(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】診断装置、蓄電装置、診断方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20230523BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20230523BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/00
H02J7/00 S
H02J7/00 Q
(21)【出願番号】P 2020509214
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2019013269
(87)【国際公開番号】W WO2019189405
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2018059803
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今中 佑樹
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-014564(JP,A)
【文献】特開昭64-014832(JP,A)
【文献】特開昭63-213229(JP,A)
【文献】特開2018-038035(JP,A)
【文献】特開2001-045648(JP,A)
【文献】特開2019-071232(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0067835(KR,A)
【文献】米国特許第06020811(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0218676(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0347194(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/00-31/01、
31/24-31/25、
31/327-31/34、
31/50-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子の電流を遮断する遮断装置のダメージを診断する診断装置であって、
外部短絡時の短絡電流に基づいて、前記遮断装置のダメージを診断
し、
外部短絡時の短絡電流、外部短絡の回数、短絡電流が前記遮断装置に流れた時間のうち、短絡電流を含む、少なくとも2つの要素に基づいて、前記遮断装置のダメージを診断し、
前記遮断装置は、電流の遮断及び遮断からの復帰が可能であり、
外部短絡時の短絡電流と、短絡電流が前記遮断装置に流れた時間とから、前記遮断装置が復帰するまでに休止する休止時間を設定する、診断装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の診断装置であって、
前記蓄電素子は、リチウムイオン二次電池である、診断装置。
【請求項3】
蓄電素子の電流を遮断する遮断装置のダメージを診断する診断装置であって、
短絡を検出してから遮断するまでの第1時間の短絡電流と、短絡を遮断してから収束するまでの第2時間の短絡電流に基づいて、前記遮断装置のダメージを診断する、診断装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の診断装置であって、
前記遮断装置の前記第1時間の発熱量と前記遮断装置の前記第2時間の発熱量とに基づいて、前記遮断装置のダメージを診断する、診断装置。
【請求項5】
蓄電素子の電流を遮断する遮断装置のダメージを診断する診断装置であって、
外部短絡時の短絡電流に基づいて、前記遮断装置のダメージを診断し、
前記遮断装置は、電流の遮断及び遮断からの復帰が可能であり、
外部短絡時の短絡電流と、短絡電流が前記遮断装置に流れた時間とから、前記遮断装置が復帰するまでに休止する休止時間を設定する、診断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の診断装置であって、
前記外部短絡は、前記蓄電素子を収容する収容体に設けられた2つの外部端子の短絡である、診断装置。
【請求項7】
蓄電素子と、
外部短絡時に蓄電素子の電流を遮断する遮断装置と、
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の診断装置と、
前記蓄電素子と前記診断装置を収容する収容体と、
前記収容体に設けられた外部端子と、を含む蓄電装置。
【請求項8】
外部短絡時に蓄電素子の電流を遮断する遮断装置のダメージを診断する診断方法であって、外部短絡時の短絡電流に基づいて、前記遮断装置のダメージを診断し、
前記遮断装置は、電流の遮断及び遮断からの復帰が可能であり、
外部短絡時の短絡電流と、短絡電流が前記遮断装置に流れた時間とから、前記遮断装置が復帰するまでに休止する休止時間を設定する、診断方法。
【請求項9】
蓄電素子の電流を遮断する遮断装置のダメージを診断する診断方法であって、
