(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20230523BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20230523BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/02 C
H02J7/00 P
H02J7/00 R
(21)【出願番号】P 2021548295
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038332
(87)【国際公開番号】W WO2021059523
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 貴史
(72)【発明者】
【氏名】廣田 将義
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195531(JP,A)
【文献】特開2005-065433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のモータを有する車両に搭載され、前記車両の外部に設けられた外部装置から電力供給を受ける場合に充電路を介して充電電流が流れ込む電源システムであって、
前記充電路に電気的に接続されるとともに前記充電路から分岐する第1導電路及び第2導電路と、
前記第1導電路に設けられるリレーと、
電圧変換を行う電圧変換部と、
を備え、
前記第1導電路は、前記充電路とバッテリとの間の経路として構成され、
前記リレーは、前記充電路と前記バッテリとの間において前記第1導電路を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わり、
前記第2導電路は、前記充電路と前記電圧変換部との間に配置され、
前記電圧変換部は、前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記バッテリ側の導電路に出力電圧を印加する第1動作と、前記バッテリ側の前記導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する第2動作と、を少なくとも行い、
前記リレーがオン状態のときに前記バッテリからの電力が前記第1導電路及び前記リレーを介して前記モータ側に供給される第1動作状態となり、
前記リレーがオフ状態のときに前記電圧変換部が前記第2動作を行うことで前記電圧変換部から前記第2導電路を介して前記モータ側に電力が供給される第2動作状態とな
り、
前記リレーは第1リレーであり、
前記第2導電路には第2リレーが設けられ、
前記第2リレーは、前記充電路と前記電圧変換部との間において前記第2導電路を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わり、
前記第2導電路は、前記充電路と前記第2リレーとの間の経路である第1供給路と前記第2リレーと前記電圧変換部との間の経路である第2供給路とを有し、
前記第2供給路には、負荷へ電力を供給する経路となる第3導電路が電気的に接続されており、
前記第1動作状態のときに前記第2リレーがオフ状態で維持されつつ前記電圧変換部が前記第2動作を行うことで前記電圧変換部から前記第3導電路を介して前記負荷側に電力が供給される電源システム。
【請求項2】
走行用のモータを有する車両に搭載され、前記車両の外部に設けられた外部装置から電力供給を受ける場合に充電路を介して充電電流が流れ込む電源システムであって、
前記充電路に電気的に接続されるとともに前記充電路から分岐する第1導電路及び第2導電路と、
前記第1導電路に設けられるリレーと、
電圧変換を行う電圧変換部と、
を備え、
前記第1導電路は、前記充電路とバッテリとの間の経路として構成され、
前記リレーは、前記充電路と前記バッテリとの間において前記第1導電路を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わり、
前記第2導電路は、前記充電路と前記電圧変換部との間に配置され、
前記電圧変換部は、前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記バッテリ側の導電路に出力電圧を印加する第1動作と、前記バッテリ側の前記導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する第2動作と、を少なくとも行い、
前記リレーがオン状態のときに前記バッテリからの電力が前記第1導電路及び前記リレーを介して前記モータ側に供給される第1動作状態となり、
前記リレーがオフ状態のときに前記電圧変換部が前記第2動作を行うことで前記電圧変換部から前記第2導電路を介して前記モータ側に電力が供給される第2動作状態となり、
前記リレーは第1リレーであり、
前記第2導電路には第2リレーが設けられ、
前記第2リレーは、前記充電路と前記電圧変換部との間において前記第2導電路を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わる構成であり、
前記第2導電路は、前記充電路と前記第2リレーとの間の経路である第1供給路と前記第2リレーと前記電圧変換部との間の経路である第2供給路とを有し、
前記第2供給路には、負荷へ電力を供給する経路となる第3導電路が電気的に接続されており、
前記第1リレーと前記第2リレーと前記電圧変換部とを制御する制御部を備え、
前記制御部は、第1条件の成立に応じて前記第1リレーをオン状態としつつ前記第2リレーをオフ状態とし且つ前記電圧変換部に前記第2動作を行わせ、前記第1条件とは異なる第2条件の成立に応じて前記第1リレーをオフ状態としつつ前記第2リレーをオン状態とし且つ前記電圧変換部に前記第2動作を行わせる電源システム。
【請求項3】
