(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電流出力モジュール
(51)【国際特許分類】
G05F 3/24 20060101AFI20230523BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G05F3/24 A
G01R19/00 B
G01R19/00 M
(21)【出願番号】P 2021041471
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】阿部 太亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武輝
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 匠
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132618(JP,A)
【文献】特開2010-141807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0121908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/24
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を出力する電流出力部と、
前記電流出力部と負荷との間に接続され、前記電流出力部から出力される電流
を、該電流に応じた電圧である検出電圧に変換する基準抵抗と、
前記検出電圧をデジタル値に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路から出力される前記検出電圧のデジタル値に基づいて、前記電流出力部から出力される電流を制御する制御部と、
複数の基準電圧を生成する基準電圧生成部と、
前記AD変換回路に入力するアナログ値を前記基準電圧と前記検出電圧とのいずれかに切り替える切替部と、
を備え、
前記制御部は、
前記AD変換回路の校正を行う場合には、前記切替部を制御して前記アナログ値が前記基準電圧である第1状態に制御して、前記複数の基準電圧のそれぞれを前記AD変換回路でデジタル値に変換させる処理部と、
変換された前記複数の基準電圧の各デジタル値に基づいて、前記AD変換回路の校正を行う補正部と、
を備える電流出力モジュール。
【請求項2】
前記補正部は、前記複数の基準電圧の各電圧値と、前記複数の基準電圧の各デジタル値とを用い、前記AD変換回路の変換誤差を無くすための補正式に基づいて前記検出電圧のデジタル値を補正することで前記AD変換回路の校正を行う、請求項1記載の電流出力モジュール。
【請求項3】
前記制御部は、前記補正式によって補正された前記検出電圧のデジタル値と、予め設定された目標値との誤差が無くなるように前記電流出力部から出力される電流を制御するPI制御部を更に備える、請求項2記載の電流出力モジュール。
【請求項4】
電流を出力する電流出力部と、
前記電流出力部から出力される電流に応じた電圧である検出電圧をデジタル値に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路から出力される前記検出電圧のデジタル値に基づいて、前記電流出力部から出力される電流を制御する制御部と、
複数の基準電圧を生成する基準電圧生成部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の基準電圧のそれぞれを前記AD変換回路でデジタル値に変換させる処理部と、
変換された前記複数の基準電圧の各デジタル値に基づいて、前記AD変換回路の校正を行う補正部と、
前記電流出力部から出力される電流を前記検出電圧に変換する基準抵抗
と、
を備え、
前記処理部は、予め設定された校正電圧に応じた電流である校正電流を前記電流出力部から前記基準抵抗に出力させ、前記校正電流によって前記基準抵抗に発生した前記検出電圧を前記AD変換回路でデジタル値に変換させ、
前記補正部は、前記校正電流によって前記基準抵抗に発生した前記検出電圧のデジタル値と、前記校正電圧の電圧値とに基づいて前記電流出力部の校正を行う、
電流出力モジュール。
【請求項5】
前記AD変換回路に入力するアナログ値を前記基準電圧と前記検出電圧とのいずれかに切り替える切替部を備え、
前記処理部は、前記切替部を制御して前記アナログ値が前記基準電圧である第1状態と、前記アナログ値が前記検出電圧である第2状態と、のいずれかに制御する、
請求項4記載の電流出力モジュール。
【請求項6】
前記処理部は、前記第1状態に制御した後に前記第2状態に制御し、
前記補正部は、前記第1状態の場合において前記AD変換回路の校正を行い、前記第2状態の場合において得られた前記検出電圧のデジタル値と前記校正電圧の電圧値とに基づいて前記電流出力部の校正を行う、
