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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/14 20100101AFI20230523BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20230523BHJP
【FI】
H01L33/14
H01L33/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020055744
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158179
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五所野尾 浩一
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-097505(JP,A)
【文献】特開2010-177460(JP,A)
【文献】特開2014-175338(JP,A)
【文献】特開昭57-072235(JP,A)
【文献】特開平09-205250(JP,A)
【文献】特開平10-321957(JP,A)
【文献】特表2000-516273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚の基板上に並んで配置された、異なる色の光で独立して発光する第1の発光素子と第2の発光素子を備えた発光装置であって、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記基板上の単一の連続したn型半導体層と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記n型半導体層上の単一の連続した第1の半導体層と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられ、前記第1の発光素子に第1のキャップ膜として用いられる、前記第1の半導体層上の単一の連続した第1の中間層と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記第1の中間層上の第2の半導体層と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記第2の半導体層上の第2のキャップ膜と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記第1のキャップ膜と前記第2のキャップ膜上の単一の連続したp型半導体膜と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記p型半導体膜上の単一の連続したコンタクト電極膜と、
前記第1の発光素子に用いられる、前記コンタクト電極膜上の第1のp側接合電極と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記コンタクト電極膜上の第2のp側接合電極と、
を備え、
前記第1の中間層のバンドギャップが、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の半導体層のバンドギャップが、前記第1の半導体層のバンドギャップよりも小さく、
前記第1の発光素子において、前記p型半導体膜側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第1の半導体層が発光層として機能し、
前記第2の発光素子において、前記p型半導体膜側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第2の半導体層が発光層として機能する、
発光装置。
【請求項2】
前記基板上に前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子と並んで配置され、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子と異なる色の光で独立して発光する第3の発光素子をさらに備え、
前記n型半導体層、前記第1の半導体層、前記第1の中間層、及び前記第2の半導体層が、単一の連続した膜として前記第3の発光素子にも共通で用いられ、
前記第2の半導体層上に、前記第2の発光素子と前記第3の発光素子に共通に用いられ、前記第2の発光素子に前記第2のキャップ膜として用いられる、単一の連続した第2の中間層が設けられ、
前記第2の中間層上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3の半導体層が設けられ、
前記第3の半導体層上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のキャップ膜が設けられ、
前記p型半導体膜が、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、及び前記第3の発光素子に共通に用いられる、前記第1のキャップ膜、前記第2のキャップ膜、及び前記第3のキャップ膜上の単一の連続した膜であり、
前記コンタクト電極膜が、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、及び前記第3の発光素子に共通に用いられる、前記p型半導体膜上の単一の連続した膜であり、
前記コンタクト電極膜上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のp側接合電極が設けられ、
前記第1の中間層のバンドギャップが、前記第1の半導体層、前記第2の半導体層、及び前記第3の半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の中間層のバンドギャップが前記第2の半導体層及び前記第3の半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第3の半導体層のバンドギャップが、前記第2の半導体層のバンドギャップよりも小さく、
前記第3の発光素子において、前記p型半導体膜側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第3の半導体層が発光層として機能する、
請求項に記載の発光装置。
【請求項3】
