(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電極箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/64 20060101AFI20230523BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20230523BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H01M4/64 A
C25D7/00 G
C25D7/06 G
(21)【出願番号】P 2019194160
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2008-0004185(KR,A)
【文献】国際公開第2006/064741(WO,A1)
【文献】特開2019-186134(JP,A)
【文献】特開2015-063730(JP,A)
【文献】特開2018-087369(JP,A)
【文献】特開2005-288856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/66
C25D 7/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置に用いられる電極箔の製造方法であって、
金属板を巻き出す一対の巻出ロール、めっき液を貯留するめっき槽、及び製造後の電極箔を巻き取る一対の巻取ロールを含む製造装置を用い、
同一の金属材料からなる第1の金属板及び第2の金属板を
前記一対の巻出ロールからそれぞれ巻き出す巻出工程と、
前記第1の金属板及び前記第2の金属板のそれぞれを搬送しながら接合ロールによって互いに接合
することで、一体の接合体を形成する接合工程と、
前記接合体を給電ロールに接触させつつ搬送しながら前記めっき槽内の前記めっき液に浸漬し、前記接合体の両面
に電解めっきによって
連続的にめっき層
を形成するめっき工程と、
前記両面に前記めっき層が
それぞれ形成された
前記接合体を搬送しながら分離ロールによって分離することで、前記金属板の片面に前記めっき層が形成された2つの電極箔を互いに分離する分離工程と、
前記2つの電極箔を前記一対の巻取ロールによってそれぞれ巻き取る巻取工程と、
を備える電極箔の製造方法。
【請求項2】
金属板を巻き出す一対の巻出ロール、めっき液を貯留するめっき槽、及び製造後の電極箔を巻き取る一対の巻取ロールを含む製造装置を用い、
同一の金属材料からなる第1の金属板及び第2の金属板
を、これらの金属板の間に導電性の芯材を挟むように、
前記一対の巻出ロールからそれぞれ巻き出す巻出工程と、
前記第1の金属板、前記第2の金属板、及び前記芯材のそれぞれを搬送しながら接合ロールによって互いに接合
することで、一体の接合体を形成する接合工程と、
前記接合体を給電ロールに接触させつつ搬送しながら前記めっき槽内の前記めっき液に浸漬し、前記接合体の両面
に電解めっきによって
連続的にめっき層
を形成するめっき工程と、
前記両面に前記めっき層が
それぞれ形成された
前記接合体を搬送しながら分離ロールによって分離することで、前記金属板の片面に前記めっき層が形成された2つの電極箔を前記芯材から分離する分離工程と、
前記2つの電極箔を前記一対の巻取ロールによってそれぞれ巻き取る巻取工程と、
を備える電極箔の製造方法。
【請求項3】
前記芯材の厚さは、前記第1の金属板の厚さ、及び前記第2の金属板の厚さのそれぞれよりも厚い、請求項2に記載の電極箔の製造方法。
【請求項4】
前記給電ロールは、前記巻出ロールから前記巻取ロールに至る搬送経路において前記めっき槽よりも上流に配置された第1の給電ロールを含み、
前記接合ロールから搬送された前記接合体を、前記第1の給電ロールを経て前記めっき槽内に搬送する、請求項1~3のいずれか一項記載の電極箔の製造方法。
【請求項5】
前記接合体は、前記第1の給電ロールに接触することで前記第1の給電ロールに電気的に接続され、
前記めっき槽内には、前記接合体の前記両面にそれぞれ対向するように配置され、前記第1の給電ロールとの電位差によって前記接合体の前記両面に前記めっき層を形成する第1の電極が配置され、
前記めっき工程では、前記第1の給電ロールに接触させた前記接合体を前記めっき槽内に搬送し、前記めっき液に浸漬される前記接合体の前記両面が前記第1の電極と対向するように前記接合体を搬送しつつ、電解めっきによって前記接合体の前記両面に連続的にめっき層を形成する、請求項4に記載の電極箔の製造方法。