請求項5記載の電流出力モジュール。
【請求項7】
前記制御部は、前記基準抵抗に印加させるべき設定電圧を格納する設定レジスタを備え、
前記電流出力部は、前記設定レジスタに格納されている前記設定電圧に応じた電流を前記基準抵抗に出力し、
前記補正部は、前記第2状態において得られる前記検出電圧のデジタル値と、前記校正電圧の電圧値とに基づいて前記設定レジスタに格納されている前記設定電圧を補正する、
請求項5又は請求項6記載の電流出力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流出力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、負荷に出力される電流を検出し、検出された電流が目標値に一致するようにフィードバック制御することで、所望の電流を負荷に出力する電流出力モジュールが開発されている。例えば、プラントにおいては、4~20mAの電流を、負荷としてのフィールド機器に供給するために電流出力モジュールが用いられる。以下の特許文献1には、フィールド機器を負荷とするものではないが、リニアソレノイドに流れる電流を検出し、電流の検出値が目標値に一致するように、リニアソレノイドに対する通電をフィードバックする電流制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した電流出力モジュールは、目標値に応じた電流が出力されるか否かが検査され、目標値に応じた電流が出力されない場合には校正が行われた上で出荷されるのが一般的である。しかしながら、周囲温度が変化したり、経時変化でアナログ回路の誤差が生じたりする場合には、電流出力モジュールから出力される電流に誤差が生じてしまう。このような誤差が生じないようにするには、電流出力モジュールが出荷された後も、アナログ回路の校正を行うことが必要である。尚、このような校正は、電流出力モジュールが運用されている状態であっても、自動的に行われることが望まれる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、出荷後においても自動的に校正を行うことができる電流出力モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による電流出力モジュールは、電流を出力する電流出力部と、前記電流出力部から出力される電流に応じた電圧である検出電圧をデジタル値に変換するAD変換回路と、前記AD変換回路から出力される前記検出電圧のデジタル値に基づいて、前記電流出力部から出力される電流を制御する制御部と、複数の基準電圧を生成する基準電圧生成部と、を備え、前記制御部が、前記複数の基準電圧のそれぞれを前記AD変換回路でデジタル値に変換させる処理部と、変換された前記複数の基準電圧の各デジタル値に基づいて、前記AD変換回路の校正を行う補正部と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様による電流出力モジュールは、前記補正部が、前記複数の基準電圧の各電圧値と、前記複数の基準電圧の各デジタル値とを用い、前記AD変換回路の変換誤差を無くすための補正式に基づいて前記検出電圧のデジタル値を補正することで前記AD変換回路の校正を行う。
【0008】
また、本発明の一態様による電流出力モジュールは、前記制御部が、前記補正式によって補正された前記検出電圧のデジタル値と、予め設定された目標値との誤差が無くなるように前記電流出力部から出力される電流を制御するPI制御部を更に備える。
【0009】
また、本発明の一態様による電流出力モジュールは、前記電流出力部から出力される電流を前記検出電圧に変換する基準抵抗を備え、前記処理部が、予め設定された校正電圧に応じた電流である校正電流を前記電流出力部から前記基準抵抗に出力させ、前記校正電流によって前記基準抵抗に発生した前記検出電圧を前記AD変換回路でデジタル値に変換させ、前記補正部が、前記校正電流によって前記基準抵抗に発生した前記検出電圧のデジタル値と、前記校正電圧の電圧値とに基づいて前記電流出力部の校正を行う。
【0010】
また、本発明の一態様による電流出力モジュールは、前記AD変換回路に入力するアナログ値を前記基準電圧と前記検出電圧とのいずれかに切り替える切替部を備え、前記処理部が、前記切替部を制御して前記アナログ値が前記基準電圧である第1状態と、前記アナログ値が前記検出電圧である第2状態と、のいずれかに制御する。
【0011】
また、本発明の一態様による電流出力モジュールは、前記処理部が、前記第1状態に制御した後に前記第2状態に制御し、前記補正部が、前記第1状態の場合において前記AD変換回路の校正を行い、前記第2状態の場合において得られた前記検出電圧のデジタル値と前記校正電圧の電圧値とに基づいて前記電流出力部の校正を行う。
【0012】
