(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20230523BHJP
F21V 9/45 20180101ALI20230523BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20230523BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20230523BHJP
F21V 29/10 20150101ALI20230523BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20230523BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230523BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230523BHJP
【FI】
F21S2/00 340
F21S2/00 600
F21V9/45
F21V7/28 240
F21V5/04 200
F21S2/00 373
F21V29/10
G02B21/06
F21Y115:30
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019178930
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 清幸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106054366(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0121146(US,A1)
【文献】特開2013-202305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 9/45
F21V 7/28
F21V 5/04
F21V 29/10
G02B 21/06
F21Y 115/30
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起用の半導体レーザと、
当該半導体レーザにより励起される蛍光体、および、当該蛍光体から放射される蛍光を取り出す光学系、を有する
、熱源となるレーザ励起光源と、
前記蛍光とは異なる波長を有する光を放射する複数のLED光源と、
前記レーザ励起光源からの蛍光と前記複数のLED光源からの光とを合成し、光出射部から出射する合成光学系と、
を備え、
前記複数のLED光源は、紫外領域の光を放射するLED光源を含み、
前記複数のLED光源のうち、前記紫外領域の光を放射するLED光源は、他の波長の光を放射するLED光源よりも前記レーザ励起光源から離れた位置に配置されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記複数のLED光源は、前記蛍光を取り出す光学系の光軸に沿って一列に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記紫外領域の光を放射するLED光源は、前記蛍光を取り出す光学系の光軸終端に配置された前記光出射部に最も近い位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記複数のLED光源は、前記光軸に対して直交する方向から光を放射し、
前記合成光学系は、前記複数のLED光源から放射される光の進行方向をそれぞれ前記光軸に平行な方向に変換するダイクロイックミラーを備えることを特徴とする請求項2または3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記複数のLED光源にそれぞれ対応する前記ダイクロイックミラーが前記光軸上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記複数のLED光源は、前記レーザ励起光源から前記光出射部に向けて、放射される光の波長の長いものから順に配置されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記LED光源は、LEDと、当該LEDから放射される光をコリメートするコリメートレンズと、前記LEDおよび前記コリメートレンズを収容する金属製の第一の筐体と、を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記レーザ励起光源および前記合成光学系を収容する金属製の第二の筐体をさらに備え、