【請求項6】
前記めっき槽内には、当該めっき槽内における前記接合体の搬送方向を反転させるガイドロールが配置され、
前記給電ロールは、前記巻出ロールから前記巻取ロールに至る搬送経路において前記めっき槽よりも下流に配置された第2の給電ロールを含み、
前記ガイドロールを経て前記めっき槽の外部に搬送した前記接合体を、前記第2の給電ロールを経て前記分離ロールに搬送する、請求項1~5のいずれか一項記載の電極箔の製造方法。
【請求項7】
前記接合体は、前記第2の給電ロールに接触することで前記第2の給電ロールに電気的に接続され、
前記めっき槽内には、前記ガイドロールによって前記搬送方向が反転した前記接合体の前記両面にそれぞれ対向するように配置され、前記第2の給電ロールとの電位差によって前記接合体の前記両面に前記めっき槽を形成する第2の電極が配置され、
前記めっき工程では、前記めっき液に浸漬される前記接合体の前記両面が前記第2の電極と対向するように前記接合体を搬送しつつ、前記接合体を前記めっき槽内から前記めっき槽外に搬送して前記接合体を前記第2の給電ロールに接触させ、前記ガイドロールと前記第2の給電ロールとの間において、電解めっきによって前記接合体の前記両面に連続的にめっき層を形成する、請求項6記載の電極箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極箔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置を構成する電極箔として、金属板の片面にめっき層が形成された電極箔が用いられることがある。このような電極箔を製造する方法として、例えば、特許文献1に記載された方法を用いることができる。この方法では、電解めっきによって金属板の片面にめっき層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極箔の製造方法において、製造工程の短縮化が要求されている。金属板の片面をめっきする方法(特許文献1に記載の方法)を用いて電極箔を製造する場合、例えば金属板に電解めっきを施す速度を速めることによって、製造工程の短縮化を図ることが考えられる。しかしながら、この速度を速めるために、金属板に供給する電流の電流密度を高めた場合、電極箔の破れ等の不具合が発生するおそれがある。
【0005】
本開示は、不具合の発生を抑制しつつ、製造工程を短縮することができる電極箔の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る電極箔の製造方法は、蓄電装置に用いられる電極箔の製造方法であって、第1の金属板及び第2の金属板を互いに接合する接合工程と、第1の金属板及び第2の金属板が互いに接合された接合体の両面に、電解めっきによってめっき層をそれぞれ形成するめっき工程と、めっき層が形成された第1の金属板、及びめっき層が形成された第2の金属板を互いに分離する分離工程と、を備える。
【0007】
本開示の一側面に係る電極箔の製造方法では、第1の金属板及び第2の金属板が互いに接合された接合体の両面のそれぞれに電解めっきを施した後、めっき層が形成された第1の金属板、及びめっき層が形成された第2の金属板を互いに分離する。これにより、金属板の片面にめっき層が形成された2枚の電極箔が同時に得られる。よって、上述した製造方法によれば、1枚の金属板の片面を電解めっきを施して1枚の電極箔を得る場合と比べて、単位時間当たりに得られる電極箔の生産量が2倍となる。その結果、目標生産量の電極箔を短時間で得ることができるので、電極箔の製造工程を短縮することが可能となる。更に、上述した製造方法では、第1の金属板及び第2の金属板が互いに接合された接合体をめっき対象物としているので、1枚の金属板をめっき対象物とする場合と比べて、めっき対象物の厚さを厚くすることができ、めっき対象物の強度を高めることができる。これにより、電解めっきの際の電流の電流密度の大きさに起因して電極箔の破れ等の不具合が発生することを抑制できる。
【0008】
本開示の他側面に係る電極箔の製造方法は、蓄電装置に用いられる電極箔の製造方法であって、第1の金属板及び第2の金属板の間に導電性の芯材を挟むように、第1の金属板及び第2の金属板を芯材に接合する接合工程と、第1の金属板及び第2の金属板が芯材に接合された接合体の両面に、電解めっきによってめっき層をそれぞれ形成するめっき工程と、めっき層が形成された第1の金属板、及びめっき層が形成された第2の金属板を芯材から分離する分離工程と、を備える。
【0009】
