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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】成形品および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20230523BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230523BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/18 Z
B29C70/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019518002
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013620
(87)【国際公開番号】W WO2019189583
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018069183
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 聖
(72)【発明者】
【氏名】篠原 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅登
【審査官】青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-524940(JP,A)
【文献】特開2015-098536(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162873(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110533(WO,A1)
【文献】特開平10-128896(JP,A)
【文献】特開平01-226311(JP,A)
【文献】特開平11-276137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 70/06
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維と、マトリックス樹脂と、厚み方向に連続した空隙を有した繊維強化複合材料の連続多孔質体に、固体状添加剤と樹脂とを有する薄膜層が形成されてなる成形品であって、
前記固体状添加剤が中空構造体であり、
前記固体状添加剤の最大寸法は、前記連続多孔質体の空隙径(孔径)の1.1倍より大きく、
前記薄膜層が形成された面からの水の浸透度が10%以下である、成形品。
【請求項2】
強化繊維と、マトリックス樹脂と、厚み方向に連続した空隙を有した繊維強化複合材料の連続多孔質体に、固体状添加剤と樹脂とを有する薄膜層が形成されてなる成形品であって、
前記固体状添加剤が中空構造体であり、
前記固体状添加剤の最大寸法は、前記連続多孔質体の空隙径(孔径)の1.1倍より大きく、
JIS R3257(1999)で測定したガラス基板上での接触角が60°以下の溶液の、前記薄膜層が形成された面からの浸透度が30%以下である、成形品。
【請求項3】
前記薄膜層が前記連続多孔質体の空隙内に侵入している、請求項1または2に記載の成形品。
【請求項4】
前記固体状添加剤の少なくとも一部が、前記連続多孔質体の空隙内に存在する、請求項1~3のいずれかに記載の成形品。
【請求項5】
前記薄膜層の厚みが500μm以下である、請求項1~4のいずれかに記載の成形品。
【請求項6】
前記薄膜層の密度が2.5g/cm以下である、請求項1~5のいずれかに記載の成形品。
【請求項7】
前記固体状添加剤の最大寸法が200μm以下である、請求項1~6のいずれかに記載の成形品。
【請求項8】
前記薄膜層を構成する前記樹脂が熱硬化性樹脂である、請求項1~7のいずれかに記載の成形品。
【請求項9】
強化繊維と、マトリックス樹脂と、厚み方向に連続した空隙を有した繊維強化複合材料の連続多孔質体に、固体状添加剤と樹脂とを有する薄膜層が形成されてなる成形品の製造方法であって、
前記連続多孔質体に、最大寸法が前記連続多孔質体の空隙径(孔径)の1.1倍より大きい固体状添加剤と、23℃における粘度が1×10以上1×10Pa・s以下である熱硬化性樹脂と、を含む樹脂混合物を塗布し、加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させて前記薄膜層を形成する、成形品の製造方法。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂の、50℃で30分間加熱したときの粘度が1×10Pa・s以上である、請求項9に記載の成形品の製造方法。
【請求項11】
前記薄膜層が2層以上の層で構成される、請求項9または10に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防液性に優れた成形品および成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、航空機、スポーツ製品等の産業用製品については、軽量性の向上に対する市場要求が年々高まっている。このような要求に応えるべく、軽量であり、力学特性に優れる繊維強化複合材料が、各種産業用途に幅広く利用されている。中でも、さらなる軽量化を目的として、樹脂と強化繊維と空隙からなり、力学特性に優れる構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
繊維強化複合材料を用いた製品は、意匠性の付与を目的として加飾層を設けることが必要となる場合がある(例えば、特許文献2参照)。厚み方向に連続する空隙を有する繊維強化複合材料においては、屋外で使用される製品等に用いられる場合、空隙を介して液体が内部に浸入すると、質量増等の問題が生じるため、防液性を付与することが必要となる。例えば、空隙を有する連続気泡性オレフィン系樹脂層に、非発泡性オレフィン系樹脂層を積層一体化したオレフィン系樹脂積層シートが開示されている(例えば、特許文献3参照)。また、連続多孔質体の表面にスキン材を設ける技術も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6123965号公報
【文献】特開2016-78451号公報
【文献】特開平5-124143号公報
【文献】国際公開第2015/029634号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3の非発泡性オレフィン系樹脂層、および特許文献4のスキン層は、防液性に関して考慮されていない。また、未発泡の状態のものにスキン層を形成するなど製造方法に限定的で煩雑である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、剛性及び軽量性に優れ、防液性を備えた成形品、および成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る成形品は、厚み方向に連続した空隙を有した連続多孔質体に、固体状添加剤と樹脂とを有する薄膜層が形成されてなる成形品であって、前記薄膜層が形成された面からの水の浸透度が10%以下である。
【0008】
また、本発明に係る成形品は、厚み方向に連続した空隙を有した連続多孔質体に、固体状添加剤と樹脂とを有する薄膜層が形成されてなる成形品であって、JIS R3257(1999)で測定したガラス基板上での接触角が60°以下の溶液の、前記薄膜層が形成された面からの浸透度が30%以下である。
【0009】