前記第一の筐体は、前記第二の筐体外に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記複数のLED光源にそれぞれ対応する複数の前記第一の筐体は、前記第二の筐体を構成する筐体壁面における同一面上に固定されていることを特徴とする請求項8に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光顕微鏡などに用いられる、複数の波長の光を合成して出射する光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光顕微鏡用の光源としては、複数の輝線を有する超高圧の水銀ランプや、連続光を持つキセノンランプが用いられてきた。
近年、環境負荷軽減などのために、半導体レーザ(LD)でCe:YAG蛍光体を励起し、蛍光させる光源技術が実用化されている。例えば、特許文献1には、顕微鏡用光源として、LD励起された蛍光体からの放射光と、紫外域(UV域)を含む波長の異なる2つのLEDの放射光とを、2枚のダイクロイックミラー(DM)により合成して出射する光源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2019/0121146号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蛍光顕微鏡用の光源装置では、多くの蛍光試薬に対応するスペクトルを有し、鮮明な蛍光画像を得るために、高出力なレーザ励起光源が用いられる。ところが、レーザ励起光源は、電気入力に対して光出力の効率が悪く、発熱量が大きい。そのため、レーザ励起光源の近くに配置されたLEDは、当該レーザ励起光源の熱の影響を受け易い。特に、小型の光源装置においては部品間の配置間隔が狭く、レーザ励起光源の近くに配置されたLEDは昇温し易い。
LEDは、高温になるほど発光効率が低くなり、光出力が低下するという特性を有する。特にUV域のLEDでは、この傾向が強く、光出力の低下を招きやすい。
このように、レーザ励起光源と複数のLEDとを備える蛍光顕微鏡用の光源装置では、レーザ励起光源が熱源となり、UV域の光を放射するLEDが熱の影響を受けて光出力が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、レーザ励起光源とUV域を含む波長の異なる光を放射する複数のLEDとを備えた光源装置において、UV域の光を安定して出力することができる光源装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る光源装置の一態様は、励起用の半導体レーザと、当該半導体レーザにより励起される蛍光体、および、当該蛍光体から放射される蛍光を取り出す光学系、を有する、熱源となるレーザ励起光源と、前記蛍光とは異なる波長を有する光を放射する複数のLED光源と、前記レーザ励起光源からの蛍光と前記複数のLED光源からの光とを合成し、光出射部から出射する合成光学系と、を備え、前記複数のLED光源は、紫外領域の光を放射するLED光源を含み、前記複数のLED光源のうち、前記紫外領域の光を放射するLED光源は、他の波長の光を放射するLED光源よりも前記レーザ励起光源から離れた位置に配置されている。
このように、UV域の光を放射するLED光源(UV-LED)を熱源となるレーザ励起光源から離れた位置に配置するので、UV-LEDの温度上昇を抑制し、UV光の出力の低下を抑制することができる。
【0007】
また、上記の光源装置において、前記複数のLED光源は、前記蛍光を取り出す光学系の光軸に沿って一列に配置されていてもよい。この場合、複数のLED光源を狭い幅で配置することが可能となり、小型(幅狭)の光源装置とすることができる。
さらに、上記の光源装置において、前記紫外領域の光を放射するLED光源は、前記蛍光を取り出す光学系の光軸終端に配置された前記光出射部に最も近い位置に配置されていてもよい。この場合、UV-LEDから放射される光を損失させることなく光出射部から出射させることが可能となり、UV光の放射強度を適切に得ることができる。
【0008】
また、上記の光源装置において、前記複数のLED光源は、前記光軸に対して直交する方向から光を放射し、前記合成光学系は、前記複数のLED光源から放射される光の進行方向をそれぞれ前記光軸に平行な方向に変換するダイクロイックミラーをさらに備えていてもよい。
この場合、複数のLED光源の配置姿勢を揃えることができるので、複数のLED光源を容易かつ適切に配置することができる。また、蛍光を取り出す光学系の光軸に対して直交する方向から光を放射するようにLED光源を配置することで、LED光源からの光の進行方向を容易に光軸に平行な方向に変換することができる。
【0009】
さらに、上記の光源装置において、前記複数のLED光源にそれぞれ対応する前記ダイクロイックミラーが前記光軸上に配置されていてもよい。この場合、蛍光を取り出す光学系の光軸上で、当該蛍光と複数のLED光源からの光とを合成することができる。また、ダイクロイックミラーを、蛍光を取り出す光学系の光軸上に配置することで、より光源装置のフットプリントを低下させることができる。
