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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】基板ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20230523BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20230523BHJP
   H05K 7/06 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B60T8/34
F16K31/06 305D
H05K7/06 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019121690
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008164
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】古家 晃
(72)【発明者】
【氏名】古賀 慶一
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-255415(JP,A)
【文献】特開平11-248022(JP,A)
【文献】特開2010-184565(JP,A)
【文献】特開2018-131187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
F16K 31/06-31/11
H05K 7/02-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液路が形成され且つ一方面に電磁弁の弁本体部が取り付けられたハウジングに組み付けられる、制動制御装置の一部を構成する基板ユニットであって、
一方に開口部が形成され他方に底部が形成され、前記基板ユニットが前記ハウジングに組み付けられた組付状態において、前記開口部が前記ハウジングの前記一方面によって塞がれて前記弁本体部を収容するケースと、
前記ケース内に配置され、前記組付状態において前記弁本体部を囲むように構成されたコイル組立体と、
前記ケース内における前記底部と前記コイル組立体との間に配置され、前記組付状態において前記コイル組立体のコイルへの通電を制御して前記電磁弁の開閉を制御する制御基板と、
前記コイル組立体から前記制御基板に向けて突出し、前記コイルと前記制御基板とを接続するバスバーと、
前記コイル組立体に隙間を介して隣接するように前記ケース内に設けられ、前記コイル組立体に加わる所定の外力により前記バスバーが変形し、前記コイル組立体と前記制御基板との相対的な位置関係が変化した場合に、前記コイル組立体に接触して前記バスバーの変形を抑制する変形抑制部と、
を備える基板ユニット。
【請求項2】
前記変形抑制部と前記コイル組立体との接触点は、前記バスバーと前記制御基板との接続点を支点として回転しようとする重力によるモーメントを打ち消す方向にモーメントを発生させる点であり、
前記変形抑制部は、前記支点から前記接触点までのモーメントアームが前記支点から前記コイル組立体の重心までのモーメントアームよりも長くなるように構成されている請求項1に記載の基板ユニット。
【請求項3】
前記変形抑制部は、前記コイルの中心軸に平行な軸方向に延伸する棒状の接触部を有し、
前記コイル組立体は、凹部が形成されたヨークを有し、
前記軸方向一方側から見て、前記接触部の少なくとも一部が、前記凹部の内側に配置されている請求項1又は2に記載の基板ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動制御装置の一部を構成する基板ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばアクチュエータ等の制動制御装置を製造するにあたり、液路及び電磁弁の弁本体部を有するハウジングに、ケース、制御基板、及びコイル組立体を有する基板ユニットを組み付ける組付工程が実行される。組付工程では、ケースに取り付けられたコイル組立体のコイルの内側(中心孔)に、弁本体部が挿入される。ここで、重力(外力)によりコイル組立体がケース及び制御基板に対して傾いてしまうと、組付工程において弁本体部とコイル組立体とが干渉し、組み付け性が低下する。