短絡を検出してから遮断するまでの第1時間の短絡電流と、短絡を遮断してから収束するまでの第2時間の短絡電流に基づいて、前記遮断装置のダメージを診断する、診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断装置のダメージを診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリは、外部端子の外部短絡により、短絡電流が流れる。外部短絡による短絡電流は、バッテリの許容電流よりも大きいことから、外部短絡を検出した場合、リレー等の遮断装置を用いて、電流を遮断している(例えば、引用文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部短絡による短絡電流により、遮断装置はダメージを受ける。従前は、遮断装置の故障の発生を事後的に診断(遮断装置が正常に動作するか否かを診断)していた。しかし、外部短絡による遮断装置のダメージを診断するという考えがなかった。
本発明は、外部短絡による遮断装置のダメージを診断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
蓄電素子の電流を遮断する遮断装置のダメージを診断する診断装置であって、外部短絡時の短絡電流に基づいて、前記遮断装置のダメージを診断する。外部短絡時は、短絡を検出して遮断するまでの第1時間と、短絡を遮断してから収束するまでの第2時間を含む。
【0006】
本技術は、蓄電装置、遮断装置のダメージの診断方法に適用することが出来る。
【発明の効果】
【0007】
診断装置は、外部短絡による、遮断装置のダメージを把握することが出来る。そのため、診断装置は、例えば、遮断装置のダメージに基づいて、遮断装置が故障することなく使用し続けることが可能か否かなど、安全性に関する判断を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】(a)は
図2に示す二次電池の平面図、(b)はそのA-A線断面図
【
図4】
図2の本体内に二次電池を収容した状態を示す斜視図
【
図5】
図4の二次電池にバスバーを装着した状態を示す斜視図
【
図9】外部短絡の監視処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
蓄電素子の電流を遮断する遮断装置のダメージを診断する診断装置は、外部短絡時の短絡電流に基づいて前記遮断装置のダメージを診断する。診断装置は、外部短絡による、遮断装置のダメージを把握することが出来る。そのため、診断装置は、例えば、遮断装置のダメージに基づいて、遮断装置が故障することなく使用し続けることが可能か否かなど、安全性に関する判断を行うことが出来る。
【0010】
診断装置は、外部短絡時の短絡電流、外部短絡の回数、短絡電流が前記遮断装置に流れた時間のうち、短絡電流を含む、少なくとも2つの要素に基づいて、前記遮断装置のダメージを診断する、ことが好ましい。診断装置は、ダメージの診断要素に、短絡電流だけでなく、外部短絡の回数や、短絡電流が遮断装置に流れた時間を含めているので、ダメージの蓄積を診断できる。
【0011】
前記遮断装置は、電流の遮断及び遮断からの復帰が可能であり、外部短絡時の短絡電流と、短絡電流が前記遮断装置に流れた時間から、前記遮断装置が復帰するまでに休止する休止時間を設定する、ことが好ましい。休止時間の経過後に、遮断装置の復帰動作を行うことで、遮断装置の故障を抑制できる。遮断装置がリレーの場合、短絡電流により発熱した接点が、復帰動作により固着することを抑制できる。
【0012】
前記蓄電素子は、リチウムイオン二次電池でもよい。リチウムイオン二次電池は、鉛蓄電池に比べて内部抵抗が小さく、外部短絡時に大電流が流れ易い。そのため、リチウムイオン二次電池に使用される遮断装置は、ダメージを受け易く、ダメージを受けた遮断装置が使用され続けることがある。本発明を適用することで、遮断装置のダメージの診断が可能となり、診断装置は、ダメージに応じた処置を行うことが可能となる。
【0013】
蓄電素子の電流を遮断する遮断装置のダメージを診断する診断装置は、短絡を検出してから遮断するまでの第1時間の短絡電流と、短絡を遮断してから収束するまでの第2時間の短絡電流に基づいて、前記遮断装置のダメージを診断する。第1時間の短絡電流と第2時間の短絡電流に基づいて、遮断装置のダメージを診断するから、いずれか一方の期間の短絡電流だけでダメージを判断する場合に比べて、遮断装置のダメージを精度よく判断することが出来る。
【0014】
前記遮断装置の前記第1時間の発熱量と前記遮断装置の前記第2時間の発熱量とに基づいて、前記遮断装置のダメージを診断してもよい。遮断装置の発熱によるダメージを診断することができる。
【0015】
<実施形態1>
1.バッテリBT1の構造説明
図1は車両VHの側面図、
図2はバッテリBT1の分解斜視図である。車両VHは、エンジン駆動車である。車両VHは、蓄電装置であるバッテリBT1を備えている。バッテリBT1は、
図2に示すように、収容体1と、その内部に収容される組電池40と、回路基板ユニット31と、を備える。バッテリBT1は、車両VHに搭載されたエンジン100の始動に用いられる。
【0016】
収容体1は、合成樹脂材料からなる本体3と蓋体4とを備えている。本体3は有底筒状で、平面視矩形状の底面部5と、その4辺から立ち上がって筒状となる4つの側面部6とを備えている。4つの側面部6によって上端部分に上方開口部7が形成されている。