前記リレー及び前記電圧変換部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、第1条件の成立に応じて前記リレーをオン状態とし、前記第1条件とは異なる第2条件の成立に応じて前記リレーをオフ状態とし前記電圧変換部に前記第2動作を行わせる請求項1又は請求項2に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やプラグインハイブリッド車などの電動車両では、車両の外部に設けられた充電装置から供給される電力に基づいて車両内部に搭載されたバッテリを充電する方式が一般的に採用されている。現在、この種の技術では、相対的に低い充電電圧(例えば400V)で充電を行う充電方式と相対的に高い充電電圧(例えば800V)で充電を行う充電方式とが知られており、両方の充電方式に対応し得るような技術も提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の技術では、400V仕様の充電方式で充電を行う充電モードのときに、外部充電器からの直流電力に基づく電圧が昇圧装置を介さずに蓄電装置側に印加されて充電される。一方で、800V仕様の充電方式で充電を行う充電モードのときには、外部充電器からの直流電力に基づく電圧が昇圧装置によって昇圧されて蓄電装置側に印加され、充電がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、蓄電装置の出力電圧(例えば、800V)を大きく下回る電圧(例えば、400V)を負荷に供給する場合について言及されていない。特許文献1の技術において、蓄電装置の出力電圧を大きく下回る電圧を負荷に供給する場合、一般的には、充電用のDCDCコンバータとは別でDCDCコンバータを設けなければならず、その分、回路構成の増加を招くことになる。
【0006】
そこで、本開示では、複数の充電方式に対応することができ、且つ、バッテリからの電力に基づいて相対的に高い電圧と相対的に低い電圧とを供給し得る構成をより簡易に実現し得る電源システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係る電源システムは、
走行用のモータを有する車両に搭載され、前記車両の外部に設けられた外部装置から電力供給を受ける場合に充電路を介して充電電流が流れ込む電源システムであって、
前記充電路に電気的に接続されるとともに前記充電路から分岐する第1導電路及び第2導電路と、
前記第1導電路に設けられるリレーと、
電圧変換を行う電圧変換部と、
を備え、
前記第1導電路は、前記充電路とバッテリとの間の経路として構成され、
前記リレーは、前記充電路と前記バッテリとの間において前記第1導電路を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わり、
前記第2導電路は、前記充電路と前記電圧変換部との間に配置され、
前記電圧変換部は、前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記バッテリ側の導電路に出力電圧を印加する第1動作と、前記バッテリ側の前記導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する第2動作と、を少なくとも行い、
前記リレーがオン状態のときに前記バッテリからの電力が前記第1導電路及び前記リレーを介して前記モータ側に供給される第1動作状態となり、
前記リレーがオフ状態のときに前記電圧変換部が前記第2動作を行うことで前記電圧変換部から前記第2導電路を介して前記モータ側に電力が供給される第2動作状態となる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様の電源システムは、バッテリからの電力に基づいて相対的に高い電圧と相対的に低い電圧とを供給し得る構成をより簡易に実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態の電源システムを用いた車載システムの構成を例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の電源システムが搭載された車両を模式的に例示する模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の電源システムで行われる制御の流れを例示するフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態の電源システムの第1動作状態を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の電源システムの第2動作状態を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の電源システムの第1充電状態を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の電源システムの第2充電状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。なお、以下で示す〔1〕~〔6〕の特徴は、矛盾しない範囲でどのように組み合わせてもよい。
【0011】
〔1〕走行用のモータを有する車両に搭載され、前記車両の外部に設けられた外部装置から電力供給を受ける場合に充電路を介して充電電流が流れ込む電源システムであって、前記充電路に電気的に接続されるとともに前記充電路から分岐する第1導電路及び第2導電路と、前記第1導電路に設けられるリレーと、電圧変換を行う電圧変換部と、を備え、前記第1導電路は、前記充電路とバッテリとの間の経路として構成され、前記リレーは、前記充電路と前記バッテリとの間において前記第1導電路を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わり、前記第2導電路は、前記充電路と前記電圧変換部との間に配置され、前記電圧変換部は、前記第2導電路に印加された電圧を昇圧して前記バッテリ側の導電路に出力電圧を印加する第1動作と、前記バッテリ側の導電路に印加された電圧を降圧して前記第2導電路に出力電圧を印加する第2動作と、を少なくとも行い、前記リレーがオン状態のときに前記バッテリからの電力が前記第1導電路及び前記リレーを介して前記モータ側に供給される第1動作状態となり、前記リレーがオフ状態のときに前記電圧変換部が前記第2動作を行うことで前記電圧変換部から前記第2導電路を介して前記モータ側に電力が供給される第2動作状態となる電源システム。
【0012】
上記〔1〕の電源システムは、リレーがオン状態のときにバッテリからの電力が第1導電路及びリレーを介してモータ側に供給される第1動作状態となる。よって、第1動作状態のときに相対的に高い電圧がモータ側に供給され得る。また、上記電源システムは、リレーがオフ状態のときに電圧変換部が第2動作を行うことで電圧変換部から第2導電路を介してモータ側に電力が供給される第2動作状態となる。よって、第2動作状態のときには、相対的に低い電圧がモータ側に供給され得る。しかも、上記電源システムは、バッテリの充電用に用いられる電圧変換部とリレーを用いて第1動作状態と第2動作状態とを実現できるため、バッテリからの電力に基づいて相対的に高い電圧と相対的に低い電圧とを供給し得る構成をより簡易に実現し得る。
【0013】
〔2〕前記リレー及び前記電圧変換部を制御する制御部を備え、前記制御部は、第1条件の成立に応じて前記リレーをオン状態とし、前記第1条件とは異なる第2条件の成立に応じて前記リレーをオフ状態とし前記電圧変換部に前記第2動作を行わせる〔1〕に記載の電源システム。