また、上記の光源装置において、前記複数のLED光源は、前記レーザ励起光源から前記光出射部に向けて、放射される光の波長の長いものから順に配置されていてもよい。この場合、ダイクロイックミラーの設計および製作が容易となり、安価な構成とすることができる。
【0010】
さらにまた、上記の光源装置において、前記LED光源は、LEDと、当該LEDから放射される光をコリメートするコリメートレンズと、前記LEDおよび前記コリメートレンズを収容する金属製の第一の筐体と、を備えていてもよい。
この場合、LEDで発生した熱を金属筐体である第一の筐体に伝導させることができるので、LEDの温度上昇を適切に抑制し、光出力の低下を抑制することができる。
【0011】
また、上記の光源装置において、前記レーザ励起光源および前記合成光学系を収容する金属製の第二の筐体をさらに備え、前記第一の筐体は、前記第二の筐体外に配置されていてもよい。
この場合、半導体レーザや蛍光体で発生した熱を金属筐体である第二の筐体に伝導させることができるので、半導体レーザや蛍光体の温度上昇を適切に抑制し、蛍光出力の低下を抑制することができる。また、レーザ励起光源を収容する筐体が合成光学系を収容する筐体と一体となっているため、筐体の表面積を増やすことができ、レーザ励起光源が発生する熱の排熱効率を上げることができる。
【0012】
さらに、上記の光源装置において、前記複数のLED光源にそれぞれ対応する複数の前記第一の筐体は、前記第二の筐体を構成する筐体壁面における同一面上に固定されていてもよい。
この場合、複数のLED光源の配置精度を向上させることができ、光損失を低減させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光源装置によれば、UV域LEDを、他のLEDよりもレーザ励起光源から離れた位置に配置するので、UV域LEDの温度上昇を抑制することができる。したがって、UV域の光を安定して出力することができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における光源装置を備える蛍光顕微鏡の構成例を示す図である。
【
図3】干渉フィルタ(ダイクロイックミラー)の分光反射率を示す図である。
【
図5】LEDの温度と光出力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における光源装置100を備える蛍光顕微鏡システム1000の構成例を示す図である。
蛍光顕微鏡システム1000は、光源装置100と、本体部200と、を備える。本体部200は、励起フィルタ201と、ダイクロイックミラー202と、対物レンズ203と、吸収フィルタ204と、接眼レンズ205と、光学アダプタ206を備える。また、接眼レンズ205は、カメラ等の撮像光学系を含んでいてもよい。
【0016】
光源装置100の光ファイバ101から出射された光は、光学アダプタ206を介し、適切な光のみが、本体部に導光され、励起フィルタ201によって励起波長の光のみに制限される。励起フィルタ201を透過した励起光は、ダイクロイックミラー202によって反射され、対物レンズ203を介して試料(蛍光試料)300に照射される。試料300は、励起光が照射されることにより励起し、蛍光を発する。
試料300から発せられた蛍光は、対物レンズ203を経由してダイクロイックミラー202へ入射し、ダイクロイックミラー202を透過して吸収フィルタ204に入射する。吸収フィルタ204は、余分な波長の光をカットし、試料300から発生した蛍光のみを接眼レンズ205へ入射させる。これにより、試料300から発生した蛍光を観察することできる。
【0017】
以下、光源装置100について具体的に説明する。
図2は、光源装置100の構成例を示す図である。この
図2は、光源装置100を上方から見た図を示している。
光源装置100は、レーザ励起光源110と、複数のLED光源120A~120Dと、合成光学系130と、を備える。
【0018】
レーザ励起光源110は、LD用筐体111と、冷却フィン112と、を備える。LD用筐体111は、放熱性に優れた金属材料により形成され、不図示の複数の励起用半導体レーザ(LD)や当該励起用LDからの励起光によって励起される蛍光体(蛍光プレート)、当該蛍光体から放射される蛍光(黄色)を取り出す光学系などを収容している。冷却フィン1112は、LD用筐体111に固定されており、LDや蛍光体によって発生しLD用筐体111に伝導された熱を排熱する。
【0019】
LED光源120Aは、金属製のLED用筐体(第一の筐体)121aを備える。LED用筐体121aは、LED122aと、コリメートレンズ123aおよび124aと、を収容している。LED122aから放射された光は、2枚のコリメートレンズ123aおよび124aによってコリメートされ、平行光となって出射される。LED用筐体121aは、例えば円筒形状で冷却機能を有するように複数の溝が付いた金属製の筐体とすることができる。