【0017】
蓋体4は、平面視矩形状で、その4辺から下方に向かって枠体8が延びている。蓋体4は、本体3の上方開口部7を閉鎖する。蓋体4の上面には平面視略T字形の突出部9を有する。蓋体4の上面には、突出部9を有していない2箇所のうち、一方の隅部に正極の外部端子10が固定され、他方の隅部に負極の外部端子11が固定されている。収容体1は、二次電池2と回路基板ユニット31を収容している。回路基板ユニット31は二次電池2の上部に配置されている。
【0018】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、二次電池2は、直方体形状のケース12内に電極体13を非水電解質と共に収容したものである。ケース12は、ケース本体14と、その上方の開口部を閉鎖するカバー15とを有している。
【0019】
電極体13は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状で、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体14に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0020】
正極要素には正極集電体16を介して正極端子17が、負極要素には負極集電体18を介して負極端子19がそれぞれ接続されている。正極集電体16及び負極集電体18は、平板状の台座部20と、この台座部20から延びる脚部21とからなる。台座部20には貫通孔が形成されている。脚部21は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子17及び負極端子19は、端子本体部22と、その下面中心部分から下方に突出する軸部23とからなる。そのうち、正極端子17の端子本体部22と軸部23とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子19においては、端子本体部22がアルミニウム製で、軸部23が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子17及び負極端子19の端子本体部22は、カバー15の両端部に絶縁材料からなるガスケット24を介して配置され、このガスケット24から外方へ露出されている。
【0021】
前記構成からなる二次電池2は、
図4に示すように、複数個(例えば12個)が幅方向に並設された状態で本体3内に収容されている。本体3の一端側から他端側(矢印Y1からY2方向)に向かって3つの二次電池2を1組として、同一組では隣り合う二次電池2,2の端子極性が同じになり、隣り合う組同士では隣り合う二次電池2の端子極性が逆に配置されている。最も矢印Y1側に位置する3つの二次電池2(第1組)では、矢印X1側が負極、矢印X2側が正極となっている。第1組に隣接する3つの二次電池2(第2組)では、矢印X1側が正極、矢印X2側が負極となっている。第2組に隣接する第3組では、第1組と同じ配置となっており、第3組に隣接する第4組では第2組と同じ配置となっている。
【0022】
図5に示すように、正極端子17及び負極端子19には、導電部材としての端子用バスバー26~30が溶接により接続されている。第1組の矢印X2側では、正極端子17群が第1バスバー26によって接続されている。第1組と第2組の間では、矢印X1側で第1組の負極端子19群と第2組の正極端子17群とが第2バスバー27によって接続されている。第2組と第3組の間では、矢印X2側で第2組の負極端子19群と第3組の正極端子17群とが第3バスバー28によって接続されている。第3組と第4組の間では、矢印X1側で第3組の負極端子19群と第4組の正極端子17群とが第4バスバー29によって接続されている。第4組の矢印X2側では、負極端子19群が第5バスバー30によって接続されている。
【0023】
二次電池2は同組では並列、異なる組では直列である。従って、12個の二次電池2は3並列、4直列である。二次電池2は、例えば、リチウムイオン二次電池である。
【0024】
第1組の正極端子群を接続する第1バスバー26は、正極の外部端子10に接続されており、第4組の負極端子群を接続する第5バスバー30は、負極の外部端子11に接続されている。
【0025】
2.バッテリBT1の電気的構成の説明
図6は、バッテリBT1の電気的構成を示すブロック図である。バッテリBT1は、組電池40と、遮断装置45と、電流センサ47と、管理装置50と、警告ランプ61と、外部スイッチ63と、を含む。
【0026】
組電池40は、直列接続された4組の二次電池2を備えている。遮断装置45、組電池40及び電流センサ47は、通電路43P、43Nを介して、直列に接続されている。遮断装置45を組電池40の正極側、電流センサ47を組電池40の負極側に配置しており、遮断装置45は通電路43Pを介して正極の外部端子10に接続され、電流センサ47は通電路43Nを介して負極の外部端子11に接続されている。
【0027】
遮断装置45は回路基板ユニット31上に配置されている。遮断装置45は、機械的接点を有するリレーであり、組電池40の通電路43Pを開放することで、電流を遮断する。
【0028】
電流センサ47は、回路基板ユニット31上に配置されている。電流センサ47は、信号線を介して、管理装置50に接続されており、電流センサ47の計測値Iは、管理装置50に対して入力される。