また、本発明に係る成形品の製造方法は、上記のいずれかに記載の成形品の製造方法であって、前記固体状添加剤と前記樹脂との樹脂混合物を前記連続多孔質体に塗布した後に、加熱することで薄膜層を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る成形品および成形品の製造方法によれば、剛性及び軽量性に優れるとともに、防液性を備えた成形品を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る強化繊維マットにおける強化繊維の分散状態の一例を示す模式図である。
図2図2は、本発明に係る強化繊維マットの製造装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、本発明に係る連続多孔質体の製造を説明する図である。
図4図4は、本発明に係る半球形状を有する連続多孔質体を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る成形品、および成形品の製造方法について説明する。
本発明の実施の形態1に係る成形品は、厚み方向に連続した空隙を有した連続多孔質体に、固体状添加剤と樹脂を有する薄膜層が形成されてなる成形品であって、前記成形品の前記薄膜層が形成された面からの水の浸透度が10%以下である。
【0013】
(連続多孔質体)
本発明の成形品において、連続多孔質体は、強化繊維と、マトリックス樹脂と、空隙と、を有する。
【0014】
本発明の連続多孔質体において、強化繊維としては、アルミニウム、黄銅、ステンレス等の金属繊維、PAN系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系の炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス等の絶縁性繊維、アラミド、PBO、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレン等の有機繊維、シリコンカーバイト、シリコンナイトライド等の無機繊維を例示できる。また、これらの繊維に表面処理が施されているものであってもよい。表面処理としては、導電体として金属の被着処理の他に、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、結束剤による処理、添加剤の付着処理等がある。また、これらの繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、軽量化効果の観点から、比強度、比剛性に優れるPAN系、ピッチ系、レーヨン系等の炭素繊維が望ましく用いられる。また、得られる連続多孔質体の経済性を高める観点からは、ガラス繊維が望ましく用いられ、とりわけ力学特性と経済性とのバランスから炭素繊維とガラス繊維とを併用することが好ましい。さらに、得られる連続多孔質体の衝撃吸収性や賦形性を高める観点からは、アラミド繊維が望ましく用いられ、とりわけ力学特性と衝撃吸収性とのバランスから炭素繊維とアラミド繊維とを併用することが好ましい。また、得られる連続多孔質体(A)の導電性を高める観点からは、導電性を有する金属からなる金属繊維やニッケルや銅やイッテルビウム等の金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。これらの中で、強度と弾性率等の力学特性に優れる金属繊維、ピッチ系炭素繊維、及びPAN系炭素繊維からなる群より選ばれる強化繊維をより望ましく用いることができる。
【0015】
強化繊維は、不連続であり、連続多孔質体中にランダムに分散していることが好ましい。また分散状態が略モノフィラメント状であることがより好ましい。強化繊維をかかる態様とすることで、シート状の連続多孔質体の前駆体を、外力を加えて成形する場合に、複雑形状への賦型が容易となる。また、強化繊維をかかる態様とすることで、強化繊維によって形成された空隙が緻密化し、連続多孔質体中における強化繊維の繊維束端における弱部が極小化できるため、優れた補強効率及び信頼性に加えて、等方性も付与される。また、連続多孔質体の形状を、平板はもとより、半球状や凹凸形状等の複雑な形状とした場合であっても、容易に成形可能であって、剛性を保持することができる。
【0016】
ここで、略モノフィラメント状とは、強化繊維単糸が500本未満の細繊度ストランドにて存在することを指す。さらに望ましくは、モノフィラメント状、つまり単糸として分散していることである。
【0017】
ここで、略モノフィラメント状、又は、モノフィラメント状に分散しているとは、連続多孔質体中にて任意に選択した強化繊維について、その二次元配向角が1°以上である単繊維の割合(以下、繊維分散率とも称す)が80%以上であることを指し、言い換えれば、連続多孔質体中において単繊維の2本以上が接触して平行した束が20%未満であることをいう。従って、ここでは、少なくとも強化繊維におけるフィラメント数100本以下の繊維束の質量分率が100%に該当するものが特に好ましい。
【0018】
さらに、強化繊維はランダムに分散していることが、とりわけ好ましい。ここで、強化繊維がランダムに分散しているとは、連続多孔質体中において任意に選択した強化繊維の二次元配向角の算術平均値が30°以上、60°以下の範囲内にあることをいう。かかる二次元配向角とは、強化繊維の単繊維とこの単繊維と交差する単繊維とで形成される角度のことであり、交差する単繊維同士が形成する角度のうち、0°以上、90°以下の範囲内にある鋭角側の角度と定義する。
【0019】
この二次元配向角について、図面を用いてさらに説明する。図1(a),(b)において、単繊維1aを基準とすると、単繊維1aは他の単繊維1b~1fと交差している。ここで、交差とは、観察する二次元平面において、基準とする単繊維が他の単繊維と交わって観察される状態のことを意味し、単繊維1aと単繊維1b~1fとが必ずしも接触している必要はなく、投影して見た場合に交わって観察される状態についても例外ではない。つまり、基準となる単繊維1aについて見た場合、単繊維1b~1fの全てが二次元配向角の評価対象であり、図1(a)中において二次元配向角は交差する2つの単繊維が形成する2つの角度のうち、0°以上、90°以下の範囲内にある鋭角側の角度である。
【0020】
二次元配向角を測定する方法としては、特に制限はないが、例えば、構成要素の表面から強化繊維(A1)の配向を観察する方法を例示できる。二次元配向角の平均値は、次の手順で測定する。すなわち、無作為に選択した単繊維(図1における単繊維1a)に対して交差している全ての単繊維(図1における単繊維1b~1f)との二次元配向角の平均値を測定する。例えば、ある単繊維に交差する別の単繊維が多数の場合には、交差する別の単繊維を無作為に20本選び測定した算術平均値を代用してもよい。この測定を別の単繊維を基準として合計5回繰り返し、その算術平均値を二次元配向角の算術平均値として算出する。
【0021】
強化繊維が略モノフィラメント状、且つ、ランダムに分散していることで、上述した略モノフィラメント状に分散した強化繊維により与えられる性能を最大限まで高めることができる。また、連続多孔質体において力学特性に等方性を付与できる。かかる観点から、強化繊維の繊維分散率は90%以上であることが望ましく、100%に近づくほどより好ましい。また、強化繊維の二次元配向角の算術平均値は、40°以上、50°以下の範囲内にあることが望ましく、理想的な角度である45°に近づくほど好ましい。二次元配向角の好ましい範囲としては、上記した上限のいずれの値を上限としてもよく、上記した下限のいずれの値を下限としてもよい。
【0022】