【0003】
そこで、例えば特開2010-184565号公報には、ケース(公報ではハウジング)に設けられた爪部を、コイル組立体の側部に係合させたユニットを備える車両用ブレーキ液圧制御装置が記載されている。これによれば、制御基板に対するコイル組立体の位置の安定性が向上し、基板ユニットのハウジングへの組み付け性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-184565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記車両用ブレーキ液圧制御装置では、爪部を用いたいわゆるスナップフィット構造が採用されているため、係合精度を高めようとすると、係合位置に関する寸法精度を高く維持しなければならない。
【0006】
一方で、コイル組立体の寸法公差によるばらつきを考慮すると、コイル組立体をケースに組み付ける際に爪部が確実に被係合部(例えば鍔部)を乗り越えられるようにするには、爪部の位置を適正位置よりもケース開口側にする必要がある。爪部の確実な乗り越えを重視するほど、爪部の適正位置からのずれは大きくなる。つまり、コイル組立体がケースに組み付けられた後の、爪部と被係合部との間の隙間は大きくなる。これによれば、コイル組立体が自重により大きく傾く可能性がある。このように、上記車両用ブレーキ液圧制御装置には、製造の容易性と組み付け性とのバランスの面で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高い寸法精度が要求されることなく、ハウジングへの組み付け性の維持・向上が可能となる基板ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板ユニットは、内部に液路が形成され且つ一方面に電磁弁の弁本体部が取り付けられたハウジングに組み付けられる、制動制御装置の一部を構成する基板ユニットであって、一方に開口部が形成され他方に底部が形成され、前記基板ユニットが前記ハウジングに組み付けられた組付状態において、前記開口部が前記ハウジングの前記一方面によって塞がれて前記弁本体部を収容するケースと、前記ケース内に配置され、前記組付状態において前記弁本体部を囲むように構成されたコイル組立体と、前記ケース内における前記底部と前記コイル組立体との間に配置され、前記組付状態において前記コイル組立体のコイルへの通電を制御して前記電磁弁の開閉を制御する制御基板と、前記コイル組立体から前記制御基板に向けて突出し、前記コイルと前記制御基板とを接続するバスバーと、前記コイル組立体に隙間を介して隣接するように前記ケース内に設けられ、前記コイル組立体に加わる所定の外力により前記バスバーが変形し、前記コイル組立体と前記制御基板との相対的な位置関係が変化した場合に、前記コイル組立体に接触して前記バスバーの変形を抑制する変形抑制部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変形抑制部とコイル組立体とが隙間を介して隣接して配置される。そして、例えば組付工程において所定の外力によりバスバーが変形しコイル組立体が制御基板に対して傾き始めると、コイル組立体が変形抑制部に接触してバスバーの変形が抑制される。これにより、制御基板とコイル組立体との位置関係の変化が抑制される。したがって、弁本体部の軸方向とコイル中心軸の軸方向とのずれが抑制され、基板ユニットのハウジングへの組み付け性は維持又は向上される。さらに、本発明によれば、変形抑制部とコイル組立体とを係合させる必要がなく、両者間に隙間が形成されるため、製造において高い寸法精度は要求されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の基板ユニット及びハウジングを示す斜視図である。
図2】本実施形態の組み付け後の基板ユニット及びハウジングの断面を示す概念図である。
図3】本実施形態の組み付け前の基板ユニット及びハウジングの断面を示す概念図である。
図4】本実施形態(第1例)のコイル組立体及び変形抑制部を示す斜視図である。
図5】本実施形態のコイル組立体及び変形抑制部の断面を示す概念図である。
図6】本実施形態のコイル組立体及び変形抑制部の断面を示す概念図である。
図7】本実施形態のコイル組立体及び変形抑制部を軸方向一方側から見た平面図である。
図8】本実施形態のコイル組立体及び変形抑制部の断面を示す概念図である。
