(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電動機の制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
H02P27/08
(21)【出願番号】P 2019205216
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2019119125
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】山根 和貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 伸明
(72)【発明者】
【氏名】名和 政道
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-32373(JP,A)
【文献】特開2002-209386(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150786(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の変調波が搬送波の最大値より小さく、かつ、前記搬送波の最小値より大きい場合、前記第1の変調波に応じたデューティ比で繰り返しオン、オフし、前記第1の変調波が前記搬送波の最小値または最大値である場合、常時オンまたは常時オフする第1のスイッチング素子と、第2の変調波が前記搬送波の最大値より小さく、かつ、前記搬送波の最小値より大きい場合、前記第2の変調波に応じたデューティ比で繰り返しオン、オフし、前記第2の変調波が前記搬送波の最小値または最大値である場合、常時オンまたは常時オフする第2のスイッチング素子と、第3の変調波が前記搬送波の最大値より小さく、かつ、前記搬送波の最小値より大きい場合、前記第3の変調波に応じたデューティ比で繰り返しオン、オフし、前記第3の変調波が前記搬送波の最小値または最大値である場合、常時オンまたは常時オフする第3のスイッチング素子とを備え、前記第1~第3のスイッチング素子がオン、オフすることで電動機の3相に互いに位相が異なる第1~第3の交流電圧を印加させて前記電動機を駆動させるインバータ回路と、
第1~第3の区間からなる前記電動機の制御周期のうち、前記第1の交流電圧のピークが存在する前記第1の区間において、前記電動機の出力に応じた前記第1の変調波を出力するとともに前記搬送波の最小値または最大値を前記第2及び第3の変調波として出力し、前記第2の交流電圧のピークが存在する第2の区間において、前記電動機の出力に応じた前記第2の変調波を出力するとともに前記搬送波の最小値または最大値を前記第1及び第3の変調波として出力し、前記第3の交流電圧のピークが存在する第3の区間において、前記電動機の出力に応じた前記第3の変調波を出力するとともに前記搬送波の最小値または最大値を前記第1及び第2の変調波として出力する制御回路と、
を備え
、
前記制御回路は、次の演算周期において、前記第1の区間から前記第2の区間への切り替わりタイミング、前記第2の区間から前記第3の区間への切り替わりタイミング、または前記第3の区間から前記第1の区間への切り替わりタイミングが存在する場合、その切り替わりタイミングに前記次の演算周期の開始タイミングを合わせる
電動機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機の制御装置であって、
前記電動機の回転子の電気角を検出する電気角検出部を備え、
前記制御回路は、
前記電動機の出力に応じた電圧指令値と前記電気角検出部により検出される電気角とにより目標電気角を算出する目標電気角算出部と、
前記目標電気角が前記第1の区間に入っているとき、前記インバータ回路の入力電圧と前記電圧指令値とを用いて求められる変調率を前記第1の変調波とするとともに前記搬送波の最小値または最大値を前記第2及び第3の変調波とし、前記目標電気角が前記第2の区間に入っているとき、前記インバータ回路の入力電圧と前記電圧指令値とを用いて求められる変調率を前記第2の変調波とするとともに前記搬送波の最小値または最大値を前記第1及び第3の変調波とし、前記目標電気角が前記第3の区間に入っているとき、前記インバータ回路の入力電圧と前記電圧指令値とを用いて求められる変調率を前記第3の変調波とするとともに前記搬送波の最小値または最大値を前記第1及び第2の変調波とする変調波生成部と、
を備える電動機の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動機の制御装置であって、
前記電動機の回転子の電気角を検出する電気角検出部を備え、
前記制御回路は、
前記電動機の出力に応じた電圧指令値と前記電気角検出部により検出される電気角とにより、前記第1の交流電圧に対応する第1の電圧指令値、前記第2の交流電圧に対応する第2の電圧指令値、及び前記第3の交流電圧に対応する第3の電圧指令値を算出する電圧指令値算出部と、
前記第1の電圧指令値の絶対値が前記第2及び第3の電圧指令値の絶対値に比べて大きいとき、前記インバータ回路の入力電圧と前記電動機の出力に応じた電圧指令値とを用いて求められる変調率を前記第1の変調波とするとともに前記搬送波の最小値または最大値を前記第2及び第3の変調波とし、前記第2の電圧指令値の絶対値が前記第1及び第3の電圧指令値の絶対値に比べて大きいとき、前記インバータ回路の入力電圧と前記電動機の出力に応じた電圧指令値とを用いて求められる変調率を前記第2の変調波とするとともに前記搬送波の最小値または最大値を前記第1及び第3の変調波とし、前記第3の電圧指令値の絶対値が前記第1及び第2の電圧指令値の絶対値に比べて大きいとき、前記インバータ回路の入力電圧と前記電動機の出力に応じた電圧指令値とを用いて求められる変調率を前記第3の変調波とするとともに前記搬送波の最小値または最大値を前記第1及び第2の変調波とする変調波生成部とを備える
ことを特徴とする電動機の制御装置。
【請求項4】
請求項
1に記載の電動機の制御装置であって、
前記制御回路は、前記第1の区間から前記第2の区間への切り替わりタイミング、前記第2の区間から前記第3の区間への切り替わりタイミング、または前記第3の区間から前記第1の区間への切り替わりタイミングにおいて、前記第1~第3の変調波のそれぞれの値の切り替わりタイミングが互いに重ならないように、前記第1~第3の変調波のそれぞれの値の切り替わりタイミングをずらす
ことを特徴とする電動機の制御装置。
【請求項5】
請求項
1または請求項
4に記載の電動機の制御装置であって、
前記制御回路は、次の演算周期において、前記第1の区間から前記第2の区間への切り替わりタイミング、前記第2の区間から前記第3の区間への切り替わりタイミング、または前記第3の区間から前記第1の区間への切り替わりタイミングが存在する場合、前記次の演算周期の開始タイミングから切り替わりタイミングまでの切り替わり時間を求め、その切り替わり時間の逆数である周波数を、前記次の演算周期の開始タイミングから前記切り替わり時間が経過するまでの期間における搬送波の周波数に設定する
ことを特徴とする電動機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の制御装置として、電動機の出力が高くなるにつれて、3相変調制御や弱め界磁制御(2相変調制御や3次高調波重畳制御など)から矩形波制御に遷移するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
しかしながら、上記制御装置では、3相変調制御や弱め界磁制御から矩形波制御に遷移する際、電動機を駆動するインバータ回路のスイッチング素子のオン時間が急に長くなるため、電動機に流れる電流が歪み電動機のトルクが急変して電動機に接続される負荷にショックを与えてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、電動機の他の制御装置として、電動機のトルクや回転速度とスイッチング素子を駆動する駆動信号との対応関係を示すマップを参照して、目標トルクや目標回転速度に対応する駆動信号を求め、その求めた駆動信号により電動機を駆動させるものがある。関連する技術として、特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-64313号公報
【文献】特開2013-215041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記他の制御装置では、電動機の出力が高くなってもトルクが急変しないようにマップの値を補間する必要があるため、演算負荷が増大するおそれがある。
【0007】
本発明の一側面に係る目的は、電動機の制御装置において、電動機の出力の変化に伴う電動機のトルクの変動を抑えつつ、演算負荷を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一つの形態である電動機の制御装置は、インバータ回路と、制御回路とを備える。
【0009】
インバータ回路は、第1の変調波が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、第1の変調波に応じたデューティ比で繰り返しオン、オフし、第1の変調波が搬送波の最小値または最大値である場合、常時オンまたは常時オフする第1のスイッチング素子と、第2の変調波が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、第2の変調波に応じたデューティ比で繰り返しオン、オフし、第2の変調波が搬送波の最小値または最大値である場合、常時オンまたは常時オフする第2のスイッチング素子と、第3の変調波が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、第3の変調波に応じたデューティ比で繰り返しオン、オフし、第3の変調波が搬送波の最小値または最大値である場合、常時オンまたは常時オフする第3のスイッチング素子とを備え、第1~第3のスイッチング素子がオン、オフすることで電動機の3相に互いに位相が異なる第1~第3の交流電圧を印加させて電動機を駆動させる。
【0010】
制御回路は、第1~第3の区間からなる電動機の制御周期のうち、第1の交流電圧のピークが存在する第1の区間において、電動機の出力に応じた第1の変調波を出力するとともに搬送波の最小値または最大値を第2及び第3の変調波として出力し、第2の交流電圧のピークが存在する第2の区間において、電動機の出力に応じた第2の変調波を出力するとともに搬送波の最小値または最大値を第1及び第3の変調波として出力し、第3の交流電圧のピークが存在する第3の区間において、電動機の出力に応じた第3の変調波を出力するとともに搬送波の最小値または最大値を第1及び第2の変調波として出力する。
【0011】
これにより、電動機の制御周期(第1~第3の区間)において、電動機の出力に応じた第1~第3の変調波が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、3相のスイッチング素子のうちの1相のスイッチング素子を繰り返しオン、オフさせること、すなわち、1相変調制御を行うことができる。また、電動機の制御周期において、電動機の出力に応じた第1~第3の変調波が搬送波の最小値または最大値である場合、3相のスイッチング素子をそれぞれ常時オンまたは常時オフさせること、すなわち、矩形波制御を行うことができる。また、電動機の制御周期において、第1~第3の変調波に応じたデューティ比でスイッチング素子をオン、オフさせることができるため、電動機の出力に応じてスイッチング素子のオン時間を徐々に変化させることができる。そのため、電動機の出力が高くなり1相変調制御から矩形波制御に遷移しても、スイッチング素子のオン時間をシームレスに変化させることができるため、電動機に流れる電流の歪みを抑えることができ、トルクの変動を抑えることができる。また、第1~第3の区間毎に、スイッチング素子をスイッチングさせる相を切り替えるだけでよく、複雑な演算を必要としないため、制御装置の演算負荷を抑えることができる。
【0012】
また、電動機の制御装置は、電動機の回転子の電気角を検出する電気角検出部を備え、制御回路は、電動機の出力に応じた電圧指令値と電気角検出部により検出される電気角とにより目標電気角を算出する目標電気角算出部と、目標電気角が第1の区間に入っているとき、インバータ回路の入力電圧と電圧指令値とを用いて求められる変調率を第1の変調波とするとともに搬送波の最小値または最大値を第2及び第3の変調波とし、目標電気角が第2の区間に入っているとき、インバータ回路の入力電圧と電圧指令値とを用いて求められる変調率を第2の変調波とするとともに搬送波の最小値または最大値を第1及び第3の変調波とし、目標電気角が第3の区間に入っているとき、インバータ回路の入力電圧と電圧指令値とを用いて求められる変調率を第3の変調波とするとともに搬送波の最小値または最大値を第1及び第2の変調波とする変調波生成部とを備えるように構成してもよい。
【0013】
また、電動機の制御装置は、電動機の回転子の電気角を検出する電気角検出部を備え、制御回路は、電動機の出力に応じた電圧指令値と電気角検出部により検出される電気角とにより、第1の交流電圧に対応する第1の電圧指令値、第2の交流電圧に対応する第2の電圧指令値、及び第3の交流電圧に対応する第3の電圧指令値を算出する電圧指令値算出部と、第1の電圧指令値の絶対値が第2及び第3の電圧指令値の絶対値に比べて大きいとき、インバータ回路の入力電圧と電圧指令値とを用いて求められる変調率を第1の変調波とするとともに搬送波の最小値または最大値を第2及び第3の変調波とし、第2の電圧指令値の絶対値が第1及び第3の電圧指令値の絶対値に比べて大きいとき、インバータ回路の入力電圧と電圧指令値とを用いて求められる変調率を第2の変調波とするとともに搬送波の最小値または最大値を第1及び第3の変調波とし、第3の電圧指令値の絶対値が第1及び第2の電圧指令値の絶対値に比べて大きいとき、インバータ回路の入力電圧と電圧指令値とを用いて求められる変調率を第3の変調波とするとともに搬送波の最小値または最大値を第1及び第2の変調波とする変調波生成部とを備えるように構成してもよい。
【0014】
また、制御回路は、次の演算周期において、第1の区間から第2の区間への切り替わりタイミング、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミング、または第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングが存在する場合、その切り替わりタイミングに次の演算周期の開始タイミングを合わせるように構成してもよい。
【0015】
これにより、1の区間から第2の区間への切り替わりタイミング、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミング、または第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングにおいて、第1~第3の変調波のそれぞれの値を切り替えることができるため、スイッチング素子をオンさせる必要がないときにスイッチング素子をオンさせたり、スイッチング素子をオンさせる必要があるときにスイッチング素子をオフさせたりすることを防止することができ、電動機に流れる電流に生じる歪みをさらに抑えることができ、トルクの変動をさらに抑えることができる。
