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特許7283377無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/12 20090101AFI20230523BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230523BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20230523BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20230523BHJP
【FI】
H04W28/12
G08G1/09 F
G08G1/13
H04W4/44
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019233530
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021103828
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中條 充
(72)【発明者】
【氏名】安則 裕通
【審査官】長谷川 未貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-044794(JP,A)
【文献】特開2013-179539(JP,A)
【文献】特開2014-192561(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G08G 1/09 ー 1/13
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両との無線通信を行う無線通信部、及び、通信に係る処理を行う処理部を有する道路上に設置され無線通信装置であって、
前記処理部は、前記無線通信部により一又は複数の車両との間で行われる無線通信における通信量を判定し、
前記無線通信部は、
判定した前記無線通信における通信量に係る通信量情報を前記車両へ送信し、
送信した前記通信量情報に応じたサイズで前記車両から送信されるデータを前記無線通信部にて受信
前記車両の内部に設けられた車内ネットワークにおける通信量に係る通信量情報を、前記車両から受信し、
前記処理部は、更に、前記無線通信部が受信した前記通信量情報に応じて、前記車両へ送信すべきデータのサイズを調整し、
前記無線通信部は、更に、サイズを調整したデータを前記無線通信部にて前記車両へ送信する、
無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信部は、前記車両からのデータの要求を受信し、
前記処理部は、前記無線通信部が受信した前記要求に応じたデータのサイズを調整し、
前記無線通信部は、更に、サイズを調整した画像データを前記車両へ送信する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記処理部は、
判定した前記無線通信における通信量に応じて、車両へのデータの送信を停止する、
請求項1又は請求項に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記無線通信部が通信可能な車両が複数存在する場合に、複数の前記車両の優先度を判定し、
優先度が低いと判定した前記車両に対してのデータの送信を停止する、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
車両に搭載され、前記車両の外部との無線通信を行う無線通信部及び通信に係る処理を行う処理部を有する車載無線通信装置と、前記車両の外部に設置され、車両との無線通信を行う無線通信部及び通信に係る処理を行う処理部を有する無線通信装置とが無線通信を行う無線通信システムであって、
前記無線通信装置の処理部は、一又は複数の車両との間で行われる無線通信における通信量を判定し
前記無線通信装置の無線通信部は、前記処理部が判定した通信量に係る通信量情報を前記車両へ送信し、
前記車載無線通信装置の無線通信部は、前記無線通信装置が送信した前記通信量情報を受信し
前記車載無線通信装置の処理部は、前記無線通信部が受信した前記通信量情報に応じて前記無線通信装置へ送信すべきデータのサイズを調整し
前記車載無線通信装置の無線通信部は、更に、前記処理部がサイズを調整したデータを前記無線通信装置へ送信し、
前記無線通信装置の無線通信部は、更に、前記通信量情報に応じたサイズで前記車載無線通信装置が送信するデータを受信し、
前記車載無線通信装置の無線通信部は、更に、前記車両の内部に設けられた車内ネットワークにおける通信量に係る通信量情報を、前記無線通信装置へ送信し、
前記無線通信装置の無線通信部は、更に、前記車載無線通信装置が送信した前記通信量情報を受信し、
前記無線通信装置の処理部は、更に、受信した前記通信量情報に応じて、前記車載無線通信装置へ送信すべきデータのサイズを調整し、
前記無線通信装置の無線通信部は、更に、前記処理部がサイズを調整したデータを前記車載無線通信装置へ送信する、
無線通信システム。
【請求項6】
車両に搭載された車載無線通信装置と、前記車両の外部に設置され無線通信装置とが無線通信を行う無線通信方法であって、
前記無線通信装置が、一又は複数の車両との間で行われる無線通信における通信量を判定し、判定した通信量に係る通信量情報を前記車両へ送信し、
前記車載無線通信装置が、前記無線通信装置が送信した前記通信量情報を受信し、受信した前記通信量情報に応じて前記無線通信装置へ送信すべきデータのサイズを調整し、サイズを調整したデータを前記無線通信装置へ送信し、
前記無線通信装置が、更に、前記通信量情報に応じたサイズで前記車載無線通信装置が送信するデータを受信
前記車載無線通信装置が、更に、前記車両の内部に設けられた車内ネットワークにおける通信量に係る通信量情報を、前記無線通信装置へ送信し、
前記無線通信装置が、更に、前記車載無線通信装置が送信した前記通信量情報を受信し、受信した前記通信量情報に応じて、前記車載無線通信装置へ送信すべきデータのサイズを調整し、サイズを調整したデータを前記車載無線通信装置へ送信する、
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路車間での無線通信を行う無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路上に設置された路側無線通信装置から車両に搭載された車載無線通信装置に対して、無線信号により種々の情報を提供する路車間無線通信システムが実用化されている。路側無線通信装置から車載無線通信装置へ送信される情報は、例えば信号機の点灯状態及び周辺の交通情報等の情報とすることができ、これらの情報を受信した車両では、例えば車両の運転者に対する注意喚起又は車両の運転補助制御等の処理を行うことができる。
【0003】
特許文献1においては、インフラユニット及び他車両との無線通信により周囲の車両の位置情報を取得し、取得した位置情報及び道路の形状に基づいて、道路の分岐を原因とする道路の渋滞を検出する走行支援装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-28000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両にて提供されるサービスは高度化及び多様化しており、サービスを提供するために扱われるデータは大容量化している。今後は、路車間での無線通信を利用した種々のサービスの提供が開始されることが予想され、車両内のネットワークで送受信されるデータ量、及び、路車間で送受信されるデータ量は増大する虞がある。
【0006】
本開示は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、路車間の無線通信で送受信されるデータ量の増大を抑制することが期待できる無線通信装置、無線通信システム及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本態様に係る無線通信装置は、車両との無線通信を行う無線通信部、及び、通信に係る処理を行う処理部を有する道路上に設置され無線通信装置であって、前記処理部は、前記無線通信部により一又は複数の車両との間で行われる無線通信における通信量を判定し、前記無線通信部は、判定した前記無線通信における通信量に係る通信量情報を前記車両へ送信し、送信した前記通信量情報に応じたサイズで前記車両から送信されるデータを前記無線通信部にて受信前記車両の内部に設けられた車内ネットワークにおける通信量に係る通信量情報を、前記車両から受信し、前記処理部は、更に、前記無線通信部が受信した前記通信量情報に応じて、前記車両へ送信すべきデータのサイズを調整し、前記無線通信部は、更に、サイズを調整したデータを前記無線通信部にて前記車両へ送信する。
【0008】
