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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】不織布作製装置および不織布作製方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/033 20120101AFI20230523BHJP
【FI】
D04H3/033
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019195836
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070874
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 暁師
(72)【発明者】
【氏名】神野 文夫
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-026977(JP,A)
【文献】特許第2598114(JP,B2)
【文献】特開平04-253857(JP,A)
【文献】特開平07-011558(JP,A)
【文献】特開平08-302552(JP,A)
【文献】特開平09-291457(JP,A)
【文献】特開2019-131945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を溶融させて吐出する繊維状のフィラメントを束にして噴き出す繊維噴付装置と、前記繊維噴付装置から噴き付けられる前記フィラメントの束を搬送面で捕集してシート状の不織布にしつつ移送方向に搬送するシート搬送装置と、を備える不織布作製装置であって、
前記繊維噴付装置は、前記フィラメントが吐出方向を中心にして周回回転しつつ前記シート搬送装置の搬送面に噴き付けられる際に、当該フィラメントの回転径を調整する調整手段を有して、当該搬送面の移送方向の複数個所にそれぞれ配置されていることを特徴とする不織布作製装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記繊維噴付装置による吐出中に前記フィラメントの回転径を調整する機能を備えることを特徴とする請求項1に記載の不織布作製装置。
【請求項3】
前記シート搬送装置は、前記搬送面の下方から上面側を吸引して前記シート状フィラメントを保持する吸引手段を備え、
前記吸引手段は、前記繊維噴付装置による前記フィラメントの束の噴付箇所における吸引圧力が当該噴付箇所の搬送方向下流側の吸引圧力よりも大きくなるように調整されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の不織布作製装置。
【請求項4】
前記吸引手段は、前記シート搬送装置の搬送面の移送方向先頭の吸引圧力Ps、当該移送方向最後尾の吸引圧力Pe、および当該移送方向中間の吸引圧力Pmとしたとき、Ps>Pm、かつPe>Pmに調整されていることを特徴とする請求項3に記載の不織布作製装置。
【請求項5】
前記吸引手段の吸引圧力は前記シート状フィラメントの目付け量に応じて調整されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の不織布作製装置。
【請求項6】
熱可塑性樹脂を溶融させて吐出する繊維状のフィラメントを束にして搬送面に向けて噴き出して捕集することによりシート状の不織布にしつつ移送方向に搬送する不織布作製方法であって、
前記搬送面の移送方向の複数箇所に前記フィラメントを噴き付けて捕集する際に、当該フィラメントの周回回転する回転径を異ならせて上流側と絡ませて不織布にすることを特徴とする不織布作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状のフィラメントの束をコンベアの搬送面で捕集してシート状の不織布を作製する不織布作製装置および不織布作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、熱可塑性樹脂を溶融して吐出する紡糸装置から繊維状のフィラメントをコンベアの搬送面に噴き付けてシート状に捕集することにより作製されている(例えば、特許文献1を参照)。この種の不織布には、例えば、特許文献2に記載のように、2台の紡糸装置をコンベアの搬送面の移動方向に並列させることによって、層毎に機能の異なる多層の不織布を作製することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-144840号公報
【文献】特開2016-141929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように多層に作製する不織布にあっては、異なる紡糸装置からフィラメントをコンベア上の搬送面に噴き付けて層毎に捕集することから、その層間の接合に問題が生じる場合がある。例えば、十分な接合強度を得ることが難しく、作製工程の途中で剥離等してしまう可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、高品質に積層されている多層の不織布を作製することのできる不織布作製装置や不織布作製方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する不織布作製装置の発明の一態様は、 熱可塑性樹脂を溶融させて吐出する繊維状のフィラメントを束にして噴き出す繊維噴付装置と、前記繊維噴付装置から噴き付けられる前記フィラメントの束を搬送面で捕集してシート状の不織布にしつつ移送方向に搬送するシート搬送装置と、を備える不織布作製装置であって、前記繊維噴付装置は、前記フィラメントが吐出方向を中心にして周回回転しつつ前記シート搬送装置の搬送面に噴き付けられる際に、当該フィラメントの回転径を調整する調整手段を有して、当該搬送面の移送方向の複数個所にそれぞれ配置されていることを特徴とするものである。
【0007】