なお、LED光源120B~120Dは、LED光源120Aと同一構成を有するため、ここでは説明を省略する。
【0020】
複数のLED光源120A~120Dは、紫外領域(UV域)の光を放射するLED光源を含み、それぞれ異なる波長の光を放射する。
本実施形態では、LED光源120Aが、UV域の光を放射するLED光源である。なお、UV域の光とは、IEC 60050-845:1987で規定されている波長400nm以下の光とする。
例えば、LED光源120Aは、ピーク波長が365nmであるLED122aを備える。また、LED光源120Bはピーク波長が406nm、LED光源120Cはピーク波長が436nm、LED光源120Dはピーク波長が470nmであるLEDをそれぞれ備える。
【0021】
合成光学系130は、レーザ励起光源110から放射される蛍光に、LED光源120A~120Dからそれぞれ放射される光を合成し、合成光を光出射部から出射する。
合成光学系130は、金属製の光学系用筐体131を備える。光学系用筐体131は、干渉フィルタ132a~132dと、集光レンズ133と、を収容している。この光学系用筐体131は、LD用筐体111に連結されており、光学系用筐体131を構成する筐体壁面における同一面上には、複数のLED光源120A~120Dの各LED用筐体が固定されている。
なお、光学系用筐体131は、LD用筐体111と一体的に構成されていてもよい。LD用筐体111および光学系用筐体131が、第二の筐体に対応している。
【0022】
干渉フィルタ132a~132dは、誘電体多層膜からなる。本実施形態では、干渉フィルタ132a~132dは、ダイクロイックミラーであり、特定の波長範囲の光を反射させ、その他の波長範囲の光を透過させることができる。
本実施形態では、ダイクロイックミラー132a~132dは、レーザ励起光源110の蛍光を取り出す光学系の光軸(
図2の光軸L)上に配置されている。具体的には、複数のLED光源120A~120Dは、それぞれレーザ励起光源110の蛍光を取り出す光学系の光軸(
図2の光軸L)に対して直交する方向から光を放射するように配置されている。そして、ダイクロイックミラー132a~132dは、それぞれ光軸L上において、対応するLED光源からの光が放射されてくる位置に配置されている。
【0023】
図3は、ダイクロイックミラー132a~132dの分光反射率を示す図である。この
図3において、実線DMaはダイクロイックミラー132aの特性、点線DMbはダイクロイックミラー132bの特性、一点鎖線DMcはダイクロイックミラー132cの特性、破線DMdはダイクロイックミラー132dの特性を示している。
これにより、LED光源120Aから放射された波長365nmの光は、ダイクロイックミラー132aによって反射されて集光レンズ133に入射する。LED光源120Bから放射された波長406nmの光は、ダイクロイックミラー132bによって反射され、ダイクロイックミラー132aを透過して集光レンズ133に入射する。
【0024】
また、LED光源120Cから放射された波長436nmの光は、ダイクロイックミラー132cによって反射され、ダイクロイックミラー132bおよび132aを透過して集光レンズ133に入射する。LED光源120Dから放射された波長470nmの光は、ダイクロイックミラー132dによって反射され、ダイクロイックミラー132c、132bおよび132aを透過して集光レンズ133に入射する。
また、レーザ励起光源110から放射された黄色の蛍光は、ダイクロイックミラー132d、132c、132bおよび132aをそれぞれ透過し、集光レンズ133に入射する。
【0025】
このように、レーザ励起光源110から取り出された蛍光は、そのまま直進して集光レンズ133に入射する。一方、LED光源120A~120Dから光軸Lに対して直交する方向から放射された光は、それそれダイクロイックミラー132a~132dによって光軸Lに平行な方向に光の進行方向が変換されて集光レンズ133に入射する。
このようにして、レーザ励起光源110から放射された蛍光と、LED光源120A~120Dからそれぞれ放射された光とは、光軸L上で合成されて集光レンズ133から出射される。このとき、集光レンズ133の光出射側に位置する光学系用筐体131の端部が、光源装置100の光出射部となる。
なお、光ファイバを使用する場合には、効率よく入射させるために集光レンズ133の焦点面に光ファイバ端面が配置されるように筒状のホルダが設けられる。
以上の構成により、光源装置100からは、
図4に示すスペクトルを有する光が出射されることになる。
【0026】
ところで、レーザ励起光源は、電気入力に対する光出力が15~25%と効率が悪く、光に変換されない電気入力のほとんどは熱に変換される。