【0016】
また、制御回路は、第1の区間から第2の区間への切り替わりタイミング、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミング、または第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングにおいて、第1~第3の変調波のそれぞれの値の切り替わりタイミングが互いに重ならないように、第1~第3の変調波のそれぞれの値の切り替わりタイミングをずらすように構成してもよい。
【0017】
これにより、互いに異なるスイッチング素子が同時にオンすることを回避することができるため、逆極性パルス(サージ電圧)が生じることを抑えることができ、電磁ノイズを抑えることができる。そのため、電動機に流れる電流に生じる歪みをさらに抑えることができ、トルクの変動をさらに抑えることができる。
【0018】
また、制御回路は、次の演算周期において、第1の区間から第2の区間への切り替わりタイミング、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミング、または第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングが存在する場合、次の演算周期の開始タイミングから切り替わりタイミングまでの切り替わり時間を求め、その切り替わり時間の逆数である周波数を、次の演算周期の開始タイミングから切り替わり時間が経過するまでの期間における搬送波の周波数に設定するように構成してもよい。
【0019】
これにより、駆動信号のデューティ比と所望のデューティ比との誤差を小さくすることができるため、電動機に流れる電流に低次の高調波が乗ることを抑制することができ、トルクリプルや騒音振動が増加することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電動機の制御装置において、電動機の出力の変化に伴う電動機のトルクの変動を抑えつつ、演算負荷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態の電動機の制御装置の一例を示す図である。
【
図2】1相変調制御において各相に印加される交流電圧と各相に対応する変調波の一例を示す図である。
【
図3】1相変調制御においてV相変調波と搬送波との比較と駆動信号の一例を示す図である。
【
図4】1相変調制御においてU相変調波と搬送波との比較と駆動信号の一例を示す図である。
【
図5】1相変調制御においてW相変調波と搬送波との比較と駆動信号の一例を示す図である。
【
図6】矩形波制御において各相に印加される交流電圧と各相に対応する変調波の一例を示す図である。
【
図7】矩形波制御においてV相変調波と搬送波との比較と駆動信号の一例を示す図である。
【
図8】矩形波制御においてU相変調波と搬送波との比較と駆動信号の一例を示す図である。
【
図9】矩形波制御においてW相変調波と搬送波との比較と駆動信号の一例を示す図である。
【
図10】dq/uvw変換部の一例を示す図である。
【
図11】dq/uvw変換部の他の例を示す図である。
【
図12】変形例1におけるdq/uvw変換部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13】切り替わり時間の設定を説明するための図である。
【
図14】変形例2におけるdq/uvw変換部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図15】切り替わり時間の設定を説明するための図である。
【
図16】変形例1におけるV相変調波、搬送波、及び駆動信号の一例を示す図である。
【
図17】変形例3における電動機の制御装置の一例を示す図である。
【
図18】変形例3におけるdq/uvw変換部の一例を示す図である。
【
図19】変形例3におけるdq/uvw変換部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図20】変形例3におけるdq/uvw変換部の動作の他の例を示すフローチャートである。
【
図21】変形例3におけるV相変調波、搬送波、及び駆動信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
図1は、実施形態の電動機の制御装置の一例を示す図である。
【0023】
図1に示す制御装置1は、例えば、電動フォークリフトやプラグインハイブリッド車などの車両に搭載される電動機Mを駆動するための制御装置であって、インバータ回路2と、制御回路3とを備える。なお、電動機Mは、回転子の電気角θを検出し、その検出した電気角θを制御回路3に送る電気角検出部Sp(レゾルバなど)を備えているものとする。
【0024】
インバータ回路2は、直流電源Pから供給される直流電力により電動機Mを駆動するものであって、電圧センサSvと、コンデンサCと、スイッチング素子SW1~SW6(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など)と、電流センサSi1、Si2とを備える。すなわち、コンデンサCの一方端が直流電源Pの正極端子及びスイッチング素子SW1、SW3、SW5の各コレクタ端子に接続され、コンデンサCの他方端が直流電源Pの負極端子及びスイッチング素子SW2、SW4、SW6の各エミッタ端子に接続されている。スイッチング素子SW1のエミッタ端子とスイッチング素子SW2のコレクタ端子との接続点は電流センサSi1を介して電動機MのU相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW3のエミッタ端子とスイッチング素子SW4のコレクタ端子との接続点は電流センサSi2を介して電動機MのV相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW5のエミッタ端子とスイッチング素子SW6のコレクタ端子との接続点は電動機MのW相の入力端子に接続されている。
【0025】
電圧センサSvは、直流電源Pから出力されインバータ回路2に入力される入力電圧Vinを検出し、その検出した入力電圧Vinを制御回路3に送る。
【0026】
コンデンサCは、入力電圧Vinを平滑する。
スイッチング素子SW1(第2のスイッチング素子)は、駆動信号S1がハイレベルであるときオンし、駆動信号S1がローレベルであるときオフする。具体的には、スイッチング素子SW1は、電動機Mの出力に応じたU相変調波Vu*(第2の変調波)が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、U相変調波Vu*に応じたデューティ比の駆動信号S1に基づいて繰り返しオン、オフし、U相変調波Vu*が搬送波の最大値である場合、駆動信号S1のデューティ比が100[%]になり、常時オンし、U相変調波Vu*が搬送波の最小値である場合、駆動信号S1のデューティ比が0[%]になり、常時オフする。なお、U相変調波Vu*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力が高くなるにつれて、U相変調波Vu*が搬送波の最大値に近づくと、駆動信号S1のデューティ比が大きくなり、U相変調波Vu*が搬送波の最小値に近づくと、駆動信号S1のデューティ比が小さくなるものとする。すなわち、U相変調波Vu*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力に応じたデューティ比でスイッチング素子SW1が繰り返しオン、オフする。なお、搬送波は、三角波、ノコギリ波(鋸歯状波)、逆ノコギリ波などとする。
【0027】
スイッチング素子SW2(第2のスイッチング素子)は、駆動信号S2がハイレベルであるときオンし、駆動信号S2がローレベルであるときオフする。具体的には、スイッチング素子SW2は、U相変調波Vu*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、U相変調波Vu*に応じたデューティ比の駆動信号S2に基づいて繰り返しオン、オフし、U相変調波Vu*が搬送波の最大値である場合、駆動信号S2のデューティ比が0[%]になり、常時オフし、U相変調波Vu*が搬送波の最小値である場合、駆動信号S2のデューティ比が100[%]になり、常時オンする。なお、U相変調波Vu*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力が高くなるにつれて、U相変調波Vu*が搬送波の最大値に近づくと、駆動信号S2のデューティ比が小さくなり、U相変調波Vu*が搬送波の最小値に近づくと、駆動信号S2のデューティ比が大きくなるものとする。すなわち、U相変調波Vu*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力に応じたデューティ比でスイッチング素子SW2が繰り返しオン、オフする。
【0028】
スイッチング素子SW3(第1のスイッチング素子)は、駆動信号S3がハイレベルであるときオンし、駆動信号S3がローレベルであるときオフする。具体的には、スイッチング素子SW3は、電動機Mの出力に応じたV相変調波Vv*(第1の変調波)が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、V相変調波Vv*に応じたデューティ比の駆動信号S3に基づいて繰り返しオン、オフし、V相変調波Vv*が搬送波の最大値である場合、駆動信号S3のデューティ比が100[%]になり、常時オンし、V相変調波Vv*が搬送波の最小値である場合、駆動信号S3のデューティ比が0[%]になり、常時オフする。なお、V相変調波Vv*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力が高くなるにつれて、V相変調波Vv*が搬送波の最大値に近づくと、駆動信号S3のデューティ比が大きくなり、V相変調波Vv*が搬送波の最小値に近づくと、駆動信号S3のデューティ比が小さくなるものとする。すなわち、V相変調波Vv*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力に応じたデューティ比でスイッチング素子SW3が繰り返しオン、オフする。
【0029】
スイッチング素子SW4(第1のスイッチング素子)は、駆動信号S4がハイレベルであるときオンし、駆動信号S4がローレベルであるときオフする。具体的には、スイッチング素子SW4は、V相変調波Vv*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、V相変調波Vv*に応じたデューティ比の駆動信号S4に基づいて繰り返しオン、オフし、V相変調波Vv*が搬送波の最大値である場合、駆動信号S4のデューティ比が0[%]になり、常時オフし、V相変調波Vv*が搬送波の最小値である場合、駆動信号S4のデューティ比が100[%]になり、常時オンする。なお、V相変調波Vv*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力が高くなるにつれて、V相変調波Vv*が搬送波の最大値に近づくと、駆動信号S4のデューティ比が小さくなり、V相変調波Vv*が搬送波の最小値に近づくと、駆動信号S4のデューティ比が大きくなるものとする。すなわち、V相変調波Vv*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力に応じたデューティ比でスイッチング素子SW4が繰り返しオン、オフする。
【0030】
スイッチング素子SW5(第3のスイッチング素子)は、駆動信号S5がハイレベルであるときオンし、駆動信号S5がローレベルであるときオフする。具体的には、スイッチング素子SW5は、電動機Mの出力に応じたW相変調波Vw*(第3の変調波)が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、W相変調波Vw*に応じたデューティ比の駆動信号S5に基づいて繰り返しオン、オフし、W相変調波Vw*が搬送波の最大値である場合、駆動信号S5のデューティ比が100[%]になり、常時オンし、W相変調波Vw*が搬送波の最小値である場合、駆動信号S5のデューティ比が0[%]になり、常時オフする。なお、W相変調波Vw*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力が高くなるにつれて、W相変調波Vw*が搬送波の最大値に近づくと、駆動信号S5のデューティ比が大きくなり、W相変調波Vw*が搬送波の最小値に近づくと、駆動信号S5のデューティ比が小さくなるものとする。すなわち、W相変調波Vw*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力に応じたデューティ比でスイッチング素子SW5が繰り返しオン、オフする。
【0031】
スイッチング素子SW6(第3のスイッチング素子)は、駆動信号S6がハイレベルであるときオンし、駆動信号S6がローレベルであるときオフする。具体的には、スイッチング素子SW6は、W相変調波Vw*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、W相変調波Vw*に応じたデューティ比の駆動信号S6に基づいて繰り返しオン、オフし、W相変調波Vw*が搬送波の最大値である場合、駆動信号S6のデューティ比が0[%]になり、常時オフし、W相変調波Vw*が搬送波の最小値である場合、駆動信号S6のデューティ比が100[%]になり、常時オンする。なお、W相変調波Vw*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力が高くなるにつれて、W相変調波Vw*が搬送波の最大値に近づくと、駆動信号S6のデューティ比が小さくなり、W相変調波Vw*が搬送波の最小値に近づくと、駆動信号S6のデューティ比が大きくなるものとする。すなわち、W相変調波Vw*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、電動機Mの出力に応じたデューティ比でスイッチング素子SW6が繰り返しオン、オフする。なお、駆動信号S1~S6を特に区別しない場合、単に、駆動信号Sとする。
【0032】
スイッチング素子Sw1~SW6がそれぞれオン、オフすることで、直流電源Pから出力される直流の入力電圧Vinが、互いに位相が120度ずつ異なる第1の交流電圧Vv、第2の交流電圧Vu、及び第3の交流電圧Vwに変換される。そして、第1の交流電圧Vvが電動機MのV相の入力端子に印加され、第2の交流電圧Vuが電動機MのU相の入力端子に印加され、第3の交流電圧Vwが電動機MのW相の入力端子に印加されることで、電動機Mの回転子が回転する。
【0033】
電流センサSi1は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、電動機MのU相に流れるU相電流Iuを検出して制御回路3に出力する。また、電流センサSi2は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、電動機MのV相に流れるV相電流Ivを検出して制御回路3に出力する。