上記課題を解決する不織布作製方法の発明の一態様は、熱可塑性樹脂を溶融させて吐出する繊維状のフィラメントを束にして搬送面に向けて噴き出して捕集することによりシート状の不織布にしつつ移送方向に搬送する不織布作製方法であって、前記搬送面の移送方向の複数箇所に前記フィラメントを噴き付けて捕集する際に、当該フィラメントの周回回転する回転径を異ならせて上流側と絡ませて不織布にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明の一態様によれば、シート状の層毎において、フィラメントの周回回転する回転径を異ならせて重ねることができ、その層間におけるフィラメント同士を互いに絡ませて多層の不織布を作製することができる。
【0009】
したがって、高品質に積層されている多層の不織布を作製することのできる不織布作製装置や不織布作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る不織布作製方法を実行する不織布作製装置を示す図であり、その概略全体構成を示すシステム概念図である。
図2図2は、吐出されるフィラメントの降下する状態を説明する説明図である。
図3図3は、降下するフィラメントの周回回転径の調整を説明する説明図である。
図4図4は、フィラメントの周回回転径の調整手段の第1の他の態様を示す構成図である。
図5図5は、フィラメントの周回回転径の調整手段の第2の他の態様を示す構成図である。
図6図6は、フィラメントの周回回転径の調整手段の第3の他の態様を説明する説明図である。
図7図7は、第2実施形態に係る不織布作製方法を実行する不織布作製装置を示す図であり、その概略全体構成を示すシステム概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る不織布製造方法を実行する不織布作製装置を示す図である。
【0012】
図1において、不織布作製装置1は、3組の噴出装置(繊維噴付装置)10を備えており、それぞれの噴出装置10(10A、10B、10C)は、紡糸装置20、冷風装置30およびインジェクタ40を備えて構築されている。この不織布作製装置1は、噴出装置10と共に、捕集コンベア(シート搬送装置)50、エンボス加工装置60、およびワインダ70が各種工程を実行可能に直列的に配置されている。その噴出装置10A、10B、10Cは捕集コンベア50上部の搬送面に対して搬送方向に直列的に配置されている。この不織布作製装置1は、図1の紙面に向かう方向を幅方向にする不織布Cを連続的に作製するように構築されており、紡糸する繊維(フィラメント)をシート状にして捕集しつつエンボス加工を施すことによって繊維間を適宜に接合する、所謂、スパンボンド製法により不織布Cを作製する。
【0013】
紡糸装置20は、押出機21と、紡糸口金23とを備えて構成されている。押出機21は、ホッパ22に供給される原料樹脂R(R1、R2、R3)を溶融しながら、螺旋状のローター21rの回転により、所定流量の溶融物を紡糸口金23へと送り出す。紡糸口金23は、所望の繊維状の構造を形成しつつ吐出するように構成された複数の複合紡糸ノズル(不図示)を有し、押出機21からの溶融物を複数のフィラメント(繊維)fの束(以下、「フィラメント集合体」という)Fとして重力方向に紡出(排出)する。
【0014】
ここで、原料樹脂Rは、噴出装置10A、10B、10C毎に種別を変えることなく同一材料R1、R2、R3のシート状フィラメントを重ねて多層にしても良く、また、噴出装置10A、10B、10C毎に種別を変えて異種材料R1、R2、R3のシート状フィラメントを重ねて多層にしても良い。例えば、原料樹脂Rとしては、熱可塑性樹脂を主成分としており、同種または異種の、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系の樹脂を採用することができ、適宜に、例えば、公知の耐熱安定剤および耐候安定剤などの各種の安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の添加物を含有させるようにしてもよい。
【0015】
冷風装置30は、対向位置に配置されるオープン型の一対の送風機31、32を備えている。この冷風装置30は、紡糸装置20から排出されて上方から下方に向かって通過するフィラメント集合体Fに送風機31、32のそれぞれから冷却エアーAcを吹き付けて冷却する。ここで、冷風装置30は、一方の送風機31をメインとして利用可能に大型タイプを設置して、対面する他方の送風機32をサブとして補助的に利用可能に小型タイプが選択されて設置されている。
【0016】
インジェクタ40は、紡糸方向である上方から下方に向かってボディ41内を通過するように降下するフィラメント集合体Fに駆動流体として下方に向かう高圧エアーを吹き付けることにより、そのボディ41の入り口側に低圧領域を発生させる構造を備えている。このインジェクタ40は、降下するフィラメント集合体Fをボディ41の入り口側の低圧領域に引き込むように牽引しつつ、そのボディ41内でも高圧エアーにより下方に牽引することで、冷風装置30を経由して上方から下方の紡糸方向に降下するフィラメント集合体Fを延伸させる。
【0017】
捕集コンベア50は、メインコンベア51と、サブコンベア52、53と、吸引ボックス(吸引手段)54と、を備えて構築されている。メインコンベア51は、フィラメント集合体Fの幅よりも広めに形成されて表裏に通気可能な網状の捕集ベルト151がローラ151r群に巻き掛けられて周回駆動するように設置されている。サブコンベア52、53も、フィラメント集合体Fの幅よりも広めに形成されて表裏に通気可能な網状の捕集ベルト152、153がローラ152r群やローラ群153rのそれぞれに巻き掛けられて逆向きに周回駆動するように設置されている。
【0018】
捕集ベルト151は、噴出装置10A、10B、10Cの下方の噴付箇所に上面151aが確実に位置する長さを有してローラ151r群に巻き掛けられており、インジェクタ40により牽引降下されてくるフィラメント集合体Faを受け取りつつ移送することによって布状(シート状)に捕集するようになっている。すなわち、捕集ベルト151は、上面151aの周回移動方向(移送方向)の上流側端部(先頭)から下流側端部(最後尾)に向かって周回駆動することにより、シート状のフィラメント集合体Faを捕集可能な十分な面積を有して捕集面および搬送面として機能する。
【0019】
