(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】光回線終端装置、光回線終端装置の制御方法およびPONシステム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20230523BHJP
H04B 10/27 20130101ALI20230523BHJP
【FI】
H04L12/44 200
H04B10/27
(21)【出願番号】P 2019226137
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝 晋吾
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082560(JP,A)
【文献】特開2003-258937(JP,A)
【文献】特開2008-067402(JP,A)
【文献】特開2016-058806(JP,A)
【文献】特開2017-098655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
41/00-101/695
H04B 10/27-10/278
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光回線終端装置であって、
局側装置との通信のための第1の信号送受信部と、
端末機器との通信のための第2の信号送受信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記光回線終端装置と前記局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行するように構成され、
前記制御部は、前記ハンドシェイクが完了すると、前記第2の信号送受信部と前記端末機器との間のリンクをリンクダウンさせて、続いて前記リンクをリンクアップさせる、光回線終端装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2の信号送受信部をリセットするためのリセット指示を前記第2の信号送受信部に送り、
前記第2の信号送受信部は前記リセット指示を受けてリセットされることにより、前記第2の信号送受信部と前記端末機器との間の前記リンクをリンクダウンさせて、続いて前記リンクをリンクアップさせる、請求項1に記載の光回線終端装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2の信号送受信部に、前記第2の信号送受信部の出力を停止する第1の指示と、前記第2の信号送受信部の前記出力を再開する第2の指示とを順次送り、
前記第2の信号送受信部は、前記第1の指示を受けて前記出力を停止することにより前記リンクをリンクダウンし、その後に、前記第2の指示を受けて前記出力を再開することにより前記リンクをリンクアップ
させる、請求項
1に記載の光回線終端装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の信号送受信部に、前記端末機器と前記第2の信号送受信部との間でオートネゴシエーションを実行するよう実行指示を送り、
前記第2の信号送受信部は、前記オートネゴシエーションの前記実行指示を受けて、前記リンクをリンクダウンさせて、続いて前記リンクをリンクアップさせる、請求項
1に記載の光回線終端装置。
【請求項5】
前記光回線終端装置は、光トランシーバと一体化され、かつ、前記端末機器とプラガブルに構成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光回線終端装置。
【請求項6】
局側装置との通信のための光回線終端装置の制御方法であって、
前記光回線終端装置と前記局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行するステップと、
前記ハンドシェイクが完了すると、前記光回線終端装置と端末機器との間のリンクをリンクダウンして、前記リンクを再度リンクアップするステップとを備える、光回線終端装置の制御方法。
【請求項7】
局側装置と、
前記局側装置に接続された光回線終端装置とを備え、
前記光回線終端装置は、前記局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行し、前記ハンドシェイクが完了すると、端末機器との間のリンクをリンクダウンさせて、続いて前記リンクをリンクアップさせる、PONシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光回線終端装置、光回線終端装置の制御方法およびPONシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