本願は、このような特徴的な処理部を備える無線通信装置等の装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。これらの装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、これらの装置を含むその他の装置又はシステムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0009】
上記によれば、路車間の無線通信で送受信されるデータ量の増大を抑制することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る無線通信システムの概要を説明するための模式図である。
図2】本実施の形態に係る無線通信システムの車両の一構成例を示す模式図である。
図3】本実施の形態に係る車載無線通信装置の構成を示す模式図である。
図4】本実施の形態に係る路側無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図5】本実施の形態に係る無線通信システムにて行われるデータ送信処理を説明するための模式図である。
図6】本実施の形態に係る無線通信システムにて行われるデータ送信処理を説明するための模式図である。
図7】本実施の形態に係る車載無線通信装置が行うデータ受信処理の手順を示すフローチャートである。
図8】本実施の形態に係る路側無線通信装置が行うデータ送信処理の手順を示すフローチャートである。
図9】本実施の形態に係る路側無線通信装置が行うデータ受信処理の手順を示すフローチャートである。
図10】本実施の形態に係る車載無線通信装置が行うデータ送信処理の手順を示すフローチャートである。
図11】変形例に係る無線通信システムにて行われるデータ送信処理を説明するための模式図である。
図12】変形例に係る無線通信システムにて行われるデータ送信処理を説明するための模式図である。
図13】本実施の形態に係る無線通信システムにて行われるデータ送信停止処理を説明するための模式図である。
図14】本実施の形態に係る車載無線通信装置が行うデータ送信停止処理の手順を示すフローチャートである。
図15】本実施の形態に係る路側無線通信装置が行うデータ送信停止処理の手順を示すフローチャートである。
図16】本実施の形態に係る無線通信システムにて行われるデータ送信停止処理を説明するための模式図である。
図17】本実施の形態に係る車載無線通信装置が行うデータ送信停止処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施の形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0012】
(1)本態様に係る無線通信装置は、車両との無線通信を行う無線通信部、及び、通信に係る処理を行う処理部を有する道路上に設置された無線通信装置であって、前記処理部は、前記無線通信部により一又は複数の車両との間で行われる無線通信における通信量を判定し、判定した前記無線通信における通信量に係る通信量情報を前記無線通信部にて前記車両へ送信し、送信した前記通信量情報に応じたサイズで前記車両から送信されるデータを前記無線通信部にて受信する。
【0013】
本態様にあっては、車両外に設けられた無線通信装置が、一又は複数の車両との間で行う無線通信の通信量を判定する。無線通信装置は、判定した通信量に関する情報を通信量情報として車両へ送信する。これにより車両は、無線通信装置からの通信量情報に基づいて無線通信の状況を把握及び予測等することができ、例えば無線通信の空き容量に適したサイズにデータサイズを圧縮等して無線通信装置へ送信することができる。無線通信装置は、送信した通信量情報に応じたサイズで車両から送信されるデータを受信し、自身の処理に用いることができる。無線通信装置が通信量情報を送信することで、車両は無線通信装置に適したサイズのデータを送信することが可能となり、路車間で送受信されるデータ量の増大を抑制することが期待できる。
【0014】
(2)前記処理部は、前記車両の内部に設けられた車内ネットワークにおける通信量に係る通信量情報を、前記車両から受信し、受信した前記通信量情報に応じて、前記車両へ送信すべきデータのサイズを調整し、サイズを調整したデータを前記無線通信部にて前記車両へ送信することが好ましい。
【0015】
本態様にあっては、車両の内部に設けられた車内ネットワークにおける通信量に係る通信量情報を車両が無線通信装置へ送信する。車両からの通信量情報を受信した無線通信装置は、例えば車内ネットワークの空き容量に適したサイズにデータサイズを圧縮等して調整し、サイズを調整したデータを車両へ送信する。車両から受信した通信量情報に応じて無線通信装置が送信するデータのサイズを調整することで、車両は車内ネットワークの通信量に適したサイズのデータを受信することが可能となる。
【0016】
(3)前記処理部は、前記車両からのデータの要求を前記無線通信部にて受信し、受信した前記要求に応じたデータのサイズを調整し、サイズを調整した画像データを前記無線通信部にて前記車両へ送信することが好ましい。
【0017】
本態様にあっては、車両から無線通信装置へデータの取得又は送信の要求が与えられ、この要求に応じて無線通信装置が要求されたデータを車両へ送信する。このときに無線通信装置は、要求に応じたデータのサイズを調整し、サイズを調整したデータを車両へ送信する。これにより、車両から要求されたデータについて、データのサイズが大きいことに基づく破棄等が発生することを防止することが期待できる。
【0018】
(4)前記処理部は、判定した前記無線通信における通信量に応じて、車両へのデータの送信を停止する。
【0019】
本態様にあっては、判定した通信量に応じて、例えば車両へ無線により送受信できる通信量に余裕がない場合等に、無線通信装置が車両へのデータの送信を停止する。これにより、例えば多くの車両が無線通信装置との無線通信を行う状況において、車両及び無線通信装置の間の通信量が増大することを抑制できる。
【0020】
(5)前記処理部は、前記無線通信部が通信可能な車両が複数存在する場合に、複数の前記車両の優先度を判定し、優先度が低いと判定した前記車両に対してのデータの送信を停止する。
【0021】
本態様にあっては、無線通信装置が複数の車両と通信可能な状況である場合、無線通信装置が複数の車両について優先度を判定する。無線通信装置は優先度が低いと判定した車両に対してデータの送信を停止する。これにより無線通信装置は、優先度が高い車両との無線通信を確実に行うことが期待できる。
【0022】
(6)本態様に係る無線通信システムは、車両に搭載され、前記車両の外部との無線通信を行う無線通信部及び通信に係る処理を行う処理部を有する車載無線通信装置と、前記車両の外部に設置され、車両との無線通信を行う無線通信部及び通信に係る処理を行う処理部を有する無線通信装置とが無線通信を行う無線通信システムであって、前記無線通信装置の処理部は、一又は複数の車両との間で行われる無線通信における通信量を判定し、判定した通信量に係る通信量情報を前記車両へ送信し、前記車載無線通信装置の処理部は、前記無線通信装置が送信した前記通信量情報を受信し、受信した前記通信量情報に応じて前記無線通信装置へ送信すべきデータのサイズを調整し、サイズを調整したデータを前記無線通信装置へ送信し、前記無線通信装置の処理部は、前記通信量情報に応じたサイズで前記車載無線通信装置が送信するデータを受信する。
【0023】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、路車間で送受信されるデータ量の増大を抑制することが期待できる。
【0024】
(7)本態様に係る無線通信方法は、車両に搭載された車載無線通信装置と、前記車両の外部に設置された無線通信装置とが無線通信を行う無線通信方法であって、前記無線通信装置が、一又は複数の車両との間で行われる無線通信における通信量を判定し、判定した通信量に係る通信量情報を前記車両へ送信し、前記車載無線通信装置が、前記無線通信装置が送信した前記通信量情報を受信し、受信した前記通信量情報に応じて前記無線通信装置へ送信すべきデータのサイズを調整し、サイズを調整したデータを前記無線通信装置へ送信し、前記無線通信装置が、前記通信量情報に応じたサイズで前記車載無線通信装置が送信するデータを受信する。
【0025】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、路車間で送受信されるデータ量の増大を抑制することが期待できる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る無線通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
<システム構成>