本開示の他側面に係る電極箔の製造方法では、第1の金属板及び第2の金属板が芯材に接合された接合体の両面のそれぞれに電解めっきを施した後、めっき層が形成された第1の金属板、及びめっき層が形成された第2の金属板を芯材から分離する。これにより、金属板の片面にめっき層が形成された2枚の電極箔が同時に得られる。よって、上述した製造方法によれば、1枚の金属板の片面に電解めっきを施して1枚の電極箔を得る場合と比べて、単位時間当たりに得られる電極箔の生産量が2倍となる。その結果、目標生産量の電極箔を短時間で得ることができるので、電極箔の製造工程を短縮することが可能となる。更に、上述した製造方法では、第1の金属板及び第2の金属板が芯材に接合された接合体をめっき対象物としているので、1枚の金属板をめっき対象物とする場合と比べて、めっき対象物の厚さを厚くすることができ、めっき対象物の強度を高めることができる。これにより、電解めっきの際の電流の電流密度に起因して電極箔の破れ等の不具合が発生することを抑制できる。更に、接合体に芯材が介在することによって、接合体に芯材が介在しない場合と比べて、めっき対象物の厚さが一層厚くなり、めっき対象物の強度が一層高められる。これにより、電極箔の破れ等の不具合の発生を抑制しつつ、電解めっきの際の電流の電流密度を高くすることができる。電流の電流密度を高くすると、金属板に電解めっきを施す速度を速めることができるので、電極箔の製造工程を一層短縮することができる。
【0010】
芯材の厚さは、第1の金属板の厚さ、及び第2の金属板の厚さのそれぞれよりも厚くてもよい。この場合、めっき対象物(すなわち、接合体)の厚さがより一層厚くなり、めっき対象物の強度がより一層高められる。これにより、電極箔の破れ等の不具合の発生を抑制しつつ、電解めっきの際の電流の電流密度を更に高くすることができる。電流の電流密度を更に高くすると、金属板に電解めっきを施す速度を更に速めることができるので、電極箔の製造工程をより一層短縮することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、不具合の発生を抑制しつつ、製造工程を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電極箔の製造方法に用いられる製造装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る電極箔の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3(a)、
図3(b)、及び
図3(c)は、第1の実施形態に係る電極箔の製造工程を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る電極箔の製造方法に用いられる製造装置を示す概略構成図である。
【
図5】
図5(a)、
図5(b)、及び
図5(c)は、第2の実施形態に係る電極箔の製造工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、電極箔の製造方法の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1に示す製造装置30は、本実施形態に係る電極箔20の製造方法に用いることができる。製造装置30は、金属板10の片面にめっき層15(
図3(c)参照)が形成された電極箔20を製造する。本実施形態では、金属板10が、アルミニウムによって形成され、めっき層15が銅によって形成される場合を例示する。しかし、金属板10は、ステンレス等の他の金属材料によって形成されてもよいし、めっき層15は、ニッケル等の他の金属材料によって形成されてもよい。電極箔20は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の蓄電装置に用いることができる。蓄電装置は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いることができる。
【0015】
製造装置30は、いわゆるロール・ツー・ロール方式を用いて金属板10に電解めっきを施すめっき装置である。具体的には、製造装置30は、巻出ロール(不図示)から金属板10を巻き出し、金属板10を搬送しながら金属板10に電解めっきを連続的に施し、めっき層15が形成された金属板10(すなわち、電極箔20)を別の巻取ロール(不図示)によって巻き取る。この方法を用いると、金属板を搬送せずに1枚ずつ金属板に電解めっきを施す場合と比べて、金属板10に電解めっきを効率良く施すことができるので、電極箔20の製造工程の短縮化を図る上で好適である。
【0016】