PON(Passive Optical Network)システムは、光通信システムの一種である。PONシステムは、局側装置(Optical Line Terminal:OLT)と、ユーザ側(たとえば加入者宅)に設置される1以上の光回線終端装置(Optical Network Unit:ONU)とを有する。OLTとONUとの間では、光ファイバ回線を介して光信号が伝達される。
【0003】
特開2009-111507号公報(特許文献1)は、ONUの構成を開示する。ONUは、光回線終端装置機能部を有する。光回線終端装置機能部は、センタ側との間でPONリンクが確立するかあるいは認証が確立するかのいずれかにより通信条件の確立を判定するまで、マルチソースアグリーメントインタフェースモジュールから外部ノードへの下り信号の出力を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2009-111507号公報(特許文献1)の開示によれば、PONのデータ中継が確立するまで、ONUのUNI(User Network Interface)側の出力が停止される。PONのデータ中継が確立するまでは、UNIがリンクアップしないため、外部ノードがONUにアクセスすることができない。
【0006】
したがって、本開示の目的は、PONシステムのデータ中継が確立していなくても外部ノードとONUとの間での通信を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つに係る光回線終端装置は、局側装置との通信のための第1の信号送受信部と、端末機器との通信のための第2の信号送受信部と、制御部とを備え、制御部は、光回線終端装置と局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行するように構成され、制御部は、ハンドシェイクが完了すると、第2の信号送受信部と端末機器との間のリンクをリンクダウンさせて、続いて前記リンクをリンクアップさせる。
【0008】
本開示の1つに係る光回線終端装置の制御方法は、光回線終端装置と局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行するステップと、ハンドシェイクが完了すると、光回線終端装置と端末機器との間のリンクをリンクダウンして、前記リンクを再度リンクアップするステップとを備える。
【0009】
本開示の1つに係るPONシステムは、局側装置と、局側装置に接続された光回線終端装置とを備え、光回線終端装置は、局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行し、ハンドシェイクが完了すると、端末機器との間のリンクをリンクダウンさせて、続いて前記リンクをリンクアップさせる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、PONシステムのデータ中継が確立していなくても、外部ノードとONUとの間での通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に従うPONシステムの概略構成を示した図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態において、ユーザ機器がデータ通信を開始するための処理における第1のステップを説明するための図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態において、ユーザ機器がデータ通信を開始するための処理における第2のステップを説明するための図である。
【
図4】
図4は、IEEE Std 802.3の22章に従うオートネゴシエーションを説明するための図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態において、ユーザ機器がデータ通信を開始するための処理における第3のステップを説明するための図である。
【
図6】
図6は、ユーザ機器がデータ通信を開始するための一般的な処理における第4のステップを説明するための図である。
【
図7】
図7は、ユーザ機器がデータ通信を開始するための一般的な処理における第5のステップを説明するための図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態における、ユーザ機器からONUへのアクセスを説明した図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態において、PON区間のハンドシェイク完了前の処理を説明するためのシーケンス図である。