図9】本実施形態の第2例のコイル組立体及び変形抑制部を軸方向一方側から見た平面図である。
図10】本実施形態の第3例のコイル組立体及び変形抑制部を軸方向一方側から見た平面図である。
図11】本実施形態の第4例のコイル組立体及び変形抑制部の断面を示す概念図である。
図12】本実施形態の第5例のコイル組立体及び変形抑制部を軸方向一方側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各例相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、説明に用いる各図は概念図であり、一部ハッチングや部材の表示が省略されている。
【0012】
本実施形態の基板ユニット1は、図1に示すように、ハウジング9に組み付けられる部材であって、制動制御装置100の一部を構成する部材である。まずは、制動制御装置100及びハウジング9について説明する。本実施形態の制動制御装置100は、後述する制御基板4、液圧回路(91)、複数の電磁弁(8)、電動ポンプ(図示略)、及びリザーバ(図示略)等を備えるABS又はESCアクチュエータである。制動制御装置100は、ホイールシリンダ(図示略)の液圧を調整する。
【0013】
ハウジング9は、図1図2、及び図3に示すように、内部に液路91が形成され、且つ一方面92に電磁弁8の弁本体部81が取り付けられた部材である。ハウジング9は、制動制御装置100の一部を構成する部材であって、直方体状の金属製ブロックである。ハウジング9は、図1~3における上端面である一方面92を含む複数の面をもつ多面体である。液路91は、図示略のマスタシリンダとホイールシリンダとを接続する液圧回路を構成している。ハウジング9には、複数の弁本体部81を含むアクチュエータに必要な各種装置が搭載される。
【0014】
電磁弁8は、弁本体部81と、コイル組立体3と、を備えている。電磁弁8は、液路91上に配置され、開閉動作により液圧回路の液圧を調整する。弁本体部81は、ハウジング9の一方面92に配置されている。弁本体部81は、一方面92から一方面92に垂直に突出している。弁本体部81は、円柱状に形成されており、自身の軸方向が長手方向となっている。
【0015】
以下、一方面92に垂直な直線に平行な方向、すなわち弁本体部81の軸方向を「軸方向」とし、軸方向一方を「上方」とし、軸方向他方を「下方」として説明する。弁本体部81は、上下方向に延びている。一方面92には、複数の弁本体部81が取り付けられている。弁本体部81は、図示略の弁体と弁座を備えている。弁体は、コイル組立体3が発生する電磁力により作動する。
【0016】
(基板ユニットの構成)
基板ユニット1は、図2及び図3に示すように、ケース2と、コイル組立体3と、制御基板4と、バスバー5と、変形抑制部6と、を備えている。ケース2は、一方に開口部21が形成され、他方に底部22が形成された有底筒状部材である。ケース2は、樹脂、又は樹脂と金属により形成されている。開口部21は、ハウジング9の一方面92に応じた大きさで、四角枠状に形成されている。図1に示すように、ケース2の角部には、ケース2をハウジング9に固定するための締結部材23が配置される締結部24が形成されている。
【0017】
以下、説明において、基板ユニット1がハウジング9に組み付けられた状態を「組付状態」と称する。ケース2は、組付状態において、開口部21が一方面92に塞がれて、弁本体部81を内側に収容するように構成されている。
【0018】
コイル組立体3は、ケース2内に配置されたソレノイド部材であって、組付状態において弁本体部81を囲むように構成されている。コイル組立体3は、図4及び図5に示すように、コイル31と、ボビン32と、ヨーク33と、を備えている。コイル31は、円筒状に形成されている。ボビン32は、コイル31の内周側でコイル31を支持する樹脂部材である。
【0019】
ヨーク33は、コイル31の外周面の一部、上端部、及び下端部を覆うように構成された金属部材である。ヨーク33は、コイル31が通電された際に磁気回路を形成する。コイル組立体3には、コイル31の中心孔に対応して上下方向に貫通する貫通孔30が形成されている。組付状態において、弁本体部81は、貫通孔30内に配置される。
【0020】