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの概要を説明するための模式図である。本実施の形態に係る無線通信システムは、車両101に搭載された車載無線通信装置1と、道路の交差点等に設置された信号機102に設けられた路側無線通信装置2とが無線通信を行うシステムである。なお、本実施の形態において路側無線通信装置2は信号機102に設けられるものとするが、これに限るものではなく、例えば道路に設置された街灯、標識柱、歩道橋又はガードレール等の種々の施設又は設備に設けられてよい。車載無線通信装置1は、車両101から所定範囲(無線の電波が到達する範囲)内に存在する一又は複数の路側無線通信装置2との間で無線通信を行うことができる。同様に、路側無線通信装置2は、信号機102の設置位置から所定範囲内に存在する一又は複数の車載無線通信装置1との間で無線通信を行うことができる。
【0028】
本実施の形態に係る無線通信システムは、例えば信号機102等に設けられたカメラが撮影した交差点の画像データを路側無線通信装置2が車両101の車載無線通信装置1へ送信し、車両101の死角となる交差点の状況を運転者に画像として表示して通知するシステムに適用することができる。また無線通信システムは、例えば車両101に搭載されたカメラにて撮影された画像データを車載無線通信装置1が路側無線通信装置2へ送信し、この画像データを路側無線通信装置2が他の車両101の車載無線通信装置1へ送信することで、交差点の状況を運転者に画像として表示して通知することもできる。無線通信システムにおいては、車載無線通信装置1から路側無線通信装置2へ、及び、路側無線通信装置2から車載無線通信装置1への双方向にデータの送受信が行われ得る。
【0029】
また無線通信システムが送受信するデータは、上述のカメラが撮像した画像データに限らず、種々のデータであってよい。車載無線通信装置1から路側無線通信装置2へ送信するデータには、例えば車両101に搭載された各種のセンサによる検知結果、車両101の位置情報、又は、車両101の自動運転に関する運行計画の情報等の種々のデータが含まれ得る。路側無線通信装置2から車載無線通信装置1へ送信するデータには、例えば交差点の周辺に存在する一又は複数の車両101の位置情報、車両101に対する緊急の停車命令、又は、車両101内で実行されるアプリケーションプログラムのアップデート用のデータ等の種々のデータが含まれ得る。車載無線通信装置1及び路側無線通信装置2が送受信するこれらのデータは一例であって、これに限るものではない。
【0030】
上記のように、車載無線通信装置1及び路側無線通信装置2の間では種々のデータが送受信される。また車両101にはECU(Electronic Control Unit)等の複数の車載装置が搭載されており、これら複数の車載装置が車内ネットワークを介してデータの送受信を行っている。路側無線通信装置2が送信したデータは車載無線通信装置1にて受信され、車載無線通信装置1が車内ネットワークを介してこのデータを車載装置へ送信する。車内ネットワークにおいて送受信することができるデータの量には限度があり、車両101内の車載装置間のデータ送受信による通信量が増大した場合には、車外から受信したデータを車内ネットワークにて扱いきれない事態が起こり得る。そこで本実施の形態に係る無線通信システムでは、車載無線通信装置1が車両101の車内ネットワークの通信量を判定して路側無線通信装置2へ送信し、通信量に応じて路側無線通信装置2がデータを圧縮して車載無線通信装置1へ送信する。これにより車載無線通信装置1は、車内ネットワークにて扱うことが可能なサイズのデータを路側無線通信装置2から受信することができる。
【0031】
なお本実施の形態においては、装置間の通信において送受信することができるデータの量を通信容量といい、ある時点で送受信されているデータの量を通信量という。また、ある時点において通信容量及び通信量の差分を空き容量という。通信容量は、一般的に通信帯域とも呼ばれ得る。通信容量、通信量及び空き容量は、例えばビット/秒、パケット/秒等の単位で表される量である。
【0032】
同様に、路側無線通信装置2は複数の車載無線通信装置1に対してデータの送受信を行っている。例えば信号機102が設置された交差点の周辺に多数の車両101が存在する場合、路側無線通信装置2と多数の車載無線通信装置1との間で無線通信により送受信されるデータの通信量が増大し、路側無線通信装置2の無線通信の通信容量では対応できない事態が起こり得る。そこで本実施の形態に係る無線通信システムでは、路側無線通信装置2が一又は複数の車載無線通信装置1との間で行われる無線通信の通信量を判定して車載無線通信装置1へ送信し、この通信量に応じて車載無線通信装置1がデータを圧縮して路側無線通信装置2へ送信する。これにより路側無線通信装置2は、自身の無線通信の通信容量で扱うことが可能なサイズのデータを車載無線通信装置1から受信することができる。
【0033】
図2は、本実施の形態に係る無線通信システムの車両101の一構成例を示す模式図である。本実施の形態に係る車両101には、上述の車載無線通信装置1が搭載されると共に、カメラ5、ECU6及び表示装置7等の種々の車載装置が搭載されている。車載無線通信装置1、カメラ5、ECU6及び表示装置7等は、車両101内に設けられた車内ネットワーク4を介して接続されており、相互にデータの送受信を行うことができる。なお図2においては、車内ネットワーク4をバス型のネットワークとして図示しているが、これに限るものではなく、例えばスター型又はリング型等のその他のネットワーク構成が採用されてもよい。また図2には、車両101に搭載される車載装置として、カメラ5、ECU6及び表示装置7を記載しているが、これは一例であって、どのような装置が車両101に搭載されてもよい。
【0034】
路側無線通信装置2が送信したデータは車両101の車載無線通信装置1にて受信される。車載無線通信装置1は、路側無線通信装置2から受信したデータを、車内ネットワーク4を介して、このデータを必要とする例えばECU6又は表示装置7等へ送信する。また車載無線通信装置1は、車外へ送信すべきデータを、車内ネットワーク4を介してカメラ5又はECU6等から取得し、取得したデータを路側無線通信装置2へ送信する。
【0035】
図3は、本実施の形態に係る車載無線通信装置1の構成を示す模式図である。本実施の形態に係る車載無線通信装置1は、処理部(プロセッサ)11、記憶部(ストレージ)12、無線通信部(トランシーバ)13及び車内通信部(トランシーバ)14等を備えて構成されている。処理部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、種々の処理を行うことができる。本実施の形態において処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラム12aを読み出して実行することにより、車両101の外部に設けられた路側無線通信装置2との間で無線によりデータを送受信する処理、及び、車内ネットワーク4の通信量に応じて無線によるデータの送受信を制御する処理等の種々の処理を行う。
【0036】
記憶部12は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行するプログラム12aを記憶している。
【0037】
なおプログラム12aは、例えば車載無線通信装置1の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよく、また例えば遠隔のサーバ装置などが配信するものを車載無線通信装置1が通信にて取得してもよく、また例えばメモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録されたプログラムを車載無線通信装置1が読み出して記憶部12に記憶してもよく、また例えば記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出して車載無線通信装置1の記憶部12に書き込んでもよい。プログラム12aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
【0038】
無線通信部13は、車両101の外部に設けられた路側無線通信装置2との間で無線通信を行う。無線通信部13は、処理部11から与えられた送信用のデータを変調した信号をアンテナ(図示は省略する)から出力することによって、路側無線通信装置2へのデータ送信を行うと共に、アンテナにて受信した信号を復調することにより路側無線通信装置2からのデータを受信し、受信したデータを処理部11へ与える。
【0039】
車内通信部14は、車内ネットワーク4に接続され、車内ネットワーク4を介したカメラ5、ECU6及び表示装置7等の車載装置との間でデータの送受信を行う。本実施の形態において車内通信部14は、例えばCAN(Controller Area Network)の通信規格に従うデータの送受信を行う。車内通信部14は、例えばCANコントローラのICを用いて構成され得る。ただし車内通信部14が用いる通信規格はCANに限らず、車内通信部14はCAN以外の通信規格、例えばイーサネット(登録商標)等の通信規格を用いて通信を行ってもよい。車内通信部14は、処理部11から与えられたメッセージを電気信号として車内ネットワーク4を構成する通信線へ出力することによりデータ送信を行う。また車内通信部14は、通信線の電位をサンプリングして取得することにより、通信線の電気信号をデジタルデータに変換し、変換したデータを受信データとして処理部11へ与える。
【0040】