【0034】
制御回路3は、ドライブ回路4と、演算部5と、記憶部6とを備える。なお、記憶部6は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成され、後述する、区間とU相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*との対応関係を示す情報D1や分岐条件とU相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*との対応関係を示す情報D2などを記憶しているものとする。
【0035】
ドライブ回路4は、IC(Integrated Circuit)などにより構成され、演算部5から出力されるU相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*と搬送波とを比較し、その比較結果に応じた駆動信号S1~S6をスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのゲート端子に出力する。
【0036】
例えば、ドライブ回路4は、U相変調波Vu*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、U相変調波Vu*が搬送波の最大値に近づくにつれて、デューティ比が大きくなる駆動信号S1を出力し、U相変調波Vu*が搬送波の最小値に近づくにつれて、デューティ比が小さくなる駆動信号S1を出力する。また、ドライブ回路4は、U相変調波Vu*が搬送波の最大値である場合、デューティ比が100[%]の駆動信号S1を出力し、U相変調波Vu*が搬送波の最小値である場合、デューティ比が0[%]の駆動信号S1を出力する。
【0037】
また、ドライブ回路4は、U相変調波Vu*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、U相変調波Vu*が搬送波の最大値に近づくにつれて、デューティ比が小さくなる駆動信号S2を出力し、U相変調波Vu*が搬送波の最小値に近づくにつれて、デューティ比が大きくなる駆動信号S2を出力する。また、ドライブ回路4は、U相変調波Vu*が搬送波の最大値である場合、デューティ比が0[%]の駆動信号S2を出力し、U相変調波Vu*が搬送波の最小値である場合、デューティ比が100[%]の駆動信号S2を出力する。
【0038】
また、ドライブ回路4は、V相変調波Vv*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、V相変調波Vv*が搬送波の最大値に近づくにつれて、デューティ比が大きくなる駆動信号S3を出力し、V相変調波Vv*が搬送波の最小値に近づくにつれて、デューティ比が小さくなる駆動信号S3を出力する。また、ドライブ回路4は、V相変調波Vv*が搬送波の最大値である場合、デューティ比が100[%]の駆動信号S3を出力し、V相変調波Vv*が搬送波の最小値である場合、デューティ比が0[%]の駆動信号S3を出力する。
【0039】
また、ドライブ回路4は、V相変調波Vv*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、V相変調波Vv*が搬送波の最大値に近づくにつれて、デューティ比が小さくなる駆動信号S4を出力し、V相変調波Vv*が搬送波の最小値に近づくにつれて、デューティ比が大きくなる駆動信号S4を出力する。また、ドライブ回路4は、V相変調波Vv*が搬送波の最大値である場合、デューティ比が0[%]の駆動信号S4を出力し、V相変調波Vv*が搬送波の最小値である場合、デューティ比が100[%]の駆動信号S4を出力する。
【0040】
また、ドライブ回路4は、W相変調波Vw*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、W相変調波Vw*が搬送波の最大値に近づくにつれて、デューティ比が大きくなる駆動信号S5を出力し、W相変調波Vw*が搬送波の最小値に近づくにつれて、デューティ比が小さくなる駆動信号S5を出力する。また、ドライブ回路4は、W相変調波Vw*が搬送波の最大値である場合、デューティ比が100[%]の駆動信号S5を出力し、W相変調波Vw*が搬送波の最小値である場合、デューティ比が0[%]の駆動信号S5を出力する。
【0041】
また、ドライブ回路4は、W相変調波Vw*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、W相変調波Vw*が搬送波の最大値に近づくにつれて、デューティ比が小さくなる駆動信号S6を出力し、W相変調波Vw*が搬送波の最小値に近づくにつれて、デューティ比が大きくなる駆動信号S6を出力する。また、ドライブ回路4は、W相変調波Vw*が搬送波の最大値である場合、デューティ比が0[%]の駆動信号S6を出力し、W相変調波Vw*が搬送波の最小値である場合、デューティ比が100[%]の駆動信号S6を出力する。
【0042】
なお、ドライブ回路4は、電動機Mの制御周期(0~360[deg])において、1相変調制御または矩形波制御を行うものとする。1相変調制御とは、3相のうちの1相のスイッチング素子を繰り返しオン、オフさせるとともに残りの2相のスイッチング素子を常時オンまたは常時オフさせる制御とする。また、ドライブ回路4は、1相変調制御を行っているとき、電動機Mの制御周期のうちの60度毎に、スイッチング素子SWを繰り返しオン、オフさせる相を順番(例えば、V相、U相、W相の順)に切り替えるものとする。また、矩形波制御とは、3相のそれぞれのスイッチング素子を常時オンまたは常時オフさせる制御とする。
【0043】
演算部5は、マイクロコンピュータなどにより構成され、速度演算部7と、減算部8と、トルク制御部9と、トルク/電流指令値変換部10と、座標変換部11と、減算部12と、減算部13と、電流制御部14と、dq/uvw変換部15とを備える。例えば、マイクロコンピュータが記憶部6に記憶されているプログラムを実行することにより、速度演算部7、減算部8、トルク制御部9、トルク/電流指令値変換部10、座標変換部11、減算部12、減算部13、電流制御部14、及びdq/uvw変換部15が実現される。
【0044】
速度演算部7は、電気角検出部Spにより検出される電気角θを用いて、電動機Mの回転子の回転速度ωを演算する。例えば、速度演算部6は、電気角θを演算部5の動作クロックで除算することにより回転速度ωを求める。
【0045】
減算部8は、外部から入力される回転速度指令値ω*と速度演算部7から出力される回転速度ωとの差Δωを算出する。
【0046】
トルク制御部9は、減算部8から出力される差Δωを用いて、トルク指令値T*を求める。例えば、トルク制御部9は、記憶部6に記憶されている、電動機Mの回転子の回転速度と電動機Mのトルクとが互いに対応付けられている情報を参照して、差Δωに相当する回転速度に対応するトルクを、トルク指令値T*として求める。
【0047】
トルク/電流指令値変換部10は、トルク制御部9から出力されるトルク指令値T*を、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に変換する。例えば、トルク/電流指令値変換部10は、記憶部6に記憶されている、電動機Mのトルクとd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*とが互いに対応付けられている情報を参照して、トルク指令値T*に相当するトルクに対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を求める。
【0048】
座標変換部11は、電流センサSi1により検出されるU相電流Iu及び電流センサSi2により検出されるV相電流Ivを用いて、電動機MのW相に流れるW相電流Iwを求める。また、座標変換部11は、電気角検出部Spにより検出される電気角θを用いて、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwをd軸電流Id(弱め界磁を発生させるための電流成分)及びq軸電流Iq(トルクを発生させるための電流成分)に変換する。
【0049】
なお、電流センサSi1、Si2により検出される電流は、U相電流Iu及びV相電流Ivの組み合わせに限定されず、V相電流Iv及びW相電流Iwの組み合わせ、または、U相電流Iu及びW相電流Iwの組み合わせでもよい。電流センサSi1、Si2によりV相電流Iv及びW相電流Iwが検出される場合、座標変換部11は、V相電流Iv及びW相電流Iwを用いて、U相電流Iuを求める。また、電流センサSi1、Si2によりU相電流Iu及びW相電流Iwが検出される場合、座標変換部11は、U相電流Iu及びW相電流Iwを用いて、V相電流Ivを求める。
【0050】
また、インバータ回路2において、電流センサSi1、Si2の他に、電動機MのW相に流れる電流を検出する電流センサSi3をさらに備える場合、座標変換部11は、電気角検出部Spにより検出される電気角θを用いて、電流センサSi1~Si3により検出されるU相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwをd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換するように構成してもよい。
【0051】
減算部12は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるd軸電流指令値Id*と、座標変換部11から出力されるd軸電流Idとの差ΔIdを算出する。
【0052】
減算部13は、トルク/電流指令値変換部10から出力されるq軸電流指令値Iq*と、座標変換部11から出力されるq軸電流Iqとの差ΔIqを算出する。
【0053】
電流制御部14は、減算部12から出力される差ΔId及び減算部13から出力される差ΔIqを用いたPI(Proportional Integral)制御により、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。例えば、電流制御部14は、下記式1を用いてd軸電圧指令値Vd*を算出するとともに、下記式2を用いてq軸電圧指令値Vq*を算出する。なお、KpはPI制御の比例項の定数とし、KiはPI制御の積分項の定数とし、Lqは電動機Mを構成するコイルのq軸インダクタンスとし、Ldは電動機Mを構成するコイルのd軸インダクタンスとし、ωは電動機Mの回転子の回転速度とし、Keは誘起電圧定数とする。
【0054】
d軸電圧指令値Vd*=Kp×差ΔId+∫(Ki×差ΔId)-ωLqIq・・・式1
【0055】
q軸電圧指令値Vq*=Kp×差ΔIq+∫(Ki×差ΔIq)+ωLdId+ωKe・・・式2
【0056】
dq/uvw変換部15は、電圧センサSvにより検出される入力電圧Vin及び電気角検出部Spにより検出される電気角θを用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*に変換する。なお、演算部5により演算された結果(U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*)は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、インバータ回路2の動作に反映されるものとする。
【0057】
ここで、
図2(a)は、電動機MのU相に印加される第2の交流電圧Vu、電動機MのV相に印加される第1の交流電圧Vv、及び電動機MのW相に印加される第3の交流電圧Vwの一例を示す図である。また、
図2(b)は、V相変調波Vv*の一例を示す図である。また、
図2(c)は、U相変調波Vu*の一例を示す図である。また、
図2(d)は、W相変調波Vw*の一例を示す図である。なお、
図2(a)~
図2(d)にそれぞれ示す2次元座標において、横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示しているものとする。また、
図2(a)に示す実線は交流電圧Vuを示し、
図2(a)に示す破線は交流電圧Vvを示し、
図2(a)に示す一点鎖線は交流電圧Vwを示し、
図2(b)に示す破線はV相変調波Vv*を示し、
図2(c)に示す実線はU相変調波Vu*を示し、
図2(d)に示す一点鎖線はW相変調波Vw*を示しているものとする。なお、0~360[deg]の目標電気角θvの範囲を電動機Mの制御周期とする。
【0058】
また、
図3(a)は、V相変調波Vv*と搬送波との比較結果の一例を示す図である。
図3(b)は、
図3(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S3の一例を示す図である。
図3(c)は、
図3(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S4の一例を示す図である。なお、
図3(a)~
図3(c)にそれぞれ示す2次元座標において、横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示しているものとする。
【0059】
また、
図4(a)は、U相変調波Vu*と搬送波との比較結果の一例を示す図である。
図4(b)は、
図4(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S1の一例を示す図である。
図4(c)は、
図4(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S2の一例を示す図である。なお、
図4(a)~
図4(c)にそれぞれ示す2次元座標において、横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示しているものとする。
【0060】
また、
図5(a)は、W相変調波Vw*と搬送波との比較結果の一例を示す図である。
図5(b)は、
図5(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S5の一例を示す図である。
図5(c)は、
図5(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S6の一例を示す図である。なお、
図5(a)~
図5(c)にそれぞれ示す2次元座標において、横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示しているものとする。
【0061】
dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期のうち、
図2(a)に示す第1の交流電圧Vvの正側のピークが存在する第1の区間(0~60[deg])において、
図2(b)に示すように、電動機Mの出力(回転速度ωやd軸電流Id、q軸電流Iq)に応じた変調率Mref´(搬送波の最大値(+1)より小さく、かつ、搬送波の最小値(-1)より大きい変調率Mref´)であるV相変調波Vv*を生成する。なお、変調率Mref´は、演算部5の演算周期T毎に求められるものとし、-1≦変調率Mref´≦+1とする。また、電動機Mの制御周期>演算部5の演算周期Tとする。また、dq/uvw変換部15は、第1の区間において、