【
図10】
図10は、PON区間のハンドシェイク完了からユーザデータの中継開始までの処理の流れを示したシーケンス図である。
【
図11】
図11は、PON未接続時のONUアクセスの処理の流れを示したシーケンス図である。
【
図12】
図12は、プラガブルなトランシーバ一体型ONUを概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
(1) 本開示の実施態様に係る光回線終端装置は、局側装置との通信のための第1の信号送受信部と、端末機器との通信のための第2の信号送受信部と、制御部とを備え、制御部は、光回線終端装置と局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行するように構成され、制御部は、ハンドシェイクが完了すると、第2の信号送受信部と端末機器との間のリンクをリンクダウンさせて、続いて前記リンクをリンクアップさせる。
【0014】
上記によれば、PONのデータ中継が確立するよりも先に、光回線終端装置の第2の信号送受信部と端末機器との間のリンクを確立させることができる。したがって、PONのデータ中継が確立していなくても端末機器と光回線終端装置との間での通信が可能となる。
【0015】
(2) 好ましくは、制御部は、第2の信号送受信部をリセットするためのリセット指示を第2の信号送受信部に送り、第2の信号送受信部はリセット指示を受けてリセットされることにより、第2の信号送受信部と端末機器との間のリンクをリンクダウンさせて、続いて前記リンクをリンクアップさせる。
【0016】
上記によれば、容易に、第2の信号送受信部と端末機器との間のリンクをリンクダウンさせて、続いてリンクアップさせることができる。
【0017】
(3) 好ましくは、制御部は、第2の信号送受信部に、第2の信号送受信部の出力を停止する第1の指示と、第2の信号送受信部の出力を再開する第2の指示とを順次送り、第2の信号送受信部は、第1の指示を受けて出力を停止することによりリンクをリンクダウンし、その後に、第2の指示を受けて出力を再開することによりリンクをリンクアップする。
【0018】
上記によれば、容易に、第2の信号送受信部と端末機器との間のリンクをリンクダウンさせて、続いてリンクアップさせることができる。
【0019】
(4) 好ましくは、制御部は、第2の信号送受信部に、端末機器と第2の信号送受信部との間でオートネゴシエーションを実行するよう実行指示を送り、第2の信号送受信部は、オートネゴシエーションの実行指示を受けて、リンクをリンクダウンさせて、続いてリンクをリンクアップさせる。
【0020】
上記によれば、オートネゴシエーションの機能を利用して、リンクダウンおよび、その後のリンクアップを実現できる。
【0021】
(5) 好ましくは、光回線終端装置は、光トランシーバと一体化され、かつ端末機器とプラガブルに構成される。
【0022】
光トランシーバ一体型かつプラガブルな光回線終端装置のポートが端末機器のポートと接続されるため、光回線終端装置の内部に直接アクセスできるポートが光回線終端装置に無い可能性がある。このような場合にも、端末機器と光回線終端装置との間でリンクが確立されているので、端末機器から光回線終端装置の内部に直接アクセスできる。
【0023】
(6) 本開示の実施態様に係る、局側装置との通信のための光回線終端装置の制御方法は、光回線終端装置と局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行するステップと、ハンドシェイクが完了すると、光回線終端装置と端末機器との間のリンクをリンクダウンして、リンクを再度リンクアップするステップとを備える。
【0024】
上記によれば、PONのデータ中継が確立していなくても端末機器と光回線終端装置との間での通信が可能となる。
【0025】
(7) 本開示の実施態様に係るPONシステムは、局側装置と、局側装置に接続された光回線終端装置とを備え、光回線終端装置は、局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行し、ハンドシェイクが完了すると、端末機器との間のリンクをリンクダウンさせて、続いてリンクをリンクアップさせる。
【0026】
上記によれば、PONのデータ中継が確立していなくても端末機器と光回線終端装置との間での通信が可能となる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0028】
図1は、本開示の一実施形態に従うPONシステム100の概略構成を示した図である。
図1に示すように、本実施の形態では、PONシステム100は、OLT10と、ONU20とを備える。