また本実施の形態に係る車載無線通信装置1は、記憶部12に記憶されたプログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、通信量判定部11a、無線通信処理部11b、車内通信処理部11c、データサイズ調整部11d、優先度判定部11e及び停止要求部11f等が処理部11にソフトウェア的な機能部として実現される。
【0041】
通信量判定部11aは、車内ネットワーク4を介して送受信されるデータの通信量を判定する処理を行う。通信量判定部11aは、車内ネットワーク4を介して送受信されるデータを監視し、例えば1秒等の所定期間に車内ネットワーク4を介して送受信されたデータの量を計測し、計測したデータの量を通信量とすることができる。また通信量判定部11aは、例えば前述の所定期間の計測を複数回行って、その平均値を通信量としてもよい。また通信量判定部11aは、計測した過去及び現時点のデータの量に基づいて、将来の通信量を予測し、予測したデータの量を通信量としてもよい。この場合に、通信量の予測方法には、どのような方法が採用されてもよい。
【0042】
無線通信処理部11bは、無線通信部13による路側無線通信装置2との無線通信に関する処理を行う。無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2へ送信すべきデータを生成して無線通信部13へ与えることにより、路側無線通信装置2へデータを無線送信する。無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2から無線送信されたデータを無線通信部13にて受信する。
【0043】
また本実施の形態において無線通信処理部11bは、通信量判定部11aが判定した通信量に関する情報を、通信量情報として路側無線通信装置2へ送信する処理を行う。通信量情報に含まれる情報は、例えば通信量判定部11aが判定した通信量そのものであってよく、また例えば通信量判定部11aが判定した通信量に基づいて算出される車内ネットワーク4の空き容量であってもよい。ただし、通信量判定部11aが判定した通信量を通信量情報として送信する場合には、車内ネットワーク4の通信容量を通信量情報に含むことが好ましい。車内ネットワーク4の空き容量は、車内ネットワーク4の通信容量と通信量判定部11aが判定した通信量の差分として算出することができる。無線通信処理部11bが送信する通信量情報には、路側無線通信装置2が車内ネットワーク4の空き容量を把握し得る情報が含まれていればよい。車内ネットワーク4の通信容量は、車両101の設計段階等において定まり、その値が記憶部12等に記憶されている。
【0044】
また本実施の形態において無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2が送信する通信量情報を受信する。路側無線通信装置2が送信する通信量情報は、路側無線通信装置2による無線通信の通信量に関する情報である。無線通信処理部11bは、受信した通信量情報をデータサイズ調整部11dへ与える。
【0045】
車内通信処理部11cは、車内通信部14による車内ネットワーク4を介した通信に関する処理を行う。車内通信部14は、車両101に搭載されたカメラ5、ECU6及び表示装置7等の車載装置へ送信すべきデータを生成して車内通信部14へ与えることにより、車載装置へのデータ送信を行う。車内通信処理部11cは、車載装置が送信したデータを車内通信部14にて受信する。
【0046】
無線通信処理部11b及び車内通信処理部11cにより、車載無線通信装置1による路側無線通信装置2と車両101内の車載装置との間のデータの中継が行われる。無線通信処理部11bは路側無線通信装置2からのデータを受信して車内通信処理部11cへ与え、車内通信処理部11cはこのデータを車載装置へ車内ネットワーク4を介して送信する。車内通信処理部11cは車内ネットワーク4を介して車載装置からのデータを受信して無線通信処理部11bへ与え、無線通信処理部11bはこのデータを路側無線通信装置2へ送信する。
【0047】
無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2から所定のデータの取得要求を受信した場合、受信した取得要求を車内通信処理部11cへ与える。車内通信処理部11cは、車内ネットワーク4を介して送受信されるデータから取得要求に手要求されたデータを取得し、取得したデータを無線通信処理部11bへ与える。無線通信処理部11bは、車内通信処理部11cから与えられたデータを、取得要求に係るデータとして路側無線通信装置2へ送信する。また無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2に対して所定のデータの取得要求を送信してもよい。
【0048】
データサイズ調整部11dは、路側無線通信装置2から受信した通信量情報に基づいて、路側無線通信装置2へ送信すべきデータのサイズを調整する処理を行う。データサイズ調整部11dは、通信量情報に基づいて路側無線通信装置2の無線通信の空き容量を判定する。データサイズ調整部11dは、路側無線通信装置2へ送信すべきデータのサイズが、通信量情報に基づく空き容量を超える場合、このデータのサイズを低減(圧縮)する処理を行う。データサイズ調整部11dは、例えば送信すべきデータがカメラ5により撮影された画像データである場合、画像データの解像度を低減する、フレームレートを低減する、カラー画像からモノクロ画像へ変更する等の方法により、データサイズを低減する。また例えばデータサイズ調整部11dは、情報を元の表現よりも少ないビット数で表現するよう変更する符号化の技術によりデータサイズの圧縮を行ってもよい。データサイズ調整部11dが行うデータサイズの圧縮は、可逆圧縮又は不可逆圧縮のいずれであってもよい。またデータサイズ調整部11dがデータサイズをどの程度圧縮するかは、例えば空き容量に対して80%以下等のように予め定められていてもよく、また例えば将来の通信量の予測等に基づいて圧縮率を可変としてもよい。
【0049】
優先度判定部11eは、車載無線通信装置1が複数の路側無線通信装置2と無線通信を行うことができる場合に、いずれの路側無線通信装置2との無線通信を優先するかを判定する処理を行う。優先度判定部11eは、例えば各路側無線通信装置2が送信するデータの種別に応じて優先度を判定してもよく、また例えば車両101と路側無線通信装置2との位置関係又は距離等に応じて優先度を判定してもよく、これら以外の基準で優先度を判定してもよい。優先度判定部11eによる複数の路側無線通信装置2の優先度の判定方法は、どのような方法が採用されてもよい。
【0050】
停止要求部11fは、車載無線通信装置1が複数の路側無線通信装置2と無線通信を行うことが可能な状況において、優先度判定部11eが判定した優先度が低い路側無線通信装置2に対してデータの送信を停止する要求を与える処理を行う。停止要求部11fは、通信量判定部11aが判定した通信量に基づいて車内ネットワーク4の空き容量を算出し、空き容量が予め定められた閾値より少なくなった場合に、優先度が低いと判定された路側無線通信装置2に対してデータ送信の停止要求を与える。
【0051】
図4は、本実施の形態に係る路側無線通信装置2の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る路側無線通信装置2は、処理部(プロセッサ)21、記憶部(ストレージ)22、無線通信部(トランシーバ)23及び有線通信部(トランシーバ)24等を備えて構成されている。処理部21は、例えばCPU又はMPU等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部21は、記憶部22に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、種々の処理を行うことができる。本実施の形態において処理部21は、記憶部22に記憶されたプログラム22aを読み出して実行することにより、車両101に搭載された車載無線通信装置1との間で無線によりデータを送受信する処理等の種々の処理を行う。
【0052】
記憶部22は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部22は、処理部21が実行する各種のプログラム、及び、処理部21の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部22は、処理部21が実行するプログラム22aを記憶している。
【0053】
なおプログラム22aは、例えば路側無線通信装置2の製造段階において記憶部22に書き込まれてもよく、また例えば遠隔のサーバ装置などが配信するものを路側無線通信装置2が通信にて取得してもよく、また例えばメモリカード又は光ディスク等の記録媒体98に記録されたプログラムを路側無線通信装置2が読み出して記憶部22に記憶してもよく、また例えば記録媒体98に記録されたものを書込装置が読み出して路側無線通信装置2の記憶部22に書き込んでもよい。プログラム22aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体98に記録された態様で提供されてもよい。