【0014】
上記〔2〕の電源システムは、第1条件の成立に応じてバッテリから電圧変換部を介さずに相対的に高い電圧をモータ側に供給するような切り替えを制御によって行うことができる。また、上記電源システムは、第2条件の成立に応じてバッテリから電圧変換部を介して相対的に低い電圧をモータ側に供給するような切り替えを制御によって行うことができる。
【0015】
〔3〕前記リレーは第1リレーであり、前記第2導電路には第2リレーが設けられ、前記第2リレーは、前記充電路と前記電圧変換部との間において前記第2導電路を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わる〔1〕又は〔2〕に記載の電源システム。
【0016】
上記〔3〕の電源システムは、必要に応じて第2導電路を導通させたり遮断させたりすることができ、第2導電路の遮断が望まれる状況が生じ得る構成において有利になる。
【0017】
〔4〕前記第2導電路は、前記充電路と前記第2リレーとの間の経路である第1供給路と前記第2リレーと前記電圧変換部との間の経路である第2供給路とを有し、前記第2供給路には、負荷へ電力を供給する経路となる第3導電路が電気的に接続されており、前記第1動作状態のときに前記第2リレーがオフ状態で維持されつつ前記電圧変換部が前記第2動作を行うことで前記電圧変換部から前記第3導電路を介して前記負荷側に電力が供給される〔3〕に記載の電源システム。
【0018】
上記〔4〕の電源システムは、第1動作状態のときに第2リレーがオフ状態で維持されつつ電圧変換部が第2動作を行うことで電圧変換部から第3導電路を介して負荷側に電力が供給される。つまり、第1動作状態のときに、モータ側に対しバッテリから電圧変換部を介さずに相対的に高い電圧を供給し、第2導電路を介したモータ側への通電を遮断しつつ負荷側に対し電圧変換部から相対的に低い電圧を供給する動作が可能となる。上記電源システムは、このような動作が可能となるため、バッテリから負荷に対して相対的に低い電圧を供給する上で電圧変換部とは異なる別途のコンバータを設けずに済み、装置構成の簡素化を図りつつ上記機能を実現することができる。
【0019】
〔5〕前記リレーは第1リレーであり、前記第2導電路には第2リレーが設けられ、前記第2リレーは、前記充電路と前記電圧変換部との間において前記第2導電路を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わる構成であり、前記第2導電路は、前記充電路と前記第2リレーとの間の経路である第1供給路と前記第2リレーと前記電圧変換部との間の経路である第2供給路とを有し、前記第2供給路には、負荷へ電力を供給する経路となる第3導電路が電気的に接続されており、前記第1リレーと前記第2リレーと前記電圧変換部とを制御する制御部を備え、前記制御部は、第1条件の成立に応じて前記第1リレーをオン状態としつつ前記第2リレーをオフ状態とし且つ前記電圧変換部に前記第2動作を行わせ、前記第1条件とは異なる第2条件の成立に応じて前記第1リレーをオフ状態としつつ前記第2リレーをオン状態とし且つ前記電圧変換部に前記第2動作を行わせる〔1〕又は〔2〕に記載の電源システム。
【0020】
上記〔5〕の電源システムは、第1条件の成立に応じてバッテリから電圧変換部を介さずに相対的に高い電圧をモータ側に供給するような切り替えを制御によって行うことができる。また、上記電源システムは、第2条件の成立に応じてバッテリから電圧変換部を介して相対的に低い電圧をモータ側に供給するような切り替えを制御によって行うことができる。更に、上記電源システムは、第1条件の成立に応じて相対的に高い電圧をモータ側に供給する場合に、第2リレーをオフ状態とし且つ電圧変換部に第2動作を行わせる制御を並行して行うことができる。つまり、上記電源システムは、相対的に高い電圧をモータ側に供給する制御と、負荷側に対して相対的に低い電圧を安定的に供給する制御とを並行して行うことができる。しかも、上記電源システムは、バッテリから負荷に対して相対的に低い電圧を供給する上で電圧変換部とは異なる別途のコンバータを設けずに済み、装置構成の簡素化を図りつつ上記機能を実現することができる。
【0021】
〔6〕前記リレー及び前記電圧変換部を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記外部装置から前記車両に電力が供給される場合において前記充電路に印加される電圧が第1電圧状態である場合に前記リレーをオン状態とし、前記外部装置から前記車両に電力が供給される場合において前記充電路に印加される電圧が前記第1電圧状態よりも電圧が低い第2電圧状態である場合に前記リレーをオフ状態とし且つ前記電圧変換部に前記第1動作を行わせる〔1〕から〔5〕のいずれか1つに記載の電源システム。
【0022】
上記〔6〕の電源システムは、充電路に印加される電圧が第1電圧状態となるような相対的に高い充電方式であるときには制御部の制御によってリレーをオン状態とし、電圧変換部を介さずに直接的にバッテリの充電を行うことができる。また、充電路に印加される電圧が第2電圧状態となるような相対的に低い充電方式であるときには制御部の制御によってリレーをオフ状態とし、電圧変換部を介したバッテリの充電を行うことができる。
【0023】
<第1実施形態>
図1で示される車載システム4は、電力供給システム10、低圧負荷7、高圧負荷8、モータ12、インバータ14、コンデンサ16などを備える。
図2のように、車載システム4は、車両1に搭載されるシステムである。車両1は、電力供給システム10と、電力供給システム10により変換又は伝送される電力が供給される補機系負荷6及びモータ12と、を含む。補機系負荷6は、低圧負荷7、高圧負荷8などである。
図1、
図2で示されるように、電力供給システム10は、高圧バッテリ50、低圧バッテリ24、電源システム30などを含む。電力供給システム10は、モータ12、低圧負荷7、高圧負荷8などに電力を供給し得るシステムである。
【0024】
高圧バッテリ50は、バッテリの一例に相当する。高圧バッテリ50は、複数の蓄電部50A,50Bを備え、電源装置として機能する。複数の蓄電部50A,50Bのそれぞれは、充放電可能な蓄電池で構成されたバッテリユニットである。高圧バッテリ50は、低圧バッテリ24よりも大きい電圧を出力し得るバッテリである。蓄電部50A,50Bのそれぞれは、例えば、400V仕様のバッテリユニットである。400V仕様とは、充電電圧及び出力電圧の定格が400Vであることを意味する。複数の蓄電部50A,50Bは、直列に接続されている。蓄電部50A,50Bの各々は、複数の電池がユニット化されたものであってもよく、1つの電池であってもよい。蓄電部50A,50Bを構成する電池は、例えばリチウムイオン電池などの公知の電池が採用されうるが、電池の種類は限定されない。