図2(c)に示すように、搬送波の最小値と同じ値であるU相変調波Vu*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第1の区間において、
図2(d)に示すように、搬送波の最小値と同じ値であるW相変調波Vw*を生成する。そして、ドライブ回路4は、第1の区間において、
図3(a)に示すように、搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きいV相変調波Vv*と搬送波とを比較することで、
図3(b)に示すように、ハイレベルとローレベルが繰り返される駆動信号S3をスイッチング素子SW3のゲート端子に出力するとともに、
図3(c)に示すように、ローレベルとハイレベルが繰り返される駆動信号S4をスイッチング素子SW4のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第1の区間において、
図4(a)に示すように、搬送波の最小値であるU相変調波Vu*と搬送波とを比較することで、
図4(b)に示すように、ローレベルの駆動信号S1をスイッチング素子SW1のゲート端子に出力するとともに、
図4(c)に示すように、ハイレベルの駆動信号S2をスイッチング素子SW2のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第1の区間において、
図5(a)に示すように、搬送波の最小値であるW相変調波Vw*と搬送波とを比較することで、
図5(b)に示すように、ローレベルの駆動信号S5をスイッチング素子SW5のゲート端子に出力するとともに、
図5(c)に示すように、ハイレベルの駆動信号SW6をスイッチング素子S6のゲート端子に出力する。これにより、第1の区間において、スイッチング素子SW3、SW4が繰り返しオン、オフし、スイッチング素子SW1、SW5が常時オフし、スイッチング素子SW2、SW6が常時オンする。すなわち、第1の区間において、変調率Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、最小値より大きい場合、電動機Mが1相変調制御により駆動される。
【0062】
また、dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期のうち、
図2(a)に示す第2の交流電圧Vuの負側のピークが存在する第2の区間(60~120[deg])において、
図2(c)に示すように、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´(搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい変調率Mref´)であるU相変調波Vu*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第2の区間において、
図2(b)に示すように、搬送波の最大値と同じ値であるV相変調波Vv*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第2の区間において、
図2(d)に示すように、搬送波の最大値と同じ値であるW相変調波Vw*を生成する。そして、ドライブ回路4は、第2の区間において、
図4(a)に示すように、搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きいU相変調波Vu*と搬送波とを比較することで、
図4(b)に示すように、ハイレベルとローレベルが繰り返される駆動信号S1をスイッチング素子SW1のゲート端子に出力するとともに、
図4(c)に示すように、ローレベルとハイレベルが繰り返される駆動信号S2をスイッチング素子SW2のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第2の区間において、
図3(a)に示すように、搬送波の最大値であるV相変調波Vv*と搬送波とを比較することで、
図3(b)に示すように、ハイレベルの駆動信号S3をスイッチング素子SW3のゲート端子に出力するとともに、
図3(c)に示すように、ローレベルの駆動信号S4をスイッチング素子SW4のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第2の区間において、
図5(a)に示すように、搬送波の最大値であるW相変調波Vw*と搬送波とを比較することで、
図5(b)に示すように、ハイレベルの駆動信号S5をスイッチング素子SW5のゲート端子に出力するとともに、
図5(c)に示すように、ローレベルの駆動信号SW6をスイッチング素子S6のゲート端子に出力する。これにより、第2の区間において、スイッチング素子SW1、SW2が繰り返しオン、オフし、スイッチング素子SW3、SW5が常時オンし、スイッチング素子SW4、SW6が常時オフする。すなわち、第2の区間において、変調率Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、最小値より大きい場合、電動機Mが1相変調制御により駆動される。
【0063】
また、dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期のうち、
図2(a)に示す第3の交流電圧Vwの正側のピークが存在する第3の区間(120~180[deg])において、
図2(d)に示すように、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´(搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい変調率Mref´)であるW相変調波Vw*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第3の区間において、
図2(b)に示すように、搬送波の最小値と同じ値であるV相変調波Vv*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第3の区間において、
図2(c)に示すように、搬送波の最小値と同じ値であるU相変調波Vu*を生成する。そして、ドライブ回路4は、第3の区間において、
図5(a)に示すように、搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きいW相変調波Vw*と搬送波とを比較することで、
図5(b)に示すように、ハイレベルとローレベルが繰り返される駆動信号S5をスイッチング素子SW5のゲート端子に出力するとともに、
図5(c)に示すように、ローレベルとハイレベルが繰り返される駆動信号S6をスイッチング素子SW6のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第3の区間において、
図3(a)に示すように、搬送波の最小値であるV相変調波Vv*と搬送波とを比較することで、
図3(b)に示すように、ローレベルの駆動信号S3をスイッチング素子SW3のゲート端子に出力するとともに、
図3(c)に示すように、ハイレベルの駆動信号S4をスイッチング素子SW4のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第3の区間において、
図4(a)に示すように、搬送波の最小値であるU相変調波Vu*と搬送波とを比較することで、
図4(b)に示すように、ローレベルの駆動信号S1をスイッチング素子SW1のゲート端子に出力するとともに、
図4(c)に示すように、ハイレベルの駆動信号S2をスイッチング素子SW2のゲート端子に出力する。これにより、第3の区間において、スイッチング素子SW5、SW6が繰り返しオン、オフし、スイッチング素子SW1、SW3が常時オフし、スイッチング素子SW2、SW4が常時オンする。すなわち、第3の区間において、変調率Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、最小値より大きい場合、電動機Mが1相変調制御により駆動される。
【0064】
このように、dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期の半周期(0~180[deg])において、変調率Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、最小値より大きい場合、電動機Mが1相変調制御により駆動される。なお、dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期の残りの半周期(第1の区間(180~240[deg])、第2の区間(240~300[deg])、第3の区間(300~360[deg]))においても、変調率Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、最小値より大きい場合、電動機Mを1相変調制御により駆動する。
【0065】
また、
図6(a)は、第2の交流電圧Vu、第1の交流電圧Vv、及び第3の交流電圧Vwの一例を示す図である。また、
図6(b)は、V相変調波Vv*の一例を示す図である。また、
図6(c)は、U相変調波Vu*の一例を示す図である。また、
図6(d)は、W相変調波Vw*の一例を示す図である。なお、
図6(a)~
図6(d)にそれぞれ示す2次元座標において、横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示しているものとする。また、
図6(a)に示す実線は交流電圧Vuを示し、
図6(a)に示す破線は交流電圧Vvを示し、
図6(a)に示す一点鎖線は交流電圧Vwを示し、
図6(b)に示す破線はV相変調波Vv*を示し、
図6(c)に示す実線はU相変調波Vu*を示し、
図6(d)に示す一点鎖線はW相変調波Vw*を示しているものとする。なお、0~360[deg]の目標電気角θvの範囲を電動機Mの制御周期とする。
【0066】
また、
図7(a)は、V相変調波Vv*と搬送波との比較結果の一例を示す図である。
図7(b)は、
図7(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S3の一例を示す図である。
図7(c)は、
図7(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S4の一例を示す図である。なお、
図7(a)~
図7(c)にそれぞれ示す2次元座標において、横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示しているものとする。
【0067】
また、
図8(a)は、U相変調波Vu*と搬送波との比較結果の一例を示す図である。
図8(b)は、
図8(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S1の一例を示す図である。
図8(c)は、
図8(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S2の一例を示す図である。なお、
図8(a)~
図8(c)にそれぞれ示す2次元座標において、横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示しているものとする。
【0068】
また、
図9(a)は、W相変調波Vw*と搬送波との比較結果の一例を示す図である。
図9(b)は、
図9(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S5の一例を示す図である。
図9(c)は、
図9(a)に示す比較結果により得られる駆動信号S6の一例を示す図である。なお、
図9(a)~
図9(c)にそれぞれ示す2次元座標において、横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示しているものとする。
【0069】
dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期のうち、
図6(a)に示す第1の交流電圧Vvの正側のピークが存在する第1の区間(0~60[deg])において、
図6(b)に示すように、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´(搬送波の最大値(+1))であるV相変調波Vv*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第1の区間において、
図6(c)に示すように、搬送波の最小値(-1)と同じ値であるU相変調波Vu*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第1の区間において、
図6(d)に示すように、搬送波の最小値と同じ値であるW相変調波Vw*を生成する。そして、ドライブ回路4は、第1の区間において、
図7(a)に示すように、搬送波の最大値であるV相変調波Vv*と搬送波とを比較することで、
図7(b)に示すように、ハイレベルの駆動信号S3をスイッチング素子SW3のゲート端子に出力するとともに、
図7(c)に示すように、ローレベルの駆動信号S4をスイッチング素子SW4のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第1の区間において、
図8(a)に示すように、搬送波の最小値であるU相変調波Vu*と搬送波とを比較することで、
図8(b)に示すように、ローレベルの駆動信号S1をスイッチング素子SW1のゲート端子に出力するとともに、
図8(c)に示すように、ハイレベルの駆動信号SW2をスイッチング素子S2のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第1の区間において、
図9(a)に示すように、搬送波の最小値であるW相変調波Vw*と搬送波とを比較することで、
図9(b)に示すように、ローレベルの駆動信号S5をスイッチング素子SW5のゲート端子に出力するとともに、
図9(c)に示すように、ハイレベルの駆動信号SW6をスイッチング素子S6のゲート端子に出力する。これにより、第1の区間において、スイッチング素子SW2、SW3、SW6が常時オンし、スイッチング素子SW1、SW4、SW5が常時オフする。すなわち、第1の区間において、変調率Mref´が搬送波の最大値である場合、電動機Mが矩形波制御により駆動される。
【0070】
また、dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期のうち、
図6(a)に示す第2の交流電圧Vuの負側のピークが存在する第2の区間(60~120[deg])において、
図6(c)に示すように、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´(搬送波の最小値)であるU相変調波Vu*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第2の区間において、
図6(b)に示すように、搬送波の最大値と同じ値であるV相変調波Vv*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第2の区間において、