【0054】
無線通信部23は、車両101に設けられた車載無線通信装置1との間で無線通信を行う。無線通信部23は、処理部21から与えられた送信用のデータを変調した信号をアンテナ(図示は省略する)から出力することによって、車載無線通信装置1へのデータ送信を行うと共に、アンテナにて受信した信号を復調することにより車載無線通信装置1からのデータを受信し、受信したデータを処理部21へ与える。
【0055】
本実施の形態に係る路側無線通信装置2は、信号機102が設置された交差点の周辺に設置された各種のセンサ8と通信線又は信号線等を介して接続されている。センサ8は、例えば交差点を撮影するカメラ、又は、交差点付近に存在する車両又は歩行者等を検出するセンサ等の種々のものが採用され得る。有線通信部24は、これらのセンサ8との間で通信線又は信号線等を介したデータの送受信を行う。有線通信部24は、センサ8から送信されたデータを受信して処理部21へ与えると共に、処理部21から与えられたデータをセンサ8へ送信する。有線通信部24は、どのような通信規格に基づいてセンサ8とのデータ送受信を行ってもよい。また有線通信部24は、例えばインターネット等の広域のネットワークを介してセンサ8との通信を行ってもよく、別の信号機102に設けられた他の路側無線通信装置2との通信を行ってもよい。なお本実施の形態に置いては、路側無線通信装置2がセンサ8と有線通信を行うものとするが、これに限るものではなく、路側無線通信装置2がセンサ8と無線通信を行ってもよい。
【0056】
また本実施の形態に係る路側無線通信装置2は、記憶部22に記憶されたプログラム22aを処理部21が読み出して実行することにより、通信量判定部21a、無線通信処理部21b、センサ情報取得部21c及びデータサイズ調整部21d等が処理部21にソフトウェア的な機能部として実現される。
【0057】
通信量判定部21aは、無線通信部23にて無線により送受信されるデータの通信量を判定する処理を行う。通信量判定部21aは、無線通信部23が送受信するデータを監視し、例えば1秒等の所定期間に送受信されたデータの量を計測し、計測したデータの量を通信量とすることができる。また通信量判定部21aは、例えば前述の所定期間の計測を複数回行って、その平均値を通信量としてもよい。また通信量判定部21aは、計測した過去及び現時点のデータの量に基づいて、将来の通信量を予測し、予測したデータの量を通信量としてもよい。この場合に、通信量の予測方法には、どのような方法が採用されてもよい。
【0058】
無線通信処理部21bは、無線通信部23による車載無線通信装置1との無線通信に関する処理を行う。無線通信処理部21bは、車載無線通信装置1へ送信すべきデータを生成して無線通信部23へ与えることにより、車載無線通信装置1へデータを無線送信する。無線通信処理部21bは、車載無線通信装置1から無線送信されたデータを無線通信部23にて受信する。
【0059】
また本実施の形態において無線通信処理部21bは、通信量判定部21aが判定した通信量に関する情報を、通信量情報として車載無線通信装置1へ送信する処理を行う。通信量情報に含まれる情報は、例えば通信量判定部21aが判定した通信量そのものであってよく、また例えば通信量判定部21aが判定した通信量に基づいて算出される無線通信の空き容量であってもよい。ただし、通信量判定部21aが判定した通信量を通信量情報として送信する場合には、無線通信の通信容量を通信量情報に含むことが好ましい。無線通信の空き容量は、無線通信の通信容量と通信量判定部21aが判定した通信量の差分として算出することができる。無線通信処理部21bが送信する通信量情報には、車載無線通信装置1が無線通信の空き容量を把握し得る情報が含まれていればよい。無線通信の通信容量は、路側無線通信装置2の設計段階等において定まり、その値が記憶部22等に記憶されている。
【0060】
また本実施の形態において無線通信処理部21bは、車載無線通信装置1が送信する通信量情報を受信する。車載無線通信装置1が送信する通信量情報は、車両101内の車内ネットワーク4を介したデータ送受信の通信量に関する情報である。無線通信処理部21bは、受信した通信量情報をデータサイズ調整部21dへ与える。
【0061】
センサ情報取得部21cは、有線通信部24による通信線又は信号線等を介した通信を行うことにより、センサ8が検知する各種の情報を取得する処理を行う。センサ8は例えば撮影により得られた画像、又は、存在を検知した車両もしくは歩行者等に関する情報のデータを送信し、センサ情報取得部21cは、センサ8が送信したこれらのデータを有線通信部24にて受信することで、センサ8からの情報を取得する。
【0062】
センサ情報取得部21cは取得したセンサ8の情報を無線通信処理部21bへ与え、無線通信処理部21bは与えられた情報を含むデータを車両101に搭載された車載無線通信装置1へ無線送信する。また無線通信処理部21bは、車載無線通信装置1から所定のデータの取得要求を受信した場合、受信した取得要求をセンサ情報取得部21cへ与える。センサ情報取得部21cは要求されたデータに係る情報をセンサ8から取得して無線通信処理部21bへ与え、無線通信処理部21bは与え得られたセンサ8の情報を要求元の車載無線通信装置1へ無線送信する。
【0063】
また無線通信処理部21bは、車載無線通信装置1に対して所定のデータの取得要求を送信する。路側無線通信装置2は、例えば交差点にセンサ8として設置されたカメラでは撮影することができない死角となる場所について、この死角の撮影を実施し得る車両101の車載無線通信装置1に対してカメラ5で撮影した画像データの送信を要求してもよい。また例えば路側無線通信装置2は、車両101の位置情報、カーナビゲーション装置に設定された目的地情報、又は、車両101の車速等の種々のデータの送信を車載無線通信装置1に対して要求してよい。
【0064】
データサイズ調整部21dは、車載無線通信装置1から受信した通信量情報に基づいて、車載無線通信装置1へ送信すべきデータのサイズを調整する処理を行う。データサイズ調整部21dは、通信量情報に基づいて車載無線通信装置1が搭載された車両101の車内ネットワーク4の空き容量を判定する。データサイズ調整部21dは、車載無線通信装置1へ送信すべきデータのサイズが、通信量情報に基づく空き容量を超える場合、このデータのサイズを低減(圧縮)する処理を行う。データサイズ調整部21dは、例えば送信すべきデータがカメラにより撮影された画像データである場合、画像データの解像度を低減する、フレームレートを低減する、カラー画像からモノクロ画像へ変更する等の方法により、データサイズを低減する。また例えばデータサイズ調整部21dは、情報を元の表現よりも少ないビット数で表現するよう変更する符号化の技術によりデータサイズの圧縮を行ってもよい。データサイズ調整部21dが行うデータサイズの圧縮は、可逆圧縮又は不可逆圧縮のいずれであってもよい。またデータサイズ調整部21dがデータサイズをどの程度圧縮するかは、例えば空き容量に対して80%以下等のように予め定められていてもよく、また例えば将来の通信量の予測等に基づいて圧縮率を可変としてもよい。
【0065】
<データ送信処理>
図5は、本実施の形態に係る無線通信システムにて行われるデータ送信処理を説明するための模式図である。なお以下においては、データの送信側の装置を路側無線通信装置2とし、データの受信側の装置を車載無線通信装置1として説明するが、これは逆であっても同様である。図示の例では、送信側の路側無線通信装置2が、受信側の車載無線通信装置1へ送信すべきデータとして、データサイズが小さい(データ量が少ない)送信データ1とデータサイズが大きい(データ量が多い)送信データ2とを有している。なお図5においては、各送信データをデータ量に応じた大きさのブロックとして異なるハッチングを付して示している。
【0066】
受信側の車載無線通信装置1は、車両101の車内ネットワーク4の通信量を判定し、判定した通信量と車内ネットワーク4の通信容量との差分から空き容量を算出する。車載無線通信装置1は、算出した空き容量(又は、通信容量及び通信量)の情報を含む通信量情報を、路側無線通信装置2へ送信する。なお車載無線通信装置1による通信量の判定及び通信量情報の送信は、所定の周期で繰り返し行われる。
【0067】
図示の例では、路側無線通信装置2が送信データ1及び送信データ2を車載無線通信装置1へ送信した場合、送信データ2のデータサイズが大きく車内ネットワーク4の空き容量を超える。車載無線通信装置1から通信量情報を受信した路側無線通信装置2は、データの送信先となる車両101の車内ネットワーク4の通信状況を把握し、データサイズが大きい送信データ2を圧縮する。このときに路側無線通信装置2は、受信した通信量情報に基づいて、車内ネットワーク4の空き容量に収まるように、送信データ2の圧縮率を決定する。路側無線通信装置2は、車載無線通信装置1へ送信データ1を送信し、圧縮した送信データ2を送信する。車載無線通信装置1は、路側無線通信装置2から送信された送信データ1及び送信データ2を受信し、車内ネットワーク4を介してこれらのデータを車両101内の車載装置へ送信する。