【0025】
電源システム30は、走行用のモータ12を有する車両1に搭載され、車両1の外部に設けられた外部装置90から電力供給を受ける場合に充電路70を介して充電電流が流れ込むシステムである。更に、電源システム30は、高圧バッテリ50から供給される電力を変換する機能と、高圧バッテリ50から供給される電力を伝送する機能とを有するシステムである。電源システム30は、少なくとも、第1DC/DCコンバータ31、第1導電路71、第2導電路72、第1リレー41、を備えることが望ましい。更に、電源システム30は、第2リレー42、第3導電路73、制御装置20、第2DC/DCコンバータ32、スイッチ部22、スイッチ部38などが設けられることが望ましい。
【0026】
第1DC/DCコンバータ31は、電圧変換を行う電圧変換部の一例に相当する。第1DC/DCコンバータ31は、例えば絶縁型双方向DCDCコンバータによって構成されている。第1DC/DCコンバータ31は、公知の絶縁型双方向DCDCコンバータの様々な構成が採用され得る。第1DC/DCコンバータ31は、モータ12側に電力を供給する経路である電力路61に電気的に接続される。第1DC/DCコンバータ31は、高圧バッテリ50から電力を供給する経路である電力路62にも電気的に接続される。第1DC/DCコンバータ31は、後述する第2導電路72に印加された電圧を昇圧して高圧バッテリ50側の配線62Aに出力電圧を印加する第1動作を行い得る。第1DC/DCコンバータ31は、高圧バッテリ50側の配線62Aに印加された電圧を降圧して第2導電路72に出力電圧を印加する第2動作も行い得る。
【0027】
第1DC/DCコンバータ31の一方側に接続される電力路61は、高電位側の導電路である配線61Aと低電位側の導電路である配線61Bとを備える。第1DC/DCコンバータ31の他方側に接続される電力路62は、高電位側の導電路である配線62Aと低電位側の導電路である配線62Bとを備える。配線62Aの一端は、高圧バッテリ50における最も電位の高い高電位側電極に電気的に接続される。配線62Aは、高電位側電極と同程度の電位とされる。配線62Aの他端は、第1DC/DCコンバータ31に電気的に接続される。配線62Bの一端は、高圧バッテリ50における最も電位の低い低電位側電極に電気的に接続される。配線62Bは、低電位側電極と同程度の電位とされる。配線62Bの他端は第1DC/DCコンバータ31に電気的に接続される。
【0028】
第1DC/DCコンバータ31は、電力路61に印加された電圧を電圧変換して電力路62の電圧を所望の出力電圧とする第1動作を行う。また、第1DC/DCコンバータ31は、電力路62に印加された電圧を電圧変換して電力路61の電圧を所望の出力電圧とする第2動作を行う。電力路61の電圧は、具体的には、配線61A,61Bの電位差である。電力路62の電圧は、具体的には、配線62A,62Bの電位差である。第1動作は、電力路61に印加された相対的に低い第1電圧を昇圧して電力路62に相対的に高い第2電圧を印加する昇圧動作である。第1電圧は、例えば、400V程度の直流電圧である。第2電圧は、例えば、800V程度の直流電圧である。第2動作は、電力路62に印加された相対的に高い第3電圧を降圧して電力路61に相対的に低い第4電圧を印加する降圧動作である。第3電圧は、第2電圧と同程度であり、例えば800V程度の直流電圧である。第4電圧は、第1電圧と同程度であり、例えば400V程度の直流電圧である。なお、第1動作及び第2動作の各々における上述の入力電圧及び出力電圧の具体例はあくまで一例であり、第1電圧、第2電圧、第3電圧、第4電圧の各値は上述の値に限定されない。
【0029】
第2DC/DCコンバータ32は、例えば、公知の絶縁型DCDCコンバータによって構成されている。具体的には、第2DC/DCコンバータ32は、第1DC/DCコンバータ31から供給される相対的に高い供給電圧を、この供給電圧よりも低い電圧に電圧変換する降圧型のDC/DCコンバータである。第2DC/DCコンバータ32は、一方側が電力路61に電気的に接続され、他方側が電力路63に電気的に接続される。第2DC/DCコンバータ32は、第1電力路61を構成する配線61A,61B間の電圧を降圧し、電力路63を構成する配線63A,63B間に所望の出力電圧を印加する降圧動作を行う。第2DC/DCコンバータ32の電圧変換動作において入力電圧となる配線61A,61B間の電位差は、上述の第2動作時における第1DC/DCコンバータ31の出力電圧であり、例えば、400V程度の電圧である。第2DC/DCコンバータ32の電圧変換動作において第2DC/DCコンバータ32からの出力電圧となる配線63A,63B間の電位差は、例えば12Vである。第2DC/DCコンバータ32を動作させる場合の上述の入力電圧及び出力電圧の具体例はあくまで一例であり、上述の値に限定されない。
【0030】
第2DC/DCコンバータ32の出力側の一対の端子は低圧バッテリ24の一対の端子に接続されている。具体的には、第2DC/DCコンバータ32の高電位側の出力端子が配線63Aを介して低圧バッテリ24の高電位側の電極に電気的に接続される。第2DC/DCコンバータ32の低電位側の出力端子は、配線63Bを介して低圧バッテリ24の低電位側の電極に電気的に接続される。低圧バッテリ24の出力端子は、低圧負荷7にも電気的に接続されている。低圧バッテリ24は、第2DC/DCコンバータ32から入力される電圧により充電され、低圧負荷7に対して電力を供給する。
【0031】
充電路70,74は、外部からの電力に基づく充電電流を供給するための導電路である。充電路70は、高電位側の導電路であり、充電路の一例に相当する。充電路70,74は、スイッチ部22を構成するスイッチ22A,22Bによって各々の導通状態と非導通状態とが切り替えられる。充電路70は、スイッチ22Aよりも端子P1側の第1充電路70Aとスイッチ22Aよりも接続点P3側の第2充電路70Bとを備える。スイッチ22Aがオン状態のときには、第1充電路70Aと第2充電路70Bとの間での通電が可能となる。スイッチ22Aがオフ状態のときには、第1充電路70Aと第2充電路70Bとの間での通電が遮断される。充電路74は、低電位側の導電路である。充電路74は、スイッチ22Bよりも端子P2側の第3充電路74Aとスイッチ22Bよりも接続点P4側の第4充電路74Bとを備える。スイッチ22Bがオン状態のときには、第3充電路74Aと第4充電路74Bとの間での通電が可能となる。スイッチ22Bがオフ状態のときには、第3充電路74Aと第4充電路74Bとの間での通電が遮断される。
【0032】