また、本発明の一態様による電流出力モジュールは、前記制御部が、前記基準抵抗に印加させるべき設定電圧を格納する設定レジスタを備え、前記電流出力部が、前記設定レジスタに格納されている前記設定電圧に応じた電流を前記基準抵抗に出力し、前記補正部が、前記第2状態において得られる前記検出電圧のデジタル値と、前記校正電圧の電圧値とに基づいて前記設定レジスタに格納されている前記設定電圧を補正する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、出荷後においても自動的にアナログ回路の校正を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態による電流出力モジュールの要部構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態によるAD変換回路の校正方法を説明する図である。
【
図3】第1実施形態によるアナログ回路の校正処理のフローチャートである。
【
図4】第2実施形態による電流出力モジュールの要部構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態によるアナログ回路の校正処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による電流出力モジュールについて詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の各実施形態の詳細について説明する。
【0016】
〔概要〕
本発明の実施形態は、電流出力モジュールにおいて、出荷後においてもアナログ回路の校正を行うことを可能とするものである。具体的には、電流出力モジュール内にあるアナログ回路において、温度などの影響によって発生するAD変換回路の変換誤差を逐次補正すことを可能とするものである。
【0017】
PLC(プログラマブル・ロジック・コントロール)やデータロガー等の機器には、測定対象からのアナログ信号(測定信号)を取り込んだり、制御対象にアナログ信号を出力したりするために電流出力モジュールが取り付けられる。例えば、電流出力モジュールは、出力電流を出力する電流出力部と、その電流出力部から出力される出力電流に応じた電圧である検出電圧をデジタル値に変換するAD変換回路と、を有するアナログ回路を備える。
【0018】
例えば、電流出力モジュールは、AD変換回路で変換されたデジタル値が設定値になるように電流出力部から出力される出力電流を一定に制御している。ここで、電流出力モジュールでは、出荷時において、AD変換回路のアナログ回路の校正が行われるが、出荷後においては校正が行われない場合がある。また、出荷時の校正は、常温にて行われるため、出荷後に周囲温度が常温から変化すると、AD変換回路の変換誤差が生じる。そのため、デジタル値が設定値とずれてしまい、電流出力モジュールは、電流出力部から出力される出力電流を一定に制御することができなくなったり、目標値の出力電流を出力できなくなったりする場合がある。
【0019】
また、AD変換回路だけではなく、電流出力部も周囲温度の影響を受ける場合があるため、出力電流のPI制御が実施されていない場合などでは、電流出力部から出力される出力電流が目標値から変動してしまう場合がある。
【0020】
本発明の実施形態では、電流出力モジュールは、複数の基準電圧を生成する基準電圧生成部を備え、この複数の基準電圧のそれぞれをAD変換回路でデジタル値に変換させる。そして、電流出力モジュールは、変換させた前記複数の基準電圧値の各デジタル値に基づいて、AD変換回路の校正を行う。これにより、出荷後においてもアナログ回路の校正を自動的に行うことができる。
【0021】
また、本発明の実施形態では、AD変換回路の校正後において、予め設定された校正電圧に応じた出力電流を電流出力部から出力させてAD変換回路から得られるデジタル値に基づいて電流出力部の校正を行う。これにより、出荷後において、AD変換回路だけではなく、電流出力部も自動的に校正することができる。
【0022】
また、本発明の実施形態では、アナログ回路の校正が逐次実施可能であるため、出荷時の校正が不要となり、出荷時の校正に係る工数が削減可能である。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の電流出力モジュール1の要部構成を示すブロック図である。
図1に示すように、電流出力モジュール1は、例えば、アナログ回路10、基準電圧生成部20、基準抵抗30、切替部40、及び制御部50を備える。尚、以下に説明する「接続」とは、電気的な接続である。電気的な接続とは、電力や電気信号が直接的又は間接的に伝達可能であることをいう。電気的な接続は、ケーブル、抵抗、コンデンサ、ダイオード、スイッチなどの部品を介した接続であってもよい。
【0024】
アナログ回路10は、例えば、電流出力部11、第1スイッチ12、及びAD(アナログデジタル)変換回路13を備える。