一方、強化繊維が不連続状の形態をとらない例としては、強化繊維が一方向に配列されてなるシート基材、織物基材、及びノンクリンプ基材等がある。これらの形態は、強化繊維が規則的に密に配置されるため、連続多孔質体中の空隙が少なくなってしまい、マトリックス樹脂の含浸が極めて困難となり、未含浸部を形成したり、含浸手段や樹脂種の選択肢を大きく制限したりする場合がある。なお、強化繊維が密に配置されていることを活かし、成形品の防液性を向上させる観点から、このような不連続状の形態をとらない強化繊維を組み合わせて用いても良い。
【0023】
強化繊維の形態としては、連続多孔質体と同程度の長さの連続性強化繊維、又は、所定長に切断された有限長の不連続性強化繊維のいずれであってもよいが、マトリックス樹脂を容易に含浸させたり、その量を容易に調整できたりする観点からは、不連続性強化繊維であることが好ましい。
【0024】
本発明の連続多孔質体において、強化繊維の質量平均繊維長が1mm以上15mm以下の範囲内にあることが好ましい。これにより、強化繊維の補強効率を高めることができ、連続多孔質体に優れた力学特性を与えられる。強化繊維の質量平均繊維長が1mm以上である場合、連続多孔質体中の空隙を効率よく形成できるため、密度を低くすることが可能となり、言い換えれば、同一の厚さでありながら軽量な連続多孔質体を得ることができるので好ましい。一方、強化繊維の質量平均繊維長が15mm以下の場合には、連続多孔質体中で強化繊維が、自重により屈曲しにくくなり、力学特性の発現を阻害しないため好ましい。質量平均繊維長は、連続多孔質体のマトリックス樹脂成分を焼失や溶出等の方法により取り除き、残った強化繊維から無作為に400本を選択し、その長さを10μm単位まで測定し、それらの質量平均繊維長として算出できる。
【0025】
強化繊維は不織布状の形態をとることが、強化繊維へのマトリックス樹脂の含浸の容易さの観点から好ましい。さらに、強化繊維が、不織布状の形態を有していることにより、不織布自体のハンドリング性の容易さに加え、一般的に高粘度とされる熱可塑性樹脂の場合においても含浸を容易なものとできるため好ましい。ここで、不織布状の形態とは、強化繊維のストランド及び/又はモノフィラメントが規則性なく面状に分散した形態を指し、チョップドストランドマット、コンティニュアンスストランドマット、抄紙マット、カーディングマット、エアレイドマット等を例示できる(以下、これらをまとめて強化繊維マットと称す)。
【0026】
本発明の連続多孔質体において、マトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を例示できる。また、本発明においては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とがブレンドされていてもよい。
【0027】
本発明の連続多孔質体における1つの形態において、マトリックス樹脂は、少なくとも1種類以上の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂としては、「ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィン、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等のポリアリーレンスルフィド、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、液晶ポリマー(LCP)」等の結晶性樹脂、「スチレン系樹脂の他、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート(PAR)」等の非晶性樹脂、その他、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、さらにポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系樹脂、及びアクリロニトリル系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体及び変性体等から選ばれる熱可塑性樹脂を例示できる。中でも、得られる連続多孔質体の軽量性の観点からはポリオレフィンが望ましく、強度の観点からはポリアミドが望ましく、表面外観の観点からポリカーボネートやスチレン系樹脂のような非晶性樹脂が望ましく、耐熱性の観点からポリアリーレンスルフィドが望ましく、連続使用温度の観点からポリエーテルエーテルケトンが望ましく、さらに耐薬品性の観点からフッ素系樹脂が望ましく用いられる。
【0028】
本発明の連続多孔質体における1つの形態において、マトリックス樹脂は、少なくとも1種類以上の熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド、これらの共重合体、変性体、及びこれらの少なくとも2種類をブレンドした樹脂を例示できる。
【0029】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明に係る連続多孔質体はマトリックス樹脂の成分の1つとして、エラストマー又はゴム成分等の耐衝撃性向上剤、他の充填材や添加剤を含有してもよい。充填材や添加剤の例としては、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、又は、カップリング剤を例示できる。
【0030】
本発明の連続多孔質体は、空隙を有する。本発明における空隙とは、マトリックス樹脂により被覆された強化繊維が柱状の支持体となり、それが重なり合い、又は、交差することにより形成された空間のことを指す。例えば強化繊維にマトリックス樹脂が予め含浸された連続多孔質体の前駆体を加熱して連続多孔質体を得る場合、加熱に伴うマトリックス樹脂の溶融ないしは軟化により、強化繊維が起毛することで空隙が形成される。これは、多孔質体の前駆体において、加圧により圧縮状態とされていた内部の強化繊維が、その弾性率に由来する起毛力によって起毛する性質に基づく。空隙は、少なくとも厚み方向に連続している。ここで、「厚み方向」とは、図3に示すような金型で成形される板状の成形品における平面部(投影面積の最も大きい面)からそれと向かい合う面への方向であり、この方向において空隙が連続している。また図4に示すような金型で成形される半球形状を付与した成形品の場合、成形品を構成する部材の厚みの方向である。このとき、空隙が厚み方向に連続することにより、連続多孔質体は通気性を有する。また、目的に応じて厚み方向の垂直方向に連続していても良い。
【0031】
本発明の連続多孔質体は、強化繊維の体積含有率(%)が、0.5~55体積%、マトリックス樹脂の体積含有率(%)が、2.5~85体積%、空隙の体積含有率(%)が、10~97体積%であることが好ましい。
【0032】
連続多孔質体において、強化繊維の体積含有率が0.5体積%以上である場合、強化繊維に由来する補強効果を十分なものとすることができるので好ましい。一方、強化繊維の体積含有率が55体積%以下の場合には、強化繊維に対するマトリックス樹脂の体積含有率が相対的に多くなり、連続多孔質体中の強化繊維同士を結着し、強化繊維の補強効果を十分なものとできるため、連続多孔質体の力学特性、とりわけ曲げ特性を満足できるので好ましい。
【0033】
連続多孔質体において、マトリックス樹脂の体積含有率が2.5体積%以上である場合、連続多孔質体中の強化繊維同士を結着し、強化繊維の補強効果を十分なものとすることができ、連続多孔質体の力学特性、とりわけ曲げ弾性率を満足できるので好ましい。一方、マトリックス樹脂の体積含有率が85体積%以下であれば、空隙の形成を阻害しないため好ましい。
【0034】
