(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】扉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 11/12 20060101AFI20230523BHJP
E05F 15/57 20150101ALI20230523BHJP
F16H 21/44 20060101ALI20230523BHJP
E05F 15/678 20150101ALI20230523BHJP
【FI】
E05F11/12
E05F15/57
F16H21/44 A
E05F15/678
(21)【出願番号】P 2021106971
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2023-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】森川 靖志
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-153040(JP,A)
【文献】特開2004-19403(JP,A)
【文献】特開2016-56651(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207225(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/00-11/54
E05F 15/00-15/79
E06B 5/16
E06B 9/02
E06B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉するためのスライド式の扉装置であって、
扉本体と、
前記開口部に対する位置が固定されたベース部材と、
前記扉本体と前記ベース部材とを連結し、前記扉本体を前記開口部に対してスライド移動方向にスライド移動可能に支持するリンク装置と、を備え、
前記リンク装置は、変換リンク機構と、平行リンク機構と、を備え、
前記変換リンク機構は、第1リンクと、前記第1リンクよりもリンク長が長い第2リンクと、前記第2リンクよりもリンク長が長い第3リンクと、前記第1リンクと前記ベース部材とを回転可能に連結する第1関節軸と、前記第1リンクと前記第3リンクとを回転可能に連結する第2関節軸と、前記第2リンクと前記ベース部材とを回転可能に連結する第3関節軸と、前記第2リンクと前記第3リンクとを回転可能に連結する第4関節軸と、前記第3リンクにおける前記第4関節軸に対して前記第2関節軸の側とは反対側の部分と前記扉本体とを回転可能に連結する第5関節軸と、を備え、
前記変換リンク機構は、前記第1関節軸の回転運動を、前記第5関節軸の前記スライド移動方向に沿う直線状の移動を含む運動に変換するように構成され、
前記平行リンク機構は、前記ベース部材に対して回転可能に連結されるベース側関節軸と、前記扉本体に対して回転可能に連結される扉側関節軸と、を備え、
前記平行リンク機構は、前記扉側関節軸が前記第5関節軸と平行移動するように、前記変換リンク機構に連結されている、扉装置。
【請求項2】
前記平行リンク機構は、第4リンクと、第5リンクと、第6リンクと、前記第4リンクと前記ベース部材とを回転可能に連結する前記ベース側関節軸としての第6関節軸と、前記第4リンクと前記第5リンクとを回転可能に連結する第7関節軸と、前記第5リンクと前記扉本体とを回転可能に連結する前記扉側関節軸としての第8関節軸と、を備え、
前記第6リンクは、前記第7関節軸を介して前記第4リンク及び前記第5リンクと回転可能に連結され、前記第4関節軸を介して前記第2リンク及び前記第3リンクと回転可能に連結されている、請求項1に記載の扉装置。
【請求項3】
前記開口部は、枠体により囲まれており、
前記第1関節軸の軸心に平行な方向を軸方向とし、前記軸方向に沿う軸方向視で前記スライド移動方向に直交する方向をスライド直交方向として、
前記扉本体は、前記枠体に対して前記スライド直交方向の一方側である直交方向第1側に配置され、前記開口部を閉塞する閉塞位置と前記開口部を開放する開放位置との間で前記スライド移動方向にスライド移動を行うように、前記リンク装置によって支持され、
前記第5関節軸の移動軌跡は、前記軸方向視で、前記スライド移動方向に沿う直線状の直線状領域と、前記直線状領域の端部から離れるに従って前記直交方向第1側とは反対側である直交方向第2側へ向かう湾曲状領域と、を備え、
前記直線状領域と前記湾曲状領域との境界部が、前記扉本体の前記開放位置から前記閉塞位置までの移動軌跡における前記閉塞位置の手前に配置されている、請求項1又は2に記載の扉装置。
【請求項4】
駆動源を更に備え、
前記駆動源は、前記第1関節軸を回転駆動するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の扉装置。
【請求項5】
前記第1関節軸の軸心に平行な方向を軸方向として、
前記第3リンクは、前記第2関節軸に対して前記第4関節軸の側において前記第2関節軸に隣接する部分に、前記軸方向に沿う軸方向視で、前記第2リンクが配置されている側とは反対側に向かって凸となるように湾曲された湾曲部を備え、
前記湾曲部は、前記第1リンクの動作範囲の全域で、前記第1リンクと前記第3リンクとが干渉しないように形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の扉装置。
【請求項6】
前記扉本体を第1扉本体とし、前記リンク装置を第1リンク装置として、
第2扉本体と、
前記第2扉本体と前記ベース部材とを連結し、前記第2扉本体を前記開口部に対して前記スライド移動方向にスライド移動可能に支持する第2リンク装置と、
駆動源と、
駆動伝達機構と、を更に備え、
前記第1関節軸の軸心に平行な方向を軸方向とし、前記軸方向に沿う軸方向視で前記スライド移動方向に直交する方向をスライド直交方向として、
前記第2リンク装置は、前記第1リンク装置と同じ構成であって、前記軸方向視で、前記スライド直交方向に沿う仮想基準線に対して前記第1リンク装置と鏡対称に配置され、
前記駆動伝達機構は、前記第1リンク装置の前記第1関節軸と前記第2リンク装置の前記第1関節軸とを互いに反対向きに回転駆動するように、前記駆動源の駆動力を前記第1リンク装置及び前記第2リンク装置に伝達する、請求項1から5のいずれか一項に記載の扉装置。
【請求項7】
前記スライド移動方向は、上下方向に沿う方向であり、
前記軸方向は、水平方向に沿う方向であり、
前記第1扉本体及び前記第1リンク装置の重量と、前記第2扉本体及び前記第2リンク装置の重量とが同等である、請求項6に記載の扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を開閉するためのスライド式の扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような扉装置の一例が、特開2003-3748号公報(特許文献1)に開示されている。以下、この背景技術の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の扉装置は、上下動ドア(10)を上下方向にスライド移動させて窓開口部(12)を開閉するように構成されている。上下動ドア(10)は、チェーンやベルト等の駆動索(22)に連結されており、この扉装置は、上下動ドア(10)を駆動索(22)で吊り下げた状態で昇降させるように構成されている。上下動ドア(10)には、ガイドレール(21)に上下方向に摺動自在に嵌合するガイド枠(14)が連結されており、ガイド枠(14)がガイドレール(21)に案内された状態で、上下動ドア(10)が昇降する。なお、この扉装置では、上下動ドア(10)とガイド枠(14)とをリンク機構によって連結しており、窓開口部(12)を閉じる際に、上下動ドア(10)を窓開口部(12)の密閉材(13)へ押し付けて、窓開口部(12)を密閉するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1の扉装置は、扉本体(特許文献1では、上下動ドア)を駆動索で吊り下げた状態で昇降させるように構成されているため、特に駆動索としてベルトを用いた場合に、発塵が多くなりやすい。また、駆動索の定期的な交換が必要となる等、メンテナンス作業の負担も大きくなりやすい。更には、特許文献1の扉装置では、扉本体を開閉駆動する駆動装置(具体的には、駆動索を用いた装置)とは別に、扉本体のスライド移動を案内するための、ガイドレールを用いた直動ガイドが必要となるため、コストが増大しやすい。