【0025】
電流出力部11は、一定の出力電流Ioを出力する。例えば、電流出力部11は、制御部50からの制御信号に基づいて、負荷100に対して、4mAから20mAの間の出力電流Ioを出力する。電流出力部11は、例えば、オペアンプやトランジスタなどによって構成される。電流出力部11は、基準抵抗30を介して負荷100に接続される。出力電流Ioは、基準抵抗30を介して負荷100に供給される。負荷100は、例えば、フィールド機器などの電子機器である。フィールド機器は、例えば、渦流量計、温度センサ、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントの現場に設置される機器であって良い。
【0026】
第1スイッチ12は、電流出力部11の出力と基準抵抗30との間に接続される。例えば、第1スイッチ12は、一端が電流出力部11に接続され、他端が基準抵抗30に接続される。第1スイッチ12は、制御部50によってオン状態又はオフ状態に制御される。
【0027】
AD変換回路13は、入力されるアナログ値をデジタル値に変換(以下、「AD変換」という。)する。AD変換回路13は、AD変換したデジタル値を制御部50に出力する。例えば、AD変換回路13は、電流出力部11から出力される出力電流Ioに応じた電圧である検出電圧をデジタル値に変換する。尚、AD変換回路13は、AD変換を行う機能であるADコンバータ以外に、ADコンバータに入力される電圧レベルを変換する変換回路やリーク防止のための差動回路等を含んでも良い。
【0028】
基準電圧生成部20は、複数の基準電圧V1,V2を生成する。
図1に示すように、基準電圧生成部20は、例えば、電源21、基準抵抗22、第2スイッチ23、第3スイッチ24、及び第4スイッチ25を備える。
【0029】
電源21は、基準抵抗22に対して基準電圧V1及び基準電圧V2のいずれかを印加する。例えば、電源21は、出力端子21a及び出力端子21bを備える。出力端子21aは、第2スイッチ23を介して基準抵抗22の一端に接続される。出力端子21bは、第3スイッチ24を介して基準抵抗22の一端に接続される。基準抵抗22の他端は、グランド(GND)に接続される。電源21は、出力端子21aから電流を出力することで基準抵抗22に基準電圧V1を発生させる。電源21は、出力端子21bから電流を出力することで基準抵抗22に基準電圧V2を発生させる。
【0030】
基準抵抗22は、例えば、抵抗値許容差が低い抵抗器であって、温度変化による抵抗値の変動も少ない高精度の抵抗器である。
【0031】
第4スイッチ25は、基準抵抗22の一端と電流出力部11の出力との間に接続される。例えば、第4スイッチ25は、一端が基準抵抗22の一端に接続され、他端が第1スイッチ12の他端に接続される。
【0032】
基準抵抗30は、出力電流Ioを検出電圧に変換する。基準抵抗30は、電流出力部11の出力と負荷100との間に接続される。例えば、基準抵抗30は、出力電流Ioをモニターするためのシャント抵抗である。
【0033】
切替部40は、AD変換回路13に入力するアナログ値を基準電圧(基準電圧V1,V2)と検出電圧とのいずれかに切り替える。例えば、切替部40は、第5スイッチ41及び第6スイッチ42を備える。
【0034】
第5スイッチ41は、基準抵抗22の両端とAD変換回路13の入力との間の接続をオン状態又はオフ状態に切り替える。第6スイッチ42は、基準抵抗30の両端とAD変換回路13の入力との間の接続をオン状態又はオフ状態に切り替える。
【0035】
切替部40では、第5スイッチ41がオン状態に制御され、第6スイッチ42がオフ状態に制御されることでAD変換回路13に入力するアナログ値を基準電圧に切り替える。切替部40では、第5スイッチ41がオフ状態に制御され、第6スイッチ42がオン状態に制御されることでAD変換回路13に入力するアナログ値を検出電圧に切り替える。
【0036】
制御部50は、AD変換回路13から出力される検出電圧のデジタル値に基づいて、電流出力部11から出力される出力電流Ioを制御する。制御部50は、AD変換回路13の校正を行う機能を有する。
【0037】
図1に示すように、制御部50は、CPU51及びロジック制御回路52を備える。ロジック制御回路52は、設定レジスタ60、処理部61、PI制御部62、補正部63を備える。
【0038】
CPU51は、設定レジスタ60に対して目標値を書き込む。この目標値は、出力電流Ioを目標電流に維持するための電圧値であって、例えば基準抵抗30の検出電圧の目標値である。
【0039】
処理部61は、複数の基準電圧V1,V2のそれぞれをAD変換回路13でデジタル値に変換させる。処理部61は、切替部40を制御してAD変換回路13に入力されるアナログ値が基準電圧である第1状態と、そのアナログ値が検出電圧である第2状態と、のいずれかに制御する。
【0040】