1枚の基板上に並んで配置された、異なる色の光で独立して発光する第1の発光素子と第2の発光素子を備えた発光装置であって、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記基板上の単一の連続したn型半導体層と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記n型半導体層上の単一の連続した第1の半導体層と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられ、前記第1の発光素子に第1のキャップ膜として用いられる、前記第1の半導体層上の単一の連続した第1の中間層と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記第1の中間層上の第2の半導体層と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記第2の半導体層上の第2のキャップ膜と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記第1のキャップ膜と前記第2のキャップ膜上の単一の連続したp型半導体膜と、
前記第1の発光素子に用いられる、前記p型半導体膜上の第1のコンタクト電極膜と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記p型半導体膜上の第2のコンタクト電極膜と、
前記第1の発光素子に用いられる、前記第1のコンタクト電極膜上の第1のp側接合電極と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記第2のコンタクト電極膜上の第2のp側接合電極と、
を備え、
前記第1の中間層のバンドギャップが、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の半導体層のバンドギャップが、前記第1の半導体層のバンドギャップよりも小さく、
記第1の発光素子において、前記p型半導体膜側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第1の半導体層が発光層として機能し、
前記第2の発光素子において、前記p型半導体膜側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第2の半導体層が発光層として機能する、
発光装置。
【請求項4】
前記基板上に前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子と並んで配置され、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子と異なる色の光で独立して発光する第3の発光素子をさらに備え、
前記n型半導体層、前記第1の半導体層、前記第1の中間層、及び前記第2の半導体層が、単一の連続した膜として前記第3の発光素子にも共通で用いられ、
前記第2の半導体層上に、前記第2の発光素子と前記第3の発光素子に共通に用いられ、前記第2の発光素子に前記第2のキャップ膜として用いられる、単一の連続した第2の中間層が設けられ、
前記第2の中間層上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3の半導体層が設けられ、
前記第3の半導体層上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のキャップ膜が設けられ、
前記p型半導体膜が、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、及び前記第3の発光素子に共通に用いられる、前記第1のキャップ膜、前記第2のキャップ膜、及び前記第3のキャップ膜上の単一の膜であり、
前記p型半導体膜上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のコンタクト電極膜が設けられ、
前記第3のコンタクト電極膜上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のp側接合電極が設けられ、
前記第1の中間層のバンドギャップが、前記第1の半導体層、前記第2の半導体層、及び前記第3の半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の中間層のバンドギャップが前記第2の半導体層及び前記第3の半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第3の半導体層のバンドギャップが、前記第2の半導体層のバンドギャップよりも小さく、
前記第3の発光素子において、前記p型半導体膜側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第3の半導体層が発光層として機能する、
請求項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、独立して発光する複数のセグメントを有する発光装置であって、それぞれ単一の連続した膜からなり、複数のセグメントにおいて共通に用いられるn型層、p型層、及びそれらの間に介在する活性層と、p型層の上に設けられ、複数のセグメントの各々に用いられる複数の電極とを備えた発光装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1によれば、その発光装置はほとんど空間を占めることがないとされており、直接的な記載はないものの、n型層、p型層、及び活性層が複数のセグメントにおいて共通に用いられていることが、発光装置が占有する空間を小さくすることに寄与していると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2009-509326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にはp型層上の電極の形成プロセスは開示されていないが、ドライエッチングを用いたパターニングを行うとオーバーエッチングによりp型層が削られてしまうため、ウェットエッチングやリフトオフプロセスなどのドライエッチングを伴わないプロセスが用いられていると考えられる。
【0006】
しかしながら、ウェットエッチングやリフトオフプロセスなどではドライエッチングほど微細なパターンは形成できないため、電極間の距離を小さくすることが難しく、それによってセグメントのピッチを狭めることが難しくなっていると考えられる。特に、発光装置が高解像度のディスプレイの光源などに用いられる小型の発光装置である場合は、電極間の距離がセグメントのピッチに及ぼす影響は大きい。
【0007】
本発明の目的は、高解像度のディスプレイの光源に適用可能な、微小なピッチで並べられた複数の発光領域を有する発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[6]の発光装置を提供する。
【0009】
[1]1枚の基板上に並んで配置された、各々が独立して発光する複数の発光素子を備えた発光装置であって、前記複数の発光素子に共通に用いられる、前記基板上の単一の連続したn型半導体層と、前記複数の発光素子に共通に用いられる、前記n型半導体層上の単一の連続した発光層と、前記複数の発光素子に共通に用いられる、前記発光層上の単一の連続したp型半導体層と、前記複数の発光素子に共通に用いられる、前記p型半導体層上の単一の連続したコンタクト電極膜と、前記複数の発光素子のそれぞれに用いられる、前記コンタクト電極膜上の複数のp側接合電極と、を備え、前記コンタクト電極膜及び前記p型半導体層が、その面内方向への電流拡散が抑制されるように構成された、発光装置。