連続多孔質体において、強化繊維はマトリックス樹脂に被覆されており、被覆しているマトリックス樹脂の厚み(被覆厚み)が1μm以上、15μm以下の範囲内にあることが好ましい。マトリックス樹脂に被覆された強化繊維の被覆状態は、少なくとも連続多孔質体を構成する強化繊維の単繊維同士の交差する点が被覆されていれば、連続多孔質体の形状安定性や、厚み制御の容易さ及び自由度の観点から十分であるが、さらに好ましい態様とすれば、マトリックス樹脂は、強化繊維の周囲に、上述の厚みで被覆された状態であることが好ましい。この状態は、強化繊維の表面がマトリックス樹脂によって露出していない、言い換えれば、強化繊維がマトリックス樹脂により電線状の皮膜を形成していることを意味する。このことにより、連続多孔質体は、さらに、形状安定性を有すると共に、力学特性の発現を十分なものとする。また、マトリックス樹脂に被覆された強化繊維の被覆状態は、その強化繊維の全てにおいて被覆されている必要はなく、本発明に係る連続多孔質体の形状安定性や、曲げ弾性率、曲げ強度を損なわない範囲内であればよい。
【0035】
連続多孔質体において、空隙の体積含有率は、10体積%以上97体積%以下の範囲内であることが好ましい。空隙の含有率が10体積%以上であることにより、連続多孔質体の密度が低くなるため軽量性を満足できるため好ましい。一方、空隙(の含有率が97体積%以下の場合には、言い換えれば、強化繊維の周囲に被覆されたマトリックス樹脂の厚みが十分なものとなることから、連続多孔質体中における強化繊維同士の補強を十分に行うことができ、力学特性が高くなるので好ましい。空隙の体積含有率の上限値は97体積%であることが好ましい。本発明において、体積含有率は連続多孔質体を構成する強化繊維と、マトリックス樹脂と、空隙のそれぞれの体積含有率の合計を100体積%とする。
【0036】
連続多孔質体において、空隙は、連続多孔質体の前駆体のマトリックス樹脂の粘度を低下させることにより、強化繊維が起毛し、元の状態に戻ろうとする復元力によって形成される。これにより強化繊維はマトリックス樹脂を介して結合することにより、より強固な圧縮特性と連続多孔質体の形状保持性を発現することから好ましい。
【0037】
連続多孔質体の密度ρは0.9g/cm以下であることが好ましい。連続多孔質体の密度ρが0.9g/cm以下の場合、連続多孔質体とした場合の質量が減少することを意味し、結果、製品とした場合の質量の軽量化に貢献することとなるので好ましい。より好ましくは0.7g/cm以下、さらに好ましくは0.5g/cm以下である。密度の下限については制限を設けないが、一般的に強化繊維とマトリックス樹脂とを有する連続多孔質体では、その構成成分である強化繊維、マトリックス樹脂、及び空隙それぞれの体積割合から算出される値が下限となり得る。本発明に係る成形品においては、連続多孔質体自身の密度は、使用する強化繊維やマトリックス樹脂により異なるが、連続多孔質体の力学特性を保持するという観点から、0.03g/cm以上であることが好ましい。
【0038】
(薄膜層)
本発明の成形品において、薄膜層とは、少なくとも防液性を有する層である。防液性を有する層とは、液体の透過を防止しうる機能を有する層であり、薄膜層を最終製品としての成形品の外表面とした場合、連続多孔質体への液体の浸入が防止でき、内表面とした場合、連続多孔質体に浸入した液体を透過させることなく、貯蔵する役割を付与することができる。本発明では、防液性をより高める観点から、薄膜層が2層以上で構成されることが望ましい。またこのような構成とすることで、薄膜層の形成に用いる固体状添加剤および樹脂の使用量を減らすことが可能となり、軽量性に優れた成形品を得ることができる。
【0039】
本発明の成形品において、薄膜層は固体状添加剤と樹脂とを有する。固体状添加剤と樹脂との混合割合は、固体状添加剤による機能発現の観点から、0.1体積%以上50体積%以下であることが好ましい。固体状添加剤の体積割合が0.1体積%未満では、固体状添加剤による機能の発現が十分でない場合があり、50体積%を超える場合、成形品の重量が増加する。また、薄膜層を形成する際、樹脂の粘度が高くなり取り扱い性が低下する。薄膜層中の固体状添加剤の混合割合は、1体積%以上40体積%以下であることがより好ましい。より好ましくは、3体積%以上30体積%以下である。
【0040】
本発明の成形品を最終製品として取り扱うことも考慮すると、薄膜層が意匠性も備える層であることが好ましい。この観点より、固体状添加剤は、成形品に対し、連続多孔質体の空隙への液体の浸入を防止することに加え、着色ならびにパール感やメタリック感をはじめとした意匠性を付与することを目的として添加される。
【0041】
固体状添加剤としては、顔料やガラスビーズなどが挙げられる。具体的にはアゾ顔料、フタロシアニンブルーなどの有機顔料、アルミニウム、真鍮などの金属粉末からなる金属顔料、酸化クロム、コバルトブルーなどの無機顔料が挙げられる。なかでも、耐熱性の観点から金属顔料、無機顔料が好ましい。また、強化繊維が炭素繊維やアラミド繊維など濃色である場合には、屈折率が異なる構造を2層以上有する顔料が好ましく用いられる。例えば、酸化チタンや酸化鉄で被覆した天然マイカ、人工マイカ、アルミナフレーク、シリカフレーク、ガラスフレークである。かかる層構造とすることにより、可視光領域の光の干渉、回折、散乱といった光学現象によって発色させることができる。光の干渉、回折、散乱といった光学現象を利用すると、特定波長の光の反射によって発色できるため、濃色の強化繊維を用いた場合に、好ましく用いられる。連続多孔質体の空隙(連続多孔質体の表面においては孔)を塞ぐ観点から、薄膜層を形成する際に樹脂と相溶しない固体であることが好ましく、薄膜層が形成された後の状態は限定されない。
【0042】
固体状添加剤の形態は特に限定されないが、球状、繊維状、フレーク状の形態であってよい。本発明において、連続多孔質体の厚み方向に連続した空隙をふさぐことが固体状添加剤の目的の1つであるため、空隙の形状に合わせて適宜選択することができる。固体状添加剤の最大寸法は、200μm以下であることが好ましい。ここで、固体状添加剤の最大寸法とは、固体状添加剤の一次粒子の最大寸法または固体状添加剤が凝集等する場合は二次粒子の最大寸法を意味するものである。固体状添加剤の最大寸法が200μm以下であることにより、薄膜層の表面が平滑となり、意匠性が向上する。また、固体状添加剤の最大寸法は、1μm以上であることが好ましい。固体状添加剤の最大寸法は、1μm以上であることにより、薄膜層の防液性を向上することができる。また、固体状添加剤の最大寸法と後述する連続多孔質体の空隙径(孔径)の関係が、連続多孔質体の空隙径(孔径)≦固体状添加剤の最大寸法となることが好ましく、連続多孔質体の空隙径(孔径)×1.1<固体状添加剤の最大寸法の関係がより好ましく、連続多孔質体の空隙径(孔径)×1.3<固体状添加剤の最大寸法の関係がさらに好まし。固体状添加剤の最大寸法は、電子顕微鏡を用いて固体状添加剤を観察し、寸法が少なくとも1μm単位まで測定可能な画像となるように拡大した画像から、無作為に任意の100個の固体状添加剤を選び、それぞれの固体状添加剤の外側輪郭線上の任意の2点を、その距離が最大になるように選んだときの長さを最大長さとして計測した値の平均値である。固体状添加剤のアスペクト比は特に限定されないが、50以下が好ましく、30以下がより好ましい。薄膜層の形成しやすさ(樹脂組成物の取り扱い性)の観点からアスペクト比が5以下であることがさらに好ましく、アスペクト比が1に近い添加物ほど薄膜層の特性のバラつきを抑制できる。一方、連続多孔質体に形成される孔が大きい場合、アスペクト比がアスペクト比を10以上とすることで、薄膜層の厚みを薄くする観点から好ましい。
【0043】
固体状添加剤の最大寸法は、より好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下である。また、固体状添加剤の最大寸法は、さらに好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。