例えば、処理部61は、基準電圧生成部20による基準電圧V1,V2の生成を制御する。処理部61は、第1スイッチ12、第2スイッチ23、第3スイッチ24、及び第4スイッチ25のそれぞれのオン状態またオフ状態を制御する。
【0041】
PI制御部62は、AD変換回路13から得られた検出電圧のデジタル値と、設定レジスタ60に書き込まれている目標値との誤差ΔVが無くなるように出力電流IoをPI制御する。例えば、PI制御部62は、誤差ΔVに応じた制御信号を電流出力部11に出力する。電流出力部11は、この制御信号に応じた出力電流Ioを出力する。
【0042】
補正部63は、AD変換回路13で変換された複数の基準電圧値V1,V2の各デジタル値に基づいて、AD変換回路13の校正を行う。例えば、補正部63は、予め設定された基準電圧値V1,V2の各電圧値(理想値)と、複数の基準電圧の各デジタル値と、に基づいてAD変換回路13の変換誤差を無くすための補正式を算出する。そして、補正部63は、算出した補正式に基づいて、AD変換回路13からPI制御部62に出力される検出電圧のデジタル値を補正することでAD変換回路13の校正を行う。
【0043】
以下において、第1実施形態によるAD変換回路13の校正方法について説明する。
【0044】
補正部63は、複数の基準電圧V1,V2のデジタル値をAD変換回路13から取得すると、AD変換回路13の変換誤差を求める。例えば、基準電圧生成部20では、電源21から基準抵抗22に対して電流I1を流すことで基準抵抗22の両端に基準電圧V1を発生させ、電源21から基準抵抗22に対して電流I2を流すことで基準抵抗22の両端に基準電圧V2(>V1)を発生させる。ここで、基準電圧V1の理想値をVr1、AD変換回路13によってAD変換された基準電圧V1のデジタル値をVd1とする。基準電圧V2の理想値をVr2、AD変換回路13によってAD変換された基準電圧V2のデジタル値をVd2とする。
【0045】
補正部63は、理想値Vr1、理想値Vr2、デジタル値Vd1、及びデジタル値Vd2に基づいて、AD変換回路13のデジタル値を理想値に補正するための補正式を求める。例えば、基準電圧の理想値と基準電圧のデジタル値とは、
図2に示すような一次関数で表される。まず、補正部63は、基準電圧の理想値の一次関数の傾きAidealと切片Bidealとを以下に示す式(1)及び式(2)を用いて求める。
【0046】
【0047】
【0048】
補正部63は、基準電圧のデジタル値の一次関数の傾きAmeasと切片Bmeasとを以下に示す式(3)及び式(4)を用いて求める。
【0049】
【0050】
【0051】
補正部63は、以下の式(5)及び(6)に基づいて、補正係数Aadj,補正係数Badjを求める。
【0052】
【0053】
【0054】
補正部63は、補正係数Aadj,補正係数Badjに基づいて、AD変換回路13の変換結果を補正する補正式を以下に示す式(7)から求める。
【0055】
【0056】
補正部63は、AD変換回路13がAD変換した変換結果(実際のAD変換結果)を式(7)に代入することで補正して、補正後のAD変換結果adjを得る。補正部63は、AD変換結果adjをPI制御部62に出力する。
【0057】
次に、第1実施形態によるAD変換回路13の校正方法の流れについて、
図3を用いて説明する。
図3は、第1実施形態によるAD変換回路13の校正方法のフローチャートである。
【0058】
処理部61は、第1状態、すなわち第5スイッチ41をオン状態に制御し、第6スイッチ42がオフ状態に制御することでAD変換回路13に入力するアナログ値を基準電圧に切り替える(ステップS101)。なお、処理部61は、第4スイッチ25をオフ状態に制御する。この状態において、処理部61は、第2スイッチ23をオン状態に制御し、第3スイッチ24をオフ状態に制御し、電源21に対して出力端子21aから電流を出力させることで基準抵抗22に基準電圧V1を生成させる(ステップS102)。
【0059】
基準電圧V1が基準抵抗22に生成されると、AD変換回路13は、基準電圧V1を読み取り、読み取った基準電圧V1をAD変換することでデジタル値Vd1を取得する(ステップS103)。AD変換回路13は、デジタル値Vd1を補正部63に出力する。
【0060】
処理部61は、第2スイッチ23をオフ状態に制御し、第3スイッチ24をオン状態に制御し、電源21に対して出力端子21bから電流を出力させることで基準抵抗22に基準電圧V2を生成させる(ステップS104)。基準電圧V2が基準抵抗22に生成されると、AD変換回路13は、基準電圧V2を読み取り、読み取った基準電圧V2をAD変換することでデジタル値Vd2を取得する(ステップS105)。AD変換回路13は、デジタル値Vd2を補正部63に出力する。
【0061】