【0006】
そこで、発塵の低減やメンテナンス作業の負担軽減を図りやすく、更には、コストの低減も図りやすい扉装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る扉装置は、開口部を開閉するためのスライド式の扉装置であって、扉本体と、前記開口部に対する位置が固定されたベース部材と、前記扉本体と前記ベース部材とを連結し、前記扉本体を前記開口部に対してスライド移動方向にスライド移動可能に支持するリンク装置と、を備え、前記リンク装置は、変換リンク機構と、平行リンク機構と、を備え、前記変換リンク機構は、第1リンクと、前記第1リンクよりもリンク長が長い第2リンクと、前記第2リンクよりもリンク長が長い第3リンクと、前記第1リンクと前記ベース部材とを回転可能に連結する第1関節軸と、前記第1リンクと前記第3リンクとを回転可能に連結する第2関節軸と、前記第2リンクと前記ベース部材とを回転可能に連結する第3関節軸と、前記第2リンクと前記第3リンクとを回転可能に連結する第4関節軸と、前記第3リンクにおける前記第4関節軸に対して前記第2関節軸の側とは反対側の部分と前記扉本体とを回転可能に連結する第5関節軸と、を備え、前記変換リンク機構は、前記第1関節軸の回転運動を、前記第5関節軸の前記スライド移動方向に沿う直線状の移動を含む運動に変換するように構成され、前記平行リンク機構は、前記ベース部材に対して回転可能に連結されるベース側関節軸と、前記扉本体に対して回転可能に連結される扉側関節軸と、を備え、前記平行リンク機構は、前記扉側関節軸が前記第5関節軸と平行移動するように、前記変換リンク機構に連結されている。
【0008】
本構成では、扉本体が、変換リンク機構におけるスライド移動方向に沿う直線状の移動を含む運動を行う第5関節軸と、平行リンク機構における第5関節軸と平行移動する扉側関節軸と、に連結されている。よって、変換リンク機構及び平行リンク機構を備えたリンク装置によって、扉本体を、姿勢を維持した状態でスライド移動方向にスライド移動するように支持することができる。
【0009】
このように、本構成ではリンク装置を用いて扉本体を開閉駆動するため、ベルト等の索状体を用いて扉本体を開閉駆動する場合に比べて、発塵を少なく抑えることができる。また、ベルト等の索状体を用いて扉本体を開閉駆動する場合に比べて部品の交換周期を長くしやすく、部品の交換を不要とすることも可能であり、メンテナンス作業の負担を軽減することもできる。更には、本構成によれば、第5関節軸及び扉側関節軸の移動軌跡に沿って扉本体が移動するように、扉本体をリンク装置によって支持することができる。そのため、扉本体を開閉駆動するリンク装置とは別に直動ガイド等の案内装置を設ける必要はなく、そのような案内装置が必要な場合に比べて、コストの低減を図りやすい。
【0010】
以上のように、本構成によれば、発塵の低減やメンテナンス作業の負担軽減を図りやすく、更には、コストの低減も図りやすくなっている。
【0011】
扉装置の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1の実施形態〕
扉装置の第1の実施形態について、図面(
図1~
図4)を参照して説明する。扉装置100は、開口部11を開閉するためのスライド式の扉装置100である。扉装置100によって開閉される開口部11は、例えば、物品を搬送する搬送装置(例えば、物品搬送車)を通過させるための開口部、或いは、装置又は作業者によって移動される物品を通過させるための開口部とされる。また、扉装置100の用途は、例えば、気密性を確保するため、安全のため、或いは、防火のためとされる。
【0014】
図1に示すように、扉装置100は、扉本体1を備えている。扉装置100は、扉本体1を開口部11に対してスライド移動方向Zにスライド移動させて、開口部11を開閉する。スライド移動方向Zは、開口部11の開口面に沿う方向とされる。本実施形態では、開口部11は、開口面が鉛直面に沿うように形成されており、スライド移動方向Zは、上下方向(鉛直方向)に沿う方向である。このような開口部11は、例えば、壁部に設けられる。スライド移動方向Zは、上下方向に沿う方向に限られず、例えば、水平方向に沿う方向とすることもできる。また、開口部11は、開口面が鉛直面に沿う開口部に限られず、例えば、開口面が水平面に沿う開口部とすることもできる。このような開口面が水平面に沿う開口部11は、例えば、階間の床部に設けられる。本実施形態では、後述する軸方向Xは、開口部11の開口面に沿う方向とされ、後述するスライド直交方向Yは、開口部11の開口面に直交する方向とされる。
【0015】
扉本体1の形状及び寸法は、開口部11の形状及び寸法に合わせて設定される。すなわち、扉本体1の形状及び寸法は、
図3に示すように扉本体1が開口部11を覆うことができるように設定される。
図1に示すように、本実施形態では、開口部11は、矩形状に形成されており、扉本体1は、外縁形状が矩形の平板状に形成されている。なお、扉本体1と、扉本体1とは別の扉とによって、開口部11を開閉する構成とすることもでき、この場合、扉本体1の形状及び寸法は、開口部11の一部の形状及び寸法に合わせて設定される。
【0016】
図2及び
図4に示すように、扉装置100は、開口部11に対する位置が固定されたベース部材12を備えている。開口部11は、枠体10により囲まれているため(
図1、
図3参照)、ベース部材12は、枠体10に対する位置も固定されている。なお、
図1及び
図3では、ベース部材12を省略している。ベース部材12は、例えば、床部に固定された柱状部材とされるが、これに限らず、壁部に固定された部材や壁部を構成する部材等を、ベース部材12とすることもできる。
【0017】
図1及び
図3に示すように、枠体10は、開口部11の外縁を構成する部材である。枠体10は、例えば、床部と天井部とに固定されるように設けられる。枠体10は、1つの部材ではなく、複数の部材を連結して構成されてもよい。また、枠体10は、独立した部材である必要はなく、例えば、開口部11が形成された部材(例えば、壁部を構成する部材)における開口部11の周囲の部分が、枠体10を構成していてもよい。
【0018】
図1~
図4に示すように、扉装置100は、扉本体1とベース部材12とを連結し、扉本体1を開口部11に対してスライド移動方向Zにスライド移動可能に支持するリンク装置2を備えている。扉本体1は、当該扉本体1を構成する板状部材の板面が開口部11の開口面に沿う姿勢で、言い換えれば、当該板状部材の厚さ方向(板面に直交する方向)が後述するスライド直交方向Yに沿う姿勢で、リンク装置2に支持される。そして、リンク装置2は、扉本体1を、姿勢を維持した状態でスライド移動方向Zにスライド移動するように支持している。
【0019】
図1及び
図3に示すように、本実施形態では、扉装置100は、一対のリンク装置2を備えている。一対のリンク装置2は、スライド移動方向Zに直交する方向(具体的には、後述する軸方向X)の両側に分かれて配置されている。軸方向Xの一方側を軸方向第1側X1とし、軸方向第1側X1とは反対側を軸方向第2側X2として、一方のリンク装置2は、扉本体1における軸方向第1側X1の端部とベース部材12とを連結し、他方のリンク装置2は、扉本体1における軸方向第2側X2の端部とベース部材12とを連結している。そして、一対のリンク装置2は、軸方向Xに直交する面(具体的には、一対のリンク装置2の間の軸方向Xの中心位置において軸方向Xに直交する面)を対称面として、互いに鏡対称の関係となるように構成されている。すなわち、一方のリンク装置2は、他方のリンク装置2と同じ構成であって、軸方向Xに直交する面に対して当該他方のリンク装置2と鏡対称に配置されている。以下では、一対のリンク装置2を区別する必要がある場合を除き、一対のリンク装置2を区別することなく説明する。