【0029】
OLT10は、通信会社の局側に設置される局側装置である。ONU20は、ユーザ側(たとえば加入者宅)に設置される光回線終端装置である。OLT10およびONU20は、光ファイバ回線を通じて光信号を伝送する。
【0030】
ONU20には、ネットワーク機器30が接続される。ネットワーク機器30は特に限定されないが、たとえば、ルータ、L3スイッチ、またはL2スイッチである。
【0031】
ユーザ機器40は、ネットワーク機器30に接続される。ユーザ機器40は、たとえばパーソナルコンピュータ(PC)である。ユーザ機器40とネットワーク機器30との間の接続は、たとえば有線接続である。しかし、ユーザ機器40が無線によってネットワーク機器30に接続されるのでもよい。なお、本開示の実施形態におけるネットワーク機器30およびユーザ機器40は、ONU20に接続される端末機器に相当する。
【0032】
OLT10は、ネットワーク50を介して上位装置に接続される。この実施形態では、上位装置の一例として、認証サーバ60が示される。
【0033】
ONU20は、PON側信号送受信部22(第1の信号送受信部)と、UNI側信号送受信部24(第2の信号送受信部)と、ONU制御部26(制御部)とを含む。
【0034】
PON側信号送受信部22は、OLT10との間でリンクを確立して、信号をやりとりする。OLT101から下り光信号が送信されると、PON側信号送受信部22は、その下り光信号を受信する。PON側信号送受信部22は、下り光信号を電気信号に変換し、当該電気信号からフレームを再構成する。さらに、PON側信号送受信部22は、フレームを復号するとともに、フレームの種別に応じてONU制御部26またはUNI側信号送受信部24にフレームを振り分ける。さらに、PON側信号送受信部22は、ONU制御部26またはUNI側信号送受信部24から受けたフレーム(電気信号)を光信号に変換して、その光信号をOLT10へ送信する。
【0035】
UNI側信号送受信部24は、ダウンリンク側に接続されたネットワーク機器30との間でリンクを確立して、信号をやり取りする。UNI側信号送受信部24は、PON側信号送受信部22から受けたデータフレームをネットワーク機器30へと送信する。ネットワーク機器30は、当該データフレームをユーザ機器40へと転送する。一方、UNI側信号送受信部24は、ユーザ機器40からネットワーク機器30を経由して送られたデータフレームを受信する。UNI側信号送受信部24は、そのデータフレームを、PON側信号送受信部22へと送信する。
【0036】
PON側信号送受信部22とUNI側信号送受信部24とは、典型的には、OSI(Open System Interconnection)参照モデルのL1に相当する機能ブロックである。典型的には、UNI側信号送受信部24は、IEEE802.3で定義されている、PCS(Physical Coding Sublayer:物理符号化副層)およびPMA(Physical Media Attachment:物理媒体接続部)に相当する機能を担う。PCSでは、データの符号化/復号およびPHY層のリンク確立の決定を行う。PMAはPCSの下位に定義され、データのシリアル-パラレル変換を行う。PMAは、データ受信側におけるクロックリカバリも担う。なお、IEEE802.3では、PMAの下に、伝送媒体上の信号とシリアルビットの変換を行うPMD(Physical Media Dependent:物理媒体依存部)が定義されており、PCS、PMA、PMDを合わせてPHY層と定義されている。
【0037】
UNI側信号送受信部24は、対向機器(ネットワーク機器30)との間でやり取りする信号と、自機器(ONU20)内で扱うL2フレーム(以下、単にフレームと記載)との間の変換を行う。さらにUNI側信号送受信部24は、対向機器内の相当する機能ブロックとの間とのリンク確立を検出する。限定されないが、ネットワーク機器30との間のインタフェースが、たとえば1000BASE-Tである場合には、UNI側信号送受信部24が、IEEE802.3の28章で定義されているオートネゴシエーション機能を担ってもよい。
【0038】
ONU制御部26は、ONU20の設定を管理するとともに、ONU20の動作を制御する。ONU制御部26は、下りフレーム、上りフレームに含まれる管理用フレームを受信して、アップリンク側、ダウンリンク側にそれぞれ管理用フレームを送信する。アップリンク側に関し、ONU制御部26は、OLT10との間で、データ中継用ハンドシェイクを行う。ONU制御部26は、OLT10からの遠隔制御により、ONU20の設定を行うことができる。ダウンリンク側に関し、ONU制御部26は、ユーザ機器40(たとえばONU20の保守用の作業端末)による、ONU20のモニタ(統計量などの取得)、ONU20の設定、あるいはONU20へのファームウェアのダウンロードなどに応じた処理を実行する。