【0029】
管理装置50は、回路基板ユニット31上に配置されている。管理装置50は、処理部51と、電圧計測部55と、通信部59と、を含む。管理装置50が「診断装置」の一例である。
【0030】
電圧計測部55は、各二次電池2の電圧V1~V4、及び組電池40の総電圧Vtを計測する。電圧計測部55は、計測した電圧V1~V4、Vtのデータを処理部51に出力する。
【0031】
Vt=V1+V2+V3+V4・・・・・・(0)式
【0032】
処理部51は、CPU(中央処理装置)52と不揮発性のメモリ53と、を含む。処理部51は、組電池40の状態を監視する。組電池40の総電圧Vt、各二次電池2の電池電圧V1~V4が使用範囲内であるか否かを監視する。電流センサ47により計測される計測値Iに基づいて、組電池40の電流Iが制限値内であるか否かを監視する。
【0033】
メモリ53には、処理部51が組電池40の状態監視や、後述する外部短絡の監視処理(
図9)などを実行するための各データが記憶されている。
【0034】
図7は、車載時におけるバッテリBT1のブロック図である。バッテリBT1の外部端子10、11には、IGスイッチ(イグニッションスイッチ)115を介して、セルモータ110が接続されている。セルモータ110は、車両VHに搭載されたエンジン100の始動装置である。IGスイッチ115がオンすると、バッテリBT1からセルモータ110に電流が流れて、セルモータ110が回転する。これにより、クランクシャフトが回転し、エンジン100が始動する。
【0035】
車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)120は、車両VHに搭載されており、エンジン100の動作状態、IGスイッチ115の状態などを監視する。
【0036】
管理装置50は、通信線Lを介して、車両ECU120との間で通信可能に接続される。管理装置50は、通信線Lによる通信により、車両ECU120からエンジン100の動作状態やIGスイッチ115の動作状態の情報を受け取ることが出来る。
【0037】
3.外部短絡時の電流遮断と遮断装置のダメージ診断
車両VHに対するバッテリBT1の取付作業時や交換作業時に、バッテリBT1の2つの外部端子10、11に、金属製の工具などが接触してバッテリBT1が外部短絡する場合がある。外部短絡が発生すると、
図8に示す一点鎖線の経路で、短絡電流Isが流れる。短絡電流Isは、一例として5000A程度の大電流である。外部短絡の発生から、遮断装置45が電流を遮断するまでの間、遮断装置45には短絡電流Isが流れ、遮断装置45はダメージを受ける。
【0038】
図9は、管理装置50による外部短絡の監視処理の流れを示すフローチャートである。遮断装置45は、バッテリBT1に異常がない場合(外部短絡などが発生していない場合)、クローズ状態に制御されている。
【0039】
外部短絡の監視処理は、S10~S100の10ステップから構成されている。CPU52は、まず、外部短絡の有無を検出する処理を行う(S10)。外部短絡の有無は、電流センサ47の計測値Iを、閾値Xと比較することにより、検出することが出来る。
【0040】
閾値Xは、通常使用時に計測される電流の最大値(例えばクランキング電流)よりも大きな値であり、一例として2000Aである。
【0041】
図10は、外部短絡発生時の電流の波形を示している。
図10に示すt1は、外部短絡の検出時を示す。CPU52は、外部短絡を検出すると、電流遮断処理を行う(S20)。CPU52は、遮断装置45に遮断指令を送り、遮断装置45をクローズからオープンに切り換える。
【0042】
図10に示すt2は、遮断装置45がクローズからオープンに切り換わるタイミングを示している。CPU52は、遮断装置45をクローズからオープンに切り換えることで、外部短絡による短絡電流Isを遮断装置45により遮断することが出来る。
図10に示す、時刻t1~t2は、外部短絡の検出から遮断までの第1時間Tsである。
【0043】
CPU52は、電流遮断処理後、外部短絡のデータを取得する(S30)。外部短絡のデータは、第1時間Tsと、短絡電流Isの大きさである。
【0044】
短絡電流Isは電流センサ47により計測することが出来る。第1時間Tsは、「短絡電流Isが遮断装置45に流れた時間」である。第1時間Tsは、外部短絡の検出後、CPU52が遮断装置45に遮断指令を送るまでの反応時間に、遮断装置45の動作時間(遮断指令を受けてから接点が実際に開くまでの時間)を加えた時間である。第1時間Tsは経験値を用いることが出来る。第1時間Tsは、電流センサ47により計測される電流波形から求めてもよい。
【0045】
その後、CPU52は、外部短絡の履歴を更新する処理を行う(S40)。外部短絡の履歴は、以下の3つの情報により構成されており、メモリ53に記録される。
【0046】
a)外部短絡の回数(累積回数)N
b)各回の短絡電流Isの大きさ
c)各回の短絡電流の第1時間Ts
【0047】
外部短絡の履歴更新後、CPU52は、遮断装置45が再使用可能か否かの判定を行う(S50)。遮断装置45が再使用可能か否かの判断は、外部短絡の回数Nと短絡電流Isの大きさにより行われる。
図11は、遮断装置45の再使用の可否を定める判定曲線Jである。判定曲線Jは、横軸を短絡電流Is、縦軸を外部短絡の回数Nとしたグラフである。判定曲線Jのデータはメモリ53に記憶されている。