【0020】
リンク装置2は、変換リンク機構3と平行リンク機構4とを備えている。
図2に示すように、変換リンク機構3は、第1リンク5Aと、第2リンク5Bと、第3リンク5Cと、第1関節軸6Aと、第2関節軸6Bと、第3関節軸6Cと、第4関節軸6Dと、第5関節軸6Eと、を備えている。関節軸は、例えば、軸状の部材と、当該軸状の部材を回転可能に支持する軸受と、を用いて構成される。なお、リンク機構が「関節軸を備える」とは、リンク機構が当該関節軸を構成する部分或いは部材を備えることを意味し、リンク機構は軸状の部材を必ずしも備えていなくてもよい。すなわち、リンク機構が備えるリンクが、他の部材(例えば、他のリンク)と関節運動するように連結されていれば、当該関節運動の軸となる関節軸(仮想的な軸であってもよい)を、リンク機構が備えている。
【0021】
図2に示すように、第1関節軸6Aは、第1リンク5Aとベース部材12とを回転可能に連結する関節軸であり、第2関節軸6Bは、第1リンク5Aと第3リンク5Cとを回転可能に連結する関節軸であり、第3関節軸6Cは、第2リンク5Bとベース部材12とを回転可能に連結する関節軸であり、第4関節軸6Dは、第2リンク5Bと第3リンク5Cとを回転可能に連結する関節軸であり、第5関節軸6Eは、第3リンク5Cにおける第4関節軸6Dに対して第2関節軸6Bの側とは反対側の部分と扉本体1とを回転可能に連結する関節軸である。第2リンク5Bは、第3リンク5Cの中間部に連結されている。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、第3関節軸6Cは、第2リンク5Bを、ベース部材12に固定された固定部材15に対して回転可能に連結することで、第2リンク5Bとベース部材12とを回転可能に連結している。また、本実施形態では、第5関節軸6Eは、第3リンク5Cを、扉本体1に固定された支持部材16に対して回転可能に連結することで、第3リンク5Cと扉本体1とを回転可能に連結している。
【0023】
変換リンク機構3が上記のような5つの関節軸(6A~6E)を備えるため、変換リンク機構3は限定連鎖を構成しており、変換リンク機構3の自由度は“1”となっている。なお、変換リンク機構3が備える5つの関節軸(6A~6E)は、それぞれの軸心が互いに平行となるように配置されている。そのため、第1関節軸6Aの軸心に平行な方向を軸方向X(
図1参照)とすると、5つの関節軸(6A~6E)は、それぞれの軸心が軸方向Xに沿うように配置されている。軸方向Xは、スライド移動方向Zに直交する方向とされる。本実施形態では、軸方向Xは、水平方向に沿う方向である。
【0024】
本実施形態では、扉装置100は、駆動源13を備えている。駆動源13は、第1関節軸6Aを回転駆動するように(言い換えれば、第1リンク5Aを第1関節軸6A回りに回転駆動するように)構成されている。
図2に示すように、駆動源13は、ベース部材12に取り付けられており、駆動源13は、当該駆動源13から回転を出力するための回転部材(すなわち、ベース部材12に対して回転可能な部材)を備えている。そして、第1関節軸6Aは、第1リンク5Aと、駆動源13の上記回転部材とを連結(例えば、一体的に回転するように連結)することで、第1リンク5Aとベース部材12とを回転可能に連結している。駆動源13として、例えば、電動機、油圧式ロータリーシリンダ、又は、空気圧式ロータリーシリンダ等を用いることができる。
【0025】
第1関節軸6A以外の関節軸である第2関節軸6B、第3関節軸6C、第4関節軸6D、及び第5関節軸6Eには、関節軸を回転駆動する駆動源は設けられていない。そのため、第1関節軸6A以外の各関節軸においては、当該関節軸において連結された2つの部材が、第1関節軸6Aの回転に応じて(言い換えれば、第1リンク5Aの回転に応じて)従動的に相対回転する。
【0026】
図2に示すように、第2リンク5Bは、第1リンク5Aよりもリンク長が長く、第3リンク5Cは、第2リンク5Bよりもリンク長が長い。ここで、「リンク長」は、リンクにおける最も離れた2つの関節軸の間の距離(直線距離)である。具体的には、第1リンク5Aのリンク長は、第1関節軸6Aと第2関節軸6Bとの距離であり、第2リンク5Bのリンク長は、第3関節軸6Cと第4関節軸6Dとの距離であり、第3リンク5Cのリンク長は、第2関節軸6Bと第5関節軸6Eとの距離である。
図2に示すように、軸方向Xに沿う軸方向視で、第4関節軸6Dは、第2関節軸6Bと第5関節軸6Eとを通る仮想直線上に配置されている。そのため、第3リンク5Cのリンク長は、第2関節軸6Bと第4関節軸6Dとの距離と、第4関節軸6Dと第5関節軸6Eとの距離との和に等しい。
【0027】
図2に第5関節軸6Eの移動軌跡20を示すように、変換リンク機構3は、第1関節軸6Aの回転運動を、第5関節軸6Eのスライド移動方向Zに沿う直線状の移動を含む運動に変換するように構成されている。なお、
図2に示す移動軌跡20は、第1関節軸6Aが360度回転した場合の第5関節軸6Eの移動軌跡であるが、扉本体1の開閉動作は、360度未満の角度範囲における第1関節軸6Aの往復回転運動によって行われる。そのため、扉本体1の開閉動作に伴う第5関節軸6Eの移動範囲は、
図2に示す移動軌跡20の一部の範囲(具体的には、第1関節軸6Aの回転範囲に応じた範囲)となる。
【0028】
本実施形態では、第1関節軸6Aと第2関節軸6Bとの距離を“1”とした場合に、第1関節軸6Aと第3関節軸6Cとの距離が“2”となり、第3関節軸6Cと第4関節軸6Dとの距離が“2.5”となり、第2関節軸6Bと第4関節軸6Dとの距離が“2.5”となり、第4関節軸6Dと第5関節軸6Eとの距離が“2.5”となるように、各関節軸が配置されている。このように各関節軸が配置されているため、変換リンク機構3は、いわゆるチェビシェフリンク機構(チェビシェフリンク機構と同族のリンク機構を含む)である。
【0029】
図2に示すように、軸方向Xに沿う軸方向視でスライド移動方向Zに直交する方向をスライド直交方向Yとし、スライド直交方向Yの一方側を直交方向第1側Y1とし、直交方向第1側Y1とは反対側を直交方向第2側Y2とする。スライド直交方向Yは、軸方向X及びスライド移動方向Zに直交する方向である。本実施形態では、スライド直交方向Yは、水平方向に沿う方向である。また、スライド移動方向Zの一方側(本実施形態では、下側)をスライド移動方向第1側Z1とし、スライド移動方向第1側Z1とは反対側(本実施形態では、上側)をスライド移動方向第2側Z2とする。本実施形態では、第1関節軸6Aは、第3関節軸6Cに対してスライド移動方向第1側Z1に、第3関節軸6Cとスライド直交方向Yの同じ位置に配置されている。また、第5関節軸6Eは、第1関節軸6A及び第3関節軸6Cに対して直交方向第2側Y2に配置されている。そして、変換リンク機構3はチェビシェフリンク機構であるため、第5関節軸6Eの移動軌跡20は、軸方向Xに沿う軸方向視で、スライド移動方向Zに沿う直線状の直線状領域21と、直線状領域21の端部から離れるに従って直交方向第2側Y2へ向かう湾曲状領域22と、を備えている。
【0030】
ここで、直線状領域21と湾曲状領域22との2つの境界部のうち、スライド移動方向第1側Z1に配置された方を第1境界部23Aとし、スライド移動方向第2側Z2に配置された方を第2境界部23Bとする。湾曲状領域22におけるスライド移動方向Zの中央部よりもスライド移動方向第1側Z1の部分(以下、「第1側部分」という)は、第1境界部23Aから離れるに従って直交方向第2側Y2へ向かうように形成され、湾曲状領域22におけるスライド移動方向Zの中央部よりもスライド移動方向第2側Z2の部分(以下、「第2側部分」という)は、第2境界部23Bから離れるに従って直交方向第2側Y2へ向かうように形成されている。これにより、湾曲状領域22は、全体として、軸方向視で直交方向第2側Y2へ向かって凸となる形状に形成されている。なお、本実施形態では、扉本体1の開閉動作に伴い、第5関節軸6Eは、第1境界部23Aを経由して直線状領域21内の位置と湾曲状領域22の第1側部分内の位置との間を往復移動する。そのため、扉本体1の開閉動作に伴う第5関節軸6Eの移動範囲に、湾曲状領域22の第2側部分は含まれない。