補正部63は、理想値Vr1、理想値Vr2、デジタル値Vd1、及びデジタル値Vd2に基づいて、AD変換回路13のデジタル値を理想値に補正するための補正式を求める(ステップS106)。これにより、電流出力モジュール1は、AD変換回路13の校正を終了する。したがって、AD変換回路13の校正後においては、処理部61は、切替部40を制御して、第5スイッチ41がオフ状態に制御され、第6スイッチ42がオン状態に制御されることでAD変換回路13に入力するアナログ値を検出電圧に切り替える。そして、補正部63は、求めた補正式に基づいて、AD変換回路13がAD変換した検出電圧のデジタル値を補正し、その補正したデジタル値をPI制御部62に出力する。
【0062】
電流出力モジュール1は、AD変換回路13の校正中において、負荷100に対して出力電流Ioを出力してもよい。
【0063】
以上の通り、本実施形態の電流出力モジュール1は、複数の基準電圧のそれぞれをAD変換回路13でデジタル値に変換させ、変換された複数の基準電圧値の各デジタル値に基づいて、AD変換回路13の校正を行う。これにより、出荷後においてもアナログ回路10の校正を自動的に行うことができる。
【0064】
また、電流出力モジュール1は、AD変換回路13の校正を行うために、基準電圧生成部20を備える。これにより、電流出力モジュール1は、負荷100への出力を停止せずに自動的に校正することができる。
【0065】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態による電流出力モジュール2の要部構成を示すブロック図である。尚、
図4においては、
図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付してある。
図4に示す通り、本実施形態の電流出力モジュール2は、
図1に示す電流出力モジュール1と比較して、電流出力部11を校正する機能が追加された構成である。
【0066】
ここで、前述した第1実施形態の電流出力モジュール1では、出力電流IoのPI制御を行っているため、電流出力部11の校正を行う必要がない。しかしながら、出力電流IoのPI制御を行わない場合には、電流出力部11の誤差が補正されない。本実施形態の電流出力モジュール2は、AD変換回路13の校正及び電流出力部11の校正を行うことで、出荷後においてもアナログ回路の校正を自動的に行うことができるようにしたものである。
【0067】
電流出力モジュール2は、例えば、アナログ回路10、基準電圧生成部20、基準抵抗30、切替部40、及び制御部70を備える。制御部70は、AD変換回路13から出力される検出電圧のデジタル値に基づいて、電流出力部11から出力される出力電流Ioを制御する。制御部70は、AD変換回路13の校正及び電流出力部11の校正を行う機能を有する。
【0068】
図4に示すように、制御部70は、CPU71及びロジック制御回路72を備える。ロジック制御回路72は、設定レジスタ80、処理部81、及び補正部82を備える。
【0069】
CPU71は、設定レジスタ80に対して基準抵抗22に印加させるべき設定電圧を書き込む。この設定電圧は、出力電流Ioを目標電流に維持するための電圧値であって、例えば基準抵抗30の検出電圧の目標値である。
【0070】
処理部81は、処理部61と同様の機能を有し、複数の基準電圧V1,V2のそれぞれをAD変換回路13でデジタル値に変換させる。処理部81は、切替部40を制御してAD変換回路13に入力されるアナログ値が基準電圧である第1状態と、そのアナログ値が検出電圧である第2状態と、のいずれかに制御する。
【0071】
処理部81は、電流出力部11の校正を行う場合には、予め設定された校正電圧V3,V4に応じた出力電流である校正電流のそれぞれを電流出力部11から基準抵抗22に出力させ、その校正電流によって基準抵抗22に発生した検出電圧をAD変換回路13でデジタル値に変換させる。校正電圧V3は、基準電圧V1と同一であってもよいし、異なる電圧であってもよい。校正電圧V4は、基準電圧V2と同一であってもよいし、異なる電圧であってもよい。
【0072】
補正部82は、第1補正部90及び第2補正部91を備える。
【0073】
第1補正部90は、補正部63と同様の機能を備え、第1実施形態で説明した方法と同様の方法でAD変換回路13の校正を行う。
【0074】
第2補正部91は、電流出力部11の校正を行う。第2補正部91は、校正電流によって基準抵抗22に発生した複数の検出電圧のデジタル値と、複数の校正電圧V3,V4の電圧値(理想値)とに基づいて電流出力部11の校正を行う。例えば、第2補正部91は、複数の検出電圧のデジタル値と、複数の校正電圧の電圧値(理想値)とに基づいて設定レジスタ80に格納されている設定電圧を補正する。
【0075】
第2実施形態によるAD変換回路13の校正方法は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。以下において、第2実施形態による電流出力部11の校正方法について説明する。なお、例えば、電流出力部11の校正は、AD変換回路13の校正が行われた後に実行される。