捕集ベルト152は、捕集ベルト151の上面151aの周回移動方向の中間に位置する噴出装置10Bの下方の噴付箇所に上面152aが位置してローラ152r群に巻き掛けられており、インジェクタ40により牽引降下されてくるフィラメント集合体Fbを受け取りつつ移送することによってシート状に捕集するようになっている。また、捕集ベルト153は、捕集ベルト151の上面151aの周回移動方向の下流側端部(最後尾)に位置する噴出装置10Cの下方の噴付箇所に上面153aが位置してローラ153r群に巻き掛けられており、インジェクタ40により牽引降下されてくるフィラメント集合体Fcを受け取りつつ移送することによってシート状に捕集するようになっている。
【0020】
これら捕集ベルト152、153は、捕集ベルト151の上面151aの周回移動方向の上流側端部(先頭)に位置する噴出装置10Aの下方から下流側に外れた位置に設置されており、その上面151aと噴出装置10B、10Cとの間に位置して逆転方向に周回駆動することによって、それぞれの上面152a、153aがシート状のフィラメント集合体Fb、Fcを捕集する捕集面および搬送面として機能する。そして、これら捕集ベルト152、153は、捕集ベルト151の上面(上部)151aに対面する下部との間にシート状のフィラメント集合体Fb、Fcを挟み込むように周回駆動して下流側への搬送を補助するように機能する。
【0021】
吸引ボックス54は、メインコンベア51の捕集ベルト151内に収容されて、それぞれ減圧室として機能する吸引チャンバ154a、154a-2、154b、154b-2、154c、154c-2に区画されている。これら吸引チャンバ154a~154c-2は、上部側を吸引するように不図示の吸引口が配置されて、それぞれ個別に駆動可能な吸引ファン155a~155c-2が吸引可能に接続されている。
【0022】
吸引チャンバ154a、154b、154cは、それぞれ噴出装置10A、10B、10Cのインジェクタ40下方に位置するように設置されており、吸引チャンバ154a-2、154b-2、154c-2は、これら吸引チャンバ154a、154b、154cの下流側に位置するように設置されている。
【0023】
吸引チャンバ154aは、噴出装置10Aのインジェクタ40の下方のメインコンベア51の捕集ベルト151直下に位置するように設置されており、吸引ファン155aが駆動して減圧されることによりその捕集ベルト151の直下から上方を吸引する。
【0024】
吸引チャンバ154a-2は、その吸引チャンバ154aの下流側に隣接して、後述するように、噴出装置10Bの下方に位置する吸引チャンバ154bとの間のメインコンベア51の捕集ベルト151直下に位置するように設置されており、吸引ファン155a-2が駆動して減圧されることによりその捕集ベルト151の直下から上方を吸引する。
【0025】
これにより、噴出装置10Aの紡糸するフィラメント集合体Faは、メインコンベア51の捕集ベルト151下の吸引チャンバ154aにより上面151a上に捕集されるように吸引される。このため、そのフィラメント集合体Faは、捕集ベルト151が長さ方向に周回移動するのに連れて上面151a上でシート状に捕集されつつ保持されて移送される。この後に、そのフィラメント集合体Faは、捕集ベルト151が長さ方向に周回移動するのに連れて吸引チャンバ154aから隣接する吸引チャンバ154a-2に受け渡されてシート状を維持するように吸引保持されて移送される。
【0026】
吸引チャンバ154bは、噴出装置10Bのインジェクタ40の下方のメインコンベア51の捕集ベルト151直下に位置するように設置されており、吸引ファン155bが駆動して減圧されることによりその捕集ベルト151の直下からサブコンベア52の捕集ベルト152の上方を吸引する。
【0027】
吸引チャンバ154b-2は、その吸引チャンバ154bの下流側に隣接して、後述するように、噴出装置10Cの下方に位置する吸引チャンバ154cとの間のメインコンベア51の捕集ベルト151直下に位置するように設置されており、吸引ファン155b-2が駆動して減圧されることによりその捕集ベルト151の直下から上方を吸引する。
【0028】
これにより、噴出装置10Aの紡糸するフィラメント集合体Faは、上述の吸引チャンバ154a、154a-2に続けて、メインコンベア51の捕集ベルト151下の吸引チャンバ154b、154b-2により上面151a上にシート状のまま吸引保持されて移送される。
【0029】
また、噴出装置10Bの紡糸するフィラメント集合体Fbは、メインコンベア51の捕集ベルト151下の吸引チャンバ154bにより上面151a上のサブコンベア52の捕集ベルト152の上面152a上に捕集されるように吸引される。このため、そのフィラメント集合体Fbは、捕集ベルト152が長さ方向に周回移動するのに連れて上面152a上でシート状に捕集されつつ保持されて移送される。
【0030】
ところで、サブコンベア52の捕集ベルト152は、メインコンベア51の捕集ベルト151に対して逆向きに周回回転することから、その捕集ベルト152の上面152aが逆方向に移動した後に上下が反転されてメインコンベア51の捕集ベルト151の上面151aに対面して同一方向に移動することになる。このため、噴出装置10Bの紡糸するフィラメント集合体Fbは、サブコンベア52の捕集ベルト152の上面152a上でシート状に捕集保持されて移送された後に、メインコンベア51の捕集ベルト151の上面151a上のシート状のフィラメント集合体Faに重なるように合わされて、そのメインコンベア51の捕集ベルト151下の吸引チャンバ154bによりシート状のまま吸引保持されて移送される。
【0031】
このことから、噴出装置10Bの下方でシート状に捕集保持されて重ねられるフィラメント集合体Fab(Fa、Fb)は、捕集ベルト151が長さ方向に周回移動するのに連れて吸引チャンバ154bから隣接する吸引チャンバ154b-2に受け渡されてシート状を維持するように吸引保持されて移送される。
【0032】
吸引チャンバ154cは、噴出装置10Cのインジェクタ40の下方のメインコンベア51の捕集ベルト151直下に位置するように設置されており、吸引ファン155cが駆動して減圧されることによりその捕集ベルト151の直下からサブコンベア53の捕集ベルト153の上方を吸引する。
【0033】
吸引チャンバ154c-2は、その吸引チャンバ154cの下流側に隣接して、後述するように、メインコンベア51の捕集ベルト151の端部手前の直下に位置するように設置されており、吸引ファン155c-2が駆動して減圧されることによりその捕集ベルト151の直下から上方を吸引する。