ヨーク33は、一構造例として、一方被覆部331と、他方被覆部332と、側方被覆部333と、を備えている。一方被覆部331は、コイル組立体3の上端面を被覆するように板状に形成されている。他方被覆部332は、コイル組立体3の下端面を被覆するように板状に形成されている。側方被覆部333は、一方被覆部331と他方被覆部332とを接続し、コイル組立体3の側面の一部を被覆するように、板状に形成されている。
【0021】
制御基板4は、ケース2内における底部22とコイル組立体3との間に配置された回路基板である。制御基板4は、組付状態においてコイル組立体3のコイル31への通電を制御して電磁弁8の開閉を制御する。制御基板4は、電子制御ユニット(ECU)であって、複数の電子部品及び回路配線を備えている。
【0022】
制御基板4は、底部22がケース2の筒状部20に組み付けられる前に、ケース2内の台座部25に取り付けられる。台座部25は、ケース2の一部であって、ケース2の内周面から突出した部位である。なお、筒状部20と底部22との組み付け構造については、公知の構造を採用でき、図示及び説明を省略する。
【0023】
バスバー5は、コイル組立体3から制御基板4に向けて突出し、コイル31と制御基板4とを接続する導体部材である。バスバー5は、棒状の導体である。1つのコイル組立体3に対して2本のバスバー5が並んで設けられている。バスバー5の一端(下端)は、コイル組立体3の上端の縁部分に固定されている。バスバー5の他端(上端)は、バスバー5の一端よりもコイル31(又はヨーク33)の中心軸側で、制御基板4に固定されている。つまり、バスバー5には、コイル31の径方向内側に向けて湾曲する部分が設けられている。
【0024】
より具体的に、バスバー5は、コイル組立体3の縁部から上方に延びる第1導体部51と、第1導体部51の上端部からコイル31の中心軸側に延びる第2導体部52と、第2導体部52の端部から上方に延びる第3導体部53と、を備えている。バスバー5は、コイル組立体3の上端面のうち、ヨーク33の側方被覆部333から遠い側の縁部に固定されている。なお、バスバー5の形状は径方向内側に向けて湾曲する形状に限定されず、例えば別の方向に湾曲する形状でもよいし、直線形状又は全体的に湾曲した形状であってもよい。
【0025】
変形抑制部6は、コイル組立体3に隙間Zを介して隣接するようにケース2内に設けられている。変形抑制部6は、所定の外力によりバスバー5が変形し、コイル組立体3と制御基板4との相対的な位置関係が変化した場合に、コイル組立体3に接触してバスバー5の変形を抑制する。換言すると、変形抑制部6は、コイル組立体3に対して隙間Zを持つようにケース2の内側に設けられ、コイル組立体3に外力が働きコイル組立体3と制御基板4との相対的な位置関係が変化するときにコイル組立体3と接触しその外力に対抗する方向に力を発生させる部材である。
【0026】
所定の外力は、例えば、バスバー5の変形が想定される場面と、バスバー5の固定位置及び/又は形状に基づいて設定することができる。本実施形態では、バスバー5の一端は、一方被覆部331における側方被覆部333から遠い側の端部に固定されている。また、バスバー5の他端は、第2導体部52を介して一端よりも貫通孔30側で制御基板4に固定されている。
【0027】
この固定位置と形状によれば、図6に示すように、基板ユニット1の下方にハウジング9が配置される組付工程の場面において、重力によりコイル組立体3に加わる力は、重力であり、重力による支点72を回転中心としたモーメントである。つまり、コイル組立体3には、側方被覆部333の下端が下方且つバスバー5側に移動しようとする力が加わる。バスバー5は、この所定の外力により弾性変形し始める。このように、本実施形態における所定の外力は、基板ユニット1を開口部22が下方となるように持ち上げた状態でコイル組立体3に加わる重力であり、重力による支点72を回転中心としたモーメントである。本実施形態の変形抑制部6は、組付工程でバスバー5の変形について想定された所定の外力(所定方向の外力)に対して、バスバー5の変形を抑制するように構成されている。変形抑制部6は、少なくとも所定の外力に対するバスバー5の変形を抑制する。
【0028】
本実施形態の変形抑制部6は、この所定の外力によりバスバー5が弾性変形した際に、他の部材よりも先に(最初に)コイル組立体3に接触して、バスバー5の変形を抑制する。つまり、変形抑制部6は、所定の外力によりバスバー5が変形した場合に、最初にコイル組立体3に接触するように構成されている。外力とは、コイル組立体3に外部から働く力のことである。外力は、コイル組立体3の重心に働く重力(それによるモーメント)以外にも、例えばロボットアーム等で基板ユニット1を運搬する際の加速度による慣性力や、他の物体との接触により働く力等を含む。所定の外力は、重力(モーメント)だけでなく又は重力(モーメント)に変えて、例えば基板ユニット1の移動による慣性力等に設定されてもよい。所定の外力は、組み付け作業に際してコイル組立体3に加わる外力の変形への影響度を考慮して設定されてもよい。