【0068】
なお、データの送信側の装置を車載無線通信装置1とし、データの受信側の装置を路側無線通信装置2とした場合も同様である。路側無線通信装置2は無線通信に関する通信量の判定及び通信量情報の送信を所定の周期で繰り返し行う。路側無線通信装置2からの通信量情報を受信した車載無線通信装置1は、路側無線通信装置2の空き容量に応じて送信データを圧縮して送信する。
【0069】
図6は、本実施の形態に係る無線通信システムにて行われるデータ送信処理を説明するための模式図である。データの受信側の装置である車載無線通信装置1は、車両101の車内ネットワーク4の通信量を判定し、判定した通信量又はこれを基に算出した空き容量等の情報を含む通信量情報を、データの送信側の装置である路側無線通信装置2へ送信する。
【0070】
路側無線通信装置2は、車載無線通信装置1へ送信すべきデータを生成し、車載無線通信装置1から送信される通信量情報を受信する。路側無線通信装置2は、受信した通信量情報に基づいて、例えば車内ネットワーク4の空き容量と送信データのデータサイズとを比較することで、送信データの圧縮の要否を判断する。このときに路側無線通信装置2は、送信データの圧縮率を決定してもよい。路側無線通信装置2は、送信データの圧縮が必要と判断した場合、この送信データを圧縮してデータサイズを調整し、圧縮したデータを車載無線通信装置1へ送信する。なお圧縮が不要と判断した場合には、路側無線通信装置2は、データを圧縮せずに車載無線通信装置1へ送信してよい。車載無線通信装置1は、路側無線通信装置2から送信されたデータを受信する。
【0071】
図7は、本実施の形態に係る車載無線通信装置1が行うデータ受信処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る車載無線通信装置1の処理部11の通信量判定部11aは、車両101の車内ネットワーク4におけるデータの送受信を監視することで、車内ネットワーク4の通信量を判定する(ステップS1)。処理部11の無線通信処理部11bは、ステップS1にて判定した通信量、又は、この通信量に基づいて算出した空き容量等の情報を含む通信量情報を生成し、生成した通信量情報を路側無線通信装置2へ無線送信する(ステップS2)。
【0072】
無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2から無線送信されるデータを受信したか否かを判定する(ステップS3)。データを受信した場合(S3:YES)、無線通信処理部11bは受信したデータを車内通信処理部11cへ与え、車内通信処理部11cはこのデータを車両101の車載装置へ中継して(ステップS4)、ステップS1へ処理を戻す。データを受信していない場合(S3:NO)、処理部11は、ステップS1へ処理を戻す。
【0073】
図8は、本実施の形態に係る路側無線通信装置2が行うデータ送信処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る路側無線通信装置2の処理部21は、例えばセンサ情報取得部21cが取得したセンサ8の検知結果等に基づいて、車載無線通信装置1へ送信するデータを生成する(ステップS11)。処理部21の無線通信処理部21bは、車載無線通信装置1が送信する通信量情報を受信したか否かを判定する(ステップS12)。
【0074】
通信量情報を受信した場合(S12:YES)、無線通信処理部21bは、ステップS1にて生成したデータのデータサイズが、通信量情報に基づく空き容量を超えるか否かを判定する(ステップS13)。データサイズが空き容量を超える場合(S13:YES)、処理部21のデータサイズ調整部21dは、送信するデータを圧縮することによりデータのサイズを調整する(ステップS14)。無線通信処理部21bは、サイズが調整されたデータを車載無線通信装置1へ送信し(ステップS15)、ステップS11へ処理を戻す。
【0075】
車載無線通信装置1から通信量情報を受信していない場合(S12:NO)、又は、送信するデータのデータサイズが空き容量を超えない場合(S13:NO)、無線通信処理部21bは、ステップS11にて生成されたデータを、サイズの調整を行うことなく、車載無線通信装置1へ送信し(ステップS15)、ステップS11へ処理を戻す。
【0076】
図9は、本実施の形態に係る路側無線通信装置2が行うデータ受信処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る路側無線通信装置2の処理部21の通信量判定部21aは、無線通信部23の無線通信を監視することで、無線通信の通信量を判定する(ステップS21)。処理部21の無線通信処理部21bは、ステップS21にて判定した通信量、又は、この通信量に基づいて算出した空き容量等の情報を含む通信量情報を生成し、生成した通信量情報を車載無線通信装置1へ無線送信する(ステップS22)。
【0077】
無線通信処理部21bは、車載無線通信装置1から無線送信されるデータを受信したか否かを判定する(ステップS23)。データを受信した場合(S23:YES)、処理部21は、受信したデータに応じたデータ処理を行い(ステップS24)、ステップS21へ処理を戻す。データを受信していない場合(S23:NO)、処理部21は、ステップS21へ処理を戻す。
【0078】
図10は、本実施の形態に係る車載無線通信装置1が行うデータ送信処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る車載無線通信装置1の処理部11は、例えばカメラ5が撮影した画像又はECU6の処理結果等に基づいて、路側無線通信装置2へ送信するデータを生成する(ステップS31)。処理部11の無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2が送信する通信量情報を受信したか否かを判定する(ステップS32)。
【0079】
通信量情報を受信した場合(S32:YES)、無線通信処理部11bは、ステップS31にて生成したデータのデータサイズが、通信量情報に基づく空き容量を超えるか否かを判定する(ステップS33)。データサイズが空き容量を超える場合(S33:YES)、処理部11のデータサイズ調整部11dは、送信するデータを圧縮することによりデータのサイズを調整する(ステップS34)。無線通信処理部11bは、サイズが調整されたデータを路側無線通信装置2へ送信し(ステップS35)、ステップS31へ処理を戻す。
【0080】
路側無線通信装置2から通信量情報を受信していない場合(S32:NO)、又は、送信するデータのデータサイズが空き容量を超えない場合(S33:NO)、無線通信処理部11bは、ステップS31にて生成されたデータを、サイズの調整を行うことなく、路側無線通信装置2へ送信し(ステップS35)、ステップS31へ処理を戻す。
【0081】
(変形例)
図11は、変形例に係る無線通信システムにて行われるデータ送信処理を説明するための模式図である。変形例に係る無線通信システムでは、データの送信側の装置が、自身の通信量に応じて、送信すべきデータの圧縮を行う。なお変形例1においては、データの送信側の装置を車載無線通信装置1とし、データの受信側の装置を路側無線通信装置2として説明するが、これは逆であっても同様である。データの受信側の装置である路側無線通信装置2は、自身の処理に必要なデータの種別等を指定して、このデータの要求を車載無線通信装置1へ送信する。データの送信側の装置である車載無線通信装置1は、路側無線通信装置2からの要求に応じたデータの生成を試みる。
【0082】
例えば解像度又はフレームレートを指定してカメラ5が撮影した画像データの送信を路側無線通信装置2が要求し、この画像データを送受信するだけの空き容量が車内ネットワーク4に残されていない場合、車内ネットワーク4を介してカメラ5から車載無線通信装置1へ画像データを送信することができない虞がある。そこで変形例に係る車載無線通信装置1は、解像度又はフレームレートを低減することで画像データのサイズを圧縮するようカメラ5の動作を制御する。車載無線通信装置1は、車内ネットワーク4を介してカメラ5から圧縮された画像データを取得し、この画像データを路側無線通信装置2へ送信する。
【0083】
図12は、変形例に係る無線通信システムにて行われるデータ送信処理を説明するための模式図である。データの受信側の装置である路側無線通信装置2は、自身の処理に必要なデータを車載無線通信装置1に要求する。データの送信側の装置である車載無線通信装置1は、路側無線通信装置2からの要求に応じたデータの生成を試みる。ここで車載無線通信装置1は、車内ネットワーク4の通信量を判定し、判定した通信量と要求されたデータのデータサイズとを比較して、要求されたデータの圧縮の要否を判断する。
【0084】
データの圧縮が必要と判断した場合、図12に示す例では、車載無線通信装置1が路側無線通信装置2との間で、データを圧縮することについて承認を得る調停処理を行う。調停処理においては、例えば車載無線通信装置1が通信量情報及びデータの圧縮率等の情報を路側無線通信装置2へ送信し、路側無線通信装置2がデータの圧縮を承認する通知を車載無線通信装置1へ与える。なお承認が得られなかった場合、車載無線通信装置1はデータの圧縮を行わないが、これによりデータの送信を行うことができず、車載無線通信装置1から路側無線通信装置2へ送信するデータの欠落等が生じる可能性がある。
