記ベースウエイトの装着位置に配置されたウエイトタグ18と無線通信を行う場合における前記データ搬送信号の強度を基準にして設定される。
【0076】
例えば、基準設定部6bは、特定識別データD2と一致する識別データD11に対応する受信強度データD13に予め定められた1より大きな係数を乗算することによって前記基準強度を導出する。
【0077】
なお、複数の識別データD11の全てが特定識別データD2と一致しない場合、基準設定部6bは、予め定められたエラー通知処理を実行した上で前記ウエイト状態判定処理を終了させる。
【0078】
さらに、基準設定部6bは、特定識別データD2と一致する識別データD11に対応する受信強度データD13が、予め定められた下限値を下回る場合にも前記エラー通知処理を実行した上で前記ウエイト状態判定処理を終了させる。前記エラー通知処理に関する記載は、図5において省略されている。
【0079】
<工程S104>
次に、データ判別部6cが、工程S102で得られた複数の識別データD11を、工程S103で設定される前記基準強度を超える受信強度データD13に対応する装着ウエイトデータとその他の非装着ウエイトデータとに判別する。
【0080】
前記装着ウエイトデータは、既に前記本体部に装着されていると判定されたウエイト17に対応する識別データD11である。前記非装着ウエイトデータは、作業現場に存在するが前記本体部に装着されていないと判定されたウエイト17に対応する識別データD11である。
【0081】
<工程S105>
次に、装着判定部6dが、前記装着ウエイトデータに基づいて前記本体部へのウエイト17の装着状態を判定する。
【0082】
識別データD11が、ウエイト17の種類を識別可能なデータである場合、装着判定部6dは、上部旋回体12に装着されているカウンターウエイト171の重量と、下部走行体11に装着されているボディウエイト172の重量とを前記装着状態として判定する。
【0083】
具体的には、装着判定部6dは、種類がカウンターウエイト171であることを表す前記装着ウエイトデータの数に、予め補助記憶装置64に記憶されたカウンターウエイト171の既知の単体重量を乗算することにより、上部旋回体12に装着されているカウンターウエイト171の重量を判定する。
【0084】
同様に、装着判定部6dは、種類がボディウエイト172であることを表す前記装着ウエイトデータの数に、予め補助記憶装置64に記憶されたボディウエイト172の既知の単体重量を乗算することにより、下部走行体11に装着されているボディウエイト172の重量を判定する。
【0085】
また、識別データD11が、ウエイト17の単体重量を識別可能なデータである場合、装着判定部6dは、前記装着ウエイトデータに対応する前記単体重量を合計することにより、カウンターウエイト171またはボディウエイト172の重量を判定する。
【0086】
<工程S106>
次に、通知部6fが、前記本体部へのウエイト17の装着状態の判定結果を表す情報を通知する。具体的には、通知部6fは、前記判定結果を表示装置52に表示させることにより、操縦者に通知する。
【0087】
装着判定部6dは、装着状態の判定結果を表示装置52に表示させることによって前記操縦者に前記装着状態の判定結果が正しいか否かの確認を促す。さらに、装着判定部6dは、入力装置513に予め定められた確定操作が行われたときに、前記装着状態の判定結果を確定させる。
【0088】
一方、装着判定部6dは、入力装置513に修正操作が行われたときに、前記装着状態の判定結果を修正した後に確定させる。
【0089】
制限部6gは、装着判定部6dから得た前記装着状態の判定結果を含む前記クレーン構成情報に基づいてブーム21の動作および起伏ロープ31の巻き取りまたは繰り出しの動作を制限する。
【0090】
また、工程S106において、通知部6fが、前記装着状態の判定結果を表す情報および前記非装着ウエイトデータの情報を、通信装置65を通じて前記管理装置へ通知することも考えられる。これにより、管理者が、作業現場におけるウエイト17の使用状況を詳細に把握することができる。
【0091】
<工程S107>
次に、バッテリー判定部6eが、工程S102で得られたバッテリー残量データD12の一部または全部が予め定められた低残量を表すか否かを判定する。
【0092】
そして、バッテリー判定部6eは、バッテリー残量データD12の一部または全部が前記低残量を表すと判定する場合、通知部6fに工程S108の処理を実行させ、そうでない場合、前記ウエイト状態判定処理を終了させる。
【0093】
<工程S108>
工程S108において、通知部6fは、バッテリー残量が少ないウエイトタグ18が存在することを通知する処理である残量低通知処理を実行する。その後、通知部6fは、前記ウエイト状態判定処理を終了させる。
【0094】
例えば、通知部6fは、前記低残量を表すバッテリー残量データD12およびそのバッテリー残量データD12に対応する識別データD11を含むバッテリー情報を表示装置52に表示させることにより、前記操縦者に通知する。
【0095】
また、通知部6fが、前記バッテリー情報を、通信装置65を通じて前記管理装置へ通知することも考えられる。
【0096】
次に、タグリーダー7が前記ウエイト状態判定処理において実行する工程について説明する。
【0097】
<工程S201>
まず、タグリーダー7は、過負荷防止装置62からの前記リード指令の受信を待つ。そして、タグリーダー7は、前記リード指令を受信すると、工程S202の処理を実行する。
【0098】
<工程S202>
工程S202において、タグリーダー7は、無線通信の範囲内に存在する全てのウエイトタグ18各々から、前記無線通信によって識別データD11、バッテリー残量データD12および受信強度データD13を取得する。さらに、タグリーダー7は、工程S203の処理を実行する。
【0099】
<工程S203>
工程S203において、タグリーダー7は、ウエイトタグ18各々から取得した識別データD11、バッテリー残量データD12および受信強度データD13を含むタグデータD1を過負荷防止装置62へ出力する。その後、タグリーダー7は、工程S201からの処理を繰り返す。