【0034】
これにより、噴出装置10A、10Bの紡糸するフィラメント集合体Fabは、上述の吸引チャンバ154a~154b-2に続けて、メインコンベア51の捕集ベルト151下の吸引チャンバ154c、154c-2により上面151a上に重なるシート状のまま吸引保持されて移送される。
【0035】
また、噴出装置10Cの紡糸するフィラメント集合体Fcは、メインコンベア51の捕集ベルト151下の吸引チャンバ154cにより上面151a上のサブコンベア53の捕集ベルト153の上面153a上に捕集されるように吸引される。このため、そのフィラメント集合体Fcは、捕集ベルト153が長さ方向に周回移動するのに連れて上面153a上でシート状に捕集されつつ保持されて移送される。
【0036】
ところで、サブコンベア53の捕集ベルト153も、メインコンベア51の捕集ベルト151に対して逆向きに周回回転することから、その捕集ベルト153の上面153aが逆方向に移動した後に上下を反転されてメインコンベア51の捕集ベルト151の上面151aに対面して同一方向に移動することになる。このため、噴出装置10Cの紡糸するフィラメント集合体Fcは、サブコンベア53の捕集ベルト153の上面153a上でシート状に捕集保持されて移送された後に、メインコンベア51の捕集ベルト151の上面151a上のシート状のフィラメント集合体Fabにさらに重なるように合わされて、そのメインコンベア51の捕集ベルト151下の吸引チャンバ154cによりシート状のまま吸引保持されて移送される。
【0037】
このことから、噴出装置10Cの下方でシート状に捕集保持されて重ねられるフィラメント集合体Fabc(Fa、Fb、Fc)は、捕集ベルト151が長さ方向に周回移動するのに連れて吸引チャンバ154cから隣接する吸引チャンバ154c-2に受け渡されてシート状を維持するように吸引保持されて移送される。
【0038】
要するに、捕集コンベア50は、捕集ベルト151~153の上面151a~153a上に噴出装置10A、10B、10Cの紡糸するフィラメント集合体Fa、Fb、Fcを吸引ボックス54によって所定厚さのシート状に吸引捕集しつつ保持した後に重ねることによってエンボス加工前のフィラメント集合体Fabc(不織布C)にして下流に搬送すしエンボス加工装置60に受け渡すようになっている。
【0039】
エンボス加工装置60は、一対のエンボスロール61、62を備えており、その円筒状の外周面61a、62a同士を圧接させて相対回転する。このエンボス加工装置60は、下側のエンボスロール61の滑らかな円筒外周面61aに、上側のエンボスロール62の円筒外周面62aに規則的あるいは不規則に配列された不図示のエンボス突起を所望の圧接力で押し付ける。
【0040】
これにより、エンボス加工装置60は、エンボスロール61、62間に挟み込むフィラメント集合体Fabcを相対回転方向に送り出すとともに、そのエンボス突起の形成位置に対応する複数のエンボス加工箇所でフィラメントf同士を交絡させつつ圧搾接合させるエンボス加工を施して、そのシート状の形態を維持する不織布Cに加工する。なお、エンボスロール62の円筒外周面62aに形成するエンボス突起は、エンボスロール61の円筒外周面61a側に形成してもよく、あるいは、これらの双方の円筒外周面61a、62aに形成するようにしてよく、さらに、凸形状に限らず、凹形状に形成して、相手側円筒面に、例えば、連続するリブ形状を押し付けて圧搾接合させるようにしてもよい。
【0041】
ワインダ70は、フィラメント集合体Fabcのフィラメントf同士がエンボス加工装置60により交絡接合された不織布Cを、弛まないように張力を調整しつつ受け取って、その不織布Cを連続的に皺なく所望の巻き硬さでロール状に巻き取る。
【0042】
これにより、ワインダ70は、フィラメント集合体Fabcがシート状にされてロール状に巻かれている所望の長さの不織布Cを、次の加工工程などに供給可能に準備することができる。
【0043】
そして、本実施形態の捕集コンベア50は、上述するように、メインコンベア51の捕集ベルト151下に設置されている吸引ボックス54の吸引チャンバ154a~154c-2が噴出装置10A~10Cのインジェクタ40毎に対応するように区画されて設置されており、その個々に接続されている吸引ファン155a~155c-2もその吸引チャンバ154a~154c-2の区画範囲(領域)や必要な吸引圧力に応じた風速(風量)で吸引するように設定されている。ここで、吸引チャンバ154a~154c-2の吸引する区画範囲や吸引圧力は、適宜に設定すればよい。
【0044】
具体的には、吸引チャンバ154aは、サブコンベアが介在することなく、メインコンベア51の捕集ベルト151直上の噴出装置10Aのインジェクタ40の出口から牽引降下されてくるフィラメント集合体Faを、その捕集ベルト151下から吸引してシート状に捕集し保持する。
【0045】
この吸引チャンバ154aは、降下するフィラメント集合体Faを安定して保持可能な吸引圧力Paが、その移送方向の噴き付け領域程度の狭い範囲の捕集ベルト151の搬送面下で発生するように区画されており、その区画範囲内が吸引ファン155aにより吸引されて負圧にされる。
【0046】
吸引チャンバ154b、154cは、それぞれ、サブコンベア52、53の捕集ベルト152、153直上の噴出装置10B、10Cのインジェクタ40の出口から牽引降下されてくるフィラメント集合体Fb、Fcを、そのサブコンベア52、53を介して捕集ベルト151下から吸引してシート状に捕集して保持する。これらサブコンベア52、53は、それぞれ、捕集ベルト152、153上に捕集保持するシート状のフィラメント集合体Fb、Fcを下部の捕集ベルト151との間に挟み込むようにしてフィラメント集合体Fab、Fabcとして下流へと送り出す。
【0047】