【0039】
ネットワーク機器30は、アップリンク側信号送受信部32と、ダウンリンク側信号送受信部34と、認証クライアント36とを含む。アップリンク側信号送受信部32は、ONU20とネットワーク機器30との間のインタフェースを担う。アップリンク側信号送受信部32とONU20とがLANケーブルで接続される場合、アップリンク側信号送受信部32とONU20とは、物理層(PHY)でリンクを確立する。
【0040】
ダウンリンク側信号送受信部34は、ネットワーク機器30とユーザ機器40との間のインタフェースを担う。
【0041】
認証クライアント36は、ユーザ機器40を認証サーバ60に認証してもらうための機能ブロックである。本開示の実施形態において、認証規格は特に限定されないが、たとえばIEEE 802.1Xであってもよい。認証クライアント36が通信開始メッセージ(EAPOL-Start)を認証サーバ60に送信することで認証が開始される。認証が完了すると、ユーザ機器40は、PONシステム100およびネットワーク50を通じた通信が可能となる。
【0042】
次に、本開示の実施形態に係る光通信システムにおいて、ユーザ機器がデータ通信を開始するための各ステップを説明する。
【0043】
図2は、本開示の実施の形態において、ユーザ機器がデータ通信を開始するための処理における第1のステップを説明するための図である。
図2に示すように、ONU制御部26は、OLT10に対して、データ中継用のハンドシェイクを実行する。これにより、PONシステム100によるデータの中継が可能な状態が生成される。
【0044】
図3は、本開示の実施の形態において、ユーザ機器がデータ通信を開始するための処理における第2のステップを説明するための図である。データ中継用のハンドシェイクが完了すると、ONU制御部26は、UNI側信号送受信部24とアップリンク側信号送受信部32との間のリンクをリンクダウンさせて、続いてそのリンクをリンクアップさせる。このために、ONU制御部26は、UNI側信号送受信部24に指示を送る。UNI側信号送受信部24とアップリンク側信号送受信部32との間のリンクをリンクダウンさせて、続いてそのリンクをリンクアップさせるための方法を以下に説明する。これらの方法は単独で使用されてもよく、組み合わせて使用されてもよい。また、リンクダウンおよび再リンクアップのための方法は下記の方法に限定されるものではない。
【0045】
1つの形態では、ONU制御部26は、UNI側信号送受信部24に対してリセット指示を送る。UNI側信号送受信部24は、リセット指示を受けてリセットされる。これにより、UNI側に接続されたネットワーク機器30とONU20との間のリンクは、一旦ダウンして、その後に再びリンクアップする。
【0046】
別の形態では、ONU制御部26は、UNI側信号送受信部24の出力を停止する第1の指示と、UNI側信号送受信部24の出力を再開する第2の指示とをUNI側信号送受信部24に順次送ってもよい。第1の指示によって、UNI側信号送受信部24とネットワーク機器30との間のリンクがリンクダウンする。第2の指示によって、UNI側信号送受信部24とネットワーク機器30との間のリンクがリンクアップする。
【0047】
たとえばONU制御部26は、電源スイッチに電源断指示を出すことにより、UNI側信号送受信部24への電源電圧の供給を停止させてもよい。これによりUNI側信号送受信部24の出力が停止するので、リンクダウンを生じさせることができる。その後に、ONU制御部26は、電源スイッチに電源断解除指示を出して、UNI側信号送受信部24への電源電圧の供給を再開させる。これにより、UNI側信号送受信部24の出力が再開されて、UNI側信号送受信部24とネットワーク機器30との間でリンクアップが行われる。
【0048】
さらに別の形態では、ONU制御部26は、UNI側信号送受信部24にオートネゴシエーションを実行するように指示してもよい。UNI側信号送受信部24はその指示を受けて、ネットワーク機器30との間でオートネゴシエーションを実行する。オートネゴシエーションを実行することによって、UNI側信号送受信部24とネットワーク機器30との間のリンクが一旦リンクダウンし、その後にリンクアップする。
【0049】
オートネゴシエーションは、IEEE Std 802.3に従って実行されてもよい。
図4に示すように、IEEE Std 802.3の22章では、PHYに対して、「Reset」(PHY層のリセット)、「Restart Auto-Negotiation」(オートネゴシエーション(再)実行)、「Power Down」(PHYの電源断)を指示する方法が定義されている。本開示の実施の形態にも、上記方法を適用することができる。