図6(d)に示すように、搬送波の最大値と同じ値であるW相変調波Vw*を生成する。そして、ドライブ回路4は、第2の区間において、
図8(a)に示すように、搬送波の最小値であるU相変調波Vu*と搬送波とを比較することで、
図8(b)に示すように、ローレベルの駆動信号S1をスイッチング素子SW1のゲート端子に出力するとともに、
図8(c)に示すように、ハイレベルの駆動信号S2をスイッチング素子SW2のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第2の区間において、
図7(a)に示すように、搬送波の最大値であるV相変調波Vv*と搬送波とを比較することで、
図7(b)に示すように、ハイレベルの駆動信号S3をスイッチング素子SW3のゲート端子に出力するとともに、
図7(c)に示すように、ローレベルの駆動信号SW4をスイッチング素子S4のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第2の区間において、
図9(a)に示すように、搬送波の最大値であるW相変調波Vw*と搬送波とを比較することで、
図9(b)に示すように、ハイレベルの駆動信号S5をスイッチング素子SW5のゲート端子に出力するとともに、
図9(c)に示すように、ローレベルの駆動信号SW6をスイッチング素子S6のゲート端子に出力する。これにより、第2の区間において、スイッチング素子SW2、SW3、SW5が常時オンし、スイッチング素子SW1、SW4、SW6が常時オフする。すなわち、第2の区間において、変調率Mref´が搬送波の最小値である場合、電動機Mが矩形波制御により駆動される。
【0071】
また、dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期のうち、
図6(a)に示す第3の交流電圧Vwの正側のピークが存在する第3の区間(120~180[deg])において、
図6(d)に示すように、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´(搬送波の最大値)であるW相変調波Vw*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第3の区間において、
図6(b)に示すように、搬送波の最小値と同じ値であるV相変調波Vv*を生成する。また、dq/uvw変換部15は、第3の区間において、
図6(c)に示すように、搬送波の最小値と同じ値であるU相変調波Vu*を生成する。そして、ドライブ回路4は、第3の区間において、
図9(a)に示すように、搬送波の最大値であるW相変調波Vw*と搬送波とを比較することで、
図9(b)に示すように、ハイレベルの駆動信号S5をスイッチング素子SW5のゲート端子に出力するとともに、
図9(c)に示すように、ローレベルの駆動信号S6をスイッチング素子SW6のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第3の区間において、
図7(a)に示すように、搬送波の最小値であるV相変調波Vv*と搬送波とを比較することで、
図7(b)に示すように、ローレベルの駆動信号S3をスイッチング素子SW3のゲート端子に出力するとともに、
図7(c)に示すように、ハイレベルの駆動信号SW4をスイッチング素子S4のゲート端子に出力する。また、ドライブ回路4は、第3の区間において、
図8(a)に示すように、搬送波の最小値であるUW相変調波Vu*と搬送波とを比較することで、
図8(b)に示すように、ローレベルの駆動信号S1をスイッチング素子SW1のゲート端子に出力するとともに、
図8(c)に示すように、ハイレベルの駆動信号SW2をスイッチング素子S2のゲート端子に出力する。これにより、第3の区間において、スイッチング素子SW2、SW4、SW5が常時オンし、スイッチング素子SW1、SW3、SW6が常時オフする。すなわち、第3の区間において、変調率Mref´が搬送波の最大値である場合、電動機Mが矩形波制御により駆動される。
【0072】
このように、dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期の半周期(0~180[deg])において、変調率Mref´が搬送波の最大値である場合、または、変調率Mref´が搬送波の最小値である場合、電動機Mが矩形波制御により駆動される。なお、dq/uvw変換部15は、電動機Mの制御周期の残りの半周期(第1の区間(180~240[deg])、第2の区間(240~300[deg])、第3の区間(300~360[deg]))においても、変調率Mref´が搬送波の最大値である場合、または、変調率Mref´が搬送波の最小値である場合、電動機Mを矩形波制御により駆動する。
【0073】
このように、実施形態の電動機Mの制御装置1は、電動機Mの制御周期のうち、第1の交流電圧Vvのピークが存在する第1の区間において、電動機Mの出力に応じたV相変調波Vv*を出力するとともに搬送波の最小値または最大値をU相変調波Vu*及びW相変調波Vw*として出力し、第2の交流電圧Vu*のピークが存在する第2の区間において、電動機Mの出力に応じたU相変調波Vu*を出力するとともに搬送波の最小値または最大値をV相変調波Vv*及びW相変調波Vw*として出力し、第3の交流電圧Vwのピークが存在する第3の区間において、電動機Mの出力に応じたW相変調波Vw*を出力するとともに搬送波の最小値または最大値をV相変調波Vv*及びU相変調波Vu*として出力する。
【0074】
これにより、電動機Mの制御周期(第1~第3の区間)において、電動機Mの出力に応じたV相変調波Vv*、U相変調波Vu*、及びW相変調波Vw*が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、3相のスイッチング素子のうちの1相のスイッチング素子を繰り返しオン、オフさせること、すなわち、1相変調制御を行うことができる。また、電動機Mの制御周期において、電動機Mの出力に応じたV相変調波Vv*、U相変調波Vu*、及びW相変調波Vw*が搬送波の最小値または最大値である場合、3相のスイッチング素子をそれぞれ常時オンまたは常時オフさせること、すなわち、矩形波制御を行うことができる。また、電動機Mの制御周期において、V相変調波Vv*、U相変調波Vu*、及びW相変調波Vw*に応じたデューティ比でスイッチング素子をオン、オフさせることができるため、電動機Mの出力に応じてスイッチング素子のオン時間を徐々に変化させることができる。そのため、電動機Mの出力が高くなり1相変調制御から矩形波制御に遷移しても、スイッチング素子のオン時間をシームレスに変化させることができるため、電動機Mに流れる電流の歪みを抑えることができ、トルクの変動を抑えることができる。また、第1~第3の区間毎に、スイッチング素子をスイッチングさせる相を切り替えるだけでよく、複雑な演算を必要としないため、制御装置1の演算負荷を抑えることができる。
【0075】
また、実施形態の電動機Mの制御装置1によれば、3相変調制御や2相変調制御を行う電動機の制御装置に比べて、スイッチング素子SW1~SW6のスイッチング周波数を高くすることができるため、スイッチング周波数を可聴域外にシフトすることができ、騒音低減を図ることができる。
【0076】
図10(a)は、dq/uvw変換部15の一例を示す図である。
図10(a)に示すdq/uvw変換部15は、位相角計算部151と、加算部152と、変調率計算部153と、変調率拡張部154と、変調波生成部155とを備える。
【0077】
位相角計算部151は、電流制御部14から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを計算する。例えば、位相角計算部151は、下記式3の計算結果を、位相角δとする。
【0078】
【0079】
加算部152は、位相角計算部151から出力される位相角δと、電気角検出部Spから出力される電気角θとの加算結果を、目標電気角θvとする。なお、位相角計算部151と加算部152とにより目標電気角算出部が構成されるものとする。
【0080】
変調率計算部153は、電圧センサSvにより検出される入力電圧Vinと、電流制御部14から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*とを用いて、変調率Mrefを計算する。例えば、変調率計算部153は、下記式4の計算結果を、変調率Mrefとする。なお、0<Mref<1とする。
【0081】
【0082】
変調率拡張部154は、変調率計算部153から出力される変調率Mrefを拡張することにより変調率Mref´を求める。例えば、変調率拡張部154は、下記式5の計算結果を、変調率Mfer´とする。なお、-1<Mfer´<1とする。
Mref´=2×Mref-1 ・・・式5
変調波生成部155は、加算部152から出力される目標電気角θvと、変調率拡張部154から出力される変調率Mref´とを用いて、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を生成する。例えば、変調波生成部155は、記憶部6に記憶されている情報D1を参照して、加算部152から出力される目標電気角θvに対応するU相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を求める。
【0083】
図10(b)は、情報D1の一例を示す図である。
図10(b)に示す情報D1では、第1の区間である「0~60[deg]」と、U相変調波Vu*である「-1(搬送波の最小値)」と、V相変調波Vv*である「Mref´」と、W相変調波Vw*である「-1」とが互いに対応付けられている。また、第2の区間である「60~120[deg]」と、U相変調波Vu*である「Mref´」と、V相変調波Vv*である「+1(搬送波の最大値)」と、W相変調波Vw*である「+1」とが互いに対応付けられている。また、第3の区間である「120~180[deg]」と、U相変調波Vu*である「-1」と、V相変調波Vv*である「-1」と、W相変調波Vw*である「Mref´」とが互いに対応付けられている。また、第1の区間である「180~240[deg]」と、U相変調波Vu*である「+1」と、V相変調波Vv*である「Mref´」と、W相変調波Vw*である「+1」とが互いに対応付けられている。また、第2の区間である「240~300[deg]」と、U相変調波Vu*である「Mref´」と、V相変調波Vv*である「-1」と、W相変調波Vw*である「-1」とが互いに対応付けられている。また、第3の区間である「300~360[deg]」と、U相変調波Vu*である「+1」と、V相変調波Vv*である「+1」と、W相変調波Vw*である「Mref´」とが互いに対応付けられている。
【0084】
例えば、変調波生成部155は、目標電気角θv(54[deg])が第1の区間(0~60[deg])に入っている場合、U相変調波Vu*として「-1」を出力するとともに、V相変調波Vv*として「Mref´」を出力するとともに、W相変調波Vw*として「-1」を出力する。これにより、Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、第1の区間において、スイッチング素子SW3、SW4が繰り返しオン、オフし、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンし、スイッチング素子SW5が常時オフし、スイッチング素子SW6が常時オンする。また、Mref´が搬送波の最大値である場合、第1の区間において、スイッチング素子SW3が常時オンし、スイッチング素子SW4が常時オフし、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンし、スイッチング素子SW5が常時オフし、スイッチング素子SW6が常時オンする。
【0085】
また、変調波生成部155は、目標電気角θv(108[deg])が第2の区間(60~120[deg])に入っている場合、U相変調波Vu*として「Mref´」を出力するとともに、V相変調波Vv*として「+1」を出力するとともに、W相変調波Vw*として「+1」を出力する。これにより、Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、第2の区間において、スイッチング素子SW1、SW2が繰り返しオン、オフし、スイッチング素子SW3が常時オンし、スイッチング素子SW4が常時オフし、スイッチング素子SW5が常時オンし、スイッチング素子SW6が常時オフする。また、Mref´が搬送波の最小値である場合、第2の区間において、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンし、スイッチング素子SW3が常時オンし、スイッチング素子SW4が常時オフし、スイッチング素子SW5が常時オンし、スイッチング素子SW6が常時オフする。
【0086】
また、変調波生成部155は、目標電気角θv(162[deg])が第3の区間(120~180[deg])に入っている場合、U相変調波Vu*として「-1」を出力するとともに、V相変調波Vv*として「-1」を出力するとともに、W相変調波Vw*として「Mref´」を出力する。これにより、Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、第3の区間において、スイッチング素子SW5、SW6が繰り返しオン、オフし、スイッチング素子SW3が常時オフし、スイッチング素子SW4が常時オンし、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンする。また、Mref´が搬送波の最大値である場合、第3の区間において、スイッチング素子SW5が常時オンし、スイッチング素子SW6が常時オフし、スイッチング素子SW3が常時オフし、スイッチング素子SW4が常時オンし、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンする。
【0087】
すなわち、
図10(a)に示すdq/uvw変換部15によれば、第1の区間において、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´をV相変調波Vv*として出力するとともに搬送波の最小値または最大値をU相変調波Vu*及びW相変調波Vw*として出力し、第2の区間において、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´をU相変調波Vu*として出力するとともに搬送波の最小値または最大値をV相変調波Vv*及びW相変調波Vw*として出力し、第3の区間において、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´をW相変調波Vw*として出力するとともに搬送波の最小値または最大値をV相変調波Vv*及びU相変調波Vu*として出力することができる。
【0088】
図11(a)は、dq/uvw変換部15の他の例を示す図である。
図11(a)に示すdq/uvw変換部15は、2相3相変換部156と、変調波生成部157とを備える。
【0089】