【0044】
薄膜層および成形品の質量増加を抑制する観点から、固体状添加剤の内部が空洞である中空構造体を用いることが好ましい。中でも中空ガラスビーズやポーラスな樹脂粒子などが軽量化の点で好ましい。または、ドーナツ状やトライアングル状、フレーム状である中空構造体を用いてもよい。このような固体状添加剤を用いることで、連続多孔質体の厚み方向に連続した空隙をふさぐ役割を担う固体状添加剤の最大寸法を維持しつつ、重量の増加を抑制することができる。
【0045】
本発明の薄膜層において、樹脂として熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0046】
本発明の薄膜層において、熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂と硬化剤を含む。熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂など任意の熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよいし、適宜配合してもよい。意匠性を付与する固体状添加剤を用いる場合、透明性の高いエポキシ樹脂や不飽和ポリエステルが好ましく用いられる。
【0047】
硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ヒドラジド、酸無水物、ポリメルカプタン、ポリフェノールなど、化学量論的反応を行う化合物と、イミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩のように触媒的に作用する化合物がある。化学量論的反応を行う化合物を用いる場合には、硬化促進剤、例えばイミダゾール、ルイス酸錯体、オニウム塩、尿素誘導体、ホスフィンなどをさらに配合する場合がある。硬化剤の中でも、得られる繊維強化複合材料の耐熱性や力学特性が優れることから、分子中にアミノ基、アミド基、イミダゾール基、尿素基、ヒドラジド基などの窒素原子を含む基を有する、有機窒素化合物を好ましく用いることができる。硬化剤は、1種でも、複数種組み合わせて使用してもよい。
【0048】
本発明の薄膜層において、23℃における熱硬化性樹脂の粘度は1×10以上1×10Pa・s以下であることが好ましい。23℃における樹脂の粘度が1×10以上であることにより、樹脂の連続多孔質体への浸透を抑制することができる。また、熱硬化性樹脂の粘度が1×10Pa・s以下であることにより、多孔質への塗布を容易に行うことができ、均一な厚さの薄膜層を形成することができる。23℃における熱硬化性樹脂の粘度は1×10以上5×10Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0049】
本発明の薄膜層において、50℃で30分間加熱したときの熱硬化性樹脂の粘度が1×10Pa・s以上であることが好ましい。熱硬化性樹脂は、連続多孔質体に塗布された後、直ちに硬化して、連続多孔質体の空隙に浸透しすぎないことが好ましい。50℃で30分間加熱したときの熱硬化性樹脂の粘度が1×10Pa・s以上であることにより、熱硬化性樹脂の連続多孔質体への浸透を抑制することができる。また、1×10Pa・s以上であることがより好ましい。
【0050】
本発明の薄膜層において、熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂等任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、適宜配合してもよい。また、連続多孔質体を構成する樹脂と同様に選択することができる。
【0051】
薄膜層が、固体状添加剤として顔料を使用し、熱硬化性樹脂を有する場合、顔料の熱硬化性樹脂の硬化物との屈折率差が0.1以下であることが好ましい。屈折率差が小さいほど、薄膜層の透明度が上がるため、顔料の着色効果が強く発現する。薄膜層で使用する樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0052】
(成形品)
本発明の成形品において、成形品の薄膜層が形成された面からの水の浸透度が10%以下である。水の浸透度が10%以下であることにより、連続多孔質体への水の浸透を防止することができる。水の浸透度は、好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは、5%以下である。成形品への水の浸透度は、例えば、成形品より100mm×100mmの試験片を切り出し、質量M0を測定し、試験片の薄膜層側の表面に水30gを滴下する。5分間後、試験片をひっくり返し、試験片表面に残った水を除去した後、試験片の質量M1を測定し、次式より算出することができる。
浸透度[%]={(M1-M0)÷30}×100 式(1)
【0053】
本発明の成形品において、薄膜層の厚みは10μm以上500μm以下であることが好ましい。厚みが10μmより薄い場合、防液性が低くなるおそれがある。また、厚みを500μmより厚くした場合、平滑な面や意匠性に優れた面を形成は可能であるが、成形品の質量が増加してしまい、成形品の軽量性を発現することが困難となる。さらに好ましくは、薄膜層の厚みは400μm以下であり、さらに好ましくは300μm以下である。
【0054】
本発明の成形品において、薄膜層の密度は、2.5g/cm以下であることが好ましい。薄膜層の密度が2.5/cm以下であることにより、成形品の質量増加を抑制することができる。薄膜層の密度は2.5g/cm以下であり、より好ましくは2.0g/cm以下、さらに好ましくは1.5g/cm以下である。このとき、薄膜層の密度の下限値は軽量化の観点からは特に限定されないが、薄膜層の形成しやすさの観点から0.1g/cm以上であり、より好ましくは0.3g/cm以上、さらに好ましくは0.5g/cm以上である。本発明の成形品において、連続多孔質体の空隙内に薄膜層が侵入していることが好ましい。薄膜層が空隙内に侵入することにより、アンカリングによる機械的な接合がなされ、連続多孔質体の表面に強固に薄膜層を形成することができる。さらに、本発明の成形品において、固体状添加剤の少なくとも一部が、連続多孔質体の空隙内に存在することが好ましい。このような状態とすることで、水および水溶液の連続多孔質体へ浸入をさらに防止することが可能である。また薄膜層を構成する樹脂の過剰な浸入も抑制することができる。このとき、固体状添加剤が連続多孔質体の空隙に存在する状態は特に限定されないが、連続多孔質体に侵入した固体状添加剤が、多孔質体内の厚み方向における30μm以上の深さの位置に存在していることが好ましく、当該深さは50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。
【0055】