【0031】
図2に示すように、本実施形態では、湾曲状領域22の第1側部分は、第1境界部23Aから離れるに従って、スライド移動方向第1側Z1へ向かった後、スライド移動方向Zの移動方向を反転させて、スライド移動方向第2側Z2へ向かうように形成されている。すなわち、湾曲状領域22の第1側部分における直交方向第1側Y1の部分は、第1境界部23Aから離れるに従って、スライド移動方向第1側Z1へ向かうように形成され、湾曲状領域22の第1側部分における直交方向第2側Y2の部分は、第1境界部23Aから離れるに従って、スライド移動方向第2側Z2へ向かうように形成されている。また、本実施形態では、湾曲状領域22の第2側部分は、第2境界部23Bから離れるに従って、スライド移動方向第2側Z2へ向かった後、スライド移動方向Zの移動方向を反転させて、スライド移動方向第1側Z1へ向かうように形成されている。すなわち、湾曲状領域22の第2側部分における直交方向第1側Y1の部分は、第2境界部23Bから離れるに従って、スライド移動方向第2側Z2へ向かうように形成され、湾曲状領域22の第2側部分における直交方向第2側Y2の部分は、第2境界部23Bから離れるに従って、スライド移動方向第1側Z1へ向かうように形成されている。
【0032】
リンク装置2は、上記のような変換リンク機構3に加えて、平行リンク機構4を備えている。
図2に示すように、平行リンク機構4は、ベース部材12に対して回転可能に連結される第6関節軸6Fと、扉本体1に対して回転可能に連結される第8関節軸6Hと、を備えている。そして、平行リンク機構4は、第8関節軸6Hが第5関節軸6Eと平行移動するように(言い換えれば、第8関節軸6Hが、第5関節軸6Eと同じ方向に同じ距離だけ移動するように)、変換リンク機構3に連結されている。本実施形態では、第6関節軸6Fが「ベース側関節軸」に相当し、第8関節軸6Hが「扉側関節軸」に相当する。
【0033】
このような平行リンク機構4をリンク装置2が備えるため、第5関節軸6E及び第8関節軸6Hの移動軌跡に沿って扉本体1が移動するように、扉本体1をリンク装置2によって支持することができる。そのため、扉本体1を開閉駆動するリンク装置2とは別に直動ガイド等の案内装置を設ける必要はない。リンク装置2とは別に案内装置を設ける必要がある場合には、案内装置を構成する部材が扉本体1や扉本体1を支持する部材に取り付けられるため、扉装置100の全体や扉本体1の重量が大きくなりやすい。これに対して、この扉装置100では、リンク装置2とは別に案内装置を設ける必要がないため、扉装置100の全体や扉本体1の軽量化を図りやすい。扉本体1の軽量化により、例えば、扉本体1の開閉動作の高速化や、扉本体1を開閉動作させるための操作力の低減を図ることができる。
【0034】
平行リンク機構4の構成について具体的に説明する。
図2に示すように、平行リンク機構4は、第4リンク5Dと、第5リンク5Eと、第6リンク5Fと、第6関節軸6Fと、第7関節軸6Gと、第8関節軸6Hと、を備えている。第6関節軸6Fは、第4リンク5Dとベース部材12とを回転可能に連結する関節軸であり、第7関節軸6Gは、第4リンク5Dと第5リンク5Eとを回転可能に連結する関節軸であり、第8関節軸6Hは、第5リンク5Eと扉本体1とを回転可能に連結する関節軸である。そして、第6リンク5Fは、第7関節軸6Gを介して第4リンク5D及び第5リンク5Eと回転可能に連結され、第4関節軸6Dを介して第2リンク5B及び第3リンク5Cと回転可能に連結されている。平行リンク機構4が備える3つの関節軸(6F~6H)は、それぞれの軸心が軸方向Xに沿うように配置されている。
【0035】
第4リンク5Dのリンク長(具体的には、第6関節軸6Fと第7関節軸6Gとの距離)は、第2リンク5Bのリンク長に等しく、第5リンク5Eのリンク長(具体的には、第7関節軸6Gと第8関節軸6Hとの距離)は、第4関節軸6Dと第5関節軸6Eとの距離に等しい。また、第6関節軸6Fは、第3関節軸6Cとスライド直交方向Yの同じ位置に配置され、第7関節軸6Gは、第4関節軸6Dとスライド直交方向Yの同じ位置に配置され、第8関節軸6Hは、第5関節軸6Eとスライド直交方向Yの同じ位置に配置されている。そして、第3関節軸6Cと第6関節軸6Fとの距離、第4関節軸6Dと第7関節軸6Gとの距離、及び、第5関節軸6Eと第8関節軸6Hとの距離の3つの距離が互いに等しくなるように、第6関節軸6F、第7関節軸6G、及び第8関節軸6Hが配置されている。これにより、第8関節軸6Hが、第5関節軸6Eとスライド直交方向Yの同じ位置において、第5関節軸6Eとスライド移動方向Zの同じ側に同じ距離だけ移動するように、平行リンク機構4が変換リンク機構3に連結されている。
【0036】
図2に示すように、本実施形態では、第6関節軸6Fは、第4リンク5Dを、ベース部材12に固定された固定部材15に対して回転可能に連結することで、第4リンク5Dとベース部材12とを回転可能に連結している。また、本実施形態では、第8関節軸6Hは、第5リンク5Eを、扉本体1に固定された支持部材16に対して回転可能に連結することで、第5リンク5Eと扉本体1とを回転可能に連結している。
【0037】
第6関節軸6F、第7関節軸6G、及び第8関節軸6Hには、関節軸を回転駆動する駆動源は設けられていない。そのため、第6関節軸6F、第7関節軸6G、及び第8関節軸6Hの各関節軸においては、当該関節軸において連結された2つの部材が、第1関節軸6Aの回転に応じて(言い換えれば、第1リンク5Aの回転に応じて)従動的に相対回転する。
【0038】
なお、本実施形態では、第6関節軸6Fが、第3関節軸6Cに対してスライド移動方向第2側Z2に配置され、第7関節軸6Gが、第4関節軸6Dに対してスライド移動方向第2側Z2に配置され、第8関節軸6Hが、第5関節軸6Eに対してスライド移動方向第2側Z2に配置されているが、第6関節軸6Fが、第3関節軸6Cに対してスライド移動方向第1側Z1に配置され、第7関節軸6Gが、第4関節軸6Dに対してスライド移動方向第1側Z1に配置され、第8関節軸6Hが、第5関節軸6Eに対してスライド移動方向第1側Z1に配置される構成とすることもできる。
【0039】
図2に示すように、扉本体1は、枠体10に対して直交方向第1側Y1に配置されている。そして、扉本体1は、開口部11を閉塞する閉塞位置P1(
図4参照)と開口部11を開放する開放位置P2(
図1参照)との間でスライド移動方向Zにスライド移動を行うように、リンク装置2によって支持されている。なお、
図2は、扉本体1が、開放位置P2と閉塞位置P1との間における開放位置P2の近傍に位置する状態を示し、
図3は、扉本体1が、開放位置P2と閉塞位置P1との間における閉塞位置P1の近傍に位置する状態を示している。扉本体1のスライド移動方向Zの位置を維持する場合は、例えば、駆動源13が出力する駆動力により、或いは、駆動源13に設けられたブレーキ(例えば、通電しない状態でブレーキが作動する構造の無励磁作動型電磁ブレーキ)の制動力により、扉本体1の移動が規制される。
【0040】
本実施形態では、閉塞位置P1は、開放位置P2よりもスライド移動方向第1側Z1に設定されている。そのため、リンク装置2は、扉本体1をスライド移動方向第1側Z1に移動させることで、開口部11を閉じ、扉本体1をスライド移動方向第2側Z2に移動させることで、開口部11を開く。なお、閉塞位置P1が、開放位置P2よりもスライド移動方向第2側Z2に設定される構成とすることもでき、この場合、リンク装置2は、扉本体1をスライド移動方向第1側Z1に移動させることで、開口部11を開き、扉本体1をスライド移動方向第2側Z2に移動させることで、開口部11を閉じる。
【0041】
開放位置P2は、扉本体1が枠体10に対して直交方向第1側Y1に離間して配置される位置に設定されている。また、閉塞位置P1は、スライド直交方向Yに沿う方向視で扉本体1が開口部11を覆う位置に設定されている。なお、扉本体1が閉塞位置P1に配置されている状態で、扉本体1と枠体10との間に隙間が形成されていてもよい。本実施形態では、以下に述べるように、閉塞位置P1において、扉本体1を枠体10に押し当てて、扉本体1と枠体10との間の隙間をなくす(実質的になくす)ようにしている。