2相3相変換部156は、電気角検出部Spから出力される電気角θを用いて、電流制御部14から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu**(第2の電圧指令値)、V相電圧指令値Vv**(第1の電圧指令値)、及びW相電圧指令値Vw**(第3の電圧指令値)に変換する。例えば、2相3相変換部156は、下記式6に示す変換行列Cを用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu**、V相電圧指令値Vv**、及びW相電圧指令値Vw**に変換する。
【0090】
【0091】
変調波生成部157は、電圧センサSvにより検出される入力電圧Vinと、電流制御部14から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*と、2相3相変換部156から出力されるU相電圧指令値Vu**、V相電圧指令値Vv**、及びW相電圧指令値Vw**とを用いて、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を演算する。例えば、変調波生成部157は、上記式3を計算することにより位相角δを求め、その位相角δと電気角検出部Spから出力される電気角θとの加算結果を目標電気角θvとし、上記式4を計算することにより変調率Mrefを求め、上記式5を計算することにより変調率Mfer´を求める。また、変調波生成部157は、記憶部6に記憶されている情報D2を参照して、2相3相変換部156から出力されるU相電圧指令値Vu**、V相電圧指令値Vv**、及びW相電圧指令値Vw**により求められる分岐条件に対応するU相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を求める。
【0092】
図11(b)は、情報D2の一例を示す図である。
図11(b)に示す情報D2では、「V相電圧指令値Vv**の絶対値がU相電圧指令値Vu**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、V相電圧指令値Vv**がゼロ以上である場合」という分岐条件と、U相変調波Vu*である「-1(搬送波の最小値)」と、V相変調波Vv*である「Mref´」と、W相変調波Vw*である「-1」とが互いに対応付けられている。また、「U相電圧指令値Vu**の絶対値がV相電圧指令値Vv**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、U相電圧指令値Vu**がゼロ以上である場合」という分岐条件と、U相変調波Vu*である「Mref´」と、V相変調波Vv*である「+1(搬送波の最大値)」と、W相変調波Vw*である「+1」とが互いに対応付けられている。また、「W相電圧指令値Vw**の絶対値がV相電圧指令値Vv**の絶対値及びU相電圧指令値Vu**の絶対値より大きい場合で、かつ、W相電圧指令値Vw**がゼロ以上である場合」という分岐条件と、U相変調波Vu*である「-1」と、V相変調波Vv*である「-1」と、W相変調波Vw*である「Mref´」とが互いに対応付けられている。また、「V相電圧指令値Vv**の絶対値がU相電圧指令値Vu**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、V相電圧指令値Vv**がゼロより小さい場合」という分岐条件と、U相変調波Vu*である「+1」と、V相変調波Vv*である「Mref´」と、W相変調波Vw*である「+1」とが互いに対応付けられている。また、「U相電圧指令値Vu**の絶対値がV相電圧指令値Vv**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、U相電圧指令値Vu**がゼロより小さい場合」という分岐条件と、U相変調波Vu*である「Mref´」と、V相変調波Vv*である「-1」と、W相変調波Vw*である「-1」とが互いに対応付けられている。また、「W相電圧指令値Vw**の絶対値がV相電圧指令値Vv**の絶対値及びU相電圧指令値Vu**の絶対値より大きい場合で、かつ、W相電圧指令値Vw**がゼロより小さい場合」という分岐条件と、U相変調波Vu*である「+1」と、V相変調波Vv*である「+1」と、W相変調波Vw*である「Mref´」とが互いに対応付けられている。
【0093】
例えば、変調波生成部157は、V相電圧指令値Vv**の絶対値がU相電圧指令値Vu**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、V相電圧指令値Vv**がゼロ以上である場合、すなわち、目標電気角θvが第1の区間(0~60[deg])に入っている場合、U相変調波Vu*として「-1」を出力するとともに、V相変調波Vv*として「Mref´」を出力するとともに、W相変調波Vw*として「-1」を出力する。これにより、Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、第1の区間において、スイッチング素子SW3、SW4が繰り返しオン、オフし、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンし、スイッチング素子SW5が常時オフし、スイッチング素子SW6が常時オンする。また、Mref´が搬送波の最大値である場合、第1の区間において、スイッチング素子SW3が常時オンし、スイッチング素子SW4が常時オフし、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンし、スイッチング素子SW5が常時オフし、スイッチング素子SW6が常時オンする。
【0094】
また、変調波生成部157は、U相電圧指令値Vu**の絶対値がV相電圧指令値Vv**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、U相電圧指令値Vu**がゼロ以上である場合、すなわち、目標電気角θvが第2の区間(60~120[deg])に入っている場合、U相変調波Vu*として「Mref´」を出力するとともに、V相変調波Vv*として「+1」を出力するとともに、W相変調波Vw*として「+1」を出力する。これにより、Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、第2の区間において、スイッチング素子SW1、SW2が繰り返しオン、オフし、スイッチング素子SW3が常時オンし、スイッチング素子SW4が常時オフし、スイッチング素子SW5が常時オンし、スイッチング素子SW6が常時オフする。また、Mref´が搬送波の最小値である場合、第2の区間において、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンし、スイッチング素子SW3が常時オンし、スイッチング素子SW4が常時オフし、スイッチング素子SW5が常時オンし、スイッチング素子SW6が常時オフする。
【0095】
また、変調波生成部157は、W相電圧指令値Vw**の絶対値がV相電圧指令値Vv**の絶対値及びU相電圧指令値Vu**の絶対値より大きい場合で、かつ、W相電圧指令値Vw**がゼロ以上である場合、すなわち、目標電気角θvが第3の区間(120~180[deg])に入っている場合、U相変調波Vu*として「-1」を出力するとともに、V相変調波Vv*として「-1」を出力するとともに、W相変調波Vw*として「Mref´」を出力する。これにより、Mref´が搬送波の最大値より小さく、かつ、搬送波の最小値より大きい場合、第3の区間において、スイッチング素子SW5、SW6が繰り返しオン、オフし、スイッチング素子SW3が常時オフし、スイッチング素子SW4が常時オンし、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンする。また、Mref´が搬送波の最大値である場合、第3の区間において、スイッチング素子SW5が常時オンし、スイッチング素子SW6が常時オフし、スイッチング素子SW3が常時オフし、スイッチング素子SW4が常時オンし、スイッチング素子SW1が常時オフし、スイッチング素子SW2が常時オンする。
【0096】
すなわち、
図11(a)に示すdq/uvw変換部15によれば、第1の区間において、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´をV相変調波Vv*として出力するとともに搬送波の最小値または最大値をU相変調波Vu*及びW相変調波Vw*として出力し、第2の区間において、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´をU相変調波Vu*として出力するとともに搬送波の最小値または最大値をV相変調波Vv*及びW相変調波Vw*として出力し、第3の区間において、電動機Mの出力に応じた変調率Mref´をW相変調波Vw*として出力するとともに搬送波の最小値または最大値をV相変調波Vv*及びU相変調波Vu*として出力することができる。
【0097】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0098】
<変形例1>
図12は、変形例1におけるdq/uvw変換部15の動作の一例を示すフローチャートである。
【0099】
まず、dq/uvw変換部15は、演算部5の演算周期Tを求める(ステップS1)。例えば、dq/uvw変換部15は、今回取得された電気角θと前回取得された電気角θとの差を、演算周期Tとする。
【0100】
次に、dq/uvw変換部15は、演算部5の次の演算周期Tを推定する(ステップS2)。例えば、dq/uvw変換部15は、演算部5の現在の演算タイミングから演算周期T後の演算タイミングを、演算部5の次の演算周期Tの開始タイミングとし、その開始タイミングから演算周期T後の演算タイミングを、演算部5の次の演算周期Tの終了タイミングとし、その開始タイミングから終了タイミングまでの範囲を、演算部5の次の演算周期Tとする。なお、現在の演算タイミングで求められたU相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*は、次の演算周期Tにおいて、インバータ回路2の動作に反映されるものとする。
【0101】
次に、dq/uvw変換部15は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミング(0[deg]、60[deg]、120[deg]、180[deg]、240[deg]、300[deg])が存在する場合(ステップS3:Yes)、切り替わり時間tcを設定する(ステップS4)。例えば、dq/uvw変換部15は、第1~第3の区間の切り替わりタイミングと、次の演算周期Tの開始タイミングとの差を、切り替わり時間tcとする。
【0102】
一方、dq/uvw変換部15は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在しない場合(ステップS3:No)、切り替わり時間tcを演算周期より大きい値に設定する(ステップS5)。
【0103】
そして、dq/uvw変換部15は、入力電圧Vin及び電気角θを用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*に変換し、次の演算周期Tの開始タイミングになると、切り替わり時間tc経過後に、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*のそれぞれの値を切り替える(ステップS6)。
【0104】
図13は、切り替わり時間tcの設定を説明するための図である。なお、
図13に示す2次元座標の横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示している。また、
図13に示す実線はU相変調波Vu*を示し、
図13に示す破線はV相変調波Vv*を示し、
図13に示す一点鎖線はW相変調波Vw*を示している。また、演算部5の演算周期Tを18[deg]とする。
【0105】
例えば、演算部5の現在の演算タイミングにおける目標電気角θvを36[deg]とする場合を想定する。または、V相電圧指令値Vv**の絶対値がU相電圧指令値Vu**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、V相電圧指令値Vv**がゼロ以上である場合を想定する。
【0106】
dq/uvw変換部15は、36[deg]+18[deg]=54[deg]を、演算部5の次の演算周期Tの開始タイミングとし、54[deg]+18[deg]=72[deg]を、演算部5の次の演算周期Tの終了タイミングとし、54[deg]~72[deg]を、演算部5の次の演算周期Tとする。
【0107】
次に、dq/uvw変換部15は、目標電気角θvが第1の区間(0~60[deg])に入ると判断し、または、V相電圧指令値Vv**の絶対値がU相電圧指令値Vu**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、V相電圧指令値Vv**がゼロ以上であると判断し、次の演算周期T(54[deg]~72[deg])において、第1の区間から第2の区間の切り替わりタイミングとして60[deg]が存在すると判断すると、60[deg]-54[deg]=6[deg]に相当する時間を、切り替わり時間tcとする。
【0108】
そして、dq/uvw変換部15は、次の演算周期Tの開始タイミング(54[deg])になると、切り替わり時間tc(6[deg]に相当する時間)経過後に、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*のそれぞれの値を切り替える。すなわち、dq/uvw変換部15は、60[deg]になると、V相変調波Vv*の値を変調率Mref´から搬送波の最大値に切り替えるとともに、W相変調波Vw*の値を搬送波の最小値から最大値に切り替えるとともに、U相変調波Vu*の値を搬送波の最小値から変調率Mref´に切り替える。なお、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1の区間から第2の区間の切り替わりタイミングが存在しない場合、演算周期途中の変調波の変更は行わず、その次の演算周期になるまで継続して出力する。
【0109】
このように、変形例1におけるdq/uvw変換部15は、次の演算周期Tにおいて、第1の区間から第2の区間への切り替わりタイミング、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミング、または第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングが存在する場合、その切り替わりタイミングに次の演算周期Tの開始タイミングを合わせる。言い換えると、変形例1におけるdq/uvw変換部15は、次の演算周期Tにおいて、第1の区間から第2の区間への切り替わりタイミング、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミング、または第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングが存在する場合、その切り替わりタイミングを、演算部5の演算周期の開始タイミングから切り替わり時間tc経過後にずらしている。