[2]前記コンタクト電極膜において、前記複数のp側接合電極の直下の第1の領域のシート抵抗よりも、前記第1の領域以外の第2の領域のシート抵抗の方が大きい、上記[1]に記載の発光装置。
[3]前記コンタクト電極膜がITO又はIZOからなり、前記第2の領域の酸素濃度が、前記第1の領域の酸素濃度よりも高い、上記[2]に記載の発光装置。
[4]前記複数のp側接合電極の間隔が0.1μm以上、3μm以下である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の発光装置。
[5]1枚の基板上に並んで配置された、異なる色の光で独立して発光する第1の発光素子と第2の発光素子を備えた発光装置であって、前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記基板上の単一の連続したn型半導体層と、前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記n型半導体層上の単一の連続した第1の半導体層と、前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられ、前記第1の発光素子に第1のキャップ膜として用いられる、前記第1の半導体層上の単一の連続した第1の中間層と、前記第2の発光素子に用いられる、前記第1の中間層上の第2の半導体層と、前記第2の発光素子に用いられる、前記第2の半導体層上の第2のキャップ層と、前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記第1のキャップ膜と前記第2のキャップ膜上の単一の連続したp型半導体膜と、前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記p型半導体膜上の単一の連続したコンタクト電極膜と、前記第1の発光素子に用いられる、前記コンタクト電極膜上の第1のp側接合電極と、前記第2の発光素子に用いられる、前記コンタクト電極膜上の第2のp側接合電極と、を備え、前記第1の中間層のバンドギャップが、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層のバンドギャップよりも大きく、前記第2の半導体層のバンドギャップが、前記第1の半導体層のバンドギャップよりも小さく、前記p型半導体膜及び前記コンタクト電極膜が、その面内方向への電流拡散が抑制されるように構成され、前記第1の発光素子において、前記p型半導体層側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第1の半導体層が発光層として機能し、前記第2の発光素子において、前記p型半導体層側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第2の半導体層が発光層として機能する、発光装置。
[6]前記基板上に前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子と並んで配置され、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子と異なる色の光で独立して発光する第3の発光素子をさらに備え、前記n型半導体層、前記第1の半導体層、前記第1の中間層、及び前記第2の半導体層が、単一の連続した膜として前記第3の発光素子にも共通で用いられ、前記第2の半導体層上に、前記第2の発光素子と前記第3の発光素子に共通に用いられ、前記第2の発光素子に前記第2のキャップ膜として用いられる、単一の連続した第2の中間層が設けられ、前記第2の中間層上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3の半導体層が設けられ、前記第3の半導体層上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のキャップ膜が設けられ、前記p型半導体膜が、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、及び前記第3の発光素子に共通に用いられる、前記第1のキャップ膜、前記第2のキャップ膜、及び第3のキャップ膜上の単一の連続した膜であり、前記コンタクト電極膜が、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、及び前記第3の発光素子に共通に用いられる、前記p型半導体膜上の単一の連続した膜であり、前記コンタクト電極膜上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のp側接合電極が設けられ、前記第1の中間層のバンドギャップが、前記第1の半導体層、前記第2の半導体層、及び前記第3の半導体層のバンドギャップよりも大きく、前記第2の中間層のバンドギャップが前記第2の半導体層及び前記第3の半導体層のバンドギャップよりも大きく、前記第3の半導体層のバンドギャップが、前記第2の半導体層のバンドギャップよりも小さく、前記第3の発光素子において、前記p型半導体層側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第3の半導体層が発光層として機能する、上記[5]に記載の発光装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高解像度のディスプレイの光源に適用可能な、微小なピッチで並べられた複数の発光領域を有する発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置の変形例の垂直断面図である。
図3図3は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置の垂直断面図である。
図4図4は、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子のバンド構造の模式図である。
図5図5は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置の変形例の垂直断面図である。
図6図6は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置の他の変形例の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1の垂直断面図である。発光装置1は、サファイア基板などの基板11と、基板11上に並んで配置された、各々が独立して発光する複数の発光素子10(10a~10f)を備える。
【0013】