【0050】
図5は、本開示の実施の形態において、ユーザ機器がデータ通信を開始するための処理における第3のステップを説明するための図である。
図5に示すように、UNI側信号送受信部24とネットワーク機器30との間のリンクがリンクアップしたことをトリガとして、ネットワーク機器30の認証クライアント36はUNI側信号送受信部24とネットワーク機器30との間のリンクが確立されたことを検出する。オプションとして、ONU制御部26がUNI側信号送受信部24に問い合わせることにより、UNI側信号送受信部24とネットワーク機器30との間のリンクが確立したことをONU制御部26が検出してもよい。
【0051】
図6は、ユーザ機器がデータ通信を開始するための一般的な処理における第4のステップを説明するための図である。
図6に示すように、UNI側信号送受信部24とネットワーク機器30との間のリンクが確立すると、認証サーバ60によって、ネットワーク機器30が認証される。
【0052】
図7は、ユーザ機器がデータ通信を開始するための一般的な処理における第5のステップを説明するための図である。
図7に示すように、認証サーバ60によるネットワーク機器30の認証が完了すると、ユーザ機器40は、PONシステム100を利用したデータ通信を実行できる。
【0053】
本開示の実施形態によれば、ONU制御部26は、ONU20(ONU制御部26)とOLT10との間のデータ中継用ハンドシェイクが完了したタイミングで、ONU20(UNI側信号送受信部24)とネットワーク機器30との間のリンクをいったんリンクダウンさせ、再びリンクアップさせる。
【0054】
OLT10とONU20との間でのデータ中継用ハンドシェイクが完了した直後に、認証処理を開始するためには、ネットワーク機器30の認証クライアント36が、OLT10とONU20との間でのデータ中継用ハンドシェイクが完了したことを検出できなければならない。特開2009-111507号公報(特許文献1)に開示されている方法によれば、OLTとONUとの間(すなわちPON区間)のデータ中継用ハンドシェイクが完了するまではUNI側信号送受信部の出力が停止される。したがって、このPON区間でのハンドシェイク完了をネットワーク機器の認証クライアントに伝えることができる。しかし、この方法では、ONUがOLTに接続され、PON区間でのハンドシェイクが完了するまでは、ONUのモニタ(統計量などの取得)、ONUの設定、ファームウェアのダウンロードなどができないという不便がある。
【0055】
一方、本開示の実施の形態によれば、PON区間でのデータ中継用ハンドシェイクが完了したタイミングで、ONU20は、ダウンリンク側をいったんリンクダウンさせ、再度リンクアップさせる。ネットワーク機器30のアップリンク側信号送受信部32によりリンクアップが検出されたことをトリガとして、ネットワーク機器30の認証クライアント36が認証処理を開始する。たとえば、IEEE802.1Xに従う認証の場合には、ユーザ機器40がEAPOL-Startを送信する)ことができる。
【0056】
一般的な機器では、認証が完了するまではユーザのデータ中継を止めている。本開示の実施の形態によれば、OLT10とONU20との間のデータ中継のためのハンドシェイクが完了した直後に、認証機能を開始するので、認証処理を早く完了させることができる。認証処理を早く完了させることによって、ユーザのデータ通信の開始を早めることができる。これによりユーザ体験の質を向上させることができる。
【0057】
ONUのモニタ(統計量などの取得)、ONUの設定、ファームウェアのダウンロードなどは、OLTとONUとの間のデータ中継用ハンドシェイクが完了する前にもできることが好ましい。これらの処理については、ONUが必ずしもOLTと接続されている必要がないためである。
【0058】
特に、トランシーバ一体型のONUにとって、この点は重要になり得る。その理由は、トランシーバ一体型のONUでは、スペースの制約のために、通常では、ONUの制御用の通信は、PON側信号送受信部を介して行われるか、UNI側信号送受信部を介して行われるかのいずれかであるためである。トランシーバ一体型ではないONUでは、デバッグ用ポートが設けられていることが多い。そのためデバッグ用ポートを介して制御用の通信が可能である。しかしながら、トランシーバ一体型ではないONUにおいても、OLTとの間のデータ中継用ハンドシェイクが完了する前にファームウェアのダウンロード等ができることが好ましい。
【0059】