【0042】
図4に示すように、本実施形態では、直線状領域21と湾曲状領域22との境界部(具体的には、第1境界部23A)が、扉本体1の開放位置P2から閉塞位置P1までの移動軌跡における閉塞位置P1の手前に配置されている。言い換えれば、第1境界部23Aは、扉本体1が開放位置P2から閉塞位置P1まで移動する場合の第5関節軸6Eの移動軌跡における、閉塞位置P1に対応する位置(具体的には、扉本体1が閉塞位置P1に位置する場合の第5関節軸6Eの位置)の手前に配置されている。
【0043】
具体的には、開放位置P2は、第5関節軸6Eが直線状領域21(例えば、直線状領域21におけるスライド移動方向第2側Z2の端部或いはその近傍)に配置されるように設定され、閉塞位置P1は、第5関節軸6Eが湾曲状領域22(具体的には、上述した第1側部分)に配置されるように設定されている(
図4参照)。上述したように、湾曲状領域22の第1側部分における直交方向第1側Y1の部分は、第1境界部23Aから離れるに従って、スライド移動方向第1側Z1へ向かうように形成され、湾曲状領域22の第1側部分における直交方向第2側Y2の部分は、第1境界部23Aから離れるに従って、スライド移動方向第2側Z2へ向かうように形成されている。閉塞位置P1は、湾曲状領域22の第1側部分における直交方向第1側Y1の部分に第5関節軸6Eが配置されるように設定しても、湾曲状領域22の第1側部分における直交方向第2側Y2の部分に第5関節軸6Eが配置されるように設定してもよい。なお、上述したように、閉塞位置P1が開放位置P2よりもスライド移動方向第2側Z2に設定される構成とすることもでき、この場合、第2境界部23Bが、扉本体1の開放位置P2から閉塞位置P1までの移動軌跡における閉塞位置P1の手前に配置されるようにするとよい。この場合、閉塞位置P1は、第5関節軸6Eが湾曲状領域22の第2側部分に配置されるように設定される。
【0044】
上記のように開放位置P2及び閉塞位置P1を設定することで、開放位置P2から閉塞位置P1の手前の位置までの扉本体1の移動軌跡を、第5関節軸6Eが直線状領域21を移動するように設定することができる。そのため、開放位置P2から閉塞位置P1の手前の位置まで、扉本体1が枠体10に対して直交方向第1側Y1に離間して配置された状態で(
図2参照)、扉本体1を枠体10に対して平行に(言い換えれば、スライド移動方向Zに平行に)スライド移動させることができる。そして、閉塞位置P1の手前からは扉本体1を直交方向第2側Y2に移動させて(すなわち、枠体10に近づけて)、扉本体1と枠体10との隙間を小さくし、或いは当該隙間をなくすことができる(
図4参照)。これにより、扉本体1による開口部11の密閉性を向上させることができる。本実施形態では、閉塞位置P1において扉本体1が枠体10に押し当てられるように、閉塞位置P1を設定している。
【0045】
ここで、第1リンク5Aの第1関節軸6A回りの回転角度θ(
図2、
図4参照)を以下のように定義する。軸方向Xに沿う軸方向視で、第1関節軸6Aと第3関節軸6Cとを通る基準直線(仮想線)に対して第2関節軸6Bと第4関節軸6Dとが同じ側に配置され、且つ、第1関節軸6Aと第2関節軸6Bとを通る直線(仮想線)が当該基準直線に直交するように第1リンク5Aが配置されている状態における、第1リンク5Aの回転角度θを0度とする。そして、第1リンク5Aの回転角度θが0度の状態から第2関節軸6Bが第3関節軸6Cから離れる側に第1リンク5Aが第1関節軸6A回りに回転する方向を正回転方向とする。本実施形態では、
図1に示す状態における第1リンク5Aの回転角度θ(負の角度)と、
図4に示す状態における第1リンク5Aの回転角度θ(正の角度)との間が、第1リンク5Aの動作範囲となる。
【0046】
第1リンク5Aは、当該第1リンク5Aの動作範囲において、正方向及び逆方向に回転駆動される。具体的には、扉本体1を開放位置P2から閉塞位置P1に移動させる場合には、第1リンク5Aは、正回転方向に(すなわち、回転角度θが大きくなる側に)回転され、扉本体1を閉塞位置P1から開放位置P2に移動させる場合には、第1リンク5Aは、正回転方向とは反対方向の負回転方向に(すなわち、回転角度θが小さくなる側に)回転される。
図3及び
図4から明らかなように、仮に、第3リンク5Cの軸方向視での形状が、第2関節軸6Bと第5関節軸6Eとを結ぶ直線状であった場合、第1リンク5Aの回転角度θが180度以上となると、第1リンク5Aと第3リンク5Cとが軸方向視で重なる。本実施形態では、扉本体1を閉塞位置P1に移動させるために、回転角度θが180度以上の角度(具体的には、
図4に示す角度)となるまで第1リンク5Aを回転させる必要があるため、仮に第3リンク5Cの軸方向視での形状が上記のような直線状であった場合、第1リンク5Aと第3リンク5Cとを軸方向Xにずらして配置する必要がある。
【0047】
これに対して、本実施形態では、第3リンク5Cに以下に述べる湾曲部Cを形成することで、第1リンク5Aと第3リンク5Cとを軸方向Xの同じ位置に配置しつつ、回転角度θが180度以上の角度(具体的には、
図4に示す角度)となるまで第1リンク5Aを回転させることを可能としている。すなわち、本実施形態では、第1リンク5Aと第3リンク5Cとが、軸方向Xの同じ位置に配置されている。
【0048】
図2に示すように、第3リンク5Cは、第2関節軸6Bに対して第4関節軸6Dの側において第2関節軸6Bに隣接する部分に、軸方向Xに沿う軸方向視で、第2リンク5Bが配置されている側とは反対側に向かって凸となるように湾曲された湾曲部Cを備えている。そして、湾曲部Cは、第1リンク5Aの動作範囲の全域で、第1リンク5Aと第3リンク5Cとが干渉しないように(言い換えれば、第1リンク5Aと第3リンク5Cとが軸方向視で重ならないように)形成されている。具体的には、
図4に示すように、扉本体1を閉塞位置P1に移動させるために、回転角度θが第1リンク5Aの動作範囲における最大角度となるまで第1リンク5Aを回転させた場合であっても、第1リンク5Aと第3リンク5Cとが軸方向視で重ならないように、湾曲部Cが形成されている。なお、本実施形態では、第3リンク5C以外の各リンクは、軸方向視での形状が直線状とされている。
【0049】
ところで、上述したように、本実施形態では、扉装置100は、一対のリンク装置2を備えている。そして、本実施形態では、1つの駆動源13の駆動力により一対のリンク装置2を駆動するように構成されている。具体的には、
図1に示すように、一方のリンク装置2の第1関節軸6A(
図2参照)の回転に連動して他方のリンク装置2の第1関節軸6Aが回転するように、これら2つの第1関節軸6Aを連結軸14によって連結している(具体的には、一体的に回転するように連結している)。連結軸14は、軸方向Xに沿って延びるように配置されている。このように2つの第1関節軸6Aが連結されているため、一方のリンク装置2の第1関節軸6Aを回転駆動するように駆動源13を設けることで、当該駆動源13の駆動力により一対のリンク装置2を互いに同じ動作を行うように駆動して、開口部11を開閉することができる。なお、連結軸14が設けられず、一方のリンク装置2を駆動するための駆動源13と、他方のリンク装置2を駆動するための駆動源13とが各別に設けられる構成とすることも可能である。
【0050】
〔第2の実施形態〕
扉装置の第2の実施形態について、図面(
図5~
図8)を参照して説明する。以下では、本実施形態の扉装置について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。特に明記しない点については、第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。なお、
図5~
図8では、枠体10及び開口部11を省略している。また、
図5及び
図7では、
図1及び
図3と同様に、ベース部材12を省略している。