【0029】
本実施形態の構成によれば、バスバー5の変形によりコイル組立体3が制御基板4に対して傾き始めると、図6に示すように、コイル組立体3が変形抑制部6に接触してバスバー5の変形が抑制される。これにより、制御基板4(ケース2)とコイル組立体3との位置関係の変化が抑制される。したがって、弁本体部81の軸方向とコイル31(貫通孔30)の中心軸の軸方向とのずれが抑制され、基板ユニット1のハウジング9への組み付け性は維持され又は向上する。さらに、この構成によれば、変形抑制部6とコイル組立体3とを係合させる必要がなく、両者間に隙間Zが形成されるため、製造において高い寸法精度は要求されない。
【0030】
また、図6に示すように、変形抑制部6とコイル組立体3との接触点71は、バスバー5と制御基板4との接続点を支点72として回転しようとする重力によるモーメントを打ち消す方向にモーメントを発生させる点である。基板ユニット1をハウジング9に、一方面92の上方から組み付けようとする際、バスバー5両端の固定位置がコイル組立体3の中心軸(重心を通って上下方向に延びる直線)からずれているため、コイル組立体3に重力によるモーメントが加わる。
【0031】
コイル組立体3は、重力によるモーメント(所定の外力)が加わっていない初期固定状態において、その中心軸が上下方向に延びるように、バスバー5により制御基板4に接続されている。ここで、基板ユニット1をハウジング9に組み付ける組付工程において、コイル組立体3には重力によるモーメントが加わる。これにより、コイル組立体3の中心軸は、初期固定状態におけるコイル組立体3の中心軸である仮想中心軸74に対して傾こうとする(図6参照)。コイル組立体3の中心軸は、仮想中心軸74に対して傾くほど、コイル組立体3内に弁本体部81を挿入する作業が難しくなる。
【0032】
しかし、上記のとおり、本実施形態の構成によれば、コイル組立体3の傾きを変形抑制部6が抑制するため、組付工程の作業性は維持・向上される。なお、本実施形態の初期固定状態において、変形抑制部6は、コイル組立体3に接触していない。つまり、変形抑制部6は、初期固定状態において、コイル組立体3に対して非接触で配置されている。
【0033】
また、本実施形態において、変形抑制部6は、支点72から接触点71までのモーメントアームが支点72からコイル組立体3の重心73までのモーメントアームよりも長くなるように構成されている。この構成によれば、重力によるモーメントよりもそれを打ち消すモーメントのほうが大きくなり、バスバー5の変形をより確実に抑制することができる。なお、図6は概念図であって、重心73の位置等を正確に表すものではない。また、本実施形態の基板ユニット1の構成は、以下に説明する各例でも適用され、当該構成による効果は各例に共通の効果である。
【0034】
(変形抑制部及びコイル組立体の構造についての第1例)
第1例の変形抑制部6及びコイル組立体3の構造は、図4図7、及び図8に示すように構成されている。変形抑制部6は、ケース2と一体的に形成された樹脂部材であって、ケース2から突出している。1つのコイル組立体3に対して、2つの変形抑制部6が設けられている。例えば変形抑制部6と筒状部20とは、1つの一体成形品であってもよい。
【0035】
より詳細に、変形抑制部6は、ケース2内において、ケース2の内側の一部分(例えばケース2の内面又は台座部25)からコイル組立体3の上方の空間に向けて延伸する基部61と、基部61の端部から下方に延伸する接触部62と、を備えている。基部61は、ケース2と接触部62とを接続している。接触部62は、コイル31の中心軸に平行な軸方向に(底部22から開口部21に向かう方向に)延伸した棒状の部位である。
【0036】
変形抑制部6は、バスバー5から遠い側における、コイル組立体3の2つの角部にそれぞれ設けられている。つまり、一方の接触部62は側方被覆部333の一端部に隙間Zを介して隣接して配置され、他方の接触部62は側方被覆部333の他端部に隙間Zを介して隣接して配置されている。各接触部62は、ヨーク33の各部331~333に対して隙間を開けて隣接している。