【0100】
以上に示されるように、過負荷防止装置62は、受信強度データD13に基づいて、前記本体部から離れた位置に存在するタグリーダー7から受信される識別データD11をウエイト17の装着状態の判定に用いない。
【0101】
従って、過負荷防止装置62は、未装着のウエイト17が現場に存在する場合でも、ウエイト17の装着状態を自動的に正しく判定することができる。
【0102】
クレーン10は野外で動作するため、通信環境が現場の場所および天候に応じて大きく変動する。そのため、予め定められた標準環境におけるタグリーダー7とウエイトタグ18各々との最大通信距離が数十メートルから100メートル程度となるように、ウエイトタグ18およびタグリーダー7における送信信号の強度が設定されることが考えられる。
【0103】
本実施形態において、前記基準強度が、前記ベースウエイトに対応する受信強度データD13に基づいて設定される(図5の工程S103を参照)。これにより、タグリーダー7における受信信号の強度が、通信距離以外の前記通信環境によって変動する場合においても、その通信環境の影響を受けにくい前記基準強度が設定される。
【0104】
[第2実施形態]
次に、図6を参照しつつ、第2実施形態に係るクレーン10Aについて説明する。図6において、図1,2に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、クレーン10Aにおけるクレーン10と異なる点について説明する。
【0105】
クレーン10Aは、クレーン10に本体タグ18aが追加された構成を備える。本体タグ18aは、前記本体部に設けられ、予め特定識別データD2が記録された電子タグである。図6に示される例では、本体タグ18aは上部旋回体12に設けられている。
【0106】
本実施形態において、タグリーダー7は、図5の工程S202において、無線通信により本体タグ18aから特定識別データD2および受信強度データD13を取得する処理をさらに実行する。
【0107】
また、クレーン10Aのデータ取得部6aは、図5の工程S102において、タグリーダー7から本体タグ18aに対応する特定識別データD2および受信強度データD13をさらに取得する。
【0108】
そして、クレーン10Aの基準設定部6bは、図5の工程S103において、タグリーダー7から取得した特定識別データD2に対応する受信強度データD13を基準にして前記基準強度を設定する。前記基準強度の導出方法は、クレーン10における導出方法と同様である。本実施形態における基準設定部6bは第2基準設定部の一例である。
【0109】
クレーン10Aが採用される場合も、クレーン10が採用される場合と同様の効果が得られる。
【0110】
[第3実施形態]
以下、図7を参照しつつ、クレーン10,10Aの応用例である第3実施形態に係るクレーン10Bについて説明する。図7は、クレーン10Bが備えるタグリーダー7の構成を示すブロック図である。
【0111】
クレーン10Bにおいて、タグリーダー7の受信回路72は、受信強度検出部72aを含む。受信強度検出部72aは、ウエイトタグ18各々からの前記データ搬送信号の強度を検出する回路である。前記データ搬送信号は、ウエイトタグ18各々からの受信信号の一例である。通常、タグリーダー7からウエイトタグ18までの距離が長いほど、前記データ搬送信号の強度が小さい。
【0112】
本実施形態において、受信回路72は、アンテナ73を通じて前記データ搬送信号を受信し、識別データD11、バッテリー残量データD12および受信強度検出部72aの検出データを含むタグデータD1をMPU74へ伝送する。
【0113】
さらに、MPU74は、前記受信強度検出部の検出データを含むタグデータD1を過負荷防止装置62へ送信する。本応用例において、受信強度検出部72aの検出データが、検出強度データD13の代わりに用いられる。
【0114】
即ち、本応用例における過負荷防止装置62は、受信強度検出部72aの検出データを検出強度データD13として、クレーン10,10Aと同様の処理を実行する。クレーン10Bが採用される場合も、クレーン10,10Aが採用される場合と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0115】
6a :データ取得部
6b :基準設定部
6c :データ判別部
6d :装着判定部
6e :バッテリー判定部
6f :通知部
7 :タグリーダー
9 :車載ネットワーク
10 :クレーン
10A :クレーン
11 :下部走行体
12 :上部旋回体
13 :キャブ
14 :走行装置
15 :ガントリ
16 :ウインチ装置
17 :ウエイト
18 :ウエイトタグ
18a :本体タグ
21 :ブーム
22 :ブームポイントアイドラーシーブ
23 :ガントリシーブ
30 :フック
31 :起伏ロープ
32 :吊りロープ
41 :エンジン
42 :油圧ポンプ
43 :油圧制御弁
44 :検出装置
51 :操作装置
52 :表示装置
61 :メインコントローラー
62 :過負荷防止装置(データ処理装置)
63 :ECU
64 :補助記憶装置
65 :通信装置
71 :送信回路
72 :受信回路
72a :受信強度検出部
73 :アンテナ
74 :MPU
75 :ROM
76 :RAM
77 :通信インターフェイス
161 :第1ウインチ装置
162 :第2ウインチ装置
171 :カウンターウエイト
172 :ボディウエイト
441 :荷重センサー
442 :ブーム角度センサー
511 :操作レバー
512 :操作ボタン
513 :入力装置
601 :MPU
602 :RAM
603 :不揮発性メモリー
604 :通信インターフェイス
D1 :タグデータ
D11 :識別データ
D12 :バッテリー残量データ
D13 :受信強度データ
D2 :特定識別データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7