これら吸引チャンバ154b、154cは、降下するフィラメント集合体Fb、Fcを安定して保持可能な吸引圧力Pb、Pcを捕集ベルト152、153の搬送面下で発生するように吸引ファン155b、155cが駆動して負圧にされる。なお、これら吸引チャンバ154b、154cも、吸引チャンバ154aと同様に、降下するフィラメント集合体Fb、Fcの移送方向の噴き付け領域程度の狭い区画範囲で所望の吸引圧力Pb、Pcが発生するように、吸引ファン155b、155cにより吸引されて負圧にされる。同時に、これら吸引チャンバ154b、154cは、捕集ベルト151上のフィラメント集合体Fab、Fabcを介在させてサブコンベア52、53の捕集ベルト152、153上を吸引することになる。このため、これら吸引チャンバ154b、154cは、捕集ベルト152、153上で最適な吸引圧力Pb、Pcが発生するように、捕集ベルト151下の移送方向の吸引範囲を調整して吸引容積を増減させてもよく、また、捕集ベルト152、153内も、同様に、吸引範囲を調整可能に区画等してもよい。
【0048】
これにより、吸引チャンバ154b、154cは、吸引チャンバ154aと同様に、メインコンベア51の捕集ベルト151を介してシート状のフィラメント集合体Faから増量されたフィラメント集合体Fab、Fabcと続けて吸引保持することができる。
【0049】
吸引チャンバ154a-2、154b-2、154c-2は、それぞれ、吸引チャンバ154a、154b、154cの下流側でメインコンベア51の捕集ベルト151上のシート状フィラメント集合体Fa、Fab、Fabcを連続吸引して保持する。
【0050】
これら吸引チャンバ154a-2、154b-2、154c-2は、それぞれ、捕集ベルト151上のシート状フィラメント集合体Fa、Fab、Fabcをそのまま続けて吸引保持する吸引圧力Pa-2、Pb-2、Pc-2を発生されるように吸引ファン155a-2が駆動して負圧にされる。なお、吸引チャンバ154a-2、154b-2は、吸引チャンバ154a、154b、154cの間に介在して隙間なく吸引するように連続していることから、その噴出装置10毎の離隔する捕集位置を繋げるように広めの区画範囲を吸引するように設置されている。また、吸引チャンバ154c-2は、吸引チャンバ154cから受け取るシート状フィラメント集合体Fabcを下流側に隣接するエンボス加工装置60へと受け渡すだけであることから短めの区画範囲を吸引するように設置されている。
【0051】
これにより、吸引チャンバ154a-2、154b-2、154c-2は、それぞれ、メインコンベア51の捕集ベルト151を介して上面151a上に位置するシート状フィラメント集合体Fa、Fab、Fabcを、吸引チャンバ154a、154b、154cに続けて吸引保持することができる。このとき、メインコンベア51の捕集ベルト151上のシート状フィラメント集合体Fa、Fabは、それぞれ、吸引チャンバ154a-2、154b-2により吸引保持されているので、浮き上がることなく、サブコンベア52、53の捕集ベルト152、153の間に挟み込まれる。また、このシート状フィラメント集合体Fa、Fabは、その捕集ベルト152、153で捕集保持されて上下反転されてくるシート状フィラメント集合体Fb、Fcが重ねられてシート状フィラメント集合体Fab、Fabcにされて吸引保持されつつ下流へと移送される。ここで、捕集コンベア50は、サブコンベア53、53の手前に除電装置Deが設置されてシート状に捕集される際などに生じる静電気などによる帯電状態を解消するようになっており、サブコンベア52、53の手前で静電力によりシート状フィラメント集合体Fa、Fabが厚くなって捕集コンベア52、53に強く干渉してしまうことを抑制して品質低下してしまうことを防止するようになっている。
【0052】
この本実施形態の捕集コンベア50は、上述するように、メインコンベア51の捕集ベルト151上に、シート状フィラメント集合体Fを捕集して保持するのに十分な吸引圧力Pを吸引ボックス54の吸引チャンバ154a~154c-2毎に発生させるように、個々の吸引ファン155a~155c-2が必要な風速で吸引するように設定されている。なお、下記で説明する吸引チャンバ154a~154c-2毎のフィラメント集合体Fの捕集面(搬送面)における吸引圧力Pの相対関係(強弱)は、吸引ファン155a~155c-2の接続箇所から捕集面までの離隔空間に応じた風速値を算出して代用することによって説明する。
【0053】
例えば、吸引ボックス54は、捕集コンベア50における噴出装置10A、10B、10Cによるフィラメント集合体Fの噴付箇所に位置する吸引チャンバ154a、154b、154cの吸引圧力Pa、Pb、Pcが個々の下流側に位置する吸引チャンバ154a-2、154b-2、154c-2の吸引圧力Pa-2、Pb-2、Pc-2よりも大きくなるように調整されている。また、このうちのフィラメント集合体Fの移送方向における先頭側の吸引チャンバ154a、154a-2の吸引圧力Ps(Pa、Pa-2)と、中間の吸引チャンバ154b、154b-2の吸引圧力Pm(Pb、Pb-2)と、最後尾側の吸引チャンバ154c、154c-2の吸引圧力Pe(Pc、Pc-2)とでは、上流側と下流側との双方が吸引保持されていることから中間位置の吸引圧力Pmは先頭側吸引圧力Psと最後尾側吸引圧力Peとのそれぞれよりも小さく抑えるように(Ps>PmかつPe>Pm)調整することができる。また、それぞれの吸引圧力Pa、Pb、Pcとしては、吸引チャンバ154a、154b、154c内を減圧し過ぎて捕集ベルト151のスムーズな相対移動を妨げてしまわないように搬送面上のフィラメント集合体Fの目付け量に応じて調整している。
【0054】
詳細には、吸引チャンバ154aは、噴出装置10Aの紡糸するフィラメント集合体Faをシート状に捕集保持するメインコンベア51の捕集ベルト151における吸引圧力Paとして、例えば、ワインダ70でロール状に巻き取る半製品の目付けが65g/m2や15g~19g/m2の不織布Cを製造する場合に風速Pa=7.5に設定される。この吸引圧力(風速)Paとしては、フィラメント集合体Faを吸引してシート状への捕集保持を開始する箇所であることから、その目付け量にかかわらず、捕集ベルト151の上面151aに吸着させるよう強めの値に設定されている。
【0055】
吸引チャンバ154a-2は、吸引チャンバ154aに続けて、同様に、吸引圧力Pa-2として、例えば、目付けが65g/m2や15g~19g/m2の不織布Cを製造する場合に風速Pa-2=3.8に設定される。ここで、この吸引圧力(風速)Pa-2としては、吸引圧力Paと同様に、フィラメント集合体Faの目付け量(秤量)にかかわらず、シート状に吸引保持される形状を維持する程度でよく、そのままメインコンベア51とサブコンベア52の捕集ベルト151、152の間に挟み込まれることから、吸引圧力Paの半分程度の低めに抑えられている。