本開示の実施では、ネットワーク機器30に、認証などによるデータ中継制御を行わない機器を適用してもよい。特開2009-111507号公報(特許文献1)に開示されている方法とは異なり、PON区間でのデータ中継用のハンドシェイクが完了していなくても、UNI側信号送受信部の出力を停止させないため、ONU20のUNI側信号送受信部24と、ネットワーク機器30のアップリンク側信号送受信部32との間でリンクを確立させることができる。また、認証を行わないため、PON区間でのデータ中継用のハンドシェイクが完了していなくても、ONU制御部26とユーザ機器40とは通信を行うことができる。
【0060】
図8は、本開示の実施の形態における、ユーザ機器40からONU20へのアクセスを説明した図である。たとえばONU20の設定が不適切であるといった理由により、PON区間のハンドシェイクが完了していないことがある。しかし特開2009-111507号公報(特許文献1)に開示されている方法とは異なり、PON区間でのデータ中継用のハンドシェイクが完了していなくても、UNI側信号送受信部の出力を停止させないため、ONU20のUNI側信号送受信部24と、ネットワーク機器30のアップリンク側信号送受信部32との間でリンクを確立させることができる。したがって、ネットワーク機器30が、L2スイッチなど、認証などによるデータ中継制御を行わない機器であれば、PON区間のハンドシェイクが確立していない場合であっても、ネットワーク機器30を介して、作業端末(ユーザ機器40)からONU20のモニタ、ONU20の設定変更、ONU20のファームウェア更新などを行うことができる。
【0061】
図9は、本開示の実施の形態において、PON区間のハンドシェイク完了前の処理を説明するためのシーケンス図である。
図5および
図9に示すように、ステップS11において、ONU20のUNI側信号送受信部24とネットワーク機器30のアップリンク側信号送受信部32との間でリンクが確立する(ステップS11)。ネットワーク機器30の認証クライアント36は、アップリンク側信号送受信部32のリンク確立を検出する(ステップS12)。認証クライアント36は、リンク確立の検出をトリガとして、認証サーバ60に認証開始フレーム(たとえばIEEE802.1Xに従う認証であればEAPOL-Startフレーム)を送信する。しかしながら、PON区間のハンドシェイクが完了していないため、認証サーバ60からの認証開始フレームは、ONU20内で廃棄される。このため認証クライアント36から所定の周期で認証開始フレームが再送される。
【0062】
図10は、PON区間のハンドシェイク完了からユーザデータの中継開始までの処理の流れを示したシーケンス図である。
図5および
図10に示すように、PON区間のハンドシェイクが完了するまでは、認証クライアント36から送られた認証開始フレームが、ONU20内で廃棄される(ステップS22)。
【0063】
ONU制御部26とOLT10との間でデータ中継用のハンドシェイクが完了する(ステップS20)。応じて、ONU制御部26は、UNI側信号送受信部24にリセット指示を送る(ステップS21)。UNI側信号送受信部24は、リセット指示によりリセットされる。これにより、UNI側信号送受信部24と、ネットワーク機器30のアップリンク側信号送受信部32との間のリンクが遮断(リンクダウン)する。その後、UNI側信号送受信部24は、アップリンク側信号送受信部32との間のリンクを再確立させる(ステップS25)。これにより、アップリンク側信号送受信部32は認証クライアント36のリンク確立を検出する(ステップS31)。
【0064】
図6および
図10に示されるように、認証クライアント36のリンク確立をきっかけとして、認証クライアント36は、認証開始フレームを送信する。(ステップS33)。この場合、認証開始フレームは認証サーバ60へと送られて認証処理が開始される。
【0065】
認証サーバ60がネットワーク機器30(認証クライアント36)の認証を完了する(ステップS41)。認証完了を契機として、ネットワーク機器30は、ユーザ機器40からのデータを中継する。したがってユーザ機器40からのデータはPON区間を経由してネットワーク50へと送られる(ステップS51)。
【0066】
リンクダウン後のリンク再確立がない場合、認証開始フレームは、前回の送信から送信周期が経過した後に送信される。このため、PON間のデータ中継用ハンドシェイク完了後、しばらくの間は、認証開始フレームが送信されない。しかし、本開示の実施の形態によれば、PON間のデータ中継用ハンドシェイク完了後、直ちに認証開始フレームを送信することができる。
【0067】