【0051】
図5に示すように、本実施形態では、扉装置100は、第1の実施形態での扉本体1に相当する第1扉本体1Aと、第1の実施形態でのリンク装置2に相当する第1リンク装置2Aと、を備えている。なお、本実施形態では、第1固定部材15Aが第1の実施形態での固定部材15に相当し、第1支持部材16Aが第1の実施形態での支持部材16に相当する。そして、本実施形態では、扉装置100は、更に、第2扉本体1Bと、第2扉本体1Bとベース部材12とを連結し、第2扉本体1Bを開口部11に対してスライド移動方向Zにスライド移動可能に支持する第2リンク装置2Bと、を備えている。第2リンク装置2Bは、第1リンク装置2Aと同様に、変換リンク機構3と平行リンク機構4とを備えている。また、第2扉本体1Bには、第1支持部材16Aに対応する第2支持部材16Bが固定され、ベース部材12には、第1固定部材15Aに対応する第2固定部材15Bが固定されている。本実施形態では、扉装置100は、第1扉本体1Aと第2扉本体1Bとをスライド移動方向Zの互いに反対側にスライド移動させることで、開口部11を開閉する。
【0052】
図5に示すように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、扉装置100は、一対の第1リンク装置2Aを備えている。そして、本実施形態では、扉装置100は、更に、一対の第2リンク装置2Bを備えている。一対の第1リンク装置2Aと同様に、一方の第2リンク装置2Bは、他方の第2リンク装置2Bと同じ構成であって、軸方向Xに直交する面に対して当該他方の第2リンク装置2Bと鏡対称に配置されている。なお、本実施形態では、第1の実施形態とは異なり、一方の第1リンク装置2Aを駆動するための駆動源13と、他方の第1リンク装置2Aを駆動するための駆動源13とが各別に設けられている。そのため、第1の実施形態とは異なり、連結軸14は設けられていない。なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、連結軸14を設け、1つの駆動源13の駆動力により一対の第1リンク装置2Aを駆動するようにしてもよい。
【0053】
第2リンク装置2Bは、第1リンク装置2Aと同じ構成である。すなわち、
図6に示すように、第2リンク装置2Bが備える変換リンク機構3は、第1リンク5Aに対応する第7リンク5Gと、第2リンク5Bに対応する第8リンク5Hと、第3リンク5Cに対応する第9リンク5Iと、第1関節軸6Aに対応する第9関節軸6Iと、第2関節軸6Bに対応する第10関節軸6Jと、第3関節軸6Cに対応する第11関節軸6Kと、第4関節軸6Dに対応する第12関節軸6Lと、第5関節軸6Eに対応する第13関節軸6Mと、を備えている。
【0054】
また、
図6に示すように、第2リンク装置2Bが備える平行リンク機構4は、第4リンク5Dに対応する第10リンク5Jと、第5リンク5Eに対応する第11リンク5Kと、第6リンク5Fに対応する第12リンク5Lと、第6関節軸6Fに対応する第14関節軸6Nと、第7関節軸6Gに対応する第15関節軸6Oと、第8関節軸6Hに対応する第16関節軸6Pと、を備えている。
【0055】
このように、第2リンク装置2Bは、第1リンク装置2Aと同じ構成である。そして、
図6及び
図8に示すように、第2リンク装置2Bは、軸方向Xに沿う軸方向視で、スライド直交方向Yに沿う仮想基準線Lに対して第1リンク装置2Aと鏡対称に配置されている。そのため、第2リンク装置2Bについてのスライド移動方向第2側Z2が、第1リンク装置2Aについてのスライド移動方向第1側Z1に対応し、第2リンク装置2Bについてのスライド移動方向第1側Z1が、第1リンク装置2Aについてのスライド移動方向第2側Z2に対応する。
【0056】
本実施形態では、第2リンク装置2Bが備える各関節軸(6I~6P)は、第1リンク装置2Aが備える各関節軸(6A~6H)よりもスライド移動方向第1側Z1に配置されている。そして、第2扉本体1Bは、第1扉本体1Aよりもスライド移動方向第1側Z1に配置されている。そのため、第1リンク装置2Aが第1扉本体1Aをスライド移動方向第1側Z1に移動させると共に、第2リンク装置2Bが第2扉本体1Bをスライド移動方向第2側Z2に移動させことで(
図7、
図8参照)、開口部11が閉じられる。また、第1リンク装置2Aが第1扉本体1Aをスライド移動方向第2側Z2に移動させると共に、第2リンク装置2Bが第2扉本体1Bをスライド移動方向第1側Z1に移動させことで(
図5、
図6参照)、開口部11が開かれる。
【0057】
図8に示すように、第1扉本体1Aの閉塞位置P1及び第2扉本体1Bの閉塞位置P1は、第1扉本体1A及び第2扉本体1Bがそれぞれの閉塞位置P1に配置された状態で、第1扉本体1Aと第2扉本体1Bとの隙間がなくなるように(実質的になくなるように)設定されている。本実施形態では、第1リンク装置2Aについて、開放位置P2から閉塞位置P1までの第1扉本体1Aの移動軌跡を、第5関節軸6Eが直線状領域21を移動するように設定している。すなわち、第1の実施形態とは異なり、第1境界部23Aが、第1扉本体1Aの開放位置P2から閉塞位置P1までの移動軌跡の外側に配置されている。そのため、本実施形態では、開放位置P2から閉塞位置P1まで、第1扉本体1Aは、枠体10に対して直交方向第1側Y1に離間して配置された状態で、枠体10に対して平行に(言い換えれば、スライド移動方向Zに平行に)スライド移動される。第2リンク装置2Bも同様に構成されている。
【0058】
本実施形態では、扉装置100は、1つの駆動源13の駆動力により第1扉本体1Aと第2扉本体1Bとをスライド移動方向Zの互いに反対側にスライド移動させて、開口部11を開閉するように構成されている。具体的には、
図5及び
図6に示すように、扉装置100は、駆動伝達機構7を備えている。そして、駆動伝達機構7は、第1リンク装置2Aの第1関節軸6Aと第2リンク装置2Bの第9関節軸6Iとを互いに反対向きに回転駆動するように、駆動源13の駆動力を第1リンク装置2A及び第2リンク装置2Bに伝達するように構成されている。本実施形態では、第9関節軸6Iが「第2リンク装置の第1関節軸」に相当する。
【0059】
図5及び
図6に示す例では、駆動伝達機構7は、第1関節軸6Aと一体的に回転するように連結された第1ギヤ8A(ここでは、外歯の平歯車)と、第9関節軸6Iと一体的に回転するように連結された第2ギヤ8B(ここでは、外歯の平歯車)と、を備えている。第1ギヤ8Aと第2ギヤ8Bとは互いに噛み合うように配置されている。そして、駆動源13は、第1関節軸6Aを回転駆動するように設けられている。よって、駆動源13の駆動力により第1関節軸6Aが回転駆動されると、第1ギヤ8Aと第2ギヤ8Bとの噛み合い部を介して伝達される駆動力によって第9関節軸6Iが、第1関節軸6Aとは反対向きに回転駆動される。
【0060】
本実施形態では、第1扉本体1A及び第1リンク装置2Aの重量と、第2扉本体1B及び第2リンク装置2Bの重量とが同等である。具体的には、第1扉本体1Aの重量と第2扉本体1Bの重量とを同等とし、第1リンク装置2Aの重量と第2リンク装置2Bの重量とを同等とすることで、第1扉本体1A及び第1リンク装置2Aの重量と、第2扉本体1B及び第2リンク装置2Bの重量とを同等としている。
【0061】
ここでは、扉装置100が駆動伝達機構7を備える場合について説明したが、扉装置100が駆動伝達機構7を備えず、第1関節軸6Aを回転駆動する駆動源13と、第9関節軸6Iを回転駆動する駆動源13とが各別に設けられる構成とすることもできる。このような場合等において、第2リンク装置2Bが備える各関節軸(6I~6P)が、第1リンク装置2Aが備える各関節軸(6A~6H)よりもスライド移動方向第2側Z2に配置され、第2扉本体1Bが、第1扉本体1Aよりもスライド移動方向第2側Z2に配置される構成とすることもできる。この場合、第1リンク装置2Aが第1扉本体1Aをスライド移動方向第2側Z2に移動させると共に、第2リンク装置2Bが第2扉本体1Bをスライド移動方向第1側Z1に移動させことで、開口部11が閉じられ、第1リンク装置2Aが第1扉本体1Aをスライド移動方向第1側Z1に移動させると共に、第2リンク装置2Bが第2扉本体1Bをスライド移動方向第2側Z2に移動させことで、開口部11が開かれる。