【0110】
これにより、第1の区間から第2の区間への切り替わりタイミング、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミング、または第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングにおいて、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*のそれぞれの値を切り替えることができるため、スイッチング素子をオンさせる必要がないときにスイッチング素子をオンさせたり、スイッチング素子をオンさせる必要があるときにスイッチング素子をオフさせたりすることを防止することができ、電動機Mに流れる電流に生じる歪みをさらに抑えることができ、トルクの変動をさらに抑えることができる。
【0111】
<変形例2>
図14は、変形例2におけるdq/uvw変換部15の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図14に示すステップS1、S2、S3、S5は、
図12に示すステップS1、S2、S3、S5と同様とし、その説明を省略する。
【0112】
図14に示すフローチャートにおいて、
図12に示すフローチャートと異なる点は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合(ステップS3:Yes)、第1~第3の優先順位に対応する変調波を基に、切り替わり時間tc1~tc3を設定し(ステップS4´)、次の演算周期Tの開始タイミングになると、切り替わり時間tc1~tc3経過後に、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*のそれぞれの値を切り替える(ステップS6´)点である。なお、第1の優先順位に対応する変調波は、第1~第3の区間の切り替わりタイミングにおいて、変調率Mref´から搬送波の最小値または最大値に切り替わる変調波とする。また、第2の優先順位に対応する変調波は、第1~第3の区間の切り替わりタイミングにおいて、搬送波の最小値から最大値に切り替わる変調波または搬送波の最大値から最小値に切り替わる変調波とする。また、第3の優先順位に対応する変調波は、第1~第3の区間の切り替わりタイミングにおいて、搬送波の最小値または最大値から変調率Mref´に切り替わる変調波とする。
【0113】
dq/uvw変換部15は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合、その切り替わりタイミングにおいて、第1の優先順位に対応する変調波、第2の優先順位に対応する変調波、第3の優先順位に対応する変調波の順に、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*のそれぞれの値を切り替える。
【0114】
すなわち、dq/uvw変換部15は、次の演算周期Tにおいて、第1の区間から第2の区間への切り替わりタイミングが存在する場合、その切り替わりタイミングにおいて、V相変調波Vv*の値を変調率Mref´から搬送波の最小値または最大値に切り替えた後、W相変調波Vw*の値を搬送波の最小値から最大値にまたは搬送波の最大値から最小値に切り替えた後、U相変調波Vu*の値を搬送波の最小値または最大値から変調率Mref´に切り替える。
【0115】
また、dq/uvw変換部15は、次の演算周期Tにおいて、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミングが存在する場合、その切り替わりタイミングにおいて、U相変調波Vu*の値を変調率Mref´から搬送波の最小値または最大値に切り替えた後、V相変調波Vv*の値を搬送波の最小値から最大値にまたは搬送波の最大値から最小値に切り替えた後、W相変調波Vw*の値を搬送波の最小値または最大値から変調率に切り替える。
【0116】
また、dq/uvw変換部15は、次の演算周期Tにおいて、第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングが存在する場合、その切り替わりタイミングにおいて、W相変調波Vw*の値を変調率Mref´から搬送波の最小値または最大値に切り替えた後、U相変調波Vu*の値を搬送波の最小値から最大値または搬送波の最大値から最小値に切り替えた後、V相変調波Vv*の値を搬送波の最小値または最大値から変調率に切り替える。
【0117】
図15(a)~
図15(c)は、切り替わり時間tc1~tc3の設定を説明するための図である。なお、
図15(a)~
図15(c)に示す2次元座標の横軸は、電動機Mの回転子の電気角θにd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*に対応する位相角δを加算した目標電気角θvを示し、縦軸は、電圧を示している。また、
図15(a)~(c)に示す実線はU相変調波Vu*を示し、
図15(a)~
図15(c)に示す破線はV相変調波Vv*を示し、
図15(a)~
図15(c)に示す一点鎖線はW相変調波Vw*を示している。また、演算部5の演算周期Tを18[deg]とする。
【0118】
例えば、演算部5の現在の演算タイミングにおける目標電気角θvを36[deg]とする場合を想定する。または、V相電圧指令値Vv**の絶対値がU相電圧指令値Vu**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、V相電圧指令値Vv**がゼロ以上である場合を想定する。
【0119】
dq/uvw変換部15は、36[deg]+18[deg]=54[deg]を、演算部5の次の演算周期Tの開始タイミングとし、54[deg]+18[deg]=72[deg]を、演算部5の次の演算周期Tの終了タイミングとし、54[deg]~72[deg]を、演算部5の次の演算周期Tとする。
【0120】
次に、dq/uvw変換部15は、目標電気角θvが第1の区間(0~60[deg])に入ると判断し、または、V相電圧指令値Vv**の絶対値がU相電圧指令値Vu**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、V相電圧指令値Vv**がゼロ以上であると判断し、次の演算周期T(54[deg]~72[deg])において、第1の区間から第2の区間の切り替わりタイミングとして60[deg]が存在すると判断すると、切り替わり時間tc1~tc3を設定する。
【0121】
例えば、
図15(a)に示すように、dq/uvw変換部15は、60[deg]-54[deg]=6[deg]に相当する時間を、切り替わり時間tc2とし、切り替わり時間tc2よりΔt短い時間を、切り替わり時間tc1とし、切り替わり時間tc2よりΔt長い時間を、切り替わり時間tc3とする。なお、Δtは、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*のそれぞれの値を切り替えるタイミングが互いに一致しないように、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*のそれぞれの値を切り替えるタイミングをずらすための時間(電気角)であって、Δtの2倍の時間は、Δtの2倍の時間においてスイッチング素子が繰り返しオン、オフしていなくても、電動機Mに流れる電流の歪みを許容することが可能な最小時間とする。
【0122】
または、
図15(b)に示すように、dq/uvw変換部15は、60[deg]-54[deg]=6[deg]に相当する時間を、切り替わり時間tc1とし、切り替わり時間tc1よりΔt長い時間を、切り替わり時間tc2とし、切り替わり時間tc2よりΔt長い時間を、切り替わり時間tc3としてもよい。
【0123】
または、
図15(c)に示すように、dq/uvw変換部15は、60[deg]-54[deg]=6[deg]に相当する時間を、切り替わり時間tc3とし、切り替わり時間tc3よりΔt短い時間を、切り替わり時間tc2とし、切り替わり時間tc2よりΔt短い時間を、切り替わり時間tc1としてもよい。
【0124】
そして、dq/uvw変換部15は、次の演算周期Tの開始タイミング(54[deg])になると、切り替わり時間tc1経過後に、V相変調波Vv*の値を変調率Mref´から搬送波の最大値に切り替え、切り替わり時間tc2経過後に、W相変調波Vw*の値を搬送波の最小値から最大値に切り替え、切り替わり時間tc3経過後に、U相変調波Vu*の値を搬送波の最小値から変調率Mref´に切り替える。
【0125】
このように、変形例2におけるdq/uvw変換部15は、第1の区間から第2の区間への切り替わりタイミング、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミング、または第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングにおいて、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*のそれぞれの値の切り替わりタイミングが互いに重ならないように、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*のそれぞれの値の切り替わりタイミングをずらしている。
【0126】
これにより、第1の区間から第2の区間への切り替わりタイミング、第2の区間から第3の区間への切り替わりタイミング、または第3の区間から第1の区間への切り替わりタイミングにおいて、互いに異なるスイッチング素子が同時にオンすることを回避することができるため、逆極性パルスが生じることを抑えることができ、電磁ノイズを抑えることができる。そのため、電動機に流れる電流に生じる歪みをさらに抑えることができ、トルクの変動をさらに抑えることができる。
【0127】
<変形例3>
ところで、変形例1や変形例2のように、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在し、その切り替わりタイミングを、演算部5の演算周期の開始タイミングから切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1経過後にずらす場合、駆動信号Sのデューティ比と所望のデューティ比との誤差が比較的大きくなるおそれがある。
【0128】
図16は、変形例1または変形例2におけるV相変調波Vv*、搬送波、及び駆動信号S3の一例を示す図である。なお、搬送波の1周期を9[deg]とする。
【0129】
図16において、dq/uvw変換部15は、次の演算周期Tの開始タイミング(54[deg])になると、切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1(6[deg]に相当する時間)経過後に、V相変調波Vv*の値を変調率Mref´から搬送波の最大値に切り替えている。
【0130】
このように、次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合で、かつ、切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1が搬送波の1周期よりも短くなる場合、次の演算周期Tの開始タイミングから搬送波の1周期分経過するまでの途中において、V相変調波Vv*が変調波Mref´から搬送波の最大値に切り替わるため、駆動信号S3のデューティ比が変調波Mref´に応じたデューティ比と一致しなくなってしまう。すなわち、次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合、駆動信号Sのデューティ比と所望なデューティ比との誤差が比較的大きくなるおそれがある。そして、駆動信号Sのデューティ比と所望なデューティ比との誤差が比較的大きくなると、電動機Mに流れる電流に低次の高調波(ビート)が乗り、トルクリプルや騒音振動が増加するおそれがある。
【0131】
そこで、変形例3における電動機Mの制御装置1では、次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合、次の演算周期Tの開始タイミングから切り替わり時間tcが経過するまでの期間において、駆動信号Sのデューティ比と所望なデューティ比との誤差が比較的小さくなるように、搬送波の周波数fを所定周波数に切り替える。
【0132】
図17は、変形例3における電動機Mの制御装置1の一例を示す図である。なお、
図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
【0133】
図17に示す電動機Mの制御装置1において、
図1に示す電動機Mの制御装置1と異なる点は、dq/uvw変換部15及びドライブ回路4の代わりに、dq/uvw変換部15´及びドライブ回路4´を備えている点である。
【0134】
dq/uvw変換部15´は、電圧センサSvにより検出される入力電圧Vin及び電気角検出部Spにより検出される電気角θを用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*に変換するとともに、搬送波の周波数fを所定周波数に設定する。なお、演算部5により演算された結果(U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、W相変調波Vw*、及び周波数f)は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、インバータ回路2の動作に反映されるものとする。
【0135】
ドライブ回路4´は、ICなどにより構成され、dq/uvw変換部15´から出力されるU相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*と、dq/uvw変換部15´から出力される周波数fの搬送波とを比較し、その比較結果に応じた駆動信号S1~S6をスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのゲート端子に出力する。
【0136】
図18(a)は、dq/uvw変換部15´の一例を示す図である。なお、
図10(a)に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
【0137】
図18(a)に示すdq/uvw変換部15´は、位相角計算部151と、加算部152と、変調率計算部153と、変調率拡張部154と、変調波生成部155´と、速度演算部158とを備える。
【0138】
速度演算部158は、電気角検出部Spにより検出される電気角θを用いて、電動機Mの回転子の回転速度ωを演算する。例えば、速度演算部158は、電気角θを時間で微分することにより回転速度ωを求める。
【0139】