【0048】
CPU52は、メモリ53から外部短絡の履歴のデータとして、外部短絡の回数Nと各回の短絡電流Isの大きさのデータを読み出して、判定曲線Jに参照することで、遮断装置45の再使用の可否を判断することが出来る。
【0049】
例えば、読み出した履歴のデータPが判定曲線の内側の領域A1に有る場合、CPU52は、遮断装置45のダメージは小で、遮断装置45は故障の可能性はなく、再使用可能であると判断する。一方、読み出したデータPが、判定曲線の外側の領域A2にある場合、CPU52は、遮断装置45のダメージは大で、遮断装置45は故障の可能性があり、再使用不可であると判断する。
【0050】
図11に示すP1は、短絡電流がIs1、回数はN1であり、判定曲線
Jの内側の領域A1に含まれているので、再使用可能とCPU52は判断する。一方、
図11に示すP2は、短絡電流がIs1、回数はN2であり、判定曲線
Jの外側の領域A2に含まれているので、CPU52は再使用不可と判断する。
【0051】
このように、短絡電流Isの大きさが同じであっても、外部短絡の回数Nが増加すると、遮断装置45は、CPU52により再使用不可と判断される。短絡電流Isが大きい場合、遮断装置45は、CPU52により、少ない回数Nで再使用不可と判断される。
【0052】
再使用可能と判断した場合(S50:YES)、CPU52は、休止時間Twを設定する処理を行う(S60)。休止時間Twは、電流遮断後(
図10に示す時刻t2)、遮断装置45の切り換え操作(オープン、クローズの切換)を休止する時間である。
【0053】
休止時間Twは、直近の短絡電流Isと、第1時間Tsに基づいて、設定される。CPU52は、短絡電流Isと第1時間Tsから、(1)式に基づいて、遮断装置45の発熱量Qを算出する。休止時間Twは、発熱量Qが大きい程、長い時間に設定される。
【0054】
Q=R×Is2×Ts・・・・・・(1)式
Rは遮断装置45の電気抵抗である。
【0055】
CPU52は、休止時間Twを設定すると、電流遮断時(
図10に示す時刻t2)から、休止時間Twが経過したか否かを判定する処理を行う(S70)。電流遮断時である時刻t2から休止時間Twが経過するまでの期間は、S70にてNO判定される。
【0056】
休止時間Twが経過すると(
図10に示す時刻t3)、CPU52は外部スイッチ63の操作の有無を判断する(S80)。外部スイッチ63は、外部短絡が解除した時(端子間を短絡する工具などが取り除かれた時)に、バッテリBT
1を再使用するため、ユーザにより操作されるスイッチである。
【0057】
外部短絡の発生後、外部スイッチ63が操作されていなければ、CPU52は、待機状態となる(S80:NO)。
【0058】
CPU52は、外部スイッチ63の操作を検出すると(S80:YES)、遮断装置45の復帰処理を行う(S90)。
【0059】
復帰処理は、遮断装置45に復帰指令を送り、遮断装置45をクローズからオープンに切り換える処理である。これにより、バッテリBT1は、外部短絡が発生する前の状態に戻り、使用可能な状態に復帰する。
【0060】
遮断装置45は再使用不可と判断した場合(S50:NO)、CPU52は、遮断装置45をオープンに維持して復帰を禁止すると共に、警告ランプ61を点灯させることにより、外部に異常を報知する(S100)。
【0061】
4.効果
CPU52は、遮断装置45のダメージを診断して、遮断装置45が再使用できるか否か判断する。そのため、ダメージが大きく使用に適さない遮断装置45が再使用されることを抑制できる。
【0062】
ダメージの診断要素に、短絡電流Isだけでなく、外部短絡の回数Nを含めているので、CPU52は、遮断装置45のダメージの蓄積を診断できる。
【0063】
CPU52は、休止時間Twの経過後に、遮断装置45の復帰動作を行うことで、一時的な発熱による遮断装置45の故障を抑制できる。短絡電流Isにより発熱した接点が、復帰動作により固着することを抑制できる。
【0064】
リチウムイオン二次電池2は、鉛蓄電池に比べて内部抵抗が小さく、外部短絡時に大電流が流れ易い。そのため、リチウムイオン二次電池2に使用される遮断装置45は、ダメージを受け易く、使用に適さない遮断装置45が使用され続けることがある。本技術を適用することで、遮断装置45のダメージの診断が可能となり、CPU52は、遮断装置45は再使用できないと判断した場合、異常を報知するなど、ダメージに応じた処置を行うことができる。
【0065】
遮断装置45は、外部端子10と組電池40の正極を接続する通電路43Pに設けられているので、遮断装置45がダメージを受けた場合に、使用を禁止することで、組電池40を含む、バッテリBT1の全体を保護することが出来る。
【0066】
<実施形態2>
実施形態2のバッテリBT2は、外部端子10、11の端子間電圧Vsを計測する電圧計測部155を有している。
図12は、短絡電流Isの算出原理を示す図であり、r1は組電池40の内部抵抗、r2は短絡抵抗を示している。
【0067】
無電流時の端子間電圧Vs1と外部短絡時の端子間電圧Vs2の電圧差ΔVsは、短絡電流Isの大きさと組電池40の内部抵抗r1の大きさに比例する。無電流時は、電流が所定値以下であればよく、無電流とみなせる場合を含む。