【0037】
接触部62が配置されている一方被覆部331の2つの角部には、それぞれ切り欠き301、302が設けられている。同様に、接触部62が配置されている他方被覆部332の2つの角部には、それぞれ切り欠き301、302が設けられている。切り欠き301、302は、ヨーク33のうち、コイル31の軸方向に交差する方向に凹んだ部位である。
【0038】
第1例の接触部62は、切り欠き301、302の外側に配置されている。側方被覆部333は、接触部62に隙間Zを介して対向するように、切り欠き301、302よりも外側にまで延びている。つまり、対向配置された接触部62と側方被覆部333の内側の面(コイル31に対向する面)との間には、隙間Zが形成されている。接触部62と側方被覆部333との間に形成される隙間Zは、接触部62と一方被覆部331又は他方被覆部332との間に形成される隙間よりも小さい。
【0039】
第1例の構造によれば、コイル組立体3が自重により傾き始めると、2つの接触部62と側方被覆部333の下端部とが接触し、コイル組立体3の傾きが抑制される。コイル組立体3は、接触部62により、側方被覆部333の左右の両端部で支えられるため、より安定的に傾きが抑制される。
【0040】
また、第1例は、棒状である接触部62がヨーク33の内側に隙間Zをもって配置される構造であるため、係合構造がなく、高い寸法精度は不要であり、製造が容易となる。また、コイル組立体3を制御基板4に取り付ける際、コイル組立体3を変形抑制部6に対して摺動させる必要がなく、単純に接触部62を側方被覆部333の内側に挿入するだけで足りる。したがって、基板ユニット1での取り付け作業性も向上する。
【0041】
(変形抑制部及びコイル組立体の構造についての第2例)
第2例の構造は、第1例の構造と比較して、切り欠き301、302及び接触部62の配置関係の点のみが異なっている。つまり、第2例の構造は、図9に示すように、上方(軸方向一方側)から見て、接触部62の少なくとも一部が、凹部33aの内側に配置されている。凹部33aは、切り欠き301、302と側方被覆部333の端部とにより形成されている。接触部62は、第1例同様、側方被覆部333の内側の面に隙間Zを介して対向するように配置されている。
【0042】
第2例の切り欠き301、302は、第1例の切り欠き301、302より大きい。接触部62は、切り欠き301、302の内側に、一方被覆部331及び他方被覆部332に隙間を介して配置されている。第2例(図9)では、接触部62は、上方から見て、凹部33a内に完全に収容されている。
【0043】
第2例によれば、接触部62の少なくとも一部が凹部33a内に配置されることで、側方被覆部333の左右の幅(軸方向に直交する一方向の幅)を小さくすることができ、コイル組立体3の小型化が可能となる。第2例のように、上方から見て、接触部62が完全に凹部33a内に配置されることで、コイル組立体3のさらなる小型化が可能となる。なお、棒状の接触部62をもつ第2例においても、第1例と同様の効果が発揮される。
【0044】
(変形抑制部及びコイル組立体の構造についての第3例)
第3例の構造は、第2例の構造と比較して、接触部の形状の点で異なっている。つまり、第3例の接触部620は、図10に示すように、基部61から下方に延伸する棒状部材であって、延伸方向に直交する平面で切断した断面が凹状(C字状)になるように形成されている。側方被覆部333の左右の端部は、それぞれ接触部620が形成する上下方向に延びる溝620aの内側に配置されている。
【0045】
より詳細に、接触部620は、側方被覆部333の内側の面に隙間Zを介して対向する第1延伸部621と、側方被覆部333の外側の面に隙間を介して対向する第2延伸部622と、第1延伸部621と第2延伸部622とを接続する第3延伸部623と、を備えている。第3延伸部623と側方被覆部333との間にも隙間が形成されている。第1延伸部621の一部は、上方から見て、切り欠き301、302の内側に配置されている。
【0046】
この構造によっても、第1例と同様の効果が発揮される。また、接触部620が側方被覆部333を隙間を介して挟むように配置されているため、組付工程で想定されたモーメントとは異なる方向の外力が加わった場合でも、接触部620と側方被覆部333とが接触する。これにより、第3例の構造によれば、予め傾きが想定された所定の外力以外の外力に対しても、バスバー5の変形を抑制することができる。