【0056】
吸引チャンバ154bは、吸引圧力Pbとして、例えば、目付けが65g/m2の不織布Cを製造する場合に風速Pb=6.0に設定され、また、目付けが15g~19g/m2の不織布Cを製造する場合に風速Pb=5.8に設定される。この吸引圧力(風速)Pbとしては、吸引圧力Paと同様に、フィラメント集合体Fbをサブコンベア52の捕集ベルト152上でシート状に捕集形成することから、その目付け量にかかわらず、強めの値に設定されるが、メインコンベア51の捕集ベルト151上のフィラメント集合体Fabを介在させつつ吸引することから、その捕集ベルト151の移動を制限しないように低めに抑えられている。
【0057】
吸引チャンバ154b-2は、吸引チャンバ154bに続けて、吸引圧力Pb-2として、例えば、目付けが65g/m2の不織布Cを製造する場合に風速Pa=1.2に設定され、また、目付けが15g~19g/m2の不織布Cを製造する場合に風速Pa=3.2に設定される。ここで、この吸引圧力(風速)Pb-2としては、吸引圧力Pbと同様に、フィラメント集合体Fb、Fabの目付け量(秤量)にかかわらず、シート状に吸引保持されている形状を維持する程度でよく、そのままメインコンベア51とサブコンベア53の捕集ベルト151、153の間に挟み込まれることから、極低めの値に抑えられるとともに、確実に吸引保持して捕集ベルト151、153の間に進入させるように目付け量の少ないフィラメント集合体Fの方が強く吸引するように設定されている。なお、このサブコンベア53下のメインコンベア51の捕集ベルト151上には、捕集ベルト153で捕集保持するシート状フィラメント集合体Fcがシート状フィラメント集合体Fabに重ねた状態で挟み込まれつつ吸引保持されて下流へと移送される。
【0058】
吸引チャンバ154cは、吸引圧力Pcとして、例えば、目付けが65g/m2の不織布Cを製造する場合にPa=6.3に設定され、また、目付けが15g~19g/m2の不織布Cを製造する場合にPa=7.4に設定される。この吸引圧力(風速)Pcとしては、吸引圧力Pa、Pbと同様に、フィラメント集合体Fcをサブコンベア53の捕集ベルト153上で捕集形成することから、その目付け量にかかわらず、強めの値に設定されるが、メインコンベア51の捕集ベルト151上のフィラメント集合体Fabcを介在させつつ吸引することから、その捕集ベルト151の移動を制限しないように低めに抑えられている。
【0059】
吸引チャンバ154c-2は、吸引チャンバ154cに続けて、吸引圧力Pb-2として、例えば、目付けが65g/m2の不織布Cを製造する場合にPa=1.2~3.8に設定され、また、目付けが15g~19g/m2の不織布Cを製造する場合にPa=3.2~38に設定される。この吸引圧力(風速)Pc-2としては、サブコンベア53下から搬出されるフィラメント集合体Fabcをメインコンベア51の捕集ベルト151で確実に吸引保持してエンボス加工装置60に受け渡すように、その目付け量に応じて吸引圧力Paよりも低めに設定されている。
【0060】
ところで、噴出装置10のインジェクタ40から紡糸されるフィラメントfは、図2に示すように、捕集コンベア50の捕集ベルト151、152、153上に噴き付けられてシート状フィラメント集合体Fとして捕集されて不織布に形成される。このとき、フィラメントfは、インジェクタ40で高圧エアーにより牽引(延伸)されつつ、微小半径で周回回転されてシート状に形成される。
【0061】
このことから、インジェクタ40は、図3に示すように、一対の案内板(調整手段)141、142を備えてフィラメントfの周回回転する回転径frを調整するようになっている。案内板141、142は、メインコンベア51の捕集ベルト151の移動方向に離隔して対面する板形状に形成されて設置されており、その先端部141a、142a間の開放間隔Ldを変更することによってフィラメントfの周回回転径frを調整する。この案内板141、142は、インジェクタ40によるフィラメントfの吐出前(不織布作製装置1の稼働開始前)に、例えば、噴出装置10A、10B、10C毎のフィラメントfが異なる周回回転径frで捕集ベルト151、152、153にシート状に捕集されるように設定されている。
【0062】
これにより、メインコンベア51の捕集ベルト151に吸引保持されて移送されるフィラメント集合体Fabcは、噴出装置10A、10B、10C毎のインジェクタ40から紡糸されるフィラメントfが図3(a)に示すように小径に、あるいは、図3(b)に示すように大径に調整されるなど、異なる回転径frで周回しつつ捕集されることによってシート状にされた後に順次に重ねられて不織布Cにされる。このとき、噴出装置10A、10B、10C毎のフィラメント集合体Fa、Fb、Fcは、それぞれ異なる径の円形に繰り返し形成されるフィラメントfが集合してシート状にされて重ねられることによって、径の異なる円形のフィラメントfの一方が他方に入り込むなど絡んだ状態のシート状フィラメント集合体Fabcの不織布Cとして形成される。
【0063】
ここで、本実施形態のインジェクタ40では、不織布作製装置1の稼働開始前に案内板141、142の先端部141a、142a間の開放間隔Ldを調整して捕集ベルト151、152、153に噴き付けるフィラメントfの周回回転径frを設定する場合を一例として説明するが、これに限るものではない。具体的には、噴出装置10A、10B、10Cのフィラメントfの紡糸動作中にそのうちの1組以上の案内板141、142の先端部141a、142a間の開放間隔Ldを変更(調整)させて、シート状フィラメント集合体Fabcを構成するフィラメントfが全体的に、さらに絡んだ状態で重ねられるようにしてもよく、不織布Cの品質を容易に調整することができる。
【0064】
このように本実施形態の不織布作製装置1においては、3箇所に配置された噴出装置10A、10B、10Cが熱可塑性樹脂を溶融させて吐出する繊維状のフィラメントfを束状にしたフィラメント集合体Fa、Fb、Fcを、メインコンベア51やサブコンベア52、53の捕集ベルト151、152、153のそれぞれに噴出させて捕集させることによりシート状に形成して順次に重ねることによって不織布Cを作製することができる。