また、発光装置1は、発光素子10a~10fに共通に用いられる、基板11上の単一の連続したn型半導体層12と、発光素子10a~10fに共通に用いられる、n型半導体層12上の単一の連続した発光層13と、発光素子10a~10fに共通に用いられる、発光層13上の単一の連続したp型半導体層14と、発光素子10a~10fに共通に用いられる、p型半導体層14上の単一の連続したコンタクト電極膜15と、発光素子10a~10fの各々に用いられる、コンタクト電極膜15上の複数のp側接合電極16a~16fとを備える。
【0014】
発光素子10a~10fは、それぞれ、n型半導体層12、発光層13、p型半導体層14、コンタクト電極膜15、p側接合電極16(16a~16f)が積層された構造を有する。
【0015】
また、発光装置1においては、発光素子10a~10fに共通に用いられるn型半導体層12に1つのn側接合電極17が接続されている。このため、発光素子10a~10fの各々にn側接合電極を接続する場合と比較して、発光装置1の占有面積を小さくすることができる。
【0016】
コンタクト電極膜15は、その面内方向への電流拡散が抑制されるように構成されている。そのため、コンタクト電極膜15のp側接合電極16a~16fの直下の部分では、大部分の電流がコンタクト電極膜15の厚さ方向に流れる。
【0017】
また、同様に、p型半導体層14も、その面内方向への電流拡散が抑制されるように構成されている。そのため、p型半導体層14のp側接合電極16a~16fの直下の部分では、大部分の電流がp型半導体層14の厚さ方向に流れる。
【0018】
それによって、p側接合電極16a~16fとn側接合電極17との間に電圧を印加したときに、発光層13のp側接合電極16a~16fの直下の部分であって、発光素子10a~10fの発光部である発光部13a~13fがそれぞれ独立して発光する。すなわち、発光層13の発光部13a~13f以外の部分は、ほとんど発光しない、又は発光部13a~13fの発光強度と比較して十分に小さい程度の強度でしか発光しない。
【0019】
コンタクト電極膜15及びp型半導体層14は、その厚さを調整することにより面内方向の電流拡散が抑制される程度の面内方向の電気抵抗を有する。面内方向の電気抵抗は、コンタクト電極膜15、p型半導体層14の材料の抵抗率や、コンタクト電極膜15、p型半導体層14の厚さにより決定される。
【0020】
発光装置1においては、n型半導体層12、発光層13、p型半導体層14、及びコンタクト電極膜15が発光素子10a~10fに共通に用いられるため、個々の発光素子に対してn型半導体層、発光層、p型半導体層、及びコンタクト電極が個別に設けられる場合と比較して、発光領域のピッチを狭くすることができる。
【0021】
p側接合電極16a~16fは、1枚の連続した金属膜上にフォトリソグラフィによりエッチングマスクを形成し、ドライエッチングによりエッチングマスクに覆われていない部分を除去することにより形成される。このドライエッチングを用いる方法によれば、リフトオフなどの他の方法と比較して微細なパターンを形成することができるため、p側接合電極16a~16fの間隔Dを小さく(例えば0.1μm以上、3μm以下)することができる。
【0022】
さらに、p側接合電極16a~16fの間隔を小さくことにより、発光装置1の複数の独立した発光領域である発光部13a~13fのピッチPをより小さく(例えば1μm以上、6μm以下)することができる。
【0023】
上記のドライエッチングを行う際には、連続膜であるコンタクト電極膜15がエッチングストッパーとして機能し、オーバーエッチングによりコンタクト電極膜15の下のp型半導体層14が削られることを防ぐ。例えば、p側接合電極16a~16fがTi/Auからなり、コンタクト電極膜15がITO(Indium Tin Oxide)又はIZO(Indium Zinc Oxide)からなる場合は、p側接合電極16a~16fのパターニングのためのドライエッチングのガスとしてCF+O混合ガスが用いられ、ITOやIZOがCF+O混合ガスに対して十分な耐性を有するため、コンタクト電極膜15がエッチングストッパーとして機能する。
【0024】
n型半導体層12、発光層13、p型半導体層14は、典型的には、窒化物半導体(V族元素として窒素を用いたIII-V族半導体)からなる。例えば、n型半導体層12、p型半導体層14はAlInGaN(x+y+z=1、z>0)からなり、発光層13はInGaN(v+w=1)層、GaN層をそれぞれウェル、バリアとする多重量子井戸構造を有する。
【0025】
p型半導体層14のシート抵抗は、面内方向の電流拡散を抑えるために、1000Ω/□(ohms per square)以上であることが好ましい。なお、p型半導体層14がコンタクト電極膜15とオーミックコンタクトする厚さや導電率を有するのであれば、p型半導体層14のシート抵抗は、面内方向の電流拡散を抑えられる範囲内で自由に設定することができ、例えば、発光領域のピッチなどに応じて10000Ω/□以上、100000Ω/□以上の値もとり得る。
【0026】
コンタクト電極膜15は、例えば、ITO又はIZOからなる。コンタクト電極膜15のシート抵抗は、面内方向の電流拡散を抑えるために、1000Ω/□以上であることが好ましい。なお、コンタクト電極膜15がp側接合電極16a~16f及びp型半導体層14とオーミックコンタクトする厚さや導電率を有するのであれば、コンタクト電極膜15のシート抵抗は、面内方向の電流拡散を抑えられる範囲内で自由に設定することができ、例えば、発光領域のピッチなどに応じて10000Ω/□以上、100000Ω/□以上の値もとり得る。p側接合電極16a~16fは、例えば、Ti/Au、Ta/Au、Cr/Au、Ni/Auなどからなる。n側接合電極17は、例えば、Ti/Auからなる。
【0027】
n型半導体層12の厚さは、例えば、1~10μmである。発光層13の厚さは、例えば、10~100nmである。p型半導体層14の厚さは、例えば、10~100nmである。コンタクト電極膜15の厚さは、例えば、5~100nmである。
【0028】
なお、図1には複数の発光素子10として発光素子10a~10fが図示されているが、発光装置1に含まれる複数の発光素子10の個数は特に限定されない。
【0029】
(変形例)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1の変形例である発光装置2の垂直断面図である。発光装置2は、コンタクト電極膜の構成において発光装置1と異なる。
【0030】
発光装置2は、発光装置1のコンタクト電極膜15の代わりに、コンタクト電極膜25を備える。コンタクト電極膜25においては、p側接合電極16a~16fの直下の領域251のシート抵抗よりも、領域251以外の領域252のシート抵抗の方が大きい。
【0031】
領域251のシート抵抗は、例えば、1000Ω/□以下であり、領域252のシート抵抗は、例えば、10000Ω/□以上である。なお、領域252によって領域251からの面内方向の電流拡散が抑えられるため、領域251のシート抵抗は小さくても問題はないが、例えば、コンタクト電極膜25がITO又はIZOからなる場合はおよそ100Ω/□以上に設定される。また、領域252のシート抵抗は、例えば、後述する酸素プラズマ処理による方法で領域252を形成する場合は、100000Ω/□以上も可能となる。