製造装置30は、例えば、めっき槽31と、一対の接合ロール32と、給電ロール33と、ガイドロール34と、給電ロール35と、一対の分離ロール36と、を備えている。めっき槽31には、めっき液41が貯留されている。一対の接合ロール32、給電ロール33、ガイドロール34、給電ロール35、及び一対の分離ロール36のそれぞれは、例えば、円柱状をなしており、金属板10の搬送方向に交差する方向を回転軸として回転する。
【0017】
一対の接合ロール32には、第1の金属板11及び第2の金属板12がそれぞれ供給される。第1の金属板11及び第2の金属板12のそれぞれは、上述した電極箔20の金属板10として用いられるものであり、互いに同一の構成を有している。以降の説明において、第1の金属板11及び第2の金属板12を区別して説明する必要がない場合には、「第1の金属板11及び第2の金属板12のそれぞれ」を単に「金属板10」と称する。
【0018】
一対の接合ロール32は、上下方向に隙間を空けて配置されており、この隙間に、第1の金属板11及び第2の金属板12が搬送される。第1の金属板11及び第2の金属板12は、第1の金属板11の裏面11aと第2の金属板12の裏面12aとが互いに対向した状態(
図3(a)参照)で、一対の接合ロール32の隙間に搬送される。一対の接合ロール32は、第1の金属板11の裏面11aと第2の金属板12の裏面12aとを互いに圧着する。これにより、第1の金属板11及び第2の金属板12が互いに接合される。第1の金属板11及び第2の金属板12の接合方法は、一対の接合ロール32によって圧着する方法に限定されず、接着剤を用いる方法、或いは、熱によって接合する方法など、あらゆる方法が採用されてよい。
【0019】
以下の説明では、互いに接合された第1の金属板11及び第2の金属板12を「接合体40」と称する。接合体40の一方面40aは、第2の金属板12の表面12bを構成し、接合体40の他方面40bは、第1の金属板11の表面11bを構成する(
図3(a)参照)。
【0020】
給電ロール33には、一対の接合ロール32から接合体40が水平方向に搬送される。給電ロール33は、めっき液41の液面上に配置されている。給電ロール33は、給電ロール33の外周面において接合体40の一方面40a(すなわち、第2の金属板12の表面12b)を巻き付けることによって、接合体40の搬送方向を水平方向から鉛直方向の下向きに変える。給電ロール33の外周面が接合体40に接触することによって、給電ロール33は接合体40と電気的に接続されている。給電ロール33を経た接合体40は、鉛直方向の下向きに搬送され、めっき液41に浸漬される。
【0021】
ガイドロール34は、めっき槽31の底部に配置されており、めっき液41に浸漬されている。ガイドロール34には、接合体40が給電ロール33から鉛直方向下向きに搬送される。ガイドロール34は、接合体40の搬送方向を反転する。すなわち、ガイドロール34は、接合体40の搬送方向を鉛直方向の下向きから上向きに変える。ガイドロール34を経た接合体40は、めっき液41の液面上に配置された給電ロール35に向かって鉛直方向の上向きに搬送される。
【0022】
給電ロール35は、給電ロール35の外周面において接合体40の一方面40aを巻き付けることによって、接合体40の搬送方向を鉛直方向から水平方向に変える。給電ロール35の外周面が接合体40に接触することによって、給電ロール35は接合体40と電気的に接続される。給電ロール35を経た接合体40は、一対の分離ロール36に向かって水平方向に搬送される。
【0023】
めっき液41には、一対の陽極45及び一対の陽極46が浸漬されて配置されている。各陽極45及び46は、例えば、白金又は白金めっきチタン等の不溶性の金属部材である。各陽極45及び46は、めっき槽31内において鉛直方向に沿って延びており、水平方向に沿って並んでいる。一対の陽極45は、給電ロール33とガイドロール34との間の搬送経路に設けられている。一対の陽極45は、鉛直方向の下向きに搬送される接合体40を挟んで両側にそれぞれ配置されている。一方の陽極45は、接合体40の一方面40aと対向しており、他方の陽極45は、接合体40の他方面40bと対向している。
【0024】
一対の陽極46は、ガイドロール34と給電ロール35との間の搬送経路に設けられている。一対の陽極46は、鉛直方向の上向きに搬送される接合体40を挟んで両側にそれぞれ配置されている。一方の陽極46は、接合体40の一方面40aと対向しており、他方の陽極46は、接合体40の他方面40bと対向している。各陽極45及び46は、電源(不図示)の正極と電気的に接続されている。この電源の負極は、各給電ロール33及び35と電気的に接続されている。各給電ロール33及び35は、上述したように、接合体40と電気的に接続されるので、この電源の負極は、各給電ロール33及び35を介して接合体40と電気的に接続される。