【0085】
調停処理によりデータ圧縮の承認が得られた場合、車載無線通信装置1は要求されたデータの圧縮を行い、圧縮したデータを路側無線通信装置2へ送信する。路側無線通信装置2は、車載無線通信装置1が圧縮したデータを受信し、自身の処理に用いる。
【0086】
<データ送信停止処理>
図13は、本実施の形態に係る無線通信システムにて行われるデータ送信停止処理を説明するための模式図である。なお以下においては、データの送信側の装置を路側無線通信装置2とし、データの受信側の装置を車載無線通信装置1として説明するが、これは逆であっても同様である。本実施の形態に係る無線通信システムは、車両101の位置、信号機102の位置及び周囲の電波状況等により、1つの車載無線通信装置1が複数の路側無線通信装置2との間で無線通信を行うことが可能となる場合がある。このような状況において、複数の路側無線通信装置2から1つの車載無線通信装置1へのデータ送信が行われた場合、車載無線通信装置1が受信するデータの量が増大し、受信したデータを車内ネットワーク4にて扱うことができなくなる虞がある。
【0087】
そこで本実施の形態に係る無線通信システムでは、データの受信側の装置からデータの送信側の装置に対して、データの送信を停止する命令を与えることができる。図13に示す例は、1つの車載無線通信装置1が2つの路側無線通信装置2からデータを受信する場合のものである。車載無線通信装置1は、車内ネットワーク4の通信量を判定し、例えば通信量が予め定められた閾値を超えるか否かに応じて、データ送信の停止命令を与えるか否かを判定する。
【0088】
通信量が閾値を超え、データ送信の停止命令を与えるとの判定がなされた場合、車載無線通信装置1は、無線通信可能な複数の路側無線通信装置2について、優先度を判定する。車載無線通信装置1は、優先度が低いと判定した路側無線通信装置2に対して、データ送信の停止命令を与える。低優先度の路側無線通信装置2は、車載無線通信装置1からの停止命令が与えられた場合、この車載無線通信装置1に対するデータの送信を停止する。停止命令を与えられていない高優先度の路側無線通信装置2は、車載無線通信装置1に対するデータの送信を継続して行う。
【0089】
なお車載無線通信装置1は、複数の路側無線通信装置2の優先度を、例えば各路側無線通信装置2が送信するデータの種別に応じて判定してもよく、また例えば車両101と路側無線通信装置2との位置関係又は距離等に応じて判定してもよく、これら以外の基準で優先度を判定してもよい。車載無線通信装置1は、どのような方法で複数の路側無線通信装置2の優先度を判定してもよい。
【0090】
また本例では、2つの路側無線通信装置2が1つの車載無線通信装置1へデータを送信するものとしたが、3つ以上の路側無線通信装置2が1つの車載無線通信装置1へデータを送信してもよい。この場合に車載無線通信装置1は、3つ以上の路側無線通信装置2に対して第1位から第3位までの優先順位を付け、例えば最も優先順位が低い1つの路側無線通信装置2にデータ送信の停止命令を与えるか、又は、下位2つの路側無線通信装置2にデータ送信の停止命令を与える。車載無線通信装置1は、複数の路側無線通信装置2のうちのいくつに対して停止命令を与えるかを、例えば車内ネットワーク4の通信量に応じて決定してもよく、これ以外の要因に基づいて決定してもよい。また車載無線通信装置1は、データ送信の停止命令を与えた路側無線通信装置2に対して、送信停止を解除してデータ送信を再開させる命令を与えることが可能な構成であってよい。
【0091】
また、1つの路側無線通信装置2が複数の車載無線通信装置1との無線通信が可能な場合についても同様に、路側無線通信装置2が通信量の判定及び優先度の判定を行って、車載無線通信装置1へデータ送信の停止命令を与えることができる。
【0092】
また、1つの路側無線通信装置2が複数の車載無線通信装置1との無線通信が可能な場合について、路側無線通信装置2が通信量の判定及び優先度の判定を行って、車載無線通信装置1へのデータ送信を停止してもよい。例えば、路側無線通信装置2が設置されている交差点の中央付近に位置している車両の車載無線通信装置1ほど優先度を高くする。交差点から離れた位置にある優先度の低い車両の車載無線通信装置1へのデータ送信を停止することで、路車間で送受信されるデータ量の増大を抑制し、交差点へ進入している車両の車載無線通信装置への路側無線通信装置2からのデータ送信を継続することが可能となる。また、別の優先度の設定方法として、車速が高い車両の車載無線通信装置1ほど優先度を高く設定してもよい。低速な車両の車載無線通信装置1へのデータ送信を停止することで、路車間で送受信されるデータ量の増大を抑制し、高速な車両の車載無線通信装置への路側無線通信装置2からのデータ送信を継続することが可能となる。
【0093】
また、上述のデータ送信処理とデータ送信停止処理とは、共に1つの装置にて行われてよい。例えば車載無線通信装置1は、優先度が低い路側無線通信装置2に対してデータ送信の停止命令を与えると共に、優先度が高い路側無線通信装置2に対して通信量情報を送信してデータサイズが圧縮されたデータを受信することができる。
【0094】
図14は、本実施の形態に係る車載無線通信装置1が行うデータ送信停止処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る車載無線通信装置1の処理部11の通信量判定部11aは、車内ネットワーク4の通信量を判定する(ステップS41)。処理部11は、ステップS41にて判定した通信量が、予め定められた閾値を超えるか否かを判定する(ステップS42)。通信量が閾値を超えない場合(S42:NO)、処理部11は、ステップS45へ処理を進める。
【0095】
通信量が閾値を超える場合(S42:YES)、処理部11の優先度判定部11eは、その時点で無線通信が可能な複数の路側無線通信装置2について優先度を判定する(ステップS43)。処理部11の停止要求部11fは、ステップS43にて判定した優先度に基づいて、優先度が低い路側無線通信装置2に対してデータ送信の停止命令を与え(ステップS44)、ステップS45へ処理を進める。
【0096】
処理部11の無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2から無線送信されるデータを受信したか否かを判定する(ステップS45)。データを受信した場合(S45:YES)、無線通信処理部11bは受信したデータを車内装置へ中継する等のデータ処理を行い(ステップS46)、ステップS41へ処理を戻す。データを受信していない場合(S45:NO)、処理部11は、ステップS41へ処理を戻す。
【0097】
図15は、本実施の形態に係る路側無線通信装置2が行うデータ送信停止処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る路側無線通信装置2の処理部21の無線通信処理部21bは、車載無線通信装置1からデータ送信の停止命令を受信したか否かを判定する(ステップS51)。停止命令を受信していない場合(S51:NO)、無線通信処理部21bは、車載無線通信装置1に対するデータの送信を行い(ステップS52)、ステップS51へ処理を戻す。停止命令を受信した場合(S51:YES)、無線通信処理部21bは、停止命令の送信元の車載無線通信装置1に対するデータ送信を停止して(ステップS53)、処理を終了する。
【0098】
なお、車載無線通信装置1から路側無線通信装置2へのデータ送信を停止する命令を、路側無線通信装置2から車載無線通信装置1へ与える場合の処理については、フローチャートの図示を省略する。
【0099】
図16は、本実施の形態に係る無線通信システムにて行われるデータ送信停止処理を説明するための模式図である。図16には、1つの車載無線通信装置1が複数の路側無線通信装置2に対してデータ送信を行う場合に、低優先度の路側無線通信装置2に対するデータ送信を車載無線通信装置1が自ら停止する場合の例を示している。なお以下においては、データの送信側の装置を車載無線通信装置1とし、データの受信側の装置を路側無線通信装置2として説明するが、これは逆であっても同様である。本実施の形態に係る無線通信システムは、車両101の位置、信号機102の位置及び周囲の電波状況等により、1つの車載無線通信装置1が複数の路側無線通信装置2との間で無線通信を行うことが可能となる場合がある。このような状況において、複数の路側無線通信装置2から1つの車載無線通信装置1へのデータ送信の要求が与えられた場合、車載無線通信装置1が搭載された車両101の車内ネットワーク4にて要求されたデータを扱うことができなくなる虞がある。
【0100】