例えば、レーザ励起光源において、半導体レーザ(LD)の光出力効率η1が35%(100W入力時に35Wが光出力、65Wは熱)、蛍光の光出射効率η2が50~60%(上記の励起光35W出力時に19Wが蛍光出力、16Wが熱)である場合、レーザ励起光源の光出力効率ηは、η1×η2=18~24%となる。つまり、電気入力が100Wクラスのレーザ励起光源の場合、発熱量は80Wクラスにもなり得る。
【0027】
このように、蛍光顕微鏡用の光源装置において、レーザ励起光源が備えるLDや蛍光体は熱源となる。
一方で、生物観察等に使用される蛍光顕微鏡システムは、研究室等に設置されるため、フットプリントが小さくなるように小型化が求められている。そのため、蛍光顕微鏡用の光源装置においても、各構成要素を互いに近接して配置することが求められる。この場合、レーザ励起光源の近傍に配置されたLED光源は、レーザ励起光源において発生した熱の排熱の影響により昇温し易くなる。
【0028】
図5は、LEDの温度と光出力との関係を示す図である。
図5において、横軸は、LEDのPN接合部の温度(ジャンクション温度)、縦軸は、室温(25℃)での光出力を1としたときの相対強度である。
図5の破線aは、波長406nmの光を放射するLEDの温度と光出力との関係、実線bは、波長365nm光を放射するLEDの温度と光出力との関係を示している。
この
図5に示すように、LEDは、ジャンクション温度が高いほど発光効率が悪く、光出力が低下するという特性を有する。この熱特性は、LEDの種類によって異なり、特にUV域の光を放射するLED(UV-LED)は、熱の影響を受けやすく、実線bに示すように、破線aで示す波長406nmの光を放射するLEDと比較して出力低下を招きやすい。
【0029】
そこで、本実施形態における蛍光顕微鏡用の光源装置100では、UV-LEDを備えるLED光源120Aを、他のLEDを備えるLED光源120B~120Dよりも熱源であるレーザ励起光源110から離れた位置に配置する。
このように、UV-LEDをレーザ励起光源110から遠方に配置させることで、UV-LEDの温度上昇を抑制することができる。その結果、UV-LEDの光出力の低下を抑制することができる。
【0030】
また、複数のLED光源120A~120Dは、
図2に示すように、レーザ励起光源110から蛍光を取り出す光学系の光軸Lに沿って一列に配置されている。そして、複数のLED光源120A~120Dのうち、LED光源120Aは、レーザ励起光源110から最も遠い位置、すなわち、光源装置100の光出射部に最も近い位置に配置されている。
ここで、複数のLED光源120A~120Dは、光軸Lに対して直交する方向から光を放射するように配置されている。LED光源120A~120Dから放射された光は、それぞれダイクロイックミラー132a~132dによって光軸Lに平行な方向に光の進行方向が変換される。ダイクロイックミラー132a~132dは、光軸L上に配置されており、レーザ励起光源110から放射される蛍光と、LED光源120A~120Dから放射され、ダイクロイックミラー132a~132dによって進行方向が変換された光とは、光軸L上で合成される。
【0031】
このように、複数のLED光源120A~120Dを光軸Lに沿って一列に配置することで、LED光源120A~120Dを狭い幅の領域に配置することが可能となり、光源装置100を小型(狭幅)にすることができる。さらに、ダイクロイックミラー132a~132dを光軸L上に配置し、光軸L上で放射光を合成することで、よりフットプリントをより低下させることができる。
また、UV-LEDを光出射部に最も近い位置に配置することで、UV-LEDから放射される光を損失させることなく光出射部から出射させることが可能となり、UV光の出力強度を適切に得ることができる。
【0032】
図2に示す配置の場合、光出射部から最も遠くに配置されたレーザ励起光源110の放射光は、4枚のダイクロイックミラー132a~132dを透過して光出射部から出射される。一方、光出射部に最も近い位置に配置されたUV-LED(LED光源120A)の放射光は、ダイクロイックミラー132aによって1回反射されるのみで光出射部から出射される。本実施形態のように、LED光源120Aを光出射部に最も近い位置に配置することで、UV光がダイクロイックミラーを透過することによる光損失を無くし、1回の反射損失のみにとどめることができる。
【0033】
また、複数のLED光源120A~120Dは、レーザ励起光源110から光出射部に向けて、放射光の波長の長いものから順に配置することができる。この場合、ダイクロイックミラー132a~132dは、
図3に示すように、対応するLED光源からの放射光の波長の光を反射し、当該放射光の波長よりも長い波長の光を透過するフィルタ特性を有していればよい。したがって、フィルタの設計および製作が容易となり、安価な構成とすることができる。