充電路70,74は、外部から複数レベルの電圧が印加されることが想定された入力路である。例えば、急速充電時に接続される外部装置90が第1電圧(例えば800V)を端子P1,P2間に印加し得る装置であれば、充電路70,74の間には外部装置90からの電力に基づく第1電圧が印加され、充電路70に電流が流れる。また、急速充電時に接続される外部装置90が第2電圧(例えば400V)を端子P1,P2間に印加し得る装置であれば、充電路70,74の間には外部装置90からの電力に基づく第2電圧が印加され、充電路70には電流が流れる。また、車載充電器28が外部からの商用電源に基づいて所定電圧(例えば400V)を端子P1、P2間に印加する場合には、充電路70,74の間には車載充電器28からの電力に基づいて上記所定電圧が印加され、充電路70に電流が流れる。
【0033】
第1導電路71は、充電路70に電気的に接続されるとともに充電路70から分岐する一方の導電路である。第2導電路72は、充電路70に電気的に接続されるとともに充電路70から分岐する他方の導電路である。つまり、充電路70の一端である接続点P3から第1導電路71及び第2導電路72が分岐する。
【0034】
第1導電路71は充電路70と高圧バッテリ50との間において電流が流れ得る1つの経路として構成される。第1導電路71は一端が充電路70に電気的に接続され、他端が高圧バッテリ50の高電位側の電極に電気的に接続される。第1導電路71の途中には第1リレー41が介在している。第1導電路71は、配線71Aと配線71Bとを有してなる。
【0035】
第2導電路72は、充電路70と第1DC/DCコンバータ31との間に配置される。第2導電路72は、第1供給路72Aと第2供給路72Bとを備える。第1供給路72Aは、充電路70と第2リレー42との間の経路である。第2供給路72Bは、第2リレー42と第1DC/DCコンバータ31との間の経路である。配線61Aは、第2供給路72Bの一部である。配線61Aの一端(即ち、第2供給路72Bの一端)は、第1DC/DCコンバータ31の一方側の高電位側端子に電気的に接続される。
【0036】
第3導電路73は、第2供給路72Bから分岐する導電路であり、負荷へ電力を供給する経路となる導電路である。第3導電路73は、一端が第2供給路72Bに電気的に接続されている。第3導電路73は、第2DC/DCコンバータ32の高電位側の入力端子に電気的に接続され、高圧負荷8の高電位側の入力端子にも電気的に接続される。
【0037】
充電路74における第4充電路74B側は、第1DC/DCコンバータ31の一方側の低電位側端子と、第2DC/DCコンバータ32の低電位側の入力端子と、高圧負荷8の低電位側の入力端子とに電気的に接続される。第4充電路74Bの他端が接続点P4であり、接続点P4と第1DC/DCコンバータ31の一方側の低電位側端子との間の導電路が配線61Bである。
【0038】
第1リレー41は、リレーの一例に相当する。第1リレー41は、第1導電路71に設けられる。第1リレー41は、充電路70と高圧バッテリ50との間において第1導電路71を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わる。つまり、第1リレー41がオフ状態のときには第1導電路71に電流が流れず、第1リレー41がオン状態のときには第1導電路71に電流が流れ得る。
【0039】
第2リレー42は、第2導電路72に設けられる。第2リレー42は、充電路70と第1DC/DCコンバータ31との間において第2導電路72を介して電流が流れることを遮断するオフ状態と許容するオン状態とに切り替わる。具体的には、第2リレー42がオフ状態のときには第2導電路72に電流が流れず、第2リレー42がオン状態のときには第2導電路72に電流が流れ得る。
【0040】
スイッチ部38を構成する各スイッチ38A,38Bは、例えば、半導体リレーや電磁式リレーなどによって構成されている。スイッチ38A,38Bのいずれも、外部装置からオン指示が与えられているときにオン状態となり、外部装置からオフ指示が与えられているときにオフ状態となる。スイッチ38A,38Bを制御する制御装置は、制御装置20であってもよく、他の装置であってもよい。スイッチ38Aは、インバータ14の一方側の入力端子に接続される導電路と接続点P3との間に介在し、この間の経路を導通状態と非導通状態とに切り替える。スイッチ38Bは、インバータ14の他方側の入力端子に接続される導電路と接続点P4との間に介在し、この間の経路を導通状態と非導通状態とに切り替える。スイッチ38A,38Bがオフ状態のときには、高圧バッテリ50側からインバータ14側へは電力は供給されない。スイッチ38A,38Bがいずれもオン状態のときには、高圧バッテリ50側からインバータ14側へと電力が供給され得る。
【0041】
制御装置20は、演算機能や情報処理機能を備えた装置であり、例えば、ECU(Electronic Control Unit)などの情報処理装置によって構成されている。制御装置20は、スイッチ部22、スイッチ部38、第1リレー41、第2リレー42、第1DC/DCコンバータ31、第2DC/DCコンバータ32を制御する。制御装置20は、単一の情報処理装置によって構成されていてもよく、複数の情報処理装置によって構成されていてもよい。
【0042】
インバータ14は、モータ12を駆動するための電力を当該モータ12に供給する回路として構成されている。インバータ14の一対の入力端子は、スイッチ部38を構成する各スイッチ38A,38Bを介して、接続点P3,P4のそれぞれに電気的に接続されている。インバータ14の出力端子はモータ12の入力端子に接続されている。インバータ14に設けられた一対の入力端子間には、第1DC/DCコンバータ31によって降圧された400V程度の電圧又は高圧バッテリ50から直接的に供給される800V程度の電圧が印加され得る。インバータ14は、400V相当の電力が入力される場合、この電力に基づきモータ12を駆動させる電力を生成する。インバータ14は、800V相当の電力が入力される場合、この電力に基づきモータ12を駆動させる電力を生成する。モータ12は、主機系モータ等の電気的駆動装置である。モータ12は、インバータ14を介して電力が供給される。なお、インバータ14の一方側の入力端子に接続される導電路と他方側の入力端子に接続される導電路との間には、コンデンサ16が設けられている。
【0043】
高圧負荷8は、高電圧が与えられる負荷である。高圧負荷8は、例えばエアコンやヒータなどであってもよく、これら以外の負荷であってもよい。高圧負荷8に与えられる高電圧は例えば400Vであり、低圧負荷7に与えられる低電圧よりも高い電圧である。高圧負荷8は、電力路61に電気的に接続され、配線61A,61B間の電位差に応じた高電圧が入力される。
【0044】