【0032】
このため、p側接合電極16a~16fの直下の領域251からその他の領域252への面内方向への電流拡散がより効果的に抑制され、発光層13の発光部13a~13f以外の部分の発光強度に対する発光部13a~13fの発光強度の比をより高めることができる。
【0033】
コンタクト電極膜25は、例えば、発光装置1において、p側接合電極16a~16fをマスクとして用いてITO又はIZOからなるコンタクト電極膜15に酸素プラズマ処理や酸素雰囲気でのアニール処理を施すことにより形成することができる。この場合、領域252は酸素プラズマ処理や酸素雰囲気でのアニール処理により過剰な酸素を含んでおり、自由電子が過剰酸素にトラップされてキャリア濃度が低減し、酸素プラズマ処理を施されていない領域251よりも電気抵抗が大きくなっている。すなわち、ITO又はIZOからなるコンタクト電極膜15において、領域252の酸素濃度が、領域251の酸素濃度よりも高いために、領域252の電気抵抗が領域251の電気抵抗よりも大きくなっている。
【0034】
(第1の実施の形態の効果)
上記の本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1、2によれば、n型半導体層12、発光層13、p型半導体層14、及びコンタクト電極膜15が発光素子10a~10fに共通に用いられるため、発光領域のピッチPを狭くすることができる。このため、発光装置1、2を高解像度のディスプレイの光源などに適用することができる。
【0035】
〔第2の実施の形態〕
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置3の垂直断面図である。発光素子3は、サファイア基板などの基板31と、基板31上に並んで配置された、それぞれ異なる色の光で独立して発光する複数の発光素子30(30a~30c)を備える。
【0036】
また、発光装置3は、発光素子30a~30cに共通に用いられる、基板10上の単一の連続したn型半導体層32と、発光素子30a~30cに共通に用いられる、n型半導体層32上の単一の連続した第1の半導体層33と、発光素子30a~30cに共通に用いられ、発光素子30aに第1のキャップ膜として用いられる、第1の半導体層33上の単一の連続した第1の中間層34と、発光素子30b、30cに共通に用いられる、第1の中間層34上の単一の連続した第2の半導体層35と、発光素子30b、30cに共通に用いられ、発光素子30bに第2のキャップ膜として用いられる、第2の半導体層35上の単一の連続した第2の中間層36と、発光素子30cに用いられる、第2の中間層36上の第3の半導体層37と、発光素子30cに用いられる、第3の半導体層37上の第3のキャップ膜38と、発光素子30a~30cに共通に用いられる、第1のキャップ膜、第2のキャップ膜、及び第3のキャップ膜38上の単一の連続したp型半導体膜39と、発光素子30aに用いられる、p型半導体膜39上のコンタクト電極膜40aと、発光素子30bに用いられる、p型半導体膜39上のコンタクト電極膜40bと、発光素子30cに用いられる、p型半導体膜39上のコンタクト電極膜40cと、発光素子30aに用いられる、コンタクト電極膜40a上のp側接合電極41aと、発光素子30bに用いられる、コンタクト電極膜40b上のp側接合電極41bと、発光素子30cに用いられる、コンタクト電極膜40c上のp側接合電極41cとを備える。
【0037】
発光素子30aは、n型半導体層32、第1の半導体層33、第1の中間層34、p型半導体膜39、コンタクト電極膜40a、p側接合電極41aが積層された構造を有する。
【0038】
発光素子30bは、n型半導体層32、第1の半導体層33、第1の中間層34、第2の半導体層35、第2の中間層36、p型半導体膜39、コンタクト電極膜40b、p側接合電極41bが積層された構造を有する。
【0039】
発光素子30cは、n型半導体層32、第1の半導体層33、第1の中間層34、第2の半導体層35、第2の中間層36、第3の半導体層37、キャップ膜38、p型半導体膜39、コンタクト電極膜40c、p側接合電極41cが積層された構造を有する。
【0040】
発光素子30a~30cで共通して用いられる単一の連続したn型半導体層32上には、n側接合電極42接続される。
【0041】
第1の中間層34のバンドギャップは、第1の半導体層33、第2の半導体層35、及び第3の半導体層37のバンドギャップよりも大きい。第2の中間層36のバンドギャップは、第2の半導体層35及び第3の半導体層37のバンドギャップよりも大きい。また、キャップ膜38のバンドギャップは、第3の半導体層37のバンドギャップよりも大きい。
【0042】
第1の半導体層33、第2の半導体層35、及び第3の半導体層37が多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造を有してもよい。その場合は、多重量子井戸を構成するウェル(井戸)のバンドギャップを第1の半導体層33、第2の半導体層35、及び第3の半導体層37のバンドギャップとする。
【0043】
一般的には、多重量子井戸構造の方が単一の量子井戸構造よりも効率が高いため、第1の半導体層33、第2の半導体層35、及び第3の半導体層37は多重量子井戸構造を有することが好ましい。一方で、単一の量子井戸構造の方が、応答速度(電圧印加してから発光するまでの時間)が大きいため、用途に応じて多重量子井戸構造と単一の量子井戸構造のいずれかを採用することができる。
【0044】
第2の半導体層35のバンドギャップは、第1の半導体層33のバンドギャップよりも小さく、第3の半導体層37のバンドギャップは、第2の半導体層35のバンドギャップよりも小さい。
【0045】
p型半導体膜39は、発光装置1のp型半導体層14と同様に、その面内方向への電流拡散が抑制されるように構成されている。そのため、p型半導体膜39のコンタクト電極膜40a~40cの直下の部分では、大部分の電流がp型半導体膜39の厚さ方向に流れる。
【0046】
発光素子30aにおいて、p型半導体膜39側が陽極、n型半導体層32側が陰極となるように、n側接合電極42とp側接合電極41aの間に電圧を印加することにより、第1の半導体層33のコンタクト電極膜40aの直下の部分33aが発光層として機能し、発光する。
【0047】
発光素子30bにおいて、p型半導体膜39側が陽極、n型半導体層32側が陰極となるように、n側接合電極42とp側接合電極41bの間に電圧を印加することにより、第2の半導体層35のコンタクト電極膜40bの直下の部分35bが発光層として機能し、発光する。
【0048】
発光素子30cにおいて、p型半導体膜39側が陽極、n型半導体層32側が陰極となるように、n側接合電極42とp側接合電極41cの間に電圧を印加することにより、第3の半導体層37のコンタクト電極膜40cの直下の部分37cが発光層として機能し、発光する。