そこで本実施の形態に係る無線通信システムでは、データの受信側の複数の装置からデータの送信側の装置に対してデータの要求が与えられた場合、受信側の装置の優先度に応じて送信側の装置がデータの送信を停止することができる。図16に示す例では、最初に1つの路側無線通信装置2からデータの要求が車載無線通信装置1へ与えられている。データ要求を受けた車載無線通信装置1は、要求されたデータを生成し、生成したデータを要求元の路側無線通信装置2へ送信する。要求元の路側無線通信装置2は、要求に応じて車載無線通信装置1が送信したデータを受信することができる。
【0101】
その後、別の路側無線通信装置2からデータの要求が車載無線通信装置1へ与えられた場合、車載無線通信装置1は複数の路側無線通信装置2からデータの要求が与えられたため、車内ネットワーク4の通信量を判定する。車載無線通信装置1は、例えば車内ネットワーク4の通信量が閾値を超えたか否かに応じて、データ送信を停止するか否かを判定する。通信量が閾値を超え、データ送信を停止するとの判定がなされた場合、車載無線通信装置1は、データを要求した複数の路側無線通信装置2について、優先度を判定する。車載無線通信装置1は、優先度が低いと判定した路側無線通信装置2に対するデータ送信を停止する。これにより低優先度の路側無線通信装置2は、車載無線通信装置1からのデータを受信できなくなる。車載無線通信装置1は、優先度が高いと判定した路側無線通信装置2に対しては、要求されたデータを生成し、生成したデータを送信する。高優先度の路側無線通信装置2は、車載無線通信装置1から送信されるデータを受信することができる。
【0102】
なお車載無線通信装置1は、複数の路側無線通信装置2の優先度を、例えば各路側無線通信装置2へ送信するデータの種別に応じて判定してもよく、また例えば車両101と路側無線通信装置2との位置関係又は距離等に応じて判定してもよく、これら以外の基準で優先度を判定してもよい。車載無線通信装置1は、どのような方法で複数の路側無線通信装置2の優先度を判定してもよい。
【0103】
また本例では、1つの車載無線通信装置1が2つの路側無線通信装置2へデータを送信するものとしたが、1つの車載無線通信装置1が3つ以上の路側無線通信装置2へデータを送信してもよい。この場合に車載無線通信装置1は、3つ以上の路側無線通信装置2に対して第1位から第3位までの優先順位を付け、例えば最も優先順位が低い1つの路側無線通信装置2に対するデータ送信を停止するか、又は、下位2つの路側無線通信装置2に対するデータ送信を停止する。車載無線通信装置1は、複数の路側無線通信装置2のうちのいくつに対してデータ送信を停止するかを、例えば車内ネットワーク4の通信量に応じて決定してもよく、これ以外の要因に基づいて決定してもよい。また車載無線通信装置1は、データ送信を停止した路側無線通信装置2に対して、送信停止を解除してデータ送信を再開することが可能な構成であってよい。
【0104】
また、1つの路側無線通信装置2が複数の車載無線通信装置1へデータを送信する場合についても同様に、路側無線通信装置2が通信量の判定及び優先度の判定を行って、車載無線通信装置1に対するデータ送信の停止を行うことができる。
【0105】
図17は、本実施の形態に係る車載無線通信装置1が行うデータ送信停止処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る車載無線通信装置1の処理部11の無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2からデータの要求が与えられたか否かを判定する(ステップS61)。データの要求が与えられていない場合(S61:NO)、無線通信処理部11bは、データの要求が与えられるまで待機する。
【0106】
路側無線通信装置2からデータの要求が与えられた場合(S61:YES)、処理部11の通信量判定部11aは、車内ネットワーク4の通信量を判定する(ステップS62)。処理部11は、ステップS62にて判定した通信量が、予め定められた閾値を超えるか否かを判定する(ステップS63)。通信量が閾値を超えない場合(S63:NO)、処理部11は、ステップS66へ処理を進める。
【0107】
通信量が閾値を超える場合(S63:YES)、処理部11の優先度判定部11eは、その時点におけるデータ要求元の複数の路側無線通信装置2について優先度を判定する(ステップS64)。処理部11は、ステップS64にて判定した優先度に基づいて、優先度が低い路側無線通信装置2に対するデータ送信を停止して(ステップS65)、ステップS66へ処理を進める。
【0108】
その後、処理部11の無線通信処理部11bは、路側無線通信装置2から要求されたデータを、要求元の路側無線通信装置2へ送信し(ステップS66)、ステップS61へ処理を戻す。
【0109】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る車載無線通信装置1は、車両101の車内ネットワーク4における通信量を判定する。車載無線通信装置1は、判定した通信量に関する情報を通信量情報として車両101の外部に設けられた路側無線通信装置2へ無線送信する。これにより路側無線通信装置2は、車載無線通信装置1からの通信量情報に基づいて、データを送信すべき車両101の車内ネットワーク4における通信状況を把握及び予測等することができ、例えば車内ネットワーク4の通信の空き容量に適したサイズにデータサイズを圧縮等して車載無線通信装置1へ送信することができる。車載無線通信装置1は、送信した通信量情報に応じたサイズで路側無線通信装置2から送信されるデータを受信し、車両101内での処理に用いることができる。車載無線通信装置1が通信量情報を送信することで、路側無線通信装置2は適したサイズのデータを送信することが可能となる。
【0110】
また路側無線通信装置2は、一又は複数の車両101との間で行う無線通信の通信量を判定し、判定した通信量に係る通信量情報を車載無線通信装置1へ送信する。路側無線通信装置2からの通信量情報を受信した車載無線通信装置1は、例えば路側無線通信装置2の無線通信の空き容量に適したサイズにデータサイズを圧縮等して調整し、サイズを調整したデータを路側無線通信装置2へ送信する。路側無線通信装置2は、送信した通信量情報に応じたサイズで車載無線通信装置1から送信されるデータを受信し、自身の処理に用いることができる。路側無線通信装置2が通信量情報を送信することで、車載無線通信装置1は適したサイズのデータを送信することが可能となる。
【0111】
また車載無線通信装置1は、路側無線通信装置2からのデータの要求を受信し、要求に応じたデータのサイズを調整して路側無線通信装置2へ送信する。これにより路側無線通信装置2は、自身の処理に必要なデータを車載無線通信装置1に要求し、要求に応じたデータを適切なデータサイズで受信することができる。
【0112】
また車載無線通信装置1は、判定した車内ネットワーク4の通信量に応じて、路側無線通信装置2へデータの送信停止を要求する。これにより車載無線通信装置1は、車内ネットワーク4にて扱いきれない量のデータが路側無線通信装置2から送信されることを防止することが期待できる。
【0113】
また車載無線通信装置1は、無線通信可能な路側無線通信装置2が複数存在する場合に、これら複数の路側無線通信装置2の優先度を判定し、優先度が低いと判定した路側無線通信装置2に対してデータの送信停止を要求する。これにより車載無線通信装置1は、優先度が高い路側無線通信装置2が送信するデータを確実に受信し、優先度が低い路側無線通信装置2が送信するデータによる通信量の増大を抑制することが期待できる。
【0114】
無線通信システムにおける各装置は、マイクロプロセッサ、ROM及びRAM等を含んで構成されるコンピュータを備える。マイクロプロセッサ等の演算処理部は、図6~10、12~17に示すような、シーケンス図又はフローチャートの各ステップの一部又は全部を含むコンピュータプログラムを、ROM、RAM等の記憶部からそれぞれ読み出して実行してよい。これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、外部のサーバ装置等からインストールすることができる。また、これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通する。
【0115】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 車載無線通信装置
2 路側無線通信装置
4 車内ネットワーク
5 カメラ
6 ECU
7 表示装置
8 センサ
11 処理部
11a 通信量判定部
11b 無線通信処理部
11c 車内通信処理部
11d データサイズ調整部
11e 優先度判定部
11f 停止要求部
12 記憶部
12a プログラム
13 無線通信部
14 車内通信部
21 処理部
21a 通信量判定部
21b 無線通信処理部
21c センサ情報取得部
21d データサイズ調整部
22 記憶部
22a プログラム
23 無線通信部
24 有線通信部
98,99 記録媒体
101 車両
102 信号機
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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