さらに、本発明の実施の形態2に係る成形品は、厚み方向に連続した空隙を有した連続多孔質体に、固体状添加剤と樹脂を有する薄膜層が形成されてなる成形品であって、JIS R3257(1999)で測定したガラス基板上での接触角が60°以下の溶液の、成形品の薄膜層が形成された面からの浸透度が30%以下である。JIS R3257(1999)で測定したガラス基板上での接触角が60°以下の溶液の、成形品の薄膜層が形成された面からの浸透度が30%以下であることにより、洗浄などを目的として界面活性剤が含まれた液(いわゆるシャンプー液)で処理された場合にも、シャンプー液の連続多孔質体への浸透を防止することができる。JIS R3257(1999)で測定したガラス基板上での接触角が60°以下の溶液の、成形品の薄膜層が形成された面からの浸透度は、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。また、浸透度が30%以下である溶液の接触角は、45°以下であることがより好ましく、30°以下であることがさらに好ましい。JIS R3257(1999)で測定したガラス基板上での接触角が60°以下の溶液の、成形品の薄膜層が形成された面からの浸透度は、上記の水の浸透度と同様にして測定することができる。シャンプー液としては、例えば、自動車などを洗車する際に用いるものや衣類などを洗濯する際に用いるもの、食器などを洗浄する際に用いるものなど主成分として界面活性剤が含まれる溶液が挙げられる。界面活性剤の種類としては特に限定されないが、親水性部分がイオン性のものや非イオン性のものがあり、イオン性の中でも、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤がある。油成分などの汚れを除去(洗浄)すると言う観点から、陰イオン界面活性剤が含まれるものが主流であり、これらの界面活性剤をそのまま使用しても水などで希釈して使用することができる。なお、実施の形態2に係る成形品において、多孔質体、薄膜層、成形品は、実施の形態1と同様である。
【0056】
(連続多孔質体の製造)
連続多孔質体の前駆体、および連続多孔質体の製造方法について説明する。
【0057】
前駆体を製造する方法としては、強化繊維マットに溶融ないし軟化した状態のマトリックス樹脂を加圧または減圧する方法が挙げられる。具体的には、強化繊維マットの厚み方向の両側および/または中心からマトリックス樹脂を配置した積層物を、加熱、加圧してマトリックス樹脂を溶融含浸させる方法が製造の容易さの観点から望ましく例示できる。
【0058】
連続多孔質体を構成する強化繊維マットの製造方法としては、例えば強化繊維を予めストランド及び/又は略モノフィラメント状に分散して強化繊維マットを製造する方法がある。強化繊維マットの製造方法としては、強化繊維を空気流にて分散シート化するエアレイド法や、強化繊維を機械的に櫛削りながら形状を整えシート化するカーディング法等の乾式プロセス、強化繊維を水中にて攪拌して抄紙するラドライト法による湿式プロセスを公知技術として挙げることができる。強化繊維をよりモノフィラメント状に近づける手段としては、乾式プロセスにおいては、開繊バーを設ける方法やさらに開繊バーを振動させる方法、さらにカードの目をファインにする方法や、カードの回転速度を調整する方法等を例示できる。湿式プロセスにおいては、強化繊維の攪拌条件を調整する方法、分散液の強化繊維濃度を希薄化する方法、分散液の粘度を調整する方法、分散液を移送させる際に渦流を抑制する方法等を例示できる。特に、強化繊維マットは湿式プロセスで製造することが望ましく、投入繊維の濃度を増やしたり、分散液の流速(流量)とメッシュコンベアの速度を調整したりすることで強化繊維マットの強化繊維の割合を容易に調整できる。例えば、分散液の流速に対してメッシュコンベアの速度を遅くすることで、得られる強化繊維マット中の繊維の配向が引き取り方向に向き難くなり、嵩高い強化繊維マットを製造可能である。強化繊維マットは、強化繊維単体から構成されていてもよく、強化繊維が粉末形状や繊維形状のマトリックス樹脂成分と混合されていたり、強化繊維が有機化合物や無機化合物と混合されていたり、強化繊維同士がマトリックス樹脂成分で目留めされていてもよい。
【0059】
上記各方法を実現するための設備としては、圧縮成形機やダブルベルトプレスを好適に用いることができる。バッチ式の場合は前者であり、加熱用と冷却用との2機以上を並列した間欠式プレスシステムとすることで生産性の向上が図れる。連続式の場合は後者であり、連続的な加工を容易に行うことができるので連続生産性に優れる。
【0060】
続いて、前駆体を膨張させて連続多孔質体に成形する工程としては、特に限定はされないが、連続多孔質体を構成するマトリックス樹脂の粘度を低下させることで連続多孔質体に成形することが好ましい。マトリックス樹脂の粘度を低下させる方法としては、前駆体を加熱することが好ましい。加熱方法については、特に限定されないが、所望の温度に設定した金型や熱板などに接触させて加熱する方法や、ヒーターなどを用いた非接触状態で加熱する方法が上げられる。連続多孔質体を構成するマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合、融点または軟化点以上に加熱すればよく、熱硬化性樹脂を使用する場合、硬化反応が開始する温度より低い温度で加熱する。
【0061】
連続多孔質体の厚み制御を行う方法としては、加熱される前駆体を目的の厚みに制御できれば方法によらないが、金属板等を用いて厚みを拘束する方法、前駆体に付与する圧力により厚み制御する方法等が製造の簡便さの観点から好ましい方法として例示される。上記方法を実現するための設備としては、圧縮成形機やダブルベルトプレスを好適に用いることができる。バッチ式の場合は前者であり、加熱用と冷却用の2機以上を並列した間欠式プレスシステムとすることで生産性の向上が図れる。連続式の場合は後者であり、連続的な加工を容易に行うことができるため連続生産性に優れる。
【0062】
(成形品の製造)
本発明に係る成形品は、固体状添加剤と樹脂との樹脂混合物を連続多孔質体に塗布した後に、加熱することで薄膜層を形成することが好ましい。加熱を行わずに薄膜層を形成することも可能ではあるが、生産性および連続多孔質体内部への薄膜層の過度な浸入を抑制することが可能な点から加熱することで薄膜層を形成することが好ましい。
【0063】
固体状添加剤と樹脂との樹脂混合物の製造は、攪拌機や押出機で行うことができる。
【0064】
連続多孔質体への樹脂混合物の塗布は、ハケ、ローラー、ブレードコーター、エアナイフ、ダイコーター、メニスカスコーター、バーコーター等により行うことができる。また、圧縮空気などを利用して、薄膜層を形成する樹脂混合物を吹き付けることにより行うこともできる。このとき、特に限定はされないが、後述する連続多孔質体の空隙径(孔径)の測定で得られる圧力Pよりも小さい圧力で樹脂混合物が塗布されることが、連続多孔質体の空隙への過度な浸入を抑制する観点から好ましい。
【0065】
樹脂混合物が塗布された連続多孔質体は、加熱される。加熱温度は、熱硬化性樹脂の場合は硬化温度以上であればよく、熱可塑性樹脂の場合は融点または軟化点以上であればよい。
【0066】
また、薄膜層を構成する樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合、射出成型用の金型に連続多孔質体をセットした後、インサート成形することにより塗布することができる。
【0067】