【0049】
発光装置3においては、上述のように、それぞれ単一の連続した膜であるn型半導体層32、第1の半導体層33、第1の中間層34、及びp型半導体膜39は、発光素子30a~30cに共通に用いられる。また、それぞれ単一の連続した膜である第2の半導体層35及び第2の中間層36は、発光素子30b、30cに共通に用いられる。このため、個々の発光素子が分離して設けられる場合と比較して、発光領域のピッチを狭くすることができる。
【0050】
コンタクト電極膜40aとコンタクト電極膜40bとの水平方向の間隔及びコンタクト電極膜40bとコンタクト電極膜40cとの水平方向の間隔、すなわち発光素子30aの発光層である第1の半導体層33の部分33aと発光素子30bの発光層である第2の半導体層35の部分35bとの水平方向の間隔及び発光素子30bの発光層である第2の半導体層35の部分35bと発光素子30cの発光層である第3の半導体層37の部分37cとの水平方向の間隔である間隔Dは、例えば、1μm以上、3μm以下である。
【0051】
また、発光装置3の製造工程においては、発光素子30aと発光素子30bが設けられる領域のキャップ膜38と第3の半導体層37がエッチングにより除去され、発光素子30aが設けられる領域の第2の中間層36と第2の半導体層35がエッチングにより除去される。そのため、図3に示されるように、発光素子30a、発光素子30b、発光素子30cは階段状に高さが異なる。
【0052】
この発光素子間の段差の大きさS(発光素子30aと発光素子30b、又は発光素子30bと発光素子30cにおけるp型半導体膜39の表面の高さの差)は、例えば、0.01~1μmである。なお、この発光素子間の段差の大きさSは、当然ながら、各々の発光素子が分離して設けられる場合の発光素子間の溝の深さよりも小さい。
【0053】
第1の中間層34は、発光素子30aが設けられる領域の第2の半導体層35を反応性イオンエッチング(RIE)などのエッチングにより除去する際のエッチングストッパーとして機能する。また、第2の中間層36は、発光素子30bが設けられる領域の第3の半導体層37をRIEなどのエッチングにより除去する際のエッチングストッパーとして機能する。第1の中間層34と第2の中間層36のエッチングストッパーとしての機能をより確実に発揮するためには、第1の中間層34の厚さが、第2の半導体層35の厚さの1/3以上であり、第2の中間層36の厚さが、第3の半導体層37の厚さの1/3以上であることが好ましい。
【0054】
n型半導体層32は、ドナーを含むn型の半導体からなる。p型半導体膜39は、アクセプターを含むp型の半導体からなる。
【0055】
第1の半導体層33、第1の中間層34、第2の半導体層35、第2の中間層36、第3の半導体層37、キャップ膜38は、アンドープ(意図的に添加されたドーパントを含まない)又はn型の半導体からなるが、ドーパントの拡散による発光特性への影響を抑えるため、アンドープの半導体からなることが好ましい。
【0056】
典型的には、n型半導体層32、第1の半導体層33、第1の中間層34、第2の半導体層35、第2の中間層36、第3の半導体層37、キャップ膜38、p型半導体膜39は窒化物半導体(V族元素として窒素を用いたIII-V族半導体)からなる。
【0057】
例えば、n型半導体層32、第1の中間層34、第2の中間層36、キャップ膜38、及びp型半導体膜39はAlInGaN(x+y+z=1、z>0)からなり、第1の半導体層33、第2の半導体層35、及び第3の半導体層37は、InGaN(v+w=1)層、GaN層をそれぞれウェル、バリアとする多重量子井戸構造を有する。第2の半導体層35のIn組成vは、第1の半導体層33のIn組成vよりも大きく、第3の半導体層37のIn組成vは、第2の半導体層35のIn組成vよりも大きい。
【0058】
典型的には、発光素子30a、発光素子30b、発光素子30cの発光色は、それぞれ青、緑、赤である。本実施の形態においては、波長が430~480nmである光の色を青、波長が500~550nmである光の色を緑、波長が600~680nmである光の色を赤とする。
【0059】
発光素子30aにおいて青の光を発するための第1の半導体層33は、例えば、InGaN(v+w=1、0.14≦v≦0.22)層、GaN層をそれぞれウェル、バリアとする多重量子井戸構造を有する。発光素子30bにおいて緑の光を発するための第2の半導体層35は、例えば、InGaN(v+w=1、0.26≦v≦0.33)層、GaN層をそれぞれウェル、バリアとする多重量子井戸構造を有する。発光素子30cにおいて赤の光を発するための第3の半導体層37は、例えば、InGaN(v+w=1、0.39≦v≦0.48)層、GaN層をそれぞれウェル、バリアとする多重量子井戸構造を有する。
【0060】
各々の発光部におけるn型半導体層32の厚さは、例えば、1~5μmである。第1の半導体層33、第2の半導体層35、第3の半導体層37の厚さは、例えば、6~100nmである。第1の中間層34、第2の中間層36の厚さは、例えば、2~100nmである。キャップ膜38の厚さは、例えば、5~10nmである。p型半導体膜39の厚さは、例えば、10~200nmである。
【0061】
p型半導体膜39のシート抵抗は、面内方向の電流拡散を抑えるために、1000Ω/□以上であることが好ましい。なお、p型半導体膜39がコンタクト電極膜40a~40cとオーミックコンタクトする厚さや導電率を有するのであれば、p型半導体膜39のシート抵抗は、面内方向の電流拡散を抑えられる範囲内で自由に設定することができ、例えば、発光領域のピッチなどに応じて10000Ω/□以上、100000Ω/□以上の値もとり得る。
【0062】
コンタクト電極膜40a~40cは、例えば、ITO又はIZOからなる。p側接合電極41a~41cは、例えば、Ti/Auからなる。n側接合電極42は、例えば、Ti/Alの積層体からなる。
【0063】
図4は、発光素子30cのバンド構造の模式図である。この模式図を用いて、推測される発光素子30cの発光の仕組みについて説明する。第1の半導体層33、第2の半導体層35、及び第3の半導体層37は、典型的には多重量子井戸構造を有するが、図4においては、それぞれ均一のバンドギャップを持つものとして図示する。
【0064】
発光素子30cにおいて、p型半導体膜39側が陽極、n型半導体層32側が陰極となるように、n側接合電極42とp側接合電極41cの間に電圧を印加することにより、n側接合電極42からは電子が、p側接合電極41cからは正孔が積層構造体に注入される。
【0065】
p側接合電極41cから注入され、第3の半導体層37中に進入した正孔は、そのほとんどが第3の半導体層37中に留まる。これは、第3の半導体層37から見た第2の中間層36の障壁の高さが高く、この障壁を越えることが困難であるからである。
【0066】