【0025】
したがって、各陽極45及び46と、各給電ロール33及び35とに電源から電流が供給されると(すなわち、電圧が印加されると)、鉛直方向の下向きに搬送される接合体40と各陽極45との間、及び、鉛直方向の上向きに搬送される接合体40と各陽極46との間にそれぞれ電位差が生じ、接合体40の両面40a及び40bに対して、電解めっきが施される。これにより、接合体40の両面40a及び40bにめっき層15(
図3(b)参照)がそれぞれ形成される。
【0026】
一対の分離ロール36には、電解めっきが施された接合体40が水平方向に搬送される。一対の分離ロール36は、上下方向に隙間を空けて配置されており、この隙間に接合体40が搬送される。一方の分離ロール36がその外周面に接合体40の一方面40a(すなわち、第2の金属板12の表面12b)を沿わせると共に、他方の分離ロール36がその外周面に接合体40の他方面40b(すなわち、第1の金属板11の表面11b)を沿わせることによって、第1の金属板11の裏面11aと第2の金属板12の裏面12aとを互いに分離する。第1の金属板11及び第2の金属板12の分離方法は、一対の分離ロール36を用いて機械的に分離する方法の他、手動で分離する方法など、あらゆる方法が採用されてよい。
【0027】
続いて、
図2、
図3(a)、
図3(b)、及び
図3(c)を更に参照して、製造装置30を用いた電極箔20の製造方法について説明する。
【0028】
まず、電極箔20の金属板10として第1の金属板11及び第2の金属板12を用意し、第1の金属板11及び第2の金属板12を互いに接合する(接合工程P1)。接合工程P1では、
図1に示すように、第1の金属板11及び第2の金属板12が一対の接合ロール32に供給され、一対の接合ロール32が、第1の金属板11と第2の金属板12とを互いに圧着する。これにより、
図3(a)に示すように、第1の金属板11の裏面11aと第2の金属板12の裏面12aとが互いに接合された接合体40が形成される。
【0029】
次に、接合体40の両面40a及び40bに、電解めっきによってめっき層15をそれぞれ形成する(めっき工程P2)。めっき工程P2では、
図1に示すように、一対の接合ロール32から搬送された接合体40が、給電ロール33を経て、めっき液41に浸漬される。接合体40がめっき液41に浸漬された状態で、各陽極45及び46と、各給電ロール33及び35とに電流が供給される。これにより、鉛直方向の下向きに搬送される接合体40と一対の陽極45との間、及び、鉛直方向の上向きに搬送される接合体40と一対の陽極46との間にそれぞれ電位差が生じ、接合体40の両面40a及び40bのそれぞれに対して電解めっきが同時に施される。その結果、
図3(b)に示すように、接合体40の両面40a及び40b、すなわち、第1の金属板11の表面11b及び第2の金属板12の表面12bにめっき層15がそれぞれ形成される。電解めっきが施された接合体40は、給電ロール35に向かって鉛直方向の上向きに搬送され、めっき液41から引き上げられる。
【0030】
次に、第1の金属板11及び第2の金属板12を互いに分離する(分離工程P3)。分離工程P3では、
図1に示すように、電解めっきが施された接合体40が一対の分離ロール36に搬送され、一対の分離ロール36が、第1の金属板11及び第2の金属板12を互いに分離する。具体的には、一方の分離ロール36がその外周面に第2の金属板12の表面12bを沿わせると共に、他方の分離ロール36がその外周面に第1の金属板11の表面11bを沿わせることによって、第1の金属板11の裏面11aと第2の金属板12の裏面12aとを互いに分離する。これにより、表面11bにめっき層15が形成された第1の金属板11と、表面12bにめっき層15が形成された第2の金属板12とが同時に得られる。すなわち、2枚の電極箔20が同時に得られる。
【0031】