以上のようにして製造した本発明の成形品は、例えば、「パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、PDA(電子手帳等の携帯情報端末)、ビデオカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品等の筐体、トレイ、シャーシ、内装部材、振動板、スピーカーコーン、またはそのケース」等の電気、電子機器部品、「スピーカーコーン」等の音響部材、「各種メンバ、各種フレーム、各種ヒンジ、各種アーム、各種車軸、各種車輪用軸受、各種ビーム」、「フード、ルーフ、ドア、フェンダ、トランクリッド、サイドパネル、リアエンドパネル、フロントボディー、アンダーボディー、各種ピラー、各種メンバ、各種フレーム、各種ビーム、各種サポート、各種レール、各種ヒンジ」等の、外板、又は、ボディー部品、「バンパー、バンパービーム、モール、アンダーカバー、エンジンカバー、整流板、スポイラー、カウルルーバー、エアロパーツ」等の外装部品、「インストルメントパネル、シートフレーム、ドアトリム、ピラートリム、ハンドル、各種モジュール」等の内装部品、又は、「モーター部品、CNGタンク、ガソリンタンク」等の自動車、二輪車用構造部品、「バッテリートレイ、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、プロテクター、ランプリフレクター、ランプハウジング、ノイズシールド、スペアタイヤカバー」等の自動車、二輪車用部品、「遮音壁、防音壁などの壁内部材」等の建材、「ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブ、シート」等の航空機用部品に好適に使用することができる。力学特性および形状賦型性の観点からは、自動車内外装、電気・電子機器筐体、自転車、スポーツ用品用構造材、航空機内装材、輸送用箱体、建材に望ましく用いられる。また、本発明の成形品の防水性を有する面を内表面とした場合、植物などを育てるプラントに使用する吸水スポンジ(フローラルフォーム)や保水性舗装としてアスファルトの表面および/または内部に用いることもできる。
【実施例
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0069】
(1)成形品の水の浸透度および溶液の浸透度
成形品より100mm×100mmの試験片を切り出し、質量M0を測定した。次いで、水または溶液30gを準備し、試験片の薄膜層側の表面に滴下した。5分間後、試験片をひっくり返し、試験片表面に残った水または溶液を除去した。試験片の質量M1を再度測定し、次式より算出した。
浸透度[%]={(M1-M0)÷30}×100 式(1)
【0070】
(2)溶液の接触角
JIS R3257(1999) 基板ガラス表面のぬれ性試験方法の静滴法を参考にして、浸透度で使用する溶液の接触角を測定した。水滴の形状を側面から撮影し、高さhおよび半径rを計測した。得られた値および次式より接触角を算出した。なお、シャンプー液としては、自動車洗車用の陰イオン界面活性剤入りの溶液を水で希釈して使用した。
接触角θ[°]=2Tan-1(h/r) 式(2)
【0071】
(3)薄膜層の厚み
成形品から縦10mm、横10mmに試験片を切り出し、エポキシ樹脂に包埋した上で、成形品の厚み方向の垂直断面が観察面となるように研磨して試料を作製した。試料をレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製、VK-9510)を用いて薄膜層の厚みを測定した。試料片の厚み方向と垂直方向の端から、等間隔に10箇所の位置において、薄膜層の表面から多孔質体側の位置を測定した。薄膜層の厚みは、5枚の試験片でそれぞれ10箇所ずつ撮影した合計50箇所の薄膜層の厚みから算術平均により求めた。
【0072】
(4)薄膜層の密度ρs
薄膜層の形成に用いる固体状添加剤および樹脂を所定の割合で混合した樹脂混合物を、厚みが1mmとなるように離型性を有するフィルムに塗布して硬化または固化させた。得られた板状の薄膜層から25mm×25mmの試験片を切り出した。質量および体積より、薄膜層の密度ρsを算出した。
【0073】
(5)薄膜層中の固体状添加剤の最大寸法
レーザー顕微鏡を用いて固体状添加剤の形状を測定した。固体状添加剤の最大寸法の測定は、固体状添加剤のみを入手出来る場合は、そのままで測定した。樹脂などに混合されている固体状添加剤は、空気中500℃で30分間加熱して樹脂成分を焼き飛ばしてから最大寸法を測定した。
【0074】
(6)薄膜層を構成する樹脂の粘度
JIS K7244(2005) プラスチック-動的機械特性の試験方法-第10部:平行平板振動レオメータによる複素せん断粘度を参考にして、23℃における樹脂の粘度を測定した。TAインスツルメント製の動的粘弾性装置において、測定治具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、プレート間距離が1mmとなるように樹脂をセットし、ねじりモード(測定周波数:0.5Hz)で測定した。
【0075】
(7)50℃で30分加熱したあとの薄膜層を構成する樹脂の粘度
樹脂を(6)で使用する動的粘弾性装置にセットした後、50℃まで昇温して30分間保持する。その後、(6)と同様にして粘度を測定した。
【0076】
(8)連続多孔質体における強化繊維の体積含有率Vf
連続多孔質体から試験片を切り出し、質量Wsを測定した後、試験片を空気中500℃で30分間加熱して樹脂成分を焼き飛ばし、残った強化繊維の質量Wfを測定し、次式により算出した。
Vf(体積%)=(Wf/ρf)/{Wf/ρf+(Ws-Wf)/ρr}×100
ρf:強化繊維の密度(g/cm
ρr:マトリックス樹脂の密度(g/cm
【0077】
(9)連続多孔質体の密度ρp
連続多孔質体から試験片を切り出し、JIS K7222(2005)を参考にして連続多孔質体の見かけ密度を測定した。試験片の寸法は縦100mm、横100mmとした。試験片の縦、横、厚みをマイクロメーターで測定し、得られた値より試験片の体積Vを算出した。また、切り出した試験片の質量Mを電子天秤で測定した。得られた質量M及び体積Vを次式に代入することにより連続多孔質体(A)の密度ρpを算出した。
ρp[g/cm]=M[g]/V[cm
【0078】
(10)成形品の密度ρm
成形品から連続多孔質体および薄膜層を含む部分を試験片として切り出し、(9)連続多孔質体の密度ρpと同様にして成形品の見かけ密度を測定し、密度ρmを算出した。
【0079】
(11)連続多孔質体の空隙の体積含有率
連続多孔質体から縦10mm、横10mmに試験片を切り出し、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立ハイテクノロジーズ製 S-4800型)により観察し、連続多孔質体の表面から、等間隔に10箇所を1000倍の倍率で撮影した。それぞれの画像について、画像内の空隙の面積Aaを求めた。さらに、空隙の面積Aaを画像全体の面積で除算することにより空隙率を算出した。連続多孔質体の空隙の体積含有率は、5枚の試験片でそれぞれ10箇所ずつ撮影した合計50箇所の空隙率から算術平均により求めた。
【0080】
(12)連続多孔質体の通気性(厚み方向への通気性)
下記(a)~(d)により連続多孔質体の通気性を測定した。JIS規格で試験条件の上限とされている500Paまでに通気性を確認できたものは「通気性あり」と判断。それ以外は、「通気性なし」と判断した。
(a)連続多孔質体から100mm×100mm、厚み5mmの試験片を切り出す(5mm以下であればそのまま。5mmよりも厚い場合は、切削加工などにより厚みを調整する。)。
(b)試験片の端部(カット面)を4面テープで覆う(面内方向への通気を防ぐため。)。
(c)JIS L1096(2010) A法(フラジール法)が測定可能な試験機の円筒の一端に試験片を取り付ける。
(d)傾斜形気圧計が500Pa以下の圧力となるように吸込みファンおよび空気孔を調整する。
【0081】
(13)連続多孔質体の空隙径(孔径)
連続多孔質体から縦10mm、横10mmに試験片を切り出し、JIS R1655(2003)の水銀圧入法を用いて、連続多孔質体の空隙径(孔径)を測定した。連続多孔質体の空隙径(孔径)は、次式より算出される。
d=-4σ(cosθ)/P
d[m]:連続多孔質体の空隙径(孔径)
σ[N/m]:水銀の表面張力
σ[°]:水銀と試験片の接触角
P[Pa]:水銀に付与する圧力
【0082】
(14)連続多孔質体と薄膜層(固体状添加剤)の状態観察
成形品から試験片を切り出し、試験片の断面をレーザー顕微鏡で観察した。このとき、薄膜層を構成する固体状添加剤が連続多孔質体の空隙内に存在するかを観察した。
【0083】