【0034】
さらに、複数のLED光源120A~120Dの各々は、光軸Lに対して直交する方向から光を放射するように配置姿勢を揃えることができる。したがって、複数のLED光源120A~120Dを容易かつ適切に配置することができる。
ここで、複数のLED光源120A~120Dの各々は、金属からなるLED用筐体内に、LEDとコリメートレンズとが収容された構成を有する。そして、LEDおよびコリメートレンズを収容した各LED用筐体は、金属からなる共通の筐体(本実施形態では、光学系用筐体131)の同一面上、
図2においては、光学系用筐体131の同図上側の面、に固定されている。
このように、複数のLED用筐体を共通の筐体の同一面上に固定することで、LED用筐体の配置精度を向上し、光学部品の配置精度を向上させることができる。したがって、LED光源120A~120Dからの放射光の光損失を低減することが可能となる。
【0035】
また、LED光源120A~120Dが備えるLEDは、それぞれ金属筐体内にコリメートレンズと共に収容されているため、LEDで発生した熱を金属筐体に伝導させることができ、LEDの温度上昇を抑制することができる。
同様に、レーザ励起光源110が備えるLDおよび蛍光体は、金属筐体内に蛍光を取り出す光学系と共に収容されているため、LDや蛍光体で発生した熱を金属筐体に伝導させることができ、LDや蛍光体の温度上昇を抑制することができる。さらに、LD用筐体111に光学系用筐体131を連結することで、レーザ励起光源110で発生する熱を伝導させる金属筐体の表面積を増やすことができ、排熱効率を向上させることができる。
また、LED用筐体をLD用筐体110外に配置するので、LDや蛍光体が発する熱が直接LEDに伝わることを抑制し、LEDの温度上昇を抑制することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態における光源装置100は、レーザ励起光源110とUV域を含む波長の異なる光を出射する複数のLED光源120A~120Dとを備えた小型な光源装置であって、UV域の光を安定して出力することができる光源装置とすることができる。
【0037】
(変形例)
上記実施形態において、LED光源から放射される光の波長および光源装置100が備えるLED光源の数は上述した波長および数に限定されない。光源装置100が備えるLED光源は、レーザ励起光源110から放射される蛍光とは異なる波長を有する光を放射する複数のLED光源であって、紫外領域(UV域)の光を放射するLED光源が含まれていればよい。
【0038】
また、上記実施形態においては、複数のLED光源120A~120Dを、レーザ励起光源110から見て波長の長いものから順に配置する場合について説明したが、LED光源120A~120Dの配置は上記に限定されない。
例えば、レーザ励起光源110を光源装置100の光出射部から最も遠い位置、LED光源120Aを光源装置100の光出射部に最も近い位置に配置し、残りの複数のLED光源の配置順を熱特性や定格入力電流などによって決定してもよい。熱特性に応じて配置順を決定する場合には、熱による出力低下の比率が大きいLED光源ほどレーザ励起光源110から遠い位置に配置する。また、定格入力電流に応じて配置順を決定する場合には、定格入力電流が大きいLED光源ほどレーザ励起光源110に近い位置(光出射部から遠い位置)に配置する。
【0039】
さらに、上記実施形態においては、
図2に光源装置100の上面図を示すように、LED光源120A~120Dが水平方向に光を放射する場合について説明したが、光軸Lに対して直交する方向であれば、光を放射する方向は水平方向に限定されない。例えば、LED光源120A~120Dは、光軸Lに対して上方向や下方向から光を放射してもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、光源装置100が蛍光顕微鏡用の光源装置である場合について説明したが、光源装置100は蛍光顕微鏡以外にも適用可能である。例えば、光源装置100は、半導体検査用(例えば、半導体の耐光検査用)の光源装置や、材料検査用の光源装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
100…光源装置、101…光ファイバ、110…レーザ励起光源、111…LD用筐体、112…冷却フィン、120A~120D…LED光源、121a…LED用筐体、122a…LED、123a…コリメートレンズ、124a…コリメートレンズ、130…合成光学系、131…光学系用筐体、132a~132d…干渉フィルタ(ダイクロイックミラー)、133…集光レンズ、200…本体部、201…励起フィルタ、202…ダイクロイックミラー、203…対物レンズ、204…吸収フィルタ、205…接眼レンズ、206…光学アダプタ、300…試料、1000…蛍光顕微鏡システム