【0068】
ΔVs=Vs1-Vs2・・・・・・(2)式
ΔVs=Is×r1・・・・・・・・(3)式
【0069】
従って、CPU52にて、電圧差ΔVsと内部抵抗r1から短絡電流Isを求めることが出来る。短絡電流Isは大電流であり、電流センサ47の計測範囲を超えている場合、電流センサ47では計測できない。実施形態2では、電流センサ47を用いることなく、短絡電流Isを計測できるので、電流センサ47で短絡電流を計測できない場合に、有効である。
【0070】
内部抵抗r1は、通常使用時のバッテリBT2の電流I、端子間電圧Vsのデータから求めることが可能である(I-Vs曲線の傾き)。また、それ以外にも、実験値や理論値を使用することが出来る。
【0071】
<
実施形態3>
図13は、バッテリB
T3のブロック図である。バッテリB
T3は、リレー70を有している。リレー70は通電路43Pに位置している。リレー70は、機械式の接点71を有している。リレー70は、組電池40の通電路43Pを開
放することで、電流Iを遮断する遮断装置である。
処理部51は信号線65と信号線66により、リレー両端のC点とD点にそれぞれ接続されており、C点の電圧VcとD点の電圧Vdを検出することができる。C点は組電池
40の正極の電圧、D点は外部端子10の電圧である。Vc-Vdは、リレー70の両端電圧である。
【0072】
図14はバッテリB
T3をブースタケーブル75で短絡した時の電流波形と電圧波形である。Isは短絡電流である。VcはC点の電圧(組電池40の電圧)である。VdはD点の電圧(外部端子10の電圧)である。ブースタケーブル75は、充電時に、外部充電器とバッテリを電気的に接続する電気ケーブルである。
【0073】
t0は短絡発生時、taは短絡の検出時を示す。検出時は、短絡電流Isが閾値Xを超えたことをCPU52が検出した時刻である。tbは短絡電流Isの遮断時である。遮断時はリレー70がオープンして短絡電流Isが遮断される時刻である。第1時間T1は短絡を検出してから遮断までの時間(ta~tb)である。第1時間T1は反応時間と動作時間の合計である。反応時間は、CPU52が短絡を検出してからリレー70に遮断指令を送るまで時間である。動作時間は、遮断指令を送ってから実際にリレー70が開放するまでの時間である。
【0074】
第1時間T1は、閾値Xを超える短絡電流Isがリレー70に流れる。リレー70は、第1時間T1の短絡電流Isにより、発熱してダメージを受ける。
【0075】
ブースタケーブル75は、抵抗成分75Rとインダクタンス成分75Lを有している。リレー70が開放すると、インダクタンス成分75Lが逆起電力Vrを発生する。
【0076】
逆起電力Vrにより、外部端子10がマイナスの電圧に引かれる。そのため、リレー70の両端に大電圧が加わり、リレー70の接点71間でアーク放電が起きる場合がある。
【0077】
図15は、
図14の拡大図である。tb以降、Vdがマイナスに急激に変化しているのは、インダクタンス成分75Lによる逆起電力Vrの影響である。tcは、アーク放電の発生時である。
【0078】
短絡電流Isは、アーク放電後、ほぼ直線的に減少してゆき、時刻tdで収束する。tb~tdまでの第2時間T2は、短絡を遮断してから収束するまでの時間である。つまり、第2時間T2は、リレー70がオープンしてから短絡電流Isが収束するまでの時間である。収束は、短絡電流Isが、収束値であるゼロ[A]に下がることを意味する。第2時間T2は、インダクタンス成分に蓄えた電気エネルギーが、アーク放電により熱に代わり、リレー70で消費される。リレー70は、第2時間T2の電流Isにより、発熱してダメージを受ける。
【0079】
CPU52は、リレー70の第1時間T1の発熱量Q1と、リレー70の第2時間T2の発熱量Q2とから、リレー70のダメージを診断する。
【0080】
リレー70の第1時間T1の発熱量Q1は、第1時間T1の平均電流Is1と、第1時間T1のC-D間の平均電圧差ΔV1と、第1時間T1とに基づいて推定することが出来る。(4)式は、計算式の一例である。第1時間T1は、計測値でもいいし、実験値や経験値でもよい。
【0081】
Q1=Is1×ΔV1×T1 (4)式
ΔV1=Vc-Vd (5)式
【0082】
リレー70の第2時間T2の発熱量Q2は、第2時間T2の平均電流Is2と、第2時間T2のC-D間の平均電圧ΔV2と、第2時間T2と、に基づいて推定することが出来る。(6)式は、計算式の一例である。第2時間T2の平均電流Is2は、(8)式で示すように、第1時間T1の平均電流Is1の1/2でもよい。第2時間T2は、計測値でもいいし、実験値や経験値でもいい。計測する場合、電流センサ47により計測される電流波形から求めてもよい。
【0083】
Q2=Is2×ΔV2×T2 (6)式
ΔV2=Vc-Vd (7)式
Is2=Is1/2 (8)式
【0084】
CPU52は、発熱量Q1と発熱量Q2の合計発熱量Q1+Q2が閾値よりも高い場合、リレー70のダメージは大きい(故障の可能性あり)と判断し、閾値よりも小さい場合、リレー70のダメージは小さい(故障の可能性なし)と判断してもよい。
【0085】
<
実施形態4>
図16は、バッテリB
T4のブロック図である。バッテリB