続いて、本実施形態に係る電極箔20の製造方法の効果について説明する。本実施形態に係る電極箔20の製造方法では、上述したように、第1の金属板11及び第2の金属板12が互いに接合された接合体40の両面40a及び40bのそれぞれに電解めっきを施した後、めっき層15が形成された第1の金属板11、及びめっき層15が形成された第2の金属板12を互いに分離する。これにより、金属板10の片面(表面11b又は表面12b)にめっき層15が形成された2枚の電極箔20が同時に得られる。よって、本実施形態に係る製造方法によれば、1枚の金属板の片面に電解めっきを施して1枚の電極箔を得る場合と比べて、単位時間当たりに得られる電極箔20の生産量が2倍となる。その結果、目標生産量の電極箔20を短時間で得ることができるので、電極箔20の製造工程を短縮することが可能となる。更に、本実施形態に係る製造方法では、第1の金属板11及び第2の金属板12が互いに接合された接合体40をめっき対象物としているので、1枚の金属板をめっき対象物とする場合と比べて、めっき対象物の厚さを厚くすることができ、めっき対象物の強度を高めることができる。これにより、電解めっきの際の電流の電流密度の大きさに起因して電極箔20の破れ等の不具合が発生することを抑制できる。
【0032】
[第2の実施形態]
以下では、第2の実施形態に係る電極箔20の製造方法について説明する。第2の実施形態では、電極箔20の製造工程に芯材13が用いられる点で、第1の実施形態とは相違している。第2の実施形態の説明において第1の実施形態と重複する記載は省略し、第1の実施形態と相違する部分を記載する。
図4に示す製造装置30Aは、第1の金属板11及び第2の金属板12に加えて芯材13を搬送する点で、第1の実施形態に係る製造装置30とは相違する。製造装置30Aのその他の構成は、製造装置30と同一である。
【0033】
本実施形態に係る電極箔20の製造方法では、まず、電極箔20の金属板10として第1の金属板11及び第2の金属板12を用意し、更に芯材13を用意する。芯材13は、例えば、板状をなしており、金属等の導電性を有する材料によって形成されている。本実施形態では、芯材13が、アルミニウムによって形成される金属板である場合を例示する。芯材13の材料が金属板10の材料と同じである場合、芯材13と金属板10との接合面で腐食が起きにくくなる。芯材13は、銅等の他の金属によって形成される金属板であってもよい。
図4に示すように、第1の金属板11及び第2の金属板12の間に芯材13が挟まれるように配置された状態で、第1の金属板11、芯材13、及び第2の金属板12が一対の接合ロール32に供給される。
【0034】
次に、第1の金属板11及び第2の金属板12を芯材13に接合する(接合工程P1)。接合工程P1では、
図4に示すように、一対の接合ロール32が、第1の金属板11及び第2の金属板12を芯材13に圧着する。具体的には、
図5(a)に示すように、一対の接合ロール32は、第1の金属板11の裏面11aを芯材13の一方面13aに圧着すると共に、第2の金属板12の裏面12aを芯材13の他方面13bに圧着する。これにより、第1の金属板11及び第2の金属板12が芯材13に接合される。
【0035】
以下の説明では、芯材13に接合された第1の金属板11及び第2の金属板12を「接合体40A」と称する。
図5(a)に示すように、接合体40Aの一方面40cは、第2の金属板12の表面12bを構成し、接合体40Aの他方面40dは、第1の金属板11の表面11bを構成する。
【0036】
図5(a)に示す例では、芯材13の厚さT
1は、第1の金属板11の厚さT
2及び第2の金属板12の厚さT
2のそれぞれよりも厚くなっている。しかし、厚さT
1は、厚さT
2よりも薄くてもよいし同一でもよい。なお、芯材13の厚さT
1とは、芯材13における一方面13aと他方面13bとの間の厚さを意味する。第1の金属板11の厚さT
2は、第1の金属板11における表面11bと裏面11aとの間の厚さを意味し、第2の金属板12の厚さT
2は、第2の金属板12における表面12bと裏面12aとの間の厚さを意味する。また、接合体40Aの一方面40c(又は他方面40d)の法線方向から見た場合に、芯材13の面積は、第1の金属板11の面積及び第2の金属板12の面積のそれぞれと同一であってもよいし、第1の金属板11の面積及び第2の金属板12の面積のそれぞれよりも大きくてもよいし小さくてもよい。
【0037】
次に、接合体40Aの両面40c及び40dに、電解めっきによってめっき層15をそれぞれ形成する(めっき工程P2)。めっき工程P2では、
図4に示すように、一対の接合ロール32から搬送された接合体40Aが、給電ロール33を経て、めっき液41に浸漬される。接合体40Aがめっき液41に浸漬された状態で、各陽極45及び46と、各給電ロール33及び35とに電流が供給される。これにより、鉛直方向の下向きに搬送される接合体40Aと一対の陽極45との間、及び、鉛直方向の上向きに搬送される接合体40Aと一対の陽極46との間にそれぞれ電位差が生じ、接合体40Aの両面40c及び40dのそれぞれに対して電解めっきが同時に施される。これにより、