【0076】
電流出力部11は、基準抵抗22に校正電圧V3を発生させるために校正電流Ic3を基準抵抗22に流すことで基準抵抗22の両端に検出電圧Vk3を発生させる。電流出力部11は、基準抵抗22に校正電圧V4を発生させるために校正電流Ic4を基準抵抗22に流すことで、基準抵抗22の両端に検出電圧Vk4を発生させる。ここで、校正電圧V3の理想値をVr3、AD変換回路13によってAD変換された検出電圧Vk3のデジタル値をVd3とする。校正電圧V4の理想値をVr4、AD変換回路13によってAD変換された検出電圧Vk4のデジタル値をVd4とする。
【0077】
ここで、AD変換回路13の校正が既に行われているため、デジタル値Vd3,デジタル値Vd4に含まれる誤差は、電流出力部11の誤差のみである。つまり、デジタル値Vd3,デジタル値Vd4には、AD変換回路13の誤差は含まれていない。第2補正部91は、理想値Vr3,Vr4、デジタル値Vd3,Vd4に基づいて、設定レジスタ80に格納されている設定電圧を補正するための補正式を求める。例えば、電流出力部11の誤差ZEROerr,SPANerrは以下の式で表される。
【0078】
【0079】
【0080】
したがって、校正電圧V3の理想値Vr3を基準抵抗22に発生させるためには、設定電圧として以下に示すREGzeroを設定し、校正電圧V4の理想値Vr4を基準抵抗22に発生させるためには、設定電圧を以下に示すREGspanに設定する必要がある。
【0081】
【0082】
【0083】
第2補正部91は、REGzero及びREGspanから式(12)に示す補正値の傾きおよび式(13)に示す切片を求めることで、式(14)に示す補正式を求める。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
第2補正部91は、式(14)を求めて、設定レジスタ80に格納されている設定電圧を補正することで、電流出力部11の校正を終了する。
【0088】
次に、第2実施形態によるアナログ回路の校正方法の流れについて、
図5を用いて説明する。
図5は、第2実施形態によるアナログ回路の校正方法のフローチャートである。
【0089】
処理部61は、切替部40を制御して第1状態に制御する(ステップS201)。補正部82は、第1状態において、AD変換回路13の校正を行う(ステップS202)。処理部61は、AD変換回路13の校正が終了すると、第1状態から第2状態に制御して電流出力部11から校正電圧V3に応じた校正電流を出力させる(ステップS203)。AD変換回路13は、検出電圧を読み取り、読み取った検出電圧をAD変換することでデジタル値Vd3を取得する(ステップS204)。
【0090】
処理部61は、電流出力部11から校正電圧V4に応じた校正電流を出力させる(ステップS205)。AD変換回路13は、検出電圧を読み取り、読み取った検出電圧をAD変換することでデジタル値Vd4を取得する(ステップS206)。
【0091】
補正部82は、理想値Vr3、理想値Vr4、デジタル値Vd3、及びデジタル値V42に基づいて、電流出力部11の誤差を補正するための補正式を求める(ステップS207)。補正部82は、求めた補正式に基づいて設定レジスタ80に格納されている設定電圧を補正する(ステップS208)。これにより、基準抵抗22に正確な値に印加されるようになる。
【0092】
以上の通り、本実施形態の電流出力モジュール2は、第1実施形態と同様の効果を奏する他、電流出力部11の誤差を自動的に校正することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態による電流出力モジュールについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、基準電圧V1及び校正電圧V3は、グランド電圧(0V)であってもよい。
【0094】
また、基準抵抗22の抵抗値と、基準抵抗30の抵抗値とは、同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0095】
また、第1実施形態の電流出力モジュール1及び第2実施形態の電流出力モジュール2において、アナログ回路の校正中おいて、負荷100に出力電流Ioを供給してもよい。負荷100に出力電流Ioを供給する必要がない場合には、AD変換回路13の校正を行うにあたって、基準電圧V1,基準電圧V2を基準抵抗22ではなく基準抵抗30に印加してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1,2 電流出力モジュール
10 アナログ回路
20 基準電圧生成部
22,30 基準抵抗
40 切替部
50,70 制御部
61,81 処理部
62 PI制御部
63,82 補正部