【0062】
〔その他の実施形態〕
次に、扉装置のその他の実施形態について説明する。
【0063】
(1)上記の各実施形態では、第3リンク5Cに湾曲部Cを形成することで、第1リンク5Aの動作範囲の全域で、第1リンク5Aと第3リンク5Cとが干渉しないようにする構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されない。例えば、第3リンク5Cが湾曲部Cを備えず、第1リンク5Aと第3リンク5Cとを軸方向Xにずらして配置することで、第1リンク5Aの動作範囲の全域で、第1リンク5Aと第3リンク5Cとが干渉しないようしてもよい。例えば、第1の実施形態において、連結軸14が設けられず、一方のリンク装置2を駆動するための駆動源13と、他方のリンク装置2を駆動するための駆動源13とが各別に設けられる構成とした場合に、第3リンク5Cを、第1リンク5Aに対して軸方向Xにおける駆動源13が配置された側とは反対側にずらして配置することで、第1リンク5Aの動作範囲の全域で、第1リンク5Aと第3リンク5Cとが干渉しないようにすることができる。
【0064】
(2)上記第1の実施形態では、第1境界部23Aが、扉本体1の開放位置P2から閉塞位置P1までの移動軌跡における閉塞位置P1の手前に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1の実施形態において、第1境界部23Aが、扉本体1の開放位置P2から閉塞位置P1までの移動軌跡の外側に配置されるようにしてもよい。また、上記第2の実施形態では、第1境界部23Aが、扉本体1の開放位置P2から閉塞位置P1までの移動軌跡の外側に配置される構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第2の実施形態において、第1境界部23Aが、第1扉本体1Aの開放位置P2から閉塞位置P1までの移動軌跡における閉塞位置P1の手前に配置されるように、第1リンク装置2Aを構成し、第2リンク装置2Bも同様に構成してもよい。
【0065】
(3)上記第2の実施形態では、第1扉本体1A及び第1リンク装置2Aの重量と、第2扉本体1B及び第2リンク装置2Bの重量とが同等である構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1扉本体1A及び第1リンク装置2Aの重量と、第2扉本体1B及び第2リンク装置2Bの重量とが、同等とみなせない程度に異なっていてもよい。
【0066】
(4)上記の各実施形態では、扉装置100が、第1関節軸6Aを回転駆動する駆動源13を備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、駆動源13が、第1関節軸6A以外の関節軸を回転駆動する構成とすることもできる。また、扉装置100が駆動源13を備えず、例えば第1関節軸6Aが手動で(すなわち、人力で)回転駆動される構成とすることもできる。
【0067】
(5)上記第1の実施形態では、扉装置100が一対のリンク装置2を備える構成を例として説明し、上記第2の実施形態では、扉装置100が一対の第1リンク装置2A及び一対の第2リンク装置2Bを備える構成を例として説明した。しかし、本開示はそのような構成に限定されず、第1の実施形態において、扉装置100がリンク装置2を1つのみ備える構成とすることや、第2の実施形態において、扉装置100が第1リンク装置2A及び第2リンク装置2Bを1つずつ備える構成とすることもできる。
【0068】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用すること(その他の実施形態として説明した実施形態同士の組み合わせを含む)も可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0069】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した扉装置の概要について説明する。
【0070】
開口部を開閉するためのスライド式の扉装置であって、扉本体と、前記開口部に対する位置が固定されたベース部材と、前記扉本体と前記ベース部材とを連結し、前記扉本体を前記開口部に対してスライド移動方向にスライド移動可能に支持するリンク装置と、を備え、前記リンク装置は、変換リンク機構と、平行リンク機構と、を備え、前記変換リンク機構は、第1リンクと、前記第1リンクよりもリンク長が長い第2リンクと、前記第2リンクよりもリンク長が長い第3リンクと、前記第1リンクと前記ベース部材とを回転可能に連結する第1関節軸と、前記第1リンクと前記第3リンクとを回転可能に連結する第2関節軸と、前記第2リンクと前記ベース部材とを回転可能に連結する第3関節軸と、前記第2リンクと前記第3リンクとを回転可能に連結する第4関節軸と、前記第3リンクにおける前記第4関節軸に対して前記第2関節軸の側とは反対側の部分と前記扉本体とを回転可能に連結する第5関節軸と、を備え、前記変換リンク機構は、前記第1関節軸の回転運動を、前記第5関節軸の前記スライド移動方向に沿う直線状の移動を含む運動に変換するように構成され、前記平行リンク機構は、前記ベース部材に対して回転可能に連結されるベース側関節軸と、前記扉本体に対して回転可能に連結される扉側関節軸と、を備え、前記平行リンク機構は、前記扉側関節軸が前記第5関節軸と平行移動するように、前記変換リンク機構に連結されている。
【0071】
本構成では、扉本体が、変換リンク機構におけるスライド移動方向に沿う直線状の移動を含む運動を行う第5関節軸と、平行リンク機構における第5関節軸と平行移動する扉側関節軸と、に連結されている。よって、変換リンク機構及び平行リンク機構を備えたリンク装置によって、扉本体を、姿勢を維持した状態でスライド移動方向にスライド移動するように支持することができる。
【0072】
このように、本構成ではリンク装置を用いて扉本体を開閉駆動するため、ベルト等の索状体を用いて扉本体を開閉駆動する場合に比べて、発塵を少なく抑えることができる。また、ベルト等の索状体を用いて扉本体を開閉駆動する場合に比べて部品の交換周期を長くしやすく、部品の交換を不要とすることも可能であり、メンテナンス作業の負担を軽減することもできる。更には、本構成によれば、第5関節軸及び扉側関節軸の移動軌跡に沿って扉本体が移動するように、扉本体をリンク装置によって支持することができる。そのため、扉本体を開閉駆動するリンク装置とは別に直動ガイド等の案内装置を設ける必要はなく、そのような案内装置が必要な場合に比べて、コストの低減を図りやすい。
【0073】
以上のように、本構成によれば、発塵の低減やメンテナンス作業の負担軽減を図りやすく、更には、コストの低減も図りやすくなっている。
【0074】
ここで、前記平行リンク機構は、第4リンクと、第5リンクと、第6リンクと、前記第4リンクと前記ベース部材とを回転可能に連結する前記ベース側関節軸としての第6関節軸と、前記第4リンクと前記第5リンクとを回転可能に連結する第7関節軸と、前記第5リンクと前記扉本体とを回転可能に連結する前記扉側関節軸としての第8関節軸と、を備え、前記第6リンクは、前記第7関節軸を介して前記第4リンク及び前記第5リンクと回転可能に連結され、前記第4関節軸を介して前記第2リンク及び前記第3リンクと回転可能に連結されていると好適である。
【0075】
本構成によれば、扉側関節軸としての第8関節軸が第5関節軸と平行移動するように平行リンク機構が変換リンク機構に連結されたリンク装置を、適切に実現することができる。
【0076】