【0047】
さらに、第3例の構造では、側方被覆部333の両端部それぞれに断面凹状の接触部620が配置されているため、コイル組立体3のあらゆる方向の傾きに対して対応することができる。なお、図示しないが基部61は、ケース2と接触部620とを接続している。
【0048】
(変形抑制部及びコイル組立体の構造についての第4例)
第4例の構造での接触部62は、図11に示すように、接触部62と側方被覆部333との隙間Zが、上端部よりも下端側の一部分のほうが小さくなるように構成されている。具体的に、接触部62の下端部には、側方被覆部333側に突出する突出部62aが形成されている。これにより、所定の外力によりコイル組立体3が傾いた際、突出部62aが最初に側方被覆部333に接触し、より傾きが小さい状態で変形を抑制することができる。
【0049】
また、突出部62aの下端面が、上方ほど側方被覆部333に近くなるテーパ状に形成されているため、ヨーク33の内側への接触部62の挿入も容易となる。仮に突出部62aと側方被覆部333とが接触したとしてもテーパ面によりスムーズな挿入が可能となる。また、突出部62aを設けた構成であっても、コイル組立体3に対して係合関係を形成する必要がないため、高い寸法精度は不要である。
【0050】
なお、突出部62aは例えば半球状に形成されてもよい。この構成であっても、接触部62の挿入は容易となる。また、突出部62aの位置は、下端部に限らない。接触部62は、所定の外力によりバスバー5が変形した際、突出部62aが他の部位より先に(最初に)コイル組立体3に接触するように形成されていればよい。
【0051】
(変形抑制部及びコイル組立体の構造についての第5例)
第5例の構造において、接触部62は、図12に示すように、ヨーク33に設けられた貫通孔(「凹部」に相当する)33bに挿入されて、コイル組立体3の内側に配置されている。第5例では、接触部62は、一方被覆部331に設けられた貫通孔33b内に配置され、側方被覆部333に隙間Zを介して隣接している。この構成によっても、第2例と同様の効果が発揮される。貫通孔33bは、接触部62が余裕をもって挿入できるように大きく形成されていればよく、その製造に高い寸法精度は要求されない。また、貫通孔33bがコイル組立体3の左右方向の中央部分に形成されることで、1つの変形抑制部6で効率的に変形を抑制することができる。また、他方被覆部332にも貫通孔33bに対応する貫通孔が形成されてもよい。
【0052】
(その他)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、第1例~第4例において、変形抑制部6は、1つのコイル組立体3に対して1つ配置されてもよい。例えば、変形抑制部6は、側方被覆部333の一方側にのみ配置されてもよい。これによっても、バスバー5の変形を抑制することができる。ただし、変形抑制の確実性は、第1例~第4例のように、変形抑制部6が側方被覆部333の両端に配置されているほうが高い。また、変形抑制部6は、1つのコイル組立体3に対して3つ以上配置されてもよい。
【0053】
また、変形抑制部6は、制御基板4に設けられてもよい。ただし、固定強度の観点から、第1例~第5例のように、変形抑制部6は、ケース2に設けられることが好ましい。また、接触部62の形状は、棒状のうち、角柱状でも円柱状でもよい。接触時の滑り抑制の観点では、コイル組立体3との接触面を大きくすることができる角柱状が好ましい。また、本発明における凹部には、例えば貫通孔形状や一部側方が開口している溝形状が含まれる。また、接触部62、620は、コイル組立のうち、側方被覆部333以外の部分に接触するように構成されてもよい。バスバー5の固定位置は、上記実施形態と異なる位置でもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…基板ユニット、100…制動制御装置、2…ケース、21…開口部、22…底部、3…コイル組立体、31…コイル、32…ボビン、33…ヨーク、33a…凹部、33b…貫通孔(凹部)、4…制御基板、5…バスバー、6…変形抑制部、61…基部、62、620…接触部、71…接触点、72…支点、73…重心、8…電磁弁、81…弁本体部、9…ハウジング、91…液路、92…一方面、Z…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12