車載充電器28は、充電装置の一例に相当する。車載充電器28は図示しない一対の導電路の各々を介して充電路70,74の各々に接続される。車載充電器28は、車両1の外部から車載充電器28に対して電力が供給される場合に、外部からの電力に基づく直流電圧を充電路70,74間に印加し得る。具体的には、車載充電器28は、例えば、家庭に供給されている商用電力から電力供給を受けたときに、この電力を変換して所望の直流電圧を充電路70,74間に印加する。車載充電器28が充電路70,74に印加する直流電圧は、例えば400Vである。なお、車載充電器28は、ワイヤレス電力伝送の充電機器を含んでいてもよい。
【0045】
図2で示されるように、上述した車載システム4は、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)又はEV(Electric Vehicle)等の車両1に搭載される。車載システム4は、充電モードのときには、外部からの電力に基づいて高圧バッテリ50及び低圧バッテリ24を充電する。車載システム4は、車両走行時には、高圧バッテリ50及び低圧バッテリ24の電力を、モータ12及び補機系負荷6等に供給する。補機系負荷6は、エンジン、モータ等を稼動するのに必要な付属機器であり、主としてセルモータ、オルタネータ、ラジエータクーリングファン等を含む。補機系負荷6は、低圧負荷7(照明、ワイパー駆動部、ナビゲーション装置等)及び高圧負荷8(エアコン、ヒータ等)を含んでいてもよい。
【0046】
図3には、電源システム30で行われる制御の流れがフローチャートによって示される。制御装置20は、開始条件の成立に応じて
図3の制御を実行する。上記の開始条件は、車両が始動状態となることであってもよく、外部装置90が接続されたことであってもよく、車載充電器28が充電開始条件となったことであってもよく、その他の条件であってもよい。制御装置20は、
図3の制御を開始した後、ステップS1において車両1が充電モードであるか否かを判定する。本開示では、制御装置20は、外部装置90又は車載充電器28と通信を行い得る構成となっており、制御装置20は、例えば外部装置90又は車載充電器28から所定の充電信号を受信した場合にステップS1において車両1が充電モードであると判定する。上記の充電信号は、外部装置90又は車載充電器28によって充電を行う条件となる信号であり、予め定められた信号である。なお、上述の判定方法はあくまで一例であり、ステップS1で行われる「充電モードであるか否かの判定」は、上述の判定方法以外の方法でなされてもよい。
【0047】
制御装置20は、ステップS1において充電モードではないと判定した場合(ステップS1でnoの場合)、ステップS2において通信によって給電条件を取得する。制御装置20は、ステップS2において例えば特定外部機器(例えば特定の外部ECU)と通信を行い、特定外部機器に対して給電条件を示す信号を要求する。特定外部機器は、例えばステップS2での上記要求に応じて給電条件を示す信号を制御装置20に送信し得るようになっている。本開示の例では、制御装置20及び上記特定外部機器において、第1の給電条件を示す信号と第2の給電条件を示す信号とが予め定められている。第1の給電条件を示す信号は、第1電圧(例えば800V)での給電を示す信号である。第2の給電条件を示す信号は、第2電圧(例えば400V)での給電を示す信号である。特定外部機器は、予め定められた第1の判定条件が成立している場合に、ステップS2での上記要求に応じて第1の給電条件を示す信号を制御装置20に送信する。また、特定外部機器は、予め定められた第2の判定条件が成立している場合に、ステップS2での上記要求に応じて第2の給電条件を示す信号を制御装置20に送信する。第1の判定条件及び第2の判定条件の内容は特に限定されず、様々な条件が条件設定の候補となる。
【0048】
制御装置20は、ステップS2において特定外部機器から給電条件を示す信号を受信した後、ステップS3において、給電条件を示す信号の種類がいずれの種類であるかを判定する。制御装置20は、ステップS2で受信した信号が第1の給電条件を示す信号(例えば、800V給電を示す信号)である場合、ステップS3においてyesの判定とし、ステップS5の処理を行う。制御装置20は、ステップS2で受信した信号が第2の給電条件を示す信号(例えば、400V給電を示す信号)である場合、ステップS3においてnoの判定とし、ステップS4の処理を行う。
【0049】
制御装置20は、ステップS5の処理を行う場合、第1の給電条件で充電を行う。制御装置20は、ステップS5の処理において、第1リレー41をオン状態とし、第2リレー42をオフ状態とする。更に、制御装置20は、スイッチ部22をいずれもオフ状態とし、スイッチ部38をいずれもオン状態とする。一方で、制御装置20は、第1DC/DCコンバータ31に対して第2電力路62に印加された電圧を降圧して第1電力路61に400Vの電圧を印加するように降圧動作(放電モードの動作)を行わせる。
【0050】
このように、制御装置20は、第1条件の成立に応じてステップS5にて第1リレー41をオン状態とする。第1条件の成立は、制御装置20がステップS2において第1の給電条件を示す信号を受信したことであり、換言すれば、上記の第1の判定条件が成立したことである。制御装置20がステップS5で第1リレー41をオン状態にする場合、
図4のように高圧バッテリ50からの電力が第1導電路71及び第1リレー41を介してインバータ14側及びモータ12側に供給される第1動作状態となる。この第1動作状態では、バッテリ50の出力電圧相当の電圧が第1導電路71に印加され、インバータ14の両側の入力端子間には800V程度の電圧が印加される。更に、この第1動作状態と並行して、第2リレー42がオフ状態で維持されつつ第1DC/DCコンバータ31が第2動作を行う。よって、
図4のように第1DC/DCコンバータ31から第3導電路73を介して負荷側に電力が供給される。DC/DCコンバータ31から供給される電力は、直接的に高圧負荷8に供給されつつ、第2DC/DCコンバータ32よって降圧されて低圧バッテリ24や低圧負荷7にも供給され得る。
【0051】
制御装置20は、ステップS4の処理を行う場合、第2の給電条件で充電を行う。具体的には、制御装置20は、第1リレー41をオフ状態とし、第2リレー42をオン状態とする。更に、制御装置20は、スイッチ部22をいずれもオフ状態とし、スイッチ部38をいずれもオン状態とする。一方で、制御装置20は、第1DC/DCコンバータ31に対して第2電力路62に印加された電圧を降圧して第1電力路61に400Vの電圧を印加するように降圧動作(放電モードの動作)を行わせる。
【0052】
このように、制御装置20は、第1条件とは異なる第2条件の成立に応じて第1リレー41をオフ状態としつつ第2リレー42をオン状態とし且つ第1DC/DCコンバータ31に第2動作を行わせる。第2条件の成立は、制御装置20がステップS2において第2の給電条件を示す信号を受信したことであり、換言すれば、上記の第2の判定条件が成立したことである。制御装置20がステップS4で第1DC/DCコンバータ31に第2動作を行わせる場合、