T4は、半導体スイッチ80を有している。半導体スイッチ80は通電路43Nに位置している。半導体スイッチ80は、第1FET81と第2FET85とを有している。第1FET81と第2FET85は、Nチャンネルの電界効果トランジスタである。半導体スイッチ80は、組電池40の通電路43Nを開放することで、電流Iを遮断する遮断装置である。半導体スイッチ80は第2FET85だけでもよい。
【0086】
第1FET81は、ソースSを外部端子11に接続し、第2FET85は、ソースSを組電池40の負極に接続している。第1FET81のドレインDと第2FET85のドレインDとが接続されている。第1FET81と第2FET85は、バックツーバック接続されている。バックツーバック接続(back-to-back接続)は、2つのFETを背中合わせに接続すること、すなわち、2つのFETのドレインD同士を接続すること、又はソースS同士を接続することを意味する。
【0087】
第1FET81は寄生ダイオード82を内蔵しており、第2FET85は寄生ダイオード86を内蔵している。寄生ダイオード82は、順方向が放電方向と同一である。寄生ダイオード86は、順方向が充電方向と同一である。
【0088】
第1FET81は、ゲートGにHレベルの電圧を印加することでオンし、ゲートGに、Lレベルの電圧を印加することでオフする。第2FET85も同様である。
【0089】
CPU52は信号線65と信号線66により、半導体スイッチ両端のF点とH点にそれぞれ接続されており、F点の電圧VfとH点の電圧Vhを検出することができる。F点は組電池40の負極の電圧、H点は外部端子11の電圧である。Vf-Vhは、半導体スイッチ80の両端電圧である。第1FET81がオン、第2FET85がオフの場合、Vf-Vhは、第2FET85のドレイン-ソースの電圧Vdsとほぼ等しい。
【0090】
CPU52は、正常時、ゲートGにHレベルの電圧を印加し、第1FET81をオンに制御する。また、ゲートGにHレベルの電圧を印加し、第2FET85をオンに制御する。第1FET81及び第2FET85の双方がオンの場合、組電池40は充電、放電の双方が可能である。
【0091】
CPU52は、バッテリBT4の異常を検出した場合、第1FET81、第2FET85のオン、オフを切り換えることで充放電を制御する。
【0092】
過充電を検出した場合、CPU52は、第1FET81をオフ、第2FET85をオンする。第1FET81をオフし、第2FET85をオンすることで、充電を遮断し、放電のみ行うことが出来る。この場合、放電電流は、第1FET81の寄生ダイオード82及び第2FET85のドレイン-ソースの電流経路で流れる。第1FET81は、放電の遮断機能はなく、バッテリBT4の充電を遮断するスイッチである。
【0093】
過放電を検出した場合、CPU52は、第1FET81をオン、第2FET85をオフする。第1FET81をオンし、第2FET85をオフすることで、放電を遮断し、充電のみ受け入れることが出来る。この場合、充電電流は、第1FET81のドレイン-ソース及び第2FET85の寄生ダイオード86の電流経路で流れる。第2FET85は、充電の遮断機能はなく、バッテリBT4の放電を遮断する。
【0094】
短絡電流Isを検出した場合、CPU52は、第1FET81はオンを維持し、第2FET85をオンからオフに切り換える。第2FET85をオフに切り換えることで、短絡電流Isを遮断できる。
【0095】
図17はバッテリB
T4をブースタケーブル75で短絡した時の電流波形と電圧波形である。Isは短絡電流である。Vdsは、第2FET85のドレイン-ソース間電圧である。
【0096】
t0は短絡発生時、taは短絡の検出時を示す。検出時は、短絡電流Isが閾値Xを超えたことをCPU52が検出した時刻である。tbは短絡電流Isの遮断時である。遮断時は第2FET85がオフして短絡電流Isが遮断される時刻である。第1時間T1は短絡を検出してから遮断するまでの期間(ta~tb)である。第1時間T1は反応時間と動作時間の合計である。
【0097】
第1時間T1は、閾値Xを超える短絡電流Isが半導体スイッチ80に流れる。半導体スイッチ80は、第1時間T1の短絡電流Isにより、発熱してダメージを受ける。
【0098】
ブースタケーブル75は、抵抗成分75Rとインダクタンス成分75Lを有している。第2FET85をオンからオフに切り換えると、インダクタンス成分75Lが逆起電力Vrを発生する。
【0099】
逆起電力Vrにより、第2FET85のドレイン-ソース間に大電圧が加わり、耐圧を超えると、第2FET85はアバランシェ降伏する。降伏期間中、第2FET85のVdsは降伏電圧BVを維持する。Vdsは、ドレイン-ソース間電圧である。
【0100】
短絡電流Isは、アバランシェ降伏後、ほぼ直線的に減少してゆき、時刻tdで収束する。tb~tdまでの第2時間T2は、短絡を遮断してから収束するまでの時間である。つまり、第2時間T2は、第2FET85がオフに切り換わってから短絡電流Isが収束するまでの時間である。収束は、短絡電流Isが収束値であるゼロ[A]に下がることを意味する。第2時間T2は、インダクタンス成分75Lに蓄えた電気エネルギーが、アバランシェ降伏により第2FET85に流れる電流で熱に代わり、第2FET85で消費される。第2FET85は、第2時間T2の短絡電流Isにより、発熱してダメージを受ける。
【0101】
CPU52は、半導体スイッチ80の第1時間T1の発熱量Q1と、半導体スイッチ80の第2時間T2の発熱量Q2とから、半導体スイッチ80の第2FET85のダメージを診断する。