変調波生成部155´は、加算部152から出力される目標電気角θvと、変調率拡張部154から出力される変調率Mref´と、速度演算部158により演算される回転速度ωとを用いて、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を生成するとともに搬送波の周波数fを所定周波数に設定する。例えば、変調波生成部155´は、記憶部6に記憶されている情報D1を参照して、加算部152から出力される目標電気角θvに対応するU相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を求める。また、変調波生成部155´は、搬送波の周波数fを、デフォルトの周波数fd、または、切り替わり時間tcの逆数である周波数fc、または、切り替わり時間tc1の逆数である周波数fc1に設定する。なお、デフォルトの周波数fdは、例えば、演算部5の演算周期や回転速度ωに応じた周波数とする。
【0140】
図18(b)は、dq/uvw変換部15´の他の例を示す図である。なお、
図11(a)に示す構成や
図18(a)に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
【0141】
図18(b)に示すdq/uvw変換部15´は、2相3相変換部156と、変調波生成部157´と、速度演算部158とを備える。
【0142】
変調波生成部157´は、電圧センサSvにより検出される入力電圧Vinと、電流制御部14から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*と、2相3相変換部156から出力されるU相電圧指令値Vu**、V相電圧指令値Vv**、及びW相電圧指令値Vw**とを用いて、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を生成するとともに搬送波の周波数fを所定周波数に設定する。例えば、変調波生成部157´は、上記式3を計算することにより位相角δを求め、その位相角δと電気角検出部Spから出力される電気角θとの加算結果を目標電気角θvとし、上記式4を計算することにより変調率Mrefを求め、上記式5を計算することにより変調率Mfer´を求める。また、変調波生成部157´は、記憶部6に記憶されている情報D2を参照して、2相3相変換部156から出力されるU相電圧指令値Vu**、V相電圧指令値Vv**、及びW相電圧指令値Vw**により求められる分岐条件に対応するU相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を求める。また、変調波生成部157´は、搬送波の周波数fを、周波数fd、周波数fc、または、周波数fc1に設定する。
【0143】
図19は、dq/uvw変換部15´の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図19に示すステップS1~ステップS5は、
図12に示すステップS1~ステップS5と同様である。
【0144】
まず、dq/uvw変換部15´は、演算部5の演算周期Tを求め(ステップS1)、演算部5の次の演算周期Tを推定し(ステップS2)、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在するか否かを判断する(ステップS3)。
【0145】
次に、dq/uvw変換部15´は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合(ステップS3:Yes)、その切り替わりタイミングに基づいて切り替わり時間tcを設定し(ステップS4)、切り替わり時間tcが最小時間t_min以上である場合(ステップS7:Yes)、搬送波の周波数fを周波数fcに設定し(ステップS8)、ステップ10に移行する。最小時間t_minは、スイッチング素子SW1~SW6をオフからオンまたはオンからオフに切り替えることが可能な場合の搬送波の1周期の最小値とする。
【0146】
一方、dq/uvw変換部15´は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在しない場合(ステップS3:No)、切り替わり時間tcを次の演算周期Tより大きい値に設定し(ステップS5)、搬送波の周波数fを周波数fdに設定し(ステップS9)、ステップS10に移行する。
【0147】
また、dq/uvw変換部15´は、切り替わり時間tcが最小時間t_minより短い場合(ステップS7:No)、搬送波の周波数fを周波数fdに設定し(ステップS9)、ステップS10に移行する。
【0148】
次に、dq/uvw変換部15´は、ステップS10において、入力電圧Vin及び電気角θを用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*に変換し、次の演算周期Tの開始タイミングになると、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*をドライブ回路4´に出力するとともに、周波数fをドライブ回路4´に出力する。
【0149】
また、dq/uvw変換部15´は、ステップS10において、次の演算周期Tの開始タイミングから切り替わり時間tcが経過すると、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を、変調率Mref´から搬送波の最大値、搬送波の最小値から変調率Mref´、搬送波の最小値から搬送波の最大値、搬送波の最大値から搬送波の最小値、変調率Mref´から搬送波の最小値、または搬送波の最大値から変調率Mref´に切り替えるとともに、周波数fを周波数fdに切り替える。
【0150】
図20は、dq/uvw変換部15´の動作の他の例を示すフローチャートである。なお、
図20に示すステップS1~ステップS4´、ステップS5は、
図14に示すステップS1~ステップS4´、ステップS5と同様である。また、
図20に示すステップS9及びステップS10は、
図19に示すステップS9及びステップS10と同様である。
【0151】
まず、dq/uvw変換部15´は、演算部5の演算周期Tを求め(ステップS1)、演算部5の次の演算周期Tを推定し(ステップS2)、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在するか否かを判断する(ステップS3)。
【0152】
次に、dq/uvw変換部15´は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合(ステップS3:Yes)、その切り替わりタイミングに基づいて切り替わり時間tc1~tc3を設定し(ステップS4´)、切り替わり時間tc1が最小時間t_min以上である場合(ステップS11:Yes)、周波数fを周波数fc1に設定し(ステップS12)、ステップS10に移行する。
【0153】
一方、dq/uvw変換部15´は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在しない場合(ステップS3:No)、切り替わり時間tcを次の演算周期Tより大きい値に設定し(ステップS5)、周波数fを周波数fdに設定し(ステップS9)、ステップS10に移行する。
【0154】
また、dq/uvw変換部15´は、切り替わり時間tc1が最小時間t_minより短い場合(ステップS11:No)、周波数fを周波数fdに設定し(ステップS9)、ステップS10に移行する。
【0155】
次に、dq/uvw変換部15´は、ステップS10において、入力電圧Vin及び電気角θを用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*に変換し、次の演算周期Tの開始タイミングになると、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*をドライブ回路4´に出力するとともに、周波数fをドライブ回路4´に出力する。
【0156】
また、dq/uvw変換部15´は、ステップS10において、次の演算周期Tの開始タイミングから切り替わり時間tcが経過すると、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*を、変調率Mref´から搬送波の最大値、搬送波の最小値から変調率Mref´、搬送波の最小値から搬送波の最大値、搬送波の最大値から搬送波の最小値、変調率Mref´から搬送波の最小値、または搬送波の最大値から変調率Mref´に切り替えるとともに、周波数fを周波数fdに切り替える。
【0157】
これにより、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在しない場合、次の演算周期Tにおいて、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*が同じ値のまま切り替わらない。
【0158】
また、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在しない場合、次の演算周期Tにおいて、搬送波の周波数fが周波数fdに設定されたまま切り替わらない。
【0159】
一方、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合、次の演算周期Tの開始タイミングから切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1が経過したタイミングにおいて、U相変調波Vu*、V相変調波Vv*、及びW相変調波Vw*が、変調率Mref´から搬送波の最大値、搬送波の最小値から変調率Mref´、搬送波の最小値から搬送波の最大値、搬送波の最大値から搬送波の最小値、変調率Mref´から搬送波の最小値、または搬送波の最大値から変調率Mref´に切り替わる。
【0160】
また、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合、次の演算周期Tの開始タイミングから切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1が経過するまでの期間において、搬送波の周波数fが周波数fcまたは周波数fc1に設定され、切り替わりタイミング時間tcまたは切り替わり時間tc1が経過したタイミングから次の演算周期Tの終了タイミングまでの期間において、搬送波の周波数fが周波数fdに設定される。
【0161】
図21は、変形例3におけるV相変調波Vv*、搬送波、及び駆動信号S3の一例を示す図である。なお、演算部5の各演算周期を18[deg]とし、周波数fが周波数fdに設定されているときの搬送波の1周期を9[deg]とする。
【0162】
まず、dq/uvw変換部15´は、36[deg]+18[deg]=54[deg]を、演算部5の次の演算周期Tの開始タイミングとし、54[deg]+18[deg]=72[deg]を、演算部5の次の演算周期Tの終了タイミングとし、54~72[deg]を、演算部5の次の演算周期Tとする。
【0163】
次に、dq/uvw変換部15´は、目標電気角θvが第1の区間(0~60[deg])に入ると判断し、または、V相電圧指令値Vv**の絶対値がU相電圧指令値Vu**の絶対値及びW相電圧指令値Vw**の絶対値より大きい場合で、かつ、V相電圧指令値Vv**がゼロ以上であると判断し、演算部5の次の演算周期T(54[deg]~72[deg])において、第1の区間から第2の区間の切り替わりタイミングとして60[deg]が存在すると判断すると、60[deg]-54[deg]=6[deg]に相当する時間を、切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1とする。
【0164】
次に、dq/uvw変換部15´は、切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1が最小時間t_min以上であると判断すると、搬送波の周波数fを周波数fcまたは周波数fc1に設定する。
【0165】
次に、dq/uvw変換部15´は、演算部5の次の演算周期Tの開始タイミング(54[deg])になると、V相変調波Vv*として変調率Mref´をドライブ回路4´に出力するとともに、周波数fとして周波数fcまたは周波数fc1をドライブ回路4´に出力する。
【0166】
次に、dq/uvw変換部15´は、切り替わり時間tcが経過すると(60[deg])、ドライブ回路4´に出力しているV相変調波Vv*を変調率Mref´から搬送波の最大値に切り替えるとともに、ドライブ回路4´に出力している周波数fを周波数fcまたは周波数fc1から周波数fdに切り替える。
【0167】
そして、dq/uvw変換部15´は、演算部5の次の演算周期Tの終了タイミング(72[deg])になるまで、V相変調波Vv*として搬送波の最大値をドライブ回路4´に出力するとともに、周波数fとして周波数fdをドライブ回路4´に出力する。
【0168】
すなわち、dq/uvw変換部15´は、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合、次の演算周期Tの開始タイミングから切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1が経過するまでの期間における搬送波の周波数fを、デフォルトの周波数fdから、切り替わり時間tcの逆数である周波数fcまたは切り替わり時間tc1の逆数である周波数fc1に切り替えている。
【0169】
これにより、次の演算周期Tの開始タイミングから切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1が経過するまでの期間において、搬送波の1周期を切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1と一致させることができるため、切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1の経過途中において、V相変調波Vv*が変調率Mref´から搬送波の最大値に切り替わらないようにすることができる。そのため、次の演算周期Tの開始タイミングから切り替わり時間tcまたは切り替わり時間tc1が経過するまでの期間において、駆動信号S3のデューティ比を変調率Mref´に応じたデューティ比と一致させることができる。
【0170】
このように、変形例3における電動機Mの制御装置1では、演算部5の次の演算周期Tにおいて、第1~第3の区間の切り替わりタイミングが存在する場合、搬送波の周波数fを切り替わり時間tcの逆数である周波数fcまたは切り替わり時間tc1の逆数である周波数fc1に設定することにより、駆動信号Sのデューティ比と所望のデューティ比との誤差を小さくすることができるため、電動機Mに流れる電流に低次の高調波が乗ることを抑制することができ、トルクリプルや騒音振動が増加することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0171】
1 制御装置
2 インバータ回路
3 制御回路
4 ドライブ回路
4´ ドライブ回路
5 演算部
6 記憶部
7 速度演算部
8 減算部
9 トルク制御部
10 トルク/電流指令値変換部
11 座標変換部
12 減算部
13 減算部
14 電流制御部
15 dq/uvw変換部
15´ dq/uvw変換部
151 位相角計算部
152 加算部
153 変調率計算部
154 拡張変調率計算部
155 変調波生成部
155´ 変調波生成部
156 2相3相変換部
157 変調波生成部
157´ 変調波生成部
158 速度演算部