図5のように第1DC/DCコンバータ31から第2導電路72を介してモータ12側に電力が供給される第2動作状態となる。この第2動作状態では、第1DC/DCコンバータ31の出力電圧相当の電圧が第2導電路72に印加され、インバータ14の両側の入力端子間には400V程度の電圧が印加される。更に、この場合、第1DC/DCコンバータ31から供給される電力は第3導電路73を介して負荷側にも供給される。即ち、第1DC/DCコンバータ31からの電力は、直接的に高圧負荷8に供給されつつ、第2DC/DCコンバータ32よって降圧されて低圧バッテリ24や低圧負荷7にも供給され得る。
【0053】
制御装置20は、ステップS4又はステップS5の後、ステップS6において予め定められた給電完了条件が成立したか否かを判定する。給電完了条件は特に限定されず、例えば、上述の特定外部機器から給電の完了を指示する信号を受信したことであってもよく、その他の条件が成立したことであってもよい。制御装置20は、ステップS6において予め定められた給電完了条件が成立していないと判定した場合(ステップS6でnoの場合)、ステップS1に処理を戻してステップS1以降の処理を再び行う。制御装置20は、ステップS6において予め定められた給電完了条件が成立したと判定した場合(ステップS6でyesの場合)、処理をステップS13に進める。
【0054】
制御装置20は、ステップS1において充電モードであると判定した場合(ステップS1でyesの場合)、ステップS7において充電条件を通信によって取得する。本開示では、例えば、制御装置20において第1の充電条件を示す信号と第2の充電条件を示す信号とが予め定められている。そして、複数存在する外部装置90において、第1の充電条件を示す信号及び第2の充電条件を示す信号のいずれか又は両方が定められている。また、車載充電器28において、少なくとも第2の充電条件を示す信号が定められている。制御装置20は、ステップS7では、例えば外部装置90又は車載充電器28などの外部機器と通信を行い、外部機器に対して充電条件を示す信号を要求する。第1の充電条件を示す信号は、第1電圧(例えば800V)での給電を示す信号であり、第1電圧(800V)での給電を行い得る外部装置90からステップS2での上記要求に応じて送信され得る信号である。第2の充電条件を示す信号は、第2電圧(例えば400V)での給電を示す信号であり、ステップS2での上記要求に応じて第2電圧(例えば400V)での給電を行い得る外部装置90又は車載充電器28から送信され得る信号である。
【0055】
制御装置20は、ステップS7において外部機器から充電条件を示す信号を受信した後、ステップS8において、充電条件を示す信号の種類がいずれの種類であるかを判定する。制御装置20は、ステップS7で受信した信号が第1の充電条件を示す信号(例えば、800V充電を示す信号)である場合、ステップS8でyesの判定とし、ステップS10の処理を行い、ステップS10を前提としたステップS11の処理を行う。制御装置20は、ステップS7で受信した信号が第2の充電条件を示す信号(例えば、400V充電を示す信号)である場合、ステップS8でnoの判定とし、ステップS9の処理を行い、ステップS9を前提としたステップS11の処理を行う。
【0056】
制御装置20は、ステップS10での設定に応じてステップS11の処理を行う場合、第1の充電条件で充電を行う。具体的には、制御装置20は、第1リレー41をオン状態とし、第2リレー42をオフ状態とする。更に、制御装置20は、スイッチ部22をいずれもオン状態とし、スイッチ部38をいずれもオフ状態とする。この場合、制御装置20は、第1DC/DCコンバータ31に対して第2電力路62に印加された電圧を降圧して第1電力路61に400Vの電圧を印加するように降圧動作を行わせる。なお、この場合、制御装置20は、第1DC/DCコンバータ31の動作を停止させてもよい。
【0057】
このように、制御装置20は、外部装置90から車両1に電力が供給される場合において充電路70に印加される電圧が第1電圧状態である場合に第1リレー41をオン状態とし、第2リレー42をオフ状態とする。「第1電圧状態である場合」とは、具合的には、第1電圧(例えば800V)の電圧が印加されて充電電流が供給される場合である。制御装置20がこのような動作を行うと、
図6のように、外部装置90から供給される電力に基づく充電電流が充電路70、第1導電路71及び第1リレー41を介して高圧バッテリ50側に流れ、高圧バッテリ50が充電される。
【0058】
制御装置20は、ステップS9での設定に応じてステップS11の処理を行う場合、第2の充電条件で充電を行う。具体的には、制御装置20は、第1リレー41をオフ状態とし、第2リレー42をオン状態とする。更に、制御装置20は、スイッチ部22をいずれもオン状態とし、スイッチ部38をいずれもオフ状態とする。一方で、制御装置20は、第1DC/DCコンバータ31に対して第1電力路61に印加された電圧を昇圧して第2電力路62に800Vの電圧を印加するように昇圧動作を行わせる。
【0059】
このように制御装置20は、外部装置90又は車載充電器28から電力が供給され充電路70に印加される電圧が第2電圧状態である場合に第1リレー41をオフ状態とし且つ第1DC/DCコンバータ31に第1動作を行わせる。「第2電圧状態である場合」とは、第1電圧状態のときよりも充電路70に印加される電圧が低い場合であり、具合的には、第2電圧(例えば400V)の電圧が印加されて充電電流が供給される場合である。制御装置20がこのような動作を行うと、
図7のように、外部装置90又は車載充電器28から供給される電力に基づく電流が充電路70、第2導電路72及び第2リレー42を介して第1DC/DCコンバータ31側に流れる。そして、第1DC/DCコンバータ31での電圧変換(具体的には昇圧)に基づく充電電流によって高圧バッテリ50が充電される。
【0060】
制御装置20は、ステップS11の後、ステップS12において予め定められた充電完了条件が成立したか否かを判定する。充電完了条件は、例えば、外部装置90のケーブルが取り外されたことであってもよく、高圧バッテリ50が満充電状態となったことであってもよく、その他の条件であってもよい。制御装置20は、ステップS12において予め定められた充電完了条件が成立していないと判定した場合(ステップS12でnoの場合)、ステップS1に処理を戻してステップS1以降の処理を再び行う。制御装置20は、ステップS12において予め定められた充電完了条件が成立したと判定した場合(ステップS12でyesの場合)、処理をステップS13に進める。