上記の通り、ネットワーク機器30がL2スイッチなど、認証などによるデータ中継制御を行わない機器であれば、OLT10とONU20との間のハンドシェイクが完了していなくても、ONU20のUNI側信号送受信部24と、ネットワーク機器30のアップリンク側信号送受信部32との間でリンクを確立させることができる。
図11は、PON未接続時のONUアクセスの処理の流れを示したシーケンス図である。
図11に示すように、ONU20のUNI側信号送受信部24とネットワーク機器30のアップリンク側信号送受信部32との間でリンクが確立される(ステップS11)。これにより、ネットワーク機器30を介して、作業用端末(ユーザ機器40)からONU制御部26にアクセスすることができる。
【0068】
ONU20のUNI側信号送受信部24のインタフェースが、作業端末のインタフェースと同じ(たとえば、1000BASE-Tなど)であれば、UNI側信号送受信部24のインタフェースに作業端末(たとえばPC)を直接接続することができる(ただし、この場合のONU20は、デバッグ用ポートを持つONUなどであり、一般的なトランシーバ一体型ONUではない)。これにより作業端末からONU制御部26にアクセスすることができる。作業端末から、ONU20の状況をモニタできる。あるいは、作業端末からONU20の設定を変更したり、ONU20のファームウェアを更新したりすることができる。
【0069】
一方、ONU20が
図12に示すような、光トランシーバ201と一体化されたONUであるとする。ONU20は、ネットワーク機器30にプラガブル(挿抜可能)に構成される。限定されないが、ONU20は、たとえば「SFP+(Small Form factor Pluggable +)」インタフェースを搭載したONUである。
【0070】
ONU20のポートのすべては、ネットワーク機器30のポートに接続されている。したがって、ONU20がネットワーク機器30に接続された状態では、ONU20の内部に直接アクセスできるポートがONU20には無い。
【0071】
たとえばONUの設定が不適切(MACアドレスが誤っているなど)、あるいは、ONU制御部26に不適切なファームウェアが書き込まれているなどの理由により)OLT10とONU20との間のハンドシェイクが失敗したとする。UNI側信号送受信部24が出力停止していると、作業端末はONU制御部26にアクセスできない。このためハンドシェイクの失敗に対する対処は困難である。
【0072】
本開示の実施の形態によれば、このような場合に、UNI側信号送受信部24とネットワーク機器30(アップリンク側信号送受信部32)との間でリンクを確立できる。UNI側信号送受信部24が出力を停止させないため、作業用端末からONU制御部26にアクセスすることができる。たとえばONUの設定が不適切であれば、その設定を作業端末により修正することができる。ONU制御部26のファームウェアが不適切な場合には、適切なファームウェアをONU制御部26書き込むことができる。これによりPON間のハンドシェイクを成功に導くことができる。
【0073】
なお、PON区間でのハンドシェイクが完了した後に実行される処理として認証を例示した。しかし、本開示の実施の形態では、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)のようなプロトコルに従う一連の処理も、ハンドシェイク完了後に実行されてもよい。この場合にも、ハンドシェイク完了後に直ちに処理を開始できるので、処理を早く完了させることができる。したがってユーザ体験の質を向上させることができる。
【0074】
(付記) 本開示の実施の形態は、以下に付記する特徴を含むことができる。
【0075】
局側装置との通信のための第1の信号送受信部と、端末機器との通信のための第2の信号送受信部と、制御部とを備え、制御部は、第1の信号送受信部を通じて、光回線終端装置と局側装置との間でのデータ中継のためのハンドシェイクを実行するように構成され、制御部は、ハンドシェイクが完了する前にも、第2の信号送受信部と端末機器との間のリンクをリンクアップさせる、光回線終端装置。
【0076】
上記によれば、PONのデータ中継が確立していなくても端末機器と光回線終端装置との間での通信が可能となる。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10 OLT
20 ONU
22 PON側信号送受信部
24 UNI側信号送受信部
26 ONU制御部
30 ネットワーク機器
32 アップリンク側信号送受信部
34 ダウンリンク側信号送受信部
36 認証クライアント
40 ユーザ機器
50 ネットワーク
60 認証サーバ
100 PONシステム
201 光トランシーバ
S11,S12,S20,S21,S22,S25,S31,S33,S41,S51 ステップ