また、前記開口部は、枠体により囲まれており、前記第1関節軸の軸心に平行な方向を軸方向とし、前記軸方向に沿う軸方向視で前記スライド移動方向に直交する方向をスライド直交方向として、前記扉本体は、前記枠体に対して前記スライド直交方向の一方側である直交方向第1側に配置され、前記開口部を閉塞する閉塞位置と前記開口部を開放する開放位置との間で前記スライド移動方向にスライド移動を行うように、前記リンク装置によって支持され、前記第5関節軸の移動軌跡は、前記軸方向視で、前記スライド移動方向に沿う直線状の直線状領域と、前記直線状領域の端部から離れるに従って前記直交方向第1側とは反対側である直交方向第2側へ向かう湾曲状領域と、を備え、前記直線状領域と前記湾曲状領域との境界部が、前記扉本体の前記開放位置から前記閉塞位置までの移動軌跡における前記閉塞位置の手前に配置されていると好適である。
【0077】
本構成によれば、開放位置から閉塞位置の手前の位置までの扉本体の移動軌跡を、第5関節軸が直線状領域を移動するように設定することができるため、開放位置から閉塞位置の手前の位置まで、扉本体を枠体に対して平行にスライド移動させることができる。そして、扉本体の閉塞位置を、第5関節軸が直線状領域から湾曲状領域に進入した後の位置とすることができるため、扉本体を開放位置から閉塞位置に移動させる際に、閉塞位置の手前から閉塞位置に到達するまでの間、扉本体を枠体に近づけることができる。よって、扉本体を開放位置から閉塞位置に移動させて開口部を閉じる際に、閉塞位置の手前までは、扉本体が枠体に対して直交方向第1側に離間して配置された状態(すなわち、扉本体と枠体との間に隙間が形成された状態)とすることで、扉本体と枠体との接触を回避することができる。そして、閉塞位置の手前からは扉本体を枠体に近づけて、扉本体と枠体との隙間を小さくし、或いは当該隙間をなくすことができ、扉本体による開口部の密閉性を向上させることができる。
【0078】
また、駆動源を更に備え、前記駆動源は、前記第1関節軸を回転駆動するように構成されていると好適である。
【0079】
本構成によれば、変換リンク機構を構成する第1リンク、第2リンク、及び第3リンクのうちの、リンク長が最も短い第1リンクを回転駆動するように駆動源を設けることができる。よって、リンク装置を介して扉本体を開閉駆動するために必要となる駆動源の駆動力を小さく抑えることができる。
【0080】
また、前記第1関節軸の軸心に平行な方向を軸方向として、前記第3リンクは、前記第2関節軸に対して前記第4関節軸の側において前記第2関節軸に隣接する部分に、前記軸方向に沿う軸方向視で、前記第2リンクが配置されている側とは反対側に向かって凸となるように湾曲された湾曲部を備え、前記湾曲部は、前記第1リンクの動作範囲の全域で、前記第1リンクと前記第3リンクとが干渉しないように形成されていると好適である。
【0081】
本構成によれば、第1リンクの動作範囲の全域で第1リンクと第3リンクとが干渉しないように湾曲部が形成されているため、第1リンクと第3リンクとを軸方向の同じ位置に配置しても、第3リンクとの干渉を回避しつつ第1リンクをその動作範囲の全域で回転させることができる。よって、第1リンクと第3リンクとの干渉を回避するために第1リンクと第3リンクとを軸方向にずらして配置する必要がある場合に比べて、変換リンク機構を備えるリンク装置の軸方向の寸法を小さく抑えやすい。
【0082】
なお、本構成によれば、湾曲部が、第3リンクにおける第2関節軸に対して第4関節軸の側において第2関節軸に隣接する部分に、軸方向視で第2リンクが配置されている側とは反対側に向かって凸となるように湾曲して形成されているため、以下に述べるように、第1リンクと第3リンクとを軸方向の同じ位置に配置しても、第1リンクの動作可能範囲を広く確保しやすくなっている。ここで、軸方向視で、第1関節軸と第3関節軸とを通る基準直線(仮想線)に対して第2関節軸と第4関節軸とが同じ側に配置され、且つ、第1関節軸と第2関節軸とを通る直線(仮想線)が当該基準直線に直交するように第1リンクが配置されている状態における第1リンクの回転角度(第1関節軸回りの回転角度)を0度とし、第1リンクの回転角度が0度の状態から第2関節軸が第3関節軸から離れる側に第1リンクが第1関節軸回りに回転する方向を正回転方向とする。本構成によれば、上記のような湾曲部が第3リンクに形成されるため、第1リンクが0度から正回転方向に回転した場合に第1リンクと第3リンクとが軸方向視で重なる回転角度(すなわち、第1リンクと第3リンクとが干渉する回転角度)を、180度以上の角度とすることができる。よって、第1リンクと第3リンクとを軸方向の同じ位置に配置する場合の第1リンクの動作可能範囲を、湾曲部が第3リンクに形成されない場合に比べて、第1リンクの回転角度が大きくなる側に拡大することができ、これにより、当該動作可能範囲を広く確保しやすくなっている。
【0083】
また、前記扉本体を第1扉本体とし、前記リンク装置を第1リンク装置として、第2扉本体と、前記第2扉本体と前記ベース部材とを連結し、前記第2扉本体を前記開口部に対して前記スライド移動方向にスライド移動可能に支持する第2リンク装置と、駆動源と、駆動伝達機構と、を更に備え、前記第1関節軸の軸心に平行な方向を軸方向とし、前記軸方向に沿う軸方向視で前記スライド移動方向に直交する方向をスライド直交方向として、前記第2リンク装置は、前記第1リンク装置と同じ構成であって、前記軸方向視で、前記スライド直交方向に沿う仮想基準線に対して前記第1リンクと鏡対称に配置され、前記駆動伝達機構は、前記第1リンク装置の前記第1関節軸と前記第2リンク装置の前記第1関節軸とを互いに反対向きに回転駆動するように、前記駆動源の駆動力を前記第1リンク装置及び前記第2リンク装置に伝達すると好適である。
【0084】
本構成によれば、第1扉本体を駆動するための駆動源と第2扉本体を駆動するための駆動源とを各別に設けなくても、1つの駆動源の駆動力により第1扉本体と第2扉本体とをスライド移動方向の互いに反対側にスライド移動させて、開口部を開閉することができる。
【0085】
上記のように、前記駆動伝達機構が、前記第1リンク装置の前記第1関節軸と前記第2リンク装置の前記第1関節軸とを互いに反対向きに回転駆動するように、前記駆動源の駆動力を前記第1リンク装置及び前記第2リンク装置に伝達する構成において、前記スライド移動方向は、上下方向に沿う方向であり、前記軸方向は、水平方向に沿う方向であり、前記第1扉本体及び前記第1リンク装置の重量と、前記第2扉本体及び前記第2リンク装置の重量とが同等であると好適である。
【0086】
本構成によれば、第1扉本体及び第1リンク装置に作用する重力と、第2扉本体及び第2リンク装置に作用する重力とが、駆動伝達機構において互いに反対向きの力として釣り合った状態或いはそれに近い状態を実現することができる。よって、駆動源或いは別途設けられた制動装置に大きな力を発生させなくても、第1扉本体及び第2扉本体のスライド移動方向の位置を開放位置や閉塞位置に維持することができる。また、第1扉本体及び第2扉本体をスライド移動させる場合には、第1扉本体や第2扉本体の重量を支持するために大きな駆動力を駆動源に出力させる必要はなく、実質的に、第1扉本体及び第2扉本体等の慣性力分の駆動力のみを駆動源に出力させればよい。よって、1つの駆動源の駆動力により第1扉本体と第2扉本体との双方を開閉駆動する場合であっても、駆動源に必要となる駆動力を小さく抑えることができる。
【0087】
本開示に係る扉装置は、上述した各効果のうち、少なくとも1つを奏することができればよい。
【符号の説明】
【0088】
1:扉本体
1A:第1扉本体
1B:第2扉本体
2:リンク装置
2A:第1リンク装置
2B:第2リンク装置
3:変換リンク機構
4:平行リンク機構
5A:第1リンク
5B:第2リンク
5C:第3リンク
5D:第4リンク
5E:第5リンク
5F:第6リンク
6A:第1関節軸
6B:第2関節軸
6C:第3関節軸
6D:第4関節軸
6E:第5関節軸
6F:第6関節軸(ベース側関節軸)
6G:第7関節軸
6H:第8関節軸(扉側関節軸)
6I:第9関節軸(第2リンク装置の第1関節軸)
7:駆動伝達機構
10:枠体
11:開口部
12:ベース部材
13:駆動源
20:移動軌跡(第5関節軸の移動軌跡)
21:直線状領域
22:湾曲状領域
23A:第1境界部(直線状領域と湾曲状領域との境界部)
100:扉装置
C:湾曲部
L:仮想基準線
P1:閉塞位置
P2:開放位置
X:軸方向
Y:スライド直交方向
Y1:直交方向第1側
Y2:直交方向第2側
Z:スライド移動方向