【0061】
制御装置20は、ステップS6でyesの場合又はステップS12でyesの場合、ステップS13の処理を行う。制御装置20は、ステップS13では、第1リレー41、第2リレー42をいずれもオフ状態とし、第1DC/DCコンバータ31については動作を停止させてスタンバイ状態とする。そして、制御装置20は、ステップS13の後、
図3で示す制御を終了する。
【0062】
以下、本開示の効果が例示される。上述された電源システム30は、第1リレー41がオン状態のときに高圧バッテリ50からの電力が第1導電路71及び第1リレー41を介してモータ12側に供給される第1動作状態となる。よって、第1動作状態のときに相対的に高い電圧がモータ12側に供給され得る。また、電源システム30は、第1リレー41がオフ状態のときに第1DC/DCコンバータ31が第2動作を行うことで第1DC/DCコンバータ31から第2導電路72を介してモータ12側に電力が供給される第2動作状態となる。よって、第2動作状態のときには、相対的に低い電圧がモータ12側に供給され得る。しかも、電源システム30は、高圧バッテリ50の充電用に用いられる第1DC/DCコンバータ31と第1リレー41を用いて第1動作状態と第2動作状態とを実現できる。よって、電源システム30は、高圧バッテリ50からの電力に基づいて相対的に高い電圧と相対的に低い電圧とを供給し得る構成を、より簡易に実現し得る。
【0063】
電源システム30は、第1条件の成立に応じて高圧バッテリ50から第1DC/DCコンバータ31を介さずに相対的に高い電圧をモータ12側に供給するような切り替えを制御によって行うことができる。また、電源システム30は、第2条件の成立に応じて高圧バッテリ50から第1DC/DCコンバータ31を介して相対的に低い電圧をモータ12側に供給するような切り替えを制御によって行うことができる。
【0064】
電源システム30は、必要に応じて第2導電路72を導通させたり遮断させたりすることができ、第2導電路72の遮断が望まれる状況が生じ得る構成において有利になる。
【0065】
電源システム30は、第1動作状態のときに、モータ12側に対し高圧バッテリ50から第1DC/DCコンバータ31を介さずに相対的に高い電圧を供給することができる。一方で、電源システム30は、第1動作状態のときに、第2導電路72を介したモータ12側への通電を遮断しつつ負荷側に対し第1DC/DCコンバータ31から相対的に低い電圧を供給する動作が可能となる。電源システム30は、このような動作が可能であるため、高圧バッテリ50から負荷に対して相対的に低い電圧を供給する上で第1DC/DCコンバータ31とは異なる別途のコンバータを設けずに済む。よって、電源システム30は、装置構成の簡素化を図りつつ上記機能を実現することができる。
【0066】
電源システム30は、第1条件の成立に応じて高圧バッテリ50から第1DC/DCコンバータ31を介さずに相対的に高い電圧をモータ12側に供給するような切り替えを制御によって行うことができる。更に、電源システム30は、第1条件の成立に応じて相対的に高い電圧をモータ12側に供給する場合に、第2リレー42をオフ状態とし且つ第1DC/DCコンバータ31に第2動作を行わせる制御を並行して行うことができる。つまり、電源システム30は、相対的に高い電圧をモータ12側に供給する制御と、負荷側に対して相対的に低い電圧を安定的に供給する制御とを並行して行うことができ、このような並行制御をより簡易な構成で実現できる。
【0067】
電源システム30は、充電路70に印加される電圧が第1電圧状態となるような相対的に高い充電方式であるときには制御装置20の制御によって第1リレー41をオン状態とする。よって、電源システム30は、相対的に高い充電方式であるときに第1DC/DCコンバータ31を介さずに直接的に高圧バッテリ50の充電を行うような動作を制御によって迅速に行うことができる。また、充電路70に印加される電圧が第2電圧状態となるような相対的に低い充電方式であるときには制御装置20の制御によってリレーをオフ状態とする。よって、電源システム30は、相対的に低い充電方式であるときに第1DC/DCコンバータ31を介して高圧バッテリ50の充電を行うような動作を制御によって迅速に行うことができる。
【0068】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0069】
上記実施形態では、電源システム30は、外部装置90から800V又は400Vの充電電圧が供給される構成であるが、これに限定されない。車両1の外部から電源システム30に対して供給され得る電圧の組合せは、800V又は400Vのいずれか一方又は両方が異なっていてもよい。或いは、電源システム30は、車両1の外部から3種類以上の電圧が供給され得る構成であってもよい。
【0070】
上記実施形態では、第1リレー41及び第2リレー42がいずれも半導体リレーであるが、第1リレー41及び第2リレー42のいずれか一方又は両方が電磁式リレーであってもよい。
【0071】
上記実施形態では、高圧バッテリ50は、2つの蓄電部50A,50Bが直列に接続された構成をなすが、この例に限定されない。高圧バッテリ50は、3つ以上の蓄電部が直列に接続されていてもよく、複数の蓄電部を備えた構成において少なくとも一部が並列接続される構成であってもよい。或いは、高圧バッテリ50は、複数の蓄電部を備えた構成において複数の蓄電部の接続状態が切り替えられる構成であってもよい。
【0072】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 :車両
4 :車載システム
6 :補機系負荷
7 :低圧負荷
8 :高圧負荷
10 :電力供給システム
12 :モータ
14 :インバータ
16 :コンデンサ
20 :制御装置
22 :スイッチ部
22A :スイッチ
22B :スイッチ
24 :低圧バッテリ
28 :車載充電器
30 :電源システム
31 :第1DC/DCコンバータ(電圧変換部)
32 :第2DC/DCコンバータ
38 :スイッチ部
38A :スイッチ
38B :スイッチ
41 :第1リレー(リレー)
42 :第2リレー
50 :高圧バッテリ
50A :蓄電部
50B :蓄電部
61 :第1電力路
61A :配線
61B :配線
62 :第2電力路
62A :配線
62B :配線
63 :電力路
63A :配線
63B :配線
70 :充電路
70A :第1充電路
70B :第2充電路
71 :第1導電路
71A :配線
71B :配線
72 :第2導電路
72A :第1供給路
72B :第2供給路
73 :第3導電路
74 :充電路
74A :第3充電路
74B :第4充電路
90 :外部装置
P1 :端子
P2 :端子
P3 :接続点
P4 :接続点