【0065】
このとき、サブコンベア52、53の捕集ベルト152、153は、メインコンベア51の捕集ベルト151と逆方向に周回駆動することによって、上面152a、153aを逆方向に移動させた後に反転させて上面151aとの間に挟み込みつつ同一方向に移動することによって、順次に重ねたシート状フィラメント集合体Fabcを形成することができる。
【0066】
さらに、そのメインコンベア51やサブコンベア52、53の捕集ベルト151、152、153上のシート状フィラメント集合体Fa、Fb、Fcは、噴出装置10A、10B、10C毎のインジェクタ40の案内板141、142の先端部141a、142a間の開放間隔Ldがフィラメントfの周回回転径frを異ならせるように調整されて捕集されることによって、異なる径の円形に繰り返し形成されているフィラメントfが絡んだ状態で重ねられているシート状のフィラメント集合体Fabcを形成することができる。
【0067】
したがって、この不織布作製装置1は、上述の不織布作製方法を実行して、シート状フィラメント集合体Fa、Fb、Fcが高品質に積層されている多層の不織布Cを作製することができる。
【0068】
ここで、上述実施形態においては、一対の案内板141、142をインジェクタ40に設置して、捕集コンベア50に向けて吐出するフィラメントfの周回回転する回転径frを調整する場合を一例として説明するが、これに限るものではない。
【0069】
例えば、図4に示すように、噴出装置10のインジェクタ40に分散板145を設置してフィラメントfの周回回転径frを調整するようにしてもよい。
【0070】
分散板145は、メインコンベア51の捕集ベルト151の移動方向Dに対して直交方向に延長されている板形状に形成されて、その移動方向Dの上流側(下流側でもよい)に設置されており、その設置位置の直下からの先端部145aの退避間隔Lrを変更することによってフィラメントfの周回回転径frを調整する。
【0071】
具体的には、分散板145は、インジェクタ40の吐出口近傍の設置位置より下方に向かうほど吐出口直下から離隔する傾斜面145sを備えており、その傾斜面145sはインジェクタ40から直下に向けて吐出されるフィラメントfが周囲の空気を引き摺ることにより発生させる噴射流との間に空間Asを形成する。
【0072】
このため、インジェクタ40から吐出されるフィラメントfの束Fにより形成される噴射流は、下方ほど分散板145の傾斜面145sから離隔しようとするに従って大きな吸引力を生じさせる陰圧状態を形成することから、その分散板145の傾斜面145sに沿う側に屈曲される方向に吐出(噴射)されることになる。
【0073】
これにより、噴出装置10のインジェクタ40から微小周回されつつ紡糸されるフィラメントfは、捕集コンベア50の捕集ベルト151、152、153上に噴き付けられてシート状フィラメント集合体Fとして捕集されて不織布Cに形成される際に、分散板145の傾斜面145sの傾斜角度に応じた吸引力で屈曲させることができ、インジェクタ40で高圧エアーにより牽引(延伸)されつつ周回する回転径frを調整することができる。
【0074】
ここで、分散板145の傾斜角度は、上述実施形態と同様に、不織布作製装置1の稼働開始前に調整(設定)してもよいが、これに限るものではなく、噴出装置10によるフィラメントfの紡糸動作中に分散板145の先端部145aの退避間隔Lrを変更(調整)させて、シート状フィラメント集合体Fabcを構成するフィラメントfが全体的に、さらに絡んだ状態で重ねられるようにしてもよく、不織布Cの品質を容易に調整することができる。なお、分散板145は、傾斜面145sが平板状の場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、例えば、湾曲形状に形成してもよく、下方ほどフィラメントfの噴射流との間の陰圧を大きくするように形成してもよい。
【0075】
また、例えば、図5に示すように、噴出装置10のインジェクタ40に反射板147を設置してフィラメントfの周回回転径frを調整するようにしてもよい。
【0076】
反射板147は、メインコンベア51の捕集ベルト151の移動方向Dに対して直交方向に延長されている板形状に形成されて、その移動方向Dの上流側(下流側でもよい)に設置されており、その設置位置の直下からの先端部147aの交差間隔Lcを変更することによってフィラメントfの周回回転径frを調整する。
【0077】
具体的には、反射板147は、インジェクタ40の吐出口近傍の設置位置より下方に向かうほど吐出口直下から設置側に向かって交差する傾斜面147sを備えており、その傾斜面147sはインジェクタ40から直下に向けて吐出されて突き当たるフィラメントfを跳ね返す。
【0078】
このため、インジェクタ40から吐出されるフィラメントfの束Fは、反射板147の傾斜面147sの傾斜角度が大きいほど大きく屈曲される(跳ね返される)方向に吐出(噴射)されることになる。
【0079】
これにより、噴出装置10のインジェクタ40から微小周回されつつ紡糸されるフィラメントfは、捕集コンベア50の捕集ベルト151、152、153上に噴き付けられてシート状フィラメント集合体Fとして捕集されて不織布Cに形成される際に、微小周回中のフィラメントfが反射板147の傾斜面147sの傾斜角度に応じた大きさで跳ね返されることにより、その周回回転径frをばらけさせるように調整することができる。
【0080】
ここで、反射板147の傾斜角度は、上述実施形態と同様に、不織布作製装置1の稼働開始前に調整(設定)してもよいが、これに限るものではなく、噴出装置10によるフィラメントfの紡糸動作中に反射板147の先端部145aの交差間隔Lcを変更(調整)させて、シート状フィラメント集合体Fabcを構成するフィラメントfが全体的に、さらに絡んだ状態で重ねられるようにしてもよく、不織布Cの品質を容易に調整することができる。
【0081】
さらに、例えば、噴出装置10のインジェクタ40に吐出するフィラメントfに静電気を付与する不図示の静電気付与装置を備えさせてもよい。
【0082】
この静電気付与装置は、図6に示すように、インジェクタ40の吐出するフィラメントfにプラスまたはマイナスの同一極性の電圧調整した静電気を付与して互いに反発する静電力を与えることにより、フィラメントfの周回回転径frを調整する。