図5(b)に示すように、接合体40Aの両面40c及び40dにめっき層15がそれぞれ形成される。電解めっきが施された接合体40Aは、給電ロール35に向かって鉛直方向の上向きに搬送され、めっき液41から引き上げられる。
【0038】
次に、第1の金属板11及び第2の金属板12を芯材13から分離する(分離工程P3)。分離工程P3では、電解めっきが施された接合体40Aが一対の分離ロール36に搬送され、一対の分離ロール36が、第1の金属板11及び第2の金属板12を芯材13から分離する。具体的には、一方の分離ロール36がその外周面に第2の金属板12の表面12bを沿わせると共に、他方の分離ロール36がその外周面に第1の金属板11の表面11bを沿わせることによって、第1の金属板11の裏面11aを芯材13の一方面13aから分離すると共に、第2の金属板12の裏面12aを芯材13の他方面13bから分離する。これにより、表面11bにめっき層15が形成された第1の金属板11と、表面12bにめっき層15が形成された第2の金属板12とが同時に得られる。すなわち、2枚の電極箔20が同時に得られる。
【0039】
続いて、本実施形態に係る電極箔20の製造方法の効果について説明する。本実施形態に係る電極箔20の製造方法では、上述したように、第1の金属板11及び第2の金属板12が芯材13に接合された接合体40Aの両面40c及び40dに電解めっきを施した後、めっき層15が形成された第1の金属板11、及びめっき層15が形成された第2の金属板12を芯材13から分離する。これにより、金属板10の片面(表面11b又は表面12b)にめっき層15が形成された2枚の電極箔20が同時に得られる。よって、本実施形態に係る製造方法によれば、1枚の金属板の片面に電解めっきを施して1枚の電極箔を得る場合と比べて、単位時間当たりに得られる電極箔20の生産量が2倍となる。その結果、目標生産量の電極箔20を短時間で得ることができるので、電極箔20の製造工程を短縮することが可能となる。
【0040】
更に、本実施形態に係る製造方法では、第1の金属板11及び第2の金属板12が芯材13に接合された接合体40Aをめっき対象物としているので、1枚の金属板をめっき対象物とする場合と比べて、めっき対象物の厚さを厚くすることができ、めっき対象物の強度を高めることができる。これにより、電解めっきの際の電流の電流密度に起因して電極箔20の破れ等の不具合が発生することを抑制できる。更に、接合体40Aに芯材13が介在することによって、接合体40Aに芯材13が介在しない場合と比べて、めっき対象物の厚さが一層厚くなり、めっき対象物の強度が一層高められる。これにより、電極箔20の破れ等の不具合の発生を抑制しつつ、電解めっきの際の電流の電流密度を高くすることができる。電流の電流密度を高くすると、金属板10に電解めっきを施す速度を速めることができるので、電極箔20の製造工程を一層短縮することができる。
【0041】
本実施形態に係る電極箔20の製造方法では、芯材13の厚さT1は、第1の金属板11の厚さT2、及び第2の金属板12の厚さT2のそれぞれよりも厚い。これにより、めっき対象物(すなわち、接合体40A)の厚さがより一層厚くなり、めっき対象物の強度がより一層高められる。これにより、電極箔20の破れ等の不具合の発生を抑制しつつ、電解めっきの際の電流の電流密度を更に高くすることができる。電流の電流密度を更に高くすると、金属板10に電解めっきを施す速度を更に速めることができるので、電極箔20の製造工程をより一層短縮することができる。
【0042】
以上、第1の実施形態及び第2の実施形態について説明したが、本開示は、第1の実施形態及び第2の実施形態に限られない。例えば、第1の実施形態及び第2の実施形態では、電極箔が、ロール・ツー・ロール方式を利用した製造装置によって製造される場合を例示したが、この方式に限られず、他の方式を利用して電極箔が製造されてもよい。また、製造装置の構成は、第1の実施形態及び第2の実施形態に限られず、適宜変更可能である。例えば、製造装置は、一対の接合ロール、給電ロール、ガイドロール、給電ロール、及び一対の分離ロールに加えて、他のロールを備えていてもよい。製造装置の各ロールは、円柱状に限られず、他の形状をなしていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
11…第1の金属板、12…第2の金属板、13…芯材、15…めっき層、20…電極箔、40,40A…接合体、40a,40c…一方面、40b,40d…他方面、T1,T2…厚さ。