一方、n側接合電極42から注入され、第1の半導体層33中に進入した電子は、比較的容易に第3の半導体層37まで移動することができる。これは、第1の半導体層33から見た第1の中間層34の障壁の高さや第2の半導体層35から見た第2の中間層36の障壁の高さが、第3の半導体層37から見た第2の中間層36の障壁の高さよりも低いことや、電子の移動度が正孔の移動度よりも高いことによる。
【0067】
以上の理由により、第1の半導体層33、第2の半導体層35、第3の半導体層37のうち、p側接合電極41cに最も近い第3の半導体層37において電子と正孔が再結合し、発光が生じる。
【0068】
また、発光素子30bにおいては、発光素子30cと同様の理由により、第1の半導体層33、第2の半導体層35のうち、p側接合電極41bに最も近い第2の半導体層35において電子と正孔が再結合し、発光が生じる。
【0069】
第2の中間層36のバンドギャップは、第1の中間層34のバンドギャップよりも小さいことが好ましい。これにより、電子を第3の半導体層37に注入する効率が上がる。一方で、第2の中間層36のバンドギャップが第1の中間層34のバンドギャップより小さくても、第1の半導体層33よりも大きい程度であれば、第3の半導体層37中の正孔が第2の中間層36の障壁を越えて第2の半導体層35へ移動することはほとんどないと考えられる。
【0070】
(変形例1)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置3の変形例である発光装置4の垂直断面図である。発光装置4は、各発光素子のコンタクト電極膜が一枚の連続した膜である点において発光装置3と異なる。
【0071】
発光装置4の発光素子30aのコンタクト電極膜40a、発光素子30bのコンタクト電極膜40b、発光素子30cのコンタクト電極膜40cは、単一の連続した電極膜40である。
【0072】
電極膜40は、発光装置1のコンタクト電極膜15と同様に、その面内方向への電流拡散が抑制されるように構成されている。そのため、電極膜40のコンタクト電極膜40a~40cの直下の部分では、大部分の電流が電極膜40の厚さ方向に流れる。
【0073】
電極膜40は、ドライエッチングを用いてp側接合電極41a~41cをパターニングする際のエッチングストッパーとして機能し、オーバーエッチングにより電極膜40の下のp型半導体膜39が削られることを防ぐ。例えば、p側接合電極41a~41cがTi/Auからなり、電極膜40(コンタクト電極膜40a~40c)がITO又はIZOからなる場合は、p側接合電極41a~41cのパターニングのためのドライエッチングのガスとしてCF+O混合ガスが用いられ、ITOやIZOがCF+O混合ガスに対して十分な耐性を有するため、電極膜40がエッチングストッパーとして機能する。
【0074】
このため、電極膜40を有する発光装置4においては、p側接合電極41a~41cをRIEなどのドライエッチングによってパターニングすることができ、p側接合電極41a~41cの間隔を小さくすることができる。
【0075】
電極膜40のシート抵抗は、面内方向の電流拡散を抑えるために、1000Ω/□以上であることが好ましい。なお、電極膜40がp側接合電極41a~41c及びp型半導体膜39とオーミックコンタクトする厚さや導電率を有するのであれば、電極膜40のシート抵抗は、面内方向の電流拡散を抑えられる範囲内で自由に設定することができ、例えば、発光領域のピッチなどに応じて10000Ω/□以上、100000Ω/□以上の値もとり得る。
【0076】
(変形例2)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置3の他の変形例である発光装置5の垂直断面図である。発光装置5は、2つの発光素子30a、30bを備える点において発光装置3と異なる。
【0077】
発光装置5は、基板31と、基板31上に並んで配置された、それぞれ異なる色の光で独立して発光する発光素子30a及び発光素子30bを備える。例えば、発光素子30aの発光色は、青もしくは青から緑までの波長を有する色であり、発光素子30bの発光色は、赤もしくは赤から緑(例えば黄色)の波長を有する色である。
【0078】
また、発光装置3は、発光素子30a、30bに共通に用いられる、基板10上の単一の連続したn型半導体層32と、発光素子30a、30bに共通に用いられる、n型半導体層32上の単一の連続した第1の半導体層33と、発光素子30a、30bに共通に用いられ、発光素子30aに第1のキャップ膜として用いられる、第1の半導体層33上の単一の連続した第1の中間層34と、発光素子30bに用いられる、第1の中間層34上の第2の半導体層35と、発光素子30bに第2のキャップ膜として用いられる、第2の半導体層35上の第2の中間層36と、発光素子30a、30bに共通に用いられる、第1のキャップ膜と第2のキャップ膜上の単一の連続したp型半導体膜39と、発光素子30aに用いられる、p型半導体膜39上のコンタクト電極膜40aと、発光素子30bに用いられる、p型半導体膜39上のコンタクト電極膜40bと、発光素子30aに用いられる、コンタクト電極膜40a上のp側接合電極41aと、発光素子30bに用いられる、コンタクト電極膜40b上のp側接合電極41bとを備える。
【0079】
発光素子30aは、n型半導体層32、第1の半導体層33、第1の中間層34、p型半導体膜39、コンタクト電極膜40a、p側接合電極41aが積層された構造を有する。
【0080】
発光素子30bは、n型半導体層32、第1の半導体層33、第1の中間層34、第2の半導体層35、第2の中間層36、p型半導体膜39、コンタクト電極膜40b、p側接合電極41bが積層された構造を有する。
【0081】
第1の中間層34のバンドギャップは、第1の半導体層33及び第2の半導体層35のバンドギャップよりも大きい。また、キャップ膜38のバンドギャップは、第2の半導体層35のバンドギャップよりも大きい。なお、第1の半導体層33及び第2の半導体層35が多重量子井戸構造を有する場合は、ウェルのバンドギャップを第1の半導体層33及び第2の半導体層35のバンドギャップとする。
【0082】
第2の半導体層35のバンドギャップは、第1の半導体層33のバンドギャップよりも小さい。
【0083】
発光素子30aにおいて、p型半導体膜39側が陽極、n型半導体層32側が陰極となるように、n側接合電極42とp電極19の間に電圧を印加することにより、第1の半導体層33のコンタクト電極膜40aの直下の部分33aが発光層として機能し、発光する。
【0084】
発光素子30bにおいてp型半導体膜39側が陽極、n型半導体層32側が陰極となるように、n側接合電極42とp電極19の間に電圧を印加することにより、第2の半導体層35のコンタクト電極膜40bの直下の部分35bが発光層として機能し、発光する。
【0085】
発光装置5においては、上述のように、それぞれ単一の連続した膜であるn型半導体層32、第1の半導体層33、第1の中間層34、及びp型半導体膜39は、発光素子30a、30bに共通に用いられる。このため、個々の発光素子が分離して設けられる場合と比較して、発光領域のピッチを狭くすることができる。