【0102】
第2FET85の第1時間T1の発熱量Q1は、第1時間T1の平均電流Is1と、第2FET85の第1時間T1のVdsと、第1時間T1とに基づいて推定することが出来る。(9)式は、計算式の一例である。第1時間T1は、第1FET81と第2FET85ともオンであるため、第2FET85のVdsは、半導体スイッチ80の両端電圧Vh-Vfの計測値の約1/2である。第1時間T1は、計測値でもいいし、実験値や経験値でもよい。
【0103】
Q1=Is1×Vds×T1 (9)式
【0104】
第2FET85の第2時間T2の発熱量Q2は、第2時間T2の平均電流Is2と、第2FET85の降伏電圧BVと、第2時間T2と、に基づいて推定することが出来る。(10)式は、計算式の一例である。第2時間T2の平均電流Is2は、(11)式で示すように、第1時間T1の平均電流Is1の1/2でもよい。降伏電圧BVは、半導体スイッチ80の両端電圧Vh-Vfの計測値を使用してもいいし、第2FET85のデータシートの値を利用してもよい。第2時間T2は、計測値でもいいし、実験値や経験値でもいい。計測する場合、電流センサ47により計測される電流波形から求めてもよい。
【0105】
Q2=Is2×BV×T2 (10)式
Is2=Is1/2 (11)式
【0106】
CPU52は、発熱量Q1と発熱量Q2の合計発熱量Q1+Q2が閾値よりも高い場合、第2FET85のダメージは大きい(故障の可能性あり)と判断し、閾値よりも小さい場合、第2FET85のダメージは小さい(故障の可能性なし)と判断してもよい。
【0107】
第1時間T1、第2FET85は導通しており、ドレイン-ソース間の電圧Vdsは小さい。第1時間T1の発熱量Q1は、第2時間T2の発熱量Q2に比べて、小さい。処理部51は、第2FET85のダメージを、第2時間T2の発熱量Q2だけで判断してもよい。半導体スイッチ80は、熱膨張率の異なる金属の接合部分で発熱によりダメージを受けやすい。発熱によりダメージを受けやすい半導体スイッチ80のダメージを精度よく診断することが出来、故障した半導体スイッチ80が使用され続けることを抑制することが出来る。実施形態4では、短絡電流Isを検出した場合、第1FET81はオンを維持し、第2FET85をオンからオフに切り換えた。第1FET81と第2FET85の双方をオンからオフに切り換えてもよい。
【0108】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0109】
(1)上記実施形態1では、蓄電素子の一例として二次電池2を例示した。蓄電素子は、二次電池2に限定されるものではなく、キャパシタ等でもよい。バッテリBT1の使用用途は、車両用に限定されるものではなく、無停電電源システムや、太陽光発電システムの蓄電装置など、他の用途に使用するものであってもよい。
【0110】
(2)上記実施形態1では、遮断装置45の一例として機械的接点を有するリレーを例示した。遮断装置45は、リレーに限定されるものではなく、FET等の半導体スイッチやヒューズ、マグネットスイッチなどでもよい。遮断装置45がヒューズの場合、遮断時にアーク放電やアバランシェ降伏は発生しないので、第1時間T1の発熱量Q1だけでダメージを評価するとよい。遮断装置は、二次電池200の内部に設けられた電流遮断機構でもよい。電流遮断機構は、例えば、金属製の反転膜210であり、
図18の(a)、(b)に示すように、二次電池200の内圧の上昇に応じて反転する。反転膜210の反転により、反転膜210に接合された集電体220の一部220Aが破断することで、電流が遮断される。
図18に示す230は電極体、240は端子である。
【0111】
(3)上記実施形態1において、CPU52は、1本の判定曲線Jを用いて、遮断装置45のダメージを2段階(ダメージ小、ダメージ大)で診断した。
図19に示すように、CPU52は、複数本の判定曲線J1、J2を用いて、遮断装置45のダメージを多段階(3段階以上)で診断してもよい。
図19に示す領域A1はダメージ小、領域A2はダメージ中、領域A3はダメージ大である。
【0112】
(4)上記実施形態1において、CPU52は、外部短絡の回数Nと、各回の短絡電流Isの大きさとに基づいて、遮断装置45のダメージを診断した。これ以外にも、CPU52は、過去の履歴を考慮せず、直近の短絡電流Isとその第1時間Tsとから遮断装置45の発熱量Qを算出し、CPU52は、算出した発熱量Qの大きさに基づいて、遮断装置45のダメージを診断してもよい。
図20に示すように、CPU52は、短絡電流Isの大きさにのみに基づいて、遮断装置45のダメージを診断してもよい。
【0113】
(5)上記実施形態1では、バッテリBT1の内部に、遮断装置45、電流センサ47、管理装置50を設けた例を示した。遮断装置45、電流センサ47、管理装置50はバッテリBT1の外部に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0114】
2 二次電池(蓄電素子)
40 組電池
45 遮断装置
47 電流センサ
50 管理装置
51 処理部
61 警告ランプ
63 外部スイッチ
BT1 バッテリ(蓄電装置)
VH 車両
Ts 第1時間
Tw 休止時間
T1 第1時間
T2 第2時間