下記の実施例および比較例において、以下の材料を使用した。
[強化繊維マット1]
東レ(株)製“トレカ”T700S-12Kをカートリッジカッターで5mmにカットし、チョップド炭素繊維を得た。水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))とからなる濃度0.1質量%の分散液を作製し、この分散液とチョップド炭素繊維とを用いて図2に示す強化繊維マットの製造装置を用いて、強化繊維マットを製造した。図2に示す製造装置は、分散槽としての容器下部に開口コックを有する直径1000mmの円筒形状の容器、分散槽と抄紙槽とを接続する直線状の輸送部(傾斜角30°)を備えている。分散槽の上面の開口部には撹拌機が付属し、開口部からチョップド炭素繊維及び分散液(分散媒体)を投入可能である。抄紙槽は、底部に幅500mmの抄紙面を有するメッシュコンベアを備え、炭素繊維基材(抄紙基材)を運搬可能なコンベアをメッシュコンベアに接続している。抄紙は分散液中の炭素繊維濃度を0.05質量%として行った。抄紙した炭素繊維基材は200℃の乾燥炉で30分間乾燥し、目付けが100g/mの強化繊維マットを得た。
【0084】
[PP樹脂]
未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J105G)80質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”QB510)20質量%とからなる目付100g/mの樹脂シートを作製した。
【0085】
[樹脂1]
主剤として三菱ケミカル(株)製のjER828を100質量部、硬化剤として東京化成工業(株)製トリエチレンテトラミンを11質量部の割合で混合し、樹脂1として準備した。
【0086】
[樹脂2]
主剤として三菱ケミカル(株)製のjER828を85質量部、jER1001を15質量部、120℃に温めながら混合した。次いで、硬化剤として東京化成工業(株)製トリエチレンテトラミンを9.7質量部の割合で混合し、樹脂2として準備した。
【0087】
[樹脂3]
未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J709QG)80質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー”QB510)20質量%、後述する固体状添加剤2を5質量%とを溶融混練したペレットを樹脂3として準備した。
【0088】
[固体状添加剤1]
3M社製ガラスバブルズK20を固体状添加剤1として準備した。
【0089】
[固体状添加剤2]
セントラルグラスファイバー(株)製ミルドファイバーEFH50-31を固体状添加剤2として準備した。
【0090】
[固体状添加剤3]
日本板硝子(株)製ガラスフレーク「メタシャイン」1080を固体状添加剤3として準備した。
【0091】
[連続多孔質体の前駆体]
強化繊維マットとして強化繊維マット1、樹脂シートとしてPP樹脂を、[樹脂シート/強化繊維マット/樹脂シート/強化繊維マット/強化繊維マット/樹脂シート/強化繊維マット/樹脂シート]の順番に配置した積層物を作製した。次いで、以下の工程(I)~(IV)を経ることにより連続多孔質体の前駆体を得た。
工程(I):積層物を200℃に予熱したプレス成形用金型キャビティ内に配置して金型を閉じる。
工程(II):次いで、3MPaの圧力を付与し、180秒間保持する。
工程(III):工程(II)の後、圧力を保持した状態でキャビティ温度を50℃まで冷却する。
工程(IV):金型を開いて連続多孔質体の前駆体を取り出す。
【0092】
連続多孔質体の前駆体および図3に示す、プレス機熱板3、金型4を有し、平板を作製可能なプレス成形用金型を用い、以下の工程(I)~(V)を経ることにより連続多孔質体を得た。
工程(I):連続多孔質体の前駆体を260℃に設定したIRヒーターで60秒間予熱した。
工程(II):予熱後、前駆体5を120℃に設定したプレス成形用金型キャビティ内に配置した。このとき、連続多孔質体の厚みを調整するための金属スペーサー6を挿入した。
工程(III):次いで、プレス機熱板3により3MPaの圧力を付与して60秒間保持する。
工程(IV):その後、圧力を保持した状態でキャビティ温度を50℃まで冷却する。
工程(V):金型4を開いて連続多孔質体を取り出す。
【0093】
(実施例1)
薄膜層形成用の材料として、樹脂1を100質量部、固体状添加剤1を15質量部取り分け、樹脂混合物Aを作製した。得られた樹脂混合物Aを連続多孔質体の表面に、目付けが50g/mとなるように塗布し、炉内温度を50℃に設定した乾燥機で1時間乾燥させて成形品を得た。得られた成形品に対し、表1に記載の水および溶液を用いて浸透度を測定した。表1に結果を示す。
【0094】
(実施例2)
固体状添加剤2を用いること以外は実施例1と同様にして、成形品を得た。実施例2で得た成形品の特性を表1に示す。
【0095】
(実施例3)
固体状添加剤3を用いること以外は実施例1と同様にして、成形品を得た。実施例3で得た成形品の特性を表1に示す。
【0096】
(実施例4)
樹脂2を用い、乾燥時間を30分としたこと以外は実施例1と同様にして、成形品を得た。実施例4で得た成形品の特性を表1に示す。
【0097】
(実施例5)
実施例1の樹脂混合物Aを25g/mずつ2回に分けて塗布した以外は実施例1と同様にして(25g/m塗布し、乾燥後さらに25g/m塗布し乾燥)、成形品を得た。実施例5で得た成形品の特性を表1に示す。
【0098】
(実施例6)
連続多孔質体より130mm×130mmに試験片を切り出した。また、薄膜層形成用の材料として、樹脂3を100質量部、固体状添加剤2を15質量部用いて、これらをドライブレンドしてから、シリンダ温度を200℃とした二軸押出機で混練し、ペレット状の樹脂混合物Bを作製した。次いで、射出成形機((株)日本製鋼所製 J150EII-P)に取り付けた射出成形用の金型(キャビティ厚み:3.5mm)内に試験片をインサートし、バレル温度220℃、金型温度50℃にて、試験片の片面に樹脂混合物Bをインサート成形を行い、成形品を得た。実施例6で得た成形品の特性を表1に示す。
【0099】
(比較例1)
固体状添加剤を用いないこと以外は実施例1と同様にして、成形品を得た。比較例1で得た成形品の特性を表1に示す。
【0100】
〔検討〕
表1のとおり、本実施例に係る成形品は、連続多孔質体の表面に水や界面活性剤を含む溶液の浸透を抑制しうることが確認された。実施例1~3の成形品は、様々な固体状添加剤を用いた薄膜層を形成することで、連続多孔質体に防水性を付与することができた。特に実施例1では、中空ガラスビーズを用いたため、軽量性に優れる連続多孔質体からの質量増加を抑制した成形品であった。また実施例3では、ガラスフレークを用いたため、薄膜層に意匠性も付与した成形品であった。実施例4について、硬化速度の速い樹脂を用いることで、樹脂混合物の連続多孔質体内部への過度な浸入が抑制され、防水性の高い成形品であった。実施例5について、薄膜層の形成を複数回に分けて形成することで、防水性を高めることが可能であった。一方、比較例1においては、樹脂のみで薄膜層を形成したため、連続多孔質体表面に多くの孔が残存し、防水性を発現する事が困難であった。
【0101】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、剛性及び軽量性に優れるとともに、防液性に優れる成形品を得ることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 強化繊維
1a~1f 単繊維
2 二次元配向角
3 プレス機熱板
4 金型
5 前駆体
6 スペーサー
7 成形品
図1
図2
図3
図4