【0086】
また、発光装置4の電極膜40と同様に、発光装置5の発光素子30aのコンタクト電極膜40a、発光素子30bのコンタクト電極膜40bは、単一の連続した電極膜であってもよい。この場合の効果も、発光装置4の電極膜40と同様である。
【0087】
(第2の実施の形態の効果)
上記の本発明の第2の実施の形態に係る発光装置3~5によれば、n型半導体層32、第1の半導体層33、第1の中間層34、及びp型半導体膜39が発光素子30a~30c又は発光素子30a、30bに共通に用いられるため、発光領域のピッチを狭くすることができる。このため、発光装置3~5を高解像度のディスプレイの光源などに適用することができる。
【0088】
また、上記第2の実施の形態によれば、下記[1]~[4]の発光装置を提供することができる。
【0089】
[1]1枚の基板上に並んで配置された、異なる色の光で独立して発光する第1の発光素子と第2の発光素子を備えた発光装置であって、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記基板上の単一の連続したn型半導体層と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記n型半導体層上の単一の連続した第1の半導体層と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられ、前記第1の発光素子に第1のキャップ膜として用いられる、前記第1の半導体層上の単一の連続した第1の中間層と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記第1の中間層上の第2の半導体層と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記第2の半導体層上の第2のキャップ層と、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子に共通に用いられる、前記第1のキャップ膜と前記第2のキャップ膜上の単一の連続したp型半導体膜と、
前記第1の発光素子に用いられる、前記p型半導体膜上の第1のコンタクト電極膜と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記p型半導体膜上の第2のコンタクト電極膜と、
前記第1の発光素子に用いられる、前記第1のコンタクト電極膜上の第1のp側接合電極と、
前記第2の発光素子に用いられる、前記第2のコンタクト電極膜上の第2のp側接合電極と、
を備え、
前記第1の中間層のバンドギャップが、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の半導体層のバンドギャップが、前記第1の半導体層のバンドギャップよりも小さく、
前記p型半導体膜が、その面内方向への電流拡散が抑制されるように構成され、
前記第1の発光素子において、前記p型半導体層側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第1の半導体層が発光層として機能し、
前記第2の発光素子において、前記p型半導体層側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第2の半導体層が発光層として機能する、
発光装置。
[2]前記第1のコンタクト電極膜と前記第2のコンタクト電極膜が単一の連続した膜であり、その面内方向への電流拡散が抑制されるように構成された、
上記[1]に記載の発光装置。
[3]前記基板上に前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子と並んで配置され、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子と異なる色の光で独立して発光する第3の発光素子をさらに備え、
前記n型半導体層、前記第1の半導体層、前記第1の中間層、及び前記第2の半導体層が、単一の連続した膜として前記第3の発光素子にも共通で用いられ、
前記第2の半導体層上に、前記第2の発光素子と前記第3の発光素子に共通に用いられ、前記第2の発光素子に前記第2のキャップ膜として用いられる、単一の連続した第2の中間層が設けられ、
前記第2の中間層上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3の半導体層が設けられ、
前記第3の半導体層上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のキャップ膜が設けられ、
前記p型半導体膜が、前記第1の発光素子、前記第2の発光素子、及び前記第3の発光素子に共通に用いられる、前記第1のキャップ膜、前記第2のキャップ膜、及び第3のキャップ膜上の単一の連続した膜であり、
前記p型半導体膜上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のコンタクト電極膜が設けられ、
前記第3のコンタクト電極膜上に、前記第3の発光素子に用いられる、第3のp側接合電極が設けられ、
前記第1の中間層のバンドギャップが、前記第1の半導体層、前記第2の半導体層、及び前記第3の半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第2の中間層のバンドギャップが前記第2の半導体層及び前記第3の半導体層のバンドギャップよりも大きく、
前記第3の半導体層のバンドギャップが、前記第2の半導体層のバンドギャップよりも小さく、
前記第3の発光素子において、前記p型半導体層側が陽極、前記n型半導体層側が陰極となるように電圧を印加することにより、前記第3の半導体層が発光層として機能する、
上記[1]に記載の発光装置。
[4]前記第1のコンタクト電極膜、前記第2のコンタクト電極膜、及び前記第3のコンタクト電極膜が単一の連続した膜であり、その面内方向への電流拡散が抑制されるように構成された、
上記[3]に記載の発光装置。
【0090】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0091】
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0092】
1、2 発光装置
10a~10f 発光素子
11 基板
12 n型半導体層
13 発光層
14 p型半導体層
15、25 コンタクト電極膜
16a~16f p側接合電極
251、252 領域
3、4、5 発光装置
30a~30c 発光素子
31 基板
32 n型半導体層
33 第1の半導体層
34 第1の中間層
35 第2の半導体層
36 第2の中間層
37 第3の半導体層
38 キャップ膜
39 p型半導体膜
40 電極膜
40a~40c コンタクト電極膜
41a~41c p側接合電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6