【0083】
このため、インジェクタ40から吐出されるフィラメントfは、付与される静電気の電圧が大きいほど大きな半径で離隔しつつ周回しようとする傾向になる。
【0084】
これにより、噴出装置10のインジェクタ40から微小周回されつつ紡糸されるフィラメントfは、微小周回中に付与される静電気の電圧に応じて離隔する回転径frで捕集コンベア50の捕集ベルト151、152、153上に噴き付けられてシート状フィラメント集合体Fとして捕集されて不織布Cに形成される。
【0085】
この静電気の電圧は、上述実施形態と同様に、不織布作製装置1の稼働開始前に調整(設定)してもよいが、これに限るものではなく、噴出装置10によるフィラメントfの紡糸動作中に変更(調整)させて、シート状フィラメント集合体Fabcを構成するフィラメントfが全体的に、さらに絡んだ状態で重ねられるようにしてもよく、不織布Cの品質を容易に調整することができる。
【0086】
次に、図7は本発明の第2実施形態に係る不織布製造方法を実行する不織布作製装置を示す図である。ここで、本実施形態は、上述実施形態と略同様の構成を備えることから、同様の構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する。
【0087】
図7において、不織布作製装置2は、上述の不織布作製装置1と同様に、3組の噴出装置10(10A、10B、10C)と、捕集コンベア(シート搬送装置)50と、エンボス加工装置60と、ワインダ70とを備えて、それぞれ各種工程を実行可能に直列的に配置されている。
【0088】
本実施形態における捕集コンベア50は、サブコンベアが設置されることなく、メインコンベア51と、吸引ボックス54と、を備えて構築されている。
【0089】
メインコンベア51は、サブコンベア52、53が設置されないために、捕集ベルト151の上面151aが噴出装置10A、10B、10C毎のインジェクタ40により牽引降下されてくるフィラメント集合体Fa、Fb、Fcをそれぞれ順次にシート状に捕集して移送する捕集面および搬送面として機能する。
【0090】
このため、メインコンベア51の捕集ベルト151は、噴出装置10A、10B、10Cの紡糸するフィラメント集合体Fa、Fb、Fcが吸引ボックス54の吸引チャンバ154a、154b、154cによって、それぞれ上面151a上に直接噴き付けられて吸引捕集することによりシート状に形成する。
【0091】
このとき、まず、フィラメント集合体Faが吸引チャンバ154aの吸引力により捕集ベルト151上でシート状に捕集形成された後に、下流側に隣接する吸引チャンバ154a-2の吸引力により保持されつつ移送される。これに続けて、シート状フィラメント集合体Faの上に直接フィラメント集合体Fbが吸引チャンバ154bの吸引力によりシート状に捕集されてシート状フィラメント集合体Fabが形成された後に、同様に、下流側に隣接する吸引チャンバ154b-2の吸引力により保持されつつ移送される。さらに、そのシート状フィラメント集合体Fabの上に直接フィラメント集合体Fcが吸引チャンバ154cの吸引力によりシート状に捕集されてシート状フィラメント集合体Fabcが形成された後に、同様に、下流側に隣接する吸引チャンバ154c-2の吸引力により保持されつつ移送される。
【0092】
これにより、捕集コンベア50は、捕集ベルト151上に噴出装置10A、10B、10Cが紡糸するフィラメント集合体Fa、Fb、Fcを吸引ボックス54によって所定厚さのシート状に直接吸引捕集して重ねる状態にしつつ保持することによってエンボス加工前のシート状フィラメント集合体Fabc(不織布C)にして下流に搬送することによりエンボス加工装置60に受け渡すことができる。
【0093】
そして、捕集コンベア50の捕集ベルト151上のシート状フィラメント集合体Fabcは、噴出装置10A、10B、10Cが紡糸してフィラメント集合体Fa、Fb、Fcを形成するフィラメントfの微小周回回転する回転径frを一対の案内板141、142の先端側開放間隔Ldを変更して調整することによって、その捕集ベルト151上でシート状に捕集する際に、異なる径の円形に繰り返し形成されるフィラメントfが絡んだ状態の不織布Cとして形成される。
【0094】
このように本実施形態の不織布作製装置2においては、3箇所に配置された噴出装置10A、10B、10Cが熱可塑性樹脂を溶融させて吐出する繊維状のフィラメントfを束状にしたフィラメント集合体Fa、Fb、Fcを、メインコンベア51の捕集ベルト151上の直接噴出させてシート状に捕集しつつ順次に重ねて不織布Cを作製することができる。
【0095】
このメインコンベア51の捕集ベルト151上のシート状フィラメント集合体Fabcは、重ねるフィラメント集合体Fb、Fcのフィラメントfを直接下地側のフィラメントfに絡ませてシート状に形成することができ、厚さ方向に均等な品質で絡ませて品質の異なる層間が形成されてしまうことを回避することができる。
【0096】
したがって、この不織布作製装置2は、上述の不織布作製方法を実行して、シート状フィラメント集合体Fa、Fb、Fcが高品質に積層されている多層の不織布Cを作製することができる。
【0097】
ここで、本実施形態においても、一対の案内板141、142に代えて、分散板145や反射板147や不図示の静電気付与装置を設置してもよいことは言うまでもない。
【0098】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0099】
1、2……不織布作製装置
10、10A、10B、10C……噴出装置
20……紡糸装置
30……冷風装置
40……インジェクタ
50……捕集コンベア
51……メインコンベア
52、53……サブコンベア
54……吸引ボックス
60……エンボス加工装置
70……ワインダ
141、142……案内板
151、152、153……捕集ベルト
154a、154b、154c……吸引チャンバ
C……不織布
f……フィラメント
fr……回転径
F、Fa、Fab、Fabc、Fb、Fc……フィラメント集合体
Lc……交差間隔
Ld……開放間隔
Lr……退避間隔
P、Pa、Pb、Pc、Pe、Pm、Ps……吸引圧力(風速)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7